JP6070746B2 - 樹脂組成物及び樹脂成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂組成物及び樹脂成形体に関する。
特許文献1には、セルロースエステル100質量部に対して、可塑剤2〜100質量部、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含むコアシェル構造の熱可塑性エラストマー1〜50質量部を含有するセルロースエステル組成物が開示されている。
特許文献2には、A)炭化水素基、アシル基とアルキレンオキシ基とを含む基、及び、アシル基を有する水に不溶なセルロース誘導体を含有する、熱成形材料が開示されている。
特開2014−084343号公報 特開2011−057959号公報
本発明の課題は、樹脂として重量平均分子量7万5000を超える無置換のセルロース樹脂又は重量平均分子量7万5000を超えるセルロースエステル樹脂のみを含有する場合に比べ、吸水による寸法変化が小さい樹脂成形体が得られる樹脂組成物を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1に係る発明は、
重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を含有し、樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が70質量%以上であ射出成形用の樹脂組成物である。
請求項2に係る発明は、
樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が80質量%以上である請求項1に記載の樹脂組成物である。
請求項3に係る発明は、
重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を樹脂組成物全体に対して70質量%以上含有する樹脂組成物を含み、前記樹脂組成物が射出成形された樹脂成形体である。
請求項4に係る発明は、
前記樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が80質量%以上である請求項3に記載の樹脂成形体である。
請求項1に係る発明によれば、樹脂として重量平均分子量7万5000を超える無置換のセルロース樹脂又は重量平均分子量7万5000を超えるセルロースエステル樹脂のみを含有する場合に比べ、吸水による寸法変化が小さい樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、樹脂組成物全体に対する重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂の含有量が70質量%未満である場合に比べ、吸水による寸法変化が小さい樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項3に係る発明によれば、樹脂として重量平均分子量7万5000を超える無置換のセルロース樹脂又は重量平均分子量7万5000を超えるセルロースエステル樹脂のみを含有する樹脂組成物を用いた場合に比べ、吸水による寸法変化が小さい樹脂成形体が提供される。
以下に、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を含有する。以下、重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を「特定セルロース樹脂」と称する場合がある。
なお、本実施形態に係る樹脂組成物は、特定セルロース樹脂を主成分として含有する。主成分とは、樹脂組成物に含まれる各成分の中で最も含有割合(質量基準)が大きい成分を言う。
本実施形態に係る樹脂組成物は、特定セルロース樹脂を含有することにより、樹脂として重量平均分子量7万5000を超える無置換のセルロース樹脂又は重量平均分子量7万5000を超えるセルロースエステル樹脂のみを含有する場合に比べ、吸水による寸法変化が小さい樹脂成形体が得られる。この理由は定かではないが、次の通りと考える。
一般的に天然の植物等から抽出されるセルロース樹脂は、重量平均分子量が20万程度のものが多い。重量平均分子量が大きな(特に7万5000を超える)セルロース樹脂は、化学構造が剛直であり、分子内及び分子間水素結合力が強いことから、熱流動性が低く、そのまま射出成形等の樹脂成形に用いることは難しい。セルロース樹脂を成形する方法として、例えば、セルロース樹脂の水酸基を置換しセルロースエステル樹脂にして融解温度を下げ、熱流動性を向上させる方法、無置換のセルロース樹脂に可塑剤を添加して熱流動性を向上させる方法、等が用いられてきた。
しかしながら、セルロースエステル樹脂や重量平均分子量が7万5000を超える無置換のセルロース樹脂は、成形によって得られた樹脂成型体の吸水性が高く、吸水による成形体の寸法変化が起こりやすいことが分かってきた。
これに対して本実施形態では、特定セルロース樹脂を主成分として含有する。特定セルロース樹脂は、重量平均分子量が7万5000を超えるセルロース樹脂に比べて分子量が小さいため、末端に位置する水酸基(以下「末端水酸基」と称する場合がある)の数が多く、多くの水素結合により強固に結合される。また、特定セルロース樹脂は、水酸基が置換されたセルロースエステル樹脂に比べても、水酸基全体の数が多く、多くの水素結合により強固に結合される。このように、特定セルロース樹脂では、強固な水素結合により、水分子がセルロース分子間に入り込みにくく、吸水による寸法変化が起こりにくいと考えられる。
以上の理由から、本実施形態の樹脂組成物を用いた樹脂成型体は、重量平均分子量7万5000を超える無置換のセルロース樹脂又はセルロースエステル樹脂を主成分として含む樹脂組成物を用いた場合に比べ、吸水による成形体の寸法変化が小さいと推測される。
また、重量平均分子量が1万未満である無置換のセルロース樹脂では、水酸基が多すぎるため、強固な水素結合による水分子の進入阻害よりも水酸基の水分子への親和性の方が勝り、結果として、吸水量が高まり、寸法変化が大きくなる場合がある。
