JP6216599B2 - 食用油脂の製造方法および食用油脂 - Google Patents

食用油脂の製造方法および食用油脂 Download PDF

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本発明は食用油脂の製造方法およびこの製造方法により得られるフライ安定性に優れた食用油脂に関する。
食用油脂、特に食品の調理に用いられるフライ油は、調理時の加熱劣化に伴い、蟹泡といわれる持続性の泡立ちの生成、着色、発煙などの不都合な現象が起こり、これらの発生が経験的に使用限界の目安とされてきた。近年、外食・中食市場の拡大や、消費者の健康志向の高まりに伴い、揚げ物に対しても品質の向上が求められ、フライ油についてもより厳密な管理が求められている。
例えば、外食・中食市場で用いられる業務用フライ油の使用基準として、フライ加熱中に油脂が加水分解して生成する遊離脂肪酸に比例した値である「酸価」でフライ油を管理することが一般化されている。従って、フライ安定性に優れた(持ちの良い)フライ油とは、酸価の上昇が抑制されるフライ油として認識されている。
食用油脂は図7に示す方法で製造されている。図7は従来の製造工程図である。油脂原料Aが圧搾工程1や抽出工程2を経て粗油Bとなり、この粗油Bが脱ガム工程3、脱酸工程4、脱色工程5、脱臭工程6を経て精製されて製品C’となる。それぞれの工程では廃棄物が発生する。例えば、脱酸工程における脱酸油さい(アルカリフーツ)、脱色工程における脱色油さい(廃白土)、脱臭工程における脱臭留出物(脱臭スカム)などの廃棄物が発生する。特に、この脱臭留出物Dは特有の臭気を有するため、廃棄物となるか、飼料に配合ための原料となるか、あるいはビタミンEが多く含むことから精製工程を経てビタミンE剤として利用する以外に用途がなかった。
多価不飽和脂肪酸量に対する1価不飽和脂肪酸量の重量比が2.0以上、かつヨウ素価50〜110となる原料油脂を、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭の精製を行なうことで得られる油脂であって、精製後の油脂は、酸価0.03以下、γ−トコフェロール含量300ppm以上であるフライ安定性のよい油脂が知られている(特許文献1)。
しかし、このフライ安定性のよい油脂は、原料油脂を選定しなければならないこと、精製度を上げることにより酸価を0.03以下にしなければならないこと、また、原料油脂にγ−トコフェロール含量が少ない場合は後発的に食品添加物であるγ−トコフェロール製剤を添加しなければならないこと等の製造上の制約がある。さらに、多量に生成する脱臭留出物を処理しなければならないという問題があった。
ナトリウム、カリウム等を油脂中に0.1〜1μmol/g含有させることで、加熱による酸価の上昇を抑制できる加熱調理用油脂が知られている(特許文献2)。
また、油脂に、構成脂肪酸中の炭素数16〜18の不飽和脂肪酸の割合が75〜95質量%、けん化価が100〜160および水酸基価が120〜180であるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)を油脂に対して0.01〜2質量%含み、さらに構成脂肪酸中の炭素数16〜18の不飽和脂肪酸の割合が51〜90質量%、けん化価が160〜220および水酸基価が5〜100であるポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を油脂に対して0.001〜0.5質量%含む加熱調理用油脂組成物が知られている(特許文献3)。
特定量のリン脂質を含有しつつ、さらにトコフェロール類中にδ−トコフェロールを特定量で含有する、加熱調理における加水分解安定性を高め、従来より長時間加熱調理を行なうことができる加熱調理用油脂が知られている(特許文献4)。
