JP5809330B2 - 超速効型インスリン組成物 - Google Patents

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Description

[関連出願]
米国仮特許出願第61/125,835号(発明者:Gregory Frost、Igor Bilinsky、Daniel VaughnおよびBarry Sugarman;発明の名称「SUPER FAST-ACTING INSULIN COMPOSITIONS」;出願日2008年4月28日)および米国仮特許出願第61/127,044号(発明者:Gregory Frost、Igor Bilinsky、Daniel VaughnおよびBarry Sugarman;発明の名称「SUPER FAST-ACTING INSULIN COMPOSITIONS」;出願日2008年5月9日)に基づく優先権の利益を主張する。
本願は、同じく米国仮特許出願第61/125,835号および同第61/127,044号に基づく優先権を主張する対応米国特許出願第12/387,225号(発明者:Gregory Frost、Igor Bilinsky、Daniel VaughnおよびBarry Sugarman;発明の名称「SUPER FAST-ACTING INSULIN COMPOSITIONS」)に関連する。
上記各特許出願の内容は引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
[発明の分野]
非経口投与用に製剤化された速効型インスリン組成物およびヒアルロナン分解酵素組成物を含有する組合せ、組成物およびキットを提供する。これらの物品はインスリン処置が可能な疾患または状態を処置する方法に使用することができる。インスリンおよびヒアルロナン分解酵素を投与するための方法も提供する。
[背景]
糖尿病では、膵臓が十分な量のインスリンを産生できないか、細胞がインスリンを適切に合成および放出することができないために、慢性的高血糖が起こる。高血糖は危篤患者でも起こる場合があり、死亡率および罹病率の増加をもたらす。インスリンは、例えば1型糖尿病、2型糖尿病および妊娠糖尿病を含む糖尿病を持つ患者を処置するための治療薬として、正常個体で起こる内因性インスリン応答を模倣するために投与されてきた。インスリンは、高血糖の危篤患者にも、血中グルコースレベルを管理するために投与されてきた。
通例、そのような対象には、高血糖に呼応して、または高血糖を見越して、例えば摂食後に、速効型インスリンが投与され、それにより、血糖管理がもたらされうる。しかし、現在の速効型インスリンは吸収および作用に遅延があり、それゆえに迅速な内因性インスリン作用と同じようには振る舞わない。つまり、これらの製剤は、このインスリン放出の第1相の直後に起こる肝グルコース産生を遮断できるほど迅速には作用しない。この薬理作用の遅延ゆえに、所望する血糖管理を達成するには、速効型インスリン調製物を食事の前に投与すべきである。さらにまた、投与しなければならない用量が、作用の持続時間を長引かせることになり、それは低血糖と、多くの場合、肥満の一因になる。したがって、対象に投与された時に内因性インスリン応答をより効果的に模倣して、より効果的な血糖管理とインスリン治療の負の副作用(例えば体重増加)の低減とをもたらす、代替インスリン組成物が必要とされている。
[概要]
速効型組成物と比較して、より迅速に作用しかつ/または予め設定された期間中の全身曝露を増加させることができる、超速効型インスリン組成物を提供する。したがって超速効型インスリン組成物が提供される。本組成物は、治療有効量の速効型インスリンと、組成物を超速効型にする量のヒアルロナン分解酵素とを含有する。本組成物は、皮下投与、皮内投与または筋肉内投与などの非経口投与用に製剤化される。インスリン投薬量(投与される量)は、血糖管理を達成するのに足りる量によって決定することができ、これは実験的に、例えばグルコース負荷などによって、決定することができる。通例、処置の目標は、血糖管理を達成することができる最低量のインスリンを投与して、高血糖事象および/または低血糖事象の数を減少させることである。超速効型インスリン組成物に使用されるインスリンは低用量であるため、糖尿病対象における体重増加および肥満のリスクが低下しうる。本組成物は、任意の適切な容器または輸送手段(vehicle)に入れて、例えば滅菌バイアル、シリンジ、カートリッジ、インスリンペン、インスリンポンプに入れて、またはクローズドループシステムリザーバに入れて提供することができる。
