以下、第1の実施形態に係る高周波部品について説明する。ここでは、通過帯域の高周波側および低周波側に阻止帯域を有するバンドパスフィルタ特性を有する高周波フィルタとして使用される高周波部品を例に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る高周波部品11の等価回路図である。高周波部品11は、入出力端子P1,P2と、キャパシタC1,C2,C12と、インダクタL1,L2と、からなるバンドパスフィルタを構成している。
インダクタL1,L2は、入出力端子P1、P2に接続される第1端SAと、接地端子に接続される第2端SBとを有している。キャパシタC1は、インダクタL1と並列に接続され、インダクタL1とともに共振回路LC1を構成している。同様に、キャパシタC2は、インダクタL2と並列に接続され、インダクタL2とともに共振回路LC2を構成している。
共振回路LC1と共振回路LC2との間にはキャパシタC12が接続されている。このキャパシタC12は、共振回路LC1と共振回路LC2との間を容量結合させる結合用キャパシタである。また、共振回路LC1,LC2のインダクタL1,L2同士は誘導結合している。
また、共振回路LC1は、入力端子P1に対して直接接続されており、入力段の共振回路を構成している。共振回路LC2は、出力端子P2に対して直接接続されており、出力段の共振回路を構成している。以上の回路部分によって、入出力端子P1、P2間で2段の並列共振回路が結合するバンドパスフィルタが構成されている。
図2(A)は、第1の実施形態に係る高周波部品11の斜視図である。高周波部品11は、直方体状の積層体12を備えている。
以下の説明では、図2(A)中に示す積層体12の左手前側の面を正面と称し、積層体12の右手奥側の面を背面と称し、積層体12の右手前側の面を右側面と称し、積層体12の左手奥側の面を左側面と称する。
積層体12は、下面および上面に垂直な方向を積層方向として、複数の絶縁層を積層して構成されている。なお、積層体12の絶縁層は、例えば、熱可塑性樹脂などの樹脂材や、低温焼結セラミックスなどのセラミック材により構成される。
積層体12の外面には、入出力端子13A,13Bと接地端子13Cとが設けられている。入出力端子13Aは、図1における入力端子P1に相当し、積層体12の上面から左側面を経由して下面まで延びている。入出力端子13Bは、図1における出力端子P2に相当し、積層体12の上面から右側面を経由して下面まで延びている。接地端子13Cは、積層体12の下面に設けられている。
図2(B)は、第1の実施形態に係る高周波部品11の透過斜視図である。
積層体12の内部には、絶縁層の積層方向に直交する方向に延びる線状導体161A,162A,163A,164A,165A,161B,162B,163B,164B,165Bと、絶縁層の面方向に広がる平面導体18A,18B,19とが形成されている。線状導体161A〜165A,161B〜165Bおよび平面導体18A,18B,19は、例えば、印刷形成された導電ペーストの焼成体や、フォトリソグラフィプロセスによりパターニングされた銅箔などからなる。
また、積層体12を構成する絶縁層には、各絶縁層を積層方向に貫通する層間接続導体171A,172A,173A,174A,175A,176A,171B,172B,173B,174B,175B,176Bが形成されている。層間接続導体171A〜176A,171B〜176Bは、例えば、各絶縁層にビアホールを設け、ビアホール内に導電性ペーストを充填し、導電性ペーストを焼結して形成されている。
そして、積層体12の内部には、線状導体161A〜165Aおよび層間接続導体171A〜176Aからなる横巻インダクタ14Aと、線状導体161B〜165Bおよび層間接続導体171B〜176Bからなる横巻インダクタ14Bと、平面導体18A,19からなるキャパシタ15Aと、平面導体18B,19からなるキャパシタ15Bと、が構成されている。
横巻インダクタ14Aは、図1におけるインダクタL1に相当し、積層体12の内部で中心よりも左側面側に配されており、積層体12の左側面側に位置する第1端SAから、積層体12の中心側に位置する第2端SBに掛けて、層間接続導体171A、線状導体161A、層間接続導体172A、線状導体162A、層間接続導体173A、線状導体163A、層間接続導体174A、線状導体164A、層間接続導体175A、線状導体165A、および層間接続導体176Aを、この順に接続して構成されている。これにより、横巻インダクタ14Aは、積層体12の積層方向に対して直交する方向、ここでは、積層体12の左側面と右側面との間を結ぶ方向に延びる巻回軸CAを中心に、第1端SAから第2端SBにかけて巻回軸CAに沿って進む右ねじ状(右螺旋状)に設けられている。
また、横巻インダクタ14Bは、図1におけるインダクタL2に相当し、積層体12の内部の中心よりも右側面側に配されており、積層体12の右側面側に位置する第1端SAから、積層体12の中心側に位置する第2端SBに掛けて、層間接続導体176B、線状導体165B、層間接続導体175B、線状導体164B、層間接続導体174B、線状導体163B、層間接続導体173B、線状導体162B、層間接続導体172B、線状導体161B、および層間接続導体171Bを、この順に接続して構成されている。これにより、横巻インダクタ14Bは、巻回軸CAを中心に、第1端SAから第2端SBにかけて巻回軸CAに沿って進む左ねじ状(左螺旋状)に設けられている。
このように横巻インダクタ14A,14Bは、は約2+(3/4)ターン分の層間接続導体と線状導体とを接続して構成されている。横巻インダクタ14A,14Bの1ターンは、2つの層間接続導体と2つの線状導体とをループ状に接続して構成されるものである。このように、横巻インダクタ14A,14Bを、少なくとも1ターン分よりも多くの層間接続導体と線状導体とを接続して螺旋状に構成することにより、単一平面内のみで巻回するループ状に構成される場合に比べて、大きなインダクタンスを実現することができ、大きなインダクタンスを実現しても積層体12の積層方向での寸法が増大することを抑制できる。
