JP5942996B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品 Download PDF

Info

Publication number
JP5942996B2
JP5942996B2 JP2013531421A JP2013531421A JP5942996B2 JP 5942996 B2 JP5942996 B2 JP 5942996B2 JP 2013531421 A JP2013531421 A JP 2013531421A JP 2013531421 A JP2013531421 A JP 2013531421A JP 5942996 B2 JP5942996 B2 JP 5942996B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polycarbonate resin
aromatic polycarbonate
mass
fine particles
resin composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013531421A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2013031941A1 (ja
Inventor
純 田島
純 田島
豊 西林
豊 西林
長島 広光
広光 長島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
Original Assignee
Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Gas Chemical Co Inc filed Critical Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
Publication of JPWO2013031941A1 publication Critical patent/JPWO2013031941A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5942996B2 publication Critical patent/JP5942996B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08KUse of inorganic or non-macromolecular organic substances as compounding ingredients
    • C08K5/00Use of organic ingredients
    • C08K5/36Sulfur-, selenium-, or tellurium-containing compounds
    • C08K5/41Compounds containing sulfur bound to oxygen
    • C08K5/42Sulfonic acids; Derivatives thereof
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08KUse of inorganic or non-macromolecular organic substances as compounding ingredients
    • C08K5/00Use of organic ingredients
    • C08K5/54Silicon-containing compounds
    • C08K5/549Silicon-containing compounds containing silicon in a ring
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L69/00Compositions of polycarbonates; Compositions of derivatives of polycarbonates
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L83/00Compositions of macromolecular compounds obtained by reactions forming in the main chain of the macromolecule a linkage containing silicon with or without sulfur, nitrogen, oxygen or carbon only; Compositions of derivatives of such polymers
    • C08L83/04Polysiloxanes
    • GPHYSICS
    • G02OPTICS
    • G02BOPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
    • G02B1/00Optical elements characterised by the material of which they are made; Optical coatings for optical elements
    • G02B1/04Optical elements characterised by the material of which they are made; Optical coatings for optical elements made of organic materials, e.g. plastics
    • GPHYSICS
    • G02OPTICS
    • G02BOPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
    • G02B5/00Optical elements other than lenses
    • G02B5/02Diffusing elements; Afocal elements
    • G02B5/0205Diffusing elements; Afocal elements characterised by the diffusing properties
    • G02B5/0236Diffusing elements; Afocal elements characterised by the diffusing properties the diffusion taking place within the volume of the element
    • G02B5/0242Diffusing elements; Afocal elements characterised by the diffusing properties the diffusion taking place within the volume of the element by means of dispersed particles
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G77/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing silicon with or without sulfur, nitrogen, oxygen or carbon in the main chain of the macromolecule
    • C08G77/04Polysiloxanes
    • C08G77/045Polysiloxanes containing less than 25 silicon atoms
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L2205/00Polymer mixtures characterised by other features
    • C08L2205/02Polymer mixtures characterised by other features containing two or more polymers of the same C08L -group

