以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて、本発明を実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
[第一実施形態:正帯電単層型電子写真感光体]
第一実施形態は、正帯電単層型電子写真感光体(以下、単に「感光体」と記載する場合がある)に関する。以下、図1を参照して、本実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体について説明する。
正帯電単層型電子写真感光体1は、導電性基体2と、導電性基体2上に配置される単層型感光層3とを備える。単層型感光層3は、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂を含む。正孔輸送剤は、トリフェニルアミン誘導体(1)を含む。なお、化合物(1)については後述する。
上述のように、第一実施形態に係る感光体の単層型感光層3は、正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(1)を含む。これにより、感光体表面の結晶化を抑制するだけでなく、転写メモリーを抑制可能な正帯電単層型電子写真感光体1を得ることができる。これは、以下のような理由によると考えられる。
トリフェニルアミン誘導体(1)は、ビフェニル部位の両端に存在する窒素原子に結合したフェニル基のオルト位に、特定の置換基(R1及びR2)を有する。トリフェニルアミン誘導体(1)は、このような構造を有することにより、溶剤へ溶解性及び/又はバインダー樹脂への相溶性に優れる傾向にある。そのため、正孔輸送剤であるトリフェニルアミン誘導体(1)を、単層型感光層3中に均一に分散させることができる。
正孔輸送剤であるトリフェニルアミン誘導体(1)が均一に分散している単層型感光層3は、電荷の移動性に優れる傾向にある。このような単層型感光層3を備える感光体1では、転写バイアス印加時に付与される帯電とは逆極性の電荷を、速やかに移動させることができる。逆極性の電荷を輸送するのは電子輸送剤であるが、単層型感光層3中に電子輸送剤と正孔輸送剤のトリフェニルアミン誘導体(1)とが共に混在することにより、電子輸送剤のバインダー樹脂への相溶性が増加し、電子輸送剤の働きが強化されるためである。そのため、転写バイアス印加前の白紙部における電位と、転写バイアス印加時の白紙部における電位との差が、減少する傾向にある。その結果、感光体1上の電位が安定し、転写メモリーの発生を抑制することができる。なお、転写メモリーの発生の抑制は、非接触方式の帯電部よりも感光体1にとって過酷な条件で帯電が行われる、接触方式の帯電部を備える画像形成装置で、特に効果を発揮すると考えられる。
また、上述のように、特定の構造を有するトリフェニルアミン誘導体(1)は、溶剤への溶解性及び/又はバインダー樹脂への相溶性に優れる傾向にある。そのため、単層型感光層3の成膜時に、トリフェニルアミン誘導体(1)が単層型感光層3中で結晶化することを抑制することができる。その結果、感光体表面の結晶化を抑制することができる。
以上の理由から、本実施形態の正帯電単層型電子写真感光体1によれば、感光体表面の結晶化を抑制しつつ、転写メモリーの発生を効果的に抑制することができる。
次に、本実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体1について説明する。感光体1は、導電性基体2と、単層型感光層3とを備える。単層型感光層3は、導電性基体2上に配置される。
感光体1は、導電性基体2と、単層型感光層3とを備えている限り、特に限定されない。例えば、図1(a)に示すように、導電性基体2上に単層型感光層3が直接備えられていてもよい。あるいは、図1(b)に示すように、導電性基体2と単層型感光層3との間に適宜な中間層4が備えられていてもよい。また、図1(a)及び図1(b)に示すように、単層型感光層3が最外層として露出していてもよい。あるいは、図1(c)に示すように、単層型感光層3上に保護層5が適宜に備えられていてもよい。
以下、導電性基体2、及び単層型感光層3について説明する。
(1)導電性基体
導電性基体2は、正帯電単層型電子写真感光体1の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体2としては、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成される導電性基体を用いることができる。導電性基体2としては、例えば、導電性を有する材料で構成される導電性基体;及びプラスチック材料が導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、単層型感光層3から導電性基体2への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体2の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択することができる。例えば、シート状の導電性基体、又はドラム状の導電性基体を使用することができる。また、導電性基体2の厚みは、導電性基体2の形状に応じて、適宜選択することができる。
(2)単層型感光層
正帯電単層型電子写真感光体1が備える単層型感光層3は、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂を含む。以下、単層型感光層3に含まれる、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂について説明する。また、単層型感光層3に必要に応じて含まれてもよい添加剤について説明する。
(2−1)電荷発生剤
電荷発生剤は、正帯電単層型電子写真感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)、チタニルフタロシアニン(TiOPc)、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンのような無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、又はキナクリドン系顔料が挙げられる。
所望の領域に吸収波長を有する電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上の電荷発生剤を組み合わせて用いてもよい。更に、例えば、デジタル光学系の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用したレーザービームプリンター、又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。そのため、例えば、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンのような、フタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、フタロシアニン系顔料の結晶形状については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下程度の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料、又はペリレン系顔料が好適に用いられる。
感光体1において、電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
(2−2)正孔輸送剤
正孔輸送剤は、下記一般式(1)で表されるトリフェニルアミン誘導体を含む。
一般式(1)中、R1〜R7は、独立して互いに同一又は異なって、それぞれハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及び置換基を有してもよい炭素原子数6以上12以下のアリール基からなる群から選択される。k、l、m、n、o、及びpは、それぞれ0以上4以下の整数を表す。k、l、m、n、o、又はpが2以上の整数を表す場合、同一の芳香環に存在する、対応する複数のR3、R4、R5、R5、R6、又はR7は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
一般式(1)のR1及びR2は、それぞれ、炭素原子数1以上6以下のアルキル基であることが好ましい。π電子の広がりの程度を好適な状態に調節し、電荷輸送効率を向上させることができるためである。
同様の理由から、一般式(1)のR1〜R4は、独立して互いに同一又は異なって、それぞれ炭素原子数1以上6以下のアルキル基であり、k及びlは、1の整数を表すことがより好ましい。
同様の理由から、一般式(1)のR5は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基であることが好ましい。
また、本実施形態のトリフェニルアミン誘導体(1)はトランス型である。そのため、シス型と比較して、単層型感光層3中に含有された場合に結晶化し易い構造を有しているかのように推測されるかもしれない。しかしながら、特定の置換基を有することにより、結晶化が抑制された単層型感光層3を得ることができる。
一般式(1)のR1〜R7において、ハロゲン原子とは、例えば、フッ素、塩素又は臭素である。
一般式(1)のR1〜R7において、炭素原子数1以上6以下のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、又はヘキシル基である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又はt−ブチル基が好ましい。
一般式(1)のR1〜R7において、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基とは、例えば、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、又はヘキシルオキシ基である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
一般式(1)のR1〜R7において、炭素原子数6以上12以下のアリール基とは、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基である。炭素原子数6以上12以下のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
上述のアルキル基、アルコキシ基、又はアリール基は、置換基にて置換されていてもよい。置換基としては、特に限定されないが、例えばアルキル基、アルコキシ基、又はアリール基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数6以上12以下のアリール基が挙げられる。置換基としての炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例としては、一般式(1)のR1〜R7における炭素原子数1以上6以下のアルキル基として例示される基と同様の基が挙げられる。置換基としての炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例としては、一般式(1)のR1〜R7における炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基として例示される基と同様の基が挙げられる。置換基としての炭素原子数6以上12以下のアリール基の例としては、一般式(1)のR1〜R7における炭素原子数6以上12以下のアリール基として例示される基と同様の基が挙げられる。
