JP6110997B1 - ウレタン組成物、ポリウレタン弾性体、及び、伝動ベルト - Google Patents

Abstract

強度と表面滑性に優れたポリウレタン弾性体の提供を課題とする。課題を解決すべく、特定のプレポリマーと可塑剤と架橋剤とを含むウレタン組成物を提供する。

Description

関連出願の相互参照

本願は、日本国特願２０１５−１０６５４４号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。

本発明は、ウレタン組成物、ポリウレタン弾性体、及び、伝動ベルトに関する。

従来、プリンターや複写機内で各種ローラーを駆動させるために歯付ベルトと呼ばれる伝動ベルトが用いられている。
該歯付ベルトは、帯状のベルト本体の片面又は両面から突出する複数の歯部を備えており、該歯部をベルト本体の長さ方向に一定のピッチで配置している。
歯付ベルトは、通常、歯部に対応する溝を有する歯付プーリーと組み合わせて用いられ、前記ベルト本体が無端状とされて複数の歯付プーリーに掛け渡されて用いられる。
プリンターや複写機のローラーが駆動される際には該ローラーの長手方向の端部に装着された歯付プーリーが歯付ベルトの走行により回転される。
この歯付ベルトの走行に際しては、前記歯部は歯付プーリーの溝への挿抜を繰り返すことになる。
そのため、歯付ベルトの歯部は強度に優れるばかりでなく表面の滑り性にも優れることが求められている（下記特許文献１参照）。

日本国特開２００９−２１００１１号公報

歯付ベルトなどの伝導ベルトや搬送ベルトの形成には、ポリウレタン弾性体などの各種エラストマーが用いられている。
ポリウレタン弾性体は、その形成材料たるウレタン組成物におけるポリオールとポリイソシアネートとの種類や配合割合などにより物性の調整が容易である。
しかしながら、優れた強度と表面滑性とを兼ね備えたポリウレタン弾性体はいまだ見出されておらず、伝導ベルトなどの形成材料として好適なものが見出されていない。

本発明は、このような点に鑑み、強度と表面滑性とに優れたポリウレタン弾性体の形成に適したウレタン組成物を提供し、ひいては歯付ベルトなどの伝導ベルトの形成に適したポリウレタン弾性体を提供することを目的としている。

上記課題を解決するための本発明に係るウレタン組成物は、ポリオールとポリイソシアネートとを含むウレタン組成物であって、分子量３００以上の長鎖ポリオールとジフェニルメタンジイソシアネートとの反応物であるウレタンプレポリマーを主成分とし、可塑剤とポリオール系架橋剤とをさらに含んでいる。

また、本発明に係るポリウレタン弾性体は、前記のようなウレタン組成物によって形成されており、伝動ベルトに係る本発明は、このようなポリウレタン弾性体によってプーリーと接する面が形成されている。

本発明によれば、強度と表面滑性とに優れたポリウレタン弾性体の形成に適したウレタン組成物が提供される。

歯付ベルトを示した概略断面図。

本発明の実施の形態について説明する。
以下においては、歯付ベルトの形成に利用される場合を例にして本発明のウレタン組成物及び本発明のポリウレタン弾性体について説明する。
まずは歯付ベルトについて図１を参照しつつ説明する。

なお図１は、歯付ベルトの長手方向と厚み方向との両方に平行する平面で歯付ベルトを切断した場合の断面の様子を示した図である。
この図に示されているように本実施形態の歯付ベルト１は、帯状のベルト本体１０を有している。
歯付ベルト１は、前記ベルト本体１０の一面側から突出する複数の歯部２０を有している。

前記ベルト本体１０は、ポリウレタン弾性体１１と、該ポリウレタン弾性体中に埋設された抗張体１２とで形成されている。
前記歯部２０は、全体がポリウレタン弾性体２１によって形成されている。
歯部２０を構成するポリウレタン弾性体２１と、ベルト本体１０を構成するポリウレタン弾性体１１とは共通するウレタン組成物からなり、本実施形態の歯付ベルト１は、これらが一体的なものとなっている。

前記歯部２０の表面は、歯付ベルト１を歯付プーリーに巻き掛けて用いる際に歯付プーリーと強く接する部分となる。
そのため、これらの部位を構成する前記ポリウレタン弾性体１１，２１には、優れた強度が求められるとともに優れた表面滑性を有することが求められる。

