JP6981027B2 - リチウムイオン二次電池用負極活物質、負極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極活物質、負極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極活物質、負極及びリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池等と比較して、軽量、高容量であり、携帯電子機器用の電源として広く用いられている。またリチウムイオン二次電池は、ハイブリッド自動車や電気自動車用の電源としても有力な候補となっている。携帯電子機器の小型化、高機能化及び自動車用電源の高容量化の要望は年々高まっており、リチウムイオン電池の更なる高容量化が期待されている。
リチウムイオン二次電池の容量は主に電極の活物質に依存する。負極活物質には、一般に黒鉛が利用されているが、上記の要求に対応するためにはより高容量な負極活物質を用いることが必要である。そのため、黒鉛の理論容量(372mAh/g)に比べてはるかに大きな理論容量をもつシリコン(Si)や酸化シリコン(SiOx)が注目されている。
しかしながら、SiやSiOxは充電時にリチウムイオンを吸蔵することにより大きな体積膨張を伴い、吸蔵前のシリコンの体積の約4倍に達する。従って、充放電による膨張と収縮が繰り返されると、負極集電体からの活物質の剥離、脱落等が発生するため、寿命が短くなるという問題がある。
かかる問題を解決する方法として、特許文献1では、連続する空孔を有し、三次元網目構造を有する多孔質シリコン粒子が提案されている。かかる負極活物質では、多孔質シリコン粒子を構成するシリコンが膨張しても、その三次元網目構造がその体積膨張に対して緩衝効果を奏するというものである。
特開2012−84521号公報
しかしながら、特許文献1に記載の多孔質シリコン粒子からなる負極活物質では、負極活物質全体に充放電反応に寄与しない空孔が占める体積が大きいため、放電容量の低下を招いていたという問題があった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、放電容量の低下を抑制しつつ、シリコンの膨張に対して緩衝効果を奏するリチウムイオン二次電池用負極活物質、負極及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質は、負極母材粒子と該負極母材粒子の表面を被覆する導電性被膜とからなるリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、該リチウムイオン二次電池用負極活物質の表面の少なくとも一部が繊維状構造とされている。
(2)上記態様において、前記負極母材粒子の主成分は、金属、半金属、合金、及び、それらの酸化物からなる群から選択された一種以上であってもよい。
(3)上記態様において、前記金属又は前記半金属は、Si、Sn、及び、Feからなる群から選択されたものであってもよい。
(4)上記態様において、シリコン系酸化物であってもよい。
(5)上記態様において、前記シリコン系酸化物は、SiOx(0<x≦2)であってもよい。
(6)上記態様において、前記負極母材粒子は、Mg、Al、Zn、Sn、及び、それらの酸化物からなる群から選択された1種以上を含有してもよい。
(7)上記態様において、前記導電性被膜は、黒鉛、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブからなる群から選択された1種以上からなってもよい。
(8)本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池用負極は、上記態様に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質を有する。
(9)本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池は、上記態様に係るリチウムイオン二次電池用負極を備える。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極活物質によれば、放電容量の低下を抑制しつつ、シリコンの膨張に対して緩衝効果を奏する負極活物質を提供できる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極によれば、放電容量の低下を抑制しつつ、シリコンの膨張に対して緩衝効果を奏する負極活物質を含むリチウムイオン二次電池用負極を提供できる。
本発明のリチウムイオン二次電池によれば、放電容量の低下を抑制しつつ、シリコンの膨張に対して緩衝効果を奏するリチウムイオン二次電池用負極を備えたリチウムイオン二次電池を提供できる。