図2(C)は、積層体12における横巻インダクタ14A,14Bとキャパシタ15A,15Bとの配置位置を示す断面図であり、積層体12の正面および背面と平行な面での積層体12の断面を示している。
キャパシタ15Aは、図1におけるキャパシタC1に相当し、第1の平面導体18Aと第2の平面導体19とが絶縁層を介在した状態で対向して形成されている。第1の平面導体18Aは、横巻インダクタ14Aの下面側の線状導体162A,164Aと同一の層に設けられており、このため、積層体12における絶縁層の積層数が低減されている。そして、第1の平面導体18Aは、横巻インダクタ14Aの左側面側に位置していて、横巻インダクタ14Aの左側面側の第1端SAが接続され、且つ、積層体12の左側面の入出力端子13Aに接続されている。
また、キャパシタ15Bは、図1におけるキャパシタC2に相当し、第1の平面導体18Bと第2の平面導体19とが絶縁層を介在した状態で対向して形成されている。第1の平面導体18Bは、横巻インダクタ14Bの下面側の線状導体162B,164Bと同一の層に設けられており、このため、積層体12における絶縁層の積層数が低減されている。そして、第1の平面導体18Bは、横巻インダクタ14Bの右側面側に位置していて、横巻インダクタ14Bの右側面側の第1端SAが接続され、且つ、積層体12の右側面の入出力端子13Bに接続されている。
第2の平面導体(接地導体)19は、図示していない層間接続導体を介して積層体12の下面の接地端子13Cに接続している。接地導体19は、積層体12の横巻インダクタ14A,14Bよりも下面側に設けられており、積層体12を上面側から視て横巻インダクタ14A,14Bおよびキャパシタ15A,15Bの平面導体18A,18Bに重なっている。このため、高周波部品11が実装される外部基板側の導体パターンなどが、高周波部品11の内部の導体パターンに結合して、高周波部品11のフィルタ特性に影響が及ぶことを防ぐことができる。また、接地導体19を、キャパシタ15A,15Bを構成する第2の平面導体としているため、積層体12における絶縁層の積層数が低減されている。この接地導体19には、積層体12における横巻インダクタ14Aと横巻インダクタ14Bとの間の中心付近で、横巻インダクタ14Aの右側面側(積層体中心側)の第2端SBと横巻インダクタ14Bの左側面側(積層体中心側)の第2端SBとがそれぞれ接続されている。
また、図1における容量結合用のキャパシタC12は、横巻インダクタ14Aの線状導体および層間接続導体と、横巻インダクタ14Bの線状導体および層間接続導体とが、巻回軸CAに沿って対向することで生じる容量により構成されている。
この積層体12を巻回軸CAに沿って透視した場合に、横巻インダクタ14Aの巻回範囲と、横巻インダクタ14Bの巻回範囲とは、互いに重なるように配置されている。なお、各巻回範囲は全面が重なっていても、一部が重なっていてもよい。
そして、横巻インダクタ14Aと横巻インダクタ14Bとにおいて、それぞれの線状導体や層間接続導体が巻回軸CAに沿って対向する組ごとに、入出力端子13A,13B側から接地導体19側に向かう方向(図2(B)中に矢印で示す信号の伝搬方向)が一致している。このように信号の伝搬方向が一致する2つの横巻インダクタが隣接配置されていると、それぞれの巻回範囲に発生する磁束の向きが一致し、互いの磁束が強めあう向きに誘導結合(正結合)することになる。
また、横巻インダクタ14Aと横巻インダクタ14Bとは、それぞれの接地導体19側に接続される第2端SB同士を積層体12の中心付近で近接させているので、横巻インダクタ14Aと横巻インダクタ14Bとで第1端SAと第2端SBとを近接させる場合よりも、横巻インダクタ14Aと横巻インダクタ14Bとの間の誘導結合は強くなる。
なお、横巻インダクタ14Aと横巻インダクタ14Bとの一方が、図2(B)中に矢印で示す信号の伝搬方向が逆向きになるように巻回されていてもよい。この場合には、横巻インダクタ14Aと横巻インダクタ14Bとのそれぞれで、巻回範囲に発生する磁束の向きが逆になるため、横巻インダクタ14Aと横巻インダクタ14Bとの間は、互いの磁束が弱めあう向きに誘導結合(負結合)することになる。この場合にも、横巻インダクタ14Aと横巻インダクタ14Bとで、接地導体19側の第2端SB同士を近接させることで、負結合の結合度を高めることができる。
以上の構成の高周波部品11においては、共振回路LC1と共振回路LC2との間での誘導結合の結合度が高いバンドパスフィルタを構成することができる。そして、層間接続導体を含む横巻インダクタ14A,14Bを用いて共振回路LC1,LC2を構成するために、バンドパスフィルタのフィルタ特性(通過帯域特性)をQ値の高いものにできる。そして螺旋状の横巻インダクタ14A,14Bを用いているために、横巻インダクタ14A,14Bで大きなインダクタンスを実現しても、積層体12の積層方向の寸法を抑制できる。
また、積層体12においては、キャパシタ15A,15Bの平面導体間に位置する絶縁層(図2(C)においてドット表示する絶縁層)は、他の絶縁層よりも比誘電率を高いものにしている。すなわち、キャパシタ15A,15Bにおいて、2つの平面導体の間の比誘電率を高くしている。このため、キャパシタ15A,15Bを構成する平面導体の対向面積を抑制しながらキャパシタンスを大きくすることができ、キャパシタ15A,15Bと横巻インダクタ14A,14Bとの間に発生する寄生容量を抑制できる。
次に、第2の実施形態に係る高周波部品21について説明する。第2の実施形態に係る高周波部品21は、先の第1の実施形態に係る高周波部品の変形例である。図3(A)は、第2の実施形態に係る高周波部品21の斜視図である。図3(B)は、第2の実施形態に係る高周波部品21の透過斜視図である。
高周波部品21は、直方体状の積層体22を備えている。積層体22の外面には、入出力端子23A,23Bと接地端子23Cとが設けられている。積層体22、入出力端子23A,23B、接地端子23Cは、それぞれ、第1の実施形態に係る積層体、入出力端子、接地端子と同様な構成である。積層体22の内部には、線状導体および層間接続導体からなる横巻インダクタ24A,24Bと、平面導体からなるキャパシタ25A,25Bと、が構成されている。
