以下、本発明を実施するための形態を説明する。
(第一の実施の形態)
第一の実施の形態の繊維製品は、タオル、手ぬぐい、ハンカチなどが例示されるが、これに限定されず、衣服やカーテンなどの繊維を素材とするものであればよい。図1A及び図1Bのように、本実施の形態の繊維製品100は、生地101の両面に着色領域102が形成されている。生地101の一方の片面(例えば、表面)の着色領域102は染料着色領域103として形成されている。染料着色領域103は染料で着色された生地101の一部である。生地101の他方の片面(例えば、裏面)の着色領域102は顔料着色領域104として形成されている。顔料着色領域104は顔料で着色された生地101の一部である。
生地101の一方の片面には、一又は複数の染料着色領域103が設けられている。染料着色領域103の形状は任意の文字や図柄で形成されている。複数の染料着色領域103はその全部が一種類の形状で形成されていても良いし、形状の異なる複数の染料着色領域103が混在していても良い。また染料着色領域103は任意の色で形成されている。複数の染料着色領域103はその全部が一種類の色で形成されていても良いし、色の異なる複数の染料着色領域103が混在していても良い。
生地101の他方の片面には、一又は複数の顔料着色領域104が設けられている。顔料着色領域104の形状は任意の文字や図柄で形成されている。複数の顔料着色領域104はその全部が一種類の形状で形成されていても良いし、形状の異なる複数の顔料着色領域104が混在していても良い。また顔料着色領域104は任意の色で形成されている。複数の顔料着色領域104はその全部が一種類の色で形成されていても良いし、色の異なる複数の顔料着色領域104が混在していても良い。
染料着色領域103と顔料着色領域104とは一対一で対応して形成されている。すなわち、一つの染料着色領域103と一つの顔料着色領域104とが対応するように形成されている。言い換えれば、一つの染料着色領域103の裏側(又は表側)に一つの顔料着色領域104が形成され、一つの顔料着色領域104の表側(又は裏側)に一つの染料着色領域103が形成されている。例えば、一つの染料着色領域103aと一つの顔料着色領域104aとが対応し、他の一つの染料着色領域103bと他の一つの顔料着色領域104bとが対応するように形成されている。
対応する染料着色領域103と顔料着色領域104とは互いに異なる形状に形成されていてもよいが、対応する染料着色領域103と顔料着色領域104とは同じ形状に形成されていることが好ましい。対応する染料着色領域103と顔料着色領域104とが同じ形状であると、繊維製品100の両面が同じような外観に形成しやすく、両面兼用(リバーシブル)にしやすくなる。また、対応する染料着色領域103と顔料着色領域104とを同じ型で同時に捺染して形成しやすくなり、繊維製品100の生産効率を向上させやすい。
対応する染料着色領域103と顔料着色領域104とは少なくとも一部が表裏の関係で重なって形成されている。すなわち、対応する染料着色領域103と顔料着色領域104は一部が表裏の関係で重なっていても良いし、対応する染料着色領域103と顔料着色領域104はそれら全体が表裏の関係で重なっていてもよい。対応する染料着色領域103と顔料着色領域104とが全体で表裏の関係で重なっている場合、繊維製品100を表裏反転させると(すなわち、生地101の片面と平行な軸を中心として、図1Aの状態から図1Bの状態にする、又は図1Bの状態から図1Aの状態にする)、対応する染料着色領域103と顔料着色領域104とが互いに反転した形状で形成されていることになる。この場合、繊維製品100の両面が同じような外観に形成しやすく、両面兼用(リバーシブル)にしやすくなる。また、対応する染料着色領域103と顔料着色領域104とを同じ型で同時に捺染して形成しやすくなり、繊維製品100の生産効率を向上させやすい。尚、対応する染料着色領域103と顔料着色領域104は色が互いに異なっている方が好ましいが、同じ色であっても良い。
図2には繊維製品100の一部の断面図が示されている。この繊維製品100の生地101は積層生地で形成されている。すなわち、生地101は二枚の生地素材105、106が重なって形成されている。尚、生地101は二枚以上の生地素材が重なって形成されていてもよい。
第一(一方)の生地素材105は繊維を素材として形成されている。繊維としては、特に限定されないが、ナフトール染料で染色されやすいことが好ましく、例えば、木綿、麻などのセルロース繊維が挙げられる。本実施の形態では、異素材を利用せずセルロース繊維だけで生地を形成しても、先染調のシャンブレー模様を捺染で表現することが可能である。また繊維としては、綿番手で10〜100番手のものを使用することができる。第一の生地素材105は繊維製品の強度等を考慮すると織物であることが好ましい。この場合、織物の組織としては、繊維製品の使用目的等に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、繊維製品がタオルである場合、第一の生地素材105はパイル織物やタオル織物で形成されている。また第一の生地素材105としては、目付けが500g/m2以下のものが使用可能である。尚、生地は編物や不織布であってもよい。
