JP2013151085A - インクジェット記録体の製造方法 - Google Patents

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毅拡 南
Kazuo Ikeda
一雄 池田
Hideo Akigawa
英雄 秋川
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正博 森江
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Abstract

【課題】固形分濃度を高くしても塗工適性が良好なインク受容層用塗液により、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体を高い生産性で製造できる、インクジェット記録体の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】支持体上にインク受容層用塗液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成するインクジェット記録体の製造方法であって、前記インク受容層用塗液が、水と、顔料と、バインダーと、前記顔料100質量部に対して0.1〜1質量部の有機酸と、インク定着剤とを含み、かつ前記有機酸及び前記インク定着剤が前記顔料よりも前に水に添加されて調製された塗液であることを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録体の製造方法に関する。
端末プリンター、ファクシミリ、プロッター、大型のポスター、帳票印刷等においては、記録時の騒音が少ないこと、フルカラー画像の形成が容易であること、高速記録が可能であること、記録コストが低いこと等の観点から、インクジェット記録方式が広く採用されている。インクジェット記録方式は、紙基材等の支持体上にインク受容層が形成されたインクジェット記録体を用い、微細なノズルから該インクジェット記録体のインク受容層に向かってインクを噴出し、インク受容層面に画像を形成させる方式である。
インクジェット記録体の製造方法としては、例えば、インク受容層の主成分である顔料やインク定着剤を含むインク受容層用塗液を支持体上に塗工し、乾燥してインク受容層を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。インク受容層用塗液は、例えば、所望の固形分濃度となるように顔料、インク定着剤、バインダー等を順次水に添加することで調製される。
特許第3078291号公報 特許第2944144号公報
ところで、高い生産性でインクジェット記録体を製造するには、塗工後の乾燥時間を短縮することが非常に有効である。乾燥時間を短縮する方法としては、インク受容層用塗液を高濃度化する方法が挙げられる。しかし、特許文献1、2のような従来のインク受容層用塗液を高濃度化しようとすると、分散不良によりブツが生じたり、チキソ性が悪化したりして塗工が困難になり、優れたインク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を形成することが難しくなる。
本発明は、固形分濃度を高くしても塗工適性が良好なインク受容層用塗液により、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体を高い生産性で製造できる、インクジェット記録体の製造方法の提供を目的とする。
本発明のインクジェット記録体の製造方法は、支持体上にインク受容層用塗液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成する方法であって、
前記インク受容層用塗液が、水と、顔料と、バインダーと、前記顔料100質量部に対して0.1〜1質量部の有機酸と、インク定着剤とを含み、かつ前記有機酸及び前記インク定着剤が前記顔料よりも前に水に添加されて調製された塗液であることを特徴とする方法である。
本発明のインクジェット記録体の製造方法では、前記顔料が湿式法シリカ及び炭酸カルシウムを含むことが好ましい。
また、前記インク受容層用塗液は、前記顔料よりも前に、該顔料100質量部に対して0.1〜1質量部の硫酸アルミニウムが添加された塗液であることが好ましい。
また、前記有機酸は、リンゴ酸、乳酸及び酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録体の製造方法によれば、固形分濃度を高くしても塗工適性が良好なインク受容層用塗液により、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体を高い生産性で製造することができる。
本発明における質量部(質量%)は、特に断りのない限り固形分の質量部(質量%)である。ここで、固形分とは、JIS P8225の規定に従って110℃で乾燥させた際の固形分であり、固形分の質量とはJIS P8225の規定に従って110℃で乾燥させた際の質量(絶乾質量)を意味する。
本発明のインクジェット記録体の製造方法は、支持体上にインク受容層が形成されたインクジェット記録体の製造方法である。具体的には、支持体上に、インク受容層を形成するためのインク受容層用塗液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成する工程を有する方法である。
インク受容層用塗液の塗工方法としては、例えば、ブレードコータ、エアーナイフコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ、ロッドブレードコータ、リップコータ、カーテンコータ、ダイコータ等の各種塗工装置を用いる方法が挙げられる。