本発明は、血中グルコースレベルを管理するための治療有効量の速効型インスリンと、当該組成物を超速効型インスリン組成物にするのに十分な量のヒアルロナン分解酵素とを含有する、超速効型インスリン組成物を提供する。また、速効型インスリンを選択し、それを当該組成物を超速効型インスリン組成物にするのに十分な量のヒアルロナン分解酵素と組み合わせることによる、超速効型インスリン組成物、例えば本明細書に記載する任意の超速効型インスリン組成物を製造するための方法も提供する。本組成物および本組成物を製造する方法のいくつかの例では、速効型インスリンの治療有効量が、10U/mLまたはその前後から500U/mlまたはその前後までのインスリンであり、当該組成物を超速効型インスリン組成物にするのに十分なヒアルロナン分解酵素の量が、少なくともまたは約1U/mL、2U/mL、3U/mL、4U/mL、5U/mL、6U/mL、7U/mL、8U/mL、9U/mL、10U/mL、15U/mL、20U/mLまたは25U/mLのヒアルロニダーゼ活性と、機能的に等価である。いくつかの例では、当該組成物を超速効型インスリン組成物にするのに十分なヒアルロナン分解酵素の量が、少なくともまたは約30または35単位/mLのヒアルロニダーゼ活性と、機能的に等価である。例えば、組成物中の速効型インスリンの量は、10U/mL、20U/mL、30U/mL、40U/mL、50U/mL、60U/mL、70U/mL、80U/mL、90U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mlもしくは500U/mLまたはその前後であることができ、組成物中のヒアルロナン分解酵素の量は、1U/mL、2U/mL、3U/mL、4U/mL、5U/mL、6U/mL、7U/mL、8U/mL、9U/mL、10U/mL、15U/mL、20U/mL、25U/mL、30U/mL、35U/mL、37.5U/mL、40U/mL、50U/mL、60U/mL、70U/mL、80U/mL、90U/mL、100U/mL、200U/mL、300U/mL、400U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mL、1000U/ml、2000U/mL、3000U/mLもしくは5000U/mLまたはその前後と、機能的に等価であることができる。組成物の体積は、例えば、1mL、3mL、5mL、10mL、20mLもしくは50mLまたはその前後であることができる。いくつかの例では、本組成物が、クローズドループシステム、インスリンペンまたはインスリンポンプによる送達用に製剤化され、単回投与用または複数回投与用に製剤化することができる。
いくつかの実施形態では、速効型インスリンの治療有効量が、ヒアルロナン分解酵素の非存在下で同じ治療効果を達成するのに必要な速効型インスリンの治療有効量よりも少ない。ヒアルロナン分解酵素の量は、非経口投与後最初の3、6、9、12、15、20、25、30、35、40、50または60分間で、ヒアルロナン分解酵素を伴わない同じ速効型インスリンの非経口投与後に同じ期間で起こる全身曝露よりも、少なくともまたは約30%高いインスリンへの全身曝露を達成するのに十分な量であり、かつ/または投与後最初の30、45、60、90、120または180分間で、ヒアルロナン分解酵素を伴わない同じ速効型インスリンの非経口投与後に同じ期間で起こる全身グルコース代謝よりも、少なくともまたは約30%高い全身グルコース代謝(本明細書ではグルコースクリアランスという場合もある)を達成するのに十分な量である。本明細書に記載する全ての組成物および本明細書に記載する全ての方法において、各構成要素の量は、その組成物の投与を受ける対象および/または提供されるその特定速効型インスリン(もしくはその混合物)に依存して、さまざまであることができる。必要であれば、それらの量は実験的に決定することができる。
治療有効量の速効型インスリンと、ある量のヒアルロナン分解酵素とを含有する、インスリン組成物が提供される。ヒアルロナン分解酵素の量は、投与後最初の30〜40分間で、ヒアルロナン分解酵素の非存在下で同じ速効型インスリンの非経口投与後に同じ期間で起こる全身曝露よりも、少なくともまたは約30%高いインスリンへの全身曝露を達成するのに十分な量である。
ヒアルロナン分解酵素の量は、結果として得られる超速効型インスリン組成物が、非経口投与の最初の30、45、60、90、120または180分後に、ヒアルロナン分解酵素を伴わない同じ速効型インスリンの非経口投与後の同じ期間で起こる血中グルコースレベルの増加よりも、少なくともまたは約20%〜30%低い血中グルコースレベルの増加をもたらす程度に、十分であることができる。血中グルコースレベルの増加は、ヒアルロナン分解酵素を伴わない速効型インスリンの非経口投与後に起こる血中グルコースレベルの増加よりも、少なくともまたは約30%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または80%少なくなりうる。