しかしながら本実施形態の樹脂組成物は、特定セルロース樹脂を主成分として含有するため、重量平均分子量が1万未満である無置換のセルロース樹脂を主成分として含有する場合に比べ、吸水による寸法変化が小さい樹脂成形体が得られると推測される。
また、特定セルロース樹脂は、従来の重量平均分子量が7万5000を超える無置換のセルロース樹脂とは異なり、分子量が小さいため、可塑剤を添加しなくても熱可塑性を有する。そのため本実施形態の樹脂組成物では、可塑剤を含んでいなくても樹脂成形体が形成される。特に可塑剤が吸水性を有する場合は、特性セルロース樹脂を含み、かつ、前記可塑剤を含まない樹脂組成物を用いることで、前記可塑剤に起因する吸水による寸法変化が抑制される。
本実施形態では、樹脂組成物全体に対する特定セルロース樹脂の含有量(以下、単に「特定セルロース樹脂の含有量」と称する場合がある)が70質量%以上であることが望ましい。特定セルロース樹脂の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて、吸水による寸法変化が小さい樹脂成形体が得られる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
特定セルロース樹脂の含有量が上記範囲であると、上記範囲よりも少ない場合に比べて、特定セルロース樹脂以外の成分(以下「他の成分」と称する場合がある)によって特定セルロース樹脂の水素結合が弱められることが起こりにくくなる。他の成分による水素結合の弱化が起こりにくいと、水素結合の弱化に起因してセルロースの分子間に水分子が入り込みやすくなることも起こりにくくなる。そして、セルロースの分子間に水分子が入り込みやすくなることに起因する吸水による寸法変化も起こりにくくなる。以上の理由により、特定セルロース樹脂の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて、吸水による寸法変化が小さい樹脂成形体が得られると推測される。
以下、本実施形態に係る樹脂組成物の成分を詳細に説明する。
[特定セルロース樹脂]
本実施形態に係る樹脂組成物は、重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂(特定セルロース樹脂)を含有する。特定セルロース樹脂として具体的には、例えば、一般式(1)で表され、かつ、重量平均分子量が1万以上7万5000以下の樹脂が挙げられる。なお、下記一般式(1)中、nは1以上の整数である。
特定セルロース樹脂の重量平均分子量(Mw)は、前記の通り、1万以上7万5000以下であり、吸水による寸法変化をさらに抑制する観点から、2万以上6万以下が好ましく、3万以上5万以下がより好ましい。
セルロース樹脂の分子量を調整する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば市販のセルロースを液体中で攪拌することで分子量を低下させる方法が挙げられる。
攪拌の際の速度や時間等を調整することで、セルロースの分子量を求める値に調整される。なお、特に限定されるものではないが、攪拌の際の攪拌速度としては50rpm以上3000rpm以下の範囲が好ましく、100rpm以上1000rpm以下がより好ましい。また、攪拌時間は2時間以上48時間以下の範囲が好ましく、5時間以上24時間以下がより好ましい。
なお、攪拌の際に用いられる液体は、塩酸水溶液、ギ酸水溶液、酢酸水溶液、硝酸水溶液、硫酸水溶液などが挙げられる。
ここで、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される値である。具体的には、GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製、HLC−8320GPCを用い、東ソー製カラム「TSKgelα−M」を使用し、溶媒としてジメチルアセトアミド/塩化リチウム=90/10溶液を用いて測定を行う。なお、測定条件は、測定温度40℃、流速1.0ml/min、試料濃度0.1質量%、RI検出である。
そして、重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。具体的には、分子量校正曲線の各極大ピークに基づいて重量平均分子量を算出する。つまり、「重量平均分子量が1万以上7万5000以下のセルロース樹脂」とは、分子量校正曲線における1つの極大ピークから算出される重量平均分子量が1万以上7万5000以下の範囲であるセルロース樹脂を意味する。
なお、例えば、測定によって得られた分子量校正曲線が極大ピークを2つ有する場合は、2種類の異なる重量平均分子量を有するセルロース樹脂の混合物であることを意味し、2つの極大ピークそれぞれに基づいて2種類の異なる重量平均分子量を算出する。分子量校正曲線が極大ピークを3つ以上有する場合も同様である。
樹脂組成物は、特定セルロース樹脂を1種のみ含有してもよく、2種以上の異なる重量平均分子量を有する特定セルロース樹脂を含有していてもよい。
また、特定セルロース樹脂の含有量は、前記の通り、樹脂組成物全体に対して70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
なお、樹脂組成物が2種以上の異なる重量平均分子量を有する特定セルロース樹脂を含有する場合、前記特定セルロースの含有量は、前記2種以上の異なる重量平均分子量を有する特定セルロース樹脂における各含有量の合計(特定セルロース樹脂の総含有量)を意味する。
[他の成分]
本実施形態に係る樹脂組成物は、主成分として特定セルロース樹脂を含有していればよく、必要に応じて、さらに他の成分(特定セルロース樹脂以外の成分)を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、難燃剤、相溶化剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミナ、ボロンナイトライド等)などが挙げられる。
