JP3883582B2 - 包装用クリーンフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は包装用クリーンフィルムの製造方法に関し、さらに詳しくはクリーンルーム等のクリーンな環境下で製造される例えば半導体製品あるいはそのような製品の製造時に必要とされる衣服等の梱包、包装に好適に用いられる包装用クリーンフィルムを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえばIC、LSIなどの半導体製品はチリ、ホコリを極端に嫌うことからクリーンルーム内で製造されている。そして、このようなクリーンな環境下で製造される製品あるいはそのような製品の製造時に必要な衣服等の包装に用いられる包装材料にもチリ、ホコリが付着していないことが要求される。
【0003】
そのため、従来は、クリーンルーム内で製造した包装材料を超純水で洗浄したものが、クリーンな環境で用いられる包装材料に利用されてきた。
一方、このような包装用クリーンフィルムとして共押し出しによる多層フィルムが注目されている。
【0004】
この多層フィルムは、剥離除去可能な外層フィルムにより中間層フィルムの表裏両面が被覆されてなるものであり、外層フィルムを剥離除去すると被包装体を直接に包装する中間層フィルムの清浄面が露出するように構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする問題点】
しかしながら、従来の包装材料においては、クリーンルーム内で製造したものを、さらに超純水で洗浄する必要があるため、この洗浄工程が製造コストの低減を図る上での障害になるとともに、超純水による洗浄の程度により、クリーン度の確実性に欠けるという問題がある。
【0006】
また、共押し出しによる多層フィルムは、超純水による洗浄は不要であるものの包装材料として用いられる中間層フィルムの包材強度が必ずしも充分ではなく、また、中間層フィルムに耐ピンホール性、ガスバリア性等の所望の機能を付与することが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明はかかる事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、ホコリやチリの付着が完全に防止されていて洗浄が不要であるとともに、包材強度に優れ、しかも耐ピンホール性、ガスバリヤー性等の所望の機能を容易に付与することのできる包装用クリーンフィルムの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の構成は、複数層の樹脂フィルムを積層する包装用クリーンフィルムの製造方法において、耐熱性基材の表裏両面に少なくとも2層の熱可塑性樹脂フィルムからなる被覆膜を290℃以下において共押し出しし、該被覆膜は、基材側にポリエチレンフィルム、包装用クリーンフィルムの外側にナイロンフィルムを有し、該被覆膜の最外層の熱可塑性樹脂フィルムが剥離除去されることにより清浄面が露出する包装用クリーンフィルムを得ることを特徴とする包装用クリーンフィルムの製造方法である。
【0009】
本発明の包装用クリーンフィルムの製造方法においては、耐熱性基材の表裏両面に少なくとも2層の熱可塑性樹脂フィルムからなる膜を共押し出しして積層体を作成する。
【0010】
使用に供される耐熱性基材としては、たとえば延伸ナイロン(ONy)フィルム、塩化ビニリデン膜付延伸ナイロンフィルム(KON)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、塩化ビニリデン膜付ポリエチレンテレフタレート(KPET)フィルム、エチレン・酢酸ビニルアルコールけん化物(EVOH)フィルム、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム、アルミニウム箔、無機酸化物蒸着PET、アルミ蒸着PETなどが好適なものとして挙げられる。これらのなかでも、2軸延伸ナイロン(ONy)フィルム、2軸延伸PETフィルムは特に好ましい。
【0011】
この耐熱性基材の厚さは、耐熱性基材の特性、被包装体の種類等により相違するので、一様に決定することは困難であるが、一般的には、10〜30μm程度である。
【0012】
なお、この耐熱性基材の片面または両面には、必要に応じて印刷を行なうこともできる。
