JP5855634B2 - 加熱調理用油脂組成物及び該加熱調理用油脂組成物の製造方法 - Google Patents

加熱調理用油脂組成物及び該加熱調理用油脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、加熱調理用油脂組成物及び該加熱調理用油脂組成物の製造方法に関する。
近年の消費者の健康志向に伴い、食品中の油脂量を低減させることが課題の一つとされている。例えば、特許文献1には、炒め調理に使用される油脂組成物であって、炒め調理における調理対象物の吸油量を抑えることのでき、かつ、風味良好な油脂組成物が開示されている。
しかし、フライ、天ぷら、から揚げ等のフライ調理品は、炒め調理の調理対象物と比して、衣部分が油分を吸収しやすい性質を有するため、良好な風味を保持しつつ、さらに効率よく吸油量を低減することが望まれる。
特開2005−218380号公報
そこで、本発明は、加熱調理後の調理対象物に残存する油分を効率よく低減することができ、かつ、風味良好な加熱調理用油脂組成物及び該加熱調理用油脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明にかかる加熱調理用油脂組成物は、下記のとおりである。
(1)油脂中に0.02〜0.08質量%の乳化剤を配合してなり、前記乳化剤が、コハク酸モノオレイン酸グリセリン、ショ糖エルカ酸エステル、及び構成する脂肪酸の47質量%以上が多価不飽和脂肪酸である脂肪酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする加熱調理用油脂組成物。
(2)前記ショ糖エルカ酸エステルのHLB値が、1.5〜3.0である、(1)に記載の加熱調理用油脂組成物。
また、本発明の加熱調理用油脂組成物の製造方法は、下記のとおりである。
(3)油脂の精製工程の後に、精製油脂に0.02〜0.08質量%の乳化剤を添加する工程を含み、前記乳化剤が、コハク酸モノオレイン酸グリセリン、ショ糖エルカ酸エステル、及び構成する脂肪酸の47質量%以上が多価不飽和脂肪酸である脂肪酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする加熱調理用油脂組成物の製造方法。
本発明の加熱調理用油脂組成物及び加熱調理用油脂組成物の製造方法によれば、特定の乳化剤を使用することで、従来よりも少ない乳化剤配合量で高効率に調理対象物に残存する油分を低減させることができる。また、乳化剤配合量が少ないことから、製造コストが低く、かつ、調理対象物に対して、油脂本来の風味に近い良好な風味を付与することができる。
このような利点から、本発明の加熱調理用油脂組成物は、特に天ぷら、から揚げなどのフライ調理品用の揚げ油として好適に用いることができる。また、炒め調理にも好適に用いることができる。
加熱調理用油脂組成物中の乳化剤添加量と、該油脂組成物で調理した天ぷら衣の油分量との関係を示すグラフである。 加熱調理用油脂組成物中の乳化剤添加量と、該油脂組成物で調理した天ぷら衣の油分割合との関係を示すグラフである。
本発明の加熱調理用油脂組成物は、油脂中に0.02〜0.08質量%の乳化剤を配合してなり、前記乳化剤が、コハク酸モノオレイン酸グリセリン、ショ糖エルカ酸エステル、及び構成する脂肪酸の47質量%以上が多価不飽和脂肪酸である脂肪酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする。
天ぷら等のフライ調理品に含まれる油分を低減させる方法としては、(1)薄衣に仕上げて油分を吸収しやすい衣の付着量を少なくする、(2)衣部分の吸油分を抑える、(3)食材の吸油分を抑える、(4)揚げ後の脱油を促す(揚げあがった後に油分をきる)等の方法が挙げられる。天ぷら等のフライ調理品の油分の多くは、揚げダネ(衣内部の食材)よりも衣部分に多く含まれるため、上記のうち、特に(2)衣部分の吸油分を抑えることが、調理品の油分低減に有効といえる。
発明者らは、フライ調理品の衣部分に吸油されにくく、かつ、油ぎれのよい油脂組成物を製造すべく、鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得て、本発明を完成させるにいたった。
油脂組成物に乳化剤を添加することにより、調理対象物(調理品)の吸油量を低減できることは、特許文献1等により知られている。原理的には、添加する乳化剤の量を増量することで、吸油量低減効果を高めることができると想定されるものの、原料コストの増大、油本来の風味の低下等の問題により大量に添加することは困難である。発明者らは、油脂成分にある種の乳化剤を添加した場合に、その添加量が0.02〜0.08質量%のとき、フライ調理時の調理対象物の吸油量を極小値とすることができることを見出した。本発明は、この知見に基づき、少量の乳化剤の添加で、効率よく調理品の吸油を低減することが可能な加熱調理用油脂組成物を実現させたものである。
