JP2021010361A - 加熱調理用油脂組成物の製造方法、及び加熱調理用油脂組成物 - Google Patents

加熱調理用油脂組成物の製造方法、及び加熱調理用油脂組成物 Download PDF

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寛司 青柳
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Shogo Tsujino
祥伍 辻野
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Abstract

【課題】本発明の課題は、加熱調理用油脂組成物の加熱調理時の酸価上昇及び/又は着色を抑制できる技術を提供することである。【解決手段】酸価が0.03以下の精製油脂を加熱調理用油脂組成物中に93質量%以上、アルカリ金属を加熱調理用油脂組成物中に0.02〜5.0質量ppmとなるように、精製油脂に、アルカリ金属と乳化剤、及び/又はアルカリ金属を含有する乳化剤を添加する工程を含む、加熱調理用油脂組成物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、加熱調理用油脂組成物の製造方法、及び加熱調理用油脂組成物に関する。
近年、食品の品質に対する消費者の関心がますます高まりつつある。関心の対象は、加工食品(揚げ物等)の製造のために使用される食用油脂等にも及ぶ。
油脂は、熱や光等に暴露されることにより劣化することが知られる。油脂が熱や光に暴露される際に、水分が存在していると加水分解劣化が生じ、酸素が存在していると酸化劣化が生じる。劣化の結果、油脂の酸価が上昇し、風味や色調が劣化する。特に、フライ調理品(フライ、天ぷら、から揚げ等)の製造においては、180℃前後に加熱された油脂を用いて加熱調理を行うので、フライ調理品に用いられる油脂(以下、「フライ油脂」ともいう。)に対しては、加熱による劣化の抑制が要求される。
例えば、「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)」には、即席めん類(フライに相当する。)は、めんに含まれる油脂の酸価が3を超え、又は過酸化物価が30を超えるものであってはならないことが規定されている。
また、熱等によるフライ油脂の劣化によって、フライ油脂の色調が濃くなってしまうという問題も生じ得る。フライ油脂の色調が濃くなると、該油脂を用いて製造されるフライ調理品も着色し、外観が損なわれてしまう。
例えば、特許文献1には、ナトリウム又はカリウムを油脂中に0.1〜1μmol/g(ナトリウムとして2.2〜22.98mg/kg)含有した加熱調理用油脂が開示され、加熱による酸価上昇抑制効果が示されているが、一方、特許文献2には、ナトリウム又はカリウムを0.5〜2.0mg/kg含有するフライ調理時の酸価上昇が抑制されたフライ油脂が開示され、比較例1(Na含有量3.7mg/kg)、比較例2(5.8mg/kg)において、酸価上昇抑制効果、加熱着色に劣る例も示されている。
特許第4798310号公報 特開2013−252129号公報
このように、アルカリ金属を有する加熱調理用油脂は、加熱調理時の酸価上昇抑制や着色抑制が期待できるものの、必ずしも効果が期待できるものではなかった。また、加熱調理用油脂組成物の加熱調理時の酸価上昇抑制効果や着色抑制効果が高いほど、長時間加熱調理用油脂組成物で調理できるので、それら効果の更なる向上が求められていた。
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、加熱調理用油脂組成物の加熱調理時の酸価上昇抑制及び/又は着色抑制を抑制できる技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、酸価が0.03以下の精製油脂を加熱調理用油脂組成物中に93質量%以上、アルカリ金属を加熱調理用油脂組成物中に0.02〜5質量ppmとなるように、精製油脂にアルカリ金属と乳化剤、及び/又はアルカリ金属を含有する乳化剤、を添加することによって上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) 酸価が0.03以下の精製油脂を加熱調理用油脂組成物中に93質量%以上、アルカリ金属を加熱調理用油脂組成物中に0.02〜5.0質量ppmとなるように、精製油脂に、アルカリ金属と乳化剤、及び/又はアルカリ金属を含有する乳化剤、を添加する工程を含む、
加熱調理用油脂組成物の製造方法。
(2) 前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、有機酸モノグリセリド、モノ脂肪酸グリセリドから選ばれる1種以上である、(1)の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
(3) 前記乳化剤が、加熱調理用油脂組成物中に0.02〜5.00質量%含有する、(1)又は(2)の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
(4) 前記乳化剤が、HLB値3.5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、HLB値3以下のショ糖脂肪酸エステル、コハク酸モノオレイン酸グリセリン、クエン酸モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、構成する脂肪酸の47質量%以上が多価不飽和脂肪酸であるモノ脂肪酸グリセリド、から選ばれる1種以上である、(1)〜(3)のいずれかの加熱調理用油脂組成物の製造方法。
(5) 前記精製油脂が、以下の吸着処理油脂、脱臭油脂A、脱臭油脂B、脱臭油脂Cから選ばれる1種以上を含有する精製油脂である、(1)〜(4)のいずれかの加熱調理用油脂組成物。
吸着処理油脂:脱臭工程を経た油脂を、液体状態かつ80℃未満でシリカ・マグネシア系製剤と接触させる吸着工程を経た吸着処理油脂
脱臭油脂A:脱臭油脂中のγ−トコトリエノール含有量が250質量ppm以下、酸価が0.03以下となるように脱臭工程を行った、パーム系脱臭油脂の再脱臭油脂
脱臭油脂B:脱臭油脂中の全トコフェロール含有量が900質量ppm以下、酸価が0.03以下となるように脱臭工程を行った、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油から選ばれる1種以上である、脱臭油脂
脱臭油脂C:脱臭油脂中の全トコフェロール含有量が550質量ppm以下、酸価が0.03以下となるように脱臭工程を行った、菜種脱臭油脂
(6) 前記精製油脂の酸価が0.00〜0.01である、(5)の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
(7) 前記精製油脂が、脱臭工程の前に、油脂をオゾンに接触させる工程を経た精製油脂である、(1)〜(6)のいずれかの加熱調理用油脂組成物の製造方法。
(8) さらに、シリコーンオイルを加熱調理用油脂組成物中に0.5〜10質量ppmとなるように、添加する、(1)〜(7)のいずれかの加熱調理用油脂組成物の製造方法。
(9) 加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属が0.02〜5質量ppmであり、酸価が0.03以下である精製油脂を93質量%以上含有する、加熱調理用油脂組成物。
(10) さらに、シリコーンオイルを加熱調理用油脂組成物中に0.5〜10質量ppm含有する、(9)の加熱調理用油脂組成物。
(11) (1)〜(7)のいずれかの製造方法を経た、(9)又は(10)に記載の加熱調理用油脂組成物。
(12) 加熱調理用油脂組成物が、加熱調理後の加熱調理時の酸価上昇抑制及び/又は着色抑制制するものであることを特徴とする、(9)〜(11)のいずれかの加熱調理用油脂組成物。
本発明によれば、加熱調理用油脂組成物の加熱調理時の酸価上昇及び/又は着色を抑制できる技術を提供される。さらに、油脂をオゾンに接触させる工程を経ることで、風味安定性も改善する。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、本明細書において、「A(数値)〜B(数値)」は「A以上B以下」を意味し、割合は質量割合を意味する。
