JP7341687B2 - 精製油脂の製造方法、及び精製油脂 - Google Patents
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Description
(2)前記シリカ・マグネシア系製剤が、二酸化ケイ素粒子と酸化マグネシウム粒子の複合吸着剤である、(1)の精製油脂の製造方法。
(3)前記吸着工程に供する油脂の酸価が、0.2以下である、(1)又は(2)の精製油脂の製造方法。
(4)前記脱臭工程の前に、油脂とオゾンに接触させる工程を有する、(1)~(3)のいずれかの精製油脂の製造方法。
(5)前記吸着工程の後に、140℃以上で水蒸気と接触させる工程を行わない、(1)~(4)のいずれかの精製油脂の製造方法。
(6)前記吸着工程が、シリカ・マグネシア系製剤を充填した容器に液体の状態の油脂を通過させる、(1)~(5)のいずれかの精製油脂の製造方法。
(7)前記吸着工程を経た精製油脂の酸価が0.00~0.01である、(1)~(6)のいずれかの精製油脂の製造方法。
(8)(1)~(7)のいずれかの精製油脂の製造方法を経た、酸価が0.00~0.01である、精製油脂。
(9)酸価が0.001~0.008である、精製油脂。
本発明の精製油脂の製造方法は、脱臭工程の後に、液体状態の油脂を80℃未満でシリカ・マグネシア系製剤と接触させる吸着工程を行う。
本発明の精製油脂の製造方法に供する油脂は、食用油脂として用いられる油脂を用いることができる。例えば、動植物油脂、グリセリンと脂肪酸から合成した油脂及びそれらの分別油、エステル交換油、水素添加油などが挙げられる。また、単独の油脂あるいは複数の油脂をブレンドしたものも挙げられる。
動植物油脂としては、例えば、大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、エゴマ油、亜麻仁油、落花生油、グレープシード油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などが挙げられる。
グリセリンと脂肪酸から合成した油脂としては、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)などが挙げられる。
分別油としては、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクションなどのパーム油の分別油が挙げられる。
エステル交換油としては、パーム油あるいはパーム油の分別油と他の液状油脂のエステル交換油、あるいはMCTと植物油などとのエステル交換油を用いることができる。
水素添加油は、動植物油、動植物油の分別油の水素添加油の他、エステル交換油の水素添加油などが挙げられる。
本発明の精製油脂の製造方法は、液体状態の油脂を80℃未満でシリカ・マグネシア系製剤と接触させる吸着工程を有するが、この吸着工程の前に脱臭工程を行う。脱臭工程の条件は通常の油脂の精製で行われている脱臭条件の範囲であれば特に問題はないが、脱臭工程を経た油脂(脱臭油脂)の酸価が0.2以下であることが好ましい。酸価が低いほど、吸着工程の効果が高く、精製油脂の酸価が十分に低減できる。脱臭工程を経た油脂の酸価は0.1以下であることが、より好ましい。
本発明の精製油脂の製造方法において、脱臭工程の後に吸着工程を有する。脱臭工程と吸着工程の間に別の工程を行うこともできるが、脱臭工程の次の工程が吸着工程であることが好ましい。なお、吸着工程は、80℃未満で行うため、必要に応じて冷却・保管等を経て吸着工程を行ってもよい。吸着工程で用いるシリカ・マグネシア系製剤は、シリカ(二酸化ケイ素)とマグネシア(酸化マグネシウム)の製剤であり、シリカ粒子とマグネシア粒子が分散・混合したものである。例えば、シリカ:マグネシアの質量比は、1:5~3:1のものが好ましい。また、シリカ・マグネシア系製剤として、二酸化ケイ素と酸化マグネシウムと水の組合せからなる製剤を用いることができ、例えば、二酸化ケイ素30~80質量%、酸化マグネシウム10~50質量%、水5~20質量%の組成のものが好ましい。これらのシリカ・マグネシア系製剤は、例えば、シリカとマグネシアの各粒子を、水中で、溶解はしないがナノオーダーの単位粒子として分散させ、均一混合して、粒子間の原子の交換や組み換えを伴うような化学結合を生成することなく合体して緊密に複合化して得ることができる。また、市販品(水澤化学工業株式会社製、「ミズカライフ」)を用いることもできる。
本発明の精製油脂の製造方法において、前述の吸着工程で精製工程は完了するが、必要に応じて、追加の精製工程、あるいは分別工程、混合工程(添加工程)等を行ってもよい。しかし、脱臭工程のように140℃以上で水蒸気と接触させる工程を行うと、油脂が微量の加水分解を生じ、一方で、遊離脂肪酸が蒸留で除去されるため、油脂中の遊離脂肪酸量の平衡状態が、油脂の酸価が0.01を超える範囲になるため、同工程を行わないことが好ましい。
本発明において、油脂をオゾンに接触させる工程を経て、脱臭工程を経ることで、精製油脂の風味安定性が向上する。特に、曝光による風味劣化を抑制することができる。油脂をオゾンに接触させる工程により、曝光臭の原因物質が分解あるいは蒸留で分解しやすい化合物に変化すると考えられる。オゾンは、酸素原子3個から構成される気体であり、オゾン気体を油脂に接触させるか、オゾンを含有する水を油脂と撹拌することで接触させることもできる。オゾンを接触させた後に、オゾン以外の成分を除去する必要がないことから、オゾン気体を油脂に接触させることが好ましい。オゾン気体を油脂に接触させる方法としては、脱気された油脂をオゾン気体と接触させる方法、油脂中にオゾン気体をバブリングさせることで接触させる方法、オゾンを含有する水と接触させる方法等を用いることができる。なお、オゾンの発生装置は、特に限定するものではないが、空気中での紫外線照射、または酸素中での無声放電など高いエネルギーを持つ電子と酸素分子の衝突によって発生させるものを利用することができる。また、市販の水や食品等の殺菌、脱臭、脱色に用いるものを利用することができる。
