以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数2以上4以下のアルケニル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数6以上10以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、炭素原子数7以上16以下のアラルキル基、複素環基は、何ら規定していなければ、それぞれ次の意味である。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。炭素原子数1以上5以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上5以下である基である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上4以下である基である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上3以下である基である。
炭素原子数2以上4以下のアルケニル基は、直鎖状又は分岐状で非置換である。炭素原子数2以上4以下のアルケニル基は、1つ又は2つの二重結合を有する。炭素原子数2以上4以下のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基及びブタジエニル基が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が挙げられる。炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上3以下である基である。
炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数6以上10以下のアリール基は、各々、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基及びフェナントリル基が挙げられる。炭素原子数6以上10以下のアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、炭素原子数7以上16以下のアラルキル基は、非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、例えば、炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。炭素原子数7以上16以下のアラルキル基は、例えば、炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数1又は2のアルキル基である。
複素環基として、例えば、5員以上14員以下の複素環基が挙げられる。5員以上14員以下の複素環基は、炭素原子以外にヘテロ原子を少なくとも1個含み、非置換である。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される1種以上である。5員以上14員以下の複素環基は、例えば、炭素原子以外に1個以上3個以下のヘテロ原子を含む5員又は6員の単環の複素環(以下、複素環(H)と記載することがある)を含む複素環基;複素環(H)が2個縮合した複素環基;複素環(H)と、5員又は6員の単環の炭化水素環とが縮合した複素環基;複素環(H)が3個縮合した複素環基;複素環(H)2個と、5員又は6員の単環の炭化水素環1個とが縮合した複素環基;又は複素環(H)1個と、5員又は6員の単環の炭化水素環2個とが縮合した複素環基が挙げられる。5員以上14員以下の複素環基の具体例としては、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、イソインドリル基、クロメニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、プリニル基、プテリジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、4H−キノリジニル基、ナフチリジニル基、ベンゾフラニル基、1,3−ベンゾジオキソリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基及びフェナントロリニル基が挙げられる。
炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンは、非置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンとしては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン及びシクロヘプタンが挙げられる。
<第1実施形態:電子写真感光体>
第1実施形態は電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。図1を参照して、感光体1の構造について説明する。図1は、第1実施形態に係る感光体1の一例を示す断面図である。
図1(a)に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。感光層3は単層(一層)である。導電性基体2は、素地層2bと、この素地層2bにおける感光層3側の面を被覆する陽極酸化被膜2aとを備える。即ち、導電性基体2は、感光層3側の面に設けられた陽極酸化被膜2aを有する。感光体1は、単層の感光層3を備える単層型電子写真感光体である。
図1(b)に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、中間層4(下引き層)とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。即ち、中間層4は、陽極酸化被膜2aと感光層3との間に設けられる。図1(a)に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接設けられてもよい。或いは、図1(b)に示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して設けられてもよい。中間層4は、一層であってもよく、複数の層であってもよい。
感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、保護層(不図示)とを備えてもよい。保護層は、感光層3上に設けられる。保護層は、一層であってもよく、複数の層であってもよい。
なお、導電性基体2は、少なくとも感光層3側の面に陽極酸化被膜2aが設けられていればよい。即ち、導電性基体2は、感光層3側の面のみに陽極酸化被膜2aが設けられていてもよく、両面(感光層3側の面及びその反対側の面)に陽極酸化被膜2aが設けられていてもよい。
感光層3の厚さは、特に限定されない。感光層3の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、図1を参照して、感光体1の構造について説明した。以下、感光体について更に詳細に説明する。
<導電性基体>
導電性基体は、少なくとも感光層側の面に設けられた陽極酸化被膜を有し、かつ感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、金属製基体に陽極酸化処理を施したものが挙げられる。金属製基体の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼及び真鍮が挙げられる。これらの金属材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。金属製基体の材料としては、これらの金属材料のなかで、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体が少なくとも感光層側の面に設けられた陽極酸化被膜を有することで、転写かすれを抑制できる。ここで、転写かすれは、感光体の露光領域の一部においてトナーが強固に付着して転写時に離れないことにより、印刷された画像における対応部位にかすれや抜けが生じる現象である。転写かすれの原因を以下に説明する。感光体の帯びる電荷は、通常はトナーの帯びる電荷(例えば、正電荷)と同極性(例えば、正電荷)に設定される。しかし、トナー像を非転写体に転写する際に、転写電流(例えば、非転写体に負電荷を与える転写電流)によって感光体の露光領域の一部において電荷の正負反転が生じ、該部分の帯びる電荷がトナーの帯びる電荷と反対極性(例えば、負電荷)となることがある。その結果、感光体の該部分ではトナーが強固に付着するため転写かすれが生じる。これに対し、導電性基体が少なくとも感光層側の面に設けられた陽極酸化被膜を有することで、感光体において転写時における感光体の電位の安定性が向上し、トナーの帯びる電荷と同極性の電荷が維持され易くなるため、転写かすれが抑制される。
転写かすれをより効果的に抑制するためには、陽極酸化被膜の膜厚としては、1.0μm以上であることが好ましく、3.0μm以上であることが好ましい。また、転写かすれをより効果的に抑制するためには、陽極酸化被膜の膜厚としては、15.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以下であることがより好ましい。
金属製基体の陽極酸化処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、硫酸水溶液を電解液として用いた方法が挙げられる。陽極酸化処理の処理時間としては、例えば、0.5分以上300分以下である。陽極酸化処理の電解液の濃度としては、硫酸水溶液を用いる場合には、例えば、0.1質量%以上80質量%以下である。また、陽極酸化処理の電解電圧としては、例えば5V以上30V以下である。更に、陽極酸化処理の電流密度としては、例えば、0.5A/dm2以上2A/dm2以下である。