横巻インダクタ24Aは、積層体22の内部で中心よりも左側面側に配されており、積層体22の中心側に位置する第1端SAから、積層体22の左側面側に位置する第2端SBに掛けて、左ねじ状(左螺旋状)に設けられている。横巻インダクタ24Bは、積層体22の内部の中心よりも右側面側に配されており、積層体22の中心側に位置する第1端SAから、積層体22の右側面側に位置する第2端SBに掛けて右ねじ状(右螺旋状)に設けられている。横巻インダクタ24A,24Bそれぞれは、ここでは約2+(3/4)ターン分の層間接続導体と線状導体とを接続して構成されている。横巻インダクタ24A,24Bの1ターンは、2つの層間接続導体と2つの線状導体とをループ状に接続して構成されるものである。
図3(C)は、積層体22における横巻インダクタ24A,24Bとキャパシタ25A,25Bとの配置位置を示す断面図であり、積層体22の正面および背面と平行な面での積層体22の断面を示している。
キャパシタ25A,25Bそれぞれは、横巻インダクタ24Aと横巻インダクタ24Bとの間に設けられている。具体的には、キャパシタ25Aは、横巻インダクタ24Aの右側面側に配されている。キャパシタ25Bは、横巻インダクタ24Bの左側面側に配されている。そして、キャパシタ25Aを構成する第1の平面導体には、横巻インダクタ24Aの右側面側(積層体中心側)の第1端SAが接続されており、キャパシタ25Aの第1の平面導体と同じ絶縁層表面を引き回される引出配線25Cによって積層体22の左側面まで引き回されて入出力端子23Aに接続されている。また、キャパシタ25Bを構成する第1の平面導体は、横巻インダクタ24Bの左側面側(積層体中心側)の第1端SAが接続されており、キャパシタ25Bの第1の平面導体と同じ絶縁層表面を引き回される引出配線25Cによって積層体22の右側面まで引き回されて入出力端子23Bに接続されている。また、キャパシタ25A,25Bを構成する第2の平面導体は、接地導体29として構成されている。この接地導体29には、積層体22における左側面の近傍と右側面の近傍とのそれぞれで、横巻インダクタ24Aの左側面側の第2端SBと横巻インダクタ24Bの右側面側の第2端SBとがそれぞれ接続されている。
この構成でも、積層体22を左側面側や右側面側から巻回軸CAに沿って透視した場合に、横巻インダクタ24Aの巻回範囲と横巻インダクタ24Bの巻回範囲とは、互いに重なるように配置され、横巻インダクタ24Aと横巻インダクタ24Bとは、互いの磁束が強めあう向きに誘導結合(正結合)している。
また、横巻インダクタ24Aと横巻インダクタ24Bとは、それぞれの入出力端子23A,23B側に接続される第1端SA同士を積層体22の中心付近で近接させているので、横巻インダクタ24Aと横巻インダクタ24Bとで第1端SAと第2端SBとを近接させる場合よりも、横巻インダクタ14Aと横巻インダクタ14Bとの間の誘導結合は弱くなる。
なお、この構成でも、横巻インダクタ24Aと横巻インダクタ24Bとの一方を、図3(B)中に矢印で示す信号の伝搬方向が逆向きになるように巻回させて、横巻インダクタ24Aと横巻インダクタ24Bとの間を、互いの磁束が弱めあう向きに誘導結合(負結合)させてもよい。横巻インダクタ24Aと横巻インダクタ24Bとが負結合する場合にも、やはり、入出力端子23A,23B側の第1端SA同士を近接させることで、負結合の結合度を低減することができる。
以上のように、2段の共振回路LC1,LC2を入出力端子間で結合させたバンドパスフィルタを構成してもよい。このようなバンドパスフィルタにおいては、横巻インダクタL1,L2の両端SA,SBの向きを定めることによって、隣接する横巻インダクタL1,L2間の誘導結合の結合度を定めることができ、フィルタ回路における減衰極や帯域幅を容易に設定できる。
なお、以上の説明では、高周波部品に2段の共振回路LC1,LC2を構成する例を示したが、高周波部品に構成される共振回路は1段であってもよく、2段より多くてもよい。
次に、本発明の第3の実施形態に係る高周波部品31について説明する。図4は、第3の実施形態に係る高周波部品31の等価回路図である。高周波部品31は、入出力端子P1,P2と、キャパシタC1,C2,C3,C4,C12,C23,C34と、インダクタL1,L2,L3,L4と、からなるバンドパスフィルタを構成している。
インダクタL1〜L4は、入出力端子P1、P2側の第1端SAと、接地端子側の第2端SBとを有している。キャパシタC1は、インダクタL1と並列に接続され、インダクタL1とともに共振回路LC1を構成している。同様に、キャパシタC2は、インダクタL2と並列に接続され、インダクタL2とともに共振回路LC2を構成している。キャパシタC3は、インダクタL3と並列に接続され、インダクタL3とともに共振回路LC3を構成している。キャパシタC4は、インダクタL4と並列に接続され、インダクタL4とともに共振回路LC4を構成している。
共振回路LC1と共振回路LC2との間にはキャパシタC12が接続されている。同様に、共振回路LC2と共振回路LC3との間にはキャパシタC23が接続されている。共振回路LC3と共振回路LC4との間にはキャパシタC34が接続されている。これらのキャパシタC12,C23,C34は、共振回路LC1〜LC4との間を容量結合させる結合用キャパシタである。
また、共振回路LC1,LC2のインダクタL1,L2同士は誘導結合している。同様に、共振回路LC2,LC3のインダクタL2,L3同士も誘導結合している。共振回路LC3,LC4のインダクタL3,L4同士も誘導結合している。
また、共振回路LC1は、入力端子P1に対して直接接続されており、入力段の共振回路を構成している。共振回路LC4は、出力端子P2に対して直接接続されており、出力段の共振回路を構成している。共振回路LC2,LC3は、共振回路LC1と共振回路LC4との間に結合しており、それぞれ中間段の共振回路を構成している。
以上の回路部分によって、入出力端子P1、P2間に4段の並列共振回路が結合するバンドパスフィルタが構成されている。