本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の断面模式図である。 (a)は、Mg還元処理を行う前の表面の10000倍のSEM像であり、(b)は、Mg還元処理を行う前の表面の100000倍のSEM像であり、(c)は、本発明の負極活物質の表面の10000倍のSEM像であり、(d)は本発明の負極活物質の表面の100000倍のSEM像である。 (a)は、図2で表面SEM像を示したサンプルについて、負極活物質の内部を調べるために、負極活物質を割って得た断面のSEM像であり、(b)は、(a)の一部を拡大したSEM像である。
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
[リチウムイオン二次電池]
図1は、本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の断面模式図である。
図1に示すリチウムイオン二次電池100は、主として積層体40、積層体40を密閉した状態で収容するケース50、及び積層体40に接続された一対のリード60、62を備えている。また図示されていないが、積層体40とともに電解液が、ケース50内に収容されている。
積層体40は、正極20と負極30とが、セパレータ10を挟んで対向配置されたものである。正極20は、板状(膜状)の正極集電体22上に正極活物質層24が設けられたものである。負極30は、板状(膜状)の負極集電体32上に負極活物質層34が設けられたものである。
正極活物質層24及び負極活物質層34は、セパレータ10の両側にそれぞれ接触している。正極集電体22及び負極集電体32の端部には、それぞれリード62、60が接続されており、リード60、62の端部はケース50の外部にまで延びている。図1では、ケース50内に積層体40が一つの場合を例示したが、複数積層されていてもよい。
「負極」
負極30は、負極集電体32と、負極集電体32の上に設けられた負極活物質層34とを有する。
(負極集電体)
負極集電体32は、導電性の板材であればよく、例えば、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。負極集電体32は、リチウムと合金化しないことが好ましく、銅が特に好ましい。負極集電体32の厚みは6〜30μmとすることが好ましい。
(負極活物質層)
負極活物質層34は、負極活物質と負極バインダーとを有し、必要に応じて導電材を有する。
(負極活物質)
本発明の負極活物質は、負極母材粒子と該負極母材粒子の表面を被覆する導電性被膜とからなるリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、該リチウムイオン二次電池用負極活物質の表面の少なくとも一部が繊維状構造とされている。
図2(c)及び(d)に、本発明の負極活物質の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。図2(c)は、10000倍のSEM像であり、図2(d)は、100000倍のSEM像である。図2(c)及び(d)に示したのは、0.1μm厚の黒鉛被膜を表面に形成したSiOxについて後述するMg還元処理を行うことによって得られた本発明の負極活物質の表面のSEM像である。図2(a)及び(b)は、Mg還元処理を行う前の10000倍、100000倍のSEM像である。
図2(d)のSEM像において、負極活物質の表面に繊維状構造を有することがわかる。
図3(a)は、図2で表面SEM像を示したサンプルについて、負極活物質の内部を調べるために、負極活物質を割って得た断面のSEM像である。図3(b)は、図3(a)の一部を拡大したSEM像である。
図3の断面SEM像から、負極活物質の内部は表面と異なり、繊維状構造を有さないことがわかる。
本発明の負極活物質は、コア部と、繊維状構造を有するシェル部と、からなる構造と言うこともできる。
本発明の負極活物質によれば、繊維状構造が負極活物質の表面に存在することにより、空隙箇所が生まれ、充電時のシリコンの膨張を空隙部に逃がすことができる。充電時のシリコンの体積膨張及び放電時のシリコンの体積収縮は、負極の電極厚みの増大として表れるので、負極の電極厚みの増大を評価することにより、繊維状構造による緩衝効果を確認できる。
本発明の負極活物質は負極母材粒子とその表面を覆う導電性被膜とからなるが、本発明の効果を奏する範囲で他の物質を含んでもよい。
導電性被膜は、負極母材粒子の表面全体を覆っていることが好ましいが、表面の少なくとも一部を覆っていればよい。
繊維状構造を構成する材料としては、負極母材粒子と同じ材料である場合、導電性被膜の材料と負極母材粒子の材料の両方を含む場合や、導電性被膜の材料の一部の成分や負極母材粒子の材料の一部の成分である場合などがある。
繊維状構造は、導電性被膜で被覆された負極母材粒子を、後述する熱還元処理(例えば、Mg還元処理)工程を行うことによって形成される。そのため、繊維状構造を構成する材料は、熱還元処理(例えば、Mg還元処理)の条件に依存することになる。熱還元処理で用いた金属(例えば、Mg)が含まれることもある。実際、図2でSEM像を示したサンプルでは、エネルギー分散型エネルギー分光(EDX)によって、繊維状構造においてMgも検出された。