インク受容層用塗液の塗工量としては、固形分として、2〜40g/mが好ましく、4〜20g/mがより好ましい。前記塗工量が下限値以上であれば、インク受容層のインク吸収性がより良好になる。前記塗工量が上限値以下であれば、インク受容層にひび割れが生じ難くなる。
インク受容層用塗液を塗工した後の乾燥方法としては、特に制限されず、例えば、熱風による加熱乾燥、赤外線照射による加熱乾燥等を採用できる。
本発明では、インク受容層用塗液の塗工及び乾燥を2回以上行い、2層以上のインク受容層を形成してもよい。
また、形成したインク受容層には、必要に応じて、スーパーカレンダ、ブラシ掛け等の平滑化処理を施してもよい。
[支持体]
支持体としては、紙基材、樹脂フィルム、又は各種シート材を使用することができる。また、支持体は、紙基材、樹脂フィルム、シート材の表面に、インクの溶媒を遮蔽する、インクの溶媒を吸収する、また支持体の平滑性を向上させる等の目的で下塗り層等が設けられたものであってもよい。
紙基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、クラフト紙、バライタ紙、板紙、含浸紙、蒸着紙、段ボール、酸性紙、中性紙等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のフィルムや合成紙が挙げられる。
シート材としては、金属箔、金属板、ガラス板、ラミネート紙、織布、不織布等が挙げられる。
紙基材、樹脂フィルム、シート材のなかでは、取り扱い易さ、及び廃棄の容易さ等の面から、紙基材が好ましい。
以下、紙基材について説明する。
(紙基材)
紙基材は、木材パルプを主成分とし、必要に応じて填料、各種助剤等を含有する。
木材パルプとしては、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。なかでも、針葉樹及び広葉樹のクラフトパルプ、あるいはこれらクラフトパルプを漂白した針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプが好ましい。
また、環境への負荷低減の点から、木材パルプにおいては、その漂白工程で塩素の影響を取り除いた塩素フリーパルプが好ましい。塩素フリーパルプとしては、例えば、塩素そのものを使わずに塩素化合物を使って漂白したECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、塩素元素が一切入っていない漂白剤を用いて漂白したTCF(Total Chlorine Free)パルプが挙げられる。
また、木材パルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機によって叩解度(CSF:カナディアンスタンダードフリーネス)が調整されていることが好ましく、叩解度(JIS P8121)は250〜550mLにされていることが好ましい。
叩解度が前記下限値以上であれば、印刷した際のコックリング(吸収ジワ)を軽減でき、上限値以下であれば、紙基材の平滑性が向上する。
紙基材に含まれてもよい填料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライト、シリカ、酸化チタン、タルクが好ましい。なかでも、インクジェットプリンタから噴出されたインク中の溶媒を吸収する能力に優れることから、多孔質である軽質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライト、シリカがより好ましい。さらに、白色度が高い紙基材が容易に得られる点では、軽質炭酸カルシウムが特に好ましい。
紙基材中の填料の含有率(灰分)は、1〜20質量%が好ましい。この範囲であれば、平滑度、透気度、紙力及び剛性のバランスが優れる。
紙基材に含まれてもよい助剤としては、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤等が挙げられる。
サイズ剤としては、例えば、強化ロジン、アルケニル無水コハク酸等の公知のサイズ剤を用いることができる。定着剤としては、例えば、硫酸アルミニウムを用いることができる。歩留まり向上剤としては、例えば、澱粉を用いることができる。
また、紙基材に含まれてもよい助剤としては、紙力増強剤、カチオン化剤、染料、蛍光増白剤等を用いることもできる。
紙基材には、サイズ度のコントロール、紙力の増強、平滑化等を目的として、サイズプレス処理が施されていてよい。サイズプレス処理に用いるサイズプレスには、それぞれの目的に応じて、澱粉類、ポリビニルアルコール類、サイズ剤、各種顔料等が使用される。
サイズプレス処理された紙基材のステキヒトサイズ度(JIS P8122)は、1〜300秒が好ましく、4〜200秒がより好ましい。ステキヒトサイズ度が前記下限値以上であれば、塗工時の皺発生を抑制でき、前記上限値以下であれば、インク吸収性が向上する。
紙基材の坪量は、特に限定されないが、40〜400g/mが好ましい。
紙基材の王研式透気度(日本TAPPI No.5)は、10〜1000秒が好ましく、10〜800秒がより好ましく、20〜650秒がさらに好ましい。王研式透気度が前記下限値以上であれば、インク受容層用塗液が紙基材の内部に入り込むことを抑制でき、前記上限値以下であれば、インク吸収性が向上する。
紙基材の厚さは、特に限定されないが、用途に応じて40〜500μmの範囲で適宜選択される。
[インク受容層用塗液]
インク受容層用塗液は、水と、顔料と、バインダーと、有機酸と、インク定着剤とを含む塗液である。
(顔料)
顔料としては、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、カオリン(含クレー)、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等が挙げられる。
