JP2006001277A - 被記録媒体、およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 インク吸収性に優れ、高品質な画像記録が可能で、かつ長期保存における大気中の酸性ガスや光による画像の変退色、および高温高湿下での画像の滲みが効果的に防止された被記録媒体を提供すること。
【解決手段】 支持体の少なくとも一方の面にインク受容層を設けてなる被記録媒体において、該インク受容層に、少なくとも、2つ以上の活性水素基を有する含硫黄有機化合物と2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる高分子化合物、およびヒドロキシ酸を含有することを特徴とする被記録媒体、およびその製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明はインクによる記録に好適な被記録媒体に関し、特にインクジェット記録方式を利用したプリンターやプロッターに適用した際に、インク吸収性に優れ、高品質な画像記録が可能で、かつ画像の長期保存における画像の変退色および高温高湿下での画像の滲みが抑制された被記録媒体、およびその製造方法に関する。
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により紙などの被記録媒体に付着させると同時に、インクの溶媒成分が被記録媒体にしみ込むかまたは蒸発することで、色材成分が被記録媒体上に沈着し、画像や文字など(以下、単に「画像」という)の記録を行う記録方式である。また、インクジェット記録方式は、高速印字性、低騒音性および記録パターンの融通性に優れ、さらに多色化を容易に行うことができ、現像および画像定着が不要であるといった特徴がある。
特に、多色インクジェット方式で形成された画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による画像と比較しても遜色のない品質を得ることが可能で、作成部数が少ない場合には通常の印刷技術や写真技術より印刷コストが安価に済むという利点もあることから、近年、各種情報機器の画像記録装置として急速に普及している。例えば、デザイン業界におけるイメージデザインのアウトプット、写真画質が要求される印刷分野におけるカラー版下の作製、頻繁に取り替えられる看板や商品の見本など、フルカラー画像記録が必要な分野へと幅広く応用されつつある。また、最近では、パーソナルコンピューターやデジタルスチルカメラが広く普及したことから、一般家庭においてもインクジェットプリンターを用いて写真画像を出力する機会が多くなっている。
しかしながら、インクジェットプリンターで記録された画像は製版方式による多色印刷やカラー写真の画像と比較して、大気中の酸性ガスおよび光による退色や変色が著しく、画像の長期保存には適していないのが現状である。従って画像の退色や変色を防止することへの要求は強く、これまでにその性能を改善するための提案が数多くなされてきた。
例えば、耐ガス性の向上を目的として、特許文献1ではチオエーテル系化合物、特許文献2ではヒドラジド系化合物、特許文献3および特許文献4には、チオ尿素誘導体、チオセミカルバジド誘導体、チオカルボヒドラジド誘導体などを含有させた被記録媒体が開示されている。また、特許文献5では、チオ尿素誘導体、チオセミカルバジド誘導体およびチオカルボヒドラジド誘導体からの1種類と、ヨウ素、ヨウ化物、ジチオカルバミン酸、チオシアン酸塩およびチオシアン酸エステルからの1種類とをそれぞれ含有させた被記録媒体が開示されている。
耐光性を向上させる方法としては、特許文献6、特許文献7および特許文献8では、フェノール系酸化防止剤、ベンゾフェノン系或いはベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を含有させた被記録媒体が開示されている。
また、特許文献9にはヒンダードアミン系化合物を含有したものが、特許文献10ではヒドラジド系化合物を含有した被記録媒体がそれぞれ提案されている。
さらに特許文献11および特許文献12では、インク受容層にアスコルビン酸、エリソルビン酸、またはエリソルビン酸ナトリウムを、特許文献13、特許文献14、特許文献15ではフラボノイドをインク受容層に含有させることで耐ガス性や耐光性を向上させた被記録媒体が開示されている。
しかしながら、これら従来の手法を用いても必ずしも満足のいく効果が得られる訳ではない。例えば、耐ガス性や耐光性に有効な化合物でも、非水溶性のものは水系の塗工液に添加できなかったり、水溶性のものであっても耐水性や高温高湿下での画像滲みを悪化させるという弊害があることから、被記録媒体の性能を向上させるだけの量を添加することは困難であった。
特開平1−115677号公報 特開昭61−154989号公報 特公平4−34953号公報 特開平7−314883号公報 特開平8−25796号公報 特開昭57−74192号公報 特開昭57−87989号公報 特開昭60−72785号公報 特開昭61−146591号公報 特開昭61−154989号公報 特開平7−195824号公報 特開平8−150773号公報 特開2001−71627公報 特開2001−139850公報 特開2001−301315公報
本発明は、上記の実態に鑑みてなされたものであり、インクジェット記録方式を利用したプリンターやプロッターで記録する際にインク吸収性に優れ、高品質な画像記録が可能で、かつ画像の長期保存における大気中の酸性ガスや光による画像の変退色、および高温高湿下での画像の滲みが効果的に防止された被記録媒体を提供することを目的としている。
本発明者らは、大気中の酸性ガスと光による画像の変退色および高温高湿下での画像の滲みを効果的に防止し、画像の長期保存に好適な被記録媒体を得るために種々検討を重ねた結果、特定の高分子化合物、および特定の有機酸をインク受容層中に含有させることで前述した課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、支持体の少なくとも一方の面にインク受容層を設けてなる被記録媒体において、該インク受容層が、少なくとも下記化合物Aと化合物Bとを反応させて得られる高分子化合物(以下「第一の高分子化合物」という)、およびヒドロキシ酸を含有することを特徴とする被記録媒体を提供する。
A:2つ以上の活性水素基を有する含硫黄有機化合物
B:イソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物
上記本発明の被記録媒体においては、前記高分子化合物が、化合物AおよびBに加えてさらに2つ以上の活性水素基を有するアミン化合物Cを反応させ、得られた高分子化合物のアミノ基の少なくとも一部が、酸または4級化剤によりカチオン化されている(以下「第二の高分子化合物」という)こと;前記化合物Aが、分子内にスルフィド基を少なくとも一つ含有すること;前記化合物Cが、下記一般式1で表される3級アミンであることが好ましい。
Figure 2006001277
(式中、R1、R2、R3はいずれか一つが炭素数1〜6のアルキル基、アルカノール基、またはアミノアルキル基であり、それ以外は同一若しくは異なっていてもよく、アルカノール基、アミノアルキル基、またはアルカンチオール基を表す。)
また、上記本発明の被記録媒体においては、前記ヒドロキシ酸が、モノカルボン酸であること;インク受容層が、さらに無機微粒子を含有すること;インク受容層が、さらにカチオン性ポリマーを含有すること;インク受容層が、無機微粒子、カチオン性ポリマーおよびヒドロキシ酸を同時に分散した微粒子分散液から形成されていること;およびカチオン性ポリマーが、下記一般式2および一般式3から選ばれる少なくとも1種のジアリルアミン系重合物であることが好ましい。
Figure 2006001277
(式中、R1、R2は水素原子またはアルキル基を表し、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。また、Aは−CH2−または−CH2−SO2−を、Bはアリルアミン塩ユニット、アクリルアミドユニットまたはメタクリルアミドユニットを表し、X-はハロゲンイオン、硫酸アニオン、スルホン酸アニオン、アルキルスルホン酸アニオン、酢酸アニオン、アルキルカルボン酸アニオンまたは燐酸アニオンを表す。mおよびnは重合度を示す整数である。)
また、本発明は、支持体の少なくとも一方の面に、塗工液を塗工してインク受容層を設ける被記録媒体の製造方法において、上記塗工液が、無機微粒子とカチオン性ポリマーとヒドロキシ酸をともに液媒体中に分散して微粒子分散液とする工程と、該微粒子分散液に、少なくとも前記第一又は第二の高分子化合物を添加する工程により調製された塗工液であることを特徴とする被記録媒体の製造方法を提供する。
上記本発明の製造方法においては、無機微粒子が、アルミナおよび/またはアルミナ水和物であること;カチオン性ポリマーが、前記一般式2および一般式3から選ばれる少なくとも1種のジアリルアミン系重合物であること;およびヒドロキシ酸が、モノカルボン酸であることが好ましい。
上記本発明の構成とすることで、大気中の酸性ガスや光による画像の変退色および高温高湿下での画像の滲みを効果的に防止した、画像の長期保存に好適な被記録媒体を製造することができる。また、本発明の構成により、有機酸を用いた場合に生じる刺激臭(または不快臭)が抑制され、インク吸収性に優れた、高品質な画像記録が可能な被記録媒体の製造方法が提供できる。
すなわち、第一および/または第二の高分子化合物、および特定の有機酸をインク受容層中に含有させることで、画像の変退色および高温高湿下での画像の滲みが抑制された被記録媒体を製造することができた。また、該被記録媒体の製造方法において、該インク受容層を形成する際に、無機微粒子、カチオン性ポリマーおよびヒドロキシ酸を含む微粒子分散液を用いたことで、上記耐候性に加え、刺激臭(または不快臭)が抑制され、インク吸収性に優れた高品質な画像記録が可能な被記録媒体を製造することができた。
