以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1から図10は本発明の実施例を示している。図1はビルトイン型誘導加熱調理器をシステムキッチンに組み込んだ状態の外観斜視図である。尚、本実施例は、キッチンに嵌め込むビルトイン型でなく、キッチンに載置する据置型の加熱調理器であっても差し支えない。
図2は誘導加熱調理器の上面を示す説明図である。図において、誘導加熱調理器の本体1はトッププレート2の下に設けられている。このトッププレート2は、耐熱性の高い結晶化ガラスからなる。トッププレート2に被加熱物である調理用の鍋等の調理鍋が載置される。
トッププレート枠3は、トッププレート2の周囲の端部を覆っている。トッププレート2との間にはシール材(図示せず)が充填していてトッププレート2の周りに固着している。シール材によりトッププレート2の上に液体がこぼれても、本体1内部に水が漏れない水密構造を持つ。
トッププレート枠3は本体1にも固定されている。本体1をシステムキッチン10に取り付ける際は、トッププレート枠3で本体1を吊り下げて設置する。
トッププレート枠3の後枠部に開口する吸気部1aは、本体1の後部に設けられた吸排気通路と連通して、本体1内の制御部ユニット(図示せず)や誘導加熱コイル6の冷却用の空気を吸気する。
吸気部1aと同様に、トッププレート枠3の後枠部に開口する排気部1bは、制御部ユニット(図示せず)や誘導加熱コイル6などを冷却した空気やグリル部5からの排煙を排気する。
トッププレート2の上面に設けられた複数の鍋位置表示部4a,4b,4cは、トッププレート2の下部に配置される誘導加熱コイル6の真上になる位置に設けられた表示部である。
複数の誘導加熱コイル6は、トッププレート2の下であって本体1の上部に略水平に設けられている。本体1の前面寄りであるトッププレート2の前面寄りの手前左側に誘導加熱コイル6aが、同じくトッププレート2の前面寄の手前右側に誘導加熱コイル6bが、これら誘導加熱コイル6aと誘導加熱コイル6b間の奥寄りであるトッププレート2の中央後側に誘導加熱コイル6cが配置されている。そして、トッププレート2に載置された調理用の鍋等を誘導加熱する。
鍋位置表示部4aはトッププレート2手前左側に配置される誘導加熱コイル6aに対応して設けられ、鍋位置表示部4bはトッププレート2手前右側に配置される誘導加熱コイル6bに対応して設けられ、鍋位置表示部4cはトッププレート2中央後側に配置される誘導加熱コイル6cに対応して設けられている。
トッププレート2の手前側左右の誘導加熱コイル6a,6bは、炒め物や揚げ物など比較的大きい出力が必要な調理用である。本実施例においては、夫々最大消費電力3.0kW の加熱出力(火力)を有している。
また、トッププレート2の中央後側に配置された誘導加熱コイル6cは、保温や煮込み料理,炊飯調理など、調理時の作業がそれ程必要なく、且つ手前側左右の誘導加熱コイル6a,6bに比べて比較的出力が弱い調理用である。本実施例においては、誘導加熱コイル6cは、最大消費電力1.6kWの加熱出力(火力)を有している。
本実施例では、トッププレート2の手前側左右の誘導加熱コイル6a,6bは、直径約200mmとし、調理用鍋でよく使用される直径200mm程度の鍋を効率よく加熱できる大きさにしている。誘導加熱コイル6a,6bの真上のトッププレート2上面に設けられた鍋位置表示部4a,4bは、誘導加熱コイル6a,6bの直径と略同一の大きさの表示としている。
トッププレート2中央後側の誘導加熱コイル6cは、直径約140mmとし、小形の調理鍋を効率よく加熱することが出来る大きさにしている。そして、誘導加熱コイル6cの真上のトッププレート2上面に設けられた鍋位置表示部4cは誘導加熱コイル6cの直径と略同一の大きさの表示としている。
誘導加熱調理器本体1の大きさは、本体1を組み込むシステムキッチン10のカウンタートップに設けられた取付け穴の開口部寸法に合わせてある。この開口部寸法は、JISでは幅560mm,奥行き460mmである。
トッププレート2の大きさは、取付け穴の開口寸法に応じた幅600mm,奥行き400mm程度の大きさであり、この範囲内に直径の大きさが200mmの誘導加熱コイル6a,
6bを手前側左右に間隔を100mm空けて配置し、中央後側に直径140mmの誘導加熱コイル6cを配置した。
