JP5810936B2 - インクジェット記録体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
前記インク受容層用塗液が、湿式法シリカ及び炭酸カルシウムを含む顔料と、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、シリル変性ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタール樹脂を含むバインダーと、水とを含むことを特徴とする方法である。
また、前記顔料100質量部に対して、前記エチレン−酢酸ビニル系樹脂が5〜25質量部、前記シリル変性ポリビニルアルコールが5〜25質量部、前記ポリビニルアセタール樹脂が5〜25質量部であることが好ましい。
前記インク受容層が、湿式法シリカ及び炭酸カルシウムを含む顔料と、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、シリル変性ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタール樹脂を含むバインダーとを含有することを特徴とする。
本発明のインクジェット記録体の製造方法によれば、固形分濃度を高くしても塗工適性が良好なインク受容層用塗液により、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体を高い生産性で製造することができる。
本発明のインクジェット記録体は、支持体と、該支持体上に形成されたインク受容層とを有する。
[支持体]
支持体としては、紙基材、樹脂フィルム、又は各種シート材を使用することができる。また、支持体は、紙基材、樹脂フィルム、シート材の表面に、インクの溶媒を遮蔽する、インクの溶媒を吸収する、また支持体の平滑性を向上させる等の目的で下塗り層等が設けられたものであってもよい。
紙基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、クラフト紙、バライタ紙、板紙、含浸紙、蒸着紙、段ボール、酸性紙、中性紙等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のフィルムや合成紙が挙げられる。
シート材としては、金属箔、金属板、ガラス板、ラミネート紙、織布、不織布等が挙げられる。
紙基材、樹脂フィルム、シート材のなかでは、取り扱い易さ、及び廃棄の容易さ等の面から、紙基材が好ましい。
以下、紙基材について説明する。
紙基材は、木材パルプを主成分とし、必要に応じて填料、各種助剤等を含有する。
木材パルプとしては、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。なかでも、針葉樹及び広葉樹のクラフトパルプ、あるいはこれらクラフトパルプを漂白した針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプが好ましい。
また、環境負荷を低減する点から、木材パルプにおいては、その漂白工程で塩素の影響を取り除いた塩素フリーパルプが好ましい。塩素フリーパルプとしては、例えば、塩素そのものを使わずに塩素化合物を使って漂白したECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、塩素元素が一切入っていない漂白剤を用いて漂白したTCF(Total Chlorine Free)パルプが挙げられる。
叩解度が前記下限値以上であれば、印刷した際のコックリング(吸収ジワ)を軽減でき、上限値以下であれば、紙基材の平滑性が向上する。
紙基材中の填料の含有率(灰分)は、1〜20質量%が好ましい。この範囲であれば、平滑度、透気度、紙力及び剛性のバランスが優れる。
サイズ剤としては、例えば、強化ロジン、アルケニル無水コハク酸等の公知のサイズ剤を用いることができる。定着剤としては、例えば、硫酸アルミニウムを用いることができる。歩留まり向上剤としては、例えば、澱粉を用いることができる。
また、紙基材に含まれてもよい助剤としては、紙力増強剤、カチオン化剤、染料、蛍光増白剤等を用いることもできる。
サイズプレス処理された紙基材のステキヒトサイズ度(JIS P8122)は、1〜300秒が好ましく、4〜200秒がより好ましい。ステキヒトサイズ度が前記下限値以上であれば、塗工時の皺発生を抑制でき、前記上限値以下であれば、インク吸収性が向上する。
紙基材の王研式透気度(日本TAPPI No.5)は、10〜1000秒が好ましく、10〜800秒がより好ましく、20〜650秒がさらに好ましい。王研式透気度が前記下限値以上であれば、インク受容層用塗液が紙基材の内部に入り込むことを抑制でき、前記上限値以下であれば、インク吸収性が向上する。
紙基材の厚さは、特に限定されないが、用途に応じて40〜500μmの範囲で適宜選択される。
本発明のインクジェット記録体のインク受容層は、湿式法シリカ及び炭酸カルシウムを含む顔料(以下、「顔料(A)」という。)と、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、シリル変性ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタール樹脂を含むバインダー(以下、「バインダー(B)」という。)とを含む。顔料(A)とバインダー(B)を用いることで、インク受容層の記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度の性能を維持しつつ、塗液調製時に塗液が増粘することを抑制して固形分濃度の高いインク受容層用塗液を調製することが可能になる。そのため、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を速やかに形成でき、インクジェット記録体の生産性が高まる。
