本発明の第1の実施形態に係る制動倍力装置を、図1〜4を用いて説明する。図1は、本実施形態の制動倍力装置10を備える制動装置1を示す概略図である。制動装置1は、制動倍力装置の圧力検出手段故障判定装置の一例を備える。
図1に示すように、制動装置1は、一対の前輪5と、一対の後輪6とを備える自動車に搭載されている。制動装置1は、各前輪5と各後輪6に設けられるディスクロータ20と、各ディスクロータ20に対して1つ設けられるキャリパ21と、運転者が操作するブレーキペダル30と、ブレーキペダル30の操作に応じてキャリパ21が備えるピストンにブレーキ液の圧力を作用させるマスタシリンダ40と、ブレーキペダル30に対する操作を助勢する制動倍力装置10とを備える。
各キャリパ21とマスタシリンダ40とは、ブレーキ液配管41で接続されている。ブレーキ液配管41内にはブレーキ液が満たされている。マスタシリンダ40は、ブレーキペダル30の操作量に応じてブレーキ液配管41内のブレーキ液の圧力を調整する。ブレーキペダル30が踏み込まれることに応じて、マスタシリンダ40は、ブレーキ液配管41内の圧力を上げる。ブレーキペダル30が踏み込まれることは、ブレーキペダル30が操作されていることである。
キャリパ21のピストン22は、ブレーキ液配管41内の圧力によって駆動される。ブレーキ液配管41内の圧力が上昇すると、ピストン22がディスクロータ20に向かって移動するとともにピストン22の先端に固定されたブレーキパッドがディスクロータ20に押し付けられる。ブレーキパッドのディスクロータ20に対する押し付け力は、ブレーキ液配管41内の圧力が上昇にするにともない、強くなる。
ディスクロータ20は、当該ディスクロータ20が設けられる前輪5と後輪6と一体に回転する。ディスクロータ20は、ブレーキパッドが押し付けられることによって、その回転が停止する。このため、ピストン22がディスクロータ20に押し付けられることによって、前輪5の回転と、後輪6の回転とが停止される。
制動倍力装置10は、ブレーキペダル30への操作を助勢する助勢部50と、複数の圧力検出手段と、ペダル操作検出センサ60と、電動バキュームポンプ70と、制御部80とを備えている。助勢部50は、定圧室51と、変圧室52とを備えている。定圧室51には、後述される電動バキュームポンプ70が連結されている。定圧室51内は、電動バキュームポンプ70によって、負圧になっている。なお、ここでいう負圧とは、大気圧より低い圧力である。言い換えると、定圧室51内の圧力は、電動バキュームポンプ70によって、大気圧よりも低い状態に保たれている。
変圧室52は、ブレーキペダル30が踏み込まれていない場合は、定圧室51と同じに維持される。ブレーキペダル30が踏み込まれるに従い、変圧室52が大気に開放される。このため、ブレーキペダル30の操作量に応じて、言い換えると、ブレーキペダル30の踏み込み量に応じて、定圧室51と変圧室52との間に、圧力差が生じる。この差圧が、ブレーキペダル30の操作を助勢する。マスタシリンダ40には、運転者によるブレーキペダル30の踏み込み力と、助勢部50による助勢力が入力とされる。
定圧室51には、複数の圧力検出手段の一例として、第1の圧力検出部55と、第2の圧力検出部56とが設けられている。第1,2の圧力検出部55,56は、定圧室51内の圧力に応じた信号を出力する。
ブレーキペダル30には、ペダル操作検出センサ60が設けられている。ペダル操作検出センサ60は、ブレーキペダル30が操作されたこと、言い換えると、運転者がブレーキペダル30を踏み込んだことを検出すると、信号を出力する。
制御部80は、第1,2の圧力検出部55,56と、ペダル操作検出センサ60と、電動バキュームポンプ70とに接続されている。第1,2の圧力検出部55,56は、検出結果を、制御部80に送信する。ペダル操作検出センサ60は、検出結果を制御部80に送信する。制御部80は、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に応じて、第1,2の圧力検出部55,56の出力信号に対応する圧力値を算出する。また、制御部80は、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に基づいて電動バキュームポンプ70の動作を制御する。
また、制御部80は、第1,2の圧力検出部55,56のうち、故障した圧力検出部を検出するとともに、故障していない圧力検出部の検出結果に基づいて、電動バキュームポンプ70の動作を制御する。
つぎに、制御部80の動作を、図2〜4を用いて説明する。制御部80の動作として、まず、運転者がブレーキペダル30の操作を行っていない状態での動作を説明する。図2は、制御部80の動作を示すフローチャートである。まず、第1,2の圧力検出部55,56のいずれにも故障が生じていない状態を説明する。
制御部80は、まず、ステップST1において、ペダル操作検出センサ60の検出結果に基づいて、ブレーキペダル30が操作されているか否かを判定する。この説明では、ブレーキペダル30は操作されていないので、ブレーキペダル30の操作はされていないと判定する。ついで、ステップST2に進む。
