JP6034659B2 - ラミネートチューブ用積層体 - Google Patents

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本発明は、複数の樹脂層を有するラミネートチューブ用積層体に関し、詳しくは、金属蒸着層を含むラミネートチューブ用積層体に関する。
隠蔽性と水蒸気バリア性を備える金属蒸着層を含むラミネートチューブ用積層体として、表層樹脂層と最内層樹脂層との間に、金属蒸着樹脂層と、金属蒸着樹脂層に積層された白色系顔料を含むポリオレフィン樹脂層と、白色系顔料を含むポリオレフィン樹脂層に積層された無機化合物蒸着樹脂層とを含む積層体が知られている(特許文献1)。
また、金属又は無機化合物を蒸着したバリア層を有する積層体を紙と張り合わせて形成する液体用紙容器において、紙容器を形成する際に蒸着層で発生するクラックを防止するため、蒸着層に延伸プラスチックフィルムを積層する技術が知られている(特許文献2)。
特許文献1:特開2010−222043号公報
特許文献2:特開2010−89821号公報
特許文献1の積層体を用いたチューブ容器において、チューブを揉んで内容物を押し出すことを繰り返すと、チューブの胴体に黒い筋状の線が現れ、チューブに印刷されたデザインが損なわれる場合があることが指摘されている。
この問題を鑑み、本発明は、チューブの胴体に黒い筋状の線が現れ難いラミネートチューブ用積層体を提供することを目的とする。
本発明者らが、ラミネートチューブ用積層体に生ずる黒い筋状の線について調べたところ、金属蒸着樹脂層の金属蒸着面に生じたクラックが原因であることが判明した。
特許文献1には、白色系顔料を含むポリオレフィン樹脂層を厚くすることにより、変形に対する優れた復元性を発揮することが記載されている。そこで、本発明者らは、酸化チタンや酸化亜鉛等の白色系顔料を含むポリオレフィン樹脂層の厚みを大きくしてみたが、クラックを解消することはできなかった。
また、特許文献2を考慮して、金属蒸着樹脂層の蒸着面に延伸プラスチックを積層したところ、紙層を含まないラミネートチューブ用積層体においては、黒い筋状の線の発生を抑えることはできなかった。
さらに研究を進めたところ、白色系顔料を含むポリオレフィン樹脂層の厚さを、表層樹脂層及び最内層樹脂層の厚みと特定条件を満たすように関連付けて調整することで、黒い筋状の線の発生を抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のラミネートチューブ用積層体は、表層樹脂層と最内層樹脂層との間に、金属蒸着樹脂層と、金属蒸着樹脂層の内側に配置された隠蔽層と、隠蔽層の内側に配置された無機化合物蒸着樹脂層とを含み、表層樹脂層の厚みが、隠蔽層の厚み以上、かつ最内層樹脂層の厚み以上であることを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、表層樹脂層の厚みが80μm以上200μm以下、かつ隠蔽層の厚みが60μm以上120μm以下、かつ、最内層樹脂層の厚みが80μm以上170μm以下である。
本発明のラミネートチューブ用積層体は、チューブの胴体を揉んで内容物を押し出すことを繰り返しても、チューブ積層体に黒い筋状の線が現れる現象を低減できる。
本発明のラミネートチューブ用積層体を示す概念図である。 実施例1の結果を示すマイクロスコープ像の図である。 比較例の結果を示すマイクロスコープ像の図である。
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のラミネートチューブ用積層体は、図1に示すように、表層樹脂層1と最内層樹脂層5との間に、金属蒸着樹脂層2と、金属蒸着樹脂層2の内側に配置された隠蔽層3と、隠蔽層3の内側に配置された無機化合物蒸着樹脂層4とを含み、表層樹脂層1の厚みH1は、隠蔽層3の厚みH2以上、かつ最内層樹脂層5の厚みH3以上であることを特徴とする。
なお、本明細書において、内側とは、各層の位置関係を示すものであり、最内層樹脂層5側の位置を意味する。
表層樹脂層1、最内層樹脂層5、金属蒸着樹脂層2、隠蔽層3及び無機化合物蒸着樹脂層4に用いられる樹脂は、ポリオレフィン樹脂である。
表層樹脂層1、最内層樹脂層5及び隠蔽層3に用いられるポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を用いることができる。
表層樹脂層1は、金属蒸着樹脂層2の保護層としての機能を果たすほか、チューブ等における印刷面及び継ぎ目のシーラントとしての機能が要求されるため、上述したポリオレフィンのシーラント性を備えるフィルム又は無延伸のポリオレフィン樹脂層とする。また、単層であってもよく、異種の樹脂からなる複層構造としてもよい。複層とする場合には、例えば、低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの組み合わせが挙げられる。表層樹脂層1の厚みは、80μm以上200μm以下である。80μm未満であると、剛性が足りずチューブの継ぎ目の接着が悪くなり、200μmを超えると、剛性が増し継ぎ目の接着が悪くなるため、80μm以上200μm以下が好ましい。