このようなことからポリウレタン弾性体１１，２１は、ＪＩＳ Ａ硬度が８０以上であることが好ましく、８２以上であることがより好ましく、８４以上であることが特に好ましい。
ここで、ポリウレタン弾性体の「ＪＩＳ Ａ硬度」とは、ＪＩＳ標準条件（２３℃、５０％ＲＨ）のもとで旧ＪＩＳ Ｋ６３０１に準拠して測定されるタイプＡデュロメータ硬さの瞬時値を意味する。
なお、ポリウレタン弾性体のＪＩＳ Ａ硬度は、１００以下であることが好ましい。

このようなポリウレタン弾性体１１，２１を形成させるための本実施形態のウレタン組成物は、分子量３００以上の長鎖ポリオールとジフェニルメタンジイソシアネートとの反応物であるウレタンプレポリマーを主成分としている。
即ち、本実施形態のウレタン組成物は、含有する成分の内で前記ウレタンプレポリマーの占める質量割合が最も高いものになっている。
本実施形態のウレタン組成物は、可塑剤とポリオール系の架橋剤とをさらに含んでいる。

前記ウレタンプレポリマーの出発物質たる前記長鎖ポリオールの分子量は、例えば、３００以上とすることができる。
ウレタンプレポリマーの出発物質たる前記長鎖ポリオールの分子量は、６５０以上であることが好ましく、８００以上であることがより好ましい。
前記長鎖ポリオールの分子量は、例えば、３０００以下とすることができる。前記長鎖ポリオールの分子量は、２０００以下であることが好ましく１５００以下であることがより好ましい。
該長鎖ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールや、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
前記ポリエーテルポリオールは、例えば、分子量が３００未満の短鎖ポリオールにアルキレンオキサイドを付加したものが挙げられる。
ポリオールの分子量は、その構造を特定できるものについては、該構造より計算で求めることができる。また、構造の特定が難しいポリオールの分子量は、数平均分子量を測定することで求めることができる。
ポリオールの数平均分子量（Ｍｎ）は、ゲルパーミッションクロマトグラフ（ＧＰＣ）を用いて測定することができ、例えば、東ソー社製ＧＰＣ：型名「ＨＬＣ−８０２０」を用いて、カラム「Ｇ−４０００」、「Ｇ−３０００」、「Ｇ−２０００」（いずれも東ソー社製）を三本連結させて、移動相にクロロホルムを使用することにより測定することができる。

前記短鎖ポリオールは、通常、２価（ジオール）又は３価（トリオール）のポリオールとすることができる。
前記短鎖ポリオールは、４価以上のものであってもよい。

短鎖ジオールは、例えば、炭素数２〜１２の脂肪族ジオールであってもよい。
該脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、１，３−プロパンジオール、１，４−ブタンジオール、１，５−ペンタンジオール、１，６−ヘキサンジオール、１，２−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、３−メチル−１，５−ペンタンジオール、２，２−ジエチル−１，３−プロパンジオール、１，２−ブタンジオール、１，３−ブタンジオール、及び、２，３−ブタンジオールなどからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。
前記短鎖ジオールは、脂環族ジオールや芳香族ジオールであってもよい。

前記短鎖トリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、及び、これらのアルキレンオキサイド付加物などからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。

該短鎖ポリオールとともにポリエーテルポリオールを形成する前記アルキレンオキサイドは、例えば、炭素数２〜１０程度のアルキレンオキサイドが挙げられる。

具体的には、前記ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシブチレン−ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ビスフェノールＡのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールＡのプロピレンオキサイド付加物などからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。

前記ポリエステルポリオールは、例えば、前記短鎖ジオールとジカルボン酸との脱水縮合物や前記短鎖ジオールにカプロラクトンを開環付加したものが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。
前記カプロラクトンとしては、例えば、α−カプロラクトン、β−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、ヘプタラクトン、オクタラクトン、ウンデカラクトン、ペンタデカラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。

具体的には、前記ポリエステルポリオールは、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ（ポリテトラメチレンエーテル）アジペートジオール、ポリ（ジエチレングリコール）イソフタレートジオール、ポリカプロラクトンジオール、アジピン酸変性ポリカプロラクトンジオール、テレフタル酸変性ポリカプロラクトンジオール、イソフタル酸変性ポリカプロラクトンジオールなどからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。

