JP3401641B2 - オパール加工パイル布帛及びその製造方法 - Google Patents

オパール加工パイル布帛及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】本発明は、意匠性の向上した
オパール加工パイル布帛及びその製造方法に関するもの
である。
【従来の技術】従来から布帛の意匠性を向上させる手段
の一つとして、耐薬品性の異なる繊維を混用して製布
し、耐薬品性の劣る繊維を焼き抜き除去して模様を付与
するオパール加工が知られている。例えば、比較的耐酸
性であるポリエステル繊維と、綿繊維のように酸に弱い
セルロース系繊維とを交織あるいは交編した織編物、も
しくはこれらの繊維を混紡あるいは交撚した糸条を用い
て製布した織編物を酸で処理して、セルロース系繊維を
焼き抜き除去して、織編物に透かし模様を付与し、意匠
性を増強することが行われている。一方、布帛の片面あ
るいは両面にパイルを有するパイル布帛の意匠性を向上
させる手段として、製布段階に色糸配置や柄出し装置に
よる模様を付与する方法、捺染により捺染模様を付与す
る方法、あるいは製布段階や仕上加工段階でループパイ
ルとカットパイルを混在させるとかパイルの高さの異な
る部分を作る等のパイルの性状に変化を与える方法等が
行われている。パイル布帛に捺染模様を付与する方法と
しては、一般の布帛への捺染と同様にスクリーン捺染機
を用いる方法とローラー捺染機を用いる方法が共に採用
されている。
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の現状
を鑑みてなされたものであり、新規なより意匠性の向上
したパイル布帛とその製造方法を提供することを課題と
するものである。
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するものであり、地部が耐酸性の合成繊維からな
り、パイル部がセルロース系繊維からなるパイル布帛で
あって、該パイル布帛には、顔料捺染による捺染模様が
付与されていて、該捺染模様の付与されている少なくと
も一部のパイルの高さが、オパール加工により他部分の
パイルの高さより低くなっていることを特徴とするオパ
ール加工パイル布帛及び地部が耐酸性の合成繊維からな
り、パイル部がセルロース系繊維からなるパイル布帛
に、スクリーン捺染機にて顔料を含有する捺染糊により
所定色数の印捺をした後、該顔料を含有するオパール糊
を印捺した少なくとも一部に強酸を含有するオパール糊
を印捺して、該強酸を含有するオパール糊を印捺した部
分のパイルの一部を焼き抜きし、しかる後強酸を含有す
る捺染糊を除去することを特徴とするオパール加工パイ
ル布帛の製造方法を要旨とするものである。
【発明の実施の形態】本発明におけるパイル布帛は、衣
料用や敷物用として用いられる布帛の片面にパイルを有
するパイル布帛であっても、毛布、タオル、タオルケッ
ト等に用いられる両面にパイルを有するパイル布帛であ
ってもいずれでもよい。したがって本発明のパイル布帛
を製布する方法としては、モケット織機、タオル織機、
タフト機等のパイル布帛専用織機のみならずパイルを形
成できる製織方法が採用できるし、編機においてもダブ
ルラッセル編機を始め丸編機、トリコット編機等による
パイルを形成できる製編方法が採用できる。本発明のパ
イル布帛は、地部が耐酸性の合成繊維からなり、パイル
部がセルロース系繊維からなるパイル布帛である。地部
の耐酸性の合成繊維とは、ポリエステル系繊維、オルフ
ィン系繊維、ビニロン繊維等の合成繊維の中でも比較的
耐酸性を有する繊維であり、このような繊維とするの
は、酸によるオパール加工を行った際に工程不安定等の
ため地部が酸により損傷を受け、強度低下等により製品
の耐久性が損なわれることを防止するためである。地部
の組織や密度等は、製布法や製品の用途により決定され
ればよく、特に限定されるものではない。本発明のパイ
ル布帛のパイル部は、綿繊維、麻繊維、レーヨン繊維、
アセテート繊維等のセルロース系繊維からなり、これら
の繊維単独でパイルが形成されていても、これらの繊維
が混用されていてもよい。パイルの密度や高さも、製布
法や製品の用途により決定されればよく、特に限定され
るものではないが、本発明の効果をより発揮するために
は、パイルの高さが3mm程度より高いのが好ましい。
本発明のパイル布帛には、顔料捺染による捺染模様が付
与されている。捺染模様が付与される前に地染めがなさ
れていてもよいし、顔料捺染による捺染模様の部分以外
の部分に染料による捺染模様が付与されていてもよい。
顔料捺染による捺染模様は、1色のみであっても、複数
色の捺染模様であってもよい。本発明のパイル布帛は、
上記の顔料捺染による捺染模様の付与されている部分の
少なくとも一部分のパイル部にオパール加工が施され
て、このパイルの高さが他の部分より低くなっている。
