以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、画像形成装置としての複合機(MFP:Multi Function Peripheral)を例として説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真方式による複合機であり、感光体に静電潜像を形成するための光書き込み装置におけるスキュー補正の態様がその要旨である。尚、画像形成装置は複合機でなくとも良く、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等であっても良い。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理端末と同様の構成に加えて、画像形成を実行するエンジンを有する。即ち、本実施形態に係る画像形成装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)11、ROM(Read Only Memory)12、エンジン13、HDD(Hard Disk Drive)14及びI/F15がバス18を介して接続されている。また、I/F15にはLCD(Liquid Crystal Display)16及び操作部17が接続されている。
CPU10は演算手段であり、画像形成装置1全体の動作を制御する。RAM11は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM12は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。エンジン13は、画像形成装置1において実際に画像形成を実行する機構である。
HDD14は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。I/F15は、バス18と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD16は、ユーザが画像形成装置1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部17は、キーボードやマウス等、ユーザが画像形成装置1に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
このようなハードウェア構成において、ROM12やHDD14若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM11に読み出され、CPU10の制御に従って動作することにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る画像形成装置1の機能を実現する機能ブロックが構成される。
次に、図2を参照して、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成について説明する。図2は、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、コントローラ20、ADF(Auto Documennt Feeder:原稿自動搬送装置)21、スキャナユニット22、排紙トレイ23、ディスプレイパネル24、給紙テーブル25、プリントエンジン26、排紙トレイ27及びネットワークI/F28を有する。
また、コントローラ20は、主制御部30、エンジン制御部31、入出力制御部32、画像処理部33及び操作表示制御部34を有する。図2に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、スキャナユニット22、プリントエンジン26を有する複合機として構成されている。尚、図2においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、用紙の流れを破線の矢印で示している。
ディスプレイパネル24は、画像形成装置1の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザが画像形成装置1を直接操作し若しくは画像形成装置1に対して情報を入力する際の入力インタフェース(操作部)でもある。ネットワークI/F28は、画像形成装置1がネットワークを介して他の機器と通信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェースが用いられる。
コントローラ20は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM12や不揮発性メモリ並びにHDD14や光学ディスク等の不揮発性記録媒体に格納されたファームウェア等の制御プログラムが、RAM11等の揮発性メモリ(以下、メモリ)にロードされ、CPU10の制御に従って構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ20が構成される。コントローラ20は、画像形成装置1全体を制御する制御部として機能する。
