JP2016183278A - 樹脂組成物、樹脂成形体の製造方法、及び樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロース誘導体を含み、JIS7152−3(2005年)に規定されたJIS金型タイプD2を用いて樹脂組成物を射出成形して得られたD2試験片を温度65℃湿度85%RHの環境でアルミ板上に24時間維持した後の吸水反り量が0.3mm以下である樹脂組成物である。
【選択図】なし
Description
近年では植物由来の樹脂が利用されており、従来から知られている植物由来の樹脂の一つにセルロース誘導体がある。
セルロース誘導体を含み、JIS7152−3(2005年)に規定されたJIS金型タイプD2を用いて樹脂組成物を射出成形して得られたD2試験片を温度65℃湿度85%RHの環境でアルミ板上に24時間維持した後の吸水反り量が0.3mm以下である樹脂組成物である。
前記セルロース誘導体の重量平均分子量が、1万以上7.5万未満である請求項1に記載の樹脂組成物である。
前記セルロース誘導体が、セルロースの水酸基の一部がアシル基で置換されたセルロース誘導体であり、該アシル基の置換度が1.8以上2.5以下である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物である。
前記セルロース誘導体の樹脂組成物全体に占める比率が70質量%以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、射出速度が10mm/s以上400mm/s以下、保持圧力が5MPa以上200MPa以下である条件で射出成形して樹脂成形体を得る、射出成形工程を有する樹脂成形体の製造方法である。
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する樹脂成形体である。
射出成形により成形された請求項6に記載の樹脂成形体である。
本実施形態に係る樹脂組成物は、セルロース樹脂における水酸基の少なくとも一部が置換されたセルロース誘導体を含む。また、本実施形態に係る樹脂組成物は、JIS7152−3(2005年)に規定されたJIS金型タイプD2を用いて射出成形により得られたD2試験片を温度65℃湿度85%RHの環境でアルミ板上に24時間維持した後の吸水反り量(以下、単に「吸水反り量」と称する場合がある)が0.3mm以下となるものである。
なお、本実施形態に係る樹脂組成物は、セルロース誘導体を主成分として含む。主成分とは、樹脂組成物に含まれる各成分の中で最も含有割合(質量基準)が大きい成分を言う。
具体的には、まず、測定対象となる樹脂組成物を、JIS7152−3(2005年)に規定されたJIS金型タイプD2を用いて、射出速度50mm/s、保持圧力80MPa、充填圧力100MPa、射出時間10秒、シリンダ温度200℃、金型温度40℃の条件にて射出成形を行い、D2試験片(長さ60mm、幅60mm、厚み2mmの試験片)を得る。
つまり本実施形態では、吸水反り量が0.3mmを超える場合に比べて、D2試験片における吸水量の多い箇所と吸水量の少ない箇所とにおける吸水量の差が小さい。そして、吸水量の多い箇所と吸水量の少ない箇所とにおける吸水量の差が小さいD2試験片では、D2試験片全体にわたって均一に近い状態で吸水する。
つまり、吸水量が全体にわたって均一に近いD2試験片では、吸水量の多い箇所による局所的な膨張が起こりにくい。そして、吸水量の多い箇所による局所的な膨張が起こりにくいD2試験片では、局所的な膨張に起因するひずみが生じにくい。また、局所的な膨張に起因するひずみが生じにくいと、ひずみが生じた箇所における応力が端部に逃れることに起因する端部の反りが起こりにくく、吸水反り量が小さくなる。
具体的には、例えば成形時に射出方向(MD方向)に分子鎖が配向する場合、分子鎖と垂直な方向(MD方向と垂直な方向であるTD方向)には収縮が起こりやすく、分子鎖の方向(MD方向)には収縮が起こりにくくなると考えられる。このように、方向によって収縮率が異なると、結果として得られた樹脂成形体の寸法と金型の空洞の寸法との差が方向によって異なることになり、成形収縮率の異方性が大きくなる。
これに対して、成形時における分子鎖の配向がランダムな場合は、方向による収縮率の差が小さくなり、成形収縮率の異方性が小さくなると考えられる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、セルロース樹脂における水酸基の少なくとも一部が置換されたセルロース誘導体を含む。
セルロース誘導体は、セルロース樹脂における水酸基の少なくとも一部が置換された化合物であり、かつ、セルロース誘導体を含む樹脂組成物における吸水反り量が0.3mm以下となるものであれば、特に限定されない。