一般式(1)において、k及びlは、1の整数を表すことが好ましい。R3又はR4が結合するベンゼン環の置換基の数を少なくすることにより、単層型感光層3中でのトリフェニルアミン誘導体(1)の結晶化を一層抑制することができるためである。
トリフェニルアミン誘導体(1)の具体例は、下記式(HT−1)〜(HT−8)で示される。以下、式(HT−1)〜トリフェニルアミン誘導体(HT−8)を、各々、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)〜(HT−8)と記載する場合がある。
上述の具体例のうち、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)〜(HT−5)の1H−NMRスペクトルを、それぞれ図4〜図8に示す。
以下、トリフェニルアミン誘導体(1)の製造方法を説明する。トリフェニルアミン誘導体(1)の製造方法は、以下の反応式(R−1)、(R−2)、及び(R−3)で表される反応を含む。このような製造方法は、トランス型のトリフェニルアミン誘導体を製造することを意図しており、シス型及びトランス型という幾何異性のトリフェニルアミン誘導体を製造することを考慮する必要がない。そのため、合成時の反応条件又は材料の配合比を特定する必要がなく、容易な操作で、かつ高収率でトリフェニルアミン誘導体を製造することができる。
反応式(R−1)、(R−2)、及び(R−3)中、R1〜R7、k、l、m、n、o、及びpは、一般式(1)におけるR1〜R7、k、l、m、n、o、及びpと同義である。Xは、例えば塩素、又はフッ素のようなハロゲン原子を示す。
反応式(R−1)で表される反応では、一般式(2)及び(3)で表される化合物(アニリン誘導体)と、一般式(4)で表される化合物(ビフェニル誘導体)とを反応させて、一般式(5)で表される化合物(ビフェニルアミン誘導体)を得る。
アニリン誘導体と、ビフェニル誘導体との反応比[(アニリン誘導体):(ビフェニル誘導体)]は、モル比で、1:1以上2:1以下であることが好ましい。アニリン誘導体のモル数に対するビフェニル誘導体のモル数が過小であると、一般式(5)で表されるビフェニルアミン誘導体の収率が過度に低くなることがある。一方、アニリン誘導体のモル数に対するビフェニル誘導体のモル数が過大であると、過剰となったビフェニル誘導体が未反応のまま過度に残留し、ビフェニルアミン誘導体の精製が困難になることがある。
反応式(R−1)で表される反応に関し、反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましい。反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応式(R−1)で表される反応においては、触媒としてパラジウム化合物を用いることが好ましい。触媒としてパラジウム化合物を用いることにより、反応式(R−1)で表される反応における活性化エネルギーが効果的に低下する。その結果、ビフェニルアミン誘導体の収率を向上させることができる。
パラジウム化合物の具体例としては、四価パラジウム化合物類、二価パラジウム化合物類、又はその他のパラジウム化合物類が挙げられる。四価パラジウム化合物類としては、例えば、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、又はヘキサクロルパラジウム(IV)酸カリウム四水和物が挙げられる。二価パラジウム化合物類としては、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセテート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラミンパラジウム(II)、又はジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)が挙げられる。その他のパラジウム化合物類としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0)又はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。パラジウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
パラジウム化合物の添加量は、一般式(4)で表されるビフェニル誘導体1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
このようなパラジウム化合物は、配位子を含む構造であってもよい。これにより、反応式(R−1)で表される反応の反応性を向上させることができる。配位子としては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフリルホスフィン、トリ(o−トル)ホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、又は2,2’−ビス[(ジフェニルホスフィノ)ジフェニル]エーテルが挙げられる。配位子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。配位子の添加量は、一般式(4)で表されるビフェニル誘導体1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
また、反応式(R−1)で表される反応は、塩基の存在下で実行されることが好ましい。
反応式(R−1)で表される反応を塩基の存在下で実行することにより、反応系中で発生するハロゲン化水素が速やかに中和され、触媒活性が向上する。その結果、一般式(5)で表されるビフェニルアミン誘導体の収率を向上させることができる。
塩基は、無機塩基であってもよいし、有機塩基であってもよい。有機塩基としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属アルコシド(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、又はカリウム−tert−ブトキシド)が好ましく、ナトリウム−tert−ブトキシドがより好ましい。また、無機塩基としては、リン酸三カリウム、又はフッ化セシウムが挙げられる。
一般式(4)で表されるビフェニル誘導体1モルに対して、パラジウム化合物0.0005モル以上20モル以下を加えた場合、塩基の添加量は1モル以上10モル以下であることが好ましく、1モル以上5モル以下であることがより好ましい。
反応式(R−1)で表される反応は、溶剤中で行うことができる。溶剤としては、例えば、キシレン(o−、m−、又はp−)、トルエン、テトラヒドロフラン、又はジメチルホルムアミドが挙げられる。
次に、反応式(R−2)で表される反応について説明する。反応式(R−2)においては、一般式(6)で表されるベンゼン誘導体と、一般式(7)で表される亜リン酸トリエチルとを反応させて、一般式(8)で表されるホスホナート誘導体を得る。
ベンゼン誘導体と亜リン酸トリエチルとの反応比[(ベンゼン誘導体):(亜リン酸トリエチル)]は、モル比で、1:1以上1:2.5以下であることが好ましい。ベンゼン誘導体のモル数に対する亜リン酸トリエチルのモル数が過小であると、ホスホナート誘導体の収率が過度に低下する場合がある。一方、ベンゼン誘導体のモル数に対する亜リン酸トリエチルのモル数が過大であると、反応後に未反応の亜リン酸トリエチルが過度に残留し、ホスホナート誘導体の精製が困難となることがある。
ベンゼン誘導体と亜リン酸トリエチルとの反応に関し、反応温度は160℃以上200℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上16時間以下であることが好ましい。
次いで、一般式(8)で表されるホスホナート誘導体と、別途準備した一般式(9)及び(10)で表されるシンナムアルデヒド誘導体とを反応させて、一般式(11)及び(12)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を得る(Wittig反応)。
ホスホナート誘導体とシンナムアルデヒド誘導体との反応比[(ホスホナート誘導体):(シンナムアルデヒド誘導体)]は、モル比で、1:1以上1:2.5以下であることが好ましい。ホスホナート誘導体のモル数に対するシンナムアルデヒド誘導体のモル数が過小であるとジフェニルブタジエン誘導体の収率が過度に低下することがある。ホスホナート誘導体のモル数に対するシンナムアルデヒド誘導体のモル数が過大であると、未反応のシンナムアルデヒド誘導体が過度に残留し、ジフェニルブタジエン誘導体の精製が困難となることがある。
Wittig反応は触媒の存在下にて行うことができる。用いられる触媒としては、例えば、ナトリウムアルコキシド(ナトリウムメトキシド、又はナトリウムエトキシド)、金属水素化物(水素化ナトリウム、又は水素化カリウム)、又は金属塩(例えば、n−ブチルリチウム)が挙げられる。これらの触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。こうした触媒の添加量は、シンナムアルデヒド誘導体の合計1モルに対して、1モル以上2モル以下であることが好ましい。こうした触媒の添加量が過少であると、反応性が著しく低下することがある。一方、こうした触媒の添加量が過多であると、反応の制御が困難になることがある。
ホスホナート誘導体とシンナムアルデヒドとの反応に関し、反応温度は0℃以上70℃以下であることが好ましく、反応時間は10時間以上20時間以下であることが好ましい。
反応式(R−2)で表される反応は、例えば溶剤中で実行される。溶剤としては、例えば、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、又はジオキサン)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、又はジクロロエタン)、又は芳香族炭化水素(ベンゼン、又はトルエン)が挙げられる。
次いで、反応式(R−3)で表される反応について述べる。本反応では、反応式(R−1)にて得られた式(5)で表されるビフェニルアミン誘導体と、反応式(R−2)にて得られた式(11)及び(12)で表されるジフェニルブタジエン誘導体とを反応させて、最終目的物であるトリフェニルアミン誘導体(1)を合成する。
ビフェニルアミン誘導体とジフェニルブタジエン誘導体との反応比[(ビフェニルアミン誘導体のモル数):(式(11)及び(12)で表されるジフェニルブタジエン誘導体の合計モル数)]は、1:1以上1:5以下であることが好ましく、1:1以上1:3以下であることがより好ましい。ビフェニルアミン誘導体のモル数に対してジフェニルブタジエン誘導体のモル数が過少であると、トリフェニルアミン誘導体(1)の収率が過度に低下することがある。一方、ビフェニルアミン誘導体のモル数に対してジフェニルブタジエン誘導体のモル数が過大であると、反応終了後に、過剰のジフェニルブタジエン誘導体が未反応のまま過度に残留し、トリフェニルアミン誘導体(1)の精製が困難となることがある。
