以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本実施の形態の繊維製品は、タオル、手ぬぐい、ハンカチなどが例示されるが、これに限定されず、衣服やカーテンなどの繊維を素材とするものであればよい。
本実施の形態の繊維製品は、生地に、ナフトール染料で着色された第一着色領域と、反応性染料で着色された第二着色領域とを含む。
本実施の形態では、生地に占める第一着色領域と第二着色領域の比率は任意であり、特に限定されない。また第一着色領域と第二着色領域とで形成される文字や図柄の形状は任意である。
生地は繊維製である。繊維としては、ナフトール染料で染色されやすいことが好ましく、例えば、木綿、麻などのセルロース繊維が挙げられる。
本実施の形態では、異素材の繊維を利用せず、セルロース繊維だけで生地を形成してもよい。この場合、先染調のシャンブレー模様を捺染で表現することが可能である。また繊維として、例えば、綿番手で10〜100番手のものを使用することができる。
生地は繊維製品の強度等を考慮すると織物であることが好ましい。織物の生地の組織としては、繊維製品の使用目的等に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、繊維製品がタオルである場合、生地はパイル織物やタオル織物で形成されている。また生地としては、目付けが500g/m2以下のものが使用可能である。尚、生地は編物や不織布であってもよい。
この生地には全体にわたって略均一に、下漬剤が付着している。下漬剤は、生地の繊維に対して親和性を有するカップリング成分である。下漬剤としては、ナフトールAS類などが例示される。またナフトールAS類としては、C.I.A.C.C.18(商品名(分類)は、ナフトールAS−D)、C.I.A.C.C.20(商品名(分類)は、ナフトールAS−OL)、C.I.A.C.C.19(商品名(分類)は、ナフトールAS−BG)、C.I.A.C.C.4(商品名(分類)は、ナフトールAS−BO)、C.I.A.C.C.5(商品名(分類)は、ナフトールAS−G)、C.I.A.C.C.7(商品名(分類)は、ナフトールAS−SW)、C.I.A.C.C.17(商品名(分類)は、ナフトールBS)、C.I.A.C.C.10(商品名(分類)は、ナフトールE)などが例示される。これらの中でもC.I.A.C.C.20が好ましい。C.I.A.C.C.20の使用で繊維製品の堅牢度を高くすることができる。尚、上記「C.I.A.C.C.」とは、コールキィーアンドピッカーズギル社(Chorlcy&Pickersgil Ltd)から印刷、販売されているカラーインデックス(COLOUR INDEX,SECOND EDITION1956)3巻、アゾイックセクション(AZOICSECTION)に記載されているカラーインデックスアゾイックカップリングコンポーネント(ColourIndex Azoic Coupling Component)の略称である。
本実施の形態では、第一着色領域を形成する第一色糊が、ナフトール染料と酸性作用抑制剤とを含有する。第一色糊は、必要に応じて、水、糊剤、pH調整剤、及び劣化防止剤を含有してもよい。
ナフトール染料(上漬剤又は顕色剤)は、下漬剤と反応して繊維上で水に不溶性の色素を形成して染色する。ナフトール染料としては、ベース類とソルト類のいずれでも使用可能であるが、安定性等を考慮してソルト類が用いられる。ソルト類はベース類をジアゾ化した化合物である。ナフトール染料としては、C.I.A.D.C.20(商品名(色相分類)は、ブルーBBソルト)、C.I.A.D.C.13(商品名(色相分類)は、スカーレットRソルト)、C.I.A.D.C.44(商品名(色相分類)は、イエローGCソルト)、C.I.A.D.C.1(商品名(色相分類)は、ボルドーGPソルト)、C.I.A.D.C.2(商品名(色相分類)は、オレンジGCソルト)、C.I.A.D.C.9(商品名(色相分類)は、レッド3GLソルト)、C.I.A.D.C.38(商品名(色相分類)は、ブラックKソルト)、C.I.A.D.C.3(商品名(色相分類)は、スカーレットGGソルト)、C.I.A.D.C.118(商品名(色相分類)は、グリーンBBソルト)、C.I.A.D.C.48(商品名(色相分類)は、ブルーB)、C.I.A.D.C.35(商品名(色相分類)は、バリアンミンブルーB)、C.I.A.D.C.41(商品名(色相分類)は、バイオレットB)、ダークブルーLR(商品名(色相分類))、ブラウンRR(商品名(色相分類))、レッドB(商品名(色相分類))などが挙げられるが、これらに限定されない。尚、上記「C.I.A.D.C.」とは、カラーインデックスアゾイックジアゾコンポーネント(ColourIndexAzoic Diazo Component)の略称である。第一色糊中のナフトール染料の濃度は、ナフトール染料の種類、第一着色領域の濃淡、生地に付着している下漬剤の種類や量などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、1〜30g/Lであることが好ましく、1〜25g/Lであることがより好ましく、1〜10g/Lであることが更に好ましい。
第一色糊に含まれる酸性作用抑制剤は、常温では中性であり、高温ではアルカリ性を発現する。すなわち、低温の第一色糊中で中性であり、高温の第一色糊中でアルカリ性を発現する。ここで、低温とは反応性染料の染色時に行う熱処理の温度よりも低い温度であり、高温とは反応性染料の染色時に行う熱処理時の温度以上のことをいう。具体的には、低温は80℃未満であることが好ましく、高温とは80℃以上の温度であることが好ましい。酸性作用抑制剤は、有機酸のアルカリ金属塩であり、例えば、トリクロロ酢酸ソーダ(トリクロロ酢酸のナトリウム塩)やギ酸ソーダ(ギ酸のナトリウム塩)などが用いられる。酸性作用抑制剤は、低温では分解せずに中性であって、第一色糊中のナフトール染料の発色を阻害しにくい。従って、第一色糊の発色安定性を確保することができる。一方、酸性作用抑制剤は、高温では分解してカルボン酸などの有機酸のイオンとアルカリ金属のイオン(ナトリウムイオンなど)を発生する。これにより、酸性作用抑制剤の緩衝作用や第一色糊の酸性が中和されるなどして第一色糊の酸性の度合いが抑制(緩和)される。従って、第一色糊の酸性による生地の劣化や損傷を抑えることができる。