また、陽極酸化処理により形成した被膜に、微細孔の封孔処理を行ってもよい。即ち、導電性基体に設けられた陽極酸化被膜には、封孔処理が施されていてもよい。封孔処理としては、通常使用される処理法であれば特に限定されるものではないが、ニッケルイオンを含む液に浸漬させるニッケル封孔処理であることが好ましく、酢酸ニッケル等を用いた高温ニッケル封孔処理であることが特に好ましい。また、ニッケル封孔処理の後に高温純水封孔処理を行ってもよい。高温ニッケル封孔処理に酢酸ニッケル溶液を用いる場合、その濃度としては、例えば、0.5質量%以上5.0質量%以下である。高温ニッケル封孔処理及び高温純水封孔処理における処理温度としては、例えば、70℃以上90℃以下である。ニッケル封孔処理、高温ニッケル封孔処理及び高温純水封孔処理における処理時間としては、例えば、2分以上30分以下である。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
<感光層>
感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。
(光応答時間)
感光体の光応答時間は、0.05ミリ秒以上0.85ミリ秒以下である。光応答時間は、波長780nmのパルス光が+800Vに帯電された感光層の表面に照射されてから、感光層の表面電位が+800Vから+400Vに減衰するまでの時間である。パルス光の光強度は、波長780nmのパルス光が+800Vに帯電された感光層の表面に照射されてから400ミリ秒後に、感光層の表面電位が+800Vから+200Vとなる強度に設定される。
図2を用いて光応答時間を説明する。図2は、感光層の表面電位の減衰曲線を示す。縦軸は、感光層の表面電位(単位:V)を示す。横軸は、時間を示す。感光層の表面電位の減衰曲線では、パルス光が感光層の表面に照射された時点を0.00ミリ秒とする。感光層の表面電位の減衰曲線が示すように、パルス光が+800Vに帯電された感光層の表面に照射されてから400ミリ秒後に、感光層の表面電位は+800Vから+200Vに減衰する。このとき、パルス光が+800Vに帯電された感光層の表面に照射されてから、感光層の表面電位が+800Vから+400Vに減衰するまでの時間τを光応答時間とする。
感光体の光応答時間が0.05ミリ秒以上0.85ミリ秒以下であると、露光メモリーに起因する画像不良を抑制できる。ここで、露光メモリーは、画像形成時の露光の影響によって、前の周の露光領域に対応する感光体の表面の領域の帯電電位が、前の周の非露光領域に対応する感光体の表面の領域よりも低下する現象である。露光メモリーが発生すると、形成画像において、感光体の前の周の露光領域に対応する領域が黒ずむ画像不良が発生する。感光体の光応答時間が0.85ミリ秒を超えると、感光層内に電荷(特に正孔)が残留し易くなる。そのため、露光メモリーに起因する画像不良が発生する。なお、感光体が光応答するためにはある程度の時間が必要であることから、感光体の光応答時間の下限は、0.05ミリ秒とすることができる。
露光メモリーに起因する画像不良の発生を抑制するためには、感光体の光応答時間の上限は、0.60ミリ秒であることが好ましく、0.45ミリ秒であることがより好ましく、0.40ミリ秒であることが更に好ましい。
感光体の光応答時間は、実施例に記載の方法で測定される。感光体の光応答時間は、例えば、正孔輸送剤の種類を変更することにより、調整することができる。また、感光体の光応答時間は、例えば、電子輸送剤の種類を変更することによっても、調整することができる。また、感光体の光応答時間は、例えば、添加剤の種類を変更することによっても、調整することができる。また、感光体の光応答時間は、例えば、感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率を変更することによっても調整することができる。また、感光体の光応答時間は、例えば、電子輸送剤の質量mETMに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mETMを変更することによっても調整することができる。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物及びトリアゾール系化合物が挙げられる。感光層は、正孔輸送剤の1種のみを含有してもよく、正孔輸送剤の2種以上を含有してもよい。
露光メモリーに起因する画像不良と、転写かすれとをより効果的に抑制するためには、正孔輸送剤は、一般式(11)〜(18)で表される化合物のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。以下、一般式(11)〜(18)で表される化合物を、各々、化合物(11)〜(18)と記載することがある。
化合物(11)について説明する。一般式(11)中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。b1、b2、b3及びb4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。b5は、0又は1を表す。
b1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ1は互いに同一であっても異なっていてもよい。b2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ2は互いに同一であっても異なっていてもよい。b3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ3は互いに同一であっても異なっていてもよい。b4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ4は互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(11)中のQ1、Q2、Q3及びQ4が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(11)中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。b1、b2、b3及びb4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
化合物(11)として好ましくは、化学式(11−HT8)及び(11−HT9)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(11−HT8)及び(11−HT9)と記載することがある)が挙げられる。
化合物(12)について説明する。一般式(12)中、Q21及びQ28は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよいフェニル基、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。Q22及びQ29は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。Q23、Q24、Q25、Q26及びQ27は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。Q23、Q24、Q25、Q26及びQ27のうちの隣接した二つが互いに結合して環(例えば、炭素原子数5以上7以下のシクロアルカン、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン又はシクロヘプタン)を形成してもよい。d1及びd2は、各々独立に、0以上2以下の整数を表す。d3及びd4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
d3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ22は互いに同一であっても異なっていてもよい。d4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ29は互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(12)中、Q21及びQ28は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよいフェニル基、又は水素原子を表すことが好ましい。Q22及びQ29は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。Q23、Q24、Q25、Q26及びQ27は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。Q23、Q24、Q25、Q26及びQ27のうちの隣接した二つが互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを形成してもよい。この場合、炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンとフェニル基との縮合部位は、二重結合を含んでもよい。d1及びd2は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。d3及びd4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