本実施形態の前記ポリオールは、ポリエーテルポリオールであることが好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコールであることがより好ましい。

本実施形態のウレタン組成物は、長鎖ポリオールとジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させてなるプレポリマーを主成分とするものであるが、他のポリイソシアネートを少量（例えば、全ポリイソシアネート中の５質量％以下）であれば含んでいてもよい。
なお、ウレタン組成物の必須成分たる前記ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、４，４’−ジフェニルメタンジイソシアネート（４，４’−ＭＤＩ）、２，２’−ジフェニルメタンジイソシアネート（２，２’−ＭＤＩ）、２，４’−ジフェニルメタンジイソシアネート（２，４’−ＭＤＩ）などのモノメリックＭＤＩやポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどのポリメリックＭＤＩからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。
なかでも前記ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、４，４’−ジフェニルメタンジイソシアネート（４，４’−ＭＤＩ）が好ましい。
本実施形態のウレタン組成物は、ジフェニルメタンジイソシアネート以外のポリイソシアネートとして、例えば、２，４−トリレンジイソシアネート（２，４−ＴＤＩ）、２，６−トリレンジイソシアネート（２，６−ＴＤＩ）、１，４−フェニレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート（ＴＯＤＩ）、１，５−ナフタレンジイソシアネート（ＮＤＩ）などの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート（ＨＤＩ）、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート（ＴＭＨＤＩ）、リジンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアナートメチル（ＮＢＤＩ）、キシリレンジイソシアネート（ＸＤＩ）、テトラメチルキシリレンジイソシアネート（ＴＭＸＤＩ）などの脂肪族ポリイソシアネート、トランスシクロヘキサン−１，４−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート（ＩＰＤＩ）、Ｈ６ＸＤＩ（水添ＸＤＩ）、Ｈ１２ＭＤＩ（水添ＭＤＩ）などの脂環式ポリイソシアネート、上記の各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、又は、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートなどからなる群より選ばれる１又は２以上のものを含有することができる。

前記可塑剤としては、従来、ポリウレタン弾性体の硬さ調整などを目的として用いられているものを適宜採用することができる。
該可塑剤は、例えば、脂肪族２塩基酸エステル類、フタル酸エステル類、グリコールエステル類、脂肪酸エステル類、リン酸エステル類等からなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。

脂肪族２塩基酸エステル類としては、例えば、アジピン酸ジオクチルやアジピン酸ジイソデシルなどのアジピン酸エステル系のものからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。
また、脂肪族２塩基酸エステル類としては、コハク酸ジイソデシル、アゼライン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジオクチルなど；グリコールエステル類としてはジエチレングリコールジベンゾエート、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、ペンタエリスリトールエステルなどからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。

フタル酸エステル類としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−２−エチルヘキチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジ−ｎ−オクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレートなどからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。

脂肪酸エステル類としては、例えば、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなどからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。

リン酸エステル類としては、例えば、トリクレジルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクロロエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートなどからなる群より選ばれる１又は２以上のものが挙げられる。

これらのうち本実施形態の可塑剤としては、脂肪族２塩基酸エステル類が好ましく、アジピン酸エステル系のものがより好ましい。
前記可塑剤としては、アジピン酸ジオクチル（ＤＯＡ（アジピン酸ビス２−エチルヘキシル：ＤＥＨＡ））が特に好ましい。

前記ポリオール系架橋剤は、前記短鎖ポリオールを採用することができる。
前記ポリオール系架橋剤は、前記短鎖ポリオールと前記長鎖ポリオールとを組み合わせたものが好ましい。

架橋剤として用いる前記短鎖ポリオールは、短鎖ジオール及びトリメチロールプロパンからなる群より選ばれる１種以上であることが好ましい。
架橋剤として用いる長鎖ポリオールは、ウレタンプレポリマーを構成しているポリオールと同種のものが好ましく、ポリエーテルポリオールが好ましい。
とりわけ長鎖ポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。

