JP6092103B2 - 液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セル - Google Patents

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Description

本発明は、熱によって硬化可能である液晶滴下工法用液晶シール剤に関する。より詳細には、熱による良好な硬化性を有し、かつハンドリング性や保存安定性、接着強度等の硬化物特性にも優れる液晶滴下工法用液晶シール剤、並びにその製造方法及びその硬化物に関する。
近年の液晶表示セルの大型化に伴い、液晶表示セルの製造方法として、より量産性の高い、いわゆる液晶滴下工法が提案されている(特許文献1、2)。具体的には、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることにより液晶が封止される液晶表示セルの製造方法である。
しかし、液晶滴下工法は、未硬化の状態の液晶シール剤が液晶に接触するため、その際に液晶シール剤の成分が液晶に溶解(溶出)して液晶の抵抗値を低下させ、シール近傍の表示不良が発生するという問題点がある。
この課題を解決するため、現在は液晶滴下工法用の液晶シール剤として光熱併用型のものが用いられ、実用化されている(特許文献3、4)。この液晶シール剤を使用した液晶滴下工法では、基板に挟まれた液晶シール剤に光を照射して一次硬化させた後、加熱して二次硬化させることを特徴とする。この方法によれば、未硬化の液晶シール剤を光によって速やかに硬化でき、液晶シール剤成分の液晶への溶解(溶出)を抑えることが可能である。さらに、光硬化のみでは光硬化時の硬化収縮等による接着強度不足という問題も発生するが、光熱併用型であれば加熱による二次硬化によって、そういった問題も解消できるという利点を有する。
しかし、近年では、液晶表示素子の小型化に伴い、液晶表示素子のアレイ基板のメタル配線部分やカラーフィルター基板のブラックマトリックス部分により液晶シール剤に光が当たらない遮光部が生じ、シール近傍の表示不良の問題が以前よりも深刻なものとなっている。すなわち、遮光部の存在によって上記光による一次硬化が不十分となり、液晶シール剤中に未硬化成分が多量に残存する。この状態で熱による二次硬化工程に進んだ場合、当該未硬化成分の液晶への溶解は、熱によって促進されてしまうという結果をもたらし、シール近傍の表示不良を引き起こす。
この課題を解決するため、熱ラジカル発生剤を使用することにより、熱による硬化速度を上げ、成分溶出を低減させるといった提案がなされ、また更には、この技術を応用し、熱のみによって液晶滴下工法を実現させるといった提案もなされている(特許文献5、6)。しかし、現在では、熱ラジカル発生剤として有機過酸化物又はアゾ化合物が使用されており、これらは加熱によってラジカル発生する際に、窒素や酸素等を発生させ、硬化物中に気泡を生じ、接着強度の低下など、硬化物特性を低下させるという課題を有する。
また、上記手法は、その反応の速さからハンドリング性の低さが問題とされる。ハンドリング性とは、液晶シール剤の使用のし易さを意味する。例えば液晶シール剤の脱泡工程やスペーサー剤混合工程など、真空下に置かれたり、熱がかかったりする工程において、液晶シール剤が硬化、又はゲル化してしまうという現象があり、本願では、この現象の生じ易さをハンドリング性と定義する。したがって、ゲル化を起こし難いものをハンドリング性の良い液晶シール剤とし、ゲル化を起こし易いものをハンドリング性の悪い液晶シール剤とする。
更に、上記ハンドリング性とは別に、保存安定性も液晶シール剤の重要な特性である。これは、室温下での粘度増加によって、シール塗布が困難となる性質であり、熱ラジカル発生剤を使用した液晶シール剤は、この保存安定性にも劣る。この課題を解決する方法が、特許文献7において提案されているが、上記全ての課題を解決するものとして、十分ではない。
以上述べたように、液晶滴下工法用の液晶シール剤の開発は非常に精力的に行われているにもかかわらず、優れた熱反応性や遮光部硬化性を有しながら、ハンドリング性、保存安定性等を両立し、更には硬化物特性にも優れるといった液晶シール剤は未だ実現していない。
特開昭63−179323号公報 特開平10−239694号公報 特許第3583326号公報 特開2004−61925号公報 特開2004−126211号公報 特開2009−8754号公報 特開2009−42409号公報
本発明は、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、液晶シール剤部を加熱のみ、又は光熱併用によって硬化することにより液晶表示セルを製造する液晶滴下工法に用いられる液晶シール剤に関するものであり、熱による反応が速いため、工程を通して液晶に対して極めて汚染性が低く、かつ脱泡等のハンドリング性に優れ、その他、基板への塗布性、貼り合わせ性、接着強度等に優れているため、いかなる設計の液晶パネルにも適応可能である液晶シール剤を提案するものである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の熱ラジカル重合開始剤とラジカル重合防止剤とを併用する液晶シール剤が上記熱反応性とハンドリング性とを両立し、その結果、液晶汚染性も抑えることが可能であり、更には接着強度等の硬化物特性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、次の(1)〜(12)に関するものである。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の一方又は両方を意味する。同様に、本明細書中、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の一方又は両方を意味する。
(1)
(a)分子内に酸素−酸素結合(−O−O−)及び窒素−窒素結合(−N=N−)を有さない熱ラジカル重合開始剤、(b)ラジカル重合防止剤、及び(c)(メタ)アクリロイル基を有する硬化性樹脂を含有することを特徴とする液晶滴下工法用液晶シール剤。
(2)
上記成分(a)が下記式(1)で表される化合物である上記(1)に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[式(1)中、Y、Yは各々独立して水素原子、フェニル基、又は珪素原子を示し、R〜Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルキル基を示し、X〜Xは各々独立して水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、又はハロゲン原子を示す。但し、Y又はYにそれぞれ結合するR〜R又はR〜Rは、Y又はYが水素原子の場合は存在しない。]