第一色糊中の酸性作用抑制剤の濃度は、ナフトール染料の種類や濃度等によって適宜設定可能であるが、0.5〜30g/Lとすることが好ましい。第一色糊中の酸性作用抑制剤の濃度がこの範囲であれば、第一色糊の酸性による生地の劣化や損傷を抑えることができる。酸性作用抑制剤の濃度が0.5g/L未満であると、第一色糊の酸性を充分に抑えることができないおそれがあり、酸性作用抑制剤の濃度が30g/Lを超えても、第一色糊の酸性の抑制に寄与しない過剰な酸性作用抑制剤が残存するだけであり、コスト的に不利になるおそれがある。第一色糊中の酸性作用抑制剤の濃度は、ナフトール染料を基準にした場合、質量比でナフトール染料の0.5〜1.5倍にすることが好ましく、この範囲であれば、第一色糊の酸性による生地の劣化や損傷を抑えることができる。酸性作用抑制剤がナフトール染料の0.5倍よりも少ないと、第一色糊の酸性を充分に抑えることができないおそれがあり、酸性作用抑制剤がナフトール染料の1.5倍よりも多くても、第一色糊の酸性の抑制に寄与しない過剰な酸性作用抑制剤が残存するだけであり、コスト的に不利になるおそれがある。また、第一色糊中のナフトール染料の濃度が低い場合であっても、加工中の水分の蒸発による型枠中に残存する糊の濃縮、スケージ圧の変化(糊粘度の変化、スケージ自体の変化等を含む)、スケージ速度の変化等の理由により、生地に付着する糊の量が増加して、第一色糊の酸性による生地の劣化や損傷が生じ、生地の強度が低下する。このような場合であっても、第一の色糊中に含まれる酸性作用抑制剤によって、糊が過剰に付着した部分の生地の強度の低下を抑制することができる。
第一色糊に含まれる糊剤としては、例えば、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸ソーダ、合成糊、エマルション糊などが例示されるが、これらに限定されない。特に、加工デンプン、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガントガムを糊剤として用いることが好ましく、これにより、第一色糊の耐薬品性を良好にすることができる。第一色糊中の糊剤の濃度は、第一色糊の所望の粘度、染料色糊のナフトール染料の濃度、生地に付着している下漬剤の種類や量などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、50〜100g/Lとすることができる。
pH値低下剤は第一色糊のpH値を低下させるために含有されている。pH値低下剤は、pH値低下剤を配合する前の第一色糊のpH値や第一色糊中のナフトール染料の種類や濃度に応じて含有量が決定される。特に、淡色を染色する第一色糊はナフトール染料の濃度が低いため、pH値低下剤を含有してpH値を低下させるのが好ましい。pH値低下剤としては酸性成分が用いられる。この酸性成分としては無機酸よりも有機酸であることが好ましい。酸性成分として有機酸を用いると、無機酸よりもセルロース繊維の劣化が生じにくくなると考えられ、また環境に与える影響も小さくして安全性を高くすることができる。また有機酸としてはクエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸等が挙げられるが、これらの中でもクエン酸が好ましい。酸性成分がクエン酸である場合では、染色後に生地の繊維に臭気が残存しにくくなり、また第一色糊のpH値を安定化する緩衝効果も期待することできるために好ましい。尚、本実施例の効果も、この緩衝効果に起因することも考えられる。pH値低下剤が含有された染料色糊はpH値が3.0〜3.9であることが好ましい。第一色糊のpH値が3.0未満であると、酸性が強すぎて生地を痛めてしまうおそれがある。第一色糊のpH値が3.9を超えると、酸性が弱すぎて淡色での発色不良が生じやすくなる。特に、淡色を発色させる場合、第一色糊はpH値が3.3〜3.7であることが好ましいが、ナフトール染料の種類や量によって第一色糊の好ましいpH値は異なる。
本実施の形態では、第二着色領域を形成する第二色糊が、反応性染料を含有する。これにより、第二着色領域の風合い等を損なうことなく、第二着色領域を形成することができる。更に、第二色糊は糊剤及び水を含有する。
第二色糊に含まれる反応性染料は、生地のセルロースのOH基との化学結合によって、生地を染色する。反応性染料による染色は、幅広い染料を適用可能な一相法であることが好ましい。この一相法として、例えば、モノクロロトリアジン系染料による置換反応型の染色法、ビニルスルホン系染料による付加反応型の染色法、或いはモノクロロトリアジン系染料の官能基及びビニルスルホン系染料の官能基の両方を備えた染料による染色法が挙げられる。これらの染色法から、捺染適性、発色・保管安定性、洗浄性、染色堅牢度等の性質を考慮して、適宜の染色を採用することができる。尚、反応性染料による染色が、二相法であってもよい。例えば、ビニルスルホン系染料を用いた二相法の場合には、第一色糊中の酸性作用抑制剤の量を少なくすることができる。また、生地が、第一着色領域及び第二着色領域に加えて、顔料で着色される第三着色領域を備える場合には、第二着色領域をビニルスルホン系染料の二相法によって染色する際に、第一色糊中に酸性作用抑制剤が含まれることが必要となる。反応性染料として、例えば、ダイスター(株)製のProcion Black PX―N Liq.40%(Reactive Black8)、Procion Blue PX―5R Liq.33%(Reactive Blue13)、Procion Brilliant Blue PX―3R Liq.40%(Reactive Blue49)、Procion Brilliant Brown PX―2KR Liq.25%、Procion Navy PX―2R Liq.33%(Reactive Blue10)、Procion Navy PX―G Liq.33%(Reactive Black39)、Procion Orange PX―RN Liq.40%、Procion Red PX―4B Liq.33%(Reactive Red3:1)、Procion Red PX―6B Liq.33%(Reactive Red218)、Procion Yellow PX―6GN Liq.