顔料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
顔料としては、インクの乾燥性や吸収性が向上することから、多孔性無機顔料を含むことが好ましい。多孔性無機顔料としては、多孔性合成非晶質シリカ、多孔質炭酸マグネシウム、多孔質アルミナがより好ましく、インク吸収性の点から、多孔性合成非晶質シリカが特に好ましい。多孔性合成非晶質シリカとしては、より固形分濃度の高いインク受容層用塗液を得やすいことから、湿式法シリカが好ましく、沈降法シリカ、ゲル法シリカがより好ましい。湿式法シリカは、一般にケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の中和反応により形成されるシリカであり、沈降法シリカとゲル法シリカは湿式法シリカに含まれる。
沈降法シリカは、アルカリ性のpH領域で、ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を段階的に加え、沈降したシリカをろ過することで製造され、一次粒子が大きく細孔容積や吸油量の高いシリカである。
一方、ゲル法シリカは、酸性のpH領域で、ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を混合して得られる。一次粒子の成長を抑えた状態で凝集を起こさせるので、強度の強いシリカである。
湿式法シリカの比表面積は、200〜600g/mが好ましく、200〜500g/mがより好ましく、200〜350g/mがさらに好ましい。湿式法シリカの比表面積が前記下限値以上であれば、インクの発色性がより良好になる。湿式法シリカの比表面積が前記上限値以下であれば、インク受容層にひび割れが生じ難い。
顔料としては、より固形分濃度の高いインク受容層用塗液を得やすいことから、湿式法シリカと炭酸カルシウムを併用することが好ましく、湿式法シリカと炭酸カルシウムからなることがより好ましい。
また、顔料としては、2次粒子の平均粒子径が100nm〜20μmの顔料が好ましく、1〜15μmがより好ましい。顔料の2次粒子の平均粒子径が前記下限値以上であれば、インク受容層のインク吸収性が向上し、前記上限値以下であれば、インク受容層の光沢が高まる。なお、本明細書における平均粒子径とは、動的光散乱法を利用した粒子径測定装置を使用して測定した粒子径分布のメジアン径のことである。
インク受容層用塗液中の顔料の含有量は、40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましく、60〜75質量%がさらに好ましい。顔料の含有量が下限値以上であれば、インク吸収性がより良好になる。顔料の含有量が上限値以下であれば、充分な塗膜強度を有するインク受容層が得られやすい。
(バインダー)
バインダーは、ポリビニルアルコールを含むことが好ましい。ポリビニルアルコールは、インク受容層の表面強度を容易に高くでき、また染料の染着性に優れるという利点を有する。
ポリビニルアルコールとしては、無変性のポリビニルアルコール;カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
ポリビニルアルコールは、そのケン化度によって性状が異なるため、目的に応じてそのケン化度を選択することが好ましい。インク受容層用塗液を調製する際の発泡を抑制しやすく、作業性が良好になるうえ、インク受容層の強度が向上する点では、ポリビニルアルコールのケン化度は、95%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。インク受容層の可撓性が向上する点では、ポリビニルアルコールのケン化度は、75〜90%が好ましい。ポリビニルアルコールは、ケン化度の異なるものを併用してもよい。
ポリビニルアルコールの重合度は、500以上が好ましく、1000〜4000がより好ましい。ポリビニルアルコールの重合度が前記下限値以上であれば、インク受容層の強度が向上するうえ、ひび割れを抑制しやすく、またインクジェット記録体の断裁時の紙粉発生を低減できる。ポリビニルアルコールの重合度が前記上限値以下であれば、充分なインク吸収性を得やすく、またインク受容層用塗液の粘度がより低くなりハンドリング性が高くなる。
バインダーとしては、エマルジョン状又はスラリー状の水分散性接着剤、水溶性接着剤等も使用できる。
水分散性接着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエン系樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン系樹脂等の共役ジエン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等のビニル系樹脂等が挙げられる。なかでも、インク受容層のインク吸収性の点から、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。これら水分散性接着剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性接着剤としては、例えば、カゼイン、大豆蛋白、ゼラチン、合成蛋白等の蛋白質類;澱粉、酸化澱粉等の各種澱粉類;キチン、キトサン等の各種多糖類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;水性ポリウレタン樹脂;水性ポリエステル樹脂等が挙げられる。これら水溶性接着剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、水分散性接着剤と水溶性接着剤は、各々を単独で使用してもよく、併用してもよい。
