JP2005314502A - 熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物及び該組成物を用いた熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の製造方法 - Google Patents

熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物及び該組成物を用いた熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来公知の熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物と同等の復元性(圧縮永久歪み、引張永久歪み)を有し、かつ、従来公知の成型物よりも高温時の機械的強度が高く、且つ、優れた耐摩耗性を有することを可能にする、熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物、及び、熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)、水酸基末端硬化剤(B)、特定の触媒(C)からなる、特定のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)の混合比(官能基比)からなる熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いることにより、上記の課題を解決する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物、及び、該組成物を用いた熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の製造方法に関する。
グリーン強度が要求される産業機器の部品として、熱硬化ポリウレタンエラストマーの成型物が好適に使用されている。
熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物は、イソシアネート成分からなる主剤と、水酸基含有成分からなる硬化剤とを、注型機のミキシングヘッドで混合し、得られた混合液を型内に注入し、この型内で当該混合液を加熱硬化(ウレタン化反応)させることにより製造することができる。
ここに、熱硬化ポリウレタンエラストマーを成型するための形成性組成物をなす成分として、イソシアネート成分として、ジフェニルメタジイソジアネート(以下「MDI」と略記)と水酸基含有ポリオールとを反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーが好適に用いられ、水酸基末端硬化剤成分としては、1,4−ブタンジオールとトリメチロールプロパンとの混合物が好適に用いられている。
イソシアネート成分からなる主剤と、活性水素成分からなる硬化剤、およびウレタン化触媒を混合する際の官能基比については、水酸基/イソシアネート基=0.8〜1.0(モル比)の混合比率で成形する方法が一般的に採用されている。
然るに、上記のようにして得られる成型物は、常温下(5〜30℃)では十分な機械的強度(引張強度、引裂強度)及び耐摩耗性を有するものの、高温下(40〜80℃)では十分な機械的強度(引張強度、引裂強度、伸張率)及び耐摩耗性を有するものではないことから、該成型物を熱が伴う産業用機器用部品として使用した場合、比較的短期間で、当該部品の破断、亀裂、摩耗などによる欠損が発生し、当該部品の交換が頻繁に必要となる。さらに、近年に於ける産業機器の高速処理化により、当該部品自体が熱を持つようになり、この熱により機械的強度が低下し、当該部品の破断、亀裂、摩耗などによる欠損が多発していることから、従来公知の熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物では対応できなくなっているのが現状である。
成型物における高温時(40〜80℃)の機械的強度(引張強度、引裂強度、伸張率)の不足を補うために、硬化剤中のトリメチロールプロパンを占める割合を少なくすることにより、当該成型物の架橋密度を低く設定することも考えられる。しかしながら、成型物の架橋密度を低くすると、産業機器の構成部品に要求される復元性(圧縮永久歪み、引張永久歪み)を具備することができず、成型物を構成部品として搭載するためには、産業機器の設計変更が必要となり、実用面において現実的ではない。
これらの一連の問題、特に前述のような高温の影響を解決する手段として、例えば、硬化剤としてアルキル置換されたトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では確かに高温による影響については向上するものの、例えば摩耗等の面で、十分な性能を有するまでには至らず、また、このような特殊な化合物を用いなければならない等の問題がある。
特開2002−265550号公報(第2〜4頁)
本発明は、前述のような事情に基いてなされたものである。
本発明の第1の目的は、従来公知の熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物と同等の復元性(圧縮永久歪み、引張永久歪み)を有し、かつ、従来公知の成型物よりも高温時の機械的強度が高く、且つ、優れた耐摩耗性を有することを可能にする熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物、及び熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、水酸基含有化合物を含有する硬化剤および、特定の触媒作用による反応により、上記のような優れた特性を有することを可能にする熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物、及び熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を提供することにある。