第二(他方)の生地素材106は繊維を素材として形成されている。繊維としては、特に限定されないが、顔料で染色されやすいことが好ましく、例えば、木綿、麻などのセルロース繊維、ポリエステル繊維やアラミド繊維などの合成繊維などが挙げられる。また繊維としては、綿番手で10〜100番手のものを使用することができる。第二の生地素材106は繊維製品の強度等を考慮すると織物であることが好ましい。この場合、織物の組織としては、繊維製品の使用目的等に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されない。また第二の生地素材106としては、目付けが500g/m2以下のものが使用可能である。尚、生地は編物や不織布であってもよい。
生地素材105と生地素材106とは、同種の繊維で形成されていても良いし、異種の繊維で形成されていても良い。また、生地素材105と生地素材106とは、同種の組織(織り方)で形成されていても良いし、異種の組織で形成されていても良い。
図2のものでは、第一の生地素材105がタオル織物で形成されており、第二の生地素材106が平織物のようなガーゼで形成されている。また第一の生地素材105と第二の生地素材106は同じ繊維(例えば、木綿繊維)で形成されている。第一の生地素材105と第二の生地素材106は複数の箇所で繊維により結着されて一体化されている。第一の生地素材105と第二の生地素材106は袋織という手法により一体的に形成して生地101とすることが可能である。第一の生地素材105は、複数の第一の地経糸107と、複数の第一の地緯糸108と、複数のパイル糸109とで形成されている。パイル糸109により形成される複数のパイル120は、ほぼ一列に並んだ複数の第一の地緯糸108の片側に突出して形成されている。第二の生地素材106は、複数の第二の地経糸121と、複数の第二の地緯糸122とで形成されている。第二の生地素材106は、第一の生地素材105のパイル120が突出していない方の面に重ね合わされている。
そして、第一の実施の形態では、染料着色領域103は生地101の片面を構成する第一の生地素材105に形成されている。また顔料着色領域104は生地101の他の片面を構成する第二の生地素材106に形成されている。染料着色領域103は複数の第一の地緯糸108がナフトール染料により染色されて形成されている。ここで、第一の地経糸107やパイル糸109は染料着色領域103において染料により着色されないようにすることができ、これにより、染料着色領域103を朧染で形成することができる。顔料着色領域104は複数の第二の地経糸121と、複数の第二の地緯糸122とが顔料により着色されて形成されている。図において、染料着色領域103は網掛模様で示し、顔料着色領域104を点々模様で示す。
(第二の実施の形態)
図3は第二の実施の形態を示している。第二の実施の形態の繊維製品100は、第一の実施の形態と対比して、生地101が異なる。この生地101は、上記の第一の生地素材105と同様に形成されている。すなわち、生地101は、複数の地経糸107と、複数の地緯糸108と、複数のパイル糸109とを備えて形成されている。生地101は、上記のような第二の生地素材106を有していない。
第二の実施の形態においては、染料着色領域103及び顔料着色領域104の両方が生地101に形成されているが、染料着色領域103は生地101の片面に形成され、顔料着色領域104は生地101の他の片面に形成されている。染料着色領域103は地緯糸108がナフトール染料により染色されて形成されている。ここで、地経糸107やパイル糸109は染料着色領域103において染料により着色されないようにすることができ、これにより、染料着色領域103を朧染で形成することができる。顔料着色領域104は複数の地経糸107と複数のパイル糸109が顔料により着色されて形成されている。地経糸107とパイル糸109は、生地101の片面に現れる部分に顔料により着色される。すなわち、地経糸107とパイル糸109は、生地101のパイルが形成されていない方の片面に露出する部分が顔料により着色される。
このように第二の実施の形態は、生地101の形態と、顔料着色領域104が形成される位置とが第一の実施の形態と異なり、その他の構成は第一の実施の形態と同様に形成される。
(第三の実施の形態)
図4は第三の実施の形態を示している。第三の実施の形態の繊維製品100は、第一の実施の形態と対比して、生地101が異なる。この生地101は、両面パイルタオル織物で形成されている。すなわち、生地101は、複数の地経糸107と、複数の地緯糸108と、複数の第一のパイル糸109と、複数の第二のパイル糸110とを備えて形成されている。生地101は、上記のような第二の生地素材106を有していない。
