JP6518165B2 - 加熱調理用油脂組成物およびその製造方法、ならびに加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法 - Google Patents

加熱調理用油脂組成物およびその製造方法、ならびに加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法 Download PDF

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Description

本発明は、加熱調理用油脂組成物およびその製造方法、ならびに加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法に関する。
近年、食品の品質に対する関心がますます向上しつつあり、揚げ物等の加工食品に活用されている食用油脂についても例外ではない。食用油脂は、一般的に熱と光により劣化する。この時、水分の存在により加水分解劣化が、また、酸素の存在により酸化劣化が起こり、風味や色調も劣化する。特に、フライ、天ぷら、から揚げ等のフライ調理では水分を多く含むため、180℃前後の油で加熱調理を行う場合には、加水分解劣化を抑えることが重要となる。また、スーパー、飲食店、レストラン等で使用される業務用の加熱調理用油脂は、長時間にわたって大量のフライ調理品を高温で加熱調理することが多いため、劣化が早く進行し、フライ調理品の風味や外観にも悪影響を及ぼす。このため短期間で廃棄・交換しなければならないが、経済面、環境面でも負担が大きいため、加熱調理用油脂の劣化抑制技術が必要とされている。
加熱調理用油脂の加熱による劣化の指標としては、油脂の加水分解や酸化などによって生成した遊離脂肪酸量を間接的に示す「酸価」が代表的に用いられており、加熱による酸価上昇を抑制することが検討されてきた。例えば、特許文献1では、ナトリウム、カリウムから選ばれる1以上の成分を油脂中に0.1〜1μmol/g含有させることによって、加熱による油脂の酸価上昇を抑制する発明が開示されている。
特許第4798210号公報
ところで、加熱調理用油脂の加熱による劣化の指標として、酸価上昇の他に、着色、泡立ちなども劣化の指標とされている。着色は、揚げダネなどの調理対象物から溶出した物質の加熱や、油脂の加熱により生じる共役ジエン量やカルボニル、ヒドロキシ、エポキシ基などが共働的に関与していると考えられ、フライ製品への着色を引き起こす原因にもなる。泡立ちは、主として、油脂の加熱により生成する油脂重合物によって引き起こされると考えられており、フライ時の作業性、安全性の低下を引き起こす。
このように、酸価上昇、着色、泡立ちなどの劣化の各指標は、それぞれ評価対象が異なるため、1の指標だけでなく、酸価上昇、重合物生成および着色の全てをバランスよく抑制することができ、フライ時の作業性や安全性をも向上させることができる手段が必要とされている。
そこで、本発明は、加熱による酸価上昇、重合物生成および着色をバランスよく抑制することができる加熱調理用油脂組成物およびその製造方法、ならびに加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法を提供することを目的とする。
本発明の加熱調理用油脂組成物は、油脂と、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸とを含有し、加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmであることを特徴とする。
本発明の加熱調理用油脂組成物では、前記アルカリ金属石鹸が、ナトリウム石鹸であるであることが好ましい。
本発明の加熱調理用油脂組成物の製造方法は、油脂の精製工程の後に、精製油脂に、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を、加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmとなるように添加する工程を含むことを特徴とする。
本発明の加熱調理用油脂組成物の製造方法では、前記アルカリ金属石鹸がナトリウム石鹸であることが好ましい。
本発明の加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法は、加熱調理用油脂に、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を、加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmとなるように添加する工程を含むことを特徴とする。
本発明の加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法では、前記アルカリ金属がナトリウムであることが好ましい。
本発明によれば、加熱による酸価上昇、重合物生成および着色をバランスよく抑制あるいは低減することができる加熱調理用油脂組成物およびその製造方法を提供することができる。また、加熱による酸価上昇、重合物生成および着色をバランスよく抑制あるいは低減することができる、加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法を提供することができる。
また、本発明の加熱調理用油脂組成物およびその製造方法ならびに加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法により、フライ時の作業性や安全性をも向上させることができる。
本発明者らは、油脂に炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸とを含有させ、更に加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量を0.1〜5.0質量ppmとすることによって、業務用のフライ調理用油脂のような高温且つ長時間の過酷な使用条件下においても、加熱による酸価上昇、重合物生成および着色をバランスよく抑制あるいは低減することができることを見出した。この知見に基づき、本願発明の加熱調理用油脂組成物およびその製造方法、ならびに加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法を完成するに至った。
