JP6746212B2 - 加熱調理用油脂組成物の製造方法、加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法、加熱調理用油脂組成物、及びトコフェロール高含有油脂組成物 - Google Patents

加熱調理用油脂組成物の製造方法、加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法、加熱調理用油脂組成物、及びトコフェロール高含有油脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、加熱調理用油脂組成物の製造方法、加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法、加熱調理用油脂組成物、及びトコフェロール高含有油脂組成物に関する。
スーパー、飲食店、レストラン等で使用される業務用の加熱調理用油脂は、長時間にわたって大量のフライ調理品を高温で加熱調理するのに使用されることが多いため、劣化が早く進行し、フライ調理品の風味や外観にも悪影響を及ぼす。このため、短期間で廃棄・交換しなければならないが、経済面、環境面でも負担が大きいため、加熱調理用油脂の劣化抑制技術が必要とされている。
加熱調理用油脂の加熱による劣化の指標の一つとして、油脂の加水分解や酸化などによって生成した遊離脂肪酸量を間接的に示す「酸価」が挙げられ、例えば、下記特許文献1では、ナトリウム、カリウムから選ばれる1以上の成分を油脂中に0.1〜1μmol/g含有させることによって、加熱による油脂の酸価上昇を抑制する技術が開示されている。また、特許文献2では、トコフェロールとリン脂質を共存させることで、加熱による油脂の酸価上昇を抑制する技術が開示されている。なお、加熱調理用油脂の加熱による劣化の指標としては、酸価以外に、色、重合物等があげられるが、酸価上昇を抑制しても着色や重合物の増加を抑えることができるわけではない。
また、トコフェロールは、栄養成分としても有用で、トコフェロールを添加、あるいは高含有している食用油脂が販売されている。しかし、これらの食用油脂を加熱調理に用いると、トコフェロールが減少するとの問題がある。
特許第4798310号公報 再公表2010−109737号公報
加熱調理用油脂において、さらに加熱調理に長期間使用することが求められており、より優れた酸価上昇抑制効果が求められている。また、栄養機能を訴求した食用油においては、加熱調理により、トコフェロールがより多く残存する食用油脂が求められている。
そこで、本発明は、加熱による酸価上昇を抑制することができる加熱調理用油脂組成物、加熱調理用油脂組成の製造方法、及び加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法、ならびに加熱を受けても酸価上昇を抑制でき、さらにトコフェロールがより多く残存するトコフェロール高含有油脂組成物を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を達成するために、下記の[1]〜[7]を提供する。上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
[1]油脂に、アルカリ金属と、トコフェロールとを添加し、前記アルカリ金属の添加量が0.〜5.0質量ppmであり、前記トコフェロールの添加量が200〜2000質量ppmであり、加熱調理用油脂組成物中のトコフェロール含有量が1100〜2800質量ppmであることを特徴とする、加熱調理用油脂組成物の製造方法。
[2]前記アルカリ金属が脂肪酸ナトリウムとして添加されるものである、[1]の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
[3]前記アルカリ金属が、乳化剤中に含まれる成分である、[1]又は[2]の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
[4]加熱調理用油脂に、アルカリ金属と、トコフェロールとを添加し、前記アルカリ金属の添加量が0.〜5.0質量ppmであり、前記トコフェロールの添加量が200〜2000質量ppmであり、添加後のトコフェロール含有量が1100〜2800質量ppm以上であることを特徴とする、加熱調理用油脂の加熱後のトコフェロールを残存させる方法。
[5]前記アルカリ金属が脂肪酸ナトリウムである、[4]の加熱調理用油脂の加熱後のトコフェロールを残存させる方法。
[6]アルカリ金属と、トコフェロールとを含有し、前記アルカリ金属の油脂組成物中の含有量が3.0〜5.0質量ppmであり、前記トコフェロールの油脂組成物中の含有量が1100〜2800質量ppmであることを特徴とする、加熱調理用油脂組成物。
[7] 油脂と、アルカリ金属と、トコフェロールとを含有し、前記アルカリ金属の油脂組成物中の含有量が0.〜5.0質量ppmであり、前記トコフェロールの油脂組成物中の含有量が1200〜2800質量ppmであり、前記油脂が大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、グレープシード油、落花生油、ヤシ油、パーム油、パーム核油から選ばれる油脂を単独あるいは組み合わせた油脂であることを特徴とする、トコフェロール高含有油脂組成物。