負極母材粒子の主成分は、金属、半金属、合金、及び、それらの酸化物からなる群から選択された一種以上であることが好ましい。ここで、本明細書においては「主成分」とは、負極母材粒子の50wt%以上含まれることをいう。
各材料について例示すると、金属としてはFe、Mg、Ni、Co、Al、Cu、Zn、Ag、Snなどが挙げられ、半金属としてはSi、Geなどが挙げられ、合金としては、MgSi、FeSiなどが挙げられる。従って、酸化物としてはSiOx(0<x≦2)、MgO、SnO、SnO、FeO、Fe、Feなどが例示される。ここで、SiOxは、化学量論比からずれた場合を示すとされることもあるが、本明細書においては、x=2の場合(SiO2)も含めて、SiOxと表記する。SiO2とSiOxとを併記することもある。また、本明細書において、SiOx(0<x<2)と記載した場合、SiO非晶質相の中にnmレベルのSi結晶(ナノシリコン)が析出した構造を有し、非化学量論比であるシリコン酸化物の総称を表すものとする。
負極母材粒子の主成分がこれらの材料であることにより、電池内に発生するHFを捕捉することが可能となるため、ガス発生が抑制され、膨張が抑制される。すなわち、Fは反応性が高いため、これらの化合物はフッ素イオンと安定な錯体を形成するため、かかる効果を奏する。
ここで、金属又は半金属としては、Si、Sn、及び、Feからなる群から選択されたものであることが好ましい。これらの材料である場合、充電時の膨張を空隙部に逃がすことができ、負極の電極厚みの増加を抑制する効果が大きい。
負極母材粒子の主成分は、シリコン系酸化物であることが好ましい。黒鉛の理論容量(372mAh/g)に比べてはるかに大きな理論容量をもつからである。シリコン系酸化物としては、SiO、SiO2、SiOx等が挙げられる。
負極母材粒子の材料中には、後述する熱還元処理(例えば、Mg還元処理)工程を行うことによって形成される。そのため、負極母材粒子を構成する材料は、熱還元処理(例えば、Mg還元処理)の条件に依存することになる。熱還元処理で用いた金属(例えば、Mg)が含まれることもある。実際、図2でSEM像を示したサンプルでは、EDXによって、負極母材粒子の全体でMgが検出された。
(負極導電材)
導電材としては、例えば、カーボンブラック類等のカーボン粉末、カーボンナノチューブ、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックやエチレンブラック等のカーボン粉末が特に好ましい。負極活物質のみで十分な導電性を確保できる場合は、リチウムイオン二次電池100は導電材を含んでいなくてもよい。
(負極バインダー)
バインダーは、活物質同士を結合すると共に、活物質と負極集電体32とを結合する。バインダーは、上述の結合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。
また、上記の他に、バインダーとして、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを用いてもよい。
また、バインダーとして電子伝導性の導電性高分子やイオン伝導性の導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン等が挙げられる。この場合は、バインダーが導電材の機能も発揮するので導電材を添加しなくてもよい。イオン伝導性の導電性高分子としては、例えば、リチウムイオン等のイオンの伝導性を有するものを使用することができ、例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリフォスファゼン等)のモノマーと、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤または熱重合開始剤が挙げられる。
またこの他に、バインダーとして、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂等を用いてもよい。
負極活物質層34中の負極活物質、導電材及びバインダーの含有量は特に限定されない。負極活物質層34における負極活物質の構成比率は、質量比で80%以上99%以下であることが好ましく、90%以上98%以下であることがより好ましい。また負極活物質層34における導電材の構成比率は、質量比で0%以上20%以下であることが好ましく、負極活物質層34におけるバインダーの構成比率は、質量比で1%以上10%以下であることが好ましい。
負極活物質とバインダーの含有量を上記範囲とすることにより、バインダーの量が少なすぎて強固な負極活物質層を形成できなくなることを防ぐことができる。また、電気容量に寄与しないバインダーの量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる傾向も抑制できる。
「正極」
正極20は、正極集電体22と、正極集電体22の上に設けられた正極活物質層24とを有する。
(正極集電体)