しかし、上記加熱調理用油脂は、いずれも食品添加物となる添加剤成分を添加することにより、調理用油脂の安定性を向上させている。
特許第4392770号 WO2011/121865号 特開2012−157286号 WO2010/109737号
本発明は、食品添加物となる添加剤成分を添加することなく、フライ加熱時におけるフライ油の経時的な酸価の上昇および蟹泡の生成、並びに酸化に伴う熱分解で生成する極性化合物の増加を抑制できるフライ安定性の良好な食用油脂の製造方法、およびこの製造方法により得られる食用油脂の提供を目的とする。
本発明は脱臭工程を経て製造される食用油脂の製造方法であって、上記脱臭工程において留出する脱臭留出物を、上記脱臭工程前の粗油に戻すことを特徴とする。
特に、上記脱臭留出物は同品種原料由来の粗油から留出する脱臭留出物であることを特徴とする。
また、上記脱臭工程前の粗油は、脱ガム工程、脱酸工程および脱色工程の少なくとも1つの工程前後の粗油であることを特徴とする。
圧搾工程および抽出工程の少なくとも1つの工程を経て製造される原料粗油を、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱臭工程を順に経て製造される食用油脂の製造方法において、上記脱臭留出物が上記脱酸工程前に戻されることを特徴とする。
本発明の食用油脂は、上記製造方法で製造されるフライ安定性の良好な食用油脂であることを特徴とする。特に、同品種原料由来のビタミンEが1,000〜2,000ppm含有する食用油脂であることを特徴とする。
本発明の食用油脂の製造方法は、脱臭工程において留出する脱臭留出物を、上記脱臭工程前の粗油に戻すので、食品添加物となる添加剤成分を新たに製造工程中の油脂または製品に添加することなく、経時的な酸価の上昇および蟹泡の生成、並びに酸化に伴う熱分解で生成する極性化合物の増加を抑制できるフライ安定性に優れた食用油脂を製造できる。
本発明の食用油脂の製造工程図である。 実施例1および比較例1のフライ安定性試験結果を示す図である。 実施例2および比較例2のフライ安定性試験結果を示す図である。 実施例3および比較例3のフライ安定性試験結果を示す図である。 実施例4および比較例4のフライ安定性試験結果を示す図である。 実施例5および比較例5のフライ安定性試験結果を示す図である。 従来の食用油脂製造工程図である。
上述したように、食用油脂は、原料粗油を、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱臭工程の各工程を経て精製される。この食用油脂の製造方法において、脱臭工程において発生する脱臭留出物(脱臭スカム)を精製することなく、原料粗油の精製初期段階に戻すことにより、経時的な酸価の上昇を抑制できる食用油脂が得られた。本発明はこのような知見に基づくものである。
本発明の食用油脂の製造工程図を図1に示す。
粗油Bが採油される前の原料Aとしては、例えば、アマニ、エゴマ、シソ、カポック、コプラ、ゴマ、コメ糠、サフラワー、シアナット、大豆、茶、トウモロコシ、菜種、ニガー、ババス、パーム、パーム核、ヤシ、ヒマワリ、綿実、落花生、ぶどう、小麦、オリーブ、アボガド等が挙げられる。
原料Aを、圧搾工程1、抽出工程2、または、圧搾工程1および抽出工程2を併用することにより、粗油Bが製造できる。圧搾工程1または抽出工程2の条件は、原料Aの種類および状態により適宜変更できる。例えば原料Aが菜種の場合は圧搾工程1と抽出工程2との併用、同じく大豆の場合は抽出工程2が主な工程となる。粗油Bには、レシチン、色素類、ろう成分、有臭成分等が含まれている。
上記原料Aから得られる粗油Bとしては、例えば、サフラワー油、ぶどう油、大豆油、ひまわり油、小麦はい芽油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、菜種油、米油、落花生油、フラックス油、エゴマ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油(パームオレイン、パームステアリン、パームスーパーオレイン、パームミッドフラクション等の食用分別油を含む)、これらの水素添加油、エステル交換油等のほか、中鎖脂肪酸トリグリセリドのような直接エステル化反応により製造された食用油が挙げられる。