本発明の最大の特徴は、パイル布帛に顔料捺染が施され
ていて、少なくともその一部分は、オパール加工によっ
てパイルの高さが低くなっていて、かつ高さが低くなっ
ているパイルも顔料捺染による着色が施されていること
にある。従来のオパール加工は、オパール糊を印捺した
部分に存在する耐薬品性の劣る繊維の全てを焼き抜きし
て、透かし模様を得ているのであるが、本発明では、オ
パール糊を印捺した部分の繊維の全てを焼き抜きしてし
まうのではなく、パイルの上部のみを焼き抜きし、パイ
ルの低部は残存させて、かつその部分のパイルは、顔料
捺染により着色されているのである。このように本発明
のパイル布帛は、残存下部に着色部を残すことにより、
より一層模様が明瞭化され立体感が出て、より意匠性の
高いものとなっているのである。本発明のパイル布帛を
図面により説明すると、例えば図1のような木葉を基本
模様とした捺染模様で木葉の輪郭部1と葉脈部2に顔料
捺染とオパール捺染の両方を施し、葉身部3には顔料捺
染のみなされているとしたとき、顔料捺染とオパール捺
染の両方が施された部分1、2のパイルは、図2に模式
的に示すごとく他の部分より高さが低くなっていると共
に顔料着色されていて、顔料捺染のみなされた部分3の
パイルは、顔料着色されていて、パイルの高さは元のま
まである。上記のような顔料捺染とオパール加工は、下
記のような条件で行われる。顔料捺染は、フラットスク
リーン捺染機、ロータリースクリーン捺染機等のスクリ
ーン捺染機を用いる方法やローラー捺染機を用いる方法
のいずれを用いてもよいが、使用できる捺染糊の粘度の
範囲を比較的広く取れるスクリーン捺染機を用いる方法
が、本発明にはより適している。顔料捺染及びオパール
加工の施されるパイル布帛は、前記したようなパイルを
形成できる製布法で製布された布帛であって、捺染され
る際にはパイルが形成されているのが通常であるが、パ
イルが形成できる組織にて製布されていて、起毛やパイ
ル引き出し処理等の後処理にてパイルを形成できる布帛
であってもよい。顔料捺染は、顔料、バインター樹脂及
び乳化剤を主とする捺染糊を印捺することにより行われ
る。この際に用いる顔料としては、酸に対して安定なも
のを用いるのが好ましく、その例としては、無機顔料や
ジスアゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料等があり、
具体的には松井色素株式会社製(三原色)マツミンネオ
カラーのゴールデンイエローMFR、ローズMB、ブル
ーMB等が挙げられる。またバインダーとして用いられ
る樹脂としても、酸に対して安定なものを用いるのが好
ましく、その例としては、アクリル酸エステル系樹脂等
のアクリル系樹脂があり、具体例としては 松井色素株
式会社製マツミンゾールSS−800等が挙げられる。
捺染糊液に用いる乳化剤としては、主として非イオン活
性剤が使用できる。顔料を含有する捺顔料を含有する捺
染糊の粘度は、捺染するパイル布帛の、パイル密度等に
よるがパイルの低部まで捺染糊が浸透するように、70
00〜8000cps程度に調整するのが好ましい。本
発明では、顔料を含有する捺染糊を印捺した後に強酸を
含有するオパール糊を印捺する。この場合、顔料捺染糊
を印捺した部分全部にオパール糊を印捺してもよいが、
顔料捺染糊を印捺した部分の少なくとも一部にオパール
糊を印捺されればよい。顔料捺染糊を印捺した部分の輪
郭部にオパール糊を印捺する等、意匠性を考慮してオパ
ール糊を印捺する部分は決定されればよい。またオパー
ル糊を印捺する部分は、顔料捺染糊を印捺した部分の1
色部分のみでなく、多色部に渡っていてもよい。本発明
のような効果を求める場合に、顔料を含有する捺染糊に
強酸を入れて印捺することも考えられるが、捺染糊に入
れる増粘剤や乳化剤が強酸に耐えられず不安定な捺染糊
になり、印捺ができなくなったり、できたとしても印捺
部分のパイルが全部なくなってしまったり、まばらに残
ったりし、安定してパイルの低部を着色した状態で残す
ことが難しい。また、オパール糊の印捺は、顔料用捺染
糊を印捺後の乾燥工程を通してから行ってもよいが、工
程の煩雑さの回避の点やオパール糊の印捺後の顔料のパ
イル低部への移行が促進される等の点から、顔料用捺染
糊を印捺に引き続いて行うのが好ましい。本発明におい
て、オパール加工を行うオパール糊は、硫酸、硫酸水素
ナトリウム、硫酸アルミニューム等の硫酸化合物等の強
酸を含有し、セルロース系繊維からなるパイルの上部を
焼き抜きする働きをする。一般には、顔料捺染の捺染糊
は、水溶性エマルジョンとなっているので、オパール糊
がパイルの低部にまで浸透しにくいように、オパール糊
は油性エマルジョンとするのが好ましい。具体的なオパ
ール糊の例としては、硫酸、硫酸化合物等を油性用乳化
剤でターペン、水等に乳化して油性エマルジョンとした