なお、本発明において酸価は、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.3.1−2013 酸価」に準拠して測定する値である。酸価は、油脂中に含まれる遊離脂肪酸の量を示し、サンプル油1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で表わされる。また、アルカリ金属の含有量は、原子吸光光度法によって定量することができる。また、乳化剤を構成する脂肪酸中の各脂肪酸含有量(例えば、オレイン酸)は、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.4.2.3−2013 脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法) に準拠して測定することができる。また、油脂組成物に含まれるγ−トコトリエノール含有量、及びトコフェロール含有量は、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.4.10−2013 トコフェロール(蛍光検出器−高速液体クロマトグラフ法)」に準拠して測定することができる。また、ヨウ素価は、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.3.4.1−2013 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)に準拠して測定できる。なお、色調は、試験油の色度を、ロビボンド比色法(0.5インチセル)を使用して、黄の色度(Y値)、赤の色度(R値)を測定し、「Y+10R」を算出したものである。
<加熱調理用油脂組成物の製造方法>
本発明の製造方法は、酸価が0.03以下の精製油脂を加熱調理用油脂組成物中に93質量%以上、アルカリ金属を加熱調理用油脂組成物中に0.02〜5質量ppmとなるように、精製油脂に、アルカリ金属と乳化剤、及び/又はアルカリ金属を含有する乳化剤、を添加する工程を含む。また、油脂をオゾンに接触させる工程、及び/又はシリコーンオイルを添加する工程をさらに行うことができる。
精製油脂、アルカリ金属、乳化剤の詳細については、後述する。油脂にアルカリを単独で分散、あるいは溶解させることは難しいため、アルカリ金属は乳化剤と共存させて油脂に添加することが好ましい。例えば、油脂に、同時に乳化剤とアルカリ金属を添加、あるいはアルカリ金属を含有させた乳化剤を油脂に添加することができる。アルカリ金属と乳化剤は、徐々に希釈したほうが好ましい。例えば、アルカリ金属と乳化剤を油脂の一部で希釈し、希釈液を残りの油脂に添加する方法を用いることができる。なお、希釈する油脂は、加熱調理用油脂組成物に配合する油脂を用いる。また、添加温度は、乳化剤が液体状になる温度が好ましく、0〜70℃が好ましい。加熱する場合は、乳化剤あるいは希釈液のみの加熱でも問題ない。
なお、アルカリ金属と乳化剤を添加する際に、同時にシリコーンオイルも添加することが好ましい。
[油脂]
加熱調理用油脂組成物は、油脂を含有する。油脂としては、食用油脂を用いることができる。例えば、動植物油脂、グリセリンと脂肪酸から合成した油脂及びそれらの分別油、エステル交換油、水素添加油などが挙げられる。また、単独の油脂あるいは複数の油脂をブレンドしたものも挙げられる。
動植物油脂としては、例えば、大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、エゴマ油、亜麻仁油、落花生油、グレープシード油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などが挙げられる。
グリセリンと脂肪酸から合成した油脂としては、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)などが挙げられる。
分別油としては、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクションなどのパーム油の分別油が挙げられる。
エステル交換油としては、パーム油あるいはパーム油の分別油と他の液状油脂のエステル交換油、あるいはMCTと植物油などとのエステル交換油を用いることができる。
水素添加油は、動植物油、動植物油の分別油の水素添加油の他、エステル交換油の水素添加油などが挙げられる。
[精製油脂]
本発明において、精製油脂は、少なくとも脱臭工程を経た油脂である。
加熱調理用油脂組成物に含まれる油脂は、精製油脂のみ、あるいは精製油脂を含有した油脂である。加熱調理用油脂組成物中に、酸価が0.03以下である精製油脂を93質量%以上含有する。酸価が0.03以下である精製油脂を加熱調理用油脂組成物中に93質量%以上含有すると、加熱用途に用いる加熱調理用油脂組成物として、十分な機能を有することができる。加熱調理用油脂組成物に含まれる酸価が0.03以下である精製油脂は、好ましくは97質量%以上であり、99.98質量%以下である。加熱調理用油脂組成物に含まれる酸価が0.03以下である精製油脂は、より好ましくは99質量%以上であり、99.97質量%以下である。加熱調理用油脂組成物に、酸価が0.03を超える精製油脂、あるいは未精製油を含有させることができるが、加熱調理用油脂組成物に含まれる油脂が全て、酸価が0.03以下である精製油脂であることが特に好ましい。
なお、油脂は天然由来であり、現時点では、遊離脂肪酸以外の酸価を上昇させる成分や、一部の着色物質あるいは着色を促進する物質は特定されていない。
さらに、精製油脂が、以下の吸着処理油脂、脱臭油脂A、脱臭油脂B、脱臭油脂Cから選ばれる1種以上を含有する精製油脂であることが好ましい。
(吸着処理油脂)
吸着処理油脂は、脱臭工程を経た油脂を、液体状態かつ80℃未満でシリカ・マグネシア系製剤と接触させる吸着工程を経て製造されたものである。接触により油脂中の遊離脂肪酸の他、フライ時に酸価を上昇させる成分(促進する物質)や着色物質あるいは着色を促進する物質を除去することができる。
吸着工程前の脱臭工程に供する油脂は、未精製油脂、あるいは、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱ロウ工程等から選ばれる工程を経た半精製油脂、あるいは脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱ロウ工程等から選ばれる工程と脱臭工程を経た精製油脂(脱臭油脂)を用いることができる。また、精製油脂を、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱ロウ工程等から選ばれる工程に供した油脂も用いることができる。なお、本発明では、酸価が十分に低い油脂を提供することを目的の一つとするが、酸価は後述の脱臭工程、吸着工程で低下させることができるので、脱酸工程は必ずしも必須ではない。脱酸工程を行った場合、脱臭工程の負荷を減らすことができる。また、著しく着色した油脂の場合は、脱色工程を経た油脂を用いることが好ましい。
吸着工程の前の脱臭工程の条件は通常の油脂の精製で行われている脱臭条件の範囲であれば特に問題はないが、脱臭工程を経た油脂(脱臭油脂)の酸価が0.2以下であることが好ましい。酸価が低いほど、吸着工程の効果が高く、精製油脂の酸価が十分に低減できる。脱臭工程を経た油脂の酸価は0.1以下であることが、より好ましい。
脱臭工程の条件は、特に限定するものではないが、例えば、脱臭温度180〜280℃、真空度100〜800Pa、水蒸気量0.3〜10質量%(対油脂)、脱臭時間30〜120分の範囲が好ましい。脱臭温度は200〜270℃がより好ましく、230〜260℃がさらに好ましく、240〜250℃が最も好ましい。真空度は、200〜600Paがより好ましく、300〜500Paがさらに好ましい。水蒸気量は、1〜8質量%(対油)がより好ましく、1〜5質量%(対油)がさらに好ましく、1〜3質量%(対油)が最も好ましい。脱臭時間は40〜120分がより好ましく、40〜80分がさらに好ましい。