治療有効量の速効型インスリンと、ヒアルロナン分解酵素を伴わない同じ速効型インスリンの非経口投与後最初の60分間で起こる全身グルコースクリアランス(すなわち代謝)よりも、少なくともまたは約30%高い全身グルコース代謝を達成するのに十分な量のヒアルロナン分解酵素とを含有する、超速効型インスリン組成物も提供する。
本明細書に記載する超速効型インスリン組成物において、インスリンの典型的な量(すなわち本組成物が1回の投薬で与える量)は、0.05単位、0.06単位、0.07単位、0.08単位、0.09単位、0.1単位、0.2単位、0.3単位、0.4単位、0.5単位、0.6単位、0.7単位、0.8単位、0.9単位、1単位、2単位、5単位、10単位、15単位、20単位、25単位、30単位、35単位、40単位、50単位もしくは100単位またはその前後である。ヒアルロナン分解酵素の典型的な量としては、0.3単位、0.5単位、1単位、3単位、5単位、10単位、20単位、30単位、40単位、50単位、100単位、150単位、200単位、250単位、300単位、350単位、400単位、450単位、500単位、600単位、700単位、800単位、900単位、1000単位、2,000単位、3,000単位、4,000もしくはそれ以上またはその前後のヒアルロニダーゼ活性と、機能的に等価な量が挙げられる。
本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、ヒアルロナン分解酵素の非存在下でインスリンを非経口投与した後の全身曝露よりも、少なくともまたは約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、140%、160%、180%、200%、300%または400%高いインスリンへの食事時(prandial)(例えば投与後0〜4時間)全身曝露を達成することができる。本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、ヒアルロナン分解酵素を伴わないインスリンの非経口投与後に起こる血中グルコースの代謝よりも、少なくともまたは約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、140%、160%、180%、200%、250%、300%、350%または400%高い全身グルコース代謝(すなわち、所定の期間中に起こる血液からのグルコースの除去を、速度(量/時間)として、または総量として、数量化したもの)を達成することができる。
本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、場合によっては、キレート剤、例えば限定するわけではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはエチレンジアミンテトラアセテートを含む。キレート剤は、それと等モル濃度またはその前後の濃度の金属との錯体として、例えばキレート剤錯体EDTAカルシウムとして、提供することができる。EDTAカルシウムの濃度は、0.02mM、0.04mM、0.06mM、0.08mM、0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM、0.5mM、0.6mM、0.7mM、0.8mM、0.9mM、1mM、5mM、10mM、15mMもしくは20mMまたはその前後である。
本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、一般に、亜鉛を含む。亜鉛の濃度は、通例、インスリン100単位あたり0.002ミリグラム(0.002mg/100U)、0.005mg/100U、0.01mg/100U、0.012mg/100U、0.014mg/100U、0.016mg/100U、0.017mg/100U、0.018mg/100U、0.02mg/100U、0.022mg/100U、0.024mg/100U、0.026mg/100U、0.28mg/100U、0.03mg/100U、0.04mg/100U、0.05mg/100U、0.06mg/100U、0.07mg/100U、0.08mg/100Uもしくは0.1mg/100Uまたはその前後である。一般に、速効型インスリンは亜鉛と共に製剤化され、ここで使用される量は、ヒアルロナン分解酵素と組み合わせた時に同じ亜鉛濃度が保たれるような量であることができる。典型的な組成物は、EDTAカルシウムおよび亜鉛を、0.5:1、1:1、1.5:1、2:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、300:1もしくは1000:1またはその前後のモル比で含有することができ、例えばヒトインスリン100Uあたり0.010〜0.50mgまたはその前後の亜鉛(例えば0.017mgの亜鉛)と、0.1〜50mM EDTAカルシウムとを含有することができる。別の典型的超速効型インスリン組成物は、速効型インスリンに対して約1:3のモル比の亜鉛と、速効型インスリンに対して約1:3〜10:1のモル比のEDTAカルシウムとを含有する。
