JP6216599B2 - 食用油脂の製造方法および食用油脂 - Google Patents
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例えば、外食・中食市場で用いられる業務用フライ油の使用基準として、フライ加熱中に油脂が加水分解して生成する遊離脂肪酸に比例した値である「酸価」でフライ油を管理することが一般化されている。従って、フライ安定性に優れた(持ちの良い)フライ油とは、酸価の上昇が抑制されるフライ油として認識されている。
しかし、このフライ安定性のよい油脂は、原料油脂を選定しなければならないこと、精製度を上げることにより酸価を0.03以下にしなければならないこと、また、原料油脂にγ−トコフェロール含量が少ない場合は後発的に食品添加物であるγ−トコフェロール製剤を添加しなければならないこと等の製造上の制約がある。さらに、多量に生成する脱臭留出物を処理しなければならないという問題があった。
また、油脂に、構成脂肪酸中の炭素数16〜18の不飽和脂肪酸の割合が75〜95質量%、けん化価が100〜160および水酸基価が120〜180であるポリグリセリン脂肪酸エステル(A)を油脂に対して0.01〜2質量%含み、さらに構成脂肪酸中の炭素数16〜18の不飽和脂肪酸の割合が51〜90質量%、けん化価が160〜220および水酸基価が5〜100であるポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を油脂に対して0.001〜0.5質量%含む加熱調理用油脂組成物が知られている(特許文献3)。
特定量のリン脂質を含有しつつ、さらにトコフェロール類中にδ−トコフェロールを特定量で含有する、加熱調理における加水分解安定性を高め、従来より長時間加熱調理を行なうことができる加熱調理用油脂が知られている(特許文献4)。
しかし、上記加熱調理用油脂は、いずれも食品添加物となる添加剤成分を添加することにより、調理用油脂の安定性を向上させている。
特に、上記脱臭留出物は同品種原料由来の粗油から留出する脱臭留出物であることを特徴とする。
また、上記脱臭工程前の粗油は、脱ガム工程、脱酸工程および脱色工程の少なくとも1つの工程前後の粗油であることを特徴とする。
圧搾工程および抽出工程の少なくとも1つの工程を経て製造される原料粗油を、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱臭工程を順に経て製造される食用油脂の製造方法において、上記脱臭留出物が上記脱酸工程前に戻されることを特徴とする。
本発明の食用油脂は、上記製造方法で製造されるフライ安定性の良好な食用油脂であることを特徴とする。特に、同品種原料由来のビタミンEが1,000〜2,000ppm含有する食用油脂であることを特徴とする。
粗油Bが採油される前の原料Aとしては、例えば、アマニ、エゴマ、シソ、カポック、コプラ、ゴマ、コメ糠、サフラワー、シアナット、大豆、茶、トウモロコシ、菜種、ニガー、ババス、パーム、パーム核、ヤシ、ヒマワリ、綿実、落花生、ぶどう、小麦、オリーブ、アボガド等が挙げられる。
脱酸工程4は、脱ガムまたは脱ロウ後の粗油中の遊離脂肪酸をアルカリ水溶液を添加して中和し、生じた脱酸油さい(アルカリフーツ)を除去する工程である。
脱色工程5は、活性白土を添加して脱酸粗油中の色素成分およびその他の微量な夾雑物を吸着し、脱色油さい(廃白土)を除去する工程である。
脱臭工程6は、高温(200℃以上)および高真空下で水蒸気蒸留することにより脱色粗油中の脱臭留出物D(脱臭スカム)を除去する工程である。
得られた脱臭留出物Dが戻された粗油の脱臭工程6は最初の脱臭留出物Dを得るときの温度よりも低い温度、好ましくは230℃以下200℃以上の温度で脱臭する。低い温度で脱臭することによりビタミンEや植物ステロールなどの含量を高めた製品Cが得られる。また、循環器系疾患のリスクを増大させるトランス脂肪酸の生成を抑えることができる。
