JP6058755B1 - 乗客コンベア用チェーン伸び検出装置および乗客コンベア - Google Patents

乗客コンベア用チェーン伸び検出装置および乗客コンベア Download PDF

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Abstract

【課題】チェーンの伸び量を精度良く自動的に検出可能な乗客コンベア用チェーン伸び検出装置および乗客コンベアを提供する。【解決手段】本発明の一実施形態によれば、駆動源により回転する駆動輪17と、この駆動輪17の駆動力によりチェーン18によって回転する従動輪13と、これらの駆動輪17および従動輪13にそれぞれ設けられた被検出体27、28と、被検出体27、28毎に乗客コンベアの主枠に対して固定され被検出体27、28の周回による回転通過を検出するセンサ29、30と、センサ29、30からの回転通過タイミングの差を求め、乗客コンベアの経時前後におけるその差の増加量を求める算出部31とを備え、算出部31は増加量、駆動輪17の角速度および従動輪13の回転径によってチェーン18の伸び量を算出する乗客コンベア用チェーン伸び検出装置1が提供される。【選択図】図2

Description

本発明は乗客コンベア用チェーン伸び検出装置および乗客コンベアに関する。
エスカレータは、駆動チェーン、手すりベルト駆動チェーン、踏段チェーンなどの各チェーンを有しており、従来、チェーンが経年変化によって伸びても一定の張力でチェーンが巻掛けられるようにチェーンの伸び量を調整する保守点検が定期的に行われている(例えば特許文献1参照)。点検作業では、例えば運転中に踏段チェーンの伸び量が測定され(例えば、特許文献2参照)、駆動チェーンのたるみ量を検出してチェーンの伸び量が診断される(例えば特許文献3参照)。
特開2015−48205号公報 特許第4915391号公報 特許第5209015号公報
しかし、点検作業では、保守員が乗降板を外して機械室内部に入って作業を行うため、エスカレータの運転を停止しなければならない。点検作業は法律上求められているものの運転を数時間停止することは利用者にとっては不便である。保守員はマニュアルを参照してチェーンに定規を当てた伸び量の測定等により点検作業を行う。保守員にとっても点検項目のチェック及び必要な交換には手間がかかる。点検作業は安全上必要であっても保守作業が何時間もかからないことが商業的に望まれる。
本発明はこのような課題に鑑み創案されたものであり、チェーンの伸び量を精度良く自動的に検出することが可能な乗客コンベア用チェーン伸び検出装置および乗客コンベアを提供することを目的とする。
このような課題を解決するため、本発明の一実施形態によれば、駆動源により回転する駆動輪と、この駆動輪の駆動力によりチェーンによって回転する従動輪と、これらの駆動輪および従動輪にそれぞれ設けられた被検出体と、前記被検出体毎に乗客コンベアの主枠に対して固定され前記被検出体の周回による回転通過を検出するセンサと、これらのセンサからの回転通過タイミングの差を求め、前記乗客コンベアの経時前後における前記差の増加量を求める算出部と、を備え、この算出部は前記増加量、前記駆動輪の角速度および前記従動輪の回転径によって前記チェーンの伸び量を算出することを特徴とする乗客コンベア用チェーン伸び検出装置が提供される。
また、本発明の別の一実施形態によれば、乗客コンベアの主枠に設けられた駆動源と、前記駆動源により回転する駆動輪と、この駆動輪の駆動力により無端状に循環するチェーンと、このチェーンにより回転する従動輪と、これらの駆動輪および従動輪にそれぞれ設けられた被検出体と、前記被検出体毎に前記主枠に対して固定され前記被検出体の周回による回転通過を検出するセンサと、これらのセンサからの回転通過タイミングの差を求め、前記乗客コンベアの経時前後における前記差の増加量を求める算出部と、を備え、この算出部は前記増加量、前記駆動輪の角速度および前記従動輪の回転径によって前記チェーンの伸び量を算出することを特徴とする乗客コンベアが提供される。
本発明によれば、チェーンの伸び量を精度良く自動的に検出することが可能になる。
本発明の第1実施形態に係る乗客コンベアの概略構成図である。 本発明の第1実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の構成を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の駆動源の構成例を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置のセンサのブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の一方および他方のセンサ出力を示す図である。 (a)は本発明の第1実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の経時前におけるセンサおよび被検出体の回転位置を示す図であり、(b)は経時前のセンサ出力を示す図である。 (a)は本発明の第1実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の経時後におけるセンサおよび被検出体の回転位置を示す図であり、(b)は経時後のセンサ出力を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置によるセンサ検出信号の出現タイミングを一致させる方法例を説明するための図である。 (a)は本発明の第2実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の経時前におけるセンサおよび被検出体の回転位置を示す図であり、(b)は経時前のセンサ出力を示す図である。 (a)は本発明の第2実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の経時後におけるセンサおよび被検出体の回転位置を示す図であり、(b)は経時後のセンサ出力を示す図である。 本発明の第3実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の構成図である。 本発明の第3実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の投光部、円盤、受光部の斜視図である。 