第三の実施の形態においては、染料着色領域103及び顔料着色領域104の両方が生地101に形成されているが、染料着色領域103は生地101の片面に形成され、顔料着色領域104は生地101の他の片面に形成されている。染料着色領域103は地緯糸108がナフトール染料により染色されて形成されている。ここで、地経糸107や第一のパイル糸109や第二のパイル糸110は染料着色領域103において染料により着色されないようにすることができ、これにより、染料着色領域103を朧染で形成することができる。顔料着色領域104は複数の地経糸107と複数の第一のパイル糸109と複数の第二のパイル糸110が顔料により着色されて形成されている。地経糸107と第一のパイル糸109は、生地101の片面に現れる部分に顔料により着色される。すなわち、地経糸107と第一のパイル糸109は、生地101の第二のパイル糸110によるパイル123が形成された方の片面に露出する部分が顔料により着色される。また、第二のパイル糸110は、生地101の片面に現れるパイル123の部分が顔料により着色される。
このように第三の実施の形態は、生地101の形態と、顔料着色領域104が形成される部分とが第一の実施の形態と異なり、その他の構成は第一の実施の形態と同様に形成される。
(第四の実施の形態)
図5は第四の実施の形態を示している。第四の実施の形態の繊維製品100は、第一の実施の形態と対比して、顔料着色領域104の位置が異なる。第四の実施の形態においては、染料着色領域103及び顔料着色領域104の両方が第一の生地素材105に形成されている。染料着色領域103と顔料着色領域104は生地101の同じ片面に形成されている。染料着色領域103は地緯糸108がナフトール染料により染色されて形成されている。ここで、地経糸107やパイル糸109は染料着色領域103において染料により着色されないようにすることができ、これにより、染料着色領域103を朧染で形成することができる。顔料着色領域104は複数の地経糸107と複数のパイル糸109が顔料により着色されて形成されている。地経糸107とパイル糸109は、生地101の片面に現れる部分に顔料により着色される。すなわち、地経糸107とパイル糸109は、生地101のパイル糸109によるパイル120が形成された方の片面に露出する部分が顔料により着色される。
このように第四の実施の形態は、顔料着色領域104が形成される位置が第一の実施の形態と異なり、その他の構成は第一の実施の形態と同様に形成される。第四の実施の形態では、図6A及び図6Bのように、染料着色領域103及び顔料着色領域104の両方が繊維製品100の片面の方(パイル120が形成された面の方)から見えやすく、繊維製品100の他の片面の方(第二の生地素材106の方)から見えにくくなっている。
(繊維製品100の製造方法)
生地には下漬剤が付着している。下漬剤は、生地の繊維に対して親和性を有するカップリング成分である。下漬剤としては、ナフトールAS類などが例示される。またナフトールAS類としては、C.I.A.C.C.18(商品名(分類)は、ナフトールAS−D)、C.I.A.C.C.20(商品名(分類)は、ナフトールAS−OL)、C.I.A.C.C.19(商品名(分類)は、ナフトールAS−BG)、C.I.A.C.C.4(商品名(分類)は、ナフトールAS−BO)、C.I.A.C.C.5(商品名(分類)は、ナフトールAS−G)、C.I.A.C.C.7(商品名(分類)は、ナフトールAS−SW)、C.I.A.C.C.17(商品名(分類)は、ナフトールBS)、C.I.A.C.C.10(商品名(分類)は、ナフトールE)などが例示される。これらの中でもC.I.A.C.C.20が好ましい。C.I.A.C.C.20の使用で繊維製品の堅牢度を高くすることができる。尚、上記「C.I.A.C.C.」とは、コールキィーアンドピッカーズギル社(Chorlcy& Pickersgil Ltd)から印刷、販売されているカラーインデックス(COLOUR INDEX,SECOND EDITION1956)3巻、アゾイックセクション(AZOICSECTION)に記載されているカラーインデックスアゾイックカップリングコンポーネント(Colour Index Azoic Coupling Component)の略称である。
染料着色領域を形成するための色糊(以下、染料色糊ということがある)は、ナフトール染料と酸性作用抑制剤と水を含有し、必要に応じて、糊剤とpH値低下剤と劣化防止剤(ドリマレンソルトFDなど)が例示される。
