実施の形態1.
図1〜図27は、本発明の実施の形態1に係るものであり、図1は、本発明の実施の形態1に係る家電機器の電力制御システムを適用したキッチン内電気機器の外観図。図2は、その電力制御システムの使用される誘導加熱調理器の外観図。図3は、その誘導加熱調理器の平面図。図4は、その誘導加熱調理器の制御回路の構成を示すブロック図。図5は、その誘導加熱調理器における表示手段の駆動回路構成を示すブロック図。図6は、その誘導加熱調理器における表示手段と操作部の一部を示す平面図1。図7は、その誘導加熱調理器における表示手段と操作部の一部を示す平面図2。図8は、その誘導加熱調理器における表示手段と操作部の一部を示す平面図3。図9は、その誘導加熱調理器における表示手段と操作部の一部を示す平面図4。図10は、その誘導加熱調理器の基本的な動作を示す制御ステップ説明図1。図11は、本発明の実施形態1の電気炊飯器の蓋体を開けた状態の斜視図。図12は、本発明の実施形態1の電気炊飯器の蓋体の平面図。図13は、本発明の実施の形態1に係る電力制御システムの使用される電気炊飯器の制御回路構成を示すブロック図。図14は、その電力制御システムの使用される食器洗い乾燥機の基本的な構成を示す中央部縦断面図。図15は、その電力制御システムの使用される空気調和機の基本的な構成を示すブロック図。図16は、本発明の実施の形態1に係る電力削減システムの全体構成を示すブロック図。図17は、その電力削減システムの中核を構成する電力指令装置の使用限度設定器の表示画面正面図1。図18は、その電力指令装置の使用限度設定器の表示画面正面図2。図19は、その電力指令装置の使用限度設定器の表示画面正面図3。図20は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の揚げ物調理における基本的な工程説明図。図21は、本発明の実施の形態1に係る電気炊飯器の炊飯工程説明図。図22は、本発明の実施の形態1に係る電力指令装置の電力制御動作を示す説明図1。図23は、本発明の実施の形態1に係る電力指令装置の電力制御動作を示す説明図2。図24は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器からの動作情報と加熱工程の関係を示す説明図1。図25は、その誘導加熱調理器からの動作情報と加熱工程の関係を示す説明図2。図26は、その誘導加熱調理器からの動作情報と加熱工程の関係を示す説明図3。図27は、その誘導加熱調理器からの動作情報と加熱工程の関係を示す説明図4である。なお、図16中、太線は交流200Vの電源線、細線は信号線、矢印は信号の方向を示している。
本実施形態1の誘導加熱調理器や電気炊飯器を含む、家庭内電気機器の電力制御システムは、図1に示したように、1つのキッチン内にて使用されるシステムキッチン(流し台)1を中心に構成されている。
前記システムキッチン(「流し台」、「厨房家具」ともいう)1の外殻を構成する筐体1Aの内部には、以下に説明する5つの電気機器を組み込んで構成されている。すなわち、そのキッチン内電気機器として、左右2つの加熱口2L,2Rを有する誘導加熱調理器2と、電気ジャー炊飯器3と、グリル調理器(電気魚焼き器)4と、電気ヒーター付きの電子レンジ(以下「オーブンレンジ」という)5と、食器洗い乾燥機6を備えている。なお、これら各機器を総称して「キッチン内電気機器」という場合は、符号として「KP」を用いる。また電気ジャー炊飯器3は、以下では単に「炊飯器」と呼ぶ。グリル調理器4は単独で構成されている場合もあるが、この実施の形態1では前記誘導加熱調理器2の中に一体的に組み込まれ、電熱と誘導加熱方式を併用した複合式の誘導加熱調理器の1つの加熱部として構成されている。従って、誘導加熱調理器2の主電源回路を遮断すると、前記グリル調理器4に対する電源供給も同時に遮断される構成になっている。
7は、家庭用の空気調和機で、上記キッチン内電気機器KPが設置された台所に設置される場合もあるが、この実施の形態1では他の部屋(例えば居間)に設置されている。なお、空気調和機は1台であるとは限らず、複数の部屋にそれぞれ設置され、合計数台の場合もあるが、以下の説明では1台の場合で説明する。なお、この空気調和機には、電力指令装置9の使用電力制御手段8Eが組み込まれている。これにより電力指令装置9との間で、要求電力、各調理器の調理状況や使用許可電力等の情報伝達が行われ、電力指令装置9が許可した使用電力内で使用電力制御手段8Eが空気調和機7の電力を制御するようになっている。
前記キッチン内電気機器KPと前記空気調和機7を総称して「家庭内電気機器」EEという。
また以下の説明で、「第1の家電機器」とは、前記食器洗い乾燥機6を除いたキッチン内電気機器KPをいう。これらは、電気エネルギーを消費する加熱部があり、また互いに独立して電源が投入・遮断可能であり、後述する電力指令装置9から電力削減指令を受け取る構成になっている。
また、前記空気調和機7と、食器洗い乾燥機6及び電気ヒーターによる温風を供給して衣類を強制的に回転させながら乾燥させる衣類乾燥機(図示せず)は、以下の説明では「第2の家電機器」という。これらは、それぞれ電気エネルギーを消費するモーター部を有し、かつ互いに独立して電源が投入・遮断可能であり、後述する電力指令装置9から電力削減指令を受け取る構成になっている。なお、「第2の家電機器」には、消費電力を消費するモーターに加えて、電気エネルギーを消費する加熱部があり、その加熱部によって温風を発生させるものも含む。例えば電気式の衣類乾燥機(洗濯機と兼用したものを含む)であり、洗濯してまだ乾燥していない衣類を収容する通気性のある籠状の容器と、この容器を回転駆動するモーターと、前記容器に供給される温風の熱源となる電気ヒーターとを備えている。なお電動圧縮機を備えたヒートポンプ方式で空気中の熱を回収して温風にする方式もある。
前記キッチン内電気機器KPは1つのブレーカーBKを介して交流200V電源EPと接続されている。また、システムキッチン1には、各キッチン内電気機器1〜3、5と信号線で接続された電力指令装置9が組み込まれており、各キッチン内電気機器1〜3、5の各使用電力制御手段8A,8B,8C,8Dと電力指令装置9との間で、要求電力、各調理器の調理状況や使用許可電力等の情報伝達が行われ、電力指令装置9が許可した使用電力内で各使用電力制御手段8A〜8Dが各キッチン内電気機器1〜3、5の電力を制御するようになっている。
なお、電力指令装置9は前記システムキッチン1に組み込まず、そのシステムキッチン1に近い場所、例えば台所の壁に取り付けておいても良い。またキッチン内電気機器KPには、他にオーブントースターや卓上のホットプレート、湯沸し器(電気ポット)など、何れも最大定格電力が1000W程度の機器があるが、説明を簡略化するため、具体的には説明せず、各図面にも表示しない。また各キッチン内電気機器1〜3、5と前記電力指令装置9との間は、電力線兼ねた信号線で接続しても良く、または、赤外線やその他無線通信で信号授受できるように接続したものでも良い。
(誘導加熱調理器2)
前記誘導加熱調理器2は、図1と図2に示すように、互いに独立して動作可能な誘導加熱部が左右に2つある、いわゆる2口のビルトイン式調理器であり、正面右側にある操作パネル13には、主電源スイッチ11の操作ボタン11Aと、左側にある第1の加熱口2L、右側にある第2の加熱口2Rの、それぞれの電力調整用のダイヤル12L、12Rとを有しており、使用者は、電源スイッチ11を投入して調理状況にあわせて電力調整ダイヤル12L、12Rを操作して調理を行うようになっている。つまり、この電力調整ダイヤル12L、12Rによって第1の加熱口2Lと第2の加熱口2Rにおける誘導加熱時の火力調節が、互いに独立して行える。なお、この誘導加熱調理器2の定格消費電力(最大消費電力)は5800Wである。
前記第1、第2加熱口2L、2Rの上方は耐熱強化ガラス板で形成されたトッププレート14で覆われ、このトッププレートの下方空間には、前記第1及び第2の加熱口2L、2Rの加熱源となる円環状の誘導加熱コイル2LC、2RCが設置されている。
2Cは、誘導加熱調理器2の本体2A外郭を構成する箱状の本体ケースで、前記トッププレート14は、その周囲が額縁状の金属製フレーム15で覆われて、このフレームによって本体ケース2Cの上面部に固定されている。
前記本体2Aの上面前部には、各種の調理条件の設定値、警報や異常情報を表示する表示手段としての液晶表示基板を備えた等の中央表示パネル16、同様に誘導加熱時の火力値や火力レベル(強、中、弱など)等を表示する液晶表示基板を備えた左表示パネル17L及び右表示パネル17R、左加熱口2Lの加熱時間や油調理時の油温度を液晶文字や複数の発光ダイオード(発光体)などで表示する左表示部18L、同じく右加熱口2Lの加熱時間や油調理時の油温度を表示する右表示部18R、並びに、加熱動作の開始等の操作をするための上面操作部26が設置されている。
前記トッププレート14の下面に近接して前記中央表示パネル16、右表示パネル17R、左表示パネル17R、左表示部18L及び右表示部18Rがそれぞれ設置されている。
前記中央表示パネル16、左表示パネル17L及び右表示パネル17R、左表示部18L、右表示部18Rは、図5に示す表示部駆動回路35によって表示動作が制御される。
次に図5に基づいて前記表示部駆動回路35について説明する。なお、この図5では、表示手段としては前記中央表示パネル16だけを図示しているが、左表示パネル17L及び右表示パネル17R、左表示部18L、右表示部18Rも、それぞれ中央表示パネル16と同様に制御される。
この実施の形態1において、前記中央表示パネル16は、全ての加熱源に共通で用いられるものであるため、統合表示手段とも呼ばれる。全ての加熱源とは、第1、第2の加熱口2L、2Rと、前記グリル調理器4のグリル庫22内部に複数個設置した輻射式電気ヒーター、例えばシーズヒーター34Hである。
前記中央表示パネル16を構成している表示画面129は、周知のドットマトリックス型液晶表示画面である。また高精細(320×240ピクセルの解像度を備えているQVGAや640×480ドット、16色の表示が可能なVGA相当)の画面を実現でき、文字を表示する場合でも多数の文字を表示することができる。液晶表示画面は1層だけではなく、表示情報を増やすために上下2層以上で表示するものを使用しても良い。また、単純マトリクス駆動方式を用いたSTN(SUPER TWISTED NEMATIC)液晶によって構成しても良い。
この実施の形態1において、表示画面129の表示領域は、縦(前後方向)約40mm(又は約80mm)、横約100mm(又は約120mm)の大きさの長方形である。
図5において、35は表示部駆動回路である。この表示部駆動回路は前記通電制御回路32と接続されている。
表示部駆動回路35は、表示用メモリー35A、表示コントローラー35B、インターフェース35C、電源35D、コモンドライバー35E、およびセグメントドライバー35Fを備えている。
表示部駆動回路35は、電源35Dからの電力により動作し、インターフェース35Cにより通電制御回路32の内蔵メモリー(図示せず)からの画像情報を取得する。
表示用メモリー35Aは、通電制御回路32から取得した画像情報を記憶する。
表示コントローラー35B、表示用メモリー35Aに記憶された画像情報を読み出し、この画像情報に基づいて、コモンドライバー35Eおよびセグメントドライバー35Fを継続的に駆動する。コモンドライバー35Eおよびセグメントドライバー35Fは、表示画面129の各画素に対応して設けられた互いに交差する電極に電圧を印加することで液晶を駆動する。このように、表示駆動回路35は、表示用メモリー35Aに記憶された画像情報を、必要な都度表示画面129に表示させる。また右表示パネル17R、左表示パネル17R、左表示部18L及び右表示部18Rについても表示用の画像情報や発光用の駆動電流が供給される。
表示部駆動回路35は、通電制御回路32を構成するマイクロコンピューターとは別の、専用のマイクロコンピューターによって構成されているが、同じマイクロコンピューターで構成しても良い。
図6〜図9は、前記表示画面129の表示例を示したものである。
主電源スイッチの操作ボタン11Aを押し、その後、第1の加熱口2Lを使用するような選択操作を行った場合(図示していないが、上面操作部26にある左右加熱口の選択キーなどを操作後)は、最初に図6の画面が表示される。つまり、誘導加熱とグリル庫22による調理メニューの選択用として、誘導加熱選択キー128N1、グリル調理選択キー128N2、オーブン調理選択キー128N3の各キーが一斉に(一覧状態に)表示される。オーブン調理とは前記グリル庫22内部の雰囲気温度を所定温度に高め、調理することをいう。例えばケーキを焼くことが一例である。
図6〜図9において、前記3つのキー128N1〜N3は、使用者が指などを触れることで静電容量が変化する接触式の入力キーを採用しており、使用者がキー表面に対応した位置の、表示画面129の上面を覆うガラス製トッププレート21の上面に軽く触れることで通電制御回路32に対する有効な入力信号が発生するものである。
すなわち、前記各種入力キー128N1〜128N3の部分(区域)を構成する前記トッププレート21表面には、キーの入力機能を示す文字や図形などが印刷や刻印等で何ら表示されていないが、これらキーの下方の表示画面129には、それら入力キーの操作場面毎に、キーの入力機能を示す文字や図形をその都度表示する構成になっている。
36Aは、メニュー選択表示部、36Bは、使用者にメニューの選択を促すことを文字で知らせる表示部である。これらメニュー選択表示部36A、表示部36Bは、入力キー機能は有していないので、これら表示部にタッチしても通電制御回路32には何の入力もされない。
111は、ヘルプモードキーであり、使用者がこれに触れると、その場面で使用者の操作に参考になる情報が表示されるとともに、別途設けた音声合成装置38によって、正しい操作方法が音声で報知される。なお、何度もこのキーを押した場合、この表示画面129の見方や操作方法が、模式図と文字で表示画面129全体に表示される。112は、インフォメーションキーであり、これにタッチした場合、その都度、使用する被加熱物Nの情報や調理方法、上手に調理する注意点などを詳しく表示画面129に文字で表示する
図6において、210Aは、加熱調理器2の運転中に後述する電力削減要求信号を受ける可能性のある対象機器であること示す第1の表示部であり、図6の例では表示画面129の中に長方形の枠で、白抜き文字等によって「電力削減対象」と表示される。実際に電力が削減された場合には後述する第3の表示部210Cとなり、「電力削減中」と表示しても良い。何れにしても使用者がこの第1の表示部210Aを見ることによって、この加熱調理器は電力が強制的に削減される可能性のあることを知ることができる。
図7において、210Bは、加熱調理器2の運転中に加熱調理器2の外部から所定の電力削減要請信号を受けている状態を示すための第2の表示部であり、この図7の例では前記表示画面129の中に表示された第1の表示部が消え、代わりにそれと同一位置に「電力削減要請受信中」と白抜きの文字で表示されたものである。
図8において、210Cは、加熱調理器2の運転中に加熱調理器2の外部から所定の電力削減要求信号を受けて実際に電力が削減された状態であること示す第3の表示部であり、この図7の例では前記表示画面129の中に表示された第1の表示部210A又は第2の表示部210Bが消え、代わりにそれと同一位置に「電力削減」と白抜きの文字で表示されたものである。
図9において、210Dは、電力削減が回避されていることを示す第4の表示部であり、前記第1の表示部210Aが消えた後、ほぼ同じ位置に「電力優先」と白抜きの文字で表示されるものである。使用者がこの第4の表示部210Dを見ることによって、この加熱調理器では現在行なっている加熱調理中に電力が強制的に削減されることなく、電力量が維持されていることを知ることができる。つまり、この加熱調理器には、後述する優先加熱工程としての「優先調理メニューの実行時間帯」があるので、その時間帯にある場合、「電力優先」という第4の表示部210Dが表示画面129の右側位置に現れる。
図6〜図9において、128A2は前記表示画面129に表示される「湯沸し」動作を選択するキー、128A3は「茹で」動作を選択するキー、128B1は「予熱」動作を選択するキー、128B3は「煮込み」動作を選択するキー、128C2は「揚げ物」動作を選択するキーである。これら5つのキーは、使用者が指などを触れることで静電容量が変化する接触式の入力キーを採用しており、表示画面129の上面を覆うガラス製トッププレート21の上面に軽く触れることで、前記通電制御回路32に対する有効な入力信号が発生するものである。言い換えると、前記5つのキー128A2,128A3、128B1、128B3、128C2は、表示画面129の所定位置に「湯沸し」等のようなキーの入力機能を示す文字の真上の前記トッププレート21の下面に接着又は蒸着された透明電極等で入力電極が形成されている。前記5つのキーに対応した表示画面129の所定位置に「湯沸し」等のようなキーの入力機能を示す文字が表示されていない場合は、そのキーは入力機能が無効になっているので、仮に使用者がその部分に触れても入力動作は全く行えない。
本体2Aの上面後部には、後述するグリル調理器4のグリル庫22内に空気を取り込むための吸気口20、及び、グリル庫22内の調理物から発生する煙等を排出するための排気口21が形成されている。吸気口20は、本体1の内部空間に送風機(図示せず)で室内空気を取り込むものであるが、その取り込まれた空気の一部は、前記誘導加熱コイル2LC、2RCの冷却用に使用され、冷却後の空気は前記排気口21から室内へ放出される。また、図3で示されるように、本体2Aの内部空間には、誘導加熱調理器2の動作全般を制御する制御装置(通電制御回路)32が備えられている。
(グリル調理器4の構成)
次に、図1、図2を参照しながら、グリル調理器4の構成について説明する。
誘導加熱調理器本体2Aの左下側内部にグリル調理器4が収容されている。このグリル調理器4は、少なくとも、本体2Aの前面部の左側に開閉可能に設置されたグリル扉28、そのグリル扉28で前面開口部が開閉自在に閉鎖された調理空間であるグリル庫22、そのグリル庫22の底部に載置された受け皿23、その受け皿23の上に置かれ、上側に魚等の被調理物25を載置するグリル網24によって構成されている。グリル扉21には、そのグリル扉を開閉するためにユーザーが手を掛けるための取っ手29が設置されている。
また、グリル庫22と排気口21とを連通させ、吸気口20から取り込まれた空気を調理物25から発生する煙と共に、グリル庫22から排気口21を介して外部に排気するための排気ダクト(図示せず)が、グリル庫22の後方に接続されている。
(上面操作部26の構成)
次に、図3を参照しながら、上面操作部26の構成について説明する。
図3で示される誘導加熱調理器2の平面視において、上面操作部26は誘導加熱調理器2の上面の手前側に、横方向に長く帯状に配置されている。つまり前記トッププレート14の前方端部よりも更に手前側で額縁状の金属製フレーム15の前方辺の直後位置に配置されている。
この操作部8は、左側から、左加熱口2Lの加熱動作を操作するための左加熱口用操作部81、グリル加熱動作を操作するためのグリル庫用操作部83、及び、右加熱口2Rの加熱動作を操作するための右加熱口用操作部82を備えている。
このうち、左加熱口用操作部81は、揚げ物ボタン81a、3kWボタン81b及び入/切ボタン81cによって構成されている。また、右加熱口用操作部82は、揚げ物ボタン82a、3kWボタン82b及び入/切ボタン82cによって構成されている。そして、グリル用操作部83は、グリルメニューボタン83a、スタート/停止ボタン83b、左矢印ボタン83c、右矢印ボタン83d、時間マイナスボタン83e及び時間プラスボタン83fによって構成されている。
また、スタート/停止ボタン83bには、スタート/停止ボタンLED84が備えられている。また、左矢印ボタン83c及び右矢印ボタン83dには、矢印ボタンLED85が備えられている。そして、時間マイナスボタン83e及び時間プラスボタン83fには、時間ボタンLED86が備えられている。
上記の各ボタン及び各LEDの機能についての詳細については後述する。
なお、図3で示される上面操作部26を構成する各ボタンの種類及び配置は、一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
(誘導加熱調理器2の制御部)
図4において、27は200Vの商用電源EPにブレーカーBK介して接続された電源線、11は使用者によって開閉操作される主電源スイッチ、31はこの主電源スイッチを介して電気エネルギーが供給される電源回路、32はこの電源回路から所定の定圧電流が供給されるマイクロコンピューターを中心に構成される通電制御回路である。前記マイクロコンピューターは、入力部と、出力部と、記憶部と、CPU(演算制御部)の4つの部分から構成され、その記憶部には、各種調理メニューに対応した通電制御プログラムが予め記憶(格納)されている。
33Lは、前記左側の誘導加熱コイル2LCに高周波電流を供給するためのインバーター回路である。誘導加熱コイル2LCは共振コンデンサー等が接続された周知の共振回路の中に接続されている。
33Rは、前記右側の誘導加熱コイル2RCに高周波電流を供給するためのインバーター回路である。誘導加熱コイル2RCは共振コンデンサー等が接続された周知の共振回路の中に接続されている。
そしてこれら2つのインバーター回路33L、33Rは、前記通電制御回路32によって互いに独立して駆動されるようになっている。
34は前記グリル調理器4のグリル庫22内部に複数個設置した輻射式電気ヒーター、例えばシーズヒーター34Hを駆動する駆動回路である。前記シーズヒーターは例えばグリル庫4の内部の天井付近と底面付近にそれぞれ水平に設置されており、前記グリル網24を上方と下方から加熱できるように構成されている。
37は、前記グリル庫22から排気口排気口21に至る排気ダクト(図示せず)の入口部又はその途中に設置された触媒(図示せず)を加熱することによって、グリル庫22から放出される煙の除去作用を促進するための触媒ヒーターであり、触媒(図示せず)を加熱することで酸化還元作用を促進する。
38は、電子的に作成した音声を合成する音声合成装置であり、使用者に対する操作の案内や、異常発生時の報知などをスピーカー39から音声でその都度報知する。
150は温度検出回路である。この温度検出回路は、前記誘導加熱コイル2LC、2RCによって加熱されるトッププレート14上の被加熱物Nの温度や、そのトッププレート14の温度、グリル庫22内部の雰囲気温度等を検知するための複数個の温度センサー(図示せず)から温度検知情報を受け取り、温度検出結果を通電制御回路32に送る。前記温度センサー(図示せず)は赤外線センサーのような非接触型、あるいはサーミスターのような接触型の何れであっても良く、それらを単独で、又は組み合わせて使用している。
41は、前記グリル庫22の内部に高温蒸気を供給する蒸気供給装置であり、高温蒸気によってグリル庫22で蒸し調理ができる。42は前記操作パネル13に設けた前面操作部であり、前記主電源スイッチ11の操作ボタン11Aと、2つの電力調整用のダイヤル12L、12Rとをそれぞれ有している。
(誘導加熱調理器2の誘導加熱動作)
次に、本実施の形態に係る誘導加熱調理器2の誘導加熱動作について説明する。
図10に示したフローチャートは、誘導加熱調理器2の基本的な動作ステップを示すものである。図9において、主電源スイッチ11の操作ボタン11Aを使用者がタッチして、電源を入れる(ST1)。すると通電制御回路32に電源が印加され、通電制御回路32は、温度検出回路150から温度情報を得て、調理器の主要な部分が異常な高温度になっていないかどうかを自己チェックする(ST2)。
異常が発見されない場合、通電制御回路32は、中央表示パネル16等の表示手段の駆動回路35を起動し、中央表示パネル16には異常がないので、調理を開始できること、またこれと同時に、音声合成装置38によって、中央表示パネル16で表示した内容と同様な内容を音声で報知する(ST3)。
その後、中央表示パネル16は、金属製鍋等の被加熱物Nを使用したい加熱口2L、2Rの上に置くように、使用者に動作を促す文字を表示する(ST4)。
この状態で、中央表示パネル16の表示画面には、前記した第1の表示部210Aが現れ、「電力削減対象」という文字が表示され、この加熱調理器2の運転中に後述する電力削減要求信号を受ける可能性のある対象機器であること示す。
ここで使用者が、左加熱口用操作部81における、入/切ボタン81cを押すと、左側の第1の加熱口2Lを選択したことになる。
また右側にある入/切ボタン82cを押すと、右側の第2の加熱口2Lを選択したことになる(ST6)。そこで誘導加熱のメニューを選択するステップ(ST7)に進むことになる。例えばその後揚げ物ボタン81aを押せば揚げ物調理を選択したことになり、また3kWボタン81bを押せば、最大火力で湯沸しを行うことができる。
一方、中央部にある入/切ボタン83bを押すと、グリル調理器4を選択したことになる(ST5)。つまり、電気輻射熱の加熱源を利用した加熱調理を選択したことになる。電気輻射熱の加熱源を利用した加熱調理を選択したあとは、ロースター調理、グリル調理又はオーブン調理の何れかを選択するステップ(ST9A、ST9B、ST9C)に進む。
また、使用者が本体2Aの前面操作部42に設置された左加熱口操作ダイヤル12Lを回転操作させることによって、その回転操作信号が、通電制御回路32に送信される。通電制御回路32は、受信した回転操作信号に基づいて、インバーター回路33Lの出力を調節し、使用している第1の加熱口2Lの加熱コイル2LCによる誘導加熱の火力を調整させる。その際、通電制御回路32は、その火力の強弱を、左加熱口2L用の表示部17Lに例えば火力値をそのまま示して表示させる。
そして、使用者は、加熱調理終了後、再び入/切ボタン81cを押下することによって、誘導加熱動作を終了させることができる。入/切ボタン83bを押せばグリル調理器4の電気輻射熱による加熱動作を終了させることができる。
また、使用者によって、被加熱物Nが第2の加熱口2Rの上方に設置された場合も、同様に、加熱口2Rの下部の本体ケース2C内部に設置された加熱コイル2RCによって誘導加熱を実施することができる。その際、使用者による入/切ボタン82c及び操作ダイヤル12Rの操作、並びに、表示部17Lの表示動作については、前述の入/切ボタン81c及び操作ダイヤル12Lの操作、並びに、前記第1の加熱口2L用の表示部17Lの表示動作と同様である。
次に、油調理について説明する。油調理とは天ぷら等の揚げ物調理のことである。
使用者は、食用油が入れられた油鍋を左加熱口2Lに置く。そして、使用者が上面操作部26に配置された入/切ボタン81cを押下することによって、前述の誘導加熱動作と同様に、油鍋の加熱動作が開始される。次に、使用者は揚げ物ボタン81aを所定回数押下することによって、油鍋に入れられた油の量を通電制御回路32にインプットし記憶させる。そして、左側の電力調整ダイヤル12Lを回転操作することによって、目標とする油温度を設定する。この際、設定された油の量及び油温度は、例えば、左表示部18Lに数字で表示させるものとすればよい。そして、使用者は、油調理終了後、再び入/切ボタン81cを押下することによって、油調理を終了させることができる。なお、揚げ物調理は、前記したように目標となる油温度まで自動的に温度上昇するように、通電制御回路32によって火力が調節されるが、これを調理メニューでは「自動揚げ物」と呼ぶ。また手動で火力を調節しながら揚げ物を調理することもできるが、それは「手動揚げ物」という。以下の説明では特に明示しない限り、揚げ物調理とはこの「自動揚げ物」のことを指す。