超速効型インスリン組成物は、場合によっては、張性調整剤(tonicity modifier)、例えば限定するわけではないが、アミノ酸、グリセロールなどのポリアルコール、および/または塩化ナトリウムなどの塩も含む。組成物のオスモル濃度(osmolarity)は、200mOsm/kg、220mOsm/kg、240mOsm/kg、260mOsm/kg、280mOsm/kg、300mOsm/kg、320mOsm/kg、340mOsm/kg、360mOsm/kg、380mOsm/kgもしくは400mOsm/kgまたはその前後であることができる。pHは非経口投与に適する値、例えば5.5〜8.5またはその前後、特に6〜8、例えば6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8もしくは8またはその前後である。本組成物は、場合によっては、速効型インスリンのための安定剤、ヒアルロナン分解酵素のための安定剤、またはその両方を含むことができる。安定剤には、洗剤、ポリアルコール、金属、塩、共溶媒および/またはタンパク質などが含まれるが、これらに限るわけではない。そのような安定剤の典型例は、組成物および/または構成要素の安定性を高めるのに十分な濃度の血清アルブミンおよび/またはポリソルベート(polysorbate)である。血清アルブミンは、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mLもしくは1mg/mLまたはその前後の濃度で含めることができる。ポリソルベートは、例えば、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、00.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%もしくは0.1%またはその前後の濃度で含めることができる。他の随意成分としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルベート(ascorbate)、クエン酸、シトレート(citrate)、メチオニンなどの酸素スカベンジャー(これらの濃度は1mM、2mM、3mM、5mM、10mM、または20mMであることができる)、および/またはアルブミン、および/または保存剤、例えば芳香環を含有する化合物、例えばm-クレゾールもしくはフェノールが挙げられる。
速効型インスリンは、例えば単量体、または二量体もしくは六量体などの多量体であることができる。速効型インスリンとしては、レギュラーインスリン、例えば限定するわけではないが、ヒトインスリンまたはブタインスリン、例えば配列番号103に記載するアミノ酸配列を含有するまたは同アミノ酸配列を持つA鎖と、配列番号104に記載するアミノ酸配列を含有するまたは同アミノ酸配列を持つB鎖とを有するインスリン、または配列番号123のアミノ酸残基位置88〜108として記載するアミノ酸配列を含有するまたは同アミノ酸配列を持つA鎖と、配列番号123のアミノ酸残基位置25〜54として記載するアミノ酸配列を含有するまたは同アミノ酸配列を持つB鎖とを有するインスリンが挙げられる。インスリンは組換えインスリンであるか、合成もしくは部分合成するか、または自然源から単離することができる。インスリンはインスリン類似体であることができる。インスリン類似体の典型例は、配列番号103に記載するアミノ酸配列を含有するまたは同アミノ酸配列を持つA鎖と、配列番号147〜149のいずれか一つに記載するアミノ酸配列を含有するまたは同アミノ酸配列を持つB鎖とを有するインスリンの中から選択されるインスリン類似体である。いくつかの典型的超速効型インスリン組成物では、速効型インスリンが速効型ヒトインスリンである。さらに、超速効型インスリン組成物は、インスリンの混合物を含有することができる。混合物は速効型インスリンであるか、速効型インスリンと、それより遅効性(slower-acting)のインスリン、例えば基礎作用型(basal-acting)インスリンとの混合物であることができる。