主制御部30は、コントローラ20に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ20の各部に命令を与える。エンジン制御部31は、プリントエンジン26やスキャナユニット22等を制御若しくは駆動する駆動手段としての役割を担う。入出力制御部32は、ネットワークI/F28を介して入力される信号や命令を主制御部30に入力する。また、主制御部30は、入出力制御部32を制御し、ネットワークI/F28を介して他の機器にアクセスする。
画像処理部33は、主制御部30の制御に従い、入力された印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成する。この描画情報とは、画像形成部であるプリントエンジン26が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。また、印刷ジョブに含まれる印刷情報とは、PC等の情報処理装置にインストールされたプリンタドライバによって画像形成装置1が認識可能な形式に変換された画像情報である。操作表示制御部34は、ディスプレイパネル24に情報表示を行い若しくはディスプレイパネル24を介して入力された情報を主制御部30に通知する。
画像形成装置1がプリンタとして動作する場合は、まず、入出力制御部32がネットワークI/F28を介して印刷ジョブを受信する。入出力制御部32は、受信した印刷ジョブを主制御部30に転送する。主制御部30は、印刷ジョブを受信すると、画像処理部33を制御して、印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成させる。
画像処理部33によって描画情報が生成されると、エンジン制御部31は、生成された描画情報に基づき、給紙テーブル25から搬送される用紙に対して画像形成を実行する。即ち、プリントエンジン26が画像形成部として機能する。プリントエンジン26によって画像形成が施された用紙は排紙トレイ27に排紙される。
画像形成装置1がスキャナとして動作する場合は、ユーザによるディスプレイパネル24の操作若しくはネットワークI/F28を介して外部のPC等から入力されるスキャン実行指示に応じて、操作表示制御部34若しくは入出力制御部32が主制御部30にスキャン実行信号を転送する。主制御部30は、受信したスキャン実行信号に基づき、エンジン制御部31を制御する。
エンジン制御部31は、ADF21を駆動し、ADF21にセットされた撮像対象原稿をスキャナユニット22に搬送する。また、エンジン制御部31は、スキャナユニット22を駆動し、ADF21から搬送される原稿を撮像する。また、ADF21に原稿がセットされておらず、スキャナユニット22に直接原稿がセットされた場合、スキャナユニット22は、エンジン制御部31の制御に従い、セットされた原稿を撮像する。即ち、スキャナユニット22が撮像部として動作する。
撮像動作においては、スキャナユニット22に含まれるCCD等の撮像素子が原稿を光学的に走査し、光学情報に基づいて生成された撮像情報が生成される。エンジン制御部31は、スキャナユニット22が生成した撮像情報を画像処理部33に転送する。画像処理部33は、主制御部30の制御に従い、エンジン制御部31から受信した撮像情報に基づき画像情報を生成する。画像処理部33が生成した画像情報はHDD40等の画像形成装置1に装着された記憶媒体に保存される。即ち、スキャナユニット22、エンジン制御部31及び画像処理部33が連動して、原稿読み取り部として機能する。
画像処理部33によって生成された画像情報は、ユーザの指示に応じてそのままHDD40等に格納され若しくは入出力制御部32及びネットワークI/F28を介して外部の装置に送信される。即ち、ADF21及びエンジン制御部31が画像入力部として機能する。
また、画像形成装置1が複写機として動作する場合は、エンジン制御部31がスキャナユニット22から受信した撮像情報若しくは画像処理部33が生成した画像情報に基づき、画像処理部33が描画情報を生成する。その描画情報に基づいてプリンタ動作の場合と同様に、エンジン制御部31がプリントエンジン26を駆動する。
次に、本実施形態に係るプリントエンジン26の構成について、図3を参照して説明する。図3に示すように、本実施形態に係るプリントエンジン26は、無端状移動手段である搬送ベルト105に沿って各色の画像形成部106が並べられた構成を備えるものであり、所謂タンデムタイプといわれるものである。すなわち、給紙トレイ101から給紙ローラ102と分離ローラ103とにより分離給紙される用紙(記録媒体の一例)104を搬送する搬送ベルト105に沿って、この搬送ベルト105の搬送方向の上流側から順に、複数の画像形成部(電子写真プロセス部)106BK、106M、106C、106Yが配列されている。