また、使用者によって、油鍋が右加熱口2Rに設置された場合も、同様に、油鍋の誘導加熱を実施することができる。その際、使用者による入/切ボタン82c、揚げ物ボタン82a及び右側の電力調整ダイヤル12Rの操作、並びに、右表示部18Rの表示動作については、前述の入/切ボタン81c、揚げ物ボタン81a及び左側にある電力調整ダイヤル12Lの操作、並びに、左表示部18Lの表示動作と同様である。
なお、揚げ物調理の開始時点では、中央表示パネル16の表示画面には、前記した第1の表示部210Aが現れていて、「電力削減対象」という文字が表示されている。
次に、揚げ物調理における通電制御パターンについて説明する。なお、第1の加熱口2Lの場合で以下説明するが、右側にある第2の加熱口2Rでも同じ制御パターンで実行される。
図20に示すように、(自動)揚げ物調理の調理メニューを使用者が選択すると、通電制御回路32は、予熱工程、揚げ物調理工程、火力アップ工程を順次実行する。また前記中央表示パネル16の表示画面には、前記した第4の表示部210Dが現れ、「電力優先」という文字が表示される。このため、この揚げ物調理中には、後述する電力削減要求信号を受けても電力を優先的に確保する調理器であることが使用者に認識できる。
予熱工程では、使用者が設定した目標の油温度が180℃である場合、予熱工程では所定の火力値(最大1500W)でインバーター回路33Lが駆動開始され、急速に油の温度は室温(例えば20℃)から目標温度T1の180℃まで上昇する。
この温度上昇は、前記した温度検出回路150によってリアルタイムで監視されているので、目標温度T1(第1の温度)の180℃になったことが温度検出回路150によって検出されると、通電制御回路32は、誘導加熱量、つまりインバーター出力を調節して、目標温度をそのまま維持しようとする(このような温度検出情報に基づいて、目標温度に近づけようと高周波火力を自動的に調節する動作を以下、「温度フィードバック制御」という)。
またこの「温度フィードバック制御」の工程に入ると、前記中央表示パネル16の表示画面では、前記した第1の表示部210Aによる「電力削減対象」の文字が消え、代わりに第4の表示部210Dが現れ、「電力優先」という文字が表示される。このため、表示画面129を使用者が見れば、この揚げ物調理の重要な「揚げ物調理工程」は、後述する電力削減要求信号を受けても電力を優先的に確保する動作が行われることを容易に認識できる。
また音声合成装置38を介して使用者に「油の温度が適温になりました。具材を投入してください」というような音声ガイドを行う。
使用者が具材、例えば冷凍されていたコロッケを油の中に入れると、その油は冷たい具材によってその投入時点から急速に冷やされるので、12に示すように温度が急降下する。しかし、温度検出回路150はこのような温度降下の動きを監視しているので、直ちにインバーター回路33Lの火力を所定の火力1500W又は1800Wに上げて駆動するので、油の温度は再び上昇する(温度フィードバック制御)。このようにしてして再び目標温度T1に至った段階で直ちに(または所定時間経過したら)揚げ物工程から火力アップ工程に移行する。
火力アップ工程では、前記目標温度T1よりも高い第2の温度T2の225℃と、これより更に高い上限温度(第3の温度)T3の230℃間に油の温度が維持されるように通電制御回路32はインバーター回路33Lを制御する。図20に示すように火力値は900W程度で間欠駆動される。この第3の温度T3になった以降の工程を「揚げ物仕上げ工程」と呼び、揚げ物をカラッと仕上げるために重要な工程である。このような火力アップ工程で十分な火力を投入して調理しないと、揚げ物がうまくできないことになる。なお、揚げ物工程は所定の時間内に制限されていないので、使用者が入/切ボタン81cを押下すれば、揚げ物調理は全て終了する。
図20に示すように(自動)揚げ物調理の調理メニューにおいて、前記揚げ物調理工程から火力アップ工程までを「優先調理メニューの実行時間帯」と定義しており、この実行時間帯には外部からの操作や指令によって電力の削減が行われないようにしている。つまり、この誘導加熱調理器2の通電制御装置32は、実行中の調理メニューが、前記「優先調理メニューの実行時間帯」にあるかどうかを常に把握し、もしその実行時間帯にある場合には、その旨を外部に報知する機能を有している。また、前記中央表示パネル16の表示画面では、第3の表示部210Cが「電力優先」という文字を表示し続け、電力を優先的に確保する動作が通電制御回路32によって自動的に行われることが分かる。
次に、お湯沸かし動作について説明する。
使用者は、水が入れられた鍋や、やかん等の被加熱物Nを左加熱口2Lに載置する。そして、使用者が上面操作部26に設置された入/切ボタン81cを押下することによって、前述の誘導加熱動作と同様に、加熱動作が開始される。次に、使用者は3kWボタン81bを所定回数押下することによって、加熱時間を設定する。この際、設定された加熱時間は、例えば、左表示部18Lに表示させるものとすればよい。そして、加熱動作開始後、設定された加熱時間が経過した後、自動的に加熱動作が終了する。
また、使用者によって、水の入れられた鍋又はやかん等の被加熱物Nが右加熱口2Rに置かれた場合も、同様に、誘導加熱を実施することができる。その際、使用者による入/切ボタン82c及び3kWボタン82bの操作、並びに、右表示部18Rの表示動作については、前述の入/切ボタン81c及び3kWボタン81bの操作、並びに、左表示部18Lの表示動作と同様である。
(誘導加熱調理器100のグリル調理器4における加熱動作)
次に、図1〜図4を参照しながら、本実施の形態1に係る誘導加熱調理器2のグリル庫22における加熱調理動作について説明する。
使用者は、まず、グリル扉28の取っ手28Aを掴んで手前に引っ張り、受け皿23及びグリル網24をグリル庫22内から外側に引き出す。次に、使用者は引き出したグリル網24の上に魚等の被調理物25を載置する。次に、使用者は、再び、取っ手28Aを掴んで本体2Aのグリル庫22奥側に押し込み、受け皿23及びグリル網24をグリル庫22内に引き込んで、グリル扉28を閉める。そして、使用者は、上面操作部26に配置されたグリルメニューボタン83aを所定回数押下することによって「姿焼き」、「グリル」及び「オーブン」等のグリルメニューを選択する。
次に使用者によって「姿焼き」のグリルメニューが選択された場合のグリル加熱動作について説明する。
使用者は、左矢印ボタン83c及び右矢印ボタン83dを所定回数押下することによって、被調理物25の焼き色を設定する。この焼き色の設定操作信号は、通電制御回路32に送信され、通電制御回路32は、その設定操作信号に基づいて、中央表示パネル16にその設定された焼き色を表示させる。そして、使用者は、スタート/停止ボタン83bを押下することによって、「姿焼き」メニューのグリル加熱動作が実施される。具体的には、使用者によるスタート/停止ボタン83bの押下操作信号が、通電制御回路32に送信され、通電制御回路32は、その押下操作信号を受信すると、先程受信した焼き色の設定操作信号に基づいて、被調理物25の調理時間を計算する。次に、通電制御回路32は、ヒーター駆動回路34(図4参照)に対し、グリル庫22内に設置されたヒーター34Hに通電させ、そのヒーターによって、設定された焼き色となるように被調理物25を加熱させる。そして、通電制御回路32は、加熱動作を開始してから、計算した調理時間経過後に、加熱動作を終了させる。
次に、使用者によって「グリル」のグリルメニューが選択された場合のグリル加熱動作について説明する。
使用者は、左矢印ボタン83c及び右矢印ボタン83dを所定回数押下することによって、被調理物25に対する加熱動作の火力を設定する。この火力の設定操作信号は、通電制御回路32に送信され、通電制御回路32は、その設定操作信号に基づいて、中央表示パネル16にその設定された火力を表示させる。
次に、使用者は、時間マイナスボタン83e及び時間プラスボタン83fを所定回数押下することによって、調理物25に対する加熱時間を設定する。この加熱時間の設定操作信号は、通電制御回路32に送信され、通電制御回路32は、その設定操作信号に基づいて、中央表示パネル16にその設定された加熱時間を表示させる。そして、使用者は、スタート/停止ボタン83bを押下することによって、「グリル」メニューのグリル加熱動作が実施される。具体的には、ユーザーによるスタート/停止ボタン83bの押下操作信号が、通電制御回路32に送信され、通電制御回路32は、その押下操作信号を受信すると、ヒーター駆動回路34に対し、グリル庫22内に設置されたヒーター34Hに通電させ、そのヒーターによって被調理物25を加熱させる。そして、通電制御回路32は、加熱動作を開始してから、設定された加熱時間経過後に、加熱動作を終了させる。
次に、使用者によって「オーブン」のグリルメニューが選択された場合のグリル加熱動作について説明する。
使用者は、左矢印ボタン83c及び右矢印ボタン83dを所定回数押下することによって、調理物25に対する加熱動作の加熱温度を設定する。この加熱温度の設定操作信号は、通電制御回路32に送信され、通電制御回路32は、その設定操作信号に基づいて、中央表示パネル16にその設定された加熱温度を表示させる。
次に、使用者は、時間マイナスボタン83e及び時間プラスボタン83fを所定回数押下することによって、被調理物25に対する加熱時間を設定する。この加熱時間の設定操作信号は、通電制御回路32に送信され、通電制御回路32は、その設定操作信号に基づいて、中央表示パネル16にその設定された加熱時間を表示させる。そして、使用者は、スタート/停止ボタン83bを押下することによって、「オーブン」メニューのグリル加熱動作が実施される。具体的には、使用者によるスタート/停止ボタン83bの押下操作信号が、通電制御回路32に送信され、通電制御回路32は、その押下操作信号を受信すると、ヒーター駆動回路34に対し、グリル庫22内に設置されたヒーター34Hに通電させ、設定された加熱温度の下に、ヒーター34Hによって被調理物25を加熱させる。そして、通電制御回路32は、加熱動作を開始してから、設定された加熱時間経過後に、加熱動作を終了させる。なお、この「オーブン」のグリルメニューでは、前記グリル庫22の内部雰囲気温度が使用者の設定した加熱温度になるように通電制御回路32はヒーター34Hの火力を自動的に制御する(温度フィードバック制御)。
(炊飯器32構成)
この実施の形態1における炊飯器3は、図1、図11、図12、図13に示すように、箱型の炊飯器本体ケース41と、蓋体42と、蒸気処理装置50から構成されている。その蓋体42又は前記本体ケース41の表面には、使用者が操作する操作部43があり、その操作部には、炊飯開始ボタン44を有しており、周知のように炊飯開始ボタン44が押されると自動的に炊飯をスタートし、吸水工程を経て沸騰工程で一気に炊き上げ、ご飯を炊ける調理器である。なお、炊飯後は一定の時間(例えば7時間)は保温ヒーター(図示せず)によってご飯は温かく保温される。炊飯器3は、使用者が自由に持ち運びできるので、システムキッチン1以外の場所で使用することも可能である。
記炊飯器3の本体ケース41は平面形状が縦長の長方形又は正方形を有している。本体ケース41の内部には、上面が開口した平面形状円形の磁性金属製内釜40と、この内釜の上面開口を開閉自在に閉塞するよう前記本体ケース41の後部の一側縁部にヒンジ機構で支持された前記蓋体42と、前記内釜40を加熱する加熱手段45を備えている。この加熱手段は、誘導加熱方式のヒーターが用いられ、線径が数十ミクロン程度の細い銅線を多数束ねて撚り線構造にし、円板(環状)形状にした誘導加熱コイルが実際の加熱体となる。この加熱コイルは前記内釜40の外側底面に広い範囲で密着又は微小間隙を置いて対面するように設置されている。
前記蓋体42の内側には、その蓋体42を閉塞した時、内釜40の上面と蓋体42の間から蒸気が外部に漏れなくする為の環状のゴム製蓋シール材を具備した良熱伝導性金属からなる円形内蓋46が着脱自在に固定されている。この内蓋46の一部には、内釜40で発生した蒸気を外部に排出するための蒸気発生口47が形成されている。
前記蓋体42には、その上面に臨むように液晶表示部49(図1、図12参照)が収納されている。この液晶表示部の表示画面には、炊飯開始前の各種条件設定情報や、実行されている炊飯工程の情報などが視覚的に認識できるよう、文字や記号、イラストなどで表示される。また加熱手段45の動作状態や炊飯に参考となる関連情報(異常使用を注意する目的や異常運転状態の発生を知らせる目的のものを含む)も前記液晶表示部49の表示画面にて適宜表示される。
54Aは、後述する「炊飯工程」の中の「強火」工程を実行している状態であることを表示する第6の表示部であり、文字で「沸騰中」と表示される。54Cは第7の表示部であり、前記した第4の表示部210Dと同様に、不用意な電力削減は問題があるので、電力を優先的に確保する(炊飯工程の強火加熱)工程に入っていることを示すためである。なお、誘導加熱調理器2の第1の表示部210Aと同様なお、電力が削減される可能性のあることを示す第5の表示部54B(図示せず),また同じく第3の表示部210Cと同様に、電力が削減されたことを示す第8の表示部54D(図示せず)が液晶表示部49に表示される場合もある。
図11において、55は炊飯器の操作部であり、炊飯動作を開始したり予約を確定したりする「炊飯開始ボタン」44、炊き上がった米飯を一定の所定の温度で保温するモードを開始する「保温キー」55B、通常の炊飯やおかゆや炊き込みご飯などの各種炊飯メニューの選択を行う「メニューキー」55C、白米や玄米など炊飯するお米の種類を選択して入力する「お米キー」55D、炊飯器1の状態と次に必要な操作を音声にて報知したり報知する音量を調整したり音声モードの入り切りを行う「音声ナビゲージョン用キー」55E、予約炊飯機能の設定を行う「予約キー」55F、各種入力操作やモードを取り消し又は切る「切/取消キー」55G、炊き方(炊き加減)の「ふつう」、「かため」、通常炊飯とは異なる「おかゆ」をそれぞれ選択できる「炊き方キー」55Hを、それぞれ備えている。これら各キーは、使用者が押すことによって内蔵された電気接点が閉じられ、入力信号が発生するような機械的スイッチ又は前記した誘導加熱調理器の静電容量式のタッチ式スイッチの何れでも良く、また組合せて使用しても良い。
56は、一度押すことによって消費電力を所定量だけ減らすことができる節電スイッチである。例えば、予熱工程でこの節電スイッチを押すと、最初の数分間だけ消費電力が減らせるが、その分予熱工程の所要時間が長くなるので、液晶表示部49の表示画面にはその旨注意事項が表示され、また前記音声ナビゲージョン用キー55Eをその都度押さなくても「節電モードを選択しました。予熱工程の時間が数分間延びます」というような案内を行なわれる。
48は、一端が前記蒸気発生口47に接続され、終端部に蒸気排出口53が形成された蒸気ダクトであり、蓋体42の中を貫通するように設置されている。
前記蒸気処理装置50は、蒸気発生口47から排出される蒸気を復水する処理を行うための水が貯蔵できる上面が開口した水タンク(図示せず)と、その水タンクの上面開口部を開閉自在に覆うタンク蓋51とを有している。
52は、前記タンク蓋51に、前記蒸気排出口53に対応する位置に設けた蒸気導入口である。この導入口の下方には、その導入口に連通した連通管(後述する)を設けている。前記蓋体42を閉じた状態では、前記内蓋46によって内釜40の上面開口部が密閉されるとともに、前記蒸気導入口52が前記蒸気排出口49に密着状態に接触する。
前記連通管(図示せず)は、前記タンク蓋51の下面に上端部が固定され、水タンク(図示せず)の中の水中に大部分が没するように垂直に設置されている。その連通管の下端は、水タンクの中に溜めた水の水面から一定深さ(H)位置に位置するように、その垂直方向の長さと水タンクの大きさ(高さ)との関係が考慮されている。これにより前記連通管の下端開口から放出された蒸気が、水タンク内の水に十分に接触させ、水に戻るようにしている。
従って、前記一定の深さ位置(H)は、最大火力で加熱手段45が通電された場合でも、蒸気発生口47から発生する蒸気の全てを復水できるように設定されており、高温の蒸気が前記連通管の下端開口から水中に出た段階で、蒸気気泡が水中を吹き上がる速さと、蒸気が冷えて水に戻る速さとから決定される。ここでいう「蒸気」とは、後述する「炊飯工程」と「むらし工程」において内釜40内部で発生し、連通管に導かれる蒸気のことをいうが、この実施の形態では、「吸水工程」〜「保温工程」までの蒸気は全て回収可能である。なお、保温工程とは、この実施の形態では、「むらし工程」の終了後7時間又は8時間までをいうが、この時間の長短は適宜変更可能である。
なお、前記蓋体42を閉じた状態では、前記蒸気ダクト48の末端部にある蒸気排出口49のシール材が、前記タンク蓋51の蒸気導入口52に密着状態に接触し、蓋体42の内部を通過する高温の蒸気が途中で外部に連通することなく水タンク(図示せず)の連通管の内部まで確実に連通するようにしている。
次に炊飯器3の制御手段60について図13を中心に説明する。
制御手段60は、電源部61と制御部62とから構成されている。制御部62は1つ又は複数のマイクロコンピューターを中心に構成されている。マイクロコンピューターは、入力部と、出力部と、記憶部と、CPU(演算制御部)の4つの部分から構成され、前記電源部62を介して直流電源が供給され、加熱手段45と液晶表示部49とを制御する中心的な役目を果たすものである。
前記制御部62には、加熱手段45の動作条件として内釜40底面の温度と米飯の温度との相関テーブル、各炊飯メニュー(白米、無洗米の選択、炊き加減の「ふつう」、「かため」、通常炊飯とは異なる「おかゆ」)、がそれぞれ記憶されている。さらに炊飯を行う工程として「予熱工程」、「炊飯工程」、「むらし工程」及び「保温工程」という4つの工程を順次実行するような制御プログラムが記憶されている。なお、ここでいう「動作条件」の一つとして通電条件があり、この通電条件とは、加熱手段45の電気的、物理的な条件を言い、加熱手段45の通電時間、通電量、通電パターン(連続通電、断続通電、通電率等)等を総称したものである。
温度検知手段63は、圧縮バネ等により内釜40の底面に下方から圧接され、内釜40底面の温度を検知しその検知信号を出力するもので、サーミスタ式温度センサーを使用している。64は前記本体1の蓋体3上面前方部に設けた操作手段で、図12に示しているように、蓋体42の表面に形成された複数個の前記押圧式のキー55D、55Hを操作することにより、加熱手段45の動作条件を設定することができる。また前記した操作部43は、液晶表示部49の手前に配置されている。前記炊飯開始ボタン44は、その液晶表示部49よりも手前又はその表示部49の範囲内に設けてある。
65はタイマー等で構成される計時手段で、これが出力する計時信号が前記制御部62に入力されるとともに、前記液晶表示部49に対して現在時刻や設置時刻情報が出力されるので、それら時刻が液晶表示部49の表示画面上に表示される。
66は前記水タンクの中に貯められた水の量を水位で検知する水位センサーで、水タンクの水を光や重量その他の物理条件で把握するものであり、本体ケース41の前方部の水タンクと対向する部分に設けるか、または水タンクが乗せられる底板67の前方部上面に設置してある。
68は前記水タンクの中に貯められた水の温度を検知する水温センサーで、水タンクの側壁を介して水温を検知するように、本体ケース41の前方部の水タンクと対向する部分に設けるか、または図11に示すように水タンクが乗せられる底板67の前方部上面に設置してある。
次に、炊飯器3の炊飯動作について説明する。
この実施の形態1の炊飯器は、図21に示すように、予熱工程、炊飯工程、むらし工程及び保温工程という4つの工程を順次実行するように前記制御部62に制御プログラムを持っている。
まず、本体ケース41から取り外した水タンクのタンク蓋51を取外し、水タンクの中に外部から水を入れる。そして、内釜40内に米と水を規定量入れ、本体ケース41の蓋体3上面にある炊飯開始ボタン44を押圧して炊飯を開始する。これにより、加熱手段45が加熱され炊飯を行う。この最初の段階では、まだ吸水工程であるので、電力が削減される可能性のあることを示す第5の表示部54B(図示せず)が液晶表示部49に表示されている。これによりこの炊飯器を使用する最初の段階で外部からの指令によって電力削減動作が行われる電気機器であることが使用者には分かる。
図21において、予熱工程H1において加熱手段45は最初強火力となるよう連続通電パターンで通電が開始されるが、内釜40内部の温度が所定の温度(55℃)に達したことを温度検知手段63が検知すると、この情報が制御部62に入力され、55℃を維持するように通電量が抑制され、また通電が間欠的になるので、ほぼ蒸気は発生せず、水タンクにおける蒸気処理(復水処理)も行われていない。この55℃維持の状態を一定時間以上続ける。55℃になった時点からの経過時間を計時手段65が計測し、この計時信号が前記制御部62に入力されて予熱工程の終了時間が制御される。
次に、炊飯工程H2に入ると、最初の強火工程H2Aでは、加熱手段45の火力が強くなり徐々に内釜40内の水温が上昇し内釜40内の水が沸騰に達する。沸騰が激しくなり蒸気量が増すと、内釜40の中は大気圧よりも圧力が上昇し、内釜40内で発生した蒸気は、その圧力により押出されて蒸気発生口47から蓋体42の内部の蒸気ダクト48で構成された密閉空間に入る。その後蒸気ダクト48から蒸気処理装置となる水タンクへ蒸気が噴出する。つまり炊飯工程H2は、最大火力、例えば1300Wで加熱される強火工程H2Aと、その後の、弱火工程H2Bの2つから構成されている。
前記炊飯工程に入ると、第5の表示部54B(図示せず)が液晶表示部49から消え、代わりに第7の表示部54Cが液晶表示部49に表示される。これにより電力が優先的に確保されて炊飯動作が行われていることが使用者には分かる。なお、音声ガイド(ナビゲージョン)手段によって同じ趣旨を音声で報知しても良い。また前記第5の表示部54B(図示せず)、第6の表示部54A、第7の表示部54C、あるいは電力削減要請を受けていることを示す第9の表示部54E(図示せず)を、例えば前記液晶表示部49の周囲近傍位置に「発光するボタン」のような表示物で表示し、液晶表示部49の中には表示しないようにしても良い。
そして、蒸気処理装置となる水タンク内に流れ込んだ蒸気は、連通管(図示せず)の下端開口から水中へと噴出し、そこで水タンクの中の水と接触して熱を水に奪われ結露して水に戻る。
このようにして、蒸気が処理されることにより、内釜40から発生した蒸気が外部に漏れるのを防止し、炊飯時の蒸気が直接室内空間に放出され、不快な湿気の増加を防ぐことが可能となる。
そして、炊飯工程の途中の時点(これは沸騰状態に至った時点からの経過時間を前記制御部62が見ていることで実現している)からは加熱手段45の火力は弱火工程H2Bになり、終わりになると水蒸気化して放出されてしまっている内釜40内部にあった水分が少なくなり、内釜40内部温度はそれまで100度強であった状態から130℃程度まで急上昇する。するとこのような急激な温度上昇を前記温度検知手段63が検知し、制御部62に温度検知情報を入力するから制御部62は炊飯完了と判断する。
また前記弱火工程H2Bに入った時点で、液晶表示部49に表示されていた第7の表示部54Cは消える。なお、この弱火工程や前記予熱工程で、電力指令装置9から電力削減要請信号を受けた場合は、そのことを表示するための第9の表示部54E(図示せず)が前記液晶表示部49に表示される。
するとこの段階からむらし工程H3に入り、炊飯が進行していくと、時間の経過に伴い蒸気発生量が徐々に少なくなり、炊飯が終了すると、内釜40内が冷えて圧力が低下する。なお、これにより、蒸気ダクト48内部の圧力が低下するが、タンク蓋51の下方にあって、水タンク(図示せず)の中の水中に大部分が没している連通管(図示せず)の上部には、逆止弁(図示せず)があるので、その逆止弁から外部の空気が吸い込まれ、内釜40内の圧力は元の大気圧に近い状態まで戻るので、水タンク内の水が蓋体40側に吸い上げられて蓋体42の側に流れるという事態を防止できる。
なお、炊飯中に発生する蒸気量は、米の種類(白米、無洗米等)、炊き方(かたさ、粘り)、メニュー(通常の炊飯や、おかゆ)等の組合せにより異なるが、いずれの場合においても、確実にその調理メニューを終了するまでの過程で蒸気処理を行い、炊飯完了後の水タンク内の水温も、やけどしない温度、例えば55℃以下となるように、水タンク内の水容量は設定されている。
炊飯完了後は保温工程H4に移行し、前記加熱手段45とは別に設けた保温ヒーター(図示せず)によって内釜40の温度は所定温度、例えば70℃に維持される。
前記したように、蒸気は炊飯工程H2とむらし工程H3で主に発生するので、本発明の実施の形態1では、これら工程における放出される蒸気量を計算や実験等で確かめ、また水タンクの水量と水位を設定した。仮に十分な水量があっても、水中の浅い位置で蒸気を水中に噴出させると、十分に蒸気と水とが接触できない状態のまま蒸気が泡状のまま上昇して水面から大気に放出されてしまうということが分かった。そこで、この実施の形態1では水位センサー66により、炊飯工程の最初の吸水工程開始前に前記制御部62は水位センサー66の検知情報から水タンク内部の水量が十分であるかどうかの判定を行っている。
さらに、前記タンクに貯められた水の温度を検知する水温センサー68を有しているから、当該水温センサーの出力により前記制御部62は水タンク内の水の温度が所定温度よりも高いかどうかを判断できる。もし異常に高い場合には、前記制御部62は加熱手段45に通電開始の動作を実行しないので、予熱工程さえ実行しない。
さらに一旦炊飯工程に入ってしまった後では、炊飯完了時まで前記水タンクの水温が所定の温度範囲になるように設定されているが、何らかの原因(例えば調理器の設置空間の室温が急激に上昇した場合)で前記水タンクの水温が所定温度よりも高くなってしまった場合でも、それを水温センサーが検知できるようになっており、そのような場合には、前記制御部62は加熱手段45の通電条件を変え、実質的な火力を弱める動作を実行するように前記制御部62の制御プログラムは設定されている。但し、この火力抑制の程度は本来の炊飯動作、炊き上がりに支障が出ない範囲で行われる。また火力を弱める手段として供給電力量自体を減らすことや通電率を下げることなど適当な手段を用いれば良い。なお、この実施の形態1では、炊飯開始時に水温35℃以下の場合は炊飯動作開始され、35℃超の場合は炊飯操作に入らないようになっている。これは炊飯終了時に水タンクの水温の温度が異常高温領域にならないように考慮したものである。
前記炊飯器で、炊飯性能に最も大きな影響を与えるのは、炊飯工程H2の最初の強火工程H2Aである。そこでこの炊飯器3では、制御部62は、この強火工程H2Aを「優先調理メニューの実行時間帯」に指定している。つまり実行中の調理メニューが、この「優先調理メニューの実行時間帯」にあるかどうかを常に把握し、もしその実行時間帯にある場合には、その旨を使用電力制御手段8Bを通じて電力指令装置9に報知する機能を有している。これによって不用意に電力削減が行われることを防止している。またこの強火工程H2Aに入ると、第7の表示部54Cが液晶表示部49に表示され、電力が優先的に確保されて炊飯動作が行われていることが使用者には分かる