さらに、本発明の第3の目的は、上記のような優れた特性を有する成型物を構成する熱硬化ポリウレタンエラストマーを成型することのできる2液注型用の熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)の混合比(官能基比)を特定し、過剰なイソシアネート基を用いてアロファネート架橋構造を成型物内に形成させ、また、必要に応じ、過剰なイソシアネート基を用いて円滑にアロファネート架橋構造を形成させるために特定の触媒を用いることにより、前述の一連の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の(1)〜(4)のとおりである。
(1) イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)、水酸基末端硬化剤(B)、触媒(C)からなる熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物において、触媒(C)が、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール及び/又はN,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミンであり、且つ、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)の混合比(官能基比)が、水酸基/イソシアネート基=0.3〜0.7(モル比)であることを特徴とする、熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
(2) イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)として、少なくともジフェニルメタンジイソシアネート(A1)或いはトリレンジイソシアネート(A2)と、数平均分子量250〜4500の水酸基含有ポリオール(B1)とを反応させて得られるイソアネート基末端ウレタンプレポリマーを用いることを特徴とする、(1)に記載の熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
(3) 水酸基末端硬化剤(B)として、数平均分子量300以下の短鎖ジオール(B2)及び/又は数平均分子量250〜4500の水酸基含有ポリオール(B1)を用いることを特徴とする、(1)または(2)のいずれかに記載の熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を製造する方法において、成形型内で硬化処理を行う工程を含むことを特徴とする、熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の製造方法。
本発明のような形成性組成物、即ち、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)に於けるイソシアネート基の大過剰な配合比率による水酸基末端硬化剤(B)、触媒(C)からなる形成性組成物により、過剰分のイソシアネート基について特有の架橋反応(アロファネート化)を利用して、熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物中に架橋構造を持たせることが可能である。このため、得られる熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物は、硬化剤に於けるトリメチロールプロパンの占める割合を少なくしても、十分な架橋密度を保持することが可能となり、従来公知の熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物と同等の復元性(圧縮永久歪み、引張永久歪み)を有するばかりではなく、更に機械的強度(引張強度、引裂強度、伸張率)を向上させ、さらに、優れた耐摩耗性をも有することが可能である。
また、アロファネート結合を熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物中に持たせることにより、熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の粘弾性(tanδ)を高温域側にブロード化する事が可能となり、この結果、温度依存性を小さくすることが可能である。
このように、温度依存性の小さい熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を得ることが可能になることで、熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物において従来から問題視されていた高温時の耐久性を大幅に向上させることが可能になり、しいては、高速化される産業機械の部品として充分に耐えうる熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を得ることができる。
本発明は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)、水酸基末端硬化剤(B)、触媒(C)からなる熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物において、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)の混合比(官能基比)を、水酸基/イソシアネート基=0.3〜0.7(モル比)とする点に特徴がある。このようにイソシアネート基を過剰に用いることにより、本発明の意図するアロファネート架橋を形成させることが可能になる。この水酸基/イソシアネート基(モル比)が0.3未満の場合、即ち、イソシアネート基が必要以上に過剰になり過ぎると、得られる熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物が過度に剛直化したものとなり、伸張率が低下するので好ましくない。また、この水酸基/イソシアネート基(モル比)が0.7を越える場合、即ち、イソシアネート基が過小になり過ぎると、本発明の意図するアロファネート架橋の形成がなされなくなり、得られる熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物における耐摩耗性が劣ってしまう結果となり好ましくない。なお、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)の混合比(官能基比)は、水酸基/イソシアネート基=0.3〜0.7(モル比)が好ましく、中でも、引張強度や引裂強度に特に優れる熱硬化ポリウレタンエラストマーを得ることができるとの観点から、水酸基/イソシアネート基=0.4〜0.6(モル比)であることがより好ましい。