Q21及びQ28が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよいフェニル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を有してもよいフェニル基が好ましく、メチル基を有してもよいフェニル基がより好ましい。Q22及びQ29が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Q23、Q24、Q25、Q26及びQ27が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基又はn−ブチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。Q23、Q24、Q25、Q26及びQ27が表す炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、エトキシ基がより好ましい。Q23、Q24、Q25、Q26及びQ27のうちの隣接した二つが互いに結合して表す炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンとしては、シクロヘキサンが好ましい。
一般式(12)中、Q21及びQ28は互いに同一であり、Q22及びQ29は互いに同一であり、d1及びd2は互いに同じ整数を表し、d3及びd4は互いに同じ整数を表すことが好ましい。
化合物(12)として好ましくは、化学式(12−HT3)、(12−HT4)、(12−HT5)、(12−HT6)、(12−HT10)、(12−HT11)、(12−HT12)及び(12−HT18)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(12−HT3)、(12−HT4)、(12−HT5)、(12−HT6)、(12−HT10)、(12−HT11)、(12−HT12)及び(12−HT18)と記載することがある)が挙げられる。
化合物(13)について説明する。一般式(13)中、Q31、Q32、Q33及びQ34は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。e1、e2、e3及びe4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。e5は、2又は3を表す。
e1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ31は互いに同一であっても異なっていてもよい。e2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ32は互いに同一であっても異なっていてもよい。e3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ33は互いに同一であっても異なっていてもよい。e4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ34は互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(13)中、Q31、Q32、Q33及びQ34は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。Q31、Q32、Q33及びQ34が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。e1、e2、e3及びe4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。e5は、2又は3を表すことが好ましい。
化合物(13)として好ましくは、化学式(13−HT16)及び(13−HT17)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(13−HT17)及び(13−HT17)と記載することがある)が挙げられる。
化合物(14)について説明する。一般式(14)中、Q41、Q42、Q43、Q44、Q45及びQ46は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。Q47、Q48、Q49及びQ50は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。g1及びg2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。g3及びg4は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。fは、0又は1を表す。
g1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ47は、互いに同一であっても異なっていてもよい。g2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ48は、互いに同一であっても異なっていてもよい。g3が2以上4以下の整数を表す場合、複数のQ49は、互いに同一であっても異なっていてもよい。g4が2以上4以下の整数を表す場合、複数のQ50は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(14)中、Q41、Q42、Q43、Q44、Q45及びQ46は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。g1及びg2は、各々、0を表すことが好ましい。g3及びg4は、各々、0を表すことが好ましい。fは、0又は1を表すことが好ましい。Q41、Q42、Q43、Q44、Q45及びQ46が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
化合物(14)として好ましくは、化学式(14−HT1)及び(14−HT2)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(14−HT1)及び(14−HT2)と記載することがある)が挙げられる。
化合物(15)について説明する。一般式(15)中、Q51、Q52、Q53、Q54、Q55及びQ56は、各々独立に、1つ以上のフェニル基を有してもよい炭素原子数2以上4以下のアルケニル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。h3及びh6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。h1、h2、h4及びh5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
h3が2以上4以下の整数を表す場合、複数のQ53は、互いに同一であっても異なっていてもよい。h6が2以上4以下の整数を表す場合、複数のQ56は、互いに同一であっても異なっていてもよい。h1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ51は、互いに同一であっても異なっていてもよい。h2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ52は、互いに同一であっても異なっていてもよい。h4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ54は、互いに同一であっても異なっていてもよい。h5が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ55は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(15)中、Q51、Q52、Q53、Q54、Q55及びQ56は、各々独立に、1つ以上のフェニル基を有してもよい炭素原子数2以上4以下のアルケニル基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。h3及びh6は、各々、0を表すことが好ましい。h1、h2、h4及びh5は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。Q51、Q52、Q53、Q54、Q55及びQ56が表す1つ以上のフェニル基を有してもよい炭素原子数2以上4以下のアルケニル基としては、1つ以上3つ以下のフェニル基を有するエテニル基が好ましく、ジフェニルエテニル基がより好ましい。Q51、Q52、Q53、Q54、Q55及びQ56が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
化合物(15)として好ましくは、化学式(15−HT13)、(15−HT14)及び(15−HT15)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(15−HT13)、(15−HT14)及び(15−HT15)と記載することがある)が挙げられる。
化合物(16)について説明する。一般式(16)中、Q61、Q62及びQ63は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。f1、f2及びf3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。Q64、Q65及びQ66は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよいフェニル基、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。f4、f5及びf6は、各々独立に、0又は1を表す。
f1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ61は、互いに同一であっても異なっていてもよい。f2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ62は、互いに同一であっても異なっていてもよい。f3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ63は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(16)中、Q61、Q62及びQ63は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。Q61、Q62及びQ63が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。f1、f2及びf3は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。Q64、Q65及びQ66は、各々、水素原子を表すことが好ましい。f4、f5及びf6は、各々、0を表すことが好ましい。