本実施形態のウレタン組成物は、前記可塑剤を１０質量％以上の割合で含有することが好ましく、１２．５質量％以上の割合で含有することがより好ましい。
ウレタン組成物は、前記可塑剤を２０質量％未満の割合で含有することが好ましく、１７．５質量％以下の割合で含有することがより好ましく、１５質量％以下の割合で含有することがとりわけ好ましい。

本実施形態のウレタン組成物は、前記ウレタンプレポリマーの含有量を１００質量部とした際に、前記ポリオール系架橋剤たる短鎖ポリオールを１０質量部以上の割合で含有することが好ましい。
本実施形態のウレタン組成物は、前記ウレタンプレポリマーの含有量を１００質量部とした際に、前記ポリオール系架橋剤たる短鎖ポリオールを２０質量部以下の割合で含有することが好ましい。

本実施形態のウレタン組成物は、前記ウレタンプレポリマーの含有量を１００質量部とした際に、前記ポリオール系架橋剤たる長鎖ポリオールを５０質量部以上の割合で含有することが好ましい。
本実施形態のウレタン組成物は、前記ウレタンプレポリマーの含有量を１００質量部とした際に、前記ポリオール系架橋剤たる長鎖ポリオールを７５質量部以下の割合で含有することが好ましい。

本実施形態のウレタン組成物は、含有するイソシアネート基の数をＸ（ｍｏｌ／ｇ）、イソシアネート基の分子量を４２．０２（ｇ／ｍｏｌ）とし、ウレタンプレポリマーを形成している長鎖ポリオールとポリイソシアネートとを含めて当該ウレタン組成物中に含まれる全ての長鎖ポリオール、及び、ポリイソシアネートの合計含有量をＹ（質量％）とした場合に下記式（１）で表される「ＮＣＯ率（Ｚ）」が下記不等式（２）に記載の条件を満足することが好ましい。

Ｚ（ＮＣＯ率：％）＝〔４２．０２ × Ｘ ／ （Ｙ／１００）〕×１００ ・・・（１）
８．５≦ Ｚ ≦１０ ・・・（２）
さらに、「ＮＣＯ率（Ｚ）」は、９．０質量％以上であることがより好ましい。
また、「ＮＣＯ率（Ｚ）」は、９．５質量以下であることがより好ましい。
なお、ウレタン組成物中のイソシアネート基の数（Ｘ）には、ウレタンプレポリマーにおいて長鎖ポリオールの水酸基とともにウレタン結合を形成しているものを含めない。

上記式（１）で表される「ＮＣＯ率」とは、ポリウレタン弾性体中のソフトセグメントを構成する長鎖ポリオールと、ハードセグメントを構成するポリイソシアネートとの合計に占めるハードセグメントの割合を意味する。
このイソシアネート基は、主として、ジフェニルメタンジイソシアネートによってウレタン組成物中に導入されるものであるため、「ＮＣＯ率」はウレタン組成物中におけるジフェニル構造の存在量を表している。
該ウレタン組成物は、剛直なジフェニル構造を所定の割合で含有することにより、ポリウレタン弾性体を強度に優れ且つ表面滑性に優れたものとすることができる。
また、ウレタン組成物は、前記のような割合で可塑剤を含有することにより、ポリウレタン弾性体を表面滑性に優れ且つ適度な柔軟性を有するものとすることができる。

本実施形態のウレタン組成物は、さらに、必要に応じてその他の添加剤を含有させることができ、該添加剤としては、無機フィラー、短繊維などの充填剤、難燃剤、抗菌剤、カップリング剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤などの機能性薬剤、着色剤等が挙げられる。

該ウレタン組成物によって形成されるポリウレタン弾性体とともに歯付ベルトのベルト本体を構成する前記抗張体１２は、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス繊維からなるコードやスチールコードなどの無機コード、ポリエステルコード、ポリケトンコード、ポリアミドコードなどのポリマーコードを採用しうる。