なお、脱臭工程において、脱臭処理の終了時に、クエン酸を添加してもよい。クエン酸を添加することで、酸化安定性が高まる。クエン酸は、脱臭油脂に対して10〜50ppm添加することが好ましく、26〜50ppm添加することがより好ましい。なお、クエン酸はそのままでは油中に分散・溶解しないので、5〜20質量%の水溶液として添加することが好ましい。
吸着処理油脂は、脱臭工程の後に吸着工程を有するが、脱臭工程と吸着工程の間に別の工程を行うこともできる。脱臭工程の次の工程が吸着工程であることが好ましい。なお、吸着工程は、80℃未満で行うため、必要に応じて冷却・保管等を経て吸着工程を行ってもよい。吸着工程で用いるシリカ・マグネシア系製剤は、シリカ(二酸化ケイ素)とマグネシア(酸化マグネシウム)の製剤であり、シリカ粒子とマグネシア粒子が分散・混合したものである。例えば、シリカ:マグネシアの質量比は、1:5〜3:1のものが好ましい。また、シリカ・マグネシア系製剤として、二酸化ケイ素と酸化マグネシウムと水の組合せからなる製剤を用いることができ、例えば、二酸化ケイ素30〜80質量%、酸化マグネシウム10〜50質量%、水5〜20質量%の組成のものが好ましい。これらのシリカ・マグネシア系製剤は、例えば、シリカとマグネシアの各粒子を、水中で、溶解はしないがナノオーダーの単位粒子として分散させ、均一混合して、粒子間の原子の交換や組み換えを伴うような化学結合を生成することなく合体して緊密に複合化して得ることができる。また、市販品(水澤化学工業株式会社製、「ミズカライフ」)を用いることもできる。
油脂は、液体状態であれば、シリカ・マグネシア系製剤と十分な接触効率を得ることができる。また、接触温度は、80℃以上では、シリカ・マグネシア系製剤により油脂の微量成分が変質し、異臭が発生するため、脱臭工程(水蒸気蒸留)が必須となる。しかし、吸着工程の後に脱臭工程を行うと、わずかに加水分解が生じ、低い酸価の精製油脂を得ることは難しくなる。そのため、接触温度は−10〜79℃、−5〜75℃、0〜60℃、5〜60℃、5〜50℃のいずれかの範囲が好ましく、5〜40℃がさらに好ましく、10〜30℃が最も好ましい。
油脂とシリカ・マグネシア系製剤の接触は、油脂中にシリカ・マグネシア系製剤を添加し、撹拌の後にろ過又は遠心分離により、行うことができる。また、シリカ・マグネシア系製剤を充填した容器に液体の状態の油脂を通過させる方法だと、簡便で好ましい。例えば、シリカ・マグネシア系製剤を、ろ過器(単盤ろ過機、フィルタープレス、リーフフィルター等)、カラム等に充填し、油脂を通液することで接触させることができる。特に、シリカ・マグネシア系製剤を充填したカートリッジタイプのフィルターに通液することが、より好ましい。
脱臭工程を経た油脂は、遊離脂肪酸等のシリカ・マグネシア系製剤に吸着される不純物の量が少ないため、ろ過のような短時間の接触、あるいは、ごく少量のシリカ・マグネシア系製剤の使用でも十分な効果を有する。そのため、油脂とシリカ・マグネシア系製剤の接触時間、シリカ・マグネシア系製剤の使用量は特に限定するものではない。油脂とシリカ・マグネシア系製剤の接触時間は、好ましくは0.5分以上、より好ましくは5分以上、さらに好ましくは15分以上、最も好ましくは30分〜3時間である。また、シリカ・マグネシア系製剤の使用量は、好ましくは、油脂100質量部に対して0.05質量部以上であり、より好ましくは油脂100質量部に対して0.1〜5質量部、さらに好ましくは油脂100質量部に対して0.5〜3質量部である。
吸着処理油脂は、前述の吸着工程で精製工程は完了するが、必要に応じて、追加の精製工程、あるいは分別工程、混合工程(添加工程)等を行ってもよい。しかし、脱臭工程のように140℃以上で水蒸気と接触させる工程を行うと、油脂が微量の加水分解を生じ、一方で、遊離脂肪酸が蒸留で除去されるため、油脂中の遊離脂肪酸量の平衡状態が、油脂の酸価が0.01を超える範囲になるため、同工程を行わないことが好ましい。
また、上記吸着処理油脂の酸価は0.00〜0.03であり、好ましくは、0.00〜0.01である。なお、酸価0.00〜0.01は、通常の脱酸工程や脱臭工程のみでは到達できない範囲である。吸着処理油脂の酸価は、より好ましくは0.001〜0.008である。
(脱臭油脂A)
脱臭油脂Aは、脱臭油脂中のγ−トコトリエノール含有量が250質量ppm以下、酸価が0.03以下となるように脱臭工程を行った、パーム系脱臭油脂の再脱臭油脂である。パーム系脱臭油脂は、フィジカルリファイニング工程あるいはケミカルリファイニングを経た脱臭油脂であり、フィジカルリファイニング工程を経たパーム系脱臭油脂(RBDパーム系油脂)であることが好ましい。また、パーム系脱臭油脂はパーム油あるいはパーム油の分別油である。パーム油の分別油としては、パームオレイン、パームミッドフラクション、パームステアリン等が挙げられる。本発明の油脂組成物の作業性の点から、10〜20℃付近で液状であることが好ましく、その場合、脱臭油脂Aの融点が低いことが好ましい。そのため、パーム油及び/又はパームオレインを用いることが好ましい。より好ましくは、RBDパーム油及び/又はRBDパームオレインを用いることが好ましい。パームオレインは、パーム油を1回あるいは複数回分別したヨウ素価が高い画分であり、特にヨウ素価が高いものはパームスーパーオレインと呼ばれることもある。ヨウ素価が高くなると油脂が固化し難くなるので、パームオレインはヨウ素価56以上であることが好ましく、ヨウ素価60以上であることがより好ましく、ヨウ素価65以上であることがさらに好ましい。なお、パームオレインのヨウ素価の上限は特に限定するものではないが、72以下であることが好ましく、より好ましくは70以下である。
脱臭油脂A中のγ−トコトリエノール含有量は、好ましくは50〜250質量ppm以下であり、より好ましくは50〜230質量ppmであり、さらに好ましくは50〜200質量ppmであり最も好ましくは50〜150質量ppmである。
また、上記脱臭油脂Aの酸価は0.00〜0.03であり、好ましくは、0.01〜0.03であり、より好ましくは、0.02以下、最も好ましくは0.01〜0.02である。
脱臭油脂Aは、一度脱臭工程を経ているパーム系脱臭油脂を原料として用い、再脱臭したものである。パーム系脱臭油脂は、アルカリ脱酸工程を含むケミカル精製(NBDパーム系油脂)、あるいはアルカリ工程を含まないフィジカル精製(RBDパーム系油脂)を行いたものを用いることができる。RBDパーム系油脂の流通量が多いことから、RBDパーム系油脂を用いることが好ましい。本発明においては、このパーム系脱臭油を、脱臭を含む再精製したものを脱臭油脂Aとして用いる。再精製工程は、脱臭工程のみでも問題ないが、ケミカル精製あるいはフィジカル精製を行うことが可能である。原料油脂のパーム系脱臭油脂は、最初の精製において酸価が下げられているので、酸価を低減する目的でのアルカリ脱酸工程は必須ではない。風味の点から、脱色工程、脱臭工程、あるいは水洗工程、脱色工程、脱臭工程を行うフィジカル精製が好ましい。また、脱酸工程、脱色工程、脱臭工程を行うケミカル精製を用いることが好ましい。
脱臭以外の工程は、油脂の一般的な精製条件を用いることができる。
脱臭油脂Aの製造は、脱臭油脂中のγ−トコトリエノール含有量と酸価が要件を満たすように脱臭する工程を経るが、これらの要件は、脱臭する工程を過度な条件で行うことで達成することができる。脱臭条件は、減圧水蒸気蒸留装置を用いるが、減圧水蒸気蒸留の通常の条件より、高温、高真空下、高水蒸気量、長時間のいずれかで行うことができる。例えば、脱臭温度200〜280℃、真空度100〜500Pa、水蒸気量1〜8質量%(対油脂)、脱臭時間30〜120分のいずれかの範囲で行う場合、脱臭温度235℃以上、真空度500Pa以下、水蒸気量2.0質量%以上(対油脂)、脱臭時間50分以上から選ばれる2条件以上を満たすことが好ましく、3条件を満たすことがより好ましい。脱臭温度は245℃以上がより好ましく、250℃以上がさらに好ましい。真空度は400Pa以下であることがより好ましく、280Pa以下がさらに好ましく、260Pa以下がことさらに好ましい。水蒸気量は2.4質量%以上(対油脂)であることがより好ましく、3質量%(対油脂)であることがさらに好ましい。脱臭時間は60分以上がより好ましく、70分以上がさらに好ましい。