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)
  • Dispersion Chemistry (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2011年9月2日出願の日本特願2011−191215号および日本特願2011−191216号の優先権を主張し、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される。
本発明は芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品に関し、詳しくは、芳香族ポリカーボネート樹脂の優れた機械特性を損なうことなく、難燃性を向上させると共に、更には耐熱性も改善した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物と、この芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる芳香族ポリカーボネート樹脂成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、難燃性、透明性に優れた熱可塑性樹脂として幅広い用途がある。無機ガラスと比較して軽量で、生産性にも優れているので、光拡散性を付与することにより、照明カバー、照明看板、透過型のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シートなど、光拡散性の要求される用途にも好適に使用することができる。
従来、ポリカーボネート樹脂に光拡散性を付与する方法として、ガラス、シリカ、水酸化アルミニウム等の無機化合物を添加する方法が提案されているが、これらの無機化合物を添加したものは、成形加工時や押出加工時の熱安定性が低く、機械的強度の低下が大きいという欠点がある。
このような欠点を改良した光拡散性ポリカーボネート樹脂として、例えば特許文献1には、ポリカーボネート樹脂との屈折率差が0.01以上で、重量平均粒径が0.5〜100μmの範囲にあるポリメチルメタアクリレート微粒子を添加した光拡散性ポリカーボネート樹脂が開示されている。しかしこのポリカーボネート樹脂は、光拡散性が十分とはいえず、実用性の点では劣るものであった。
アクリル樹脂に代えてポリオルガノシロキサン粒子を添加することも提案されており、例えば特許文献2および特許文献3では、ポリアルキルシルセスキオキサン粒子を配合したポリカーボネート樹脂が提案されている。
特許文献2および3で提案されるようなポリアルキルシルセスキオキサン粒子の配合で、透過率および光拡散性が向上し、一定の拡散効果が発揮される。
しかしながら、近年要求される光学用途における拡散性ポリカーボネート樹脂組成物のスペックはますます厳しくなっており、また各用途においてその仕様やスペックは様々であるため、単にこのようなポリオルガノシロキサン粒子を添加するだけではこれら各種分野での要求が全て満たされるものではない。具体的には、透過率、拡散率、分散度の全てのバランスに優れるポリカーボネート樹脂組成物が求められている。
ポリカーボネート樹脂自体の機械特性を損なうことなく、全光線透過率と光拡散性に優れたポリカーボネート樹脂組成物として、ポリカーボネート樹脂に、特定の平均粒径で特定の粒径分布を有するポリオルガノシロキサン粒子を所定の割合で配合したポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(特許文献4)。特許文献4に開示のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性等の機械特性に優れ、全光線透過率と光拡散性に優れたポリカーボネート樹脂組成物であるが、耐熱性に劣る欠点があり、難燃性も不十分であった。
一方、特許文献5には、粒径50μm以下で平均粒径5〜20μmの微粒子を配合した、全光線透過率が85%以上で、拡散透過率が10〜30%を有するポリカーボネート樹脂製高透過率光拡散板が開示されている。しかし、このものは、光拡散性は低く、実用性に劣る。
特許文献6には、光線透過率や光拡散性の優れた樹脂組成物として、炭酸カルシウム、酸化チタンおよびポリオルガノ水素シロキサンを添加したポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。しかし、このものは、熱安定性や耐衝撃性の点で満足できるものではなく、全光線透過率も十分とはいえないものであった。
特許文献7には、平均粒径1〜30μmの透明微粒子と蛍光増白剤を配合した組成物より形成されたポリカーボネート樹脂製直下型バックライト用光拡散板が開示されている。しかし、このものは、蛍光増白剤を用いて輝度を向上させているため、熱安定性が不十分であり、成形加工時、押出時の変色、リサイクル時の変色を生じやすく、これも実用性の低いものであった。
特許文献8には、ポリカーボネート樹脂自体の耐衝撃性等の機械特性を損なうことなく、全光線透過率と光拡散性に優れ、かつ成形性にも優れたポリカーボネート樹脂組成物として、特定の平均粒径で特定の粒径分布を有するアクリル樹脂系微粒子を所定の割合で配合したポリカーボネート樹脂組成物が開示されているが、耐熱性に劣る欠点があり、難燃性も不十分であった。
高分子量と低分子量の2種類のポリカーボネート樹脂と難燃剤とからなる難燃性のポリカーボネート樹脂組成物が、例えば、特許文献9〜11等に開示されている。しかしながら、これらの特許文献に開示された難燃性のポリカーボネート樹脂組成物は、使用するポリカーボネートの粘度平均分子量が10万以上であり、または難燃剤の添加割合が0.1重量部以上であり、成形品の難燃性および透明性に問題がある。
特開平03−143950号公報 特許第3263795号公報 特許第4220829号公報 特開2011−57786号公報 特開平05−257002号公報 特開2000−169695号公報 特開2004−029091号公報 特開2011−157536号公報 特開平2−251561号公報 特開平9−59505号公報 特開平11−323118号公報
上記した通り、従来技術では、全光線透過率と光拡散性に優れ、照明カバーや各種の光拡散板等の用途においても満足いく優れた難燃性および耐熱性を示す芳香族ポリカーボネート樹脂は未だ提供されていない。
本発明の一態様は、ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性と耐熱性を向上し、機械特性、全光線透過率、光拡散性に優れ、かつ成形性に優れる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物と、この芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる芳香族ポリカーボネート樹脂成形品を提供する。
本発明者らは鋭意検討した結果、粘度平均分子量が3×103〜2.5×104の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と、粘度平均分子量が5×104〜9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とを含む透明芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子および(メタ)アクリル樹脂系微粒子からなる群から選ばれる微粒子(B)を配合することによって、全光線透過率および光拡散性の改善効果を損なうことなく、さらに難燃性や耐熱性をも改善した優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出した。特に、特定の平均粒径で特定の粒径分布を有する上記微粒子を配合することにより、優れた全光線透過率、光拡散性のバランスを持った芳香族ポリカーボネート樹脂材料とすることができる。
本発明の一態様は、
粘度平均分子量が3×103〜2.5×104の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と粘度平均分子量が5×104〜9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とを、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と(a2)の合計量を100質量%として(a1):(a2)=99質量%〜50質量%:1質量%〜50質量%の割合で含む芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子および(メタ)アクリル樹脂系微粒子からなる群から選ばれる微粒子(B)を0.01〜10質量部、ならびに有機スルホン酸金属塩からなる難燃剤(C)を0.005質量部〜0.1質量部含有し、かつ、
高化式フローテスターを用い、温度280℃、荷重1.57×107Pa、直径1mm×長さ10mmのオリフィスより流出する溶融樹脂量Q値が、0.01cm3/秒以上0.1cm3/秒以下である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物
に関する。
一態様によれば、芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の粘度平均分子量は、5×104〜8×104である。
一態様によれば、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を0.01〜5質量部含有する。
一態様によれば、微粒子(B)は、コールターカウンター法にて直径0.4〜12μmの範囲で測定した際の平均粒径が1〜3μmであり、かつその粒径分布の最大ピークおよび2番目の最大ピークが共に1〜3μmの範囲にあるポリオルガノシルセスキオキサン微粒子である。
一態様によれば、微粒子(B)は、コールターカウンター法にて、直径0.4〜12μmの範囲で個数基準頻度(%)を測定した際の0.5〜1μmの範囲における個数基準頻度(%)が、0.1〜8%であり、4〜11μmの範囲における体積基準頻度(%)が、0.05〜2.5%であるポリオルガノシルセスキオキサン微粒子である。
一態様によれば、微粒子(B)は、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子であり、該ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子である。
一態様によれば、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、(メタ)アクリル樹脂系微粒子を0.1〜10質量部含有する。
一態様によれば、微粒子(B)は、コールターカウンター法により直径0.4〜12μmの範囲において個数基準で測定した粒径が、下記(i)〜(iii)の条件:
(i) 平均粒径が1〜4μmである。
(ii) 粒径が1μm以上2μm未満の粒子の割合、粒径が2μm以上3μm未満の粒子の割合、および粒径が3μm以上の粒子の割合が、それぞれ20〜40%の範囲にある。
(iii) 粒径が10μm以上の粒子を実質的に含有しない。
を満足する(メタ)アクリル樹脂系微粒子である。
一態様によれば、微粒子(B)は、(メタ)アクリル樹脂系微粒子であり、該(メタ)アクリル樹脂系微粒子は、非架橋性(メタ)アクリルモノマー(b1)90〜99質量%と架橋性モノマー(b2)10〜1質量%との共重合体微粒子である。
一態様によれば、微粒子(B)は、(メタ)アクリル樹脂系微粒子であり、該(メタ)アクリル樹脂系微粒子は、ポリメチルメタアクリレート系微粒子である。
一態様によれば、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、さらに紫外線吸収剤(D)を、前記透明芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.05〜1質量部含有する。
本発明の更なる態様は、
上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる芳香族ポリカーボネート樹脂成形品
に関する。
一態様によれば、上記成形品は、照明カバーまたは光拡散板である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物によれば、微粒子(B)を配合することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂の機械的物性を損なうことなく、全光線透過率および光拡散性を改善することができる。即ち、互いに異なる粘度平均分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)および(a2)を所定範囲の割合で混合してなる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、透明性に優れるため、微粒子(B)の配合による全光線透過率および光拡散性の改善効果、更には分散度の改善効果を損なうことがない。さらには、特定量の有機スルホン酸アルカリ金属塩(C)である難燃剤を含むことにより難燃性にも優れたものとすることができる。このため、本発明によれば、全光線透過率、光拡散性、成形性に優れ、難燃性が高く、耐熱性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および成形品を提供することができる。
特に、特定の平均粒径で特定の粒径分布を有する微粒子(B)を配合することにより、優れた全光線透過率、光拡散性のバランスを持った芳香族ポリカーボネート樹脂材料とすることができる。
以下、本発明について実施形態および例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態および例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
1.芳香族ポリカーボネート樹脂組成物
本発明は、分子量がそれぞれ所定の範囲の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)および(a2)と、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子および(メタ)アクリル樹脂系微粒子からなる群から選ばれる微粒子(B)と、有機スルホン酸アルカリ金属塩(C)とを、所定範囲の割合で少なくとも含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
本発明によれば、微粒子(B)の配合で、全光線透過率および光拡散性を向上させることができる。また、樹脂成分として、分子量がそれぞれ所定の範囲の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)および(a2)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を用いることにより、透明性、難燃性、および耐熱性に優れた樹脂マトリックスを形成することができるため、微粒子(B)を配合したことによる全光線透過率、光拡散性の改善効果を損なうことなく、難燃性、耐熱性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および成形品を提供することができる。
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、粘度平均分子量が3×103〜2.5×104の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と粘度平均分子量が5×104〜9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とを、(a1):(a2)=99質量部〜50質量部:1質量部〜50質量部の割合で含む芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を含有する。
芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)および(a2)は分子量がそれぞれ前記範囲である限り、原料モノマー、製造方法、および構造等については特に制限はない。互いに同一の原料モノマーを用いて同様の方法で製造された同一種の芳香族ポリカーボネート樹脂であって、分子量のみが互いに異なる樹脂の組み合わせであっても、原料モノマー等が互いに異なり、かつ分子量がそれぞれ前記範囲の樹脂の組み合わせであってもよい。また芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)および(a2)はそれぞれ、分子量が前記範囲である芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上の混合物であってもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量が3×103〜2.5×104の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と粘度平均分子量が5×104〜9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とを、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と(a2)の合計量を100質量%として(a1):(a2)=99質量%〜50質量%:1質量%〜50質量%の割合で含む。即ち、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)の質量百分率をαとしたとき、芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の質量百分率βは(100−α)であり、αの値は、上記のとおり、50≦α≦99であり、好ましくは55≦α≦95、より好ましくは60≦α≦90である。本発明では、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)を、芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)と比較してより多く含有することが好ましい。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)の粘度平均分子量(Mv)は、4×103〜2.5×104であることが好ましく、4.5×103〜2.5×104であることがさらに好ましい。前記芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)は、市販品から選択されてもよい。具体的には、ユーピロン「H−4000」、「H−7000」、「H−3000」、「S−3000」、「AL−071」、ノバレックス「7020R」、「7022R」(いずれも三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)、Lexan「121」、「124」、「141」(Sabicイノベーティブプラスチックス社製)、パンライト「L−1225L」、「L−1225Y」、「L−1225LM」、「L−1225WX」、「L−1225WS」、「L−1225WP」(帝人化成株式会社製)、タフロン「A1700」、「A1900」、「A2200」(出光興産株式会社製)等を、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)として用いることができる。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の粘度平均分子量(Mv)は、5×104〜9×104の範囲である。前記粘度平均分子量の上限は、好ましくは8.5×104以下であり、より好ましくは8×104以下であり、さらに好ましくは7×104以下である。一方、前記粘度平均分子量の下限は、前述の通り5×104以上であり、好ましくは5.5×104以上である。例えば、前記芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の粘度平均分子量(Mv)は、5×104〜8×104の範囲であることができ、または5×104〜7×104の範囲であることができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]と、以下の式[1]で表される成分との共重合ポリカーボネート樹脂から選択されてもよい。特に、ビスフェノールA 99.9質量%〜90質量%と、以下の式[1]で表される成分 0.1質量%〜10質量%との共重合ポリカーボネート樹脂から選択されてもよい。
