JP3553251B2 - 揚げ物用油脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、フライ、天ぷらなどの揚げ物用油脂組成物に関する。詳細には本発明は、フライ、天ぷらなどを揚げるときに、特別な熟練を要せず、外観、風味、食感などに優れた揚げ物をより経済的に揚げることができ、揚げた後一定時間をおいても外観、風味、食感などを良好に維持することができる改良された揚げ物用油脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からフライ、天ぷらなどの揚げ物用油脂は、業務用または一般家庭において、菜種油、ごま油、大豆油、コーン油、紅花油、オリーブ油、米油、綿実油、ひまわり油などの種々の液状油脂を使用している。これら液状油脂は現代の食生活で、風味を強調して使用する場合のごま油やオリーブ油を除いて、高度に精製されてトリグリセリド以外の成分が殆ど除かれた油脂が、広く用いられている。これらの油脂は、原料に由来する特徴的な風味は殆ど失われているが、くせのない風味であらゆる油料理に適応して万能に使えることが特徴である。
【0003】
フライや天ぷらなどは、小麦粉や澱粉などからなる衣を必要に応じて水などで溶いで具材につけて油で揚げることが特徴である。これら揚げ物には、外観、風味、食感などが押しなべて良好であることが求められる。「外観」は、見るからにカラッとした状態で見た目に油っぽくないこと、特に天ぷらにおいては衣がバランス良く広がって適度な散り状態(いわゆる「花咲き」)があることなどが求められる。「風味」は、衣に包まれていることによって具材のうま味が保たれていること、衣が油で加熱されることによってもたらされる香気が揚げ物全体のうま味を引き立てること、食べたときに油っぽくないいわゆる軽い風味であることなどが求められる。「食感」は、サクッとした歯ごたえの衣の下に具材本来のジューシーさが保たれていること、特に衣においては硬すぎることなく反対にべたつくことなく歯に当たったときにサクッと崩れる「歯もろさ」があることなどが求められる。「おいしい」揚げ物とは、これらの要件がすべて満たされている状態のものと理解される。このような状態は、揚げ直後はもち論のこと、時間を置いてもなお満たされていることが望まれる。
【0004】
「おいしい」揚げ物を提供するために、揚げ物を専門に提供する店、例えば天ぷら専門店では、使用する衣の調製法、油脂の種類や配合比、揚げる温度、時間や操作などの各種条件について独自の選択を行って、伝統の味、独自の味を提供している。例えば、衣の調製には小麦粉のグルテン形成を抑制するために冷水を用いてあまりかき混ぜない、油の温度を適温(通常180℃と言われる)に維持して温度低下を起こさせないためにたつぶりの油に少量の揚げ物を投入する、などのコツがあり、これらを再現性良く実践するためには高度の熟練が必要とされる。また、たっぷりの油を使うという一見単純なコツでも、大量にしかも低コストで揚げ物を提供する食品加工業や外食業、ましてや一般家庭においては、廃油の処理も含めて経費増となるので、容易に実践することはできない。
【0005】
食品加工業や外食業などの業務用、ならびに一般家庭用においては、専門店のように高度な熟練や特化されたコツを必要とせずに、だれもが簡単に失敗なく「おいしい」揚げ物ができることを支援する技術の提供が求められている。とりわけ業務用分野では、単に「おいしい」だけでなく、衣の一部が脱落することにより生じる揚げカスの発生量が少ないこと、油の寿命を長らえさせるために大量の製品をより短時間により低い温度で揚げられることといった効率的な作業性や経済性、時間をおいても揚げたてに近い状態が保たれることなどが要求される。
このような問題を解決するための手段として、これまでの揚げ物の構成要素の中で「衣」あるいは「油」に着目した技術が開発、提供されている。「衣」については、いわゆる揚げ物用粉として既に種々の製品が上市されている。
【0006】