なお、脱臭工程において、脱臭処理の終了時に、温度を降温するが、その際にクエン酸を添加することが好ましい。クエン酸を添加することで、酸化安定性がより高まる。クエン酸は、脱臭油脂に対して1〜50ppm添加することが好ましく、1〜30ppm添加することがより好ましい。なお、クエン酸はそのままでは油中に分散・溶解しないので、5〜20質量%の水溶液として添加することが好ましい。
(脱臭油脂B)
脱臭油脂Bは、脱臭油脂中の全トコフェロール含有量が900質量ppm以下、酸価が0.03以下となるように脱臭工程を行った、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油から選ばれる1種以上である、脱臭油脂である。好ましくは大豆油と大豆油に脂肪酸組成が類似したコーン油が好ましい。なお、油脂のヨウ素価は、油脂の構成脂肪酸を反映した値であり、劣化しやすさの指標ともなる。脱臭油脂Bのヨウ素価は、100〜145が好ましく、120〜140がより好ましい。
脱臭油脂B中の全トコフェロール含有量は、好ましくは100〜850質量ppmであり、あるいは100〜800質量ppmであり、より好ましくは100〜600質量ppm、さらに好ましくは150〜550質量ppm、ことさらに好ましくは200〜460質量ppmであり、最も好ましくは200〜400質量ppmである。さらに、脱臭油脂B中のγ−トコフェロールは、好ましくは50〜600質量ppmであり、より好ましくは50〜550質量ppmであり、さらに好ましくは50〜480質量ppmであり、最も好ましくは80〜350質量ppmである。
また、上記脱臭油脂Bの酸価は0.00〜0.03であり、好ましくは、0.01〜0.03であり、より好ましくは、0.02以下、最も好ましくは0.01〜0.02である。
脱臭油脂Bは、アルカリ脱酸工程を含むケミカル精製(ケミカルリファイニング)、あるいはアルカリ脱酸工程を含まないフィジカル精製により製造し、脱臭工程を経たものを用いることができる。風味の点から、ケミカル精製(ケミカルリファイニング)を用いることが好ましい。ケミカル精製は、脱酸工程でアルカリを用いて遊離の脂肪酸を除去する工程を含む精製方法であり、例えば、原料から圧搾及び抽出した原油を、脱ガム処理、アルカリ脱酸処理、脱色処理、脱ろう処理、脱臭処理に供することで精製する方法である。脱臭油脂Bにおいて、脱臭以外の工程は、油脂の一般的な精製条件を用いることができる。
本発明の効果が奏されやすいという観点から、脱臭油脂Bは、アルカリ脱酸処理及び脱色処理に供された後に脱臭処理に供された脱臭油脂であるが好ましい。
本発明において、脱臭油脂Bとして、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油のいずれか1種以上が用いられるが、複数の油脂を混合して用いる場合は、精製のどの段階で混合してもよいが、脱臭処理後に混合することが好ましい。また、脱臭油脂B以外の油脂をブレンドする場合も、脱臭処理が終了した後に混合することが好ましい。
脱臭油脂Bは、脱臭工程でも酸価が低減されるが、アルカリ脱酸においても低減することが好ましい。アルカリ脱酸に用いる油脂は、水脱ガム油を含む粗油、リン酸を添加した油脂、あるいはリン酸を添加した後に遠心分離等でガム質を除去した脱ガム油を用いることができる。アルカリ脱酸方法としては、5〜15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を、油脂の酸価から算出される酸量の0.8〜1.8倍等量添加し、遠心分離等で脂肪酸石鹸等を除去することが好ましい。水酸化ナトリウム水溶液は8〜13%濃度で、遊離脂肪酸量の1.0〜1.5倍等量添加することがより好ましい。また、水酸化ナトリウム水溶液の添加・分離処理を2回以上行うことがより好ましい。水酸化ナトリウム処理の後工程は、脱色工程であるが、水酸化ナトリウム処理の後に水洗を行い、脱色工程を行うことがより好ましい。
また、アルカリ脱酸方法として、希薄なアルカリ溶液(水酸化ナトリウム水溶液等)中に、アルカリ溶液の下部から油滴を添加し、油滴が上昇する間に中和させるゼニスプロセスを用いてもよい。
脱臭油脂Bの製造において、脱臭油脂中の全トコフェロール含有量と酸価が要件を満たすように脱臭する工程を含むが、これらは、脱臭する工程を過度な条件で行うことで達成することができる。脱臭条件は、減圧水蒸気蒸留装置を用いるが、減圧水蒸気蒸留の通常の条件より、高温、高真空下、高水蒸気量、長時間のいずれかで行うことができる。例えば、脱臭温度200〜280℃、真空度100〜500Pa、水蒸気量1〜8質量%(対油脂)、脱臭時間30〜120分のいずれかの範囲で行う場合、脱臭温度235℃以上、真空度500Pa以下、水蒸気量2.0質量%以上(対油脂)、脱臭時間50分以上から選ばれる2条件以上を満たすことが好ましく、3条件を満たすことがより好ましい。脱臭温度は245℃以上がより好ましく、250℃以上がさらに好ましい。真空度は400Pa以下であることがより好ましく、280Pa以下がさらに好ましく、260Pa以下がことさらに好ましい。水蒸気量は2.4質量%以上(対油脂)であることがより好ましく、3質量%(対油脂)であることがさらに好ましい。脱臭時間は60分以上がより好ましく、70分以上がさらに好ましい。
なお、脱臭工程において、脱臭処理の終了時に、温度を降温するが、その際にクエン酸を添加することが好ましい。クエン酸を添加することで、酸化安定性がより高まる。クエン酸は、脱臭油脂に対して10〜50ppm添加することが好ましく、26〜50ppm添加することがより好ましい。なお、クエン酸はそのままでは油中に分散・溶解しないので、5〜20質量%の水溶液として添加することが好ましい。
(脱臭油脂C)
脱臭油脂Cは、脱臭油脂中の全トコフェロール含有量が550ppm以下で、酸価が0.03以下である、菜種脱臭油である。菜種油は、菜種として栽培・流通している原料から採油されたものを用いることができる。菜種の品種としては、キャノーラ及び/又は高オレイン酸キャノーラを用いることができる。菜種油のヨウ素価は、90〜130が好ましく、95〜120がより好ましい。
脱臭油脂C中の全トコフェロール含有量は、好ましくは100〜550ppmであり、より好ましくは150〜530ppmであり、さらに好ましくは150〜500ppm、ことさらに好ましくは200〜500ppmであり、最も好ましくは200〜460ppmである。さらに、脱臭油脂C中のγ−トコフェロールは、好ましくは50〜400ppmであり、より好ましくは100〜400ppmであり、さらに好ましくは100〜350ppmである。
また、上記脱臭油脂Cは、酸価が0.00〜0.03であり、好ましくは0.01〜0.03であり、より好ましくは0.01〜0.02である。
上記脱臭油脂Cは、前述の脱臭油脂Bと同様の操作(製造条件)により得ることができる。
(その他の油脂)
加熱調理用油脂組成物中の油脂は、上記の吸着処理油脂、脱臭油脂A,脱臭油脂B、脱臭油脂C以外の油脂を含有することができる。含有する油脂は、精製油脂、脱臭工程を経ていない部分精製油脂、未精製油脂であっても問題ない。なお、精製油脂であった場合、全ての精製油脂を混合した組成物の酸価が0.03以下であることが、好ましい。また、脱臭工程を経ていない部分精製油脂、未精製油脂は、加熱調理用油脂組成物中に0〜6.9質量%であることが好ましく、含有しないことがより好ましい。
上記の吸着処理油脂、脱臭油脂A,脱臭油脂B、脱臭油脂C以外の油脂は、他の精製油脂を50質量%未満含有することが好ましく、より好ましくは30質量%未満である。例えば、米油、ごま油、紅花油、落花生油、オリーブ油、グレープシード油、亜麻仁油、エゴマ油、ヤシ油の他、これらの油脂を分別して得られる油脂が挙げられる。また、油脂中のγ−トコトリエノール含有量が250ppmを超える、あるいは酸価が0.03を超えるRBDパーム系油脂が挙げられる。さらに、油脂中の全トコフェロール含有量が850ppmを超える、あるいは酸価が0.03を超える、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油が挙げられる。さらに、油脂中の全トコフェロール含有量が550ppmを超える、あるいは酸価が0.03を超える、菜種油(キャノーラ油等)が挙げられる。これらの油脂は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、吸着処理油脂、脱臭油脂A、脱臭油脂B、脱臭油脂Cも含めた植物性油脂、並びに、そのエステル交換油及び分別油等は、通常、95質量%以上がトリグリセリドである。