ここで、式[1]中、R1〜R4は、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、各々が置換基を有してもよい炭素数1〜9のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、または、炭素数7〜17のアラルキル基であり、これらの基の炭素のいずれもが有してもよい置換基は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、または、炭素数1〜5のアルコキシ基である。
また、Xは、
であり、ここで、R5およびR6はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、各々が置換基を有してもよい炭素数1〜9のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、または、炭素数7〜17のアラルキル基であり、あるいは又、R5およびR6が互いに結合して炭素環または複素環を形成する基であり、これらの基の炭素のいずれもが有してもよい置換基は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアルケニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であり;R7およびR8はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、各々が置換基を有してもよい炭素数1〜9のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、または、炭素数6〜12アリール基であり、これらの基の炭素のいずれもが有してもよい置換基は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、R9は、置換基を有してもよい炭素数1〜9のアルキレン基であり;aは0〜20の整数を表し;およびbは1〜500の整数を表す。
上記式[1]で表される成分の具体例には、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン[=ビスフェノールC]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、α,ω−ビス[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、および4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールが含まれる。これらの中でも、特に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン[=ビスフェノールC]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンであることが好ましく、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]であることがより好ましい。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)および(a2)はそれぞれ、種々の方法に基づき合成することができ、例えば、界面重合法、ピリジン法、エステル交換法、環状カーボネート化合物の開環重合法をはじめとする各種合成方法により製造することができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物と、一般にホスゲンとして知られている塩化カルボニル、または、ジメチルカーボネートやジフェニルカーボネートに代表される炭酸ジエステル、一酸化炭素や二酸化炭素と云ったカルボニル系化合物とを、反応させることによって得られる、直鎖状、または分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネートの重合体または共重合体である。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物として、例えば、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン[=ビスフェノールC]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、α,ω−ビス[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール等を挙げることができるが、好ましくはビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、特に好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[ビスフェノールZ]である。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。また、ジヒドロキシ化合物の一部として、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、または、シロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマー若しくはオリゴマー等を併用してもよい。
分岐したポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で示されるポリヒドロキシ化合物、または3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等を上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、使用量は、例えば0.01〜10モル%程度である、好ましくは、0.1〜3モル%である。
界面重合法による反応にあっては、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを10以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物および分子量調整剤(末端停止剤)、必要に応じて芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のための酸化防止剤を用い、ホスゲンと反応させた後、第三級アミンもしくは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加し、界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得ることができる。分子量調節剤の添加は、ホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば、特に限定されない。尚、反応温度は0〜35℃であり、反応時間は数分〜数時間である。
ここで、反応に不活性な有機溶媒として、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。分子量調節剤あるいは末端停止剤として、一価のフェノール性水酸基を有する化合物を挙げることができ、具体的には、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等を挙げることができる。重合触媒として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;等を挙げることができる。
エステル交換法による反応は、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応である。通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調整したり、反応時の減圧度を調整したりすることによって、所望のポリカーボネート樹脂の分子量と末端ヒドロキシル基量が決められる。末端ヒドロキシル基量は、ポリカーボネート樹脂の熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼし、実用的な物性を持たせるためには、好ましくは1000ppm以下であり、700ppm以下が特に好ましい。芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが一般的であり、好ましくは1.01〜1.30モルの量で用いられる。
エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を合成する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒としては、特に制限はないが、主としてアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物が使用され、補助的に塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、あるいは、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。このような原料を用いたエステル交換反応では、100〜320℃の温度で反応を行い、最終的には2.7×102Pa(2mmHg)以下の減圧下、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら溶融重縮合反応を行う方法が挙げられる。溶融重縮合は、バッチ式、または連続的に行うことができるが、安定性等の観点から、連続式で行うことが好ましい。エステル交換法において、ポリカーボネート樹脂中の触媒の失活剤として、触媒を中和する化合物、例えばイオウ含有酸性化合物、または、それより形成される誘導体を使用することが好ましく、その量は、触媒のアルカリ金属に対して0.5〜10当量、好ましくは1〜5当量の範囲であり、ポリカーボネート樹脂に対して通常1〜100ppm、好ましくは1〜20ppmの範囲で添加する。
ポリカーボネート樹脂組成物フレークは、例えば、界面重合法にて得られたポリカーボネート樹脂組成物を含んだメチレンクロライド溶液を45℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去することで;界面重合法にて得られたポリカーボネート樹脂組成物を含んだメチレンクロライド溶液をメタノール中に投入し、析出したポリマーを濾過、乾燥して得ることで;または界面重合法にて得られたポリカーボネート樹脂組成物を含んだメチレンクロライド溶液をニーダーにて攪拌下、40℃に保ちながら攪拌粉砕後、95℃以上の熱水で脱溶剤することで;得ることができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と(a2)とからなることができる。なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、樹脂成分として、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)とともに、他の樹脂成分を含有していてもよい。配合し得る他の透明性樹脂成分としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、(A)成分以外のポリカーボネート樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、非晶性ポリアミド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙られ、好ましくは、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、特定の分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、(a2)を特定の割合で用いることによる本発明の効果を得るために、これらの他の透明性樹脂成分は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましく、0質量部であっても勿論よい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子および(メタ)アクリル樹脂系微粒子からなる群から選ばれる微粒子(B)を含有する。微粒子(B)は、光拡散性の向上に寄与し得る成分である。
微粒子(B)としては、一種または二種以上のポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を使用してもよく、一種または二種以上の(メタ)アクリル樹脂系微粒子を使用してもよく、またはポリオルガノシルセスキオキサン微粒子と(メタ)アクリル樹脂系微粒子を併用してもよい。
以下、微粒子(B)について、更に詳細に説明する。
[ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子]
微粒子(B)の一態様は、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子である。本発明におけるポリオルガノシルセスキオキサン微粒子とは、RSiO1.5(Rは一価の有機基)で示される3官能性シロキサン単位(以下、「T単位」ということがある。)を主成分として有するポリオルガノシロキサンからなる微粒子をいい、全シロキサン単位の合計100モル%中、T単位が50モル%以上のものをいう。T単位の割合は、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、最も好ましくは100モル%である。ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、耐熱性が高く、また粒径を適切なものに制御しやすいので好ましい。
本発明で用いるポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、上記T単位のほかに、R3SiO0.5(Rは一価の有機基)で表される1官能性シロキサン単位(以下、「M単位」ということがある。)を含有していてもよい。M単位を含有するポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を用いると、微粒子自体の耐熱性が向上し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の色相がより良好なものになり、また、本発明に係る樹脂成分への分散性が向上し、均一な光学性能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られやすくなるというメリットがある。
また、前記ポリオルガノシロキサンは、R2SiO2.0(Rは一価の有機基)で表される2官能性シロキサン単位を有していてもよい。
ポリオルガノシルセスキオキサン中の有機基Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;などが好ましく挙げられる。中でも、Rが炭素原子数1〜20のアルキル基であるポリアルキルシルセスキオキサンは、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂成分によって形成される樹脂マトリックスとの屈折率差が大きく、拡散効果が向上する傾向にあり、さらには耐熱性にも優れる傾向にあるので好ましい。特にポリメチルシルセスキオキサンシロキサンが好ましい。
本発明においては、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、コールターカウンター法にて直径0.4〜12μmの範囲で測定した際の平均粒径が1〜3μmであり、かつその粒径分布の最大ピークと2番目の最大ピークが共に1〜3μmの範囲にある特定の平均粒径で特定の粒径分布を有するポリオルガノシルセスキオキサン微粒子であることが好ましい。ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の平均粒径が1μm未満では、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の光拡散性は向上しないばかりか、輝度を著しく低下させる傾向にある。一方。平均粒径が3μmを超えたものも、光拡散効果が低下し、輝度も著しく低下する傾向にある。
本発明において、粒径および粒径分布の測定は、コールターカウンター法にて行われる。コールターカウンター法は、サンプル粒子を懸濁させた電解質を細孔(アパチャー)に通過させ、そのときに粒子の体積に比例して発生する電圧パルスの変化を読み取って粒子径を定量するもので、また電圧パルス高を1個ずつ計測処理して、サンプル粒子の体積分布ヒストグラムを得ることができる。このようなコールターカウンター法による粒径または粒径分布測定は、粒度分布測定装置として最も多用されているものである。
本発明においては、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の粒径測定は、極めて小さい微小粒子と極めて大きい極大粒子の影響を排除し、信頼性が高く、再現性の高いデータを得るため、直径0.4〜12μmの範囲で測定を行うことで定義される。
本発明に使用するポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、その粒径分布が2つ以上の複数のピークを有しており、その平均粒径は1〜3μmであり、かつその粒径分布の最大ピークと2番目の最大ピークが共に1〜3μmの範囲にあることが好ましい。平均粒径が1〜3μmであり、かつその最大ピーク(以下、「P1」ということがある。)と2番目の最大ピーク(以下、「P2」ということがある。)が粒径1〜3μmの範囲にある粒子を用いることで、特に光拡散率や分散度が改善することができる。
また、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子(B)は、粒径0.5〜1μmの範囲における個数基準頻度(%)が、0.1〜8%であることが好ましく、さらに、粒径4〜11μmの範囲における体積基準頻度(%)が、0.05〜2.5%であることが好ましい。このように粒径0.5〜1μmの粒子の割合を前記範囲とし、かつ粒径4〜11μmの粒子の割合を前記範囲とすることで、光拡散効果および透過率がさらに向上し、耐衝撃性も向上する傾向にある。
