以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る電子写真感光体(単に、「感光体」とも称する。)は、導電性基体と感光層とを備え、前記感光層が、下記式(1)で表されるカンチノン誘導体を含有する電子写真感光体である。
ここで、式(1)中、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、フッ素で置換された炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアラルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、置換基数aは、0〜2を示す。
このような電子写真感光体は、光感度の優れた電子写真感光体である。よって、このような電子写真感光体を備えた画像形成装置は、高画質な画像を形成することができる。
なお、上記式(1)で表されるカンチノン誘導体については、後述する。
また、前記感光体は、上記構成を満たしていれば、すなわち、上記式(1)で表されるカンチノン誘導体が感光層に含有された電子写真感光体であれば、その他は特に限定されない。具体的には、例えば、図1に示すような、前記感光層が、電荷発生剤、正孔輸送剤や電子輸送剤等の電荷輸送剤、及び結着樹脂を同一層に含有する層である感光体、いわゆる単層型感光体であってもよい。後に詳述するが、単層型感光体の感光層(単層型感光層)に用いる結着樹脂をバインダー樹脂と呼ぶ。
また、図2に示すような、前記感光層が、電荷発生剤及び結着樹脂を含有する電荷発生層と、正孔輸送剤等の電荷輸送剤及び結着樹脂を含有する電荷輸送層との少なくとも2つの層を積層したものである感光体、いわゆる積層型感光体であってもよい。後に詳述するが、電荷発生層に結着樹脂を用いる場合はベース樹脂と呼び、電荷輸送層に用いる結着樹脂を前述の単層型感光層に用いる結着樹脂と同様、バインダー樹脂と呼ぶ。
なお、図1は、本発明の実施形態に係る電子写真感光体の一例である単層型感光体の構造を示す概略断面図である。また、図2は、本発明の実施形態に係る電子写真感光体の他の一例である積層型感光体の構造を示す概略断面図である。
まず、前記単層型感光体10は、図1に示すように、導電性基体12と、前記導電性基体12上に、感光層14として、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び単層型感光体に用いる結着樹脂であるバインダー樹脂を同一層に含有する層とが備えられたものである。そして、前記単層型感光体10は、前記導電性基体12と、前記感光層14とを備えていれば、特に限定されない。具体的には、例えば、図1(a)に示すように、前記導電性基体12上に前記感光層14を直接備えていてもよいし、図1(b)に示すように、前記導電性基体12と前記感光層14との間に中間層16を備えていてもよい。また、図1(a)や図1(b)に示すように、前記感光層14が最外層となって露出していてもよいし、図1(c)に示すように、前記感光層14上に保護層18を備えていてもよい。
次に、前記積層型感光体20は、図2に示すように、導電性基体12と、前記導電性基体12上に、感光層として、電荷発生剤及びベース樹脂を含有する電荷発生層24と、電荷輸送剤及びバインダー樹脂を含有する電荷輸送層22との少なくとも2つの層を積層した層とが備えられたものである。そして、前記積層型感光体20は、前記導電性基体12と、前記電荷発生層24及び前記電荷輸送層22を積層した感光層とを備えていれば、特に限定されない。具体的には、前記積層型感光体20は、図2(a)に示すように、前記導電性基体12上に、前記電荷発生層24及び前記電荷輸送層22の順で積層したものであってもよいし、図2(b)に示すように、前記導電性基体12上に、前記電荷輸送層22及び前記電荷発生層24の順で積層したものであってもよい。また、図2(a)や図2(b)に示すように、前記導電性基体12上に前記感光層を直接備えていてもよいし、図2(c)や図2(e)に示すように、前記導電性基体12と前記感光層との間に中間層16を備えていてもよい。また、図2(d)や図2(f)に示すように、前記電荷輸送層22と前記電荷発生層24との間に中間層16を備えていてもよい。また、前記感光層が最外層となって露出していてもよいし、前記感光層上に保護層を備えていてもよい。
また、前記感光体は、上記構成を満たしていれば、すなわち、前記感光層に、前記カンチノン誘導体が含有された感光体であれば、光感度に優れた感光体が得られる。そして、感光体の構造としては、上述したような、単層型感光体、及び積層型感光体が挙げられる。この中でも、単層型感光体が好ましい。すなわち、前記感光層が、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及び結着樹脂を同一層に含有する層であって、前記電子輸送剤が、前記カンチノン誘導体を含有することが好ましい。
そうすることによって、光感度の優れるだけではなく、感光層の構成が簡単で製造が容易になり、皮膜欠陥の発生をも抑制することができる。このことは、具体的には、以下のことである。
まず、このような単層型感光体は、前記感光層として、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及び結着樹脂を同一層に含有する層を形成すればよく、感光層の構成が簡単で製造が容易であると考えられる。より具体的には、感光層が、電荷発生剤及び結着樹脂を含有する電荷発生層と、電荷輸送剤及び結着樹脂を含有する電荷輸送層との少なくとも2つの層を積層したものである、いわゆる積層型感光体を製造するには、少なくとも2つの層を形成しなければならず、単層型感光体のほうが、容易に製造できる。
また、積層型感光体は、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層のそれぞれが、単層型感光体の感光層より薄い場合が多く、また、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層のうちの外層を構成する方の層が損傷しやすい。比較的薄く、損傷しやすい外層を構成する層が損傷するだけで、電子写真感光体の性能が著しく低下する。これに対して、単層型感光体は、積層型感光体の前記電荷発生層や前記電荷輸送層より厚い場合が多いので、感光層が完全に損傷することが少ないと考えられる。よって、単層型感光体は、皮膜欠陥の発生を抑制できると考えられる。