ナフトール染料(上漬剤又は顕色剤)は、下漬剤と反応して繊維上で水に不溶性の色素を形成して染色するものである。ナフトール染料としては、ベース類とソルト類のいずれでも使用可能であるが、安定性等を考慮してソルト類が用いられる。ソルト類はベース類をジアゾ化した化合物である。ナフトール染料としては、C.I.A.D.C.20(商品名(色相分類)は、ブルーBBソルト)、C.I.A.D.C.13(商品名(色相分類)は、スカーレットRソルト)、C.I.A.D.C.44(商品名(色相分類)は、イエローGCソルト)、C.I.A.D.C.1(商品名(色相分類)は、ボルドーGPソルト)、C.I.A.D.C.2(商品名(色相分類)は、オレンジGCソルト)、C.I.A.D.C.9(商品名(色相分類)は、レッド3GLソルト)、C.I.A.D.C.38(商品名(色相分類)は、ブラックKソルト)、C.I.A.D.C.3(商品名(色相分類)は、スカーレットGGソルト)、C.I.A.D.C.118(商品名(色相分類)は、グリーンBBソルト)、C.I.A.D.C.48(商品名(色相分類)は、ブルーB)、C.I.A.D.C.35(商品名(色相分類)は、バリアンミンブルーB)、C.I.A.D.C.41(商品名(色相分類)は、バイオレットB)、ダークブルーLR(商品名(色相分類))、ブラウンRR(商品名(色相分類))、レッドB(商品名(色相分類))などが挙げられるが、これらに限定されない。尚、上記「C.I.A.D.C.」とは、カラーインデックスアゾイックジアゾコンポーネント(ColourIndex Azoic Diazo Component)の略称である。染料色糊中のナフトール染料の濃度は、ナフトール染料の種類、染料着色領域の濃淡、生地に付着している下漬剤の種類や量などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、1〜30g/Lとすることができる。
酸性作用抑制剤は、低温の染料色糊中で中性であり、高温の染料色糊中でアルカリ性を発現するものである。ここで、低温とは顔料の固着時に行う熱処理の温度よりも低く、高温とは顔料の固着時に行う熱処理時の温度以上のことをいう。具体的には、低温は80℃未満であることが好ましく、高温とは80℃以上の温度であることが好ましい。酸性作用抑制剤は、有機酸のアルカリ金属塩であり、例えば、トリクロロ酢酸ソーダ(トリクロロ酢酸のナトリウム塩)やギ酸ソーダ(ギ酸のナトリウム塩)などが用いられる。酸性作用抑制剤は、低温では分解せずに中性であって、染料色糊のナフトール染料の発色を阻害しにくい。従って、染料色糊の発色安定性を確保することができる。一方、酸性作用抑制剤は、高温では分解してカルボン酸などの有機酸のイオンとアルカリ金属のイオン(ナトリウムイオンなど)を発生する。これにより、酸性作用抑制剤の緩衝作用や染料色糊の酸性が中和されるなどして染料色糊の酸性の度合いが抑制(緩和)される。従って、染料色糊の酸性による生地の劣化や損傷を抑えることができる。染料色糊中の酸性作用抑制剤の濃度は、ナフトール染料の種類や濃度等によって適宜設定可能であるが、0.5〜30g/Lとすることが好ましく、この範囲であれば、染料色糊の酸性による生地の劣化や損傷を抑えることができる。酸性作用抑制剤の濃度が0.5g/L未満であると、染料色糊の酸性を充分に抑えることができないおそれがあり、酸性作用抑制剤の濃度が30g/Lを超えても、染料色糊の酸性の抑制に寄与しない過剰な酸性作用抑制剤が残存するだけであり、コスト的に不利になるおそれがある。染料色糊中の酸性作用抑制剤の濃度は、ナフトール染料を基準にした場合、質量比でナフトール染料の0.5〜1.5倍にすることが好ましく、この範囲であれば、染料色糊の酸性による生地の劣化や損傷を抑えることができる。酸性作用抑制剤がナフトール染料の0.5倍よりも少ないと、染料色糊の酸性を充分に抑えることができないおそれがあり、酸性作用抑制剤がナフトール染料の1.5倍よりも多くても、染料色糊の酸性の抑制に寄与しない過剰な酸性作用抑制剤が残存するだけであり、コスト的に不利になるおそれがある。
糊剤としては、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸ソーダ、合成糊、エマルション糊などが例示されるが、これらに限定されない。特に、加工デンプン、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガントガムを糊剤として用いることが好ましく、これにより、染料色糊の耐薬品性を良好にすることができる。染料色糊中の糊剤の濃度は、染料色糊の所望の粘度、染料色糊のナフトール染料の濃度、生地に付着している下漬剤の種類や量などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、50〜100g/Lとすることができる。