化合物(16)としては、化学式(16−HT7)で表される化合物(以下、化合物(16−HT7)と記載することがある)が好ましい。
化合物(17)について説明する。一般式(17)中、Q71、Q72、Q73、Q74、Q75及びQ76は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。n1、n2、n3、n4、n5及びn6は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。xは、1以上3以下の整数を表す。r及びsは、各々独立に、0又は1を表す。
n1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ71は互いに同一であっても異なっていてもよい。n2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ72は互いに同一であっても異なっていてもよい。n3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ73は互いに同一であっても異なっていてもよい。n4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ74は互いに同一であっても異なっていてもよい。n5が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ75は互いに同一であっても異なっていてもよい。n6が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ76は互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(17)中、Q71、Q72、Q73、Q74、Q75及びQ76は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。n1、n2、n3、n4、n5及びn6は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。xは、2を表すことが好ましい。r及びsは、各々、0を表すことが好ましい。Q71、Q72、Q73、Q74、Q75及びQ76が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
化合物(17)として好ましくは、化学式(17−HT19)で表される化合物(以下、化合物(17−HT19)と記載することがある)が挙げられる。
化合物(18)について説明する。一般式(18)中、Q81及びQ82は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、且つQ81及びQ82のうち少なくとも一方は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。Q83は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。mは、0以上5以下の整数を表す。pは、0以上2以下の整数を表す。
一般式(18)中、Q81及びQ82は、両方が炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すか、又は一方が炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、他方が炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。
一般式(18)中のmが2以上5以下の整数を表す場合、同一の芳香環に存在する複数のQ83は、各々、同一でも異なっていてもよい。
一般式(18)中のQ81及びQ83のうち一方は、炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。mは、0を表すことが好ましい。pは、1を表すことが好ましい。Q81、Q82及びQ83が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Q81、Q82及びQ83が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。一般式(18)中のQ83が表す炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。Q83が表す炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、炭素原子数7以上16以下のアラルキル基が好ましい。
化合物(18)として好ましくは、化学式(18−HT21)で表される化合物(以下、化合物(18−HT21)と記載することがある)が挙げられる。
正孔輸送剤は、化合物(11)〜(18)のうちの1種のみを感光層が含有してもよく、2種以上を感光層が含有してもよい。例えば、化合物(12−HT3)及び(12−HT10)は、各々を単独で用いてもよいが、各々を化合物(14−HT1)と併用してもよい。なお、感光層は、化合物(11)〜(18)に加えて、化合物(11)〜(18)以外の正孔輸送剤を更に含有してもよい。
感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率は、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率は、65質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましい。感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率が30質量%以上であると、露光メモリーに起因する画像不良がより効果的に抑制される。一方、感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率が65質量%以下であると、露光メモリーに起因する画像不良がより効果的に抑制される。
電子輸送剤の質量mETMに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mETMは、1.2以上が好ましく、1.6以上がより好ましい。電子輸送剤の質量mETMに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mETMは、5.5以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましい。比率mHTM/mETMが1.2以上であると、露光メモリーに起因する画像不良がより効果的に抑制される。一方、比率mHTM/mETMが4.0以下であると、露光メモリーに起因する画像不良がより効果的に抑制される。なお、2種以上の電子輸送剤が感光層に含有される場合には、電子輸送剤の質量mETMは2種以上の電子輸送剤の合計質量である。また、2種以上の正孔輸送剤が感光層に含有される場合には、正孔輸送剤の質量mHTMは2種以上の正孔輸送剤の合計質量である。
感光層に含有される正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、80質量部以上250質量部以下であることがより好ましく、120質量部以上180質量部以下であることが更に好ましい。
(電子輸送剤)
電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。これらの電子輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの電子輸送剤のうち、電子輸送剤の好適な例としては、一般式(21)、(22)及び(23)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(21)〜(23)と記載することがある)が挙げられる。
一般式(21)中、R11及びR12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又は炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す。
一般式(21)中、R11及びR12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。一般式(21)中のR11及びR12が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、1,1−ジメチルプロピル基がより好ましい。
化合物(21)としては、化学式(ET1)で表される化合物(以下、化合物(ET1)と記載することがある)が好ましい。
一般式(22)中、R21、R22及びR23は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基又は5員以上14員以下の複素環基を表す。