これら複数の画像形成部106BK、106M、106C、106Yは、形成するトナー画像の色が異なるだけで内部構成は共通である。画像形成部106BKはブラックの画像を、画像形成部106Mはマゼンタの画像を、画像形成部106Cはシアンの画像を、画像形成部106Yはイエローの画像をそれぞれ形成する。尚、以下の説明においては、画像形成部106BKについて具体的に説明するが、他の画像形成部106M、106C、106Yは画像形成部106BKと同様であるので、その画像形成部106M、106C、106Yの各構成要素については、画像形成部106BKの各構成要素に付したBKに替えて、M、C、Yによって区別した符号を図に表示するにとどめ、説明を省略する。
搬送ベルト105は、回転駆動される駆動ローラ107と従動ローラ108とに架け渡されたエンドレスのベルト、即ち無端状ベルトである。この駆動ローラ107は、不図示の駆動モータにより回転駆動させられ、この駆動モータと、駆動ローラ107と、従動ローラ108とが、無端状移動手段である搬送ベルト105を移動させる駆動手段として機能する。
画像形成に際して、給紙トレイ101に収納された用紙104は最も上のものから順に送り出され、静電吸着作用により搬送ベルト105に吸着されて回転駆動される搬送ベルト105により最初の画像形成部106BKに搬送され、ここで、ブラックのトナー画像を転写される。即ち、搬送ベルト105が、画像の転写対象である用紙を搬送する搬送体として機能する。
画像形成部106BKは、感光体としての感光体ドラム109BK、この感光体ドラム109BKの周囲に配置された帯電器110BK、光書き込み装置111、現像器112BK、感光体クリーナ(図示せず)、除電器113BK等から構成されている。光書き込み装置111は、夫々の感光体ドラム109BK、109M、109C、109Y(以降、総じて感光体ドラム109とする)を露光することにより静電潜像を形成するように構成されている。
画像形成に際し、感光体ドラム109BKの外周面は、暗中にて帯電器110BKにより一様に帯電された後、光書き込み装置111からのブラック画像に対応した照射光により書き込みが行われ、静電潜像が形成される。現像器112BKは、この静電潜像をブラックトナーにより可視像化し、このことにより感光体ドラム109BK上にブラックのトナー画像が形成される。
このトナー画像は、感光体ドラム109BKと搬送ベルト105上の用紙104とが当接する位置(転写位置)で、転写器115BKの働きにより用紙104上に転写される。この転写により、用紙104上にブラックのトナーによる画像が形成される。トナー画像の転写が終了した感光体ドラム109BKは、外周面に残留した不要なトナーを感光体クリーナにより払拭された後、除電器113BKにより除電され、次の画像形成のために待機する。
以上のようにして、画像形成部106BKでブラックのトナー画像を転写された用紙104は、搬送ベルト105によって次の画像形成部106Mに搬送される。画像形成部106Mでは、画像形成部106BKでの画像形成プロセスと同様のプロセスにより感光体ドラム109M上にマゼンタのトナー画像が形成され、そのトナー画像が用紙104上に形成されたブラックの画像に重畳されて転写される。
用紙104は、さらに次の画像形成部106C、106Yに搬送され、同様の動作により、感光体ドラム109C上に形成されたシアンのトナー画像と、感光体ドラム109Y上に形成されたイエローのトナー画像とが、用紙104上に重畳されて転写される。こうして、用紙104上にフルカラーの画像が形成される。このフルカラーの重ね画像が形成された用紙104は、搬送ベルト105から剥離されて定着器116にて画像を定着された後、画像形成装置の外部に排紙される。
次に、本実施形態に係る光書き込み装置111について説明する。図4は、本実施形態に係る光書き込み装置111と感光体ドラム109との配置関係を示す図である。図4に示すように、各色の感光体ドラム109BK、109M、109C、109Y夫々に照射される照射光は、光源であるLEDA(LED Array)281BK、281M、281C、281Y(以降、総じてLEDA281とする)から照射される。
LEDA281は、発光素子であるLEDが、感光体ドラム109の主走査方向に並べられて構成されている。光書き込み装置111に含まれる制御部は、主走査方向に並べられている夫々のLEDの点灯/消灯状態を、出力すべき画像のデータに基づいて主走ライン毎に制御することにより、感光体ドラム109の表面を選択的に露光し、静電潜像を形成する。
即ち、LEDA281は、1回の点灯/消灯の制御により、出力すべき画像の主走査方向1ライン分の静電潜像を形成する。このような光書き込み装置においては、LEDA281の取り付け誤差により、傾いた画像が形成される、いわゆるスキューが発生する。具体的には、静電潜像は、感光体ドラム109においてLEDA281からの露光を受けて形成されるため、感光体ドラム109の主走査方向に対して、LEDA281において各LEDが並べられた方向が傾いている場合、その傾きに対応して静電潜像も傾いてしまう。そして、この静電潜像が現像されることにより、傾いた画像が形成される。このスキューが発生しないように補正を行うことが本実施形態に係る要旨である。