pH値低下剤は染料色糊のpH値を低下させるために含有されている。pH値低下剤は、pH値低下剤を配合する前の染料色糊のpH値や染料色糊中のナフトール染料の種類や濃度に応じて含有量が決定される。特に、淡色を染色する染料色糊はナフトール染料の濃度が低いため、pH値低下剤を含有してpH値を低下させるのが好ましい。pH値低下剤としては酸性成分が用いられる。この酸性成分としては無機酸よりも有機酸であることが好ましい。酸性成分として有機酸を用いると、無機酸よりもセルロース繊維の劣化が生じにくくなると考えられ、また環境に与える影響も小さくして安全性を高くすることができる。また有機酸としてはクエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸等が挙げられるが、これらの中でもクエン酸が好ましい。酸性成分がクエン酸である場合では、染色後に生地の繊維に臭気が残存しにくくなり、また染料色糊のpH値を安定化する緩衝効果も期待することできるために好ましい。尚、本実施例の効果も、この緩衝効果に起因することも考えられる。pH値低下剤が含有された染料色糊はpH値が3.0〜3.9であることが好ましい。染料色糊のpH値が3.0未満であると、酸性が強すぎて生地を痛めてしまうおそれがある。染料色糊のpH値が3.9を超えると、酸性が弱すぎて淡色での発色不良が生じやすくなる。特に、淡色を発色させる場合、染料色糊はpH値が3.3〜3.7であることが好ましいが、ナフトール染料の種類や量によって染料色糊の好ましいpH値は異なる。
顔料着色領域を形成するための色糊(以下、顔料色糊ということがある)は、顔料とバインダーと架橋剤と水を含有し、必要に応じて、乳化剤やホワイトターペン(ケロシン)や劣化防止剤などを含有して調製されている。
顔料は有機顔料と無機顔料のいずれでも良い。また顔料は天然顔料と合成顔料のいずれでも良い。また顔料は所望の色のものが用いられる。顔料としては、例えば、株式会社松井色素化学工業所製の「MATSUMIN NEO」(ブランド名)の「Gold Yellow MFR」、「Red MGD」、「Red MFB」、「Violet MFB」、「Navy Blue MB」、「Blue MB」、「Blue MG」、「Green MB」、「Green MY」、「Dark Green MG」、「Brown MG」、「Dark Brown MFB」、「Black MK」などが挙げられる。また顔料としては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製の「RYUDYE−W」(ブランド名)の「Yellow FF8G」、「Orange FKS」、「Rubine FF2B」、「Navy Blue FF3R」、「Grey FFB」や「DEXCEL COLOR」(ブランド名)の「Light Yellow HG」、「Golden Yellow HR」、「Orange HR」、「Scarlet HG」、「Red HB」、「Violet HR」、「Blue HG」、「Blue H2R」、「Green HB」、「Brown HR」、「Black HR」などが挙げられる。また顔料としては、例えば、東洋インキ株式会社製の「WS COLOR」(ブランド名)の「Orange OL−1」などが挙げられる。また顔料としては、例えば、大日精化工業株式会社製の「NEW LACQTIMINE」(ブランド名)の「TC Red FG」、「TC Red F2B」、「TC Grey FG」などが挙げられる。
バインダーは顔料を生地の繊維に固着させるものであって、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等の合成樹脂が含まれている。尚、顔料とバインダー一体型特殊顔料として、松井色素化学工業所製の「ダイストーンXカラー」なども使用可能である。架橋剤はバインダーを架橋して硬化させるものであって、バインダーの種類に対応させてメラミンやイソシアネート化合物、エポキシ化合物、エチレンイミン等が用いられる。劣化防止剤は上記と同様のものが用いられる。また顔料色糊に上記の染料を少量加えても良い。乳化剤としては、例えば、新中村工業株式会社製の「ビスコン S 500HN」などを用いることができる。ホワイトターペンとしては、例えば、出光興産株式会社製の「スーパーゾル」などを用いることができる。
顔料色糊中の顔料の濃度は、顔料の種類、顔料着色領域の濃淡などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、0.1〜100g/Lとすることができる。顔料色糊中のバインダーの濃度は、顔料の種類や濃度などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、30〜200g/Lとすることができる。顔料色糊中の架橋剤の濃度は、バインダーの種類や濃度などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、20〜50g/Lとすることができる。顔料色糊中の糊剤の濃度は、顔料色糊の所望の粘度、顔料の濃度、生地に付着している下漬剤の種類や量などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、50〜100g/Lとすることができる。
そして、本実施の形態において、繊維製品は以下のようにして製造される。