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明において使用する支持体としては、例えば、適度のサイジングが施された紙、無サイズ紙、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、紙の片面或いは両面がポリオレフィンなどの樹脂で被覆された樹脂被覆紙(以下「レジンコート紙」と記す)などの紙類からなるもの:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレートおよびポリカーボネートなどの透明な熱可塑性樹脂フィルム:無機物の充填または微細な発泡により不透明化されたフィルムからなるシート状物質(合成紙など):さらにはガラスまたは金属などからなるシートなどが挙げられる。
上記支持体の中で上質紙などの紙を用いる場合、良好な発色性と解像度を得るために、ステキヒトサイズ度が15秒以上、さらには25秒以上のものを用いることが好ましい。
また、支持体上に形成されるインク受容層の光沢性を高め、銀塩写真と同等の画質を付与する場合には、非吸水性で平滑性の高いフィルムおよびレジンコート紙を用いるのが好ましく、少なくともインク受容層を形成する面が、JIS−B0601による10点平均粗さが0.5μm以下であり、かつJIS−Z−8741による60度鏡面光沢度が25〜75%である支持体がより好ましく使用できる。さらに、半光沢グレードの被記録媒体を得る場合には、インク受容層を形成する面がマット加工もしくはエンボス加工された、フィルムおよびレジンコート紙を用いるのが好ましい。
支持体の厚さには特に制限はないが、25μm〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは50μm〜300μmの範囲である。支持体の厚さが25μmより薄い場合は剛性が低く、手にした時の感触や質感或いは不透明性が不十分となるなどの不都合が生じる。逆に、500μmより厚い場合には、得られた被記録媒体が剛直となり、プリンターの給紙走行に支障を来すことがある。また、支持体の重さについても特に制限はなく、おおよそ25g/m2〜500g/m2の範囲であることが好ましい。なお、これら支持体とインク受容層との接着強度を向上させるため、支持体表面にコロナ放電処理や各種アンダーコート処理を施すことも可能である。
本発明においては、上記支持体上に、第一および/または第二の高分子化合物(酸化防止機能を有する)およびヒドロキシ酸を含有するインク受容層を形成することで、本発明の被記録媒体が得られる。
上記高分子化合物の原料成分である化合物Aとしては、特に限定はしないが、分子内にスルフィド基を少なくとも1つ以上有する化合物が好ましく、具体的には下記一般式4〜9により表される化合物を挙げることができる。また、以下の含硫黄有機化合物Aは単独、若しくは2種以上を同時に使用して本発明の高分子化合物を合成することが可能である。
Figure 2006001277
(式中nは1または2を表す。また、R1はメチレン基、エチレン基、またはプロピレン基を表す。)
Figure 2006001277
(式中nは1または2を表す。また、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、水酸基またはアルキル基を表し、R2およびR3は同一であっても異なっていてもよい。)
Figure 2006001277
(式中nは0または1を表す。)
Figure 2006001277
(式中nは1または2を表す。また、R4は硫黄原子または酸素原子を表し、R5は硫黄原子または−SO2−を表し、R4およびR5は同一ではなく、それぞれ異なる基で構成される。)
Figure 2006001277
(式中R6およびR7はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、R6およびR7は同一であっても異なっていてもよい。)
Figure 2006001277
(式中R8は水酸基またはアルキル基を表す。)
本発明で用いられる高分子化合物の原料成分である化合物Bとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジクロロ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらポリイソシアネート化合物を単独、若しくは2種以上同時に使用して、本発明の高分子化合物を合成することが可能である。
本発明の第一の高分子化合物は、上記化合物Aと化合物Bとの反応生成物である。化合物Aと化合物Bとは、活性水素基を例えばOHとした場合、両者をOH/NCOの当量比をほぼ1前後で反応させることが好ましい。OH/NCOの当量比が1から大きく外れると得られる高分子化合物の分子量が大きくならないので好ましくない。好ましいOH/NCOは0.95〜1.05の範囲である。さらに上記化合物Aと化合物Bとの反応に際しては、化合物Aおよび後述する化合物C以外の2つ以上の活性水素基を有する化合物(以下「化合物D」という)を併用してもよい。これらの化合物Dについては後述するが、この場合にも全反応物のOH/NCOの当量比は1前後で合成を行うことが好ましい。
また、得られる第一の高分子化合物においては、化合物Aから誘導されるユニットの高分子化合物中に占める割合は、10〜70質量%であることが好ましい。より好ましくは30〜70質量%である。化合物Aユニットの含有量が上記範囲未満であると、充分な酸化防止効果を有する高分子化合物が得られない。一方、化合物Aユニットの含有量が上記範囲を超える割合であると、得られる高分子化合物が高価になり、また、高分子化合物を用いてインク受容層を構成する際の塗工液に対する溶解性や分散性が劣る場合が生じる。このようにして得られた第一の高分子化合物の重量平均分子量は後述の理由と同様の理由で1,000〜150,000の範囲が好ましい。
本発明の第二の高分子化合物においては、さらに前記化合物Aと前記化合物Bとの反応に際して、2つ以上の活性水素基を有するアミン化合物Cを反応させ、得られる高分子化合物中に化合物Cユニットを組み込み、該ユニット中のアミノ基をカチオン化することが好ましい。化合物Cとしては、下記一般式1で表わされるような3級アミンが好ましい。
Figure 2006001277
(式中R1、R2、R3は前記と同意義である。)
上記一般式1で表わされる化合物Cの具体例としては、例えば、ジオール化合物としてN−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N−エチル−N,N−ジエタノールアミン、N−イソブチル−N,N−ジエタノールアミン、N−t−ブチル−N,N−ジエタノールアミン、N−t−ブチル−N,N−ジイソプロパノールアミンなどが挙げられ、トリオール化合物としてはトリエタノールアミンなどが挙げられる。また、ジアミン化合物としてはメチルイミノビスプロピルアミン、ブチルイミノビスプロピルアミンなどが挙げられ、トリアミン化合物としてはトリ(2−アミノエチル)アミンなどが挙げられる。これらアミン化合物は単独、または2種以上同時に使用して本発明で用いる第二の高分子化合物を合成することが可能である。
本発明の第二の高分子化合物は、上記の通り化合物Aと化合物Bと化合物Cとを反応させ、化合物Aユニットと化合物Bユニットと化合物Cユニット(該ユニット中の3級アミノ基はカチオン化されている)を分子中に含む高分子化合物として得られる。該高分子化合物の機能を十分に発現させるためには、該高分子化合物中の化合物Cの含有量がモル比で5.5〜18.5%であることが好ましい。化合物Cの含有量がモル比で5.5%より低いと、親水基の含有率が低下してしまい、該高分子化合物の水分散体を調製する際に不都合となったり、インク受容層を形成する際の水性塗工液中への配合が難しくなる場合がある。一方、化合物Cの含有量がモル比で18.5%より高いと、該高分子化合物を含有させた被記録媒体において、光沢度や印字濃度が低下するといった問題が生じる場合がある。
本発明の第二の高分子化合物は、化合物Cのモル比が上記の範囲であれば、化合物Cユニットは、該高分子中において3〜80質量%を占めることが可能である。この範囲を超えると前述したような水分散性の低下や、光沢度や印字濃度の低下といった問題を引き起こす場合がある。
本発明の第二の高分子化合物において、化合物Cの含有量が前述の範囲であれば、組み込まれた化合物Aユニットの質量は、該高分子化合物中において10〜65質量%を占めることが好ましい。より好ましくは30〜65質量%を占める割合である。化合物Aユニットの占める割合が10質量%未満では酸化防止剤としての効果が不十分となる場合がある。一方、化合物Aユニットの占める割合が65質量%を超えると相対的に親水性基の含有率が低下してしまい、高分子化合物の水分散体を調製する際に不都合となる場合がある。
また、化合物Bは、化合物Aと化合物Cとを連結させる機能を有し、その使用量は特に限定されないが、化合物Cの含有量が前述の範囲であれば、化合物Bユニットの質量は、得られる高分子化合物中において10〜80質量%を占めることが好ましい。より好ましくは30〜60質量%を占める割合である。化合物Bユニットの占める割合がこの範囲内であれば、化合物Aユニットと化合物Cユニットの機能を充分発揮するに足る量を結合することができる。
また、上記化合物A〜Cを用いる高分子化合物の製造方法は、上記化合物A〜Cを一度に反応させてランダム重合体とする、所謂ワンショット方法でもよいし、化合物A(または化合物C)と化合物Bとをイソシアネート基リッチの割合で反応させて、末端イソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、該プレポリマーと化合物C(または化合物A)とを反応させる、所謂プレポリマー法を用いてもよい。また、いずれの方法においても低分子量ポリオールや低分子量ジアミンなどの鎖伸長剤を併用してもよい。また、得られる高分子化合物の分子量は、化合物A〜Cの使用量の変更や、モノアルコールやモノアミンなどの反応停止剤を適当なタイミングで反応系に添加することによって調整することができる。