次に、本実施形態に係る光書き込み装置111の制御ブロックについて、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る光書き込み装置111を制御する光書き込み装置制御部120の機能構成及びLEDA281との接続関係を示す図である。図5に示すように、本実施形態に係る光書き込み装置制御部120は、発光制御部121、ラインメモリ122、画像情報取得部123及びスキュー情報取得部124を含む。
尚、本実施形態に係る光書き込み装置111は、図1において説明したようなCPU10、RAM11並びにROM12等の記憶媒体といった情報処理機構を含み、図5に示すような光書込み装置制御部120は、画像形成装置1のコントローラ20と同様に、ROM12等の記憶媒体に記憶されている制御プログラムがRAM11にロードされ、CPU10の制御に従って動作することにより構成されるソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって構成される。
発光制御部121は、コントローラ20のエンジン制御部31から入力された画像情報に基づいてラインメモリ122に格納された画素情報に基づき、LEDA281の発光を制御する光源制御部である。発光制御部121は、副走査方向の1画素分を示すクロック、即ち、主走査ライン毎のクロックに従い、1走査ライン毎に発光制御部121の点灯/消灯を制御する。
ラインメモリ122は、エンジン制御部31から入力された画像情報に応じて、画像の主走査ライン毎に画素情報が格納される記憶媒体である。発光制御部121は、ラインメモリ122に格納された画素情報を各ライン毎に読み出して、LEDA281の点灯/消灯を制御する。
図6は、ラインメモリ122に格納された画素データの読み出し順と実際に描画される画像との関係を示す図である。図6上段は、ラインメモリ122に格納された画素データの読み出し順を示す図であり、1ライン目は1a、1b、1c・・・、2ライン目は2a、2b、2c・・・、3ライン目は3a、3b、3c・・・というように、ラインメモリ122に格納されている画素データが読み出される。図6下段は、ラインメモリ122から読み出された画素データに基づいて描画される画像の例を示す図であり、夫々の画素データに対応して描画される画素が丸印で示されている。
画像情報取得部123は、コントローラ20から入力される画像情報を取得し、画像を構成する画素の情報を主走査ライン毎にラインメモリ122に格納する。スキュー情報取得部124は、画像形成部106BK、106M、106C、106Y夫々におけるスキューの情報、即ち、LEDA281BK、281M、281C、281Yが、夫々感光体ドラム109BK、109M、109C、109Yに対してどの程度傾いているかを示す情報を取得する。尚、このスキューの情報は、例えば、コントローラ20に格納されており、スキュー情報取得部124は、コントローラ20からスキューの情報を取得する。この他、スキュー情報取得部124にスキューの情報が予め格納されていても良い。
本実施形態においては、発光制御部121がラインメモリ122から画素情報を読み出す際、スキュー情報取得部124が取得したスキュー情報に基づき、画素を副走査方向にシフトさせて読み出すことにより、スキュー補正が行われる。図7及び図8を参照して、スキュー補正の基本的な概念について説明する。
図7は、図6と同様に、ラインメモリ122から読み出された画素データと実際に描画される画像との関係を示す図であり、スキューが発生した状態を示す図である。図7の例においては、光ビームのスキューにより画像が図中左上がりになっている。図8は、図7のように発生したスキューを補正した状態を示す図である。図8の例においては、上段に示すようにラインメモリ122から読み出す画素データを、6画素毎に副走査方向にシフトしている。これにより、図8下段に示すように、スキューによる全体のずれ量が低減される。
次に、図8に示すようなスキュー補正を行った場合の弊害について、図9(a)、(b)を参照して説明する。図9(a)、(b)は、主走査方向及び副走査方向に1画素間隔のディザリングが施された画像について、シフト補正を行う場合の例を示す図であり、図9(a)が補正前、図9(b)が補正後を示す。図9(b)においては、太字点線で示す位置において画像をシフトさせている。
図9(b)に示すように、図8と同様の補正を行った場合、ディザパターンが1画素間隔であるため、図中点線の丸で示すように、画像をシフトした位置において点灯画素(有色画素)及び消灯画素(無地画素)が連結され、その位置において画像の濃度が変化してしまう。その結果、画像をシフトした位置における副走査方向のすじ状のノイズとして現れる。
図10(a)、(b)は、図9(b)において説明したノイズを低減するために、副走査方向の解像度を2倍とし、画像をシフトさせる際のシフト量を元の画素の半画素分とした場合の例を示す図である。この場合、図10(a)に示すように、画像の副走査方向の解像度を2倍にする為には、LEDA281の点灯/消灯を制御するクロック周波数を2倍にすると共に、発光制御部121が、ラインメモリ122から画素データを読み出す際に1つの主走査ラインの画素データを2回連続で読み出す。即ち、元の解像度における1つの主走査ラインが、2回に分けて描画される。
