JP5862956B2 - 正極活物質およびその利用 - Google Patents
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Description
かかる製造方法により得られた正極活物質を用いた非水電解液二次電池では、正極における電解液の酸化分解が好適に抑制され得る。したがって、耐久性が改善された非水電解液二次電池が実現され得る。
層間イオンを適切なイオンに置換することで、正極活物質における電荷担体の移動(挿入・脱離)がより一層スムーズに行われるようになり、すなわち正極の抵抗を低減し得る。このため、電池の初期容量を向上し得る。さらに、正極活物質からの金属元素溶出の一因となり得る酸(H+)をイオン交換によって好適に層間に捕捉し得るため、非水電解液の酸性を緩和することができ、電池の耐久性を向上し得る。
ここで開示される非水電解液二次電池は、非水電解液の酸化分解が高度に抑制された非水電解液二次電池となり得る。このような非水電解液二次電池によると、内部抵抗が低減され、且つ優れた電池性能(例えば高い電池容量や耐久性)が実現され得る。
かかる組成の電解液は酸化側に広い電位窓を有している(すなわち耐酸化性が高い)。したがって、該電解液を用いて構築した非水電解液二次電池では正極における電解液の酸化分解が生じ難く、エネルギー密度と耐久性とをより高いレベルで両立し得る。
図1は、ここで開示される正極活物質16の典型的な構造を示した模式図である。また、図2はここで開示される正極活物質16の表面構造を拡大して示した模式図である。図1および図2に示すように、正極活物質16は、大まかにいって、実質的にリチウム遷移金属酸化物からなるコア部17と、上記コア部の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部18とから構成される。被覆部18は、層状ケイ酸塩19を主体とする。また、リチウム遷移金属酸化物(コア部)17−層状ケイ酸塩19間および/または層状ケイ酸塩19−層状ケイ酸塩19間は、リン酸を介して(共有結合、水素結合、ファンデルワールス力等によって)架橋されている。このリン酸架橋は、典型的には2つ以上のリン酸(リン酸イオン(PO4 3−)であり得る。)が直鎖状または環状に連なったポリリン酸の形態である。かかる構成の正極活物質では、コア部17の表面に層状ケイ酸塩19が固定化されているため、充放電を繰り返した場合であっても層状ケイ酸塩の剥離が生じ難く、コア部が層状ケイ酸塩で被覆された状態を好適に保持し得る。よって、かかる正極活物質を用いた非水電解液二次電池では、従来に比べて正極における非水電解液の酸化分解を抑制し得、優れた耐久性を発揮し得る。
以下、正極活物質の構成要素について順に説明する。
コア部17は、実質的にリチウム遷移金属酸化物から構成される。ここで「実質的に」とは、不可避的な不純物や極微量の添加剤等の混入を許容することを意味し、典型的にはコア部の90質量%以上(好ましくは95質量%以上)がリチウム遷移金属酸化物であることをいう。
(1)一般式:LiMn2−xMxO4Zw;で表わされる、スピネル構造のリチウム遷移金属複合化合物(酸化物)。ここで、xは0≦x<2であり、典型的には0≦x≦1(例えば0≦x≦0.5)である。xが0より大きい場合、Mは、Mn以外の任意の金属元素であり得、Mが遷移金属元素の少なくとも一種を含む組成のものが好ましい。また、wは0≦w≦1であり、wが0より大きい場合、Zは、F,Cl等の任意のハロゲン元素であり得る。具体例としては、LiNi0.5Mn1.5O4,LiCrMnO4等が挙げられる。
(2)一般式LiMO2で表わされる、層状構造のリチウム遷移金属複合化合物(酸化物)。ここで、Mは、Ni,Co,Mn等の遷移金属元素の少なくとも一種を含み、他の金属元素または非金属元素をさらに含み得る。具体例としては、リチウムニッケル系酸化物(典型的にはLiNiO2)、リチウムコバルト系酸化物(典型的にはLiCoO2)、リチウムマンガン系酸化物(典型的にはLiMn2O4)等が挙げられる。なかでも、構成元素としてリチウム元素、ニッケル元素、コバルト元素およびマンガン元素を含むリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)を好ましく用いることができる。
