JP6439355B2 - 樹脂組成物、及び樹脂成形体 - Google Patents
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セルロースエステル樹脂と、
アジピン酸エステルを含む化合物であって、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下の化合物と、
前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下の無水マレイン酸変性エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂と、
を含有する樹脂組成物。
前記セルロースエステル樹脂が、下記一般式(1)で表されるセルロースエステル樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
前記一般式(1)で表されるセルロースエステル樹脂が、前記R1、R2、及びR3がそれぞれ独立に表すアシル基として、アセチル基を有し、且つ置換度が2.1以上2.6以下の樹脂である請求項2に記載の樹脂組成物。
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する樹脂成形体。
請求項3に係る発明によれば、一般式(1)で表され、アシル基としてアセチル基を有するセルロースエステル樹脂の置換度が2.1未満又は2.6超えの場合に比べ、高温高湿環境下での反り変形を抑制した樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項1に係る発明によれば、セルロースエステル樹脂100質量部に対して、無水マレイン酸変性エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂を2質量部未満又は10質量部超えで含む場合に比べ、高温高湿環境下での反り変形を抑制した樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
本実施形態に係る樹脂組成物は、セルロースエステル樹脂と、アジピン酸エステルを含む化合物(「アジピン酸エステル含有化合物」とも言う)と、無水マレイン酸変性エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(「無水マレイン酸変性EVA樹脂」とも言う)と、を含有する。
なお、本実施形態に係る樹脂組成物は、セルロースエステル樹脂を主成分として含む。主成分とは、樹脂組成物に含まれる各成分の中で最も含有割合(質量基準)が大きい成分を言う。
セルロースエステル樹脂に、親和性が良く、溶融粘度が低い可塑剤を混合すると、熱可塑性が付与される。セルロースエステル樹脂は、可塑剤の量を多くするほど、溶融粘度が低下する一方で、熱可塑性が向上、すなわち流動性が高まる。しかし、可塑剤を混合すると、セルロースエステル樹脂と可塑剤との収縮率の違いから、樹脂成形体にしたときに、高温高湿環境下での反り変形が起こることがある。
更に、セルロースエステル樹脂に可塑剤としてアジピン酸エステル含有化合物を配合すると、無水マレイン酸変性EVA樹脂がアジピン酸エステル含有化合物を吸収する。この吸収により、互いに収縮率の差が小さいセルロースエステル樹脂と無水マレイン酸変性EVA樹脂とが一部反応して、均一化する。これにより、セルロースエステル樹脂とアジピン酸エステル含有化合物(可塑剤)との収縮率差を緩和し、樹脂成形体にしたときに、高温高湿環境下で反り変形が抑制されると考えられる。
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性(流動性)が高いため、成形性にも優れる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、セルロースエステル樹脂を含有する。セルロースエステル樹脂として具体的には、例えば、一般式(1)で表されるセルロースエステル樹脂が挙げられる。
nを250以上にすると、樹脂成形体の強度が高まりやすくなる。nを750以下にすると、樹脂成形体の柔軟性の低下が抑制されやすくなる。
つまり、セルロースエステル樹脂分子中にn個あるR1は、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。同様に、n個あるR2、及びn個あるA3も、各々、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。
置換度を2.1以上にすると、ポリエーテルエステル化合物との親和性が高まりやすくなる。置換度を2.6以下にすると、セルロースエステル樹脂の結晶化が抑え、熱可塑性が発現しやすくなる。このため、置換度上記範囲にすると、樹脂成形体の反り変形が更に抑制される。また、樹脂組成物の成形性が更に向上する。
なお、置換度とは、セルロースエステル樹脂のアシル化の程度を示す指標である。具体的には、置換度は、セルロースエステル樹脂のD−グルコピラノース単位に3個ある水酸基がアシル基で置換された置換個数の分子内平均を意味する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、アジピン酸エステル含有化合物を含有する。ここで、アジピン酸エステル含有化合物(アジピン酸エステルを含む化合物)とは、アジピン酸エステル単独の化合物、又は、アジピン酸エステルとアジピン酸エステル以外の成分(アジピン酸エステルとは異なる化合物)との混合物であることを示す。但し、アジピン酸エステル含有化合物は、アジピン酸エステルを全成分に対して50質量%以上で含むことがよい。
R6は、アルキレン基を表す。
m1は、1以上20以下の整数を表す。
m2は、1以上10以下の整数を表す。
一般式(2−1)及び(2−2)中、R4及びR5が表すポリオキシアルキル基[−(CxH2X−O)y−RA1]において、RA1が表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基が望ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより望ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が望ましい。
xは、1以上10以下の整数を表すことが望ましい。yは、1以上10以下の整数を表すことが望ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、無水マレイン酸変性EVA樹脂(無水マレイン酸変性エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂)を含有する。
樹脂の密度及び融点を0.9以上0.94以下にすると、セルロースエステルの水酸基への無水マレイン酸変性EVA樹脂の反応性が高まりやすくなる。また、樹脂組成物の流動性の低下が抑制され、熱可塑性が発現しやすくなる。このため、密度及び融点を上記範囲にすると、樹脂成形体の反り変形が更に抑制される。また、樹脂組成物の成形性が更に向上する。
無水マレイン酸変性EVA樹脂の融点は、JISK7121(2012年)に準ずる方法により測定された値である。
セルロースエステル樹脂100質量部に対して、アジピン酸エステル含有化合物は、5質量部以上20質量部以下で含有することが望ましく、9質量部以上16質量部以下で含有することがより望ましい。