グリル部5は、誘導加熱コイル6の下方で本体1内の左側または右側(本実施例では左側)に設けている。グリル部5は矩形状の箱体であり、中に入れられた被加熱物を加熱する電熱ヒータを有する。本実施例において、この電熱ヒータは1.2kW の加熱出力を有するシーズヒータ(図示せず)である。更にグリル部5は、取っ手5bを備えた扉5aと、この扉5aと供に本体1の前面から出し入れ可能な受皿(図示せず)とを備える。受皿には被加熱物を載せる網(図示せず)を置いて加熱調理を行う。グリル部5は、この網の上に魚やピザ,グラタン等の被加熱物である調理物を載せてグリル調理する。グリル部5で調理する場合、匂いや煤煙がグリル部5内で発生する。それらが排気部1bから室内に排気され室内の空気を汚すことを防ぐため、グリル部5からの排気を触媒により浄化する仕組みを備えても良い。触媒は加熱を要するため、0.3kW のヒータ(図示せず)が組み込まれている。したがって、触媒を備えたグリル部5で調理を行う場合は、合計1.5kWの電力消費となる。
このような火力を有する誘導加熱調理器は、一般家庭の電源事情(電源容量,配線容量,コンセントの種類等)の制約や、法律上の制約から、最大の総合電力が所定の定格値に収まる範囲の製品としている。本実施例の場合、機器の定格電力は5.8kWである。
トッププレート2の鍋位置表示部4a,4bの上面には火力の優先順位を表示する表示部300が設けられている。この表示部300の“1”は優先順位1位を示し、“2”は優先順位2位を示す。火力の優先順位設定手段は後記するメニューキー404を押した後、設定キー402を操作して設定する。
図3は、誘導加熱調理器の上面のトッププレート2に表示されている、火力の優先順位の表示を発光ダイオードLEDで構成する発光素子303a,303bの光を導光管322を通して表示した時の説明図である。基板320の上には発光素子303a,303bが配置されている。発光素子303a,303bには夫々導光管取り付けカバー321が付いており、導光管322の固定と発光素子303a,303bとの距離を保つようにしている。導光管322は発光素子303a,303bの光を通すので透明の樹脂で成形されている。導光官322の一方の端面に発光素子303a,303bの光を当てると光は導光管322の内部を通過して他方の先端へ光が導かれ、火力優先順位の表示部300を照射する。光は側面部では全反射するようにできているので効率良く先端に到達することができる。
本実施例では、夫々の誘導加熱コイル6a,6bには間隙が設けてあり、導光管322は夫々の誘導加熱コイル6a,6bのコイル間の間隙からトッププレート2の火力優先順位を表示する表示部300に位置している。導光管322はトッププレート2と直接接触させないで空間をもたせている。これは、光を通す樹脂の耐熱温度をあまり高く取れないため、温度の上がるトッププレート2との接触を避けるためである。本実施例では導光管322は直線状となっているが、曲線でもよいので複雑な誘導加熱コイルの間隙を通して配置ができることと、LEDを一箇所に固めて導光管322により調整することにより基板320を小型にすることができる。
図4は、誘導加熱調理器の本体1正面にあるパネル操作部7を示す説明図である。パネル操作部7は、グリル部5の横の位置である本体1の右側前面に設けている。図4に示すように誘導加熱調理器の電源の入り切りを行う電源切/入スイッチ7aと、グリル部5の加熱手段であるシーズヒータの入り切りを行う切/スタートキー7bで構成されている。パネル表示部7cは、パネル操作部7で操作した内容を使用者にわかり易く表示する。
図5は、誘導加熱調理器の上面操作部8a,8b,8cを示す説明図である。上面操作部8は、トッププレート2の手前に設けられたトッププレート枠3の前枠部に設けられている。本実施例ではトッププレート枠3の前枠部に設けてあるが、トッププレート2に設けるようにしてもよい。
上面操作部8は、誘導加熱コイル6a,6b,6cの夫々に対応した上面操作部8a,8b,8cから成る。上面操作部8a,8bには図5に示すように、夫々の誘導加熱コイル6a,6bの通電をオンオフするときに押す切/スタートキー401と、夫々の誘導加熱コイル6a,6bの火力(出力)やタイマー値,自動調理の設定(選択),機器の最大総合電力が定格値を越えるとき自動的に火力を制限させる誘導加熱コイルを選択するための優先順位設定手段の設定キー402と、夫々の誘導加熱コイル6a,6bのタイマー時間を設定する時に押すタイマーキー403と、夫々の誘導加熱コイル6a,6bの自動調理と、誘導加熱コイル6a,6bの優先順位を設定する時に押すメニューキー404が設けられている。