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、他の成分として、必要に応じて特定セルロース樹脂以外の樹脂(以下「他の樹脂」と称する場合がある)を含有してもよい。但し、樹脂組成物が他の樹脂を含む場合は、特定セルロース樹脂の総含有量が、樹脂組成物に含まれる樹脂全体に対して70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂等が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリエーテルスルフォン樹脂;ポリアリーレン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリケトン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリアリールケトン樹脂;ポリエーテルニトリル樹脂;液晶樹脂;ポリベンズイミダゾール樹脂;ポリパラバン酸樹脂;芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及びシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂;ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;シアン化ビニル−ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂;シアン化ビニル−(エチレン−ジエン−プロピレン(EPDM))−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;ポリオレフィン;塩化ビニル樹脂;塩素化塩化ビニル樹脂;等のほか、セルロースエステル樹脂等のセルロース樹脂誘導体;重量平均分子量が前記範囲から外れる無置換のセルロース樹脂;等が挙げられる。これら他の樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
−アジピン酸エステル含有化合物−
樹脂組成物に必要に応じて含有される他の成分の一例として、可塑剤として用いられるアジピン酸エステル含有化合物について説明する。
樹脂組成物がアジピン酸エステル含有化合物を含有することで、アジピン酸エステルとセルロースとの高い親和性により、樹脂組成物全体の熱流動性が向上する。
ここで、アジピン酸エステル含有化合物(アジピン酸エステルを含む化合物)とは、アジピン酸エステル単独の化合物、または、アジピン酸エステルとアジピン酸エステル以外の成分(アジピン酸エステルとは異なる化合物)との混合物であることを示す。
但し、アジピン酸エステル含有化合物は、アジピン酸エステルをアジピン酸エステル含有化合物の全成分に対して50質量%以上で含むことがよい。アジピン酸エステルをアジピン酸エステル含有化合物の全成分に対して50質量%以上含むことで、樹脂組成物の熱可塑性向上効果が得られやすくなる。
また、アジピン酸エステル含有化合物の含有量は、樹脂組成物全体に対し、10質量%以下であることが好ましい。アジピン酸エステル含有化合物の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも多い場合に比べて、アジピン酸エステルによる特定セルロース樹脂における水素結合の弱化が起こりにくく、吸水による成形体の寸法変化が小さくなると考えられる。
アジピン酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ジエステル、アジピン酸ポリエステルが挙げられる。具体的には、一般式(2−1)で示されるアジピン酸ジエステル、下記一般式(2−2)で示されるアジピン酸ポリエステル等が挙げられる。
一般式(2−1)および(2−2)中、RおよびRは、各々独立に、アルキル基、ポリオキシアルキル基[−(C2X−O)−RA1](但し、RA1は、アルキル基を表す。xは1以上10以下の整数を表す。yは1以上10以下の整数を表す。)を表す。
は、アルキレン基を表す。
m1は、1以上20以下の整数を表す。
m2は、1以上10以下の整数を表す。
一般式(2−1)および(2−2)中、RおよびRが表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基が望ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより望ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が望ましい。
一般式(2−1)および(2−2)中、RおよびRが表すポリオキシアルキル基[−(C2X−O)−RA1]において、RA1が表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基が望ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより望ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が望ましい。
xは、1以上10以下の整数を表すことが望ましい。yは、1以上10以下の整数を表すことが望ましい。
一般式(2−1)および(2−2)中、Rが表すアルキレン基は、炭素数1以上6以下のアルキレン基が望ましく、炭素数1以上4以下のアルキレン基がより望ましい。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が望ましい。
一般式(2−1)および(2−2)中、各符号が表す基は、置換基で置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基等が挙げられる。
アジピン酸エステルの分子量(または重量平均分子量)は、200以上5000以下が望ましく、300以上2000以下がより望ましい。なお、重量平均分子量は、前述のセルロース樹脂の重量平均分子量と同様の測定方法により測定された値である。
以下、アジピン酸エステル含有化合物の具体例を示すが、これに限られるわけではない。