脱ガム工程3は、水または水蒸気、酸などを添加して粗油B中のレシチンを含むガム質を水和分離させる工程である。なお、粗油の種類に応じて、脱ガム工程3後に粗油を緩やかに冷却撹拌して粗油中のロウ分や高融点油脂を濾過分離させる脱ろう工程を設けることができる。
脱酸工程4は、脱ガムまたは脱ロウ後の粗油中の遊離脂肪酸をアルカリ水溶液を添加して中和し、生じた脱酸油さい(アルカリフーツ)を除去する工程である。
脱色工程5は、活性白土を添加して脱酸粗油中の色素成分およびその他の微量な夾雑物を吸着し、脱色油さい(廃白土)を除去する工程である。
脱臭工程6は、高温(200℃以上)および高真空下で水蒸気蒸留することにより脱色粗油中の脱臭留出物D(脱臭スカム)を除去する工程である。
脱臭留出物Dは、ビタミンE、植物ステロール、スクアレンなどの炭化水素類を含み、その組成は粗油Bの種類により異なる。本発明においては、この脱臭留出物Dを廃棄することなく、また精製することなく、脱臭工程6以前の粗油に戻す。脱臭留出物Dは同品種原料由来の粗油に戻すことが好ましい。より好ましくは同一製造ロットの粗油に戻す。同一製造ロットの粗油に戻すことにより、食品添加物を添加することなく、粗油B自身のビタミンEの含有量を高めた食用油脂となる。
脱臭留出物Dを粗油に戻す方法として、(1)図1に示す工程により、予め脱臭留出物Dを採取しておき、この脱臭留出物Dを同品種原料由来の粗油に戻す方法、(2)図1に示す工程により採取された脱臭留出物Dを同品種原料由来の粗油に戻すことを繰り返すリサイクル方法が挙げられる。上記(1)の方法では製品Cに含まれるビタミンE濃度を増量させることができる。また、上記(2)の方法では製品Cに含まれるビタミンE濃度は粗油Bに含まれる量と略同量となるが、脱臭工程でビタミンEが除去されていた従来の製造方法に比較して、ビタミンE濃度を高くすることができる。
脱臭留出物Dを粗油に戻す割合は、ビタミンE濃度を増量させる場合(上記(1)の方法)、最終製品C中に含まれるビタミンE濃度が1,000〜2,000ppm、好ましくは1,200〜2,000ppm、より好ましくは1,500〜2,000ppmとなるように戻すことである。後述するフライテストにおいて、1,000ppm未満では酸価が上昇しやすくなり、2,000ppmを超えると色相が濃くなりやすくなる。
脱臭留出物Dを粗油に戻すのは、図1において脱臭留出物Dからの実線矢印または破線矢印で示すように、脱臭工程6以前の粗油であればよい。実線矢印で示すように、好ましくは脱酸工程4前に脱臭留出物Dを戻す。脱酸工程4前に戻すことにより、脱臭留出物D特有の臭いが残存することなく、風味に優れ、色相が薄い最終製品Cを製造することができる。
予め脱臭留出物Dを採取する場合、粗油Bから得られる最初の脱臭留出物Dは、脱臭工程6において比較的高温、好ましくは250℃未満220℃以上の温度で脱臭操作を行なうことにより、多量の脱臭留出物を得ることができる。250℃では脱臭留出物D中にトランス脂肪酸生成の可能性が高くなり、220℃未満では脱臭留出物Dの生成量が少なくなる。このときの脱臭された最終製品は、本発明の食用油脂とは異なり、脱臭留出物Dが含まれていない高度に精製された食用油脂として利用できる。
得られた脱臭留出物Dが戻された粗油の脱臭工程6は最初の脱臭留出物Dを得るときの温度よりも低い温度、好ましくは230℃以下200℃以上の温度で脱臭する。低い温度で脱臭することによりビタミンEや植物ステロールなどの含量を高めた製品Cが得られる。また、循環器系疾患のリスクを増大させるトランス脂肪酸の生成を抑えることができる。