図5は、第3の実施形態に係る高周波部品31の分解斜視図である。以下の説明では、図5中に示す絶縁層の左手前側の面を左側面と称し、絶縁層の右手奥側の面を右側面と称し、絶縁層の右手前側の面を正面と称し、絶縁層の左手奥側の面を背面と称しする。
高周波部品31は、互いに積層されることで直方体状の積層体を構成する絶縁層32A,32B,32C,32D,32E,32F,32G,32H,32Jを備えている。絶縁層32A,32B,32C,32D,32E,32F,32G,32H,32Jは、この順に、積層体32の下面側から上面側にかけて積層される。各絶縁層32A〜32Jの表面には、平面導体や線状導体が設けられ、異なる層に設けられる導体間の接続は、両導体の間に設けられる層間接続導体を介して実現される。絶縁層32A〜32Jそれぞれの左側面および右側面には、図4に示した入出力端子P1,P2を構成する電極(符号不図示)の一部が形成されている。
絶縁層32Aは、積層体32の下面に露出する絶縁層であり、下面側に平面導体33A,34A,35Aが左側面側から右側面側に掛けて順に形成されている。平面導体33Aは、図4に示した入出力端子P1を構成する電極の一部である。平面導体34Aは接地端子である。平面導体35Aは、図4に示した入出力端子P2を構成する電極の一部である。
絶縁層32Bは、上面側に平面導体(接地導体)33Bが形成されている。接地導体33Bは、1つ下層の接地端子34Aに接続される。
絶縁層32Cは、上面側に平面導体33C,34C,35C,36Cが左側面側から右側面側に掛けて順に形成されている。平面導体33Cは、1つ下層の接地導体33Bと対向してキャパシタC1を構成している。平面導体34Cは、1つ下層の接地導体33Bと対向してキャパシタC2を構成している。平面導体35Cは、1つ下層の接地導体33Bと対向してキャパシタC3を構成している。平面導体36Cは、1つ下層の接地導体33Bと対向してキャパシタC4を構成している。
絶縁層32Dは、上面側に平面導体33D,34Dが左側面側から右側面側に掛けて順に形成されている。平面導体33Dは、1つ下層の平面導体33Cに接続されており、また、1つ下層の平面導体34Cと対向して結合用キャパシタC12の一部を構成している。平面導体34Dは、1つ下層の平面導体36Cに接続されており、また、1つ下層の平面導体35Cと対向して結合用キャパシタC34の一部を構成している。
絶縁層32Eは、上面側に平面導体33E,34Eが左側面側から右側面側に掛けて順に形成されている。平面導体33Eは、2つ下層の平面導体34Cに接続されており、また、1つ下層の平面導体33Dと対向して結合用キャパシタC12の一部を構成している。平面導体34Eは、2つ下層の平面導体35Cに接続されており、また、1つ下層の平面導体34Dと対向して結合用キャパシタC34の一部を構成している。
第6層目の絶縁層32Fは、上面側に線状導体331F,332F,341F,342F,351F,352F,361F,362Fが左側面側から右側面側に掛けて順に形成されている。
第7層目の絶縁層32Gは、上面側に線状導体33G,34G,35G,36Gが左側面側から右側面側に掛けて順に形成されている。線状導体33Gは、正面側の端部が、4つ下層の平面導体33C、および、3つ下層の平面導体33Dに接続されている。線状導体34Gは、正面側の端部が、4つ下層の平面導体34C、および、2つ下層の平面導体33Eに接続されている。線状導体35Gは、正面側の端部が、4つ下層の平面導体35C、および、2つ下層の平面導体34Eに接続されている。線状導体36Gは、正面側の端部が、4つ下層の平面導体36C、および、3つ下層の平面導体34Dに接続されている。
第8層目の絶縁層32Hは、上面側に線状導体331H,332H,333H,341H,342H,343H,351H,352H,353H,361H,362H,363Hが左側面側から右側面側に掛けて順に形成されている。
線状導体331Hは、正面側の端部が6つ下層の接地導体33Bに接続されており、背面側の端部が2つ下層の線状導体331Fに接続されている。線状導体332Hは、正面側の端部が2つ下層の線状導体331Fに接続されており、背面側の端部が2つ下層の線状導体332Fに接続されている。線状導体333Hは、正面側の端部が2つ下層の線状導体332Fに接続されており、背面側の端部が1つ下層の線状導体33Gに接続されている。これにより、線状導体331H〜333Hと線状導体331F,332Fと線状導体33Gとが、層間接続導体とともに図4に示したインダクタ(横巻インダクタ)L1を構成している。
線状導体341Hは、正面側の端部が2つ下層の線状導体341Fに接続されており、背面側の端部が1つ下層の線状導体34Gに接続されている。線状導体342Hは、正面側の端部が2つ下層の線状導体342Fに接続されており、背面側の端部が2つ下層の線状導体341Fに接続されている。線状導体343Hは、正面側の端部が6つ下層の接地導体33Bに接続されており、背面側の端部が2つ下層の線状導体342Fに接続されている。これにより、線状導体341H〜343Hと線状導体341F,342Fと線状導体34Gとが、層間接続導体とともに図4に示したインダクタ(横巻インダクタ)L2を構成している。
線状導体351Hは、正面側の端部が6つ下層の接地導体33Bに接続されており、背面側の端部が2つ下層の線状導体351Fに接続されている。線状導体352Hは、正面側の端部が2つ下層の線状導体351Fに接続されており、背面側の端部が2つ下層の線状導体352Fに接続されている。線状導体353Hは、正面側の端部が2つ下層の線状導体352Fに接続されており、背面側の端部が1つ下層の線状導体35Gに接続されている。これにより、線状導体351H〜353Hと線状導体351F,352Fと線状導体35Gとが、層間接続導体とともに図4に示したインダクタ(横巻インダクタ)L3を構成している。