バインダーとしては、より固形分濃度の高いインク受容層用塗液を得やすいことから、シリル変性ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル系樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、シリル変性ポリビニルアルコールは、アセタール化されたものを含まない。すなわち、本発明におけるシリル変性ポリビニルアルコールは、アセタール化されていないシリル変性ポリビニルアルコールである。また、ポリビニルアセタールは、シリル化されていないポリビニルアセタールが好ましい。
インク受容層用塗液中のバインダーの含有量は、顔料100質量部に対して、10〜60質量部が好ましく、20〜50質量部がより好ましく、25〜45質量部がさらに好ましい。バインダーの含有量が前記下限値以上であれば、インク受容層にひび割れが生じ難い。バインダーの含有量が前記上限値以下であれば、インク吸収性がより良好になる。
バインダー中のポリビニルアルコールの割合は、50〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましい。バインダー中のポリビニルアルコールの割合が前記下限値以上であれば、インク受容層の塗膜強度がより高くなる。バインダー中のポリビニルアルコールの割合が前記上限値以下であれば、固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られやすい。
(有機酸)
本発明の製造方法に用いるインク受容層用塗液は、有機酸を含有する。有機酸を含有することにより、塗液調製時の塗液の増粘を抑制でき、顔料を充分に分散させることができる。そのため、固形分濃度の高いインク受容層用塗液が調製でき、その結果、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を備えたインクジェット記録体を高い生産性で製造できる。
有機酸とは、酸性基(カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基)を有する有機化合物のことである。有機酸の中でも、反応性が穏やかなため、インク受容層用塗液中に共存する他の物質への影響が少ないことから、カルボキシ基を有する有機化合物が好ましい。
カルボキシ基を有する有機化合物としては、蟻酸、酢酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。なかでも、より高濃度のインク受容層用塗液を得やすいことから、リンゴ酸、乳酸及び酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これら有機酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
インク受容層用塗液中の有機酸の含有量は、顔料100質量部に対して、0.1〜1質量部であり、0.2〜0.8質量部が好ましく、0.3〜0.6質量部がより好ましい。有機酸の含有量が前記下限値以上であれば、固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られる。有機酸の含有量が前記上限値以下であれば、インク吸収性及び塗膜強度が優れたインク受容層を形成できる。
(インク定着剤)
インク定着剤としては、例えば、インクジェット記録用のインク中の染料色素を定着する作用を有する公知のインク定着剤が挙げられる。具体的には、カチオン性樹脂や低分子カチオン性化合物(例えばカチオン性界面活性剤等。)等のカチオン性化合物が挙げられる。
インク定着剤を含有することで、印字画像の耐水性が向上する。インク定着剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
インク定着剤としては、記録濃度向上の点から、カチオン性樹脂が好ましい。
カチオン性樹脂としては、例えば、(a)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、(b)第2級もしくは第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、又はそれらのアクリルアミドの共重合体、(c)ポリビニルアミン及びポリビニルアミジン類、(d)ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、(e)ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、(f)エピクロルヒドリン−ジメチルアミン共重合体、(g)ジアリルジメチルアンモニウム−SO重縮合体、(h)ジアリルアミン塩−SO重縮合体、(i)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、(j)アリルアミン塩の共重合体、(k)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、(l)アクリルアミド−ジアリルアミン共重合体、(m)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等が挙げられる。
インク受容層用塗液中のインク定着剤の含有量は、顔料100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましく、5〜15質量部がさらに好ましい。インク定着剤の含有量が前記下限値以上であれば、記録濃度が向上し、また印字画像の耐水性が向上する。インク定着剤の含有量が前記上限値以下であれば、インク受容層の塗膜強度が向上する。