本明細書に記載する組成物および組み合わせに含まれるヒアルロナン分解酵素としては、例えばヒアルロニダーゼ、例えば動物(ヒトを含む)のヒアルロニダーゼ、特にその可溶型が挙げられる。典型的なヒアルロナン分解酵素はヒアルロニダーゼ、特に可溶性ヒアルロニダーゼ、例えばPH20、またはその切断型(truncated form)である。PH20は、例えばヒツジ、ウシまたは切断型ヒトPH20であることができる。これには、配列番号1〜39および67〜96のいずれか一つに記載するアミノ酸配列を含有するまたは同アミノ酸配列を持つもの、ならびにその切断型、またはその対立遺伝子変異型、種変異型もしくは他の変異型(variant)が含まれる。切断型ヒトPH20、特に可溶性切断型には、配列番号4〜9のいずれか一つに記載するアミノ酸配列を持つポリペプチド、またはその対立遺伝子変異型および他の変異型から選択されるものが、いずれも含まれる。ヒアルロニダーゼの変異型は、通例、配列番号1〜39および67〜96のいずれか一つ、特に可溶型と、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を持ち、ヒアルロニダーゼ活性を保っている。可溶性ヒアルロニダーゼは、rHuPH20である組成物であることができる。
ヒアルロナン分解酵素は、コンドロイチナーゼ、例えば限定するわけではないが、コンドロイチンABCリアーゼ、コンドロイチンACリアーゼおよびコンドロイチンCリアーゼであることができる。典型的なコンドロイチナーゼは、配列番号98〜100のいずれか一つに記載するアミノ酸配列、またはその切断型、もしくはその対立遺伝子変異型、種変異型および他の変異型を持つか、同アミノ酸配列を含有する。変異型は、通例、配列番号98〜100のいずれか一つに記載するポリペプチド、または野生型コンドロイチナーゼと、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を持つ。
本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、複数回投与用に、または所望の用量への希釈用に、または単回投与用に製剤化することができる。インスリンの典型的な治療有効量は組成物中のインスリンおよびその組成物の投与を受ける対象に依存する。そのような単回投薬量として、例えば、0.05単位、0.06単位、0.07単位、0.08単位、0.09単位、0.1単位、0.2単位、0.3単位、0.4単位、0.5単位、0.6単位、0.7単位、0.8単位、0.9単位、1単位、2単位、5単位、10単位、15単位、20単位、25単位、30単位、35単位、40単位、50単位もしくは100単位またはその前後が挙げられる。そのような組成物では、ヒアルロナン分解酵素の量は、0.3単位、0.5単位、1単位、2単位、3単位、4単位、5単位、10単位、20単位、30単位、40単位、50単位、100単位、150単位、200単位、250単位、300単位、350単位、400単位、450単位、500単位、600単位、700単位、800単位、900単位もしくは1000単位またはその前後のヒアルロニダーゼ活性と、機能的に等価であることができ、または実際に機能的に等価である。
超速効型インスリン組成物は、ポンプによる送達用に製剤化することができる。血中グルコースレベルを管理するためのクローズドループシステムが提供される。このシステムは、当業者に知られる任意のシステムであるが、本明細書に記載するように速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素とを含有し、治療投薬量の速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素とを送達して超速効型インスリン組成物が生成するように適切な投薬またはプログラミングを行うことによって改変されている。本クローズドループシステムは、速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素とを含有するリザーバを含むことができ、ここで、ヒアルロナン分解酵素は、結果として生じる組合せを超速効型インスリン組成物にするのに十分な量で存在する。もう一つの実施形態では、速効型インスリンを含有するリザーバとヒアルロナン分解酵素を含有する第2のリザーバとを含む、血中グルコースレベルを管理するためのクローズドループシステムが提供される。
クローズドループシステムは、場合によっては、グルコースセンサー、ヒアルロナン分解酵素と速効型インスリンとを送達するための送達システム、およびポンプ機能とモニタリング機能とを統合するようにプログラムされたソフトウェアの1つ以上を含むことができ、これにより、ヒアルロナン分解酵素と速効型インスリンは、非糖尿病対象における血糖管理を模倣する血糖管理が達成されるように送達される。クローズドループシステムは、別個のリザーバに、あるいは速効型インスリンおよび/またはヒアルロナンと混合して、より遅効性の(例えば基礎)インスリンも含有することができる。また、本システムは上述の随意成分をどれでも含むことができる。速効型インスリンおよびヒアルロナン分解酵素は上述したものをどれでも含むことができる。