(電子レンジ5)
前記電気ヒーター付きの電子レンジ5は、例えば2450メガヘルツの周波数の電波が導入される金属製加熱室(図示せず)と、この加熱室を収容した電子レンジ本体ケース(図示せず)と、前記加熱室の取り出し口を開閉自在に密閉するドア70とから構成されている。70Aはドア70の取っ手である(図1参照)。
前記電子レンジ5の本体ケースの右部前面には、使用者が操作する操作部71があり、その操作部には電源スイッチ72と、スタートボタン73と、加熱時間設定用のダイヤル(タイマー設定用)74とを有しており、ダイヤル74で加熱時間を設定し、スタートボタン73を押すと、設定されたパワーを設定時間出力して調理を完了する調理器である。なお、加熱室内に置いた被加熱物の温度を赤外線センサーなどの感熱素子(図示せず)で検知し、被加熱物の温度が目標の温度まで上昇したら電波の発振源の駆動を自動的に停止するように構成したものでも良い。
(食器洗い乾燥機6)
本発明の実施の形態1に係る食器洗い乾燥機の基本構成について説明する。
図14において、食器洗い乾燥機6は、外郭を形成する本体160と、この本体内部に収納される洗浄部161から構成されている。
本体160は箱形状であり、前面には前面開口部160Aが形成されており、内部から外側にかけて、洗浄部3に洗浄水となる水道水を給水する本体側給水管162と、洗浄部3の洗浄水を排水する本体側排水管163が設けられている。
この本体側給水管162の本体内部側に位置する端部には、接続部162Aが設けられ、本体外側に位置する端部は上水道管と接続される。また、この接続部162Aの上流側には、洗浄部161に流入する水道水の流れをコントロールする為の給水弁162Bが設けられる。
次に、本体側排水管163の本体内部側に位置する端部には、接続部163Aが設けられ、本体外側に位置する端部には排水管163が接続されている。なお、本体側給水管162及び本体側排水管163は、後述する洗浄部161の前後の動きに追従できるように、形状が柔軟に変化できるホース等が用いられている。
次に、本体160の内部両側面160Cの対向する位置に、それぞれ前後方向に長手方向を向けて第1のレール164がネジ止め等により固定されている。
また、本体2の底部160Bの前面開口部160A側近傍には、ストッパー165がネジ止め等により固定されている。
このストッパー165は、本体160の後部側の面が底部160Bと略垂直であり、前側は前面開口部160A側に向かって傾斜する斜面が形成されている。
次に、洗浄部161は、洗浄槽166と、洗浄槽4の前面に一体的に取付けられる前扉167と、洗浄槽166の外側に取付けられ、後述する各種機能部品の外側を被うカバー168から構成されている。
この前扉167の前面には、使用者が洗浄部161を本体160から引き出すときに手をかける取っ手167Cや、食器洗い乾燥機6の各種操作を行う操作部168が備えられている。
洗浄槽166は、上方に食器を収納する為の開口部166Aが形成された上面全体が開放された箱状であり、食器洗浄中は本体160の内部に収納され、本体160から前面に引き出すことにより、開口部166Aから食器等を出し入れ可能に構成されている。
この洗浄槽166の内部166bには、洗浄水を噴射・循環させる回転ノズル169と、洗浄水を加熱するためのヒーター170と、洗浄する食器類を所定の位置に並べる食器かご171が設けられている。
次に、洗浄槽166と前扉167の間には、制御部172と水位検知装置173が設けられている。
この制御部172は、操作部168からのユーザーの指示や各検知装置からの信号により、後述する洗浄ポンプ174や排出ポンプ175、電動送風部176、前記ヒーター170、前記給水弁162B等の制御を行う。
また、水位検知装置173は、洗浄槽166内部の洗浄水の水位を検出し、検出情報を制御部172に送っている。前記操作部168には、食器洗い乾燥機の基本的な運転モードを選択する運転モード選択キー190と、その選択キーによる選択結果を表示する表示部191と、運転の開始と停止を指令する運転スイッチ192が、それぞれ配置されている。前記運転モードとは、「洗浄モード」、「すすぎモード」、「乾燥モード」の動作を指定するものである。これら各種運転モードは、前記制御部172に格納された半導体記憶素子の中の運転プログラムによって実行されるようになっている。
次に、洗浄槽166の後部には、給水口166Cと送風口166Dが開口している。
給水口166Cには、洗浄部側給水管177が接続されている。そして、洗浄部側給水管177の端部には、本体側給水管162の接続部162Aと着脱自在に接続可能な接続部177Aが設けられている。
送風口166Dには、食器等の被洗浄物を乾燥させる「乾燥モード」のための空気を送る前記電動送風部176が接続されている。この電動送風部176は、空気を流す為の送風ファン176Aと、流れてきた空気を暖めるヒーター176Bと、送風ファンの回転駆動源となるモーター176Mとを有する。前記ヒーター176Bは前記「乾燥モード」時に通電される。
次に、洗浄槽166の下部には、前記洗浄ポンプ174と排水ポンプ175が設けられ、更にこの洗浄ポンプと排水ポンプを被うカバー168が取付けられている。
この洗浄ポンプ174は、「洗浄モード」と時において、洗浄槽内部から洗浄水を取り込み、回転ノズル169に所定の圧力で送り込むことにより、回転ノズル169の回転力付与と洗浄水の循環を行っている。「すすぎモード」時にも同様に洗浄ポンプ174は運転され、洗剤の含まれていない清浄な湯や水を回転ノズル169から噴射する。
また、排水ポンプ175は、洗浄部側排水管180と接続することで、洗浄槽内部から洗浄水を吸い上げ、食器洗い乾燥機6の外部に洗浄した後の汚れた水を排水する。そして、洗浄部側排水管180の端部には、本体側排水管163の接続部163Bと着脱自在に接続可能な接続部180Aが取付けられている。
なお、この食器洗い乾燥機6の定格最大消費電力は900W〜1000W程度であり、その内訳として、前記洗浄ポンプが100W、洗浄液を加熱するヒーター170が800W、乾燥用のヒーター176Bが200W、送風ファン176Aが10Wである。これら部品が全て同時に通電される訳ではないので、前記した定格最大消費電力の範囲に収まっている。
次に、洗浄槽166の下面166Eと対向するカバー168の底部168Aの後側には、開口部168Bが形成されている。
この開口部168Bを臨む位置には、可動係止部181が設けられている。可動係止部181は、底部168Aに固定される基部182(図示せず)と、この基部に設けられた軸183(図示せず)と、この軸に回動自在に軸支された係止部184(図示せず)と、この係止部を一方向に付勢するように弾性支持する弾性部材185からなる。この弾性部材185は、例えば、ヒンジバネなどである。
前記係止部184は、軸183を中心に回転することにより、開口部168Bを出入り可能に設けられている。また、係止部184は、外力が加わらないときは、開口部168Bbから一部が突出した状態で、弾性部材185に弾性支持されている。
次に、カバー168の底部168Aの前側には、連動部186Aによって前記可動係止部181と接続された解除操作部186が取付けられている。この解除操作部186の解除動作が、連動部186Aを連動させて、前記係止部184(図示せず)を弾性部材185(図示せず)の弾性力に抗して回動させることができる。
この解除操作部186は、例えば、カバー168に対して前後に移動可能に設けられた操作レバーであり、この操作レバーに連動可能に取付けられた連動部186Aが、可動係止部181に連結する形態である。
また、前扉167には、解除操作部186が臨む位置に点検用開口部167Aが形成されている。この点検用開口部は、通常は蓋167Bにより閉鎖されているが、本体160と洗浄部161を分離するときに蓋167Bを外すことで、解除操作部186を食器洗い乾燥機6の前側から操作可能にする。
尚、洗浄部161の側面と重なるカバー168の(左右)両側面には、それぞれ前後方向に向かって第2のレール187がネジ止め等により固定されている。
以上のように構成された本体169と洗浄部161は、本体160の内部(左右)両側面160Cに固定された第1のレール164に、洗浄槽166の(左右)両側面に固定された第2のレール187が、スライド自在に組み合わされる。
この様に構成することで、本体160の前面開口部160Aから洗浄部161が前後方向に出入りできるように、本体160と洗浄部161が組み合わされている。なお、前記使用電力制御手段8Dは、前記制御部172の中に内蔵されている。
(空気調和機7)
本発明の実施の形態1に係る空気調和機の基本構成について説明する。
図15において、7は、家庭用の空気調和機である。この空気調和機7は、上記キッチン内電気機器KPが設置された台所に設置される場合もあるが、この実施の形態1では他の部屋(例えば居間)に設置されている。なお、空気調和機は1台であるとは限らず、複数の部屋にそれぞれ設置され、合計数台の場合もあるが、以下の説明では1台の場合で説明する。なお、この空気調和機には、電力指令装置9の使用電力制御手段8Eが組み込まれている。これにより電力指令装置9との間で、要求電力、各調理器の調理状況や使用許可電力等の情報伝達が行われ、電力指令装置9が許可した使用電力内で使用電力制御手段8Eが空気調和機7の電力を制御するようになっている。
前記空気調和機7は、部屋の内部に設置される室内機220と、室外機200とから構成されている。室内機229と室外機220を閉ループ状に連結している冷媒配管によって密閉状態の環状の冷媒回路KCが構成されている。
室外機200側の冷媒回路KCの中には、圧縮駆動源となるモーター(図示せず)によって圧縮動作が行われる電動圧縮機193と、四方弁194と、室外熱交換器195と、電動膨張弁196が設けてある。
197A、197Bは、室内機220側の冷媒配管と室外機200側の冷媒配管をそれぞれ連結した接続部である。
198は、室外熱交換器195へ送風する室外ファンで、モーター198Mにより回転駆動される。199は、室外気温を検出する外気温度検出手段である。
201は、室外制御部であり、前記外気温度検出手段199や室外熱交換器温度検出手段201からの温度検出情報に基づき前記モーター198Mや電動圧縮機193、四方弁194と、電動膨張弁196等を制御する。
室内機220は、室内熱交換器221の近傍に配置された室内ファン222と、このファン4を駆動させるモーター222Mと、部屋の空気や壁の温度を検出する室内温度検出手段224と、室内制御部225と、室内制御部225と室外制御部201に200Vの商用電源を供給する電源部226とをそれぞれ有している。
前記室外制御部201には、コントロール回路基板(図示せず)がある。この回路基板には、前記200Vの商用電源を直流に変換するコンバーター部(図示せず)と、このコンバーター部で整流により直流電源化された電源を基にして動作するインバーター部(図示せず)とを有し、前記インバーター部では前記室外制御部201からの駆動信号を受けて周波数が制御された交流電源が前記電動圧縮機193に出力されるので、電動圧縮機193はその回転数が変更されるようになっている。
前記インバーター部は前記室外制御部201に内蔵されたマイクロコンピューター201Mを中核とする制御回路の制御下に置かれている。なお、前記マイクロコンピューター201Mは、室外制御部201に配され、前記電源部226から電源が供給される定電圧回路(図示せず)から駆動用の電源を供給されている。前記マイクロコンピューター201Mの内部又は外部には、制御プログラムを書込んだリードオンリーメモリー(ROM。図示せず)があり、またマイクロコンピューター201Mの外部には電気消去書込み可能な不揮発性メモリー(図示せず)に空気調和機7全体の制御用データが書込まれている。
室外制御部201は、そのマイクロコンピューター201Mが、リードオンリーメモリーに書込まれた制御プログラムと、前記不揮発性メモリー(図示せず)に書込まれた制御用データの内容を参照しながら前記インバーター部を通じて電動圧縮機193の運転を制御する。
227は、室内機220の本体外殻ケース等に設けた操作部であり、その近傍には操作結果を表示したり、室内温度や冷房・暖房の設定温度を表示したりする液晶表示画面を備えた表示部228を備えている。なお、この空気調和機7では、冷房、暖房、除湿、送風の、少なくとも4つの運転モードを選択できるように、モード選択スイッチ(図示せず)が前記操作部227に設けてある。
この空気調和機7の室外制御部201には、最大負荷時に定格の冷房能力を確保するよう、電流容量が設定されている。最大負荷未満の負荷状況においては、その負荷状況に応じて電動圧縮機193の運転電流の上限値を下げる。
空調負荷の1つの検出方法として、室外制御部201には室外気温センサー199からの温度検出情報が供給され、検出した室外気温で負荷状況を判定する。これにより、例えば冷房時においては、室外の気温が低い状態、つまり運転負荷が低い場合には、室温の安定性や、省エネルギーの観点から、その負荷に応じた冷房能力になるので、消費電力を少なくして運転することができる。
また室内制御部225には、室内温度検出手段224からの温度検出情報が供給され、検出した室内気温で負荷状況を判定する。これにより、例えば冷房時においては、室内の気温が低くい場合、あるいは室内温度が低いことに加え、冷房目標温度も低い場合、つまり運転負荷が低い場合には、室温の安定性や、省エネルギーの観点から、その負荷に応じた冷房能力になるので、消費電力を少なくして運転することができる。つまり、一般にこの種の空気調和機7の消費電力の大半は、前記電動圧縮機193が消費するので、その電動圧縮機の運転速度を落とせば消費電力が少なくなる。例えば冷房時において、室外温度35度、室内温度31度の状態から、26度の(室内)目標温度を使用者が設定した場合と28度の温度を設定した場合、前者の場合が冷房負荷は大きいので、電動圧縮機193の運転速度は大きくなる。
(電力指令装置9)
前記電力指令装置9について、以下図16を参照しながら説明する。
前記キッチン内電気機器KPの各使用電力制御手段8A,8B,8C,8Dと、各調理器の調理状況や使用許可電力等の情報伝達が行われる構成になっている。そして、電力指令装置9が許可した使用電力内で各使用電力制御手段8A〜8Dが各キッチン内電気機器KPの電力を制御するようになっている。なお、各使用電力制御手段8A,8B,8C,8Dは、キッチン内電気機器KPに内蔵されたものでも良いし、アダプター形式でキッチン内電気機器KPの電源回路部にそれぞれ取り付けたものでも良い。前記したように空気調和機7や食器洗い乾燥機6の電力も電力指令装置9によって一括して制御されるようになっている。また、前記「アダプター」とは、個々の電気機器とその電源との間に設けられる制御機器をいう。既存の電気機器にこのアダプターを接続し、そのアダプターを介して電力指令装置9から電気機器に指令を送り、また信号を受信するようにしたものでも良い。
前記電力指令装置9は、各キッチン内電気機器KPの各使用電力制御手段8A〜8Dからの要求電力と、空気調和機7の使用電力制御手段8Eからの要求電力とを合計する要求電力加算器91と、要求電力加算器91が加算した合計電力とブレーカーBKの容量(8000W)とを比較する比較器92と、比較器92の比較結果から合計電力の超過量を判定し、合計電力が8000W以下であれば出力せず、合計電力が8000Wを超えれば、その超過量を出力する要求電力超過量判定手段93と、要求電力超過量判定手段93からの出力がなければ(すなわち、超過量が0)、要求電力と同じ使用可能電力を各キッチン内電気機器KPの使用電力制御手段8A〜8Dと、空気調和機7の使用電力制御手段8Eとに対しそれぞれ返信し、また超過量の出力があれば、この合計電力の超過量と予め定めた優先順位に従って、各キッチン内電気機器KPと空気調和機7に対する使用電力の削減幅を決定し、これら各キッチン内電気機器KPと空気調和機7の使用電力制御手段8A〜8Eに返信する使用電力削減幅決定手段94と、内蔵した半導体不揮発性メモリー95Aに予め登録されている「優先順位」を読み出し、使用電力削減幅決定手段94に電力削減の「優先順位」情報を送信する優先順位設定手段95とから構成されている。
すなわち使用電力削減幅決定手段64は、ブレーカーBKの容量(8000W)を超えないようにかつ「優先順位」の低いキッチン内電気機器KPと空気調和機7の使用電力制御手段8A〜8Eへは使用電力を減らすように電力要求のあった各キッチン内電気機器KP、空気調和機7に対する使用電力の削減幅を決定するものである。
前記「優先順位」とは、限られたブレーカーBKの容量(8000W)内で、調理性能、調理作業性を維持するための電力を必要とするキッチン内電気機器に優先して供給するための順位であり、電力を削減しても使用者への影響が少ないキッチン内電気機器ほど順位が低くなるように予め登録したもので、「第1の家電機器」の中では電気炊飯器3、誘導加熱調理器2、電子レンジ5の順で電力確保の優先度が定められており、これによって使用者の作業性が損なわれるのを防止している。但し、この優先度を決定する過程では、前記した「優先調理メニューの実行時間帯」を持ったキッチン内電気機器KPでは、その「優先調理メニューの実行時間帯」が現実に行われている場合、その実行時間帯が経過するまでの間は、当該キッチン内電気機器KPの電力を前記電力指令装置9が削減することはない。
なお、電力削減が回避されていることを示す第4の表示部210D、第6の表示部54Cのような表示部を、「第1の家電機器」全部に個々に設けても良い。同様に電力削減対象機器であることを示す第1の表示部210Aや第4の表示部54Aを、「第1の家電機器」全部にそれぞれ設けても良い。さらに、空気調和機7を始めとする「第2の家電機器」にも、同様に電力削減対象機器であることを示す表示部と、実際に電力が削減されていることを示す表示部をそれぞれ設けても良い。さらに電力削減要請を受けていることを示す第2の表示部210Bに対応するような表示手段を、誘導加熱調理器2以外の第1の家電機器や第2の家電機器に設けても良い。空気調和機7では、室内機220の表面に見えるように設けることや、それを制御する室内リモコンの表示画面(室内温度や運転モード名が表示される画面)に設けると良い。
単一のキッチン内電気機器KPにおいて、複数個の加熱手段(加熱口)があり、その1つが「優先調理メニューの実行時間帯」にあって現実に調理実行中であり、他の加熱手段では、「優先調理メニューの実行時間帯」にない場合、前記「優先調理メニューの実行時間帯」にある加熱手段については電力が維持され、前記他の加熱手段の電力が削減対象になるものである。
また「第2の家電機器」の中では電力確保の優先度は、空気調和機7、食器洗い乾燥機6の順で電力確保の優先度が定められており、これによって使用者の作業性が損なわれるのを防止している
空気調和機7は、キッチン内には設置していないが、同じブレーカーBKを介して電力が遮断される構成になっているので、「第1の家電機器」の炊飯器5、誘導加熱調理器2よりは低い順位に設定されている。そして同じ第2の家電機器の分類である前記食器洗い乾燥機6よりも優先度は高く設定されている。なお、「第2の家電機器」として衣類乾燥機を含んでいるが、説明を簡略化するため、以下では詳しい説明は割愛する。
96は、前記比較器92の比較基準となる合計電力値を、指定電力値に変更するように指令する電力使用限度設定器である。これは使用者が任意で、8000W、7500W、7000W、6500Wの中の1つの電力値を選択できるようになっている。
97は、インターネットなどの一般の広域通信回路網やデジタル放送手段98へ、モデムやルーター等の機器(図示せず)を介して有線又は無線によって接続される通信手段である。この通信手段の受信情報の内、家庭の外部、例えば官公庁やその地域の電力会社などから、電力逼迫情報などが送信された場合、その情報は前記電力使用限度設定器96の表示画面100に表示される。なお、電力使用限度設定器96とその表示画面100については後で詳しく説明する。電力逼迫情報とは、各家庭の使用電力を強制的に下げる指令と、強制的ではなく任意で下げて欲しいという要請レベルの指令の少なくとも2種類がある。なお、通信手段97は、電力指令装置9側の情報を外部の前記通信回路網等へ送信する送信機能も有している。従って、この家庭の居住者が、住宅の外部において広域通信網に携帯電話やパソコンでアクセスし、この家庭の電力使用状態を知ることができ、また逆に外部から前記電力使用限度設定器96に対して、電力の上限値をインプットすることができる。
図17、図18は、前記電力使用限度設定器96の表示画面100の詳細を示すものである。これら図において、101はその家庭で使用が許されているブレーカーBKの容量(8000W)の値を数字で示す最大許容電力表示部、102は現在使用しているその家庭の使用電力量を数字で示す現在使用電力表示部である。103は、最大許容電力値に対して現在使用している電力値との余裕度を示す電力余裕値表示部である。なお、この図16に示すように、余裕値を数字でそのまま示す方法の他に、例えば、「余裕度 大」、「余裕度 小」のように余裕の程度を文字で示す方法でも良い。
104は、通信回路網98から電力逼迫情報などを通信手段97を介して受信した場合、ランプが点灯する電力削減要請報知部、105は現在時刻の表示部、106は、前記比較器92の比較基準となる合計電力値を、指定電力値に変更するように指令する電力使用限度設定器96の設定キーと表示部である。図17、28の状態では、8000Wキーのみが白抜き文字で表示されているので、電力使用限度はブレーカーBKの既定容量と同じ8000Wである。図10に示すように、設定キーは全部で4つあり、8000W用の選択キー106A,7500W用の設定キー106B、7000W用のキー106C、6500W用のキー106Dから構成されている。
107は、前記電力指令装置9が制御対象にしている家庭内の電気機器を表示する使用状態表示部で、誘導加熱調理器2の名称表示部107Aや炊飯器3の名称表示部107Bなどが一覧形式で表示される。左側に行くほど、電力確保の面で、優先度が高い機器になっている。108は電力が使用されている場合、つまり現在使用されている場合は、点灯する使用表示部である。図17では、誘導加熱調理器2、炊飯器3、空気調和機、照明が使用されていることが分かる。なお、使用表示部108の近傍に表示された数値は、使用されている電力量であり、例えば1分毎に、過去1分間における平均電力値が表示される。なお、家庭内電気機器EEの優先度を設定すると、その優先度が最も高い順に左から右に、その設定された各電気機器の名称が表示されるような画面表示構成にしても良い。そうすれば使用者は優先順位の高い電気機器を直ぐに認識できる。
110は、インフォーメーションキーであり、使用者がこれに触れると、その場面で使用者に参考になる電力関連情報や、電力を効率的に使用する調理方法や空調機の温度設定方法などの情報がこの表示画面100の中にその都度表示される。その場合、表示面積を確保するため、前記現在時刻の表示部105や電力余裕値表示部103は表示しないようになっている。
111は、ヘルプモードキーであり、使用者がこれに触れると、その場面で使用者の操作に参考になる情報が表示されるとともに、別途設けた音声ガイド装置(図示せず)によって、正しい操作方法が音声で報知される。なお、何度もこのキーを押した場合、この表示画面100の見方や電力使用限度設定方法などが、模式図と文字で表示画面100全体に表示される。
図18は、図17の状態で誘導加熱調理器2の名称表示部107Aに使用者が触れた場合、最初に現れる画面の状態を示したものである。図18のように、誘導加熱調理器2が現在煮込み加熱動作を行っており、使用終了する推定時刻が12時50分であることが分かる。つまり現時点から見て30分調理が継続することが分かる。113Sは使用開始時刻表示部、113Eは終了予測時刻表示部である。
このように電力使用限度設定器96の表示画面100では、個々の家庭内電気機器の設置場所まで行って確認しなくとも、この表示画面で使用している電気機器の状態の概要が分かる。なお、上記したように、表示画面100の表面を覆うガラス板には、静電容量式の入力キーが形成されているので、所定位置のキーをタッチすれば、そのキーに対応した入力信号が電力使用限度設定器96に与えられる。
図19は、図18の状態になってから自動的に所定時間後、例えば10秒後に現れる画面の状態を示したものである。図19のように、誘導加熱調理器2が現在煮込み加熱動作を行っており、進行度を示すマーク114、115が表示されることによって、現在まだ途中段階であることが分かる。なお、調理の進行に伴って前記マーク114が右側に順次増えて行き、最終的には終了予測時刻表示部113の左側まで、全てこのマーク114が並んだ状態になる。
この実施の形態1の特徴は、ブレーカーBKの容量(8000W)を超えるかどうかに関係なく、使用者が前記電力使用限度設定器96の表示画面100を見て自発的に家庭内の電力消費量を一括して削減するように制限を設けることができる点である。
すなわち、使用者は任意の時点で電力制限値を複数の中から選択できる。例えば、通信回路網98から電力逼迫情報などを通信手段97を介して受信した場合、電力削減要請報知部104のランプが点灯するので、これを見て自発的に設定することができる。あるいは使用者は別の情報源からの情報によって電力削減を思い立った場合、何時でも電力使用限度設定器96によって使用電力量の上限値を設定できる。
このため、仮にブレーカーBKの容量(例えば8000W)まで相当の余裕がある状態でも、例えば自発的に7500Wに上限値を設定し、それを超えないように電力指令装置9によって自動的に家庭内の電気機器の使用電力量を抑制することができる。なお、通信回路網98から通信手段97を介して受信した信号の中を自動的に選別し、特定の信号の場合は、自動的に電力指令装置9が、その時点の使用電力を5%カットするように電力削減動作を開始したり、あるいは8000WのブレーカーBKの容量であった場合は、それよりも1段階下として決めてある容量、例えば7500Wに上限値を変更して電力使用制限動作をするようにしても良い。
以上の構成を有する本実施形態1の家電機器の電力制御システムの動作について、図22に基づき説明する。まず、キッチン内電気機器KPとして数種類の電気機器EEが使用者の操作により動作を開始している状態であるとする。具体的には、炊飯器3と誘導加熱調理器2以外のキッチン内電気機器KPが先に動作開始していて、その次に炊飯器3が使用開始され、次に誘導加熱調理器2が使用開始される場合を想定する。
誘導加熱調理器2が加熱開始される直前の状態では、電力指令装置9は、既に各キッチン内電気機器KPから、所定の操作、例えば運転開始に必要とする電力の情報を受信しており、また誘導加熱調理器2からも必要な電力の要求情報を受けるので、電力指令装置9では、各キッチン内電気機器KPからの要求のあった電力値を要求電力加算器91にて集計し、集計された合計電力が比較器92にてブレーカー容量(例えば、8000W)と比較され、比較結果が要求電力超過量判定手段93に対し出力される。
要求電力超過量判定手段93では合計電力が8000W以内(=超過量が0)であれば出力せず、合計電力が8000W以上であれば超過量が使用電力削減幅決定手段94に対して出力される。使用電力削減幅決定手段94では、要求電力超過量判定手段93からの出力がなければ、要求電力と同じ使用可能電力を各キッチン内電気機器KPの使用電力制御手段8A〜8Dに対し返信し、超過量の出力があれば、この合計電力の超過量と優先順位設定手段95により設定された優先順位に従って、各キッチン内電気機器KPに対する使用電力の削減幅を決定し、これら各キッチン内電気機器の使用電力制御手段8A〜8Dに対し返信する。