(他の成分)
本発明の製造方法に用いるインク受容層用塗液は、水、顔料、バインダー、有機酸及びインク定着剤に加えて、それら以外の他の成分を含有してもよい。
他の成分としては、顔料の分散性が向上し、固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られやすくなることから、硫酸アルミニウム、硫酸水素ナトリウム、カリミョウバン等を配合することが好ましい。なかでも、固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られやすいことから、硫酸アルミニウムが好ましい。
インク受容層用塗液に硫酸アルミニウムを含有させる場合、インク受容層用塗液中の硫酸アルミニウムの含有量は、顔料100質量部に対して、0.1〜1質量部が好ましく、0.3〜0.9質量部がより好ましく、0.5〜0.7質量部がさらに好ましい。硫酸アルミニウムの含有量が前記下限値以上であれば、固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られやすくなる。硫酸アルミニウムの含有量が前記上限値以下であれば、含有する炭酸カルシウムから炭酸ガスが発生して泡が発生することを抑制しやすい。
また、他の成分としては、一般のインク受容層用塗液に含まれる増粘剤、分散剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤を用いることもできる。また、他の成分として、蛍光染料、着色剤を用いてもよい。
インク受容層用塗液の固形分濃度は、28〜35質量%が好ましく、29〜34質量%がより好ましく、30〜33質量%がさらに好ましい。インク受容層用塗液の固形分濃度が前記下限値以上であれば、インク受容層用塗液の乾燥時間をより短縮でき、インクジェット記録体をより高い生産性で製造できる。また、インク受容層用塗液の固形分濃度が前記上限値以下であれば、より良好な塗工適性のインク受容層用塗液が得られる。
インク受容層用塗液の粘度は、100〜2000mPa・sが好ましく、150〜1500mPa・sがより好ましく、200〜1000mPa・sがさらに好ましい。インク受容層用塗液の粘度が前記下限値以上であれば、塗工量を調整しやすい。インク受容層用塗液の粘度が前記上限値以下であれば、塗液のレベリングが良好である。
なお、インク受容層用塗液の粘度とは、B型粘度計(カップ形状:直径60mm×高さ80mm、No.3ローター使用、回転数60rpm)により20℃で測定した値を意味する。
(インク受容層用塗液の調製方法)
本発明の製造方法に用いるインク受容層用塗液は、有機酸及びインク定着剤を顔料よりも前に水に添加して調製する。これにより、塗液調製時に発泡して塗液中にブツが生じることを抑制することができ、優れた塗工適性を有する固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られる。そのため、このインク受容層用塗液を用いることで、優れたインク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体を高い生産性で製造することができる。
有機酸を2種以上使用する場合、全ての有機酸を顔料よりも前に添加する。同様に、インク定着剤が2種以上の場合も、全てのインク定着剤を顔料よりも前に添加する。また、有機酸とインク定着剤の添加は、顔料よりも前であればいずれが先であってもよく、同時であってもよい。
また、分散剤を用いる場合、優れた塗工適性を有する固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られやすいことから、分散剤は顔料よりも前に添加することが好ましい。分散剤と、有機酸及びインク定着剤との添加順序は特に限定されない。
また、消泡剤を用いる場合、消泡剤は顔料よりも前に添加することが好ましい。
顔料が2種以上の場合、それら顔料の添加順序は特に限定されない。例えば、顔料として湿式法シリカと炭酸カルシウムを併用する場合、湿式法シリカを添加した後に炭酸カルシウムを添加してもよく、炭酸カルシウムを添加した後に湿式法シリカを添加してもよい。
バインダーは、有機酸、インク定着剤、分散剤を添加した後に添加することが好ましい。顔料とバインダーの添加順序は特に限定されず、顔料を添加した後にバインダーを添加してもよく、バインダーを添加した後に顔料を添加してもよい。顔料として湿式法シリカ及び炭酸カルシウムを使用し、バインダーとしてポリビニルアルコールを使用する場合、塗料中に凝集物が発生することを抑制しやすい点から、炭酸カルシウム、ポリビニルアルコール、湿式法シリカの順が好ましい。
また、バインダーが2種以上の場合、それらバインダーの添加順序は特に限定されない。
例えば、水、有機酸、インク定着剤、顔料、バインダー及び分散剤を含むインク受容層用塗液を調製する場合、各成分の水への添加順序は、下記(a)〜(f)の順序、又は(a)〜(f)においてバインダーと顔料の順序を入れ替えた順序が好ましい。
(a)有機酸、分散剤、インク定着剤、顔料、バインダーの順序。
(b)有機酸、インク定着剤、分散剤、顔料、バインダーの順序。
(c)分散剤、有機酸、インク定着剤、顔料、バインダーの順序。
(d)インク定着剤、有機酸、分散剤、顔料、バインダーの順序。
(e)分散剤、インク定着剤、有機酸、顔料、バインダーの順序。
(f)インク定着剤、分散剤、有機酸、顔料、バインダーの順序。
以上説明した本発明のインクジェット記録体の製造方法によれば、優れた塗工適性を有する固形分濃度の高いインク受容層用塗液を調製でき、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体を高い生産性で製造することができる。