(3)
上記成分(b)が下記式(2)乃至(4)から選択される1又は2以上のラジカル重合防止剤である上記(1)又は(2)に記載の滴下工法用液晶シール剤。
[式(2)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルコキシ基、又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルキル基を示す。]
[式(3)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルコキシ基、フェノキシ基、アセトアミド基(−NHCOCH)、アミノ基(−NH)、カルボキシ基(−COOH)、シアノ基(−CN)、ベンゾイロキシ基(−OCOC)、イソチオシアネート基(−NCS)、又はオキソ基(=O)を示し、R〜R12は各々独立して炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基を示す。]
[式(4)中、R13は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルキル基を示す。]
(4)
更に、(d)エポキシ基を有する硬化性樹脂及び(e)熱硬化剤を含有する上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
(5)
上記成分(e)が有機酸ヒドラジドである上記(4)に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
(6)
更に、(f)シランカップリング剤を含有する上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
(7)
更に、(g)無機フィラーを含有する上記(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
(8)
更に、(h)光重合開始剤を含有する上記(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
(9)
上記成分(c)及び上記成分(d)の総量を100質量部とした場合に、上記成分(b)の含有量が0.0001〜1質量部である上記(4)又は(5)に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
(10)
上記成分(c)に対して上記成分(b)を溶解する工程を含む上記(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤の製造方法。
(11)
上記成分(d)に対して上記成分(b)を溶解する工程を含む上記(4)又は(5)に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤の製造方法。
(12)
上記(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、又は上記(10)若しくは(11)に記載の製造方法によって得られる液晶滴下工法用液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル。
本発明の液晶シール剤は、熱硬化時の硬化速度が速いため、熱のみで液晶シール剤を硬化させる液晶滴下工法への応用が可能である。また、光熱併用型液晶滴下工法においても、光の届き難い配線下においても十分な硬化性を有し、このため、パネルの配線設計の自由度を確保でき、信頼性の高い液晶表示パネルの製造を容易にすることができる。
本発明において用いられる(a)分子内に酸素−酸素結合(−O−O−)及び窒素−窒素結合(−N=N−)を有さない熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、アセトフェノン類、ベンゾピナコール類が挙げられる。その中でも、反応性や液晶への溶解性の観点から、上記式(1)で表される化合物が特に好適に用いられる。
上記式(1)において、Y及びYは各々独立して、水素原子、フェニル基、又は珪素原子を示し、好ましいのは、少なくとも一方が珪素原子の場合である。式(1)において、R〜Rにおける炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基(以下単にC1〜C4アルキル基ともいう)としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t−ブチル等を挙げることができる。また、X〜Xにおけるハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等を挙げることができる。
式(1)のY又はYが水素原子以外の場合、R−又はR−は、フェニル基、1〜3個のC1〜C4アルキル基で置換されたフェニル基、ジC1〜C4アルキルシリル基、又はトリC1〜C4アルキルシリル基が好ましく、より好ましくはジC1〜C4アルキルシリル基又はトリC1〜C4アルキルシリル基であり、更に好ましくはトリC1〜C4アルキルシリル基である。
式(1)のR−、R−におけるジ又はトリC1〜C4直鎖又は分岐アルキルシリル基において、2個又は3個のC1〜C4アルキル基は同一でも異なってもよい。該シリル基としては、例えば、ジメチルシリル、ジエチルシリル、メチルエチルシリル等のジC1〜C4アルキルシリル基;トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル等のトリC1〜C4アルキルシリル基;が挙げられる。これらの中で、トリC1〜C4アルキルシリル基が最も好ましく、より好ましくはトリメチルシリル基である。
式(1)のX〜Xは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、又はハロゲン原子を示し、好ましいのはX〜Xが全て水素原子の場合である。
式(1)で表される化合物として、具体的には、ベンゾピナコール、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メチルフェニル)エタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メトキシフェニル)エタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリエチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン等が挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンであり、さらに好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンである。但し、式(1)の構造を有する限り、これらの化合物に限定されるものではない。また、2種以上を併用することも可能である。