さらには、本発明に使用するポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、前記最大ピーク(P1)に対する2番目の最大ピーク(P2)の割合(P2/P1)が、0.2〜0.95であることが好ましく、特には0.2〜0.8であることが好ましい。P2/P1がこの範囲であると、拡散効果と透過率をさらに向上させることができる。P2/P1が、0.2未満の場合は、照明部材として特に必要な特性である分散度が低下する傾向にあり、また、0.95以下とすることでさらに分散度が高まる傾向にある。このように、2つ以上のピークを適度な割合で含むポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を含有することで、樹脂成分中への分散性が特異的に高まり、効率的に拡散性能を高めることができる。
上記したような好ましいポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の製造するための方法は、公知であり、例えば特開平01−217039号公報に記載されるように、オルガノトリアルコキシシランを酸性条件下で加水分解してオルガノシラントリオールの水/アルコール溶液に、アルカリ性水溶液を添加、混合し、静置状態において、オルガノシラントリオールを重縮合させる方法が挙げられる。
粒径の調整は、主にアルカリ性水溶液のpHの調整によって行うことができ、小さい粒子を得ようとすればpHを高く、大きい粒子を得ようとすればpHを低くすることで粒子径の制御が可能である。重縮合反応は、通常、アルカリ性水溶液添加後0.5〜10時間、好ましくは0.5〜5時間の範囲で行われ、縮合物が熟成されるが、熟成時の攪拌を弱くして、粒子の会合を防止することで、粒径および粒径分布の調整が可能である。さらに、得られたポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を更に粉砕して粒度を調整してもよい。また、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、その製造者に所望の粒径と分布のスペックを指定することでも入手可能である。
本発明において、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、異なるポリオルガノシルセスキオキサンよりなるポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の2種以上を併用してもよく、平均粒径や粒径分布の異なるポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の2種以上を併用してもよい。いずれの場合も、2種以上のポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を用いた場合、その混合物として、前述の平均粒径と粒径分布を満たす必要がある。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.01〜10質量部であり、好ましくは0.01〜5質量部であり、より好ましくは0.1〜3質量部、さらに好ましくは0.3〜2質量部である。ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の含有割合が0.01質量部未満の場合は、透過率および光拡散性の向上効果が充分に得られず、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の含有割合が10質量部を超える場合は、透過率が低下したり、耐衝撃性等が低下する傾向にあるため好ましくない。透過率、耐衝撃性等を維持する観点からは、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の含有割合は5質量%以下とすることが好ましい。
[(メタ)アクリル樹脂系微粒子]
微粒子(B)の他の態様は、(メタ)アクリル樹脂系微粒子である。(メタ)アクリル樹脂系微粒子としては、(メタ)アクリル系モノマーを使用した重合体または共重合体の微粒子を使用することができる。(メタ)アクリル系(共)重合体の例には、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、およびシクロヘキシルメタクリレートの重合体、ならびにこれらの(メタ)アクリル系モノマーから誘導される繰り返し単位を含む共重合体が含まれる。
本発明に使用される(メタ)アクリル樹脂系微粒子として特に好ましいものは、非架橋性(メタ)アクリルモノマー(b1)と架橋性モノマー(b2)との共重合体微粒子である。また、懸濁重合により製造される(メタ)アクリル樹脂系微粒子が好ましく、懸濁重合により製造される非架橋性(メタ)アクリルモノマー(b1)と架橋性モノマー(b2)との共重合体微粒子が特に好ましい。
前記非架橋性(メタ)アクリル系モノマー(b1)の例には、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチル−ヘキシルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;が含まれ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、メチルメタクリレートが好適に用いられる。即ち、(メタ)アクリル樹脂系微粒子は、ポリメチルメタクリレート系微粒子であることが好ましい。
前記架橋性モノマー(b2)としては、分子内に2個以上の不飽和結合を持つ化合物が好ましく用いられる。例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、共重合成分として、非架橋性(メタ)アクリル系モノマー(b1)および架橋性モノマー(b2)以外に、これらのモノマーと共重合可能なモノマーを併用してもよく、そのような単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル等のビニル基を有するモノマーの1種または2種以上を用いることができる。
(メタ)アクリル樹脂系微粒子(B)は、非架橋性(メタ)アクリルモノマー(b1)と、架橋性モノマー(b2)と、必要に応じて用いられるその他の共重合可能なモノマーを懸濁重合させることにより製造することができる。例えば、これらのモノマーを、ポリビニルアルコールを分散剤として懸濁させて重合を行い、濾過、洗浄、篩がけ、乾燥することにより製造することができる。
(メタ)アクリル樹脂系微粒子の製造における非架橋性(メタ)アクリル系モノマー(b1)と架橋性モノマー(b2)の使用割合は、非架橋性(メタ)アクリルモノマー(b1)90〜99質量%、架橋性モノマー(b2)10〜1質量%とすることが好ましい(ただし、非架橋性(メタ)アクリル系モノマー(b1)と架橋性モノマー(b2)との合計で100質量%とする。)。架橋性モノマー(b2)の量が少な過ぎると、得られたビーズ状架橋(メタ)アクリル樹脂系微粒子の樹脂成分中への分散性が不良であり、逆に、架橋性モノマー(b2)の配合率が多過ぎると、(メタ)アクリル樹脂系微粒子(B)が硬くなり過ぎて衝撃強度が低下するので好ましくない。
本発明で用いる(メタ)アクリル樹脂系微粒子としては、コールターカウンター法により直径0.4〜12μmの範囲において個数基準で測定した粒径が、下記(i)〜(iii)の条件を満足する、所定の範囲内に平均粒径を有しかつ所定の粒径分布を有するアクリル樹脂系微粒子であることが好ましい。
(i) 平均粒径が1〜4μmである。
(ii) 粒径が1μm以上2μm未満の粒子の割合、粒径が2μm以上3μm未満の粒子の割合、および粒径が3μm以上の粒子の割合が、それぞれ20〜40%の範囲にある。
(iii) 粒径が10μm以上の粒子を実質的に含有しない。
なお、上記(ii)の「粒子の割合」とは、直径0.4〜12μmの範囲の全個数を100%としたときの、当該粒径の範囲の粒子の割合であり、「個数基準頻度」ということもある。
即ち、本発明において、好ましい(メタ)アクリル樹脂系微粒子は、通常用いられてきた平均粒径が6〜10μmのものよりも小さい、平均粒径が1〜4μmであり、さらにその粒径分布は、単分散が良いといわれていた従来の常識とは逆であって、上記(ii)の条件を満足する、ブロードな粒径分布を有する粒子である。
なお、本発明において、粒径および粒径分布の測定は、前記した通り、コールターカウンター法にて個数基準にて行われる。本発明において、(メタ)アクリル樹脂系微粒子の粒径測定は、極めて小さい微小粒子と極めて大きい極大粒子の影響を排除し、信頼性が高く、再現性の高いデータを得るため、直径0.4〜12μmの範囲で測定を行うことで定義される。また、平均粒径は、個数基準による平均粒径である。
なお、本発明における平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるメジアン径D50をいい、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100」を用いて測定を行った。
本発明において使用する(メタ)アクリル樹脂系微粒子は、上記条件(i)を満足し、即ち平均粒径が1〜4μmである。平均粒径が前記範囲であると、光拡散率や分散度が十分に高くなる。(メタ)アクリル樹脂系微粒子の平均粒径は、好ましくは1〜3μm、さらに好ましくは1.5〜3μmである。
さらに、(メタ)アクリル樹脂系微粒子は、上記条件(iii)を満足し、即ち、粒径が10μm以上(より好ましくは8μm以上)の粒子を実質的に含有しないことが好ましい。粒径が10μm以上ものを含有すると、照明部材として特に必要な特性である耐衝撃性が低下する。
なお、粒径が10μm以上の粒子を実質的に含有しないにおける「実質的に含有しない」とは、規定する粒子径を持つ粒子が完全に含まれない場合を含むことは勿論、上記の粒度分布測定装置で検出されないことを意味するものとする。
前記平均粒径および粒径分布の(メタ)アクリル樹脂系微粒子は、種々の方法で製造可能であり、製造方法については特に制限されない。乳化重合法または懸濁重合法などにより、重合により直接的にこのような平均粒径および粒径分布の粒子として製造する方法も好ましい方法である。(メタ)アクリル樹脂系微粒子を重合により直接的に製造する場合は、重合条件によってその粒子径を制御できる。例えば、ホモジナイザーを用いて、粒子径を所定のものとし、粒子径分布については、過度のせん断力を負荷しないようにして、ブロードな分布の重合体を得ることができる。
また、固体状態で得られた(メタ)アクリル樹脂を、ジェット気流式粉砕機、機械衝突式粉砕機、ロールミル、ハンマーミル、インペラーブレーカーなどの粉砕装置により粉砕し、得られた粉砕物を風力分級装置、ふるい分級装置などの分級装置に導入して分級することにより、粒子の粒径を制御して用いてもよい。
また、商業的に知られている各種の(メタ)アクリル樹脂系微粒子の中から、選択して使用することもできる。
本発明において、(メタ)アクリル樹脂系微粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、樹脂材料の異なる(メタ)アクリル樹脂系微粒子の2種以上を併用してもよく、平均粒径や粒径分布の異なる(メタ)アクリル樹脂系微粒子の2種以上を併用してもよい。いずれの場合も、2種以上の(メタ)アクリル樹脂系微粒子を用いた場合、その混合物として、前記(i)〜(iii)の条件を満たす必要がある。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、(メタ)アクリル樹脂系微粒子の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.01〜10質量部であり、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.3〜5質量部であり、さらに好ましくは0.5〜2質量部である。(メタ)アクリル樹脂系微粒子の含有割合が0.01質量部未満の場合は、透過率および光拡散性を向上効果が充分に得ることができない。透過率および光拡散性の向上のためには、0.1質量部以上の(メタ)アクリル樹脂系微粒子を含むことが好ましい。一方、(メタ)アクリル樹脂系微粒子の含有割合が10質量部を超える場合は、耐衝撃性等が低下する傾向にあるため好ましくない。
[有機スルホン酸金属塩(C)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)および微粒子(B)とともに、有機スルホン酸金属塩からなる難燃剤(C)を含有する。有機スルホン酸金属塩としては、脂肪族スルホン酸金属塩、芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられ、中でも、芳香族スルホンスルホン酸金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩が好ましく、特にはパーフルオロアルカンスルホン酸金属塩が好ましい。
有機スルホン酸金属塩の金属としては、特に制限はないが、好ましくは、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。中でも難燃性と耐加水分解性との観点からはカリウムが好ましい。これら有機スルホン酸金属塩は、2種以上を混合して使用することもできる。
芳香族スルホンスルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられ、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。
芳香族スルホンスルホン酸金属塩の具体例としては、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4・4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのナトリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのカリウム塩、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジカリウム塩等が挙げられる。
パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩としては、好ましくは、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ金属塩、炭素数4〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。
パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸のテトラエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
これらの中でも、特に、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、有機スルホン酸金属塩(C)を0.005質量部〜0.1質量部含有し、好ましくは0.01質量部〜0.1質量部含有する。有機スルホン酸金属塩の含有量が0.005質量部を下回る場合は十分な難燃性が得られにくく、その観点では、0.01質量部以上、0.03質量部以上、または0.05質量部以上が好ましい。また、0.1質量部を超えると、熱安定性や耐加水分解性が低下しやすく、その観点では、0.1質量以下、または0.09質量部以下が好ましい。
[紫外線吸収剤(D)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、さらに紫外線吸収剤(D)を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤(D)としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、中でも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、アデカ社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、チバ・スペシャリティケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−n−ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM−40」、BASF社製「ユビヌルMS−40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、アデカ社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA−51」等が挙げられる。
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4−tert−ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌルN−35」、「ユビヌルN−539」等が挙げられる。
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
マロン酸エステル化合物としては、2−(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には例えば、クラリアントジャパン社製「PR−25」、チバ・スペシャリティケミカルズ社製「B−CAP」等が挙げられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が紫外線吸収剤(D)を含有する場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤(D)の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤(D)の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
なお、紫外線吸収剤(D)は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
[その他の添加剤]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
<リン系熱安定剤(E)>
リン系熱安定剤(E)は一般的に、樹脂成分を溶融混練する際、高温下での滞留安定性や樹脂成形品使用時の耐熱安定性向上に有効である。
本発明で用いるリン系熱安定剤(E)としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも3価のリンを含み、変色抑制効果を発現しやすい点で、ホスファイト、ホスホナイト等の亜リン酸エステルが好ましい。
ホスファイトとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
また、ホスホナイトとしては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
また、アシッドホスフェートとしては、例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
亜リン酸エステルの中では、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、耐熱性が良好であることと加水分解しにくいという点で、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
これらのリン系熱安定剤(E)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物がリン系熱安定剤(E)を含む場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.003質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、通常0.1質量部以下、好ましくは0.08質量部以下、より好ましくは0.06質量部以下である。リン系熱安定剤(E)の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系熱安定剤(E)の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