本発明の包装用クリーンフィルムの製造方法においては、次いで、上記の耐熱性基材の表裏両面に直接にあるいは好ましくはアンカーコート層を介して少なくとも2層の熱可塑性樹脂フィルムからなる被覆膜を共押し出しする。
【0013】
上記のアンカーコート層は、被覆膜が耐熱性基材との界面から剥離してしまうのを防止し、被覆膜を構成する少なくとも2層の熱可塑性樹脂フィルムのうち最外層フィルムのみが剥離除去されるのを確実なものとする作用乃至機能を有する層である。
【0014】
このような作用乃至機能を有するアンカーコート層は、耐熱性基材の表裏両面にアンカーコート剤を塗布することにより形成することができる。ここで、アンカーコート剤としては、たとえばポリエチレンイミン系、チタネート系、ウレタン系、イソシアネート系等のアンカーカート剤が挙げられる。
【0015】
アンカーコート層を形成する場合、その厚さは、通常、0.3〜3μm程度であり、好ましくは0.5〜1.5μm程度である。
本発明の包装用クリーンフィルムの製造方法においては、少なくとも2層の熱可塑性樹脂フィルムからなる被覆膜を共押し出しによって作成するが、たとえば被覆膜が2層の熱可塑性樹脂フィルムからなる場合、共押し出しされる熱可塑性樹脂については、(耐熱性基材側フィルム形成樹脂)/(最外層フィルム形成樹脂)の組合わせで例えばポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)/ナイロン(Ny)、ポリエチレン(PE)/ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)/エチレン・酢酸ビニルアルコールけん化物(EVOH)などが好ましいものとして挙げられ、たとえば耐ピンホール性、ガスバリアー性等の所望の機能に応じて適当な組み合わせを選択すればよい。
【0016】
このような被覆膜は、たとえばTダイ法による共押し出しにより、2種類以上の熱可塑性樹脂を溶融状態で押出機から押し出すことにより形成することができる。ここで、共押し出し温度は熱可塑性樹脂の組み合わせにより相違するので一様に決定することはできないが、たとえばポリエチレン(PE)/ナイロン(Ny)の組み合わせの場合、通常、290℃以下、好ましくは240℃以下である。この共押し出し温度が300℃を超えると、最外層を構成するナイロンフィルムの剥離性が不良となることがある。
【0017】
以上のようにして製造される包装用クリーンフィルム1は、図1に示すように、耐熱性基材2の表裏両面に、アンカー層3を介してあるいは介することなく直接に、少なくとも2層の熱可塑性樹脂フィルム4a,4bからなる被覆膜4が共押し出しされてなるものである。ここで、被覆膜4を構成する少なくとも2層の熱可塑性樹脂フィルム4a,4bは、共押し出しにより積層されているので、製造時および製造後のいずれにおいても内側の熱可塑性樹脂フィルム4aの表面が直接外気に触れることはなく、したがって、製造時から使用に供されるまでの間に熱可塑性樹脂フィルム4aの表面にホコリ、チリ等が付着することがない。
【0018】
すなわち、図2に示すように、最外層の熱可塑性樹脂フィルム4bを剥離除去することにより、この熱可塑性樹脂フィルム4bで被覆され、ホコリ、チリ等の付着が完全に防止されていた内側の熱可塑性樹脂フィルム4aの清浄面が出現することになり、そのまま例えば半導体製品等の高いクリーン度が要求される被包装体の包装材料に好適に用いることが可能である。
【0019】
なお、被覆膜4を構成する少なくとも2層の熱可塑性樹脂フィルムにおける最外層の熱可塑性樹脂フィルム4bの剥離強度は、内側の熱可塑性樹脂フィルム4aの表面を被覆するという機能が損なわれない限り、小さいほど好ましい。この剥離強度が大きくなると、最外層の熱可塑性樹脂フィルム4bを剥離除去する際に内側の熱可塑性樹脂フィルム4aの表面に発生する静電気量が大きくなり、これにより同フィルム4aの表面の集塵性が高まってホコリ、チリ等が付着し易くなるからである。
【0020】
【実施例】
次に、本発明の実施例を示し、本発明についてさらに具体的に説明する。
(実施例1)
厚さ15μmの延伸ナイロン(ONy)フィルム(ユニチカ社製「エンブレムON」、密度1.15)の表面にグラビア印刷を行ない、これを耐熱性基材とした。
【0021】
次いで、この耐熱性基材の表裏両面にウレタン系アンカーコート剤(東洋モートン社製「ADCOAT506X/CAT10」)を塗布して、厚さ1.0μmのアンカーコート(AC)層を形成した。