反応式(R−3)で表される反応に関し、反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
また、反応式(R−3)で表される反応には、触媒としてパラジウム化合物を用いることが好ましい。
触媒としてパラジウム化合物を用いることにより、反応式(R−3)で表される反応における活性化エネルギーが効果的に低下する。その結果、トリフェニルアミン誘導体(1)の収率をより向上させることができる。
パラジウム化合物としては、例えば、四価パラジウム化合物類、二価パラジウム化合物類、又はその他のパラジウム化合物類が挙げられる。四価パラジウム化合物類としては、例えば、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、又はヘキサクロルパラジウム(IV)酸カリウム四水和物が挙げられる。二価パラジウム化合物類としては、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセテート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラミンパラジウム(II)、又はジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)が挙げられる。その他のパラジウム化合物類としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0)又はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。パラジウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
パラジウム化合物の添加量は、ビフェニルアミン誘導体1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.001モル以上1モル以下である。
また、反応式(R−3)で表される反応は、塩基の存在下で行われることが好ましい。
反応式(R−3)で表される反応を塩基の存在下で行うことにより、反応系中で発生するハロゲン化水素が速やかに中和され、触媒活性が向上する。その結果、トリフェニルアミン誘導体(1)の収率を向上させることができる。
塩基は、無機塩基であってもよいし、有機塩基であってもよい。有機塩基としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属アルコシド(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、又はカリウム−tert−ブトキシド)が好ましく、ナトリウム−tert−ブトキシドがより好ましい。また、無機塩基としては、リン酸三カリウム、又はフッ化セシウムが挙げられる。
ビフェニルアミン誘導体1モルに対して、パラジウム化合物0.0005モル以上20モル以下を加えた場合、塩基の添加量は、1モル以上10モル以下であることが好ましく、1モル以上5モル以下であることがより好ましい。
このようなパラジウム化合物は、配位子を含む構造であってもよい。これにより、反応式(R−3)で表される反応の反応性を向上させることができる。配位子としては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフリルホスフィン、トリ(o−トル)ホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、又は2,2’−ビス[(ジフェニルホスフィノ)ジフェニル]エーテルが挙げられる。配位子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。配位子の添加量は、ビフェニルアミン誘導体1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
反応式(R−3)で表される反応は、溶剤中で行うことができる。溶剤としては、例えば、キシレン(具体的には、o−、m−、又はp−キシレン)、トルエン、テトラヒドロフラン、又はジメチルホルムアミドが挙げられる。
本実施形態の製造方法では、反応式(R−1)、(R−2)又は(R−3)で表される反応を行う工程以外に、必要に応じて適宜な工程を含んでいてもよい。
正帯電単層型電子写真感光体1において、正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
(2−3)電子輸送剤
単層型感光層3は、電子輸送剤を含む。これにより、単層型感光層3は電子を輸送することができ、単層型感光層3にバイポーラー(両極性)の特性を付与しやすくなる。
電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物(具体的には、ナフトキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アゾキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、又はジニトロアントラキノン系化合物)、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる
電子輸送剤として、より具体的には、下記式(ETM−I)〜(ETM−IV)で表される電子輸送剤が挙げられる。
式(ETM−I)〜(ETM−IV)中、R11〜R22は、独立して互いに同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、及び置換基を有してもよい複素環基からなる群から選択される。R23は、ハロゲン原子、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、及び置換基を有してもよい複素環基からなる群から選択される。
式(ETM−I)〜(ETM−IV)中のR11〜R23において、アルキル基としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基、tert-ブチル基、又は1,1−ジメチルプロピル基が一層好ましい。このようなアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、又はこれらを組み合わせたアルキル基のいずれであってもよい。このようなアルキル基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はシアノ基が挙げられる。このようなアルキル基が有してもよい置換基の数は、特に限定されないが、3以下であることが好ましい。
式(ETM−I)〜(ETM−IV)中のR11〜R23において、アルケニル基としては、例えば炭素原子数2以上10以下のアルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2以上6以下のアルケニル基が挙げられ、より好ましくは炭素原子数2以上4以下のアルケニル基が挙げられる。アルケニル基は、直鎖状アルケニル基、分岐鎖状アルケニル基、環状アルケニル基、又はこれらを組み合わせたアルケニル基のいずれであってもよい。アルケニル基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、及びシアノ基が挙げられる。アルケニル基が有してもよい置換基の数は、特に限定されないが、3以下であることが好ましい。
式(ETM−I)〜(ETM−IV)中のR11〜R23において、アルコキシ基としては、例えば炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が挙げられ、より好ましくは炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、直鎖状アルコキシ基、分岐鎖状アルコキシ基、環状アルコキシ基、又はこれらを組み合わせたアルコキシ基のいずれであってもよい。アルコキシ基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、及びシアノ基が挙げられる。アルコキシ基が有してもよい置換基の数は、特に限定されないが、3以下であることが好ましい。
式(ETM−I)〜(ETM−IV)中のR11〜R23において、アラルキル基としては、例えば炭素原子数7以上15以下のアラルキル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数7以上13以下のアラルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素原子数7以上12以下のアラルキル基が挙げられる。アラルキル基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上4以下の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を含むアルコキシカルボニル基、及びフェノキシカルボニル基が挙げられる。アラルキル基が有してもよい置換基の数は、特に限定されないが、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
式(ETM−I)〜(ETM−IV)中のR11〜R23において、芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、2個又は3個のベンゼン環が縮合されることにより形成される基、及び2個又は3個のベンゼン環が単結合により連結されることにより形成される基が挙げられる。芳香族炭化水素基に含まれるベンゼン環の数は、例えば1以上3以下であり、好ましくは1又は2である。芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上4以下の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を含むアルコキシカルボニル基、及びフェノキシカルボニル基が挙げられる。
式(ETM−I)〜(ETM−IV)中のR11〜R23において、複素環基としては、N、S、及びOからなる群より選択される1以上のヘテロ原子を含む5員又は6員の単環の複素環基;このような単環同士が縮合した複素環基;及び、このような単環と、5員又は6員の炭化水素環とが縮合した複素環基が挙げられる。複素環基が縮合環である場合、縮合環に含まれる環の数は3以下であることが好ましい。複素環基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上4以下の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を含むアルコキシカルボニル基、及びフェノキシカルボニル基が挙げられる。
式(ETM−IV)中のR23において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子が挙げられる。