<加熱調理用油脂組成物>
以下、本発明の加熱調理用油脂組成物について、その含有成分ごとに詳説する。
1.油脂
本発明の加熱調理用油脂組成物は、通常の加熱調理用油脂を主成分として製造される。通常の加熱調理用油脂は、一般に加熱調理用として使用される動植物油脂及びその水素添加油、分別油、エステル交換油などを単独あるいは組み合わせて用いることができる。動植物油脂としては、例えば、大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などが挙げられる。室温で固形化するものは、使用時に加熱により溶解させる必要があるので、20℃で液状の態様のものが好ましい。原料油脂そのものが20℃で固体であっても、他の原料油脂と併用して用いることによって、油脂全体として液状であれば好適に使用できる。特に、融点の低い液状油でありながら、酸化安定性も良好であるという利点を有することから、キャノーラ油を好適に使用することができる。
本発明の加熱調理用油脂組成物において、上記通常の加熱調理用油脂は、乳化剤及び必要に応じて添加される他の添加剤を除く残部を構成するのが好ましい。
2.乳化剤
天ぷら等のフライ調理品の調理時における乳化剤の作用は、以下の通りである。例えば、天ぷらを調理する際には、食材及びバッター(天ぷら粉と水とを混合したもの)を高温の油中(160〜200℃)で加熱する。バッターが高温の油と接触すると、油との接触面において水分が急激に蒸発、消失すると同時に、小麦粉を主成分としたバッター中の固形分が焼き固められる。この現象を繰り返し、徐々にバッター中の水分除去が進行し、間隙を有する形状で小麦粉が焼き固められた網目構造の衣が形成される。乳化剤は、気−液または液−液の界面張力に影響を与えるものであり、ある種の乳化剤は、衣の形成時に「油と固体」、「油と水」もしくは「油と気体(水蒸気)」の界面張力を変化させることで、衣の性質(形状、成分、物理的性状)を変化させる。
種々の乳化剤の中で、本発明の加熱調理用油脂組成物に添加可能な乳化剤は、コハク酸モノオレイン酸グリセリン、クエン酸モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ショ糖エルカ酸エステル、及び構成する脂肪酸の47質量%以上が多価不飽和脂肪酸である脂肪酸モノグリセリドである。これらの乳化剤成分は、単独で使用してもよく、また混合して使用してもよい。これらの乳化剤成分は、食品添加物として市販されるものを適宜使用することができる。コハク酸モノオレイン酸グリセリンとしては、例えば、「サンソフト683CB」(太陽化学株式会社製)を、クエン酸モノオレイン酸グリセリンとしては、例えば、「サンソフトプラスF」(太陽化学株式会社製)を、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとしては、例えば「エマゾールO−120V」(花王株式会社製)を、ショ糖エルカ酸エステルとしては、例えば、「リョートーシュガーエステルER−290」(三菱化学フーズ株式会社製)を、構成する脂肪酸の47質量%以上が多価不飽和脂肪酸である脂肪酸モノグリセリドとしては、例えば、「エマルジーMO(M)」(理研ビタミン株式会社製、脂肪酸構成(質量割合):パルミチン酸24%、オレイン酸21%、リノール酸49%、他6%)をそれぞれ使用できる。
乳化剤の配合量は、本発明の加熱調理用油脂組成物に対し、0.02〜0.08質量%、好適には0.03〜0.07質量%、より好適には0.04〜0.07質量%とする。後述する通り、本発明で使用される乳化剤は、0.02〜0.08質量%の配合量で加熱調理用油脂組成物に添加することで、加熱調理された調理対象物の吸油量を極小値とすることができる、という特徴を有する。
ショ糖エルカ酸エステルを乳化剤として使用する場合、HLB値が1.5〜3.0のもの、特に1.8〜2.5のものを使用することが好ましい。ショ糖エルカ酸エステルのHLB値が1.5未満であると、加熱調理後の調理品の吸油量を抑える、という本発明の目的を充分に発揮できないおそれがある。一方、ショ糖エルカ酸エステルのHLB値が3.0を超えると、油脂に溶解し難い、という問題が生じ得る。