本発明に用いられるイソシアネート基末端プレポリマー(A)は、少なくともMDI(A1)或いはTDI(A2)と、数平均分子量250〜4500の水酸基含有ポリオール(B1)との反応により得られるものであることが好ましい。なお、MDI(A1)とTDI(A2)を併用すること、また、MDIやTDI以外のイソシアネート基を有する成分を併用することも可能である。
MDI(A1)としては、各種異性体、即ち、4,4′−MDI、2,4′−MDI、2,2′−MDI、これらの任意の混合物が挙げられる。また、液状MDI(カルボジイミド化MDI、ウレトンイミン化MDI等)も用いることができる。本発明においては、引張強度や特に優れる熱硬化ポリウレタンエラストマーを得ることができるとの観点から、MDI(A1)としては、4,4′−MDIを用いるのが好ましい。
TDI(A2)としては、各種異性体、即ち、2,4−TDI、2,6−TDI、これらの任意の混合物が挙げられる。本発明においては、反応制御の容易さという観点から、TDI(A2)としては、2,4−TDIを用いるのが好ましい。
数平均分子量250〜4500の水酸基含有ポリオール(B1)としては、ポリアルキレンエーテルグリコール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等、一分子中に水酸基を2個有するポリオールが挙げられる。なお、これらは単独で用いても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール及びポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(以下、PTMGと略す)、また、エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−BD、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール等の短鎖ジオールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環式エーテルを開環重合して製造されるポリエーテル、さらには、これらの2種以上の混合物が挙げられる。
ポリエステルジオールとしては、ポリ(エチレンアジペート)ジオール、ポリ(プロピレンアジペート)ジオール、ポリ(エチレン−プロピレンアジペート)ジオール、ポリ(ブチレンアジペート)ジオール、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオール等、及びエチレングリコール、プロピレングリコール、アジピン酸を重縮合させることによって製造されるコポリエステルジオール、例えばポリ(テトラメチレン−エチレンアジペート)ジオール、ポリ(1,4−ブチレン−プロピレンアジペート)ジオール、及びポリ(1,4−ブチレン−エチレン−プロピレンアジペート)ジオールが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、カプロラクトン及び/又はジカルボン酸、例えばコハク酸、マロン酸、ピメリン酸、セバシン酸及びスベリン酸と、ジオール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−BD、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等との重縮合によって製造されるものもポリエステルジオールとして挙げることができる。なお、これらのポリエステルジオールは、単一品、2種以上の混合品のいずれも使用可能である。
ポリカーボネートジオールとしては、前述の短鎖ジオールと、ジフェニルカーボネート、ジジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の低分子カーボネートからの縮重合によって得られるものが挙げられる。なお、これらのポリカーボネートジオールは、単一品、2種以上の混合品のいずれも使用可能である。
本発明に用いられるイソシアネート基末端プレポリマー(A)は、公知の反応装置を用い、反応温度:50〜100℃、反応時間:1〜5時間という反応条件により製造することができる。
なお、本発明に用いられるイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は、3.0〜20.0質量%であることが好ましく、中でも、硬度や引張強度に特に優れる熱硬化ポリウレタンエラストマーを得ることができるとの観点から、6.0〜15.0質量%であることがより好ましい。NCO含量が3.0%より低い場合には、主にプレポリマーの粘度が高くなり、成型(注型)時にポリウレタン樹脂の流れ性が悪化し、また、硬化時に於いて本発明が意図する十分なアロファネート架橋構造を得ることができないため好ましくない。一方、20.0%より高い場合は、硬化時にアロファネート架橋構造が多くなり過ぎる結果となり、得られる成型物の伸長率が大幅に小さくなり、また、弾力性が乏しくなる等の問題が起こるため、好ましくない。結果として、イソシアネート基含有量が3.0質量%未満、20.0質量%超、いずれの場合も本発明に於いて得られる成型物の意図する用途、例えば産業機器部品用として適さないものとなってしまう。
本発明に用いられる水酸基末端硬化剤(B)としては、前述の数平均分子量250〜4500の水酸基含有ポリオール(B1)や、一部前述した、数平均分子量300以下の短鎖ジオール(B2)といったジオール類を挙げることができる。本発明に於いては、これらのジオール類を単独で又は2種以上混合して用いることができる。
