JP2017125879A - 積層型電子写真感光体、積層型電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents

積層型電子写真感光体、積層型電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 Download PDF

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明彦 尾形
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潤 東
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Kensuke Okawa
賢輔 大川
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Abstract

【課題】電気的特性と耐摩耗性との両立が可能な積層型電子写真感光体を提供する。
【解決手段】積層型電子写真感光体は、感光層を備える。感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層とを備える。電荷発生層は、電荷発生剤を有する。電荷輸送層は、正孔輸送剤及びバインダー樹脂を有する。電荷発生剤は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するチタニルフタロシアニンを含む。正孔輸送剤は、特定構造のジブタジエン構造を有するベンジジン誘導体を含む。電荷輸送層において、正孔輸送剤の質量の比率は、バインダー樹脂の質量に対して0.55以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、積層型電子写真感光体、積層型電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター、又は複合機)に用いられる。電子写真感光体は、例えば、導電性基体と、導電性基体上に直接又は間接に設けられた感光層とを備える。感光層は、電荷発生剤、電荷輸送剤(例えば、正孔輸送剤又は電子輸送剤)、及びこれらを結着させる樹脂(バインダー樹脂)を含有することができる。また、感光層は、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを含むことができる。このような電子写真感光体は、積層型電子写真感光体と呼ばれる。
特許文献1に記載の電子写真感光体は、幾何異性(シス型、及びトランス型)のアリールアミン系化合物を特定の割合で含む。
特開2002−080432号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術を用いたとしても、優れた電気的特性を維持しつつ耐摩耗性に優れる電子写真感光体を得ることは難しい。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気的特性と耐摩耗性との両立が可能な積層型電子写真感光体を提供することにある。また、本発明の目的は、上述の積層型電子写真感光体の製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、上述の積層型電子写真感光体を備えることで、画像不良の発生を抑制することができるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することである。
本発明の積層型電子写真感光体は、感光層を備える。前記感光層は、電荷発生層と電荷輸送層とを含む。前記電荷発生層は、電荷発生剤を有する。前記電荷輸送層は、正孔輸送剤及びバインダー樹脂を有する。前記電荷発生剤は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するチタニルフタロシアニンを含む。前記正孔輸送剤は、一般式(1)で表されるベンジジン誘導体を含む。前記電荷輸送層において、前記正孔輸送剤の質量の比率は、前記バインダー樹脂の質量に対して0.55以下である。
Figure 2017125879
前記一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数6以上12以下のアリール基を表す。R1及びR5のうち少なくとも一方が、水素原子を表さない。R6及びR10のうち少なくとも一方が、水素原子を表さない。R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数6以上12以下のアリール基を表す。k、及びlは、各々独立に、0以上4以下の整数を表し、kが2以上の整数を表す場合、複数のR13は互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数を表す場合、複数のR14は互いに同一であっても異なっていてもよい。m、及びnは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数のR11は互いに同一でも異なっていてもよい。nが2以上の整数を表す場合、複数のR12は互いに同一でも異なっていてもよい。
本発明の積層型電子写真感光体の製造方法は、上述の積層型電子写真感光体を製造する方法である。前記積層型電子写真感光体の製造方法は、電荷輸送層形成工程を有する。前記電荷輸送層形成工程では、電荷輸送層用塗布液を、前記電荷発生層上に塗布し、塗布した前記電荷輸送層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して前記電荷輸送層を形成する。前記電荷輸送層用塗布液は、少なくとも前記正孔輸送剤と、前記バインダー樹脂と、前記溶剤とを含む。前記溶剤は、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、及びo−キシレンのうちの少なくとも1種を含有する。
本発明のプロセスカートリッジは、上述の積層型電子写真感光体を備える。
本発明の画像形成装置は、像担持体と、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部とを備える。前記像担持体は、上述の積層型電子写真感光体である。前記帯電部では、前記像担持体の表面を帯電する。前記露光部では、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する。前記現像部では、前記静電潜像をトナー像として現像する。前記転写部では、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写する。
本発明の積層型電子写真感光体によれば、電気的特性と耐摩耗性との両立が可能な積層型電子写真感光体を提供することができる。また、本発明の積層型電子写真感光体の製造方法によれば、上述の積層型電子写真感光体を製造することができる。また、本発明のプロセスカートリッジ、又は画像形成装置によれば、上述の積層型電子写真感光体を備えることで、画像不良の発生を抑制することができる。
(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、第一実施形態における積層型電子写真感光体の構造を示す概略断面図である。 化学式(HTM−1)で表されるベンジジン誘導体の1H−NMRスペクトルである。 化学式(HTM−2)で表されるベンジジン誘導体の1H−NMRスペクトルである。 化学式(HTM−3)で表されるベンジジン誘導体の1H−NMRスペクトルである。 化学式(HTM−4)で表されるベンジジン誘導体の1H−NMRスペクトルである。 化学式(HTM−5)で表されるベンジジン誘導体の1H−NMRスペクトルである。 第三実施形態に係る画像形成装置の一態様の構成を示す概略図である。 第三実施形態に係る画像形成装置の別の態様の構成を示す概略図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称することがある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
本明細書において、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基、及び炭素原子数6以上14以下のアリール基は、各々、次の意味である。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、又はn−ヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上5以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上5以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、又はネオペンチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、又はt−ブチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基、が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、又はヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、又はt−ブトキシ基が挙げられる。
炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、又はイソプロポキシ基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基、又は炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基が挙げられる。
<第一実施形態:積層型電子写真感光体>
第一実施形態は、積層型電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。以下、図1を参照して、第一実施形態に係る感光体について説明する。図1は、第一実施形態に係る積層型電子写真感光体の構造を示す概略断面図である。感光体1は、例えば、図1(a)に示すように、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、例えば、図1(a)に示すように、導電性基体2上に直接設けられていてもよい。感光層3は、電荷発生層3bと、電荷輸送層3cとを含む。感光体1においては、図1(a)に示すように導電性基体2上に電荷発生層3bが設けられ、電荷発生層3bの上に電荷輸送層3cが設けられてもよい。また、導電性基体2上に電荷輸送層3cが設けられ、電荷輸送層3c上に電荷発生層3bが設けられてもよい。ただし、一般に電荷輸送層3cの膜厚は、電荷発生層3bの膜厚に比べ厚いため、電荷輸送層3cは、電荷発生層3bに比べ破損しにくい。このため、感光体1では、図1(a)に示すように、電荷発生層3b上に電荷輸送層3cが設けられることが好ましい。
また、感光体1は、例えば、図1(b)に示すように、導電性基体2と、感光層3と、中間層4とを備える。例えば、図1(b)に示すように、中間層(下引き層)4が導電性基体2と感光層3との間に適宜に設けられていてもよい。感光層3上に保護層が設けられていてもよい。
感光層3の厚さは、感光層として充分に作用することができる限り、特に限定されない。感光層3の厚さは、例えば、5μm以上100μm以下であり、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
第一実施形態に係る感光体1は、電気的特性(感度特性)と耐摩耗性とを両立する。その理由は、以下のように推測される。第一実施形態に係る感光体1において、感光層3は、電荷発生層3bに電荷発生剤を有し、電荷輸送層3cに正孔輸送剤及びバインダー樹脂を有する。正孔輸送剤は、一般式(1)で表されるベンジジン誘導体(以下、ベンジジン誘導体(1)と記載することがある)を含む。R1及びR5のうち少なくとも一方、並びにR6及びR10のうち少なくとも一方が水素原子を表さない。このように、ベンジジン誘導体(1)は、2つのフェニル基のオルト位の少なくとも一方に特定の置換基を有するため、溶媒への分散性及びバインダー樹脂との相溶性に優れる傾向にある。このため、ベンジジン誘導体(1)が均一に分散した電荷輸送層用塗布液を調製でき、ベンジジン誘導体(1)が均一に分散した電荷輸送層3cを形成できる傾向にある。従って、第一実施形態に係る感光体1は、電気的特性に優れると考えられる。
また、正孔輸送剤は、ベンジジン誘導体(1)を含む。電荷輸送層3cにおいて、正孔輸送剤の質量(含有量)の比率は、バインダー樹脂の質量(含有量)に対して0.55以下である。このようなベンジジン誘導体(1)は、電気的特性に優れるため、電荷輸送層中での含有量を低減できる。その結果、ベンジジン誘導体(1)とバインダー樹脂とは、電荷輸送層3cの層密度を高め、電荷輸送層3cの膜強度を向上させると考えられる。従って、第一実施形態に係る感光体1は、耐摩耗性に優れると考えられる。よって、第一実施形態に係る感光体1は、電気的特性と耐摩耗性とを両立できると考えられる。
以上、図1を参照して、第一実施形態に係る感光体1の構造を説明した。続いて、第一実施形態に係る感光体の要素(導電性基体2、感光層3、及び中間層4)を説明する。
[1.導電性基体]
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体としては、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成される導電性基体を用いることができる。導電性基体としては、例えば、導電性を有する材料で構成される導電性基体;及び導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、又は真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、特に限定されない。例えば、使用する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択することができる。より具体的には、シート状の導電性基体、又はドラム状の導電性基体を使用することができる。また、導電性基体の厚みは、導電性基体の形状に応じて、適宜選択することができる。ただし、導電性基体は、使用に際して、十分な機械的強度を有することが好ましい。
[2.感光層]
既に上述したように、感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層とを含む。感光層は、添加剤を更に含んでもよい。以下、電荷発生層、電荷輸送層及び添加剤を説明する。
[2−1.電荷発生層]
電荷発生層は、例えば、電荷発生剤と、電荷発生層用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することがある)とを有する。電荷発生層の厚さは、電荷発生層として十分に作用することができれば、特に限定されない。電荷発生層の厚さは、具体的には、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。以下、電荷発生剤、及びベース樹脂を説明する。
[2−1−1.電荷発生剤]
電荷発生剤は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するチタニルフタロシアニン(以下、Y型チタニルフタロシアニン結晶と記載することがある)を含む。なお、CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークに相当する。Y型チタニルフタロシアニン結晶は、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°以外に、ピークを有していてもよい。
CuKα特性X線回折スペクトルは、X線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)を用いて測定することができる。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の詳細は、後述する。