構成する脂肪酸の47質量%以上が多価不飽和脂肪酸である脂肪酸モノグリセリドについて、その構成する脂肪酸の66質量%以上が不飽和脂肪酸であることが好ましい。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられ、特にオレイン酸と、リノール酸であることが好ましい。また、構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸が30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。飽和脂肪酸としては、パルミチン酸であることが好ましい。このように、多くの不飽和脂肪酸、特に多くの多価不飽和脂肪酸で構成される脂肪酸モノグリセリドを使用することで、より調理対象物の吸油量の低減効果を確実とすることができる。
3.その他の成分
加熱調理用油脂組成物中には、本発明の効果を損ねない程度に、その他の成分を加えることができる。これらの成分とは、例えば、一般的な油脂に用いられる成分(食品添加物など)である。これらの成分としては、例えば、酸化防止剤、結晶調整剤、食感改良剤等が挙げられ、脱臭後から充填前に添加されることが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、アスコルビン酸類、フラボン誘導体、コウジ酸、没食子酸誘導体、カテキンおよびそのエステル、フキ酸、ゴシポール、セサモール、テルペン類等が挙げられる。着色成分としては、例えば、カロテン、アスタキサンチン等が挙げられる

<加熱調理用油脂組成物の製造方法>
本発明に係る加熱調理用油脂組成物に使用される油脂は、一般の油脂と同様、植物の種子若しくは果実、または動物性材料から搾油された粗油を出発原料として用い、順に、必要に応じて、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程を経て、さらに必要に応じて脱ろう工程を介した後、脱臭工程を経た精製により製造することができる。上記脱ガム工程、脱酸工程、および脱ろう工程は、採油される前の油糧原料に応じて変動し得る粗油の品質に応じて適宜選択される。
このような製造方法において、本発明の製造方法では、油脂に、上記範囲の量の乳化剤を添加する工程を含む。乳化剤は、精製工程後の油脂を加熱した後、添加、溶解することにより配合されることが好ましい。なお、該製造方法は、必要に応じて、他の添加剤を添加する工程も含んでいてもよい。他の添加剤の添加工程は、油脂の精製工程後であるのが望ましく、その添加時の油脂温度等の条件は、添加剤の種類、目的によって適宜変更されるのが望ましい。
本発明の加熱調理用油脂組成物の製造方法によれば、従来よりも少ない乳化剤配合量で高効率に調理対象物に残存する油分を低減させることが可能な加熱調理用油脂組成物を得ることができる。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<試験1:天ぷら衣の油分量測定試験>
下記の方法により、揚げダネを有しない天ぷらの衣のみのモデル試験系を用いて、各種乳化剤を添加した加熱調理用油脂組成物で天ぷらの衣を作製し、衣に残存する油分量を測定した。
1.サンプル調製
精製なたね油「日清キャノーラ油」(日清オイリオグループ株式会社製)に表1に示す各種乳化剤No.1〜11を、0質量%(無添加)、0.05質量%、0.1質量%、0.25質量%となるようにそれぞれ混合し、各種加熱調理用油脂組成物(フライ用油脂)を調製した。乳化剤は、油脂800gを入れて180℃に加熱した後、油脂に各規定量の乳化剤を添加、溶解した。
天ぷら粉「昭和天ぷら粉」(昭和産業株式会社製)38gと氷水62gとを混合し、バッターを作製した。
バッターを鉄製のカップ状容器に3.5gずつ量りとり、鉄製の鍋で180℃に加熱した各フライ用油脂に容器ごと5個ずつ投入し、3分間加熱した。投入後、バッターはカップから剥離して浮上し衣となり、鉄製のカップ状容器は沈殿する。1.5分経過時に衣を裏返して、3分経過した調理済み衣を網の上に移動させて5分間静置して油分をきり、これを測定用サンプルとした。
衣は、各フライ用油脂について、10個ずつ作製した。
2.油分測定
上記測定用サンプル(加熱調理後の衣)は、重量を測定した後、減圧下で乾燥させて水分を除去した。その際、乾燥前後の重量を測定することで、水分量を算出した。
乾燥後のサンプルをヘキサンに浸漬し、衣が含有する油分をヘキサン画分に溶出させた(油分抽出)。該ヘキサン画分を回収し、ヘキサンを除去した後、残存した油分を秤量した。サンプル10個の平均値を油分量とした。また、油分の重量を乾燥前のサンプル重量で除した値を油分割合とした。各フライ用油脂使用時のサンプルの油分量及び油分割合を表1中に示す。