(Reactive Yellow95)、Procion Yellow PX―R Liq.33%、Kayacion Black P―GS Liq.40%、Kayacion Black P―NBR Liq.40%、Kayacion Blue P―3R Liq.40%(Reactive Blue49)、Kayacion Blue P―GR Liq.40%(Reactive Blue5)、Kayacion Blue P―NFB Liq.50%、Kayacion Brown P―BDN Liq.33 %(Reactive Brown8)、Kayacion Brown P―N4R Liq.33%、Kayacion Navy P―N2R Liq.30%、Kayacion Orange P―G Liq.20%(Reactive Orange5)、Kayacion Red P―4BN Liq.25%(Reactive Red3:1)、Kayacion Red P―BN Liq.33%(Reactive Red24)、Kayacion Scarlet P―NA Liq.33%、Kayacion Turquoise P―3GF Liq.33%、Kayacion Violet P―3R Liq.33%(Reactive Violet1)、Kayacion YelloW P―5G Liq.33%(Reactive Yellow2)、Kayacion YelloW P―N3R Liq.33%(Reactive Orange99)、ハンツマン(株)製のNovacron Black P―GR Liq.40%、Novacron Black P―SG Liq.40%、Novacron Black P―SGN Liq.40%、Novacron Blue P―3R Liq.40%(Reactive Blue49)、Novacron Brown P―6R Liq.(Reactive Brown11)、Novacron Golden YelloW P―2RN Liq.33%(Reactive Orange12)、Novacron Navy P―2R Liq.(Reactive Blue10)、Novacron Orange P―2R Liq.40%(Reactive Orange13)、Novacron Orange P―4R Liq.40%(Reactive Orange35)、Novacron Red P―4B Liq.33%(Reactive Red3:1)、Novacron Red P―6B Liq.33%(Reactive Red218)、Novacron Red P―BN Liq.33%(Reactive Red24)、Novacron Turquoise P―GR Liq.50%(Reactive Blue72)、Novacron YelloW P―6GS Liq.33%(Reactive Yellow95)、住化テックス(株)製のSumifix Supra Brill. Yellow 3GF 150% gran.、Sumifix Supra Yellow 3RF 150% gran.(Reactive Yellow145)、Sumifix Supra Yellow E―XF 150% gran.Sumifix Supra Brill. Red BSF 150% gran.、Sumifix Supra Brill. Red 3BF 150% gran.(Reactive Red195)、Sumifix Supra Red E―XF gran.、Sumifix Supra Red 4BNF 150% gran.、Sumifix Supra Rubine E―XF gran.、Sumifix Supra Blue BRF 150% gran.(Reactive Blue221)、Sumifix Supra Blue E―XF gran.、Sumifix Supra Navy Blue BF gran.(Reactive Blue222)、Sumifix Supra Navy Blue 3GF 150% gran.、Sumifix Supra Navy Blue GNF gran.、Sumifix Yellow 2GL(A) conc.(Reactive Yellow37)、Sumifix Yellow GR 150%(Reactive Yellow15)、Sumifix Golden Yellow GG(A) 150%(Reactive Yellow76)、Sumifix Brill. Orange 3R 135% gran.(Reactive Orange16)、Sumifix Brill. Red G special(Reactive Red112)、Sumifix Red B 150%(Reactive Red22)、Sumifix Brill. Red BS(Reactive Red111)、Sumifix Brill. Red BB 150%(Reactive Red21)、Sumifix Brill. Blue R 150% gran.(Reactive Blue19)、Sumifix Blue KP liquid、Sumifix Turq. Blue G(N) conc.(Reactive Blue21)、Sumifix Black B 150%、Sumifix Black ENS 150% gran.、Sumifix Black EX conc.、Sumifix Black E―XF、Sumifix HF Yellow 3R gran.、Sumifix HF Scarlet 2G gran.、Sumifix HF Red G gran.、Sumifix HF Red 2B gran.、Sumifix HF Red 3G gran.、Sumifix HF Red 4B gran.、Sumifix HF Blue 2R gran.、Sumifix HF Blue BG gran.、Sumifix HF Navy 2G gran.等が挙げられる。第二色糊中の反応性染料の濃度は、反応性染料の種類、第二着色領域の濃淡等に応じて適宜設定可能である。
反応性染料で染色する場合に、黒色に染色する場合の染料及びこの染料の濃度の一例として、Procion Black PX―N Liq.40%を22.0重量%、Novacron Orange P―2R Liq.40%を1.5%、Novacron Golden YelloW P―2RN Liq.33%を1.5%が挙げられる。また、紺色に染色する場合の染料及びこの染料の濃度の一例として、Procion Navy PX―G Liq.33%を12.0%、Procion Red PX―6B Liq.33%を6.0%、Novacron Black P―SG Liq.40%を2.5%が挙げられる。また、ベージュ色で染色する場合の染料及びこの染料の濃度の一例として、Novacron Black P―SG Liq.40%を0.075%、Novacron Golden YelloW P―2RN Liq.33%を0.055%、Novacron Orange P―2R Liq.40%を0.045%が挙げられる。また、カラシ色で染色する場合の染料及びこの染料の濃度の一例として、Novacron Black P―SG Liq.40%を0.100%、Novacron Golden YelloW P―2RN Liq.33%を0.182%、Novacron Orange P―2R Liq.40%を0.045%が挙げられる。