金属蒸着樹脂層2は、蒸着基材の表面に、金属化合物を真空蒸着法により形成された金属蒸着薄膜21が積層されている。
蒸着基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、ポリビニルアルコール(PVA)等を延伸してフィルム化したものが好ましい。
金属化合物としては、アルミニウム、錫、インジュウム、ニッケル、チタン、クロム等の金属や金属酸化物を用いることができる。
金属蒸着樹脂層2はガスバリア性や水蒸気バリア性を備えており、金属蒸着樹脂層2の厚みは、12μm以上25μm以下が好ましい。
なお、金属蒸着樹脂層2に設けられた金属蒸着薄膜21は、表層樹脂層1とは接しない面、すなわち、隠蔽層3側に配置するのが好ましい。表層樹脂層1に接しない面に設けることで、金属蒸着樹脂層2の厚み分が表層樹脂層1に加わることになり、折り曲げに対する剛性が増すので、黒い筋状の線の発生が抑えられること(詳しくは、後述する)及び金属蒸着樹脂層2上に、表層樹脂層1を押し出して積層する場合、金属蒸着膜21が熱により劣化することを防止するためである。
隠蔽層3は、白色系顔料を含む白色の樹脂からなる層である。白色系顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の白色系の顔料を意味する。
隠蔽層3の機能は、金属蒸着樹脂層2の金属光沢性を与えること及びラミネートチューブ用積層体の変形に対する復元性を効果的に発揮させることである。特許文献2には、ラミネートチューブ用積層体において、隠蔽層3の層厚を最も厚くすることが望ましいことが開示されているが、後述するように、この層の層厚だけを厚くしても、黒い筋状の線の発生を抑えることはできない。
隠蔽層3は、延伸したフィルムであってもよく、無延伸の樹脂層であってもよいが、延伸してフィルム化したものが好ましい。延伸したフィルムを用いる場合、隠蔽層3の厚みを調節するために、同種又は異種の樹脂からなる厚み調節層(図示省略)を積層した複層構造としてもよい。厚み調節層は、延伸したフィルムは又は無延伸の樹脂層であってもよい。厚み調節層には、白色系顔料を含ませる必要はなく、例えば、金属蒸着樹脂層2と接する側の層のみを白色系顔料を含むフィルムとし、ポリオレフィン樹脂の無延伸樹脂を積層してもよい。
隠蔽層3の厚みは、ラミネートチューブ用積層体の総厚みを大きくすることなく、金属光沢付与、変形に対する復元性を考慮して、40μm以上250μm以下とするのが好ましく、より好ましくは、60μm以上120μm以下とする。
無機化合物蒸着樹脂層4は蒸着基材の表面に、無機化合物を真空蒸着法により形成された無機化合物蒸着薄膜41が積層されている。無機化合物としてはケイ素や酸化ケイ素を用いることができる。蒸着基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、ポリビニルアルコール(PVA)等を延伸してフィルム化したものが好ましい。
無機化合物蒸着樹脂層4の厚みは、12μm以上25μm以下が好ましい。
無機化合物蒸着薄膜41は無機化合物蒸着樹脂層4のうち、最内層樹脂層5とは接しない面、すなわち、隠蔽層3側に配置するのが好ましい。無機化合物蒸着樹脂層4に最内層樹脂層5を押出して積層する場合、無機化合物蒸着薄膜41が熱により劣化することを防止するためである。
最内層樹脂層5は、チューブ等におけるシーラントとして機能するため、表層樹脂層1と同様に、シーラント性を備えるフィルム又は無延伸のポリオレフィン樹脂層とする。また、表層樹脂層1と同様、単層であってもよく、異種の樹脂からなる複層構造としてもよい。最内層樹脂層の厚みは、80μm以上170μmの範囲である。
以上述べたラミネートチューブ用積層体において、表層樹脂層1の厚みH1は、隠蔽層3の厚みH2以上、かつ最内層樹脂層5の厚みH3以上である。
ラミネートチューブ用積層体は、押出ラミネート法、ドライラミネート法又はそれらの方法の組み合わせにより表層樹脂層1、金属蒸着樹脂層2、隠蔽層3、無機化合物蒸着樹脂層4及び最内層樹脂層を積層して製造することができる。
本発明のラミネートチューブ用積層体を用いて形成したチューブ容器は、繰り返し折り曲げても、金属蒸着層2の金属蒸着薄膜21にクラックが発生し難い。これは、金属蒸着樹脂層2よりも上にある表層樹脂層1、金属蒸着樹脂層2よりも内側にある隠蔽層3及び最内層樹脂層5の各層の厚みを調整することにより、クラックの発生を低減できたためである。以下に各層の厚みがどのような作用を持ってクラックの低減につながっているか説明する。
表層樹脂層≧隠蔽層
表層樹脂層の層厚が隠蔽層の層厚と比較して同等厚み以上であることにより、表層樹脂層側に曲げる際に抵抗がかかり、ラミネートチューブ用積層体が曲がりにくくなるため、クラックが低減していると考えられる。