ステップST2では、制御部80は、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に基づいて得られた圧力値どうしの差の絶対値を求める。ついで、ステップST3に進む。
ステップST3では、制御部80は、第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値と、第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値との差の絶対値が、予め設定された故障判定値以上であるか否かを判定する。この故障判定値は、実験やシミュレーションによって適宜設定される値である。差の絶対値が故障判定値以上である場合は、第1,2の圧力検出部55,56のいずれか一方が故障していることを示す。この説明では、第1,2の圧力検出部55,56は、ともに故障していないので、第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値と第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値との差の絶対値は、故障判定値未満である。制御部80は、第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値と第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値との差の絶対値が故障判定値以上ではないと判定する。ついで、ステップST4に進む。
ステップST4では、制御部80は、圧力検出部の検出結果を、通常通り選択する。本実施形態では、一例として、第1の圧力検出部55の検出結果を選択する。そして、この選択結果に対応する圧力値が定圧室51内の圧力値であるとして、電動バキュームポンプ70を制御する。
ステップST4の段階では、第1,2の圧力検出部55,56は、ともに、故障していない。このため、どちらの検出結果を用いても、電動バキュームポンプ70の制御に差し支えることはない。上記の通常通り選択することは、用いる複数の圧力検出手段のいずれも故障していない状態において選択するよう予め設定されている検出結果を選択することである。
または、用いる複数の圧力検出手段のいずれも故障していない状態では、制御部80は、各圧力検出部の検出結果の平均値を用いるようにしてもよい。
つぎに、ブレーキペダル30が操作されていない状態において、第2の圧力検出部56が故障し、第1の圧力検出部55が正常である場合の制御部80の動作を説明する。
制御部80は、ステップST1において、ペダル操作検出センサ60の検出結果に基づいて、ブレーキペダル30が操作された否かを判定する。この説明では、ブレーキペダル30は操作されていないので、ステップST2に進む。
ステップST2では、制御部80は、第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値と第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値との差の絶対値を算出する。また、制御部80は、このときの、第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値と第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値とを記憶する。
図3は、この説明での第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力を示すグラフである。図2の横軸は、時間の経過を示し、矢印に沿って進むにつれて、時間が経過したことを示す。図2の縦軸は、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値を示し、矢印に沿って進むにつれて、値が大きくなる。
なお、図3中には、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力を示すグラフに対して電動バキュームポンプ70のオンオフを示すタイムチャートを併記している。このタイムチャートの横軸は、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力を示すグラフの横軸と同じであり、時間を示している。縦軸は、電動バキュームポンプ70がオン状態であるかまたはオフ状態であるかを示している。オン状態は電動バキュームポンプ70が駆動している状態であり、オフ状態は電動バキュームポンプ70が駆動していない状態である。