一般式(22)中、R21及びR22は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。R23は、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。R21及びR22が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、tert−ブチル基がより好ましい。R23が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R23が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基は、ハロゲン原子を有してもよい。このようなハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。R23が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子の数は、1以上3以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。
化合物(22)としては、化学式(ET2)で表される化合物(以下、化合物(ET2)と記載することがある)が好ましい。
一般式(23)中、R31及びR32は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、アミノ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。
一般式(23)中、R31及びR32は、各々独立に、置換基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。R31及びR32が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R31及びR32が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。R31及びR32が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。R31及びR32が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する置換基の数は、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
化合物(23)としては、化学式(ET3)で表される化合物(以下、化合物(ET3)と記載することがある)が好ましい。
露光メモリーに起因する画像不良をより効果的に抑制するためには、電子輸送剤としては化合物(21)が好ましく、化合物(ET1)がより好ましい。
感光層は、電子輸送剤として、化合物(21)、(22)及び(23)の1種のみを含有してもよい。また、感光層は、電子輸送剤として、化合物(21)、(22)及び(23)の2種以上を含有してもよい。また、感光層は、電子輸送剤として、化合物(21)、(22)又は(23)に加えて、化合物(21)、(22)及び(23)以外の電子輸送剤を更に含有してもよい。
電子輸送剤の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対して、20質量部以上120質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、40質量部以上90質量部以下であることが更に好ましく、60質量部以上90質量部以下であることが特に好ましい。
露光メモリーに起因する画像不良をより効果的に抑制するためには、正孔輸送剤の質量mHTM、電子輸送剤の質量mETM及びバインダー樹脂の質量mRは、次に示す関係式(A)を満たすことが好ましい。
[(mHTM+mETM)/mR]>1.30・・・(A)
(mHTM+mETM)/mRとしては、1.50以上がより好ましく、2.00以上が更に好ましい。(mHTM+mETM)/mRとしては、4.50以下が好ましく、3.50以下がより好ましく、2.50以下が更に好ましい。
(電荷発生剤)
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料及びキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。チタニルフタロシアニンは、例えば、化学式(CG1)で表される。無金属フタロシアニンは、例えば、化学式(CG2)で表される。
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、アンサンスロン系顔料が好適な電荷発生剤として用いられる。
電荷発生剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることが特に好ましい。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ化合物のアクリル酸付加物及びウレタン化合物のアクリル酸付加物が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
バインダー樹脂としては、一般式(31)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(31)と記載することがある)が好ましい。
一般式(31)中、R41、R42、R43及びR44は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上3以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。R43及びR44は互いに結合して一般式(X)で表される2価の基を表してもよい。
一般式(X)中、tは、1以上3以下の整数を表す。*は、結合手を表す。
一般式(31)中のR41、R42、R43及びR44が表わす炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。R41、R42、R43及びR44が表わす炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、ハロゲン原子を有していてもよい。炭素原子数1以上3以下のアルキル基が有するハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。炭素原子数1以上3以下のアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1以上7以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、1以上3以下であることが更に好ましい。
一般式(31)中のR41、R42、R43及びR44が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
一般式(X)中のtとしては、2を表すことが好ましい。
一般式(31)中、R41及びR42は、各々独立に、水素原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。R43及びR44は、各々独立に炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すか、或いは、R43及びR44が互いに結合して一般式(X)で表される2価の基を表すことが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(31)の好適な例としては、化学式(R1)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(R1)と記載することがある)が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(31)の粘度平均分子量は、25,000以上60,000以下であることが好ましく、35,000以上53,000以下であることがより好ましい。ポリカーボネート樹脂(31)の粘度平均分子量が25,000以上であると、感光層の硬度を適度に向上させることができる。ポリカーボネート樹脂(31)の粘度平均分子量が60,000以下であると、ポリカーボネート樹脂(31)が感光層形成用の溶剤に溶解し易くなり、感光層を容易に形成できる。
ポリカーボネート樹脂(31)は、繰り返し単位として、一般式(31)で表される繰り返し単位のみを有していてもよい。また、ポリカーボネート樹脂(31)は、繰り返し単位として、一般式(31)で表される繰り返し単位に加えて、一般式(31)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を更に有していてもよい。ポリカーボネート樹脂(31)が有する繰り返し単位の総数に対する、一般式(31)で表される繰り返し単位の数の比率は、0.80以上であることが好ましく、0.90以上であることがより好ましく、1.00であることが特に好ましい。
感光層は、バインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂(31)の1種のみを含有してもよい。また、感光層は、バインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂(31)の2種以上を含有してもよい。また、感光層は、バインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂(31)に加えて、ポリカーボネート樹脂(31)以外のバインダー樹脂を更に含有してもよい。
(添加剤)
添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤及びレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びこれらの誘導体、有機硫黄化合物並びに有機燐化合物が挙げられる。
(各成分の組み合わせ)
感光層における正孔輸送剤及び電子輸送剤の組み合わせとしては、表1に示す組み合わせ(j−1)〜(j−22)が好ましい。なお、表1の正孔輸送剤において、「12−HT3/14−HT1」は化合物(12−HT3)及び(14−HT1)を併用することを示し、「14−HT1/12−HT10」は化合物(14−HT1)及び(12−HT10)を併用することを示す。