<離型剤(F)>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤(F)を含有していてもよく、離型剤としては、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物が好適に用いられる。
フルエステル化物を構成する脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
一方、フルエステル化物を構成する脂肪族アルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。
なお、上記脂肪族アルコールと上記脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物は、そのエステル化率が必ずしも100%である必要はなく、80%以上であればよい。本発明にかかるフルエステル化物のエステル化率は好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
本発明で用いる脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物は、特に、モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物の1種または2種以上と、多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物の1種または2種以上とを含有することが好ましく、モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物と、多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物との併用により、離型効果を向上させると共に溶融混練時のガス発生を抑制し、モールドデポジットを低減させる効果が得られる。
モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸のフルエステル化物としては、ステアリルアルコールとステアリン酸とのフルエステル化物(ステアリルステアレート)、ベヘニルアルコールとベヘン酸とのフルエステル化物(ベヘニルベヘネート)が好ましく、多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物としては、グリセリンセリンとステアリン酸とのフルエステル化物(グリセリントリステアリレート)、ペンタエリスリトールとステアリン酸とのフルエステル化物(ペンタエリスリトールテトラステアリレート)が好ましく、特にペンタエリスリトールテトラステアリレートが好ましい。
なお、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物は、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物等の離型剤(F)を含有する場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して通常2質量部以下であり、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が多過ぎると耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。
離型剤(F)として、モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物と、多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物とを併用する場合、これらの使用割合(質量比)は、モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物:多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物=1:1〜10とすることが、これらを併用することによる上記の効果を確実に得る上で好ましい。
<シロキサン化合物(G)>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、シロキサン化合物(G)を含有してもよい。シロキサン化合物を、有機スルホン酸金属塩と同時に含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を著しく向上させることができる。特に好ましくは、メチルフェニルシリコーンオイルを用いることで、高い透明性と高い難燃性のバランスに優れ、さらには熱老化性および湿熱安定性にも優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
<酸化防止剤>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、所望によって酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤を含有することで、色相劣化や、熱滞留時の機械物性の低下が抑制できる。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、チバ社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、アデカ社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていても良い。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.0001質量部以上、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下である。酸化防止剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
<滴下防止剤>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、滴下防止剤としてフッ素系樹脂を、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜1質量部含有していてもよい。このようにフッ素系樹脂を含有することで、樹脂組成物の溶融特性を改良することができ、具体的には燃焼時の滴下防止性を向上させることができる。ただし本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)および(a2)の分子量および混合比を適切に制御することでQ値を調整することにより、フッ素系樹脂を含まない状態であっても、燃焼時の滴下防止性に優れるものとなる。
フッ素系樹脂を使用する場合、フッ素系樹脂の含有量が0.01質量部より少ないと、フッ素系樹脂による難燃性向上効果が不十分になりやすく、1質量部を超えると、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品の外観不良や機械的強度の低下が生じやすい。フッ素系樹脂の含有量の下限は、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上であり、また、上限は、より好ましくは0.75質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以下である。
フッ素系樹脂としては、中でもフルオロオレフィン樹脂が好ましい。フルオロオレフィン樹脂は、通常フルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体であり、具体例としては、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられるが、中でもテトラフルオロエチレン樹脂が好ましい。
また、このフッ素系樹脂としては、フィブリル形成能を有するものが好ましく、具体的には、フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂が挙げられる。このように、フィブリル形成能を有することで、燃焼時の滴下防止性が著しく向上する傾向にある。
フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」、ダイキン化学工業社製「ポリフロン(登録商標)F201L」、「ポリフロン(登録商標)F103」、「ポリフロン(登録商標)FA500」などが挙げられる。さらに、フルオロオレフィン樹脂の水性分散液の市販品として、例えば、三井デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)30J」、「テフロン(登録商標)31−JR」、ダイキン化学工業社製「フルオン(登録商標)D−1」等が挙げられる。
さらに、有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂も好適に使用することができる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂を用いることで、分散性が向上し、成形品の表面外観が向上し、表面異物を抑制できる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂は、公知の種々の方法により製造することができ、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
フルオロオレフィン樹脂を被覆する有機系重合体としては、特に制限されるものではなく、このような有機系重合体を生成するための単量体の具体例としては、
スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;
アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;
無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;
N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;
グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;
酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;
エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;
ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体
等を挙げることができる。なお、これらの単量体は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
中でもフルオロオレフィン樹脂を被覆する有機系重合体を生成するための単量体としては、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する際の分散性の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性が高いものが好ましく、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体がより好ましい。
また、有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂中のフルオロオレフィン樹脂の含有比率は、通常30質量%以上、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下である。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂中のフルオロオレフィン樹脂の含有比率を、上述の範囲とすることで、難燃性と成形品外観のバランスに優れる傾向にあるため好ましい。
このような有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂としては、具体的には、三菱レイヨン社製「メタブレン(登録商標)A−3800」、GEスペシャリティケミカル社製「ブレンデックス(登録商標)449」、PIC社製「Poly TS AD001」等が挙げられる。
なお、フッ素系樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていても良い。
<染顔料>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、所望によって染顔料を含有していてもよい。染顔料を含有することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の隠蔽性、耐候性を向上できるほか、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品のデザイン性を向上させることができる。
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
有機顔料および有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていても良い。
また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が染顔料を含有する場合、その含有量は、必要な意匠性に応じて適宜選択すればよいが、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。染顔料の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、着色効果が十分に得られない可能性があり、染顔料の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
<帯電防止剤>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、所望によって帯電防止剤を含有していてもよい。帯電防止剤は特に限定されないが、好ましくは下記一般式(1)で表されるスルホン酸ホスホニウム塩である。
(一般式(1)中、R1は炭素数1〜40のアルキル基またはアリール基であり、置換基を有していても良く、R2〜R5は、各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基であり、これらは同じでも異なっていてもよい。)
前記一般式(1)中のR1は、炭素数1〜40のアルキル基またはアリール基であるが、透明性や耐熱性、ポリカーボネート樹脂への相溶性の観点からアリール基の方が好ましく、炭素数1〜34、好ましくは5〜20、特に、10〜15のアルキル基で置換されたアルキルベンゼンまたはアルキルナフタリン環から誘導される基が好ましい。また、一般式(5)中のR2〜R5は、各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基であるが、好ましくは炭素数2〜8のアルキルであり、更に好ましくは3〜6のアルキル基であり、特に、ブチル基が好ましい。
このようなスルホン酸ホスホニウム塩の具体例としては、ドデシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルオクチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム、ジブチルベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム、ジブチルナフチルスルホン酸トリフェニルホスホニウム、ジイソプロピルナフチルスルホン酸トリオクチルメチルホスホニウム等が挙げられる。中でも、ポリカーボネートとの相溶性および入手が容易な点で、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムが好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が帯電防止剤を含有する場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0質量部、更に好ましくは0.3〜2.0質量部、特に好ましくは0.5〜1.8質量部である。帯電防止剤の含有量が0.1質量部未満では、帯電防止の効果は得られず、5.0質量部を超えると透明性や機械的強度が低下し、成形品表面にシルバーや剥離が生じて外観不良を引き起こし易い。
[芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用することができる。
その具体例を挙げると、本発明に係る芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、微粒子(B)、有機スルホン酸アルカリ金属塩(C)、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解または分散させ、その溶液または分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
上記方法で各成分を予め混合した後、溶融混練する方法としてはバンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどを使用する方法が挙げられる。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、高化式フローテスターを用い、280℃、荷重1.57×107Pa、直径1mm×長さ10mmのオリフィスより流出する溶融樹脂量Q値が、0.01cm3/秒以上0.1cm3/秒以下である。Q値が0.01cm3/秒未満である場合は、流動性が不足し成形性に劣る材料となり、0.1cm3/秒を超える場合は、燃焼時に垂れ落ちしやすくなり所望の難燃性が得られなくなる。なお、樹脂組成物のQ値は、主成分である芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の同条件で測定されるQ値でほぼ決定するので、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の同条件で測定されるQ値も、前記範囲であることが好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)のQ値は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)および(a2)の分子量および混合比を前記範囲内で適切に制御することにより、所望の値とすることができる。
[芳香族ポリカーボネート樹脂成形品]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、シートやフィルム、異型押出成形品、ブロー成形品あるいは射出成形品等にすることもできる。
成形方法の例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。成形品の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形品の用途に応じて任意に設定すればよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる好ましい成形品としては、各種照明カバー、照明看板、透過形のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シートや光拡散板が挙げられ、中でも液晶表示装置に用の光拡散シートや光拡散板として、特には、大型液晶テレビ用拡散板として、好適に用いることができる。