インク受容層は、さらにインク定着剤を含むことが好ましい。
顔料(A)は、湿式法シリカと炭酸カルシウムを必須成分とする。湿式法シリカは、一般にケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の中和反応により形成されるシリカである。湿式法シリカとしては、沈降法シリカ、ゲル法シリカが好ましい。
沈降法シリカは、アルカリ性のpH領域で、ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を段階的に加え、沈降したシリカをろ過することで製造され、一次粒子が大きく細孔容積や吸油量の高いシリカである。一方、ゲル法シリカは、酸性のpH領域で、ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を混合して得られる。一次粒子の成長を抑えた状態で凝集を起こさせるので、強度の強いシリカとなる。
湿式法シリカは、沈降法シリカのみを使用してもよく、ゲル法シリカのみを使用してもよく、沈降法シリカとゲル法シリカを併用してもよい。なかでも、沈降法シリカとゲル法シリカの併用が好ましい。
沈降法シリカの比表面積は、20〜400g/m2が好ましく、100〜400g/m2がより好ましく、200〜350g/m2がさらに好ましい。ゲル法シリカの比表面積は、200〜1000g/m2が好ましく、200〜500g/m2がより好ましく、200〜350g/m2がさらに好ましい。比表面積が前記下限値以上であれば、インクの発色性がより良好になる。比表面積が前記上限値以下であれば、塗膜強度がより強くなり、塗液乾燥時に割れが発生し難くなる。
炭酸カルシウムとしては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等が挙げられ、塗工時の塗液の流動性と高速塗工に適する点から、重質炭酸カルシウムが好ましい。
他の顔料としては、インクの乾燥性や吸収性が向上することから、多孔質炭酸マグネシウム、多孔質アルミナが好ましい。
顔料(A)100質量%に対する炭酸カルシウムの比率は、25〜50質量%がより好ましい。炭酸カルシウムの比率が前記下限値以上であれば、塗膜強度がより強くなり、また固形分濃度の高いインク受容層用塗液を調製することが容易になる。炭酸カルシウムの比率が前記上限値以下であれば、記録濃度がより良好になる。
顔料(A)における湿式法シリカの質量に対する炭酸カルシウムの質量の比率は、40〜70質量%が好ましい。前記比率が前記下限値以上であれば、塗膜強度がより強くなり、また固形分濃度の高いインク受容層用塗液を調製することが容易になる。前記比率が前記上限値以下であれば、記録濃度がより良好になる。
また、この場合、顔料(A)における沈降法シリカの質量に対するゲル法シリカの質量の比率は、50〜200質量%が好ましく、70〜180質量%がより好ましく、90〜150質量%がさらに好ましい。前記比率が前記下限値以上であれば、塗膜強度がより強くなる。前記比率が前記上限値以下であれば、インク吸収性がより良好になる。
バインダー(B)は、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、シリル変性ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタール樹脂を必須成分とする。
なお、本発明におけるシリル変性ポリビニルアルコールは、アセタール化されたものを除く。すなわち、本発明におけるシリル変性ポリビニルアルコールは、アセタール化されていないシリル変性ポリビニルアルコールである。
エチレン−酢酸ビニル系樹脂におけるエチレン(E)に由来する繰り返し単位と酢酸ビニル(VA)に由来する繰り返し単位との比率(E/VA)は、70/30〜99/1が好ましく、80/20〜98/2がより好ましい。前記比率(E/VA)が前記下限値以上であれば、塗液調製時に粘度が高くなりすぎず、塗液の調製が容易になる。前記比率(E/VA)が前記上限値以下であれば、インク受容層の表面強度がより強くなる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、より固形分濃度の高いインク受容層用塗液を得やすいことから、重合度400〜2000のポリビニルアルコールをアセタール化した樹脂が好ましい。
他のバインダーとしては、例えば、無変性のポリビニルアルコール;カチオン性ポリビニルアルコール等の他の変性ポリビニルアルコール;スチレン−ブタジエン系樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン系樹脂等の共役ジエン系樹脂;アクリル系樹脂等の他のビニル系樹脂;カゼイン、大豆蛋白、ゼラチン、合成蛋白等の蛋白質類;澱粉、酸化澱粉等の各種澱粉類;キチン、キトサン等の各種多糖類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;水性ポリウレタン樹脂;水性ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これら他のバインダーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記比率が前記範囲内であれば、形成するインク受容層の性能を維持しつつ、より固形分濃度の高いインク受容層用塗液を調製することが容易になり、インクジェット記録体の生産性がさらに高まる。