感光層における電荷発生剤、正孔輸送剤及び電子輸送剤の組み合わせとしては、組み合わせ(j−1)〜(j−22)のうちの何れか1つにおける各成分と、X型無金属フタロシアニンとの組み合わせが好ましい。また、感光層における電荷発生剤、正孔輸送剤及び電子輸送剤の組み合わせとしては、組み合わせ(j−1)〜(j−22)のうちの何れか1つにおける各成分と、Y型チタニルフタロシアニンとの組み合わせも好ましい。
感光層における電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及びバインダー樹脂の組み合わせとしては、組み合わせ(j−1)〜(j−22)のうちの何れか1つにおける各成分と、X型無金属フタロシアニンと、ポリカーボネート樹脂(R1)との組み合わせが好ましい。また、感光層における電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及びバインダー樹脂の組み合わせとしては、組み合わせ(j−1)〜(j−22)のうちの何れか1つにおける各成分と、Y型チタニルフタロシアニンと、ポリカーボネート樹脂(R1)との組み合わせも好ましい。
<中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層に含有される添加剤の例は、感光層に含有される添加剤の例と同じである。
<感光体の製造方法>
感光体は、例えば、以下のように製造される。感光体は、感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって製造される。感光層用塗布液は、電荷発生剤、電子輸送剤、バインダー樹脂、正孔輸送剤及び必要に応じて添加される成分(例えば、添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより製造される。
感光層用塗布液に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール)、脂肪族炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
感光層用塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散機を用いることができる。
感光層用塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
感光層用塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ブレードコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法及びバーコート法が挙げられる。
感光層用塗布液を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理時間は、例えば、3分間以上120分間以下である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
<第2実施形態:画像形成装置>
第2実施形態に係る画像形成装置について説明する。第2実施形態に係る画像形成装置は、第1実施形態に係る感光体を備える。以下、第2実施形態に係る画像形成装置の一態様として、直接転写方式及びタンデム方式を採用するカラー画像形成装置を例に挙げて、図3を参照しながら説明する。
図3に示す画像形成装置90は、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dと、転写ベルト38と、定着部36とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
画像形成ユニット40は、像担持体30と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。像担持体30は、第1実施形態に係る感光体1である。画像形成ユニット40の中央位置に、像担持体30が設けられる。像担持体30は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。像担持体30の周囲には、帯電部42を基準として像担持体30の回転方向の上流側から順に、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とが設けられる。画像形成ユニット40には、クリーニング部(不図示、具体的にはブレードクリーニング部)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。なお、画像形成ユニット40は、クリーニングブレードを備えなくてもよい。即ち、画像形成装置90は、ブレードクリーニングレス方式を採用することができる。
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、転写ベルト38上の記録媒体Mに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。
帯電部42は、像担持体30の表面(具体的には、周面)を帯電する。帯電部42の帯電極性は、正極性である。即ち、帯電部42は、像担持体30の表面を正極性に帯電する。
帯電部42は、帯電ローラーである。帯電ローラーは、像担持体30の表面と接触しながら像担持体30の表面を帯電する。画像形成装置90は、接触帯電方式を採用している。帯電ローラー以外の接触帯電方式の帯電部としては、例えば、帯電ブラシが挙げられる。なお、帯電部は非接触方式であってもよい。非接触方式の帯電部としては、例えば、コロトロン帯電器及びスコロトロン帯電器が挙げられる。
露光部44は、帯電された像担持体30の表面を露光する。これにより、像担持体30の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置90に入力された画像データに基づいて形成される。
現像部46は、像担持体30の表面にトナーを供給する。これにより、現像部46は、静電潜像をトナー像として現像する。これにより、像担持体30が、トナー像を担持する。現像剤は一成分現像剤であっても二成分現像剤であってもよい。現像剤が一成分現像剤である場合、現像部46は、像担持体30の表面に形成された静電潜像に一成分現像剤であるトナーを供給する。現像剤が二成分現像剤である場合、現像部46は、像担持体30の表面に形成された静電潜像に、二成分現像剤に含まれるトナーとキャリアとのうちトナーを供給する。
像担持体30の表面における所定の箇所が露光部44によって露光されてから現像部46によって現像されるまでの時間(以下、露光と現像との間のプロセス時間と記載することがある)は、100ミリ秒以下であることが好ましい。露光と現像との間のプロセス時間は、より具体的には、露光部44が照射する露光光が像担持体30の表面における所定の箇所に照射され始めてから、現像部46によってこの所定の箇所にトナーが供給され始めるまでの時間である。像担持体30の表面における所定の箇所は、例えば、像担持体30の周面の露光される領域における1つの点である。露光と現像との間のプロセス時間は、像担持体30の周速と対応する。
通常、露光と現像との間のプロセス時間が100ミリ秒以下であると、像担持体の周速が速く、像担持体の感光層中に電荷が残存し易い。そのため、露光メモリーに起因する画像不良が発生し易い。しかし、画像形成装置90は、像担持体30として第1実施形態に係る感光体1を備える。感光体1は、露光メモリーに起因する画像不良を抑制することができる。このため、像担持体30として感光体1を備える画像形成装置90は、露光と現像との間のプロセス時間が100ミリ秒以下であっても、露光メモリーに起因する画像不良を抑制することができる。
露光と現像との間のプロセス時間は、0ミリ秒より大きく100ミリ秒以下であることが好ましく、50ミリ秒以上90ミリ秒以下であることがより好ましく、65ミリ秒以上70ミリ秒以下であることが更に好ましい。
転写ベルト38は、像担持体30と転写部48との間に記録媒体Mを搬送する。転写ベルト38は、無端状のベルトである。転写ベルト38は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、像担持体30の表面から被転写体へ転写する。被転写体は、記録媒体Mである。転写部48としては、例えば、転写ローラーが挙げられる。
転写部48が像担持体30の表面から被転写体である記録媒体Mにトナー像を転写し終えた像担持体30の表面の領域は、除電されることなく、帯電部42によって再び帯電される。即ち、画像形成装置90は、いわゆる除電レス方式を採用することができる。通常、除電レス方式を採用する画像形成装置では、像担持体の感光層中に電荷が残留し易い。そのため、露光メモリーに起因する画像不良が発生し易い。しかし、画像形成装置90は、像担持体30として第1実施形態に係る感光体1を備える。感光体1は、露光メモリーに起因する画像不良の発生を抑制することができる。このため、像担持体30として感光体1を備える画像形成装置90は、除電レス方式を採用しても、露光メモリーに起因する画像不良の発生を抑制することができる。
定着部36は、転写部48によって記録媒体Mに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部36は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Mにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Mに画像が形成される。