(3)一般式Li2MO3で表わされる、層状構造のリチウム遷移金属化合物(酸化物)。ここで、Mは、Mn,Fe,Co等の遷移金属元素の少なくとも一種を含み、他の金属元素または非金属元素をさらに含み得る。具体例としては、Li2MnO3,Li2PtO3等が挙げられる。
(4)LiMO2とLi2MO3との固溶体。ここで、LiMO2は上記(2)に記載の一般式で表わされる組成を指し、Li2MO3は上記(3)に記載の一般式で表わされる組成を指す。具体例としては、0.5LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2−0.5Li2MnO3で表される、いわゆる固溶型のリチウム過剰遷移金属酸化物が挙げられる。
(5)一般式LiMAO4Zwで表わされる、ポリアニオン型(典型的にはオリビン構造)のリチウム遷移金属複合化合物(酸化物)。ここで、Mは、Mn,Fe,Co,Ni等の遷移金属元素の少なくとも一種を含み、他の金属元素または非金属元素をさらに含み得る。またAは、P,Si,SまたはVである。wは0≦w≦1であり、wが0より大きい場合、Zは、F,Cl等の任意のハロゲン元素であり得る。具体例としては、LiMnPO4,LiFePO4,Li2FeSiO4,LiMnPO4F等が挙げられる。
被覆部18はコア部17の表面の少なくとも一部を被覆する部分であって、層状構造のケイ酸塩鉱物(層状ケイ酸塩)19を主体として含む。ここで、「主体とする」とは被覆部の全質量の50質量%以上が層状ケイ酸塩であることをいい、70質量%以上(好ましくは80質量%以上)が層状ケイ酸塩であることがより好ましい。
Plasma Atomic Emission Spectroscopy:ICP‐AES)や、原子吸光分析、イオンクロマトグラフィ等の手法によって分析することで、層間に含まれるイオン(原子)の種類と量を測定することができる。あるいは、一般的な透過型電子顕微鏡(TEM)−エネルギー分散型X線分光法(EDX)の手法によって、層状ケイ酸塩の分布を観察(マッピング)することもできる。
ここに開示される正極活物質は、例えば以下の(1),(2)の工程を包含する製造方法によって好ましく製造し得る。
(1)コアとなるリチウム遷移金属酸化物と、層状ケイ酸塩と、リン酸またはリン酸化合物と、を用意すること(用意工程)
(2)上記用意した原料を混合し、リチウム遷移金属酸化物の表面にリン酸を介して層状ケイ酸塩が被覆された正極活物質を作製すること(表面被覆工程)
また、好ましい一態様では、以下の(3)の工程を、さらに包含する。
(3)上記層状ケイ酸塩の層間イオンを置換する工程(イオン置換工程)
以下、各工程について順に説明する。
先ず、リチウム遷移金属酸化物と、層状ケイ酸塩と、リン酸またはリン酸化合物と、を用意する。リチウム遷移金属酸化物は、既に上述したものの中から1種または2種以上を特に限定することなく用いることができる。かかるリチウム遷移金属酸化物は、例えば従来公知の方法で調製して用意することができる。具体的には、例えば、目的の組成に応じて選択される原料化合物(例えばリチウム源と遷移金属元素源と)を所定の割合で混合し、その混合物を適切な手段によって焼成する。これを適宜粉砕、造粒、分級することによって、所望の性状を有する酸化物を調製することができる。また、層状ケイ酸塩は既に上述したものの中から1種または2種以上を特に限定することなく用いることができる。リン酸化合物は、水系溶媒に溶解または均一に分散し得るものであれば特に限定されず、各種のリン酸イオンを含有する化合物を用いることができる。具体的な化合物としては、例えばリン酸〔H3PO4〕;リン酸二水素アンモニウム〔NH4H2PO4〕等のリン酸水素アンモニウム;亜リン酸トリエチル〔C6H15O3P〕等が挙げられる。