[導電性基体]
前記導電性基体は、電子写真感光体の導電性基体として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、導電性を有する材料で少なくとも表面部が構成されるもの等が挙げられる。すなわち、具体的には、例えば、導電性を有する材料からなるものであってもよいし、プラスチック材料等の表面を、導電性を有する材料で被覆されたものであってもよい。また、導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドニウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等が挙げられる。また、導電性を有する材料としては、前記導電性を有する材料を1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて、例えば、合金等として用いてもよい。また、前記導電性基体としては、上記の中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましい。そうすることによって、より好適な画像を形成することができる感光体を提供することができる。このことは、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることによると考えられる。
また、前記導電性基体の形状は、特に限定されない。具体的には、例えば、シート状であっても、ドラム状であってもよい。すなわち、適用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状であっても、ドラム状であってもよく、特に限定されない。
[感光層]
前記単層型感光体は、少なくとも電荷発生剤、電荷輸送剤、及びバインダー樹脂を含む1つの感光層を有する。また、前記積層型感光体の感光層は、少なくとも電荷発生剤を含む電荷発生層と、少なくとも電荷輸送剤、及びバインダー樹脂を含む電荷輸送層を含む。
上記式(1)で表されるカンチノン誘導体は、主に前記単層感光層、又は前記積層型感光体の電荷輸送層に含有され、電荷輸送剤の1つである電子輸送剤として作用する。また、感光層の層構造としては、特に限定されず、具体的には、例えば、上述したような、図1及び図2に示す感光層の構造が挙げられる。
(カンチノン誘導体)
本実施形態で用いられるカンチノン誘導体は、上記式(1)で表されるカンチノン誘導体であれば、特に限定されない。
上記式(1)中、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、フッ素で置換された炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアラルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。また、Rの置換基数aは、0〜2を示す。置換基数aが0の場合は、Rは、実質的には水素原子を示す。この中でも、置換基数aが0である場合や、Rが、炭素数1〜12のアルキル基、フッ素で置換された炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、及び炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好ましい。また、炭素数1〜12のアルキル基である場合は、メチル基がより好ましい。また、フッ素で置換された炭素数1〜12のアルキル基である場合は、トリフルオロメチル基がより好ましい。また、炭素数6〜12のアリール基である場合は、フェニル基がより好ましい。また、炭素数1〜6のアルコキシ基である場合は、メトキシ基がより好ましい。
また、ここでの炭素数1〜10のアルキル基とは、炭素数1〜10のアルキル基であれば、特に限定されず、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基等が挙げられる。
また、ここでのフッ素で置換された炭素数1〜12のアルキル基とは、炭素数1〜12のアルキル基の水素がフッ素で置換されたものであれば、特に限定されない。具体的には、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、及びペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
また、ここでの炭素数6〜12のアリール基とは、炭素数6〜12のアリール基であれば、特に限定されない。具体的には、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニリル基等が挙げられる。
また、ここでの炭素数1〜12のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基とは、前記アリール基が炭素数1〜12のアルキル基で置換されたものであれば、特に限定されない。また、炭素数1〜12のアルキル基も、炭素数1〜12のアルキル基であれば、特に限定されず、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。炭素数1〜12のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基の具体例としては、例えば、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、2,3−キシリル基、及び2,6−キシリル基等が挙げられる。
また、ここでの炭素数6〜12のアラルキル基とは、炭素数6〜12のアラルキル基であれば、特に限定されない。具体的には、ベンジル基、α−メチルベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、及び6−フェニルヘキシル基等が挙げられる。
また、ここでの炭素数3〜10のシクロアルキル基は、炭素数3〜10のシクロアルキル基であれば、特に限定されない。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