以上、画像形成装置の一例について説明したが、画像形成装置は、上述した画像形成装置90に限定されない。上述した画像形成装置90はカラー画像形成装置であったが、画像形成装置はモノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、画像形成装置は、例えば画像形成ユニットを1つだけ備えていればよい。また、上述した画像形成装置90はタンデム方式を採用していたが、画像形成装置は例えばロータリー方式を採用してもよい。また、上述した画像形成装置90は直接転写方式を採用していたが、画像形成装置は例えば中間転写方式を採用してもよい。この場合、転写部は一次転写部及び二次転写部に相当し、被転写体は記録媒体及び転写ベルトに相当する。
<第3実施形態:プロセスカートリッジ>
第3実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。第3実施形態に係るプロセスカートリッジは、第1実施形態に係る感光体を備える。以下、図3を引き続き参照して、第3実施形態に係るプロセスカートリッジの一例について説明する。プロセスカートリッジは、画像形成用のカートリッジである。プロセスカートリッジは、画像形成ユニット40a〜40dの各々に相当する。プロセスカートリッジは、像担持体30を備える。像担持体30は、第1実施形態に係る感光体1である。プロセスカートリッジは、感光体1に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部48からなる群より選択される少なくとも1つを更に備えていてもよい。プロセスカートリッジには、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置90に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、感光体1の感度特性等が劣化した場合に、感光体1を含めて容易かつ迅速に交換することができる。以上、図3を参照して、第3実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明した。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<感光層を形成するための材料>
感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電子輸送剤、正孔輸送剤、電荷発生剤、及びバインダー樹脂を準備した。
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、第1実施形態で説明した化合物(ET1)〜(ET3)を準備した。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、第1実施形態で説明した化合物(14−HT1)、(14−HT2)、(12−HT3)、(12−HT4)、(12−HT5)、(12−HT6)、(16−HT7)、(11−HT8)、(11−HT9)、(12−HT10)、(12−HT11)、(12−HT12)、(15−HT13)、(15−HT14)、(15−HT15)、(13−HT16)、(13−HT17)、(12−HT18)、(17−HT19)又は(18−HT21)を準備した。また、正孔輸送剤として、化学式(HT20)で表される化合物(以下、化合物(HT20)と記載することがある)も準備した。
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、Y型チタニルフタロシアニン及びX型無金属フタロシアニンを準備した。Y型チタニルフタロシアニンは、第1実施形態で述べた化学式(CG1)で表され、Y型の結晶構造を有するチタニルフタロシアニン(以下、化合物(CG1)と記載することがある)であった。X型無金属フタロシアニンは、第1実施形態で述べた化学式(CG2)で表され、X型の結晶構造を有する無金属フタロシアニン(以下、化合物(CG2)と記載することがある)であった。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、実施形態で説明したポリカーボネート樹脂(R1)を準備した。ポリカーボネート樹脂(R1)は、化学式(R1)で表される繰り返し単位のみを有していた。ポリカーボネート樹脂(R1)の粘度平均分子量は、40,000であった。
<導電性基体>
以下の方法により、周面に陽極酸化被膜が設けられた円筒状の導電性基体を得た。まず、中性洗剤(カンエイ産業株式会社製「クリンスーパーEC」)を含有する2質量%中性洗剤水溶液に、直径30mm、全長247.5mmのアルミニウム素管を浸漬させた。この中性洗剤水溶液に25kHzの超音波振動を5分間印加(超音波洗浄処理)した。超音波洗浄処理したアルミニウム素管を10質量%の硫酸水溶液中で電流密度1.0A/dm2にて陽極酸化処理を17分間行った。その後、流水により5分間洗浄した。次いで、酢酸ニッケル溶液(0.9質量%、80℃)に10分浸漬し封孔処理を行った。得られた導電性基体の有する陽極酸化被膜の膜厚は、5.0μmであった。また、陽極酸化処理の時間を変更し、それ以外の条件は全て同一として、陽極酸化被膜の膜厚が2.0μmである導電性基体と、陽極酸化被膜の膜厚が9.0μmである導電性基体とを別途得た。
なお、導電性基体における陽極酸化被膜の膜厚は、渦電流式膜厚試験機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製)を用いて測定した。
<感光体の製造>
感光層を形成するための材料を用いて、感光体(A−1)〜(A−29)及び(B−1)〜(B−4)の各々を製造した。
(感光体(A−1)の製造)
容器内に、電荷発生剤としての化合物(CG1)4質量部、正孔輸送剤としての化合物(14−HT1)150質量部、電子輸送剤としての化合物(ET1)75質量部、バインダー樹脂としての樹脂(R1)100質量部及び溶剤としてのテトラヒドロフラン800質量部を投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて50時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。周面に膜厚5.0μmの陽極酸化被膜が設けられた導電性基体上に、ディップコート法を用いて感光層用塗布液を塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で60分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、単層の感光層(膜厚25μm)を形成した。その結果、感光体(A−1)が得られた。
(感光体(A−2)〜(A−29)及び(B−1)〜(B−4)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同じ方法で、感光体(A−2)〜(A−29)及び(B−1)〜(B−4)の各々を製造した。感光体(A−1)の製造においては、電荷発生剤として化合物(CG1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−29)及び(B−1)〜(B−4)の各々の製造においては表2〜表3に示す種類の電荷発生剤を使用した。感光体(A−1)の製造においては、正孔輸送剤として150質量部の化合物(14−HT1)を使用し、電子輸送剤として75質量部の化合物(ET1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−29)及び(B−1)〜(B−4)の各々の製造においては表2〜表3に示す種類及び量の正孔輸送剤及び電子輸送剤を使用した。感光体(A−1)の製造においては導電性基体として周面に膜厚5.0μmの陽極酸化被膜が設けられた導電性基体を使用したが、感光体(A−27)及び(A−28)の各々の製造においては表3に示す膜厚の陽極酸化被膜が周面に設けられた導電性基体を使用した。また、感光体(B−4)の製造においては、周面に陽極酸化被膜が設けられていない導電性基体(即ち、陽極酸化処理を行っていない導電性基体)を使用した。
<光応答時間の測定>
感光体(A−1)〜(A−29)及び(B−1)〜(B−4)の各々の光応答時間を測定した。光応答性時間の測定環境は、温度25℃及び相対湿度50%RHの環境下であった。
図4を参照して、感光体1の光応答時間の測定方法を説明する。図4は、感光体1の光応答時間の測定装置50を示す。測定装置50は、帯電装置52と、露光装置54と、透明プローブ56と、電位検出装置58とを備える。測定装置50として、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いた。まず、感光体1(具体的には、感光体(A−1)〜(A−29)及び(B−1)〜(B−4)の何れか)を測定装置50に装着した。
帯電装置52によって、感光体1の感光層3の表面3aを+800Vに帯電した。これにより、感光層3の表面3aが帯電位置Aで+800Vに帯電した。帯電位置Aは、帯電装置52と、感光層3の表面3aとが接触する位置であった。
帯電位置Aから露光位置Bへ向かう方向(図4において実線の矢印で示す方向)に感光体1を回転させて、帯電された感光層3の表面3aを、露光位置Bに移動させた。露光位置Bは、パルス光が照射される位置であった。移動後、感光体1の回転を止め、感光体1の位置を固定した。感光層3の表面3aの電位(表面電位)の測定は、感光体1を固定した状態で実行された。露光位置Bで、帯電された感光層3の表面3aに露光装置54がパルス光(波長780nm、半値幅40マイクロ秒)を照射した。パルス光の光強度を設定は、+800Vに帯電された感光層3の表面3aにパルス光が照射されてから400ミリ秒後に、感光層3の表面電位が+800Vから+200Vとなる強度とした。パルス光の照射は1回であった。即ち、1パルスを照射した。露光装置54の光源としてキセノンフラッシュランプ(浜松ホトニクス株式会社製「C4479」)を用いた。パルス光の波長及び光強度は、光学フィルター(不図示)により調整した。なお、厳密には、帯電装置52によって感光層3の表面3aを+800Vよりわずかに大きい値に帯電させた。次いで、所定の時間を経過させて、感光層3の表面電位が+800Vまで暗減衰した時点で、露光装置54によって、パルス光を感光層3の表面3aに照射した。