そして、図10(b)に示すように、画像を副走査方向にシフトさせる際の1回のシフト量を半画素分とし、合計で1画素分のシフト量を得るため、図中点線で示すようにシフト回数を2回にする。これにより、図中点線の丸で示すように、画像をシフトさせた位置において連結される点灯画素及び消灯画素の領域が半分となり、ノイズとして認識されるような視覚的への影響を抑えることができる。
図10(a)、(b)の例においても、点灯画素が連結される位置は各主走査ラインにおいて同じ位置であるため、低減されてはいるが視覚的な影響を完全に排除することはできない。より視覚的な影響を低減するためには、主走査ライン毎に画像をシフトさせる位置をずらすことにより、連結された点灯画素が副走査方向に連続しないようにすることが求められる。
しかしながら、とある主走査ラインにおいて画像を副走査方向にシフトすると、その影響はその主走査ライン以降の主走査ライン全てに及ぶため、図9(b)及び図10(b)に示すような態様において、主走査ライン毎にシフト位置をずらすことは難しい。また、発光制御部121がラインメモリ122から画素データを読み出す際、画像の全体にわたってシフト位置を変えながら画素データを読み出すような処理は、参照すべきライン数が膨大となり困難である。
本実施形態の要旨は、主走査ライン毎に画像をシフトさせる位置をずらすことを可能とすることにある。図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)は、本実施形態に係る要旨の1つであるスキュー補正の態様を示す図である。図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)の例においても、図10(a)、(b)の例と同様に、副走査方向の解像度を2倍とする。
図11(a)は、図9(a)と同様の画像について、本実施形態に係るスキュー補正のための最初の処理を行った状態を示す図である。図11(a)に示すように、本実施形態に係るスキュー補正においては、画像の副走査方向の解像度を2倍とした上で、1ライン毎に光源装置281を消灯させる消灯ラインを設ける。この消灯ラインは、夫々の主走査ラインにおいて、画像をシフトさせるための余白として用いられる。
図11(b)は、一番上の主走査ラインにおいて画像を副走査方向にシフトさせた状態を示す図である。図11(b)においては、太線で示された位置を境界として、画像が副走査方向にシフトされている。図11(b)に示すように、消灯ラインが余白として用いられるため、1つの主走査ラインにおいて画像のシフトを行っても、他の主走査ラインの画素に影響を与えることなく画像をシフトさせることができる。
図12(a)は、図11(b)の態様に基づき、主走査ライン毎に位置を変えながら、2か所で画像をシフトさせた状態を示す図である。尚、本実施形態においては、このように主走査ライン毎にシフト位置を変えることを、スライドと表現する。図12(a)の例においては、隣接する主走査ライン毎に、画像をシフトさせる位置が左右3画素の範囲で1画素ずつスライドされている。発光制御部121は、ラインメモリ122から図12(a)のように画素データを読み出し、光源装置281の点灯/消灯を制御する。
ここで、図11(a)において説明したように、本実施形態に係るスキュー補正においては、副走査方向の解像度を倍にした上で、1ライン毎に消灯ラインを設けているため、図11(a)からも明らかなように、本来1画素分である点灯画素が、半画素分となっている。従って、図9(a)、(b)若しくは図10(a)、(b)と同様の点灯制御を行った場合、夫々の点灯画素において露光量が半分になり、結果として画像が全体的に薄くなってしまう。
このため、本実施形態に係る発光制御部121は、位置の点灯画素に応じた露光強度や点灯時間を調整し、各点灯画素が半画素分となることにより画像が薄くなってしまうことを防ぐ。図12(b)は、図12(a)のようにスキュー補正されて読み出された状態の画素データにおいて、各点灯画素の点灯時間を倍とすることにより、半画素分を一画素分として扱う場合を示す。
図12(b)に点線の丸で示すように、本実施形態に係るスキュー補正によれば、連結される点灯画素の領域が主走査方向に分散されるため、ノイズとして認識されるような視覚への影響を抑えることができる。尚、図12(a)、(b)の例においては、主走査ライン毎に周期的に画像シフト位置を一方向にスライドさせ、スライド範囲の端に達したら反対方向に一画素ずつスライドさせているが、スライド範囲の上限に達したら反対側のスライド範囲の端にスライド位置を移動させても良い。また、主走査ライン毎にランダムに画像シフト位置を変化させても良い。
次に、発光制御部121が、図12(a)のような画像シフトを行いながらラインメモリ122から画素データを読み出す処理について説明する。発光制御部121は、上述したような画像シフトを行うための情報を内部に保持している。図13は、発光制御部121が内部に保持している情報を示す図である。