このようにして得られた高分子化合物の重量平均分子量は反応条件にもよるが、1,000〜150,000の範囲が好ましく、2,000〜50,000の範囲がさらに好ましい。酸化防止剤の重量平均分子量が1,000未満では光沢度や印字濃度が低下する場合があり、150,000を越えると反応時間が長くなり製造コストが増加するので好ましくない。
また、本発明の第一または第二の高分子化合物の製造に際しては、前記化合物Aおよび化合物C以外の、化合物Dを必要に応じて共重合させてもよい。このような化合物Dとしては、以下のようなポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、またはポリカーボネートポリオールを単独、若しくは2種以上同時に使用して、本発明に用いられる高分子化合物を合成することも可能である。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、分子量が300〜1,000であるポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン、アルキレンオキシド付加体などのグリコール成分と、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘンデカンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p、p′−ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物ないしエステル形成性誘導体などの酸成分とから、脱水縮合反応によって得られたポリエステル類をはじめとして、さらにはε−カプロラクトンなどの環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル類、またはそれらの共重合ポリエステル類などが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、しょ糖、ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、アコニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3−プロパントリチオールなどの活性水素を少なくとも2個有する化合物を、開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレンなどのモノマーの1種または2種以上を用いて、常法により付加重合したものが挙げられる。また、他のポリエーテルポリオールとして、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの1級アミノ基を少なくとも2個有する化合物を開始剤として用いて、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレンなどのモノマーの1種または2種以上を常法により付加重合したものを用いることもできる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどのグリコールとジフェニルカーボネートおよびホスゲンとの反応によって得られる化合物などが挙げられる。
本発明で用いられる前記高分子化合物の合成に際しては、イソシアネート重付加反応において、錫系触媒および/またはアミン系触媒を用いることが望ましい。かかる錫系触媒としては、ジブチルスズジラウレート、スタナスオクトエートなどが挙げられ、アミン系触媒としてはトリエチレンジアミン、トリエチルアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N−メチルモルホリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記のイソシアネート重付加反応は、組成によって無溶剤下で行うことも可能であるが、反応系の反応抑制やベース粘度コントロールなどの目的でイソシアネート重付加反応系に直接関与しない親水性有機溶剤を反応溶媒として用いることが一般的である。このような親水性有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンの如きケトン類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチルの如き有機酸エステル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンの如きアミン類などが挙げられる。また、使用した親水性有機溶剤は最終的に取り除かれるのが好ましい。
なお、本発明で用いられる高分子化合物が化合物Cユニットを含む場合、該ユニットの3級アミノ基の少なくとも一部を、高分子化合物とする前または高分子化合物とした後に、酸または4級化剤でカチオン化することで、前記高分子化合物を水中に分散または溶解することができる。
但し、ハロゲン化アルキルの如き4級化剤でカチオン化した場合、水中に後述するような好ましい粒子径で分散安定化または溶解させることが困難となる場合があることから、酸を用いてカチオン化する方が好ましい。また、多価酸を用いた場合、本発明の高分子化合物を水中に分散または溶解する際に増粘を起すことがあることから、リン酸または一価の酸が好ましい。リン酸としては、例えば、リン酸、亜リン酸が挙げられる。また、一価の酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、メタンスルホン酸などの有機酸、および塩酸、硝酸などの無機酸が挙げられる。また、グリコール酸や乳酸などのヒドロキシ酸でカチオン化した高分子化合物は、被記録媒体に適用した場合、他の酸でカチオン化した高分子化合物と比べて白紙部の黄変が抑制されるため、より好ましく用いることができる。
以上の如き方法で得られる本発明で用いる高分子化合物の中で特に好ましいものは、下記一般式(10)〜(15)で表される。
Figure 2006001277
(式中nは1または2を、R1はメチレン基、エチレン基、またはプロピレン基を、R9はアルキレンもしくは複脂環を1つ以上含む脂肪族炭化水素基を、R10は炭素数1〜4のアルキル基を、R11およびR12はそれぞれ独立で水素原子もしくはメチル基を、X-は酸陰イオンを表す。mは重量平均分子量が1,000〜150,000になる数である。)
Figure 2006001277
(式中nは1または2を、R2およびR3はそれぞれ独立で水素原子、水酸基またはアルキル基を、R2およびR3は同一であっても異なっていてもよい。尚、R912およびX-およびmは一般式(10)と同義である。)
Figure 2006001277
(式中nは0または1を表す。R912およびX-およびmは一般式(10)と同義である。)
Figure 2006001277
(式中nは1または2を、R4は硫黄原子または酸素原子を、R5は硫黄原子または−SO2−、R4およびR5は同一ではなく、それぞれ異なる基で構成される。尚、R912およびX-およびmは一般式(10)と同義である。)
Figure 2006001277
(式中R6およびR7はそれぞれ独立で水素原子またはアルキル基を表し、R6およびR7は同一であっても異なっていてもよい。尚、R912およびX-およびmは一般式(10)と同義である。)
Figure 2006001277
(式中R8は水酸基またはアルキル基を表す。尚、R912およびX-およびmは一般式(10)と同義である。)
なお、本発明の酸化防止剤を水性媒体に分散した場合、保存安定性の観点から該分散体の平均粒子径は5nm〜500nmの範囲であることが好ましい。また、本発明でいう平均粒子径は動的光散乱法によって測定され、「高分子の構造(2)散乱実験と形態観察 第1章 光散乱」(共立出版 高分子学会編)、あるいはJ.Chem.Phys.,70(B),15 Apl.,3965(1979)に記載のキュムラント法を用いた解析から求めることができる。動的光散乱法は異なる粒径を持つ微粒子が混在している場合、散乱光からの時間相関関数の減衰に分布を有する。この時間相関関数をキュムラント法を用いて解析することで、減衰速度の平均(<Γ>)と分散(μ)が求まる。減衰速度(Γ)は粒子の拡散係数と散乱ベクトルの関数で表されるため、ストークス―アインシュタイン式を用いて、流体力学的平均粒径を求めることができる。本発明で定義される平均粒子径は、例えばレーザー粒径解析装置 PARIII(大塚電子株式会社製)等を用いて容易に測定することができる。
本発明の被記録媒体は、そのインク受容層が上記本発明の第一および/または第二の高分子化合物(以下単に「高分子化合物」という場合がある)および後述のヒドロキシ酸を含むことを特徴としている。インク受容層の形成は、適当な支持体の表面に、上記高分子化合物、ヒドロキシ酸、適当なバインダー、適当な無機顔料、カチオン性ポリマーなどの他の添加剤を水系溶媒中に分散溶解させた塗工液を塗布および乾燥させる方法、或いは高分子化合物を含まない塗工液でインク受容層を形成し、その後に適当な方法、例えば、オーバーコートなどの方法で前記本発明の高分子化合物をインク受容層中に含浸させる方法などによって行われる。
特に好ましい方法は、上記塗工液として、無機微粒子とカチオン性ポリマーとヒドロキシ酸をともに液媒体中に分散して微粒子分散液とする工程と、該微粒子分散液に、少なくとも前記第一または第二の高分子化合物を添加する工程により調製された塗工液を使用する方法である。