なお、電力指令装置9が、各キッチン内電気機器KPからの電力要求を受ける最初の時点は、何らかのキッチン内電気機器KPの主電源が投入された時点又は動作開始指令が行われた時点である。例えば、炊飯器の電源コードの先端にあるプラグが電源供給口(所謂、コンセント)に挿入された後、所定の操作(例えば炊飯開始キーを押す)があった時点では、その炊飯器の定格最高電力が要求される。またビルトイン型誘導加熱調理機では、主電源スイッチが押されて、主電源が入った後、加熱口が選定され、火力が設定された時点である。なお、誘導加熱調理器では、加熱口を最初に選定した時点で、自動的にデフォルト値(初期設定値)として例えば1000Wのような特定の火力がセットされる場合もあるが、この場合はその火力1000Wに加えて誘導加熱調理器の内部電気部品(例えば、冷却用ファンのモーターの定格最高電力)の運転用電力などが加味された電力(例えば、1050W)が、電力指令装置9への要求電力になる。要求電力を送信した結果に対し、結局電力指令装置9からOKの返信がなければ、その要求電力での運転は開始されない。これは各使用電力制御手段8A〜8Dによって個々のキッチン内電気機器KPへの通電が制限されるからである。
言い換えると、使用電力制御手段8A〜8Dでは、電力指令装置9が許可した使用電力内で各キッチン内電気機器KPの個々の電力を制御し、また電力指令装置9から使用電力削減指令があると、これに従って使用電力を削減し、この削減した使用電力内で各キッチン内電気機器KPの電力を制御する。なお、複数のキッチン内電気機器KPに対して電力指令装置9は、総電力量を指示するのではなく、予め総電力量を考慮して個々のキッチン内電気機器KPに対し上限の電力量を許可する方法を採用している。このため、例えば誘導加熱調理器2には、要求電力4800Wに対し4000Wのように具体的な電力上限値が指令される。
また、同様に空気調和機7を使用していた場合には、使用電力制御手段8Eは電力指令装置9に対して電力要求信号を発信し、またその結果、電力指令装置9から使用電力削減指令があると、それに従って空気調和機7の使用電力を削減する。食器洗い乾燥機6でも同様である。
このように、本実施形態1の家電機器の電力制御システムにおいては、各キッチン内電気機器KPの使用電力制御手段8A〜8Dからの要求電力の合計電力がブレーカーBKの容量を超えないように、電力指令装置9によって、予め定めた優先順位に従って各キッチン内電気機器KPに対する使用電力の削減幅を決定して各キッチン内電気機器の使用電力制御手段8A〜8Dに指令するようにしているので、使用電力がブレーカー容量を超えないように制御することができる。そして、従来のような機械的に電力制限する場合と異なり、調理性能、調理作業性を維持するための電力を必要とするキッチン内電気機器KPに優先して供給することができる。
また、電力指令装置6Aによって、優先順位の低いキッチン内電気機器へは使用電力を減らすように指令しているので、調理性能、調理作業性を維持することができる。
前記したように、キッチン内電気機器KPには優先順位が付けてある。前記したように、電力を削減しても使用者への影響が少ないキッチン内電気機器ほど順位が低くなるように、炊飯器3、誘導加熱調理器2、電子レンジ5の順で電力確保の優先度が定められている。言い換えると、電力を削減する場合は、電子レンジ5、誘導加熱調理器2、炊飯器3の順になっている。しかし、これらの電気機器毎の優先度に従って、電子レンジ5だけでは電力削減量が確保できない場合は、前記した「優先調理メニューの実行時間帯」を持ったキッチン内の特定の電気機器KPの中で誘導加熱調理器2が電力削減対象になる。しかしこの場合でも、その「優先調理メニューの実行時間帯」が経過するまでの間は、当該キッチン内電気機器KPの、当該優先調理メニューを実行する加熱源の電力に限っては、例外的に前記電力指令装置9が削減することはない。この場合は、次の優先度になっている炊飯器3に電力削減指令が発せられる。なお、空気調和機7と食器洗い乾燥機が使用されている場合は、誘導加熱調理器2の前に、当該食器乾燥機6が電力削減対象になる。食器洗い乾燥機6だけでも不十分な場合は、空気調和機7が電力削減対象になり得る。
ここで、各キッチン内電気機器KPからの電力要求結果を、要求電力加算器91にて集計した結果、合計電力がブレーカー容量(例えば、8000W)を超えていない場合で、電力削減指令が出されない場合であった状態から、使用者が前記電力使用限度設定器96の表示画面100を見て自発的に使用電力上限値を下げた場合について説明する。
この場合、図22のように電力指令装置9は、最初のステップ1(以下、ステップを「S」と省略する)で、総電力下げの指令が外部から与えられたもの判断する(S1)。
そして、新しい上限値(例えば7000W)と、各キッチン内電気機器KPからの電力要求結果とを比較器92で比較し(S2)、上限値を超えている場合は、電力削減幅を、使用電力削減幅決定手段94によって決定する(S3)。
そして使用中のキッチン内電気機器KPに電力削減指令を発する。この指令を受けて、前記ステップS1の時点よりも前に加熱調理を開始していた前記誘導加熱調理器2は使用電力を削減する。前記電力削減幅が1000Wであった場合には、誘導加熱調理器2は合計4200Wの消費電力であった場合、例えば第1の加熱口2L単独火力は3000W、第2の加熱口2Rの単独火力は1000Wの火力で、それぞれ湯沸しメニュー(非優先調理メニューの1つ)を実行していた場合は、合計3000Wの火力まで火力を下げる(S4)ことで、消費電力を3200Wまで下げる。なお、ここで200Wは内蔵されている送風機などの電気部品の消費電力とする。その後、誘導加熱調理器2は使用電力を1000Wだけ下げたことを電力指令装置9に報知する。
電力指令装置9ではその後、各キッチン内電気機器KPからの電力要求結果を再度集計した結果(S5)、その電力要求合計値が小さく、電力削減幅1000Wを超えるような余裕がある場合、例えば、上記した新しい上限値(7000W)に対し、その時点の電力要求合計値が5900Wを超えていない場合は、1100Wの余裕があることになるから、以前に削減した誘導加熱調理器2の使用電力を元のレベルまで戻すことを誘導加熱器2に事前に提案(報知)する。誘導加熱調理器2では、その報知から所定時間内に特に火力を上げるような操作をしない場合、火力を安全上の観点から自動復帰させないが、使用者が復帰に同意する操作をした場合、例えば火力上げる操作をした場合、元の4000Wの(合計)火力まで復帰させる(S6)。この場合の火力を上げる操作を省略するため、誘導加熱調理器2の上面操作部26に「復帰」というキーを設け、これを1回押せば、電力に余裕がある場合、元の火力レベルに簡単に復帰するようにしても良い。
仮に、前記単一の誘導加熱調理器2において、第1の加熱口2Lが「揚げ物」調理を行っており、1800Wの最大電力を消費する「優先調理メニューの実行時間帯」にあり、一方、第2の加熱口2Rが最大2000Wの消費電力を消費する「湯沸し」(非優先調理メニュー)を行っていた場合、前記電力指令装置9から指令された前記電力削減幅が1000Wであったときには、前記湯沸しの方の第2の加熱口2Rが電力削減の対象になり、湯沸しの火力を下げて、誘導加熱調理器2としての消費電力を1000W減らす動作を行うものである。
なお、図22の場合で、誘導加熱調理器2が使用されていない場合は、その誘導加熱調理器2による使用電力削減はできないので、優先度に従って、炊飯器3が電力削減対象になるが、電力削減幅を、使用電力削減幅決定手段94によって決定した(S3)時点で、図22に示すように、炊飯器3が「優先調理メニューの実行時間帯」にある場合は、炊飯器3は電力削減の対象にならない。
また、キッチン内には同じブレーカーBKを使用する、電気ポットやホットプレート、オーブントースターなどのような1000W程度を10分〜60分程度使用する比較的小型の電熱機器類が他にもあり、また電気冷蔵庫もあるので、上記のようにキッチン内で誘導加熱調理器2を4000Wで使用していた場合でも、7000Wまで総電力下げるという設定を、使用者が前記電力使用限度設定器96で行った場合には、上記のように誘導加熱調理器2の使用電力が制限される場合があり得る。
次に、1台の空気調和機7、誘導加熱調理器2と炊飯器3が同時に使用されている場合で、電力指令装置9から総電力量を下げるという指令が発せられた場合について説明する。
図23において、各キッチン内電気機器KPと空気調和機7からの電力要求結果を、要求電力加算器91にて集計した結果、合計電力がブレーカー容量(例えば、8000W)を超えていない場合ではあるが、使用者が前記電力使用限度設定器96の表示画面100を見て自発的に使用電力上限値を下げた場合について説明する。
この場合、図23のように電力指令装置9は、最初のステップ1で、総電力下げの指令が外部から与えられたもの判断する(S1)。
そして、新しい上限値(例えば7000W)と、各キッチン内電気機器KP及び空気調和機7からの電力要求結果とを比較器92で比較し(S2)、上限値を超えている場合は、電力削減幅を、使用電力削減幅決定手段94によって決定する(S3)。
そして優先度に従って、使用中の空気調和機7に電力削減指令を発する。この指令を受けて空気調和機7は使用電力を削減する(S4)。前記電力削減幅が300Wであった場合には、空気調和機7は冷房の目標温度が26℃であったものを28℃に変更することにより、空気調和機7で最も電力を消費する電動圧縮機193の回転速度を落として、電力消費量を少なくした省エネ運転に変更される。なお、目標温度と現在の室内温度との相関関係から、電動圧縮機193の回転速度を低下された場合の使用電力量は予め実験などで求めてあり、そのデータは空気調和機7側に記憶されてあるので、電力指令装置9からの電力削減要求に従って瞬時に電力削減運転のための電動圧縮機193の運転条件が決定される。
仮に、前記空気調和機7が使用されていない場合、炊飯器2と誘導加熱調理器2は、何れも直ちに電力削減対象にはならない。何故ならば、炊飯器3は沸騰工程H2Aを実行中であり、また誘導加熱器2は揚げ物調理を実行中であり、これら両者とも「優先調理メニューの実行時間帯」にあるからである。
なお、その後、空気調和機7は使用電力を300Wだけ下げたことを電力指令装置9に報知する。電力指令装置9ではその後、各キッチン内電気機器KPや空気調和機7からの電力要求結果を再度集計した結果(S5)、その電力要求合計値が小さく、電力削減幅300Wを超えるような余裕がある場合、例えば、上記した新しい上限値(7000W)に対し、その時点の電力要求合計値が6500Wを超えていない場合は、500Wの余裕があることになるから、以前に300Wだけ削減した空気調和機7の使用電力を元のレベルまで戻すことを空気調和機7に事前に提案(報知)する。空気調和機7では、その報知から所定時間内に自動的に目標温度を26℃に下げる運転に復帰する(S6)。なお、空気調和機7は図22に示すように、使用電力を削減する動作を行った場合及び電力を増やす動作を行った場合、その直後にそれぞれ電力指令装置9に使用電力の情報を送信する。
このように、各キッチン内電気機器KPは、その電源投入から電源遮断までの全工程において、運転情報(調理メニューの実行や、火力の設定など)が随時電力指令装置9に送信されている。また空気調和機7でも、その電源投入から電源遮断までの全工程において、運転情報(冷房・暖房運転メニューの実行や、目標温度の設定など)が随時電力指令装置9に送信されているので、常に家庭内電気機器EEの電力使用状況を把握することができる。これについて以下詳しく説明する。
図24は、誘導加熱調理器2を代表的な例として、その調理器の電源投入から電源遮断までの全工程において、運転情報(調理メニューの実行や、火力の設定など)が随時電力指令装置9に送信されている状況を示したタイムテーブルである。他のキッチン内電気機器KPや空気調和機7においても基本的に同じように運転情報を随時電力指令装置9に送信している。
図24において、L1〜L7が、誘導加熱調理器2から電力指令装置9に送信される運転情報信号である。L1は、主電源投入(ON)を示す信号、L2は、加熱口を選択した情報で、図23では第1の加熱口2Lを選択した場合である。L3は、調理メニューを選択した情報であり、湯沸しや煮込み、揚げ物調理などの各種調理メニューの中から「揚げ物」を選択した場合を示す。
L4は、実際にインバーター回路33Lが駆動され、誘導加熱動作が開始された情報を示す。L5は、揚げ物工程が開始された情報を示す。前記したように、揚げ物調理工程から火力アップ工程までを「優先調理メニューの実行時間帯」と定義しており、この実行時間帯には外部からの操作や指令によって電力の削減が行われないようにしている。つまり、この誘導加熱調理器2が実際に「優先調理メニューの実行時間帯」にあるかどうかは、この情報L5以後であるか(但し、次の情報L6を受信していない)かどうかで判定される。L6は、実際にインバーター回路33Lの駆動が停止され、誘導加熱動作が終了した情報を示す。L7は、主電源遮断(OFF)を示す情報である。これら各情報L1〜L7には、その現在時刻が秒単位まで含まれている。
図24から明らかなように、誘導加熱調理器2の電源投入から電源遮断までの全工程においては、信号L1〜L4の間及び「優先調理メニューの実行時間帯」を除いた時間帯では、前記電力指令装置9からの電力削減要求に従って電力削減運転に対応することが可能である。信号L1〜L4の間は、調理メニューが確定していない段階であり、この直後に「揚げ物」調理が選択される可能性もあるので、電力削減を行わないに予備期間として指定している。但し、このL1〜L4の期間は、実質的に加熱動作が開始されておらず、使用電力も小さいので、このL1〜L4の期間を電力削減対象期間にしても良いが、電力削減効果は殆ど期待できない。
従って、例えば前記したように「優先調理メニューの実行時間帯」に定義されていない「湯沸し」の工程では、何時でも電力削減要求に応じて電力を削減できる。具体的には図25に示すように、調理メニューとして「湯沸し」を実行する工程で、加熱動作が開始されていても何時でも電力削減は可能である。
図26は、別の「優先調理メニューの実行時間帯」のある調理メニューを実行している状態を示したタイムテーブルである。この図26は、誘導加熱調理器2において「予熱」という調理メニューを実行した例である。情報L3は、調理メニューを選択した情報であり、この場合は各種調理メニューの中から「予熱」を選択した場合を示す。L4は、実際にインバーター回路33Lが駆動され、誘導加熱動作が開始された情報を示す。
L5は、温度検出回路(温度検知装置)150が、被加熱物N、例えばフライパンの温度中が使用者の設定した予熱温度(例えば160℃)を検知した情報を示す。この予熱温度を検知するとインバーター回路33Lは、通電制御回路32によって火力が自動調節され、その予熱温度を維持するような動作を行う。
この信号L5の時点から「優先調理メニューの実行時間帯」が開始される。従って、この実行時間帯には外部からの操作や指令によって電力の削減が行われないようにしている。仮に、この「優先調理メニューの実行時間帯」において不意に火力が落とされた場合、予熱温度を維持できず、使用者が所望の温度になっていると考えて調理(例えば卵焼き)を開始した場合、フライパンの温度が例えば140℃にあると、温度が低くて調理が出来ない、という事態を招く可能性がある。
L6は、実際にインバーター回路33Lの駆動が停止され、誘導加熱動作が終了した情報を示す。L7は、主電源遮断(OFF)を示す信号である。
図26から明らかなように、誘導加熱調理器2の電源投入から電源遮断までの全工程においては、信号L1〜L4の間及び「優先調理メニューの実行時間帯」を除いた時間帯では、前記電力指令装置9からの電力削減要求に従って電力削減運転に対応することが可能である。信号L1〜L4の間は、調理メニューが確定していない段階であり、この直後に「自動煮込み」調理が選択される可能性もあるので、電力削減を行わないに予備期間として指定している。但し、このL1〜L4の期間は、実質的に加熱動作が開始されておらず、使用電力も小さいので、このL1〜L4の期間を電力削減対象期間にしても良いが、電力削減効果は殆ど期待できない。
なお、詳しくは述べなかったが、本実施形態1のキッチン内電気機器電力制御システムにおいては、電力指令装置9が炊飯器3の要求電力に対して優先順位を最も高くして、炊飯器3の要求電力を最優先で確保するようにしているので、ブレーカーBKの容量が8000Wを超えそうになっても、あるいは使用者が指定した上限の電力容量(例えば、7000W)を超えそうになっても、沸騰工程において電力が削減されることがなく、美味しいご飯を炊くことができる。
一方、前記食器洗い乾燥機6は、洗い工程中に電力が削減されると、洗浄ポンプ174を駆動するモーターの回転力が落ち、水やお湯の供給能力が大きく低下するので、洗浄ノズル169から噴射される水流が弱くなり、米粒等の汚れが落ちにくくなる。そこで本実施形態1においては、洗い工程に必要な電力量を下回らないように電力を維持するので、この洗い工程の時間帯は、誘導加熱調理器2や炊飯器3でいう「優先調理メニューの実行時間帯」に相当しており、電力指令装置9からの電力削減要求の対象にならない。従って、この洗い工程中はノズルからの噴射水流を確保でき、汚れ落ち性能を損なわない。但し、誘導加熱調理器2や炊飯器3に比較して電力確保の優先度が低いので、ブレーカーBKの容量を超えるような事態における電力削減要請には応じることになっている。また、ヒーター170は消費電力が前記したように800Wと大きく、またこの電力を削減した場合は、洗浄液の温度を上げるまでの時間が延びるという影響が出るが、洗浄効果それ自体に大きな影響はないので、誘導加熱調理器2や炊飯器3でいう「優先調理メニューの実行時間帯」には相当しないように制御部172に事前に設定されている。
なお、電力削減された場合、洗浄工程は一時的に停止するので、その停止によって再度電力が復帰し、洗浄工程が開始されたとしても洗浄のための洗浄水の温度が下がっている場合は、所定の温度まで洗浄液の温度を上げるように加熱する時間も要し、トータルでの運転時間は延びる。そこで洗浄工程が停止した時点で、前記表示部191には洗浄を一時的に停止することを表示し、また洗浄が開始されても、所定の洗浄を完了するまでの時間が延びることを具体的に時間を示して使用者に報知する。
また、「優先調理メニューの実行時間帯」以外において電力削減した分、調理時間等の運転は延長する必要があるので、例えば誘導加熱調理器2では電力削減量に応じて、設定調理時間を延長するとともに、その旨使用者に報知する。なお、電力指令装置9側では、電力削減前から情報L1〜L4等によって加熱工程の進捗を把握しているので、加熱動作終了時点を誤って判断し、電力量を誤って増大させるようなことはない。
図27は、誘導加熱調理器2等の家電機器が、電力指令装置9によって電力調整対象になっているかどうかを家電機器側において知ることができるようにした動作を時系列に説明する説明図であり、図27において、L1〜L7が前述したように、誘導加熱調理器2から電力指令装置9に送信される運転情報信号である。
AS1は、誘導加熱調理器2からの運転情報信号L1を受けた場合に、電力指令装置9から当該誘導加熱調理器2に対して送られる確認信号である。なお、前記運転情報信号L1には、当該誘導加熱調理器2を特定する機器コードを含んでいるので、電力指令装置9は当該誘導加熱調理器2のみに前記確認信号AS1を送信する。
前記確認信号AS1は、誘導加熱調理器2が電力指令装置9に電気的に接続されており、電力指令装置9からの電力指令信号を受けて供給される電力量が削減されることが有り得る機器であることを示す信号である。そこで以後、この信号を「対象機器登録信号」という。
電力指令装置9から発せられた前記確認信号AS1は、誘導加熱調理器2の使用電力制御手段8Aが受け、これは通電制御回路32を介して、図5に示す前記表示部駆動回路35のインターフェース部に入る。そして対象機器登録信号AS1が来たことが表示コントローラー35Bで判別され、図6に示したような「電力削減対象」という文字が前記第1の表示部210Aとして中央表示パネル16表示画面129の中に表示される。なお、この確認信号AS1が来る前には、主電源が投入されているので、前記表示部駆動回路35は前記通電制御回路32によって起動され、表示画面は図6に示したように必要な情報を先に表示している。
その後、実際にインバーター回路33Lが駆動され、誘導加熱動作が開始された運転情報信号L4が使用電力制御手段8Aを経由して電力指令装置9に送られ、さらにその後、その電力指令装置9から、その電力指令装置9に接続された全ての家電機器の総電力量を下げる要請信号(予告信号)AS2が誘導加熱調理器2に届いた場合、前記表示部駆動回路35は前記中央表示パネル16の表示内容を変更する。前記要請信号を受けた場合は、誘導加熱調理器2の中央表示パネル16には、電力を下げて欲しいことを使用者に伝えるため、前記第1の表示部210Aを消し、その部分に第2の表示部210Bを表示する。例えば「電力削減要請あり」又は「電力削減の要請を受けています」等のメッセージを、白抜きの文字で表示する。
ここで、前記総電力量を下げる要請信号とは、速やかに電力を下げて欲しいと電力指令装置9が促す信号であり、この信号から所定時間以内に総電力量が下がらない場合には強制的に電力を下げる。そのため、前記した要請信号を発してから所定時間内(例えば、数秒〜10秒以内)に使用電力制御手段8Aに電力削減指令信号AS3が発せられる。所定時間内に家電機器の何れかが電力を自発的に下げ、使用者が前記電力使用限度設定器96によって例えば7000Wまで総電力下げるという設定をしていたことに対し、十分な余裕電力が確保された場合、前記要請信号AS2は撤回され、他の電気機器の使用電力はそのまま維持される場合があり得る。要請信号AS2は撤回された場合でも、それ以前に対象機器登録信号AS1を受信している全ての電気機器では、前記第1の表示部210Aにより「電力削減対象」という文字が再び表示され、この状態が続く。
前記電力削減指令信号AS3が発せられた場合、前記前記表示部駆動回路35は前記中央表示パネル16の表示内容を変更し、「電力削減」等のような第3の表示部210Cを表示画面129の中に表示させる(図8参照)。
なお、図27に示すように、前記総電力量を下げる要請信号AS2が届いてから実際に電力削減動作が実行されるまでの期間は「猶予期間」TSという。この猶予期間は家電機器の使用者に自発的な電力削減動作を期待し、その実行に必要な最小時間を考えて設定されている。なお、この猶予期間を例えば1秒間隔で表示するようにしても良い。例えば前記表示画面129の中に、カウントダウン形式で、10秒、9秒、8秒と残り時間を表示しても良い。また棒グラフのような図形を表示させ、それが1秒置きに短くなっていくことで猶予期間が終わりに近づいていることを使用者に視覚的に訴えても良い。
また、以上の説明では、前記した第1の表示部210A、第2の表示部210Bが誘導加熱調理器2の中央表示パネル16に表示される事例を示したが、他の部分に表示させても良い。また炊飯器3などの他の電気機器に同様に表示させても良い。
以上の説明から明らかなように、実施の形態1においては、例えば誘導加熱調理器2において、その電源投入から電源遮断までの全工程においては、「優先調理メニューの実行時間帯」以外では、前記電力指令装置9からの電力削減要求に従って電力削減運転に対応することが可能であるため、誘導加熱調理器2の運転中に電力削減要求信号を受ける可能性のある対象機器であること示す文字「「電力削減対象」が、前記第1の表示部210Aとして表示手段16の表示画面129の中に表示されている。また、電力削減要請を受けた状態にある場合は、第2の表示部210Bが表示画面に表示される。実際に電力が削減された場合には第3の表示部210Cが表示画面に表示される。
さらに、「優先調理メニューの実行時間帯」においては、加熱調理器外部からの指令があっても電力削減が回避されていることが第4の表示部210Dで表示される。このため使用者がこれら第1〜第4の表示部を見ることによって、使用しているこの加熱調理器への電力制限指令の影響を知ることができる。言い換えると、例えば、前記確認信号AS1を、誘導加熱調理器2が受け、最初は図6に示すように、「電力削減対象」という文字が前記第1の表示部210Aとして中央表示パネル16の表示画面129の中に表示されるが、誘導加熱調理器2が茹で調理を開始して「優先調理メニューの実行時間帯」の加熱動作をしている場合は、この時間帯では前記要請信号AS2が誘導加熱調理器2に届いても表示画面129には表示されず、その他音声ガイドによっても報知されない。従って茹で工程の中で慌てて火力を下げるという使用者の操作を誘発することもない。
なお、「優先調理メニューの実行時間帯」の加熱動作をしている場合は「電力削減の要請を受けていますが、重要な調理工程に入っていますので、自動的に電力を維持しております。現在の工程が終わった段階で、電力削減する場合もあります」のように音声ガイドで報知し、使用者の理解を更に深めることを併用しても良い。もちろん、このようなガイドを文字で前記表示画面129に表示しても良い。
実施の形態1に示した第1の発明に係る加熱調理器は、調理物を電気エネルギーで加熱する加熱手段と、前記加熱手段の通電条件を設定し電気エネルギーを調整できる操作部と、設定された前記通電条件を報知する表示手段16と、前記表示手段及び前記加熱手段を制御し、所定の加熱プログラムを有した通電制御回路32、60と、を備え、
前記通電制御回路は、外部から所定の電力削減要求信号を受信した場合に、前記加熱手段の使用電力を削減するものであり、前記加熱プログラムには、前記電力指令装置からの電力削減要求指令に影響されず所定の電力が維持される優先加熱工程と、この優先加熱工程よりも優先して電力削減される非優先加熱工程と、を有し、
運転中に前記電力削減要求信号を受ける可能性のある対象機器であることを表示する第1の表示部210Aと、運転中に、電力削減要請信号AS2を受けている状態を表示する第2の表示部210Bと、前記電力削減要求信号を受けて電力量が制限されている状態にあることを表示する第4の表示部210Cと、優先加熱工程によって電力が削減されていないことを示す第4の表示部210D、をそれぞれ具備したものである。
この第1の発明によれば、他のキッチン内電気機器や空調機器等の電気機器と同時に加熱調理器が使用された場合において、優先加熱工程を実行している場合は、電力削減が回避されるので、優先加熱工程による調理の仕上がりや調理作業性を損なうことがない。また、運転中に前記電力削減要求信号を受ける可能性のある対象機器であることを第1の表示部210Aによって使用者は知ることができ、また万一、運転中に、電力量削減要請を受けている状態にあることは第2の表示部210Bで知ることができる。さらに電力が制限されている状態にある場合は、第3の表示部210Cによってそのことを使用者が知ることができるので、使用者の側において、電力削減に伴う操作上の混乱が発生することを抑止できるものである。さらに第4の表示部によって電力が維持されていることを使用者は知ることができ、調理中に不安感を抱くことがない。
また実施の形態1に示した第2の発明に係る家電機器の電力削減システムは、