まず、下漬処理工程が行われる。この工程では下漬剤が生地を形成するための繊維に付着される。下漬剤は染色される繊維のみに付着させる。例えば、下漬剤は緯糸のみに付着され、経糸やパイル糸などのその他の繊維には付着されないようにする。この場合、生地の緯糸のみが染料により着色され、経糸やパイル糸などのその他の繊維は染料により着色されない。このように緯糸のみに下漬剤を付着させた生地は朧染(おぼろぞめ)に利用される。また、下漬剤が付着した繊維には顔料が付着しにくいため、顔料により着色する繊維には下漬剤を付着させないことが好ましい。上記の生地101の場合、第一の地緯糸108のみに下漬剤が付着され、その他の繊維には下漬剤が付着されないことが好ましい。尚、その他に、下漬剤は経糸のみに付着され、緯糸やパイル糸などのその他の繊維には付着されないようにしたり、下漬剤はパイル糸のみに付着され、緯糸や経糸などのその他の繊維には付着されないようにしたり、下漬剤は経糸と緯糸のみに付着され、パイル糸などのその他の繊維には付着されないようにしたりすることも可能である。勿論、下漬剤は生地を形成するための総ての繊維に付着されていてもよいし、この場合、下漬剤の付着量が経糸と緯糸とパイル糸などのその他の繊維との間で異なっていてもよい。このように下漬剤を付着させる繊維や量が変わることにより、生地の染色される繊維や色の濃淡が変わることになり、高いデザイン性を有する繊維製品を得ることができる。
繊維に下漬剤を付着させるにあたっては、下漬剤を含有する染液に繊維が浸漬されたり(浸染)、刷毛で塗ったり(引染)する。下漬剤を含有する染液は、下漬剤、ロート油、苛性ソーダ(NaOH)及び水(60〜70℃の熱湯)などを含有して調製されている。染液中の各成分の濃度は特に限定はないが、例えば、下漬剤(ナフトールAS類)10〜15g/L、ロート油15〜20mL/L、苛性ソーダ15〜23mL/Lなどが挙げられる。繊維への下漬剤の付着量は特に限定されないが、例えば、1〜10%owf、好ましくは4〜5%owfである。また繊維への苛性ソーダの付着量は特に限定されないが、例えば、1〜10%owf、好ましくは4〜5%owfである。尚、付着量の単位「owf」は、下漬剤(又は苛性ソーダ)が付着される繊維の単位質量に対する下漬剤の付着質量(又は苛性ソーダ)の割合を示す。例えば、下漬剤の付着量が5%owfの場合、繊維100gに対して下漬剤が5g付着することになる。
次に、織り工程が行われる。この工程では、繊維を織って生地が作製される。生地を作製する繊維の一部が、上記下漬処理工程で処理された繊維である。上記の生地101の場合、染料着色領域103が形成される地緯糸108のみが下漬剤で処理された繊維であり、顔料で着色されるその他の繊維(地経糸107、パイル糸109、パイル糸110、地経糸121、地緯糸122など)は下漬剤が付着されない繊維で形成されることが好ましい。
次に、プリント(捺染)工程が行われる。この工程では、染料色糊及び顔料色糊が生地に供給されて印捺される。染料色糊と顔料色糊はどちらを先に印捺してもよい。生地への印捺はロール捺染機やスクリーン捺染機などで行われる。すなわち、図7のロール捺染機1と図8のスクリーン捺染機10のいずれか一方又は両方が用いられる。
ロール捺染機は転写方式で印捺するものである。図7にはロール捺染機1の一例が示されている。このロール捺染機1には複数のガイドロール2が設けられている。またロール捺染機1には転写ロール4が設けられている。転写ロール4の外面には転写版5が設けられている。転写版5は、例えば、ゴム製の凸版で形成されている。転写ロール4の下方には浸漬ロール6が設けられている。浸漬ロール6はその下部が色糊(染料色糊、又は顔料色糊、あるいは染料色糊と顔料色糊の混合色糊)7に浸漬して配置されている。このようなロール捺染機1では、長尺の生地101がガイドロール2にガイドされながら一方向に連続的に進行して搬送される。生地101は搬送されながら転写ロール4と浸漬ロール6との間を通過する。このとき、生地101における繊維製品の端末となる部分を感知し、このタイミングに合わせて転写ロール4が回転する。転写ロール4の回転により転写版5で生地101が上から押圧され、生地101が浸漬ロール6に接触する。これにより、浸漬ロール6の表面に付着している色糊7が生地101に付着する。このようにしてロール捺染機1で生地101に印捺される。