揚げ物専用の油の開発に関しては、特開平6−113742号公報に、ローズマリー抽出物などの香辛料抽出物、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリドおよび有機酸モノグリセリン脂肪酸エステルを特定の比率で配合するものが提案されており、食品を揚げるときに使用して、素材が本来有する風味を保持したまま揚げ物を製造することができ、かつ劣化が少なく長時間使用することができる揚げ物用油脂組成物の提供を目的としている。
【0007】
また、特開平7−16052号公報に、液状油脂に、該液状油脂に対して4.0重量%以下となる量の乳化剤を添加・溶解して得られる油脂組成物であって、該油脂組成物の水との80℃における界面張力が界面形成時より3秒後に7mN/m以下となるように乳化剤が選ばれていることを特徴とする揚げ物調製用油脂組成物が提案されており、使用に際して熟練を必要とせず、優れた外観、風味そして食感などを有する揚げ物を調製することができるように改良された揚げ物調製用組成物の提供を目的としている。
【0008】
これらはいずれも外観、風味、食感などにすぐれた揚げ物に揚げることができる油の提供を目的としているが、揚げ物そのものが一定時間経過後にも風味、食感などが維持できるかどうかについてまでは考慮されていない。
【0009】
また、特開平7−16052号公報では、特に天ぷらにおいては、衣の花咲性(散り状態)が向上するために散った衣でいわゆる「揚げカス」がたくさん発生する。この現象は、油の温度を天ぷらに最適な180℃よりも低めにしてもあまり改善されない。さらに、通常のサラダ油等との組合せで使用することを前提としている天ぷら専用粉と併用した場合は、衣が過度に散るので「揚げカス」が増えるばかりでなく、天ぷらの衣が非常に薄くて見映えのしない状態となり、加えて、衣の水抜け(水分の蒸発)が良くなるだけ衣に油分が移行するのでカリッとした食感はあるが、時間が経って冷めると吸油感の強い天ぷらとなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、外観、風味、並びに食感のバランスがとれた「おいしい」フライや天ぷらなどの揚げ物を、特別な技術や専門的なコツを必要とせずに、誰にでも簡単に失敗することなく揚げられる揚げ物用の油脂を提供することを目的とする。特に天ぷらにおいては、一定時間おいても良好なおいしさが維持され、水抜けと吸油のバランスが良くて油っぽさを感じさせない天ぷらを揚げることができ、揚げカスを多く発生することがないので油の傷みも少ない揚げ物用の油脂を提供することを目的とする。また、市販の天ぷら専用粉や唐揚げ専用粉などを併用しても、過度に衣が散ったり吸油感が強いことのない揚げ物用油脂を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記問題点を解決するために鋭意研究し、界面張力値が一定範囲となるように調製された食用油、あるいはその様な条件となるように一般の食用油に乳化剤を適量添加した揚げ物用の油脂を用いて天ぷらやフライをすると、外観、風味、並びに食感のバランスがとれた「おいしい」揚げ物が簡単に失敗なく揚げられることはもちろん、一定時間おいても「おいしさ」が損なわれ難く、水抜けと吸油のバランスがとれて油っぽいことがなく、過度の揚げカスを発生することがないことを見い出した。また、市販の天ぷら専用粉や唐揚げ専用粉などと併用しても、過度に衣が散ったり吸油感が強くなることなく、誰もが簡単に失敗なく天ぷらを揚げることができることを見いだした。
【0012】
本発明は水との80℃における界面張力が界面形成時より5秒後に10〜30mN/mとなるように、調製された食用油からなる、あるいは、食用油に食用乳化剤を添加してなる油脂組成物であることを特徴とする揚げ物用油脂組成物である。
【0013】