家屋内に設置され第1の上限容量を超えた場合に電路遮断動作をするブレーカーBKと、このブレーカーを介して電力が供給され、使用電力量計測部をそれぞれ具備した第1の家電機器2,3及び第2の家電機器5、6と、それら家電機器トータルの電力使用量を制御する電力指令装置9で構成する電力制御システムにおいて、
前記電力指令装置は、通信手段を介して家屋の外部から電力削減関連情報を受信するものであり、
前記第1の家電機器2,3は、前記電力指令装置9から電力削減指令を受け取る第1の受信部8A、8Bと、前記電力指令装置から対象機器登録信号AS1を受けて電力制限対象機器であることの報知を行う第1の報知部16、49と、を備え、
前記第2の家電機器6、7は、前記電力指令装置9から電力削減指令を受け取る第2の受信部と、前記電力指令装置から対象機器登録信号AS1を受けて電力制限対象機器であることの報知を行う第2の報知部191,228と、を備え、前記第1、第2の家電機器が同時に運転されている期間中、前記電力指令装置9が前記ブレーカーBKの第1の容量よりも小さな第2の上限容量以下に前記第1、第2の家電機器全体の総電力を削減する場合、前記電力指令装置9は、前記第1、第2の報知部に対して、電力削減要請信号AS2をそれぞれ発し、前記第1、第2の家電機器では、前記電力削減要請信号AS2を受けたことを報知するものである。
つまり、例えば前記第1の家電機器としての誘導加熱調理器2は、最初の動作開始時に電力制限対象機器であることを使用者は中央表示パネル16の表示を見て知ることができ、またその後、前記電力指令装置9から電力削減要請信号AS2を受け取ると、中央表示パネル16において、電力削減の要請を受けている状態にあることを表示して使用者に知らせるので、使用者には自発的に電力を下げる機会が与えられる。
この第2の発明によれば、誘導加熱調理器や炊飯器などの加熱部を有する第1の家電機器と、食器洗い乾燥機6や空調機器等の第2の家電機器とが同時に使用された場合において、前記電力指令装置9が前記家屋の外部から電力削減要請情報を受信した場合、この要請に応じて、前記第1、第2の家電機器全体の総電力を削減する場合、供給電力の削減が行われる対象の第1の家電機器と第2の家電機器では、実際にその後電力供給が削減されるかどうかに関係なく、一律に供給電力の削減要請があったことを使用者が適当な表示手段(例えば液晶表示画面や、その他発光するボタン等で)知ることができるので、第1、第2の家電機器の側で自発的に電力を削減するような操作を促すことができる。
さらに、実施の形態1に係る第3の発明に係る家電機器の電力削減システムは、
家屋内に設置され第1の上限容量を超えた場合に電路遮断動作をするブレーカーBKと、このブレーカーを介して電力が供給され、使用電力量計測部をそれぞれ具備した第1の家電機器2,3と、第2の家電機器5、6と、それら家電機器トータルの電力使用量を制御する電力指令装置9で構成する電力制御システムにおいて、
前記第1の家電機器2、3は、前記電力指令装置9から電力削減指令を受け取る第1の受信部8A、8Bと、前記電力指令装置から対象機器登録信号AS1を受けて電力制限対象機器であることの報知を行う第1の報知部16、49と、を備え、前記第2の家電機器は、前記電力指令装置から電力削減指令を受け取る第2の受信部と、対象機器登録信号AS1を受けて電力制限対象機器であることの報知を行う第2の報知部191,228と、を備え、
前記電力指令装置9は、使用者によって電力上限値が、前記第1の上限容量と、これよりも小さい第2の上限容量の何れにも設定可能であり、
前記第1、第2の家電機器が同時に運転されている期間中、前記電力指令装置9が前記第2の上限容量に設定された場合、前記電力指令装置9は、前記第1、第2の報知部に対して、電力削減要請信号AS2をそれぞれ発し、前記第1、第2の家電機器では、前記電力削減要請信号AS2を受けたことを報知するものである。
この第3の発明によれば、前記電力指令装置は、使用者によって電力上限値が、前記第1の上限容量と、これよりも小さい第2の上限容量の何れにも設定可能であるので、前記第1、第2の家電機器が同時に運転されている期間中、前記電力指令装置が使用者の設定した第1の上限容量と第2の上限容量の情報を受信し、これに応じて前記第1、第2の家電機器群全体の総電力を削減する場合、供給電力の削減が行われる対象の第1、第2の家電機器双方において電力の削減を求められている状況を知ることができるので、第1、第2の家電機器の側において、使用者によって自発的に電力を削減するような操作を促すことができる。
実施の形態2.
図28と図29は、本発明の実施の形態2に係る家電機器の電力制御システムの1例となる誘導加熱調理器を示したものであり、図28はその誘導加熱調理器の一部を断面で示した全体斜視図、図29は、その誘導加熱調理器2の電源投入から電源遮断までの全工程を示した説明図であり、「優先調理メニューの実行時間帯」のある調理メニューとして「茹で」を実行している状態を示している。図中、前記実施の形態1のものと同一又は相当部分には同一符号を付してある。
本実施の形態2の誘導加熱調理器2では、誘導加熱部が左右に2つある、いわゆる2口のビルトイン式調理器であり、この第1、第2加熱口2L、2Rの上方は耐熱ガラス板で形成されたトッププレート14で覆われている。このトッププレートの下面に密着するように、その加熱口2L、2Rを囲むように静電容量検知電極90Aがそれぞれ配置されており、第1加熱口2Lと第2加熱口2Rの何れかで被加熱物Nから被調理液や水が吹き零れた場合、前記電極に生ずる静電容量変化を検知して通電制御回路32が吹き零れ発生を検知するという特徴がある。前記静電容量検知電極90と通電制御回路32によって「吹き零れ検知装置」90が構成されている。
通電制御回路32が吹き零れ発生を検知した場合、その検知した(加熱動作中の)加熱口を含め、隣の加熱口の誘導加熱調理も(加熱動作中であった場合は)一時的に全て停止するという安全動作を行う。なお、吹き零れ自動検知自体は周知であるので、説明は省略する。
図29において、L5は、温度検出回路(温度検知装置)150が、被加熱物Nの中の被調理液が沸騰状態(例えば100℃又は98℃以上)を検知した情報を示す。この沸騰検知状態から、第1の加熱口2Lでは特殊な加熱制御を行って、被調理液に適度な対流を間欠的に発生させるように、所定の時間間隔で微妙な加熱動作を反復して行っているので、この信号L5の時点から「優先調理メニューの実行時間帯」が開始される。適度な対流とは、被加熱物Nの中で茹でられる麺等の被調理物同士が、過度に絡み合ったり、接触したりして固まってしまわないように、お湯の中で移動させることをいう。このような対流制御は、微妙な火力の調節と、その通電の開始、休止、開始、というタイミングが要求される。従って、この実行時間帯には外部からの操作や指令によって電力の削減が行われないようにしている。
L6は、「優先調理メニューの実行時間帯」において、前記吹き零れ検知装置が吹き零れを検知したことを示す情報、L7は、第1の加熱口2Lの左誘導加熱源が自動的に停止されたことを示す情報である。ない、この時、第2の加熱口2Rも同時に加熱駆動されていた場合は、その加熱口2Rの加熱動作も緊急停止される。L8は、第1の加熱口2Lの吹き零れ状態を使用者が確認し、吹き零れた液体を除去して加熱再開指令を行ったことを示す情報、L9は、第1の加熱口2Lの加熱動作が再開されたことを示す情報である。L10は、インバーター回路33Lの駆動が停止され、誘導加熱動作が終了した情報を示す。L11は、主電源遮断(OFF)を示す信号である。
図29から明らかなように、誘導加熱調理器2の電源投入から電源遮断までの全工程においては、信号L1〜L4の間及び「優先調理メニューの実行時間帯」を除いた時間帯では、前記電力指令装置9からの電力削減要求に従って電力削減運転に対応することが可能である。また信号L5の「優先調理メニューの実行時間帯」開始以降であっても、吹き零れの発生やその確認のために一時的に加熱調理が停止しても、その停止中も電力削減を行わないに「「優先調理メニューの実行時間帯」として指定している。このため、不意に吹き零れが発生して一時的に加熱動作が停止している間に、前記電力指令装置9からの電力削減要求に従って誘導加熱調理器2が電力削減運転に変更され、加熱再開時には調理工程の再開ができない事態、あるいは再開できても調理条件が変化してしまい、十分な加熱量が確保できず、期待した調理が行えないという事態を回避できるという効果がある。
この実施の形態2においても、実施の形態1で説明したような、第1〜第4の表示部を備えている。すなわち、誘導加熱調理器2の運転中に電力削減要求信号を受ける可能性のある対象機器であること示す第1の表示部210A、所定の電力削減要請信号を受けている状態を示すための第2の表示部210B、所定の電力削減要求信号を受けて実際に電力が削減された状態であること示す第3の表示部210C、及び電力削減が回避されていることを示す第4の表示部210Dがそれぞれ適当なタイミングで表示される。使用者がこれらの第1〜第4の表示部210A〜210Dを見ることによって、加熱調理中に電力が削減される可能性や削減されたこと、あるいは電力量が維持されていることを知ることができる。
実施の形態3.
図30〜図42は本発明の実施の形態3に係る家電機器の電力制御システムと、それに使用されるビルトイン(組込)型の誘導加熱調理器の1例を示している。
図30は、本発明の実施の形態3に係る電力制御システムの全体構成を示すブロック図。図31は、その電力指令装置の使用限度設定器の表示画面の正面図。図32は、誘導調理器単体の基本的構成を示すブロック図。図33は、その誘導加熱調理器のトッププレートを外した状態の平面図。図34は、その誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの通電説明図1である。
図35は、その誘導加熱調理器全体の基本的な加熱動作を示す制御ステップ説明図。図36は、その誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの動作を説明する平面図。図37は、その誘導加熱調理器における表示手段と操作部の一部を示す平面図1。図38は、その誘導加熱調理器における表示手段と操作部の一部を示す平面図1。図39は、その誘導加熱調理器において、大型で円形の被加熱物を加熱する場合の誘導加熱コイルの通電説明図1。図40は、同じく大型で円形の被加熱物を加熱する場合の誘導加熱コイルの通電説明図2。図41は、その誘導加熱調理器において、円形以外の被加熱物を加熱する場合の誘導加熱コイルの動作を説明する平面図。図42は、その誘導加熱調理器において、円形以外の被加熱物を加熱する場合の誘導加熱コイルの通電説明図である。図中、前述の実施の形態1のものと同一部分には同一符号を付してある。
以下、図30〜図42を参照しながら、本発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態3について詳細に説明する。
本実施の形態3の家電機器の電力制御システムの特徴は、前記比較器92の比較基準となる合計電力値を、指定電力値に変更するように指令する電力使用限度設定器96に新たな機能を付加している。また、誘導加熱調理器の加熱コイルの形態とその通電パターンに特徴がある。
この実施の形態3の使用限度設定器96は、図30に示すように電源供給を切っても記憶情報が消えない半導体の記憶メモリー96Aがあり、昨年の同日の指定電力値が任意に読み出せる構成になっている。つまり、使用者は比較器92の比較基準となる合計電力値を、指定電力値に変更する際、昨年の同じ日に設定した過去の設定値と、また前日の設定値を表示画面100に表示させることができる。このため、特に空気調和機や他の暖房機等の使用実績によって1日の電力使用実績が季節によって大きく異なっても、昨年の情報を参考にできる。
図31において、120が昨年の同じ日に設定した過去の設定値を表示画面100に表示させる際にタッチ操作するキーであり、121は昨年同日の設定値を表示する表示部である。前記キー120に触れた場合に、ここに昨年の設定値の記録が表示される。図31からは、昨年同日に7000Wに設定していたことが分かる。なお、この表示部121に表示される数値を音声で報知するように構成しても良いし、この音声報知と前記表示部121での表示を併用しても良い。さらに1年前の日のデータではなく、1ケ月前や1週間前など他の特定の日を指定するようにしても良い。このキー120を押す都度、表示部の「1年前は・・W(ワット)」、「1ケ月前は・・・・W」のように順次表示する形式でも良い。
また、電力使用限度設定器96の設定キーと表示部106は、使用者が設定を変えない限り、前日からの設定値がそのまま継続して表示されるので、使用者が翌朝に、再度表示画面100を見た場合、前日からの設定値を直ちに確認できる。そのため特に事情が変化しなければ、昨日の電力使用量と当日の使用量が同等であると考えて、そのままにしておけば、昨日の設定値が翌日にも適用される。
誘導加熱調理器2は、図33に示したように、左右に並んだ誘導加熱源による加熱口2L、2Rと、中央後部にある輻射式電気加熱源による第3の加熱口122とを備えた、いわゆる3口の誘導加熱調理器であり、流し台等の厨房家具1に形成した設置口を覆う大きさ、スペースに合わせて、平面視で横長矩形(横長方形ともいう)の本体2Aを備えている。
左側の加熱口2Lが第1加熱手段、右側の加熱口2Rが第2加熱手段に相当部分である。
3つの加熱口2L、2R、122上方は耐熱ガラス板で形成されたトッププレート14で覆われており、このトッププレートの下方空間には、前記第1及び第2の加熱口2L、2Rの加熱源となる円環状の誘導加熱コイル2LC、2RCと、ラジエントヒーターやハロゲンヒーター等の速熱式の円形電気加熱手段123がそれぞれ設置されている。第2の加熱口2Lの加熱コイル2RCは、環状に巻かれた1つの誘導加熱コイルであっても良いが、好ましくは、環状に巻かれた2つのコイルを互いに同心円状に配置し、かつそれらは互いに独立して通電可能な形態にする。そして内側と外側のコイルを独立して駆動できるようにすれば、直径の異なる被加熱物にも対応できる。例えば、内側の加熱コイルは外径が120mm、外側の加熱コイルは180mmにすれば、100mm〜220mm程度の直径の被加熱物Nに対応できるようになる。このように誘導加熱コイルの直径に応じて誘導加熱できる区域(エリア)の直径が変化する。
2Cは、誘導加熱調理器2の本体2A外郭を構成する箱状の本体ケースで、この天面が前記トッププレート14で覆われている。前記本体2Aの上面前部には、前記トッププレート14の下面に近接して、各種の調理条件の設定値、警報や異常情報を表示する液晶パネル等の表示手段16が設置されている。
この本体2Aは、本体部Aの上面全体を水平に設置された平板状のトッププレート14で覆った天板部130と、本体2Aの上面以外の周囲(外郭)を構成する筐体部131と、使用者により操作される上面操作部26と、上面操作部からの信号を受けて加熱手段を制御する通電制御回路32と、加熱手段の動作条件を表示する前記表示手段26と、をそれぞれ備えている。
また、加熱手段124の一部として、実施の形態3では図示していないが、グリル調理器4のためのグリル庫(グリル加熱室)22を本体2Aの中に備えており、そのグリル庫22にはシーズヒーター等の電気加熱手段34Hを備えている。図33において、132Lは本体2Aの上面前方部に設けた上面操作部26に、静電容量変化を用いて入力有無を検知するタッチ式のキーや機械式電気接点を有する押圧式キー等によって入力操作される左操作部、同じく132Mは中央操作部、132Rは同じく右操作部であり、使用者がこれら選択部を操作することにより後述する各種調理メニューが選択できる。3つの操作部132L、132R、132Mによって前記上面操作部26の一部を構成している。
本体2Aの左右中心線CL1を挟んで左側には第1の加熱口2Lが、また右側には第2の加熱口2Rが設置されている。
129は、前記表示手段16の表示画面であって、例えば液晶表示画面であり、左右中心線CL1を跨ぐように本体2Aの左右中心部に配置されている。
本体部Aの外郭を形成する金属製薄板から形成された本体ケース2Cの上部は、内側寸法で横幅W3が540mm(又は550mm)、奥行DP2が402mmの箱形に設計されている。この本体ケースの内部に前記第1の加熱口の誘導加熱コイル2LC、第2の加熱口2Rの誘導加熱コイル2RC及び前記電気加熱手段142がそれぞれ設置されている。誘導加熱コイル2LC、2RCについては、あとで詳しく説明する。
図33に示すように、本体ケース2Cの上面開口の後端部、前端部、右端部及び左端部の4個所には、それぞれ外側へL字形に一体に折り曲げて形成したフランジを有しており、後方のフランジ140B、左側のフランジ140L、右側のフランジ140R及び前側フランジ140Fが、それぞれ厨房家具の設置部上面に載置され、加熱調理器の荷重を支えるようになっている。
トッププレート14は、図33に破線で示すように長方形である。このトッププレート14は、横幅W2が728mm、奥行寸法は前記奥行DP2よりも大きい。図33においてW1は本体2Aを構成する本体ケース2Cの横幅寸法である。トッププレート14の下方にある、横幅寸法がW3で、奥行き寸法がDP2の長方形の空間が、部品収納室141になる。部品収納室141は、前面壁141Fと、右側壁141R、左側壁141L及び背面(後面)壁141Bをそれぞれ有している。
前記電気加熱手段123は、本体部Aの左右中心線CL1上で、かつ、その後部寄りの位置に配置されている。その電気加熱手段123は、トッププレート14を通してその下方から鍋等の被加熱物Nを加熱するものである。図32において300は、前記グリル調理器4のための電気加熱手段(シーズヒーター)を駆動する駆動回路である。
図32、33、34において、MCは第1の加熱口2Lの誘導加熱コイル2LCを構成する主加熱コイルであり、被加熱物Nを載せるトッププレート14の下方に接近して配置されている。図32〜34において、破線の円で示したものが鍋等の被加熱物Nの外殻である。
また、この主加熱コイルは、渦巻状に0.1mm〜0.3mm程度の細い線を30本程束にして、この束(以下、集合線という)を1本又は複数本撚りながら巻き、中心点X1を基点として外形形状が円形になるようにして最終的に円盤形に成形されている。主加熱コイルMCの直径(最大外径寸法)は約180mm〜200mm程度であり、半径R1は90〜100mmである。この主加熱コイルは、この実施の形態1では例えば、最大火力が1500Wの能力を備えている。
SC1〜SC4は、4個の長円形副加熱コイルであり、前記主加熱コイルMCの中心点X1を基点として前後・左右に、かつ等間隔にそれぞれ対称的に配置されており、中心点X1から放射状に見た場合の横断寸法、つまり「厚み」(「横幅寸法」ともいう)WAは、前記主加熱コイルMCの半径R1の50%〜30%程度の大きさであり、図34の例では、WAは40mmに設定されたものが使われている。また長径MWは前記R1の2倍程度、つまり主加熱コイルMCの直径(最大外径寸法)と同じく180mm〜200mm程度である。なお、主加熱コイルMCの「側方」とは、特に他の説明と矛盾がない場合、図34で言えば右側、左側は勿論、上側と下側(手前側)を含んでおり、「両側」とは左右両方をいうことは勿論、前後及び斜め方向も意味している。
4個の副加熱コイルSC1〜SC4は、前記主加熱コイルMCの外周面に所定の空間(数mmから1cm程度の大きさ)の空間152を保って配置されている。副加熱コイルSC1〜SC4の相互は略等間隔になっている(相互に、空間153を保っている)。この副加熱コイルSC1〜SC4も、集合線を1本又は複数本撚りながら巻き、外形形状が長円形や小判形になるように集合線が所定の方向に巻かれ、その後形状を保つために部分的に結束具で拘束され、又は全体が耐熱性樹脂などで固められることで形成されている。4つの副加熱コイルSC1〜SC4は平面的形状が同じで、縦・横・高さ(厚さ)寸法も全て同一寸法である。従って1つの副加熱コイルを4つ製造し、それを4箇所に配置している。なお、これら4つの副加熱コイルは、定格最大火力が同じに設定されている。
これら4つの副加熱コイルSC1〜SC4は図34に示すように、中心点X1から半径R1の主コイルMCの周囲において、その接線方向が丁度各副加熱コイルSC1〜SC4の長手方向の中心線と一致している。言い換えると長径方向と一致している。
4つの副加熱コイルSC1〜SC4は、それぞれの集合線が長円形に湾曲しながら伸びて電気的に一本の閉回路を構成している。また主加熱コイルMCの垂直方向寸法(高さ寸法、厚さともいう)と各副加熱コイルSC1〜SC4の垂直方向寸法は同じであり、しかもそれら上面と前記トッププレート14の下面との対向間隔は同一寸法になるように水平に設置、固定されている。
図34において、DWはこの調理器によって誘導加熱できる金属製の鍋等の被加熱物Nの外径寸法を示す。前記したような主加熱コイルMCの直径や副加熱コイルSC1〜SC4の厚みWAから、この図34の例では、加熱に適する被加熱物Nの外形寸法(底面直径)DWは、220mm〜240mm程度である。底面の直径寸法DWが300mm程度の大きな直径の被加熱物Nも、その底面全体を誘導加熱できる。つまり、4つの副加熱コイルが環状に点在している場合、それら全ての副加熱コイルを包含するような円の直径寸法が大きければ、大きな直径の被加熱物に対応できる。従って、より大きな被加熱物Nを加熱できるように、誘導加熱域を大きくするには、主加熱コイルMCの直径を大きくし、同時に、4つの副加熱コイルを環状に点在させる範囲を大きくすれば良い。
誘導加熱調理器2に内蔵された電源装置は、三相交流電源を直流電流に変換するコンバーター(例えばダイオードブリッジ回路、または整流ブリッジ回路ともいう)と、コンバーターの出力端に接続された平滑用コンデンサー、この平滑用コンデンサーに並列に接続された加熱コイル2LCの主加熱コイルMCのための主インバーター回路(電源回路部)MIVと、同様に平滑用コンデンサーに並列に接続された各副加熱コイルSC1〜SC4のための副インバーター回路(電源回路部)SIV1〜SIV4を備える。なお、144Lは、第1の加熱口2Lの加熱コイル2LCのインバーター回路であり、前記主インバーター回路MIVと、4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4から構成されている。
図32において、144Rは、第2の加熱口2Rの加熱コイル2LCためのインバーター回路、145は電気加熱手段123の駆動回路である。なお、前記第2の加熱口2R用の加熱コイル2RCは、環状に巻かれた1つの加熱コイル又は、内側にあって環状に巻かれた加熱コイルと、この加熱コイルと直列になっている外側の加熱コイルとの二重構成であるから、この第2の加熱口2R用のインバーター回路144Rは、前記した第1の加熱口2L用のインバーター回路144Lの構成とは異なっている。また加熱コイル2RCの直径は、180mm程度に形成されている。
主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4は、前記コンバーターからの直流電流を高周波電流に変換し、それぞれ主加熱コイルMCおよび副加熱コイルSC1〜SC4に高周波電流を(互いに)独立して供給するものである。
一般に、誘導加熱コイルのインピーダンスは、誘導加熱コイルの上方に載置された被加熱物Nの有無および大きさ(面積)に依存して変化するから、これに伴って前記主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に流れる電流量も変化する。
本実施の形態3の電源装置では、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる、それぞれの電流量を検出するための電流検出部(検出手段)135を有する。この電流検出部は、後述する被加熱物載置判断部400の一種である。
本発明によれば、電流検出部135を用いて、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量を検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かを推定し、その推定結果を制御部(以下、「通電制御回路」という)32に伝達するので、被加熱物Nの載置状態について精度よく検出することができる。
なお、被加熱物Nの載置状態を検出するための被加熱物載置判断部400として、主インバーター回路MIVと4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4に流れる電流量を検出する電流検出部135を用いたが、これに限定されるものではなく、機械式センサー、光学的センサーなどの他の任意のセンサーを用いて被加熱物Nの載置状態を検知してもよい。
本発明の電源装置の通電制御回路32は、図32に示したように、電流検出部135に接続されており、被加熱物Nの載置状態に応じて、主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に制御信号を与えるものである。すなわち、通電制御回路32は、電流検出部135で検出された主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量に関する信号(被加熱物Nの載置状態を示すデータ)を受け、被加熱物Nが載置されていないか、あるいは被加熱物Nの直径が所定値(例えば120mmφ)より小さいと判断した場合には、それら主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4への高周波電流の供給を禁止又は(既に供給開始されている場合はそれを)停止するように主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4を選択的に制御する。
本実施の形態3によれば、通電制御回路32は、被加熱物Nの載置状態に応じた制御信号を主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIV1〜SIV4に供給することにより、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4への給電を互いに独立して制御することができる。また、中央にある主加熱コイルMCを駆動せず(OFF状態とし)、かつ、すべての副加熱コイルSC1〜SC4を駆動する(ON状態とする)ことにより、フライパンなどの鍋肌(鍋の側面)だけを予熱するといった調理方法も実現可能となる。
この実施の形態3における誘導加熱調理器2では、第1の加熱口2Lを使用した場合で、かつ次の加熱モードについて、外部からの電力削減要求指令に影響されず所定の電力が維持される「優先調理メニューの実行時間帯」を有している。
第1の「優先調理メニューの実行時間帯」:主加熱コイルMCと全ての副加熱コイルSC1〜SC4を駆動して「揚げ物モード」を行う場合。
第2の「優先調理メニューの実行時間帯」:主加熱コイルMCと全ての副加熱コイルSC1〜SC4を駆動して「予熱物モード」を行う場合。
第3の「優先調理メニューの実行時間帯」:主加熱コイルMCと全ての副加熱コイルSC1〜SC4を駆動して「炊飯モード」を行う場合(その中の「沸騰工程」)。
第4の「優先調理メニューの実行時間帯」:主加熱コイルMCと全ての副加熱コイルSC1〜SC4を駆動して「茹でモード」を行う場合(その中の「ほぐし工程」)。