また、グレー色で染色する場合の染料及びこの染料の濃度の一例として、Novacron Black P―SG Liq.40%を2.000%、Novacron Golden YelloW P―2RN Liq.33%を0.242%、Novacron Orange P―2R Liq.40%を0.200%が挙げられ。また、エンジ色で染色する場合の染料及びこの染料の濃度の一例として、Novacron Black P―SG Liq.40%を1.875%、Novacron Golden YelloW P―2RN Liq.33%を1.515%、Novacron Orange P―2R Liq.40%を0.150%が挙げられる。また、オリーブ色で染色する場合の染料及びこの染料の濃度の一例として、Novacron Black P―SG Liq.40%を1.875%、Novacron Golden YelloW P―2RN Liq.33%を1.515%、Novacron Orange P―2R Liq.40%を0.150%が挙げられる。また、グリーン色で染色する場合の染料及びこの染料の濃度の一例として、Novacron Black P―SG Liq.40%を1.500%、Novacron Golden YelloW P―2RN Liq.33%を1.212%、Novacron Turquoise P―GR Liq.50%を0.606%が挙げられる。また、ライトグリーン色で染色する場合の染料及びこの染料の濃度の一例として、Novacron Black P―SG Liq.40%を0.250%、Novacron YelloW P―6GS Liq.33%を0.152%、Novacron Turquoise P―GR Liq.50%を1.515%が挙げられる。また、パープル色で染色する場合の染料及びこの染料の濃度の一例として、Novacron Black P―SG Liq.40%を0.150%、Novacron Red P―6B Liq.33%を1.364%、Kayacion Blue P―3R Liq.40%を0.375%が挙げられる。
第二色糊に含まれる糊剤としては、例えば、反応染料用ハーフエマルジョン糊である古川化学(株)製の商品名「FDエマルジョン」が挙げられる。この場合、重色性が良好となる。その他の糊剤として、例えば、エマルジョン台糊、アルギン系台糊、又はエマルジョン系台糊とアルギン系台糊との混合物が挙げられる。
エマルジョン系台糊の処方例として、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムを主成分とする第一工業製薬(株)製の商品名「DKS ファインガム HES」を1.55%、非イオン界面活性剤を主成分とする乳化剤である日華化学(株)製の商品名「ST−50A」を0.80%、宇部興産(株)製の尿素を5.00%、メタニトロベンゼンスルホン酸ソーダを主成分とする還元防止剤であるダイスター(株)製の商品名「sera con M−LU gran」を1.00%、石油系炭化水素を主成分とする新日本石油製の商品名「灯油」を38.00%、及び水を51.65%を含むものが挙げられる。
アルギン系台糊の処方例として、例えば、アルギン酸ナトリウムを主成分とするキミカ(株)製の商品名「キミテックスα−3」を7.5%、カルボキシメチルセルロースナトリウムを主成分とする第一工業製薬(株)製の商品名「DKS ファインガム HES」を0.6%、旭硝子(株)製の重炭酸ソーダを5.0%、宇部興産(株)製の尿素を20.0%、メタニトロベンゼンスルホン酸ソーダを主成分とするダイスター(株)製の還元防止剤である商品名「Sera con M−LU gran」を2.5%、ヘキサメタ燐酸ナトリウムを主成分とする金属封鎖剤であるミテジマ化学(株)製の商品名「ヘキサメタ燐酸ソーダ」を0.6%、及び水を63.8%含むものが挙げられる。
第二色糊中のエマルジョン台糊、アルギン系台糊、染料、水の配合比率は柄、使用するスケージによって適宜調製される。この配合比率は特に限定されない。第二色糊中にエマルジョン系台糊単独が含まれる場合、エマルジョン系台糊の配合割合が50〜90重量部の範囲内、染料の配合割合の上限値が15重量部、水の配合割合が10〜50重量部の範囲内であることが好ましい。第二色糊中にアルギン系台糊単独が含まれる場合、アルギン系台糊の配合割合が30〜70重量部の範囲内、染料の配合割合の上限値が15重量部の範囲内、水の配合割合が30〜70重量部の範囲内であることが好ましい。第二色糊中にエマルジョン台糊とアルギン系台糊の混合物が含まれる場合、エマルジョン系台糊の配合割合が20〜60重量部の範囲内、アルギン系台糊の配合割合が20〜60重量部の範囲内、染料の配合割合の上限値が15重量部、水の配合割合が20〜50重量部の範囲内であることが好ましい。尚、第二色糊中の染料の配合割合は特に限定されず、少なくとも第二色糊中に染料が含まれていればよく、すなわち染料の配合割合が0質量部よりも大きければよい。更に、6%以上の濃色の染料を使用する場合、又は1%以上のターコイズブルー系の染料を使用する場合には、例えば、ソーダ石灰、尿素、水を1:2:3の割合で、第二色糊全量に対して8%程度追加することが好ましい。また、グレー、ベージュ等の染料を使用する場合には、芳香族スルホン酸塩を主成分とする液体還元防止剤であるセンカ(株)製の商品名「RESISTER LIQUID」を第二色糊全量に対して2〜4%程度追加していもよい。
そして、本実施の形態において、繊維製品は以下のようにして製造される。
まず、下漬処理工程が行われる。この工程では下漬剤が生地を形成するための繊維に付着される。下漬剤は染色される繊維のみに付着させる。例えば、下漬剤は緯糸のみに付着され、経糸やパイル糸などのその他の繊維には付着されないようにする。この場合、生地の緯糸のみが染色され、生地のその他の繊維は染色されない。このように緯糸のみに下漬剤を付着させた生地は朧染(おぼろぞめ)に利用される。その他に、下漬剤は経糸のみに付着され、緯糸やパイル糸などのその他の繊維には付着されないようにしたり、下漬剤はパイル糸のみに付着され、緯糸や経糸などのその他の繊維には付着されないようにしたり、下漬剤は経糸と緯糸のみに付着され、パイル糸などのその他の繊維には付着されないようにしたりすることも可能である。勿論、下漬剤は生地を形成するための総ての繊維に付着されていてもよいし、この場合、下漬剤の付着量が経糸と緯糸とパイル糸などのその他の繊維との間で異なっていてもよい。このように下漬剤を付着させる繊維や量が変わることにより、生地の染色される繊維や色の濃淡が変わることになり、高いデザイン性を有する繊維製品を得ることができる。