また、ここでの炭素数1〜6のアルコキシ基は、炭素数1〜6のアルコキシ基であれば、特に限定されない。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
また、前記カンチノン誘導体の含有量としては、特に限定されない。具体的には、例えば、前記感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましい。前記カンチノン誘導体の含有量が少なすぎると、光感度を向上させるという効果を充分に発揮できない傾向がある。また、前記カンチノン誘導体の含有量が多すぎると、前記カンチノン誘導体が、前記感光層に含有されるバインダー樹脂中に均一に分散することができず、微小な結晶化を起こしたり、また、前記カンチノン誘導体が、電荷発生剤や正孔輸送剤に接触しすぎることにより、かえって光感度を低下させる傾向がある。さらに、膜強度の低下やガラス転移点の低下を引き起こす傾向もある。
(カンチノン誘導体の合成方法)
前記カンチノン誘導体の合成方法としては、上記式(1)で表されるカンチノン誘導体を合成することができれば、特に限定されない。具体的には、下記式(2)に示すように合成することができる。
より具体的には、まず、上記式(A)で表される化合物に、酢酸パラジウムとトリシクロヘキシルホスフィンとナトリウムブトキシドの有機溶媒溶液とを添加し、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス下で攪拌還流させる。そうすることにより、上記式(2)の反応を進行させる。その後、得られた液体を、セライトろ過し、有機溶媒を留去させる。そして、得られた固体をカラムクロマトグラフィーで精製する。そうすることによって、上記式(1)で表されるカンチノン誘導体が得られる。
また、ナトリウムブトキシドの有機溶媒溶液で用いられる有機溶媒としては、ナトリウムブトキシドを溶解させることができ、上記反応を阻害するものでなければ、特に限定されず、例えば、キシレン等が挙げられる。
また、各成分の添加量は、上記反応を進行させることができれば、特に限定されず、適宜調整することができる。
また、上記攪拌時における加熱条件としては、前記反応を進行させることができれば、特に限定されない。具体的には、液温が130℃程度となるような加熱条件が挙げられる。また、攪拌時間としては、前記反応を進行させることができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、5時間程度が挙げられる。
(電荷発生剤)
前記電荷発生剤としては、電子写真感光体の電荷発生剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)、Y型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
また、前記電荷発生剤は、所望の領域に吸収波長を有するように、前記各電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、前記各電荷発生剤のうち、特に半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)等の無金属フタロシアニンやY型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)等のオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、上記フタロシアニン系顔料の結晶形については特に限定されず、種々のものが使用される。
また、350〜550nmの短波長レーザー光源を用いた画像形成装置の場合には、前記電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料、ペリレン系顔料が使用される。
(電荷輸送剤)
前記電荷輸送剤としては、電子写真感光体の感光層に含まれる電荷輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。また、電荷輸送剤としては、一般的に、正孔輸送剤と電子輸送剤とが挙げられる。
前記正孔輸送剤としては、電子写真感光体の感光層に含まれる正孔輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ベンジジン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等が挙げられる。この中でも、トリフェニルアミン系化合物やベンジジン誘導体が好ましく、ベンジジン誘導体がより好ましい。また、前記正孔輸送剤としては、前記例示した各正孔輸送剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記電子輸送剤としては、電子写真感光体の感光層に含まれる電子輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。本実施形態に係る感光体は、感光層に、上記式(1)で表されるカンチノン誘導体が含有される。そして、このカンチノン誘導体が電子輸送剤として作用しうる。すなわち、本実施形態に係る感光体は、前記電子輸送剤として、上記式(1)で表されるカンチノン誘導体を含有したものが挙げられる。そして、前記感光体としては、前記電子輸送剤として、上記式(1)で表されるカンチノン誘導体のみを含有する感光体であってもよい。
また、前記電子輸送剤としては、前記カンチノン誘導体以外に、他の電子輸送剤を含有してもよい。その他の電子輸送剤としては、具体的には、例えば、キノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等が挙げられる。また、前記電子輸送剤としては、前記例示した各電子輸送剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(結着樹脂)
前記結着樹脂としては、前述のように、単層型感光体の感光層及び積層型感光体の電荷輸送層に用いる結着樹脂であるバインダー樹脂と、積層型感光体の電荷発生層に用いる結着樹脂であるベース樹脂とが挙げられる。