図13に示すように、発光制御部121は、内部に“シフト位置デフォルト値”、“スライド範囲値”、“シフト位置現在値”及び“ラインカウント値”を記憶している。“シフト位置デフォルト値”は、画像を副走査方向にシフトさせる位置、即ち、主走査ラインにおける何画素目かを示す値のデフォルト値である。図12(a)等に示すように、主走査ラインの複数の位置においてシフトが行われるため、“S1、S2、・・・”のように、複数の値がデフォルト値として保持される。この“シフト位置デフォルト値”は、スキュー情報取得部124が取得したスキュー情報に従い、画像のスキューが好適に補正されるような間隔及び個数にて発光制御部121によって設定される。
“スライド範囲値”は、主走査ライン毎にシフト位置をスライドさせる際の、スライドの範囲を示す値である。図13の例においては、“±1”が“スライド範囲値”として記憶されている。即ち、図13の例においては、主走査ライン毎に、スライド値が“+1”、“0”、“−1”、“0”、“+1”・・・といったように変化する。これにより、図12(a)等に示すように、デフォルトのシフト位置から±1画素の範囲で、主走査ライン毎にシフト位置がスライドする。
この“スライド範囲値”は、シフト位置の補正による弊害であるディザパターンの崩れを分散させるという本実施形態の目的の上では、広い方が好ましい。他方、上記“シフト位置デフォルト値”は、画像のスキューが画像全体として好適に補正されるような間隔で設定されているため、“スライド範囲値”が広すぎると、“シフト位置デフォルト値”において設定されたシフト位置の間隔が崩れてしまう。従って、この“スライド範囲値”は、上記設定された“シフト位置デフォルト値”の間隔に従い、上記間隔が崩れないような範囲で設定されることが好ましい。
上記“スライド範囲値”は、上述したように広すぎる場合の弊害を考慮し、例えば、主走査ラインにおいて複数シフト位置が設定される場合において、隣接するシフト位置間の間隔に基づいて定められる。具体的には、上記シフト位置間の間隔の30%以下、より好ましくは10%以下である。
“シフト位置現在値”は、発光制御部121が、ラインメモリ122から画素データを読み出す際に、上記“シフト位置デフォルト値”及び“スライド範囲値”に基づいて、その主走査ラインにおけるシフト位置を求めた結果の値である。即ち、発光制御部121は、上記“スライド範囲値”に基づき、主走査ライン毎にスライド値を切り替えて“シフト位置デフォルト値”に適用し、その結果求められた“シフト位置現在値”に基づいて画素データを読み出すラインメモリを切り替える。
上述したように、本実施形態においては、副走査方向の解像度を2倍にするため、1つの主走査ラインについて格納された画素データを2回読み出す。即ち、1つの主走査ラインは、2つのラインに分割される。“ラインカウント値”は、1つの主走査ラインについて画素データを読み出している時に、その読み出しが1回目か2回目かをカウントしている値である。
図14は、発光制御部121が、主走査ライン毎にラインメモリ122に格納された画素データを読み出す際の読み出し順序及び点灯/消灯画素の切替態様を示す図である。図14においては、画素データを読み出す経路を実線で、消灯データとする経路を破線で、夫々示している。図14に示すような経路で、図中上段から順に画素データを読み出すと共に、点灯/消灯を切り替えることにより、図12に示すようにシフト補正された状態で画素データが読み出される。尚、図14の例においては、副走査方向への画素データのシフトのため、画像の最上段において点線で示すように、シフト用のラインメモリが設けられている。
次に、図15を参照して、発光制御部121が、シフト補正を行いながらラインメモリ122から画素データを読み出す動作について説明する。図15は、LEDA281を制御して光書き込みを行う際の、発光制御部121による画素データの読み出し動作を示すフローチャートである。
図15に示すように、発光制御部121は、ラインメモリ122からの画素データの読み出しを開始すると、まずラインカウント値を1とし(S1501)、先頭の主走査ラインから順に主走査方向に画素データを読み出す(S1502)。発光制御部121は、ライン終端の画素データを読み出すまで(S1503/NO)、若しくは、図13において説明した“シフト位置現在値”に到達するまで(S1504/NO)主走査方向への画素データの読み出しを繰り返す。尚、発光制御部121は、画素データを読み出す毎に画素カウント値をインクリメントする。
発光制御部121が、主走査方向に画素データを読み出していくと、ライン終端に到達する前に(S1503/NO)、図13において説明した“シフト位置現在値”に到達する(S1504/YES)。尚、発光制御部121は、画素カウント値と“シフト位置現在値”とが一致することにより、S1504においてYESの判断を行う。すると、発光制御部121は、ラインカウント値を参照し、ラインカウント値が“2”であれば(S1505/YES)、読み出しラインを次のラインにシフトした上で(S1506)、点灯/消灯を切り替える(S1507)。そして、シフトした先のラインにおいて、S1502からの処理を繰り返す。