脱臭留出物Dを脱酸工程4前に戻して食用油脂を製造したときの各製造工程後の食用油脂の特性を表1に示す。各特性値は後述する実施例に記載の方法で測定した。ビタミンEは内部標準物質を使用した高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。また、TFAはトランス脂肪酸を表し、内部標準物質を使用したガスクロマトグラフィー法により測定した。
粗油Bとして菜種を原料とする粗油を用い、最初の脱臭工程6において温度240℃、高真空(5Torr以下)で脱臭操作を行ない、脱臭留出物Dを得た。この脱臭留出物には、α−トコフェロールが1.565重量%、γ−トコフェロールが3.824重量%、δ−トコフェロールが0.373重量%、ビタミンEとして合計5.762重量%含まれていた。
脱ガム工程を経た後の菜種粗油に、混合物全体として、上記菜種油脱臭留出物(スカム)を2.2重量%となるように添加してスカム添加脱ガム油を得た。続いて、脱酸工程、脱色工程、脱臭工程を順に経て菜種油脂の製品Cを製造した。このときの脱臭工程における脱臭温度は225℃、高真空(5Torr以下)で行なった。
色相の測定はロビボンド比色計で行い、脱ガム油は1インチセル、脱色油および脱臭油は5 1/4インチセルを用いた。
表1に示すように、脱臭留出物を脱酸工程前に戻して得られた菜種油脂は、ビタミンEが1,604ppmと高濃度に含まれていた。さらに脱ガム工程後の粗油に比較して、色相、酸価に優れていた。
本発明の食用油脂は、フライ調理、炒め調理、焼き調理等のように、通常140〜240℃程度の使用温度におかれる加熱処理に適している。また、特に、酸価を上昇させないこと、フライ時における泡立ち発生の低減効果を充分に発揮させる観点から、食用油脂は、通常160〜200℃程度の使用温度におかれるフライ調理に適したフライ用油脂として使用されるのが好ましい。特に酸価が劣化の指標として評価される業務用フライ用油脂として使用されるのが好ましい。
脱臭留出物の分取
菜種を圧搾および抽出して得られた粗油に対して常法に従い、脱ガム処理を行なった。この脱ガム後の菜種粗油に、アルカリ濃度16.6%の苛性ソーダ水溶液を酸価の測定値より得られた遊離脂肪酸量に応じて添加し、60℃にて30分間反応させて、粗油中の遊離脂肪酸を脱酸油さい(アルカリフーツ)として除去した。脱酸工程後の粗油100重量部に対して1.2重量部の割合で活性白土を添加して、103℃にて60分間、真空度40Torrで反応させて脱色後、温度240℃、69分間、高真空(5torr以下)、吹き込み蒸気量1.67%で脱臭して、脱臭留出物を得た。この脱臭留出物には、ビタミンEが5.762重量%、植物ステロールが19.25重量%含まれていた。
実施例1
脱臭留出物の分取と同様にして、菜種を圧搾および抽出して得られた粗油に対して常法に従い、脱ガム処理を行なった。この脱ガム後の菜種粗油に、混合物全体として、予め上記菜種粗油から分取しておいた上記未精製の菜種油脱臭留出物を2.2重量%となるように添加した。続いて、上記脱臭留出物の分取と同様にして、脱酸工程、脱色工程および脱臭工程を経て食用油脂を製造した。なお、脱臭工程は、温度225℃、78分間、高真空(5torr以下)、吹き込み蒸気量2.07%で実施した。得られた食用油脂としての菜種油にシリコーン系消泡剤を比較例1の食用油脂と略同量(4ppm)添加して実施例1の食用油脂を製造した。実施例1の食用油脂には、ビタミンEが1,639ppm含まれていた。
得られた食用油脂を用いて揚げ物を実施し、フライ安定性を以下の方法で評価した。結果を表2および図2に示す。なお、泡立ちの程度、揚物の状態は最初のフライ実施後の写真である。
[水分]
カールフィッシャー法(基準油脂分析試験法 2.1.3.4−1996)により測定した。
[色相]