ものが挙げられる。上記のごとくに印捺の後、乾燥工
程、水洗工程を経て本発明のパイル布帛が得られる。乾
燥工程は、顔料捺染糊の乾燥、バインダー樹脂の固着等
の目的で行い、通常ノンタッチ式乾燥機で行うのが好ま
しく、温度条件としては130〜180℃で行うのが好
ましい。また乾燥工程は、オパール糊を印捺してからで
きるだけ短い時間の間に行うのが好ましい。水洗工程
は、未固着樹脂や酸、焼き抜き物等の除去のために行
う。水洗工程後は、必要に応じて後加工仕上げ剤を付
与、仕上げセット等を行う。
【実施例】次に本発明を実施例により具体的に説明す
る。 実施例1 地部を形成する糸条として、ポリエステル100%のフ
ィラメント糸110dtexを用い、パイルを形成する
糸条として、綿繊維100%の紡績糸20番双糸を用い
て、ダブルラッセル編機にて編成し、センターカットす
ることにより得たパイル編物に、東伸工業株式会社製一
ノ瀬#7000番タイプ型フラットスクリーン捺染機を
用いて、図1のような木葉模様を基本模様として配置し
た捺染模様を印捺した。その際木葉の輪郭部1と葉脈部
2を濃緑色として、第一の型枠で印捺し、葉身部3を淡
緑色として第二の型枠で印捺し、オパール糊は濃緑色捺
染部に重ねて第三の型枠で印捺した。顔料捺染糊の組成
としては、バインダー樹脂として、アクリル酸エステル
系樹脂である松井色素株式会社製のマツミンゾールSS
800を用い、増粘剤としては、松井色素株式会社製の
エマコールR−1300(水溶性タイプ)を、乳化剤と
しては、松井色素株式会社製のエマコールR407(水
溶性タイプ)を用い、水溶性エマルジョンタイプとし
た。顔料としては、松井色素株式会社製のマツミンネオ
カラー高堅牢度タイプを用い、濃緑色用と淡緑色用は、
濃度を変えて調整した。オパール糊としては、オパール
用油性タイプエマルジョン糊として、松井色素株式会社
製のプリントゲンN(硫酸水素ナトリウム)、8%、プ
リントゲンE−88(浸透安定剤)10%、エマコール
RZ(油性用乳化剤)6%、水66%をホモミキサーに
て撹拌乳化した糊を用いた。得られたパイル布帛は、図
1の顔料捺染のみ施された部分2のパイルが淡緑色に着
色され、顔料捺染とオパール捺染の施された部分1は、
パイル濃緑色に着色され、図2に示すように他の部分よ
りパイルの高さが低くなって、模様の輪郭が明瞭であっ
て、意匠性の向上したパイル布帛であった。
【発明の効果】本発明は、パイルに顔料捺染模様が付与
され、かつ少なくともその一部にオパール加工が施さ
れ、その部分はパイルの高さが低くなっていると共に着
色されているパイル布帛及びその製造方法であり、衣料
分野、毛布やタオルケット等の寝装分野、タオル等の家
庭用品分野等、多分野に立体感に富んだ捺染模様を有す
る新規な意匠性の向上したパイル布帛を提供できるもの
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の捺染模様を施したパイル布帛の平面図
である。
【図2】本発明のパイル布帛の断面図で、パイルの状況
を示す図である。
【符号の説明】
1 顔料捺染とオパール捺染が施された部分 2 顔料捺染とオパール捺染が施された部分 3 顔料捺染のみ施された部分 4 地部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // D06M 101:06 D06M 1/18 1/22

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 地部が耐酸性の合成繊維からなり、パイ
    ル部がセルロース系繊維からなるパイル布帛であって、
    該パイル布帛には、顔料捺染による捺染模様が付与され
    ていて、該捺染模様の付与されている少なくとも一部の
    パイルの高さが、オパール加工により他部分のパイルの
    高さより低くなっていることを特徴とするオパール加工
    パイル布帛。
  2. 【請求項2】 地部が耐酸性の合成繊維からなり、パイ
    ル部がセルロース系繊維からなるパイル布帛に、スクリ
    ーン捺染機にて顔料を含有する捺染糊により所定色数の
    印捺をした後、該顔料を含有する捺染糊を印捺した少な
    くとも一部に強酸を含有するオパール糊を印捺して、該
    強酸を含有するオパール糊を印捺した部分のパイルの一
    部を焼き抜きし、しかる後強酸を含有するオパール糊を
    除去することを特徴とするオパール加工パイル布帛の製
    造方法。
  3. 【請求項3】顔料を含有する捺染糊が水溶性エマルジョ
    ンをベースとしたものであり、強酸を含有するオパール
    糊が油性エマルジョンをベースとしたものである請求項
    2記載のオパール加工パイル布帛の製造方法。
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