本発明の第4実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置のハードウェアの構成例を示す図である。 (a)は本発明の第4の実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の経時前のセンサ出力を示す図であり、(b)は駆動源が第1の運転速度による経時後のセンサ出力を示す図であり、(c)は駆動源が第2の運転速度による経時後のセンサ出力を示す図である。 本発明の第5実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置によるチェーン伸び量の検出のためのデータ処理例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置および乗客コンベアについて、図1乃至図15を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る乗客コンベアの概略構成図である。本実施形態に係る乗客コンベアは建物の上下階床間に設けられたエスカレータである。本実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置はこのエスカレータに設けられたチェーン伸び検出装置1である。
傾斜した主枠10は建屋の上階及び下階間に支持されており、主枠10の上端側には機械室11が設けられている。機械室11には、駆動装置12、スプロケット13及び制御装置14が設けられている。駆動装置12は、主枠幅方向に平行に水平な出力軸を有するモータ15と、このモータ15の出力トルクを増幅する減速機16とを有する。減速機16の出力側にはスプロケット17が設けられている。スプロケット17、スプロケット13間には無端状の駆動チェーン18が巻掛けられている。また、主枠10の下端側の機械室19には従動のスプロケット20が設けられており、このスプロケット20とスプロケット13との間に無端状の踏段チェーン21が掛け渡されている。この踏段チェーン21に複数の踏段22が等間隔で連結されている。
図2は本実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の構成を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。チェーン伸び検出装置1は減速機16の出力軸のスプロケット17と踏段22へのスプロケット13との間に巻掛けられた駆動チェーン18の伸び量を検出するものである。
チェーン伸び検出装置1は、駆動装置12(駆動源)により回転する駆動のスプロケット17(駆動輪)と、駆動のスプロケット17の駆動力により駆動チェーン18(チェーン)によって回転する従動のスプロケット13(従動輪)とを備えている。
このチェーン伸び検出装置1は、スプロケット17、13にそれぞれ設けられた金具27、28(被検出体)と、金具27、28毎にエスカレータの主枠10に対して固定され金具27、28の周回による回転通過を検出する近接センサ29、30(センサ)と、近接センサ29、30からの回転通過タイミングの差を求め、エスカレータの経時前後における回転通過タイミング差の増加量を求める算出部31とを備えており、この算出部31は増加量、スプロケット17の角速度およびスプロケット13の回転径によって駆動チェーン18の伸び量を算出する。
駆動装置12(図1)の減速機16は機械室11の台44上に設けられており、この減速機16上にモータ15が設けられている。モータ15は制御装置14により回転を制御される。
図3は本実施形態に係るエスカレータに用いられる駆動源の構成例を示す図であり、主枠10の上端側の駆動チェーン18付近の構成が示されている。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。駆動用のモータ15の駆動軸にはベルト駆動プーリ23が設けられ、このベルト駆動プーリ23にはVベルト24が巻掛けられており、モータ15は減速機16の入力軸25を駆動する。減速機16の出力軸にはスプロケット17が連結されている。
スプロケット17は減速機スプロケットである(以下、スプロケット17を駆動スプロケット17と呼ぶことがある)。駆動スプロケット17は駆動チェーン18によりスプロケット13を回転駆動する。駆動チェーン18は例えば複数のチェーンリンクの連結により構成されている。駆動チェーン18は弛みを与えられており、例えばスプロケット17、13間にこの駆動チェーン18が掛け渡された状態で下側を移動するチェーン中央部を撓ませたときに、駆動チェーン18の振れ幅が決められた値に入るようにされている。
スプロケット13は駆動スプロケット17からの駆動力により従動するスプロケットである(以下、スプロケット13を従動スプロケット13と呼ぶことがある)。従動スプロケット13には同軸状に踏段スプロケット26(図1)が設けられており、踏段スプロケット26を介して従動スプロケット13は踏段チェーン21を駆動する。駆動スプロケット17、従動スプロケット13は異なるピッチ円直径(Pitch Circle Diameter)を有する。ピッチ円直径とは、スプロケット17に巻掛けた駆動チェーン18のピッチ線に外接する円の直径を指す。
また、図2のように、駆動スプロケット17の側面一か所に検知用の金具27が設けられている。金具27は近接センサ29が検知可能な距離を隔てて側面上に取付けられている。金具27は一端及びその反対側の他端に突起を有する金属成型品である。金具27の一端は、駆動チェーン18に噛み合う複数の歯を有する駆動スプロケット17の側面に固定されている。突起はこの一端からスプロケット歯の歯先よりも駆動スプロケット17の径方向外方に向かっている。金具27は駆動スプロケット17と一体となり、駆動スプロケット17の回転軸周りに回転する。同様に、従動スプロケット13の側面の1点にも金具28が設けられ、この金具28は従動スプロケット13と一体に従動スプロケット13の回転軸周りに回転する。金具28も、従動スプロケット13の側面に固定された一端およびこの一端からスプロケット歯の歯先よりも従動スプロケット13の径方向外方に向かう突起を有する。金具27、28には磁性を持つ金属が用いられ、例えば鉄が用いられてもよい。
近接センサ29は駆動スプロケット17の上方において金具27の周回による接近を検出する。近接センサ30は従動スプロケット13の上方において金具28の周回による接近を検出する。近接センサ29、30は何れも主枠10内の図示しないエスカレータフレームに駆動スプロケット17、従動スプロケット13に対応して固定設置されている。