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上記成分の混合物を溶融混練することにより製造される。ほかに、本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上記成分を溶剤に溶解することにより製造される。溶融混練の手段としては公知の手段が挙げられ、具体的には例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
<樹脂成形体>
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
具体的には、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を成形して得られる。成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
本実施形態に係る樹脂成形体の成形方法は、形状の自由度が高い点で、射出成形が望ましい。特に、本実施形態に係る樹脂組成物の成形性(熱可塑性、及び流動性)を生かし、表面光沢性に優れた樹脂成形体を得る点から、射出成形を適用することがよい。射出成形により得られた樹脂成形体である射出成形体は、樹脂組成物を加熱溶融し、金型に流し込み、固化させることで得られる。
なお、射出成形のシリンダ温度は、例えば200℃以上270℃以下であり、望ましくは210℃以上230℃以下である。射出成形の金型温度は、例えば40℃以上120℃以下であり、45℃以上90℃以下がより望ましい。射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、事務機器、家電製品、自動車、容器などの用途に好適に用いられる。より具体的には、電子・電気機器や家電製品の筐体;電子・電気機器や家電製品の装飾部品等の各種部品;自動車の内装部品、エンジンカバー、車体等;CD−ROMやDVD等の収納ケース;食器;飲料ボトル;食品トレイ;ラップ材;フィルム;シート;などである。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
<セルロース樹脂(化合物1〜化合物5)の作製>
セルロース(日本製紙社製KCフロックW50)2kgを、0.1M塩酸水溶液20L中に入れ、室温(25℃)で攪拌した。表1に示す攪拌時間とすることで、それぞれの重量平均分子量のセルロース樹脂(化合物1〜化合物5)を得た。なお、攪拌装置として新東科学社製、製品名:EP−1800を用い、かつ攪拌の際の回転速度は500rpmに設定した。重量平均分子量については、ジメチルアセトアミド/塩化リチウム=90/10溶液を用い、GPC装置(東ソー社製、HLC−8320GPC、カラム:TSKgelα−M)にて前述の方法により測定した。
<化合物6〜化合物11の作製>
特許第5470032号公報の合成例1〜合成例6に記載の方法で得られたセルロース誘導体(C−1)〜セルロース誘導体(C−6)を、それぞれ化合物6〜化合物11とした。得られた化合物6〜化合物11について、前記方法に測定及び算出された重量平均分子量、置換基の種類、及び各置換基における置換度を示す。なお、前記置換度は、セルロースエステル樹脂のD−グルコピラノース単位に3個ある水酸基の水素原子が各置換基で置換された個数の分子内平均を意味し、表2中の括弧内の数字で表す。
<化合物12〜化合物13>
化合物12及び化合物13として、それぞれ以下の化合物を用いた。
化合物12:ジメチルセルロース(ダイセル社製、L50、重量平均分子量170,000)
化合物13:アジピン酸エステル混合物(大八化学工業製、Daifatty101)
<実施例及び比較例>
[混練]
表3(化合物1〜13)に示す組成の材料を二軸混練装置(東芝機械製TEX41SS)に投入し、表3に示す混錬温度において混錬し、樹脂組成物のペレット(以下「樹脂ペレット」と称する)を得た。なお、表3中、「量」は、添加量(質量部)を意味し、「−」は当該成分を含まないことを意味する。
ただし、比較例1においては、混錬温度を300℃まで上げても化合物1が溶融せず、混錬不可だった。また、比較例5〜比較例10においては、それぞれ化合物6〜化合物11(100質量部)をそのまま混錬した。
[射出成形]
比較例1を除き、得られた樹脂ペレットを射出成形機(日精樹脂工業製、PNX40)に投入し、表3に示す射出成形条件(シリンダ温度及び金型温度)で射出成形し、D2試験片(長さ60mm、幅60mm、厚み2mm)を得た。
[評価]
得られたD2試験片について、次の評価を行った。結果を表3に示す。
−吸水寸法変化−
得られたD2試験片を65℃/85%RHの環境にした恒温恒湿槽に宙づりで静置し、24時間後の長さ方向(MD方向)、幅方向(TD方向)の寸法変化率を顕微測長装置(オリンパス製、STM6−LM)により測定した。
なお、表3に示す吸水寸法変化率は、恒温恒湿槽に静置する前の長さ(MD方向)及び幅(TD方向)をそれぞれ100(%)としたとき、MD方向において変化した割合(%)とTD方向において変化した割合(%)とを平均した値(%)である。
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、吸水寸法変化率が小さいことがわかる。

Claims (4)

  1. 重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を含有し、樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が70質量%以上であ射出成形用の樹脂組成物。
  2. 樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が80質量%以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 重量平均分子量が1万以上7万5000以下の無置換のセルロース樹脂を樹脂組成物全体に対して70質量%以上含有する樹脂組成物を含み、前記樹脂組成物が射出成形された樹脂成形体。
  4. 前記樹脂組成物全体に対する前記セルロース樹脂の含有量が80質量%以上である請求項3に記載の樹脂成形体。
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