以下、重量平均分子量が1万以上7万5000未満であるセルロース誘導体(以下、「特定のセルロース誘導体」と称する場合がある)について詳細に説明する。
本実施形態に用いられる特定のセルロース誘導体は、重量平均分子量が1万以上7.5万未満である。この重量平均分子量は、更に2万以上5万以下が好ましい。
重量平均分子量が1万以上7.5万未満であることで、成形収縮率の異方性が小さい。その理由は定かではないが、重量平均分子量が前記範囲であることで、前記範囲から外れた場合に比べ、適度に分子鎖が短くなることにより、成形時において分子鎖がランダムに配向しやすいためであると推測される。
特定のセルロース誘導体として具体的には、例えば、セルロースが有する水酸基の少なくとも一部をアシル基にて置換した化合物であることが好ましく、具体的には、例えば、一般式(1)で表されるセルロース誘導体が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物中に、アシル基が複数存在する場合には、それぞれのアシル基は、同じであってもよいし、一部が同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
nを250以上にすると、樹脂成形体の強度が高まりやすくなる。nを750以下にすると、樹脂成形体の柔軟性の低下が抑制されやすくなる。
前記一般式(1)で表される構造を有するセルロース誘導体の場合、n個のR1、n個のR2、及びn個のR3のうちの少なくとも一部が炭素数1以上6以下のアシル基を表す。
一般式(1)で表されるセルロース誘導体中にn個あるR1は、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。同様に、n個あるR2、及びn個あるR3も、それぞれ、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。そして、これらのうちの少なくとも一部が炭素数1以上6以下のアシル基を表す。
特定のセルロース誘導体が有するアシル基の炭素数は、更に1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましい。
RACで表される炭化水素基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状であることがより好ましい。
また前記炭化水素基は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよいが、飽和炭化水素基であることがより好ましい。
また前記炭化水素基は、炭素及び水素以外の他の原子(例えば酸素、窒素等)を有していてもよいが、炭素及び水素のみからなる炭化水素基であることがより好ましい。
これらの中でもアシル基としては、成形収縮率の異方性を小さくする観点、及び樹脂組成物の成形性の向上の観点から、アセチル基が好ましい。
特定のセルロース誘導体の置換度は、1.8以上2.5以下であることが好ましい。更には2以上2.5以下がより好ましく、2.2以上2.5以下が更に好ましい。
置換度が1.8以上2.5以下であることにより、1.8より小さい場合及び2.5より大きい場合に比べ、成形収縮率の異方性が小さい。その理由は定かではないが、置換度が1.8以上2.5以下であると、1.8より小さい場合に比べて水素結合が弱く、成形時に分子鎖の配向がランダムに近くなりやすいためであると推測される。また、置換度が1.8以上2.5以下であると、2.5より大きい場合に比べて分子鎖のパッキングが起こりにくいことで、同様に成形時に分子鎖の配向がランダムになりやすいためであると推測される。
本実施形態に用いられるセルロース誘導体の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。
以下、重量平均分子量が1万以上7.5万未満であり、セルロースの水酸基の一部が炭素数1以上6以下のアシル基で置換された特定セルロース誘導体の製造方法について、例を挙げて説明する。
まず、アシル化前のセルロース、つまり水酸基がアシル基で置換されていないセルロースを準備し、その分子量を調整する。
前記アシル化前のセルロースの市販品としては、例えば、日本製紙社製のKCフロックW50、W100、W200、W300G、W400G、W−100F、W60MG、W−50GK、W−100GK、NDPT、NDPS、LNDP、NSPP−HR等が挙げられる。
攪拌の際の速度や時間等を調整することで、セルロースの分子量を求める値に調整される。なお、特に限定されるものではないが、攪拌の際の攪拌速度としては50rpm以上3000rpm以下の範囲が好ましく、100rpm以上1000rpm以下がより好ましい。また、攪拌時間は2時間以上48時間以下の範囲が好ましく、5時間以上24時間以下がより好ましい。