正極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。
(正極活物質層)
正極活物質層24に用いる正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンとリチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF6−)とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能な電極活物質を用いることができる。
例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMna2(x+y+z+a=1、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1、0≦a<1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNiCoAl(0.9<x+y+z<1.1)等の複合金属酸化物、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセンなどが挙げられる。
(正極導電材)
導電材は、例えば、カーボンブラック類等のカーボン粉末、カーボンナノチューブ、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。これらの中でも、カーボンブラック等の炭素材料が好ましい。正極活物質のみで十分な導電性を確保できる場合は、リチウムイオン二次電池100は導電材を含んでいなくてもよい。
(正極バインダー)
正極に用いるバインダーは負極と同様のものを使用できる。
正極活物質層24における正極活物質の構成比率は、質量比で80%以上90%以下であることが好ましい。また正極活物質層24における導電材の構成比率は、質量比で0.5%以上10%以下であることが好ましく、正極活物質層24におけるバインダーの構成比率は、質量比で0.5%以上10%以下であることが好ましい。
「セパレータ」
セパレータ10は、電気絶縁性の多孔質構造から形成されていればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いはセルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
「電解液」
電解液には、リチウム塩を含む電解質溶液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いため、充電時の耐用電圧が低く制限される。そのため、有機溶媒を使用する電解質溶液(非水電解質溶液)であることが好ましい。
非水電解液は、非水溶媒に電解質が溶解されており、非水溶媒として環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、を含有してもよい。
環状カーボネートとしては、電解質を溶媒和することができるものを用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートなどを用いることができる。
鎖状カーボネートは、環状カーボネートの粘性を低下させることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが挙げられる。その他、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどを混合して使用してもよい。
非水溶媒中の環状カーボネートと鎖状カーボネートの割合は体積にして1:9〜1:1にすることが好ましい。
電解質としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、LiCFCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFCFCO)、LiBOB等のリチウム塩が使用できる。なお、これらのリチウム塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に、電離度の観点から、LiPFを含むことが好ましい。
LiPFを非水溶媒に溶解する際は、非水電解液中の電解質の濃度を、0.5〜2.0mol/Lに調整することが好ましい。電解質の濃度が0.5mol/L以上であると、非水電解液のリチウムイオン濃度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすい。また、電解質の濃度が2.0mol/L以内に抑えることで、非水電解液の粘度上昇を抑え、リチウムイオンの移動度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすくなる。
LiPFをその他の電解質と混合する場合にも、非水電解液中のリチウムイオン濃度が0.5〜2.0mol/Lに調整することが好ましく、LiPFからのリチウムイオン濃度がその50mol%以上含まれることがさらに好ましい。
「ケース」