本発明で用いる高分子化合物の含有量は、インク受容層に対して固形分換算で0.05質量%〜20質量%であることが好ましい。含有量がこの範囲であれば大気中のガスと光による画像の退色や変色および高温高湿下での画像滲みを効果的に防止することができる。インク受容層に対する含有量が0.05質量%未満では本発明の目的であるガスや光による画像の退色や変色を充分防止することができず、また、含有量が20質量%を超えるとインク吸収性の悪化、印字濃度の低下を引き起こす畏れがある。
本発明においては、インク受容層に上記酸化防止機能を有する高分子化合物と共にヒドロキシ酸を添加することで、さらに優れた耐ガス性および耐光性を示す被記録媒体が得られる。
本発明で使用するヒドロキシ酸は、1分子中にカルボキシル基(−COOH)とアルコール性水酸基(−OH)とを有する化合物で、オキシ酸ともよばれる。このような化合物としては、例えば、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−エチル−2−ヒドロキシ酪酸などのモノカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などの多価カルボン酸などが挙げられ、これらを単独もしくは複数種併用できる。
ヒドロキシ酸の使用量は、画像の耐ガス性および耐光性の向上を目的とした場合、インク受容層に対して0.01質量%〜10質量%であることが好ましい。使用量が0.01質量%に満たない場合、高分子化合物と併用した際の酸化防止能が十分に発揮されない。逆に、使用量が10質量%を超えた場合では、高温高湿下で画像の滲みが悪化したり、インク吸収性が低下しビーディング(インクを吸収できずに粒状の濃度ムラとなる現象)が発生するなどの問題を生じる。
本発明の被記録媒体は、インク受容層中にさらに無機微粒子を添加してもよいが、その際に使用する無機微粒子としては、インク吸収能が高く、発色性に優れ、高品位の画像が形成可能な微粒子であることが好ましい。このような無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ケイソウ土、アルミナ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、アルミナ水和物、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、リトポン、ゼオライトなどが挙げられ、これらを単独或いは複数種併用することができる。
上記無機微粒子の形態としては、高光沢かつ高透明性のインク受容層を得るために、平均粒径が50nm〜500nmの範囲が好ましく、より好ましくは100nm〜300nmの範囲である。無機微粒子の平均粒径が50nmより小さい場合、インク受容層のインク吸収性が著しく低下し、吐出量の多いプリンターで印字した際にインクの滲みやビーディングが発生する。一方、平均粒径が500nmより大きい場合は、インク受容層の透明性が低下するとともに、画像の印字濃度や光沢が低下する場合がある。なお、本発明でいう平均粒径は動的光散乱法によって測定され、「高分子の構造(2)散乱実験と形態観察 第1章 光散乱」(共立出版 高分子学会編)、或いはJ.Chem.Phys.,70(B),15 Apl.,3965(1979)に記載のキュムラント法を用いた解析から求めることができる。
また、上記無機微粒子のBET比表面積は50〜500m2/gの範囲が好ましく、より好ましくは50〜250m2/gの範囲である。BET比表面積が50〜250m2/gの範囲であれば、インク吸収性やビーディング、平滑性などに優れる。一方、BET比表面積が50m2/g未満の場合、インク受容層の透明性や、画像濃度が低下して、印字物が白くモヤのかかったような画像になりやすく、また、BET比表面積が500m2/gを超える場合、インク吸収性が低下したり、アルミナ水和物を安定に分散するために解膠剤として多量の酸が必要となるため好ましくない。
なお、本発明においては、前述した無機微粒子の中で、アルミナ、アルミナ水和物などのアルミナ微粒子が好ましく使用でき、さらに、形成するインク受容層の透明性や平滑性が優れ、より微細な空隙を形成できるという点で、ベーマイト構造または擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物がより好ましく使用できる。
本発明で用いられるアルミナ水和物は、下記一般式(16)により定義される。
Al23-n(OH)2n・mH2O 一般式(16)
式中、nは0、1、2または3の整数の内、いずれかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。mH2Oは多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数でない値をとることができる。また、この種のアルミナ水和物をか焼した場合、mは0の値に達することがあり得る。
一般にベーマイト構造を示すアルミナ水和物の結晶は、その(020)面が巨大平面を形成する層状化合物であり、X線回折図形に特有の回折ピークを示す。ベーマイト構造としては、完全ベーマイトの他に擬ベーマイトと称する、過剰な水を(020)面の層間に含んだ構造を取ることもできる。この擬ベーマイトのX線回折図形は完全なベーマイトよりも幅広な回折ピークを示す。完全ベーマイトと擬ベーマイトは明確に区別できるものではないので、以下特に断らない限り、両者を含めてベーマイト構造を示すアルミナ水和物という。
アルミナ水和物の製造方法としては、特に限定はされないが、例えば、バイヤー法、明バン熱分解法などのいずれの方法も採用することができる。特に好ましい方法は、長鎖のアルミニウムアルコキシドに対して酸を添加して加水分解する方法である。ここで、長鎖のアルミニウムアルコキシドとは、例えば、炭素数が5以上のアルコキシドであり、さらに炭素数12〜22のアルコキシドを用いると、後述のようなアルコール分の除去、およびアルミナ水和物の形状制御が容易になるため好ましい。上記アルミニウムアルコキシドの加水分解による方法は、アルミナヒドロゲルやカチオン性アルミナを製造する方法と比較して各種イオンなどの不純物が混入し難いという利点がある。さらに長鎖のアルミニウムアルコキシドは加水分解後の長鎖のアルコールが除去しやすいため、例えば、アルミニウムイソプロキシドなどの短鎖のアルコキシドを用いる場合と比較して、アルミナ水和物の脱アルコールを完全に行うことができるという利点もある。
上記方法によって得られたアルミナ水和物は、水熱合成の工程を経て、粒子を成長させる熟成工程の条件を調整することにより、アルミナ水和物の粒子形状を特定範囲に制御することができ、熟成時間を適当に設定すると、粒径が比較的均一なアルミナ水和物の一次粒子が成長する。ここで得られたゾルは、解膠剤として酸を添加することで、そのまま分散液として用いることもできるが、アルミナ水和物の水への分散性をより向上させるため、ゾルをスプレードライなどの方法により粉末化した後、酸を添加して分散液とすることが好ましい。
本発明においてインク受容層中に上記無機微粒子(アルミナ水和物)を添加する場合、水性溶媒中に無機微粒子が分散された微粒子分散液を予め調製しておくことが好ましい。無機微粒子は、一般に解膠剤として多量の酸を用いることで容易に解膠され、均一な分散液となり得る。しかしながら、無機酸は金属腐食性が強く、設備安全上好ましくない。また、有機酸は化学安全性や腐食性といった問題は比較的少ないものの無機酸に比べて沸点が高く、特に樹脂で被覆された紙またはフィルムなど耐熱性の低い基材を支持体として用いた場合には、高温で乾燥できないことからインク受容層中に酸が残留し、刺激臭(または不快臭)発生の原因となってしまう。さらに、インク受容層中に残留する酸濃度が増加するとインク受容層自体のpHが低くなり、ビーディングが発生して画像品質が著しく低下する場合があり、いずれも理想的とは言えない。
解膠剤として酸を使用する代わりに、各種界面活性剤或いは高分子分散剤を用いて分散液を造ることで、上記のような問題を回避することもできるが、界面活性剤を使用すると分散液中に泡が発生し、これが原因となって塗工欠陥を生じることがある。また、高分子系の分散剤を使用した場合、アルミナ水和物を一次粒子まで解膠するのに、比較的強い剪断力と長時間の撹拌が必要であり、凝集物のない均一な分散液を得ることが困難となり、安定して高品質なインク受容層を形成することができない。
そこで本発明では、有機酸とジアリルアミン系重合物を併用し、水性溶媒中に無機微粒子を分散解膠することで微粒子分散液を製造することが好ましい。これにより、有機酸の使用量を削減しても低粘度で、かつ十分に解膠された微粒子分散液が調製できる。また、比較的沸点が高く不快臭を有さない有機酸としてヒドロキシ酸を用いることで、インク受容層から発生する臭いが抑制され、さらには、インク受容層中の酸濃度が低く抑えられることで、ビーディングが抑制されたインク受容層を形成することが可能である。
微粒子分散液中の無機微粒子の濃度としては、分散液全質量に対し5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%の範囲がより好ましい。無機微粒子の濃度が低いと、最終的に調製する塗工液の固形分濃度が下がり、塗工後の乾燥に多くの時間とエネルギーを要することから生産効率が低下する。また、無機微粒子の濃度が高すぎると分散液の粘度が高くなり、後工程でのハンドリングに負荷が掛かるため好ましくない。
ヒドロキシ酸には、前述したようにモノカルボン酸と多価カルボン酸が存在するが、無機微粒子(アルミナ水和物)の解膠剤として多価カルボン酸からなるヒドロキシ酸を使用すると微粒子分散液の粘度が上昇することから、モノカルボン酸からなるヒドロキシ酸を使用することが好ましい。