線状導体361Hは、正面側の端部が2つ下層の線状導体361Fに接続されており、背面側の端部が1つ下層の線状導体36Gに接続されている。線状導体362Hは、正面側の端部が2つ下層の線状導体362Fに接続されており、背面側の端部が2つ下層の線状導体361Fに接続されている。線状導体363Hは、正面側の端部が6つ下層の接地導体33Bに接続されており、背面側の端部が2つ下層の線状導体362Fに接続されている。これにより、線状導体361H〜363Hと線状導体361F,362Fと線状導体36Gとが、層間接続導体とともに図4に示したインダクタ(横巻インダクタ)L4を構成している。
第9層目の絶縁層32Jは、積層体32の上面に露出する絶縁層であり、上面側に平面導体33J,34Jが左側面側から右側面側に掛けて順に形成されている。平面導体33Jは、図4に示した入出力端子P1を構成する電極の一部である。平面導体34Jは、図4に示した入出力端子P2を構成する電極の一部である。
図6(A)は、高周波部品31において、横巻インダクタL1〜L4の第2端SBから第1端SAに掛けて、層間接続導体および線状導体が延びる方向を模式的に示す斜視図である。横巻インダクタL1は、積層体32の右側面側(積層体中心側)に位置する第1端SAから、積層体32の左側面側に位置する第2端SBに掛けて左ねじ状(左螺旋状)に構成されている。横巻インダクタL2は、積層体32の左側面側に位置する第1端SAから、積層体32の右側面側(積層体中心側)に位置する第2端SBに掛けて右ねじ状(右螺旋状)に構成されている。横巻インダクタL3は、積層体32の右側面側に位置する第1端SAから、積層体32の左側面側(積層体中心側)に位置する第2端SBに掛けて左ねじ状(左螺旋状)に構成されている。横巻インダクタL4は、積層体32の左側面側(積層体中心側)に位置する第1端SAから、積層体32の右側面側に位置する第2端SBに掛けて右ねじ状(右螺旋状)に構成されている。
図6(B)は、高周波部品31の断面図であり、積層体32の正面および背面と平行な面での積層体32の断面を示している。
キャパシタC1は、積層体32の内部で横巻インダクタL1の下面側に配置されており、第1の平面導体が積層体32の左側面の入出力端子P1に接続されている。横巻インダクタL1は、右側面側の第1端SAでキャパシタC1,C12および入出力端子P1に接続され、左側面側の第2端SBで接地導体33Bに直接接続されている。
キャパシタC2は、積層体32の内部で横巻インダクタL2の下面側に配置されている。横巻インダクタL2は、左側面側の第1端SAでキャパシタC2,C12に接続され、右側面側の第2端SBで接地導体33Bに直接接続されている。
キャパシタC3は、積層体32の内部で横巻インダクタL3の下面側に配置されている。横巻インダクタL3は、右側面側の第1端SAでキャパシタC3,C34に接続され、左側面側の第2端SBで接地導体33Bに直接接続されている。
キャパシタC4は、積層体32の内部で横巻インダクタL4の下面側に配置されており、第1の平面導体が積層体32の右側面の入出力端子P2に接続されている。横巻インダクタL4は、左側面側の第1端SAでキャパシタC4,C34および入出力端子P2に接続され、右側面側の第2端SBで接地導体33Bに直接接続されている。
また、結合用キャパシタC23は、横巻インダクタL2,L3が巻回軸CAに沿って近接し、横巻インダクタL2の線状導体および層間接続導体と、横巻インダクタL3の線状導体および層間接続導体とが対向することにより発生する容量によって構成されている。
この構成でも、積層体32を左側面側や右側面側から巻回軸CAに沿って透視した場合に、横巻インダクタL1〜L4の巻回範囲は互いに重なるように配置されている。そして、横巻インダクタL1〜L4は、入出力端子P1,P2側の第1端SAから、接地導体側の第2端SBに掛けて、線状導体および層間接続導体が延びる方向が同方向になるように巻回されて、互いの磁束が強めあう向きに誘導結合(正結合)している。
そして、横巻インダクタL1と横巻インダクタL2とは、それぞれの入出力端子P1,P2側の第1端SA同士を近接させている。また、横巻インダクタL3と横巻インダクタL4も、それぞれの入出力端子P1,P2側の第1端SA同士を近接させている。一方、横巻インダクタL2と横巻インダクタL3とは、それぞれの接地導体33B側の第2端SB同士を近接させている。このため、横巻インダクタL1と横巻インダクタL2と横巻インダクタL3と横巻インダクタL4とのうち、隣接する横巻インダクタの間の誘導結合は、横巻インダクタL1側から横巻インダクタL4側に掛けて、順に、結合度の低い粗結合、結合度の高い密結合、結合度の低い粗結合となる。
以上の構成の高周波部品31においても、共振回路LC1〜LC4のインダクタとして、層間接続導体を含む横巻インダクタL1〜L4を構成しているため、バンドパスフィルタのフィルタ特性(通過帯域特性)をQ値の高いものにできる。そして、螺旋状の横巻インダクタL1〜L4を用いているために、横巻インダクタL1〜L4で大きなインダクタンスを実現しても、積層体32の積層方向での寸法を抑制できる。
なお、上述の構成では、キャパシタC1〜C4を構成する第2の平面導体は、共通の接地導体33Bとして構成しているため、積層体32における絶縁層の積層数を低減できる。また、キャパシタC1〜C4を構成する第1の平面導体を、接地導体33Bと横巻インダクタL1〜L4との間に配置しているため、接地導体33Bと横巻インダクタL1〜L4との間の間隔を稼ぎ、横巻インダクタL1〜L4それぞれを含む共振回路LC1〜LC4におけるQ値をさらに向上させることができる。
次に、第4の実施形態に係る高周波部品41について説明する。第4の実施形態に係る高周波部品41は、先の第3の実施形態に係る高周波部品の変形例である。
図7は、第4の実施形態に係る高周波部品41の分解斜視図である。図8(A)は、高周波部品41において、横巻インダクタL1〜L4の第2端SBから第1端SAに掛けて、層間接続導体および線状導体が延びる方向を模式的に示す斜視図である。図8(B)は、高周波部品41の断面図であり、積層体42の正面および背面と平行な面での積層体42の断面を示している。