Y型チタニルフタロシアニン結晶は、例えば、化学式(CG−1)で表すことができる。
Figure 2017125879
Y型チタニルフタロシアニン結晶の一例は、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピークを有さず、270℃以上400℃以下の範囲内に、1つのピークを有することができる。このようなY型チタニルフタロシアニン結晶を用いることにより、有機溶媒中において、Y型チタニルフタロシアニン結晶の結晶型がY型からα型やβ型に転移することを抑制し、電荷発生効率を向上させることができる。
示差走査熱量分析スペクトルは、示差走査熱量計(例えば、株式会社リガク製「TAS−200型 DSC8230D」)を用いて測定することができる。得られた示差走査熱量分析スペクトルから、吸着水の気化に伴うピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークがあることを確認できる。
電荷発生剤は、Y型チタニルフアロシアニン結晶のみを実質的に含むことが好ましい。ただし、Y型チタニルフタロシアニン結晶以外に感光体用の電荷発生剤を含んでもよい。このような電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンのような無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、又はキナクリドン系顔料が挙げられる。フタロシアニン系顔料としては、例えば、フタロシアニン(例えば、X型無金属フタロシアニン(X−H2Pc))、又はフタロシアニン誘導体が挙げられる。フタロシアニン誘導体としては、例えば、Y型チタニルフタロシアニン結晶以外のチタニルフタロシニン(より具体的には、α型チタニルフタロシアニン結晶、又はβ型チタニルフタロシアニン結晶等)、又は酸化チタン以外が配位したフタロシアニン(例えば、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン)が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷発生剤の含有量は、電荷発生層においてベース樹脂100質量部に対して、5質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。
[2−1−2.ベース樹脂]
ベース樹脂は、感光体に適用し得るベース樹脂である限り、特に制限されない。ベース樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテル樹脂、又はポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、又はその他架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリル酸系樹脂、又はウレタン−アクリル酸系樹脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのベース樹脂のうち、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリビニルアセタール樹脂がより好ましい。
ベース樹脂は、後述するバインダー樹脂と同様の樹脂も例示されているが、同一の感光体においては、通常、バインダー樹脂とは異なる樹脂が選択される。このことは、以下のことによる。感光体を製造する際、通常、感光層は導電性基体上に電荷発生層、電荷輸送層の順に形成するため、電荷発生層に、電荷輸送層用塗布液を塗布することになる。電荷輸送層の形成時に、電荷発生層は、電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが求められるからである。そこで、ベース樹脂は、同一の感光体においては、通常、バインダー樹脂とは異なる樹脂が選択される。
[2−2.電荷輸送層]
電荷輸送層は、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を有する。電荷輸送層の厚さは、電荷輸送層として十分に作用することができれば、特に限定されない。電荷輸送層の厚さは、具体的には、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、電荷輸送層は、電子受容性化合物を更に有してもよい。以下、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂について説明する。
[2−2−1.正孔輸送剤]
既に上述したように、正孔輸送剤は、ベンジジン誘導体(1)を含む。ベンジジン誘導体(1)は、一般式(1)で表される。
Figure 2017125879
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数6以上12以下のアリール基を表す。R1及びR5のうち少なくとも一方が、水素原子を表さない。R6及びR10のうち少なくとも一方が、水素原子を表さない。R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数6以上12以下のアリール基を表す。k及びlは、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。kが2以上の整数を表す場合、複数のR13は互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数を表す場合、複数のR14は互いに同一であっても異なっていてもよい。m及びnは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数のR11は互いに同一でも異なっていてもよい。nが2以上の整数を表す場合、複数のR12は互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(1)中、R1〜R14で表される炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はt−ブチル基がより好ましい。このようなアルキル基は、置換基を有してもよい。アルキル基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はシアノ基が挙げられる。
一般式(1)中、R1〜R14で表される炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。このようなアルコキシ基は、置換基を有してもよい。アルコキシ基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はシアノ基が挙げられる。
一般式(1)中、R1〜R14で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基は、フェニル基が好ましい。このようなアリール基は、置換基を有してもよい。アリール基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
一般式(1)中、R1及びR5のうち少なくとも一方が、炭素原子数1以上6以下のアルキル基(より好ましくは、メチル基又はエチル基)、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数6以上12以下のアリール基を表すことが好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、又はフェニル基を表すことがより好ましい。R2、R4、R7及びR9は、水素原子を表すことが好ましい。R3及びR8は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。R6及びR10のうち少なくとも一方が、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数6以上12以下のアリール基を表すことが好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、又はフェニル基を表すことがより好ましい。R11及びR12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表すことが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はメトキシ基を表すことがより好ましい。k及びlは、0を表すことが好ましい。m及びnは、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
ベンジジン誘導体(1)は、対称構造を有してもよい。このような対称構造としては、例えば、対称面を有する対称構造、又は回転軸を有する対称構造が挙げられる。対称面としては、例えば、一般式(1)における明細書紙面、又は一般式(1)における明細書紙面と、2つの窒素原子を始点及び終点とする線分とが互いに垂直であってかつ上記線分の中間点を含む面が挙げられる。回転軸としては、例えば、上記中間点を含む2回回転軸が挙げられる。
ベンジジン誘導体(1)は、非対称構造を有してもよい。このような非対称構造は、例えば、置換基の種類、又は置換基のベンゼン環への置換する位置が挙げられる。
ベンジジン誘導体(2)は、2つの共役ジエンを有する。共役ジエンを形成する二重結合は、いずれもE配置を有する。このため、ベンジジン誘導体(1)は、EE型の構造を有する。
ベンジジン誘導体(1)の具体的な化合物を化学式(HTM−1)〜化学式(HTM−8)で表す(以下、正孔輸送剤(HTM−1)〜正孔輸送剤(HTM−8)と記載することがある)。
Figure 2017125879
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正孔輸送剤(HTM−1)〜正孔輸送剤(HTM−5)の1H−NMRスペクトルの一例を、それぞれ図2〜図6に示す。
ベンジジン誘導体(1)の製造方法は、以下の反応式(R−1)、(R−2)、及び(R−3)で表される反応を含む。ベンジジン誘導体(1)の製造方法は、EE型のベンジジン誘導体(1)を製造することを意図しており、EZ型及びZZ型という幾何異性のベンジジン誘導体を製造することを考慮しなくてもよい。そのため、合成時の反応条件又は材料の配合比を特定しない場合であっても、簡易な操作でかつ高収率で、ベンジジン誘導体(1)を製造することができる。
Figure 2017125879
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反応式(R−1)、(R−2)、及び(R−3)中、R7〜R14、k、l、m、及びnは、それぞれ一般式(1)のR7〜R14、k、l、m、及びnと同義である。Xは、ハロゲン原子を表し、塩素原子を表すことが好ましい。
反応式(R−1)で表される反応では、一般式(2)及び(3)で表される化合物(以下、アニリン誘導体(2)及び(3)と記載することがある)と、一般式(4)で表される化合物(以下、ビフェニル誘導体(4)と記載することがある)とを反応させて、一般式(5)で表される化合物(以下、ビフェニルアミン誘導体(5)と記載することがある)を得る。
アニリン誘導体(2)と、ビフェニル誘導体(4)との反応比(アニリン誘導体(2):ビフェニル誘導体(4))は、物質量比(モル比)で、1:1乃至2:1であることが好ましい。アニリン誘導体(3)と、ビフェニル誘導体(4)との反応比(アニリン誘導体(3):ビフェニル誘導体(4))も、モル比で、1:1乃至2:1であることが好ましい。アニリン誘導体(2)又は(3)の物質量(モル数)に対するビフェニル誘導体(4)の物質量が過小であると、ビフェニルアミン誘導体(5)の収率が過度に低くなることがある。一方、アニリン誘導体(2)又は(3)の物質量に対するビフェニル誘導体(4)の物質量が過大であると、過剰となったビフェニル誘導体(4)が未反応のまま過度に残留し、ビフェニルアミン誘導体(5)の精製が困難になることがある。
反応式(R−1)で表される反応に関し、反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましい。反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応式(R−1)で表される反応においては、触媒としてパラジウム化合物を用いることが好ましい。触媒としてパラジウム化合物を用いることにより、反応式(R−1)で表される反応における活性化エネルギーが効果的に低下する。その結果、ビフェニルアミン誘導体(5)の収率を向上させることができる。
パラジウム化合物の具体例としては、四価パラジウム化合物類、二価パラジウム化合物類、又はその他のパラジウム化合物類が挙げられる。四価パラジウム化合物類としては、例えば、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、又はヘキサクロルパラジウム(IV)酸カリウム四水和物が挙げられる。二価パラジウム化合物類としては、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセテート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラミンパラジウム(II)、又はジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)が挙げられる。その他のパラジウム化合物類としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0)又はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。パラジウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
パラジウム化合物の添加量は、ビフェニル誘導体(4)1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
このようなパラジウム化合物は、配位子を含む構造であってもよい。これにより、反応式(R−1)で表される反応の反応性を向上させることができる。配位子としては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフリルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、又は2,2’−ビス[(ジフェニルホスフィノ)ジフェニル]エーテルが挙げられる。配位子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。配位子の添加量は、ビフェニル誘導体(4)1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
また、反応式(R−1)で表される反応は、塩基の存在下で実行されることが好ましい。
反応式(R−1)で表される反応を塩基の存在下で実行することにより、反応系中で発生するハロゲン化水素がすみやかに中和され、触媒活性が向上する。その結果、ビフェニルアミン誘導体(5)の収率を向上させることができる。
塩基は、無機塩基であってもよいし、有機塩基であってもよい。有機塩基は、特に限定されない。有機塩基としては、例えば、アルカリ金属アルコシド(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、又はカリウム−tert−ブトキシド)が好ましく、ナトリウム−tert−ブトキシドがより好ましい。また、無機塩基としては、例えば、リン酸三カリウム、又はフッ化セシウムが挙げられる。
ビフェニル誘導体(4)1モルに対して、パラジウム化合物0.0005モル以上20モル以下を加えた場合、塩基の添加量は1モル以上10モル以下であることが好ましく、1モル以上5モル以下であることがより好ましい。