ヒドロキシ酸の使用量については、無機微粒子の使用量、粒径および比表面積によって異なるが、水溶性溶媒中で微粒子を解膠するのに最低限必要な量であればよく、無機微粒子に対して好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲が望ましい。使用量が0.1質量%に満たない場合、経時的に分散液の粘度が上昇することがあるので好ましくない。逆に、使用量が10質量%を超えた場合では分散効果はそれ以上増大することはなく、高温高湿下での画像の滲みが悪化したり、インク吸収性が低下してビーディングが発生するなどの問題を生じる。なお、本発明においては、ヒドロキシ酸と共に酢酸、蟻酸、硝酸、塩酸などの公知の有機酸や無機酸の解膠剤を本発明の効果を損ねることがない範囲で併用してもよい。
本発明において使用されるジアリルアミン系重合物は、前記一般式2または一般式3で示されるカチオン性ポリマーであり、それぞれ単独或いは複数種併用することができる。前記一般式2または一般式3のカチオン性ポリマーのヘテロ環は、ジアルキルジアリルアンモニウムクロライドなどのジビニル系モノマーをラジカル重合して、分子内で環化重合させることで得られる。このような環化付加には、一般に、6員環生成付加(頭尾付加)と5員環生成付加(頭頭付加)の2通りが存在するが(「高分子合成の化学」(大津隆行)、p.194、化学同人)、本発明においては、このような6員環(ピペリジニウム環)を有するジアリルアミン系重合物を使用してもよい。具体的には、下記一般式17および一般式18に示されるカチオン性ポリマーである。
Figure 2006001277
(式中、R1、R2、A、B、m、nおよびX-は、前記一般式2および一般式3と同様である。)
本発明において使用されるジアリルアミン系重合物としては、具体的には次のようなものが挙げられる。前記一般式2および一般式17で示されるものとしては、例えば、ポリジアリルアンモニウムクロライド、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジアリルアンモニウムクロライド−二酸化イオウ共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−二酸化イオウ共重合物が、また、前記一般式3および一般式18で示されるものとしては、例えば、アリルアミン塩酸塩−ジアリルアミン塩酸塩共重合体、アクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体、アクリルアミド−ジメチルジアリルアミン塩酸塩共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ジアリルアミン系重合物の重量平均分子量としては特に限定はしないが、好ましくは1,000〜200,000の範囲、より好ましくは1,000〜100,000の範囲、さらに好ましくは2,000〜50,000の範囲が望ましい。重量平均分子量が低い場合は泡が発生しやすく、これが原因で塗工欠陥を生じることがある。また、重量平均分子量が高いと微粒子分散液の粘度が高くなり、分散性が悪化するので好ましくない。
ジアリルアミン系重合物の使用量は、併用するヒドロキシ酸の量に依存するが、多量に用いた場合、微粒子分散液および該分散液にバインダーを添加した塗工液の粘度が高くなり、液自体の保存性や塗工適性が低下することから、できる限り微量添加することが好ましい。従って、本発明の微粒子分散液におけるジアリルアミン系重合物の使用量は、無機微粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜3質量%の範囲である。
本発明の微粒子分散液における水性溶媒としては、水、または水に混合可能な有機溶剤との混合溶液であれば特に制限はない。水に混合可能な有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類:アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類:テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられる。
本発明で用いる微粒子分散液の調製方法としては特に限定はしないが、例えば、前記水性溶媒中にヒドロキシ酸およびジアリルアミン系重合物を溶解し、これに無機微粒子を添加して分散する方法:水性溶媒中にジアリルアミン系重合物、ヒドロキシ酸および無機微粒子を同時に添加して分散する方法:水性溶媒中にジアリルアミン系重合物を溶解し、次いで無機微粒子を添加して分散した後ヒドロキシ酸を添加する方法:水性溶媒中にヒドロキシ酸を溶解し、次いで無機微粒子を添加して分散した後、ジアリルアミン系重合物を添加する方法:水性溶媒中に無機微粒子を分散し、その後ジアリルアミン系重合物とヒドロキシ酸を添加する方法などが選択できる。また、水性溶媒中にヒドロキシ酸およびジアリルアミン系重合物の少なくとも一方を適量添加し、これに無機微粒子を分散した後、ヒドロキシ酸およびジアリルアミン系重合物をさらに添加して所望の粒径および粘度にコントロールすることもできる。
水性溶媒、或いはヒドロキシ酸やジアリルアミン系重合物を含む水性溶媒への無機微粒子の分散手段としては、連続式、或いはバッチ式のいずれの方法も使用できる。また、分散機としては、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)、連続式高速撹拌型分散機、超音波分散機など、従来より公知の様々な分散機を使用することができる。
本発明の微粒子分散液の粘度については特に限定しないが、分散液自体の保存安定性が良好で、後工程のハンドリングに負荷を掛けない程度であればよく、好ましくは300mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下であることが望ましい。
本発明の被記録媒体を製造するにあたり、インク受容層を形成するために調製される塗工液には、前記微粒子分散液とともに、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂などのバインダーが使用される。本発明で使用される水溶性樹脂および/または水分散性樹脂としては、例えば、澱粉、ゼラチン、カゼインおよびそれらの変性物、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはその変性物(カチオン変性、アニオン変性、シラノール変性など)、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸またはその共重合体、アクリルアミド系樹脂、無水マレイン酸系共重合体、ポリエステル系樹脂、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス、およびこれらの各種重合体ラテックスにカチオン性基またはアニオン性基を付与した官能基変性重合体ラテックス類などが挙げられる。好ましいのは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールであり、平均重合度が300〜5,000のものである。また、ケン化度は70〜100%未満のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。また、これらの水溶性樹脂または水分散性樹脂は単独或いは複数種混合して用いることができる。
上記バインダー(A)の使用量は、無機微粒子(B)に対する混合質量比でA/B=1/30〜1/1が好ましく、より好ましくはA/B=1/20〜1/1.5の範囲である。バインダーの量がこれらの範囲内であれば、形成されたインク受容層のひび割れや粉落ちが発生し難くなり、インク吸収性も良い。また、本発明の微粒子分散液とバインダーの混合方法については特に限定はしないが、好ましいのは、予め必要に応じた量の水性媒体に水溶性樹脂または水分散性樹脂を溶解し、これを微粒子分散液と混合する方法であり、バッチ式或いは連続式のいずれの方法でも混合可能である。
水性媒体としては、水、または水に混合可能な有機溶剤との混合溶液であれば特に制限はなく、水に混合可能な有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類:アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類:テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられる。
また、本発明の被記録媒体においては、無機微粒子、および水溶性樹脂または水分散性樹脂によって形成される皮膜の造膜性、耐水性および皮膜強度を改善するために、インク受容層中に硬膜剤を添加してもよい。一般に、硬膜剤は使用するポリマーが持つ反応性基の種類によって様々なものが選択され、例えば、ポリビニルアルコール系の樹脂であれば、エポキシ系硬膜剤や、ホウ酸或いは水溶性アルミニウム塩などの無機系硬膜剤などが挙げられるが、本発明で使用する硬膜剤としては、ホウ素原子を中心とした酸素酸またはその塩などのホウ素化合物、具体的には、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸およびそれらの塩が好ましく使用できる。
ホウ素化合物の使用量は、バインダーとして用いる水溶性樹脂および/または水分散性樹脂の量によって変化するが、概ね水溶性樹脂および/または水分散性樹脂に対して0.1〜30質量%の割合で添加するとよい。ホウ素化合物の含有量が、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂に対して0.1質量%に満たないと、造膜性が低下し十分な耐水性が得られない。逆に、30質量%を超える場合では、例えば、後述するバッチ方式で塗工を行う場合に塗工液粘度の経時変化が大きくなり、塗工安定性が低下することがある。
架橋剤をインク受容層に添加する方法については、微粒子分散液とバインダーを含む塗工液に直接架橋剤を添加してバッチ方式で塗工を行う方法:架橋剤を予め微粒子分散液に添加しておき、塗工直前にバインダーと連続的に混合しながら塗工を行う方法:架橋剤を別の水性媒体に溶解しておき、塗工直前に微粒子分散液とバインダーを含む塗工液へインライン添加する方法:さらには、微粒子分散液とバインダーを含む塗工液の塗工前後に、架橋剤を含む溶液を塗工する方法などがあり、いずれの方法も利用できる。