本発明においては、吸着処理油脂、脱臭油脂A、脱臭油脂B、脱臭油脂C以外の油脂も、精製度が高いほうが好ましい。そのため、油脂組成物中のγ−トコトリエノール含有量が250ppm以下であることが好ましい。また、油脂組成物中の全トコフェロール含有量が900ppm以下であることが好ましく、850ppm以下であることがより好ましく、550ppm以下であることがさらに好ましい。
[アルカリ金属]
加熱調理用油脂組成物は、アルカリ金属を含有する。アルカリ金属としては、特に限定されないが、ナトリウム及びカリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらアルカリ金属は、アルカリ金属を含有する成分として添加することができる。また、アルカリ触媒を用いて製造した、アルカリ金属を含む乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、有機酸モノグリセリド、モノ脂肪酸グリセリドなどを用いることができる。アルカリ金属を含む乳化剤を用いる場合、乳化剤中のアルカリ金属濃度は、10〜50000質量ppmであることが好ましい。より好ましくは、500〜2000質量ppmであり、より好ましくは600〜1000質量ppmである。これらのアルカリ金属濃度は、エステル化反応時の触媒量を調整してアルカリ金属濃度を調整する方法のほか、アルカリ金属を含まない乳化剤を適宜添加して、アルカリ金属濃度を調整することができる。本発明の加熱調理用油脂組成物では、乳化剤と、アルカリ金属を含む成分が、アルカリ金属を含む脂肪酸モノグリセリドとして含まれることが好ましい。
あるいは、アルカリ金属を含有する成分としては、食品添加物として使用可能な水溶性又は油溶性の塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などを用いることができる。ナトリウム塩およびカリウム塩としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、カゼインナトリウム、DL−酒石酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウムなどが挙げられる。より好ましくは、オレイン酸ナトリウムなどの脂肪酸ナトリウムである。
本発明の加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量は、0.02〜5.0質量ppmである。アルカリ金属の含有量が0.02〜5.00質量ppm質量ppmであれば、前述の精製油脂と組み合わせることにより、加熱調理時の酸価上昇抑制及び/又は着色抑制の効果を発揮させることができる。なお、アルカリ金属の含有量は、0.1〜3.0質量ppmであるのが好ましく、0.1〜2.5質量ppmであるのがより好ましい。
[乳化剤]
脂肪酸石鹸以外のアルカリ金属は、油脂への溶解性に劣るため、乳化剤と混合して添加することが好ましい。あるいは、前述のアルカリ金属で述べたように、乳化剤中の成分として添加されることが好ましい。乳化剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、有機酸モノグリセリド、モノ脂肪酸グリセリドから選ばれる1種以上が好ましい。
乳化剤量は、アルカリ金属を加熱調理用油脂組成物に含有させるために、加熱調理用油脂組成物中に0.02〜5.00質量%含有することが好ましい。乳化剤の含有量は、0.02〜0.09質量%がより好ましく、0.03〜0.09質量%がさらに好ましく、0.04〜0.08質量%が最も好ましい。
また、乳化剤は、HLBが7以下であることが乳化剤の油脂への溶解性が高いことから好ましい。
なお、HLBとは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0〜20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明において、HLB値の算出はアトラス法の算出法を用いる。アトラス法の算出法は、
HLB=20×(1−S/A)
S:ケン化価
A:エステル中の脂肪酸の中和価
からHLB値を算出する方法を言う。
また、乳化剤として、HLB値3.5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、HLB値3以下のショ糖脂肪酸エステル、コハク酸モノオレイン酸グリセリン、クエン酸モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、構成する脂肪酸の47質量%以上が多価不飽和脂肪酸であるモノ脂肪酸グリセリド、から選ばれる1種以上を用いると、本願の加熱調理時の酸価上昇及び/又は着色を抑制できる効果以外に、フライ等の加熱調理時の加熱調理品の吸油を抑制する点から好ましい。
加熱調理時の加熱調理品の吸油を抑制する場合の乳化剤の配合量は、本発明の加熱調理用油脂組成物に対し、0.02〜0.09質量%、好適には0.03〜0.08質量%、より好適には0.04〜0.07質量%である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルのより好ましいHLB値は3以下であり、最も好ましいHLB値は1〜3である。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、構成脂肪酸中の炭素数8〜22の不飽和脂肪酸が5〜50質量%であることが、加熱調理された調理対象物の吸油量を低減する点で好ましい。より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸中の、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸が20〜30質量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する炭素数8〜22の不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、エルカ酸などを用いることができる。不飽和脂肪酸以外の構成脂肪酸は、炭素数8〜22の飽和脂肪酸である。なお、飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等を用いることができる。
HLB値3以下のショ糖脂肪酸エステルは、HLB値1.5〜3.0のものが好ましく、特に1.8〜2.5のものを使用することが好ましい。ショ糖脂肪酸エステルのHLB値が1.5以上であると、加熱調理後の調理品の吸油量を効率よく抑えることができる。一方、ショ糖脂肪酸エステルのHLB値が3.0以下であれば、保存時の吸湿等で分離が起る可能性が低い。なお、ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖エルカ酸エステルが好ましい。
構成する脂肪酸の47質量%以上が多価不飽和脂肪酸であるモノ脂肪酸グリセリドについて、その構成する脂肪酸の66質量%以上が不飽和脂肪酸であることが好ましい。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられ、特にオレイン酸と、リノール酸であることが好ましい。また、構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸が30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。飽和脂肪酸としては、パルミチン酸であることが好ましい。このように、多くの不飽和脂肪酸、特
に多くの多価不飽和脂肪酸で構成されるモノ脂肪酸グリセリドを使用することで、より調理対象物の吸油量の低減効果を確実とすることができる。