つまり、通電制御回路32には、第1の加熱口2Lにおいて、主加熱コイルMCと全ての副加熱コイルSC1〜SC4を使用するような大径の被加熱物Nを加熱する特定の動作モードの場合だけに限って、優先調理メニューの実行時間帯を設定している。また第2の加熱口2Rにも、また電気加熱手段142の何れについても、優先調理メニューの実行時間帯、言い換えれば「優先加熱工程」を認めていない。
なお、第2の加熱口2Rでも、「揚げ物モード」や、「予熱物モード」等のように第1の加熱口2Lと同じような調理ができるようにしても良い。しかしながら、第2の加熱口2Rの誘導加熱コイル2Rは主加熱コイルMCのような環状のコイルだけしか具備しておらず、副加熱コイルSC1〜SC4に相当するものがないので、第1の加熱口2Lと全く同じような加熱動作はできない。また単純な環状の誘導加熱コイルだけであるので、第1の加熱口2Lのように、主加熱コイルMCよりも大きな直径を有するが、円形でない鍋、例えば長方の大型の鍋や調理用鉄板には対応できない。
次に、前記表示手段16の表示画面129について説明する。
この実施の形態において、前記表示画面129は、全ての加熱源に共通で用いられるものであるため、統合表示手段とも呼ばれる。全ての加熱源とは、第1の加熱口2Lの加熱コイル2LC、第2の加熱口2Rの加熱コイル2LCと、電気加熱手段123、更にはグリル調理器4のシーズヒーター34Hを含むものである。この実施の形態3の統合表示手段で使用されている表示画面100は、周知のドットマトリックス型液晶表示画面である。また高精細(320×240ピクセルの解像度を備えているQVGAや640×480ドット、16色の表示が可能なVGA相当)の画面を実現でき、文字を表示する場合でも多数の文字を表示することができる。液晶表示画面は1層だけではなく、表示情報を増やすために上下2層以上で表示するものを使用しても良い。また、単純マトリクス駆動方式を用いたSTN(Super Twisted Nematic)液晶によって構成しても良い。なお、この表示画面を通じて使用者が加熱動作の指令も行えるが、この点については後で説明する。
この実施の形態3において、表示画面129の表示領域は、縦(前後方向)約70mm(又は約80mm)、横約100mm(又は約120mm)の大きさの長方形である。
前記表示画面は、図示していないが、表示駆動回路で駆動される。その表示部駆動回路は前記通電制御回路32に接続されている。
また表示部駆動回路は、図示していないが、表示用メモリー、表示コントローラー、インターフェース回路、専用電源、コモンドライバー回路、およびセグメントドライバー回路をそれぞれ備えている。そのため、この表示部駆動回路は、専用電源からの電力により動作し、前記インターフェース回路により表示用メモリーからの画像情報を取得する。また表示用メモリーは、通電制御回路32から取得した画像情報を記憶する。さらに表示コントローラーは、表示用メモリーに記憶された画像情報を読み出し、この画像情報に基づいて、前記コモンドライバー回路およびセグメントドライバー回路を駆動する。コモンドライバー回路およびセグメントドライバー回路は、表示画面129の各画素に対応して設けられた互いに交差する電極に電圧を印加することで液晶を駆動する。このように、表示駆動回路は、表示用メモリーに記憶された画像情報を、必要な都度表示画面129に表示させる。なお、前記表示部駆動回路は、通電制御回路32を構成するマイクロコンピューターとは別の、専用のマイクロコンピューターによって構成されている。
150は温度検出素子(以下、「温度センサー」という)150L(図示せず)備えた温度検出回路である。前記温度センサーの温度感知部は、第1の加熱口2Lの加熱コイル2LCの中央部に設けた主加熱コイルMCの内側空間に設置されている。この温度センサーは被加熱物Nから放射される赤外線の量を検知して温度を測定する赤外線式の温度センサーである。なお、第2の加熱口2Rの加熱コイル2RCにも同様に赤外線式の温度センサー150R(図示せず)が設置されている。温度感知部は1つに限る必要はなく、被加熱物Nの底面の温度をできるだけ正確に捉えるため、間隔を置いて複数個設けても良い。例えば主加熱コイルMCの内側と、主加熱コイルと副加熱コイルSC1〜SC4の間の空間、あるいは副加熱コイルSC1〜SC4の内側の空間に設置して良い。
赤外線式の温度センサーは、鍋等の被加熱物Nから放射される赤外線の量を検知して温度を測定できるフォトダイオード等から構成されており、被加熱物Nから放射された赤外線を集約させ、かつリアルタイムで(時間差が殆んどなく)受信してその赤外線量から温度を検知できることで(サーミスタ式よりも)優れている。この温度センサーは、被加熱物Nの手前にあるトッププレート14の温度と被加熱物Nとの温度が同じでなくても、またトッププレート14の温度に拘わらず、被加熱物Nの温度を検出できる。すなわち、被加熱物Nから放射される赤外線がトッププレート14に吸収されたり遮断されたりしないように工夫しているためである。
トッププレート14は4.0μm又は2.5μm以下の波長域の赤外線を透過させる素材が選択されており、一方、温度センサーは4.0μm又は2.5μm以下の波長域の赤外線を検出するものが選択されている。
なお、温度センサーは、伝熱式の検知素子、例えばサーミスタ式温度センサーでも良い。サーミスタ等の伝熱式のものである場合には、前記した赤外線式温度センサーと比較すると急激な温度変化をリアルタイムで捕捉することでは劣るが、トッププレート24や被加熱物Nからの輻射熱を受け、被加熱物Nの底部やその直下にあるトッププレート14の温度を確実に検出できる。また被加熱物Nが無い場合でもトッププレート14の温度を検出できるものである。
また前記温度センサーと温度検出回路150は、被加熱物Nが主・副加熱コイルの上に置かれていないことを検知する手段である前記被加熱物載置検知部400の一部にもなっている。つまり電流検出部135と前記温度検出回路150は、被加熱物載置検知部であると言える。
前記3つの操作部132L、132M、132Rは、図33に一点鎖線で示しているように、前記前側フランジ3Fの上方に左右に離れてそれぞれ設置され、これら3つの操作部で前記上面操作部26の一部を構成している。これら操作部は、トッププレート14の表面に形成した各種入力キーからの指令を受けて、第1の加熱口2L、第2の加熱口2R、電気加熱手段142の、それぞれの通電時間や火力などを設定できる。前記表示画面129の表面に設けた静電容量式タッチ入力用の各種キーによる設定とは独立して通電条件を設定できる。左側操作部132Lは第1の加熱口2L用、中央操作部132Mは電気加熱手段142用、右側操作部132Rは第2の加熱口2R用である。
11Aは、第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R、電気加熱手段142の全ての電源を一斉に投入・遮断する主電源スイッチ11の操作ボタンであり、使用者が押し下げると電源が入り、再度押すと電源が切れるという構造になっている。
次に具体的な動作について説明するが、その前に本発明でいう制御手段の中核を構成している通電制御回路32で実行可能な主な「動作モード」について説明する。
「高速加熱モード」(加熱速度を優先させた動作メニューで、第1の選択部128Aで選択)
被加熱物Nに加える火力を手動で設定できる。
主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力は、150W〜3000Wまでの範囲で次の16段階(第1段〜第16段)の中から使用者が1段階選定する。
150W(第1段)、200W(第2段)、300W(第3段)、400W(第4段)、500W(第5段)、625W(第6段)、750W(第7段)、875W(第8段)、1000W(第9段)、1250W(第10段)、1500W(第11段)、1750W(第12段)、2000W(第13段)、2250W(第14段)、2500W(第15段)、3000W(第16段)。なお、3000Wを定格最大火力、150Wを定格最小火力と呼ぶ場合がある。これは以下の各種動作モードに拘わりなく、共通である。
主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の火力比(以下、「主副火力比」という)は、使用者が選定した上記合計火力を超えない限度で、かつ所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路32で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。なお、この主副火力比は、被加熱物Nの材質やその大きさによってその都度前記主副火力比から変化する場合がある。
主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4は同時に駆動されるが、この場合、両者の隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。
「揚げ物モード」(自動)(加熱速度と保温機能を要求される調理に適した動作モードで、第3の選択部128Cで選択)
揚げ物油を入れた被加熱物N(天ぷら鍋等)を所定の温度まで加熱し(第1工程)、その後被加熱物Nの温度を所定範囲に維持するように、通電制御回路32が火力を自動的に調節(第2工程)する。
第1工程:所定の温度(例えば180℃)まで急速に加熱する。
主加熱コイル火力は2500W
第2工程:ここで揚げ物が実施され、天ぷらの具材等が投入される。最大30分間運転。この工程では、火力設定部による(任意の)火力設定は禁止される。30分経過後に自動的に加熱動作終了(延長指令も可能)。
この第2工程全体が、優先加熱工程になる「優先調理メニューの実行時間帯」である。つまり実施の形態1で説明した前記「温度フィードバック制御」を行う加熱工程である。
主副火力比は、第1工程、第2工程とも所定範囲内になるように自動的に決定され、使用者が主加熱コイルと副加熱コイルの火力比を任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで自動的に変化する。
主・副加熱コイルは、第1工程では同時駆動され、互いの隣接する領域でのコイルの高周波電流の流れが一致。これは、所定温度まで急速に加熱するため。第2工程でも、同様に同時駆動され、電流の流れは一致させる。但し、揚げ物途中で温度の変化が少ない状態が継続すると、電流の向きを反対にし、加熱の均一化を図る。
「予熱モード」(加熱の均一性を優先させた動作モード。第3の選択部128Bで選択)
火力設定や変更を禁止して、予め決められた火力で被加熱物Nを加熱する第1予熱工程を行い、第1予熱工程終了後は(温度センサーからの検出温度信号を利用して)被加熱物Nを所定温度範囲に維持する保温工程を行う。この第1予熱予熱工程全体が、優先加熱工程になる「優先調理メニューの実行時間帯」である。つまり実施の形態1で説明した前記「温度フィードバック制御」を行う加熱工程である。保温工程は優先調理メニューの実行時間帯に該当しない。
予熱工程:
主加熱コイル1000W(固定)
副加熱コイル1500W(固定)
保温工程:最大5分間。この間に(任意の)火力設定が行われない場合、5分経過後に自動的に加熱動作終了。
主加熱コイル300W〜100W(使用者には設定不可能)
副加熱コイル300W〜100W(使用者には設定不可能)
任意の火力設定を保温工程期間中に行なった場合、高速加熱と同じ通電形態になる。
任意の火力設定は、主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力が、150W〜3000Wまでの範囲で次の16段階の中から使用者が1段階を選定できる。
150W、200W、300W、400W、500W、625W、750W、875W、1000W、1250W、1500W、1750W、2000W、2250W、2500W、3000W。
この場合、主副火力比は、所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路32で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)1:3〜(小火力時)1:1まで。なお、この主副火力比は、被加熱物Nの材質やその大きさによってその都度前記主副火力比から変化する場合がある。
主・副加熱コイルは、予熱工程では同時に駆動されるが、その際互いに隣接する領域での高周波電流の流れが正反対方向。これは、隣接領域では双方の加熱コイルから発生させた磁束を干渉させ、加熱強度を均一化させることを重視するため。保温工程でも同時駆動されが、互いに隣接する領域での高周波電流の向きは反対である。これは全体の温度分布均一化のためである。
なお、保温工程では、使用者の指令に基づいて「煮込み制御」が開始される。この「煮込み制御」については後述する。
「湯沸しモード」(加熱速度を優先させた動作モードで、第1の選択部128Aで選択)
被加熱物N内の水を、使用者が任意の火力で加熱開始し、水が沸騰(温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化等の情報から通電制御回路32が沸騰状態と判定)した際に、表示手段Gによって使用者にその旨を知らせる。その後火力は自動的に設定され、そのまま2分間だけ沸騰状態維持する。
湯沸し工程:
主加熱コイルと副加熱コイル合計の火力が150W〜3000W(火力1〜火力9まで16段階の中から任意設定。デフォルト設定値は火力13=2000W)。
主副火力比は、使用者が選定した上記合計火力を超えない限度で、所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路32で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。なお、この主副火力比は、被加熱物Nの材質やその大きさによってその都度前記主副火力比から変化する場合がある。
保温工程:最大2分間。2分経過後に自動的に加熱動作終了。
主加熱コイル1000W以下(使用者には設定不可能)
副加熱コイル1500W以下(使用者には設定不可能)
この期間中に、使用者が任意の火力を設定した場合、高速加熱と同じになる。火力も150W〜3000Wの範囲にある16段階の中から任意に一つ選択可能。
沸騰までは、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4は同時駆動され、その際に互いに隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。沸騰後は電流の向きは反対になる。
「炊飯モード」(加熱の均一性を優先させた動作モード。第2の選択部128Bで選択)
使用者が米飯と水を適当量入れた被加熱物Nとなる容器(磁性金属や炭素素材等)を第1の加熱口2Lや第2の加熱口2Rの上方に置き、その容器を所定の炊飯プログラム(吸水工程・加熱工程・沸騰工程・蒸らし工程などの一連のプログラム)に従って加熱し、自動で炊飯を行う。
吸水工程、加熱工程、沸騰工程
主加熱コイル600W以下(使用者には設定不可能。工程の進行に応じて自動的に変化)
副加熱コイル700W以下(使用者には設定不可能。工程の進行に応じて自動的に変化)
この「沸騰工程」全体が、優先加熱工程になる「優先調理メニューの実行時間帯」である。
蒸らし工程:5分間
主コイル 加熱ゼロ(火力 0W)
保温工程:最大5分間。
主加熱コイル200W以下(使用者には設定不可能)。
副加熱コイル200W以下(使用者には設定不可能)。
なお、この保温工程は、本発明でいう優先加熱工程になる「優先調理メニューの実行時間帯」には該当しない。何故ならば、所定の保温温度に維持するために広い意味では現実の温度に応じて誘導加熱源の火力を増減させるというフィードバック制御が行われるが、一旦炊き上がった米飯をその状態のまま適温(例えば70℃)で維持するというものであり、前記「揚げ物」調理のように、調理の出来上がり状態それ自体に大きな影響を及ぼすというものではないためである。
主・副加熱コイルは同時に駆動されるが、その互いに隣接する領域での高周波の電流の流れが反対方向となるように制御される。これは、隣接領域で双方の加熱コイルから発生させる磁束を互いに干渉させ、加熱強度を均一化させることを重視するためである。
なお、炊飯工程終了後、被加熱物Nが主・副加熱コイルの上に置かれていないことが検知回路部(被加熱物載置検知部)135によって検知された場合、または蒸らし工程や保温工程の何れかにおいて、同様に被加熱物Nが主・副加熱コイルの上に同時に置かれていないことが被加熱物載置検知部によって検知された場合、主・副加熱コイルは、加熱動作を直ちに中止する。
「茹でモード」(加熱速度を優先させた動作モードで、第1の選択部128Aで選択)
加熱工程(沸騰まで):
被加熱物Nに加える火力を手動で設定できる。
主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力は、150W〜3000Wまでの範囲で次の16段階の中から使用者が1段階選定する。
150W、200W、300W、400W、500W、625W、750W、875W、1000W、1250W、1500W、1750W、2000W、2250W、2500W、3000W。
デフォルト値は2000W(使用者が火力を選択しない場合、2KWで加熱開始)。
主副火力比は、所定の火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路32で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。なお、この主副火力比は、被加熱物Nの材質やその大きさによってその都度前記主副火力比から変化する場合がある。
ここで、加熱工程は、使用者が手動で、火力を選択し、水が沸騰した時点で、選択部となる所定のキー(図示せず)を押し、以下のような「ほぐし工程」を開始させるようにしてもよい。なお、その所定のキーとは、後述する「茹で」を選択するキー128A3とは別に設けるか、またはその選択キー128A3を押した場合に「ほぐし」という名称のキーを表示画面129に設ける方法の何れでも良い。表示画面129以外の部分に設けても良い。
ほぐし工程:
水が沸騰(温度検出回路150の温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化等の情報から制御部は沸騰状態と推定)した際に、使用者にその旨を知らせる。水が沸騰した段階で、ほぐし工程へ移行する。この工程は、沸騰した水に被加熱物Nを入れたときに、水の温度が低下するため火力を上げることと、麺などの被調理物同士が、くっつかないように麺をほぐすことを目的とする。主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の火力は、あらかじめ設定された火力で加熱を行う。例えば、主加熱コイルMC:副加熱コイルSC1〜SC4=1000W:600Wとし、主加熱コイルMCの割合を大きくし、麺などの被加熱物Nが対流してくっつかないような火力に設定している。一定時間または、温度検出回路150の温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化を検知するまで、加熱を続ける。
この「ほぐし工程」全体が、優先加熱工程になる「優先調理メニューの実行時間帯」である。
茹で工程:
ほぐし工程が終わった後、茹で工程へ自動的に移行する。
この「茹で工程」全体が、優先加熱工程になる「優先調理メニューの実行時間帯」である。
以下は、茹で工程の通電パターンである。水が沸騰してから所定の時間(例えば10秒、又は20秒)内に「ほぐし工程」を指定しない場合、「茹で工程」が自動的に開始される。
以下の第1の区間〜第4の区間の加熱動作を2回以上繰り返す通電パターンをいう。
第1の区間:主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4を駆動する。
第2の区間:加熱休止期間を設ける(主加熱コイルMC、副加熱コイルともに駆動しない)。
第3の区間:主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4を駆動する。
第4の区間:加熱休止期間を設ける(主加熱コイルMC、副加熱コイルともに駆動しない)
吹き零れを抑制するために、第1区間と第3区間の間に必ず休止区間を設けている。
「湯沸し+保温モード」(加熱速度と均一性を優先させた動作モードで、第3の選択部128Cで選択)
被加熱物N内の水を、使用者が任意の火力で加熱開始し、水が沸騰(温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化等の情報から制御部は沸騰状態と推定)した際に、使用者には表示手段16の表示画面129よってその旨を知らせる。その後火力は自動的に設定され、そのまま2分間だけ沸騰状態維持する。
湯沸し工程:
主加熱コイルと副加熱コイル合計の火力が150W〜3000W(火力1〜火力9まで16段階の中から任意設定。デフォルト設定値は火力13=2000W)。
主副火力比は、使用者が選定した上記合計火力を超えない限度で、所定火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。なお、この主副火力比は、被加熱物Nの材質やその大きさによってその都度前記主副火力比から変化する場合がある。
保温工程:最大10分間。10分経過後に自動的に加熱動作終了。
主加熱コイル1000W以下(使用者には設定不可能)
副加熱コイル1500W以下(使用者には設定不可能)
沸騰までは、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。沸騰後は電流の向きは反対になる。また沸騰以降は使用者の操作に基づいて煮込みまたは茹で制御が開始される。この「煮込み制御」または「茹で制御」については後述する。
「煮込みモード」(加熱の均一性を優先させた動作モード。第2の選択部128Bで選択)
加熱工程(沸騰まで):
被加熱物Nに加える火力を手動で設定できる)。
任意に火力設定する場合、主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力は、150W〜3000Wまでの範囲で次の16段階の中から使用者が1段階選定する。
150W、200W、300W、400W、500W、625W、750W、875W、1000W、1250W、1500W、1750W、2000W、2250W、2500W、3000W。
デフォルト値は2000W(使用者が火力を選択しない場合、2000Wで加熱開始)。
主副火力比は、所定の火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路32で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。なお、この「煮込みモード」における主副火力比は、被加熱物Nの材質やその大きさによってその都度前記主副火力比から変化する場合がある。またこの「煮込みモード」でいう主副火力比は、沸騰状態になった以後の通電においては、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4を同時に駆動した場合の、両者の火力の比ではない。後述するように「煮込みモード」の沸騰以後においては、基本的に主加熱コイルMCの通電期間と、各副加熱コイルSC1〜SC4の通電期間とは別であり、加熱コイルMCと、各副加熱コイルSC1〜SC4とを同時に加熱駆動する通電パターンを採用していないからである。
沸騰以後:
水や調理液が沸騰(温度検出回路150の温度センサーにより、被加熱物Nの温度や温度上昇度変化等の情報から制御部は沸騰状態と推定)した際に、使用者にその旨を知らせる。
その後最長で連続30分間(短縮も延長も1分刻みで任意に設定可能)、次のような2種類の通電パターン(「通電パターン1」、「通電パターン2」)で主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4を駆動する。なお、4つの副加熱コイルの上方に鍋がない場合には、この通電パターン1と通電パターン2の何れかによる「煮込みモード」は適用しない。後で述べる別の通電パターンで「煮込みモード」が行える。
この「沸騰以後の工程」は、本発明でいう優先加熱工程になる「優先調理メニューの実行時間帯」ではない。何故ならば、所定の沸騰以後においては、焦げ付き等を防止するために上限の温度を設定して、それを超えないように監視しているが、その上限温度を超えなければ、その下の温度帯において被加熱物Nやその中の被調理液等の温度が上昇又は下降しても、煮込み調理の結果に大きな影響がないからである。
「通電パターン1」とは、以下の第1の区間〜第6の区間の加熱動作を2回以上繰り返す通電パターンをいう。
第1の区間:主加熱コイルMCを駆動する。
第2の区間:加熱休止期間を設ける(主加熱コイルMC、副加熱コイルともに駆動しない)。
第3の区間:一部(2個)の副加熱コイルSCを駆動する(他の副加熱コイルは駆動しない)。
第4の区間:加熱休止期間を設ける(主加熱コイルMC、副加熱コイルともに駆動しない)。
第5の区間:残りの2個の副加熱コイルSCを駆動する(他の副加熱コイルは駆動しない)。
第6の区間:加熱休止期間を設ける(主加熱コイルMC、副加熱コイルともに駆動しない)。
「通電パターン2」とは、以下の第1の区間〜第4の区間の加熱動作を2回以上繰り返す通電パターンをいう。
第1の区間:主加熱コイルMCを駆動する。
第2の区間:加熱休止期間を設ける(主加熱コイルMC、副加熱コイルSCともに駆動しない)。
第3の区間:副加熱コイルSCを駆動する。
第4の区間:加熱休止期間を設ける(主加熱コイルMC、副加熱コイルSCともに駆動しない)。
またこの「煮込みモード」では、沸騰時点になったら通電制御回路32は主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の両者の火力とその通電期間を、自動的に「所定の値」となるように設定する。主副火力比は、後述する所定の煮込み火力の範囲内になるように自動的に通電制御回路32で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副火力比は(大火力時)1:1.2〜(小火力時)1:4まで。ここでいう「所定の値」とは、後述する「第1の火力値」と、これよりも大きな「第2の火力値」が含まれている。または、後述する「煮込み火力値」をいうものである。前記「第1の火力値」や「第2の火力値」、「煮込み火力値」は、前記主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4を実際に駆動して、多くの調理実験を重ねて決定している。
以下、図28を参照しながら、本実施の形態3に係る誘導加熱調理器の基本動作について説明する。まず第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R、電気加熱手段121の全ての電源を一斉に投入・遮断する主電源スイッチ11の操作ボタン11Aを押して加熱準備動作を指令し、その後、左側操作部141Lの所定のキーに触れて、第1の加熱口2Lを加熱源として選択した場合、通電制御回路32は、前記電流検出部135を用いて、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量を検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かを判定し、この結果を入手する(ステップMS1)。