前記バインダー樹脂は、単層型感光体の感光層及び積層型感光体の電荷輸送層に含まれる結着樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート共重合樹脂等の光硬化性樹脂等が挙げられる。この中でも、ポリカーボネート樹脂が好ましい。また、前記バインダー樹脂としては、前記例示した各バインダー樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記ベース樹脂は、積層型感光体の電荷発生層に含まれる結着樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート樹脂等が挙げられる。また、前記ベース樹脂としては、前記例示した各ベース樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、前記ベース樹脂は、前記バインダー樹脂と同様のものが例示されているが、同一の感光体においては、通常、バインダー樹脂とは異なる樹脂が選択される。このことは、以下のことによる。積層型感光体を製造する際、通常、電荷発生層、電荷輸送層の順に形成するので、電荷発生層に、電荷輸送層形成用塗布液を塗布することになるので、電荷発生層は、電荷輸送層形成用塗布液の溶剤に溶解しないことが求められる。このため、電荷発生層に含まれる結着樹脂であるベース樹脂は、同一の感光体においては、通常、バインダー樹脂とは異なる樹脂が選択される。
(添加剤)
前記感光体には、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、及び結着樹脂以外の各種添加剤を含有してもよい。前記添加剤としては、具体的には、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、及びレベリング剤等が挙げられる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
[電子写真感光体の製造方法]
次に、電子写真感光体の製造方法について説明する。
まず、前記単層型感光体の製造方法について説明する。
前記単層型感光体は、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤(正孔輸送剤、電子輸送剤)、前記バインダー樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた塗布液を、塗布等によって、前記導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、製造することができる。前記塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ディップコート法等が挙げられる。
前記単層型感光体において、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、及び前記バインダー樹脂の各含有量は、適宜選定され、特に限定されない。具体的には、例えば、前記電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましい。また、前記電子輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましい。また、前記正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5〜500質量部であることが好ましく、25〜200質量部であることがより好ましい。さらに、正孔輸送剤と電子輸送剤との総量、すなわち、前記電荷輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、20〜500質量部であることが好ましく、30〜200質量部であることがより好ましい。
また、前記単層型感光体の感光層の厚さは、感光層として充分に作用することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることが好ましい。
次に、前記積層型感光体の製造方法について説明する。
前記積層型感光体は、以下のような方法等によって、製造することができる。
具体的には、例えば、まず、前記電荷発生剤、ベース樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた電荷発生層形成用塗布液と、前記電荷輸送剤、バインダー樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた電荷輸送層形成用塗布液とを調製する。そして、前記電荷発生層形成用塗布液及び前記電荷輸送層形成用塗布液のいずれか一方の塗布液を、塗布等によって、前記導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層のいずれか一方を形成させる。その後、他方の塗布液を、前記電荷発生層又は前記電荷輸送層が形成された導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、他方の層を形成させる。そうすることによって、前記積層型感光体を製造することができる。前記塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ディップコート法等が挙げられる。
前記積層型感光体において、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、前記ベース樹脂、及び前記バインダー樹脂の各含有量は、適宜選定され、特に限定されない。具体的には、例えば、前記電荷発生剤の含有量は、前記電荷発生層を構成するベース樹脂100質量部に対して、5〜1000質量部であることが好ましく、30〜500質量部であることがより好ましい。
また、前記電荷輸送剤の含有量は、前記電荷輸送層を構成するバインダー樹脂100質量部に対して、10〜500質量部であることが好ましく、25〜100質量部であることがより好ましい。
また、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層の各層の厚さは、それぞれの層として充分に作用することができれば、特に限定されない。前記電荷発生層の厚さは、具体的には、例えば、0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜3μmであることがより好ましい。また、前記電荷輸送層の厚さは、具体的には、例えば、2〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。