本発明によれば、加熱による酸価上昇を抑制することができる加熱調理用油脂組成物及び加熱調理用油脂組成物の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制することができる。さらに、加熱を受けても酸価上昇を抑制でき、さらにトコフェロールがより多く残存するトコフェロール高含有油脂組成物を提供することができる。
ナトリウム(0.2ppm)の有無とトコフェロール添加効果による加熱後のトコフェロール量
本発明者らは、油脂にアルカリ金属と、高濃度のトコフェロールとを含有させることによって、業務用のフライ調理用油脂のような高温且つ長時間の過酷な使用条件下においても、加熱による着色を抑制できることを見出した。また、高濃度のトコフェロールを含有する油脂にアルカリ金属を含有させることで、加熱によるトコフェロールの減少を抑えることができることを見出した。この知見に基づき、本発明の加熱調理用油脂組成物及びその製造方法、加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法、トコフェロール高含有油脂組成物を完成するに至った。
以下に、本発明の加熱調理用油脂組成物の製造方法、加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法、加熱調理用油脂組成物、及びトコフェロール高含有油脂組成物を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)〜B(数値)は、A以上B以下を意味する。
<加熱調理用油脂組成物の製造方法>
本発明の製造方法では、油脂に、アルカリ金属とトコフェロールとを、加熱調理用油脂組成物中の、前記アルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmとなるように添加する工程と、加熱調理用油脂組成物中のトコフェロール含有量が200〜2000質量ppm増加するようにトコフェロールを添加する工程を含む。
(油脂)
本発明の加熱調理用油脂組成物は、通常の油脂を主成分として含む。通常の油脂は、動植物油脂及びその水素添加油、分別油、エステル交換油などを単独あるいは組み合わせて用いることができる。動植物油脂としては、例えば、大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、グレープシード油、落花生油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などが挙げられる。室温で固形化するものは、使用時に加熱により溶解させる必要があるので、20℃で液状の態様のものが好ましい。原料油脂そのものが20℃で固体であっても、他の原料油脂と併用して用いることによって、油脂全体として液状であれば好適に使用できる。特に、融点の低い液状油でありながら、酸化安定性も良好であるという利点を有することから、なたね油、なたね油と大豆油との混合物などを好適に使用することができる。
本願で用いられる動植物油脂は、一般の油脂と同様、植物の種子若しくは果実、または動物性材料から搾油された粗油、あるいは分別した油脂、水素添加した反応油脂、エステル交換した反応油脂を出発原料として用い、順に、必要に応じて、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程を経て、さらに必要に応じて脱ろう工程を介した後、脱臭工程を経た精製により製造することができる。上記脱ガム工程、脱酸工程、および脱ろう工程は、採油される前の油糧原料に応じて変動し得る粗油の品質に応じて適宜選択される。
本発明の加熱調理用油脂組成物において、上記の加熱調理用油脂組成物は、アルカリ金属および必要に応じて添加される他の添加剤を除く残部を構成するのが好ましい。
(アルカリ金属の添加)
本発明の加熱調理用油脂組成物の製造方法は、加熱調理用油脂組成物中のアルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmとなるように添加する工程を含む。アルカリ金属としては、特に限定されないが、ナトリウム及びカリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ナトリウムがより好ましい。アルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmであれば、加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制することができる。なお、また、アルカリ金属の含有量は、0.1〜4.0質量ppmであるのが好ましく、0.2〜3.5質量ppmであることがより好ましく、1.0〜3.5質量ppmであるのがさらに好ましい。アルカリ金属の含有量は、上記アルカリ金属を含有する成分を加熱調理用油脂組成物に含有させた状態で、原子吸光光度法によって定量することができる。