なお、天ぷら等のフライ調理品の調理時における乳化剤の作用は、以下の通りである。例えば、天ぷらを調理する際には、食材及びバッター(天ぷら粉と水とを混合したもの)を高温の油中(160〜200℃)で加熱する。バッターが高温の油と接触すると、油との接触面において水分が急激に蒸発、消失すると同時に、小麦粉を主成分としたバッター中の固形分が焼き固められる。この現象を繰り返し、徐々にバッター中の水分除去が進行し、間隙を有する形状で小麦粉が焼き固められた網目構造の衣が形成される。乳化剤は、気−液または液−液の界面張力に影響を与えるものであり、ある種の乳化剤は、衣の形成時に「油と固体」、「油と水」もしくは「油と気体(水蒸気)」の界面張力を変化させることで、衣の性質(形状、成分、物理的性状)を変化させる。従って、本発明において、加熱調理後の調理対象物に残存する油分を低減できる効果は、油脂の成分によらず、乳化剤により実現され、その効果は、特開2015−119665号公報、あるいは特開2016−93128号公報に示されている。
[油脂をオゾンに接触させる工程]
本発明において、前記精製油脂が、油脂をオゾンに接触させる工程を経て、脱臭工程を経た精製油脂であることで、精製油脂の風味安定性が向上する。特に、曝光による風味劣化(曝光臭)を抑制することができる。油脂をオゾンに接触させる工程により、曝光臭の原因物質が分解あるいは蒸留で分解しやすい化合物に変化すると考えられる。オゾンは、酸素原子3個から構成される気体であり、オゾン気体を油脂に接触させるか、オゾンを含有する水を油脂と撹拌することで接触させることもできる。オゾンを接触させた後に、オゾン以外の成分を除去する必要がないことから、オゾン気体を油脂に接触させることが好ましい。オゾン気体を油脂に接触させる方法としては、脱気された油脂をオゾン気体と接触させる方法、油脂中にオゾン気体をバブリングさせることで接触させる方法、オゾンを含有する水と接触させる方法等を用いることができる。なお、オゾンの発生装置は、特に限定するものではないが、空気中での紫外線照射、または酸素中での無声放電など高いエネルギーを持つ電子と酸素分子の衝突によって発生させるものを利用することができる。また、市販の水や食品等の殺菌、脱臭、脱色に用いるものを利用することができる。
油脂とオゾンとの接触は、長いほど曝光臭改善効果が高く、1分以上であることが好ましく、2分〜24時間であることがより好ましい。油脂とオゾンを3分〜6時間接触させることがさらに好ましく、油脂とオゾンを10分〜2時間接触させることがことさら好ましい。また、接触温度は、オゾンと油脂を接触させるため、油脂が液状である温度であればよく、―10℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましい。また、接触温度は、高くなると油脂の酸化反応が促進され、反応のコントロールが難しくなるので、接触温度は180℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。接触温度は10〜60℃がさらに好ましく、10〜40℃が最も好ましい。
オゾン量は、油脂にオゾンが溶存できればよく、油脂に対してオゾンが接触時間の間に0.0022質量%以上供給されていることが好ましく、油脂に対してオゾンが0.006質量%以上供給されていることがより好ましく、油脂に対してオゾンが0.005〜0.65質量%供給されていることがさらに好ましく、油脂に対してオゾンが0.006〜0.65質量%供給されていることが最も好ましい。
曝光臭の原因物質は、リノール酸のような脂肪酸やフラン酸等との提案がなされているものの、不明である。しかし、いずれも、オゾンとの反応で、分解あるいは脱臭工程で分解しやすい化合物に変化していると考えられるので、油脂をオゾンに接触させる工程の後に、これらが蒸留除去できる条件で脱臭する。なお、油脂の過酸化物はフライ温度で分解するので、160℃以上で脱臭処理すればよい。また、減圧あるいは水蒸気蒸留であれば、沸点が低下するので、120℃以上でも脱臭処理することが可能である。脱臭は、油脂の精製で用いられる減圧水蒸気蒸留を行うことが好ましい。一方、油脂は高温に加熱すると品質の低下を起こす可能性があるので、脱臭温度の上限は260℃以下が好ましい。脱臭温度は、120〜260℃が好ましく、140〜260℃、あるいは160〜260℃がより好ましく、180〜260℃あるいは200〜260℃がさらに好ましい。なお、脱臭時の温度を低温で行うことで、曝光臭改善効果も相乗的に効果を発揮するため、脱臭温度は120〜230℃であることが好ましく、160〜230℃、あるいは160〜225℃がより好ましく、180〜230℃あるいは280〜255℃がさらに好ましく、200〜255℃がことさらに好ましい。脱臭時の圧力は、減圧条件下であり、真空に近いいほど良い。50000Pa以下が好ましく、8000Pa以下がより好ましく、800Pa以下がさらに好ましい、なお、減圧条件は真空に近いほどよいため特に下限値はないが、蒸気の吹込みあるいは設備的な制約から10Pa以上で行われることが多い。圧力は10〜1000Paが好ましく、100〜800Paがより好ましく、200〜600Paがさらに好ましい。脱臭時の水蒸気量は油脂量に対して0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。脱臭時間は、15分以上行えば十分であり、15〜180分が好ましく、30〜120分がより好ましい。
[その他の成分]
加熱調理用油脂組成物中には、本発明の効果を損ねない程度に、その他の成分を加えることができ、配合される成分の種類や量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。これらの成分とは、例えば、一般的な油脂に用いられる成分(食品添加物など)である。これらの成分としては、例えば、酸化防止剤、消泡剤、結晶抑制剤等が挙げられ、脱臭後から充填前に添加されることが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、アスコルビン酸類、フラボン誘導体、コウジ酸、没食子酸誘導体、カテキンおよびそのエステル、フキ酸、ゴシポール、セサモール、テルペン類等が挙げられる。着色成分としては、例えば、カロテン、アスタキサンチン等が挙げられる。消泡剤としては、シリコーンオイルが挙げれられる。
本発明において、シリコーンオイルを加熱調理用油脂組成物中に0.5〜10質量ppmとなるように、添加することが好ましい。シリコーンオイル含有量(質量割合)は、油脂組成物中に、1〜5質量ppm含有することが好ましく、2〜3質量ppmがより好ましい。シリコーンオイルの合計含有量が0.5ppm以上であると、調理時の泡立ちを抑制する効果が十分に得られる。また、10ppm超であると、調理の泡立ちが多くなる。
シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン構造を持ち、動粘度が25℃で100〜5000mm/sのものが好ましい。シリコーンオイルの動粘度は、500〜2000mm/sがより好ましく、800〜1100mm/sであることがさらに好ましく、900〜1100mm/sであることが最も好ましい。シリコーンオイルは、食品用途として市販されているものを用いることができる。なお、ここでいう「動粘度」とは、JIS K 2283(2000)に準拠して測定される値を指すものとする。シリコーンオイルは、シリコーンオイル以外に微粒子シリカを含むものを用いるのも好ましい。
<加熱調理用油脂組成物>
本発明の加熱調理用油脂組成物は、加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属が0.02〜5質量ppmであり、酸価が0.03以下である精製油脂を93質量%以上含有する。アルカリ金属、精製油脂等については、前述の加熱調理用油脂組成物の製造方法に記載したとおりである。なお、油脂は天然由来であり、現時点では、遊離脂肪酸以外の酸価を上昇させる成分や、一部の着色物質あるいは着色を促進する物質は特定されていないため、本発明の効果である、フライ時の酸価上昇及び/又は加熱着色を抑制できる効果を有する精製油脂を特定するため、酸価を指標に用いた。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<分析方法>