表面被覆の方法は特に限定されないが、例えば液相法(典型的には、いわゆるゾルゲル法)を好ましく採用し得る。すなわち、上記原料化合物を溶媒に分散させた状態のゾルを作製し、得られたゾルから溶媒を除去して流動性のないゲルに変える手法を好ましく採用し得る。かかる手法を用いることで、原子レベルでの結晶構造の制御が可能となる。より具体的には、上記用意した原料化合物を所望の組成比率となるよう秤量し、溶媒中に均一に溶解または分散させること(原料混合物の調製);上記得られた原料混合物から溶媒を除去すること(溶媒の除去);によって行い得る。
好ましい一態様では、上記層状ケイ酸塩の被覆後に、該層状ケイ酸塩の層間イオンを置換すること(イオン置換工程)をさらに含む。層状ケイ酸塩の層間イオンを適切なイオンに置換することで、電荷担体の移動(挿入・脱離)がより一層スムーズに行われるようになり、正極の抵抗を低減し得る。このため、電池の初期容量を向上し得る。さらに、正極活物質からの金属元素溶出の一因となり得る酸(H+)を、イオン交換によって好適に層間に捕捉し得る。このため、非水電解液の酸性を緩和することができ、電池の耐久性を向上し得る。イオン置換の方法は特に限定されないが、例えば、層間に挿入したい陽イオンを含む化合物を水性溶媒に溶解させて溶液を調製し、かかる溶液中に層状ケイ酸塩を分散させて所定の時間撹拌・混合することによって行い得る。
好ましい一態様に係る正極は、正極集電体と、該正極集電体上に形成された上述の正極活物質を含む正極活物質層と、を備えている。このような正極は、正極活物質と必要に応じて用いられる導電材やバインダ等とを適当な溶媒に分散させたペースト状またはスラリー状の組成物(正極活物質層形成用の分散液)をシート状の正極集電体に付与し、該組成物を乾燥させることにより好ましく作製することができる。上記溶媒としては、水系溶媒および有機溶媒のいずれも使用可能であり、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いることができる。
ここで開示される非水電解液二次電池の負極は、負極集電体と、該負極集電体上に形成された少なくとも負極活物質を含む負極活物質層と、を備えている。このような負極は、負極活物質と必要に応じて用いられるバインダ(結着剤)等とを適当な溶媒に分散させたペースト状またはスラリー状の組成物(負極活物質層形成用の分散液)をシート状の負極集電体に付与し、該組成物を乾燥させて負極活物質層(負極活物質層)を形成することにより好ましく作製することができる。上記溶媒としては、水系溶媒および有機溶媒のいずれも使用可能であり、例えば水を用いることができる。
負極集電体としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性材料を好ましく用いることができる。また負極集電体の形状は正極集電体と同様であり得る。
上記作製した正極と負極とを積層し、電極体を作製する。ここで開示される非水電解液二次電池の典型的な構成では、正極と負極との間にセパレータが介在される。このセパレータとしては、一般的な非水電解液二次電池用(例えば、リチウムイオン二次電池用)のセパレータと同様のものを特に限定なく用いることができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなる多孔質シート、不織布等を用いることができる。好適例として、1種または2種以上のポリオレフィン樹脂を主体に構成された単層または多層構造の多孔性シート(微多孔質樹脂シート)が挙げられる。例えば、PEシート、PPシート、PE層の両側にPP層が積層された三層構造(PP/PE/PP構造)のシート等を好適に使用し得る。セパレータの厚みは、例えば、凡そ10μm〜40μmの範囲内で設定することが好ましい。
特に限定するものではないが、上記正極活物質の単位質量当たりの理論容量(mAh/g)と該正極活物質の質量(g)との積で算出される正極容量(Cc(mAh))と、上記負極活物質の単位質量当たりの理論容量(mAh/g)と該負極活物質の質量(g)との積で算出される負極容量(Ca(mAh))と、の比(Ca/Cc)は、通常、例えば1.0〜2.0とすることが適当であり、1.2〜1.9(例えば1.7〜1.9)とすることが好ましい。対向する正極容量と負極容量の割合は、電池容量(または不可逆容量)やエネルギー密度に直接的に影響し、電池の使用条件等(例えば急速充電)によってはリチウムの析出を招き易くなる。対向する正負極の容量比を上記範囲とすることで、電池容量やエネルギー密度等の電池特性を良好に維持しつつ、リチウムの析出を好適に抑制することができる。