これらアルカリ金属は、アルカリ金属を含有する成分として添加することができる。アルカリ金属を含有する成分としては、食品添加物として使用可能な水溶性又は油溶性の塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などを用いることができる。ナトリウム塩およびカリウム塩としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、カゼインナトリウム、DL−酒石酸ナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウムなどが挙げられる。より好ましくは、オレイン酸ナトリウムなどの脂肪酸ナトリウムである。これらを水溶液で油脂に添加する。水溶液の場合は、油脂に分散させて必要に応じて、加熱・減圧等により水を除去する。
また、脂肪酸のナトリウム石鹸あるいはカリウム石鹸を直接、あるいはナトリウム石鹸を含有する脱酸油や、アルカリ金属を含有する乳化剤等を用いることができる。アルカリ金属を含有する乳化剤は、金属塩を乳化剤中に溶解あるいは分散させるか、アルカリ触媒を用いて製造した乳化剤を用いることができる。アルカリ触媒を用いて製造した乳化剤としては、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが利用できる。乳化剤中のアルカリ金属の濃度は、10〜50000質量ppmであることが好ましい。より好ましくは、500〜2000質量ppmであり、より好ましくは600〜1000質量ppmである。
(トコフェロールの添加)
本発明の加熱調理用油脂組成物の製造方法は、前述のアルカリ金属を添加する工程に加えて、加熱調理用油脂組成物中のトコフェロール量が200〜2000質量ppm増加するようにトコフェロールを添加する工程を含む。トコフェロールの添加により、アルカリ金属の酸価抑制効果が相乗的に高まる。本発明において、トコフェロールは、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ―トコフェロールの4種類のトコフェロールを意味するものであり、本発明のトコフェロール量は、前述の4種類のトコフェロールの合計量である。これらのトコフェロールは、通常の植物油に含有されているが、精製工程を経ていく中で油脂中のトコフェロール類が除去されてしまう。すなわち、活性白土等の吸着剤を用いる脱色工程において、着色成分や脱酸工程後の残留物、各種金属塩等とともに吸着によって除去される。続いてその後の脱臭工程においては、有臭成分や脂肪酸、不けん化物等の揮発性成分とともに残留するかなりのトコフェロール類が除去される。したがって、通常、精製された油脂にはトコフェロール類が微量含まれており、本発明では、トコフェロールを200〜2000質量ppm添加することで、油脂組成物中に600〜2800質量ppm程度のトコフェロールを含有することができる。なお、油脂組成物中のトコフェロール量が1100質量ppm以上であると、加熱によるトコフェロールの残存量が高まる。トコフェロールの添加量は、より好ましくは700質量ppm以上であり、800〜2000質量ppmがさらに好ましく、800〜1500ppmが最も好ましい。
(その他の成分の添加)
本発明の製造方法は、本発明の効果を損ねない程度に、必要に応じて、他の添加剤を添加する工程も含んでいてもよい。他の添加剤の添加工程は、油脂の精製工程後であるのが望ましく、その添加時の油脂温度等の条件は、添加剤の種類、目的によって適宜変更されるのが望ましい。
他の添加剤としては、例えば、一般的な油脂に用いられる成分(食品添加物など)である。これらの成分としては、例えば、酸化防止剤、脂肪酸モノグリセリド以外の他の乳化剤、シリコーンオイル、結晶調整剤、食感改良剤等が挙げられ、脱臭後から充填前に添加されることが好ましい。また、リン脂質等の加熱により着色を引き起こす成分は、着色しない範囲で添加することが好ましく、例えば、リン脂質は0.01質量%未満の添加量、あるいは含有量であることが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、アスコルビン酸類、フラボン誘導体、コウジ酸、没食子酸誘導体、カテキンおよびそのエステル、フキ酸、ゴシポール、セサモール、テルペン類等が挙げられる。脂肪酸モノグリセリド以外の他の乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレート、ジアシルグリセロール、ワックス類、ステロールエステル類、リン脂質等から適宜選択される。
シリコーンオイルとしては、食品用途で市販されているものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン構造を持ち、動粘度が25℃で800〜5000mm/sのものが挙げられる。シリコーンオイルの動粘度は、特に800〜2000mm/s、さらに900〜1100mm/sであることが好ましい。ここで、「動粘度」とは、JIS K 2283(2000)に準拠して測定される値を指すものとする。シリコーンオイルは、シリコーンオイル以外に微粒子シリカを含んでいてもよい。