なお、攪拌の際に用いられる液体は、塩酸水溶液、ギ酸水溶液、酢酸水溶液、硝酸水溶液、硫酸水溶液などが挙げられる。
上記の方法などによって分子量を調整したセルロースを、公知の方法により炭素数1以上6以下のアシル基でアシル化することで、特定のセルロース誘導体が得られる。
例えば、前記セルロースが有する水酸基の一部をアセチル基で置換する場合であれば、酢酸、無水酢酸及び硫酸の混合物を用いてセルロースをエステル化する方法等が挙げられる。また、プロピオニル基で置換する場合であれば前記混合物の無水酢酸に代えて無水プロピオン酸を用いてエステル化する方法が、ブタノイル基で置換する場合であれば前記混合物の無水酢酸に代えて無水ブチル酸を用いてエステル化する方法が、ヘキサノイル基で置換する場合であれば前記混合物の無水酢酸に代えて無水ヘキシル酸を用いてエステル化する方法が、それぞれ挙げられる。
本実施形態に係る樹脂組成物では、セルロース誘導体の有する機能を発現し易くするため、セルロース誘導体の樹脂組成物全体に占める比率が70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
該比率が70質量%以上であることにより、成形収縮率の異方性が小さい樹脂成形体が得られやすい。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
以上の理由により、セルロース誘導体の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて、成形収縮率の異方性が小さい樹脂成形体が得られると推測される。
本実施形態に係る樹脂組成物は、更に可塑剤を含んでもよい。
なお、可塑剤の含有量は、樹脂組成物全体に占める特定のセルロース誘導体の比率が前述の範囲となる量とすることが好ましい。より具体的には、樹脂組成物全体に占める可塑剤の比率は15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。可塑剤の比率が上記範囲であることにより、弾性率がより高くなり、耐熱性もより高くなる。また、可塑剤のブリードも抑制される。
これらの中でも、アジピン酸エステル含有化合物、ポリエーテルエステル化合物が好ましく、アジピン酸エステル含有化合物がより好ましい。
アジピン酸エステル含有化合物(アジピン酸エステルを含む化合物)とは、アジピン酸エステル単独の化合物、又は、アジピン酸エステルとアジピン酸エステル以外の成分(アジピン酸エステルとは異なる化合物)との混合物であることを示す。但し、アジピン酸エステル含有化合物は、アジピン酸エステルを全成分に対して50質量%以上で含むことがよい。
R6は、アルキレン基を表す。
m1は、1以上20以下の整数を表す。
m2は、1以上10以下の整数を表す。
一般式(2−1)及び(2−2)中、R4及びR5が表すポリオキシアルキル基[−(CxH2X−O)y−RA1]において、RA1が表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましい。RA1が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。
ポリエーテルエステル化合物として具体的には、例えば、一般式(2)で表されるポリエーテルエステル化合物が挙げられる。
R4が表すアルキレン基の炭素数を3以上にすると、樹脂組成物の流動性の低下が抑制され、熱可塑性が発現しやすくなる。R4が表すアルキレン基の炭素数を10以下又はR4が表すアルキレン基を直鎖状にすると、セルロース誘導体との親和性が高まりやすくなる。このため、R4が表すアルキレン基を直鎖状とし、且つ炭素数を上記範囲とすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
これら観点から、特に、R4が表すアルキレン基は、n−ヘキシレン基(−(CH2)6−)が好ましい。つまり、ポリエーテルエステル化合物は、R4としてn−ヘキシレン基(−(CH2)6−)を表す化合物であることが好ましい。
R5が表すアルキレン基の炭素数を3以上にすると、樹脂組成物の流動性の低下が抑制され、熱可塑性が発現しやすくなる。R5が表すアルキレン基の炭素数を10以下又はR5が表すアルキレン基を直鎖状にすると、セルロース誘導体との親和性が高まりやすくなる。このため、R5が表すアルキレン基を直鎖状とし、且つ炭素数を上記範囲とすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
これら観点から、特に、R5が表すアルキレン基は、n−ブチレン基(−(CH2)4−)が好ましい。つまり、ポリエーテルエステル化合物は、R5としてn−ブチレン基(−(CH2)4−)を表す化合物であることが好ましい。
