JP6070746B2 - 樹脂組成物及び樹脂成形体 - Google Patents
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Description
重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を含有し、樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が70質量%以上である射出成形用の樹脂組成物である。
樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が80質量%以上である請求項1に記載の樹脂組成物である。
重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を樹脂組成物全体に対して70質量%以上含有する樹脂組成物を含み、前記樹脂組成物が射出成形された樹脂成形体である。
請求項4に係る発明は、
前記樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が80質量%以上である請求項3に記載の樹脂成形体である。
本実施形態に係る樹脂組成物は、重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を含有する。以下、重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を「特定セルロース樹脂」と称する場合がある。
なお、本実施形態に係る樹脂組成物は、特定セルロース樹脂を主成分として含有する。主成分とは、樹脂組成物に含まれる各成分の中で最も含有割合(質量基準)が大きい成分を言う。
しかしながら、セルロースエステル樹脂や重量平均分子量が7万5000を超える無置換のセルロース樹脂は、成形によって得られた樹脂成型体の吸水性が高く、吸水による成形体の寸法変化が起こりやすいことが分かってきた。
以上の理由から、本実施形態の樹脂組成物を用いた樹脂成型体は、重量平均分子量7万5000を超える無置換のセルロース樹脂又はセルロースエステル樹脂を主成分として含む樹脂組成物を用いた場合に比べ、吸水による成形体の寸法変化が小さいと推測される。
しかしながら本実施形態の樹脂組成物は、特定セルロース樹脂を主成分として含有するため、重量平均分子量が1万未満である無置換のセルロース樹脂を主成分として含有する場合に比べ、吸水による寸法変化が小さい樹脂成形体が得られると推測される。
特定セルロース樹脂の含有量が上記範囲であると、上記範囲よりも少ない場合に比べて、特定セルロース樹脂以外の成分(以下「他の成分」と称する場合がある)によって特定セルロース樹脂の水素結合が弱められることが起こりにくくなる。他の成分による水素結合の弱化が起こりにくいと、水素結合の弱化に起因してセルロースの分子間に水分子が入り込みやすくなることも起こりにくくなる。そして、セルロースの分子間に水分子が入り込みやすくなることに起因する吸水による寸法変化も起こりにくくなる。以上の理由により、特定セルロース樹脂の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて、吸水による寸法変化が小さい樹脂成形体が得られると推測される。
本実施形態に係る樹脂組成物は、重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂(特定セルロース樹脂)を含有する。特定セルロース樹脂として具体的には、例えば、一般式(1)で表され、かつ、重量平均分子量が1万以上7万5000以下の樹脂が挙げられる。なお、下記一般式(1)中、nは1以上の整数である。
セルロース樹脂の分子量を調整する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば市販のセルロースを液体中で攪拌することで分子量を低下させる方法が挙げられる。
攪拌の際の速度や時間等を調整することで、セルロースの分子量を求める値に調整される。なお、特に限定されるものではないが、攪拌の際の攪拌速度としては50rpm以上3000rpm以下の範囲が好ましく、100rpm以上1000rpm以下がより好ましい。また、攪拌時間は2時間以上48時間以下の範囲が好ましく、5時間以上24時間以下がより好ましい。
なお、攪拌の際に用いられる液体は、塩酸水溶液、ギ酸水溶液、酢酸水溶液、硝酸水溶液、硫酸水溶液などが挙げられる。
なお、例えば、測定によって得られた分子量校正曲線が極大ピークを2つ有する場合は、2種類の異なる重量平均分子量を有するセルロース樹脂の混合物であることを意味し、2つの極大ピークそれぞれに基づいて2種類の異なる重量平均分子量を算出する。分子量校正曲線が極大ピークを3つ以上有する場合も同様である。
また、特定セルロース樹脂の含有量は、前記の通り、樹脂組成物全体に対して70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
なお、樹脂組成物が2種以上の異なる重量平均分子量を有する特定セルロース樹脂を含有する場合、前記特定セルロースの含有量は、前記2種以上の異なる重量平均分子量を有する特定セルロース樹脂における各含有量の合計(特定セルロース樹脂の総含有量)を意味する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、主成分として特定セルロース樹脂を含有していればよく、必要に応じて、さらに他の成分(特定セルロース樹脂以外の成分)を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、難燃剤、相溶化剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミナ、ボロンナイトライド等)などが挙げられる。
他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂等が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリエーテルスルフォン樹脂;ポリアリーレン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリケトン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリアリールケトン樹脂;ポリエーテルニトリル樹脂;液晶樹脂;ポリベンズイミダゾール樹脂;ポリパラバン酸樹脂;芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及びシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂;ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;シアン化ビニル−ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂;シアン化ビニル−(エチレン−ジエン−プロピレン(EPDM))−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;ポリオレフィン;塩化ビニル樹脂;塩素化塩化ビニル樹脂;等のほか、セルロースエステル樹脂等のセルロース樹脂誘導体;重量平均分子量が前記範囲から外れる無置換のセルロース樹脂;等が挙げられる。これら他の樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物に必要に応じて含有される他の成分の一例として、可塑剤として用いられるアジピン酸エステル含有化合物について説明する。