また、照明カバーとしては、例えば、蛍光ランプや白熱電球のカバーやランプシェード、浴室灯、シャンデリア、スタンド、ブラケット、行燈、シーリングライト、ペンダント型ライト、ガレージライト、軒下灯、門柱灯、ポーチライト、ガーデンライト、エントランスライト、足元灯、階段灯、誘導灯、防犯灯、ダウンライト、ベースライト、電飾看板、サイン灯等のカバー、および自動車、自動二輪車等をはじめとする車両用灯具向けのカバー等に好適に用いることができる。特に、LEDや有機EL等の放熱量の少ない光源を用いる照明器具に好適に用いることができる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。なお、以下の説明において[部]とは、特に断らない限り質量基準に基づく「質量部」を表す。
以下の実施例および比較例で用いた測定・評価法ならびに使用材料は、以下の通りである。
[測定・評価法]
<分子量評価>
粘度平均分子量(Mv)は、0.2グラム/デシリットルのポリカーボネート樹脂のジクロロメタン溶液を、ウベローデ毛管粘度計によって20℃の温度で測定し、ハギンズ定数0.45で極限粘度[η]デシリットル/グラムを求め、次式により算出した。
η=1.23×10-4×Mv0.83
<流動性評価>
流動性評価としてのQ値は、後述する方法で得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、高化式フローテスター(島津製作所株式会社製)を用い、280℃、荷重1.57×107Pa(160kgf/cm2)の条件下でポリカーボネート樹脂組成物の単位時間当たりの流出量(単位:×10-2cm3/秒)を測定することで得られる。尚、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用する。後述する表中、『流動性』と表記する。Q値が高い程、ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が良いと言える。
<全光線透過率評価>
JIS K−7105に準じ、後述の3段プレート(3mm、2mm、1mm厚)を試験片とし、日本電色工業社製のNDH−2000型濁度計を用い、1mm、2mmおよび3mm各厚みの全光線透過率(単位「%」)を測定した。後述する表中、「透過率」と表記する。
<分散度(光拡散性)評価>
後述の3段プレート(3mm、2mm、1mm厚)を試験片とし、MURAKAMI COLOR RESEARCH LABORATORY社製のGP−5 GONIOPHOTOMETERを用い、入射光:0°、煽り角:0°、受光範囲:0°〜90°、光束絞り:2.0、受光絞り:3.0の条件で1mm、2mmおよび3mm各厚みの輝度を測定し、0°の輝度に対して、輝度が半減する角度を分散度(°)として求めた。分散度が高いほど、光拡散性が高く、照明カバーにした場合に、光源の光をより拡散し、より広範囲において照度を保て、かつ光源の視認性が低下する効果もある為好ましい。後述する表中、「分散度」と表記する。
<難燃性評価>
ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の評価は、後述する方法で得られたUL試験用試験片を、温度23℃、相対湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行う。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1およびV−2の難燃性を有するためには、以下の表1に示す基準を満たすことが必要となる。
ここで、残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。後述する表3および4にあっては、『難燃性』と表記する。
<耐熱性評価>
後述の3段プレート(3,2,1mm厚)を試験片とし、JIS K−7105に準じ、3mm厚部分の色相(YI値)を、日本電色工業(株)製のSE2000型分光式色彩計で、反射法により測定した。さらに、試験片を130℃、空気雰囲気中で500時間熱貯蔵し、この熱貯蔵前後のYI値の変化をΔYIとして算出し、耐熱性の指標とした。後述する表中、「耐熱性」と表記する。
実施例および比較例において使用したポリカーボネート樹脂組成物を、以下の方法で調製した。即ち、各成分を後述の表に示す含有量(添加割合、質量部)で、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社株式会社製二軸押出機(TEX30XCT)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20キログラム/時間、バレル温度310℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
そして、透過率、分散度および耐熱性の試験においては、得られたペレットを、120℃で4時間乾燥した後、射出成形機(名機製作所株式会社製:M150AII−SJ)にて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、3段プレート(3,2,1mm厚み)を成形した。また、燃焼性(難燃性)の試験においては、得られたペレットを、120℃で4時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所株式会社製:J50−EP)にて、シリンダー温度270℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ1.58mmのUL試験用試験片を成形し、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ1.2mmのUL試験用試験片を成形した。
<芳香族ポリカーボネート樹脂(A)>
・芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)
芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)を、以下に説明する方法で合成した。尚、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)をそれぞれ、「PC−1」、「PC−2」、「PC−3」と呼ぶ。
PC−1の製造:
5質量%の水酸化ナトリウム水溶液40リットルに、新日鐵化学株式会社製の3.697キログラム(16.215モル)のビスフェノールAと、22グラムのハイドロサルファイトを溶解した。そして、これに、17リットルのジクロロメタンを加えて撹拌しつつ、15℃に保ちながら、2.1キログラム(21.212モル)のホスゲンを15分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、分子量調節剤として、DIC株式会社製の22.3グラムのp−tert−ブチルフェノールを加え、更に、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液10リットル、ジクロロメタン20リットルを追加し、激しく撹拌して、反応液を乳化させた後、20ミリリットルのトリエチルアミンを加え、20℃〜25℃にて約1時間撹拌し、重合させた。重合終了後、反応液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗浄液(水相)の導電率が10μS/cm以下になるまで水洗を繰り返した。得られた重合体溶液を、50℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去すると同時に固形化物を粉砕して、白色粉末状沈殿物を得た。得られた沈殿物を濾過し、120℃で24時間乾燥して、重合体粉末を得た。
得られた重合体を赤外線吸収スペクトルにより分析した結果、1770cm-1付近の位置にカルボニル基による吸収、1240cm-1付近の位置にエーテル結合による吸収が認められ、カーボネート結合を有するポリカーボネート樹脂(PC−1)であることが確認された。また、このポリカーボネート樹脂PC−1の粘度平均分子量(Mv)は6.4×104であった。
PC−2の製造:
PC−2として、上述したPC−1の製造において、p−tert−ブチルフェノールを19.9グラムに変更し、ホスゲン吹き込み終了後のジクロロメタンを30リットルに変更した。それ以外は、上述したPC−1と同様にして製造した。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂PC−2の粘度平均分子量(Mv)は6.8×104であった。
PC−3の製造:
PC−3として、上述したPC−1の製造において、p−tert−ブチルフェノールを16.2グラムに変更し、ホスゲン吹き込み終了後のジクロロメタンを40リットルに変更した。それ以外は、上述したPC−1と同様にして製造した。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂PC−3の粘度平均分子量(Mv)は8.0×104であった。
・芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)
芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)として、後述する表に示す芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−4、PC−5、PC−6、PC−7)をそれぞれ使用した。また、比較例においては、後述する表に示す芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−8、PC−9、PC−10(溶融法ポリカーボネート樹脂))を、芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の代替として使用した。尚、これらの樹脂は、全て、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製である。
さらに、PC−11として、上述したPC−1合成例において、p−tert−ブチルフェノールを13.7グラムに変更し、ホスゲン吹き込み終了後のジクロロメタンを30リットルに変更した。それ以外は、上述したPC−1合成例と同様の合成を行った。得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−11)の粘度平均分子量は1.0×105であった。
<微粒子(B):ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子>
以下の表に示すポリオルガノシルセスキオキサン微粒子(B1)〜(B3)をそれぞれ準備した。(B1)〜(B3)は全てポリメチルシルセスキオキサン(T単位100モル%)微粒子である。
なお、ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の粒径および粒径分布の測定は、コールターカウンター法にて、ベックマン・コールター株式会社の粒度分布測定装置Multisizer4を使用し、分散媒ISOTON II、アパチャー径20μm、分散剤エタノールの条件で、超音波を3分かけ粒子を測定溶媒中に均一に分散させた後に、0.4〜12μmの範囲について行った。
また、実施例1〜実施例13、比較例1〜比較例9にあっては、有機スルホン酸金属塩(C)成分として、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、大日本化学工業社製「商品名:F114P」を使用した。また、紫外線吸収剤(D)として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、シプロ化成社製商品名「シーソーブ709」を使用した。更には、リン系熱安定剤(E)として、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、アデカ社製 商品名「アデカスタブ2112」、ならびに、離型剤(F−1)として、ペンタエリスリトールテトラステアレート、コグニスジャパン株式会社製「商品名:ロキシオールVPG861」、および、離型剤(F−2)として、ステアリン酸、日本油脂株式会社製「商品名:NAA180」を使用した。また、シロキサン化合物(G)として、メチルフェニルシリコーンオイル、東芝シリコーン社製「商品名:TSF437」を使用した。ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子(微粒子(B))以外の拡散剤として、中空ガラスビーズ粒子、東芝バロティーニ社製「商品名:HSC−110、平均粒子径10μm」を使用した。
実施例1〜実施例13、比較例1〜比較例9において、得られた各種測定結果を、以下の表3および4に示す。
表3に示す実施例1〜13と表4に示す比較例1〜9の結果から、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に、微粒子(B)としてポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を所定量添加した本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、全光線透過率と光拡散性が共に優れ、しかも難燃性と耐熱性に優れることが理解できる。特に、特定の平均粒径で特定の粒径分布を有するポリオルガノシルセスキオキサン微粒子(微粒子(B))を配合した、実施例1〜8および実施例11〜13は全光線透過率と光拡散性が共に優れている。
一方、比較例1〜6の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物以外の樹脂組成物からなる成形品は、難燃性に劣り、比較例7の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は透明性に劣るため、全光線透過率が低くなっていることが理解できる。比較例6の溶融法ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品は、耐熱性に劣りΔYI値が著しく上昇している。比較例3の有機スルホン酸金属塩(C)を過剰量添加した材料、および比較例8のポリオルガノシルセスキオキサン微粒子(微粒子(B))以外の拡散剤を含有する組成物も耐熱性が劣りΔYI値が上昇している。さらには、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子(微粒子(B))以外の拡散剤を含む比較例8は、全光線透過率と光拡散性のバランスが劣り、難燃性改善効果が得られないことが理解できる。また、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子(B)を含まない比較例9では、分散度が低く拡散性が得られないことが理解できる。
<微粒子(B):(メタ)アクリル樹脂系微粒子>
以下の表に示すアクリル樹脂系微粒子(B4)〜(B6)をそれぞれ準備した。
なお、アクリル樹脂系微粒子の粒径および粒径分布の測定は、コールターカウンター法にて、ベックマン・コールター株式会社の粒度分布測定装置Multisizer4を使用し、分散媒ISOTON II、アパチャー径20μm、分散剤エタノールの条件で、超音波を3分かけ粒子を測定溶媒中に均一に分散させた後に0.4〜12μmの範囲について行った。
また、下記表中、架橋性モノマー(b2)の割合は、非架橋性(メタ)アクリルモノマー(b1)であるメチルメタクリレートと架橋性モノマー(b2)との合計100質量%に対する架橋性モノマー(b2)の割合である。
また、実施例14〜実施例25、比較例10〜比較例18にあっては、有機スルホン酸金属塩(C)成分として、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、大日本化学工業社製「商品名:F114P」を使用した。また、紫外線吸収剤(D)として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、シプロ化成社製商品名「シーソーブ709」を使用した。更には、リン系熱安定剤(E)として、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、アデカ社製 商品名「アデカスタブ2112」、ならびに、離型剤(F−1)として、ペンタエリスリトールテトラステアレート、コグニスジャパン株式会社製「商品名:ロキシオールVPG861」、および、離型剤(F−2)として、ステアリン酸、日本油脂株式会社製「商品名:NAA180」を使用した。また、シロキサン化合物(G)として、メチルフェニルシリコーンオイル、東芝シリコーン社製「商品名:TSF437」を使用した。(メタ)アクリル樹脂系微粒子(微粒子(B))以外の拡散剤として、中空ガラスビーズ粒子、東芝バロティーニ社製「商品名:HSC−110、平均粒子径10μm」を使用した。
実施例14〜実施例25、比較例10〜比較例18において、得られた各種測定結果を、以下の表6および表7に示す。
表6に示す実施例14〜実施例25と表7に示す比較例10〜18の結果から、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に、(メタ)アクリル樹脂系微粒子(微粒子(B))を所定量含有した本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、全光線透過率と光拡散性が共に優れ、しかも難燃性と耐熱性に優れることが理解できる。特に、特定の平均粒径で特定の粒径分布を有する(メタ)アクリル樹脂系微粒子(微粒子(B))を配合した、実施例14〜20および実施例23〜25は全光線透過率と光拡散性が共に優れている。
一方、比較例10〜15の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物以外の樹脂組成物からなる成形品は、難燃性に劣り、比較例16の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は透明性に劣るため、全光線透過率が低くなっていることが理解できる。比較例15の溶融法ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品は、耐熱性に劣りΔYI値が著しく上昇している。比較例12の有機スルホン酸金属塩(C)を過剰量添加した材料、および比較例17の(メタ)アクリル樹脂系微粒子(微粒子(B))以外の拡散剤を配合する組成物も耐熱性が劣りΔYI値が上昇している。さらには、(メタ)アクリル樹脂系微粒子(微粒子(B))以外の拡散剤を含む比較例17は、全光線透過率と光拡散性のバランスが劣り、難燃性が得られないことが理解できる。また、(メタ)アクリル樹脂系微粒子(微粒子(B))を含まない比較例18では、分散度が低く拡散性が得られないことが理解できる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物によれば、全光線透過率と光拡散性、分散度に優れ、かつ成形性、難燃性、耐熱性にも優れた成形材料が提供されるので、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、各種照明カバー、照明看板、透過形のスクリーン、各種ディスプレイ、液晶表示装置の光拡散シートや光拡散板などの広範囲の分野に利用することができ、その産業上の利用可能性は非常に高い。
本明細書に記載の全文献の全記載は、ここに特に開示として援用される。