同様に上面操作部8cには図5に示すように、誘導加熱コイル6cの火力(出力)やタイマー値,自動調理の設定(選択)するときに押す設定キー402と、タイマー時間を設定する時に押すタイマーキー403と、自動調理を設定する時に押すメニューキー404が設けられている。
設定キー402は、図6に示すように、夫々の誘導加熱コイル6a,6b,6cに対し段階的な出力を設定することが出来る。図6において、誘導加熱コイル6a,6bは最大出力が3.0kW となっているが、同じ誘導加熱コイル6a,6bを用いても、加熱対象の材質により最大出力が変わる場合、例えば磁性材料からなる調理鍋と非磁性材料からなる調理鍋とで最大出力が変わる場合は、それぞれの最大出力に応じて段階的な出力を設定するようにしてもよい。
また、図示はしないが、タイマーキー403を押すと、タイマー制御の設定要求が後記する制御部713に発せられ、設定時間を段階的なタイマー値として設定することができる。
また、メニューキー404を押すと、自動調理設定処理を開始することができる。そして、設定キー402を操作することで、図7に示す4種類の自動調理機能が基本的に設けられていて、これらが表示され、選択可能となる。
機器の最大総合電力が定格値を越えるとき自動的に火力を低下させる誘導加熱コイルを選択するための優先順位を設定する優先順位設定手段は、例えば誘導加熱コイル6a,
6bの最大火力は共に3.0kW であるので、誘導加熱コイル6aの優先順位を1位にすると、誘導加熱コイル6aは最大火力3.0kW が使用できるが残りの誘導加熱コイル
6b,6cは機器の定格電力が5.8kW なので、他の2個の誘導加熱コイル6b,6cは合計2.8kW の範囲でしか使用できない。このとき誘導加熱コイル6cが1.6kW で使用しているときは、誘導加熱コイル6bは最大1.1kW での運転となる。このように優先順位の高い方は最大火力で運転できるが、優先順位の低い方は条件により火力が制限されたり減少させられたりする。すなわち、使用者が、2つの誘導加熱コイルに対して優先順位を設定可能な優先順位設定手段を有し、制御部は、2つの誘導加熱コイルに対して電力を供給する場合、合計電力が機器の定格電力内になるように優先順位設定手段で設定された優先順位の高い方の誘導加熱コイルの出力電力を優先させることが出来る。このため例えば右利き,左利きでは調理のしやすい方の火力を優先したりできる。
自動調理機能は、被加熱物である調理鍋の温度を制御して行うプログラムが後記する制御部713に記憶されていて、本実施例の場合は保温,炊飯,揚げ物,湯沸しである。図7中、トッププレート2の中央後ろ側に設けられた誘導加熱コイル6cは、設定された最大出力(1.6kW )と自動調理で求められる最大出力との関係で、保温と炊飯とが自動調理を設定可能であるが、誘導加熱コイル6cはこの他にも煮込みの設定が可能である。また、誘導加熱コイル6cよりも最大消費電力が大きいトッププレート2の前側左右に設けられた誘導加熱コイル6a,6bについては、それぞれ鉄やステンレスを加熱する場合には3.0kW の最大消費電力で出力させることができるので、本実施例で挙げる自動調理メニュー(保温,煮込み,炊飯,揚げ物,湯沸し)のいずれも設定最大出力が低いことからいずれの自動調理も設定可能である。
例えば、自動調理メニューの保温を設定すると、入力された設定キー402に対応する誘導加熱コイル6は、加熱出力がその自動調理メニューの間、最大0.5kW の出力に設定される。
同様に他の自動調理メニューが設定された場合、炊飯では最大1.1kW 、揚げ物では最大1.8kW 、湯沸しでは最大2kW の出力に設定される。
自動設定メニューが設定された誘導加熱コイル6は、後記する温度検出器711により調理鍋の温度を検知して、その温度に応じて出力を調整し、設定された自動調理の制御プログラムに従い調理(加熱処理)を実行する。