非水電解液としては、非水溶媒中に支持塩を溶解または分散させたものを用いる。
上記支持塩としては、一般的な非水電解液二次電池と同様のものを、適宜選択して使用することができる。例えば、リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li(CF3SO2)2N、LiCF3SO3等が例示される。このような支持塩は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましい支持塩としてLiPF6が挙げられる。また、電解液は、例えば上記支持塩の濃度が0.7mol/L〜1.3mol/Lの範囲内となるように調製することが好ましい。
なお、電解液の酸化電位(vs.Li/Li+)は、以下の方法で測定することができる。先ず、LiNi0.5Mn1.5O4を用いて後述する実施例の正極と同様に作用極(WE)を作製する。上記作製したWEと、対極(CE)としての金属リチウムと、参照極(RE)としての金属リチウムと、測定対象たる電解液とを用いて三極式セルを構築する。この三極式セルに対し、WEから完全にLiを脱離させる処理を行う。具体的には、温度25℃において、該WEの理論容量から予測した電池容量(Ah)の1/5の電流値で4.2Vまで定電流充電を行い、4.2Vにおいて電流値が初期電流値(すなわち、電池容量の1/5の電流値)の1/50となるまで定電圧充電を行う。次いで、測定対象電解液の酸化電位が含まれると予測される電圧範囲(典型的には4.2Vよりも高い電圧範囲)において、任意の電圧で所定時間(例えば10時間)の定電圧充電を行い、その際の電流値を測定する。より具体的には、上記電圧範囲のなかで電圧を段階的に(例えば0.2Vステップで)高くしていき、各段階において定電圧充電を所定時間(例えば、10時間程度)行い、その際の電流値を測定する。定電圧充電時の電流値が0.1mAより大きくなったときの電位を、上記電解液の酸化電位(酸化分解電位)とする。
好ましい一態様では、上記電解液は、フッ素含有非水溶媒を含んでいる。このフッ素含有非水溶媒は、例えば、非水電解液二次電池の電解液に利用し得ることが知られている有機溶媒(有機化合物)のフッ素化物であり得る。換言すれば、構成元素としてフッ素を含まない有機溶媒の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子によって置換された化学構造を有する有機溶媒であり得る。上記「構成元素としてフッ素を含まない非水溶媒」は、各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等であり得る。また、上記カーボネート類とは環状カーボネートおよび鎖状カーボネートを包含する意味であり、上記エーテル類とは環状エーテルおよび鎖状エーテルを包含する意味である。このようなフッ素含有非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
好ましい一態様に係る電解液は、上記フッ素含有非水溶媒として、一種または二種以上のフッ素化カーボネート(フッ素化環状カーボネートおよびフッ素化鎖状カーボネートのいずれをも好ましく使用可能である。)を含有する。通常は、1分子内に1個のカーボネート構造を有するフッ素化カーボネートの使用が好ましい。かかるフッ素化カーボネートのフッ素置換率は、通常、10%以上が適当であり、例えば20%以上(典型的には20%以上100%以下、例えば20%以上80%以下)であり得る。フッ素置換率30%以上(典型的には30%以上100%以下、例えば30%以上70%以下)のフッ素化カーボネートを含む電解液によると、より高い酸化電位(高い耐酸化性)を実現し得る。