粗油Bとして菜種を原料とする粗油を用い、最初の脱臭工程6において温度240℃、高真空(5Torr以下)で脱臭操作を行ない、脱臭留出物Dを得た。この脱臭留出物には、α−トコフェロールが1.565重量%、γ−トコフェロールが3.824重量%、δ−トコフェロールが0.373重量%、ビタミンEとして合計5.762重量%含まれていた。
脱ガム工程を経た後の菜種粗油に、混合物全体として、上記菜種油脱臭留出物(スカム)を2.2重量%となるように添加してスカム添加脱ガム油を得た。続いて、脱酸工程、脱色工程、脱臭工程を順に経て菜種油脂の製品Cを製造した。このときの脱臭工程における脱臭温度は225℃、高真空(5Torr以下)で行なった。
菜種を圧搾および抽出して得られた粗油に対して常法に従い、脱ガム処理を行なった。この脱ガム後の菜種粗油に、アルカリ濃度16.6%の苛性ソーダ水溶液を酸価の測定値より得られた遊離脂肪酸量に応じて添加し、60℃にて30分間反応させて、粗油中の遊離脂肪酸を脱酸油さい(アルカリフーツ)として除去した。脱酸工程後の粗油100重量部に対して1.2重量部の割合で活性白土を添加して、103℃にて60分間、真空度40Torrで反応させて脱色後、温度240℃、69分間、高真空(5torr以下)、吹き込み蒸気量1.67%で脱臭して、脱臭留出物を得た。この脱臭留出物には、ビタミンEが5.762重量%、植物ステロールが19.25重量%含まれていた。
脱臭留出物の分取と同様にして、菜種を圧搾および抽出して得られた粗油に対して常法に従い、脱ガム処理を行なった。この脱ガム後の菜種粗油に、混合物全体として、予め上記菜種粗油から分取しておいた上記未精製の菜種油脱臭留出物を2.2重量%となるように添加した。続いて、上記脱臭留出物の分取と同様にして、脱酸工程、脱色工程および脱臭工程を経て食用油脂を製造した。なお、脱臭工程は、温度225℃、78分間、高真空(5torr以下)、吹き込み蒸気量2.07%で実施した。得られた食用油脂としての菜種油にシリコーン系消泡剤を比較例1の食用油脂と略同量(4ppm)添加して実施例1の食用油脂を製造した。実施例1の食用油脂には、ビタミンEが1,639ppm含まれていた。
[水分]
カールフィッシャー法(基準油脂分析試験法 2.1.3.4−1996)により測定した。
[色相]
ロビボンド比色計(ロビボンド比色計F型計測器、ロビボンド社製)を使用して測定した(基準油脂分析試験法 2.2.1.1−1996)。Yは黄色、Rは赤、Bは青を表し、数値が大きいほど、着色していることを示す。なお、フライ8時間目までのフライ油の測定は5 1/4インチセルを使用し、フライ16時間目以降のフライ油の測定は1インチセルを使用した。
[酸価]
基準油脂分析試験法(2.3.1−1996)に従って測定した。数値が大きいほど、遊離脂肪酸が多いことを示す。
[ヨウ素価]
ウィイス−シクロヘキサン法(基準油脂分析試験法 2.3.4.1−1996)により測定した。数値が大きいほど、不飽和結合が多いことを示す。
[屈折率]
基準油脂分析試験法(2.2.3−1996)に従って測定した。なお、測定温度は25℃であるが、油脂にパームオレインが含まれる場合は40℃でも測定した。
[過酸化物価]
酢酸−イソオクタン法(基準油脂分析試験法 2.5.2.1−1996)により測定した。
[極性化合物(TPM)]
デジタル食用油テスター(testo265、株式会社テストー製)を用い、175℃における極性化合物量の値(TPM)を測定した。数値が大きいほど、極性化合物量が多いことを示す。
食用油脂重量:500gをフライ容器に入れる。
種物重量:ピーラーで皮を剥いた後、1cm角にカットした、じゃがいも100gを使用する。
フライ温度:170〜180℃、加熱開始後180℃に達した時点でカウントアップを開始する。
フライ時間:4分間×2回を2時間毎に実施する。総加熱時間24時間である。
「加熱安定性に優れ、経済的である」ことを謳った市販の業務用油脂(キャノーラ油)を用いて、実施例1と同一の評価を行なった。この市販キャノーラ油はシリコーン系消泡剤を約3ppm含み、さらに大豆由来の乳化剤を含む。比較例1の食用油脂には、ビタミンEが538ppm含まれていた。結果を表2および図2に示す。