このような電子輸送剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
正帯電単層型電子写真感光体1において、電子輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
(2−4)バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、又はポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、又はその他架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート樹脂、又はウレタン−アクリレート共重合樹脂が挙げられる。
これらの樹脂の中では、加工性、機械的特性、光学的特性、及び/又は耐摩耗性のバランスに優れた単層型感光層3が得られることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂、及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂としてより具体的には、下記式で表される樹脂が挙げられる。
これらのバインダー樹脂は1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
バインダー樹脂の分子量は、粘度平均分子量で40000以上であることが好ましく、40000以上52500以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の分子量が低過ぎると、バインダー樹脂の耐摩耗性を十分に高めることができず、単層型感光層3が摩耗し易くなる。また、バインダー樹脂の分子量が高過ぎると、単層型感光層3の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解しにくくなり、塗布液の粘度が高くなり過ぎるため、単層型感光層3の形成が困難になる傾向がある。
(2−5)添加剤
本実施形態に係る感光体1においては、単層型感光層3、中間層4、及び保護層5のうちの少なくとも一つが、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、又はレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、BHT(ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン若しくはこれらの誘導体、有機硫黄化合物、又は有機燐化合物が挙げられる。
(3)正帯電単層型電子写真感光体の製造方法
次に、正帯電単層型電子写真感光体1の製造方法について説明する。正帯電単層型電子写真感光体1は、単層型感光層3用塗布液(以下「塗布液」と記載する場合がある)を導電性基体2上に塗布し、乾燥することによって製造される。塗布液は、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂、並びに必要に応じて各種の添加剤を、溶剤に溶解又は分散させることにより製造される。
塗布液に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール)、脂肪族系炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル、又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体1の製造過程における作業者の安全衛生を改善するためには、溶剤としてハロゲン化炭化水素以外の溶剤を用いることが好ましい。
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散機を用いることができる。
塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体2上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、又はバーコート法が挙げられる。
塗布液を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る方法である限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
正帯電単層型電子写真感光体1の単層型感光層3の厚さは、単層型感光層として充分に作用することができる限り、特に限定されない。単層型感光層3の厚さは、例えば5μm以上100μm以下であり、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
正帯電単層型電子写真感光体1は、直流電圧を印加する接触方式の帯電部を備える画像形成装置において、像担持体として使用されることが好ましい。接触方式の帯電部を備える画像形成装置は、非接触方式の帯電部を備える画像形成装置と比べて、オゾン及びNOXのような感光体1に悪影響を及ぼすガスの発生が少ないという利点を有する。しかし、正帯電単層型電子写真感光体1が用いられる場合、交流電圧を印加する帯電部を備える画像形成装置であると、印加されるマイナス成分(逆極性のバイアス)により、感光体1の表面の電位の安定性が低下することがある。従って、正帯電単層型電子写真感光体1を接触方式の帯電部を備える画像形成装置に用いる場合には、直流電圧を印加する方式を採用することが好ましい。また、転写時には被転写体を介して感光体1にマイナス成分(逆極性のバイアス)が印加される。しかし、感光体1によれば、逆極性の電荷を速やかに移動することができるため、感光体1上の電位を安定させることが可能となる。その結果、このような接触方式の帯電部を備える画像形成装置において、転写メモリーの発生を抑制する効果が、特に発揮されると考えられる。
以上、図1を参照して、本実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を説明した。本実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体は、感光体表面の結晶化を抑制しつつ、転写メモリーの発生を抑制することができる。このため、本実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体は、種々の画像形成装置において、像担持体として好適に使用される。
[第二実施形態:画像形成装置]
第二実施形態は、画像形成装置に関する。以下、図2を参照して、本実施形態に係る画像形成装置を説明する。図2は、第一実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体1を備える、本実施形態の画像形成装置6の構成を示す概略図である。
画像形成装置6は、像担持体と、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部とを備える。帯電部は、像担持体の表面を帯電する。露光部は、帯電された像担持体の表面を露光して、像担持体の表面に静電潜像を形成する。現像部は、静電潜像をトナー像として現像する。転写部は、トナー像を像担持体から被転写体へ転写する。像担持体は、第一実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体1である。
画像形成装置6は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置6は、例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。異なる色のトナーによる各色のトナー像を形成するために、本実施形態の画像形成装置6は、タンデム方式のカラー画像形成装置であってもよい。
以下、タンデム方式のカラー画像形成装置6を例に挙げて説明する。タンデム方式のカラー画像形成装置6は、所定方向に並設された複数の正帯電単層型電子写真感光体1(像担持体に相当)と、複数の現像装置29とを備える。複数の現像装置29は、各々、感光体1に対向して配置される。複数の現像装置29は、現像装置29の表面にトナーを担持して搬送する。複数の現像装置29は、各々、現像ローラーを備える。現像ローラーは、搬送されたトナーを、対応する感光体1の表面に供給する。そして、感光体1として、トリフェニルアミン誘導体(1)を含有する第一実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を用いることができる。
図2に示すように、画像形成装置6は、箱型の機器筺体7を有している。機器筺体7内には、給紙部8、画像形成部9、及び定着部10が設けられる。給紙部8は、用紙Pを給紙する。画像形成部9は、給紙部8から給紙された用紙Pを搬送しながら、用紙Pに画像データに基づくトナー像を転写する。定着部10は、画像形成部9で用紙P上に転写された未定着のトナー像を、用紙Pに定着させる。更に、機器筺体7の上面には、排紙部11が設けられる。排紙部11は、定着部10で定着処理された用紙Pを排紙する。
給紙部8には、給紙カセット12、ピックアップローラー13、給紙ローラー14、15、及び16、並びにレジストローラー対17が備えられる。給紙カセット12は、機器筺体7から挿脱可能に設けられる。給紙カセット12には、各種サイズの用紙Pが貯留される。ピックアップローラー13は、給紙カセット12の左上方位置に設けられる。ピックアップローラー13は、給紙カセット12に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー14、15、及び16は、ピックアップローラー13によって取り出された用紙Pを搬送する。レジストローラー対17は、給紙ローラー14、15、及び16によって搬送された用紙Pを、一時待機させた後に、所定のタイミングで画像形成部9に供給する。
また、給紙部8は、手差しトレイ(不図示)と、ピックアップローラー18とを更に備えている。手差しトレイは、機器筺体7の左側面に取り付けられる。ピックアップローラー18は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラー18によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー14、15及び16によって搬送され、レジストローラー対17によって、所定のタイミングで画像形成部9に供給される。
画像形成部9には、画像形成ユニット19、中間転写ベルト20、及び二次転写ローラー21が備えられる。中間転写ベルト20には、画像形成ユニット19によって、中間転写ベルト20の表面(一次転写ローラー33との接触面)に、トナー像が一次転写される。なお、一次転写されるトナー像は、コンピューターのような上位装置から伝送された画像データに基づいて形成される。二次転写ローラー21は、中間転写ベルト20上のトナー像を、給紙カセット12から送り込まれた用紙Pに二次転写する。
画像形成ユニット19には、上流側(図2では右側)から下流側に向けて、マゼンタトナー供給用ユニット25、シアントナー供給用ユニット24、イエロートナー供給用ユニット23、及びブラックトナー供給用ユニット22が順次配設されている。ユニット22、23、24、及び25には、各ユニットの中央位置に、感光体1(像担持体に相当)が配設されている。感光体1は、矢符(時計回り)方向に回転可能に配設されている。
