JP6029925B2 - セルロースエステル組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロースエステル組成物に関する。
セルロースアセテート等のセルロースエステルは一般的に熱可塑性が乏しいため、通常は可塑剤を含む組成物として使用されている。
特許文献1は、脂肪酸セルロースエステル系樹脂組成物に関する発明であり、公知の可塑剤を配合できることが記載されている(段落番号0023)。
特許文献2は、平均置換度2.7以下のセルロースエステル、可塑剤及び充填剤で構成された樹脂組成物に関する発明である。可塑剤としては、リン酸エステル等を使用できることが記載されている(段落番号0020)。実施例(表1)では、充填剤としてタルク、ワラストナイトまたはガラス繊維を配合した例が示されている。
特開平10−306175号公報 特開2005−194302号公報
本発明は、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの優れた機械的性質を有する成形体が得られる、セルロースエステル組成物を提供する。
本発明は、課題の解決手段として、
(A)セルロースエステル100質量部に対して、
(B)可塑剤2〜100質量部、
(C)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含む熱可塑性エラストマー1〜50質量部を含有するセルロースエステル組成物を提供する。
本発明のセルロースエステル組成物は、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの優れた機械的性質を有する成形体を得ることができる。
<(A)成分>
本発明の組成物で用いる(A)成分のセルロースエステルは公知のものであり(例えば、特許文献1、2に記載されているもの)、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
その他、ポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテート、アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルプロピルセルロース、アセチルヒドロキシエチルセルロース、アセチルヒドロキシプロピルセルロース等も挙げることができる。
(A)成分のセルロースエステルは、平均置換度が2.7以下のセルロースアセテートが好ましい。
(A)成分のセルロースエステルの重合度は、粘度平均重合度が100〜1000、好ましくは100〜500である。
<(B)成分>
本発明の組成物で用いる(B)成分の可塑剤は公知のものである。(B)成分の可塑剤としては、例えば、下記の可塑剤から選ばれる1種を使用することができ、2種以上組み合わせて使用することもできる。
芳香族カルボン酸エステル[フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸ジC1-12アルキルエステル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸C1-6アル
コキシC1-12アルキルエステル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸C1-12アルキル・アリール−C1-3アルキルエステル、エチルフタリルエチレングリコレート、ブチルフタリルブチレングリコレートなどのC1-6アルキルフタリルC2-4アルキレングリコレート、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシルなどのトリメリット酸トリC1-12アルキルエステル、ピロメリット酸テトラオクチルなどのピロメリット酸テトラC1-12アルキルエステルなど]、
脂肪酸エステル[アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ブトキシエトキシエチル・ベンジル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチルなどのアジピン酸エステル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチルなどのセバシン酸エステル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチルなど]、
多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)の低級脂肪酸エステル[ジグリセリンテトラアセテートなど]、
グリコールエステル(ジプロピレングリコールジベンゾエートなど)、
クエン酸エステル[クエン酸アセチルトリブチルなど]、
アミド類[N−ブチルベンゼンスルホンアミドなど]、
エステルオリゴマー(カプロラクトンオリゴマーなど)、
その他、難燃剤としても使用されるトリフェニルホスフェートなどのリン酸エステル、などを挙げることができる。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して2〜100質量部であり、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは10〜40質量部である。
本発明の組成物で用いる(C)成分の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含むコアシェル構造の熱可塑性エラストマーである。なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の両方を含む意味で使用している。
(C)成分の熱可塑性エラストマーは、コアを構成するゴム状重合体に対して、シェルを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマーがグラフト重合されたコアシェル構造のグラフト共重合体が好ましい。