【0022】
次に、このアンカーコート(AC)層上に、ポリエチレン(PE)(日本ユニカー社製「NUC8160」、密度0.923、MI=2.4g/10分)およびナイロン(Ny)(宇部興産社製「5033B」、密度1.14)をアンカーコート(AC)層側にポリエチレン(PE)層が形成されるように共押し出ししてポリエチレンフィルムとナイロンフィルムとからなる被覆層を設け、以下の層構成からなる包装用クリーンフィルムを作成した。
【0023】
Ny20μ/PE40μ/AC/ONy15μ/印刷層/AC/PE40μ/Ny20μ次いで、この包装用クリーンフィルムの最外層のナイロンフィルムを剥離除去した後の包材フィルムの引張強度を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
なお、引張強度は、次のようにして測定した。
引張強度;引張試験機(テンシロン)を用い、引張速度300mm/min、
角度180゜の条件にて引張強度を測定した。
(比較例1)
公知の押出法により、ナイロン(Ny)(宇部興産社製「5033B」、密度1.14)およびポリエチレン(PE)(PE)(日本ユニカー社製「NUC8160」、密度0.923、MI=2.4g/10分)を共押し出しし、以下の層構成からなる3層共押し出し積層フィルムを作成した。
【0025】
Ny30μ/PE60μ/Ny30μ
その後、この3層共押し出し積層フィルムについて、前記実施例1と同様にして引張強度を測定した。結果を表1に示す。
(結果の検討)
表1から明らかなように、実施例1で作成された包装用クリーンフィルムは比較例1で作成された3層共押し出し積層フィルムに比べて引張強度が大きいことがわかる。これより、本発明の製造方法によれば、露出面にホコリ、チリ等が付着しにくくて無塵性に優れているとともに強度が格段に向上した包装用クリーンフィルムが得られることが確認された。
【0026】
【発明の効果】
以上に詳述したとおり、本発明によれば、耐熱性基材の表裏両面に少なくとも2層の熱可塑性樹脂フィルムからなる被覆膜を共押し出しすることにより、被覆膜の最外層フィルムが剥離除去されると清浄面が露出する包装用クリーンフィルムを製造する構成としたので、引張強度等の包材強度が向上しているとともに、無塵性に優れ、しかも耐ピンホール性、ガスバリアー性等の所望の機能を付与することが容易な包装用クリーンフィルムの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法により得られる包装用クリーンフィルムの層構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す包装用クリーンフィルムにおいて外層フィルムを剥離した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1…包装用クリーンフィルム
2…耐熱性基材
4…被覆層
4a,4b…熱可塑性樹脂フィルム
Claims (1)
- 複数層の樹脂フィルムを積層する包装用クリ−ンフィルムの製造方法において、該複数層の樹脂フィルム層は、延伸ナイロン(ONy)フィルム、塩化ビニリデン膜付延伸ナイロンフィルム(KON)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、塩化ビニリデン膜付ポリエチレンテレフタレート(KPET)フィルム、エチレン・酢酸ビニルアルコールけん化物(EVOH)フィルム、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム、アルミニウム箔、無機酸化物蒸着PETフィルム、または、アルミ蒸着PETフィルムからなる耐熱性基材の表裏両面に、アンカ−コ−ト層を設け、次いで、該アンカ−コ−ト層上に、内側熱可塑性樹脂フィルムと最外層熱可塑性樹脂フィルムとの2層の熱可塑性樹脂フィルムからなる被覆膜を共押し出ししたものであって、上記アンカ−コ−ト層は、上記被覆膜を構成する内側熱可塑性樹脂フィルムが上記基材との界面から剥離することを防止するものであり、上記被覆膜を構成する最外層熱可塑性樹脂フィルムは剥離除去することにより、上記被覆膜を構成する内側熱可塑性樹脂フィルムの清掃浄面が露出するものであることを特徴とする包装用クリ−ンフィルムの製造方法。
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