反応式(R−1)で表される反応は、溶剤中で行うことができる。溶剤としては、例えば、キシレン(o−キシレン、m−キシレン、又はp−キシレン)、トルエン、テトラヒドロフラン、又はジメチルホルムアミドが挙げられる。
次に、反応式(R−2)で表される反応について説明する。
反応式(R−2)においては、一般式(6)で表されるベンゼン誘導体(以下、ベンゼン誘導体(6)と記載することがある)と、一般式(7)で表される亜リン酸トリエチルとを反応させて、一般式(8)で表されるホスホナート誘導体(以下、ホスホナート誘導体(8)と記載することがある)を得る。
ベンゼン誘導体(6)と亜リン酸トリエチルとの反応比(ベンゼン誘導体(6):亜リン酸トリエチル)は、物質量比で、1:1乃至1:2.5であることが好ましい。ベンゼン誘導体(6)の物質量に対して亜リン酸トリエチルの物質量が過小であると、ホスホナート誘導体(8)の収率が過度に低下する場合がある。一方、ベンゼン誘導体(6)の物質量に対して亜リン酸トリエチルの物質量が過大であると、反応後に未反応の亜リン酸トリエチルが過度に残留し、ホスホナート誘導体(8)の精製が困難となることがある。
ベンゼン誘導体(6)と亜リン酸トリエチルとの反応に関し、反応温度は160℃以上200℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上16時間以下であることが好ましい。
次いで、ホスホナート誘導体(8)と、別途準備した一般式(9)及び(10)で表されるシンナムアルデヒド誘導体(以下、シンナムアルデヒド誘導体(9)及び(10)と記載することがある)とを反応させて、一般式(11)及び(12)で表されるジフェニルブタジエン誘導体(以下、ジフェニルブタジエン誘導体(11)及び(12)と記載することがある)を得る(Wittig反応)。
ホスホナート誘導体(8)とシンナムアルデヒド誘導体(9)との反応比(ホスホナート誘導体:シンナムアルデヒド誘導体(9))は、物質量比で、1:1乃至1:2.5であることが好ましい。ホスホナート誘導体(8)とシンナムアルデヒド誘導体(10)との反応比(ホスホナート誘導体:シンナムアルデヒド誘導体(10))は、物質量比で、1:1乃至1:2.5であることが好ましい。ホスホナート誘導体(8)の物質量に対してシンナムアルデヒド誘導体(9)又は(10)の物質量が過小であるとジフェニルブタジエン誘導体(11)又は(12)の収率が過度に低下することがある。ホスホナート誘導体(8)の物質量に対してシンナムアルデヒド誘導体(9)又は(10)の物質量が過大であると、未反応のシンナムアルデヒド誘導体(9)又は(10)が過度に残留し、ジフェニルブタジエン誘導体(11)又は(12)の精製が困難となることがある。
Wittig反応は塩基の存在下にて行うことができる。用いられる塩基としては、例えば、ナトリウムアルコキシド(より具体的には、ナトリウムメトキシド、又はナトリウムエトキシド等)、金属水素化物(より具体的には、水素化ナトリウム、又は水素化カリウム等)、又は金属塩(より具体的には、n−ブチルリチウム等)が挙げられる。これらの塩基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。こうした塩基の添加量は、シンナムアルデヒド誘導体(9)及び(10)の合計1モルに対して、1モル以上2モル以下であることが好ましい。こうした塩基の添加量が過少であると、反応性が著しく低下することがある。一方、こうした塩基の添加量が過多であると、反応の制御が困難になることがある。
ホスホナート誘導体(8)とシンナムアルデヒド誘導体(9)又は(10)との反応に関し、反応温度は−10℃以上50℃以下であることが好ましく、反応時間は5時間以上20時間以下であることが好ましい。
反応式(R−2)で表される反応は、例えば溶剤中で実行される。溶剤としては、例えば、エーテル類(より具体的には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、又はジオキサン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、又はジクロロエタン等)、又は芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、又はトルエン等)が挙げられる。
次いで、反応式(R−3)で表される反応について述べる。この反応では、反応式(R−1)にて得られたビフェニルアミン誘導体(5)と、反応式(R−2)にて得られたジフェニルブタジエン誘導体(11)又は(12)とを反応させて、最終目的物であるベンジジン誘導体(1)を合成する。
ビフェニルアミン誘導体(5)とジフェニルブタジエン誘導体(11)との反応比(ビフェニルアミン誘導体(5):ジフェニルブタジエン誘導体(11))は、物質量比で、1:1乃至1:5であることが好ましく、1:1乃至1:3であることがより好ましい。ビフェニルアミン誘導体(5)とジフェニルブタジエン誘導体(12)との反応比(ビフェニルアミン誘導体(5):ジフェニルブタジエン誘導体(12))は、物質量比で、1:1乃至1:5であることが好ましく、1:1乃至1:3であることがより好ましい。ビフェニルアミン誘導体(5)の物質量に対してジフェニルブタジエン誘導体(11)又は(12)の物質量が過少であると、ベンジジン誘導体(1)の収率が過度に低下することがある。一方、ビフェニルアミン誘導体(5)の物質量に対してジフェニルブタジエン誘導体(11)又は(12)の物質量が過大であると、反応終了後に、過剰のジフェニルブタジエン誘導体(11)又は(12)が未反応のまま過度に残留し、ベンジジン誘導体(1)の精製が困難となることがある。
反応式(R−3)で表される反応に関し、反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
また、反応式(R−3)で表される反応には、触媒としてパラジウム化合物を用いることが好ましい。
触媒としてパラジウム化合物を用いることにより、反応式(R−3)で表される反応における活性化エネルギーが効果的に低下する。その結果、ベンジジン誘導体(1)の収率をより向上させることができる。
パラジウム化合物としては、例えば、四価パラジウム化合物類、二価パラジウム化合物類、又はその他のパラジウム化合物類が挙げられる。四価パラジウム化合物類としては、例えば、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、又はヘキサクロルパラジウム(IV)酸カリウム四水和物が挙げられる。二価パラジウム化合物類としては、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセテート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラミンパラジウム(II)、又はジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)が挙げられる。その他のパラジウム化合物類としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0)又はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。パラジウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
パラジウム化合物の添加量は、ビフェニルアミン誘導体(5)1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.001モル以上1モル以下である。
また、反応式(R−3)で表される反応は、塩基の存在下で行われることが好ましい。
反応式(R−3)で表される反応を塩基の存在下で行うことにより、反応系中で発生するハロゲン化水素がすみやかに中和され、触媒活性が向上する。その結果、ベンジジン誘導体(1)の収率を向上させることができる。
塩基は、無機塩基であってもよいし、有機塩基であってもよい。有機塩基は、特に限定されない。有機塩基としては、例えば、アルカリ金属アルコキシド(より具体的には、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、又はカリウム−tert−ブトキシド等)が好ましく、ナトリウム−tert−ブトキシドがより好ましい。また、無機塩基としては、例えば、リン酸三カリウム、又はフッ化セシウムが挙げられる。
ビフェニルアミン誘導体(5)1モルに対して、パラジウム化合物0.0005モル以上20モル以下を加えた場合、塩基の添加量は、1モル以上10モル以下であることが好ましく、1モル以上5モル以下であることがより好ましい。
このようなパラジウム化合物は、配位子を含む構造であってもよい。これにより、反応式(R−3)で表される反応の反応性を向上させることができる。配位子としては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフリルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、又は2,2’−ビス[(ジフェニルホスフィノ)ジフェニル]エーテルが挙げられる。配位子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。配位子の添加量は、ビフェニルアミン誘導体1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
反応式(R−3)で表される反応は、溶剤中で行うことができる。溶剤としては、例えば、キシレン(より具体的には、o−キシレン、m−キシレン、又はp−キシレン)、トルエン、テトラヒドロフラン、又はジメチルホルムアミドが挙げられる。
ベンジジン誘導体(1)の製造方法では、反応式(R−1)、(R−2)又は(R−3)で表される反応を行う工程以外に、必要に応じて適宜な工程を含んでいてもよい。例えば、得られた生成物を精製する精製工程が挙げられる。具体的な精製方法としては、ろ過、晶析又はクロマトグラフィーによる分離のような公知の生成方法が挙げられる。
正孔輸送剤は、ベンジジン誘導体(1)以外の正孔輸送剤を含んでもよい。このような正孔輸送剤としては、例えば、含窒素環式化合物又は縮合多環式化合物を使用することができる。含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物としては、例えば、ジアミン誘導体(より具体的には、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体等);オキサジアゾール系化合物(より具体的には、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等);スチリル系化合物(より具体的には、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等);カルバゾール系化合物(より具体的には、ポリビニルカルバゾール等);有機ポリシラン化合物;ピラゾリン系化合物(より具体的には、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等);ヒドラゾン系化合物;インドール系化合物;オキサゾール系化合物;イソオキサゾール系化合物;チアゾール系化合物;チアジアゾール系化合物;イミダゾール系化合物;ピラゾール系化合物;トリアゾール系化合物が挙げられる。
電荷輸送層において、正孔輸送剤の質量の比率は、バインダー樹脂の質量に対して0.55以下であり、0.30以上0.55以下であることが好ましい。正孔輸送剤の質量の比率が0.55を超えると、正孔輸送剤が可塑剤として機能し易くなり、感光体の耐摩耗性が低下する。
[2−2−2.バインダー樹脂]
バインダー樹脂は、一般式(PC)で表されるポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(PC)と記載することがある)を含むことが好ましい。
Figure 2017125879
一般式(PC)中、Arは、一般式(PC−1)、一般式(PC−2)、一般式(PC−3)、又は化学式(PC−4)で表される二価の基を表す。R15、R16、及びR17は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。R16とR17とは、互いに結合して環を形成し、シクロアルキリデン基となってもよい。
p及びqは正の数を表し、p+q=1.00であり、0.35≦q<0.70である。
Figure 2017125879
一般式(PC−1)、一般式(PC−2)、及び一般式(PC−3)中、R18は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
一般式(PC)中、R15〜R17で表されるアルキル基としては、例えば、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基のうち、メチル基、又はエチル基が好ましい。一般式(PC)中、R15〜R17で表されるアリール基としては、例えば、炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。
一般式(PC)中のR15は、水素原子を表すことが好ましい。R16及びR17は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基(より具体的には、メチル基、又はエチル基等)を表すか、又は互いに結合してシクロアルキリデン基(より具体的には、シクロヘキシリデン基、又はシクロペンチリデン基等)を表すことが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(PC)は、一般式(PC−5)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(PC−5)と記載することがある)、及び一般式(PC−6)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(PC−6)と記載することがある)を有する。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
一般式(PC−5)中のAr、及び一般式(PC−6)中のR15〜R17は、それぞれ一般式(PC)中のAr及びR15〜R17と同義である。
ポリカーボネート樹脂(PC)は、繰返し単位(PC−5)及び繰返し単位(PC−6)以外の繰返し単位を有してもよい。ポリカーボネート樹脂(PC)中の全ての繰返し単位の物質量の合計に対する繰返し単位(PC−5)及び繰返し単位(PC−6)の物質量の合計の比率(モル比率)は、0.80以上であることが好ましく、0.90以上であることがより好ましく、1.00であることが更に好ましい。
一般式(PC)中、p及びqは正の数を表し、p+q=1.00であり、0.35≦q<0.70である。pは、ポリカーボネート樹脂(PC)における繰返し単位(PC−5)の物質量と繰返し単位(PC−6)の物質量との合計に対する、繰返し単位(PC−5)の物質量の比率を示す。qは、繰返し単位(PC−5)の物質量と繰返し単位(PC−6)の物質量との合計に対する、繰返し単位(PC−6)の物質量の比率を示す。qが0.35以上0.70未満であると、感光体の機械的特性が向上し、感光体は耐摩耗性が向上し易い。