クローズドループシステムにおいて、速効型インスリンを含有するリザーバは、少なくとも半日、1日またはそれ以上にわたって血糖管理を維持するのに十分な単位数を含有することができ、0.1単位、0.2単位、0.3単位、0.4単位、0.5単位、0.6単位、0.7単位、0.8単位、0.9単位、1単位、2単位、5単位、10単位、15単位、20単位、25単位、30単位、35単位、40単位、50単位、100単位、200単位、300単位、400単位、500単位、600単位、700単位、800単位、900単位、1000単位、2000単位、5000単位、6000単位、7000単位もしくはそれ以上またはその前後のインスリンを含有することができる。クローズドループシステムは、所望する任意の量または所望する任意の用量増分のインスリンおよび/またはヒアルロナン分解酵素を、例えば1増分あたり0.05単位、0.1単位、0.2単位、0.3単位、0.4単位、0.5単位、0.6単位、0.7単位、0.8単位、0.9単位、1単位、2単位、5単位、10単位、15単位、20単位、25単位、30単位、35単位、40単位、50単位もしくはそれ以上またはその前後のインスリンを、送達することができる。ヒアルロナン分解酵素を含有するリザーバは、1単位、5単位、10単位、20単位、30単位、40単位、50単位、100単位、150単位、200単位、250単位、300単位、350単位、400単位、450単位、500単位、600単位、700単位、800単位、900単位、1000単位、2,000単位、3,000単位、4,000単位、5000単位、6,000単位、7,000単位、8,000単位、9,000単位、10,000単位、20,000単位もしくはそれ以上またはその前後のヒアルロニダーゼ活性と機能的に等価である量のヒアルロナン分解酵素を含有することができ、例えば0.3単位、0.5単位、1単位、2単位、3単位、5単位、10単位、20単位、30単位、40単位、50単位、100単位、150単位もしくはそれ以上またはその前後のヒアルロニダーゼ活性と機能的に等価である量のヒアルロナン分解酵素の個別用量増分で、ヒアルロナン分解酵素を送達することができる。
10Uまたはその前後から約500Uまたはその前後までのインスリンを含有する第1組成物と、インスリンと共に投与された時に速効型インスリンを超速効型インスリンにするのに十分な量のヒアルロナン分解酵素を含有する第2組成物とを含む組合せも提供する。十分な量のヒアルロナン分解酵素は、少なくともまたは約1U/mL、2U/mL、3U/mL、4U/mL、5U/mL、6U/mL、7U/mL、8U/mL、9U/mL、10U/mL、15U/mL、20U/mLまたは25U/mLのヒアルロニダーゼ活性と、機能的に等価である。いくつかの実施例では、十分な量のヒアルロナン分解酵素が、少なくともまたは約35U/mLのヒアルロニダーゼ活性と機能的に等価である。例えば、第2組成物中のヒアルロナン分解酵素の量は、1U/mL、2U/mL、3U/mL、4U/mL、5U/mL、6U/mL、7U/mL、8U/mL、9U/mL、10U/mL、15U/mL、20U/mL、25U/mL、30U/mL、35U/mL、37.5U/mL、40U/mL、50U/mL、60U/mL、70U/mL、80U/mL、90U/mL、100U/mL、200U/mL、300U/mL、400U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mL、1000U/ml、2000U/mL、3000U/mLもしくは5000U/mLまたはその前後と、機能的に等価であることができる。いくつかの例では、第1組成物中の速効型インスリンが、10U/mL、20U/mL、30U/mL、40U/mL、50U/mL、60U/mL、70U/mL、80U/mL、90U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mlもしくは500U/mLまたはその前後である。
ヒアルロナン分解酵素を含有する第1組成物と速効型インスリンを含有する第2組成物との組合せも提供する。これらの組成物は非経口投与用に製剤化される。いくつかの例では、ヒアルロナン分解酵素の量が、第2組成物と混合された時に、結果として得られる組成物を超速効型インスリン組成物にするのに十分な量である。別の例では、ヒアルロナン分解酵素の量が、第1組成物の投与に先だって投与された場合に、速効型インスリン組成物を超速効型インスリン組成物にするのに十分な量である。