インク定着剤としては、例えば、インクジェット記録用のインク中の染料色素を定着する作用を有する公知のインク定着剤が挙げられる。具体的には、カチオン性樹脂や低分子カチオン性化合物(例えばカチオン性界面活性剤等。)等のカチオン性化合物が挙げられる。
インク定着剤を含有することで、印字画像の耐水性が向上する。インク定着剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
カチオン性樹脂としては、例えば、(a)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、(b)第2級もしくは第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、又はそれらのアクリルアミドの共重合体、(c)ポリビニルアミン及びポリビニルアミジン類、(d)ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、(e)ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、(f)エピクロルヒドリン−ジメチルアミン共重合体、(g)ジアリルジメチルアンモニウム−SO2重縮合体、(h)ジアリルアミン塩−SO2重縮合体、(i)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、(j)アリルアミン塩の共重合体、(k)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、(l)アクリルアミド−ジアリルアミン共重合体、(m)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等が挙げられる。
本発明のインクジェット記録体のインク受容層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。インク受容層が2層以上である場合、各層の厚みを合わせたインク受容層の総厚みが、前記範囲内となっていることが好ましい。
また、上層の第2のインク受容層中の顔料(A)100質量部に対して、エチレン−酢酸ビニル系樹脂が5〜25質量部、シリル変性ポリビニルアルコールが5〜25質量部、ポリビニルアセタール樹脂が5〜25質量部であることがより好ましく、エチレン−酢酸ビニル系樹脂が5〜20質量部、シリル変性ポリビニルアルコールが5〜15質量部、ポリビニルアセタール樹脂が10〜20質量部であることがさらに好ましい。上層の第2のインク受容層中の各バインダーの比率が前記範囲内であれば、インク吸収性及び表面強度がより良好になる。
なお、本発明のインクジェット記録体は、前記したものには限定されない。例えば、インク受容層上にさらに別の層を有していてもよい。また、支持体のインク受容層を設けていない面に別の層を有していてもよい。
本発明のインクジェット記録体の製造方法は、前記した、支持体上にインク受容層が形成されたインクジェット記録体を製造する方法である。具体的には、支持体上に、インク受容層を形成するためのインク受容層用塗液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成する工程を有する方法である。
インク受容層用塗液の塗工方法としては、例えば、ブレードコータ、エアーナイフコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ、ロッドブレードコータ、リップコータ、カーテンコータ、ダイコータ等の各種塗工装置を用いる方法が挙げられる。
インク受容層用塗液を塗工した後の乾燥方法としては、特に制限されず、例えば、熱風による加熱乾燥、赤外線照射による加熱乾燥等を採用できる。
本発明では、インク受容層用塗液の塗工及び乾燥を2回以上行い、2層以上のインク受容層を形成してもよい。また、形成したインク受容層には、必要に応じて、スーパーカレンダ、ブラシ掛け等の平滑化処理を施してもよい。
インク受容層用塗液中の顔料(A)における湿式法シリカと炭酸カルシウムの比率、バインダー(B)におけるエチレン−酢酸ビニル系樹脂、シリル変性ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタール樹脂の比率の好ましい範囲は、前記したインク受容層中における比率の好ましい範囲と同じである。
インク受容層用塗液中の顔料(A)の含有量は、40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましく、60〜75質量%がさらに好ましい。顔料(A)の含有量が前記下限値以上であれば、インク吸収性がより良好になる。顔料(A)の含有量が前記上限値以下であれば、充分な塗膜強度を有するインク受容層が得られやすい。