ポリカーボネート樹脂(PC)における、繰返し単位(PC−5)及び繰返し単位(PC−6)の配列は、特に限定されない。ポリカーボネート樹脂(PC)としては、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体が挙げられる。ランダム共重合体としては、例えば、繰返し単位(PC−5)と、繰返し単位(PC−6)とがランダムに配列した共重合体を挙げることができる。交互共重合体としては、例えば、繰返し単位(PC−5)と繰返し単位(PC−6)とが交互に配列した共重合体を挙げることができる。周期的共重合体としては、例えば、1つ又は複数の繰返し単位(PC−5)と、1つ又は複数の繰返し単位(PC−6)とが周期的に配列した共重合体が挙げられる。ブロック共重合体としては、例えば、複数の繰返し単位(PC−5)からなるブロックと、複数の繰返し単位(PC−6)からなるブロックとが配列した共重合体が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(PC)としては、例えば、化学式(Resin−1)〜化学式(Resin−7)で表されるポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(Resin−1)〜ポリカーボネート樹脂(Resin−7)と記載することがある)、及び化学式(Resin−8)で表される繰返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(Resin−8)と記載することがある)が挙げられる。
Figure 2017125879
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バインダー樹脂の製造方法は、ポリカーボネート樹脂(PC)を製造することができれば、特に限定されない。これらの製造方法として、例えば、ポリカーボネート樹脂の繰返し単位(PC−5)及び繰返し単位(PC−6)を構成するためのジオール化合物とホスゲンとを界面縮重合させる方法(いわゆるホスゲン法)、又はジオール化合物とジフェニルカーボネートとをエステル交換反応させる方法が挙げられる。ホスゲン法としては、例えば、繰返し単位(PC−6)が60mol%(q=0.60)となるように、一般式(PC−7)で表されるジオール化合物(以下、ジオール化合物(PC−7)と記載することがある)及び一般式(PC−8)で表されるジオール化合物(以下、ジオール化合物(PC−8)と記載することがある)を混合して得た混合物と、ホスゲンとを界面縮重合させる方法が挙げられる。界面重縮合反応は、酸結合剤及び溶剤の存在下で行われてもよい。なお、一般式(PC−7)中のAr及び一般式(PC−8)中のR15〜R17は、それぞれ一般式(PC)中のAr及びR15〜R17と同義である。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
バインダー樹脂は、ポリカーボネート樹脂(PC)に加え、他のバインダー樹脂を含んでもよい。他のバインダー樹脂としては、例えば、上述のベース樹脂と同様の樹脂が挙げられる。ポリカーボネート樹脂(PC)の含有量は、バインダー樹脂に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。
バインダー樹脂の分子量は、粘度平均分子量が48,000以上51,000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が48,000以上であると、バインダー樹脂の耐摩耗性を十分に高めることができ、感光層が摩耗しにくくなる。また、バインダー樹脂の分子量が51,000以下であると、感光層の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、感光層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、感光層を形成し易くなる。
[2−3.添加剤]
感光層は各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、ラジカル捕捉剤、一重項消光剤、又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、酸化防止剤、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、又はレベリング剤が挙げられる。以下、電子受容性化合物、及び酸化防止剤を説明する。
[2−3−1.電子受容性化合物]
電子受容性化合物は、ケトン構造又はジシアノメチレン構造を有する電子受容性化合物が好ましく、一般式(EA)で表される化合物のうち少なくとも1つ(例えば、1つ)を含むことがより好ましい。
Figure 2017125879
一般式(EA)中、R19〜R43は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、アリールアルコキシ基、又はアリール基を表す。アリール基は、置換基として炭素原子数1以上3以下のアルキル基又はアルコキシ基を有してもよい。
一般式(EA)中、R19〜R43で表される炭素原子数1以上5以下のアルキル基は、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、又はtert−ペンチル基が好ましい。
一般式(EA)中、R19〜R43で表されるハロゲン原子のうち、塩素原子が好ましい。
一般式(EA)中、R19〜R43で表されるアリールアルコキシ基は、例えば、一般式(EA)中、炭素原子数6以上14以下のアリール基に、炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基が結合した置換基である。アリールアルコキシ基は、フェニルメトキシ基が好ましい。
一般式(EA)中、R19〜R43で表されるアリール基としては、例えば、炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、フェニル基が好ましい。アリール基は、置換基として炭素原子数1以上3以下のアルキル基又は炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を有してもよい。炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、メチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(EA)中、R19〜R43は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、フェニルメトキシ基、又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基が置換したフェニル基を表すことが好ましい。
電子受容性化合物(EA)としては、例えば、化学式(EA−1)〜化学式(EA−11)で表される化合物(以下、「電子受容性化合物(EA−1)〜電子受容性化合物(EA−11)」と記載することがある)が挙げられる。
Figure 2017125879
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[2−3−2.酸化防止剤]
酸化防止剤としては、例えば、フェノール構造を有する化合物(フェノール系酸化防止剤)が挙げられる。
[3.中間層]
感光体において、中間層(特に、下引き層)は、導電性基体と感光層との間に位置することができる。中間層は、例えば、無機粒子、及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層の存在により、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑えることができる。
無機粒子としては、例えば、金属(より具体的には、アルミニウム、鉄、又は銅等)、金属酸化物(より具体的には、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛等)の粒子、又は非金属酸化物(より具体的には、シリカ等)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる樹脂であれば、特に限定されない。
中間層は、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤の種類は、感光層の添加剤の種類と同様である。
第一実施形態に係る感光体は、電子写真方式の画像形成装置の像担持体として用いることができる。また、この画像形成装置としては、電子写真方式のものであれば、特に限定されない。第一実施形態に係る感光体は、具体的には、例えば、後述の画像形成装置の像担持体として用いることができる。
以上、第一実施形態に係る感光体1を説明した。第一実施形態に係る感光体1は、電荷発生層にY型チタニルフタロシアニン結晶を含む。電荷輸送層に正孔輸送剤としてベンジジン誘導体(1)、及びバインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(PC)を含む。正孔輸送剤の質量の比率がバインダー樹脂の質量に対して0.55以下である。従って、第一実施形態に係る感光体は、電気的特性及び耐摩耗性に優れる。
<第二実施形態:感光体の製造方法>
[1.感光層形成工程]
次に、図1を参照して、感光体1の製造方法の一例について説明する。第一実施形態に係る感光体1の製造方法は、感光層形成工程を有する。感光層形成工程は、電荷発生層形成工程と、電荷輸送層形成工程とを有する。
[1−1.電荷発生層形成工程]
電荷発生層形成工程では、電荷発生層用塗布液を、導電性基体2上に塗布し、塗布した電荷発生層用塗布液に含まれる溶剤を除去して電荷発生層3bを形成する。電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤としてY型チタニルフタロシアニン結晶と、ベース樹脂と、溶剤とを含む。電荷発生層用塗布液は、Y型チタニルフタロシアニン結晶、及びベース樹脂を溶剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。電荷発生層用塗布液には、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。
[1−2.電荷輸送層形成工程]
電荷輸送層形成工程では、電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層3b上に塗布し、塗布した電荷輸送層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して電荷輸送層3cを形成する。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤としてベンジジン誘導体(1)と、バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(PC)と、溶剤とを含む。電荷輸送層用塗布液は、ベンジジン誘導体(1)、及びポリカーボネート樹脂(PC)を溶剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。電荷輸送層用塗布液には、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。
以下、電荷発生層形成工程及び電荷輸送層形成工程を例に挙げ、感光層形成工程の詳細を説明する。
電荷発生層用塗布液に含有される溶剤は、それぞれ電荷発生層用塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できれば、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール類(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、又はキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン等)、エーテル類(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、又は1,4−ジオキサン等)、ケトン類(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン等)、エステル類(より具体的には、酢酸エチル、又は酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。電荷発生層用塗布液に含有される溶剤としては、これらの溶剤のうち、非ハロゲン溶剤が好ましい。
電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、正孔輸送剤としてのベンジジン誘導体(1)と、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(PC)とを均一に溶解又は分散させ易いため、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、及びo−キシレンのうち、少なくとも1種を含む。このような溶剤に対して、ベンジジン誘導体(1)とポリカーボネート樹脂(PC)とは分散性が優れる。このため、ベンジジン誘導体(1)が均一に分散した電荷輸送層用塗布液を調製し易い。そして、このような電荷輸送層用塗布液を用いて電荷輸送層を形成すると、ベンジジン誘導体(1)が均一に分散した電荷輸送層が形成され易い。このような電荷輸送層用塗布液に用いる溶剤のうち、実質的に2種の溶剤から構成される混合溶剤としては、例えば、THFとトルエンとの混合溶媒、THFと1,4−ジオキサンとの混合溶媒、又はTHFとo−キシレンとの混合溶媒が挙げられる。電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、及びo−キシレン以外に、電荷発生層用塗布液に含有される溶剤を含んでもよい。
更に、電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、電荷発生層用塗布液に含有される溶剤と、異なることが好ましい。感光体1を製造する際、通常、電荷発生層3b、電荷輸送層3cの順に形成するため、電荷発生層3b上に、電荷輸送層用塗布液を塗布することになる。電荷輸送層形成時に、電荷発生層3bは、電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが求められるからである。
電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液は、各成分の分散性、又は形成されるそれぞれの層の表面平滑性を向上させるために、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有してもよい。
電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液を塗布する方法としては、例えば、導電性基体2上に均一に電荷発生層用塗布液を塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、又はバーコート法が挙げられる。
電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、それぞれ電荷発生層用塗布液中及び電荷輸送層用塗布液中の溶剤を蒸発させ得る方法であれば、特に制限されない。除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体1の製造方法は、必要に応じて、中間層4を形成する工程、及び/又は保護層を形成する工程を更に含んでいてもよい。中間層4を形成する工程、及び保護層を形成する工程では、公知の方法を適宜選択することができる。
以上、第二実施形態に係る感光体1の製造方法について説明した。第二実施形態に係る感光体1の製造方法は、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、及びo−キシレンのうち少なくとも1種が含有する溶剤を使用して電荷輸送層を形成し、感光体を製造するため、電気的特性及び耐摩耗性に優れる感光体を製造することができる。
<第三実施形態:画像形成装置>
第三実施形態は、画像形成装置に関する。以下、図7を参照して、第三実施形態に係る画像形成装置の一態様について、説明する。図7は、第三実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。画像形成装置6は、第一実施形態に係る感光体1を備える。感光体1は、像担持体として使用される。