<加熱調理用油脂組成物>
以下、本発明の加熱調理用油脂組成物について、その含有成分ごとに詳説する。
(油脂)
本発明の加熱調理用油脂組成物は、通常の加熱調理用油脂を主成分として含む。通常の加熱調理用油脂は、一般に加熱調理用として使用される動植物油脂およびその水素添加油、分別油、エステル交換油などを単独あるいは組み合わせて用いることができる。動植物油脂としては、例えば、大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などが挙げられる。室温で固形化するものは、使用時に加熱により溶解させる必要があるので、20℃で液状の態様のものが好ましい。原料油脂そのものが20℃で固体であっても、他の原料油脂と併用して用いることによって、油脂全体として液状であれば好適に使用できる。特に、融点の低い液状油でありながら、酸化安定性も良好であるという利点を有することから、なたね油、なたね油と大豆油との混合物などを好適に使用することができる。
本発明の加熱調理用油脂組成物において、上記通常の加熱調理用油脂は、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸および必要に応じて添加される他の添加剤を除く残部を構成するのが好ましい。
(アルカリ金属石鹸)
本発明の加熱調理用油脂組成物は、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を含有する。当該アルカリ金属石鹸は、炭素数4〜16の飽和脂肪酸とアルカリ金属とから構成される塩である。
当該アルカリ金属石鹸を構成する炭素数4〜16の飽和脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、酪酸(C4)、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)等が挙げられる。中でも、カプリル酸(C8)、ラウリン酸(C12)、パルミチン酸(C16)が好ましい。
当該アルカリ金属石鹸を構成するアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、ナトリウムが好ましい。
炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸は、市販の製品を使用することができる。また、常法に従い、アルカリ金属水酸化物の水溶液を、炭素数4〜16の飽和脂肪酸または当該飽和脂肪酸を含む油脂と混合して鹸化させ、必要に応じて精製することによって得られた、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を使用することもできる。
炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸の含有量は、加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmであるように調整される。
(アルカリ金属の含有量)
本発明の加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量は、0.1〜5.0質量ppmである。炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を含有する加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmであれば、酸価上昇抑制、重合物生成抑制および着色抑制の効果をバランスよく発揮することができる。加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜3.5質量ppmであるのが好ましく、0.3〜3.1質量ppmであるのがより好ましく、0.3〜2.0質量ppmが最も好ましい。当該アルカリ金属の含有量がこの範囲内であると、酸価上昇抑制、重合物生成抑制および着色抑制の効果を一層バランスよく発揮することができる。加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量は、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を加熱調理用油脂組成物に含有させた状態で、原子吸光光度法により定量することができる。
(その他の成分)
本発明の加熱調理用油脂組成物中には、本発明の効果を損ねない程度に、その他の成分を加えることができる。これらの成分は、例えば、一般的な食用油脂に用いられる成分(食品添加物など)である。これらの成分としては、例えば、酸化防止剤、乳化剤、シリコーンオイル、結晶調整剤、食感改良剤、着色成分等が挙げられ、脱臭後から充填前に添加されることが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、アスコルビン酸類、フラボン誘導体、コウジ酸、没食子酸誘導体、カテキンおよびそのエステル、フキ酸、ゴシポール、セサモール、テルペン類等が挙げられる。乳化剤としては、例えば、モノグリセリド、ジグリセリド、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレート、ワックス類、ステロールエステル類、リン脂質等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、食品用途で市販されているものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン構造を持ち、動粘度が25℃で800〜5000mm2/sのものが挙げられる。シリコーンオイルの動粘度は、特に800〜2000mm2/s、さらに900〜1100mm2/sであることが好ましい。ここで、「動粘度」とは、JIS K 2283(2000)に準拠して測定される値を指すものとする。シリコーンオイルは、シリコーンオイル以外に微粒子シリカを含んでいてもよい。