ここで開示される技術における電解液の好適例として、上記フッ素含有非水溶媒として少なくとも1種のフッ素化環状カーボネートを含む組成の電解液が挙げられる。上記電解液から支持塩を除いた全成分(以下「支持塩以外成分」ともいう。)のうち、上記フッ素化環状カーボネートの量は、例えば5質量%以上とすることができ、通常は10質量%以上が適当であり、20質量%以上(例えば30質量%以上)が好ましい。上記支持塩以外成分の実質的に100質量%(典型的には99質量%以上)がフッ素化環状カーボネートであってもよい。通常は、電解液の低粘度化、イオン伝導性の向上等の観点から、上記支持塩以外成分のうちフッ素化環状カーボネートの量を90質量%以下とすることが適当であり、80質量%以下(例えば70質量%以下)とすることが好ましい。なお、上記フッ素化環状カーボネートの量とは、上記電解液が2種以上のフッ素化環状カーボネートを含む場合には、それらの合計量を指す。
ここで開示される技術における電解液は、上記フッ素含有非水溶媒として、上述のようなフッ素化環状カーボネートに代えて、あるいは該フッ素化環状カーボネートに加えて、例えば、以下の式(C2)で表わされるフッ素鎖状カーボネートを用いることができる。
そして、正極および負極を含む電極体と電解液とを適当な電池ケース内に収容し、前処理用セルを構築する。
電池ケースとしては、従来から非水電解液二次電池に用いられる材料や形状を用いることができる。該ケースの材質としては、例えば、アルミニウム、スチール等の金属材料;ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料;が挙げられる。なかでも、放熱性向上やエネルギー密度を高める目的から、比較的軽量な金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金)を好ましく採用し得る。また、該ケースの形状(容器の外形)は、例えば、円形(円筒形、コイン形、ボタン形)、六面体形(直方体形、立方体形)、袋体形、およびそれらを加工し変形させた形状等であり得る。
(サンプル1)
原料化合物として、リチウム遷移金属酸化物としてのLiNi0.5Mn1.5O4(スピネル構造、平均粒径が6μm、BET比表面積が0.7m2/g)と、層状ケイ酸塩としてのモンモリロナイト(スメクタイト族、長径L20〜40nm)と、リン酸化合物としての85%オルトリン酸と、溶媒としての水と、を用意した。
まず、層状ケイ酸塩と水とを100:3000の質量比で混合し、撹拌して層状ケイ酸塩が均一に分散した溶液を得た。これに、LiNi0.5Mn1.5O4を(層状ケイ酸塩100に対し)3000質量部加え、撹拌して均一溶液とした。さらに85%オルトリン酸を(層状ケイ酸塩1質量部に対し)リン酸イオンの量が5質量部となるように加えて混合することで、原料混合物を調製した。この原料混合物を、ドライエアー雰囲気下に静置して室温乾燥させた後、200℃で5時間真空乾燥して溶媒を除去し、正極活物質(サンプル1)を得た。また、層状ケイ酸塩の層間に含まれるイオンについて上述の方法で分析したところ、水素イオン(H+)だった。
(サンプル2)
サンプル1と10質量%の塩化リチウム水溶液とを、1:100の質量比で混合し、5時間撹拌混合した。これをろ過して純水で洗浄後、200℃で5時間真空乾燥して本例に係る正極活物質を得た。また、層状ケイ酸塩の層間に含まれるイオンについて上述の方法で分析したところ、水素イオン(H+)がリチウムイオン(Li+)で置換されていた。
(サンプル3)
サンプル1と10質量%の塩化ナトリウム水溶液とを、1:100の質量比で混合し、5時間撹拌混合した。これをろ過して純水で洗浄後、200℃で5時間真空乾燥して本例に係る正極活物質を得た。また、層状ケイ酸塩の層間に含まれるイオンについて上述の方法で分析したところ、水素イオン(H+)がナトリウムイオン(Na+)で置換されていた。
(サンプル4)
サンプル1と10質量%の塩化カリウム水溶液とを、1:100の質量比で混合し、5時間撹拌混合した。これをろ過して純水で洗浄後、200℃で5時間真空乾燥して本例に係る正極活物質を得た。また、層状ケイ酸塩の層間に含まれるイオンについて上述の方法で分析したところ、水素イオン(H+)がナトリウムイオン(K+)で置換されていた。