インク受容層用塗液中のインク定着剤の含有量は、顔料(A)100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましく、5〜15質量部がさらに好ましい。
有機酸とは、酸性基(カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基)を有する有機化合物のことである。有機酸のなかでも、反応性が穏やかなため、インク受容層用塗液中に共存する他の物質への影響が少ないことから、カルボキシ基を有する有機化合物が好ましい。
カルボキシ基を有する有機化合物としては、蟻酸、酢酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。なかでも、より高濃度のインク受容層用塗液を得やすいことから、リンゴ酸、乳酸及び酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これら有機酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、インク受容層用塗液の粘度とは、B型粘度計(カップ形状:直径60mm×高さ80mm、No.3ローター使用、回転数60rpm)により20℃で測定した値を意味する。
本発明の製造方法に用いるインク受容層用塗液は、有機酸及びインク定着剤を顔料(A)よりも前に水に添加して調製することが好ましい。これにより、塗液調製時に発泡して塗液中にブツが生じることを抑制することが容易になり、優れた塗工適性を有する固形分濃度の高いインク受容層用塗液を得ることが容易になる。そのため、このインク受容層用塗液を用いることで、優れたインク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体をより高い生産性で製造することができる。
また、分散剤を用いる場合、優れた塗工適性を有する固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られやすいことから、分散剤は顔料(A)よりも前に添加することが好ましい。分散剤と、有機酸及びインク定着剤との添加順序は特に限定されない。
バインダー(B)は、有機酸、インク定着剤、分散剤を添加した後に添加することが好ましい。顔料(A)とバインダー(B)の添加順序は特に限定されず、顔料(A)を添加した後にバインダー(B)を添加してもよく、バインダー(B)を添加した後に顔料(A)を添加してもよい。バインダー(B)のシリル変性ポリビニルアルコールを添加する順序は、塗料中に凝集物が発生することを抑制しやすい点から、炭酸カルシウムを添加し、シリル変性ポリビニルアルコールを添加し、その後に湿式法シリカを添加する順序が好ましい。
また、バインダー(B)の各成分の添加順序は特に限定されない。
(i)有機酸、分散剤、インク定着剤、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
(ii)有機酸、インク定着剤、分散剤、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
(iii)分散剤、有機酸、インク定着剤、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
(iv)インク定着剤、有機酸、分散剤、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
(v)分散剤、インク定着剤、有機酸、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
(vi)インク定着剤、分散剤、有機酸、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
なお、本発明のインクジェット記録体の製造方法は、前記した方法には限定されない。例えば、インク受容層上にさらに別の層を形成する方法であってもよい。
[製造例1:古紙パルプAの製造]
パルパーにてケント古紙(灰分33.2%)を離解し、除塵装置(クリーナー及びスクリーン)を通過させた後、傾斜エキストラクター及びスクリュープレス脱水機により固形分濃度が30%程度となるまで濃縮した。その後、フォスフォスルフォンアミジン(FAS)を添加して漂白しながら、ディスパーザーを用いて分散処理を行い、さらに水で希釈しながらパルプ洗浄機(DNTウォッシャー:相川鉄工製)に通した後、フリーネスを300mLに調整し、古紙パルプAを得た。この古紙パルプAの灰分は10.5%、平均繊維長0.1mm以下の微細繊維の含有量は13%であった。
なお、灰分はJIS P8251に従い、525℃にて焼成して下式により求めた値である(以下、同じ。)。
Z(%)=(X/Y)×100
ただし、Zは古紙パルプAの灰分、Xは焼成後の残留物の質量、Yは焼成前の古紙パルプAの固形分の質量である。
また、平均繊維長は、JIS P8220のパルプ離解方法により離解した測定試料の繊維長を、JAPAN TAPPI No.52で規定された光学式自動計測法でのパルプ繊維長試験方法により測定し、数基準で求めた繊維長の平均である(以下、同じ。)。
以下に示す紙料及び条件にて、多層抄き合わせ長網抄紙機により、3層構成(表層/中層/裏層)の紙厚220μmの原紙を作成した。なお、表層と中層の層間、及び中層と裏層の層間には、それぞれ3.0%の酸化澱粉水溶液を固形分で0.3g/m2塗布して抄き合わせした。