図4は近接センサ29の一例を示すブロック図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。近接センサ29は、例えばコイル61と、このコイル61に接続される発振回路62と、この発振回路62が発振している状態のコイル61のインピーダンスの変化を検出する検出回路63と、検出回路63によりインピーダンスの変化分を電圧等の出力信号の変化として検出する出力回路64とを有する。発振状態のコイル61と金具27とが接近すると、金具27への磁束が増大し金具27には磁束による起電力によって渦電流を生じる。渦電流に基づく金具27の反対向きの磁束によってコイル61のインピーダンスが変化する。検出回路63の電圧等によって近接センサ29は例えばパルス信号を出力する。近接センサ30も近接センサ29と同じである。
また、図4の発振状態で、一定周速度での駆動スプロケット17、従動スプロケット13の回転走行を行った場合の近接センサ29、30による回転検出信号を図5に示す。
図5は近接センサ29(一方のセンサ)及び近接センサ30(他方のセンサ)のそれぞれ出力波形例を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。検出信号66、67はそれぞれ初期状態の近接センサ29、30からのパルス状の信号波形である。なお検出信号66、67の個数及び間隔は例示であり同図の間隔に限定されるものではない。初期状態とは、近接センサ29、30が互いの検知タイミングが一致するように、これらの近接センサ29、30および金具27、28の位置を調整した位置調整済みの状態を指す。電圧は信号(シグナル)電圧を表す。
近接センサ29、30は、エスカレータの通常運転により、それぞれのスプロケット軸の1回転で1回、金具27、28の接近を検出する。通常運転では駆動スプロケット17の周速度と従動スプロケット13の周速度とは等しく、駆動スプロケット17のピッチ円直径が従動スプロケット13のピッチ円直径よりも小さい(図2)。駆動スプロケット17の回転回数が従動スプロケット13の回転回数よりも大きいため、近接センサ29からの検出信号66の検知間隔が近接センサ30からの検出信号67の検知間隔よりも短くなるようになっている(図5)。
また、図2の算出部31は、近接センサ29、30に電気的に接続されており、2系統の検出信号を入力され続ける。算出部31は、初期設定のタイミングを基準に用いている。初期設定のタイミングとは、2系統の検知タイミングが一致する時点が到来する周期を指す。
ある一定間隔毎に、近接センサ29の検知タイミングと近接センサ30の検知タイミングとが一致する時点(図5の破線で囲った部分参照)が存在する。エスカレータの運転中、各スプロケット軸は回転し続けるため、近接センサ29からの検出信号66の検知タイミングと、近接センサ30からの検出信号67の検知タイミングとが一致する時点が繰り返し周期的に到来する。
チェーン伸び検出装置1は初期設定によって近接センサ29、30間の検出信号のタイミングが一致する状態にされる。算出部31は、運転期間経過前における近接センサ29、30の検知タイミングおよび運転期間の経過後における検知タイミングとの比較によって、運転期間の前後での時間差の増加量を算出している。換言すれば、算出部31はエスカレータの運転期間の経時前において金具27、28及び近接センサ29、30に対する位置決め調整によって近接センサ29、30からの検出信号の出現タイミングを一致させてから、運転期間の経時後において検出信号の出現タイミングの変動量を求めている。
算出部31は近接センサ29、30の信号検知に加えて、検知タイミングの増加量に基づく駆動チェーン18の伸び量Lを求める演算などを実施する。算出部31は、駆動スプロケット17のピッチ円直径と従動スプロケット13のピッチ円直径とを用いて算出する。算出部31の機能は、CPU、ROM、RAMによるCPUソフトウェアにより実行されてもよい。算出部31はROMに各ピッチ円直径のデータを保持している。
次に上述の構成の本実施形態に係る乗客コンベアの動作について説明する。駆動チェーン18が伸びる前後での近接センサ29、30の検知タイミングの変化を、駆動チェーン18が伸びる前の初期状態での検知タイミング(図6)、長期間エスカレータを運転させ駆動チェーン18が伸びた後の検知タイミング(図7)及び図8を参照して説明する。
まず最初にエスカレータの設置時に、保守員の操作によって、チェーン伸び検出装置1は、初期設定作業を実行する。
図6(a)は経時前における近接センサ29、30及び金具27、28の回転位置を示す図である。図6(b)は経時前の近接センサ29、30の出力波形例を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。図6(a)、図6(b)では、駆動チェーン18が伸びる前に近接センサ29、30両者のタイミングが一致するように保守員操作により調整された後の波形例が示されている。駆動チェーン18は右周り(上昇運転時)の回転を想定する。
ここでは近接センサ29からの検出波形と近接センサ30からの検出波形との比較により、図6(a)の位置関係になるように、保守員が金具27、28および近接センサ29、30の位置を合わせ、近接センサ29、30の検知タイミングを一致させている。噛み合い点68は、従動スプロケット13と駆動チェーン18とが噛み合う点の1つを表し、例えばピッチ円(破線)上の一つの位置である。
図8は近接センサ29、30からの検出信号の出現タイミングを一致させる方法例を説明するための図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。チェーン伸び検出装置1には駆動スプロケット17からの検出信号66と、従動スプロケット13からの検出信号67とが入力されている。算出部31は頻出の検出信号66が立上る度に検出信号66の立上りエッジの時刻をRAMに記憶し、検出信号67が立上る時刻において、この検出信号67の立上り時刻と、RAMからの検出信号66の時刻との差を求める。