誘導加熱コイル6cにおける煮込みの自動調理は、炊飯の自動調理に求められる最大出力よりも小さくてよい。煮込み調理は、沸騰温度まで加熱する出力が必要である。しかし、一旦被加熱物が沸騰すると、それ以降は沸騰温度を維持する出力は不要である。鍋の大きさや材質に影響されるが、鍋の中の被調理物を沸騰温度まで加熱するに要した出力よりも少ない出力で十分である。
ここまでに自動調理と誘導加熱コイル6との関係について述べたが、設定最大消費電力が他の誘導加熱コイル6a,6bに比べて小さい誘導加熱コイル6cは、トッププレート2の奥に設けられており、吸気部1aや排気部1bに対して近接した場所にある。そのため、鍋で炊飯をしようとすると必ず蓋から飛まつ(泡)が飛び散ることから、特に吸気部1aから本体内に飛まつが浸入する可能性がある。
また、炊飯自動調理を行わないようにすると、誘導加熱コイル6cで行う他の自動調理で保温や煮込みを設定したとしても1.1kW 未満の電力しか誘導加熱コイル6cで拘束されず、他の誘導加熱コイル6a,6bやグリル部5へ振り分けられる電力が多くなるため、誘導加熱コイル6cでは自動調理による炊飯機能を設定しないようにしてもよい。
上面表示部9は、図2に示すように、トッププレート2の手前側であって各誘導加熱コイルの上面操作部8と対応する位置に設けられている。上面操作部8で操作した出力の設定値や、自動調理メニューの内容や、調理のタイマー時間等を、上面操作部8のそばで使用者にわかり易く表示するものである。
なお、上面操作部8a,8b,8cと上面表示部9a,9b,9cは、設定する誘導加熱コイル6a,6b,6cとの対応関係を分かり易くするため、誘導加熱コイル6a,
6b,6cから真直ぐ手前側のトッププレート2の辺部に直線状に並べて設けた。
図8は、誘導加熱調理器の回路ブロック図である。図8において、誘導加熱調理器に入力する商用電源の交流電源701は、グリル部5の加熱手段であるシーズヒータ702と、誘導加熱コイル6a,6b,6cに電力(火力)を供給するとともに制御するインバータ回路703,704,705とに供給される。オンオフ回路706はグリル部5の加熱手段であるシーズヒータ702をオンオフ制御して電力を供給する。
上面操作回路部707は上面操作部8と接続し入力された情報を信号に変えて制御部
713へ送信する。上面表示回路部708は制御部713からの表示信号を上面表示部9及び優先順位を表示する表示部300で表示する。パネル操作回路部709はパネル操作部7での入力を制御部713に送る信号に変える。パネル表示回路部710は制御部713の出力をパネル表示部で表示する。
温度検出器711は、トッププレート2の下方に設けられており、夫々の誘導加熱コイル6a,6b,6cで加熱される調理用鍋の温度を、トッププレート2を介して検出する。設定された自動調理メニューによる自動調理時に、この温度検出器711で検出した温度情報に基づき、誘導加熱コイルの出力を調節して、鍋が所定の温度となるように制御する。報知部712は制御部713の出力に基づき使用者にブザー音等により報知する。
制御部713は、マイクロコンピュータで構成された制御手段である。この制御部713は、上面操作回路部707やパネル操作回路部709の操作信号や、温度検出器711の出力信号を入力して、上面表示回路部708や、パネル表示回路部710に表示信号を出力する。グリル部5の加熱手段であるシーズヒータ702をオンオフするオンオフ回路
706や、誘導加熱コイル6a,6b,6cの出力を複数段階に調整するインバータ回路703,704,705には制御信号を出力して制御している。
次に、上記説明した誘導加熱コイル6の制御について詳細を説明する。図10は、図8に示した誘導加熱コイル6a,6b,6cのインバータ回路703,704,705を説明する図である。三つの誘導加熱コイル6は共に同様であるので、一つを示して説明する。
インバータ回路703について説明する。交流電源117から供給された交流を整流手段102で直流に変換し、スイッチング素子103,105の直列体で構成するスイッチング部に接続する。スイッチング素子103,105にはそれぞれ逆並列にダイオード
104,106が接続され、スイッチング素子103,105の接続点と直流電圧の基準点間に誘導加熱コイル6aと共振コンデンサ107で構成する共振回路部が接続される。また、スイッチング素子103,105にはそれぞれスナバコンデンサ108,109が接続されている。