高分子化合物のインク受容層への添加方法については特に限定はしないが、例えば、微粒子分散液とバインダーを含む塗工液に直接高分子化合物を添加してバッチ方式で塗工を行う方法:高分子化合物を予め微粒子分散液またはバインダーを含む塗工液のいずれかに添加しておき、塗工直前にバインダーを含む塗工液または微粒子分散液と連続的に混合しながら塗工を行う方法:高分子化合物を別の水性媒体に分散しておき、塗工直前に微粒子分散液とバインダーを含む塗工液へインライン添加する方法:さらには、微粒子分散液とバインダーを含む塗工液の塗工前後に、高分子化合物を含む塗工液を塗工する方法などがあり、いずれの方法も利用できる。
従って本発明の被記録媒体の構成としては、支持体上に少なくとも前記第一の高分子化合物およびヒドロキシ酸を含有するインク受容層を設けたもの:または支持体上に少なくとも前記第二の高分子化合物およびヒドロキシ酸を含有するインク受容層を設けたもの:さらに前記高分子化合物およびヒドロキシ酸を含む塗工液をインク受容層上にオーバーコートしたもの:或いは前記高分子化合物およびヒドロキシ酸を含む塗工液を支持体表面に微量塗工してインク受容層を形成させた構成などが選択できる。本発明では、これらの構成も「支持体の表面にインク受容層が形成された」ものとして包含する。
インク受容層を形成するための塗工液中の固形分濃度は、支持体上にインク受容層を形成できる程度の粘度であれば特に制限はないが、塗工液全質量に対して5〜50質量%が好ましい。固形分濃度が5質量%未満の場合は、インク受容層の膜厚を厚くするのに塗工量を増やす必要があり、乾燥に多くの時間とエネルギーを必要とすることから非経済的である。また、50質量%を超えると塗工液の粘度が高くなり、塗工性が低下する場合がある。
また、前記塗工液には、本発明の効果を妨げない範囲内で各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、消泡剤、インク定着剤、ドット調整剤、着色剤、蛍光増白剤、防腐剤、pH調整剤、浸透剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤(退色防止剤)などを挙げることができる。
調製された塗工液を支持体上に塗工する方法としては、ロールコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ゲートロールコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、スピンコーター法、スプレーコーター法、グラビアコーター法、カーテンコーター法、ダイコーター法など、従来より公知の塗工方法を用いることができる。その後、熱風乾燥機、熱ドラム、遠赤外線乾燥機などの乾燥装置を用いて乾燥することで、インク受容層を形成することができる。なお、本発明の被記録媒体におけるインク受容層は、前記高分子化合物、ヒドロキシ酸、ジアリルアミン系重合物、無機微粒子、バインダーおよびその他の添加剤の各組成比を変更して多層形成してもよく、支持体の片面もしくは両面に形成することが可能である。また、画像の解像度および搬送性などを向上させる目的で、カレンダーやキャストなどの装置を用いて平滑化処理してもよい。
塗工液の支持体上への塗工量として好ましい範囲は、固形分換算で0.5〜60g/m2であり、より好ましい範囲は5〜55g/m2である。塗工量が0.5g/m2未満の場合は、形成されたインク受容層がインクの水分を十分に吸収できず、インクが流れたり、画像が滲んだりする場合があり、60g/m2を超えると、乾燥時にカールが発生したり、印字性能に期待されるほど顕著な効果が現れない場合がある。
このようにして得られた本発明の被記録媒体は、大気中の酸性ガスや光による画像の変退色、および高温高湿下での画像の滲みを効果的に防止することができる。画像の変色および退色を防止した理由については明確ではないが、少なくとも前記第一または第二の高分子化合物がインク受容層中でラジカルや過酸化物の発生を抑制し、ヒドロキシ酸は何らかの形でこれを助成していると推察される。また、高温高湿下での画像滲みが防止された理由については、化合物Aや化合物Bが有する水酸基が高分子化することにより大幅に減少し、元来有していた吸湿の性質が低減したことが原因であると推察される。
また、インク受容層中に無機微粒子を含む場合、ヒドロキシ酸は上述した酸化防止機能を有する高分子化合物の助成剤としての役割と無機微粒子(アルミナ水和物)の解膠剤としての役割を担うが、多量に用いると高温高湿下での画像滲みが悪化したりビーディングが発生することから、無機微粒子を解膠するのに最低限必要な量にコントロールする必要がある。本発明においては、インク受容層を形成する際に使用する微粒子分散液を、ヒドロキシ酸とジアリルアミン系重合物を併用して調製したことでヒドロキシ酸の量を削減し、高温高湿下での画像滲みおよびビーディングが効果的に抑制された被記録媒体を製造することができる。
本発明の被記録媒体に画像を記録する際に使用するインクは、特に限定しないが、媒体として水と水溶性有機溶剤との混合物を使用し、これに色材として染料または顔料を溶解または分散した一般的なインクジェット記録用の水性インクが好ましく使用できる。
前記被記録媒体に上記インクを付与して画像形成を行う方法としては、インクジェット記録方法が特に好適であり、このインクジェット記録方法としてはインクをノズルより効果的に離脱させて、被記録媒体にインクを付与し得る方法であれば如何なる方法でもよい。特に特開昭54−59936号公報などに記載されている方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット方式は有効に使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例中、「部」および「%」は特に記載がない限り質量基準である。
<高分子化合物1の製造方法>
以下のようにして高分子化合物1を製造した。
撹拌装置、温度計および還流冷却管を備えた反応容器に、反応溶媒としてアセトン109gを投入し、撹拌下3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールを40.00gおよびメチルジエタノールアミン6.79g溶解後、40℃まで昇温してイソホロンジイソシアネートを62.07g加えた。その後50℃まで昇温して錫系触媒を0.2g加え、さらに55℃まで昇温して撹拌しながら4時間反応を行った。
反応終了後、反応溶液を室温まで冷却して85%蟻酸3.09gを加えてカチオン化した。さらに水446gを加えた後、減圧濃縮してアセトンを除去し、水で濃度調整することにより、固形分20%の高分子化合物水分散液(高分子化合物1)を製造した。
<高分子化合物2の製造方法>
以下のようにして高分子化合物2を製造した。
撹拌装置、温度計および還流冷却管を備えた反応容器に、反応溶媒としてアセトン81gを投入し、撹拌下3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールを30.00gおよびt−ブチルジエタノールアミン6.98g溶解後、40℃まで昇温してイソホロンジイソシアネートを44.28g加えた。その後50℃まで昇温して錫系触媒を0.4g加え、さらに55℃まで昇温して撹拌しながら5時間反応を行った。
反応終了後、反応溶液を室温まで冷却して35%塩酸4.51gを加えてカチオン化した。さらに水331gを加えた後、高分子化合物1の製造方法と同様にして、固形分20%の高分子化合物水分散液(高分子化合物2)を製造した。
<高分子化合物3の製造方法>
以下のようにして高分子化合物3を製造した。
撹拌装置、温度計および還流冷却管を備えた反応容器に、反応溶媒としてアセトン258gを投入し、撹拌下5−ヒドロキシ−3,7−ジチア−1,9−ノナンジオールを40.00gおよびメチルジエタノールアミン6.29g溶解後、40℃まで昇温してイソホロンジイソシアネートを54.17g加えた。その後50℃まで昇温して錫系触媒を0.1g加え、さらに55℃まで昇温して撹拌しながら2時間反応を行った。
反応終了後、反応溶液を室温まで冷却して85%蟻酸2.86gを加えてカチオン化した。さらに水412gを加えた後、高分子化合物1の製造方法と同様にして、固形分20%の高分子化合物水分散液(高分子化合物3)を製造した。
<高分子化合物4の製造方法>
以下のようにして高分子化合物4を製造した。
撹拌装置、温度計および還流冷却管を備えた反応容器に、反応溶媒としてアセトン140gを投入し、撹拌下3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールを68.13g溶解後、40℃まで昇温してイソホロンジイソシアネートを79.66g加えた。その後50℃まで昇温して錫系触媒を0.4g加え、さらに55℃まで昇温して撹拌しながら4時間反応を行った。室温まで冷却した後1,190gのアセトンを加えることで固形分10%の高分子化合物アセトン溶液(高分子化合物4)を製造した。
高分子化合物1〜4の合成成分と量比を表1に示す。表2にはGPC(Gel Permeation Chromatography、コントローラー:SC8010、検出器:RI8012、東ソー(株)製)により測定した、重量平均分子量と分子量分布(Mw/Mn)を示す。また、赤外分光光度計(FT/IR−5300、日本分光株式会社製)によりウレタン基の特徴吸収である1,730〜1,690cm-1のC=O伸縮振動、1,540cm-1付近のN−H変角振動、3,450〜3,300cm-1付近のN−H伸縮振動があったことから、全ての反応で重合が起こり、原料成分が高分子化したことを確認した。
Figure 2006001277
上記表1の高分子化合物1〜3は20%水分散液であり、高分子化合物4は10%アセトン溶液である。