本発明の精製油脂は、前記精製油脂の製造方法を経た、酸価が0.00~0.01である。なお、油脂は天然由来であり、現時点では、遊離脂肪酸以外の酸価を上昇させる成分や、一部の着色物質あるいは着色を促進する物質は特定されていないため、本発明の効果である、フライ時の酸価上昇及び/又は加熱着色を抑制できる効果を有する精製油脂を特定するため、プロダクト・バイ・プロセスの形式を用いた。なお、酸価0.00~0.01は、通常の脱酸工程や脱臭工程のみでは到達できない範囲である。
酸価は、0.001~0.008であることがより好ましい。
精製油脂中には、本発明の効果を損ねない程度に、その他の成分を加えることができ、配合される成分の種類や量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。これらの成分とは、例えば、一般的な油脂に用いられる成分(食品添加物など)である。これらの成分としては、例えば、酸化防止剤、消泡剤、乳化剤等が挙げられ、脱臭工程後から充填前に添加されることが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、アスコルビン酸類、フラボン誘導体、コウジ酸、没食子酸誘導体、カテキンおよびそのエステル、フキ酸、ゴシポール、セサモール、テルペン類等が挙げられる。抗酸化剤及び消泡剤としてシリコーンオイルが挙げられる。着色成分としては、例えば、カロテン、アスタキサンチン等が挙げられる。乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレート、ジアシルグリセロール、ワックス類、ステロールエステル類、リン脂質等から適宜選択される。
なお、シリコーンオイルは0.5~10質量ppm含有することが好ましく。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン構造を持ち、動粘度が25℃で100~5000mm2/sのものが好ましい。シリコーンオイルの動粘度は、500~2000mm2/sがより好ましく、800~1100mm2/sであることがさらに好ましく、900~1100mm2/sであることが最も好ましい。シリコーンオイルは、食品用途として市販されているものを用いることができる。なお、ここでいう「動粘度」とは、JIS K 2283(2000)に準拠して測定される値を指すものとする。シリコーンオイルは、シリコーンオイル以外に微粒子シリカを含むものを用いるのも好ましい。
各試験における分析は、以下の方法にしたがって実施した。
酸価を、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 2.3.1-2013 酸価」に準拠して測定した。酸価は、油脂中に含まれる遊離脂肪酸の量を示し、サンプル油1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で表わされる。
試験油の色度を、ロビボンド比色計(商品名「Lovibond PFX995」、The Tintometer Limited社製)で、0.5インチセルを使用して、黄の色度(Y値)、赤の色度(R値)を測定した。これらの結果に基づき、「Y+10R」を算出して色値を算出した。Y+10Rの数値が小さい程、色調が淡く、Y+10R数値が大きい程、色調が濃いことを意味する。
精製キャノーラ油(酸価0.04)に、シリカ・マグネシア系製剤(水澤化学工業株式会社製、「ミズカライフ F-2G」:シリカ約55%、マグネシア約32%、水約13%)、二酸化ケイ素(富士フイルム和光純薬株式会社製)、酸化マグネシウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を、精製キャノーラ油に対して1質量%添加し、室温で6時間、撹拌したのちにろ過し、各精製油を得た。各精製油の酸価を表1に示した。
キャノーラ脱色油を250℃、60分、4.5torr、水蒸気量 対油3質量%にて脱臭を行い、精製油A(酸価0.04、色調0.3)を得た。
各試験油4Lをフライヤーに入れ、8日間(8時間/日)フライ調理を行った。フライ調理は、以下の方法で、イモ天(2日間)、コロッケ(2日間)、から揚げ(4日間)の調理を順に行った。フライ試験後の油脂の酸価、色調を表1に示した。
[イモ天]
1時間ごとに、サツマイモを1cmの厚さにスライスした8枚を、バッター(天ぷら粉(商品名「日清おいしい天ぷら粉」、日清フーズ株式会社製):水=1:1.6)をつけ、180℃で3.5分間揚げた。
[コロッケ]
1時間ごとに、コロッケ(商品名「ニチレイ衣がサクサクのコロッケ(野菜)」、株式会社ニチレイフーズ製)70gを4個、180℃で4.5分間揚げた。
[から揚げ]
1時間ごとに、鶏モモ肉約35gを6個、バッター(から揚げ粉(商品名「から揚げの素No.1」、日本食研株式会社製):水=1:1)をつけ、180℃で4分間揚げた。
Claims (6)
- 油脂を精製する製造方法において、脱臭工程の後に、酸価が0.2以下であり液体状態の油脂を80℃未満でシリカ・マグネシア系製剤と接触させる吸着工程を経る、精製油脂の製造方法(但し、精製油脂は使用済食用油を再生したものではない)。
- 前記シリカ・マグネシア系製剤が、二酸化ケイ素粒子と酸化マグネシウム粒子の複合吸着剤である、請求項1に記載の精製油脂の製造方法。
- 前記吸着工程に供する油脂の酸価が、0.2以下であり、
前記吸着工程の後に、140℃以上で水蒸気と接触させる工程を行わない、請求項1又は2に記載の精製油脂の製造方法。 - 前記脱臭工程の前に、油脂をオゾンに接触させる工程を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の精製油脂の製造方法。
- 前記吸着工程が、シリカ・マグネシア系製剤を充填した容器に液体の状態の油脂を通過させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の精製油脂の製造方法。
- 前記吸着工程を経た精製油脂の酸価が0.00~0.01である、請求項1~5のいずれか1項に記載の精製油脂の製造方法。
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