なお、実際には、最初に前記主加熱コイルMCに所定の電流を短時間印加し、このコイルに流れる電流を最初に検出して被加熱物Nが載置されているか否かを判定し、次に4つの副加熱コイルSC1〜SC4にそれぞれ所定の電流を短時間印加して、それぞれの副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流を検出し、これら各検出電流値を基に通電制御回路32が、被加熱物Nがどの副コイルSC1〜SC4の上方まで被加熱物Nが載置されているか否かを判定するという処理を行うが、本発明はこれに限定されるものではない。主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流の状態によって、誘導加熱に適さない材質の被加熱物であるということも分かる。
適合鍋であった場合、通電制御回路32は操作部E又はその近傍に設置されている表示手段16の表示画面129に対し、希望する調理メニューを選択するように促す表示をする(MS2)。適合しない変形鍋(底面が凹んだもの等)や異常に小さい鍋等の場合は、加熱禁止処理がされる(MS6)。
使用者が調理のための動作モード、火力、調理時間などを操作部で選択、入力した場合、本格的に加熱動作が開始される(MS4)。
表示手段16の表示画面129に表示される動作モードとしては、上記した「高速加熱モード」、「揚げ物モード」、「湯沸しモード」、「予熱モード」、「炊飯モード」、「茹でモード」、「湯沸し+保温モード」、「煮込みモード」の8つである。以下の説明ではモードという記述を省略し、例えば「高速加熱モード」は「高速加熱」と記載する場合がある。
使用者がこれら8つの動作モードの中から任意の一つを選択した場合、それらモードに対応した制御方法が、通電制御回路32の内蔵プログラムによって自動的に選択され、主加熱コイルMCや副加熱コイルSC1〜SC4のそれぞれの通電可否や通電量(火力)、通電時間などが設定される。動作モードによっては使用者に任意の火力や通電時間等を設定するように促す表示が表示部にて行われる(MS5)。
なお、図32では、表示手段16に第1の選択部128A、第2の選択部128B、第3の選択部128Cの3つしか表示していなかったが、前記表示画面129に表示される動作モードは合計で8つあり、それら各動作モードを選択するタッチ式キーを図37と図38にそれぞれ示している。
図37、38に示した通り、第1の選択部128Aの中に、「高速加熱」を選択するキー128A1と「湯沸し」を選択するキー128A2、「茹で」を選択するキー128A3がある。同様に第2の選択部128Bの中に「予熱」を選択するキー128B1、「炊飯」を選択するキー128B2、「煮込み」を選択するキー128B3がある。
また第3の選択部128Cの中に「湯沸し+保温」を選択するキー128C1と「揚げ物」を選択するキー128C2がある。
(「煮込みモード」制御説明)
次に、「煮込みモード」の制御について説明する。「煮込みモード」の通電パターンには、前記したように、「通電パターン1」と「通電パターン2」の2種類があるため、以下詳しく説明する。
(通電パターン1・焦げ付き抑制制御)
通電パターン1・「焦げ付き抑制制御」について説明する。なお、沸騰以降又は沸騰直前、例えば98℃まで被加熱物Nの温度が上昇したことを温度検出回路150が検知した場合、または調理開始からの経過時間から沸騰状態に近いと通電制御回路32が判定した場合等においては、それ以降において使用者の任意に指令した時期、例えば操作直後に、焦げ付き抑制制御が開始されるようにしておくことが望ましいが、特定の調理メニューの場合、沸騰状態になったら使用者が禁止したり、途中で加熱停止したりしない限り、自動的に「焦げ付き抑制制御」に移行するようにしても良い。
この制御は、主加熱コイルMCの駆動しない期間中において、第一の組の副加熱コイルまたは第二の組の副加熱コイルのいずれかによって被加熱物Nを繰り返し加熱するものである。
図36(A)は、主加熱コイルMCのみ主インバーター回路MIVからの高周波電流が供給され、加熱駆動されている状態を示す。この場合、被加熱物Nの発熱部は主加熱コイルMCの真上の部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された被調理物、例えばカレー、シチュー等は主加熱コイルMCの真上の部分で加熱される。また、主加熱コイルMCの火力は、100〜500W程度の小さな火力とする。なお、主加熱コイルMCや各副加熱コイルSC1〜SC4の部分にハッチングを施しているが、その部分は加熱駆動されていることを示している。
同じく図36(B)は、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3のみに高周波電流がインバーター回路SIV2、SIV3より供給されている状態を示す。
この場合、被加熱物Nの発熱部は副加熱コイルSC2、SC3の真上の部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された被調理物、例えばカレー、シチュー等は副加熱コイルSC2、SC3の真上の部分で加熱される。また、副加熱コイルSC2、SC3の火力の総和は、100〜300W程度の小さな火力とする。
同じく図36(C)は、第二の組の副加熱コイルSC1、SC4のみに高周波電流がインバーター回路SIV1、SIV4より供給されている状態を示す。
この場合、被加熱物Nの発熱部は副加熱コイルSC1、SC4の真上の部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された被調理物、例えばカレー、シチュー等は副加熱コイルSC1、SC4の真上の部分で加熱される。また、副加熱コイルSC1、SC4の火力の総和は、100〜300W程度の小さな火力とする。
主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4で同時に加熱する場合、カレー、シチューなどの粘性が高い被加熱物は、なべ底にルーやじゃがいもなどの具材が張り付いて、なべ底温度が高くなり、焦げ付きやすくなってしまう。その場合、ルーや具がなべ底に張り付いている部分が局所的に温度が高くなり、焦げ付きやすくなってしまう。
また、火力の弱い、煮豆などの調理をする場合は、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4で同時に加熱すると煮汁の温度が上昇しすぎて、うまく煮ることができない。
前記の通り、主加熱コイルMCから、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3へ。次に第二の組の副加熱コイルSC1、SC4へ、という順序で加熱をすることにより、加熱箇所が対角線上で移動することで、具材が冷める期間が設けられ、なべ底の温度を局部的に上昇せずに、焦げ付きを防止することができる。また、弱い火力で長時間煮込むのに適した火力を持続することができる。
図36に示したように、加熱コイルの加熱部位を、中心部〜対称的な周辺部〜別の対称的な周辺部、へと時間的に移動させることにより、鍋底の温度を平均的に制御することができ、被調理物の温度を局部的に上げることなく、焦げ付きを抑制することができる。
図32(A)は、図28の加熱動作について、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に流れる電流のタイミングを示した説明図であり、加熱駆動される高周波電流が印加されている状態を「ON」、印加されていないOFF状態を「OFF」と表示している。
図39(A)の通り、所定の時間間隔で構成される第1の区間T1〜第6の区間T6において、第1の区間T1は、主加熱コイルMCがON。第2の区間T2は、全コイルOFF。第3の区間T3は、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3がON。第4の区間T4は、全コイルOFF。第5の区間T5は、第二の組の副加熱コイルSC1、SC4がON。第6の区間T6は、全コイルOFFとなる。
この図39(A)で示す第1の区間T1〜第6の区間T6の火力は、図39(B)の通り、第1の区間T1は、主加熱コイルMCが100W。第3の区間T3は、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3が400W。第5の区間T5は、第二の組の副加熱コイルSC1、SC4が400Wとなる。なお、図39の「火力1」は、前記した16段階の火力でいう第1段火力(150W)とは異なる。ここでいう「火力1」は、前記した「第1の火力値」である。また前記した「煮込み火力値」でもある。
前記「火力1」は第1の区間T1〜第4の区間T4の90秒間で見ると約222Wになる。つまり、最初40秒間(区間T1)は主加熱コイルMCが100Wの火力で駆動され、次に5秒間(区間T2)は加熱動作なく、次の40秒間(区間T3)は、2つの副加熱コイルSC2、SC3が400Wの火力になるように駆動される。さらに次の第4の区間T4では加熱駆動は行われないので、これら90秒間の平均火力を計算すると約222Wになる。被加熱物Nに対して実際に効力のある火力という意味で「実効火力1」ともいう。
また、図39(A)で示す第1の区間T1〜第6の区間T6の時間は、図39(C)の通りである。すなわち、第1の区間T1は40秒。第2の区間T2は5秒。第3の区間T3は40秒。第4の区間T4は5秒。第5の区間T5は40秒。第6の区間T6は5秒となる。ここで、第1の区間T1全体に亘り主加熱コイルMCを通電(ON)状態にするため、この第1の区間の長さを「第1の区間時間」という。また同じく区間T2の長さを「第2の区間時間」という。区間T3の長さは「第3の区間時間」という。以下このように各区間の長さを特定する場合、このような方法で表現する。
この図39(A)で示す第1の区間T1〜第6の区間T6の区間時間は、それぞれ1〜60秒程度でよい。なお、1〜60秒程度という意味は、第1の区間時間〜第6の区間時間を全て10秒間隔にし、次にまた第1の区間T1〜第6の区間T6の制御をする場合は、前記区間時間(10秒)と同じ時間にする場合、及び異なる時間にする場合、の2つのケースを意味する。後者のケースでは、例えば第1の区間T1〜第6の区間T6を全て15秒間隔にすることが考えられる。なお、第1の区間時間と第2の区間時間、また第3の区間時間と第4の区間時間が異なっても良い。例えば第1の区間T1は10秒間、第2の区間T2は15秒間、第3の区間T3は10秒間、第4のT4は15秒間と設定することである。
また以上の説明では、第6の区間T6までの動作を説明したが、T7〜T12というようにさらに区間を6個設けると、前記した第1の区間T1〜第6の区間T6の動作が再び行われることになる。区間T12まで設ければ、例えば第1の区間T1〜第4の区間T4における主加熱コイルMCと、第1、第2副加熱コイルSC1〜4の動作は、第7の区間T7〜第10の区間T10で再び前記第1の区間T1〜第4の区間T4と同様に行われ、これら3組の加熱コイルは同じ通電パターンを2回繰り返したことになる。第13の区間T13以後も同様に行って良い。これはこれ以降に述べる図39(A)の通電例でも同様であり、この実施形態3では第1の区間T1から第6の区間T6までの間で調理を完了するというものではなく、第7の区間T7以後も同様な動作を繰り返し行うものである。第1の区間T1〜第7の区間T7までの動作を少なくとも2回行うが、3回以上行っても良い。
この図39(A)から分かるように、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4いずれかのコイルがONした後は、必ずOFF期間を設ける。OFF期間を設けることにより、一旦被加熱物Nの中で発生していた煮汁(被調理液)の上下方向の対流が静止又はその対流速度が遅くなり、煮汁と、その中に混在している肉や野菜等の固形物や溶解物の具材との位置関係が変化することで熱の均等化、分散化が図れ、局部的な過熱を抑制できる。更にOFF期間の長さによっては、一度調理物が冷め、味のしみ込みを促進することでき、かつ焦げ付きを防止することができる。
また、鍋底の温度が約140℃前後になると焦げ付きが起きやすいとされている。よって、焦げ付き抑制制御で動作中に温度検出回路150が一定の温度を検知した場合、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力を下げてもよい。その一定の温度とは、例えば130℃又は135℃である。
(通電パターン2・対流促進制御)
次に、通電パターン2・「対流促進制御」について説明する。なお、沸騰以降又は沸騰直前、例えば98℃まで被加熱物Nの温度が上昇したことを温度検出回路150が検知した場合、または調理開始からの経過時間から沸騰状態に近いと通電制御回路32が判定した場合等においては、それ以降において使用者の任意に指令した時期、例えば操作直後に、「対流促進制御」が開始されるようにしておくことが望ましいが、特定の調理メニューの場合、沸騰状態になったら使用者が禁止したり、途中で加熱停止したりしない限り、自動的に「対流促進制御」に移行するようにしても良い。
この制御は、主加熱コイルMCの駆動しない期間中において、全ての副加熱コイルSC1〜SC4によって被加熱物Nを加熱するものである。図27において、主加熱コイルMCや各副加熱コイルSC1〜SC4の部分にハッチングを施しているが、そのハッチングは加熱駆動されていること示したものである。
図34(B)は、主加熱コイルMCのみ主インバーター回路MIVからの高周波電流が供給され、加熱駆動されている状態を示す。
この場合、被加熱物Nの発熱部は主加熱コイルMCの真上の部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された、例えば煮物などの煮汁は主加熱コイルMCの真上の部分で加熱され、上昇気流が発生する。従って、この状態を継続すると、図34(B)に矢印YCに示したように、外側に向かって対流を発生させることができる。このことにより具材に煮汁がかかる。また、主加熱コイルMCの火力は、750W〜1000W程度の中〜強火力とする。
同じく図34(A)は、副加熱コイルSC1〜4に、高周波電流がインバーター回路SIV1〜4よりそれぞれすべてに供給されている状態を示す。
この場合、被加熱物Nの発熱部は副加熱コイルSC1〜4の真上とそれぞれの副加熱コイル間に亘る部分になる。従ってその発熱部を基準として被加熱物Nの内部に収容された、例えば煮物などの煮汁は副加熱コイルSC1〜4の真上とそれぞれの副加熱コイル間に亘る部分で加熱され、上昇する流れが発生する。従って、この状態を継続すると、図34(A)に矢印YCに示したように、内側に向かって対流を発生させることができる。このことにより具材に煮汁がかかる。また、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和は、750W〜1500W程度の中〜強火力とする。
主加熱コイルMCと、4つの副加熱コイルSC1〜4の2つのグループに、交互に火力を入れることにより、中〜強の火力で加熱しても、局部的になべ底の温度が上がることを防ぎ、焦げ付きを抑制できる。また、交互に火力を入れることにより、煮汁が調理物にまんべんなくかかり、使用者が調理物をかき混ぜなくても煮汁を浸透させることができる。また、煮魚、肉じゃが(牛肉と、じゃが芋を煮た料理)などの煮物を作る場合、途中で使用者が強制的にかき混ぜると、具材が煮崩れてしまうが、この制御によれば、そのような煮崩れを抑制できる。
図34のように、主加熱コイルMCと4つの副加熱コイルSC1〜4の2つのグループに、交互に火力を入れ、間に休止期間を入れることにより、なべに対流を起こし、一度調理物が冷め、味のしみ込みを促進することできる。
図33(A)は、図27の加熱動作について、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に流れる電流のタイミングを示した説明図であり、加熱駆動される高周波電流が印加されている状態を「ON」、印加されていないOFF状態を「OFF」と表示している。
図40(A)の通り、所定の時間間隔で構成される複数個の区間T1〜T4において、T1区間は、主加熱コイルMCがON。T2区間は、全コイルOFF。T3区間は、副加熱コイルSC1〜4がON。T4区間は、全コイルOFFとなる。
この図40(A)で示す区間T1の長さ(第1の区間時間)は40秒。第2の区間T2の長さ(第2の区間時間)は5秒。第3の区間時間は40秒。第4の区間時間は5秒となる。なお、この図33で示した「通電パターン2・対流促進制御」の第1の区間時間〜第4の区間時間は、図29、32で示した「通電パターン1・焦げ付き抑制制御」の第1の区間時間〜第4の区間時間と全く同じであるが、このように同一にする必要はない。
この図40で示す区間T1〜T4の火力について説明する。
図40(B)の「火力2」の場合は、第1の区間T1は、主加熱コイルが500W。第3の区間T3は、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3が600W(2つの副加熱コイルの合計値)、第二の組の副加熱コイルSC1、SC4が600W(同じく、2つの副加熱コイルの合計値)となる。
前記「火力2」は第1の区間T1〜第4の区間T4の90秒間で見ると約756Wになる。つまり、最初40秒間(区間T1)は主加熱コイルMCが500Wの火力で駆動され、次に5秒間(区間T2)は加熱動作なく、次の40秒間(区間T3)は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4が600W+600Wの火力になるように駆動される。さらに次の第4の区間T4(5秒間)では加熱駆動は行われないので、これらトータル90秒間の平均火力を計算すると約756Wになる。被加熱物Nに対して実際に効力のある火力という意味で「実効火力2」ともいう。
また、図40(B)の「火力3」の場合は、区間T1は、主加熱コイルが700W。区間T3は、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3が750W(2つの副加熱コイルの合計値)、第二の組の副加熱コイルSC1、SC4が750W(2つの副加熱コイルの合計値)となる。
前記「火力3」は第1の区間T1〜第4の区間T4の90秒間で見ると約978Wになる。つまり、最初40秒間(区間T1)は主加熱コイルMCが700Wの火力で駆動され、次に5秒間(区間T2)は加熱動作なく、次の40秒間(区間T3)は、4つの副加熱コイルSC1〜SC4が750W+750Wの火力になるように駆動される。さらに次の第4の区間T4では加熱駆動は行われないので、これら90秒間の平均火力を計算すると約978Wになる。被加熱物Nに対して実際に効力のある火力という意味で「実効火力3」ともいう。
ここで、「火力2」は、中火で20〜30分程度煮込む、肉じゃが、煮物などの調理に適した火力を設定している。「火力3」は、中火〜強火で短時間煮込む、煮魚などの調理に適した火力を設定している。
また、図40(A)で示す第1の区間T1〜第4の区間T4の、それぞれの「区間時間」(「区間」を「期間」と呼ぶ場合は、「期間時間」という)は、図40(C)の通りである。すなわち、第1の区間時間は40秒。第2の区間時間は5秒。第3の区間時間は40秒。第4の区間時間は5秒となる。
この図40(A)で示す第1の区間T1〜第4の区間T4の各区間時間は、それぞれ1〜60秒程度でよい。なお、1〜60秒程度という意味は、第1の区間T1〜第4の区間T4を全て10秒間隔にし、次にまた第1の区間T1〜第4の区間T4の制御をする場合は、10秒と同じ時間にする場合、及び異なる時間にする場合、の2つのケースを意味する。後者のケースでは、例えば第1の区間T1〜第4の区間T4を全て15秒間隔にすることが考えられる。なお、第1の区間T1と第2の区間T2、また第3の区間T3と第4の区間T4の、各区間時間時間が異なっても良い。例えば第1の区間T1の第1の区間時間は10秒間、第2の区間時間は15秒間、第3の区間時間は10秒間、第4の区間時間は15秒間に設定することである。
この図40(A)から分かるように、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜4いずれかのコイルがONした後は、必ずOFF期間を設ける。OFF期間を設けることにより、一度調理物が冷め、味のしみ込みを促進することでき、かつ焦げ付きを防止することができる。なお、図40(B)(C)における「火力2」、「火力3」は、「実効火力2」、「実行火力3」であり、前記した15段階の火力でいう第2段火力(200W)、第3段火力(300W)とは異なることは前述した通りである。
なお、前記「通電パターン1・焦げ付き抑制制御」において、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に流れる電流のタイミングは、図32に示したように、主加熱コイルMCから第一の組の副加熱コイルSC2、SC3に、次に第二の組の副加熱コイルSC1、SC4へ、という順にしているが、主加熱コイルMCから第二の組の副加熱コイルSC1、SC4へ、次に第一の組の副加熱コイルSC2、SC3のように、主加熱コイルMC以降の副加熱コイルの中の駆動順番を変えても良い。またこのように第1の区間T1〜第4の区間の動作を2回繰り返したあと、3回目は、1回目、2回目の通電順番と異ならせても良い。
図33に示した主電源スイッチの操作ボタン11Aを押し、その後、第1の加熱口2Lを使用するような選択操作を行った場合は、最初に図30の画面が表示される。つまり、調理メニュー選択用として、高速加熱用の選択キー128A1、湯沸し用選択キー128A2、茹で選択キー128A3、予熱用選択キー128B1、炊飯選択キー128B2、煮込み選択キー128B3、揚げ物選択キー128C2、湯沸し+保温の選択キー128C1の8つのキーが一斉に(一覧状態に)表示される。但し、図37に示した第4の表示部210Dは表示されない。最初は、この誘導加熱調理器2が電力指令装置9に電気的に接続されており、電力指令装置9からの電力指令信号を受けて供給される電力量が削減されることが有り得る機器であることを示すための、対象機器登録信号AS1を受信するので、前記実施の形態1で示したような第1の表示部210Aが表示画面129に表示される。
そして、図32、33、34に示したような、第1の加熱口2Lを加熱源として選択し、表示画面129に表示された第1の選択部128Aにタッチし、「茹で」の調理メニューを選択して調理を始めた場合、優先加熱工程においては図37に示した第4の表示部210Dが表示画面129に出現する。
図37において、前記8つのキー128A1、128B1等は、使用者が指などを触れることで静電容量が変化する接触式の入力キーを採用しており、使用者がキー表面に対応した位置の、表示画面129の上面を覆うガラス製トッププレート21の上面に軽く触れることで通電制御回路32に対する有効な入力信号が発生するものである。
すなわち、前記各種入力キー128A1、128B1等の部分(区域)を構成する前記トッププレート21表面には、キーの入力機能を示す文字や図形などが印刷や刻印等で何ら表示されていないが、これらキーの下方の表示画面100には、それら入力キーの操作場面毎に、キーの入力機能を示す文字や図形を表示する構成になっている。
全ての入力キーが常に同時に表示されている訳ではない。操作しても無効なキー(操作する必要が無い入力キー)については、入力機能文字や図形を表示画面上で表示しないようにして、トッププレート14の上方から明確に視認できない状態にしている。そのような無効状態の入力キーが操作されても、通電制御回路32には何ら有効な操作指令信号が与えられないように、前記通電制御回路32の動作を定める制御プログラムで規定されている。
図37は、茹で調理を行っている場合の画面を示したものである。前記キー128A3の部分が光によって強調されて表示されている。またこの茹で調理は、優先加熱工程になる「優先調理メニューの実行時間帯」があるので、その時間帯にある場合、「電力優先」という第4の表示部210Dが表示画面129の右側位置に現れる。その位置は、主電源スイッチ11の操作ボタン11Aの近傍でもある。
図38は、高速加熱、つまり高速で被加熱物Nを加熱している調理メニューの実行状態における表示画面129の例である。高速加熱用の選択キー128A1の部分が光によって強調されて表示されている。またこの高速加熱調理には、優先加熱工程は含まれていないので、この高速加熱の実行中に、仮に前記電力指令装置9から何らかの電力制限指令を受けている場合で、既に電力削減動作を誘導加熱調理器2が行っている場合には、前記表示画面129において第3の表示部210Cが、例えば「電力制限中」という文字表示として表れる。
なお、図38において、111は前記実施の形態1で示したようなヘルプキーであり、使用者が操作に迷ったり、間違った操作をして警報音が出たり、表示画面129に警告文字が表示された場合などに操作すると、その場面に関連した情報を表示画面129に文字で表示する。112は、同じく前記実施の形態1で示したような、インフォメーションキーであり、これにタッチした場合、その都度、使用する被加熱物Nの情報や調理方法、上手に調理する注意点などを詳しく表示画面129に文字で表示する。
さらに本実施の形態3で示した通電制御回路32や温度検出回路150、被加熱物載置判断部400などの動作は、マイクロコンピューターや各種半導体記憶装置(ROM、RAMなど)を備えた電子機器、情報機器にて実行できるプログラムの形態で実現、提供できるものである。そのため、当該プログラムの形態で記録媒体を介して配布したり、インターネットの通信回線を用いて配信したりすることが可能となり、本発明で示した新しい制御機能の配布、更新、インストール等の作業によって使い勝手の向上した調理器を提供することも期待できる。
図41(A)は、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3の上方のみを覆うような長方形又は楕円形の被加熱物Nが置かれた場合を示す。この場合は、前記被加熱物載置判断部400では、主加熱コイルMCと第一の組の副加熱コイルSC2、SC3に検知電流を流した結果から、その2つの副加熱コイルの上方のみを被加熱物Nが覆っていることが分かる。図41(A)は、被加熱物載置判断部400による被加熱物Nの大きさの判定結果を受けて通電制御回路32が、インバーター回路SIV2、SIV3を駆動し、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3のみに高周波電流を供給している状態を示す。
図41(A)において、NHは前記被加熱物Nの対向する両側辺に設けた金属製の取っ手である。この取っ手は被加熱物Nの両端部にあるが、誘導加熱によって加熱されないようにトッププレート14の上面から数センチメートル以上離れた位置にある。
図41(B)は、第二の組の副加熱コイルSC1、SC4の上方のみを覆うような長方形又は楕円形の被加熱物Nが置かれた場合を示す。この場合は、前記被加熱物載置判断部400では、主加熱コイルMCと第一の組の副加熱コイルSC1、SC4に検知電流を流した結果から、その2つの副加熱コイルの上方のみを被加熱物Nが覆っていることが分かる。図41(B)は、被加熱物載置判断部400による被加熱物Nの大きさの判定結果を受けて通電制御回路32が、インバーター回路SIV1、SIV4を駆動し、第二の組の副加熱コイルSC1、SC4のみに高周波電流を供給している状態を示す。このように、必要な副加熱コイルのみを駆動する方式であるから、不要な副加熱コイルを駆動した場合に発生する漏洩磁束の問題がない。