具体例として時刻T1において算出部31は検出信号67が立上りを検出する。この時刻T1において検出信号67の立上りエッジと時刻T1よりも前に出現した検出信号66の立上りエッジとの時間の差tを求め、この差tが予め保持する閾値内か否かを比較する。差tが閾値よりも大である場合、算出部31は時刻T1と、この時刻T1よりも後に出現した検出信号66の立上りエッジとの時間の差sを求め、この差sが閾値内か否かを比較する。差sが閾値よりも大である場合、算出部31は次に時刻T2において同様の比較演算を行う。
時刻T2において算出部31は時刻T2の検出信号67の立上りエッジと、この時刻T2の前後の検出信号66の立上りエッジとのそれぞれの時間の差s、tを求める。差s、tが何れも閾値内でない場合、算出部31は次に時刻T3において同様の比較演算を行う。
時刻T3において算出部31は時刻T3の検出信号67の立上りエッジと、この時刻T3の前に出現した検出信号66の立上りエッジとの時間の差tを求める。差tが閾値内である場合、算出部31は一致を出力し、この時刻T3をRAMに記憶する。検出信号67が立上る時刻と検出信号66が立上る時刻とが揃い、時刻T3において検知タイミングが一致したことが検知される。これにより、検出信号66、67のそれぞれのパルスの立上りエッジが同じ時点で出現するという状況が整う。
図6(b)のように、2系統の検出信号は、一定間隔毎に検知タイミングの一致する時点がくる。算出部31は、一致する時点が到来する周期を初期設定のタイミングとしてRAMに記憶してもよい。
その後、エスカレータ(図1)は通常運転を毎日続ける。エスカレータは駆動スプロケット17により踏段スプロケット26を回転させる。複数の踏段22は循環走行する。循環方向が上昇運転の場合、下階の乗降口42から乗った人は上階の乗降口43へ運ばれる。駆動スプロケット17の回転方向が逆である場合、エスカレータは反対の下降運転を行う。
長期間の運転後、管理者は、エスカレータの運転中、チェーンの保守点検のため、制御装置14の決められたスイッチの操作等によってエスカレータにチェーン伸び量の検出を開始させる。
図7(a)は経時後の近接センサ29、30及び金具27、28の回転位置を示す図である。図7(b)は経時後の近接センサ29、30の出力波形例を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。図7(a)、図7(b)では、エスカレータが長期間の運転後、駆動チェーン18が伸びた場合における検知タイミングの変化が示されている。
駆動チェーン18及び従動スプロケット13は何れも右周りである。駆動チェーン18が伸びた場合、図7(a)のように駆動チェーン18及び従動スプロケット13の噛み合い点68の位置は、駆動スプロケット17の回転方向に対して後方にずれている。駆動チェーン18と従動スプロケット歯とが噛み合う歯の歯数及び歯ピッチは常に一定であるため、従動スプロケット13と駆動チェーン18とが噛み合う位置が、回転方向に対して後方側にずれ動いている。駆動スプロケット17の回転角度が初期状態のこの駆動スプロケット17の回転角度に対して遅れ側に変化する。そのため、金具27が近接センサ30を通過するタイミングが初期状態での通過タイミングに対して遅れている。
図7(b)のように駆動チェーン18が伸びる前の検知タイミング(図6(b))に対して経時後の検知タイミングは時間δだけずれを生じる。一定間隔毎に互いに立上りエッジが時間δだけずれた検出信号66、67が到来する。
次に、算出部31は、CPU、ROM、RAMにプログラムを実行させることで算出演算処理を行う。CPUは、検知タイミングδ、伸び量Lなどの値をRAMに展開し、ROMからのプログラムコードによって以下の演算を実行する。
検知タイミングδと駆動チェーン18の伸び量Lとの関係を説明する。算出部31は駆動チェーン18がLだけ伸びた時の遅れ角度βを式(1)によって求める。
β = 2L / PCD (rad) …(1)
PCDは従動スプロケット13のピッチ円直径、Lは駆動チェーン18の両シーブ(従動スプロケット13、駆動スプロケット17)間での伸び量である。
また従動スプロケット13の回転角速度をω(rad/s)とすると、算出部31は金具28が近接センサ30で検出できる位置まで回転するために要する時間δを式(2)で算出する。
δ = β/ω (s) …(2)
従って、算出部31は、近接センサ29と近接センサ30との検知タイミングのずれδを検出し、式(1)、(2)の逆算により式(3)を用いて駆動チェーン伸びLを算出する。
L = δ × PCD × ω/2 …(3)
以上のように、本実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置によれば、2個の近接センサ29、30と、駆動スプロケット17、従動スプロケット13の各側面に設置した金具27、28だけで、駆動チェーン18の伸び量を正確に検出できるようになる。非常に低コストで駆動チェーン18の伸び量の検出が可能となる。
例えば毎日就業時にチェーン伸びを計測することができ、安全性の向上を図れる。点検作業の時間、点検回数及び点検頻度を減らすことができ、保守点検に要する費用を抑えることができる。
また、本実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置および乗客コンベアによれば、駆動チェーン18の伸び量を精度良く自動的に検出できる。チェーン点検作業のために保守員が乗降板を外して機械室11に入って作業することが不要となり、エスカレータの運転を停止せずにチェーン伸びを検出できる。運転停止の時間を極力少なくし、あるいは時間を無くすことができ利用者に便利である。保守員が毎回現場に来ることも不要になる。エスカレータの点検項目のうち、チェーン伸びの測定についての点検頻度が減り、建屋の管理者にとっては商業的に都合がよい。点検頻度あるいは点検回数をむやみに増加させずに安全性を維持できる。
以上を総括すると、チェーン伸び検出装置1は、駆動チェーン18の駆動スプロケット17と、従動スプロケット13とのそれぞれ外周1点に、各スプロケットに固定されて一緒に回転する通過検出用の金具27、28を設置し、また、金具27、28の通過を検出する近接センサ29、30を、エスカレータの固定側に配置し、運転中に駆動スプロケット17の金具27及び従動スプロケット13の金具28が通過するタイミングをそれぞれ検出可能に構成されている。
駆動チェーン18が長期使用などによって伸びが生じた場合、伸びた分、従動スプロケット13が駆動チェーン18と噛み合う時間が遅くなるため、駆動スプロケット17の金具通過検出のタイミングに対して相対的に、従動スプロケット13の金具通過検出のタイミングが遅れてくる。このタイミングのずれは駆動チェーン18の伸び量に比例するため、チェーン伸び検出装置1は、この時間のずれを検出することによって駆動チェーン18の伸びを検出可能に構成されている。