第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値をP1とし、第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値をP2とする。この説明では、第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値P1は、第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値P2よりも大きいので、第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値と第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値の差の絶対値をΔPdとすると、ΔPd=|P1−P2|となる。ついで、ステップST3に進む。
ステップST3では、制御部80は、第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値と第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値との差の絶対値が、故障判定値以上であるか否かを判定する。この説明では、第2の圧力検出部56が故障している設定であるので、ΔPdは、故障判定値以上となる。ついで、ステップST5に進む。
ステップST5では、制御部80は、電動バキュームポンプ70を、予め設定される時間駆動する。そして、制御部80は、電動バキュームポンプ70の動作が開始された後所定時間が経過すると、電動バキュームポンプ70の動作を停止する。また、制御部80は、電動バキュームポンプ70の駆動が停止されたときの、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値を算出し、記憶する。電動バキュームポンプ70の駆動後の第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値をP1aとし、第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値をP2aとする。ついで、ステップST6に進む。
ステップST6では、制御部80は、定圧室51内の圧力値の変動値を推定する。図3に示すように、ステップST5で電動バキュームポンプ70を駆動することによって、定圧室51内の圧力は、電動バキュームポンプ70の駆動前の状態に比べて、さらに下がる。つまり、P1,P2よりも下がる。
制御部80は、電動バキュームポンプ70の駆動時間、言い換えると、上記所定時間と、電動バキュームポンプ70の性能とに基づき、ステップST5での電動バキュームポンプ70の駆動に起因する、定圧室51内の圧力の低下値を推定する。圧力の低下値の推定値を、ΔPとする。
図3中に示す、実線が、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値を示す。2点鎖線で示されるものは、電動バキュームポンプ70が駆動する前の値であるP1,P2から、推定値ΔPを引いたものである。2点鎖線で示されるグラフは、電動バキュームポンプ70が駆動した後での、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に基づく圧力値の推定値である。ついで、ステップST7に進む。
ステップST7では、制御部80は、故障している圧力検出部を特定する。具体的には、制御部80は、電動バキュームポンプ70の駆動の前後での第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値の実際の変動値と、ステップST6で検出された変動の推定値ΔPとを比較する。
第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値の実際の変動値をΔP1とすると、ΔP1=P1−P1aとなる。第2の圧力検出部56の検出結果に対応する圧力値の実際の変動値をΔP2とすると、ΔP2=P2−P2aとなる。
制御部80は、ΔP1とΔP2とが、推定値ΔPに対して設定される正常領域内にあるか否かを判定する。実際の変動値が、推定値に対して設定される正常領域内にあると、故障していないと判定される。
本実施形態では、推定値ΔPに対して、±ΔPnの範囲内にあると、正常であると判定され、推定値ΔPに対して±ΔPnの範囲の外側にあると、故障していると判定する。ΔPnは、予め決定されている値である。
具体的には、検出結果に基づく圧力値の実際の変動値が、ΔP−ΔPn以上であって、かつ、ΔP+ΔPn以下であると、正常であると判定され、ΔP−ΔPn未満、または、ΔP+ΔPnより大きいと、故障していると判定される。
この説明では、第2の圧力検出部56が故障しており、それゆえ、(ΔP−ΔPn)≦≦P1≦(ΔP+ΔPn)となる。そして、P2<(ΔP−ΔPn)となる。制御部80は、第2の圧力検出部56が故障している圧力検出部であると特定する。ついで、ステップST8に進む。
ステップST8では、制御部80は、電動バキュームポンプ70を制御する際には、ステップST7で正常であると判定された第1の圧力検出部55の検出結果を選択するように設定する。ついで、ステップST9に進む。