第三実施形態に係る画像形成装置6は、感光体に相当する像担持体1と、帯電装置に相当する帯電部27と、露光装置に相当する露光部28と、現像装置に相当する現像部29と、転写部とを備える。帯電部27は像担持体1の表面を負帯電する。帯電部27の帯電極性は、負極性である。露光部28は、帯電された像担持体1の表面を露光して、像担持体1の表面に静電潜像を形成する。現像部29は、静電潜像をトナー像として現像する。転写部は、トナー像を像担持体1から被転写体(中間転写ベルト20)へ転写する。画像形成装置6が中間転写方式を採用する場合、転写部は、一次転写ローラー33、及び二次転写ローラー21に相当する。像担持体は、第一実施形態に係る感光体1である。
画像形成装置6は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置6は、例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。異なる色のトナーによる各色のトナー像を形成するために、画像形成装置6は、タンデム方式のカラー画像形成装置であってもよい。
以下、タンデム方式のカラー画像形成装置を例に挙げて、画像形成装置6を説明する。画像形成装置6は、所定方向に並設された複数の感光体1と、複数の現像部29とを備える。複数の現像部29は、それぞれ、感光体1に対向して配置される。複数の現像部29は、それぞれ、現像ローラーを備える。現像ローラーは、トナーを担持して搬送し、対応する像担持体1の表面にトナーを供給する。
図7に示すように、画像形成装置6は、箱型の機器筺体7を有している。機器筺体7内には、給紙部8、画像形成部9、及び定着部10が設けられる。給紙部8は、用紙Pを給紙する。画像形成部9は、給紙部8から給紙された用紙Pを搬送しながら、用紙Pに画像データに基づくトナー像を転写する。定着部10は、画像形成部9で用紙P上に転写された未定着のトナー像を、用紙Pに定着させる。更に、機器筺体7の上面には、排紙部11が設けられる。排紙部11は、定着部10で定着処理された用紙Pを排紙する。
給紙部8には、給紙カセット12と、第一ピックアップローラー13と、給紙ローラー14、15、及び16と、レジストローラー対17とが備えられる。給紙カセット12は、機器筺体7から挿脱可能に設けられる。給紙カセット12には、各種サイズの用紙Pが貯留される。第一ピックアップローラー13は、給紙カセット12の左上方位置に設けられる。第一ピックアップローラー13は、給紙カセット12に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー14〜16は、第一ピックアップローラー13によって取り出された用紙Pを搬送する。レジストローラー対17は、給紙ローラー14〜16によって搬送された用紙Pを、一時待機させた後に、所定のタイミングで画像形成部9に供給する。
また、給紙部8は、手差しトレイ(不図示)と、第三ピックアップローラー18とを更に備えている。手差しトレイは、機器筺体7の左側面に取り付けられる。第三ピックアップローラー18は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。第三ピックアップローラー18によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー14〜16によって搬送され、レジストローラー対17によって、所定のタイミングで画像形成部9に供給される。
画像形成部9には、画像形成ユニット19、中間転写ベルト20、及び二次転写ローラー21が備えられる。中間転写ベルト20には、画像形成ユニット19によって、中間転写ベルト20の周面(像担持体1の表面との接触面)に、トナー像が一次転写される。なお、一次転写されるトナー像は、コンピューターのような上位装置から伝送された画像データに基づいて形成される。二次転写ローラー21は、中間転写ベルト20上のトナー像を、給紙カセット12から送り込まれた用紙Pに二次転写する。
画像形成ユニット19には、イエロートナー供給用ユニット25と、マゼンタトナー供給用ユニット24と、シアントナー供給用ユニット23と、ブラックトナー供給用ユニット22とを備える。画像形成ユニット19には、イエロートナー供給用ユニット25を基準として中間転写ベルト20の回転方向の上流側(図7では右側)から下流側に向けて、イエロートナー供給用ユニット25、マゼンタトナー供給用ユニット24、シアントナー供給用ユニット23、及びブラックトナー供給用ユニット22が順次配設されている。ユニット22〜25には、各ユニットの中央位置に、感光体1が配設されている。感光体1は、矢符(時計回り)方向に回転可能に配設されている。なお、ユニット22〜25は、画像形成装置6本体に対して脱着される後述のプロセスカートリッジであってもよい。
そして、各像担持体1の周囲には、帯電部27、露光部28、現像部29が、帯電部27を基準として各像担持体1の回転方向の上流側から順に配置されている。
像担持体1の回転方向における帯電部27の上流側には、除電器(不図示)、及びクリーニング装置(不図示)が設けられてもよい。除電器は、中間転写ベルト20へのトナー像の一次転写が終了した後、像担持体1の周面(表面)を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清掃及び除電された像担持体1の周面は、帯電部27へ送られ、新たに帯電処理される。
なお、第三実施形態に係る画像形成装置6は、クリーニング装置に相当するクリーニング部及び/又は除電器に相当する除電部を備えることができる。第三実施形態に係る画像形成装置6がクリーニング部及び除電部を備える場合、各像担持体1の回転方向の上流側から帯電部27を基準として、帯電部27、露光部28、現像部29、転写部、クリーニング部、除電部の順で、配置される。
既に述べたように、帯電部27は、像担持体1の表面を帯電する。具体的には、帯電部27は、像担持体1の表面を均一に帯電する。帯電部27は、像担持体1の表面を均一に帯電できる限り、特に制限されない。帯電部27は、非接触方式の帯電部であってもよいし、接触方式の帯電部であってもよい。このような接触方式の帯電部27としては、例えば、帯電ローラー又は帯電ブラシが挙げられる。帯電部27としては、接触方式の帯電部(より具体的には、帯電ローラー、又は帯電ブラシ等)が好ましい。接触方式の帯電部27を使用することにより、帯電部27から発生する活性ガス(例えば、オゾン、又は窒素酸化物)の排出を抑えることができる。その結果、活性ガスによる感光層3の劣化が抑制されるとともに、オフィス環境に配慮した設計が達成できる。
帯電部27が接触方式の帯電ローラーを備える場合、帯電ローラーは、像担持体1と接触したまま、像担持体1の表面を帯電する。このような帯電ローラーとしては、例えば、像担持体1の表面と接触したまま、像担持体1の回転に従属して回転する帯電ローラーが挙げられる。また、帯電ローラーとしては、例えば、少なくとも表面部が樹脂で構成された帯電ローラーが挙げられる。具体的には、帯電ローラーは、回転可能に軸支された芯金と、芯金上に形成された樹脂層と、芯金に電圧を印加する電圧印加部とを備える。このような帯電ローラーを備えた帯電部27は、電圧印加部が芯金に電圧を印加することによって、樹脂層を介して接触する感光体1の表面を帯電させることができる。
帯電ローラーの樹脂層を構成する樹脂は、像担持体1の周面を良好に帯電させることができる限り特に限定されない。樹脂層を構成する樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、又はシリコーン変性樹脂が挙げられる。樹脂層には、無機充填材を含有させてもよい。
帯電部27が印加する電圧は、特に限定されない。しかし、帯電部27が交流電圧を印加すること、又は直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を印加することよりも、帯電部27が直流電圧のみを印加することが好ましい。帯電部27が直流電圧のみを印加する場合、感光層3の磨耗量が減少する傾向があるためである。その結果、好適な画像を形成することができる。帯電部27が感光体1に印加する直流電圧は、1000V以上2000V以下であることが好ましく、1200V以上1800V以下であることがより好ましく、1400V以上1600V以下であることが特に好ましい。
帯電ローラーの樹脂層を構成する樹脂は、感光体1の表面を良好に帯電させることができる限り特に限定されない。樹脂層を構成する樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、又はシリコーン変性樹脂が挙げられる。樹脂層には、無機充填材を含有させてもよい。
露光部28は、例えば、レーザー走査ユニットである。露光部28は、帯電された像担持体1の表面を露光して、像担持体1の表面に静電潜像を形成する。具体的には、露光部28は、帯電部27によって均一に帯電された像担持体1の周面に、パーソナルコンピューターのような上位装置から入力された画像データに基づくレーザー光を照射する。これにより、像担持体1の周面に、画像データに基づく静電潜像が形成される。
既に述べたように、現像部29は、静電潜像をトナー像として現像する。具体的には、現像部29は、静電潜像が形成された像担持体1の周面にトナーを供給し、画像データに基づくトナー像を形成する。そして、形成されたトナー像が中間転写ベルト20に一次転写される。なお、トナーの帯電極性は負極性である。
中間転写ベルト20は、無端状のベルト回転体である。中間転写ベルト20は、駆動ローラー30、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の一次転写ローラー33に架け渡されている。複数の像担持体1の周面が、それぞれ、中間転写ベルト20の周面に当接するように、中間転写ベルト20は配置されている。
また、中間転写ベルト20は、各像担持体1に対向して配置される一次転写ローラー33によって、像担持体1に押圧される。押圧された状態で、中間転写ベルト20は、駆動ローラー30によって矢符(反時計回り)方向に無端回転する。駆動ローラー30は、ステッピングモーターなどの駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト20を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の一次転写ローラー33は、回転自在に設けられる。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び一次転写ローラー33は、駆動ローラー30による中間転写ベルト20の無端回転に伴って、従動回転する。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び一次転写ローラー33は、駆動ローラー30の主動回転に応じて中間転写ベルト20を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト20を支持する。
一次転写ローラー33は、トナー像を像担持体1から中間転写ベルト20へ転写する。具体的には、一次転写ローラー33は、一次転写バイアス(具体的には、トナーの帯電極性と逆極性のバイアス)を中間転写ベルト20に印加する。その結果、各像担持体1上に形成されたトナー像は、各像担持体1と一次転写ローラー33との間で、周回する中間転写ベルト20に対して、順次転写(一次転写)される。
二次転写ローラー21は、二次転写バイアス(具体的には、トナー像と逆極性のバイアス)を用紙Pに印加する。その結果、中間転写ベルト20上に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー21とバックアップローラー32との間で用紙Pに転写される。これにより、未定着のトナー像が用紙Pに転写される。
定着部10は、画像形成部9で用紙Pに転写された未定着トナー像を定着させる。定着部10は、加熱ローラー34と、加圧ローラー35とを備えている。加熱ローラー34は、通電発熱体により加熱される。加圧ローラー35は、加熱ローラー34に対向配置され、加圧ローラー35の周面が加熱ローラー34の周面に押圧される。
画像形成部9で二次転写ローラー21により用紙Pに転写された転写画像は、用紙Pが加熱ローラー34と加圧ローラー35との間を通過する際の加熱による定着処理により用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部11へ排紙される。また、定着部10と排紙部11との間の適所に、複数の搬送ローラー36が配設されている。
排紙部11は、機器筺体7の頂部が凹没されることによって形成される。凹没した凹部の底部に、排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ37が設けられる。以上、図7を参照して、第三実施形態に係る画像形成装置6について説明した。
図7を参照して中間転写方式を採用する画像形成装置6を説明したが、第三実施形態に係る画像形成装置6は、別の態様として、直接転写方式を採用することもできる。図8は、直接転写方式を採用する画像形成装置である。直接転写方式の画像形成装置では、被転写体は、記録媒体(例えば、用紙P)に相当する。また、転写部は、転写ローラー41に相当する。転写ローラー41は、対向する像担持体1との間に記録媒体が通るように配置される。
図8に示すように、転写ベルト40は、無端状のベルト状回転体である。転写ベルト40は、駆動ローラー30、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の転写ローラー41に架け渡されている。各像担持体1の周面が転写ベルト40の表面(接触面)に当接するように、転写ベルト40は設置される。転写ベルト40は、各像担持体1に対向して配置される各転写ローラー41によって、像担持体1に押圧される。押圧された状態で、転写ベルト40は、複数のローラー30、31、32、及び41によって無端回転する。駆動ローラー30は、ステッピングモーターのような駆動源によって回転駆動し、転写ベルト40を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び転写ローラー41は、回転自在に設けられる。駆動ローラー30による転写ベルト40の無端回転に伴って、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の転写ローラー41は従動回転する。これらのローラー31、32、41は、従動回転するとともに、転写ベルト40を支持する。レジストローラー対17から供給された用紙Pは、吸着ローラー42によって転写ベルト40上に吸着される。転写ベルト40上に吸着された用紙Pは、転写ベルト40の回転に伴い、各像担持体1と対応する転写ローラー41との間を通過する。
転写部は、像担持体1と用紙Pとが接触しながら、像担持体1から用紙Pへトナー像を転写する。具体的には、各転写ローラー41は、転写バイアス(具体的には、トナーの帯電極性と逆極性のバイアス)を、転写ベルト40上に吸着された用紙Pに印加する。これにより、像担持体1上に形成されたトナー像は、各像担持体1と対応する転写ローラー41との間で、用紙Pに転写される。転写ベルト40は、駆動ローラー30の駆動により矢符(時計回り)方向に周回する。これに伴い、転写ベルト40上に吸着された用紙Pは、各像担持体1と対応する転写ローラー41との間を順次通過する。通過する際に、各像担持体1上に形成された対応する色のトナー像が、重ね塗り状態で順次用紙Pに転写される。この後、各像担持体1は更に回転し、次のプロセスに移行する。以上、図8を参照して、第三実施形態の別の態様に係る直接転写方式を採用する画像形成装置について説明した。
図7及び図8を参照して説明したように、第三実施形態に係る画像形成装置6は、像担持体として、電気的特性及び耐摩耗性に優れる第一実施形態に係る感光体1を備えている。このような感光体1を備えることで、第三実施形態に係る画像形成装置6は、画像不良の発生を抑制することができる。
<第四実施形態:プロセスカートリッジ>