また、前記塗布液に含有される溶剤としては、前記各成分を溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶剤は、前記例示した溶剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記電子写真感光体は、電子写真方式の画像形成装置の像担持体として用いることができる。また、この画像形成装置としては、電子写真方式のものであれば、特に限定されない。前記電子写真感光体は、具体的には、例えば、例えば、後述の画像形成装置の像担持体として用いることができる。
[画像形成装置]
前記電子写真感光体を備えるための画像形成装置としては、電子写真方式の画像形成装置であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、像担持体と、前記像担持体の表面を帯電するための帯電装置と、帯電された像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備え、前記像担持体が、前記電子写真感光体である画像形成装置が挙げられる。
また、後述するような、複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましい。より具体的には、例えば、後述するような、複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が挙げられる。ここでは、タンデム方式のカラー画像形成装置について説明する。
なお、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の像担持体と、各像担持体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、前記各像担持体の表面にそれぞれ供給する、現像ローラーを備えた複数の現像装置とを備え、前記像担持体として、前記電子写真感光体を用いる。
図3は、本発明の実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、前記画像形成装置1としては、カラープリンタ1を例に挙げて説明する。
このカラープリンタ1は、図3に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、前記機器本体1aの上面には、前記定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
前記給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラー122、給紙ローラー123,124,125、及びレジストローラー126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。ピックアップローラー122は、給紙カセット121の図3に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー123,124,125は、ピックアップローラー122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラー126は、給紙ローラー123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
また、給紙部2は、機器本体1aの図3に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラー127とをさらに備えている。このピックアップローラー127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラー127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラー126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
前記画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピュータ等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラー32とを備えている。
前記画像形成ユニット7は、上流側(図3では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラックトナー供給用ユニット7Kと、イエロートナー供給用ユニット7Yと、シアントナー供給用ユニット7Cと、マゼンタトナー供給用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての感光体ドラム37が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体ドラム37の周囲には、帯電器39、露光装置38、現像装置71、不図示のクリーニング装置及び除電手段としての除電器等が、回転方向上流側から順に各々配置されている。なお、前記感光体ドラム37としては、前記電子写真感光体を用いる。また、本実施形態に係る電子写真感光体は、除電手段としての除電器を取り除いた画像形成装置(プリンタ)にも適用可能である。