ステップST9では、制御部80は、第2の圧力検出部56が故障していることを運転者に警告するべく、インジケータ90に故障情報を出力する。インジケータ90は、第1の圧力検出部55が故障していることを点灯することによって示すランプ91と、第2の圧力検出部56が故障していることを点灯することによって示すランプ92とを備えている。この説明では、インジケータ90は、制御部80から故障情報を受けることによって、第2の圧力検出部56が故障していることを示すランプ92を点灯する。ランプ92が点灯することによって、運転者は、第2の圧力検出部56が故障していることに気づくことができる。
上記のように、ブレーキペダル30が操作されていない状態で第1,2の圧力検出部55,56のいずれか一方が故障しても、正常と判定された方の圧力検出部の検出結果に基づいて、電動バキュームポンプ70が制御される。
つぎに、故障することによって、検出結果が実際の定圧室51内の圧力に応じることなく一定となる場合について、説明する。このような故障の場合、ブレーキペダル30が操作されることによって、定圧室51内の負圧が消費されたことに伴って定圧室51内の圧力が上昇しても、故障した方の圧力検出部の検出値は、定圧室51内の圧力の変動に関わらず、一定の値を制御部80に出力し続ける。
このため、上記のような故障の場合、ブレーキペダル30が踏み込まれていない場合で定圧室51内の圧力が変化していない状態では、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果は、互いの略同じ値を出力するので、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果の絶対値が故障判定値未満となり、故障が発見されない。そして、ブレーキペダル30が操作されることによって、故障が発見される。このため、ブレーキペダル30が操作されたものとする。
ステップST1では、制御部80は、ペダル操作検出センサ60の検出結果に基づいて、ブレーキペダル30が操作されたと判定する。ついで、ステップST10に進む。図4は、ブレーキペダル30が踏み込まれたことに伴う、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果を示すグラフである。横軸、縦軸は、図3と同じである。図4中に示す、実線が、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値を示す。図4に示すように、ブレーキペダル30が操作される前の状態では、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果は、略同じ値であり、それゆえ、検出結果に基づく圧力値も略同じである。このため、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に基づく圧力値の差の絶対値は、故障判定値未満である。
そして、ブレーキペダル30が踏み込まれることによって、定圧室51内の圧力が消費されるので、定圧室51内の圧力が上昇する。制御部80は、ブレーキペダル30の操作が開始されたときの第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値Q1,Q2を算出するとともに記憶する。
なお、図4中には、ブレーキペダル30が踏み込まれたことに伴う、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果を示すグラフに対して、ブレーキペダル操作のオンオフを示すタイムチャートを併記している。このタイムチャートの横軸は、ブレーキペダル30が踏み込まれたことに伴う、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果を示すグラフの横軸と同じであり、時間を示している。縦軸は、ブレーキペダル30がオン状態であるかまたはオフ状態であるかを示している。オン状態はブレーキペダル39が踏み込まれている状態であり、オフ状態はブレーキペダル30が踏み込まれていない状態である。
ステップST10では、制御部80は、第1の圧力検出部55の、ブレーキペダル30の操作後での検出結果に対応する圧力値と、第2の圧力検出部56の、ブレーキペダル30の操作後での検出結果に対応する圧力値との差の絶対値を求める。
具体的には、ブレーキペダル30の操作が終了した後、言い換えると、ブレーキペダルの操作が終了した後予め設定した所定時間が経過すると、第1,2の圧力検出部55,56の検出値の、ブレーキペダル30の操作前後の差の絶対値を検出する。所定時間は、予め設定されている時間であり、例えば、ダンピングブレーキ時など複数回連続してブレーキを踏み込むような場合を考慮して設定されている。ブレーキペダルの踏み込み後所定時間が経過すると、次のブレーキペダル30の踏み込みがないと判定し、所定時間経過したときをブレーキ操作終了時としている。
なお、図4では、ブレーキペダル30が、2回踏み込まれている。1回目の踏み込みが終了した後、上記所定時間が経過する前に2回目のブレーキ操作が行われている。そして、2回目のブレーキペダル30の操作終了後所定時間内に次のブレーキ操作が行われていないので、2回目のブレーキペダル30の操作終了後所定時間が経過したときにブレーキペダル30の操作が終了したと判定している。