さらに、No.1とNo.6のフライ油脂について、油脂中の乳化剤添加量とサンプルの油分量との関係を図1のグラフに、油脂中の乳化剤添加量とサンプルの油分割合との関係を図2のグラフに示す。
Figure 0005855634
※1 商品名「サンソフト683CB」太陽化学株式会社製(HLB値 8.5)
※2 商品名「サンソフトプラスF」太陽化学株式会社製(HLB値 7)
※3 商品名「エマゾールO−120V」花王株式会社製(HLB値 15.0)
※4 商品名「リョートーシュガーエステルER−290」三菱化学フーズ株式会社製(HLB値 2.0)
※5 商品名「エマルジーMO(M)」理研ビタミン株式会社製(HLB値:4.3、脂肪酸構成(質量割合):パルミチン酸24%、オレイン酸21%、リノール酸49%、他6%)
※6 商品名「サンソフト661AS」太陽化学株式会社製(HLB値 7.5)
※7 商品名「サンソフトNo.750」太陽化学株式会社製(HLB値 5.3)
※8 商品名「エマゾールL−120V」花王株式会社製(HLB値 16.7)
※9 商品名「リョートーシュガーエステルL−195」三菱化学フーズ株式会社製(HLB値 1.0)
※10 商品名「SYグリスターOE−750」坂本薬品工業株式会社製(HLB値 3.7)
※11 商品名「エマルジーMO」理研ビタミン株式会社製(HLB値 4.3、脂肪酸構成(質量割合):パルミチン酸34%、オレイン酸16%、リノール酸45%、他5%)
3.測定結果の解析
図1及び表1に示す通り、加熱調理用油脂組成物にNo.1の乳化剤、すなわち、コハク酸オレイン酸モノグリセリンを添加した場合、その添加量が0.05質量%付近のときに、得られるサンプル(天ぷら衣)の油分量、油分割合が明確な極小値を示すことが判明した。また、表1の結果より、No.2〜5の乳化剤についても、同様の傾向が見られることが分かる。一方、No.6の乳化剤、すなわち、乳酸ステアリン酸モノグリセリンを添加した場合は、測定範囲において、油分量の極小値は観測できなかった。No.7〜11の乳化剤についても、測定範囲において、明確な油分量、油分割合の極小値は見られなかった。
以上の結果より、No.1〜5の乳化剤、すなわち、コハク酸モノオレイン酸グリセリン、クエン酸モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ショ糖エルカ酸エステル、及び構成する脂肪酸の47質量%以上が多価不飽和脂肪酸である脂肪酸モノグリセリドについては、加熱調理用油脂組成物への添加量が0.05質量%程度のときに、天ぷら等のフライ調理品の吸油量を効果的に低減できることが判明した。
<試験2:天ぷらでの効果実証実験>
試験1で使用した乳化剤No.1〜5をそれぞれ0.05%添加した加熱調理用油脂組成物を調製し、これを使用して実際に天ぷらを調理して、調理品の油分低減効果を確認した。
1.サンプル調製
精製なたね油「日清キャノーラ油」(日清オイリオグループ株式会社製)に表2に示す各種乳化剤No.1〜5を、0.05質量%となるようにそれぞれ混合し、実施例1〜5の加熱調理用油脂組成物(フライ用油脂)を調製した。乳化剤は、油脂800gを入れて180℃に加熱した後、各乳化剤を0.05質量%添加、溶解することで油脂に混合した。一方、乳化剤を添加しないキャノーラ油を比較例1とした。
サツマイモを厚さ5mm、直径3.4cmの円柱状にカットし、揚げダネとした。天ぷら粉「昭和天ぷら粉」(昭和産業株式会社製)38gと氷水62gとを混合し、バッターを作製した。サツマイモをバッター液に浸し、バッターを付着させた。
鍋で180℃に加熱した各フライ用油脂に、バッターを付着させたサツマイモを5個ずつ投入し、3分間加熱調理した。その際、加熱調理開始1.5分後に、フライ用油脂中のサツマイモを一度裏返した。3分間加熱調理した後のフライ調理品を網の上に移動させて静置して油分をきり、5分後に回収し、これを測定用サンプルとした。
フライ調理品サンプルは、各フライ用油脂について、10個ずつ作製した。
2.油分測定
上記サンプル(フライ調理品)は、重量を測定した後、減圧下で乾燥させて水分を除去した。その際、乾燥前後の重量を測定することで、水分量を算出した。
乾燥後のサンプルを30mLのヘキサンに浸漬し、サンプルが含有する油分をヘキサン画分に溶出させた(油分抽出)。該ヘキサン画分を回収し、ヘキサンを除去した後、残存した油分を秤量した。サンプル10個の平均値を油分量とした。また、油分の重量を乾燥前のサンプル重量で除した値を油分割合とした。各フライ用油脂使用時のサンプルの油分量及び油分割合を表2中に示す。