各試験における分析は、以下の方法に従って実施した。
(γ―トコトリエノール含有量及び全トコフェロール含有量)
γ−トコトリエノール含有量は、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.4.10−2013 トコフェロール(蛍光検出器−高速液体クロマトグラフ法)」の条件で測定し、γ−トコトリエノール成分の含有量を算出した。また、全トコフェロール含有量は、脱臭油脂中のα-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールを日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.4.10−2013 トコフェロール(蛍光検出器−高速液体クロマトグラフ法)」に準拠して測定し、合計含有量(割合)を算出した。
(酸価)
酸価を、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.3.1−2013 酸価」に準拠して測定した。酸価は、油脂中に含まれる遊離脂肪酸の量を示し、サンプル油1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で表わされる。
(ヨウ素価)
油脂のヨウ素価は、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.3.4.1−2013 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)に準拠して測定した。ヨウ素価の値が大きいほど、二重結合が多い。
(色調)
試験油の色度を、ロビボンド比色計(商品名「Lovibond PFX995」、The Tintometer Limited社製)で、0.5インチセルを使用して、黄の色度(Y値)、赤の色度(R値)を測定した。これらの結果に基づき、「Y+10R」を算出して評価した。Y+10Rの数値が小さい程、色調が淡く、Y+10R数値が大きい程、色調が濃いことを意味する。
<フライ試験>
各試験におけるフライ試験1、フライ試験2は、以下の方法に従って実施した。
(フライ試験1)
各試験油4Lをフライヤーに入れ、8日間(8時間/日)フライ調理を行った。フライ調理は、以下の方法で、イモ天(2日間)、コロッケ(2日間)、から揚げ(4日間)の調理を順に行った。
イモ天: 1時間ごとに、サツマイモを1cmの厚さにスライスした8枚を、バッター(天ぷら粉(商品名「日清おいしい天ぷら粉」、日清フーズ株式会社製):水=1:1.6)をつけ、180℃で3.5分間揚げた。
コロッケ: 1時間ごとに、コロッケ(商品名「ニチレイ衣がサクサクのコロッケ(野菜)」、株式会社ニチレイフーズ製)70gを4個、180℃で4.5分間揚げた。
から揚げ: 1時間ごとに、鶏モモ肉約35gを6個、バッター(から揚げ粉(商品名「から揚げの素No.1」、日本食研株式会社製):水=1:1)をつけ、180℃で4分間揚げた。
(フライ試験2)
各試験油18Lをフライヤーに入れ、フライ調理を行った。フライ調理は、以下の方法で、イモ天を調理し、イモ天をソックスレー抽出法により、イモ天の油分を抽出し、イモ天に含まれる油分割合を算出した。
イモ天: 1時間ごとに、サツマイモを1cmの厚さにスライスした8枚(直径約5.5cm)を、バッター(天ぷら粉(商品名「日清おいしい天ぷら粉」、日清フーズ株式会社製):水=1:1.6)をつけ、180℃で3.5分間揚げた。
<乳化剤>
用いた乳化剤1〜4は、以下の通りである。
乳化剤1:ポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名「THL−15」、坂本薬品工業株式会社製、HLB2.9、構成脂肪酸中の炭素数8〜22の不飽和脂肪酸量26.5質量%)
乳化剤2:デカグリセリンオレイン酸エステル(商品名「リョートーポリグリエステル O−50D」、三菱ケミカルフーズ株式会社製、HLB7)
乳化剤3:デカグリセリンデカオレイン酸エステル(商品名「DAO−7S」阪本薬品工業(HLB3.5)
乳化剤4:ジグリセリンオレイン酸エステル(モノ・ジエステル 商品名「サンソフトQ−17B」、HLB6.5)
<試験1:試験油の調製及び加熱試験>
(油脂1)
菜種脱色油(キャノーラ品種、ヨウ素価113)を、250℃、667Pa、水蒸気量:対油3.0%、80分で脱臭を行い、脱臭油脂1(酸価0.04)を得た。脱臭油脂1にシリコーンオイル(「KF-96ADF-1,000CS」信越化学工業株式会社製)を脱臭油脂1に対して3ppm添加し、油脂1を得た。
(油脂2)
菜種脱色油(キャノーラ品種、ヨウ素価113)を、250℃、467Pa、水蒸気量:対油3.0%、80分で脱臭を行い、脱臭油脂2(酸価0.02)を得た。脱臭油脂2にシリコーンオイル(「KF-96ADF-1,000CS」信越化学工業株式会社製)を脱臭油脂2に対して3ppm添加し、油脂2を得た。
Figure 2021010361
(試験油1、2、1−1〜5、2−1〜5)
油脂1を試験油1とし、油脂2を試験油2とした。さらに、油脂1、及び油脂2に、表2のとおり、乳化剤を油脂に添加し、試験油1−1〜5、2−1〜5を得た。
(加熱試験)
試験油50gをビーカー(IWAKI Pyrex 200mLビーカー)に入れ、185℃で8時間、加熱した。加熱試験前後の、酸価を測定した。結果を表2に示した。なお、ビーカーは新品を洗剤、次いでイオン交換水で十分洗浄したものを用いた。
Figure 2021010361
表2に示されるとおり、試験油2−1〜5は、試験油1及び2と比較して、加熱試験後の酸価上昇が抑制されていた。また、試験油1−1〜5と比較しても、加熱試験後の酸価上昇が抑制されていた。
<試験2:試験油の調製及びフライ試験1>
(試験油1、2、2−6)
試験1で用いた、油脂1を試験油1とし、油脂2を試験油2とした。さらに、油脂2に、表3のとおり、乳化剤を油脂に添加し、試験油2−6得た。
(フライ試験1)
各試験油でフライ試験1を行った。フライ前後の試験油の酸価及び色調を表3に示した。
Figure 2021010361
表3に示されるとおり、試験油2−6は、試験油1、2と比較して、加熱試験後の酸価が抑制されていた。また、加熱着色も抑制されていた。
<試験3:試験油の調製及びフライ試験2>
(試験油1、2、1−5〜7、2−6)
試験1、2で用いた、油脂1を試験油1とし、油脂2を試験油2とした。さらに、油脂1及び油脂2に、表4のとおり、乳化剤を油脂に添加し、試験油1−5〜7、2−6を得た(試験油2−6は、試験2で用いたものと同じ)。
(フライ試験2)
各試験油でフライ試験2を行った。イモ天に含まれる油分割合を算出し、結果を表4に示した。
Figure 2021010361
表4に示されるとおり、試験油1−5、2−7はフライ品への吸油阻害を有しているが、乳化剤量の多い試験油1−7はフライ品への吸油阻害が失われている。なお、試験油1−5、2−7から、加熱調理後の調理対象物に残存する油分を低減できる機能は、油脂の成分によらず、乳化剤により実現されるので、油脂2以外の酸価が0.03以下の精製油でもフライ品への吸油阻害が可能である。
<参考例1:吸着処理油脂の酸価上昇抑制効果及び/又は着色抑制効果>
(精製油の調製1)
精製キャノーラ油(酸価0.04)に、シリカ・マグネシア系製剤(水澤化学工業株式会社製、「ミズカライフ F−2G」:シリカ約55%、マグネシア約32%、水約13%)、二酸化ケイ素(富士フイルム和光純薬株式会社製)、酸化マグネシウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を、精製キャノーラ油に対して1質量%添加し、室温で6時間、撹拌した後にろ過し、各精製油を得た。各精製油の酸価を表5に示した。
Figure 2021010361
表5に示されるとおり、精製油2は精製油3,4と比較して精製油の酸価が低く、精製油3,4は吸着処理を行っていない精製油1と差異がなかった。
(精製油脂の調製2)
キャノーラ脱色油を250℃、60分、4.5torr、水蒸気量 対油3質量%にて脱臭を行い、精製油A(酸価0.04、色調0.3)を得た。
脱臭油Aにシリコーンオイル(「KF-96ADF-1,000CS」信越化学工業株式会社製)を精製油Aに対して3質量ppm添加し、精製油A−1を得た。