コアを構成するゴム状重合体としては、
ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレートゴム;
ポリオルガノシロキサンゴム等のシリコーン系ゴム;
ブタジエン−アクリル複合ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−αオレフィン系ゴム(エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴム等)、エチレン−アクリルゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。これらは1種または2種以上を使用することができる。これらの中では、ブタジエンゴム、ポリアルキルアクリレートゴム(アクリルゴム)が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチルが好ましい。
(C)成分としては、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体などが好ましい。
(C)成分としては市販品を使用することができ、例えば、ローム・アンド・ハース社製の「パラロイド(登録商標)EXL−2602」(ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体からなるコア/シェル型グラフト共重合体)、同EXL−2603(ポリブタジエン/アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体からなるコア/シェル型グラフト共重合体)、同EXL−2633(ポリブタジエン/アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体からなるコア/シェル型グラフト共重合体)などを挙げることができる。
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜50質量部であり、好ましくは5〜30質量部であり、より好ましくは5〜25質量部である。
(B)成分の可塑剤と(C)成分の熱可塑性エラストマーは、本発明の課題を解決するため、それぞれの含有量の割合を調整することが好ましい。
(B)成分と(C)成分の含有量の割合(質量比)は、(B)/(C)=30/70〜80/20が好ましく、40/60〜70/30がより好ましい。
本発明の組成物は、用途に応じて公知の熱可塑性樹脂を含有することができる。
公知の熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612等のポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂等を挙げることができる。
公知の熱可塑性樹脂の含有割合は、(A)成分のセルロースエステルとの合計量中、40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
本発明の組成物は、さらに充填剤を含有することができる。
充填剤としては、繊維状充填剤、非繊維状充填剤(粉粒状又は板状充填剤など)が含まれ、例えば、特許文献2(特開2005−194302号公報)の段落番号0025〜0032に記載のものを挙げることができる。
充填剤の含有割合は、(A)成分のセルロースエステル100質量部に対して、5〜50質量部が好ましく、より好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部である。
本発明の組成物は、さらに難燃剤を含有することができる。
難燃剤は公知のものや市販品を使用することができ、特開2003−261711号公報において一般式(I)で示されるナフチルホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、例えば大八化学工業(株)製の商品名「PX−200」、「CR−741」、「CR−733S」、「TCP」などを使用することができる。
またその他の難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシリルホスフェート、ジクレジル−2,6−ジメチルフェニルホスフェート、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートなどのモノマータイプの有機リン系難燃剤、レゾルシンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシンビス[(ビス−2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、ハイドロキノンビス[(ビス−2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、4,4’−ビフェノールビス[(ビス−2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]などのオリゴマータイプの有機リン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、リン酸メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸アンモニウム、メラミン、熱硬化性樹脂被覆赤リン、オレフィン被覆赤リン、酸化チタン被覆赤りんおよびチタンアルミニウム縮合物被覆赤リンなどの安定化赤リン粉末などの赤リン粉末、シリコーン樹脂、シリコーングリース、シリコーンゴムおよびシリコーン油などのシリコーン系難燃剤などを使用することができる。
なお、トリフェニルホスフェートは難燃剤としても使用することができるが、上記したとおり、可塑剤としても使用することができるため、可塑剤としてトリフェニルホスフェートを使用したときは、難燃効果も付与することができる。