そして、各感光体1の周囲には、帯電装置27(帯電部に相当)、露光装置28(露光部に相当)、現像装置29(現像部に相当)、クリーニング装置(不図示)、及び除電器(不図示)が、各感光体1の回転方向上流側から順に配置されている。感光体1として、第一実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体1が用いられる。
帯電装置27(帯電部に相当)は、感光体1(像担持体に相当)の表面を帯電する。具体的には、帯電装置27は、矢符方向に回転されている感光体1の周面を均一に帯電する。帯電装置27は、感光体1の周面を均一に帯電できる限り特に限定されない。帯電装置27は、非接触方式の帯電装置であってもよいし、接触方式の帯電装置であってもよい。帯電装置27としては、例えば、コロナ帯電装置、帯電ローラー、及び帯電ブラシが挙げられる。帯電装置27としては、接触方式の帯電装置(具体的には、帯電ローラー、帯電ブラシ)が好ましく、帯電ローラーがより好ましい。接触方式の帯電装置27を使用することにより、帯電装置27から発生する活性ガス(例えば、オゾン、及び窒素酸化物)の排出を抑えることができる。その結果、活性ガスによる単層型感光層3の劣化が抑制されるとともに、オフィス環境に配慮した設計を達成することができる。
帯電装置27が接触方式の帯電ローラーを備える場合、帯電ローラーは、感光体1と接触したまま、感光体1の周面(表面)を帯電する。このような帯電ローラーとしては、例えば、感光体1と接触したまま、感光体1の回転に従属して回転する帯電ローラーが挙げられる。また、帯電ローラーとしては、例えば、少なくとも表面部が樹脂で構成された帯電ローラーが挙げられる。帯電ローターとしてより具体的には、例えば、回転可能に軸支された芯金と、芯金上に形成された樹脂層と、芯金に電圧を印加する電圧印加部とを備えた帯電ローラーが挙げられる。このような帯電ローラーを備えた帯電装置27は、電圧印加部が芯金に電圧を印加することによって、樹脂層を介して接触する感光体1の表面を帯電させることができる。
帯電装置27が印加する電圧は、特に限定されない。しかし、帯電装置27が交流電圧を印加する場合、又は直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を印加する場合よりも、帯電装置27は直流電圧のみを印加することが好ましい。帯電装置27が直流電圧のみを印加する場合、単層型感光層3の磨耗量が少なくなる傾向があるためである。その結果、好適な画像を形成することができる。帯電装置27が感光体1に印加する直流電圧は、1000V以上2000V以下であることが好ましく、1200V以上1800V以下であることがより好ましく、1400V以上1600V以下であることが特に好ましい。
帯電ローラーの樹脂層を構成する樹脂は、感光体1の周面を良好に帯電させることができる限り特に限定されない。樹脂層を構成する樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン変性樹脂が挙げられる。樹脂層には、無機充填材を含有させてもよい。
露光装置28(露光部に相当)は、いわゆるレーザー走査ユニットである。露光装置28は、帯電された感光体1(像担持体に相当)の表面を露光して、感光体1の表面に静電潜像を形成する。具体的には、露光装置28は、帯電装置27によって均一に帯電された感光体1の周面(表面)に、パーソナルコンピューターのような上位装置から入力された画像データに基づくレーザー光を照射する。これにより、感光体1の周面(表面)に、画像データに基づく静電潜像が形成される。
現像装置29(現像部に相当)は、静電潜像をトナー像として現像する。具体的には、現像装置29は、静電潜像が形成された感光体1の周面にトナーを供給し、画像データに基づくトナー像を形成する。そして、形成されたトナー像が中間転写ベルト20に一次転写される。クリーニング装置は、中間転写ベルト20へのトナー像の一次転写が終了した後、感光体1の周面に残留しているトナーを清掃する。除電器は、中間転写ベルト20へのトナー像の一次転写が終了した後、感光体1の周面を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清掃及び除電された感光体1の周面は、帯電装置27へ送られ、新たに帯電処理される。
中間転写ベルト20は、無端状のベルト回転体である。中間転写ベルト20は、駆動ローラー30、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の一次転写ローラー33に架け渡されている。複数の感光体1の周面が、各々、中間転写ベルト20の表面(接触面)に当接するように、中間転写ベルト20は設置されている。
また、中間転写ベルト20は、各感光体1に対向して配置される一次転写ローラー33によって、感光体1に押圧される。押圧された状態で、中間転写ベルト20は、複数の一次転写ローラー33によって無端回転する。駆動ローラー30は、ステッピングモーターなどの駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト20を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の一次転写ローラー33は、回転自在に設けられる。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び一次転写ローラー33は、駆動ローラー30による中間転写ベルト20の無端回転に伴って、従動回転する。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び一次転写ローラー33は、駆動ローラー30の主動回転に応じて中間転写ベルト20を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト20を支持する。
転写部は、トナー像を像担持体から被転写体へ転写する。具体的には、一次転写ローラー33は、一次転写バイアス(具体的には、トナーの帯電極性と逆極性を有するバイアス)を中間転写ベルト20(被転写体に相当)に印加する。その結果、各感光体1上に形成されたトナー像は、各感光体1と一次転写ローラー33との間で、駆動ローラー30の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト20に対して、順次転写(一次転写)される。
二次転写ローラー21は、二次転写バイアス(具体的には、トナー像と逆極性を有するバイアス)を用紙Pに印加する。その結果、中間転写ベルト20上に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー21とバックアップローラー32との間で用紙Pに転写される。これにより、未定着のトナー像が用紙Pに転写される。
ここで、本実施形態では、中間転写ベルト20を用いる中間転写方式を採用した画像形成装置6について説明している。しかし、第一実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体1は、直接転写方式を採用する画像形成装置において一層好適に使用することができる。直接転写方式は、感光体ドラムの表面に現像されたトナー像を、転写ベルトにより搬送される用紙Pに、直接転写する方式である。直接転写方式を採用する画像形成装置では、用紙Pに起因する異物が、感光体ドラムの表面に付着しやすい。そのため、生じた付着物が、帯電低下を引き起こす場合がある。このような帯電低下の影響によって、直接転写方式を採用する画像形成装置では、転写メモリーが発生しやすくなる。しかし、第一実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体1を備えることにより、転写メモリーを引き起こしやすい直接転写方式を採用する画像形成装置においても、転写メモリーの発生を効果的に抑制することができる。直接転写方式を採用する画像形成装置については、図3を参照して後述する。
定着部10は、画像形成部9で用紙Pに転写された未定着トナー像を定着させる。定着部10は、加熱ローラー34と、加圧ローラー35とを備えている。加熱ローラー34は、通電発熱体により加熱される。加圧ローラー35は、加熱ローラー34に対向配置され、加圧ローラー35の周面が加熱ローラー34の周面に押圧される。
画像形成部9で二次転写ローラー21により用紙Pに転写された転写画像は、用紙Pが加熱ローラー34と加圧ローラー35との間を通過する際の加熱による定着処理により用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部11へ排紙される。また、定着部10と排紙部11との間の適所に、複数の搬送ローラー36が配設されている。
排紙部11は、機器筺体7の頂部が凹没されることによって形成される。凹没した凹部の底部に、排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ37が設けられる。以上、図2を参照して、本実施形態に係る画像形成装置について説明した。
以下、図3を参照して、本実施形態の別の態様に係る直接転写方式を採用する画像形成装置について説明する。なお、図3において、図2に対応する要素には同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。図3に示すように、転写ベルト40は、無端状のベルト状回転体である。転写ベルト40は、駆動ローラー30、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の転写ローラー41に架け渡されている。各感光体1の周面が転写ベルト40の表面(接触面)に当接するように、転写ベルト40は設置される。転写ベルト40は、各感光体1に対向して配置される各転写ローラー41によって、感光体1に押圧される。押圧された状態で、転写ベルト40は、複数のローラー30、31、32、及び41によって無端回転する。駆動ローラー30は、ステッピングモーターのような駆動源によって回転駆動し、転写ベルト40を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び転写ローラー41は、回転自在に設けられる。駆動ローラー30による転写ベルト40の無端回転に伴って、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の転写ローラー41は従動回転する。これらのローラー31、32、41は、従動回転するとともに、転写ベルト40を支持する。レジストローラー対17から供給された用紙Pは、吸着ローラー42によって転写ベルト40上に吸着される。転写ベルト40上に吸着された用紙Pは、転写ベルト40の回転に伴い、各感光体1と対応する転写ローラー41との間を通過する。