また、酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)と表面サイズ剤(商品名:ポリマロン1329K、荒川化学工業社製)を質量比9:1で混合した固形分13.5%のサイズ液を、ロードブレードコータによって、原紙の表面及び裏面にそれぞれ固形分が2g/m2となるように塗布した後、乾燥し、キャレンダで平滑化処理した。
坪量:50g/m2。
パルプ配合:フリーネスを520mLに調整した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)100%。
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を有姿濃度で対パルプ0.3%添加した。
紙力増強剤:ポリアクリルアミドを有姿濃度で対パルプ5.0%添加した。
歩留向上剤:高分子量ポリアクリルアミドを有姿濃度で対パルプ0.025%添加した。
硫酸バンド:Al2O3として8%の水溶液品を有姿濃度で対パルプ0.5%添加した。
(中層)
坪量:90g/m2。
パルプ配合:古紙パルプA 100%。
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を有姿濃度で対パルプ1.5%添加した。
歩留向上剤:高分子量ポリアクリルアミドを有姿濃度で対パルプ0.02%添加した。
硫酸バンド:Al2O3として8%の水溶液品を有姿濃度で対パルプ10.0%添加した。
(インク受容層用塗液の調製)
分散媒である水140部に、リンゴ酸(磐田化学社製)0.5部と、硫酸アルミニウム(キシダ化学社製)0.5部と、分散剤である非イオン性界面活性剤(商品名:エマルゲンA−60、花王社製)0.6部とを添加して撹拌した。その後、インク定着剤であるカチオン性樹脂(商品名:ユニセンスCP103、センカ社製)10部と、消泡剤(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製)微量とを添加して撹拌した。次いで、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン2200、備北粉化社製)30部を加えて撹拌した。次いで、沈降法シリカ(商品名:ファインシール(登録商標)X−30、トクヤマ社製、比表面積290g/m2)35部と、ゲル法シリカ(商品名:サイロイド74X5500、グレースデビソン社製、比表面積250g/m2)35部とを順に少量ずつ撹拌しながら加えた。よく撹拌した後、シリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R−1130、クラレ社製、ケン化度98〜99%、重合度1700)10部と、エチレン−酢酸ビニル系樹脂(商品名:ポリゾールAM3150、昭和電工社製)20部と、ポリビニルアセタール樹脂(商品名:エスレックK KW10、積水化学工業社製)7.5部とを添加して撹拌し、少量の水を加えて固形分濃度31%のインク受容層用塗液1を得た。
(インクジェット記録体の製造)
製造例2で得られた原紙の表面に、インク受容層用塗液1をロッドブレードコータで塗工し、乾燥して固形分11g/m2のインク受容層を形成し、インクジェット記録体を得た。
バインダーを表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液2〜3(実施例2がインク受容層用塗液2、実施例3がインク受容層用塗液3である。)を得た。また、インク受容層用塗液2〜3を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
カチオン性樹脂を添加した後、重質炭酸カルシウム15部と、軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP121、奥多摩工業社製)15部を添加し、その後に沈降法シリカとゲル法シリカを添加した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液4を得た。また、インク受容層用塗液4を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
顔料料を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液5を得た。また、インク受容層用塗液5を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
顔料及びバインダーを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液6〜13(比較例1がインク受容層用塗液6であり、以下順に比較例2〜8がそれぞれインク受容層用塗液7〜13である。)を得た。なお、比較例2、4及び7では、塗液の増粘が激しくなったため、水を増量してインク受容層用塗液7、9及び12の固形分濃度を24%とした。
また、インク受容層用塗液6〜13を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
シリル変性PVA:シリル変性ポリビニルアルコール。
EVA系樹脂:エチレン−酢酸ビニル系樹脂。
A−60:商品名「エマルゲンA−60」、花王社製。
CP103:商品名「ユニセンスCP103」、センカ社製。
2200:商品名「ソフトン2200」、備北粉化社製。
TP121:商品名「タマパールTP121」、奥多摩工業社製。