ケース50は、その内部に積層体40及び電解液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。
例えば、ケース50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。
「リード」
リード60、62は、アルミ等の導電材料から形成されている。そして、公知の方法により、リード60、62を正極集電体22、負極集電体32にそれぞれ溶接し、正極20の正極活物質層24と負極30の負極活物質層34との間にセパレータ10を挟んだ状態で、電解液と共にケース50内に挿入し、ケース50の入り口をシールする。
「負極活物質の製造方法」
以下に、負極活物質の製造方法の一例を説明する。
(導電性被膜母材粒子準備工程)
まず、導電性被膜で被覆された負極母材粒子(以下、「導電性被膜母材粒子」ともいう)を準備する(導電性被膜母材粒子準備工程)。導電性被膜が被覆される前の粒子を「コア粒子」ということがある。
負極母材粒子の表面に導電性被膜を形成する方法としては公知の方法を用いることができる。
ここで、導電性被膜母材粒子として、カーボンコートされたSiOx(0<x≦2)粒子(以下、「カーボンコートSiOx粒子」ともいう)を例に挙げて説明する。カーボンコートSiOx粒子としては、非晶質SiO中にナノシリコン(約5nm)が分散した状態のSiOx(0<x<2)粒子の表面にカーボンがコートされたものを使うことができる。粒子表面にカーボンコートを有するため、その粒子単体で充放電が可能である。Mg還元処理後、反応が進行しきっていなくても本来充放電できるものであるため、充放電は可能である。さらにナノシリコンが存在することで高容量になる。
なお、SiOx(0<x<2の場合)粒子は通常、角があり、不定形である。用いることができるSiOx粒子の大きさは特に限定はないが、例えば、各SiOx粒子の最大サイズと最小サイズの平均が1〜9μmのものを用いることができる。
カーボンコートSiOx粒子としては特に限定はなく、市販のものを使ってもよいし、SiOxにカーボンを被覆して作製したものを用いてもよい。
カーボンコートSiOx粒子は、例えば、SiOx粉末と人造黒鉛とを用いてメカノケミカル処理を行うことによって得ることができる。メカノケミカル処理は例えば、メカノフュージョン装置(ホソカワミクロン社製)を用いて行うことができる。また、SiOとポリマーを混練した後、炭化処理する方法や、化学気相蒸着(CVD)法によっても得ることができる。
カーボンコート(導電性被膜)としては例えば、アモルファスカーボン、黒鉛、カーボンナノチューブからなる群から選択された1種以上からなるものを用いることができる。
(熱捕捉剤混合工程)
次に、脱イオン水に塩化ナトリウム(NaCl)を溶解したNaCl水溶液中に、カーボンコートSiOx粒子を添加して混合する。
ここで、NaClは、後述する熱還元時の焼成(例えば、700℃程度の温度で)の際に、温度が上がり過ぎた時あるいは温度が急上昇した時に、熱捕捉剤として機能する。すなわち、NaClの融点は801℃であり、融解は吸熱反応なので、熱捕捉剤として機能する。
このとき、NaClはカーボンコートSiOx粒子の周囲に配置して、その形状を保持するように作用すると考えられる。
熱捕捉剤はNaClに限定されず、公知の物質を用いることができる。熱還元時の焼成温度よりも高い温度の融点を有するものを選択する。
この工程において、脱イオン水に熱捕捉剤を溶解する際には、熱捕捉剤を脱イオン水に浸漬後、超音波をかけてもよい。例えば、NaClを熱捕捉剤として用いる場合には、1時間程度、超音波をかけてもよい。
また、脱イオン水に熱捕捉剤を溶解する際、超音波をかけた後、又は、超音波をかけずに、撹拌工程を行ってもよい。例えば、NaClを熱捕捉剤として用いる場合には、50℃で1時間程度、撹拌工程を行ってもよい。
脱イオン水に熱捕捉剤を溶解後に、カーボンコートSiOx粒子を添加する。
また、カーボンコートSiOx粒子を熱捕捉剤含有水溶液に添加後、水を除去するために濾過工程を行ってもよい。濾過としては例えば、吸引濾過を行うことができる。
また、カーボンコートSiOx粒子を熱捕捉剤含有水溶液に添加後、濾過工程を行った後に、又は、濾過工程を行わずに、水溶液中の水を除去するために乾燥工程を行ってもよい。乾燥工程は例えば、90℃で12時間程度行ってもよい。乾燥工程の前に、水洗工程を行ってもよい。
乾燥した、カーボンコートSiOx粒子:熱捕捉剤(例えば、NaCl)の粉末について解砕工程を行ってもよい。
(熱還元工程)
次に、還元剤(例えば、Mg)を、カーボンコートSiOx粒子:熱捕捉剤(例えば、NaCl)の粉末に混ぜ、焼成を行う。
還元剤としてマグネシウム(Mg)を用いる場合、SiOxとMgの重量比を例えば、1:0.9とする。
この工程において、還元剤は、SiOx粒子に含まれる酸素を引き抜く。例えば、還元剤としてMgを用いた場合には、MgはSiOx粒子に含まれる酸素を引き抜いてMgOになり、酸素が引き抜かれたSiOxはSiになる。この熱還元によって、カーボンコートSiOx粒子の表面だけを繊維状構造にできることを発明者は見出した。