数平均分子量300以下の短鎖ジオール(B2)はいわゆる鎖延長剤として位置付けることができ、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。本発明においては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールを用いるのが好ましく、中でも引張強度に特に優れる熱硬化ポリウレタンエラストマーを得ることができるとの観点から、1,4−ブタンジオールを選択して用いるのがより好ましい。
また、本発明に用いられる水酸基末端硬化剤(B)として、さらに、数平均分子量500以下の短鎖トリオール(B3)を併用するのが好ましい。
この場合、水酸基末端硬化剤(B)として、数平均分子量300以下の短鎖ジオール(B2)と数平均分子量500以下の短鎖トリオール(B3)を併用する場合は、本発明の意図する熱硬化ポリウレタンエラストマーとしてより適切な架橋密度が得られるとの観点から、水酸基末端硬化剤(B)に於ける短鎖ジオール/短鎖トリオールの質量比率は70/30〜100/0の範囲とすることがより好ましい。
また、この場合、水酸基末端硬化剤(B)として、数平均分子量250〜4500の水酸基含有ポリオール(B1)、数平均分子量300以下の短鎖ジオール(B2)、及び数平均分子量500以下の短鎖トリオール(B3)を併用する場合は、本発明の意図する熱硬化ポリウレタンエラストマーを得るに際しては、機械物性等の性能を確保するためには組成物中においてある程度の短鎖ポリオール成分が必要であるとの観点から、短鎖ポリオール(短鎖ジオール(B2)と短鎖トリオール(B3)の総量)/数平均分子量250〜4500の水酸基含有ポリオール(B1)の質量比率は100/0〜5/95の範囲とすることがより好ましい。
なお、数平均分子量500以下の短鎖トリオール(B3)としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等が挙げられる。本発明に於いては、引張強度に特に優れる熱硬化ポリウレタンエラストマーを得ることができるとの観点から、トリメチロールプロパンを用いるのが好ましい。
本発明に用いられる触媒(C)としては、アロファネート架橋反応を促進させるとの観点から、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール(C1)及び/又はN,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C2)触媒が選択して用いられる。
この場合、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール(C1)及び/又はN,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C2)の使用量は、本発明に於ける形成性組成物全体、即ち、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)、水酸基末端硬化剤(B)、及び必要に応じ用いられる触媒(C)の合計質量に対して、0.001〜0.5質量%の範囲で用いられるのが好ましく、中でも、反応制御の容易さという観点から、0.005〜0.10質量%の範囲で用いられるのがより好ましい。N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C1)及び/又はN,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C2)の添加量が0.001質量%未満の場合、本発明の意図するアロファネート化反応が十分に行われず、得られる成型物が硬化不足となる場合がある。また、0.5質量%を超える場合、アロファネート化反応は十分に行えるものの、硬化反応が過度に速くなり、また、増粘が急速となり、成形型に於ける樹脂の流れ性が悪くなる場合がある。
N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール(C1)については、市販されている商品名として「TOYOCAT−RX3(東ソー(株)製)」や「カオーライザーNo.26(花王(株)製)」等が挙げられる。N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C2)については、市販されている商品名として「DABCO−T(三共エアプロダクツ(株)製)」や「TOYOCAT−RX5(東ソー(株)製)」等が挙げられる。この他、特に化合物や組成物は限定しないが、アロファネート化率を高めることが可能な触媒を用いても良い。これらの触媒は、主にポリウレタンフォーム形成用触媒として使用されているが、本発明では、無発泡の(注型)熱硬化ポリウレタンエラストマー用触媒として使用し、特にアロファネート架橋反応を利用し、本発明に於ける成型物中にアロファネート架橋構造を含ませるために使用される。
なお、本発明に於ける形成性組成物においては、必要に応じて、トリエチレンジアミン等のアミン触媒、1−イソブチル−2−メチルイミダーゾル等のイミダゾール系触媒、ジオクチルチンジラウレート等の金属触媒等のウレタン化反応を促進する触媒として公知の化合物又は組成物を使用しても良い。この場合、形成性組成物への導入形態としては、前述のN,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C1)及び/又はN,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C2)と併用することになるが、併用する量としては、触媒(C)の全体質量に対して50質量%以下が好ましい。
本発明に於いては、さらに必要に応じて、添加剤として、酸化防止剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、反応調節剤等を形成性組成物に導入・使用することができる。