繊維に下漬剤を付着させるにあたっては、下漬剤を含有する染液に繊維が浸漬されたり(浸染)、刷毛で塗ったり(引染)する。下漬剤を含有する染液は、下漬剤、ロート油、苛性ソーダ(NaOH)及び水(60〜70℃の熱湯)などを含有して調製されている。染液中の各成分の濃度は特に限定はないが、例えば、下漬剤(ナフトールAS類)10〜15g/L、ロート油15〜20mL/L、苛性ソーダ15〜23mL/Lなどが挙げられる。繊維への下漬剤の付着量は特に限定されないが、例えば、1〜10%owf、好ましくは4〜5%owfである。また繊維への苛性ソーダの付着量は特に限定されないが、例えば、1〜10%owf、好ましくは4〜5%owfである。尚、付着量の単位「owf」は、下漬剤(又は苛性ソーダ)が付着される繊維の単位質量に対する下漬剤の付着質量(又は苛性ソーダ)の割合を示す。例えば、下漬剤の付着量が5%owfの場合、繊維100gに対して下漬剤が5g付着することになる。
次に、整経工程が行われる。この工程では、整経機を使用して、経糸の必要な本数、長さ、張力を揃える。
次に、織り工程が行われる。この工程では、繊維を織って生地が作製される。生地を作製する繊維の一部(例えば、緯糸のみなど)又は全部が、上記下漬処理工程で処理された繊維である。
次に、プリント(捺染)工程が行われる。この工程では、第一色糊及び第二色糊が生地に印捺される。第一色糊と第二色糊はどちらを先に印捺してもよいが、第一色糊と第二色糊は重ならないこと、すなわち重色しないことが好ましい。生地への印捺はロール捺染機やスクリーン捺染機などで行われる。ロール捺染機は転写方式で印捺するものである。図1にはロール捺染機1の一例が示されている。このロール捺染機1には複数のガイドロール2が設けられている。またロール捺染機1には転写ロール4が設けられている。転写ロール4の外面には転写版5が設けられている。転写版5は、例えば、ゴム製の凸版で形成されている。転写ロール4の下方には浸漬ロール6が設けられている。浸漬ロール6はその下部が色糊(第一色糊又は第二色糊)7に浸漬して配置されている。このようなロール捺染機1では、長尺の生地3がガイドロール2にガイドされながら一方向に連続的に進行して搬送される。生地3は搬送されながら転写ロール4と浸漬ロール6との間を通過する。このとき、生地3における繊維製品の端末となる部分を感知し、このタイミングに合わせて転写ロール4が回転する。転写ロール4の回転により転写版5で生地3が上から押圧され、生地3が浸漬ロール6に接触する。これにより、浸漬ロール6の表面に付着している色糊7が生地3に付着する。このようにしてロール捺染機1で生地3に印捺される。
一方、スクリーン捺染機10は謄写版方式で印捺するものである。図2にはスクリーン捺染機10の一例が示されている。このスクリーン捺染機10にはコンベアベルト11が設けられている。コンベアベルト11の上方には複数のプリント型(スクリーン型)12が配置されている。複数のプリント型12はコンベアベルト11の進行方向に並べて設けられている。プリント型12は額縁状の枠体15にスクリーン(紗)16を貼り付けて形成されている。またスクリーン16にはメッシュ部13が設けられている。メッシュ部13は所望の形状(柄)に形成されている。各プリント型12の上方にはゴム製等のスケージ14が配置されている。スケージ14はコンベアベルト11の進行方向と直交する方向で往復移動自在に形成されている。このようなスクリーン捺染機10では、長尺の生地3がコンベアベルト11の上に載せられて一方向に連続的に進行して搬送される。生地3は搬送されながらプリント型12の下方を通過する。このとき、生地3における繊維製品の端末となる部分を感知し、このタイミングに合わせてスケージ14が移動する。スケージ14の移動によりプリント型12のスクリーン16上に供給した色糊(第一色糊又は第二色糊色糊)7がメッシュ部13上を通過し、色糊7の一部がメッシュ部13を通過する。そして、メッシュ部13を通過した色糊7が生地3に付着する。このようにしてスクリーン捺染機10で生地3に印捺される。
次に、熱処理工程が行われる。この工程では、プリント工程後の生地に熱処理が施される。この熱処理により生地が乾燥されると共に、生地のセルロースのOH基と第二色糊中の反応性染料とが化学結合して、第二着色領域が染色される。
この熱処理工程は、飽和工程、過熱工程、乾熱工程を含む。飽和工程は、飽和蒸気による発色工程であり、その条件は、例えば、98〜100℃で5〜10分の条件である事が好ましい。過熱工程は、過熱蒸気による発色工程であり、その条件は、例えば、105〜140℃で5〜10分の条件であることが好ましい。乾熱工程では、例えば、130〜160℃で2〜15分の条件であることが好ましい。
本実施の形態では、これらの熱処理工程において、生地が第一色糊に含まれる反応性染料で染色される温度以上の温度となったときに、アルカリ性を示す。すなわち、熱処理工程による高温で、第一色糊に含まれる酸性作用抑制剤がアルカリ性に転化することにより、第一色糊の酸性が生地に作用しにくくなって、生地の劣化が生じにくくなる。
次に、縁縫い工程が行われる。この工程では、上記熱処理工程で得られた生地の縁縫いがオーバーミシン等で行われる。
次に、亜硫酸通し工程が行われる。本実施の形態では、亜硫酸通し工程は、過剰なナフトール染料の泣き出しを防止するための重亜流ソーダ処理である。この工程では、例えば、重亜硫酸ソーダが10g/Lの亜硫酸槽が浴比1:20で用いられ、温度90〜95℃で10〜20分の条件で行われる。
次に、糊抜・精練工程が行われる。この工程に用いる処理浴としては、例えば、α−1,4−グルカン−4−グルカノヒドロラーゼ及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする洛東化成工業(株)製の商品名「JST−6000」が、3g/Lの濃度で用いられる。処理条件は、例えば、温度が90〜95℃、時間が約90分間である。