ここで、熱還元は、カーボンコートSiOx粒子の表面から実質的に始まると考えられるが、カーボンコートSiOx粒子の場合、SiOx粒子の表面にカーボンコートがあるために、カーボンコートがない場合に比べて還元の進行は遅いと考えられる。そのため、カーボンコートSiOx粒子の表面だけを繊維状構造になるように制御しやすい。
(不要物除去工程)
次に、得られた生成物から、熱捕捉剤(例えば、NaCl)、MgSiやMgO(還元剤としてMgを用いる場合)や水等の不要物を除去して、
例えば、熱捕捉剤(例えば、NaCl)を除去するために水洗い工程を行う。また、不要なMgSiやMgOを除去するために塩酸(例えば、濃度2Mの塩酸)に浸漬してエッチング工程を行う。
(乾燥工程)
そして、最後に、水洗い後、水を除去するために乾燥工程(例えば、90℃で12時間)を行い、本発明のリチウムイオン二次電池用負極活物質を得る。
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
次いで、リチウムイオン二次電池100を製造する方法について、本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質(以下、「本発明の負極活物質」ということがある)を用いて負極を作製する段階から、具体的に説明する。
得られた本発明の負極活物質、バインダー及び溶媒を混合して塗料を作製する。必要に応じ導電材を更に加えても良い。溶媒としては例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。負極活物質、導電材、バインダーの構成比率は、質量比で80wt%〜90wt%:0.1wt%〜10wt%:0.1wt%〜10wt%%であることが好ましい。これらの質量比は、全体で100wt%となるように調整される。
塗料を構成するこれらの成分の混合方法は特に制限されず、混合順序もまた特に制限されない。上記塗料を、負極集電体32に塗布する。塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。正極についても、同様に正極集電体22上に正極用の塗料を塗布する。
続いて、正極集電体22及び負極集電体32上に塗布された塗料中の溶媒を除去する。除去方法は特に限定されない。例えば、塗料が塗布された正極集電体22及び負極集電体32を、80℃〜150℃の雰囲気下で乾燥させればよい。
そして、このようにして正極集電体22上に正極活物質層24が形成された状態でロールプレス装置等によりプレス処理を行うことによって正極を作製する。
一方、負極集電体32上に負極活物質層34が形成された状態で、配向度が50〜150になるようにプレス処理を行うことによって負極を作製する。
次いで、正極活物質層24を有する正極20と、負極活物質層34を有する負極30と、正極と負極との間に介在するセパレータ10と、電解液と、をケース50内に封入する。
例えば、正極20と、負極30と、セパレータ10とを積層し、正極20及び負極30を、積層方向に対して垂直な方向から、プレス器具で加熱加圧し、正極20、セパレータ10、及び負極30を密着させる。そして、例えば、予め作製した袋状のケース50に、積層体40を入れる。
最後に電解液をケース50内に注入することにより、リチウムイオン二次電池が作製される。なお、ケースに電解液を注入するのではなく、積層体40を電解液に含浸させてもよい。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
「実施例1」
アルドリッチ社製一酸化ケイ素(SiO)を減圧下において1000℃で3時間熱処理し、不均化反応をさせたSiOを作製した。このSiOをマイクロフェーズ社CVD装置(MPCVD−Li)により、アセチレンガスを80ml/minで吹き込みながら、昇温速度10℃/minで700℃まで上昇させ、4時間保持した後、室温まで冷却し、回収することによって0.1μmの膜厚のアモルファスカーボン被膜SiO粒子を得た。ここで、アモルファスカーボン被膜SiO粒子を構成するSiO粒子は、角がある、不定形の形状を有するものである。表面SEM像から、各SiO粒子の最大サイズと最小サイズの平均は約5μmであった。アモルファスカーボン被膜の膜厚は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)により断面を観察し、任意の50か所の膜厚を測定した平均値とした。
次いで、脱イオン水に塩化ナトリウム(NaCl)54gを浸漬し、1時間超音波をかけ、さらに、50℃で1時間撹拌して溶解してNaCl水溶液を得た。次に、そのNaCl水溶液中に、上述のカーボンコートSiO粒子15gを添加して混合し、吸引濾過によって水の除去を行った。
次に、吸引濾過して得られた混合物を水洗い後、90℃で12時間、乾燥した。得られた粉末の凝集を解くため解砕した。