天ぷらを揚げるとき、一般の食用油にクエン酸モノグリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤を適量添加し、その界面張力値が一定範囲になるように調製した油脂組成物を用いると、乳化剤無添加のものに比べて水抜けが良好で吸油も適度であり、しかも、一定時間置いても食感は比較的良好な状態を維持した。これに対して、界面張力が高い場合同一条件で揚げると、衣の水分の抜けが不十分であるために、時間が経つと衣の水分が多いためしなっとした状態となる。逆に乳化剤の添加量が多くて、油脂組成物の界面張力が過度に低い場合、天ぷらはフライ直後はサク味が良好でおいしいが、経時的に衣が硬くなる。
【0014】
天ぷらの衣は、油中で揚げられる過程で、水溶きされたバッター中で澱粉がα化し、蛋白が適度に変性し、水分と油分とが適量存在する状態の時に、衣が全体にはふっくらとしながらもサクッとした食感の良いおいしい天ぷらができると考えられる。揚げ油の界面張力が低すぎる場合は、水抜けが速く良すぎるので、衣は針状の尖った形状となりふっくらとした衣にならず、水分が少ないために揚げたてはサク味があっておいしく感じるが、時間が経つと非常に硬い食感となる。
【0015】
油脂の界面張力が必要以上に低下すると、水との親和性が過度に増加する。油脂の界面張力が例えば3〜4mN/m程度という過度に低い場合は、揚がった衣の水分が少ないので時間が経つと非常に硬い。いずれにせよ界面張力値が一定範囲をはずれると、時間が経つと好ましくない食感となる。
【0016】
乳化剤を添加して界面張力を低く調製した油脂組成物で、天ぷらを揚げる場合、バッター液は油との表面積を大きく取ろうとして小滴になろうとする。さらに、その影響で油からの伝熱速度が速くなり速やかに水が蒸発する。したがって、あるものは天ぷらから分離して揚げカスとなり、また、衣に残るものも針状で厚みのないものとなる。揚げカスの発生量も多くなり、その除去作業に手間がかかると同時に製品歩留まりが低下して経済的でない。水抜け効率が良い反面、その入れ替わりで吸油量が多くなる。揚げたては食感が良いため感じないが、時間をおいて冷めたときに油っぽさが著しくなる。また、揚げ油の減りが速いため経済的でない。また、乳化剤を添加するなどにより水抜けを良くした天ぷら粉を併用すると、相乗効果で衣の花ちりが良くなりすぎて具材へ衣が付き難く、見栄えが悪い製品になる。
【0017】
たぬきうどん・そばなどの具として用いられる「揚げ玉」には、球状でふっくらとした形状が望まれる。あげ玉を製造する場合、一般の食用油にクエン酸モノグリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤を適量添加し、その界面張力値が一定範囲になるように調製すると、乳化剤無添加のものに比べて水抜け速度が速いため、揚げ時間がより短時間であるいは揚げ温度がより低温にて良好な形状、食感を保った製品が得られる。結果的に、単位数量の製品を製造する時の揚げ油の劣化が少なくなり、廃油の量も減少し、より経済的になる。界面張力が過度に低い場合、揚げカスが多量に発生して、揚げ玉の形状が小さく劣った状態となって、商品価値が低下する。
【0018】
本発明の油脂組成物は、天ぷら、揚げ玉以外の揚げ物食品を調理する際も、比較的食感が良好なものが得られる。
また、冷凍天ぷらについて付言すると、より手軽に「おいしさ」を実現するために、食品工業的には冷凍前と冷凍保存後の両方で揚げる二度揚げが汎用されている。冷凍前の−次揚げでは、製品の外観をなす衣を固めることが目的である。この時、内部の具材に十二分に熱が通る必要はなく、外側の衣がある程度形成される状態であればよく、二度揚げ時に解凍と同時に内部具材に火が通り衣が最終的な状態に形成されれば構わない。従って、冷凍天ぷらの一次揚げに乳化剤を添加して界面張力が一定範囲となるように調製した本発明の油脂組成物を用いると、揚げ玉と同様に良好な外観を形成しつつ水抜け速度が速くなるので、経済的に処理することが可能である。
さらに、同様の理屈によって本発明の油脂組成物を用いると、かき揚げ、イカ珍味フライ、油揚げなどについても経済的に処理することが可能である。
【0019】