A1、及びA2が表すアリール基は、炭素数6以上12以下のアリール基であり、フェニル基、ナフチル基等の無置換アリール基;t−ブチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基等の置換フェニル基が挙げられる。
A1、及びA2が表すアラルキル基としては、−RA−Phで示される基である。RAは、直鎖状又は分岐状の炭素数1以上6以下(好ましくは炭素数2以上4以下)のアルキレン基を表す。Phは、無置換フェニル基、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1以上6以下(好ましくは炭素数2以上6以下)のアルキル基で置換された置換フェニル基を表す。アラルキル基として具体的には、例えば、ベンジル基、フェニルメチル基(フェネチル基)、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等の無置換アラルキル基、又はメチルベンジル基、ジメチルベンジル基、メチルフェネチル基等の置換アラルキル基が挙げられる。
重量平均分子量(Mw)を450以上にすると、ブリード(析出する現象)し難くなる。重量平均分子量(Mw)を650以下にすると、セルロース誘導体との親和性が高まりやすくなる。このため、重量平均分子量(Mw)を上記範囲にすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
なお、ポリエーテルエステル化合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される値である。具体的には、GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー社製、HPLC1100を用い、東ソー製カラム・TSKgel GMHHR−M+TSKgel GMHHR−M(7.8mmI.D.30cm)を使用し、クロロホルム溶媒で行う。そして、重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
粘度を35mPa・s以上にすると、セルロース誘導体への分散性が向上しやすくなる。粘度を50mPa・s以下にすると、ポリエーテルエステル化合物の分散の異方性が出現し難くなる。このため、粘度を上記範囲にすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
なお、粘度は、E型粘度計により測定される値である。
溶解度パラメータ(SP値)を9.5以上9.9以下にすると、セルロース誘導体への分散性が向上しやすくなる。
溶解度パラメータ(SP値)は、Fedorの方法により算出された値である、具体的には、溶解度パラメータ(SP値)は、例えば、Polym.Eng.Sci.,vol.14,p.147(1974)の記載に準拠し、下記式によりSP値を算出する。
式:SP値=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi)
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm3/mol)、Δei:それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:それぞれの原子又は原子団のモル体積)
なお、溶解度パラメータ(SP値)は、単位として(cal/cm3)1/2を採用するが、慣行に従い単位を省略し、無次元で表記する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、上述した以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、難燃剤、相溶化剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミナ、ボロンナイトライド等)などが挙げられる。これらの成分の含有量は、樹脂組成物全体に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリエーテルスルフォン樹脂;ポリアリーレン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリケトン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリアリールケトン樹脂;ポリエーテルニトリル樹脂;液晶樹脂;ポリベンズイミダゾール樹脂;ポリパラバン酸樹脂;芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及びシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂;ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;シアン化ビニル−ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂;シアン化ビニル−(エチレン−ジエン−プロピレン(EPDM))−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;塩化ビニル樹脂;塩素化塩化ビニル樹脂;などが挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、前記特定のセルロース誘導体、又は特定のセルロース誘導体と上記成分との混合物を溶融混練することにより製造される。