本明細書に記載する組合せにおいて、速効型インスリンおよびヒアルロナン分解酵素ならびに他の構成要素は、組成物に関して上述したとおりである。これらの組合せを含むキットも提供する。インスリンの組成物は、1回の食事につき1回分の食事投薬量が投与されるように、例えば限定するわけではないが、約0.001U/kg、0.005U/kg、0.01U/kg、0.02U/kg、0.03U/kg、0.04U/kg、0.05U/kg、0.06U/kg、0.07U/kg、0.08U/kg、0.09U/kg、0.10U/kg、0.11U/kg、0.12U/kg、0.13U/kg、0.14U/kg、0.15U/kg、0.20U/kg、0.25U/kg、0.30U/kg、0.40U/kg、0.50U/kg、1U/kg、1.5U/kg、または2U/kgが投与されるように、製剤化することができる。ヒアルロナン分解酵素の量は、1回の食事につき1回分の食事時投薬量が対象に投与されるように製剤化することができ、例えば、0.3U、0.5U、1U、2U、3U、4U、5U、10U、20U、30U、40U、50U、100U、150U、200U、250U、300U、350U、400U、450U、500U、600U、700U、800U、900U、1000U、2,000U、3,000U、4,000U、5,000Uもしくはそれ以上またはその前後である。本組合せ中の組成物は皮下投与用に製剤化することができる。
本明細書に記載する超速効型インスリン組成物および組合せが投与される方法を提供する。通例、そのような投与は非経口投与、例えば静脈内投与、皮下投与であるか、任意の適切な経路による投与である。本明細書に記載する方法のいずれにおいても、速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素とは、個別に投与するか、間欠的(intermittently)に投与するか、別々の組成物に入れて、または共製剤化(co-formulate)して、一緒に投与することができる。また、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物または組合せのいずれかを投与することによって対象におけるグルコースレベルを管理するための方法も提供する。いくつかの例では、組成物または組合せが、食事時投薬量(例えば、食事前20、10、5分未満またはその前後から食事後約10分未満またはその前後までの間に投与されるか、食事と共に投与されるものを含む)として、投与される。
食事前20、10、5分未満またはその前後から食事後30分未満またはその前後までの間に速効型インスリン組成物を投与するように患者に指示することを伴う方法であって、速効型インスリンが、その速効型インスリン組成物を超速効型組成物にするのに十分な量のヒアルロナン分解酵素と共投与(co-administer)される方法も提供する。速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素は、共製剤化するか、別々に用意して共投与することができる。このような方法では、食事の摂取時またはその前後に速効型インスリン組成物を投与するように、患者に指示することができる。いくつかの例では、指示が書面でなされる。別の例では、指示が口頭でなされる。
ヒアルロナン分解酵素と速効型インスリンとを対象に投与することによって、対象における血中グルコースレベルを管理するための方法であって、そのヒアルロナン分解酵素と速効型インスリンとが、
a)ヒアルロナン分解酵素の非存在下に同じ方法で速効型インスリンを投与した後に得られる血中インスリン濃度の最大増加よりも少なくともまたは約20%〜30%高い血中インスリン濃度の最大増加を得る、および/または
b)最大血中インスリン濃度に到達するのに要する時間を、ヒアルロナン分解酵素の非存在下に同じ方法で速効型インスリンを投与した場合に最大血中インスリン濃度に到達するのに要する時間の80%以下にまで減少させる、および/または
c)投与15分後のインスリン濃度を、少なくともまたは約50、60、70、80、90または100pmol/L増加させる
のに十分な量で投与される方法を提供する。
本方法によれば、血中インスリン濃度の最大増加は、ヒアルロナン分解酵素の非存在下におけるインスリン濃度の最大増加よりも、少なくともまたは約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、140%、160%、180%、200%、250%、300%、350%または400%大きい。最大血中インスリン濃度に到達するのに要する時間は、ヒアルロナン分解酵素の非存在下で最大血中インスリン濃度に到達するのに要する時間の80%以下に減少させることができる。例えば、20Uの用量のインスリンを投与した後、投与15分後のインスリン濃度を、少なくともまたは約60pmol/L、80pmol/L、100pmol/L、120pmol/L、140pmol/L、160pmol/L、180pmol/L、または200pmol/L増加させることができる。