<加熱調理用油脂組成物の製造方法>
本発明の加熱調理用油脂組成物の製造方法に使用される油脂は、一般の油脂と同様、植物の種子もしくは果実、または動物性材料から搾油された粗油を出発原料として用い、順に、必要に応じて、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程を経て、さらに必要に応じて脱ろう工程を介した後、脱臭工程を経た精製により製造することができる。上記脱ガム工程、脱酸工程、および脱ろう工程は、採油される前の油糧原料に応じて変動し得る粗油の品質に応じて適宜選択される。
本発明の製造方法では、上記のような油脂の精製工程に加えて、精製油脂に、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を、加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmとなるように添加する工程を含む。具体的には、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を、加熱調理用油脂組成物中にアルカリ金属が0.1〜5.0質量ppm含まれるように計算した添加量で、精製油脂に添加する。また、好ましくは、このようにして得られた加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量を原子吸光光度法で測定して、0.1〜5.0質量ppmとなるように、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸の量または精製油脂の量を調整する。
炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸としては、上述したものを使用することができる。当該アルカリ金属石鹸は、精製工程後の油脂を加熱した後、添加、溶解することにより添加してもよい。当該アルカリ金属石鹸は、少量の溶媒(水や精製油脂)に溶解させて、必要に応じて有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリド等の乳化剤と混合してから、大量の精製油脂に添加してもよい。添加後、攪拌などにより当該アルカリ金属石鹸を油脂中に均一に溶解または分散させた後に、必要に応じて脱水処理を行ってもよい。なお、脱水は約70〜105℃で減圧にて行うことが好ましい。また、当該アルカリ金属を乳化剤と混合して精製油脂に添加することも好ましい。
本発明の製造方法は、必要に応じて、上述する他の添加剤を添加する工程も含んでいてもよい。他の添加剤の添加工程は、油脂の精製工程後であるのが望ましく、その添加時の油脂温度等の条件は、添加剤の種類、目的によって適宜変更されるのが望ましい。
<加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法>
本発明の加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法は、加熱調理用油脂に、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を、加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmとなるように添加する工程を含む。加熱調理用油脂としては、上述した通常の加熱調理用油脂を使用することができるが、フライ作業を行ったフライ油も使用できる。炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸としては、上述したものを使用することができる。炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を加熱調理用油脂に含有させる手法としては、本発明の製造方法において炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmとなるように添加する工程について上述する手法を使用することができる。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
下記表1および2に示す配合で、実施例および比較例のサンプル油を調製し、加熱試験を行った後、酸価、重合物量、色値について評価を行った。サンプル油の調製の手順、加熱試験の手順、評価方法、結果を具体的に下記に示す。
<サンプル油の調製>
油脂として日清キャノーラ油(日清オイリオグループ株式会社製)を使用した。
炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸としては、カプリル酸ナトリウム(C8:0、東京化成工業株式会社製「n−オクタン酸ナトリウム」)、ラウリン酸ナトリウム(C12:0、東京化成工業株式会社製)、パルミチン酸ナトリウム(C16:0、東京化成工業株式会社製)を使用した。
比較例のアルカリ金属石鹸として、ステアリン酸ナトリウム(C18:0、東京化成工業株式会社製)およびオレイン酸ナトリウム(C18:1、東京化成工業株式会社製)を使用した。
比較例1は、アルカリ金属石鹸を含まない油脂のみとした。
実施例1〜3では、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を、油脂に均一に混合し、原子吸光光度計(株式会社日立製作所製「Z2310」)によって、アルカリ金属(ナトリウム)含有量を測定した。各サンプル油中のアルカリ金属含有量は、それぞれ2質量ppmであった。
比較例2および3では、炭素数18の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸(ステアリン酸ナトリウム)または炭素数18の不飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸(オレイン酸ナトリウム)を、油脂に均一に混合し、原子吸光光度計(株式会社日立製作所製「Z2310」)によって、アルカリ金属(ナトリウム)含有量を測定した。各サンプル油中のアルカリ金属含有量は、それぞれ2質量ppmであった。