また、チェーン伸び検出装置1は、どのチェーンでも必ず有している駆動スプロケット17と従動スプロケット13とにそれぞれ金具27、28及び近接センサ29、30を設置するだけなので、駆動チェーン18、手すりベルト駆動チェーン、踏段チェーン21などチェーンの種類によらず、同様の手法でチェーン伸びを検出可能である。
またチェーン伸び検出装置1によれば、高価なエンコーダの設置が不要であり、低コストの近接センサ29、30が計2個を最低限設置することのみで駆動チェーン18の伸びを精度良く検出することができるため、低コストな検出システムを構築できる。
(第2の実施形態)
上記第1実施形態では、駆動チェーン18が伸びる前に初期設定により検知タイミングを合わせる作業を要した。本発明の第2実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置は初期設定を経ずに算出する。
チェーン伸び検出装置2の算出部31は、エスカレータの運転期間の経時前において互いに検知タイミングがδ1(第1時間差)だけずれた状態の近接センサ29、30からの波形を記憶しておく。更にこの算出部31は運転期間の経時後において近接センサ29の検知タイミングに対する近接センサ30の検知タイミングがδ1よりも遅れるδ2(第2時間差)を求め、これらのδ1、δ2の差分を求めている。
それ以外の点について、特に断らない限り、チェーン伸び装置2は、上記チェーン伸び検出装置1の構成と同じである。
次に上述の構成の本実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の動作について図9〜図10を参照して説明する。
図9(a)はチェーン伸び検出装置2の経時前における近接センサ29、30および金具27、28の回転位置を示す図である。図9(b)は経時前の近接センサ29、30の出力波形例を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。噛み合い点69は駆動チェーン18の右周り方向に回転する。
チェーン伸び検出装置2は、駆動スプロケット17および従動スプロケット13の側面にそれぞれ金具27、28を設置しており、金具27、28を検知する近接センサ29、30を設置している。このチェーン伸び検出装置2は、金具27、28をそれぞれ図9(a)で真上方向に対して任意の角度位置に設置しているものとする。同図の例では、近接センサ30の検知タイミングが、近接センサ29の検知タイミングよりも遅れた状態でこれらの近接センサ29、30が設置されている。
図9(b)に示すように、駆動チェーン18が伸びる前において、既に近接センサ29の検知タイミングと、近接センサ30の検知タイミングとがずれている。互いに検知タイミングが時間δ1(第1時間差)だけずれた状態の近接センサ29、30からの波形を算出部31は取得する。この遅れをδ1とする。
一方エスカレータが長期間の運転後、駆動チェーン18が伸びた後の状態での検知タイミングの変化を図10(a)、図10(b)に示す。
図10(a)は経時後の近接センサ29、30及び金具27、28の回転位置を示す図である。図10(b)は経時後の近接センサ29、30の出力波形例を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
図10(a)のように第1の実施形態と同様、駆動チェーン18の伸びによって、駆動チェーン18が従動スプロケット13側と噛み合う位置(噛み合い点69)が回転方向に対して後方にずれ、従動スプロケット13の回転角度量に遅れが生じる。そのため、図10(b)のように近接センサ29の検知タイミングに対する近接センサ30の検知タイミングが、伸びる前の遅れ時間δ1よりもさらに遅れを生じている。この遅れ時間をδ2(第2時間差)とする。
ここで、算出部31は式(4)を算出する。
δ3=δ2−δ1 …(4)
求められたδ3は、駆動チェーン18の伸びによって生じた検知タイミングの遅れということになる。このδ3を用いて、算出部31は、第1の実施形態の計算と同様の計算により上記第1実施形態の式(3)から、駆動チェーン18の伸びLを検出する。
本実施形態では、駆動スプロケット17の近接センサ29と従動スプロケット13側の近接センサ30との間の検知タイミングを、最初に設置する段階の設置工事において、厳密に調整する必要が無くなり、調整作業なしの設置作業で済むため、エスカレータ据え付け時の調整時間を大幅に短縮することができるという効果が得られる。
(第3の実施形態)
上記第1実施形態では、駆動スプロケット17、従動スプロケット13にそれぞれ近接センサ29、30を設けていたが、近接センサ29、30の代わりのセンサを用いてもよい。
図11は本発明の第3実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の構成図である。図12は投光部、円盤、受光部の斜視図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
図11、図1、図2のように、チェーン伸び検出装置3は、駆動スプロケット17及び従動スプロケット13と、駆動スプロケット17及び従動スプロケット13に同軸状に設けられ、それぞれ径方向に検知穴32(貫通穴)を有する円盤33、34とを備えている。更に図12のようにチェーン伸び検出装置は、円盤33、34毎に設けられた投光部35と(一方のみ表示されている)、投光部35からの光をそれぞれ検知穴32から受光する円盤33、34毎に設けられた受光部36と、受光部36毎に検出された受光タイミングの差を求め、エスカレータの経時前後における受光タイミングの差の増加量を求める算出部31とを更に備えており、この算出部31がこの増加量、駆動スプロケット17の角速度および従動スプロケット13の回転径によって駆動チェーン18の伸び量を算出する。これら以外の構成については、チェーン伸び装置3はチェーン伸び検出装置1の構成と同じである。
円盤33、34は円形の検知円盤であり、それぞれ駆動スプロケット17、従動スプロケット13と同じ角速度で回転する。検知穴32は円盤33、34毎に盤上1か所に開口されている。投光部35は光電センサ投光部でありLED光あるいはレーザ光の出力素子を有する。受光部36は検知穴32を通過した検知光を光電変換する受光素子を有する。