他方、ラインカウント値が“1”であれば(S1505/NO)、また、その主走査ラインの読み出しは1回目であるため、読み出しラインのシフトは行わず、点灯/消灯を切り替え(S1507)、同様にS1502からの処理を繰り返す。尚、図13においては、便宜上、同一の主走査ラインにおいて、下段に1段シフトして示しているが、同一の主走査ラインを参照し続けることには変わりがない。上述したように、本実施形態において、発光制御部121は、1つの主走査ラインから2回画素データを読み出す。即ち、1つの主走査ラインを2つのラインとして画素データの読み出しを行う。このため、各主走査ラインにおける1回目の読み出しの場合、次のラインも同じラインを読むことになるため、S1505の判断が行われる。
画素データの読み出しを繰り返した結果、ラインの終端に到達すると(S1503/YES)、発光制御部121はラインカウント値を参照し(S1508)、ラインカウント値が“1”であれば(S1508/NO)、ラインカウントをプラス1すると共に、主走査方向の読み出し位置をリセットして(S1509)、S1502からの処理を繰り返す。尚、S1509における読み出し位置のリセットには、主走査方向の何画素目かを示す読み出し位置に加えて、S1506においてシフトされた副走査方向の位置もリセットされる。
他方、ラインカウント値が“2”であれば(S1508/YES)、発光制御部121は、1ページの画素データ全ての読み出しが完了したかを確認し(S1510)、完了していれば(S1510/YES)、そのまま処理を終了する。他方、1ページの画素データ全ての読み出しが完了していなければ(S1510/NO)、発光制御部121は、上述した“シフト位置デフォルト値”、“スライド範囲値”及び“シフト位置現在値”に基づいて“シフト位置現在値”を更新すると共に読み出しラインを次の主走査ラインに切り替え(S1511)、ラインカウント値を1とするS1501から処理を繰り返す。このような処理により、図12に示すような、主走査ライン毎にシフト位置がスライドしたスキュー補正が実現される。
以上、説明したように、本実施形態に係る画像形成装置1に含まれる光書込み装置111においては、画像の副走査方向の解像度を2倍、即ち1つの主走査ラインを2つに分割した上で、分割された2つのラインのうち1つを消灯ラインとする。そして、スキュー情報に基づいて画像を副走査方向にシフトさせる際のシフト用の余白として消灯ラインを用いることにより、主走査ライン毎に異なる位置においてシフト補正を行うことが可能となる。
尚、上記実施形態においては、1つの主走査ラインを2つに分割する場合を例として説明したが、これに限らず3つ以上に分割、即ち解像度を3以上の正の整数倍としても良い。この場合、消灯ラインとするライン数は1ラインに限らず、分割されたライン数よりも少ないライン数であれば良く、画像をシフトさせるシフト量が分割されたライン数よりも少なければ、上記と同様の効果を得ることが可能である。また、図15のS1505、S1508においては、ラインカウントが2であるか否かを判断したが、副走査方向の解像度を3倍上にする場合、その倍数に応じたカウント値か否かを判断することになる。
また、上記実施形態においては、LEDA281を光源として用いる場合を例として説明した。この他、LDを光源として用い、ポリゴンミラーにより主走査方向の走査を行う場合であっても、同様に適用することが可能である。本実施形態のようにLEDAを用いる場合は、LEDA281が光源装置として機能するが、LDを光源としてもちいる場合は、レーザビームを反射するポリゴンミラーやレンズ等の光学系も含めた構成が光源装置として用いられる。
尚、LDを光源として用いる場合は、上述したようにポリゴンミラーによってレーザビームを主走査方向に走査する必要があるため、本実施形態のように副走査方向の解像度を2倍にする為には、ポリゴンミラーの回転速度を2倍にする必要があり、より高精度な制御が求められる。これに対して、LEDAを光源として用いる場合は、機械的な制御は不要であり、LEDの点灯/消灯を切り替えるクロックの周波数を2倍にするのみで良いため、本実施形態に係る光書き込み装置は、LEDA光源を用いることが好ましい。
また、上記実施形態においては、図5及び図13において説明したように、スキュー情報とシフト位置デフォルト値及びスライド範囲値とを夫々異なるものとし、スキュー情報に基づいてシフト位置デフォルト値及びスライド範囲値を取得する場合を例として説明した。しかしながら、シフト位置デフォルト値及びスライド範囲値は、上記実施形態におけるスキュー情報に基づいて定められるものであるため、LEDA281と感光体ドラム109との傾きの情報ではなく、図13に示すシフト位置デフォルト値及びスライド範囲値を、スキュー情報として予め記憶しておくこともできる。この場合は、発光制御部121がスキュー情報取得部として機能する。
実施の形態2.