第四実施形態は、プロセスカートリッジに関する。第四実施形態に係るプロセスカートリッジは、像担持体として第一実施形態に係る感光体1を備える。プロセスカートリッジは、例えば、像担持体としてユニット化された第一実施形態に係る感光体1を備えることができる。プロセスカートリッジは、第三実施形態に係る画像形成装置6に対して着脱自在に設計されてもよい。プロセスカートリッジには、例えば、像担持体以外に、帯電部、露光部、現像部、転写部、クリーニング部、及び除電部からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化した構成を採用することができる。ここで、帯電部、露光部、現像部、転写部、クリーニング部、及び除電部は、それぞれ、第三実施形態で上述した、帯電部27、露光部28、現像部29、転写部、クリーニング部、及び除電部と同様の構成とすることができる。
以上、第四実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明した。第四実施形態に係るプロセスカートリッジは、電気的特性及び耐摩耗性に優れる。更に、このようなプロセスカートリッジは取り扱いが容易であるため、感光体1の感度特性等が劣化した場合に、感光体1を含めて、容易かつ迅速に交換することができる。
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
[1.感光体の調製]
電荷発生剤、正孔輸送剤、電子受容性化合物、及びバインダー樹脂を用いて、感光体(A−1)〜感光体(A−31)、及び感光体(B−1)〜感光体(B−4)を作製した。
[1−1.電荷発生剤の調製]
感光体(A−1)〜感光体(A−31)、及び感光体(B−1)〜感光体(B−4)の作製には、電荷発生剤として化学式(CG−1)で表されるY型チタニルフタロシアニン結晶を用いた。X線回折装置を用いて、このY型チタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルを測定した。得られたX線回折スパクトルにおいて、主ピークはブラッグ角2θ±2°=27.2に観測された。
[1−2.正孔輸送剤の調製]
感光体(A−1)〜感光体(A−31)、及び感光体(B−3)〜感光体(B−4)の作製には、正孔輸送剤(HTM−1)〜正孔輸送剤(HTM−8)を用いた。また、感光体(B−1)〜感光体(B−2)の作製には、化学式(HTM−A)又は化学式(HTM−B)で表されるベンジジン誘導体を用いた。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
[正孔輸送剤(HTM−1)の合成]
まず、反応式(R−4)に示すような反応を行った。
Figure 2017125879
具体的には、2L容の2口のフラスコに、化学式(13)で表されるアニリン誘導体6.8g(0.05モル)と、化学式(14)で表されるジクロロビフェニル5.6g(0.025モル)と、トリシクロヘキシルホスフィン(Pcy3)0.0662g(0.000189モル)と、パラジウム触媒としてのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)0.0864g(0.0000944モル)と、ナトリウム−tert−ブトキシド(t−BuONa)7.68g(0.08モル)とを投入した。更に、蒸留したo−キシレンを500mL加えた。その後、アルゴンガス置換を行い、120℃で攪拌しつつ5時間反応を行った。
次に、反応液(反応生成物とo−キシレンとを含む溶液)を室温まで冷却し、有機相を得た。この有機相をイオン交換水を用いて3回洗浄した。更に、有機相に対し、無水硫酸ナトリウム及び活性白土を用いて、乾燥及び吸着処理を行った。その後、o−キシレンを減圧留去し残渣を得た。
得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンとの混合溶媒)を用いて精製し、化学式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体7.5g(収率:71mol%)を得た。
次いで、反応式(R−5)に示すような反応を行った。
Figure 2017125879
具体的には、200mL容のフラスコに化学式(16)で表されるベンゼン誘導体16.1g(0.1モル)と、亜リン酸トリエチル25g(0.15モル)とを投入した。これを、180℃で加熱しながら8時間攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、過剰な亜リン酸トリエチルを減圧留去して、化学式(17)で表されるホスホナート誘導体(白色液体)24.1g(収率:92mol%)を得た。
そして、500mLの2口フラスコに、化学式(17)で表されるホスホナート誘導体13.0g(0.05モル)を投入し、アルゴンガス置換を行った。ここに、乾燥させたテトラヒドロフラン(THF)100mLと、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(濃度28質量%)9.3g(0.05モル)とを加え、0℃で30分間攪拌した。この反応液に、化学式(18)で表されるシンナムアルデヒド7.0g(0.05モル)を乾燥THF300mLに溶解させた混合液を投入し、室温で12時間攪拌した。
その後、反応液をイオン交換水に注ぎ、トルエンにて抽出して有機相(トルエン相)を得た。この有機相をイオン交換水にて5回洗浄した。次いで、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶剤を留去して残渣を得た。その後、残渣を溶剤(トルエン20mLとメタノール100mLとの混合溶剤)で再結晶させることにより精製し、上記式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体(白色結晶)10.22g(収率:80mol%)を得た。
次いで、反応式(R−6)に示すような反応を行って、最終目的物である正孔輸送剤(HTM−1)を合成した。
Figure 2017125879
具体的には、3口フラスコに、化学式(15)で示されるビフェニルアミン誘導体10.5g(0.025モル)と、トリシクロヘキシルホスフィン0.0662g(0.000189モル)と、パラジウム触媒としてのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.0864g(0.0000944モル)と、ナトリウム−tert−ブトキシド(t−BuONa)7.68g(0.08モル)と、化学式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体11.0g(0.05モル)とを投入した。更に、蒸留したo−キシレン500mLを加えた。その後、アルゴンガス置換を行い、120℃で攪拌しつつ5時間反応を行った。
次いで、反応液を室温まで冷却し有機相を得た。得られた有機相をイオン交換水で3回洗浄し、更に、無水硫酸ナトリウム及び活性白土を用いて乾燥及び吸着処理を行った。その後、o−キシレンを減圧留去し残渣を得た。
得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンとの混合溶媒)を用いて精製し、正孔輸送剤(HTM−1)13.5gを得た(収率:65mol%)。
[正孔輸送剤(HTM−2)の合成]
反応式(R−4)で示すような反応と同様の反応を行って、化学式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体を得た。収率は71mol%であった。次いで、化学式(18)で表されるシンナムアルデヒドを化学式(20)で表されるシンナムアルデヒド誘導体に変更し、反応式(R−5)に代えて反応式(R−7)で表されるような反応を行って、化学式(21)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を得た。収率は70mol%であった。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
次いで、化学式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体に代えて化学式(21)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて、反応式(R−8)で表されるような反応を行って、正孔輸送剤(HTM−2)を合成した。収率は65mol%であった。
Figure 2017125879
なお、正孔輸送剤(HTM−2)の合成、及び後述の正孔輸送剤(HTM−3)〜(HTM−8)の合成は、変更点以外は、正孔輸送剤(HTM−1)の合成と同様の方法で行った。ただし、正孔輸送剤(HTM−2)の合成、及び後述の正孔輸送剤(HTM−3)〜(HTM−8)の合成においては、それらのモルスケールが正孔輸送剤(HTM−1)の合成におけるモルスケールと等しくなるように、材料の配合量などを調整した。
[正孔輸送剤(HTM−3)の合成]
化学式(13)で表されるアニリン誘導体に代えて化学式(23)で表されるアニリン誘導体を用い、反応式(R−4)に代えて反応式(R−9)で表されるような反応を行って、化学式(24)にて表されるビフェニルアミン誘導体を得た。収率は70mol%であった。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
次いで、化学式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体に代えて化学式(24)で表されるビフェニルアミン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて、反応式(R−10)で表されるような反応を行って、正孔輸送剤(HTM−3)を合成した。収率は70mol%であった。
Figure 2017125879
[正孔輸送剤(HTM−4)の合成]
化学式(13)で表されるアニリン誘導体に代えて化学式(25)で表されるアニリン誘導体を用い、反応式(R−4)に代えて反応式(R−11)で表されるような反応を行って、化学式(26)で表されるビフェニルアミン誘導体を得た。収率は50mol%であった。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
次いで、化学式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体に代えて化学式(26)で表されるビフェニルアミン誘導体を用い、化学式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体に代えて化学式(21)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて、反応式(R−12)で表されるような反応を行って、正孔輸送剤(HTM−4)を合成した。収率は65mol%であった。
Figure 2017125879
[正孔輸送剤(HTM−5)の合成]
化学式(18)で表されるシンナムアルデヒドに代えて化学式(27)で表されるシンナムアルデヒド誘導体を用い、反応式(R−5)に代えて反応式(R−13)で表されるような反応を行って、化学式(28)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を得た。収率は65mol%であった。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
次いで、化学式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体に代えて化学式(28)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて反応式(R−14)で表されるような反応を行って、正孔輸送剤(HTM−5)を合成した。収率は65mol%であった。
Figure 2017125879
[正孔輸送剤(HTM−6)の合成]
化学式(18)で表されるシンナムアルデヒドに代えて化学式(29)で表されるシンナムアルデヒド誘導体を用い、反応式(R−5)に代えて反応式(R−15)で表されるような反応を行って、化学式(30)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を得た。収率は50mol%であった。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
次いで、化学式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体に代えて、化学式(24)で表されるビフェニルアミン誘導体を用い、化学式(19)で表されるジフェニルブタジエン誘導体に代えて、化学式(30)で表されるジフェニルブタジエン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて反応式(R−16)で表されるような反応を行って、正孔輸送剤(HTM−6)を合成した。収率は60mol%であった。
Figure 2017125879
[正孔輸送剤(HTM−7)の合成]
化学式(13)で表されるアニリン誘導体に代えて化学式(31)で表されるアニリン誘導体を用い、反応式(R−4)に代えて反応式(R−17)で表されるような反応を行って、化学式(32)で表されるビフェニルアミン誘導体を得た。収率は65mol%であった。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
次いで、化学式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体に代えて化学式(32)で表されるビフェニルアミン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて反応式(R−18)で表されるような反応を行って、正孔輸送剤(HTM−7)を合成した。収率は70mol%であった。
Figure 2017125879
[正孔輸送剤(HTM−8)の合成]
化学式(13)で表されるアニリン誘導体に代えて化学式(33)で表されるアニリン誘導体を用い、反応式(R−4)に代えて反応式(R−19)で表されるような反応を行って、化学式(34)で表されるビフェニルアミン誘導体を得た。収率は50mol%であった。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
次いで、化学式(15)で表されるビフェニルアミン誘導体に代えて化学式(34)で表されるビフェニルアミン誘導体を用い、反応式(R−6)に代えて反応式(R−20)で表されるような反応を行って、正孔輸送剤(HTM−8)を合成した。収率は65mol%であった。
Figure 2017125879
次に、合成した正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−8)を、各々、300MHzの1H−NMR(プロトン核磁気共鳴)分光計を用いて測定した。溶媒としてはCDCl3を用いた。ここで、正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−5)の1H−NMRチャート及び化学シフトを例に挙げて説明する。正孔輸送剤(HTM−1)の1H−NMRチャートを図2に、化学シフト値を以下に示す。正孔輸送剤(HTM−2)の1H−NMRチャートを図3に、化学シフト値を以下に示す。正孔輸送剤(HTM−3)の1H−NMRチャートを図4に、化学シフト値を以下に示す。正孔輸送剤(HTM−4)の1H−NMRチャートを図5に、化学シフト値を以下に示す。正孔輸送剤(HTM−5)の1H−NMRチャートを図6に、化学シフト値を以下に示す。
正孔輸送剤(HTM−1):1H−NMR δ= 7.40−7.43(m, 8H), 7.13−7.34(m, 16H), 6.77−7.04(m, 12H), 6.57−6.63(m, 4H), 2.44(q, 4H), 2.05(s, 6H), 1.00(t, 6H).