本発明の組成物は、特許文献2(特開2005−194302号公報)の段落番号0035〜0042に記載のエポキシ化合物、段落番号0043〜0052に記載の有機酸、チオエーテル、亜リン酸エステル化合物等の安定化剤を含有することができる。
本発明の組成物は、用途に応じて、慣用の添加剤、例えば、他の安定化剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、着色剤(染料、顔料など)、帯電防止剤、難燃助剤、滑剤、アンチブロッキング剤、分散剤、流動化剤、ドリッピング防止剤、抗菌剤等を含んでいてもよい。
本発明の組成物は、例えば、各成分をタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ニーダーなどの混合機を用いて乾式又は湿式で混合して調製してもよい。
さらに、前記混合機で予備混合した後、一軸又は二軸押出機などの押出機で混練してペレットに調製する方法、加熱ロールやバンバリーミキサー等の混練機で溶融混練して調製する方法を適用することができる。
本発明の組成物は、射出成形、押出成形、真空成形、異型成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形等によって各種成形品に成形することができる。
本発明の組成物は、例えば、OA・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分野、サニタリー分野、自動車等の輸送車両分野、家具・建材等の住宅関連分野、雑貨分野等の各パーツ、ハウジング等に使用することができる。
実施例および比較例
(株)東洋精機製作所製のバッチ式混練装置”ラボプラストミル“に表1に示す(A)成分のセルロースアセテートと、表1に示す(B)成分の可塑剤、(C)成分の熱可塑性エラストマー、比較成分(PMMA、ABS)を投入し、設定温度210℃、ブレードの回転数100r/m、混練時間5分の条件で混練して各組成物を得た。
プレス成形機を使用して(設定温度210℃)、各組成物から厚さ3.2mmの板状サンプルを作製した。その板状サンプルからUL−94規定の試験片を切り出して、可塑剤のブリードアウトと耐熱性試験用サンプルとした。
その他の試験項目は、各組成物を使用して、以下に示す方法で各評価試験を実施した。評価結果を表1に示す。
ヘンシェルミキサーを用いて、ミキサー内の摩擦熱で70℃以上となるように各組成物を攪拌混合した後、二軸押出機(シリンダー温度:200℃、ダイス温度:220℃)に供給し、押し出してペレット化した。
得られたペレットを、射出成形機に供給して、シリンダー温度200℃、金型温度50℃、成形サイクル30秒(射出15秒、冷却時間15秒)の条件で試験片を射出成形して、各評価試験に使用した。
<使用成分>
(A)成分
セルロースアセテート:(株)ダイセル製、商品名「L50」、置換度2.5、粘度平均重合度180
(B)成分
Daifatty101:アジピン酸エステル系の可塑剤,大八化学工業(株)製
トリアセチン:ジグリセリンテトラアセテート,商品名「DRA150」,(株)ダイセル製
TPP:トリフェニルホスフェート,大八化学工業(株)製
(C)成分
MB:ローム・アンド・ハース社製の「パラロイド(登録商標)EXL−2602」(ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体からなるコア/シェル型グラフト共重合体)
比較成分
PMMA:住友化学(株)製のスミペックスLG2
ABS:ブタジエン40質量%、AN/St=30質量%/70質量%
<測定試験>
(引張強さ・引張呼び歪み)
ISO527に準拠して、試験片の引張強さおよび引張呼び歪みを測定した(引張強さ単位:MPa、引張呼び歪み単位:%)。
(曲げ強さ・曲げ弾性率)
ISO178に準拠して測定した(単位:MPa)。
(シャルピー衝撃強さ)
ISO179/1eAに準じてシャルピー衝撃強さ(kJ/m2)を測定した(単位:KJ/m2)。
(MI)
220℃、荷重10kgで測定した。
(可塑剤のブリードアウト)
試験サンプルを65℃、85%RHの雰囲気中に500時間放置したときの可塑剤のブリードアウトの有無を肉眼で観察した。
ブリードアウトがなかったものを○、ブリードアウトがあったものを×、ブリードアウトがあったが、×よりも少なかったものを△とした。
(耐熱性)
試験サンプル(厚さ3mm)を65℃、85%RHの雰囲気中に500時間放置したときの変形の有無を肉眼で確認した。
変形しなかったものを○、変形したものを×とした。
(層状剥離)
曲げ強さ試験後の試験サンプルにおいて、層状に剥離しなかったものを無し、層状に剥離したものを有りとした。
Figure 0006029925

Claims (4)

  1. (A)セルロースエステル100質量部に対して、
    (B)可塑剤2〜100質量部、
    (C)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含むコアシェル構造の熱可塑性エラストマー1〜50質量部を含有しており、
    前記(A)セルロースエステルが、平均置換度が2.7以下、粘度平均重合度が100〜500のセルロースアセテートのみからなるものである、セルロースエステル組成物。
  2. (C)成分の熱可塑性エラストマーが、ゴム状重合体に(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマーがグラフト重合されたコアシェル構造のグラフト共重合体である、請求項1記載のセルロースエステル組成物。
  3. (C)成分の熱可塑性エラストマーが、ブタジエンゴム及びポリアルキルアクリレートゴムから選ばれるゴム状重合体にメタクリル酸メチルを含むモノマーがグラフト重合されたコアシェル構造のグラフト共重合体である、請求項1記載のセルロースエステル組成物。
  4. さらに充填剤を含有する、請求項1〜のいずれか1項記載のセルロースエステル組成物。
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