なお、本発明のインクジェット記録体の製造方法は、前記した方法には限定されない。例えば、インク受容層上にさらに別の層を形成する方法であってもよい。また、支持体のインク受容層を設けていない面に別の層を有していてもよい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、実施例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
[製造例1:古紙パルプの製造]
パルパーにてケント古紙(灰分33.2%)を離解し、除塵装置(クリーナー及びスクリーン)を通過させた後、傾斜エキストラクター及びスクリュープレス脱水機により固形分濃度が30%程度となるまで濃縮した。その後、フォスフォスルフォンアミジン(FAS)を添加して漂白しながら、ディスパーザーを用いて分散処理を行い、さらに水で希釈しながらパルプ洗浄機(DNTウォッシャー:相川鉄工製)に通した後、フリーネスを300mLに調整し、古紙パルプAを得た。この古紙パルプAの灰分は10.5%、平均繊維長0.1mm以下の微細繊維の含有量は13%であった。
なお、灰分はJIS P8251に従い、525℃にて焼成して下式により求めた値である。
Z(%)=(X/Y)×100
ただし、Zは古紙パルプAの灰分、Xは焼成後の残留物の質量、Yは焼成前の古紙パルプAの固形分の質量である。
また、平均繊維長は、JIS P8220のパルプ離解方法により離解した測定試料の繊維長を、JAPAN TAPPI No.52で規定された光学式自動計測法でのパルプ繊維長試験方法により測定し、数基準で求めた繊維長の平均である。
[製造例2:原紙の製造]
以下に示す紙料及び条件にて、多層抄き合わせ長網抄紙機により、3層構成の紙厚220μmの原紙を作成した。なお、表層−中層−裏層の各層間にはそれぞれ3.0%の酸化澱粉水溶液を固形分で0.3g/m塗布して抄き合わせした。
また、酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)と表面サイズ剤(商品名:ポリマロン1329K、荒川化学工業社製)を質量比9:1で混合した固形分13.5%のサイズ液を、ロードブレードコータによって、原紙の表面及び裏面にそれぞれ固形分が2g/mとなるように塗布した後、乾燥し、キャレンダで平滑化処理した。
(表層及び裏層)
坪量:50g/m
パルプ配合:フリーネスを520mLに調整した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)100%。
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を有姿濃度で対パルプ0.3%添加した。
紙力増強剤:ポリアクリルアミドを有姿濃度で対パルプ5.0%添加した。
歩留向上剤:高分子量ポリアクリルアミドを有姿濃度で対パルプ0.025%添加した。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を有姿濃度で対パルプ0.5%添加した。
(中層)
坪量:90g/m
パルプ配合:古紙パルプA 100%。
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を有姿濃度で対パルプ1.5%添加した。
歩留向上剤:高分子量ポリアクリルアミドを有姿濃度で対パルプ0.02%添加した。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を有姿濃度で対パルプ10.0%添加した。
[実施例1]
(インク受容層用塗液の調製)
分散媒である水140部に、リンゴ酸(磐田化学社製)0.4部と、硫酸アルミニウム(キシダ化学社製)0.6部と、分散剤である非イオン性界面活性剤(商品名:エマルゲンA−60、花王社製)0.6部とを添加して撹拌した。その後、インク定着剤であるカチオン性樹脂(商品名:ユニセンスCP103、センカ社製)10部と、消泡剤(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製)微量とを順次添加して撹拌した。次いで、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン2200、備北粉化社製)30部を加えて撹拌した。次いで、沈降法シリカ(商品名:ファインシール(登録商標)X−30、トクヤマ社製、比表面積290g/m)35部と、ゲル法シリカ(商品名:サイロイド74X5500、グレースデビソン社製、比表面積250g/m)35部とを順に少量ずつ撹拌しながら加えた。よく撹拌した後、シリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R−1130、クラレ社製、ケン化度98〜99%、重合度1700)10部と、エチレン−酢酸ビニル系樹脂(商品名:ポリゾールAM3150、昭和電工社製)20部と、ポリビニルアセタール樹脂(商品名:エスレックK KW10、積水化学工業社製)7.5部とを添加して撹拌し、少量の水を加えて固形分濃度33%のインク受容層用塗液1を得た。
(インクジェット記録体の製造)
製造例2で得られた原紙の表面に、インク受容層用塗液1をロッドブレードコータで塗工し、乾燥して固形分9g/mのインク受容層を形成し、インクジェット記録体を得た。
[実施例2〜4]
有機酸の種類及び添加量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度33%のインク受容層用塗液2〜4を得た。また、インク受容層用塗液2〜4を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[実施例5]