本発明は、食用油の精製などの調製方法を制御することによって、あるいは一般の食用油に乳化剤を添加・溶解して得られる油脂組成物であって、該油脂組成物の水との80℃における界面張力が界面形成時より5秒後に10〜30mN/mとなるように調製された食用油、もしくは乳化剤を食用油に添加してなることを特徴とする揚げ物調製用の油脂組成物に関するものである。
【0020】
食用油は、大豆、菜種、コーン、オリーブ、ゴマ、紅花、綿実、ひまわり、やし、パーム等の油脂原料から、抽出・精製工程を経て調製される。抽出された原油はトリグリセリド以外に多くの不純物を含有し、その後は目的に応じて、水洗(水溶性成分を除去)、脱ガム(レシチンなどのガム質を除去)、脱酸(遊離の脂肪酸を除去)、脱色(色素成分を除去)、脱臭(揮発性の有臭成分を除去)などを適宜組合せて処理することによって精製して食用に供されている。これら一連の処理は、風味などの点から食用には適さない原油を食用に適する状態に加工するプロセスであり、食用油としては高度に精製されてトリグリセリド以外の成分は殆ど除かれた油脂が広く用いられている。
【0021】
通常サラダ油と称して供されている高度に精製された食用油の界面張力は、本発明で用いる方法で測定すると35mN/m程度であり、精製度が低くてトリグリセリド以外の不純物を多く含む状態の油脂では界面張力が低くなる。例えば、ゴマ油の様に原料の風味を活かすために意図的に精製度の低い状態で食用に供される油脂の場合には、そのままで本発明に規定する界面張力の範囲に入る場合があって、この状態の油を使えば所望の効果が得られる。さらに、サラダ油のように界面張力の高い食用油に適宜乳化剤を添加して界面張力を本規定の範囲まで下げることによっても、所望の効果を得ることができる。従って、所望の効果を得るためには、食味を確保しつつ食用油の精製度合いを調整するか、高度に精製されて界面張力の高い食用油に乳化剤を添加するか、いずれかの方法をとることができる。
【0022】
油脂の界面張力を本発明で規定する10〜30mN/mの範囲に調整することにより、以下のメリットが認められる(表1参照)。
▲1▼天ぷらを揚げた時、界面張力が高いもの及び過度に低いものと比べて、水抜けと吸油のバランスが良好な状態となるので、揚げたての外観、風味、食感が向上し、一定時間経過後もこれらが良い状態を維持する。界面張力が高いものは、時間が経つと硬くなることはないが、水分が十分に抜けていないために衣がしなってしまう。一方、界面張力が過度に低いものは、揚げたては良好であるが時間が経つと衣が硬くなってしまう。
▲2▼水と油との親和性が適当な状態であるため、界面張力が高いものに比べると水抜けが速く、界面張力が過度に低いもののように揚げカスの発生量が多くなることなく、衣がふっくらと適度に膨化してカラッと揚がる。
▲3▼揚げ玉を製造する場合、形状は界面張力が高いものの場合と同様に球状でふっくらとしており、界面張力が過度に低いものの場合のように針状に散ってしまうことはない。さらに界面張力が高いものの場合と比べると、揚げ温度は同一の場合は揚げ時間が短縮できるので作業効率が向上し、また、揚げ時間は同じでもより低い温度で揚げることにより同等の製品を製造する事ができ、結果的に単位数量の製品を製造する時の揚げ物油の劣化が少なくなり、廃油の量も減少する。さらに、冷凍天ぷら、イカ珍味フライ、油揚げの大量生産などといった食品工業的用途にも幅広く応用することができる。
▲4▼界面張力を過度に低くするために乳化剤を大量に添加した場合と比べて、揚げ物油の着色なども問題にならない程度である。
▲5▼界面張力が高い食用油に比べると、揚げ物時の油はね量が著しく少ない。
【0023】
上記の界面張力は、界面形成時より5秒後には、10mN/m〜30mN/mの範囲になることが好ましい。なお、上記の界面張力の測定基準温度を80℃としたのは、天ぷらなどの揚げ物のたね(調理対象物)を加熱中の油に投入した際のたね(衣を含む)と油との界面周辺の温度が80℃付近となるためである。
【0024】
【表1】
Figure 0003553251
【0025】