次に、晒工程が行われる。本実施の形態では、晒工程で用いる処理浴に乳酸と過酸化水素とが含まれる。このような処理浴は安定性があり、また部分的に漂白されたような斑模様が形成されにくい。この処理浴の処方の一例として、例えば、大同化成工業(株)製のDSCフィクサーHリキッドが1.5g/L、DSCオスボンUコンク25が1.5g/L、DSCオスボンカタリストMH25が4g/L、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)が13.5g/L、過酸化水素が2g/Lである処理浴が挙げられる。この大同化成工業(株)製の「DSCオスボンUコンク25」は主成分が乳酸である。処理浴の温度は10〜30℃の範囲内であることが好ましい。すなわち、本実施の形態では、晒工程が高温晒ではなく、常温晒(コールド晒)であることが好ましい。ナフトール染料で生地の染色を行う場合には高温で精錬・晒が行われるが、本実施の形態のようにナフトール染料と反応性染料と併用する場合に高温で精錬・晒を行うと、反応性染料の種類によっては、アルカリ存在下で加水分解される、または高温の酸化剤(過酸化水素)の影響によって、褪色が生じることがある。この褪色は、第二着色領域から反応性染料が脱落することによって生じると考えられるが、この脱落した反応性染料によって、白場(柄以外の部分)に色がついてしまることがある(白場汚染)。これに対して、本実施の形態では、上記の処理浴を用いると共に、処理浴の温度が上記の範囲内であることによって、反応性染料の褪色を抑制することができる。晒工程における晒時間は、例えば、5〜60時間の範囲内であることが好ましいが、最後の30分間は昇温させることが好ましく、昇温時の処理浴の温度は60℃であることが好ましい。
次に、洗い・柔軟工程が行われる。この工程では、例えば、連続ウインスが用いられ、また必要に応じて柔軟剤が1g/Lの処理浴が用いられ、洗い温度約70℃で時間20〜30分間の条件で行われる。この柔軟剤として、例えば、一方社油脂工業(株)製の商品名「ロイヤルソフト」を使用することができる。
次に、脱水工程が行われる。この工程では、遠心脱水機などが用いられる。次に、乾燥工程が行われる。
この工程では、サクション乾燥機などが用いられ、例えば、温度100〜120℃で時間約10分間の条件で行われる。この後、ヘムミシン工程や検査工程を経て、タオルなどの繊維製品が製造される。
本実施の形態の繊維製品では、ナフトール染料で着色される第一着色領域と、反応性染料で着色される第二着色領域とが生地に形成されている。第一着色領域は下漬剤で処理された繊維のみが着色(染色)され、例えば、朧染で着色される。第二着色領域は下漬剤の有無は関係なく繊維が着色(染色)される。第一着色領域を形成する第一色糊には酸性作用抑制剤が含まれる。そして、酸性作用抑制剤は第一色糊が高温となったときに第一色糊の酸性を抑制する。従って、生地のセルロースのOH基と第二色糊に含まれる反応性染料との化学結合のために、生地を高温にしたときに、酸性作用抑制剤により、第一色糊の酸性を抑制することができる。よって、生地に第一色糊の酸性が加わりにくくなり、ナフトール染料と反応性染料とを併用して着色しても生地が破損しにくくなる。このため、ナフトール染料と反応性染料とをほとんど制限なく併用して着色することができ、例えば、三原色捺染と反応性染料との併用などの多彩なデザインに対応する繊維製品を製造することができる。尚、第二色糊はあらかじめアルカリ性に調整されていることから、第二色糊には、酸性作用抑制剤が含まれていなくてもよい。
特に、第一着色領域が朧染の場合、生地の一部の繊維(例えば、緯糸)のみに下漬剤が付着され、生地の他の一部の繊維には下漬剤が付着されていない。下漬剤はアルカリ性物質であるため、下漬剤が付着した繊維には第一色糊の酸による影響を受けにくい。一方、下漬剤が付着していない繊維は第一色糊及び第二色糊の酸による影響を受けやすく、強度低下等の劣化が促進されやすいと考えられる。従って、第一着色領域が朧染の場合のように、下漬剤が付着されていない繊維の占める割合が多いほど、本実施の形態のように、第一色糊及び第二色糊に酸性作用抑制剤を含有させることにより、生地の強度低下を少なくする効果が顕著に発現される。
また、本実施の形態では、第二着色領域が反応性染料で着色されていることにより、第二着色領域を顔料で着色されている場合よりも、繊維製品の吸水性が優れ、肌触りも良好である。第二着色領域を顔料で着色される場合には、バインダーによって顔料を生地に固着させるが、このバインダーによって繊維製品の吸水性及び肌触りが低下してしまう。これに対して、本実施の形態では、第二着色領域が反応性染料で着色されており、第二着色領域の着色にあたりバインダーを使用していないため、生地の吸水性を確保することができると共に、生地の肌触りを良好にすることができ、特に本実施形態の繊維製品をタオル等の直接肌に触れる用途に使用する場合の風合いを特に向上させることができる。
尚、本実施の形態では、生地に第一着色領域と第二着色領域とが形成されているが、更に第一着色領域及び第二着色領域以外の着色領域(以下、第三着色領域ともいう)が形成されていてもよい。この場合、繊維製品により多彩な文字、図柄等を形成することができる。
第三着色領域は、例えば、顔料で着色されていてもよい。この場合、生地に占める第三着色領域の割合は20%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。この場合、繊維製品の吸水性を確保することができる。特に吸水性を考慮すると、第三着色領域のモティーフが、幅1mm以内のラインで構成されていることが好ましい。
顔料色糊は、顔料とバインダーと乳化剤と水を含有し、必要に応じて、ホワイトターペン(ケロシン)や架橋剤などを含有して調製されている。
顔料は有機顔料と無機顔料のいずれでも良い。また顔料は天然顔料と合成顔料のいずれでも良い。また顔料は所望の色のものが用いられる。顔料としては、例えば、株式会社松井色素化学工業所製の「MATSUMIN NEO」(ブランド名)の「Gold Yellow MFR」、「Red MGD」、「Red MFB」、「Violet MFB」、「Navy Blue MB」、「Blue MB」、「Blue MG」、「Green MB」、「Green MY」、「Dark Green MG」、「Brown MG」、「Dark Brown MFB」、「Black MK」などが挙げられる。また顔料としては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製の「RYUDYE−W」(ブランド名)の「Yellow FF8G」、「Orange FKS」、「Rubine FF2B」、「Navy Blue FF3R」、「Grey FFB」や「DEXCEL COLOR」(ブランド名)の「Light Yellow HG」、「Golden Yellow HR」、「Orange HR」、「Scarlet HG」、「Red HB」、「Violet HR」、「Blue HG」、「Blue H2R」、「Green HB」、「Brown HR」、「Black HR」などが挙げられる。また顔料としては、例えば、東洋インキ株式会社製の「WS COLOR」(ブランド名)の「Orange OL−1」などが挙げられる。また顔料としては、例えば、大日精化工業株式会社製の「NEW LACQTIMINE」(ブランド名)の「TC Red FG」、「TC Red F2B」、「TC Grey FG」などが挙げられる。