次に上述の構成のチェーン伸び検出装置3では、駆動スプロケット17、従動スプロケット13の1回転中に1回だけ投光部35からの光が検知穴32を通過してそれぞれの受光部36に届く。受光部36はスプロケット毎に検知穴32の通過タイミングを検出する。
このチェーン伸び検出装置3の動作、作用は第1の実施形態の例と同様である。駆動チェーン18が伸びる前に予め保守員が初期設定によって駆動スプロケット17及び従動スプロケット13の検知タイミングを合わせる。チェーン伸び検出装置3は、経時後の測定によって時間δだけずれを生じた検知タイミングを求め、上記式(3)によって求める。
あるいは第2の実施形態の例と同様に、チェーン伸び検出装置3は、保守員の初期設定無しでも算出可能である。チェーン伸び検出装置3は、経時後、近接センサ29の検知タイミングに対する近接センサ30の検知タイミングから、上記式(4)により時間δ1、δ2を求めて算出してもよい。
本実施形態では、光を発生する投光部35を用いるため、光ビームの位置を見て、投光部35、受光部36の位置を確実に調整できる。このため、エスカレータ据え付け時の保守員による投光部35、受光部36からなる光電センサの設置と、調整作業とが容易となり、設置調整のための時間が、近接センサ29、30の設置調整の時間よりも短縮可能である。
(第4の実施形態)
上記第1実施形態では算出部31はCPUソフトウェアによって実行されていたが算出部31の機能はハードウェアによっても実行可能である。例えばインバータ制御用のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に近接センサ29、30の信号を入力して算出を実行してもよい。
図13は本発明の第4の実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置のハードウェアの構成例を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
チェーン伸び検出装置4は、駆動装置12(図1)に対して電流をパルス幅変調した変調電流を出力するインバータ40と、このインバータ40への駆動装置12からの複数の出力角速度の何れかに対応する速度変更指令を出力するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)37とを更に備え、このプログラマブルロジックコントローラ37は駆動装置12のモータ15を、駆動スプロケット17の通常運転時の角速度よりも小さい角速度で駆動する。
モータ15はインダクションモータ(誘導電動機)である。モータ15の回転方向及び角速度はインバータ制御により制御される。
インバータ40はモータ15を駆動する。インバータ40には複数の速度パターンが予め記録されている。インバータ40は信号出力端子38を介して上位装置であるプログラマブルロジックコントローラ37に接続されている。このプログラマブルロジックコントローラ37が、エスカレータ全体の運転を制御しており、プログラマブルロジックコントローラ37からインバータ40へ状況に応じて速度パターンの変更指令が出力されるようになっている。
予めインバータ40は低速の速度パターンを記録しており、プログラマブルロジックコントローラ37からの何れかの速度への変更指令によって、モータ15の低速運転が容易に実施可能にされている。
またプログラマブルロジックコントローラ37の信号入力端子39には近接センサ29、30がそれぞれ接続されている。プログラマブルロジックコントローラ37は入力された信号の演算機能を持ち、近接センサ29、30の検知タイミング(値の上昇)を検出する。プログラマブルロジックコントローラ37は、これらの近接センサ29、30の検知タイミングを算出すること、及び初期の検知タイミング差を記憶することが可能になっている。
これら以外の構成については、チェーン伸び装置4はチェーン伸び検出装置1の構成と同じである。
図14(a)は本発明の第4実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の経時前における近接センサ29、30の出力波形例を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
次に上述の構成の本実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の動作について説明する。
プログラマブルロジックコントローラ37は、エスカレータの運転速度を、通常時の運転速度よりも遅くする。一例として運転速度が通常時の運転速度の1/4に下げられている。同図のように運転速度の低下により近接センサ29の波形の間隔が変化する。
最初に、保守員が近接センサ29からの検出波形と近接センサ30からの検出波形とを比較参照し、同図の波形が出力されるように、保守員が金具27、28および近接センサ29、30の位置を合わせ、近接センサ29、30の検知タイミングを一致させる。
近接センサ29、30の検知タイミングを一致させる調整により、駆動チェーン18が伸びる前の初期状態においては、運転速度によらず近接センサ29及び近接センサ30の検知タイミングは等しい。図14(a)のように運転速度の変化によらず検出信号波形に変化は無い。
図14(b)はチェーン伸び検出装置4の経時後における第1の運転速度による近接センサ29、30の出力波形例を示す図である。プログラマブルロジックコントローラ37はエスカレータの運転速度を通常時の運転速度のままにしている。駆動チェーン18が伸びた状態において増加した検知タイミングのずれ時間はδ1とする。つまり互いに検知タイミングがδ1だけずれた状態で近接センサ29、30からこれらの波形が検出されたものである。運転速度とは実質モータ15の周速度を指す。
図14(c)はチェーン伸び検出装置4の経時後における第2の運転速度による近接センサ29、30の出力波形例を示す図である。プログラマブルロジックコントローラ37は通常時の運転速度によるエスカレータ運転を一旦停止した後、この運転速度を通常時の運転速度の1/4に下げ、再度エスカレータを運転させ、図14(b)の例と同様にして検出した結果が示されている。駆動チェーン18が伸びた状態での検知タイミングのずれ時間をδ2とする。