表層樹脂層≧最内層樹脂層
表層樹脂層の層厚が最内層樹脂層の層厚と比較して同等厚み以上であることにより、表層樹脂層に曲げる際に抵抗がかかり、ラミネートチューブ用積層体が曲がりにくくなるため、クラックが低減していると考えられる。
以上の理由により、ラミネートチューブ用積層体の樹脂層の厚みが、表面層樹脂層≧隠蔽層であり、かつ、表層樹脂層≧最内層樹脂層であることにより金属蒸着層に含まれる蒸着面に生じるクラックを低減することができる。
なお、ラミネートチューブ用積層体の総厚みは、機械適性と実用性を勘案すると、200μm以上450μm以下が好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
表層樹脂層の厚みを30μm〜200μm、隠蔽層の厚みを60μm〜120μm、最内層樹脂層の厚みを80μm〜170μmに調整したラミネートチューブ用積層体を作製して、積層体を揉んだときの黒い筋状の線が発生するか否かを調べた。
表層樹脂層及び最内層樹脂層として、上記厚みを有するLLDPEフィルムを用いた。隠蔽層は、乳白LDPEフィルム(酸化チタン着色、厚さ60μm又は80μm)を用い、さらに厚みを補充するため、LDPE樹脂を積層した。金属蒸着層には、東レフィルム加工のVM−PET(アルミ蒸着PET、厚み12μm)、無機化合物蒸着樹脂層として、三菱樹脂のテックバリア(シリカ蒸着PET、厚み12μm)を使用した。
表層樹脂層と金属樹脂層とを接着剤を介して積層し(積層体a)、さらに隠蔽層と無機化合物蒸着樹脂層とを接着剤を介して積層し(積層体b)、積層体aと積層体bと最内層とをそれぞれアンカー剤を介して積層した。
接着剤には三井化学のA310:A−3:酢酸エチル=10:1:9.54の比率のものを用いた。各層を接着した後40℃、72hの雰囲気下でエージングしサンプルを作製した。アンカー剤は東洋モートンのTM−569とCAT−R37を使用した。なお、ラミネートチューブ用積層体の厚みは、実用化に適した200μm〜450μmとした。
作製したサンプルを15mm×50mmの大きさにサンプリングし、表裏に各5回ずつ折り曲げて、クラックの発生を調べた。
カッターでLLDPE層に切れ目を入れ、酢酸エチルを浸み込ませながら、表層樹脂層を剥がし、マイクロスコープにてアルミ蒸着PETの上から折り曲げた部分を観察した。結果を表1に示す。
表中、クラックが観察されなかった場合を○印、観察された場合を×印として表に示す。なお、表中の印[−]は、ラミネートチューブ用積層体の層厚みが200μm未満又は450μmを超える場合であり、実用範囲外であることを意味している。
隠蔽層を厚くしても、表層樹脂層が隠蔽層より薄い場合には、クラックが発生していることから、隠蔽層を厚くしてもクラック発生を抑制できないことがわかる。
また、最内樹脂層が表層樹脂層より厚い場合には、クラックが発生しており、最内樹脂層の厚みを厚くしてもクラックの発生を抑制することはできない。
すなわち、クラックの発生は、表層樹脂層の厚みが要因であり、表層樹脂層の厚みが、隠蔽層の厚み以上で、かつ最内層樹脂層の厚み以上である場合に、クラックが発生していないことが分かる。
なお、隠蔽層を厚くすることにより、表層樹脂層及び最内樹脂層が厚くなり、結果として、ラミネートチューブ用積層体の層厚みが実用範囲外になるため、表層樹脂層≧最内層樹脂層≧隠蔽層の関係を満たすように各層の厚みを設定することが好ましいことがわかる。
また、結果の一例として、図2及び図3にマイクロスコープ像を示す。図2は、表層樹脂層の厚みを110μm、最内層樹脂層の厚みを110μmとし、隠蔽層の厚みを60μmとした際の本発明の実施例1に従う実験結果を示し、図3は、表層樹脂層の厚みを60μm、最内層樹脂層の厚みを110μm、隠蔽層の厚みを60μmとした比較例を示す。図2では黒い筋は発生していないのに対し、図3ではアルミ蒸着PET上にクラックが黒い筋として観察されていることがわかる。
1: 表層樹脂層
2: 金属蒸着樹脂層
21: 金属蒸着薄膜
3: 隠蔽層
4: 無機化合物蒸着樹脂層
41: 無機化合物蒸着薄膜
5: 最内層樹脂層
H1: 表層樹脂層の厚み
H2: 隠蔽層の厚み
H3: 最内層樹脂層の厚み

Claims (2)

  1. 複数の樹脂層を有する積層体であって、表層樹脂層と最内層樹脂層との間に、金属蒸着樹脂層と、該金属蒸着樹脂層の内側に配置された隠蔽層と、該隠蔽層の内側に配置された無機化合物蒸着樹脂層とを含み、
    上記表層樹脂層の厚みは、上記隠蔽層の厚み以上、かつ上記最内層樹脂層の厚み以上であることを特徴とする、ラミネートチューブ用積層体。
  2. 前記表層樹脂層の厚みが80μm以上200μm以下、かつ前記隠蔽層の厚みが60μm以上120μm以下、かつ、前記最内層樹脂層の厚みが80μm以上170μm以下である、請求項に記載のラミネートチューブ用積層体。
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