リンゴ酸を添加する順序を、カチオン性樹脂と消泡剤を添加した後で、かつ重質炭酸カルシウムを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度33%のインク受容層用塗液5を得た。また、インク受容層用塗液5を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[実施例6]
シリル変性ポリビニルアルコールを添加する順序を、重質炭酸カルシウムを添加した後で、かつ沈降法シリカ及びゲル法シリカを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度33%のインク受容層用塗液6を得た。また、インク受容層用塗液6を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[実施例7]
リンゴ酸を添加する順序を、カチオン性樹脂と消泡剤を添加した後で、かつ重質炭酸カルシウムを添加する前に変更し、またシリル変性ポリビニルアルコールを添加する順序を、重質炭酸カルシウムを添加した後で、かつ沈降法シリカ及びゲル法シリカを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度33%のインク受容層用塗液7を得た。また、インク受容層用塗液7を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[実施例8]
カチオン性樹脂と消泡剤を添加した後、沈降法シリカ、ゲル法シリカ、及び重質炭酸カルシウムをこの順に少量ずつ撹拌しながら添加した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度33%のインク受容層用塗液8を得た。また、インク受容層用塗液8を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[実施例9]
バインダーの添加量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度29%のインク受容層用塗液9を得た。また、インク受容層用塗液9を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[実施例10]
バインダーの添加量を表1に示すとおりに変更し、リンゴ酸を添加する順序を、カチオン性樹脂と消泡剤を添加した後で、かつ重質炭酸カルシウムを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度33%のインク受容層用塗液10を得た。また、インク受容層用塗液10を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[比較例1]
リンゴ酸を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液11を得た。なお、この例では、各成分を添加していく途中で塗料の増粘が激しくなり、沈降法シリカ及びゲル法シリカを充分に分散できなかった。そのため、水を増量してインク受容層用塗液11の固形分濃度を26%に調整した。また、インク受容層用塗液11を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[比較例2〜4]
有機酸の添加量、又は有機酸の代わりに使用する無機酸の種類を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度33%のインク受容層用塗液12〜14を得た。また、インク受容層用塗液12〜14を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[比較例5]
リンゴ酸を添加する順序を、重質炭酸カルシウムを添加した後で、かつ沈降法シリカ及びゲル法シリカを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度33%のインク受容層用塗液15を得た。この例では、リンゴ酸の添加時に激しく発泡し、インク受容層用塗液15にブツが生じていた。そのため、インクジェット記録体の製造は行わなかった。
[比較例6]
リンゴ酸とシリル変性ポリビニルアルコールを添加する順序を、重質炭酸カルシウムを添加した後で、かつ沈降法シリカ及びゲル法シリカを添加する前とし、さらにリンゴ酸を添加した後にシリル変性ポリビニルアルコールを添加するように変更した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度33%のインク受容層用塗液16を得た。この例では、リンゴ酸の添加時に激しく発泡し、インク受容層用塗液16にブツが生じていた。そのため、インクジェット記録体の製造は行わなかった。
[比較例7]
バインダーの添加量を表1に示すとおりに変更し、リンゴ酸を添加する順序を、重質炭酸カルシウムを添加した後で、かつ沈降法シリカ及びゲル法シリカを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にして固形分濃度29%のインク受容層用塗液17を得た。この例では、リンゴ酸の添加時に激しく発泡し、インク受容層用塗液17にブツが生じていた。そのため、インクジェット記録体の製造は行わなかった。
Figure 2013151085
ただし、表1における略号は以下の意味を示す。
シリル変性PVA:シリル変性ポリビニルアルコール。
EVA系樹脂:エチレン−酢酸ビニル系樹脂。
A−60:商品名「エマルゲンA−60」、花王社製。
CP103:商品名「ユニセンスCP103」、センカ社製。