エスカレータの運転速度が1/4に低下しているので、従動スプロケット13の回転角速度ωも1/4となる。検出遅れ時間δ2は、δ2=4・δ1となり、通常時の運転速度による遅れ時間の4倍の時間差となる(式(2)参照)。
エスカレータの運転速度が完全に一定で変動が無く、且つ近接センサ29、30の検知タイミングが完全に正確であれば、低速運転によって測定したとしても検出効果は十分では無い。しかし、エスカレータの運転速度はわずかに変動することがある。近接センサ29、30あるいは投光部35、受光部36等の光電センサ(図13)による検知タイミングには微妙な変動が生じる場合がある。そのため、検知タイミングに微小な誤差が生じる可能性がある。ただし本実施形態によるチェーン伸び検出装置4では、検出遅れ時間δ2が通常時の運転速度による遅れ時間の4倍である。一方、近接センサ29、30の検知タイミング及びエスカレータの運転速度の変動は何れも、運転速度を落とした状況で検出してもほとんど変化しない。このため、エスカレータの運転速度、近接センサ29、30あるいは光電センサによる検知タイミングの変動がたとえ存在したとしても、この変動の影響による検出精度の低下を1/4に低減できる。
また、プログラマブルロジックコントローラ37は、通常時の運転速度に対する運転速度の速度比を1/4と異なる速度比に設定して上記例と同様にチェーン伸び検出装置4を動作させてもよい。異なる速度比によって近接センサ29、30の検知タイミングのずれ量を検出した場合であっても、エスカレータの運転速度、近接センサ29、30等による検知タイミングの変動の影響による検出精度の低下を速度比に応じた量に低減できる。
本実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置では、近接センサ29、30及び光電センサ(図13)などの、従動スプロケット13、駆動スプロケット17の通過検知タイミングの変動が、駆動チェーン18の伸び量の検出精度に与える影響を低減させることができる。
(第5の実施形態)
上記第1〜第4の各実施形態において、検出データに対する以下の処理を行ってもよい。
本発明の第5実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置は、算出部31にデータ処理部41(図2)を設けている。データ処理部41は、金具27、28の周回1点の通過タイミングの差を、複数回検出し、複数回の検出により得たこの差の値を平均化しおよびその差に対してはずれ値除去のノイズ低減処理を行う。データ処理部41はCPU、ROM、RAMによる。それ以外の点について、以下特に断らない限り、本実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置は、上記チェーン伸び検出装置1の構成と同じである。
図15は本実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置によるチェーン伸び量の検出のためのデータ処理例を示す図である。
このような構成の本実施形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置は、例えば第1実施形態の方法によって算出部31が算出測定を複数実施する。図15の横軸は、1回目、2回目、…、n回目といった測定番号を表す。縦軸の一点は近接センサ29、30の検知タイミングの時間の真値(秒)を表し、n回の測定値がこの真値の付近で分布している。
駆動スプロケット17、従動スプロケット13の通過タイミング検出では、エスカレータ自体の微小な速度変動や、近接センサ29、30の検知タイミングの微小な変化などが生じることがある。微小な変化によって、測定値は真値よりも僅かにずれが生じる。また朝夕の時間帯により、あるいは建屋に催事が開催されるときは、乗客が一時的に踏段22に多数搭乗し、エスカレータの運転速度が一時的に低下する場合もある。その場合の測定値はn回の他の測定値から大きく外れる場合もある。
1回の測定値で伸びを判定したとすると、測定系が十分な精度をもって測定値を得られるのであれば問題はないが、測定系の測定精度が十分ではない場合、1回の測定では測定値に誤差が生じる可能性がある。そこで、本実施形態によるチェーン伸び検出装置は、複数回の検出の平均値を求める。また、図15のように、平均値から所定値を超えてはずれたはずれ値を持つデータ45は除去するなどの処理をデータ処理部41が実行する。より正確なチェーン伸びを検出できるようになる。
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記の実施形態では、乗客コンベアは動く歩道であってもよい。
上記実施形態では、算出部31は、従動スプロケット13のピッチ円直径と従動スプロケット13の回転数とを用いてもよい。単位時間あたりの回転角(rad/s)である角速度の代わりに、単位時間あたりの回転回数(1/s)である回転数を使ってもよいことは言うまでもない。角速度及び回転数間の単なる置換えによる算出によって実施したに過ぎない実施品に対して本発明の実施の形態に係る乗客コンベア用チェーン伸び検出装置の優位性は何ら損なわれるものではない。
ピッチ円直径PCDはPCD=P/[sin(180/T)°]により表される(ISO 606又はJIS B 1802)。ここでPはチェーンピッチであり、Tはスプロケット歯数である。
上記実施形態では、金具27(及び28)の形状及び大きさは、近接センサ29による金具27の検出感度による。金具27の大きさがコイル61の大きさより小さいと、検出感度が低下するため、大きなコイル61により大きな金具27を使えることが可能である。近接センサ29、30には、磁気検知センサが用いられてもよい。図5では、スプロケット17、13のピッチ円直径が異なる場合の例であるが、駆動スプロケット17のピッチ円直径と従動スプロケット13のピッチ円直径とが同じ場合、検知間隔は駆動スプロケット17及び従動スプロケット13両者とも常に同じとなる。
図8の検出方法は例示であり、検出方法は他の方法を用いてもよい。例えば初期状態の近接センサ29、30からの検出信号66、67の列の波形パターンを一定時間測定して測定結果を記録しておき、経時後、再度近接センサ29、30からの検出信号66、67の列の波形パターンを取得する。経時前後の波形パターンを比べることで、近接センサ29、30からの検出信号66、67の遅れ時間を実測して記憶し、上記式(3)の算出を行ってもよい。