スイッチング素子103,105をそれぞれ排他的に高周波でオンオフすることによって、誘導加熱コイル6aと共振コンデンサ107で構成する共振回路部に高周波共振電流を供給し、誘導加熱コイル6a近傍に配置した負荷を加熱する。
インバータ制御部110は、制御部713(図8)から負荷に印加する目標となる電力レベル指示を入力し、インバータ回路703の出力電力が目標値になるようスイッチング素子103,105を制御する。
入力電流変換手段112は交流電源117から入力する電流を検出する検出手段111の出力信号を適切なレベルに変換してインバータ制御部110に出力する。
入力電圧検出手段113は交流電源117の電圧を検出し適切なレベルに変換して制御手段110に出力する。
インバータ電流検出手段115は共振回路部に流れる電流を検出する検出手段114の出力信号を適切なレベルに変換してインバータ制御部110に出力する。
インバータ制御部110はこれらの信号を入力し、負荷に投入される電力であるインバータ電力の計算,負荷の状態,加熱の適否等を判断し、スイッチング素子103,105を排他的にオンオフ制御するための信号を出力し、レベル変換部116によってスイッチング素子103,105に対して適切な駆動レベルに変換し、スイッチング素子103,105を駆動する。また、インバータ制御部110はこれらの状態を制御部713に出力する。
複数の誘導加熱コイル6の火力指定と、本体1の前面寄りに配置された2つの誘導加熱コイル6a,6bの優先順位を指定することにより、使用者が最大火力で使用できる誘導加熱コイル6を確実に指定することができるので、制御部713により行われる自動的な火力調整による火力のバラツキが無くなり、安定した調理を行うことができる。
次に、以上の構成による動作を説明する。最初に前面寄りに配置された2つの誘導加熱コイル6a,6bの優先順位を設定するため、上面操作部8a,8bのメニューキー404を押す。次に、設定キー402を操作することで、誘導加熱コイル6a又は誘導加熱コイル6bのどちらを優先するかを設定する。このときトッププレート2の鍋位置表示部4a,4bの上面には火力の優先順位を表示する表示部300で優先順位を示す番号が発光し表示される。なお、予め優先順位は設定して有り、必要に応じて変更するようにしても良い。
次に、例えば使用者が、トッププレート2手前左側の誘導加熱コイル6aにより調理する場合について説明する。
まず、被調理物を入れた金属製鍋が誘導加熱コイル6a上の鍋位置表示部4aの中心に置かれ、パネル操作部7の電源切/入スイッチ7aが電源入状態になると、誘導加熱調理器の運転が開始する。
次に上面操作部8aの誘導加熱コイル6aの出力を設定する設定キー402で出力要求に合わせて、図6に示す段階的な火力(出力)を、数値及び/または要求火力に合わせて増減する目盛などで上面表示部9aに順に表示する。
使用者の操作により表示された要求火力は、表示状態でそのまま数秒放置すると確定された設定出力としてその出力を制御部713が設定する。
次に、上面操作部8aの切/スタートキー401からの加熱開始の入力を制御部713が検知すると、設定された出力となるように制御部713からインバータ回路703に電力を供給して加熱処理を開始する。
インバータ制御部110は、入力電流変換手段112とインバータ電流検出手段115との検出結果より、金属製鍋が加熱可能な鍋なのか、また材質は磁性体なのか非磁性体なのかを検出する。インバータ制御部110は、加熱に不適当であると判断したらインバータ回路703に加熱停止を命令する。また、インバータ制御部110は、加熱に適当であると判断したら、材質に合わせた共振周波数で加熱するように、共振コンデンサ107を金属製鍋の材質に合わせて切り替え(詳細な回路は図示せず)、スイッチング素子103,105を駆動する。
使用者の手動による調理が終了した場合、上面操作部8aの切/スタートキー401から切り入力がなされ、この加熱切り要求を制御部713が受けると、誘導加熱コイル6aの加熱を停止する。誘導加熱コイル6aの使用後、他の操作が無ければ、パネル操作部7の電源切/入スイッチ7aの電源切操作により電源を切る。
調理タイマーの設定の場合は、調理中に、該当する誘導加熱コイル6に対応する上面操作部8のタイマーキー403の入力により、制御部713はタイマー設定入力待ち状態になる。