実施の形態1においては、画像情報取得部123が、画素データを主走査ライン毎にラインメモリ122に格納し、発光制御部121がラインメモリ122から画素データを読み出す際にスキュー補正を行う場合を例として説明した。この他、スキュー補正された画素データをラインメモリ122に格納することも可能である。
図16は、スキュー補正された画素データをラインメモリ122に格納する場合の光書き込み装置制御部120の機能構成を示すブロック図である。図16に示すように、含まれる機能ブロックは実施の形態1の態様と同様である。ここで、本実施形態においては、スキュー情報取得部124が取得したスキュー情報は、画像情報取得部123に入力される。
画像情報取得部123は、取得した画像情報に基づいて画素データをラインメモリ122に格納する際、実施の形態1の図15において説明したようなスキュー補正を施した上で、即ち、スキュー情報取得部124から入力されたスキュー情報に基づき、図12(a)のように画素を副走査方向にシフトさせた状態で格納する。
これにより、本実施形態に係る発光制御部121は、ラインメモリ122に格納された画素データを主走査ライン毎に順番に読み出し、読み出した画素データに従ってLEDA281の点灯/消灯を制御する。これにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
尚、図12(a)に示す状態で画素データを格納する場合、本来1画素分であった点灯画素が半画素分となることは、実施の形態1と同様である。従って、本実施形態においても、発光制御部121は、点灯画素に基づく発光強度や発光時間を調整することにより、画像が全体的に薄くなることを回避する。
この他、図12(b)に示す状態、即ち、半画素分の点灯データを副走査方向に拡張し、一画素分とした状態で画素データをラインメモリ122に格納するようにしても良い。
実施の形態3.
実施の形態1においては、発光制御部121が、ラインメモリ122からの画素データの読み出しの際にスキュー補正を行う場合を例として説明した。また、実施の形態2においては、画像情報取得部123が、ラインメモリ122への画素データの格納の際にスキュー補正を行う場合を例として説明した。この他、スキュー補正を行う専用の構成を設けても良い。そのような場合について、図17に示す。
図17に示すように、本実施形態に係る光書き込み装置制御部120は、ラインメモリとして補正前ラインメモリ122a及び補正後ラインメモリ122bを含むと共に、スキュー補正部125を含む。図17の例において、画像情報取得部123は、実施の形態1と同様に、コントローラ20から入力される画像情報を取得し、画像を構成する画素の情報を主走査ライン毎に補正前ラインメモリ122aに格納する。
本実施形態に係るスキュー情報取得部124は、取得したスキュー情報をスキュー補正部125に入力する。スキュー補正部125は、ラインメモリ122aに格納された画素データを読み出し、スキュー情報取得部124から入力されるスキュー情報に基づいて、図15において説明したようなスキュー補正を行い、スキュー補正後の画素データを補正後ラインメモリ122bに格納する。
これにより、補正後ラインメモリ122bには、実施の形態2と同様にスキュー補正が行われた画素データが格納されるため、発光制御部121は、実施の形態2と同様に、画素データをそのまま読み出してLEDA281を制御する。本実施形態においても、図12(a)のように、本来一画素分であった点灯画素が半画素分となっているため、発光制御部121は、光源装置281を点灯させる際の発光強度や発光時間を調整する。このような構成により、実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。尚、本実施形態においても、実施の形態2と同様に、補正後の画素データとして図12(a)の状態で画素データを格納する他、図12(b)の状態で画素データを格納しても良い。