各図において検出信号66、67のパルス個数の比、検出信号66、67のパルス形状、信号レベル、ハイローの比、立上りエッジ間隔は何れも例示であり種々変更可能である。これらの図のパルス個数の比等に限定されるものではない。縦軸は、信号電圧の代わりに信号電流の大きさで表されてもよい。
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
1,2,3,4,5…チェーン伸び検出装置(乗客コンベア用チェーン伸び検出装置)、10…主枠、11,19…機械室、12…駆動装置、13…スプロケット(従動スプロケット、従動輪)、14…制御装置、15…モータ、16…減速機、17…スプロケット(駆動スプロケット、駆動輪)、18…チェーン(駆動チェーン)、20…スプロケット、21…踏段チェーン、22…踏段、23…ベルト駆動プーリ、24…Vベルト、25…入力軸、26…踏段スプロケット、27,28…金具(被検出体)、29,30…近接センサ(センサ)、31…算出部、32…検知穴(貫通穴)、33,34…円盤、35…投光部、36…受光部、37…プログラマブルロジックコントローラ(算出部)、38…信号出力端子、39…信号入力端子、40…インバータ、41…データ処理部、42,43…乗降口、44…台、66,67検出信号。

Claims (10)

  1. 駆動源により回転する駆動輪と、
    この駆動輪の駆動力によりチェーンによって回転する従動輪と、
    これらの駆動輪および従動輪にそれぞれ設けられた被検出体と、
    前記被検出体毎に乗客コンベアの主枠に対して固定され前記被検出体の周回による回転通過を検出するセンサと、
    これらのセンサからの回転通過タイミングの差を求め、前記乗客コンベアの経時前後における前記差の増加量を求める算出部と、を備え、
    この算出部は前記増加量、前記駆動輪の角速度および前記従動輪の回転径によって前記チェーンの伸び量を算出することを特徴とする乗客コンベア用チェーン伸び検出装置。
  2. 前記被検出体は、前記チェーンに噛み合う複数の歯を有するスプロケットの側面に固定された一端およびこの一端から前記歯の歯先よりもこのスプロケットの径方向外方に向かう突起を有する金属物体であることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア用チェーン伸び検出装置。
  3. 前記センサは、金属により構成される前記被検出体の接近を検出する近接センサであることを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア用チェーン伸び検出装置。
  4. 前記算出部は、
    前記乗客コンベアの運転期間の経時前において各被検出体および前記被検出体毎のセンサに対する位置決め調整によって各センサからの検出信号の前記回転通過タイミングを一致させてから、前記運転期間の経時後において前記検出信号の前記回転通過タイミングの変動量を求めることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア用チェーン伸び検出装置。
  5. 前記算出部は、
    前記乗客コンベアの運転期間の経時前において互いに前記回転通過タイミングが第1時間差だけずれた状態の一方のセンサおよび他方のセンサからの波形を記憶し、前記運転期間の経時後において前記一方のセンサの前記回転通過タイミングに対する前記他方のセンサの前記回転通過タイミングが前記第1時間差よりも遅れる第2時間差を求め、これらの第1時間差および第2時間差の差分を求めることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア用チェーン伸び検出装置。
  6. 前記駆動源に対して電流をパルス幅変調した変調電流を出力するインバータと、
    このインバータへの前記駆動源からの複数の出力角速度の何れかに対応する速度変更指令を出力するコントローラと、を更に備え、
    このコントローラは前記駆動源を、前記駆動輪の通常運転時の角速度よりも小さい角速度で駆動することを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア用チェーン伸び検出装置。
  7. 前記算出部は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を用いたことを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア用チェーン伸び検出装置。
  8. 駆動源により回転する駆動輪と、
    この駆動輪の駆動力によりチェーンによって回転する従動輪と、
    これらの駆動輪および従動輪に同軸状に設けられ、それぞれ径方向に貫通穴を有する円盤と、
    前記円盤毎に設けられた投光部と、
    前記投光部からの光をそれぞれ前記貫通穴から受光する前記円盤毎に設けられた受光部と、
    前記受光部毎に検出された受光タイミングの差を求め、乗客コンベアの経時前後における前記差の増加量を求める算出部と、を更に備え、
    この算出部は前記増加量、前記駆動輪の角速度および前記従動輪の回転径によって前記チェーンの伸び量を算出することを特徴とする乗客コンベア用チェーン伸び検出装置。
  9. 前記算出部は、各被検出体の周回1点の通過タイミングの差を、複数回検出し、複数回の検出により得た前記差の値を平均化しおよび前記差に対してはずれ値除去のノイズ低減処理を行うことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか一に記載の乗客コンベア用チェーン伸び検出装置。
  10. 乗客コンベアの主枠に設けられた駆動源と、
    前記駆動源により回転する駆動輪と、
    この駆動輪の駆動力により無端状に循環するチェーンと、
    このチェーンにより回転する従動輪と、
    これらの駆動輪および従動輪にそれぞれ設けられた被検出体と、
    前記被検出体毎に前記主枠に対して固定され前記被検出体の周回による回転通過を検出するセンサと、
    これらのセンサからの回転通過タイミングの差を求め、前記乗客コンベアの経時前後における前記差の増加量を求める算出部と、を備え、
    この算出部は前記増加量、前記駆動輪の角速度および前記従動輪の回転径によって前記チェーンの伸び量を算出することを特徴とする乗客コンベア。
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