高周波部品41は、図7に示すように、平面導体44Cおよび平面導体43Eの形状と、平面導体45Cおよび平面導体44Eの形状が、先の第3の実施形態に係る形状と相違しており、それぞれの平面導体における層間接続導体との接続位置が、積層体42の中心側に変更されている。
また、横巻インダクタL2を構成する線状導体441F,442F,44G,441H,442H,443Hの形状と、横巻インダクタL3を構成する線状導体451F,452F,45G,451H,452H,453Hの形状が、先の第3の実施形態に係る形状と相違している。具体的には、横巻インダクタL2は、積層体42の右側面側に位置する第1端SAから、積層体42の左側面側に位置する第2端SBに掛けて左ねじ状(左螺旋状)に構成されている。また、横巻インダクタL3は、積層体42の左側面側に位置する第1端SAから、積層体42の右側面側に位置する第2端SBに掛けて右ねじ状(右螺旋状)に構成されている。そして、横巻インダクタL2,L3の入出力端子P1,P2側の第1端SAと、接地導体側の第2端SBとを構成する層間接続導体の位置が交代させられている。
したがって、この構成でも、横巻インダクタL1〜L4のうち隣接する各組の横巻インダクタ同士は、入出力端子P1,P2側の第1端SAから、接地導体43B側の第2端SBに掛けて、線状導体および層間接続導体が延びる方向が同方向になるように巻回されて、互いの磁束が強めあう向きに誘導結合(正結合)している。
しかしながら、この高周波部品41においては、横巻インダクタL1と横巻インダクタL2とは、横巻インダクタL1の第1端SAと、横巻インダクタL2の第2端SBとを近接させて配置されている。また、横巻インダクタL3と横巻インダクタL4も、横巻インダクタL4の第1端SAと、横巻インダクタL3の第2端SBとを近接させて配置されている。したがって、これらの横巻インダクタL1,L2間および横巻インダクタL3,L4間の誘導結合は、第2端SB同士を近接させた場合の密結合でも、第1端SA同士を近接させた場合の粗結合でもなく、密結合と粗結合との中間の強さの結合度(中間結合)となる。
一方、横巻インダクタL2と横巻インダクタL3とは、それぞれの入出力端子P1,P2側の第1端SA同士を近接させている。このため、横巻インダクタL2,L3間の誘導結合は粗結合となる。したがって、この高周波部品41においては、横巻インダクタL1と横巻インダクタL2と横巻インダクタL3と横巻インダクタL4とのうち、隣接する横巻インダクタの間の誘導結合が、横巻インダクタL1側から横巻インダクタL4側に掛けて、順に、中間結合、粗結合、中間結合となる。
以上のように、4段の共振回路LC1〜LC4を入出力端子P1、P2間で結合させたバンドパスフィルタを構成してもよい。このようなバンドパスフィルタにおいても、積層体の内部での横巻インダクタL1〜L4の両端SA,SBの向きを定めることによって、隣接する横巻インダクタL1〜L4間の誘導結合の結合度を定めることができ、フィルタ回路における減衰極や帯域幅を容易に調整できる。
次に、第3の実施形態に係る高周波部品31と、第4の実施形態に係る高周波部品41とのそれぞれのフィルタ特性(通過帯域特性)について説明する。
図9(A)は、高周波部品31におけるフィルタ特性を例示する図である。また、図9(B)は、高周波部品41におけるフィルタ特性を例示する図である。
高周波部品31は、前述のように、入出力段の共振回路LC1,LC4と、中間段の共振回路LC2,LC3との間での誘導結合を粗結合とし、中間段の共振回路LC2,LC3同士の誘導結合を密結合としたものである。この高周波部品31のように、入出力段の並列共振回路と2段以上の中間段の並列共振回路とを含む、4段以上の並列共振回路を備えるバンドパスフィルタにおいては、中間段の並列共振回路同士の誘導結合を、密結合とすることで、フィルタ特性(通過帯域特性)における帯域幅を広くすることができる。
また、高周波部品41は、入出力段の共振回路LC1,LC4と、中間段の共振回路LC2,LC3との間での誘導結合を密結合でも粗結合でもない中間結合とし、中間段の共振回路LC2,LC3同士の誘導結合を粗結合としたものである。この高周波部品41のように、入出力段の並列共振回路と2段以上の中間段の並列共振回路とを含む、4段以上の並列共振回路を備えるバンドパスフィルタにおいては、中間段の並列共振回路同士の誘導結合を、粗結合とすることで、フィルタ特性(通過帯域特性)における帯域幅を狭くすることができる。
次に、本発明の第5の実施形態に係る高周波部品51について説明する。第5の実施形態に係る高周波部品51は、先の第3の実施形態に係る高周波部品の変形例である。
図10(A)は、高周波部品51において、横巻インダクタL1〜L4の第2端SBから第1端SAに掛けて、層間接続導体および線状導体が延びる方向を模式的に示す斜視図である。
高周波部品51は、入出力段の並列共振回路を構成する横巻インダクタL1と横巻インダクタL4とにおいて、入出力端子P1、P2側の第1端SAの位置と、接地導体側の第2端SBの位置とを、先の第3の実施形態に係る高周波部品と逆に構成したものである。
この構成では、横巻インダクタL2と横巻インダクタL3とは、図10(A)中に矢印で示すように第1端SA側から第2端SB側に線状導体および層間接続導体が延びる方向が同方向になるように巻回されて、互いの磁束が強めあう向きに誘導結合(正結合)している。また、横巻インダクタL2と横巻インダクタL3とは、第2端SB同士を近接させているために、横巻インダクタL2と横巻インダクタL3との間の誘導結合は結合度が高くなる。
一方、横巻インダクタL1と横巻インダクタL2とは、第1端SA側から第2端SB側に線状導体および層間接続導体が延びる方向が逆方向になるように巻回されて、互いの磁束が弱めあう向きに誘導結合(負結合)する。そして、横巻インダクタL1と横巻インダクタL2とは、横巻インダクタL1の第1端SAと、横巻インダクタL2の第2端SBとを近接させて配置されているため、密結合と粗結合との中間の強さの結合度で誘導結合(中間結合)する。同様に、横巻インダクタL4と横巻インダクタL3とは、第1端SA側から第2端SB側に線状導体および層間接続導体が延びる方向が逆方向になるように巻回されて、互いの磁束が弱めあう向きに誘導結合(負結合)する。そして、横巻インダクタL4と横巻インダクタL3とは、横巻インダクタL4の第1端SAと、横巻インダクタL3の第2端SBとを近接させて配置されているため、密結合と粗結合との中間の強さの結合度で誘導結合(中間結合)する。