各転写ローラー41は、転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を、転写ベルト40上に吸着された用紙Pに印加する。これにより、感光体1上に形成されたトナー像は、各感光体1と対応する転写ローラー41との間で、用紙Pに転写される。転写ベルト40は、駆動ローラー30の駆動により矢符(時計回り)方向に周回する。これに伴い、転写ベルト40上に吸着された用紙Pは、各感光体1と対応する転写ローラー41との間を順次通過する。通過する際に、各感光体1上に形成された対応する色のトナー像が、重ね塗り状態で順次用紙Pに転写される。この後、各感光体1は更に回転し、次のプロセスに移行する。以上、図3を参照して、本実施形態の別の態様に係る直接転写方式を採用する画像形成装置について説明した。
図2及び図3を参照して説明したように、本実施形態に係る画像形成装置は、像担持体として、転写メモリーを抑制可能な、第一実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を備えている。このような正帯電単層型電子写真感光体を備えることで、本実施形態に係る画像形成装置は、画像不良の発生を抑制することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
(1)トリフェニルアミン誘導体の合成
[トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の合成]
まず、下記反応式(R−4)に示すような反応を行った。
具体的には、2L容の2口のフラスコに、式(13)で表されるアニリン誘導体6.8g(0.05モル)と、式(14)で表されるジクロロビフェニル5.6g(0.025モル)と、トリシクロヘキシルホスフィン(Pcy3)0.0662g(0.000189モル)と、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)0.0864g(0.0000944モル)と、ナトリウム−tert−ブトキシド(t−BuONa)7.68g(0.08モル)とを投入した。更に、蒸留したo−キシレンを500mL加えた。その後、アルゴンガス置換を行い、120℃で攪拌しつつ5時間反応を行った。
次に、反応液(反応生成物とo−キシレンとを含む溶液)を室温まで冷却し、有機相を得た。得られた有機相をイオン交換水を用いて3回洗浄した。更に、有機相に対し、無水硫酸ナトリウム及び活性白土を用いて、乾燥及び吸着処理を行った。その後、o−キシレンを減圧留去し残渣を得た。
得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンとの混合溶媒)を用いて精製し、式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体7.5g(収率:71%)を得た。
次いで、下記反応式(R−5)に示すような反応を行った。
具体的には、200mL容のフラスコに式(16)で表されるベンゼン誘導体16.1g(0.1モル)と、亜リン酸トリエチル25g(0.15モル)とを投入した。これを、180℃で加熱しながら8時間攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、過剰な亜リン酸トリエチルを減圧留去して、式(17)で表されるホスホナート誘導体(白色液体)24.1g(収率:92%)を得た。
そして、500mLの2口フラスコに、式(17)で表されるホスホナート誘導体13.0g(0.05モル)を投入し、アルゴンガス置換を行った。ここに、乾燥させたテトラヒドロフラン(THF)100mLと、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(濃度28質量%)9.3g(0.05モル)とを加え、0℃で30分間攪拌した。反応液に、式(18)で表されるシンナムアルデヒド誘導体7.0g(0.05モル)を乾燥THF300mLに溶解させた混合液を投入し、室温で12時間攪拌した。
その後、反応液をイオン交換水に注ぎ、トルエンにて抽出して有機相(トルエン相)を得た。得られた有機相をイオン交換水にて5回洗浄した。次いで、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶剤を留去して残渣を得た。その後、残渣を溶剤(トルエン20mLとメタノール100mLとの混合溶剤)で再結晶させることにより精製し、式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体(白色結晶)10.22g(収率:80%)を得た。
次いで、下記反応式(R−6)に示すような反応を行って、最終目的物であるトリフェニルアミン誘導体(HT−1)を合成した。
具体的には、3口フラスコに、式(15)で示されるビフェニルアミン誘導体10.5g(0.025モル)と、トリシクロヘキシルホスフィン0.0662g(0.000189モル)と、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.0864g(0.0000944モル)と、ナトリウム−tert−ブトキシド(t−BuONa)7.68g(0.08モル)と、式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体11.0g(0.05モル)とを投入した。更に、蒸留したo−キシレン500mLを加えた。その後、アルゴンガス置換を行い、120℃で攪拌しつつ5時間反応を行った。
次いで、反応液を室温まで冷却し有機相を得た。得られた有機相をイオン交換水で3回洗浄し、更に、無水硫酸ナトリウム及び活性白土を用いて乾燥及び吸着処理を行った。その後、o−キシレンを減圧留去し残渣を得た。
得られた残渣をカラムクロマトグラフィ−(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンとの混合溶媒)を用いて精製し、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)13.5gを得た(収率:65%)。
トリフェニルアミン誘導体(HT−1)を、300MHzの1H−NMR(プロトン核磁気共鳴)分光計を用いて測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。1H−NMRスペクトルにより、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)が得られたことを確認した。トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の1H−NMRスペクトルを図4に示す。
[トリフェニルアミン誘導体(HT−2)の合成]
反応式(R−4)で示すような反応と同様の反応を行って、式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体を得た。収率は71%であった。次いで、式(18)で表されるシンナムアルデヒド誘導体を式(20)で表されるシンナムアルデヒド誘導体に変更し、反応式(R−5)に代えて下記反応式(R−7)で表されるような反応を行って、式(21)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を得た。収率は70%であった。
次いで、式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体に代えて式(21)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて、下記反応式(R−8)で表されるような反応を行って、トリフェニルアミン誘導体(HT−2)を合成した。収率は65%であった。トリフェニルアミン誘導体(HT−2)の1H−NMRスペクトルを図5に示す。
なお、トリフェニルアミン誘導体(HT−2)の合成、及び後述の(HT−3)〜トリフェニルアミン誘導体(HT−8)の合成においては、それらのモルスケールがトリフェニルアミン誘導体(HT−1)の合成におけるモルスケールと等しくなるように、材料の配合量などを調整した。
[トリフェニルアミン誘導体(HT−3)の合成]
式(13)で表されるアニリン誘導体に代えて式(23)で表されるアニリン誘導体を用い、反応式(R−4)に代えて下記反応式(R−9)で表されるような反応を行って、式(24)にて表されるビフェニルアミン誘導体を得た。収率は70%であった。
次いで、式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体に代えて式(24)で表されるビフェニルアミン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて、下記反応式(R−10)で表されるような反応を行って、トリフェニルアミン誘導体(HT−3)を合成した。収率は70%であった。トリフェニルアミン誘導体(HT−3)の1H−NMRスペクトルを図6に示す。
[トリフェニルアミン誘導体(HT−4)の合成]
式(13)で表されるアニリン誘導体に代えて式(25)で表されるアニリン誘導体を用い、反応式(R−4)に代えて下記反応式(R−11)で表されるような反応を行って、式(26)で表されるビフェニルアミン誘導体を得た。収率は50%であった。
次いで、反応式(R−6)に代えて、下記反応式(R−12)で表されるような反応を行って、トリフェニルアミン誘導体(HT−4)を合成した。反応式(R−12)では、式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体に代えて式(26)で表されるビフェニルアミン誘導体を用いた。また、式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体に代えて式(21)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を用いた。得られたトリフェニルアミン誘導体(HT−4)の収率は65%であった。トリフェニルアミン誘導体(HT−4)の1H−NMRスペクトルを図7に示す。
[トリフェニルアミン誘導体(HT−5)の合成]
式(18)で表されるシンナムアルデヒドに代えて下記(27)で表されるシンナムアルデヒド誘導体を用い、反応式(R−5)に代えて下記反応式(R−13)で表されるような反応を行って、式(28)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を得た。収率は65%であった。
次いで、式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体に代えて式(28)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて下記反応式(R−14)で表されるような反応を行って、トリフェニルアミン誘導体(HT−5)を合成した。収率は65%であった。トリフェニルアミン誘導体(HT−5)の1H−NMRスペクトルを図8に示す。
[トリフェニルアミン誘導体(HT−6)の合成]
式(18)で表されるシンナムアルデヒドに代えて式(29)で表されるシンナムアルデヒド誘導体を用い、反応式(R−5)に代えて下記反応式(R−15)で表されるような反応を行って、式(30)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を得た。収率は50%であった。