帯電器39は、矢符方向に回転されている感光体ドラム37の周面を均一に帯電させる。帯電器39としては、例えば、非接触型放電方式のコロトロン型およびスコロトロン型の帯電器、接触方式の帯電ローラーおよび帯電ブラシ等が挙げられる。露光装置38は、いわゆるレーザー走査ユニットであり、帯電器39によって均一に帯電された感光体ドラム37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピュータ(PC)から入力された画像データに基づくレーザー光を照射し、感光体ドラム37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像装置71は、静電潜像が形成された感光体ドラム37の周面にトナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。そして、このトナー像が中間転写ベルト31に1次転写される。クリーニング装置は、中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面に残留しているトナーを清掃する。除電器は、1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清浄化処理された感光体ドラム37の周面は、新たな帯電処理のために帯電器へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各感光体ドラム37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラー33、従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36等の複数のローラーに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各感光体ドラム37と対向配置された1次転写ローラー36によって感光体ドラム37に押圧された状態で、前記複数のローラーによって無端回転するように構成されている。駆動ローラー33は、ステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36は、回転自在に設けられ、駆動ローラー33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラー34,35,36は、駆動ローラー33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト31を支持する。
1次転写ローラー36は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各感光体ドラム37上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム37と1次転写ローラー36との間で、駆動ローラー33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
2次転写ローラー32は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラー32とバックアップローラー35との間で用紙Pに転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
前記定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラー41と、この加熱ローラー41に対向配置され、周面が加熱ローラー41の周面に押圧当接される加圧ローラー42とを備えている。
そして、前記画像形成部3で2次転写ローラー32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラー41と加圧ローラー42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンタ1では、定着部4と排紙部5との間の適所に搬送ローラー6が配設されている。
排紙部5は、カラープリンタ1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
前記画像形成装置1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、上記のようなタンデム方式の画像形成装置では、前記像担持体として、前記電子写真感光体が備えられているので、高画質な画像を形成することができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
[カンチノン誘導体の合成]
まず、各実施例で用いるカンチノン誘導体の合成について説明する。
(合成例1)
下記式(3)中の、式(1−1)で表されるカンチノン誘導体の合成を、下記式(3)に示すように合成した。
具体的には、まず、上記式(A−1)で表される化合物(分子量328.7)329mg(1ミリモル)に、酢酸パラジウム(分子量224.5)11mg(0.05ミリモル)と、トリシクロヘキシルホスフィン(分子量280.4)14mg(0.05ミリモル)と、ナトリウムブトキシド(分子量96.1)115mg(1.2ミリモル)のキシレン溶液とを、不活性ガスである窒素ガス下で、液温が130℃になるように加熱した状態で5時間攪拌還流した。そうすることにより、上記式(3)の反応を進行させた。その後、得られた液体を、セライトろ過し、有機溶媒を留去した。そして、得られた固体をカラムクロマトグラフィーで精製した。そうすることによって、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体(分子量292.3)248mg(0.35ミリモル)が得られた。なお、収率は、約85%であった。
(合成例2)
下記式(4)中の、式(1−2)で表されるカンチノン誘導体の合成を、下記式(4)に示すように合成した。
具体的には、上記式(A−1)で表される化合物(分子量328.7)329mg(1ミリモル)の代わりに、上記式(A−2)で表される化合物(分子量356.8)357mg(1ミリモル)を用いること以外、合成例1と同様にした。そうすることによって、上記式(1−2)で表されるカンチノン誘導体(分子量320.3)254mg(0.8ミリモル)が得られた。なお、収率は、約80%であった。
(合成例3)
下記式(5)中の、式(1−3)で表されるカンチノン誘導体の合成を、下記式(5)に示すように合成した。
具体的には、上記式(A−1)で表される化合物(分子量328.7)329mg(1ミリモル)の代わりに、上記式(A−3)で表される化合物(分子量396.7)397mg(1ミリモル)を用いること以外、合成例1と同様にした。そうすることによって、上記式(1−3)で表されるカンチノン誘導体(分子量360.3)288mg(0.8ミリモル)が得られた。なお、収率は、約80%であった。
(合成例4)
下記式(6)中の、式(1−4)で表されるカンチノン誘導体の合成を、下記式(6)に示すように合成した。