本発明に於いては、これまでに述べた本発明の熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて、工程として成形型内に於いて硬化処理(具体的には、加熱により硬化を促進する処理)を行い、アロファネート架橋構造を有する熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を製造する。
この場合、本発明に於ける形成性組成物を用いて、本発明に於ける熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を製造する方法としては、以下のような工程を含む方法により製造されるのが好ましい。
工程(1):
イソシアネート基末端プレポリマー(A)、水酸基末端硬化剤(B)、必要に応じてさらに触媒(C)を均一に混合して形成性組成物を調製する。但し、触媒(C)については予め硬化剤(B)に添加し、残りの成分であるイソシアネート基末端プレポリマー(A)と均一に混合して形成性組成物を調製しても良い。なお、形成性組成物を調製後、巻き込んだ空気を抜く工程を含むのが好ましい。
工程(2):
プレヒートした成形型に該形成性組成物を混合後直ちに成形型内に注入し(注型)、該形成性組成物を成形型内で硬化処理を行う(具体的には、加熱して硬化反応させる)。この場合、成形型の温度はウレタン化反応及びアロファネート化反応を容易に且つ確実に行わせる条件であるという観点から、80〜170℃の範囲であることが好ましい。
工程(3):
形成性組成物が硬化した後、硬化物(即ち、熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物)を型から成形型内から取り出す(脱型)。なお、本発明に於いては、前記の注型から脱型までに要する時間としては、必要に応じて用いる触媒量や成形型に於けるプレヒート温度にもよるが、本発明の意図する熱硬化ポリウレタンエラストマーの生産性という観点から、1〜60分の範囲であることが好ましい。
また、本発明に於ける形成性組成物を用いて、本発明に於ける熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を製造する方法としては、以下のような工程を含む方法により製造されるのも好ましい。
工程(1’):
イソシアネート基末端プレポリマー(A)、水酸基末端硬化剤(B)、必要に応じてさらに触媒(C)を均一に混合して形成性組成物を調製する。但し、触媒(C)については予め硬化剤(B)に添加し、残りの成分であるイソシアネート基末端プレポリマー(A)と均一に混合して形成性組成物を調製しても良い。なお、形成性組成物を調製後、巻き込んだ空気を抜く工程を含むのが好ましい。
工程(2’):
前記の熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物を混合後直ちに回転ドラムの内部に注入(注型)し、回転ドラムを高速で回転させながら該形成性組成物を回転ドラムで硬化処理を行う。この場合、回転ドラムの内周部壁面の温度はウレタン化反応及びアロファネート化反応を容易に且つ確実に行わせる条件であるという観点から、80〜170℃の範囲であることが好ましい。
工程(3’):
得られるシート状の熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を回転ドラムの内周部から剥離する(脱型)。なお、本発明に於いては、前記の注型から脱型までに要する時間としては、必要に応じて用いる触媒量や回転ドラムの内周部壁面の温度にもよるが、本発明の意図する熱硬化ポリウレタンエラストマーの生産性という観点から、1〜60分の範囲であることが好ましい。
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの例になんら限定して解釈されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
(イソシアネート基末端プレポリマー(A)の合成)
合成例1:
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、表1に示す処方に従って、MDI(4,4´−MDI:商品名「ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業(株)製)」)(A1):29.7部、PEA−2000(アジピン酸とエチレングリコールの重縮合反応により得られる数平均分子量2000のポリエステルジオール)(B1):70.3部を仕込み、75℃で3時間混合撹拌しながら反応させて、イソシアネート基末端プレポリマー(A−1)を得た。該プレポリマーのイソシアネート基含有量は7.0質量%であった。
合成例2:
表1に示す処方に従って、MDI(A1):50.9部、PEA−2000(B1):49.1部を仕込み、合成例1と同じ装置及び反応条件により、イソシアネート基末端プレポリマー(A−2)を得た。該プレポリマーのイソシアネート基含有量は15.0質量%であった。
合成例3:
表1に示す処方に従って、MDI(A1):36.2部、PBA−2500(アジピン酸と1,4−ブタンジオールの重縮合反応により得られる数平均分子量2500のポリエステルジオール)(B1):63.8部を仕込み、合成例1と同じ装置及び反応条件により、イソシアネート基末端プレポリマー(A−3)を得た。該プレポリマーのイソシアネート基含有量は10.0質量%であった。
合成例4:
表1に示す処方に従って、TDI(2,4−TDI:商品名「コロネートT−100(日本ポリウレタン工業(株)製)」)(A2):25.5部、PTG−1000(数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール:商品名「PTG−1000SN(保土谷化学工業(株)製)」)(B1):74.5部を仕込み、合成例1と同じ装置及び反応条件により、イソシアネート基末端プレポリマー(A−4)を得た。該プレポリマーのイソシアネート基含有量は6.0質量%であった。
合成例5:
表1に示す処方に従って、MDI(A1):58.9部、PEA−2000(B1):41.1部を仕込み、合成例1と同じ装置及び反応条件により、イソシアネート基末端プレポリマー(A−5)を得た。該プレポリマーのイソシアネート基含有量は18.0質量%であった。
(水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物の調製)
調製例1:
表1に示す処方に従って、1,4−BD(1,4−ブタンジオール)(B2):85.0部、TMP(トリメチロールプロパン)(B3):15.0部とを均一混合して、これを水酸基末端硬化剤(B)とし、さらに、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール(商品名「TOYOCAT−RX3(東ソー(株)製)」(C1)0.50部を添加して均一混合し、水酸基価1245KOHmg/gである水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物(B−1)を調製した。
調製例2:
表1に示す処方に従って、1,4−BD(B2):9.0部、TMP(B3):1.0部、PEA−2000(B1)90.0部とを均一混合して、これを水酸基末端硬化剤(B)とし、さらに、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(商品名「TOYOCAT−RX5(東ソー(株)製)」(C2)0.10部を添加して均一混合し、水酸基価175KOHmg/gである水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物(B−2)を調製した。
調製例3:
表1に示す処方に従って、1,4−BD(B2):10.0部、PBA−1000(アジピン酸と1,4−ブタンジオールの重縮合反応により得られる数平均分子量1000のポリエステルジオール)(B1)90.0部とを均一混合して、これを水酸基末端硬化剤(B)とし、さらに、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C2)0.10部を添加して均一混合し、水酸基価226KOHmg/gである水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物(B−3)を調製した。
調製例4:
表1に示す処方に従って、1,4−BD(B2):90.0部、TMP(B3):10.0部とを均一混合して、これを水酸基末端硬化剤(B)とし、さらに、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C2)0.50部を添加して均一混合し、水酸基価1245KOHmg/gである水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物(B−4)を調製した。
調製例5:
表1に示す処方に従って、1,4−BD(B2):60.0部、TMP(B3):40.0部とを均一混合して、これを水酸基末端硬化剤(B)とし、さらに、TEDA(トリエチレンジアミン)(C):0.20部を添加して均一混合し、水酸基価1245KOHmg/gである水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物(B−5)を調製した。
調製例6:
表1に示す処方に従って、1,4−BD(B2):11.0部、TMP(B3):2.0部、PEA−2000(B1)87.0部とを均一混合して、これを水酸基末端硬化剤(B)とし、さらに、TEDA(C):0.03部を添加して均一混合し、水酸基価211KOHmg/gである水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物(B−6)を調製した。
調製例7:
表1に示す処方に従って、1,4−BD(B2):65.0部、TMP(B3):35.0部とを均一混合して、これを水酸基末端硬化剤(B)とし、さらに、TEDA(C):0.50部を添加して均一混合し、水酸基価1245KOHmg/gである水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物(B−7)を調製した。
調製例8:
表1に示す処方に従って、1,4−BD(B2):100.0部をもって水酸基末端硬化剤(B)とし、さらに、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C2):0.10部を添加して均一混合し、水酸基価1245KOHmg/gである水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物(B−8)を調製した。
調製例9:
表1に示す処方に従って、1,4−BD(B2):70.0部、TMP(B3):30.0部とを均一混合して、これを水酸基末端硬化剤(B)とし、さらに、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C2)0.10部を添加して均一混合し、水酸基価1245KOHmg/gである水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物(B−9)を調製した。
調製例10:
表1に示す処方に従って、1,4−BD(B2):60.0部、TMP(B3):40.0部とを均一混合して、これを水酸基末端硬化剤(B)とし、さらに、TEDA(C):0.30部を添加して均一混合し、水酸基価1245KOHmg/gである水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物(B−10)を調製した。
(実施例1〜4、比較例1〜6)
表1に示す処方(配合比)に従って、イソシアネート基末端プレポリマー(A)からなる主剤と、水酸基末端硬化剤(B)と触媒(C)からなる混合物を、2液混合ポリウレタン注型機を用いて混合し、本発明の熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物を調製した。該組成物を直ちに、表1にキュア条件として示されている加熱温度に予熱されている2mm厚の平板シート形成用の金型に注入し、表1に記載のキュア条件(加熱温度及び硬化時間)にて加熱硬化させた後に金型から取り出し、本発明の熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を得た。処方並びに加熱温度及び硬化時間について、表1に示す。