ロビボンド比色計(ロビボンド比色計F型計測器、ロビボンド社製)を使用して測定した(基準油脂分析試験法 2.2.1.1−1996)。Yは黄色、Rは赤、Bは青を表し、数値が大きいほど、着色していることを示す。なお、フライ8時間目までのフライ油の測定は5 1/4インチセルを使用し、フライ16時間目以降のフライ油の測定は1インチセルを使用した。
[酸価]
基準油脂分析試験法(2.3.1−1996)に従って測定した。数値が大きいほど、遊離脂肪酸が多いことを示す。
[ヨウ素価]
ウィイス−シクロヘキサン法(基準油脂分析試験法 2.3.4.1−1996)により測定した。数値が大きいほど、不飽和結合が多いことを示す。
[屈折率]
基準油脂分析試験法(2.2.3−1996)に従って測定した。なお、測定温度は25℃であるが、油脂にパームオレインが含まれる場合は40℃でも測定した。
[過酸化物価]
酢酸−イソオクタン法(基準油脂分析試験法 2.5.2.1−1996)により測定した。
[極性化合物(TPM)]
デジタル食用油テスター(testo265、株式会社テストー製)を用い、175℃における極性化合物量の値(TPM)を測定した。数値が大きいほど、極性化合物量が多いことを示す。
[フライ安定性試験]
食用油脂重量:500gをフライ容器に入れる。
種物重量:ピーラーで皮を剥いた後、1cm角にカットした、じゃがいも100gを使用する。
フライ温度:170〜180℃、加熱開始後180℃に達した時点でカウントアップを開始する。
フライ時間:4分間×2回を2時間毎に実施する。総加熱時間24時間である。
比較例1
「加熱安定性に優れ、経済的である」ことを謳った市販の業務用油脂(キャノーラ油)を用いて、実施例1と同一の評価を行なった。この市販キャノーラ油はシリコーン系消泡剤を約3ppm含み、さらに大豆由来の乳化剤を含む。比較例1の食用油脂には、ビタミンEが538ppm含まれていた。結果を表2および図2に示す。
表2に示すように、フライ加熱による酸価の上昇率に関して、比較例1は24時間で21.5倍に増加しているのに対し、実施例1は8倍の増加に留まっていた。すなわち、実施例1の酸価の増加率は比較例1の40%以下に抑えられていることが分かった。
図2に示すように泡立ちの程度は、フライ開始後16時間目に実施例1および比較例1両方の食用油脂において蟹泡が生じ始めた。しかし、比較例1の方が泡の量が多く、泡のサイズも小さかった。フライ開始後24時間目では、より顕著に泡立ちの差が確認できた。
また、揚物の状態について、焦付きなどの外観は実施例1および比較例1両方の食用油脂に違いは認められなかった。風味に関して、フライ加熱2時間の時点で揚げたポテトを試食した結果(ブラインド試験)、「風味の違いを感じない」が5名(男性2名、女性3名)、「実施例1の油で揚げた方が風味が重たいが、美味しい」が2名(女性)、「比較例1の油で揚げた方が脂っこい」が1名(女性)であった。
実施例2および比較例2
実施例1で用いた食用油脂を準備し、実施例1とは異なる日に実施例1と同様のフライ安定性試験を行なった。結果を表3および図3に示す。
比較例2として、「ビタミンE製剤を添加することで、既存のキャノーラ油よりもビタミンE含量を高めた」ことを謳った市販のキャノーラ油を用いて、実施例2と同一の評価を行なった。本製品はシリコーン系消泡剤を約6ppm含み、さらにビタミンE含量は1,346ppmであった。結果を表3および図3に示す。
表3に示すように、フライ加熱による酸価の上昇率に関して、比較例2は24時間で17.7倍に増加しているのに対し、実施例2は8倍の増加に留まっていた。すなわち、実施例2の酸価の増加率は比較例2の約50%に抑えられていることが分かった。
図3に示す泡立ちの程度および揚物の状態については、実施例2および比較例2両方に大きな差がなかった。
実施例3および比較例3
実施例1で用いた食用油脂を準備し、実施例1および実施例2とは異なる日に実施例1と同様のフライ安定性試験を行なった。結果を表4および図4に示す。