(サンプル5)
正極活物質の作製時に、リン酸化合物(オルトリン酸)を用いなかったこと以外はサンプル1と同様に、本例に係る正極活物質を得た。
(サンプル6)
正極活物質の作製時に、層状ケイ酸塩(モンモリロナイト)とリン酸化合物(オルトリン酸)を用いなかったこと以外はサンプル1と同様に、本例に係る正極活物質を得た。
(正極シートの作製)
正極活物質として、上記作製した正極活物質と、アセチレンブラック(導電材)と、PVdF(バインダ)とを、これらの質量比が89:8:3となるようにNMPに分散させて、スラリー状の組成物を調製した。この組成物を厚さ15μmの長尺状アルミニウム箔(正極集電体)の片面に塗付し、乾燥させて正極活物質層を形成した。この正極活物質層付き集電体をロールプレスして、上記正極活物質層の密度を2.3g/cm3に調整して、理論容量(設計容量)CCが60mAhの正極シートを得た。
負極活物質として、平均粒径が20μmであり、BET比表面積が2.5m2/gの天然黒鉛系材料を用意した。この負極活物質とCMC(増粘剤)とSBR(バインダ)とを、これらの質量比が98:1:1となるようにイオン交換水と混合して、スラリー状の組成物を調製した。この組成物を厚さ10μmの銅箔(負極集電体)の片面に塗付し、乾燥させて負極活物質層を形成した。この負極活物質層付き集電体をロールプレスして、上記負極活物質層の密度を1.4g/cm3に調整し、正極シートと同サイズの長方形状に切り出して負極シートを得た。なお、上記組成物の塗付量は、正極と負極との理論容量比(Cc/Ca)が1.5となるように調整した。
この電極体と非水電解液とを適当なサイズのラミネート製の電池ケースに収容した後、封止して例1〜6に係る非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)を構築した。なお、上記正極シートおよび上記負極シートは、ラミネートフィルムの外部まで引き出された正極端子および負極端子にそれぞれ接続されている。
(初期容量)
温度25℃にて、例1〜6に係る電池に対し、以下の充放電パターンでコンディショニング処理を行った。
(1)正極電位が4.8Vとなるまで1/2Cのレートで定電流(CC)充電した後、10分休止する。
(2)正極電位が3.0Vとなるまで1/2CのレートでCC放電した後、10分休止する。
上記操作を3サイクル繰り返し、3サイクル目の放電容量を初期容量(初期放電容量)とした。
次に、初期容量測定後の各電池に対し、温度25℃にて以下の充放電操作(1)〜(4)を300サイクル繰り返した。
(1)2Cのレートで4.8VまでCC充電する。
(2)10分間休止する。
(3)2Cのレートで3.0VまでCC放電する。
(4)10分間休止する。
その後、上記初期容量と同様に放電容量を測定した。そして、初期容量に対する100サイクル目の放電容量の割合((100サイクル後の容量/初期容量)×100(%))を、サイクル特性の容量維持率(%)として算出した。結果を表1の「電池特性」の欄および図6に示す。
そこで、さらに正極活物質からの金属元素の溶出について評価を行った。正極活物質から溶出した金属は、一般に非水電解液中を移動して負極上に析出する。このため、ここでは上記サイクル特性試験後の各電池から負極とセパレータとを取り出して、そこに析出した金属量を測定することで、正極からの金属溶出量の評価とした。具体的には、非水電解液として用いた非水溶媒で2〜3回軽く洗浄した後、この負極とセパレータとを任意の大きさに打ち抜いてICP−AES分析用の測定用試料を得た。該測定用試料を酸溶媒中(ここでは硫酸を用いた。)に加熱溶解させ、かかる溶液をICP−AESで分析することによって、ニッケル(Ni)原子とマンガン(Mn)原子の量(μg)を測定した。そして、得られた量(負極とセパレータとに含まれるNiとMnの総量)を例6の結果を100として相対化した結果を、表1の「金属溶出」の欄および図6に示す。
このように、ここで開示される構成の非水電解液二次電池では、非水電解液の酸化分解や正極活物質からの金属溶出が高度に抑制されており、優れた電池性能(例えば高い電池容量や耐久性)を発揮し得ることが示された。