なお、本実施形態の歯付ベルト１は、ポリウレタン弾性体１１，２１の形成に前記のような材料を用いる点以外は一般的な製造方法で作製され得る。
この歯付ベルト１の製法について以下に例示する。
まず、円柱状又は円筒状の内型を用意する。
該内型としては、例えば、外周面に軸方向に延びる溝を有し、該溝が周方向に所定ピッチで設けられ、溝間の突起の先端部に抗張体を支持するための突条を有し、該突条が軸方向に延在しているものを用意する。
次いで、抗張体１２となるコードを内型の外周に螺旋状に巻き付け、該コードが軸方向において所定のピッチで並んだ状態にさせる。
内型の外径よりもベルト本体の厚み分だけ大きな内径を有する円筒状の外型の内部にこのコードを巻き付けた内型をセットする。
そして、前記のようなウレタン組成物を調製し、内型と外型との間に注型し、該ウレタン組成物を加熱状態にさせて架橋剤、長鎖ポリオール、及び、ウレタンプレポリマーを反応させる。
該反応によって型内でポリウレタン弾性体を形成させて筒状の成形体を作製する。
この筒状の成形体を所定幅で切断し、図１に示したような歯付きベルトを作製する。

このようにして作製される歯付ベルトは、歯部やベルト本体が強度と表面滑性に優れたポリウレタン弾性体によって形成されるため、耐摩耗性などにおいても優れる。
なお、本実施形態においては、ウレタン組成物を歯付ベルトの形成材料として利用する態様を例示しているが、本発明に係るウレタン組成物、ポリウレタン弾性体、及び、伝動ベルトの態様については、上記例示に限定されるものではない。
例えば、本発明のウレタン組成物は、歯付ベルト以外の伝動ベルトにも利用でき、伝動ベルト以外の搬送ベルトなどの形成材料としても有用なものである。
また、本発明のウレタン組成物は、ベルト以外においても利用可能である。
本発明のウレタン組成物は、ベルト以外においても、例えば、他の部材と摺接状態で利用される部材などの形成材料として好適なものである。
以上のように本発明は上記例示に何等限定されるものではない。

以下に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例示に限定されるものでもない。

（物性評価１：シート物性）
（ウレタン組成物＃１〜＃７）
ポリテトラメチレンエーテルグリコール（ＰＴＭＧ：分子量約１０００）と４，４’−ジフェニルメタンジイソシアネート（ＭＤＩ）とを反応させ、これらの反応物であるウレタンプレポリマー（イソシアネート基含有量２０．１質量％）（以下「Ａ液」ともいう）を用意した。
このＡ液とは別に、架橋剤（１，４ブタンジオール：分子量約９０及びＰＴＭＧ：分子量約１０００）、可塑剤（アジピン酸ビス２−エチルヘキシル）を含む液（以下「Ｂ液」ともいう）を下記表１に示す配合内容で調製した。

前記Ａ液を脱泡して５０℃に加熱し、同じく５０℃に予熱したＢ液と下記表１に示す割合で混合攪拌してウレタン組成物＃１〜＃７を調製した。
２枚の平板の間に２ｍｍの厚みのスペーサーを挟んだ金型にウレタン組成物を注入した後、１００℃のオーブン中にて加熱し、プレポリマーを架橋させてポリウレタン弾性体からなる厚み２ｍｍの物性評価用シートを得た。
該物性評価用シートに対し、ＪＩＳ Ａ硬度の測定と動摩擦係数の測定とを実施するとともに目視によって可塑剤のブリードアウトを観察した。

なお、動摩擦係数の測定は、以下の要領によって実施した。
まず、前記評価用シートを一辺５ｍｍの正方形にカットした切片を用意した。
この切片を治具に固定し、４８ｒｐｍの一定回転数で回転させたＦＣ材（ねずみ鋳鉄）製の円盤の盤面に当接させた。
なお、切片は、５ｍｍ×５ｍｍの面を前記円盤の盤面に当接させるようにした。
また、治具には、荷重を加え、前記切片と前記盤面との間に圧力が加わるようにした。
そして、固定配置した切片と回転する円盤との間に作用する摩擦力を測定し、該摩擦力から動摩擦係数を計算によって求めた。
なお、各ウレタン組成物＃１〜＃７によって作製した切片によって動摩擦係数を測定する際には、切片に対する荷重、円盤に対する切片固定位置（円盤の周速）、及び、切片と円盤との当接を開始してから摩擦力を測定するまでの時間など諸条件を共通させた。
結果を下記表に示す。
なお、このようにして測定した動摩擦係数は、０．３未満であることが好ましく、０．２７未満であることがより好ましい。
なお、「＃７」の評価用シートの「硬度」と「動摩擦係数」の測定は実施しなかった。