ほかに、本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上記成分を溶剤に溶解することにより製造される。溶融混練の手段としては公知の手段が挙げられ、具体的には例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
なお、混練の際の温度は、使用するセルロース誘導体の溶融温度に応じて決定されればよいが、熱分解と流動性の点から、例えば、140℃以上240℃以下が好ましく、160℃以上200℃以下がより好ましい。
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含有する。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
具体的には、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を成形して得られる。成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
射出成形により得られた樹脂成形体である射出成形体は、樹脂組成物を加熱溶融し、金型に流し込み、固化させることで得られる。射出圧縮成形によって成形してもよい。
ここで、「射出速度」とは、樹脂を金型に充填する流速を意味する。また、「保持圧力」とは、金型に樹脂が充填された後、保持するためにかける圧力を意味する。
さらに、保持圧力を前記範囲とすることにより、前記範囲よりも大きい(強い)場合に比べて、成形収縮率の異方性が小さくなる。その理由は定かではないが、保持圧力を小さく(弱く)することにより、金型内においてセルロース誘導体の分子鎖が一方向に配向しにくく、ランダムな状態で配向しやすいためと推測される。
また、保持圧力を前記範囲とすることにより、前記範囲よりも小さい(弱い)場合に比べて、ひけを起こしにくく外観が良好になるという利点がある。
また、充填圧力(樹脂を金型に充填させるためにかける圧力)は、10MPa以上300MPa以下が好ましく、20MPa以上250MPa以下がより好ましい。射出時間(樹脂を金型に充填する充填時間と保持圧力をかける保持時間とを合わせた時間)は、1秒以上30秒以下が好ましく、5秒以上20秒以下がより好ましい。
射出成形機としては、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置が挙げられる。
<セルロースの作製>
セルロース(日本製紙社製KCフロックW50)2kgを、0.1M塩酸水溶液20L中に入れ、室温(25℃)で攪拌した。表1に示す攪拌時間で、それぞれの重量平均分子量のセルロースを得た。なお、攪拌装置として新東科学社製、製品名:EP−1800を用い、かつ攪拌の際の回転速度は500rpmに設定した。
(アセチル化工程)
表1の化合物1を1kg、氷酢酸500gを散布して前処理活性化した。その後、氷酢酸3.8kg、無水酢酸2.4kg、及び硫酸80gの混合物を添加し、40℃以下の温度で攪拌混合しながら、化合物1のエステル化を行った。繊維片がなくなった時をエステル化終了とした。
これに酢酸2kg、水1kgを加え、室温(25℃)で2時間攪拌した。
更にこの溶液を、20kgの水酸化ナトリウムを40kgの水に溶かした溶液中に攪拌しながらゆっくりと滴下した。得られた白色沈殿を吸引ろ過し、水60kgで洗い、セルロース誘導体(化合物6)を得た。
化合物3を用い、(アセチル化工程)終了後すぐに(精製工程)を実施した以外は上記と同様にして、セルロース誘導体(化合物11)を得た。
化合物3を用い、(脱アセチル工程)の攪拌時間をそれぞれ、0.5時間、1時間、3時間、5時間、10時間に変えた以外は上記と同様にして、セルロース誘導体(化合物12)、(化合物13)、(化合物14)、(化合物15)、(化合物16)を得た。
化合物3を用い、(アセチル化工程)の無水酢酸2.4kgをそれぞれ、無水プロピオン酸2kg/無水酢酸0.3kg、無水n−ブチル酸1.8kg/無水酢酸6kg、無水n−ヘキシル酸0.5kgに変えた以外は上記と同様にして、セルロース誘導体(化合物17)、(化合物18)、(化合物19)を得た。