次いで、反応式(R−6)に代えて下記反応式(R−16)で表されるような反応を行って、トリフェニルアミン誘導体(HT−6)を合成した。反応式(R−16)では、式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体に代えて、式(24)で表されるビフェニルアミン誘導体を用いた。また、式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体に代えて、式(30)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を用いた。得られたトリフェニルアミン誘導体(HT−6)の収率は60%であった。
[トリフェニルアミン誘導体(HT−7)の合成]
式(13)で表されるアニリン誘導体に代えて式(31)で表されるアニリン誘導体を用い、反応式(R−4)に代えて下記反応式(R−17)で表されるような反応を行って、式(32)で表されるビフェニルアミン誘導体を得た。収率は65%であった。
次いで、式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体に代えて式(32)で表されるビフェニルアミン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて下記反応式(R−18)で表されるような反応を行って、トリフェニルアミン誘導体(HT−7)を合成した。収率は70%であった。
[トリフェニルアミン誘導体(HT−8)の合成]
式(13)で表されるアニリン誘導体に代えて式(33)で表されるアニリン誘導体を用い、反応式(R−4)に代えて下記反応式(R−19)で表されるような反応を行って、式(34)で表されるビフェニルアミン誘導体を得た。収率は50%であった。
次いで、式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体に代えて式(34)で表されるビフェニルアミン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて下記反応式(R−20)で表されるような反応を行って、トリフェニルアミン誘導体(HT−8)を合成した。収率は65%であった。
(2)正帯電単層型電子写真感光体の製造
[感光体(A−1)]
容器内に、電荷発生剤としてのX型無金属フタロシアニン(5質量部)と、正孔輸送剤としてのトリフェニルアミン誘導体(HT−1)(50質量部)と、下記の電子輸送剤(35質量部)と、下記のバインダー樹脂(100質量部)と、溶剤としてのテトラヒドロフラン(800質量部)とを投入した。内容物をボールミルで50時間混合し、溶剤中に材料を分散させて、単層型感光層用塗布液を得た。なお、電子輸送剤としては、下記式(式中、R11’及びR13’は各々、メチル基を示す。R12’及びR14’は各々、tert−ブチル基を示す。)で表される電子輸送剤(ETM−1)を用いた。
また、バインダー樹脂としては、下記式で表される樹脂を用いた。
次に、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長238.5mm)の表面に、得られた塗布液をディップコート法を用いて塗布した。その後、100℃で40分間熱処理(熱風乾燥)して、塗布膜よりテトラヒドロフランを除去した。これにより、単層型感光層(膜厚30μm)を形成して、正帯電単層型電子写真感光体である感光体(A−1)を得た。
[感光体(A−2)]
電子輸送剤(ETM−1)の代わりに下記の電子輸送剤(ETM−2)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−2)を製造した。
上記式中、R15’はメチル基を示す。R16’はメチル基を示す。R17’はtert−ブチル基を示す。R18’はtert−ブチル基を示す。
[感光体(A−3)]
電子輸送剤(ETM−1)の代わりに下記の電子輸送剤(ETM−3)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−3)を製造した。
上記式中、R19’は1,1−ジメチルプロピル基を示す。R20’は1,1−ジメチルプロピル基を示す。
[感光体(A−4)]
電子輸送剤(ETM−1)の代わりに下記の電子輸送剤(ETM−4)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−4)を製造した。
上記式中、R21’はtert−ブチル基を示す。R22’はtert−ブチル基を示す。R23’は窒素原子に対してパラ位に位置する塩素原子を示す。
[感光体(A−5)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−2)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−5)を製造した。
[感光体(A−6)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−2)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−2)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−6)を製造した。
[感光体(A−7)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−2)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−3)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−7)を製造した。
[感光体(A−8)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−2)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−4)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−8)を製造した。
[感光体(A−9)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−3)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−9)を製造した。
[感光体(A−10)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−3)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−2)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−10)を製造した。
[感光体(A−11)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−3)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−3)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−11)を製造した。
[感光体(A−12)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−3)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−4)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−12)を製造した。
[感光体(A−13)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−4)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−13)を製造した。
[感光体(A−14)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−4)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−2)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−14)を製造した。
[感光体(A−15)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−4)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−3)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−15)を製造した。
[感光体(A−16)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−4)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−4)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−16)を製造した。
[感光体(A−17)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−5)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−17)を製造した。
[感光体(A−18)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−5)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−2)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−18)を製造した。
[感光体(A−19)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−5)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−3)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−19)を製造した。
[感光体(A−20)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−5)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−4)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−20)を製造した。
[感光体(A−21)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−6)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−21)を製造した。