アジピン酸エステル含有化合物の含有量を5質量部以上にすると、熱可塑性が高まりやすくなる。アジピン酸エステル含有化合物の含有量を20質量部以下にすると、過剰なアジピン酸エステル含有化合物に起因する樹脂成形体の反り変形が抑制されやすくなる。このため、アジピン酸エステル含有化合物の含有量を上記範囲にすると、樹脂成形体の反り変形が更に抑制される。また、樹脂組成物の成形性が更に向上する。
無水マレイン酸変性EVA樹脂の含有量を2質量部以上とすると、アジピン酸エステル含有化合物の吸収能が高まりやすくなる。無水マレイン酸変性EVA樹脂の含有量を10質量部以下にすると、セルロースエステル樹脂との相溶性が高まりやすくなる。このため、無水マレイン酸変性EVA樹脂の含有量を上記範囲にすると、樹脂成形体の反り変形が更に抑制される。また、樹脂組成物の成形性が更に向上する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、上述した以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、難燃剤、相溶化剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミナ、ボロンナイトライド等)などが挙げられる。これらの成分の含有量は、樹脂組成物全体に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが望ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリエーテルスルフォン樹脂;ポリアリーレン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリケトン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリアリールケトン樹脂;ポリエーテルニトリル樹脂;液晶樹脂;ポリベンズイミダゾール樹脂;ポリパラバン酸樹脂;芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及びシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂;ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;シアン化ビニル−ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂;シアン化ビニル−(エチレン−ジエン−プロピレン(EPDM))−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;塩化ビニル樹脂;塩素化塩化ビニル樹脂;などが挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上記成分の混合物を溶融混練することにより製造される。ほかに、本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上記成分を溶剤に溶解することにより製造される。溶融混練の手段としては公知の手段が挙げられ、具体的には例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
具体的には、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を成形して得られる。成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
[混練]
表1に示す組成の材料を二軸混練装置(東芝機械製TEX41SS)に投入し、シリンダ温度を220℃以上250℃以下の範囲で混練し、樹脂組成物のペレット(以下「樹脂ペレット」と称する)を得た。なお、表1中、「部」とは、「質量部」を意味する。
得られたペレットを射出成形機(日精樹脂工業製、PNX40)に投入し、シリンダ温度を220℃以上250℃以下の範囲、金型温度を40℃以上60℃以下の範囲で、射出成形し、D1成形体(長さ60mm、幅60mm、厚み1mm)、及びD2成形体(長さ60mm、幅60mm、厚み2mm)を得た。
得られた、D1成形体、D2試験片、又は樹脂ペレットについて、次の評価を行った。結果を表1に示す。
メルトインデクサー(東洋精機社製G−01)を用い、220℃/21.2Nの条件で、樹脂ペレットのメルトフローレート(MFR:g/10min)を測定し、成形性について評価した。
温度60℃、湿度95%RHに設定した恒温恒湿槽(エスペック社製ARL−1100−J)に、D1試験片、及びD2試験片を静置した。72時間経過後に、恒温恒湿槽から、D1試験片、及びD2試験片を取り出した。次に、D1試験片、及びD2試験片をアルミ板の上に置いた。そして、D1試験片の端部、及びD2試験片の端部がアルミ板から最も離間している箇所において、アルミ板表面と試験片の端部の最も離間している箇所との距離をノギスで測定し、反り変形性として評価した。
・化合物1〜8: 既述のセルロースエステル樹脂の具体例参照
・化合物9〜11:既述のアジピン酸含有化合物の具体例参照
・化合物12〜13: 既述の無水マレイン酸変性EVA樹脂の具体例参照
・化合物14: (メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含むコアシェル構造の熱可塑性エラストマー(メチルメタアクリレート−nブチルアクリレート共重合体を含むコアシェル構造の熱可塑性エラストマー、クラリティーLA2250、クラレ社製)
・化合物15: ポリエステルポリオール(ポリライトODX−2692、DIC社製)
・化合物16: フタル酸ジエチル(DEP、大八化学工業社製)
・化合物17: トリフェニルホスフェート(TPP、大八化学工業社製)
Claims (4)
- セルロースエステル樹脂と、
アジピン酸エステルを含む化合物であって、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下の化合物と、
前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下の無水マレイン酸変性エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂と、
を含有する樹脂組成物。 - 前記セルロースエステル樹脂が、下記一般式(1)で表されるセルロースエステル樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
(一般式(1)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1以上3以下のアシル基を表す。nは1以上の整数を表す。) - 前記一般式(1)で表されるセルロースエステル樹脂が、前記R1、R2、及びR3がそれぞれ独立に表すアシル基として、アセチル基を有し、且つ置換度が2.1以上2.6以下の樹脂である請求項2に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する樹脂成形体。
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