一方、スクリーン捺染機10は謄写版方式で印捺するものである。図8にはスクリーン捺染機10の一例が示されている。このスクリーン捺染機10にはコンベアベルト11が設けられている。コンベアベルト11の上方には複数のプリント型(スクリーン型)12が配置されている。複数のプリント型12はコンベアベルト11の進行方向に並べて設けられている。プリント型12は額縁状の枠体15にスクリーン(紗)16を貼り付けて形成されている。またスクリーン16にはメッシュ部13が設けられている。メッシュ部13は所望の形状(柄)に形成されている。各プリント型12の上方にはゴム製等のスケージ14が配置されている。スケージ14はコンベアベルト11の進行方向と直交する方向で往復移動自在に形成されている。このようなスクリーン捺染機10では、長尺の生地101がコンベアベルト11の上に載せられて一方向に連続的に進行して搬送される。生地101は搬送されながらプリント型12の下方を通過する。このとき、生地101における繊維製品の端末となる部分を感知し、このタイミングに合わせてスケージ14が移動する。スケージ14の移動によりプリント型12のスクリーン16上に供給した色糊(染料色糊、又は顔料色糊、あるいは染料色糊と顔料色糊の混合色糊)7がメッシュ部13上を通過し、色糊7の一部がメッシュ部13を通過する。そして、メッシュ部13を通過した色糊7が生地101に付着する。このようにしてスクリーン捺染機10で生地101に印捺される。
次に、乾燥工程が行われる。この工程では、プリント工程後の生地に熱処理が施される。この熱処理により生地が乾燥されると共に、生地に印捺された顔料色糊中のバインダーが架橋剤により硬化して顔料が生地の繊維に固着される。乾燥工程は、例えば、80〜190℃、好ましくは100〜130℃で10〜15分間の条件で行うことができる。そして、乾燥工程の熱処理による高温で、生地に印捺された染料色糊中の酸性作用抑制剤のアルカリ性が発現される。従って、染料色糊の酸性が生地に作用しにくくなって、生地の劣化が生じにくくなる。
次に、縁縫い工程が行われる。この工程では、上記乾燥工程で得られた生地の縁縫いがオーバーミシン等で行われる。
次に、亜硫酸通し工程が行われる。この工程は、例えば、重亜硫酸ソーダが10g/Lの亜硫酸槽が浴比1:20で用いられ、温度90〜95℃で時間10〜20分間の条件で行われる。次に、糊抜・精練・晒工程が行われる。この工程では、例えば、苛性ソーダが1g/Lで過酸化水素が1g/Lの処理浴が用いられ、温度90〜95℃で時間約90分間の条件で行われる。次に、塩素晒工程が行われる。この工程では、例えば、次亜塩素酸ソーダ1g/Lの処理浴が用いられる。次に、洗い・柔軟工程が行われる。この工程では、例えば、連続ウインスが用いられ、また必要に応じて柔軟剤が1g/Lの処理浴が用いられ、洗い温度約70℃で時間20〜30分間の条件で行われる。次に、脱水工程が行われる。この工程では、遠心脱水機などが用いられる。次に、乾燥工程が行われる。この工程では、サクション乾燥機などが用いられ、例えば、温度100〜120℃で時間約10分間の条件で行われる。この後、ヘムミシン工程や検査工程を経て、タオルなどの繊維製品が製造される。
上記のようなプリント工程において、染料色糊と顔料色糊の両方を含む色糊7を生地101に捺染することができる。この場合、染料色糊と顔料色糊が生地101のほぼ同位置にほぼ同時に捺染されることになる。従って、染料着色領域103と顔料着色領域104とが位置ずれしにくくなって、リバーシブルの繊維製品100が形成しやすくなる。
図2のような繊維製品100を形成するにあたっては、染料色糊と顔料色糊の両方を含む色糊7を生地101の第二の生地素材106の方から捺染することができる。これにより、パイル120に色糊7が到達しにくくなって、パイル120が顔料で着色されにくくなる。尚、色糊7がパイル120に到達しにくくするために、捺染する際の生地101への色糊7の押圧力を調整するのが好ましい。また、色糊7の粘度を上げ、色糊7の浸透を抑制すれば、バインダーが第二の生地素材106の表面付着し、染料と顔料(バインダーと分離した一部)が第一の地緯糸108まで浸透し、下漬剤に染料のみキャッチされやすくすることができると考えられる(顔料は下漬剤が第一の地緯糸108の表面に付着しているため、固着しにくい)。
図3のような繊維製品100を形成するにあたっては、染料色糊と顔料色糊の両方を含む色糊7を生地101のパイル120と反対の方から捺染することができる。これにより、パイル120に色糊7が到達しにくくなって、パイル120が顔料で着色されにくくなる。尚、色糊7がパイル120に到達しにくくするために、捺染する際の生地101への色糊7の押圧力を調整するのが好ましい。
図4のような繊維製品100を形成するにあたっては、染料色糊と顔料色糊の両方を含む色糊7を生地101のパイル(第二のパイル糸110で形成されるパイル)123の方から捺染することができる。これにより、第一のパイル糸109で形成されるパイル120に色糊7が到達しにくくなって、パイル120が顔料で着色されにくくなる。尚、色糊7がパイル120に到達しにくくするために、捺染する際の生地101への色糊7の押圧力を調整するのが好ましい。
図5のような繊維製品100を形成するにあたっては、染料色糊と顔料色糊の両方を含む色糊7を生地101のパイル120の方から捺染することができる。これにより、第二の生地素材106に色糊7が到達しにくくなって、第二の生地素材106が顔料で着色されにくくなる。尚、色糊7が第二の生地素材106に到達しにくくするために、捺染する際の生地101への色糊7の押圧力を調整するのが好ましい。