このため、制御部80は、2回目のブレーキ操作終了後所定時間が経過したときの第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値を、Q1a,Q2aとして算出している。
ついで、制御部80は、ブレーキ操作終了後の第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に基づく圧力値の差の絶対値であるΔQdを算出する。ΔQd=|Q1a−Q2a|となる。なお、上記したように、第2の圧力検出部56は、故障していることによって、ブレーキペダル30の操作前後で検出値が変化しない。つまり、Q2=Q2aとなる。ΔQdが検出されると、ついで、ステップST11に進む。
ステップST11では、制御部80は、ΔQdが故障判定値以上であるか否かを判定する。制御部80は、ΔQdが故障判定値以上であると判定すると、第1,2の圧力検出部55,56のいずれかが故障していると判定する。なお、第1,2の圧力検出部55,56のどちらも故障していない場合は、ΔQdは故障判定値未満である。この場合、ステップST12に進む。ステップST12の処理は、ステップST4と同じである。この説明では、第2の圧力検出部56が故障している場合なので、ΔQdは、故障判定値以上であると判定する。ついで、ステップST13に進む。
ステップT13では、制御部80は、ブレーキペダル30の操作に応じて、定圧室51内の負圧の消費量を推定する。制御部80は、具体的には、ブレーキペダル30の操作時間、ブレーキペダル30の踏み込み量などに基づいて、定圧室51内の負圧の消費量を推定する。負圧の消費量の推定値を、ΔQとする。図4中に示す、2点鎖線は、ブレーキペダル30の操作が開始されたときの値であるQ1,Q2に、推定値ΔQを足したものである。2点鎖線で示されるグラフは、ブレーキペダル30の操作に応じた、第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に基づく圧力値の推定値である。負圧の消費量が推定されると、ついで、ステップST14に進む。
ステップST14では、故障している圧力検出部を特定する。具体的には、制御部80は、ブレーキペダル30の操作前後での第1,2の圧力検出部55,56の検出結果に対応する圧力値の実際の変動値が、ステップST14で求められた負圧の消費量の推定値ΔQに対して設定される正常領域内であるか否かを判定する。
第1の圧力検出部55の、ブレーキ操作前後での検出結果に対応する圧力値の実際の変動値の絶対値をΔQ1とすると、ΔQ1=|Q1a−Q1|となる。第2の圧力検出部56の、ブレーキ操作前後での検出結果に対応する圧力値の実際の変動値の絶対値をΔQ2とすると、ΔQ2=|Q2a−Q2|となる。なお、Q2a=Q2であるので、ΔQ2=0である。
ΔQに対して設定される正常領域は、ΔQ±ΔQnである。具体的には、圧力検出部の検出結果に対応する圧力値が、ΔQ−ΔQn以上であって、かつ、ΔQ+ΔQn以下であると正常であると判定され、ΔQ−ΔQn未満、または、ΔQ+ΔQnより大きいと、故障であると判定される。ΔQnは、予め決定される値である。
この説明では、第1の圧力検出部55は、正常であるので、ΔQとΔQ1とは、互いに近似値となる。このため、ΔQ−ΔQn≦ΔQ1≦ΔQ+ΔQnとなる。また、この説明では、第2の圧力検出部56は故障しているので、ΔQ2<ΔQ−ΔQnとなる。このため、制御部80は、第2の圧力検出部56が故障していると判定し、第1の圧力検出部55は正常であると判定する。ついで、ステップST15に進む。
ステップST15では、制御部80は、ステップST14で正常であると判定した第1の圧力検出部55の検出結果を選択して電動バキュームポンプ70を制御するように設定される。ついで、ステップST16に進む。
ステップST16では、制御部80は、第2の圧力検出部56が故障していることを運転者に警告するべく、故障情報を出力する。インジケータ90は、制御部80からの信号を受信すると、第2の圧力検出部56が故障していることを示すランプ92を点灯する。運転者は、第2の圧力検出部56が故障していることを示すランプ92が点灯すると、第2の圧力検出部56が故障していることを認識することができる。
このように構成される制動倍力装置10では、第1,2の圧力検出部55,56のうち、いずれか一方が故障しているか否かを、第1,2の圧力検出部55,56の検出値に対応する圧力値の差の絶対値に基づいて、判定する。具体的には、ブレーキペダル30が操作されていない状態ではステップST3での処理において、または、ブレーキペダル30が操作された状態ではステップST11での処理において、故障判定を行っている。