<加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法>
本発明の加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制する方法は、加熱調理用油脂に、アルカリ金属と、トコフェロールを、前記アルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmとなるように添加する工程と、加熱調理用油脂組成物中のトコフェロール量が200〜2000質量ppm増加するようにトコフェロールを添加することを含む。加熱調理用油脂としては、上述した通常の油脂を使用することができる。なお、加熱調理を行っていない油脂だけでなく、加熱調理を行った油脂を用いてもよい。アルカリ金属を含有する成分、およびアルカリ金属、トコフェロールは、それぞれ上述する通りである。なお、アルカリ金属としては、特に限定されないが、ナトリウム及びカリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ナトリウムがより好ましい。アルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmであれば、加熱調理用油脂の加熱による劣化を抑制することができる。また、アルカリ金属の含有量は、0.1〜4.0質量ppmであるのが好ましく、0.2〜3.5質量ppmであることがより好ましく、1.0〜3.5質量ppmであるのがさらに好ましい。本発明では、トコフェロールを200〜2000質量ppm添加することで、油脂組成物中に600〜2800質量ppm程度のトコフェロールを含有させることができる。なお、油脂組成物中のトコフェロール量が1100質量ppm以上であると、加熱によるトコフェロールの残存量が高まる。トコフェロールの添加量は、より好ましくは700質量ppm以上であり、800〜2000質量ppmがさらに好ましく、800〜1500ppmが最も好ましい。
<加熱調理用油脂組成物及びトコフェロール高含有油脂組成物>
本発明の加熱調理用油脂組成物は、アルカリ金属と、トコフェロールとを含有し、前記アルカリ金属の油脂組成物中の含有量が0.1〜5.0質量ppmであり、前記トコフェロールの油脂組成物中の含有量が900〜28000質量ppmであることを含む。加熱調理用油脂に含まれる油脂としては、加熱調理用油脂組成物の製造方法で記載した通常の油脂を使用することができる。アルカリ金属を含有する成分、およびアルカリ金属は、それぞれ上述した通りである。なお、アルカリ金属としては、特に限定されないが、ナトリウム及びカリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ナトリウムがより好ましい。アルカリ金属の含有量が0.1〜5.0質量ppmであれば、加熱調理用油脂組成物の加熱による劣化を抑制することができる。また、また、アルカリ金属の含有量は、0.1〜4.0質量ppmであるのが好ましく、0.2〜3.5質量ppmであることがより好ましく、1.0〜3.5質量ppmであるのがさらに好ましい。油脂組成物中のトコフェロール量が800〜2800質量ppmであると加熱による劣化を抑えることができる。さらに、1100質量ppm以上であると、加熱によるトコフェロールの残存量が高まり、トコフェロール高含有油脂組成物としてより好ましく、1200質量ppmがさらに好ましく、1600〜2300質量ppmが最も好ましい。
加熱調理用油脂組成物中の油脂量としては、95質量%以上が好ましく、98質量%以上が好ましい。油脂、アルカリ金属、トコフェロール以外の成分として、本発明の加熱調理用油脂組成物中には、本発明の効果を損ねない程度に、加熱調理用油脂組成物の製造方法で記載したその他の成分を加えることができる。
<加熱調理用油脂組成物及びトコフェロール高含有油脂組成物の用途>
本発明の加熱調理用油脂組成物及びトコフェロール高含有油脂組成物は、あらゆる加熱調理用途に用いることができるが、加熱による着色を抑制することができ、加熱による劣化を効果的に抑制できるため、フライ用であること、すなわち、フライ用油脂として使用することが好ましい。フライ用油脂は、他の加熱調理用途よりも高温且つ長時間の加熱や反復使用等の過酷な条件下で使用されることが多く、加熱による劣化の抑制が特に必要とされるからである。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
下記表1に示す配合で、実施例および比較例のサンプル油を調製し、加熱試験を行った後、酸価、重合物、トコフェロールの量について評価を行った。サンプル油の調製の手順、加熱試験の手順、評価方法、結果を具体的に下記に示す。
<サンプル油の調製>