精製油Aに、シリカ・マグネシア系製剤(水澤化学工業株式会社製、「ミズカライフ F−2G」:シリカ約55%、マグネシア約32%、水約13%)を精製油Aに対して1質量%添加し、20℃で1時間撹拌し、ろ過を行い、精製油Bを得た。精製油Bにシリコーンオイル(「KF-96ADF-1,000CS」信越化学工業株式会社製)を精製油Bに対して3質量ppm添加し、精製油B−1を得た。
(フライ試験)
各試験油でフライ試験1を行い、フライ試験後の油脂の酸価、色調を表6に示した。
Figure 2021010361
表6に示されるとおり、精製油B−1は精製油A−1と比較して、精製油として、酸価が低く、また、フライ調理後の酸価上昇及び加熱着色が抑制されていることが確認できた。精製油B−1は実施例1で用いた油脂よりも酸価が低いため、実施例1と同様にアルカリ金属を添加することで、実施例1以上の効果が期待できる。
<参考例2:オゾンに接触させる工程の効果>
(精製油O−1の調製)
大豆脱色油(未蒸留油1)1.2kgを脱臭(255℃、533Pa,60分、水蒸気量 油脂に対して2.7%)し、精製油O−1を得た。
(精製油O−2の調製)
大豆脱色油(未蒸留油1)1.5kgに、室温で、オゾン発生器(GL−3188A:Shenzhen Guanglei Electonic Co.,Ltd製、オゾン発生量400mg/h)で発生させたオゾンを、微孔を有するガラス管から0.25分吹き込み、未蒸留油2を得た。
さらに、未蒸留油2 1.2kgを脱臭(255℃、533Pa,60分、水蒸気量 油脂に対して2.7%)し、精製油O−2を得た。
(精製油O−3の調製)
大豆脱色油(未蒸留油1)1.5kgに、室温で、オゾン発生器(GL−3188A:Shenzhen Guanglei Electonic Co.,Ltd製、オゾン発生量400mg/h)で発生させたオゾンを、微孔を有するガラス管から3分吹き込み、未蒸留油3を得た。
さらに、未蒸留油3 1.2kgを脱臭(255℃、533Pa,60分、水蒸気量 油脂に対して2.7%)し、精製油O−3を得た。
(精製油O−4の調製)
大豆脱色油(未蒸留油1)1.5kgに、室温で、オゾン発生器(GL−3188A:Shenzhen Guanglei Electonic Co.,Ltd製、オゾン発生量400mg/h)で発生させたオゾンを、微孔を有するガラス管から15分吹き込み、未蒸留油4を得た。
さらに、未蒸留油4 1.2kgを脱臭(255℃、533Pa,60分、水蒸気量 油脂に対して2.7%)し、精製油O−4を得た。
(曝光試験1)
300mlのエルレンマイヤーフラスコに、蒸留油脂1〜4を各200g入れ、蛍光灯で曝光(1000lux、70時間)させた。曝光臭を評価した。曝光臭は、油脂40gを、100mlのビーカーに入れて、専門パネル15名で120℃に加熱した時の臭いを評価し、平均点を求めた。結果を表7に示した。なお、評価は、蒸留油脂1の曝光品の加熱臭を10点とし、曝光臭を有していない蒸留油脂1の未曝光品を0点として評価した。
Figure 2021010361
※は有意差あり(p<0.01)
表7から、オゾン処理品を行うことで、曝光臭が改善されることが確認された。特に、精製油O−3、4は有意な効果を有することがわかった。本効果は、油脂そのものを処理したことによる効果であり、オゾン処理の後に、油脂の酸価を低減し、アルカリ金属を添加することで、酸価を低減する工程やアルカリ金属に由来する、加熱調理用油脂組成物の加熱調理時の酸価上昇及び/又は着色を抑制できる効果を損なうこともなく、曝光臭を改善できることが期待できる。

Claims (12)

  1. 酸価が0.03以下の精製油脂を加熱調理用油脂組成物中に93質量%以上、アルカリ金属を加熱調理用油脂組成物中に0.02〜5.0質量ppmとなるように、精製油脂に、アルカリ金属と乳化剤、及び/又はアルカリ金属を含有する乳化剤、を添加する工程を含む、
    加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  2. 前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、有機酸モノグリセリド、モノ脂肪酸グリセリドから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  3. 前記乳化剤が、加熱調理用油脂組成物中に0.02〜5.00質量%含有する、請求項1又は2に記載の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  4. 前記乳化剤が、HLB値3.5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、HLB値3以下のショ糖脂肪酸エステル、コハク酸モノオレイン酸グリセリン、クエン酸モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、構成する脂肪酸の47質量%以上が多価不飽和脂肪酸であるモノ脂肪酸グリセリド、から選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  5. 前記精製油脂が、以下の吸着処理油脂、脱臭油脂A、脱臭油脂B、脱臭油脂Cから選ばれる1種以上を含有する精製油脂である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理用油脂組成物。
    吸着処理油脂:脱臭工程を経た油脂を、液体状態かつ80℃未満でシリカ・マグネシア系製剤と接触させる吸着工程を経た吸着処理油脂
    脱臭油脂A:脱臭油脂中のγ−トコトリエノール含有量が250質量ppm以下、酸価が0.03以下となるように脱臭工程を行った、パーム系脱臭油脂の再脱臭油脂
    脱臭油脂B:脱臭油脂中の全トコフェロール含有量が900質量ppm以下、酸価が0.03以下となるように脱臭工程を行った、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油から選ばれる1種以上である、脱臭油脂
    脱臭油脂C:脱臭油脂中の全トコフェロール含有量が550質量ppm以下、酸価が0.03以下となるように脱臭工程を行った、菜種脱臭油脂
  6. 前記精製油脂の酸価が0.00〜0.01である、請求項5に記載の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  7. 前記精製油脂が、脱臭工程の前に、油脂をオゾンに接触させる工程を経た精製油脂である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  8. さらに、シリコーンオイルを加熱調理用油脂組成物中に0.5〜10質量ppmとなるように、添加する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  9. 加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属が0.02〜5質量ppmであり、酸価が0.03以下である精製油脂を93質量%以上含有する、加熱調理用油脂組成物。
  10. さらに、シリコーンオイルを加熱調理用油脂組成物中に0.5〜10質量ppm含有する、請求項9に記載の加熱調理用油脂組成物。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法を経た、9又は10に記載の加熱調理用油脂組成物。
  12. 加熱調理用油脂組成物が、加熱調理後の加熱調理時の酸価上昇抑制及び/又は着色抑制制するものであることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の加熱調理用油脂組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022270388A1 (ja) * 2021-06-25 2022-12-29 株式会社J-オイルミルズ 食用油脂組成物の再生方法

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