このように、各圧力検出部の検出結果の差の絶対値に基づいて、いずれかの圧力検出部が故障しているか否かの故障判定を行い、故障判定がなされた後、実際に故障している圧力検出部を特定している。具体的には、ステップST7,ST14での処理で、実際に故障している圧力検出部を特定している。このように、複数の圧力検出部の検出値の比較に基づいて故障判定を行うことによって、故障判定の精度を向上することができる。この点について、具体的に説明する。
複数の圧力検出部を備える構造において、各圧力検出部の検出値と予め設定される所定値との比較に基づいて、故障判定を行うことがある。所定値との比較に基づく故障判定の方法として、圧力検出部の検出結果が所定値よりも大きい場合は、正常であると判定する方法がある。
この故障判定では、例えば、圧力検出部が故障しており、それゆえ、上記所定値よりも大幅に大きな値を出力する場合であっても、正常であると判定する。このように、圧力検出部の検出値と所定値との比較に基づく故障判定では、実際には圧力検出部が故障していう場合であっても、正常であると判定される場合がありえる。
正常である圧力検出部の検出値と故障している圧力検出部の検出値とは、異なるようになる。このため、本実施形態のように、各圧力検出部の検出値の比較に基づいて故障判定をすることによって、故障判定を精度よく行うことができる。さらに、故障判定を行った後に、実際に故障している圧力検出部を特定するので、実際に故障している圧力検出部を精度よく特定することができる。
つぎに、本発明の第2の実施形態に係る制動倍力装置を、図5を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、複数の圧力検出部の他の例として、さらに、第3,4の圧力検出部57,58を備える。また、第3,4の圧力検出部57,58を備えることに伴い、制御部80の動作が、異なる。インジケータ90は、第1〜4の圧力検出部55〜58の故障を警告できるように構成されている。他の構造は、第1の実施形態と同じである。上記異なる点について、具体的に説明する。
図5は、本実施形態の制動装置1を示す概略図である。上記したように、本実施形態では、さらに、第3,4の圧力検出部57,58を備える。インジケータ90は、さらに、点灯することによって第3の圧力検出部57が故障していることを示すランプ93と、点灯することによって第4の圧力検出部58が故障していることを示すランプ94とを備える。
つぎに、本実施形態の制御部80の動作を説明する。なお、制御部80の動作の説明のために、図2のフローチャートを用いる。
本実施形態では、制御部80は、ステップST2では、第1〜4の圧力検出部55〜58の検出結果に対応する圧力値を求めるとともに、求められた圧力値のうち、最も大きい値と最も小さい値との差の絶対値とを検出する。例えば、第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値が最も小さく、かつ、第4の圧力検出部58の検出結果に対応する圧力値が最も大きい場合は、第1の圧力検出部55の検出結果に対応する圧力値と第4の圧力検出部58の検出結果に対応する圧力値との差の絶対値を求める。
制御部80は、ステップST3では、ステップST2で求められた最も小さい値と最も大きい値との差の絶対値が、故障判定値以上であるか否かを判定する。故障判定値以上であると、第1〜4の圧力検出部55〜58のうち少なくとも1つが故障していると判定する。
制御部80は、ステップST7では、第1の実施形態と同様に、ステップST6で求められた第1〜4の圧力検出部55〜58の実際の検出結果に対応する圧力値の変動値を求めるとともに、これら実際の変動値が、変動の推定値に対して設定される正常領域内にあるか否かを判定し、この所定範囲内にある圧力検出部を正常と判定するとともに、所定範囲外にある圧力検出部は故障していると判定する。
同様に、制御部80は、ステップST10では、第1〜4の圧力検出部55〜56の検出結果に対応する圧力値のうち、最も大きい値と最も小さい値との差の絶対値を検出する。
そして、制御部80は、ステップST14では、第1の実施形態と同様に、第1〜4の圧力検出部55〜58に対して、ブレーキ操作の前後での検出結果に対応する圧力値の差の絶対値を求めるとともに、求められた差の絶対値が、ステップST13で求められた負圧消費量の推定値に対して設定される正常範囲内にあるか否かを判定し、正常領域内にある圧力検出部は正常であると判定し、この所定範囲外にある圧力検出部は故障していると判定する。
なお、ステップST7,15では、正常であると判定された圧力検出部のうち、特定の圧力検出部の検出結果を用いてもよいし、または、正常であると判定された圧力検出部の検出結果に対応する圧力値の平均値を用いてもよい。
本実施形態であっても、第1の実施形態と同様の作用と効果とが得られる。
なお、複数の圧力検出部の例として、第1の実施形態では2つの場合、第2の実施形態では4つの場合を説明した。圧力検出部の数は、2つと4つに限定されず、複数であれば、本発明を適用することができるとともに、第1,2の実施形態と同様の効果が得られる。