本発明で用いることのできる乳化剤には制限がないが、好ましくはグリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステルなど)、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルを例示することができる。さらに好ましくは有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、より好ましくはクエン酸モノグリセリン脂肪酸エステルが、油への溶解性や高温での安定性などの点から適している。
【0026】
乳化剤の選定についてはHLB値(疎水性と親水性とのバランスを表す指標)が2〜12のものを目安とすることができる。HLBがこれよりも高いと、油への溶解性が悪く、濁り、おり、沈殿が生じやすい。逆にHLBが低いと所望の界面張力を得るためには添加量を多くする必要があるために、乳化剤の味が出てきて風味に悪影響を及ぼす。
【0027】
本発明で規定した界面張力は、特開平7−16052号公報に定義する動的界面張力を意味する。この、動的界面張力は、「社団法人日本化学会編、新実験化学講座18:界面とコロイド、第87〜91頁、昭和58年、第3版、丸善株式会社発行」に記載されているJIS K3304−1956「セッケン試験法」に準拠した滴数計(蕪木科学(株)製)を用いて測定することができる。また本発明で規定した動的界面張力は、市販の界面張力測定装置(滴重法を利用したDrop Volume Tensiometer TVT1:ドイツラウダ社製)を用いて測定することができる。測定方法については後述する。
【0028】
本発明の揚げ物調製用油脂組成物は、特定の界面張力を有する状態となるように、食用油の精製工程を調節するか、食用油脂に乳化剤を添加するかによってなされるものである。油脂は天ぷらなどの揚げ物油として一般的に使用可能とされている各種の油から任意に選んで用いることができる。その例としては、大豆油、菜種油、コーン油、紅花油、ひまわり油、綿実油、オリーブ油、胡麻油、分別パームオレインなどの植物油を挙げることができる。これらの油は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは適宜混合して用いてもよく、さらには、エステル交換などにより構造的な変換処理を施して用いてもよい。
【0029】
【実施例】
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0030】
本実施例で使用した界面張力は以下の方法で測定したものである。
界面張力の測定方法
試料油を入れた所定のU字管を80℃の水浴中で垂直に保持し、80℃の蒸留水を満たした滴数計をその先端が油面より約3cmの位置となるように挿入して垂直に固定する。滴数計からの水滴の落下速度は毎分12±2滴に調整して、滴数計内の蒸留水5ccが降下するとき(滴数計の上部標線から下部標線の間)の滴数を計測する。水浴温度は80±0.2℃に制御した。
界面張力(γ)の値は、滴数計の管の半径(r)、滴下される蒸留水1滴の体積(V)、試料油と蒸留水との密度差(ρ)、補正係数(ψ:日本化学会編「化学便覧、基礎編 改訂2版」7,界面現象)、重力定数(g)より、次の式で求められる。
γ=(Vρg)/{2πrψ(r/V1/3)}
なお、本発明における界面張力が「界面形成時より5秒後」と規定されるのは、JIS K3304−1956「セッケン試験法」に準拠して、滴数計からの水滴の落下速度を毎分12滴、つまり5秒に1滴の割合に制御したことによる。
【0031】
実施例1
さつまいも天ぷら試験を以下のとおり実施した。
(1)天ぷらの調理法
天ぷらバッター 薄力小麦粉100+卵50+冷水100の割合
揚げ条件 上記天ぷらバッターをつけた4cm四方で厚さ0.4cmの大きさに切り揃えたさつまいも6枚を、500gの揚げ油で180℃、1.5分揚げる。
(2)天ぷらの評価法