Claims (13)

  1. 粘度平均分子量が3×103〜2.5×104の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と粘度平均分子量が5×104〜9×104の芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とを、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と(a2)の合計量を100質量%として(a1):(a2)=99質量%〜50質量%:1質量%〜50質量%の割合で含む芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子および(メタ)アクリル樹脂系微粒子からなる群から選ばれる微粒子(B)を0.01〜10質量部、ならびに有機スルホン酸金属塩からなる難燃剤(C)を0.005質量部〜0.1質量部含有し、かつ、
    高化式フローテスターを用い、温度280℃、荷重1.57×107Pa、直径1mm×長さ10mmのオリフィスより流出する溶融樹脂量Q値が、0.01cm3/秒以上0.1cm3/秒以下である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の粘度平均分子量が、5×104〜8×104である請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を0.01〜5質量部含有する請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記微粒子は、コールターカウンター法にて直径0.4〜12μmの範囲で測定した際の平均粒径が1〜3μmであり、かつその粒径分布の最大ピークおよび2番目の最大ピークが共に1〜3μmの範囲にあるポリオルガノシルセスキオキサン微粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 微粒子(B)は、コールターカウンター法にて、直径0.4〜12μmの範囲で個数基準頻度(%)を測定した際の0.5〜1μmの範囲における個数基準頻度(%)が、0.1〜8%であり、4〜11μmの範囲における体積基準頻度(%)が、0.05〜2.5%であるポリオルガノシルセスキオキサン微粒子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 微粒子(B)は、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子であり、該ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子は、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子である請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、(メタ)アクリル樹脂系微粒子を0.1〜10質量部含有する請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 微粒子(B)は、コールターカウンター法により直径0.4〜12μmの範囲において個数基準で測定した粒径が、下記(i)〜(iii)の条件:
    (i) 平均粒径が1〜4μmである。
    (ii) 粒径が1μm以上2μm未満の粒子の割合、粒径が2μm以上3μm未満の粒子の割合、および粒径が3μm以上の粒子の割合が、それぞれ20〜40%の範囲にある。
    (iii) 粒径が10μm以上の粒子を実質的に含有しない。
    を満足する(メタ)アクリル樹脂系微粒子である請求項1、2または7に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 微粒子(B)は、(メタ)アクリル樹脂系微粒子であり、該(メタ)アクリル樹脂系微粒子は、非架橋性(メタ)アクリルモノマー(b1)90〜99質量%と架橋性モノマー(b2)10〜1質量%との共重合体微粒子である請求項1、2、7または8に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  10. 微粒子(B)は、(メタ)アクリル樹脂系微粒子であり、該(メタ)アクリル樹脂系微粒子は、ポリメチルメタアクリレート系微粒子である請求項1、2、7、8または9に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  11. さらに紫外線吸収剤(D)を、前記透明芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.05〜1質量部含有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる芳香族ポリカーボネート樹脂成形品。
  13. 照明カバーまたは光拡散板である請求項12に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品。
JP2013531421A 2011-09-02 2012-08-31 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品 Active JP5942996B2 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011191215 2011-09-02
JP2011191215 2011-09-02
JP2011191216 2011-09-02
JP2011191216 2011-09-02
PCT/JP2012/072136 WO2013031941A1 (ja) 2011-09-02 2012-08-31 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2013031941A1 JPWO2013031941A1 (ja) 2015-03-23
JP5942996B2 true JP5942996B2 (ja) 2016-06-29