透明プローブ56によって、感光層3の表面電位を測定した。透明プローブ56は、パルス光の光軸上に設置され、パルス光を透過させた。図4中、露光装置54から感光体1へ向かう破線の矢印は、パルス光の光軸を示す。透明プローブ56として、プローブ(トレック株式会社製「3629A」)を用いた。
電位検出装置58は、透明プローブ56と電気的に接続されていた。電位検出装置58によって、透明プローブ56が測定した時間ごとの感光層3の表面電位を得た。これにより、感光層3の表面電位の減衰曲線を得た。得られた減衰曲線から、パルス光が感光層3の表面3aに照射されてから感光層3の表面電位が+800Vから+400Vに減衰するまでの時間τを得た。得られた時間τを、光応答時間とした。以上、図4を参照して、感光体1の光応答時間の測定方法を説明した。測定された感光体の光応答時間を、表2〜表3に示す。
<画像評価1:露光メモリーに起因する画像不良>
感光体(A−1)〜(A−29)及び(B−1)〜(B−4)の各々に対して、露光メモリーに起因する画像不良が抑制されているか否かを評価した。露光メモリーに起因する画像不良の評価は、温度10℃及び相対湿度15%RHの環境下で行った。
感光体を評価機に装着した。評価機として、カラー画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)の改造機を用いた。改造機の改造点は、クリーニングブレードを取り外したこと、除電部(具体的には、除電ランプ)を取り外したことであった。即ち、この評価機は、帯電部としてスコロトロン帯電器を備えていた。また、この評価機は、除電部と、クリーニング部としてのクリーニングブレードとを備えていなかった。帯電電位を+700Vに設定した。露光と現像との間のプロセス時間が72ミリ秒となるように、感光体の周速を調整した。
図5を参照して、露光メモリーに起因する画像不良の評価に使用した評価用画像70を説明する。図5は、評価用画像70を示す。評価用画像70は、第1領域72及び第2領域74を含む。第1領域72は、像担持体の1周目に形成される画像の領域に相当する。第1領域72は、第1画像76を含む。第1画像76は、ドーナツ型のソリッド画像(画像濃度100%)から構成される。このソリッド画像は、2つの同心円の1組から構成される。第2領域74は、像担持体の2周目に形成される画像の領域に相当する。第2領域74は第2画像78を含む。第2画像78は、全面ハーフトーン画像(画像濃度40%)から構成される。
次に、図6を参照して、露光メモリーに起因する画像不良が発生した画像80を説明する。図6は、露光メモリーに起因する画像不良が発生した画像80を示す。画像80は、評価用画像70で説明した第1領域72、第2領域74、第1画像76及び第2画像78を含む。評価用画像70を印刷して露光メモリーに起因する画像不良が発生した場合には、第2領域74に第2画像78が印刷されるべきところ、第2領域74の第2画像78中にゴースト画像Gが現れる。ゴースト画像Gの画像濃度は、第2画像78に比べて濃い。ゴースト画像Gは、第1領域72の露光領域の第1画像76を反映して設計画像濃度よりも濃くなった、露光メモリーに起因する画像不良である。
まず、評価機を用いて、4000枚の記録媒体(A4サイズの紙)に、20秒間隔で、画像(印字率4%の印字パターン画像)を印刷した。4000枚の記録媒体に印刷した後、1枚の記録媒体(A4サイズの紙)に、図5で示す評価用画像70を印刷した。印刷した評価用画像70を肉眼で観察し、露光メモリーに起因する画像不良の発生の有無を確認した。具体的には、評価用画像70の第2領域74に、第1画像76に対応したゴースト画像Gが発生したか否かを確認した。評価用画像70の観察結果から下記基準に基づいて、露光メモリーに起因する画像不良を抑制できているか評価した。評価結果を表4に示す。なお、評価A〜Cを合格とした。
(露光メモリーに起因する画像不良の評価基準)
評価A:第1画像76に対応したゴースト画像Gが観察されなかった。
評価B:第1画像76に対応したゴースト画像Gがわずかに観察された。
評価C:第1画像76に対応したゴースト画像Gが観察されたが、実用上問題のない水準であった。
評価D:第1画像76に対応したゴースト画像Gが明確に観察され、実用上問題のある水準であった。
<画像評価2:転写かすれ>
感光体(A−1)〜(A−29)及び(B−1)〜(B−4)の各々に対して、転写かすれが抑制されているかを評価した。転写かすれの評価は、温度32℃及び相対湿度80%RHの環境下で行った。
まず、感光体を評価機に装着した。評価機として、露光メモリーに起因する画像不良の評価に用いた評価機と同様のものを用いた。帯電電位を+700Vに設定した。露光と現像との間のプロセス時間が72ミリ秒となるように、感光体の周速を調整した。転写電流は、転写かすれを生じ易くするため、通常の2.0倍(−20μA)とした。
1枚の記録媒体(A4サイズの紙)に、評価用画像としてべた画像を印刷した。印刷した評価用画像を肉眼で観察し、転写かすれの有無を確認した。評価用画像の観察結果から下記基準に基づいて、転写かすれを抑制できているか評価した。評価結果を表4に示す。なお、評価A及びBを合格とした。
(転写かすれの評価基準)
評価A:べた画像にかすれ及び抜けはいずれも確認されなかった。
評価B:べた画像に軽微なかすれ及び抜けの少なくとも一方が観測されたが、実用上問題のない水準であった。
評価C:べた画像にかすれ及び抜けの少なくとも一方が観察され、実用上問題のある水準であった。
(転写後電位)
上述の転写かすれの評価用画像の印刷中、感光体の転写後位置における表面電位を測定した。測定された転写後位置の表面電位を、転写後電位(単位:V)とした。各感光体の転写後電位を表4に示す。転写後電位がマイナスの値である場合、転写電流によって転写後電位が不安定となっていることを示す。
表2〜表3中、CGM、HTM、ETM、部及びwt%は、各々、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、質量部及び質量%を示す。また、表2で示す感光体(A−7)の正孔輸送剤の種類「12−HT3/14−HT1」及び含有量「75/75」は、正孔輸送剤として、化合物(12−HT3)及び(14−HT1)を75質量部ずつ含有することを示す。同様に、表2で示す感光体(A−14)の正孔輸送剤の種類「14−HT1/12−HT10」は、正孔輸送剤として、化合物(14−HT1)及び(12−HT10)を75質量部ずつ含有することを示す。
表2〜3中、被膜は陽極酸化被膜を示す。表3で示す感光体(B−4)の陽極酸化被膜の膜厚「−」は、導電性基体の周面に陽極酸化被膜が設けられていないことを示す。
表2〜表3中、HTMの「含有率」は、感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率を示す。感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率は、計算式「含有率(単位:質量%)=100×正孔輸送剤の量(単位:質量部)/[電荷発生剤の量(単位:質量部)+正孔輸送剤の量(単位:質量部)+電子輸送剤の量(単位:質量部)+バインダー樹脂の量(単位:質量部)]」から求めた。
表2〜表3中、「比率mHTM/mETM」は、電子輸送剤の質量mETMに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率を示す。比率mHTM/mETMは、計算式「比率mHTM/mETM=正孔輸送剤の量(単位:質量部)/電子輸送剤の量(単位:質量部)」から求めた。
表2〜表3中、「比率(mHTM+mETM)/mR」は、バインダー樹脂の質量mBに対する電子輸送剤及び正孔輸送剤の合計質量(質量mETM+質量mHTM)の比率を示す。比率(mHTM+mETM)/mRは、計算式「比率(mHTM+mETM)/mR=[正孔輸送剤の量(単位:質量部)+電子輸送剤の量(単位:質量部)]/バインダー樹脂の量(単位:質量部)」から求めた。
感光体(A−1)〜(A−29)は、各々、導電性基体と、単層の感光層とを備えていた。導電性基体は、少なくとも感光層側の面に設けられた陽極酸化被膜を有していた。感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有していた。光応答時間は、0.05ミリ秒以上0.85ミリ秒以下であった。そのため、表4に示すように、感光体(A−1)〜(A−29)の各々では、露光メモリーに起因する画像不良の抑制が評価A〜Cであり、かつ転写かすれの抑制が評価Aであり、いずれも合格であった。即ち、感光体(A−1)〜(A−29)の各々は、露光メモリーに起因する画像不良と、転写かすれとを抑制することができた。
一方、感光体(B−1)〜(B−3)の各々は、光応答時間が0.85ミリ秒超であった。そのため、表4に示すように、感光体(B−1)〜(B−3)の各々では、露光メモリーに起因する画像不良の抑制がいずれも評価Dであった。即ち、感光体(B−1)〜(B−3)の各々は、露光メモリーに起因する画像不良を十分に抑制できなかった。
感光体(B−4)は、導電性基体の感光層側の面に陽極酸化被膜が設けられていなかった。そのため、表4に示すように、感光体(B−4)は、転写かすれの抑制が評価Cであった。即ち、感光体(B−4)は、転写かすれを十分に抑制できなかった。このことは、感光体(B−4)の転写後電位が0V未満であり、転写電流によって転写後電位が不安定となっていることからも確認できた。
以上のことから、本発明に係る感光体によれば、露光メモリーに起因する画像不良と、転写メモリーとを抑制することができることが示された。また、本発明に係るプロセスカートリッジ及び画像形成装置によれば、露光メモリーに起因する画像不良と、転写メモリーとを抑制することができることが示された。