油脂(日清キャノーラ油:日清オイリオグループ(株)製)、脂肪酸ナトリウムを約1000ppm含むグリセリン脂肪酸エステル、トコフェロール(ミックストコフェロール:トコフェロール純度97.8% αトコフェロール8.4%、β−トコフェロール1.6%、δ−トコフェロール66.1%、δ−トコフェロール23.8%)を表1になるように配合した。また、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム)含有量は、原子吸光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製Z2310)によって、測定した。
<加熱試験>
試験管に、調製したサンプル油を入れた。サンプル油を入れた試験管をオイルバス(185℃)に入れ、16時間後の酸価、重合物、トコフェロール量を測定し、結果を表1に示した。
<酸価>
加熱したサンプル油の酸価を、基準油脂分析試験法「2.3.1−2013 酸価」(日本油脂化学会制定)に従って測定した。酸価は、油脂中に含まれる遊離脂肪酸の量を示すもので、サンプル油1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で表わす。酸価の数値が小さいほど、遊離脂肪酸量が少なく、酸価の上昇が抑制されていることを意味する。
<重合物>
加熱したサンプル油に含まれる重合物の量を、基準油脂分析試験法「2.5.7−2013 油脂重合物(ゲル浸透クロマトグラフ法)」(日本油脂化学会制定)に従って測定した。数値が小さい程、重合物の生成が抑制されていることを意味する。
<トコフェロール>
加熱したサンプル油に含まれるトコフェロールの量を、日本油化学協会編「基準油脂分析試験法 2.4.10−2003 トコフェロール(蛍光検出器−高速液体クロマトグラフ法)」に準拠して、油中の総トコフェロール量(α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールの合計量)を測定した。
Figure 0006746212
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実験例1−4〜8は、実験例1−1〜3に比べて、加熱後の酸価、重合物が低減されている。また、実験例2−8,10,12、13は、ナトリウムを含まない実験例2−7,9,11に比べて、加熱後のトコフェロール量が多く、残存率が高いことがわかる。なお、通常、家庭内での使用では170〜185℃で2〜4時間程度の加熱と考えられるので、トコフェロールの残存率はもっと高いと想定される。
本発明の加熱調理用油脂組成物は、食品製造の分野において、特にフライ調理品の製造に使用するフライ用油脂として利用することが可能である。また、その他の加熱調理用油脂を要する全ての食品の製造においても利用可能である。

Claims (7)

  1. 油脂に、アルカリ金属と、トコフェロールとを添加し、
    前記アルカリ金属の添加量が0.〜5.0質量ppmであり、
    前記トコフェロールの添加量が200〜2000質量ppmであり、
    加熱調理用油脂組成物中のトコフェロール含有量が1100〜2800質量ppmであることを特徴とする、加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  2. 前記アルカリ金属が脂肪酸ナトリウムとして添加されるものである、請求項1に記載の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  3. 前記アルカリ金属が、乳化剤中に含まれる成分である、請求項1又は2に記載の加熱調理用油脂組成物の製造方法。
  4. 加熱調理用油脂に、アルカリ金属と、トコフェロールとを添加し、
    前記アルカリ金属の添加量が0.〜5.0質量ppmであり、
    前記トコフェロールの添加量が200〜2000質量ppmであり、
    添加後のトコフェロール含有量が1100〜2800質量ppm以上であることを特徴とする、加熱調理用油脂の加熱後のトコフェロールを残存させる方法。
  5. 前記アルカリ金属が脂肪酸ナトリウムである、請求項4に記載の加熱調理用油脂の加熱後のトコフェロールを残存させる方法。
  6. アルカリ金属と、トコフェロールとを含有し、
    前記アルカリ金属の油脂組成物中の含有量が3.0〜5.0質量ppmであり、
    前記トコフェロールの油脂組成物中の含有量が1100〜2800質量ppmであることを特徴とする、加熱調理用油脂組成物。
  7. 油脂と、アルカリ金属と、トコフェロールとを含有し、
    前記アルカリ金属の油脂組成物中の含有量が0.〜5.0質量ppmであり、
    前記トコフェロールの油脂組成物中の含有量が1100〜2800質量ppmであり、
    前記油脂が大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、グレープシード油、落花生油、ヤシ油、パーム油、パーム核油から選ばれる油脂を単独あるいは組み合わせた油脂であることを特徴とする、トコフェロール高含有油脂組成物。
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