[感光体(A−22)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−6)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−2)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−22)を製造した。
[感光体(A−23)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−6)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−3)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−23)を製造した。
[感光体(A−24)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−6)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−4)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−24)を製造した。
[感光体(A−25)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−7)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−25)を製造した。
[感光体(A−26)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−7)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−2)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−26)を製造した。
[感光体(A−27)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−7)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−3)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−27)を製造した。
[感光体(A−28)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−7)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−4)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−28)を製造した。
[感光体(A−29)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−8)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−29)を製造した。
[感光体(A−30)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−8)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−2)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−30)を製造した。
[感光体(A−31)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−8)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−3)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−31)を製造した。
[感光体(A−32)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−8)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−4)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−32)を製造した。
[感光体(A−33)]
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニンの代わりにチタニルフタロシアニンを用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(A−33)を製造した。
[感光体(B−1)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりに下記のトリフェニルアミン誘導体(HT−A)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(B−1)を製造した。
[感光体(B−2)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−A)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−2)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(B−2)を製造した。
[感光体(B−3)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−A)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−3)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(B−3)を製造した。
[感光体(B−4)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−A)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−4)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(B−4)を製造した。
[感光体(B−5)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりに下記のトリフェニルアミン誘導体(HT−B)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(B−5)を製造した。
[感光体(B−6)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−B)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−2)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(B−6)を製造した。
[感光体(B−7)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−B)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−3)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(B−7)を製造した。
[感光体(B−8)]
正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)の代わりにトリフェニルアミン誘導体(HT−B)を用い、電子輸送剤(ETM−1)の代わりに電子輸送剤(ETM−4)を用いた以外は、感光体(A−1)の製造と同様の手法により、感光体(B−8)を製造した。
上述のようにして得られた感光体の何れかに対し、下記のような評価を行った。
(3)感光体の外観評価
感光体(A−1)〜(A−33)、及び感光体(B−1)〜(B−8)のうちの何れかの表面全域を、光学顕微鏡を用いて観察し、結晶化した部分の有無を確認した。以下の基準で感光体の外観を評価した。
○(良い):結晶化した部分が観察されない。
×(悪い):結晶化した部分が観察される。
(4)転写メモリー電位
感光体(A−1)〜(A−33)、及び感光体(B−1)〜(B−8)のうちの何れかを、カラープリンター(FS−C5250DN、京セラドキュメントソリューションズ株式会社製)に装着した。感光体の表面の電位が600Vになるように条件を設定した。帯電装置の帯電ローラーに直流電圧を印加して、感光体を帯電させた。カラープリンターの帯電部としては、直流電圧を印加する帯電ローターを用いた。帯電ローラーとしては、帯電性ゴムからなるローラー(具体的には、エピクロルヒドリン樹脂に導電性カーボンを分散させた材料からなるローラー)を用いた。転写方式としては、中間転写方式を採用した。具体的には、感光体ドラム上のトナー像を転写ベルトに転写し、その後紙媒体にトナー像を転写する方式を採用した。このカラープリンターを用いて、転写バイアス印加前の白紙部における電位と、転写バイアス印加時の白紙部における電位との差を測定した。測定された電位差を、転写メモリーとして評価した。
(5)画像評価
感光体(A−1)〜(A−33)、及び感光体(B−1)〜(B−8)のうちの何れかを、カラープリンター(FS−C5250DN、京セラドキュメントソリューションズ株式会社製)に装着した。カラープリンターには、上述の転写メモリー電位の評価で用いた帯電部及び転写方式を採用した。このカラープリンターを用いて、1時間耐久印刷した後、評価用画像を印刷した。印刷された評価用画像について、画像不良の発生の有無を観察した。画像不良の発生の有無に基づき、以下の基準で画像を評価した。◎(非常に良い)、及び○(良い)の評価を合格とした。
◎(非常に良い):画像不良が観察されない。
○(良い):ハーフトーン部に1辺10mmの白抜け部分がゴーストとして観察される。
△(普通):ハーフトーン部に1辺10mmの白抜け部分がゴーストとして観察される。更に、明確に読み取れないが、1辺3mmのアルファベット型の白抜けがゴーストとして観察される。
×(不良あり):1辺3mmのアルファベット型の白抜けがゴーストとして明確に読み取れる。
感光体(A−1)〜(A−33)及び(B−1)〜(B−8)の各々について、単層型感光層に含有される電荷発生剤、正孔輸送剤及び電子輸送剤、並びに各種評価の結果を表1及び表2に示す。なお、表1及び表2中、「X−H2Pc」及び「TiOPc」は各々、「X型無金属フタロシアニン」及び「チタニルフタロシアニン」を表す。
表1及び表2から明らかなように、単層型感光層中にトリフェニルアミン誘導体(HT−1)〜(HT−8)を含む正孔輸送剤を含有する正帯電単層型電子写真感光体(A−1)〜(A−33)においては、単層型感光層の結晶化が抑制されているだけでなく、転写メモリーの発生が抑制されていた。その結果、ゴーストのような画像不良の発生も効果的に抑制されていた。
一方、単層型感光層中にトリフェニルアミン誘導体(HT−A)又は(HT−B)を含む正孔輸送剤を含有する正帯電単層型電子写真感光体(B−1)〜(B−8)においては、転写バイアス印加前の白紙部における電位と、転写バイアス印加時の白紙部における電位との差が、大きくなる傾向にあった。その結果、転写メモリーが発生し、ゴーストのような画像不良の発生が確認された。