バインダーは顔料を生地の繊維に固着させるものであって、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等の合成樹脂が含まれている。尚、顔料とバインダー一体型特殊顔料として、株式会社松井色素化学工業所製の「ダイストーンXカラー」なども使用可能である。架橋剤はバインダーを架橋して硬化させるものであって、バインダーの種類に対応させてメラミンやイソシアネート化合物、エポキシ化合物、エチレンイミン等が用いられる。尚、顔料色糊で淡色を染色する場合、顔料色糊に架橋剤を添加しなくても良い。また顔料色糊に上記の染料を少量加えても良い。乳化剤としては、例えば、新中村工業株式会社製の「ビスコン S 500HN」などを用いることができる。ホワイトターペンとしては、例えば、出光興産株式会社製の「スーパーゾル」などを用いることができる。尚、乳化剤には若干量の糊剤が混入されている場合がある。また、乳化剤には、ノンターペン用、低ターペン用、通常品に一応分類されるが、顔料色糊の成分等に応じて適宜使用することができる。
顔料色糊中の顔料の濃度は、顔料の種類、第三着色領域の濃淡などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、0.1〜100g/Lとすることができる。顔料色糊中のバインダーの濃度は、顔料の種類や濃度などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、30〜200g/Lとすることができる。顔料色糊中の架橋剤の濃度は、バインダーの種類や濃度などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、20〜50g/Lとすることができる。顔料色糊中の糊剤の濃度は、顔料色糊の所望の粘度、顔料の濃度、生地に付着している下漬剤の種類や量などに応じて適宜設定可能であるが、例えば、50〜100g/Lとすることができる。
第三着色領域を顔料で着色する場合、例えば、上記のプリント工程で第一色糊及び第二色糊を生地に印捺する際に、併せて、顔料色糊を生地に印捺する。顔料色糊を引捺する方法は、特に限定されず、例えば、ロール捺染機、スクリーン捺染機等を用いることができる。そして、上記の熱処理工程によって、生地に印捺された顔料色糊中のバインダーが架橋剤により硬化して顔料が生地の繊維に固着される。
尚、第三着色領域は、顔料で着色されることに限られない。例えば、第三着色領域が、スレン系染料によって着色されていてもよい。この場合、過熱工程において、飽和蒸気を高度に管理することができるスチーマーを使用することが好ましい。また、スレン系染料の発色には還元剤が必要となるが、第一色糊に含まれるナフトール染料及び第二色糊に含まれる反応性染料に影響を与え得る。このため、第三着色領域をスレン系染料によって着色する場合には、第一色糊及び第二色糊に、還元防止剤を添加することが好ましく、メタニトロベンゼンスルホン酸ソーダを添加することが好ましい。第三着色領域をスレン系染料で着色する場合、第三着色領域を顔料で着色する場合よりも、繊維製品の吸水性を向上させることができる。更に、生地に第一着色領域、第二着色領域、及び第三着色領域が形成されると共に、更にその他の着色領域が形成されていてもよい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
まず、上記と同様の下漬処理工程と織り工程と縁縫い工程とが順に行われた。生地は木綿繊維のパイル織物で形成されていた。この未処理の生地の強度は経糸252N、緯糸272Nであった。
生地の緯糸は下漬剤で処理されていた。下漬剤としては浜本貿易株式会社が販売するナフトールAS−OLが用いられ、緯糸の下漬剤の付着量は4〜5%owfであった。経糸及びパイル糸は下漬剤で処理されていなかった。
次に、上記と同様のプリント工程が行われた。プリント工程の印捺は上記と同様のスクリーン捺染機で室温25〜30℃の条件下で行われた。
第一色糊は水とナフトール染料と糊剤と酸性作用抑制剤とpH調整剤とを含有して調製されていた。ナフトール染料は昭和化工株式会社製の商品名「イエローGC」が用いられ、1g/Lの濃度(第一色糊1リットルに対する含有質量)で含有されていた。糊剤は有限会社オカダ化研製の商品名「ThicknerA−12」が用いられ、70g/Lの濃度で含有されていた。この糊剤は、主成分がグアーガムであって、強酸に対しても粘度低下が生じにくい。酸性作用抑制剤は、トリクロロ酢酸ソーダを主成分とするクラリアント ジャパン株式会社製の商品名「ドリマレンソルトFD」を用い、20g/Lの濃度で含有されていた。第一色後のpH値は3.5であった。
第二色糊は、反応性染料と糊剤と尿素とを含有して調製されていた。この反応性染料の濃度は25g/Lであり、この糊剤の濃度は500g/Lであり、この尿素の濃度は5g・Lであった。反応性染料は、ダイスター(株)製のNovacron Black P―SG Liq.40%を0.500%と、日本化薬(株)製のKayacion Red P―BN Liq.33%を1.818%と、ダイスター(株)製のNovacron Orange P―2R Liq.40%を0.200%とを含有していた。糊剤は、アルギン酸ソーダ等の天然糊剤とエマルジョンの混合溶液である古川化学工業(株)製のFDエマルジョンであった。第二色糊のpH値は10〜11であった。
次に、熱処理工程が行われた。この工程ではプリント工程後の生地を150℃で1分間の条件で乾燥した後、蒸気によるスチーミングを行った。スチーミングの条件は、飽和状態で98〜100℃、5〜10分であり、過熱状態で105〜140℃、5〜10分であり、乾熱状態で130℃、15分であった。
次に、上記と同様の亜硫酸通し工程、及び糊抜・精練工程を行った。
次に、上記と同様の晒工程を行った。晒工程で使用する処理浴には、大同化成工業(株)製のDSCフィクサーHリキッドが1.5g/L、DSCオスボンUコンク25が1.5g/L、DSCオスボンカタリストMH25が4g/L、苛性ソーダが2g/L、過酸化水素が13.5g/Lが含まれていた。晒工程における処理浴の温度は10〜30℃であり、最終段階の30分間では処理浴の温度を60℃まで昇温させた。晒工程における晒時間は960分であった。