Figure 2005314502
(比較例の説明)
比較例1〜3及び比較例5は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)の混合比(官能基比)が、水酸基/イソシアネート基=0.7(モル比)を越えた場合の比較例、比較例4は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)の混合比(官能基比)が、水酸基/イソシアネート基=0.3(モル比)未満となった場合の比較例である。
また、比較例1〜3及び比較例6は、触媒(C)として、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノールやN,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン以外のものとして、トリエチレンジアミンを用いた場合の比較例である。
(成型物の評価)
実施例1〜4及び比較例1〜5により得られた熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の各々について、硬度(JIS−A型硬さ計による)、引張強度、引裂強度、伸張率について、JIS K7312に準じて測定を行った。なお、各々の測定は、高温環境下での物性確認のため、測定環境を温度23℃の常温環境下、及び、温度60℃の高温環境下の両方で行った。これらの結果を表2に示す。
また、実施例1〜4及び比較例1〜5により得られた熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の各々について、圧縮永久歪みについて、JIS K7312に準じて測定を行った。なお、圧縮永久歪みは、70℃、圧縮率25%、圧縮時間22時間とした。これらの結果を表2に示す。
さらに、実施例1〜4及び比較例1〜5により得られた熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の各々について、フリクトロン摩擦摩耗試験機(株式会社オリエンテック製)を用いて、試験片温度が約60℃になるように、加圧加重を2.0kgf、滑り速度を0.5m/secに調整し、60分間試験後の摩耗重量の測定を行った。なお、この測定は、温度23℃の恒温環境下で行った。これらの結果を表2に示す。
Figure 2005314502
加えて、実施例1〜3および比較例1、比較例5により得られた熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の各々について、温度依存性の比較のため、粘弾性測定(tanδ)をオリエンテック製DDV−25FPにて測定を行った。この測定は、加振周波数=11Hz、加振振幅=25μm、最小振幅=0.0gf、プリロード=50.0gfの条件下で実施した。これらの結果を図1に示す。
本発明に係る成型物は、グリーン強度が要求される種々の産業機器の構成部品として好適に使用することができ、本発明に係る成型品を使用することにより、当該の耐久性を格段に向上させることができる。
本発明に係る成型物は、従来公知の成型物では対応することのできなかった、低摩擦の構成部品として産業機器に搭載させることができ、高速処理を行う産業機器(環境変化、特に高温時の物性変化が少ないウレタンエラストマーを使用することが必要とされる産業機器)に対し新たな性能を付与することができ、産業機器の高速処理化に寄与することができる。
熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の粘弾性測定結果を図示している。

Claims (4)

  1. イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)、水酸基末端硬化剤(B)、触媒(C)からなる熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物において、触媒(C)が、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール及び/又はN,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミンであり、且つ、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)の混合比(官能基比)が、水酸基/イソシアネート基=0.3〜0.7(モル比)であることを特徴とする、熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
  2. イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)として、少なくともジフェニルメタンジイソシアネート(A1)或いはトリレンジイソシアネート(A2)と、数平均分子量250〜4500の水酸基含有ポリオール(B1)とを反応させて得られるイソアネート基末端ウレタンプレポリマーを用いることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
  3. 水酸基末端硬化剤(B)として、数平均分子量300以下の短鎖ジオール(B2)及び/又は数平均分子量250〜4500の水酸基含有ポリオール(B1)を用いることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物を製造する方法において、成形型内で硬化処理を行う工程を含むことを特徴とする、熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物の製造方法。
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