次に、解砕して得られた粉末に、還元剤としてMg(純度98.0%、20−50mesh(純正化学株式会社製)を、カーボンコートSiO:Mg=1:0.9(wt%)となる量で混ぜて、真空中で700℃で6時間、焼成した。
得られた粉末を水洗いし、塩酸(2M)でエッチングした。その後、水洗いし、90℃で12時間、乾燥を行って、負極活物質を得た。
そして、得られた負極活物質と、導電材として用意したアセチレンブラックと、バインダーとして用意したポリアミドイミド(PAI)とを混合し負極合剤とした。負極活物質と、導電材と、バインダーは質量比で88:2:10とした。この負極合剤を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤塗料を作製した。そして、厚さ10μmの電界銅箔の一面に、塗布量が3mg/cmとなるように塗布した。塗布後に、100℃で乾燥させ、溶媒を除去して負極活物質層を形成した。その後、負極活物質層をロールプレスにより加圧成形し、真空下350℃で3時間熱処理することにより、実施例1に係る負極を作製した。
(評価用リチウムイオン二次電池の作製 ハーフセル)
作製した負極とLi箔を張り付けた銅箔(以下、Li極という)とを、厚さ16μmのポリプロピレン製のセパレータを介して交互に対向させ、積層体を作製した。さらに、積層体の負極における負極活物質層を設けていない側の銅箔の突起端部に、ニッケル製の負極リードを取り付けた。積層体のLi極では、Li箔を設けていない銅箔の突起端部にニッケル製のLi極リードを超音波溶接機によって取り付けた。
そしてこの積層体を、アルミラミネートフィルムの外装体内に挿入して周囲の1箇所を除いてヒートシールすることにより閉口部を形成した。外装体内には、ECとDMCとが体積比3:7の割合で配合された溶媒と、リチウム塩として1.0M(mol/L)のLiPFが添加された非水電解液と、を注入した。そして、残りの1箇所を真空シール機によって減圧しながらヒートシールで密封し、実施例1に係るリチウムイオン二次電池(ハーフセル)を作製した。
(初期放電容量およびサイクル特性の測定)
上記の手順で作製した実施例1のハーフセルに充放電試験装置を行い、初期放電容量およびサイクル特性を評価した。充放電試験は、まず25℃の温度環境のもと、金属Li基準で充電終止電圧0.005Vまで0.05Cの定電流で充電を行った後、放電終止電圧1.6Vまで0.05Cの定電流で放電を行い、それを1サイクル行った。その後、充電終止電圧0.005Vまで0.2Cの定電流で充電を行った後、放電終止電圧1.6Vまで0.2Cの定電流で放電を行い、30サイクル行った。0.2Cでの最初の放電容量を初期容量とし、その初期容量を100%とし、30サイクル後の容量維持率を算出した。ここで、本明細書では、「充電」は評価極の活物質がLiを吸蔵する方向、「放電」は評価極の活物質がLiを放出する方向、とする。
(膨張率の評価)
30サイクルのサイクル特性を測定後、ハーフセルを解体して負極厚み(「充放電試験後の負極厚み」という)を測定し、充放電試験前の負極厚みと比較して、それを百分率で表したものを膨張率とした。
膨張率(%)={(充放電試験後の負極厚み)/(充放電試験前の負極厚み)}×100
「実施例2」
導電性被膜が黒鉛(日立化成株式会社製:人造黒鉛)である点以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る負極を作製した。黒鉛の被膜形成は(メカノケミカル処理)によって行った。不均化反応をさせたSiO粒子40gとSiOに対して5wt%の人造黒鉛粒子を混合し、遊星型ボールミル装置により、該配合物の機械的な圧接を繰り返すボールミル処理を24時間施した。ボールミル容器およびボールはステンレス製で、粉末調整およびボールミル処理はアルゴン雰囲気で行った。以上の手順により0.1μmの膜厚の黒鉛被膜SiO粒子を得た。
「実施例3」
導電性被膜がカーボンナノチューブ(昭和電工株式会社製:VGCF−H)である点以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る負極を作製した。カーボンナノチューブの被膜形成は実施例2と同様の方法及び条件で行った。
「実施例4〜14」
実施例4〜14は、導電性被膜としてのアモルファスカーボン被膜の厚みが異なる以外は実施例1と同様にして実施例4〜14に係る負極を作製した。
「実施例15」
導電性被膜母材粒子がアモルファスカーボン被膜SiO粒子である点以外は実施例1と同様にして実施例15に係る負極を作製した。SiO粒子はアルドリッチ社製のものを用いた。
「比較例1」
Mg還元(Mg還元工程及びそれに付随する工程)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る負極を作製した。SiO粒子自体の作製方法は実施例1と同様である。
「比較例2」
Mg還元(Mg還元工程及びそれに付随する工程)を行わなかったこと以外は、実施例15と同様にして比較例2に係る負極を作製した。
「比較例3」