次に、上記と同様の洗い・柔軟工程、脱水工程、乾燥工程、ヘムミシン工程、検査工程の順で行われた。これにより、黄色系統に染料で着色された第一着色領域(朧染)と反応性染料で着色された第二着色領域とを有する繊維製品(タオル)が製造された。
(実施例2〜7)
実施例1において、第一色糊中の染料の濃度を表1に示すようにした。これ以外は、実施例1と同様にして繊維製品が製造された。
(比較例1〜7)
実施例1において、第一色糊中に酸性作用抑制剤を配合せず、第一色糊の酸性作用抑制剤の濃度を0g/Lとした。また、第一色糊中の染料の濃度を表2に示すようにした。これ以外は、実施例1と同様にして繊維製品が製造された。
(実施例8〜14)
実施例1において、第一色糊中の染料の濃度を表3に示すようにし、熱処理工程におけるスチーミングにおける乾熱状態の温度及び時間を150℃、2分とした。これ以外は、実施例1と同様にして繊維製品が製造された。
(比較例8〜14)
実施例1において、第一色糊中に酸性作用抑制剤を配合せず、第一色糊の酸性作用抑制剤の濃度を0g/Lとした。また、第一色糊中の染料の濃度を表4に示すようにし、熱処理工程におけるスチーミングにおける乾熱状態の温度及び時間を150℃、2分とした。これ以外は、実施例1と同様にして繊維製品が製造された。
(実施例15)
実施例1において、第一色糊に含まれる酸性作用抑制剤として、(株)朝日化学工業のギ酸ソーダを20g/Lの濃度で使用し、熱処理工程におけるスチーミングにおける乾熱状態の温度及び時間を130℃、15分とした。これ以外は、実施例1と同様にして繊維製品が製造された。
(実施例16)
実施例1において、熱処理工程におけるスチーミングにおける乾熱状態の温度及び時間を130℃、15分とし、晒工程の条件を苛性ソーダ1g/L、過酸化水素1g/Lからなる処理浴で、晒温度を90〜95℃、晒時間を90分とした。これ以外は、実施例1と同様にして繊維製品が製造された。
(実施例17)
プリント工程において、第一色糊及び第二色糊に加えて、顔料色糊が使用され、第三着色領域が形成された。この顔料色糊には、(株)松井色素化学工業所製の「Xペースト」が93.8%、松井色素化学工業所(株)製の商品名「フィクサーXAE」が5%、(株)松井色素化学工業所製の「ダイストーン プリントゲンXA−2」が0.2%、(株)松井色素化学工業所製の「顔料R−MX」が1%で含有されていた。生地を示す第三着色領域のの割合は2%であり、第三着色領域は1mm以下の太さの柄で形成されていた。また、熱処理工程におけるスチーミングにおける乾熱状態の温度及び時間を130℃、15分とした。これら以外は、実施例1と同様にして繊維製品が製造された。
(実施例18)
実施例1において、第一色糊に含まれる酸性作用抑制剤であるクラリアント ジャパン株式会社製の商品名「ドリマレンソルトFD」の濃度を0.5g/Lとし、熱処理工程におけるスチーミングにおける乾熱状態の温度及び時間を130℃、15分とした。これ以外は、実施例1と同様にして繊維製品が製造された。
(実施例19)
実施例1において、第一色糊に含まれる酸性作用抑制剤であるクラリアント ジャパン株式会社製の商品名「ドリマレンソルトFD」の濃度を30g/Lとし、熱処理工程におけるスチーミングにおける乾熱状態の温度及び時間を130℃、15分とした。これ以外は、実施例1と同様にして繊維製品が製造された。
(比較例15)
実施例1において、第一色糊に酸性作用抑制剤を配合せず、第一色糊の酸性作用抑制剤の濃度を0g/Lとした。また、熱処理工程におけるスチーミングにおける乾熱状態の温度及び時間を130℃、15分とした。また、晒工程の条件を苛性ソーダ1g/L、過酸化水素1g/Lからなる処理浴で、晒温度を90〜95℃、晒時間を90分とした。これ以外は、実施例1と同様にして繊維製品が製造された。
上記の実施例1〜19及び比較例1〜15について、生地の強度(経糸、緯糸)褪色(第二着色領域、白場汚染)、生地の吸水性について評価を行った。生地の強度の評価はJIS L 1096 A法(ラベルドストリップ法)を採用した。尚、生地の強度は生地に熱処理を施した時点での強度を評価した。褪色の評価はJIS L 0804(変退色用グレースケール法)を採用した。吸水性の評価はJIS L 1907 沈降法を採用した。その結果を表1〜表5に示す。また、実施例1〜7及び比較例1〜7の繊維製品の経糸の強度を図4Aに示し、緯糸の強度を図4Bに示す。また、実施例8〜14及び比較例8〜14の経糸の強度を図5Aに示し、緯糸の強度を図5Bに示す。
表1から明らかなように、第一色糊中に酸性作用抑制剤を配合した実施例1の方が、第一色糊中に酸性作用抑制剤を配合しなかった比較例1よりも、経糸及び緯糸の強度が高い。表1、表2、図4A、図4Bから明らかなように、第一色糊中の染料の濃度を変化させた実施例2〜7及び比較例2〜7においても、同様の傾向が示されている。また、表3、表4、図5A、図5Bから明らかなように、熱処理条件を変化させた実施例8〜14及び比較例8〜14においても、同様の傾向が示されている。また、酸性作用抑制剤として、トリクロロ酢酸ソーダではなく、ギ酸ソーダが含まれている実施例15においても生地の強度を十分に確保することができた。
また、糊抜、精錬、晒工程における処理浴の温度が常温であった実施例1〜15、および実施例17〜19では、第二着色領域の褪色が生じておらず、白場汚染も生じなかった。一方、糊抜、精錬、晒工程における処理浴の温度が高温であった実施例16および比較例15では、第二着色領域で褪色が生じると共に、白場汚染が生じた。これは処理浴の温度が高温であることで、第二着色領域から反応性染料が脱落し、この脱落した反応性染料によって白場領域が染色されたためであると考えられる。
また、実施例17では、顔料で着色された第三着色領域が形成されているが、生地に占める第三着色領域の割合が10%未満であるため、生地の強度及び吸水性が確保されている。尚、第三着色領域の吸水性を測定すると、表5に示すように吸水性が低下していた。
また、第一色糊中の酸性作用抑制剤の濃度が0.5g/Lである実施例18、第一色糊中の酸性作用抑制剤の濃度が30g/Lである実施例19においても、生地の強度を確保することができた。
尚、図3には本発明の一例が示されている。この繊維製品は、実施例1のプリント工程
を行ったタオルである。図中の(1)の着色領域はナフトール染料で着色された第一着色
領域(朧染)である。図中の(2)の着色領域は反応性染料で着色された第二着色領域である。図中の(3)の着色領域は(2)よりも薄い色の反応性染料で着色された第二着色領域である。図3のように、本発明では、ナフトール染料と反応性染料とを用いた多彩な模様の繊維製品が得られる。