Figure 2006001277
<アルミナ水和物の製造>
米国特許第4,242,271号明細書に記載された方法で、アルミニウムドデキシドを製造した。次に米国特許第4,202,870号明細書に記載された方法で、前記アルミニウムドデキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造した。このアルミナスラリーに、アルミナ水和物固形分が7.7%になるまで水を加えた。この時、アルミナスラリーのpHは9.4であり、これに3.9%の硝酸溶液を加えてpHを調整した。次にオートクレーブを用いて熟成前のpH:6.0、熟成温度:150℃、熟成時間:6時間にて熟成を行いコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを入口温度87℃でスプレードライしてアルミナ水和物粉末としたが、得られた粉末は粒子形状が平板状で、X線回折による測定では、結晶構造がベーマイト構造であるアルミナ水和物を示していた。また、比表面積・細孔分布測定装置(マイクロメリティックスASAP2400、(株)島津製作所社製)を用いて、得られた粉末のBET比表面積を測定したところ140.5m2/gであった。
<微粒子分散液Aの調製>
イオン交換水100部に、ジアリルアミン系重合物としてPAS−92(20%水溶液、重量平均分子量:約5,000、日東紡績(株)社製)1.275部(アルミナ水和物に対して1.0%)、およびグリコール酸0.510部(アルミナ水和物に対して2%)を添加し、スリーワンモータ(BL600、定格トルク:5kgf・cm、撹拌翼:タービン型(撹拌翼径:86mm)、新東科学(株)社製)を用いて150rpmで10分間撹拌して分散溶媒を調製した。その後、分散溶媒の液温が25℃になるように低温恒温水槽中で調整しながら前記アルミナ水和物25.5部を添加し、前記スリーワンモータの回転数を350rpmに調整して10分間撹拌することで、全分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%の微粒子分散液Aを得た。このようにして得られた微粒子分散液について、下記評価1および評価2のテストを行った。結果を表3に示す。
<評価1:微粒子分散液の粘度>
微粒子分散液を、25℃に設定した低温恒温水槽中で15分間静置し、その後、B型粘度計(BM形式、(株)東京計器社製)を用いて粘度を測定した。
<評価2:無機微粒子の粒径>
レーザー粒径解析装置PARIII(大塚電子(株)社製)を用いて、微粒子分散液中のアルミナ水和物の平均粒径を測定した。
<微粒子分散液Bの調製>
微粒子分散液Aの製造において、ジアリルアミン系重合物をPAA−D41−HCl(40%水溶液、重量平均分子量:約20,000、日東紡績(株)社製)0.064部(アルミナ水和物に対して0.1%)、グリコール酸の量を0.383部(アルミナ水和物に対して1.5%)とし、全分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、微粒子分散液Aの調製と同様にして微粒子分散液Bを調製し、評価1および評価2のテストを行った。その結果を表3に示す。
<微粒子分散液Cの調製>
微粒子分散液Aの調製において、ジアリルアミン系重合物の量を0.383部(アルミナ水和物に対して0.3%)、また、グリコール酸を乳酸0.720部(濃度:88.5%、アルミナ水和物に対して2.5%)に変更し、全分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、微粒子分散液Aの調製と同様にして微粒子分散液Cを調製し、評価1および評価2のテストを行った。その結果を表3に示す。
<微粒子分散液Dの調製>
微粒子分散液Aの調製において、ジアリルアミン系重合物をシャロールDC−902P(51%水溶液、重量平均分子量:約9,000、第一工業製薬(株)社製)0.150部(アルミナ水和物に対して0.3%)、また、グリコール酸を2−ヒドロキシイソ酪酸0.515部(純度:99%、アルミナ水和物に対して2%)に変更し、全分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、微粒子分散液Aの調製と同様にして微粒子分散液Dを調製し、評価1および評価2のテストを行った。その結果を表3に示す。
<微粒子分散液Eの調製>
微粒子分散液Aの調製において、ジアリルアミン系重合物を用いず、グリコール酸の量を0.765部(アルミナ水和物に対して3%)とし、全分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、微粒子分散液Aの調製と同様にして微粒子分散液Eを調製し、評価1および評価2のテストを行った。その結果を表3に示す。
<微粒子分散液Fの調製>
微粒子分散液Aの調製において、ジアリルアミン系重合物を用いず、またグリコール酸を6%酢酸水溶液8.50部(アルミナ水和物に対して2%)に変更し、全分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、微粒子分散液Aの調製と同様にして微粒子分散液Fを調製し、評価1および評価2のテストを行った。その結果を表3に示す。
<微粒子分散液Gの調製>
微粒子分散液Aの調製において、ジアリルアミン系重合物を用いず、全分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、微粒子分散液Aの調製と同様にして微粒子分散液Gを調製し、評価1および評価2のテストを行った。その結果を表3に示す。
<微粒子分散液Hの調製>
微粒子分散液Cの調製において、ジアリルアミン系重合物を用いず、全分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、微粒子分散液Cの調製と同様にして微粒子分散液Hを調製し、評価1および評価2のテストを行った。その結果を表3に示す。
<微粒子分散液Iの調製>
微粒子分散液Dの調製において、ジアリルアミン系重合物を用いず、全分散液に対するアルミナ水和物の固形分濃度が20%となるようにイオン交換水の量を調整した以外は、微粒子分散液Dの調製と同様にして微粒子分散液Iを調製し、評価1および評価2のテストを行った。その結果を表3に示す。
Figure 2006001277
<実施例1>
先程調製した微粒子分散液A100部に、ホウ酸を0.4部(ポリビニルアルコールに対して20%)、高分子化合物1(20%水分散液)を10部(アルミナ水和物に対して10%)添加し、さらにポリビニルアルコール(PVA245、(株)クラレ社製)の5%水溶液を40部(アルミナ水和物に対して10%)添加してスリーワンモータで均一になるまで撹拌し、塗工液を調製した。その後、支持体としてポリエチレン被覆紙(王子製紙(株)製;厚さ:224μm、坪量234g/m2;JIS−Z−8741による60度鏡面光沢度が64%;特注品)を用い、その上に先程調製した塗工液を乾燥塗工量が35g/m2となるようメイヤーバーで塗工し、送風定温乾燥器((株)東洋製作所社製、FC−610)で110℃、20分間乾燥して本発明の被記録媒体を作製した。得られた被記録媒体について下記評価3〜6を行った。結果を表4に示す。
被記録媒体の諸物性について、下記の要領で評価を行った。
<評価3:ガスによる退色・変色抑制効果についての評価方法>
オゾン暴露による退色・変色を、インクジェット記録装置(BJ F870、キヤノン(株)製)を用いてブラック(Bk)インクおよびシアン(C)インクを単色で、かつインク量100%でベタ印字した被記録媒体をオゾン暴露試験機(スガ試験機社製、特注品)に入れて、40℃・55%RHの条件下で濃度3ppmのオゾンに4時間暴露し、BkおよびCの光学濃度を光学反射濃度計(グレタマクベス社製、RD−918)を用いて測定し、下記式(1)より残OD率を算出して評価した。
残OD率=(試験後のOD/試験前のOD)×100%・・・式(1)
<評価4:光による退色・変色抑制効果についての評価方法>
インクジェット記録装置(BJ F870、キヤノン(株)製)を用いて、マゼンタ(M)インクを単色で、かつインク量100%でベタ印字した被記録媒体をアトラスフェードオメーター(条件;波長340nmにおける照射強度0.39W/m2、温度45℃、湿度70%)に投入し、100時間後にMの光学濃度を光学反射濃度計(グレタマクベス社製、RD−918)を用いて測定し、上記式(1)より残OD率を算出して評価を行った。
<評価5:高湿下における画像滲みについての評価方法>
インクジェット記録装置(BJ F870、キヤノン(株)製)を用いて、ブラック(Bk)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インクおよびイエロー(Y)インクの単色によるベタ印字(インク量100%)を行った被記録媒体を、30℃・80%RHの環境下に1週間暴露し、画像が滲む度合いを目視にて評価した。各色とも滲みが起きていないものを「〇」、いずれかの色で僅かに滲みが起きているものを「△」、いずれかの色で大きく滲みが起きているものを「×」とした。
<評価6:ビーディングについての評価方法>
インクジェットプリンタ(BJ F870、キヤノン(株)社製)を用いて、グリーン(イエロー100%とシアン100%の混色、インク打込み量:200%)のベタ印字を行い、ビーディングの度合いを印字濃度の高い粒状部の大きさで評価した。ビーディングがなく、良好なインク吸収性を示したものを「◎」、ビーディングが僅かに発生し、かつ印字濃度の高い粒状部の大きさが0.1mm未満のものを「○」、ビーディングが発生し、印字濃度の高い粒状部の大きさが0.1mm以上0.3mm未満のものを「△」、印字濃度の高い粒状部の直径が0.3mm以上もしくは印字濃度の低い部分が点在するものを「×」とした。
<実施例2>
実施例1において、高分子化合物1を高分子化合物2とした以外は実施例1と同様にして本発明の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<実施例3>