つぎに、第3の実施形態に係る制動倍力装置を説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、故障している圧力検出部の特定方法が、第1の実施形態とは異なる。なお、装置の構成は、第1の実施形態と同じである。
本実施形態では、ステップST7,ST14で示される、故障している圧力検出部の特定方法が、第1の実施形態に対して異なる。制御部80の他の動作は、第1の実施形態と同じである。
本実施形態では、ステップST7では、故障判定の方法として、電動バキュームポンプ70の駆動前後での圧力検出部の実際の検出結果に対応する圧力値の差の絶対値が、推定値ΔPに対して設定される正常領域内にあるか否かによって故障が判定されるのではなく、実際の変動値と、変動値の推定値との差の絶対値が大きい方を故障している圧力検出部であると特定する。
具体的には、第1の圧力検出部55において、実際の変動値と、変動値の推定値との差の絶対値を、ΔP1dとすると、ΔP1d=|ΔP−ΔP1|となる。第2の圧力検出部56において、実際の変動値と変動値の推定値との差の絶対値をΔP2dとすると、ΔP2d=|ΔP−ΔP2|となる。
図3に示されるように、第2の圧力検出部56が故障している状態では、ΔP1d<ΔP2dとなる。本実施形態では、制御部80は、ΔP1d<ΔP2dであることから、第2の圧力検出部56が故障していると判定する。
ステップST14では、故障判定の方法おして、ブレーキ操作前後での、実際の検出結果に対応する圧力値の差の絶対値が、推定値ΔQに対して設定される正常流域内にあるか否かによって故障が判定されるのではなく、実際の変動値と、変動値の推定値との差の絶対値が大きいほうを故障している圧力検出部であると特定する。
具体的には、第1の圧力検出部55において、実際の変動値と、変動値の推定値との差の絶対値を、ΔQ1dとすると、ΔQ1d=|ΔQ−ΔQ1|となる。第2の圧力検出部56において、実際の変動値と、変動値の推定値との差の絶対値をΔQ2dとすると、ΔQ2d=|ΔQ−ΔQ2|となる。
この説明では、第2の圧力検出部56が故障しているので、ΔQ1d<ΔQ2dとなり、制御部80は、第2の圧力検出部56が故障していると判定する。
本実施形態では、複数の圧力検出部として2つの圧力検出部を備える構造である場合に、ステップST7,ST14で説明したように故障している圧力検出部を特定することができる。本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
第1〜3の実施形態では、負圧発生手段の一例として、電動バキュームポンプ70が用いられた。なお、これは一例である。負圧を発生する手段として、電動バキュームポンプ70以外が用いられてもよい。
第1〜3の実施形態では、ブレーキ操作部の一例として、ブレーキペダルが用いられた。他の構造が用いられてもよい。
第1〜3の実施形態では、ブレーキ操作部が操作されていることを検出するブレーキ操作検出手段の一例として、ペダル操作検出センサ60が用いられた。他の構造が用いられてもよい。
第1〜3の実施形態では、第1の圧力検出部55と制御部80との組み合わせは、圧力検出手段の一例を構成し、第2の圧力検出部56と制御部80との組み合わせは、圧力検出手段の一例を構成し、第2の実施形態では、第3の圧力検出部57と制御部80との組み合わせは、圧力検出手段の一例を構成し、第2の実施形態では、第4の圧力検出部58と制御部80との組み合わせは圧力検出手段の一例を構成している。
このように、制御部80は、複数の圧力検出手段に対して共通して用いられている。例えば、制御部80の代わりに、制御部80と同様に各圧力検出部が検出した検出結果に対応する圧力値を算出する制御部を、各圧力検出部が備えていてもよい。
また、上記のように、制御部80のように、複数の圧力検出手段に共通して用いられる構成があってもよい。または、各圧力検出手段で独立した構成であってもよい。
第1〜3の実施形態では、制御部80は、複数の圧力検出手段内少なくとも1つが故障していることを判定する故障判定手段の一例である。第1〜3の実施形態では、制御部80は、故障している圧力検出手段を特定する特定手段の一例である。第1〜3の実施形態では、制御部80は、負圧発生手段を制御する制御手段の一例である。
第1〜3の実施形態では、制御部80は、負圧発生手段の駆動に起因する負圧の変動値を推定する負圧変動値推定手段の一例である。第1〜3の実施形態では、制御部80は、ブレーキ操作に起因する負圧の消費値を推定する負圧消費値推定手段の一例である。
なお、第1〜3の実施形態では、複数の圧力検出手段のうち故障している圧力検出手段を運転者などに警告する手段の一例として、インジケータ90が用いられた。インジケータ90は、各圧力検出手段の対応するランプを備えており、このランプを点灯することによって故障を警告している。この警告手段は、一例である。例えば、自動車が備えるスピーカーなどから音声によって、故障している圧力検出手段を警告するようにしてもよい。
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態の構成を組み合わせてもよい。