タイマー設定入力待ち状態になると、対応する上面表示部9はタイマー値入力画面に切り替わる。設定キー402によりタイマー値が入力されると、その入力に従ったタイマー値を上面表示部9に順に表示する。
表示内容が変わらないまま、言い換えると新たなタイマー値の入力が設定キー402から無い場合、数秒間経過を監視する。所定時間の経過後、制御部713は報知部712よりブザーを鳴らし、新たなタイマー値の入力がない場合、制御部713は最終入力タイマー値を決定値として設定する。そして、制御部713はその設定された時間、タイマーを起動する。調理タイマーによりその設定時間を計時し、設定時間が終了すると該当する誘導加熱コイル6の通電を停止するよう制御部713はインバータ回路703,704,
705に指令を出し、誘導加熱コイル6の加熱が停止し、また報知部712により設定時間の終了としてブザーを鳴らして報知する。
グリル部5で魚等を焼く場合、使用者は網の上に被加熱物を載せ、網をグリル部5に収納した後、パネル操作部7の電源切/入スイッチ7aを入れる。電源切/入スイッチ7aの電源入操作により他の加熱手段と供に、グリル部5でも加熱準備状態となる。
次にパネル操作部7の切/スタートキー7bを押されると、グリル部5への加熱要求があったと判断して、制御部713は、オンオフ回路706にグリル部5のシーズヒータ
702に通電して、網に載せられた被加熱物の加熱を開始する。図示はしないが、グリル部5の加熱庫内には、温度検出器711が設けられ、その温度センサの検知結果を制御部713で受信し、被加熱物の加熱状態を判断し加熱庫内の温度調節をしながらグリル部5の加熱調理を行う。
加熱庫内の被加熱物によっては温度調節処理が異なる。図2には示されていないが、例えば、魚焼き調理の場合は、被加熱物である魚の焼きの進み具合に応じて加熱量を変化させる。庫内の温度変化が少なくなったのを検知したら制御部713にてシーズヒータ702への通電を停止する。使用者は調理が終了したら、他の調理が無い時には、電源切/入スイッチ7aを押して電源を切る。このように、グリル部5はその調理対象によって要求出力に幅がある。従って、設定最大出力を予め確保しておく必要がある。本実施例では、以下に述べるようにグリル部5の設定最大出力を1.5kW とした。
次に、誘導加熱コイル6による自動調理について説明する。例えば誘導加熱コイル6bで揚げ物調理する場合は、油を入れた天ぷら鍋が誘導加熱コイル6b上の鍋位置表示部
4bの中心に置かれ、使用者によりパネル操作部7の電源切/入スイッチ7aが電源入となると、誘導加熱コイル6bが加熱準備状態になる。
次に上面操作部8bのメニューキー404の入力により自動調理モードが設定され、続けて上面操作部8bの設定キー402の入力により、制御部713は自動調理メニューを表示部9bに順に表示する。
自動調理メニューの揚げ物表示状態が数秒間維持されていると、言い換えるならば、設定キー402の操作により揚げ物調理が選択されたまま所定時間維持されると、その自動調理メニューを制御部713は設定する。
次に上面操作部8bの切/スタートキー401が押されることにより、設定された揚げ物調理の開始要求が制御部713に対して入力されると、制御部713は別に設定された予熱温度と合わせて、誘導加熱コイル6bのインバータ回路704に予熱処理を要求して、インバータ回路704から電力が供給され誘導加熱コイル6bは予熱を開始する。
温度検出器711による温度情報により、油温が設定した温度に到達したと制御部713が判断したら、制御部713は報知部712に対して報知要求を行い、予熱が終了するとのブザーを鳴らし使用者に知らせる。
揚げ物調理中は、調理の進行に合わせて温度検出器711からの温度情報に基づき、所定の油温を維持するように制御部713からインバータ回路704に指令し、誘導加熱コイル6bへの電力を調節する。
揚げ物調理が終わったら、使用者の操作により上面操作部8bの切/スタートキー401が押され、この入力により制御部713は加熱を停止する。他に調理が行われていなければ、使用者はパネル操作部7の電源切/入スイッチ7aを押して電源を切る。
次に、誘導加熱調理器全体の消費電力を所定の定格電力を超えないようにする制御について図9により説明する。図9は各加熱部の出力設定の例を説明する図である。尚、図9中、シーズヒータとはグリル部5の加熱手段である電熱ヒータである。