正孔輸送剤(HTM−2):1H−NMR δ= 7.40−7.43(m, 4H), 7.10−7.33(m, 18H), 6.76−7.04(m, 12H), 6.54−6.61(m, 4H), 2.44(q, 4H), 2.34(s, 6H), 2.05(s, 6H), 1.00(t, 6H).
正孔輸送剤(HTM−3):1H−NMR δ= 7.40−7.44(m, 8H), 7.13−7.34(m, 18H), 6.77−7.04(m, 12H), 6.57−6.63(m, 4H), 2.06(s, 6H).
正孔輸送剤(HTM−4):1H−NMR δ= 7.39−7.52(m, 6H), 7.10−7.30(m, 12H), 6.80−7.05(m, 18H), 6.54−6.61(m, 2H), 3.87(s, 6H), 2.44(q, 4H), 2.05(s, 6H), 1.00(t, 6H).
正孔輸送剤(HTM−5):1H−NMR δ= 7.39−7.43(m, 4H), 7.10−7.30(m, 12H), 6.75−7.05(m, 18H), 6.54−6.63(m, 4H), 3.83(s, 6H), 2.44(q, 4H), 2.05(s, 6H), 1.00(t, 6H).
1H−NMRチャート及び化学シフト値により、正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−5)が各々得られていることを確認した。正孔輸送剤(HTM−6)〜(HTM−8)も同様にして1H−NMRチャート及び化学シフト値により、得られていることを確認した。
[1−3.電子受容性化合物の調製]
感光体(A−1)〜感光体(A−31)、及び感光体(B−1)〜感光体(B−4)の作製には、電子受容性化合物(EA−1)〜電子受容性化合物(EA−11)を用いた。なお、電子受容性化合物(EA−1)〜電子受容性化合物(EA−11)は、第一実施形態で説明した。
[1−4.バインダー樹脂の調製]
感光体(A−1)〜感光体(A−31)、及び感光体(B−1)〜感光体(B−4)の作製には、バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)〜ポリカーボネート樹脂(Resin−10)を用いた。なお、ポリカーボネート樹脂(Resin−1)〜ポリカーボネート樹脂(Resin−10)は、第一実施形態で説明した。
[2.感光体の作製]
[実施例1]
[感光体(A−1)の製造]
以下、実施例1に係る感光体(A−1)の製造について説明する。
(2−1.中間層の形成)
はじめに、中間層用塗布液を調製した。具体的には、表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT−A」、平均一次粒径10nm)を準備した。詳しくは、アルミナとシリカとを用いて酸化チタンを表面処理し、更に、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて表面処理したものを準備した。次いで、表面処理された酸化チタン(2質量部)と、ポリアミド樹脂であるアミラン(登録商標)(東レ株式会社製「CM8000」)(ポリアミド6,ポリアミド12,ポリアミド66,及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂)(1質量部)とを、メタノール(10質量部)、ブタノール(1質量部)及びトルエン(1質量部)を含む溶剤に対して添加した。これらをビーズミルを用いて5時間混合し、溶剤中に材料を分散させた。これにより、中間層用塗布液を調製した。
得られた中間層用塗布液を、目開き5μmのフィルターにてろ過した。その後、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長246mm)の表面に、中間層用塗布液をディップコート法にて塗布した。続いて、塗布した中間層用塗布液を130℃で30分間で乾燥させて、導電性基体上に中間層(膜厚2μm)を形成した。
(2−2.電荷発生層の形成)
次に、Y型チタニルフタロシアニン結晶1.5質量部と、ベース樹脂としてのポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社「エスレックBX−5」)1質量部と、分散媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル40質量部と、テトラヒドロフラン40質量部とを混合し、ビーズミルにて2時間分散させた。次に、得られた電荷発生層用塗布液を3μmのフィルターにてろ過後、上記で作製した中間層上にディップコート法にて塗布し、50℃で5分間乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
(2−3.電荷輸送層の形成)
次に、電荷輸送層用塗布液を調製した。具体的には、正孔輸送剤(HTM−1)45質量部と、電子受容性化合物(EA−1)2質量部と、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(Resin−1)(粘度平均分子量50,500)100質量部と、添加剤としての酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製「イルガノックス(登録商標)1010」、フェノール酸化防止剤)0.5質量部と、溶剤としてのテトラヒドロフラン(THF、560質量部)及びトルエン(140質量部)とを混合溶解した。THFとトルエンとの質量の比率(THF/トルエン)は、8/2(すなわち4)であった。
調製した電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層用塗布液と同様の方法で電荷発生層上に塗布し、120℃にて40分間乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、積層型電子写真感光体を作製した。なお、感光体(A−1)の電荷輸送層において、正孔輸送剤(HTM−1)の質量の比率は、ポリカーボネート樹脂(Resin−1)の質量に対して0.45であった。
[実施例2]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−1)45質量部を正孔輸送剤(HTM−2)45質量部に変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様にして、感光体(A−2)を製造した。
[実施例3]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−1)45質量部を正孔輸送剤(HTM−3)45質量部に変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様にして、感光体(A−3)を製造した。
[実施例4]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−1)45質量部を正孔輸送剤(HTM−4)45質量部に変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様にして、感光体(A−4)を製造した。
[実施例5]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−1)45質量部を正孔輸送剤(HTM−5)45質量部に変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様にして、感光体(A−5)を製造した。
[実施例6]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−1)45質量部を正孔輸送剤(HTM−6)45質量部に変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様にして、感光体(A−6)を製造した。
[実施例7]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−1)45質量部を正孔輸送剤(HTM−7)45質量部に変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様にして、感光体(A−7)を製造した。
[実施例8]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−1)45質量部を正孔輸送剤(HTM−8)45質量部に変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様にして、感光体(A−8)を製造した。
[実施例9]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解したポリカーボネート樹脂(Resin−1)100質量部をポリカーボネート樹脂(Resin−2)(粘度平均分子量50,400)(100質量部)に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−9)を製造した。
[実施例10]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解したポリカーボネート樹脂(Resin−1)100質量部をポリカーボネート樹脂(Resin−3)(粘度平均分子量49,500)100質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−10)を製造した。
[実施例11]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解したポリカーボネート樹脂(Resin−1)100質量部をポリカーボネート樹脂(Resin−4)(粘度平均分子量49,000)100質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−11)を製造した。
[実施例12]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解したポリカーボネート樹脂(Resin−1)100質量部をポリカーボネート樹脂(Resin−5)(粘度平均分子量50,000)100質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−12)を製造した。
[実施例13]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解したポリカーボネート樹脂(Resin−1)100質量部をポリカーボネート樹脂(Resin−6)(粘度平均分子量49,500)(100質量部)に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−13)を製造した。
[実施例14]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解したポリカーボネート樹脂(Resin−1)100質量部をポリカーボネート樹脂(Resin−7)(粘度平均分子量49,000)100質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−14)を製造した。
[実施例15]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解したポリカーボネート樹脂(Resin−1)100質量部をポリカーボネート樹脂(Resin−8)(粘度平均分子量50,300)(100質量部)に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−15)を製造した。
[実施例16]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解したポリカーボネート樹脂(Resin−1)100質量部をポリカーボネート樹脂(Resin−9)(粘度平均分子量50,100)100質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−16)を製造した。
[実施例17]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解したポリカーボネート樹脂(Resin−1)100質量部をポリカーボネート樹脂(Resin−10)(粘度平均分子量49,600)100質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−17)を製造した。
[実施例18]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した電子受容性化合物(EA−1)2質量部を電子受容性化合物(EA−2)2質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−18)を製造した。
[実施例19]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した電子受容性化合物(EA−1)2質量部を電子受容性化合物(EA−3)2質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−19)を製造した。
[実施例20]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した電子受容性化合物(EA−1)2質量部を電子受容性化合物(EA−4)2質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−20)を製造した。
[実施例21]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した電子受容性化合物(EA−1)2質量部を電子受容性化合物(EA−5)2質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−21)を製造した。
[実施例22]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した電子受容性化合物(EA−1)2質量部を電子受容性化合物(EA−6)2質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−22)を製造した。
[実施例23]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した電子受容性化合物(EA−1)2質量部を電子受容性化合物(EA−7)2質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−23)を製造した。
[実施例24]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した電子受容性化合物(EA−1)2質量部を電子受容性化合物(EA−8)2質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−24)を製造した。
[実施例25]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した電子受容性化合物(EA−1)2質量部を電子受容性化合物(EA−9)2質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−25)を製造した。
[実施例26]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した電子受容性化合物(EA−1)2質量部を電子受容性化合物(EA−10)2質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−26)を製造した。
[実施例27]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した電子受容性化合物(EA−1)2質量部を電子受容性化合物(EA−11)2質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−27)を製造した。
[実施例28]