樹脂組成物がアジピン酸エステル含有化合物を含有することで、アジピン酸エステルとセルロースとの高い親和性により、樹脂組成物全体の熱流動性が向上する。
但し、アジピン酸エステル含有化合物は、アジピン酸エステルをアジピン酸エステル含有化合物の全成分に対して50質量%以上で含むことがよい。アジピン酸エステルをアジピン酸エステル含有化合物の全成分に対して50質量%以上含むことで、樹脂組成物の熱可塑性向上効果が得られやすくなる。
R6は、アルキレン基を表す。
m1は、1以上20以下の整数を表す。
m2は、1以上10以下の整数を表す。
一般式(2−1)および(2−2)中、R4およびR5が表すポリオキシアルキル基[−(CxH2X−O)y−RA1]において、RA1が表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基が望ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより望ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が望ましい。
xは、1以上10以下の整数を表すことが望ましい。yは、1以上10以下の整数を表すことが望ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上記成分の混合物を溶融混練することにより製造される。ほかに、本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上記成分を溶剤に溶解することにより製造される。溶融混練の手段としては公知の手段が挙げられ、具体的には例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
具体的には、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を成形して得られる。成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
なお、射出成形のシリンダ温度は、例えば200℃以上270℃以下であり、望ましくは210℃以上230℃以下である。射出成形の金型温度は、例えば40℃以上120℃以下であり、45℃以上90℃以下がより望ましい。射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
セルロース(日本製紙社製KCフロックW50)2kgを、0.1M塩酸水溶液20L中に入れ、室温(25℃)で攪拌した。表1に示す攪拌時間とすることで、それぞれの重量平均分子量のセルロース樹脂(化合物1〜化合物5)を得た。なお、攪拌装置として新東科学社製、製品名:EP−1800を用い、かつ攪拌の際の回転速度は500rpmに設定した。重量平均分子量については、ジメチルアセトアミド/塩化リチウム=90/10溶液を用い、GPC装置(東ソー社製、HLC−8320GPC、カラム:TSKgelα−M)にて前述の方法により測定した。
特許第5470032号公報の合成例1〜合成例6に記載の方法で得られたセルロース誘導体(C−1)〜セルロース誘導体(C−6)を、それぞれ化合物6〜化合物11とした。得られた化合物6〜化合物11について、前記方法に測定及び算出された重量平均分子量、置換基の種類、及び各置換基における置換度を示す。なお、前記置換度は、セルロースエステル樹脂のD−グルコピラノース単位に3個ある水酸基の水素原子が各置換基で置換された個数の分子内平均を意味し、表2中の括弧内の数字で表す。
化合物12及び化合物13として、それぞれ以下の化合物を用いた。
化合物12:ジメチルセルロース(ダイセル社製、L50、重量平均分子量170,000)
化合物13:アジピン酸エステル混合物(大八化学工業製、Daifatty101)
[混練]
表3(化合物1〜13)に示す組成の材料を二軸混練装置(東芝機械製TEX41SS)に投入し、表3に示す混錬温度において混錬し、樹脂組成物のペレット(以下「樹脂ペレット」と称する)を得た。なお、表3中、「量」は、添加量(質量部)を意味し、「−」は当該成分を含まないことを意味する。
ただし、比較例1においては、混錬温度を300℃まで上げても化合物1が溶融せず、混錬不可だった。また、比較例5〜比較例10においては、それぞれ化合物6〜化合物11(100質量部)をそのまま混錬した。
比較例1を除き、得られた樹脂ペレットを射出成形機(日精樹脂工業製、PNX40)に投入し、表3に示す射出成形条件(シリンダ温度及び金型温度)で射出成形し、D2試験片(長さ60mm、幅60mm、厚み2mm)を得た。
得られたD2試験片について、次の評価を行った。結果を表3に示す。
得られたD2試験片を65℃/85%RHの環境にした恒温恒湿槽に宙づりで静置し、24時間後の長さ方向(MD方向)、幅方向(TD方向)の寸法変化率を顕微測長装置(オリンパス製、STM6−LM)により測定した。
なお、表3に示す吸水寸法変化率は、恒温恒湿槽に静置する前の長さ(MD方向)及び幅(TD方向)をそれぞれ100(%)としたとき、MD方向において変化した割合(%)とTD方向において変化した割合(%)とを平均した値(%)である。
Claims (4)
- 重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を含有し、樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が70質量%以上である射出成形用の樹脂組成物。
- 樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が80質量%以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を樹脂組成物全体に対して70質量%以上含有する樹脂組成物を含み、前記樹脂組成物が射出成形された樹脂成形体。
- 前記樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が80質量%以上である請求項3に記載の樹脂成形体。
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