図9の例1は、誘導加熱コイル6cを上面操作部8cの設定キー402により設定可能な最大出力の1.6kW に設定して調理を開始した場合である。
最初に、前面寄りに配置された2つの誘導加熱コイル6a,6bに対し、誘導加熱コイル6aを1番に、誘導加熱コイル6bを2番に優先順位を設定する。
誘導加熱コイル6cでの加熱開始後に、誘導加熱コイル6aが、上面操作部8aの設定キー402により設定可能な最大出力の3.0kW に設定された場合、誘導加熱コイル
6cの1.6kW と誘導加熱コイル6aの要求出力3.0kW との合計出力が4.6kW である。これは、本実施例における機器の定格電力の5.8kW 以内である。よって制御部713は、誘導加熱コイル6aの当該出力要求を受け入れる。そして、制御部713は上面表示部9aには3.0kW に相当する表示を行い、誘導加熱コイル6aへの電力供給をインバータ回路703に要求して、使用者は調理を開始する。
次に、誘導加熱コイル6bで調理しようとして出力設定を1.1kW を超える設定にしようとすると、機器全体の消費電力が定格電力の5.8kW を超えないように制御部713で制御するため、誘導加熱コイル6bの出力を設定する設定キー402の操作は1.1kWを超える出力要求は受け付けず、上面表示部9bには1.1kW より大きな出力を表示させない。各誘導加熱コイル6は設定可能な火力が離散的に設定されているため、この場合は、定格電力の5.8kW に対して1.2kW は設定されない。
したがって優先順位2位の誘導加熱コイル6bの出力は1.1kW までしか設定することが出来ない。ここで誘導加熱コイル6bが優先順位1位で誘導加熱コイル6aが優先順位2位に設定してあれば、誘導加熱コイル6bの出力設定を1.1kW を超える設定にしようとすると、機器全体の消費電力が定格電力の5.8kW を超えないようにするため誘導加熱コイル6aの火力を減少させるように制御部713で制御する。
このように、所定の定格電力5.8kW から現在調理中の合計の出力を引いた値より設定出力が大きくない場合は、その設定出力を受け付けるようにし、使用者には1.1kW を超えない設定となるように誘導する。
そして、トッププレート2上で3個の誘導加熱コイル6a,6b,6cにより同時に調理しようとする場合、誘導加熱コイル6aでは設定可能な最大出力で調理することが可能であり、残りの誘導加熱コイル6b,6cでは調節した出力で調理することができる。
従って、本実施例の場合、3つの誘導加熱コイル6a,6b,6cを同時に使用した場合1個の誘導加熱コイルが設定可能な最大出力で調理が可能となり、しかも残りの2個の誘導加熱コイルでも調節した出力で調理が可能であるため、調理時に出力の制限による使いにくさによる不便さを感じることなく、快適に調理することが出来、使い勝手が非常に良い。
図9の例2は、誘導加熱コイル6aと誘導加熱コイル6bの火力を3.0kWと2.5
kWに設定して調理を開始した後、グリル部5で調理を開始しようとすると、誘導加熱コイル6aの3kWと誘導加熱コイル6bの2.5kW とグリル部5の要求出力1.5kW の合計出力が7.0kW となり、これは本実施例における定格電力である5.8kW 以上となる。よって制御部713は、優先順位の低い誘導加熱コイル6bの出力を2.5kWから1.1kW に低下させるように制御することにより、合計出力が誘導加熱コイル6aの3kWと誘導加熱コイル6bの1.1kW とグリル部5の要求出力1.5kWの計5.6kWとなり、定格電力5.8kW以内とすることができる。
この場合、グリル部5は、被調理物がどのようなものであっても、設定最大出力が予め設定されているため、他の誘導加熱コイル6とは異なり、一定の出力を確保する必要がある。この例2では最大電力に対してグリル部5の加熱に必要な要求出力が満たされたためグリル部5の出力要求を制御部713が受け入れ許可できた。
このようにトッププレート2上の3個の誘導加熱コイル6と、グリル部5とで同時に調理を行うことができるため、使い勝手が非常に良い。
また、合計出力が定格出力を超える恐れが生じた場合、自動的に出力を減じる誘導加熱コイル6は、予め設定した優先順位の決められたトッププレート2の手前左右の誘導加熱コイル6a,6bのどちらかに特定しているため、使用者は出力が途中で変化しても調理の仕上がりに支障がない調理を予めこの優先順位の低い方の誘導加熱コイル6で行うことができるため、使い勝手が非常に良い。