専門パネラー10名にて試食し、以下の評価項目にて採点、その平均点で表した。なお、投入する揚げ物に対して油がたっぷりの油温低下が少ない理想的な状態(500gの油に対してさつまいも1枚分)で揚げた場合の揚げたての食感を5段階評価の満点として、これを基準に相対的に評価した。
結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
Figure 0003553251
【0033】
以上のように、たっぷりの油で揚げた「おいしい」と言われるものと比較すると、界面張力が低いものは、揚げたては基準と同等に食感が良好であるが4h後には非常に硬くて油っぽさが感じられるようになった。一方、界面張力が高いものは、衣に水分が多く残り4h後にはしんなりとした食感となった。これらに対して、界面張力が10〜30mN/mの範囲にあるものは、揚げたては勿論のこと、4h経過後も食感や硬さが極端に変化しなかった。
【0034】
実施例2
揚げ玉のフライテストを以下のとおり実施した。
(1)揚げ玉の調製法
天ぷらバッター(昭和天ぷら粉+加水160%)を調製し、穴あきお玉で一定量(約20ml)をとり、加熱したフライ油(500g張り込み)中に滴下して、一定温度にて一定時間フライする。
(2)揚げ玉の評価法
形状は、適度な大きさで球状にふっくらと膨化し、口当たり(食感)が良いものが望ましい。また、たぬきうどん・そばに使用した場合を想定して、お湯に戻したとき、形状および程良い食感を維持する程良い。
形状 状態観察
食感 専門パネラー(10名)による官能検査(5段階評価、点数が大きい程良い)
一定水分になるまでの▲1▼一定フライ温度での時間(水抜け速度)および、▲2▼一定フライ時間での温度の測定
様々な温度、時間にて揚げ玉をフライし、その水分対時間または温度のグラフを作成して求めた。
結果を表3に示した。
【0035】
【表3】
Figure 0003553251
【0036】
界面張力が低いものは、必要な揚げ時間の短縮や揚げ温度を下げるなどの点で効果が認められるが、揚げ玉の評価は著しく悪く実用には適さない。界面張力が10〜30mN/mの範囲にあるものは、界面張力が高い場合と比べて、食感はむしろより良好で形状も良好な揚げ玉が得られると共に、より短時間あるいは低温で揚げ玉を調製することができる。
【0037】
実施例3
さつまいも天ぷらの揚げテストを以下のとおり実施した。
実施例1のさつまいも天ぷら揚げテストと同様条件にて、さつまいもを1回に6枚ずつ、合計108枚揚げ続けた。
そして、以下の項目について評価を行った。
結果を表4に示した。
フライ後の油の着色度 ロビボンド法で、1インチセルにて色相を測定。
揚げカスの発生量 フライ油より揚げカスをすくい取り、その重さを測定。
油の減少率 フライ後の油の重量を測定し、フライ前からの減少した率をみた。
【0038】
【表4】
Figure 0003553251
【0039】
【発明の効果】
家庭においても食品工業的な用途においても、専門的な熟練や特別なコツを必要としない揚げ物用油脂組成物を提供することができる。揚げ玉や冷凍天ぷらなどを食品工業的に調製する場合は、界面張力が高い油や過度に低い油と比べて、効率よく経済的に高品質の製品を得られる揚げ物用油脂を提供する。天ぷらを揚げたとき、水抜けと吸油のバランスがよくて、揚げたての良好な食感はもちろん、一定時間おいても良好な食感を維持できる揚げ物に揚がる揚げ物用の油脂を提供することができる。市販の天ぷら専用の粉と組み合わせて使用しても、だれでもが簡単に失敗なく天ぷらを揚げることができる天ぷら専用の油を提供することができる。

Claims (2)

  1. 水との80℃における界面張力が界面形成時より5秒後に10〜15.3mN/mとなるように食用油に少なくとも有機酸モノグリセリン脂肪酸エステルからなる食用乳化剤を添加してなる油脂組成物であることを特徴とする揚げ物用油脂組成物。
  2. 有機酸モノグリセリン脂肪酸エステルが、クエン酸モノグリセリン脂肪酸エステルである請求項1の揚げ物用油脂組成物。
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