1407K:商品名「ノプコ1407K」、サンノプコ社製。
X−30:商品名「ファインシール(登録商標)X−30」、トクヤマ社製。
74X5500:商品名「サイロイド74X5500」、グレースデビソン社製。
R−1130:商品名「R−1130」、クラレ社製。
AM3150:商品名「ポリゾールAM3150」、昭和電工社製。
KW10:商品名「エスレックK KW10」、積水化学工業社製。
各例で得られたインク受容層用塗液の粘度(単位:mPa・s)は、B型粘度計(カップ形状:直径60mm×高さ80mm、No.3ローター使用、回転数60rpm)により20℃で測定した。
各例のインク受容層用塗液の塗工適性を以下の基準で評価した。
「○」:安定して塗工可能である。
「△」:塗液の粘度が高すぎて塗工が難しい。
インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製、商品名:EP−703A、印字モード:郵便ハガキ(インクジェット))を用い、得られたインクジェット記録体のインク受容層に黒色インクでベタ印字し、記録濃度をマクベス反射濃度計(モデル:Gretag Macbeth RD−19、マクベス社製)で測定した。
インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製、商品名:EP−703A、印字モード:郵便ハガキ(インクジェット))を用い、得られたインクジェット記録体のインク受容層に緑色インクをベタ印字し、ベタ印字画像中に斑があるかどうかを目視で観察して以下に示す基準で評価した。印字斑は、先に打ち込まれたインクが、インクジェット記録体のインク受容層に完全に吸収されないうちに次のインクが飛来して表面で重なった場合に生ずる現象であり、インク吸収速度が遅くなるほど顕著に表れる。
「◎」:印字斑が全く見られない。
「○」:印字斑が多少あるが、実用上問題がない。
「△」:印字斑が多く見られ、実用性が低い。
「×」:印字斑がひどく、実用性が低い。
摩擦試験機(スガ試験機社製)に、市販の黒画用紙(日清紡社製)と荷重200gの重りを設置し、得られたインクジェット記録体のインク受容層の表面を20往復擦り、表面の傷の程度を目視により確認して以下の基準で評価した。
「◎」:表面に傷が全く見られず、良好である。
「○」:表面に傷は若干見られるが、実用上は問題ない。
「△」:表面に傷が多く見られ、実用上問題がある。
「×」:表面に傷が非常に多く見られ、実用上問題がある。
各例の評価結果を表2に示す。
一方、ポリビニルアセタール樹脂を含まないインク受容層用塗液6及び11を用いた比較例1及び6では、充分なインク吸収性が得られなかった。
エチレン−酢酸ビニル系樹脂を含まない比較例2及び7のインク受容層用塗液7及び12は、固形分濃度を高めようとすると塗液が増粘し、固形分濃度を充分に高くすることができず、また充分なインク吸収性を有するインク受容層を形成できなかった。
シリル変性ポリビニルアルコールを含まないインク受容層用塗液8及び13を用いた比較例3及び8では、充分なインク吸収性を有するインク受容層を形成できなかった。また、比較例8のインク受容層は塗膜強度も劣っていた。
炭酸カルシウムを含まない比較例4のインク受容層用塗液9は、固形分濃度を高めようとすると塗液が増粘し、固形分濃度を充分に高くすることができず、また形成されたインク受容層は塗膜強度が劣っていた。
湿式法シリカを含まないインク受容層用塗液10を用いた比較例5では、充分な記録濃度及びインク吸収性を有するインク受容層を形成できなかった。
Claims (4)
- 支持体上にインク受容層用塗液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成するインクジェット記録体の製造方法であって、
前記インク受容層用塗液が、湿式法シリカ及び炭酸カルシウムを含む顔料と、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、シリル変性ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタール樹脂を含むバインダーと、水とを含むことを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。 - 前記顔料100質量部に対して前記バインダーが30〜45質量部である、請求項1に記載のインクジェット記録体の製造方法。
- 前記顔料100質量部に対して、前記エチレン−酢酸ビニル系樹脂が5〜25質量部、前記シリル変性ポリビニルアルコールが5〜25質量部、前記ポリビニルアセタール樹脂が5〜25質量部である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録体の製造方法。
- 支持体と、該支持体上に形成されたインク受容層とを有するインクジェット記録体であって、
前記インク受容層が、湿式法シリカ及び炭酸カルシウムを含む顔料と、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、シリル変性ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタール樹脂を含むバインダーとを含有することを特徴とするインクジェット記録体。
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