比較例4は、アルカリ金属石鹸を含まない油脂のみとした。
実施例4〜5および比較例5では、炭素数12の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸(ラウリン酸ナトリウム)を、油脂に均一に混合し、原子吸光光度計(株式会社日立製作所製「Z2310」)によって、アルカリ金属(ナトリウム)含有量を測定した。サンプル油中のアルカリ金属含有量は、実施例4では0.3質量ppm、実施例5では3.1質量ppm、比較例5では6.1質量ppmであった。
<加熱試験1>
直径20mm、長さ120mmの試験管に、調製したサンプル油(比較例1〜3、実施例1〜3)を10.0g入れた。サンプル油を入れた試験管をブロックヒーターで185℃にて32時間加熱した。酸価、重合物量、色値の結果を表1に示した。
<加熱試験2>
直径30mm、長さ120mm の試験管に、調製したサンプル油(比較例4〜5、実施例4〜5)を10.0g入れた。サンプル油を入れた試験管をブロックヒーターで185℃にて24時間加熱した。酸価、重合物量、色値の結果を表2に示した。
<酸価>
加熱したサンプル油の酸価を、基準油脂分析試験法「2.3.1−2013 酸価」(日本油脂化学会制定)に従って測定した。酸価は、油脂中に含まれる遊離脂肪酸の量を示すもので、サンプル油1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で表わす。酸価の数値が小さいほど、遊離脂肪酸量が少なく、酸価の上昇が抑制されていることを意味する。
また、表1では比較例1の酸価を基準とし、表2では比較例4の酸価を基準として、酸価の増減割合(%)を算出して括弧内に示した。マイナスの数値は、比較例1または比較例4の酸価より減少していることを意味する。
<重合物量>
加熱したサンプル油に含まれる重合物量を、基準油脂分析試験法「2.5.7−2013 油脂重合物(ゲル浸透クロマトグラフ法)」(日本油脂化学会制定)に従って測定した。数値が小さい程、重合物の生成が抑制されていることを意味する。
また、表1では比較例1の重合物量を基準とし、表2では比較例4の重合物量を基準として、重合物量の増減割合(%)を算出して括弧内に示した。マイナスの数値は、比較例1または比較例4の重合物量より減少していることを意味する。
<色値>
加熱したサンプル油の着色度合いを、ロビボンド比色計(The Tintometer Limited社製Lovibond PFX995)で1/2インチセルを使用して、黄の色度(Y)、赤の色度(R)を測定した。これら色度から、見た目の着色度合いを反映する値である色値(Y+10R)を算出して、評価した。色値の数値が小さい程、見た目の着色度合いが薄く、着色が抑制されていることを意味する。
また、表1では比較例1の色値を基準とし、表2では比較例4の色値を基準として、色値の増減割合(%)を算出して括弧内に示した。
Figure 0006518165
実施例のサンプル油では、比較例1と比べて、酸価上昇および重合物生成を大幅に低減することができ、着色の促進も軽度に抑えることができ、劣化の指標全てをバランスよく抑制することができた。
炭素数18の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸(ステアリン酸ナトリウム)を含む比較例2および炭素数18の不飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸(オレイン酸ナトリウム)を含む比較例3では、酸価上昇および重合物生成を実施例と同程度に低減したが、着色は実施例と比べて大幅に促進されていた。
Figure 0006518165
実施例のサンプル油では、比較例4と比べて、酸価上昇および重合物生成を大幅に低減することができ、着色の促進も軽度に抑えることができ、劣化の指標全てをバランスよく抑制することができた。
アルカリ金属含有量が本発明の範囲を超える比較例5では、酸価上昇および重合物生成を実施例と同程度に低減したが、着色は実施例と比べて大幅に促進されていた。
本発明の加熱調理用油脂組成物は、食品製造の分野において、特にフライ調理品の製造に使用するフライ用油脂として利用することが可能である。また、その他の加熱調理用油脂を要する全ての食品の製造においても利用可能である。

Claims (6)

  1. 油脂と、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸とを含有し、加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmであることを特徴とする、加熱調理用油脂組成物。
  2. 前記アルカリ金属石鹸がナトリウム石鹸である、請求項1に記載の加熱調理用油脂組成物。
  3. 油脂の精製工程の後に、精製油脂に、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を、加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmとなるように添加する工程を含むことを特徴とする、加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  4. 前記アルカリ金属石鹸がナトリウム石鹸である、請求項3に記載の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  5. 加熱調理用油脂に、炭素数4〜16の飽和脂肪酸のアルカリ金属石鹸を、加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmとなるように添加する工程を含むことを特徴とする、加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法。
  6. 前記アルカリ金属石鹸がナトリウム石鹸である、請求項5に記載の加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法。
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