（物性評価２：シート物性及び 液安定性）
前記の「物性評価１」と同じ「プレポリマー（Ａ液）」を用い、「Ｂ液」の組成比、及び、「Ａ液」と「Ｂ液」との配合割合を変更して可塑剤添加量が１０〜２０質量％でＮＣＯ率が７．５〜１０質量％のウレタン組成物を調製し、「物性評価１」と同様に物性評価用シートを作製して「硬度」、「動摩擦係数」、及び、「ブリードアウト」について評価を行った。
強度と表面滑性とに優れたポリウレタン弾性体を効率良く作製する上において『Ａ液』や『Ｂ液』は保存安定性に優れていることが好ましい。
そこで、「液の安定性」という本発明を実施する上で好ましい条件についても評価を実施した。
即ち、「Ｂ液」を５０℃に加熱し、液の分離状況を目視にて確認した。
これらの結果を、下記表２〜５に示す。
なお、表中の「−」は、評価を実施していないことを表している。

（ベルト評価：ベルト耐久試験）
歯付きベルトの歯部に対応した溝部を備え、外周面に軸方向に延びる溝部を備えた円筒状の内金型であって、且つ、溝部の間のそれぞれの突起部の表面に軸方向に延びる突条を備えた内金型を用意した。
接着処理を施したガラス繊維からなるコードを該内金型の外周面に巻き付けた。
該コードは、上記突条に支えさせながら内金型の外周面に沿って巻き付けた。
この内金型を円筒状の外金型内に挿入し、これら内金型と外金型とを５０℃に予熱した。
次に、表１のウレタン組成物＃１を調製し、上記内金型と外金型との間の空間に注入した後、１２０℃のオーブン中にて９０分間加熱し、プレポリマーを架橋して硬化させた。
得られた円筒状の成形体を金型から取り外し、３ｍｍ幅に裁断し、歯付ベルトを得た。
この歯付ベルトを歯数３２（３２Ｔ）の駆動プーリーと従動プーリーの間に掛けわたし、従動プーリーに２．４５Ｎの張力を加え、駆動プーリーを２３４５ｒｐｍにて駆動し、２軸耐久試験を行った（詳細条件は表６の通り）。
その結果、耐久試験５００時間経過後においても特に不具合は無く、評価に供した歯付ベルトが表面滑性に優れたベルトであることがわかった。

以上のように、本発明のウレタン組成物によれば、強度と表面滑性とに優れたポリウレタン弾性体を得ることができ、歯付ベルトなどの伝動ベルトの形成材料として好適なポリウレタン弾性体を提供し得ることがわかる。

１ 歯付コンベヤ
１０ ベルト本体
１１ ポリウレタン弾性体
１２ 抗張体
２０ 歯部
２１ ポリウレタン弾性体

Claims (7)

1. ポリオールとポリイソシアネートとを含むウレタン組成物であって、
   分子量３００以上の長鎖ポリオールとジフェニルメタンジイソシアネートとの反応物であるウレタンプレポリマーを主成分とし、可塑剤とポリオール系架橋剤とをさらに含み、
   含有する分子量３００以上の長鎖ポリオールとポリイソシアネートとの合計質量に占めるイソシアネート基の質量割合が８．５質量％以上１０質量％以下であるウレタン組成物。
2. 前記可塑剤の含有量が１０質量％以上２０質量％未満であり、該可塑剤としてアジピン酸エステル系可塑剤を含む請求項１記載のウレタン組成物。
3. 前記ポリオール系架橋剤が、分子量３００未満の短鎖ジオール及びトリメチロールプロパンからなる群より選ばれる１種以上を含む請求項１又は２に記載のウレタン組成物。
4. 請求項１乃至３の何れか１項に記載のウレタン組成物によって形成されたポリウレタン弾性体。
5. ＪＩＳ Ａ硬度が８０度以上である請求項４記載のポリウレタン弾性体。
6. プーリーに巻き掛けられて用いられ、少なくとも前記プーリーと接する面が請求項４又５記載のポリウレタン弾性体によって形成されている伝動ベルト。
7. 帯状のベルト本体の少なくとも片面に複数の歯部を備えた歯付ベルトとして構成され、前記歯部が前記ポリウレタン弾性体によって形成されている請求項６記載の伝動ベルト。

Images