上記熱ラジカル重合開始剤のうち、ベンゾピナコールは東京化成工業(株)、和光純薬工業(株)等から市販されている。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をエーテル化したものは、周知の方法によって容易に合成可能である。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をシリルエーテル化したものは、対応するベンゾピナコールと各種シリル化剤とをピリジン等の塩基性触媒下で加熱させる方法により合成して得ることができる。
シリル化剤としては、一般に知られているトリメチルシリル化剤であるトリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)や、トリエチルシリル化剤であるトリエチルクロロシラン(TECS)や、t−ブチルジメチルシリル化剤であるt−ブチルメチルシラン(TBMS)等が挙げられる。これらの試薬はシリコン誘導体メーカー等の市場から容易に入手することができる。シリル化剤の反応量としては、対象化合物の水酸基1モルに対して1.0〜5.0倍モルが好ましい。さらに好ましくは1.5〜3.0倍モルである。1.0倍モルより少ないと反応効率が悪く、反応時間が長くなるため熱分解を促進してしまう。5.0倍モルより多いと回収の際に分離が悪くなったり、精製が困難になったりしてしまう。
塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン等が挙げられる。塩基性触媒は反応時に発生する塩化水素をトラップし、反応系を塩基性下に保つ効果や、水酸基の水素を引き抜き、より反応を促進させる効果がある。含有量としては対象の水酸基に対して0.5倍モル以上あればよく、溶媒として用いてもよい。
溶媒としてはヘキサン、エーテル、トルエン等の非極性有機溶媒は反応に関与しないため優れている。また、ピリジン、ジメチルホルムアルデヒド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル等の極性溶媒も好ましい。含有量としては溶質の質量濃度が5〜40質量%になる程度が好ましい。さらに好ましくは10〜30質量%である。溶媒の含有量が少なすぎると反応が遅く、熱による分解が促進され収率が落ちてしまう。逆に多すぎても副生成物が多くなり、収率が落ちてしまう。
本発明で用いられる(a)熱ラジカル重合開始剤は粒径を細かくし、均一に分散することが好ましい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶表示セル製造時に上下ガラス基板を貼り合わせる際のギャップ形成が上手くできない等の不良要因となるため、5μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下である。また、際限なく細かくしても差し支えないが、通常下限は0.1μm程度である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定できる。
該熱ラジカル重合開始剤の含有量としては、本発明の液晶シール剤の硬化性樹脂全体を100質量部とした場合、0.0001〜10質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.0005〜5質量部であり、0.001〜3質量部が特に好ましい。なお、硬化性樹脂とは、(c)成分及び必要によって含有する場合の(d)成分を表す。本願においては以下同様とする。
また、本発明において用いられる成分(b)ラジカル重合防止剤は、ラジカル重合開始剤や上記硬化性樹脂単量体から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、2−メチルナフトキノン、2−メトキシナフトキノン、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−メトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−フェノキシピペリジン−1−オキシル、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール、ステアリルβ−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β―(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、チオジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA−81、商品名アデカスタブLA−82(株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも上記熱ラジカル重合開始剤と併用して、顕著にその効果を発揮するものは、上記式(2)〜(4)記載のラジカル重合防止剤である。これらのラジカル重合防止剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記式(3)におけるRは、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルコキシ基、フェノキシ基、アセトアミド基(−NHCOCH)、アミノ基(−NH)、カルボキシ基(−COOH)、シアノ基(−CN)、ベンゾイロキシ基(−OCOC)、イソチオシアネート基(−NCS)、又はオキソ基(=O)を示し、好ましくは水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、カルボキシ基であり、更に好ましくは水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基であり、特に好ましくは水素原子、ヒドロキシ基である。
成分(b)ラジカル重合防止剤は、成分(c)(メタ)アクリロイル基を有する硬化性樹脂を合成する際に添加する方法や、成分(c)(メタ)アクリロイル基を有する硬化性樹脂及び成分(d)エポキシ基を有する硬化性樹脂の一方又は両方に対して添加して、溶解させる方法があるが、より有効な効果を得るためには成分(c)(メタ)アクリロイル基を有する硬化性樹脂及び成分(d)エポキシ基を有する硬化性樹脂の一方又は両方に対して添加して、溶解させるほうが好ましい。