具体的には、上記式(A−1)で表される化合物(分子量328.7)329mg(1ミリモル)の代わりに、上記式(A−4)で表される化合物(分子量404.8)405mg(1ミリモル)を用いること以外、合成例1と同様にした。そうすることによって、上記式(1−4)で表されるカンチノン誘導体(分子量368.4)302mg(0.82ミリモル)が得られた。なお、収率は、約82%であった。
(合成例5)
下記式(7)中の、式(1−5)で表されるカンチノン誘導体の合成を、下記式(7)に示すように合成した。
具体的には、上記式(A−1)で表される化合物(分子量328.7)329mg(1ミリモル)の代わりに、上記式(A−5)で表される化合物(分子量358.8)359mg(1ミリモル)を用いること以外、合成例1と同様にした。そうすることによって、上記式(1−5)で表されるカンチノン誘導体(分子量318.3)274mg(0.86ミリモル)が得られた。なお、収率は、約86%であった。
[実施例1]
(感光体の製造)
電荷発生剤として、下記式(8−1)で表されるX型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)を5質量部と、正孔輸送剤として、下記式(9)で表されるベンジジン誘導体を50質量部と、電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体を30質量部と、バインダー樹脂として、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量50,000)を100質量部とを、テトラヒドロフラン800質量部の中に投入した。そして、ボールミルを用いて、50時間、混合・分散させた。そうすることによって、感光層用の塗布液が得られた。
得られた塗布液を、アルマイト素管からなる導電性基体の上に、ディップコート法で塗布し、100℃40分間熱風乾燥させた。そうすることによって、層厚30μmの感光層が導電性基体上に形成された単層型感光体(直径30mm)が得られた。
[実施例2]
電荷発生剤として、前記X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)の代わりに、下記式(10−2)で表されるY型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)を用いたこと以外、実施例1と同様である。
[実施例3]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体の代わりに、上記式(1−2)で表されるカンチノン誘導体を用いたこと以外、実施例1と同様である。
[実施例4]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体の代わりに、上記式(1−2)で表されるカンチノン誘導体を用いたこと以外、実施例2と同様である。
[実施例5]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体の代わりに、上記式(1−3)で表されるカンチノン誘導体を用いたこと以外、実施例1と同様である。
[実施例6]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体の代わりに、上記式(1−3)で表されるカンチノン誘導体を用いたこと以外、実施例2と同様である。
[実施例7]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体の代わりに、上記式(1−4)で表されるカンチノン誘導体を用いたこと以外、実施例1と同様である。
[実施例8]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体の代わりに、上記式(1−4)で表されるカンチノン誘導体を用いたこと以外、実施例2と同様である。
[実施例9]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体の代わりに、上記式(1−5)で表されるカンチノン誘導体を用いたこと以外、実施例1と同様である。
[実施例10]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体の代わりに、上記式(1−5)で表されるカンチノン誘導体を用いたこと以外、実施例2と同様である。
[比較例1]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体の代わりに、下記式(10)で表される化合物を用いたこと以外、実施例1と同様である。
[比較例2]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるカンチノン誘導体の代わりに、上記式(10)で表される化合物を用いたこと以外、実施例2と同様である。
[評価]
実施例1〜10及び比較例1,2に係る電子写真感光体を、以下の方法により評価した。
(光感度評価)
ジェンテック(GENTEC)社製のドラム感度試験機を用いて、各感光体の光感度を測定した。
具体的には、感光体の周面電位が700Vとなるように、感光体の周面に電圧を印加して帯電させた。その後、帯電させた感光体に対して、露光光を80ミリ秒間照射することによって、露光した。その際、露光光として、ハロゲンランプから照射される白色光から、バンドパスフィルタを用いて取り出した光であって、波長780nm、半値幅20nm、光強度16μW/cm2の単色光を用いた。そして、露光開始から330ミリ秒経過した時点での、感光体の表面電位を残留電位Vr(単位:V)として測定した。この残留電位Vrが小さいほど、光感度が良好であることを示す。
この結果を、感光層の各材料とともに、表1に示す。
表1からわかるように、導電性基体と感光層とを備え、前記感光層が、上記式(1)で表されるカンチノン誘導体を含有する電子写真感光体(実施例1〜10)は、前記カンチノン誘導体以外の化合物を電子輸送剤として含有する場合(比較例1,2)と比較して、光感度が良好であることがわかった。このことは、前記カンチノン誘導体の、π電子共役平面が従来の電子輸送剤、具体的には、式(10)で表される化合物より広いためであると考えられる。すなわち、前記カンチノン誘導体が、従来の電子輸送剤、具体的には、式(10)で表される化合物より電子輸送能が高いためであると考えられる。