図10(B)は、高周波部品51におけるフィルタ特性を例示する図である。
高周波部品51は、前述のように、中間段の共振回路LC2,LC3同士の結合は変えずに、入出力段の共振回路LC1、LC4と中間段の共振回路LC2,LC3との間の誘導結合を負結合、且つ、中間結合としたものである。通常、4段以上の並列共振回路を備えるバンドパスフィルタにおいて通過帯域幅は、中間段の並列共振回路同士での誘導結合の結合度に大きな影響を受け、入出力段の並列共振回路と中間段の並列共振回路との間での誘導結合の結合度による影響は軽微である。したがって、高周波部品51のフィルタ特性(通過帯域特性)における帯域幅は、先の第3の実施形態に係る高周波部品と大きく変わることが無い。
ただし、入出力段の並列共振回路と中間段の並列共振回路との間での誘導結合が正結合から負結合に変更されることで、入出力段の並列共振回路と中間段の並列共振回路との間での結合は、容量性のバイアスが強まる。このため、入出力段の並列共振回路と中間段の並列共振回路との間に設ける結合用キャパシタは、より小さなキャパシタンスでよい。このため、結合用キャパシタの電極面積を低減したり、入出力段の並列共振回路と中間段の並列共振回路との間に生じる容量だけで結合用キャパシタを実現したりすることができる。これにより、結合用キャパシタを設けるための製造工程や、積層体内部への設置スペースを削減して、高周波部品51を小型で低廉なものにすることが可能になる。
なお、先の第4の実施形態に係る構成においても、同様に入出力段の並列共振回路を構成する共振インダクタの第1端SAと第2端SBとを入れ替えてもよい。この場合にも、同様に、フィルタ特性(通過帯域特性)における帯域幅を大きく変えること無く、入出力段の並列共振回路と中間段の並列共振回路との間の結合用キャパシタを、より小さなキャパシタンスにすることができる。
次に、本発明の第6の実施形態に係る高周波部品61について説明する。第6の実施形態に係る高周波部品61は、先の第3の実施形態に係る高周波部品の変形例である。
図11(A)は、高周波部品61の側面断面図であり、積層体の正面および背面と平行な面での積層体の断面を示している。
高周波部品61は、中間段の並列共振回路を構成する横巻インダクタL2と横巻インダクタL3との間に、両者の誘導結合を増強するための短絡用導体63を設けた点で、先の第3の実施形態に係る高周波部品と相違している。短絡用導体63は、横巻インダクタL2の接地導体側の第2端SBと、横巻インダクタL3の接地導体側の第2端SBとの間を接続する線状導体として形成されている。このような短絡用導体63を設けることで、横巻インダクタL2と横巻インダクタL3との間の誘導結合を強めることができる。この構成は、本実施形態に限ること無く、他の実施形態においても採用することができる。
図11(B)は、高周波部品61におけるフィルタ特性を例示する図である。
高周波部品61は、前述のように、短絡用導体63を設けることで、横巻インダクタL2と横巻インダクタL3との間の誘導結合を強めたものである。したがって、この高周波部品61では、フィルタ特性(通過帯域特性)における帯域幅を、先の第3の実施形態に係る高周波部品よりも広くすることができる。
なお、先の第4の実施形態に係る構成においても、短絡用導体を設けて中間段の並列共振回路間の誘導結合を強めれば、同様に、フィルタ特性(通過帯域特性)における帯域幅を広くすることができる。
次に、本発明の第7の実施形態に係る高周波部品71について説明する。第7の実施形態に係る高周波部品71は、先の第3の実施形態に係る高周波部品の変形例である。
図12(A)は、高周波部品71の側面断面図であり、積層体の正面および背面と平行な面での積層体の断面を示している。
高周波部品71は、中間段の並列共振回路を構成する横巻インダクタL2と横巻インダクタL3との間に、両者の誘導結合を抑制するために、平面導体による結合用キャパシタC23を設けた点で、先の第3の実施形態に係る高周波部品と相違している。結合用キャパシタC23は、横巻インダクタL2の接地導体側の第2端SBと、横巻インダクタL3の接地導体側の第2端SBとのそれぞれに接続された平面導体の間に絶縁層を介在させて構成している。このような平面導体による結合用キャパシタC23を設けることで、結合用キャパシタC23のキャパシタンスを大きくし、中間段の並列共振回路同士の結合に対して、容量性のバイアスを強めることができる。この構成は、本実施形態に限ること無く、他の実施形態においても採用することができる。
図12(B)は、高周波部品71におけるフィルタ特性を例示する図である。
高周波部品71は、前述のように、平面導体による結合用キャパシタC23を設けることで、結合用キャパシタC23のキャパシタンスを大きくし、中間段の並列共振回路同士の結合に対して、容量性のバイアスを強めたものである。したがって、この高周波部品71では、フィルタ特性(通過帯域特性)における帯域幅を、先の第3の実施形態に係る高周波部品よりも狭くすることができる。
なお、先の第4の実施形態に係る構成においても、平面導体による結合用キャパシタを設けて中間段の並列共振回路間の容量結合を強めれば、同様に、フィルタ特性(通過帯域特性)における帯域幅を狭くすることができる。
次に、本発明の第8の実施形態に係る高周波部品81について説明する。第8の実施形態に係る高周波部品81は、先の第3の実施形態に係る高周波部品の変形例である。
図13(A)は、高周波部品81の等価回路図である。
高周波部品81は、入力段の共振回路LC1と、出力段の共振回路LC4との間に、飛び結合用のキャパシタC14を設けた点で、先の第3の実施形態に係る高周波部品と相違している。このような飛び結合用のキャパシタC14を設けることで、減衰極を増やしてフィルタ特性を設定することが可能になる。この構成は、本実施形態に限ること無く、他の実施形態においても採用することができる。