(b)ラジカル重合防止剤の含有量としては、本発明の液晶シール剤中の硬化性樹脂の全体を100質量部とした場合、0.0001〜1質量部が好ましく、0.001〜0.5質量部が更に好ましく、0.01〜0.2質量部が特に好ましい。ラジカル重合防止剤が少なすぎると充分なハンドリング性を得ることができず、また多すぎると熱反応の遅延による液晶汚染が問題となることがある。
本発明の液晶シール剤は、成分(c)(メタ)アクリロイル基を有する硬化性樹脂を含有する。このような硬化性樹脂としては、例えば(メタ)アクリルエステル、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリルエステルとしては、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、フロログリシノールトリアクリレート等が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応により公知の方法で得られる。原料となるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びそれらのハロゲン化物、水素添加物等が挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、より好ましいものはレゾルシンジグリシジルエーテルである。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性及び液晶汚染性の観点から適切に選択される。
また、(c)(メタ)アクリロイル基を有する硬化性樹脂の液晶滴下工法用液晶シール剤中に占める含有率としては、液晶シール剤の総量を100質量部とした場合に、30〜90質量部の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは50〜90質量部程度である。
本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤では更に成分(d)エポキシ基を有する硬化性樹脂を用いることにより、接着強度向上を図ることができる。用いられるエポキシ基を有する硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びそれらのハロゲン化物、水素添加物等が挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点より好ましいのはビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂である。成分(d)エポキシ基を有する硬化性樹脂の液晶シール剤中に占める含有量は、液晶シール剤の総量を100質量部とした場合に、1〜30質量部程度である。
本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤で、成分(d)と共に用いられる成分(e)である熱硬化剤は特に限定されるものではなく、多価アミン類、多価フェノール類、ヒドラジド化合物等を挙げることができるが、固形の有機酸ヒドラジドが特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるサリチル酸ヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、1−ナフトエ酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等を挙げることができる。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。この熱硬化剤は、単独で用いても2種以上混合してもよい。硬化反応性と潜在性とのバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはマロン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドである。かかる(e)熱硬化剤を使用する場合の使用量としては、成分(d)のエポキシ基を有する硬化性樹脂のエポキシ基のエポキシ当量を1とした場合、0.5〜2.0当量であり、好ましくは0.8〜1.2当量である。
本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤では、成分(f)シランカップリング剤を用いて、接着強度向上や耐湿信頼性向上を図ることができる。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。(f)シランカップリング剤の液晶シール剤に占める含有量は、本発明の液晶シール剤の全体を100質量部とした場合、0.05〜3質量部が好適である。
本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤では、成分(g)無機フィラーを用いて、接着強度向上や耐湿信頼性向上を図ることができる。この成分(g)無機フィラーとしては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、更に好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いてもよい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、3μm以下が適当であり、好ましくは2μm以下である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定できる。
本発明の液晶シール剤で使用し得る無機フィラー(g)の液晶シール剤中の含有量は、本発明の液晶シール剤の総量を100質量部とした場合、通常1〜60質量部であり、好ましくは1〜40質量部である。無機フィラーの含有量が少なすぎる場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。一方、無機フィラーの含有量が多すぎる場合、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなってしまう場合がある。