電荷輸送層用塗布液の調製に使用した溶媒をTHF(560質量部)とトルエン(140質量部)との混合溶媒からTHF(560質量部)と1,4−ジオキサン(140質量部)との混合溶媒に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−28)を製造した。なお、THFと1,4−ジオキサンとの質量の比率(THF/1,4−ジオキサン)は、8/2(すなわち4)であった。
[実施例29]
電荷輸送層用塗布液の調製に使用した溶媒をTHF(560質量部)とトルエン(140質量部)との混合溶媒からTHF(560質量部)とo−キシレン(140質量部)との混合溶媒に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−29)を製造した。なお、THFとo−キシレンとの質量の比率(THF/o−キシレン)は、8/2(すなわち4)であった。
[実施例30]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−8)の含有量を45質量部から55質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−30)を製造した。なお、感光体(A−32)の電荷輸送層において、正孔輸送剤(HTM−8)の質量の比率は、ポリカーボネート樹脂(Resin−1)の質量に対して0.55であった。
[実施例31]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−8)の含有量を45質量部から35質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(A−31)を製造した。なお、感光体(A−34)の電荷輸送層において、正孔輸送剤(HTM−8)の質量の比率は、ポリカーボネート樹脂(Resin−1)の質量に対して0.35であった。
[比較例1]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−1)45質量部を正孔輸送剤(HTM−A)45質量部に変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様にして、感光体(B−1)を製造した。
[比較例2]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−1)45質量部を正孔輸送剤(HTM−B)45質量部に変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様にして、感光体(B−2)を製造した。
[比較例3]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−8)の含有量を45質量部から64質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(B−3)を製造した。なお、感光体(B−3)の電荷輸送層において、正孔輸送剤(HTM−8)の質量の比率は、ポリカーボネート樹脂(Resin−1)の質量に対して0.64であった。
[比較例4]
電荷輸送層用塗布液に混合溶解した正孔輸送剤(HTM−8)の含有量を45質量部から88質量部に変更した以外は、感光体(A−8)の製造と同様にして、感光体(B−4)を製造した。なお、感光体(B−4)の電荷輸送層において、正孔輸送剤(HTM−8)の質量の比率は、ポリカーボネート樹脂(Resin−1)の質量に対して0.88であった。
表1及び表2は、感光体(A−1)〜感光体(A−31)の構成を示す。表3は、感光体(B−1)〜感光体(B−4)の構成を示す。なお、表1、表2及び表3において、「質量の比率」は、電荷輸送剤におけるバインダー樹脂の質量に対する正孔輸送剤の質量の比率を表す。例えば、バインダー樹脂100質量部に対して正孔輸送剤が45質量部含まれる場合、正孔輸送剤の質量の比率は0.45である。溶剤欄には、用いた溶剤の種類に加え、複数の異なる溶剤を混合した混合溶剤を用いた場合、「溶剤の質量の比率」を記載した。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
Figure 2017125879
[3.測定方法]
(3−1.電荷発生剤のX線回折スペクトル)
試料(Y型チタニルフタロシアニン結晶)をX線回折装置(株式会社リガク製「RINT(登録商標) 1100」)のサンプルホルダーに充填して、下記の条件でX線回折スペクトルを測定した。
X線管球:Cu
管電圧 :40kV
管電流 :30mA
CuKα特性X線の波長:1.542Åの条件
測定範囲(2θ):3°以上40°以下(スタート角:3°、ストップ角:40°)
走査速度:10°/分
得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取った。
[4.感光体の性能評価]
(4−1.感光体の電気的特性の評価)
(帯電電位V0の測定)
評価機として、電気特性試験機(GENTEC社製)を用いた。感光体を電気特性試験機にセットした。電気特性試験機を用いて、低温低湿環境(温度:10℃、湿度:20%RH)下で、回転数31rpm及びドラム流れ込み電流−10μA時の感光体の表面電位を測定した。得られた感光体の表面電位を帯電電位V0とした。
(感度電位VLの測定)
電気特性試験機(GENTEC社製)を用いて、低温低湿環境(温度:10℃、湿度:20%RH)下で、電圧−600Vで感光体を帯電し、露光波長780nm及び露光量0.26μJ/cm2で50m秒間露光した後の感光体の表面電位を測定した。得られた表面電位を、感度電位VLとした。
(4−2.感光体の耐摩耗性の評価(摩耗試験))
電荷輸送層用塗布液をアルミパイプ(直径78mm)に巻きつけたPPシート(厚さ0.3mm)に塗布した。塗布膜を120℃で40分乾燥し、PPシート上に膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。得られた電荷輸送層をPPシートから剥離し、ウイールS−36(テーバー社製)に貼り付け、摩擦評価用試料を作製した。作製した試料をロータリーアブレージョンテスタ(株式会社東洋精機製)を用いて、摩耗輪C−10(テーバー社製)、荷重750gf、及び回転速度60rpmの条件にて、1,000回転摩耗試験を実施した。摩耗試験前後の試料の質量を測定した。これらの質量の差(=摩耗試験前の電荷輸送層の質量−摩耗試験後の電荷輸送層の質量)から、1,000回転あたりの摩耗減量(mg)を求めた。
表4及び表5は、感光体(A−1)〜感光体(A−31)の電気的特性評価及び耐摩耗性評価の結果を示す。表6は、感光体(B−1)〜(B−4)の電気的特性評価及び耐摩耗性評価の結果を示す。
Figure 2017125879
Figure 2017125879
Figure 2017125879
表1及び表2に示すように、感光体(A−1)〜感光体(A−31)は、電荷発生層においてY型チタニルフタロシアニン結晶を有していた。Y型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有していた。また、感光体(A−1)〜感光体(A−31)は、電荷輸送層において、正孔輸送剤(HTM−1)〜正孔輸送剤(HTM−8)のうち何れか一つを有していた。感光体(A−1)〜感光体(A−31)は、電荷輸送層において正孔輸送剤の質量の比率はバインダー樹脂の質量に対して0.35以上0.55以下であった。
表3に示すように、感光体(B−1)及び感光体(B−2)は、それぞれ電荷輸送層において正孔輸送剤(HTM−A)及び正孔輸送剤(HTM−B)を有していた。正孔輸送剤(HTM−A)及び正孔輸送剤(HTM−B)は、何れもベンジジン誘導体(1)ではなかった。表3に示すように、感光体(B−3)及び(B−4)は、電荷輸送層において正孔輸送剤の質量の比率はバインダー樹脂の質量に対して0.64及び0.88であった。
表4及び表5に示すように、感光体(A−1)〜感光体(A−31)は、電気的特性の評価において感度電位VLが−78V以上−52V以下であった。また、感光体(A−1)〜感光体(A−31)は、耐摩耗性の評価において摩耗減量が5.1mg以上8.0mg以下であった。
表6に示すように、感光体(B−1)及び感光体(B−2)は、電気的特性の評価においてそれぞれ感度電位VLが−120V及び−155Vであった。このことから、感光体(B−1)及び感光体(B−2)は、電気的特性に劣ることが示された。また、感光体(B−3)及び感光体(B−4)は、耐摩耗性の評価においてそれぞれ摩耗減量が9.1mg及び8.5mgであった。このことから、感光体(B−3)及び感光体(B−4)は、耐摩耗性に劣ることが示された。
以上から、感光体(A−1)〜感光体(A−31)(実施例の感光体)は、感光体(B−1)〜感光体(B−4)(比較例の感光体)に比べ、電気的特性及び耐摩耗性が両立されていた。
本発明によれば、電気的特性と耐摩耗性との両立が可能な積層型電子写真感光体を提供できる。このような積層型電子写真感光体は、複合機等の画像形成装置に好適に適用される。
1 積層型電子写真感光体
3 感光層
3b 電荷発生層
3c 電荷輸送層

Claims (10)

  1. 電荷発生剤を有する電荷発生層と、正孔輸送剤及びバインダー樹脂を有する電荷輸送層とを含む感光層を備え、
    前記電荷発生剤は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有するチタニルフタロシアニンを含み、
    前記正孔輸送剤は、一般式(1)で表されるベンジジン誘導体を含み、
    前記電荷輸送層において、前記正孔輸送剤の質量の比率は、前記バインダー樹脂の質量に対して0.55以下である、積層型電子写真感光体。
    Figure 2017125879
    前記一般式(1)中、
    1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数6以上12以下のアリール基を表し、
    1及びR5のうち少なくとも一方が、水素原子を表さず、
    6及びR10のうち少なくとも一方が、水素原子を表さず、
    11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数6以上12以下のアリール基を表し、
    k及びlは、各々独立に、0以上4以下の整数を表し、kが2以上の整数を表す場合、複数のR13は互いに同一であっても異なっていてもよく、lが2以上の整数を表す場合、複数のR14は互いに同一であっても異なっていてもよく、
    m及びnは、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、mが2以上の整数を表す場合、複数のR11は互いに同一でも異なっていてもよく、nが2以上の整数を表す場合、複数のR12は互いに同一でも異なっていてもよい。
  2. 前記一般式(1)中、
    1及びR5のうち少なくとも一方が、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数6以上12以下のアリール基を表し、
    2、R4、R7及びR9は、水素原子を表し、
    3及びR8は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表し、
    6及びR10のうち少なくとも一方が、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数6以上12以下のアリール基を表し、
    11及びR12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表し、
    k及びlは、0を表し、
    m及びnは、各々独立に、0又は1を表す、請求項1に記載の積層型電子写真感光体。
  3. 前記バインダー樹脂は、一般式(PC)で表されるポリカーボネート樹脂を含む、請求項1又は2に記載の積層型電子写真感光体。
    Figure 2017125879
    前記一般式(PC)中、
    Arは、一般式(PC−1)、一般式(PC−2)、一般式(PC−3)、又は化学式(PC−4)で表される二価の基を表し、
    15、R16、及びR17は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R16とR17とは、互いに結合して環を形成し、シクロアルキリデン基となってもよく、
    p及びqは正の数を表し、p+q=1.00であり、0.35≦q<0.70である。
    Figure 2017125879
    前記一般式(PC−1)、前記一般式(PC−2)、及び前記一般式(PC−3)中、R18は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
  4. 前記一般式(PC)中、
    15は水素原子を表し、
    16及びR17は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すか、又は互いに結合して環を形成しシクロヘキシリデン基若しくはシクロペンテリデン基を表し、
    前記一般式(PC−1)、前記一般式(PC−2)、及び前記一般式(PC−3)中、R18は水素原子を表す、請求項3に記載の積層型電子写真感光体。
  5. 前記電荷輸送層は、電子受容性化合物を更に有し、
    前記電子受容性化合物は、ケトン構造又はジシアノメチレン構造を有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の積層型電子写真感光体。
  6. 前記電子受容性化合物は、一般式(EA)で表される化合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の積層型電子写真感光体。
    Figure 2017125879
    前記一般式(EA)中、
    19〜R43は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、アリールアルコキシ基、又はアリール基を表し、
    前記アリール基は、置換基として炭素原子数1以上3以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を有してもよい。
  7. 前記一般式(EA)中、
    19〜R43は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、フェニルメトキシ基、又はフェニル基を表し、
    前記フェニル基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を有してもよい、請求項6に記載の積層型電子写真感光体。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載の積層型電子写真感光体の製造方法であって、
    少なくとも前記正孔輸送剤と、前記バインダー樹脂と、溶剤とを含む電荷輸送層用塗布液を、前記電荷発生層上に塗布し、塗布した前記電荷輸送層用塗布液に含まれる前記溶剤の少なくとも一部を除去して前記電荷輸送層を形成する電荷輸送層形成工程を有し、
    前記溶剤が、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、及びo−キシレンのうちの少なくとも1種を含有する、積層型電子写真感光体の製造方法。
  9. 請求項1〜7の何れか一項に記載の積層型電子写真感光体を備えた、プロセスカートリッジ。
  10. 像担持体と、
    前記像担持体の表面を帯電する帯電部と、
    前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光部と、
    前記静電潜像をトナー像として現像する現像部と、
    前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写する転写部と
    を備える画像形成装置であって、
    前記像担持体は、請求項1〜7の何れか一項に記載の積層型電子写真感光体である、画像形成装置。
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