2200:商品名「ソフトン2200」、備北粉化社製。
1407K:商品名「ノプコ1407K」、サンノプコ社製。
X−30:商品名「ファインシール(登録商標)X−30」、トクヤマ社製。
74X5500:商品名「サイロイド74X5500」、グレースデビソン社製。
R−1130:商品名「R−1130」、クラレ社製。
AM3150:商品名「ポリゾールAM3150」、昭和電工社製。
KW10:商品名「エスレックK KW10」、積水化学工業社製。
[粘度]
各例で得られたインク受容層用塗液の粘度(単位:mPa・s)は、B型粘度計(カップ形状:直径60mm×高さ80mm、No.3ローター使用、回転数60rpm)により20℃で測定した。
[塗工適性]
各例のインク受容層用塗液の塗工適性を以下の基準で評価した。
「1」:安定して塗工可能である。
「2」:チキソ性が悪く、塗工条件が制限される。
「3」:塗液に発泡が見られ、塗工には脱泡処理等が必要である。
「4」:ブツや発泡が生じており、塗工不能である。
[記録濃度]
インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製、商品名:EP−703A、印字モード:郵便ハガキ(インクジェット))を用い、得られたインクジェット記録体のインク受容層に黒色インクでベタ印字し、記録濃度をマクベス反射濃度計(モデル:Gretag Macbeth RD−19、マクベス社製)で測定した。
[インク吸収性]
インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製、商品名:EP−703A、印字モード:郵便ハガキ(インクジェット))を用い、得られたインクジェット記録体のインク受容層に緑色インクをベタ印字し、ベタ印字画像中に斑があるかどうかを目視で観察して以下に示す基準で評価した。印字斑は、先に打ち込まれたインクが、インクジェット記録体のインク受容層に完全に吸収されないうちに次のインクが飛来して表面で重なった場合に生ずる現象であり、インク吸収速度が遅くなるほど顕著に表れる。
「◎」:印字斑が全く見られない。
「○」:印字斑が多少あるが、実用上問題がない。
「△」:印字斑が多く見られ、実用性が低い。
「×」:印字斑がひどく、実用性が低い。
[塗膜強度]
摩擦試験機(スガ試験機社製)に、市販の黒画用紙(日清紡社製)と荷重200gの重りを設置し、得られたインクジェット記録体のインク受容層の表面を20往復擦り、表面の傷の程度を目視により確認して以下の基準で評価した。
「◎」:表面に傷が全く見られず、良好である。
「○」:表面に傷は若干見られるが、実用上は問題ない。
「△」:表面に傷が多く見られ、実用上問題がある。
「×」:表面に傷が非常に多く見られ、実用上問題がある。
各例の評価結果を表2に示す。
Figure 2013151085
表2に示すように、実施例1〜10では、有機酸及びインク定着剤を顔料よりも前に水に添加することで、優れた塗工適性を有する固形分濃度の高いインク受容層用塗液1〜10を調製することができ、該インク受容層用塗液1〜10によって優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を形成できた。
一方、有機酸を用いなかった比較例1のインク受容層用塗液11は、固形分濃度を高くしようとすると塗液が増粘し、固形分濃度を充分に高くすることができなかった。
また、有機酸の代わりに無機酸を使用した比較例2〜4のインク受容層用塗液12〜14は、充分な塗工適性を有しておらず、形成されたインク受容層の記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度も低下した。
また、重質炭酸カルシウムを添加した後にリンゴ酸を添加した比較例5〜7のインク受容層用塗液15〜17は、塗液が発泡してブツが生じ、塗工不可能であった。
本発明のインクジェット記録体の製造方法は、固形分濃度が高く、塗工適性の良好なインク受容層用塗液を用いるため、従来の製造設備における生産性の向上に貢献する。さらに、これまで生産性に適さないとされていた乾燥能力の不充分な設備、例えば、抄紙機内に付属する塗工手段(オンマシンコーター)によってもインクジェット記録体の製造を可能とすることができる。さらに、新たに製造設備を導入する場合においても、乾燥能力を抑えることができるので、設備投資を軽減することができる。

Claims (4)

  1. 支持体上にインク受容層用塗液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成するインクジェット記録体の製造方法であって、
    前記インク受容層用塗液が、水と、顔料と、バインダーと、前記顔料100質量部に対して0.1〜1質量部の有機酸と、インク定着剤とを含み、かつ前記有機酸及び前記インク定着剤が前記顔料よりも前に水に添加されて調製された塗液であることを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
  2. 前記顔料が湿式法シリカ及び炭酸カルシウムを含む、請求項1に記載のインクジェット記録体の製造方法。
  3. 前記インク受容層用塗液が、前記顔料よりも前に、該顔料100質量部に対して0.1〜1質量部の硫酸アルミニウムが添加された塗液である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録体の製造方法。
  4. 前記有機酸が、リンゴ酸、乳酸及び酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録体の製造方法。
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