導電性被膜を有さないSiO粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例3に係る負極を作製した。SiO粒子自体の作製方法は実施例1と同様である。
「比較例4」
導電性被膜を有さないSiO粒子を用いた以外は、実施例15と同様にして比較例3に係る負極を作製した。SiO粒子はアルドリッチ社製のものを用いた。
実施例1〜15及び比較例1〜4で作製されたリチウムイオン二次電池(ハーフセル)の初期放電容量およびサイクル特性の測定を行うと共に、実施例1〜15及び比較例1〜4で作製されたリチウムイオン二次電池(ハーフセル)の30サイクル後の負極の膨張率を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0006981027
表1から、実施例1〜15の全てについて、比較例1〜4に比べて、膨張率が低く、その結果として容量維持率が高かった。これは、負極活物質が内部にコア粒子を残しつつ、表面に繊維状構造を有するという構成をとることによって、放電容量の低下を抑制しつつ、シリコンの膨張に対して緩衝効果を奏する結果である。また、現段階では理由は不明であるが、実施例1〜15の全てについて、比較例1〜4に比べて、初期放電容量が高かった。なお、比較例2については充放電ができなかった。これは、SiOはLiと反応するとLiSiO(リチウムシリケート)になるが、この反応は不可逆であり、つまり充電はできるが、放電ができない物質になることによる。これに対して、比較例4はSiOにMg還元を行うことにより、Siにしている。SiとLiの反応は可逆なので、充放電が可能となる。この点は、実施例15についても同様であり、Mg還元処理後にアモルファスカーボンが残っているか否かによらず、充放電が可能となる。
実施例1と比較例1とを比較すると、同じ導電性被膜母材粒子を用いても、Mg還元処理を行った場合すなわち、表面に繊維状構造を備えた場合には、膨張率が大きく低減でき、その結果として容量維持率も大幅に向上できたことがわかる。実施例1〜15の結果から、この効果は導電性被膜の種類及び厚みによらずに得られた。
実施例1〜3を比較すると、導電性被膜の厚みが0.1μmの場合、実施例1、2、3の順に、膨張率及び容量維持率の特性が良好であった。従って、低膨張率及び高容量維持率の効果が高い導電性被膜を順に並べると、アモルファスカーボン、黒鉛、カーボンナノチューブであることを示している。この理由としては、明確ではないが、導電性や被膜形成方法の違いの影響が考えられる。
また、実施例1、4〜14の特性に基づくと、導電性被膜の厚みが0.05μm〜1μmの範囲の場合に容量維持率が70%以上であり、導電性被膜の厚みが0.07μm〜0.2μmの範囲の場合に容量維持率が75%以上であった。
実施例1と比較例3とを比較すると、Mg還元処理を行う粒子について導電性被膜を有する構成とすることによって、初期放電容量を高くできるものと考えられる。
実施例1と実施例15とを比較すると、導電性被膜母材粒子を構成するコア粒子としては、SiOよりもSiOの方が膨張率及び高容量維持率の効果が大きいことがわかる。
10…セパレータ、20…正極、22…正極集電体、24…正極活物質層、30…負極、32…負極集電体、34…負極活物質層、36…負極活物質、40…積層体、50…ケース、60,62…リード、100…リチウムイオン二次電池

Claims (6)

  1. 負極母材粒子と該負極母材粒子の表面を被覆する導電性被膜とからなるリチウムイオン二次電池用負極活物質であって、該リチウムイオン二次電池用負極活物質の表面の少なくとも一部が繊維状構造とされていて、前記負極母材粒子の主成分は、SiOx(0<x≦2)であり、前記繊維状構造は、前記負極母材粒子の主成分を含むリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  2. 前記導電性被膜は、黒鉛、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブからなる群から選択された1種以上からなる、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  3. 前記繊維状構造は、Mgを含む、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質を有するリチウムイオン二次電池用負極。
  5. 請求項に記載のリチウムイオン二次電池用負極を備えるリチウムイオン二次電池。
  6. 負極母材粒子と該負極母材粒子の表面を被覆する導電性被膜とからなり、表面の少なくとも一部が繊維状構造とされていて、前記負極母材粒子の主成分は、SiOx(0<x≦2)であり、前記繊維状構造は、前記負極母材粒子の主成分を含む負極活物質を有し、前記負極活物質の表面に繊維状構造が存在することにより生まれた空隙箇所を含むリチウムイオン二次電池用負極。
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