実施例1において、高分子化合物1を高分子化合物3とした以外は実施例1と同様にして本発明の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<実施例4>
実施例1において、高分子化合物1を添加しなかった以外は、実施例1と同様にインク受容層をポリエチレン被覆紙上に形成した。その後、高分子化合物4(10%アセトン溶液)をインク受容層中のアルミナ水和物に対して固形分換算で10%添加されるようにメイヤーバーでオーバーコートし、送風定温乾燥器((株)東洋製作所社製、FC−610)で110℃、10分間乾燥して本発明の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<実施例5>
実施例1において、微粒子分散液Aを微粒子分散液Bに変更した以外は実施例1と同様にして本発明の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<実施例6>
実施例1において、微粒子分散液Aを微粒子分散液Cに変更した以外は実施例1と同様にして本発明の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<実施例7>
実施例1において、微粒子分散液Aを微粒子分散液Dに変更した以外は実施例1と同様にして本発明の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<実施例8>
実施例1において、微粒子分散液Aを微粒子分散液Eに変更した以外は実施例1と同様にして本発明の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<比較例1>
実施例1において、微粒子分散液Aを微粒子分散液Fに変更した以外は実施例1と同様にして比較例の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<比較例2>
実施例2において、微粒子分散液Aを微粒子分散液Fに変更した以外は実施例2と同様にして比較例の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<比較例3>
実施例3において、微粒子分散液Aを微粒子分散液Fに変更した以外は実施例3と同様にして比較例の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<比較例4>
実施例4において、微粒子分散液Aを微粒子分散液Fに変更した以外は実施例4と同様にして比較例の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<比較例5>
実施例1において、微粒子分散液Aを微粒子分散液Fに変更し、高分子化合物1を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして比較例の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<比較例6>
実施例1において、高分子化合物1を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして比較例の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。
<比較例7>
実施例8において、高分子化合物1を用いなかったこと以外は実施例8と同様にして比較例の被記録媒体を作製し、評価3〜6のテストを行った。結果を表4に示す。

Figure 2006001277
上記の結果から明らかなように、前記第一の高分子化合物、およびヒドロキシ酸を含有する本発明の被記録媒体、もしくは前記第二の高分子化合物とヒドロキシ酸を含有する本発明の被記録媒体(実施例1〜8)は、上記高分子化合物とヒドロキシ酸を同時には含有しない比較例1〜7の被記録媒体より、耐ガス性、耐光性および高温高湿下での画像の滲みの全てにおいて優れた特性を示している。
また、表3より、ヒドロキシ酸とジアリルアミン系重合物を併用して調製した微粒子分散液は、同量のヒドロキシ酸のみで調製された微粒子分散液より粘度が低く、無機微粒子を分散解膠するのに適しており、特に塗工の際にハンドリングし易いものであった。このように、ヒドロキシ酸とジアリルアミン系重合物を併用する方法は、ヒドロキシ酸の量を削減して無機微粒子を分散解膠するのに適しているが、表4に示したように、該微粒子分散液と高分子化合物を併用してインク受容層を形成した実施例1〜7の被記録媒体は、ビーディングが効果的に抑制され、さらに印刷の際に刺激臭(または不快臭)が発生することもなかった。酢酸を用いたもの(比較例1〜5)でもビーディングは抑制されているが、印刷の際に酢酸臭が発生したことから、本発明の被記録媒体は刺激臭(または不快臭)が抑制されている点でも優れている。
本発明によれば、少なくとも、前記第一または第二の高分子化合物、および特定の有機酸(ヒドロキシ酸)をインク受容層中に含有させることで、画像の変退色および高温高湿下での画像の滲みが抑制された被記録媒体を製造することができた。また、該被記録媒体の製造方法において、該インク受容層を形成する際に、無機微粒子、カチオン性ポリマーおよびヒドロキシ酸を含む微粒子分散液を用いたことで、上記耐候性に加え、刺激臭(または不快臭)が抑制され、インク吸収性に優れた高品質な画像記録が可能な被記録媒体を製造することができた。

Claims (13)

  1. 支持体の少なくとも一方の面にインク受容層を設けてなる被記録媒体において、該インク受容層が、少なくとも下記化合物Aと化合物Bとを反応させて得られる高分子化合物、およびヒドロキシ酸を含有することを特徴とする被記録媒体。 A:2つ以上の活性水素基を有する含硫黄有機化合物
    B:イソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物
  2. 高分子化合物が、化合物AおよびBに加えてさらに下記化合物Cを反応させ、得られた高分子化合物のアミノ基の少なくとも一部が、酸または4級化剤によりカチオン化されている請求項1に記載の被記録媒体。
    C:2つ以上の活性水素基を有するアミン化合物
  3. 含硫黄有機化合物Aが、分子内にスルフィド基を少なくとも一つ含有する請求項1または2に記載の被記録媒体。
  4. アミン化合物Cが、下記一般式1で表される3級アミンである請求項2に記載の被記録媒体。
    Figure 2006001277
    (式中、R1、R2、R3はいずれか一つが炭素数1〜6のアルキル基、アルカノール基、またはアミノアルキル基であり、それ以外は同一若しくは異なっていてもよく、アルカノール基、アミノアルキル基、またはアルカンチオール基を表す。)
  5. ヒドロキシ酸が、モノカルボン酸である請求項1または2に記載の被記録媒体。
  6. インク受容層が、さらに無機微粒子を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の被記録媒体。
  7. インク受容層が、さらにカチオン性ポリマーを含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の被記録媒体。
  8. インク受容層が、無機微粒子、カチオン性ポリマーおよびヒドロキシ酸を同時に分散した微粒子分散液から形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の被記録媒体。
  9. カチオン性ポリマーが、下記一般式2および一般式3から選ばれる少なくとも1種のジアリルアミン系重合物である請求項1〜8のいずれか1項に記載の被記録媒体。
    Figure 2006001277
    (式中、R1、R2は水素原子またはアルキル基を表し、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。また、Aは−CH2−または−CH2−SO2−を、Bはアリルアミン塩ユニット、アクリルアミドユニットまたはメタクリルアミドユニットを表し、X-はハロゲンイオン、硫酸アニオン、スルホン酸アニオン、アルキルスルホン酸アニオン、酢酸アニオン、アルキルカルボン酸アニオンまたは燐酸アニオンを表す。mおよびnは重合度を示す整数である。)
  10. 支持体の少なくとも一方の面に、塗工液を塗工してインク受容層を設ける被記録媒体の製造方法において、上記塗工液が、無機微粒子とカチオン性ポリマーとヒドロキシ酸をともに液媒体中に分散して微粒子分散液とする工程と、該微粒子分散液に、少なくとも請求項1または2に記載の高分子化合物を添加する工程により調製された塗工液であることを特徴とする被記録媒体の製造方法。
  11. 無機微粒子が、アルミナおよび/またはアルミナ水和物である請求項10に記載の被記録媒体の製造方法。
  12. カチオン性ポリマーが、下記一般式2および一般式3から選ばれる少なくとも1種のジアリルアミン系重合物である請求項10に記載の被記録媒体の製造方法。
    Figure 2006001277
    (式中、R1、R2は水素原子またはアルキル基を表し、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。また、Aは−CH2−または−CH2−SO2−を、Bはアリルアミン塩ユニット、アクリルアミドユニットまたはメタクリルアミドユニットを表し、X-はハロゲンイオン、硫酸アニオン、スルホン酸アニオン、アルキルスルホン酸アニオン、酢酸アニオン、アルキルカルボン酸アニオンまたは燐酸アニオンを表す。mおよびnは重合度を示す整数である。)
  13. ヒドロキシ酸が、モノカルボン酸である請求項10に記載の被記録媒体の製造方法。
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