これらの結果を表2にまとめる。
表4及び表5に示す実施例1〜23及び比較例1〜10に示す仕込み組成比、混錬温度で、2軸混練装置(東芝機械社製、TEX41SS)にて混練を実施し、樹脂組成物ペレットを得た。
・化合物26:ジメチルセルロース(ダイセル社製、L50、重量平均分子量170,000)
・化合物27:アジピン酸エステル含有化合物(大八化学工業社製、Daifatty101)
得られたペレットについて射出成形機(日精樹脂工業社製、PNX40)を用い、射出速度150mm/s、保持圧力50MPa、充填圧力120MPa、射出時間10秒、並びに表6及び表7に示すシリンダ温度及び金型温度で、樹脂成形体(長さ60mm、幅60mm、厚み2mm)を作製した。
得られたペレットについて射出成形機(日精樹脂工業社製、PNX40)及びJIS7152−3(2005年)に規定されたJIS金型タイプD2を用い、射出速度150mm/s、保持圧力50MPa、充填圧力120MPa、射出時間10秒、シリンダ温度200℃、金型温度40℃の条件で、D2試験片(長さ60mm、幅60mm、厚み2mmの試験片)を作製した。
射出成形により得られた樹脂成形体について、成形直後(成形後20分以内)におけるMD方向及びTD方向の寸法を、顕微測長装置(オリンパス社製、STM7)により測定した。測定によって得られたMD方向の寸法及びTD方向の寸法、並びに金型の空洞の寸法(60mm)から、下記(式3)〜(式5)により、MD方向の成形収縮量、TD方向の成形収縮量、及び成形収縮率の異方性を算出した。結果を表6及び表7に示す。
(式3):MD方向の成形収縮量=金型の空洞の寸法−MD方向の寸法
(式4):TD方向の成形収縮量=金型の空洞の寸法−TD方向の寸法
(式5):成形収縮率の異方性=TD方向の成形収縮量/MD方向の成形収縮量
<ペレットの作製>
表8に示す実施例24〜26に示す仕込み組成比、シリンダ温度で、2軸混練装置(東芝機械社製、TEX41SS)にて混練を実施し、樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレットについて射出成形機(日精樹脂工業社製、PNX40)を用い、射出速度8mm/s、保持圧力210MPa、充填圧力120MPa、射出時間10秒、並びに表9に示すシリンダ温度及び金型温度で、樹脂成形体(長さ60mm、幅60mm、厚み2mm)を作製した。
実施例Aにおける吸水反り量の測定と同様にして、得られたペレットを用いてD2試験片を作製し、D2試験片を温度65℃湿度85%RHの環境でアルミ板上に24時間維持した後の吸水反り量を求めた。結果を表9に示す。
射出成形により得られた樹脂成形体について、成形直後(成形後20分以内)におけるMD方向及びTD方向の寸法を、顕微測長装置(オリンパス社製、STM7)により測定した。測定によって得られたMD方向の寸法及びTD方向の寸法、並びに金型の空洞の寸法(60mm)から、実施例Aと同様にして成形収縮率の異方性を算出した。結果を表9に示す。
また、射出速度が10mm/s以上400mm/s以下、保持圧力が5MPa以上200MPa以下である実施例Aでは、射出速度が10mm/未満、保持圧力が200MPaを超える実施例Bに比べ、得られた樹脂成形体における成形収縮率の異方性が小さいことがわかる。
Claims (7)
- セルロース誘導体を含み、JIS7152−3(2005年)に規定されたJIS金型タイプD2を用いて樹脂組成物を射出成形して得られたD2試験片を温度65℃湿度85%RHの環境でアルミ板上に24時間維持した後の吸水反り量が0.3mm以下である樹脂組成物。
- 前記セルロース誘導体の重量平均分子量が、1万以上7.5万未満である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記セルロース誘導体が、セルロースの水酸基の一部がアシル基で置換されたセルロース誘導体であり、該アシル基の置換度が1.8以上2.5以下である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- 前記セルロース誘導体の樹脂組成物全体に占める比率が70質量%以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、射出速度が10mm/s以上400mm/s以下、保持圧力が5MPa以上200MPa以下である条件で射出成形して樹脂成形体を得る、射出成形工程を有する樹脂成形体の製造方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する樹脂成形体。
- 射出成形により成形された請求項6に記載の樹脂成形体。
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