Family

ID=47756417

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013531421A Active JP5942996B2 (ja) 2011-09-02 2012-08-31 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品

Country Status (5)

Country Link
US (1) US8927633B2 (ja)
EP (1) EP2752458B1 (ja)
JP (1) JP5942996B2 (ja)
CN (1) CN103764762A (ja)
WO (1) WO2013031941A1 (ja)

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TWI549986B (zh) 2011-05-19 2016-09-21 Mitsubishi Gas Chemical Co A high-flow polycarbonate copolymer, a method for producing a high molecular weight aromatic polycarbonate resin, and an aromatic polycarbonate compound
JP6438191B2 (ja) * 2013-12-10 2018-12-12 三菱瓦斯化学株式会社 ポリカーボネート樹脂フィルムおよびそれを用いた成形体
WO2016039370A1 (ja) * 2014-09-10 2016-03-17 三菱化学株式会社 ポリカーボネート樹脂組成物
CN105670258B (zh) * 2014-11-21 2018-11-13 合肥杰事杰新材料股份有限公司 一种高透明无卤阻燃耐刮擦聚碳酸酯复合材料及其制备方法
JP2016113570A (ja) * 2014-12-17 2016-06-23 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 超臨界発泡成形用ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
JP2016113571A (ja) * 2014-12-17 2016-06-23 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 超臨界発泡成形用ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
WO2017197568A1 (zh) * 2016-05-17 2017-11-23 蔡文珍 一种高色域光扩散片及其生产工艺
CN107559623A (zh) * 2016-06-07 2018-01-09 程国中 一种led球泡灯灯罩的制备方法
EP3658613A1 (de) * 2017-07-24 2020-06-03 Covestro Deutschland AG Led-beleuchtungselemente mit formteilen aus transluzenten polycarbonat-zusammensetzungen mit tiefenglanzeffekt
JP7286269B2 (ja) * 2018-03-23 2023-06-05 恵和株式会社 バックライトユニット
JP7314954B2 (ja) * 2018-11-14 2023-07-26 三菱瓦斯化学株式会社 樹脂成形体およびスクリーン
CN111087783A (zh) * 2019-12-12 2020-05-01 上海普利特复合材料股份有限公司 一种可用于uv胶固化的透明无卤阻燃pc材料及其制备方法
WO2024154699A1 (ja) * 2023-01-19 2024-07-25 恵和株式会社 光拡散シート、バックライトユニット、液晶表示装置、及び情報機器

Family Cites Families (25)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58138754A (ja) * 1982-02-10 1983-08-17 Idemitsu Kosan Co Ltd ポリカ−ボネ−ト組成物の製造法
JPH0618879B2 (ja) 1988-02-26 1994-03-16 東芝シリコーン株式会社 ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子
JPH0619007B2 (ja) 1989-03-27 1994-03-16 帝人化成株式会社 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物
JP2696573B2 (ja) 1989-10-30 1998-01-14 日本ジーイープラスチックス 株式会社 光拡散性ポリカーボネート樹脂
JP2579376B2 (ja) 1990-03-12 1997-02-05 株式会社テック 放電灯点灯装置
JP2600496B2 (ja) 1990-12-20 1997-04-16 日本電気株式会社 セル位相乗換回路
JPH05257002A (ja) 1992-03-13 1993-10-08 Teijin Chem Ltd ポリカーボネート製高透過率光拡散板
JP3263795B2 (ja) 1992-12-24 2002-03-11 日本ジーイープラスチックス株式会社 光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物
JP3386248B2 (ja) * 1994-10-13 2003-03-17 帝人化成株式会社 延伸ブロー成形用組成物
JP3456559B2 (ja) * 1995-08-28 2003-10-14 旭化成株式会社 難燃性樹脂組成物
JPH10152610A (ja) * 1996-11-26 1998-06-09 Teijin Chem Ltd 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物
JP3682146B2 (ja) * 1997-04-25 2005-08-10 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 ポリカーボネート樹脂組成物
JPH11323118A (ja) 1998-05-20 1999-11-26 Teijin Chem Ltd 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物
JP2000169695A (ja) 1998-12-10 2000-06-20 Sumitomo Dow Ltd ポリカ―ボネ―ト樹脂組成物およびそれからなる浴室灯グロ―ブ
US6773787B2 (en) 2002-05-01 2004-08-10 General Electric Company Light diffusing articles and methods to manufacture thereof
JP2004029091A (ja) 2002-06-21 2004-01-29 Teijin Chem Ltd ポリカーボネート樹脂製直下型バックライト用光拡散板
JP5612242B2 (ja) * 2007-05-31 2014-10-22 帝人株式会社 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物
JP5305798B2 (ja) * 2008-09-11 2013-10-02 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物並びにそれらからなる成形体及び照明用部材
US8492476B2 (en) * 2009-02-09 2013-07-23 Mitsubishi Engineering-Plastics Corporation Polycarbonate resin composition and formed product thereof
JP5371646B2 (ja) * 2009-09-08 2013-12-18 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
US8927636B2 (en) * 2009-09-14 2015-01-06 Mitsubishi Engineering-Plastics Corporation Polycarbonate resin composition and molded article
JP5723090B2 (ja) * 2009-09-15 2015-05-27 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
US20120217439A1 (en) * 2009-11-05 2012-08-30 Teijin Chemicals Ltd. Extrusion-molded product from aromatic polycarbonate resin composition
JP5386417B2 (ja) * 2010-01-08 2014-01-15 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
EP2562217B1 (en) 2010-04-20 2017-05-10 Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. Transparent, fire-retardant aromatic polycarbonate resin composition and molded product

Also Published As

Publication number Publication date
US8927633B2 (en) 2015-01-06
EP2752458A1 (en) 2014-07-09
EP2752458A4 (en) 2015-03-25
CN103764762A (zh) 2014-04-30
JPWO2013031941A1 (ja) 2015-03-23
US20140221541A1 (en) 2014-08-07
WO2013031941A1 (ja) 2013-03-07
EP2752458B1 (en) 2023-07-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5942996B2 (ja) 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品
JP5305798B2 (ja) 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物並びにそれらからなる成形体及び照明用部材
WO2011132510A1 (ja) 透明難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
JP6217649B2 (ja) 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその製造方法、該樹脂組成物からなる成形品
JP5386417B2 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
JP5723090B2 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
JP2015117298A (ja) ポリカーボネート樹脂組成物
JP2012251107A (ja) 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
JP6606083B2 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物
JP2017088699A (ja) 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
JP2017088700A (ja) 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
JP5731239B2 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
JP2014074110A (ja) 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
JP5352568B2 (ja) ポリカーボネート樹脂成形品
JP2013133348A (ja) ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
JP5645701B2 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
JP2014074109A (ja) 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
JP2013133350A (ja) ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
JP2012108450A (ja) Led照明用光拡散部材
JP6234730B2 (ja) Led照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物及びled照明用光拡散性部材
JP2017110038A (ja) 光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
JP6087745B2 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品
JP5864345B2 (ja) 厚肉成形品用ポリカーボネート樹脂組成物
JP2013133349A (ja) Led照明用光拡散部材
JP5205357B2 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法及び成形品

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150417

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160329

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160404

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160426

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160509

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5942996

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151