本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤は、光熱併用硬化型の液晶シール剤とするために、成分(h)光重合開始剤を含有してもよい。光重合開始剤は、UVや可視光の照射によって、ラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。また、液晶汚染性の観点から、分子内に(メタ)アクリロイル基を有するものを使用することが好ましく、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オンとの反応生成物が好適に用いられる。この化合物は国際公開第2006/027982号記載の方法にて製造して得ることができる。光重合開始剤の液晶シール剤中に占める含有量は、液晶シール剤の総量を100質量部とした場合に、1〜10質量部程度が好ましい。
本発明の液晶シール剤には、さらに必要に応じて、有機酸やイミダゾール等の硬化促進剤、有機フィラー、並びに顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤等の添加剤を配合することができる。
本発明の液晶シール剤を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、(c)成分に必要に応じ、(d)成分を溶解混合する。次いでこの混合物に(b)成分を溶解し、更に必要に応じて(h)成分を溶解する。次いで(a)成分、(f)成分、(e)成分、(g)成分、並びに必要に応じ有機フィラー、消泡剤、レベリング剤、溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明の液晶シール剤を製造することができる。
本発明の液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、またはスクリーン印刷装置等を用いて該液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて、80〜120℃で仮硬化を行う。その後、該液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、90〜130℃で1〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。また、光熱併用型として使用する場合は、紫外線照射機により液晶シール剤部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500〜6000mJ/cmであり、より好ましくは1000〜4000mJ/cmである。その後必要に応じて、90〜130℃で1〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等が挙げられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100質量部に対し、通常0.1〜4質量部、好ましくは0.5〜2質量部、更に、好ましくは0.9〜1.5質量部程度である。
本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤は、熱硬化性が非常に良好であり、液晶滴下工法における加熱工程において速やかに硬化する。したがって、構成成分の液晶への溶出も極めて少なく、液晶表示セルの表示不良を低減することが可能である。また、ハンドリング性及び保存安定性にも優れるため、液晶表示セルの製造に適している。更に、その硬化物は接着強度、耐熱性、耐湿性等の各種硬化物特性にも優れるため、本発明の液晶シール剤を用いることにより、信頼性に優れる液晶表示セルを作成することが可能である。また、本発明の液晶シール剤を用いて作成した液晶表示セルは、電圧保持率が高く、イオン密度が低いという液晶表示セルとして必要な特性も充足される。
以下合成例、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
[合成例1]
(1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタンの合成)
市販ベンゾピナコール(東京化成製)100部(0.28モル)をジメチルホルムアルデヒド350部に溶解させ、これに塩基触媒としてピリジン32部(0.4モル)、シリル化剤としてBSTFA(信越化学工業製)150部(0.58モル)を加え70℃まで昇温し、2時間撹拌した。得られた反応液を冷却し、水200部を撹拌しながら入れ、生成物を沈殿させ、未反応シリル化剤を失活分離した。濾別した後十分に水洗し、アセトンで再結晶させ精製することにより、1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン105.6部(収率88.3%)を得た。HPLCで分析した結果、99.0%(面積百分率)であった。また、HPLC−MASSにて438の分子イオンピークを得た。さらにDMSO−dに溶解してのNMR(プロトン)スペクトルから目的物と同定した。NMRスペクトルの化学シフト値として、水酸基プロトン5.8ppm(1H)、シロキシメチルプロトン0.0ppm(9H)、フェニルプロトン7.1ppm(16H)、7.4ppm(4H)が得られた。
[参考合成例1]
(ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシアクリレートの合成)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂282.5g(製品名:YD−8125、新日鉄化学株式会社製)をトルエン266.8gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.8gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸117.5gを加え、更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約30時間撹拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とするビスフェノールA型のエポキシアクリレート395gを得た(KAYARADRTMR−93100)。
[実施例1〜5、比較例1〜3]
(液晶滴下工法用液晶シール剤の調製)
下記表1に示す割合で各樹脂成分(成分(c)、成分(d))を混合撹拌した後、ラジカル重合防止剤(成分(b))、光重合開始剤(成分(h))を加熱溶解させた。室温まで冷却後、シランカップリング剤(成分(f))、無機フィラー(成分(g))、熱ラジカル開始剤(成分(a))、熱硬化剤(成分(e))等を適宜添加し、撹拌した後、3本ロールミルにて分散させた後、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、実施例1〜5の液晶滴下工法用液晶シール剤を調製した。また同様にして、表1に示す各成分を用いて、比較例1〜3の液晶滴下工法用液晶シール剤を調製した。