図13(B)は、高周波部品81におけるフィルタ特性を例示する図である。
高周波部品81は、前述のように、飛び結合用のキャパシタC14を設けることで、フィルタ特性において、通過帯域の低周波数側に減衰極を増やし、これにより所望の通過特性を実現することを容易にしたものである。
なお、先の第4の実施形態に係る構成においても、飛び結合用のキャパシタを設ければ、同様に、減衰極を増やして、所望の通過特性を実現することが容易になる。
次に、本発明の第9の実施形態に係る高周波部品91について説明する。第9の実施形態に係る高周波部品91は、先の第3の実施形態に係る高周波部品の変形例である。
図14は、第9の実施形態に係る高周波部品91の分解平面図である。図5と比較すれば明らかなように、図5の絶縁層32Fに形成された導体パターンは、図13では絶縁層32F1および絶縁層32F2の2層に形成された導体パターンで構成されており、これら2層の導体パターンにおいて対向する個々の線状導体同士が並列接続されている。同様に、図5の絶縁層32Gに形成された導体パターンは、図13では絶縁層32G1および絶縁層32G2の2層に形成された導体パターンで構成されており、これら2層の導体パターンにおいて対向する個々の線状導体同士が並列接続されている。また、図5の絶縁層32Hに形成された導体パターンは、図13では絶縁層32H1および絶縁層32H2の2層に形成された導体パターンで構成されており、これら2層の導体パターンにおいて対向する個々の線状導体同士が並列接続されている。
このようにして、横巻インダクタL1〜L4のそれぞれにおいて、同じターンを構成しつつ積層方向に近接する2つの線状導体が、層間接続導体により並列接続されているので、横巻インダクタを構成する線状導体が複層化されており、これによって、線状導体の実効断面積が増加し、配線抵抗が低下する。これにより、横巻インダクタL1〜L4それぞれが構成する共振回路LC1〜LC4のQ値を高めることができる。
なお、すべての線状導体を複層化せずに、いずれかの線状導体のみを複層化するようにしてもよい。また、線状導体を複層化する構成は、本実施形態に限ること無く、他の実施形態においても採用することができる。いずれにしても、線状導体の実効断面積を増加させて配線抵抗を低下させることができるので、横巻インダクタが構成する並列共振回路のQ値を高めることができる。
次に、本発明の第10の実施形態に係る高周波部品101について説明する。第10の実施形態に係る高周波部品101は、先の第3の実施形態に係る高周波部品の変形例である。
図15は、第10の実施形態に係る高周波部品101の分解平面図である。
高周波部品101は、インダクタL0,L5を備えている。インダクタL0,L5は、絶縁体層102Gの表面で複数回ループするヘリカル状に設けられた線状導体からなる。インダクタL0は、図4に示した等価回路において、入力端子P1と共振回路LC1との間に直列に接続されるものである。インダクタL5は、図4に示した等価回路において、出力端子P2と共振回路LC4との間に直列に接続されるものである。図15においては、インダクタL0,L5に接続されるビア導体のみを表示しており、その他のビア導体については表示を省いている。その他のビア導体による配線構造については、先の第3の実施形態にかかる高周波部品(図5)と同様である。これらのインダクタL0,L5は、入出力端子P1、P2を介した誘導性の外部結合を実現するものである。
インダクタL0,L5は、横巻インダクタL1〜L4の巻回範囲の外側に配置することもできるが、ここでは、横巻インダクタL1〜L4の巻回範囲の内側に配置している。これにより、インダクタL0,L5を設けるための設置スペースが、横巻インダクタL1〜L4の巻回範囲の外側に不要になり、積層体を小型に構成することができる。
なお、インダクタL0,L5のような、入出力端子P1、P2を介した誘導性の外部結合を実現するものだけではなく、容量性の外部結合を実現するためのキャパシタや、並列共振回路間を容量結合させる結合用キャパシタ、並列共振回路間の誘導結合を強化する結合用インダクタなどを、横巻インダクタL1〜L4の巻回範囲の内側に配置してもよい。
また、横巻インダクタの巻回範囲の内側に他のインダクタやキャパシタを配置する構成は、本実施形態に限ること無く、他の実施形態においても採用することができる。いずれにしても、それらのインダクタやキャパシタを設けるための設置スペースが、横巻インダクタL1〜L4の巻回範囲の外側に不要になり、積層体を小型に構成することができる。
なお、本発明の高周波部品は、上述の各実施形態において示した共振回路の段数に限られるものでは無く、より多くの共振回路や、より少ない共振回路により構成されていてもよい。また、高周波部品としては、バンドパスフィルタを構成するものの他、ハイパスフィルタや、ローパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタなどを構成するものであってもよく、少なくとも1つのLC共振回路を備えるならば、どのような回路構成を設けてもよい。また、上述のいずれの実施形態においても、共振回路と入出力端子との外部結合は、インダクタを介した誘導結合により実現してもよく、また、キャパシタを介した容量結合により実現してもよく、また、直接配線によるタップ結合により実現してもよい。さらには、少なくとも1つ、密結合または粗結合を実現するような配置を採用すれば好適であり、複数段のLC共振回路の誘導結合における結合度の組み合わせは、上述したものに限られない。また、誘導結合が正結合であっても負結合であってもよく、複数段のLC共振回路の誘導結合における正結合と負結合との組み合わせも、上述したものに限られない。
なお、少なくとも入出力段と中間段とを含む複数段のLC共振回路を構成する場合には、中間段のLC共振回路を構成する横巻インダクタは、入出力段のLC共振回路を構成する横巻インダクタよりも線状導体の幅を広くして、低抵抗にすると好適である。このようにすれば、特に中間段に形成される横巻インダクタのQ値を高めて、挿入損失を大きく改善することができる。