比較例3として、「フライ時の酸価の上昇を抑制する」ことを謳った市販のフライ用油脂を用いて、実施例3と同一の評価を行なった。本製品はシリコーン系消泡剤を約2ppm含み、さらにビタミンE含量は517ppmであった。結果を表4および図4に示す。
表4に示すように、フライ加熱による酸価の上昇率に関して、比較例3は24時間で20.5倍に増加しているのに対し、実施例3は6.0倍の増加に留まっていた。すなわち、実施例3の酸価の増加率は比較例3の約30%に抑えられていることが分かった。
図4に示す泡立ちの程度は、実施例3が比較例3よりも劣化による泡立ちが明らかに抑えられていた。すなわち、比較例3はフライ12時間目から蟹泡が生じ始めたのに対し、実施例3はフライ18時間目より蟹泡が生じ始めた。また、フライ24時間目の泡立ちを比較すると明らかに比較例3の方が泡の量が多かった。
揚物の状態については、実施例3および比較例3両方に大きな差がなかった。
実施例4および比較例4
実施例1で用いた食用油脂を準備し、実施例1〜実施例3とは異なる日に実施例1と同様のフライ安定性試験を行なった。結果を表5および図5に示す。
比較例4として、「食用菜種油に、加熱安定性に優れた食用パームオレインを調合し、さらにビタミンE製剤を添加した」ことを謳った市販の業務用油脂を用いて、実施例4と同一の評価を行った。本製品はシリコーン系消泡剤(約3ppm)および乳化剤を含み、さらにビタミンE含量は1,110ppmであった。結果を表5および図5に示す。なお、比較例4はパームオレインを含むため屈折率を40℃でも測定した。
表5に示すように、フライ加熱による酸価の上昇率に関して、比較例4は24時間で9.8倍に増加しているのに対し、実施例4は6.0倍の増加に留まっていた。すなわち、実施例4の酸価の増加率は比較例4の約60%に抑えられていることが分かった。
図5に示す泡立ちの程度および揚物の状態は、実施例4および比較例4両方に大きな差がなかった。
実施例5および比較例5
実施例1で用いた食用油脂と同じ製造方法を用いて、菜種粗油から製造された異なるロットの食用油脂を準備し、実施例1〜実施例4とは異なる日に実施例1と同様のフライ安定性試験を行なった。結果を表6および図6に示す。
比較例5として、実施例5と同量のシリコーン系消泡剤(4ppm)を添加した大豆白絞油(辻製油製)を準備して、実施例5と同一の評価を行なった。結果を表6および図6に示す。
表6に示すように、フライ加熱による酸価の上昇率に関して、比較例5は24時間で19倍に増加しているのに対し、実施例5は7.75倍の増加に留まっていた。
図6に示す泡立ちの程度は、比較例5がフライ開始14時間目に蟹泡が生じ始めたのに対して、実施例5はフライ開始20時間目で蟹泡が確認された。蟹泡の量およびフライ油を覆う蟹泡の面積は、比較例5よりも実施例5が明らかに抑えられていた。
本発明は、フライ加熱による酸価の上昇率を下げることができるので、外食・中食市場の拡大に伴う業務用のフライ安定性に優れた食用油脂の製造方法および食用油脂として利用できる。また、食品添加物でなく、食用油脂自身が本来含有しているビタミンEや植物ステロールなどを多く含むので、健康志向の家庭用食用油脂としても利用できる。

Claims (2)

  1. 圧搾工程および抽出工程の少なくとも1つの工程を経て製造される原料粗油を、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱臭工程を順に経て製造される食用油脂の製造方法であって、
    前記脱臭工程において留出する脱臭留出物を、前記脱ガム工程後で、かつ、前記脱酸工程前の粗油に戻すことを特徴とする食用油脂の製造方法。
  2. 前記脱臭留出物は同品種原料由来の粗油から留出する脱臭留出物であることを特徴とする請求項1記載の食用油脂の製造方法。
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