以下に調製した各液晶滴下工法用シール剤の評価項目内容及びその結果を示す。
(熱硬化性試験)
調製した各液晶滴下工法用液晶シール剤を3cm×3cm×1mmに成型し、120℃×1hrで硬化させた。硬化物のショアA硬度を測定することにより、硬化性を評価した。結果を表1に示す。
(ハンドリング性試験)
調製した各液晶滴下工法用液晶シール剤15gに5μmのスペーサー(PF−50S:日本電気硝子株式会社製)0.15gを混ぜた後、自転500rpm、公転1500rpmで5分間真空撹拌脱泡した。真空撹拌脱泡装置としては、真空撹拌脱泡ミキサーVMXC−360K:株式会社EME製を用いた。それを23℃雰囲気下に置き、ゲル化する時間を測定し、以下基準によって評価した。結果を表1に示す。
○:168時間以上ゲル化しない
△:96時間以上168時間未満でゲル化した
×:脱泡後すぐから96時間未満でゲル化した
(液晶汚染性試験)
3000mJ/cmの紫外線を照射した後の各液晶滴下工法用液晶シール剤を10mlバイアル瓶の底に100mg程度塗布した後、液晶(MLC−6866−100:メルク株式会社製)をその10倍量加えた。1時間120℃で加熱した後、30分間冷却した。それぞれの上澄みをデカンテーションにて分け取り、デジタル超高抵抗計(R8340:株式会社アドバンテスト製)にて比抵抗値を測定し、シール剤なしのものの比抵抗値と比較した。以下基準により判定を行った。
○:比抵抗値1.0E+11以上
△:比抵抗値1.0E+11以上1.0E+11未満
×:比抵抗値1.0E+10未満
なお、比抵抗値の「1.0E+11」は「1.0×1011」を表し、他の記載も同様である。
表1の結果より、(a)分子内に酸素−酸素結合(−O−O−)及び窒素−窒素結合(−N=N−)を有さない熱ラジカル重合開始剤、(b)ラジカル重合防止剤、及び(c)(メタ)アクリロイル基を有する硬化性樹脂を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤(実施例1〜5)は、熱硬化性、ハンドリング性、液晶汚染性に非常に優れることが確認された。その中でも、(b)ラジカル重合防止剤として、ナフトキノン等の特定のものを含有する液晶滴下工法用液晶シール剤(実施例1〜4)は、特に優れることが確認された。
本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤は、熱による良好な硬化性を有し、かつハンドリング性や保存安定性、接着強度等の硬化物特性にも優れる。したがって、液晶表示セルの設計の自由度を確保し、また生産性、及びその長期信頼性に貢献するものである。

Claims (11)

  1. (a)分子内に酸素−酸素結合(−O−O−)及び窒素−窒素結合(−N=N−)を有さない熱ラジカル重合開始剤、(b)ラジカル重合防止剤、及び(c)(メタ)アクリロイル基を有する硬化性樹脂を含有し、
    前記成分(b)が下記式(2)及び(3)から選択される1又は2以上のラジカル重合防止剤である液晶滴下工法用液晶シール剤。
    [式(2)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルコキシ基、又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルキル基を示す。]
    [式(3)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルコキシ基、フェノキシ基、アセトアミド基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ベンゾイロキシ基、イソチオシアネート基、又はオキソ基を示し、R〜R12は各々独立して炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基を示す。]
  2. 前記成分(a)が下記式(1)で表される化合物である請求項1に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
    [式(1)中、Y、Yは各々独立して水素原子、フェニル基、又は珪素原子を示し、R〜Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルキル基を示し、X〜Xは各々独立して水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、又はハロゲン原子を示す。但し、Y又はYにそれぞれ結合するR〜R又はR〜Rは、Y又はYが水素原子の場合は存在しない。]
  3. 更に、(d)エポキシ基を有する硬化性樹脂及び(e)熱硬化剤を含有する請求項1又は2に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  4. 前記成分(e)が有機酸ヒドラジドである請求項3に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  5. 更に、(f)シランカップリング剤を含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  6. 更に、(g)無機フィラーを含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  7. 更に、(h)光重合開始剤を含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  8. 前記成分(c)及び前記成分(d)の総量を100質量部とした場合に、前記成分(b)の含有量が0.0001〜1質量部である請求項3又は4に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤の製造方法であって、
    前記成分(c)に対して前記成分(b)を溶解する工程を含む製造方法。
  10. 請求項3又は4に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤の製造方法であって、
    前記成分(d)に対して前記成分(b)を溶解する工程を含む製造方法。
  11. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、又は請求項9又は10に記載の製造方法によって得られる液晶滴下工法用液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル
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