図2に示すように泡立ちの程度は、フライ開始後16時間目に実施例1および比較例1両方の食用油脂において蟹泡が生じ始めた。しかし、比較例1の方が泡の量が多く、泡のサイズも小さかった。フライ開始後24時間目では、より顕著に泡立ちの差が確認できた。
また、揚物の状態について、焦付きなどの外観は実施例1および比較例1両方の食用油脂に違いは認められなかった。風味に関して、フライ加熱2時間の時点で揚げたポテトを試食した結果(ブラインド試験)、「風味の違いを感じない」が5名(男性2名、女性3名)、「実施例1の油で揚げた方が風味が重たいが、美味しい」が2名(女性)、「比較例1の油で揚げた方が脂っこい」が1名(女性)であった。
実施例1で用いた食用油脂を準備し、実施例1とは異なる日に実施例1と同様のフライ安定性試験を行なった。結果を表3および図3に示す。
比較例2として、「ビタミンE製剤を添加することで、既存のキャノーラ油よりもビタミンE含量を高めた」ことを謳った市販のキャノーラ油を用いて、実施例2と同一の評価を行なった。本製品はシリコーン系消泡剤を約6ppm含み、さらにビタミンE含量は1,346ppmであった。結果を表3および図3に示す。
図3に示す泡立ちの程度および揚物の状態については、実施例2および比較例2両方に大きな差がなかった。
実施例1で用いた食用油脂を準備し、実施例1および実施例2とは異なる日に実施例1と同様のフライ安定性試験を行なった。結果を表4および図4に示す。
比較例3として、「フライ時の酸価の上昇を抑制する」ことを謳った市販のフライ用油脂を用いて、実施例3と同一の評価を行なった。本製品はシリコーン系消泡剤を約2ppm含み、さらにビタミンE含量は517ppmであった。結果を表4および図4に示す。
図4に示す泡立ちの程度は、実施例3が比較例3よりも劣化による泡立ちが明らかに抑えられていた。すなわち、比較例3はフライ12時間目から蟹泡が生じ始めたのに対し、実施例3はフライ18時間目より蟹泡が生じ始めた。また、フライ24時間目の泡立ちを比較すると明らかに比較例3の方が泡の量が多かった。
揚物の状態については、実施例3および比較例3両方に大きな差がなかった。
実施例1で用いた食用油脂を準備し、実施例1〜実施例3とは異なる日に実施例1と同様のフライ安定性試験を行なった。結果を表5および図5に示す。
比較例4として、「食用菜種油に、加熱安定性に優れた食用パームオレインを調合し、さらにビタミンE製剤を添加した」ことを謳った市販の業務用油脂を用いて、実施例4と同一の評価を行った。本製品はシリコーン系消泡剤(約3ppm)および乳化剤を含み、さらにビタミンE含量は1,110ppmであった。結果を表5および図5に示す。なお、比較例4はパームオレインを含むため屈折率を40℃でも測定した。
図5に示す泡立ちの程度および揚物の状態は、実施例4および比較例4両方に大きな差がなかった。
実施例1で用いた食用油脂と同じ製造方法を用いて、菜種粗油から製造された異なるロットの食用油脂を準備し、実施例1〜実施例4とは異なる日に実施例1と同様のフライ安定性試験を行なった。結果を表6および図6に示す。
比較例5として、実施例5と同量のシリコーン系消泡剤(4ppm)を添加した大豆白絞油(辻製油製)を準備して、実施例5と同一の評価を行なった。結果を表6および図6に示す。
図6に示す泡立ちの程度は、比較例5がフライ開始14時間目に蟹泡が生じ始めたのに対して、実施例5はフライ開始20時間目で蟹泡が確認された。蟹泡の量およびフライ油を覆う蟹泡の面積は、比較例5よりも実施例5が明らかに抑えられていた。
Claims (2)
- 圧搾工程および抽出工程の少なくとも1つの工程を経て製造される原料粗油を、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱臭工程を順に経て製造される食用油脂の製造方法であって、
前記脱臭工程において留出する脱臭留出物を、前記脱ガム工程後で、かつ、前記脱酸工程前の粗油に戻すことを特徴とする食用油脂の製造方法。 - 前記脱臭留出物は同品種原料由来の粗油から留出する脱臭留出物であることを特徴とする請求項1記載の食用油脂の製造方法。
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