また、火力指定と優先順位を指定することにより、使用者が最大火力の誘導加熱コイルを確実に指定できるので、火力調整による火力のバラツキが無くなるので安定した調理を行うことができる。このため、これより小さい火力に変更しても他と干渉すること無く独立して使用することが出来るので使い勝手がよい。また、利き腕に対する誘導加熱コイルの位置関係も明確にすることができるので使い勝手もよくなる。
図9の例3は、誘導加熱コイル6aの火力を3.0kW とし、誘導加熱コイル6cの火力を1.6kW として運転中に、グリル部5の要求出力1.5kW があると合計出力が
6.1kW となり、定格電力5.8kW 以上であるので、優先順位が2位の誘導加熱コイル6bが運転されていないので誘導加熱コイル6aの出力を3.0kW から2.5kW に低下させるように制御することにより、合計出力が定格電力5.8kW 以内とすることができる。
このように、グリル部5の使用が制限されることが無いので、快適に調理することが出来、使い勝手が非常に良い。
また、火力指定と優先順位を指定することにより、使用者が最大火力の誘導加熱コイルを確実に指定できるので、火力調整による火力のバラツキが無くなるので安定した調理を行うことができる。このため、これより小さい火力に変更しても他と干渉すること無く独立して使用することが出来るので使い勝手がよい。
また、優先順位を設定する2つの誘導加熱コイル6a,6bのうち、利き腕で調理し易い方に高い優先順位を付けることにより、さらに使いよくすることができる。
図9の例4は、誘導加熱コイル6aの火力を2.0kW 、誘導加熱コイル6bの火力を1.4kW 、誘導加熱コイル6cの火力を0.8kW 、グリル部5の出力が1.5kW で運転され、このときの合計出力が5.7kW となり、定格電力5.8kW以内である。
このように、使用者が調理に応じた加熱部を使用する際に、トッププレート2上の3個の誘導加熱コイル6と、日本人の多くが好む魚焼きやピザやグラタン等が調理できるグリル部5を同時に使用して調理することができるので、調理を数回に分ける必要がなくなる。
また、複数の加熱部を有していながら使用できない加熱部があると、使用者に対して調理時に著しい不便さを与え、苦痛を与えてしまうが、このようなことを無くすことができる。
図9の例5は、例4のようなトッププレート2上の3個の誘導加熱コイル6と、グリル部5とで同時に調理を行っている途中で、誘導加熱コイル6aの調理において高出力が必要となり、火力設定を誘導加熱コイル6aの最大出力の3.0kW に設定し直すと、誘導加熱コイル6bの設定火力が1.4kW から0.4kW に減ぜられ、このときの合計出力は5.7kW となり、定格電力5.8kW 以内となる。
このように、トッププレート2上の3個の誘導加熱コイル6と、グリル部5とで同時に調理を行っていても、高火力が必要となった場合には、最大火力で調理することができるので調理性能の低下を抑制することができ、使い勝手が非常に良い。
また、誘導加熱コイル6bの出力を自動的に0.4kW に減じることにより、トッププレート2上の3個の誘導加熱コイル6と、グリル部5とで同時に調理を行うことができるので、複数の加熱部を有していながら使用できない加熱部があると、使用者に対して調理時に著しい不便さを与え、苦痛を与えてしまうということを無くすことができる。
また、合計出力が定格出力を超える恐れが生じた場合、自動的に出力を減じる誘導加熱コイル6は、予め設定した優先順位の決められたトッププレート2の手前左右の誘導加熱コイル6a,6bのどちらかに特定しているため、使用者は出力が途中で変化しても調理の仕上がりに支障がない調理を予めこの優先順位の低い方の誘導加熱コイル6で行うことができるため、使い勝手が非常に良い。
また、火力の設定と優先順位を指定することにより、使用者が最大火力で使用できる誘導加熱コイルを確実に指定できるので、制御部713が行う自動的な火力調整による火力のバラツキが無い誘導加熱コイルで安定した調理を行うことができる。
また、優先順位を設定する2つの誘導加熱コイル6a,6bのうち、利き腕で調理し易い方に高い優先順位を付けることにより、さらに使いよくすることができる。