Figure 0005855634
※12 商品名「サンソフト683CB」太陽化学株式会社製(HLB値 8.5)※13 商品名「サンソフトプラスF」太陽化学株式会社製(HLB値 7)
※14 商品名「エマゾールO−120V」花王株式会社製(HLB値 15.0)※15 商品名「リョートーシュガーエステルER−290」三菱化学フーズ株式会社製(HLB値 2.0)
※16 商品名「エマルジーMO(M)」理研ビタミン株式会社製(HLB値:4.3、脂肪酸構成(質量割合):パルミチン酸24%、オレイン酸21%、リノール酸49%、他6%)
表2に示す通り、実施例1〜5の加熱調理用油脂組成物において、乳化剤を添加しない比較例と比して、得られたフライ調理品の油分が明確に低減していることが確認された。
<試験3:天ぷらでの効果実証実験>
試験2で使用した乳化剤No.5(脂肪酸モノグリセリド、商品名「エマルジーMO(M)」理研ビタミン株式会社製(HLB値:4.3、脂肪酸構成(質量割合):パルミチン酸24%、オレイン酸21%、リノール酸49%、他6%))を0質量%(無添加)、0.02質量%、0.04質量%、0.06質量%、0.08質量%、0.1質量%添加した加熱調理用油脂組成物を調製し、これを使用して実際に天ぷらを調理して、調理品の油分低減効果を確認した。
1.サンプル調製
精製なたね油「日清キャノーラ油」(日清オイリオグループ株式会社製)に乳化剤No.5を、0.02質量%、0.04質量%、0.06質量%、0.08質量%、0.10質量%となるようにそれぞれ混合し、実施例6〜9及び比較例3の加熱調理用油脂組成物(フライ用油脂)を調製した。乳化剤は、油脂800gを加熱した後、溶解することで油脂に混合した。一方、乳化剤を添加しないキャノーラ油を比較例2とした。
サツマイモを厚さ5mm、直径3.4cmの円柱状にカットし、揚げダネとした。天ぷら粉「昭和天ぷら粉」(昭和産業株式会社製)38gと氷水62gとを混合し、バッターを作製した。サツマイモをバッター液に浸し、バッターを付着させた。
鍋で180℃に加熱した各フライ用油脂に、バッターを付着させたサツマイモを5個ずつ投入し、3分間加熱調理した。その際、加熱調理開始1.5分後に、フライ用油脂中のサツマイモを一度裏返した。3分間加熱調理した後のフライ調理品を網の上に移動させて静置して油分をきり、5分後に回収し、これを測定用サンプルとした。
フライ調理品サンプルは、各フライ用油脂について、10個ずつ作製した。
2.油分測定
上記サンプル(フライ調理品)は、重量を測定した後、減圧下で乾燥させて水分を除去した。その際、乾燥前後の重量を測定することで、水分量を算出した。
乾燥後のサンプルを30mLのヘキサンに浸漬し、サンプルが含有する油分をヘキサン画分に溶出させた(油分抽出)。該ヘキサン画分を回収し、ヘキサンを除去した後、残存した油分を秤量した。サンプル10個の平均値を油分量とした。また、油分の重量を乾燥前のサンプル重量で除した値を油分割合とした。各フライ用油脂使用時のサンプルの油分量及び油分割合を表3中に示す。
Figure 0005855634
表3に示す通り、実施例6〜9の加熱調理用油脂組成物において、乳化剤を添加しない比較例2、乳化剤を0.10%添加した比較例3と比して、得られたフライ調理品の油分が明確に低減していることが確認された。
本発明の加熱調理用油脂組成物は、食品製造の分野において、特にフライ調理品の製造に使用するフライ用油脂として利用することが可能である。また、その他の加熱調理用油脂を要する全ての食品の製造においても利用可能である。

Claims (3)

  1. 油脂に0.02〜0.08質量%の乳化剤を配合してなり、
    前記乳化剤が、コハク酸モノオレイン酸グリセリンで
    フライ調理後の調理対象物に残存する油分を低減するものである、
    ことを特徴とするフライ調理用油脂組成物。
  2. 油脂の精製工程の後に、精製油脂に0.02〜0.08質量%の乳化剤を添加する工程を含み、
    前記乳化剤が、コハク酸モノオレイン酸グリセリンで
    フライ調理後の調理対象物に残存する油分を低減するものである、
    ことを特徴とするフライ調理用油脂組成物の製造方法。
  3. 油脂に0.02〜0.08質量%の乳化剤を配合してなるフライ調理用油脂組成物をフライ調理に用いることで、フライ調理後の調理対象物に残存する油分を低減させる方法であって、
    前記乳化剤が、コハク酸モノオレイン酸グリセリンである、フライ調理後の調理対象物に残存する油分を低減させる方法
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