10 正極シート(正極)
12 正極集電体
14 正極活物質層
16 正極活物質
17 コア部
18 被覆部
19 層状ケイ酸塩
20 負極シート(負極)
22 負極集電体
24 負極活物質層
40 セパレータシート(セパレータ)
50 電池ケース
52 電池ケース本体
54 蓋体
55 安全弁
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
100 非水電解液二次電池
Claims (14)
- 非水電解液二次電池に用いられる正極活物質であって、
前記正極活物質は、
実質的にリチウム遷移金属酸化物からなるコア部と、
前記コア部の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部であって、層状構造のケイ酸塩を主体とする被覆部と、
を備えており、
前記コア部のリチウム遷移金属酸化物と前記被覆部の層状ケイ酸塩とは、リン酸架橋されており、
前記層状ケイ酸塩の電子顕微鏡観察に基づく平均長径は100nm〜200nmである、正極活物質。 - 前記層状ケイ酸塩は、陽イオン交換能を有しており、
その層間に、水素イオンよりイオン化傾向の大きな陽イオンを含んでいる、請求項1に記載の正極活物質。 - 前記層状ケイ酸塩は、スメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族または緑泥石族からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項1または2に記載の正極活物質。
- 前記リチウム遷移金属酸化物は、スピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の正極活物質。
- レーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定による体積基準の平均粒径が1μm〜10μmである、請求項1から4のいずれか一項に記載の正極活物質。
- 非水電解液二次電池に用いられる正極活物質の製造方法であって:
コアとなるリチウム遷移金属酸化物と、層状構造のケイ酸塩と、リン酸化合物と、を用意すること;および
前記用意した原料を混合し、前記リチウム遷移金属酸化物の表面に前記リン酸化合物由来のリン酸を介して前記層状ケイ酸塩が被覆された正極活物質を作製すること;
を包含し、
前記層状構造のケイ酸塩として、電子顕微鏡観察に基づく平均長径が100nm〜200nmのものを用いる、正極活物質製造方法。 - 前記リン酸化合物は、前記層状ケイ酸塩100質量部に対して、リン酸イオンの量が1質量部〜20質量部となるよう添加する、請求項6に記載の正極活物質製造方法。
- 前記層状ケイ酸塩の被覆後に、前記層状ケイ酸塩の層間イオンを置換すること、を更に包含する、請求項6または7に記載の正極活物質製造方法。
- 前記層間イオンの置換において、水素イオンよりもイオン化傾向の大きい陽イオンを用いる、請求項8に記載の正極活物質製造方法。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極と、
負極と、
非水電解液と、
を用いて構築された、非水電解液二次電池。 - 前記非水電解液はフッ素化カーボネートを含む、請求項10に記載の非水電解液二次電池。
- 前記正極の作動電位は金属リチウム基準で4.5V以上である、請求項10または11に記載の非水電解液二次電池。
- 非水電解液二次電池を製造する方法であって:
請求項1から5のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極を用意すること;および、
前記正極と負極と非水電解液とを用いて非水電解液二次電池を構築すること;
を包含する、非水電解液二次電池製造方法。 - 請求項10から12のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池を備えた車両。
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