また上記のようなプリント工程において、染料色糊と顔料色糊とを別々に生地101に捺染することができる。この場合、染料着色領域103を形成しない繊維に染料色糊が付着されにくくしたり、顔料着色領域104を形成しない繊維に顔料色糊が付着されにくくなって、所望の位置に染料着色領域103と顔料着色領域104とが形成しやすくなる。
図2のような繊維製品100を形成するにあたっては、染料色糊を第一の生地素材105の方から捺染し、顔料色糊を第二の生地素材106の方から捺染することができる。これにより、パイル120に顔料色糊が到達しにくくなって、パイル120が顔料で着色されにくくなる。尚、顔料色糊がパイル120に到達しにくくするために、捺染する際の生地101への顔料色糊の押圧力を調整するのが好ましい。また、染料色糊と顔料色糊のいずれを先に捺染してもよいが、染料色糊を先に捺染し、同じ場所に別型(転写版やプリント型)で顔料色糊を捺染するのが好ましい。この場合、先に捺染された染料のみが浸透しやすいため、染料着色領域が形成しやすくなる。
図3のような繊維製品100を形成するにあたっては、染料色糊をパイル120の方から捺染し、顔料色糊をパイル120と反対の方から捺染することができる。これにより、パイル120に顔料色糊が到達しにくくなって、パイル120が顔料で着色されにくくなる。この場合も、染料色糊と顔料色糊のいずれを先に捺染してもよい。また、顔料色糊がパイル120に到達しにくくするために、捺染する際の生地101への顔料色糊の押圧力を調整するのが好ましい。
図4のような繊維製品100を形成するにあたっては、染料色糊を生地101のパイル(第一のパイル糸109で形成されるパイル)120の方から捺染し、顔料色糊を生地101のパイル(第二のパイル糸110で形成されるパイル)123の方から捺染することができる。これにより、第一のパイル糸109で形成されるパイル120に顔料色糊が到達しにくくなって、パイル120が顔料で着色されにくくなる。この場合も、染料色糊と顔料色糊のいずれを先に捺染してもよい。また、顔料色糊がパイル120に到達しにくくするために、捺染する際の生地101への顔料色糊の押圧力を調整するのが好ましい。
図5のような繊維製品100を形成するにあたっては、染料色糊を第二の生地素材106側から捺染し、顔料色糊を生地101のパイル120の方から捺染することができる。これにより、第二の生地素材106に顔料色糊が到達しにくくなって、第二の生地素材106が顔料で着色されにくくなる。この場合も、染料色糊と顔料色糊のいずれを先に捺染してもよい。また、顔料色糊が第二の生地素材106に到達しにくくするために、捺染する際の生地101への顔料色糊の押圧力を調整するのが好ましい。
本実施の形態における繊維製品の製造方法では、下漬剤が付着された繊維は染料で着色されやすくて染料着色領域が容易に形成され、下漬剤が付着されていない繊維は顔料で着色されやすくて顔料着色領域が容易に形成される。従って、下漬剤の有無で、染料で着色される繊維と、顔料で着色される繊維とが選択されやすくなり、染料着色領域と顔料着色領域とを分けやすくなる。また、下漬剤の有無以外の要因も相俟って染料着色領域と顔料着色領域が分かれて形成されやすくなる。例えば、生地の織組織、色糊粘度、染料と顔料・バインダーの浸透差等の要因によっても、着色領域が染料着色領域と顔料着色領域とに分かれて形成されやすくなる。尚、本実施の形態における繊維製品は、染料着色領域と顔料着色領域とが分かれて形成されやすいが、顔料着色領域は染料着色領域に若干かぶって形成されることもある。
また、上記のようにナフトール染料で着色される染料着色領域と、顔料で着色される顔料着色領域とが生地に形成される場合、染色領域は下漬剤で処理された繊維のみが着色(染色)される。染料着色領域を形成する色糊(染料色糊)はナフトール染料と酸性作用抑制剤とを含有している。そして、酸性作用抑制剤は染料色糊が高温となったときに染料色糊の酸性を抑制するようにしている。従って、顔料着色領域を形成する顔料色糊の固着のために生地を高温にしたときに、酸性作用抑制剤により、染料色糊の酸性を抑制することができる。よって、生地に染料色糊の酸性が加わりにくくなり、ナフトール染料と顔料とを併用して着色しても生地が破損しにくくなる。このため、ナフトール染料と顔料とをほとんど制限なく併用して着色することができ、例えば、三原色捺染と顔料との併用などの多彩なデザインに対応する繊維製品を製造することができる。
特に、染料着色領域が朧染の場合、生地の一部の繊維(例えば、緯糸)のみに下漬剤が付着され、生地の他の一部の繊維には下漬剤が付着されていない。下漬剤はアルカリ性物質であるため、下漬剤が付着した繊維には染料色糊の酸による影響を受けにくい。一方、下漬剤が付着した繊維には染料色糊の酸による影響を受けやすく、強度低下等の劣化が促進されやすいと考えられる。従って、染料着色領域が朧染の場合のように、下漬剤が付着されていない繊維の占める割合が多いほど、染料色糊に酸性作用抑制剤を含有させることにより、生地の強度低下を少なくする効果が顕著に発現される。