図42(A)は、図41(A)に示したように、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3の上方のみを覆うような長方形又は楕円形の被加熱物Nが置かれた場合において、「煮込み」モードを実施した場合の火力値と、主加熱コイルMC、全部の副加熱コイルSC1〜SC4の駆動時間を示す。このような主加熱コイルMCを挟んで互いに反対側にある2つの副加熱コイルSC2、SC3、又はSC1、SC4の上方のみを覆うような被加熱物Nが置かれた場合は、前記した「通電パターン1」や「通電パターン2」とは異なる通電パターンが通電制御回路200によって選定される。以下、図42(A)に示した通電パターンは「通電パターン3」という。この図42(A)から明らかなように、前記した第1の火力(実効火力1:約220W)とは火力値が少し異なっている。
図42(A)の通り、「通電パターン3」では、所定の時間間隔で構成される第1の区間TB1〜第4の区間TB4において、第1の区間TB1は、主加熱コイルMCのみがON。第2の区間TB2は、全コイルOFF。第3の区間TB3は、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3のみがON。第4の区間TB4は、全コイルOFFとなる。
この図42(A)で示す第1の区間TB1〜第4の区間TB4の火力は、図に示している通り、第1の区間TB1は、主加熱コイルMCが200W。第3の区間TB3は、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3が各150Wで、総和火力値は300Wである。なお、この図42の「火力1」は、「煮込み火力1」であり、前記した16段階の火力でいう第1段火力(150W)とは異なる。この「通電パターン3」でいう「火力1」は、前記した「第1の火力値」と同様に、煮込み調理時における弱い火力である。「通電パターン3」でいう「火力1」は第1の区間TB1〜第4の区間TB4の66秒間で見ると平均で約227Wになる。図39に示した「第1の火力」(222W)に近似している。
この図42(B)で示すものは「通電パターン3」における「第2の火力値」(「煮込み火力2」ともいう)であり、前述した「第2の火力値」とは少し異なっている。
図42(B)に示している通り、第1の区間TB1は、主加熱コイルMCが420W。第3の区間TB3は、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3が各280Wで、総和火力値は560Wである。なお、この図42の「火力2」は、前記した16段階の火力でいう第2段火力(200W)とは異なる。ここでいう「火力2」は、「第2の火力」に相当するが、この図42(B)の場合は、この「火力2」の火力値は第1の区間TB1〜第4の区間TB4の66秒間で見ると平均で約445Wになる。図39に示した「第2の火力」の火力値(489W)に近似している。
この実施の形態3においては、「煮込みモード」を含む各種動作モードに拘わりなく、設定できる共通の火力として16段階あると述べた。具体的には。150W(第1段)、200W(第2段)、300W(第3段)、400W(第4段)、500W(第5段)、625W(第6段)、750W(第7段)、875W(第8段)、1000W(第9段)、1250W(第10段)、1500W(第11段)、1750W(第12段)、2000W(第13段)、2250W(第14段)、2500W(第15段)、3000W(第16段)である。一方、前記微調整モードでは「第2の煮込み火力」(760W)よりも下方に3つの微調整火力(350W、480W、620W)を設け、また逆に上方に3段階の微調整火力(810W、870W、920W)を設けていたが、これら合計6つの微調整火力を、上記規定火力である16段階の火力の中から、最も近い火力に代用させても良い。例えば微調整火力の350Wは300W(第3段)に、920Wは875W(第8段)の火力を使用するように、微調整火力よりも小さい(弱い)火力を選択すると良い。何故ならば、例えば350Wの場合、300W(第3段)ではなく400W(第4段)の火力を使用するようにした場合、加熱量が大きすぎて再度火力を下げる微調整が必要になる場面が想定されるからである。
前記実施の形態3で示した誘導加熱調理器2は、第1加熱手段2L及び第2加熱手段2Rと、前記第1加熱手段2Lと第2加熱手段2Rのそれぞれについて複数の加熱モードの内から何れか1つを設定するモード設定手段26と、前記第1加熱手段と第2加熱手段の前記加熱モードに対応した加熱プログラムを有した通電制御回路32と、外部から電力削減要求信号を受信した場合に、前記第1又は第2加熱調理手段の少なくとも何れか一方の使用電力を削減するため前記通電制御回路32に電力削減指令を与える電力指令装置9と、を備え、
前記加熱プログラムには、前記電力指令装置9からの電力削減要求指令に影響されず所定の電力が維持される優先加熱工程として、「茹で」や「揚げ物」調理のための温度フィードバック制御を行う加熱工程を有し、
前記通電制御回路32に対して、揚げ物の加熱モードを選択指令する選択キー128Cや、予熱の加熱モードを選択指令するキー128B、湯沸しの加熱モードを選択指令するキー128A2等をそれぞれ有し、
また電力削減要求指令に応じて電力が削減可能な非優先加熱工程、例えば「湯沸し」調理のための非優先加熱工程を含んでおり、
前記電力指令装置9は、前記第1加熱手段2Lと第2加熱手段2Rが加熱動作を実行中に、前記電力削減要求信号を受信した場合、前記非優先加熱工程を含んでいる加熱モードを実行する前記第1又は第2加熱手段の使用電力を削減する構成である。
また、前記実施の形態3で示した誘導加熱調理器2は、環状の誘導加熱コイルをそれぞれ有する第1加熱手段2R及び第2加熱手段2Lと、
前記第1加熱手段と第2加熱手段のそれぞれについて複数の加熱モードの内から何れか1つを設定するモード設定手段として、揚げ物の加熱モードを選択指令する選択キー128Cや、予熱の加熱モードを選択指令するキー128B、湯沸しの加熱モードを選択指令するキー128A2等をそれぞれ有し、
前記第1加熱手段と第2加熱手段の前記加熱モードに対応した加熱プログラムを有した通電制御回路32と、
外部から電力削減要求信号を受信した場合に、前記通電制御回路32電力削減指令を与える電力指令装置9と、を備え、
前記第1加熱手段の誘導加熱コイル2LCは、前記第2加熱手段の誘導加熱コイル2RCよりも最大径が大きい外側コイルSC1〜SC4と、第2加熱手段の誘導加熱コイル2RCの最大径よりも小さな最大径の内側コイルMCを有し、その内側コイルMCが前記外側コイルSC1〜SC4とは独立して通電可能な構成であり、
前記複数の加熱モードの少なくとも一つに対応した前記加熱プログラムには、前記電力指令装置9からの電力削減要求指令に影響されず所定の電力が維持される優先加熱工程として、「揚げ物」工程や、「予熱」の加熱モードを含み、また電力削減要求指令に応じて電力が削減可能な非優先加熱工程として、「湯沸し」や「高速加熱」の加熱工程を含んでおり、
前記電力指令装置9は、前記第1加熱手段2Lと第2加熱手段2Rが加熱動作を実行中に、前記電力削減要求信号を受信した場合、前記非優先加熱工程を含んでいる加熱モードを実行する前記第1又は第2加熱手段の使用電力を削減し、
前記第1加熱手段2Lと第2加熱手段2Rの双方が、前記非優先加熱工程を含んでいる加熱モードを実行中に、前記電力削減要求信号を受信した場合は、前記第2加熱手段2Rの使用電力を削減する構成としても良い。
これによれば、前記第1加熱手段2Lと第2加熱手段2Rの双方が、前記非優先加熱工程を含んでいる加熱モード、例えば湯沸しモードを実行中に、前記電力削減要求信号を受信した場合は、前記第2加熱手段2R側が優先して電力削減され、第1加熱手段2L側の電力は維持されるので、この第1の加熱手段2L側で、外側コイルSC1〜SC4と、内側コイルMCの双方に通電して大きな直径の被加熱物Nを加熱することと、内側コイルMCだけに通電して小さな直径の被加熱物Nを加熱することができる。つまり、電力が維持される側の加熱部では、少なくとも大小2段階の直径の被加熱物に対応でき、使用者の利便性が向上する。
また、実施の形態3における第1の加熱口2Lのように、1つの誘導加熱部2Lの構成を、環状に巻かれた主加熱コイルMCと、この周囲に環状に配置された複数個の副加熱コイルSC1〜SC4とから構成し、前記主加熱コイルMC単独での加熱と、主加熱コイルと副加熱コイルSC1〜SC4との協同加熱が被加熱物Nの大きさに応じて切り替え可能なものにし、しかも、当該加熱口で、選択できる加熱モードに対応した加熱プログラムには、予熱調理や自動揚げ物など微妙な火加減が要求される調理メニューについて、優先加熱工程を含んでいれば、簡単に煮込み調理等が失敗なく行えるという効果が期待できる。
また、実施の形態3における誘導加熱調理器2は、
前記第1の加熱口2Lが、環状に巻かれた主加熱コイルMCと、この周囲に環状に配置された複数個の副加熱コイルSC1〜SC4とから構成し、前記副加熱コイルは、4個以上あり、前記主加熱コイルの周囲に等間隔に配置されているとともに、
副加熱コイルが前記主加熱コイルMCの外周縁に沿うように全体が主加熱コイルMC側に湾曲した扁平形状であり、
前記主加熱コイル及び前記副加熱コイルに高周波電力を互いに独立して供給するインバーター回路MIV、SIVをそれぞれ設け、
前記各加熱コイルを制御する通電制御回路32は、前記インバーター回路を制御し、被加熱物Nの大きさに応じて前記主加熱コイルMCのみの駆動と、主加熱コイルMCの駆動に加えて前記副加熱コイルSC1〜SC4の全部又は一部を選択的に駆動し、
所定の電力が維持される優先加熱工程と、電力が削減可能な非優先加熱工程とを含んでおり、
前記複数の加熱モードには「煮込み」モードを少なくとも含んでおり、当該「煮込み」モードを実行した場合、被加熱物Nの内部にある被調理流体が加熱によって対流を発生するよう、前記インバーター回路MIV、SIVは、前記主加熱コイルMCのみを所定の期間駆動する動作と、副加熱コイルSC1〜SC4のみを所定期間駆動する動作を交互に行うものとし、当該反復加熱工程によって、被加熱物Nの中の被調理液等が加熱されながら上下に対流し、また一度冷めて、味のしみ込みを促進することでき、かつ焦げ付きを防止することができるという効果が期待できる。
さらに図41(A)に示したように、主加熱コイルMCの周囲に4個以上の副加熱コイルSC1〜SC4を配置し、それら副加熱コイルを主加熱コイルMCを挟んで互いに反対側にある2個の第一の組と、残りの第二の組に分け、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3の上方のみを覆うような長方形又は楕円形の被加熱物Nが置かれた場合は、主加熱コイルMCと第一の組の副加熱コイルSC2、SC3のみに高周波電流を供給する方式であるから、不要な副加熱コイルを駆動した場合に発生する漏洩磁束の問題がなく、円形以外の楕円形や長方形等の変形鍋にも対応できる。
実施の形態4.
図43〜図46は、本発明の実施の形態4に係る家電機器の電力制御システムを示すものであり、図43はその家電機器の電力制御システムを備えた家屋全体の説明図、図44は、その電力制御システムの全体構成を示すブロック図、図45は、その誘導加熱調理器における表示手段と操作部の一部を示す平面図。図46は、その電力指令装置の使用限度設定器の表示画面の正面図である。各図中、前述の実施の形態1のものと同一部分には同一符号を付してある。また前記誘導加熱器2、炊飯器3、電子レンジ5、食器洗い乾燥機6及び空気調和機7は、何れも前記実施の形態1のものと同じである。
この実施の形態4の家庭では、交流200V電源EPに前記キッチン内電気機器KPや空気調和機7等が接続される構成であるが、太陽光発電装置などの自家電源装置を備え、その電源装置からの電力を前記キッチン内電気機器KP等に使用できる設備を備えているところが1つの特徴である。
図43、44において、300は電力会社の交流200V電力が単相3線式の電力線301で供給される電力量計である。前記電力線301は、第1相、第2相及び第3相の3本から構成されているが、その第1相と第2相には、図44に示すように電流クランプ302がそれぞれ挿入され、ブレーカーBKの電源側(上流側)で電流値を検出している。なお、電流クランプ302は図43には図示していないが、電力量計300とブレーカーBKの間に設置している。
家屋本体には、蓄電池303と、自動車用の双方向充電器304と、太陽光発電パネル305からの電力と、蓄電池304からの電力を所定電圧の交流に変換するコントローラー(パワーコンディショナー)306とを備えた自家電源装置307を有している。308は、この自家電源装置からの電力がブレーカー309を介して供給される電源切り替え装置であり、この電源切り替え装置によって前記商用200V電力と自家電源装置307からの電力が切り替えられる。
310は、前記双方向充電器304に任意に接続される車載用蓄電池311を有する電気自動車である。312はその車載用蓄電池311と双方向充電器304を着脱自在に接続する充電ケーブルである。双方向充電器304により蓄電池303から電気自動車310に充電でき、また逆に電気自動車310から蓄電池303に充電することができる。電気自動車はガソリン等を燃料とするエンジンと電気駆動源(モーター)とを併用するハイブリッド型自動車でも良い。
313は、前記電流クランプ302からの電流から消費電力を計算する電力検出器であり、この出力は電力指令装置9の比較器92に入力される。91は、キッチン内電気機器KPの各使用電力制御手段8A〜8Dからの要求電力と、空気調和機7の使用電力制御手段8Eからの要求電力とを合計する要求電力加算器である。
前記比較器92は、前記要求電力加算器91からの要求電力値と、前記電力検出器313からの検出電力値の2者と、ブレーカーBKの容量(6000W)とをそれぞれ比較し、その比較結果から合計電力又は現在の電力の超過量を判定し、合計電力が6000Wの95%以下、すなわち5700W以下であれば出力せず、合計電力が6000Wの95%の5700Wを超えれば、その超過量を出力する要求電力超過量判定手段93を備えている。
電力指令装置9では、前記要求電力超過量判定手段93からの出力がなければ(つまり、超過量が0)、要求電力と同じ使用可能電力を各キッチン内電気機器KPの使用電力制御手段8A〜8Dと、空気調和機7の使用電力制御手段8Eとに対しそれぞれ返信し、また超過量の出力があれば、この合計電力の超過量と予め定めた優先順位に従って、各キッチン内電気機器KPと空気調和機7に対する使用電力の削減幅を決定し、これら各キッチン内電気機器KPと空気調和機7の使用電力制御手段8A〜8Eに返信する使用電力削減幅決定手段94と、内蔵した半導体メモリー95Aに予め登録されている「優先順位」を読み出し、使用電力削減幅決定手段94に電力削減の「優先順位」情報を送信する優先順位設定手段95とから構成されている。
315は、前記キッチン内電気機器KP、空気調和機7及び食器洗い乾燥機6以外の、家庭内で使用される移動可能な小型電気機器である。例えばヘヤードライヤー、電気アイロン、電気掃除機など1000W程度を内蔵するヒーターによってモーターによって消費するものであり、前記した使用電力制御手段8A〜8Eのような自己電力制限手段を有していないものである。図44では、電力指令装置9に定格最大電力情報や名称などが登録できない機器ということから「未登録機器」と表示している。この未登録機器は1台だけが使用されるものではなく、同時に複数台が使用される場合もある。この未登録機器315は、電力指令装置9によって直接電力量が減少させられたり、増加されたりする制御対象機器になっていないので、前記ブレーカーBKを経由して供給される電力をそのまま使用する。
図46において、107は、前記実施の形態1で説明したように、電力指令装置9が制御対象にしている家庭内の電気機器を表示する使用状態表示部であり、誘導加熱調理器2の名称表示部107Aや炊飯器3の名称表示部107Bなどが一覧形式で表示されている。左側に行くほど、電力確保の面で、優先度が高い機器になっている。
108は、前記実施の形態1で説明したように、電力が使用されている場合、つまり現在使用されている場合は、点灯する使用表示部であるが、この実施の形態4においては、電力制限を受けている電気機器は「制限中」と表示し、電力削減処理が行われず電力が維持されている電気機器は「優先」と表示することによって、電力削減有無が一覧状態になるようにしている。つまり、前記した第3の表示部210Cが表示されている電気機器では、この使用状態表示部107の上でも、供給電力が制限されていることが表示され、あるいは優先的に電力が供給されていることが容易に判別できる。
以上説明したように、実施の形態4は、電力会社からの商用電源だけでキッチン内電気機器KPが駆動される訳ではなく、前記蓄電池301とコントローラー306からなる蓄電装置、又は太陽光発電パネル305とコントローラー306とからなる自家電源装置307からの電力が2つのブレーカー309、BKを介して供給され、使用可能となっている。このような自家電源装置307からの電力を家電機器に併用する場合でも本発明は適用できる。
この実施の形態4では、電力指令装置9の比較器92において、前記要求電力加算器91からの要求電力値と、前記電力検出器313からの検出電力値の2者と、ブレーカーBKの容量(6000W)とをそれぞれ比較し、その比較結果から合計電力又は現在の電力の超過量を判定しているので、ブレーカーの電源側で総電力量を正確に把握できる。仮に、前記電力検出器313がない場合において、ヘヤードライヤー、電気アイロンなどの電気機器で、使用電力制御手段8A〜8Eのような自己電力制限手段を有していないもの(未登録機器)315が使用された場合は、要求電力加算器91からの要求電力値には、前記未登録機器315の消費電力情報が反映されていないので、ブレーカーBKの容量と実際の電力量との正確な比較ができないことになる。これに対し、電力検出器313を設けた場合は、未登録機器315の定格消費電力が電力指令装置9側にて事前に登録されていなくとも、要求電力加算器91からの要求電力値と、前記電力検出器313からの検出電力値の2者で差がある場合、その差は前記未登録機器の消費電力であると推定できる。そこで、この実施の形態4では、ブレーカーBKの容量(6000W)に対して余裕を持たせるため、95%(5700W)の水準をベースにして要求電力超過量判定手段93により超過量の判定を行うように構成している。
更に、この実施の形態4においても、何時でも電力使用限度設定器96によって使用電力量の上限値を設定できる。このため、仮にブレーカーBKの容量(例えば6000W)まで相当の余裕がある状態でも、例えば自発的に5000Wに上限値を設定し、それを超えないように電力指令装置9によって自動的に家庭内の電気機器の使用電力量を抑制することができる。なお、この場合でも、前記未登録機器315が例えば800Wで使用された場合、ブレーカーBK容量に接近した状態になるが、前記要求電力加算器91からの要求電力値と、前記電力検出器313からの検出電力値の2者と、ブレーカーBKの容量(6000W)とをそれぞれ比較し、その比較結果から合計電力又は現在の電力の超過量を判定し、合計電力が8000Wの95%以下、すなわち5700W以下であれば出力せず、合計電力が6000Wの95%(5700W)を超えれば、その超過量を出力する要求電力超過量判定手段93を備えているので、結局、未登録機器315が使用されても、その上限値の5700Wを超えないように電力使用量が自動的に制限される。
なお、実施の形態1で説明したように、電力指令装置9の制御信号を受け、また各機器の情報を送信する各使用電力制御手段8A,8B,8C,8Dは、キッチン内電気機器KPの電源回路部にアダプター形式でそれぞれ取り付けたものでも良いが、ヘヤードライヤーや電気アイロン等の未登録機器315は、そのようなアダプターを電源回路に介在させていないものである。例えば家屋の壁に設けたコンセント(接続口)に、アダプターを先に装着しておき、そのアダプターに未登録機器315の電源プラグを挿入すれば良い。しかし、故意又は不注意でそのようなアダプターを使用せずに使用した場合は、電力指令装置9によって制御できない未登録機器315となってしまう。そこでこのような場合でも、その家庭での総電力量をリアルタイムで把握できるように前記した電力検出器313を設置している。またこのような未登録機器315が使用された場合、電力指令装置9では、前記要求電力加算器91からの要求電力値(例えば合計5600W)と、前記電力検出器313からの検出電力値(例えば、5900W)とが相違するので、その差(300W)は未登録機器315の使用によるものと推定し、使用限度設定器96の表示画面100において何らかの表示をして使用者に注意喚起するようにしても良い。
以上の説明から明らかなように、実施の形態4の電力制御システムは、
家屋に設けたブレーカーBKを介して供給される主電源に接続された第1の家電機器2、3、5、と第2の家電機器6、7と、それら家電機器トータルの電力使用量を制御する電力指令装置9で構成する電力制御システムにおいて、
前記第1の家電機器2,3,5は、前記電力指令装置から対象機器登録信号AS1、電力削減要請信号AS2を受け取る第1の受信部8A、8B、8Cと、電気エネルギーを消費する加熱部2L、2R、45と、当該加熱部の運転を指令する第1の操作部26、43と、当該第1の操作部の操作に関連する情報を使用者に報知する第1の報知部16、49と、前記加熱部の運転状態を前記電力指令装置に送信する第1の送信部8A、8B、8Cと、前記加熱部を制御する第1の通電制御部32、62と、を備え、
前記第2の家電機器である食器洗い乾燥器6と空気調和機7は、前記電力指令装置9から対象機器登録信号AS1、電力削減要請信号AS2を受け取る第2の受信部8D、8Eと、電気エネルギーを消費するモーター部176M、193と、当該モーター部の運転を指令する第2の操作部168、227と、当該第2の操作部の操作に関連する情報を使用者に報知する第2の報知部191、228と、前記モーター部の運転状態を前記電力指令装置に送信する第2の送信部172、201と、前記モーター部の運転を制御する第2の通電制御部172、201と、を備え、
前記第1、第2の家電機器は、前記電力指令装置から前記対象機器登録信号を受けた場合に第1の表示部を表示させ、また前記ブレーカーの第1の容量よりも小さな第2の上限容量以下に前記家電機器全体の総電力を削減するための電力削減要請信号AS2を受信した場合、当該要請を受けていることを第2の表示部で表示させる構成である。
また前記第1の家電機器は、複数の加熱モードの内から何れか1つを設定する加熱モード設定手段を有し、当該加熱モード設定手段で動作する加熱プログラムには、所定の電力が維持される優先加熱工程と、電力が削減可能な非優先加熱工程とを含んでいる構成である。
さらに前記第2の家電機器には、前記モーター部の複数の運転モードの内から何れか1つを設定する運転モード設定手段を有している。
これらによって、前記第1、第2の家電機器が同時に運転されている期間中、前記電力指令装置が前記第1、第2の家電機器全体の総電力を削減する場合、前記第1の家電機器が前記優先加熱工程を実行中である場合には、前記第1の通電制御部は所定の電力供給状態を維持させ、前記第2の通電制御部は前記第2の家電機器の使用電力を削減させる構成である。
さらにこの電力制御システムは、前記前記ブレーカーBKを介して前記第1、第2の家電機器に対して電力を供給できる自家電源装置307を備えた構成である。
(変形例)
前記各実施の形態では、第1の家電機器の例えば炊飯器3や誘導加熱調理器2、また第2の家電機器の例えば空気調和機7から、それら機器の加熱工程や運転状態を電力指令装置9が把握するため、各家電機器側からその都度、情報を受信していた。例えば実施の形態1では、誘導加熱調理器2が電力指令装置9に対し運転情報信号L1〜L7をその都度送信していたが、電力指令装置9が、要求電力超過量判定手段93で電力の超過量を判定する処理を行う都度、その直前で各家電機器側に照会の信号送信し、これに答える形で各家電機器側から運転情報を送信するようにしても良い。この場合、例えば「優先調理メニューの実行時間帯」にあるかどうかという特定のコードを送信することで情報の簡素化をしても良い。
また、前記電力指令装置9は、通信手段97により家屋の外部のインターネット等の通信網98へ電力削減情報を発信可能に構成し、電力削減指令を受信後に前記第1、第2の家電機器の総電力を削減した場合、当該削減結果の情報を家屋の外部の特定の受信者宛に前記通信網98によって送信するように構成しても良い。その場合、前記電力指令装置9が、家屋の外部へ電力削減対応情報を発信する場合、受信者(例えば電力会社や公的機関等)を事前に決定してある当該家屋の所在地域を示すコードを同時に送信するようにしても良い。このようにすれば電力の供給者や関係公共機関が、地域毎の節電状況を把握でき、電力の安定供給などに利用することができる。
また、実施の形態3では、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の個々に専用のインバーター回路SIV1〜SIV4を設けていたが、それらインバーター回路の数を減らすため、第一の組の副加熱コイルSC2、SC3用に1つのインバーター回路を設け、第二の組の副加熱コイルSC1、SC4用に1つのインバーター回路を設ける構成にしても良い。これによればインバーター回路の数を減らすことでコストを大幅に削減できるという効果が期待できる。
さらに、「温度フィードバック制御」の条件を決めるにあたり、加熱調理器においては、その火力を加味するようにしても良い。例えば、鍋等の被加熱物Nの温度検出情報に基づいて、目標温度に近づけようと高周波火力を自動的に調節する制御を行う際に、その火力が最大で100W以上である場合を、本発明でいう「優先加熱工程」として規定しても良い。100W未満の小さな火力を使う加熱は、少量のお湯や被調理液等を低い温度で保温するような場合、あるいは一旦炊いたご飯をその後保温するような場合が想定されるが、このような場合の何れも電力が仮に50%に削減されても調理物に重大な結果を招く懸念は殆どなく、また電力指令装置9から見てもそのような小電力使用機器を電力削減対象にするメリットが殆どないからである。
さらに、各実施の形態において、前記使用限度設定器96は電力指令装置9の一部分を構成する専用機器であったが、これを汎用機器(例えばパソコンやデジタル放送受信できるテレビ)又は台所等に設置されるホームセキュリティシステムの親機で実現することでも良い。
また本発明はキッチンやその他部屋等で使用される家庭内電気機器の全てを、電力指令装置9によって制御することを要件にしたものではない。本来的に電力の削減対象に相応しくなく、常に安定的に電源を供給すべき機器、例えば自宅で使用する介護用の酸素発生・供給機器は、最初から電力指令装置9に接続せず。また使用電力制御手段8A,8B,8C,8D等に相当する装置を付属させたり、内蔵させたりしなくて良い。
なお、前記誘導加熱調理器2の第1の表示部210A〜第4の表示部210Dに相当する表示部を他の電気機器、例えば炊飯器3に設ける場合、その表示形態や表示位置、大きさ等は各電気機器の状況に応じて適宜変更して良い。また第1の表示部210A〜第4の表示部210Dは、互いに同じ部位、位置に表示させる必要はないが、使用者が各電気機器を使用する上で最も注目する箇所に設けることが望ましい。