典型的な実施形態では、糖尿病対象が1型または2型糖尿病を持ち、対象に投与される速効型インスリンの量は、その速効型インスリンがヒアルロナン分解酵素の非存在下に同じ方法で投与される場合と比較して減らされる。例えば1型糖尿病対象に投与される速効型インスリンの量は少なくともまたは約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上減らすことができ、2型糖尿病対象に投与される速効型インスリンの量は、少なくともまたは約5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上減らすことができる。
糖尿病対象における体重増加および/または肥満(例えば食事時インスリン治療に関連する体重増加)を管理または防止するための方法も提供する。通例、これは、ヒアルロナン分解酵素と、ヒアルロナン分解酵素の非存在下で投与される場合の速効型インスリンの用量よりも少ない用量の速効型インスリンとを、投与することによって達成される。糖尿病対象は、肥満であるか、肥満のリスクがあり、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病または他の糖尿病を持ちうる。糖尿病対象の典型例は2型糖尿病対象である。ある例では、糖尿病対象における肥満の管理または防止が、肥満糖尿病対象または肥満のリスクがある糖尿病対象に治療有効投薬量の速効型インスリンをヒアルロナン分解酵素と組み合わせて投与することによって達成される。組成物は、食事時間またはその前後に投与することができ、
a)ヒアルロナン分解酵素の量は、投与される速効型インスリンを超速効型インスリンにするのに十分な量であり;
b)速効型インスリンの投薬量は、ヒアルロナン分解酵素の存在下に同じ方法で投与された、より高い投薬量の同じ速効型インスリンと、投与後最初の40分以内に、実質的に同程度の食事時グルコースクリアランスを達成する。
超速効型インスリン組成物中の速効型インスリンの投薬量は、より高用量の速効型インスリンと比較して、食後低血糖および肥満を引き起こす傾向が低い。典型的な実施形態では、糖尿病対象が2型糖尿病を持ち、対象に投与される速効型インスリンの量は、その速効型インスリンがヒアルロナン分解酵素の非存在下に同じ方法で投与される場合と比較して、減らされる。例えば2型糖尿病対象に投与される速効型インスリンの量は、少なくともまたは約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上減らすことができる。
対象における食後高血糖を処置するために投与される速効型インスリンの量が、ヒアルロナン分解酵素の非存在下に同じ方法で投与した場合に高血糖を処置するのに必要な同じ速効型インスリンの量と比較して、減少するように、速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素とを含有するインスリン組成物を、食事時インスリン治療による体重増加のリスクがある糖尿病対象に、食事時間またはその前後に、皮下投与することによって、食事時インスリン治療に関連する体重増加を軽減しまたは防止するための方法も提供する。速効型インスリンの量が減ることにより、ヒアルロナン分解酵素を含有する組成物は、対象において体重増加を引き起こす可能性が低くなる。例えば2型糖尿病対象には、ヒアルロナン分解酵素の非存在下に同じ方法で投与した場合に高血糖を処置するのに必要な同じ速効型インスリンの量よりも少なくともまたは約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%または80%少ない量の速効型インスリンを含有する上述のインスリン組成物を投与することができる。いくつかの例では、本インスリン組成物が、食事時インスリン治療の慢性レジメンで投与される。
本発明は、食事時インスリン治療による体重増加のリスクがある糖尿病対象に、少なくとも30日間にわたって、一連の皮下食事時インスリン治療を施すことによって、糖尿病対象における体重増加を軽減しまたは防止するための方法を提供する。この治療中に投与される食事時インスリン投薬量は、速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素との組合せを含有する。各投薬量中のヒアルロナン分解酵素の量は、速効型インスリンを超速効型インスリン組成物にするのに十分な量であり、対象の食後高血糖を処置するために投薬量中に含まれる速効型インスリンの量は、ヒアルロナン分解酵素の非存在下で高血糖を処置するのに必要な同じ速効型インスリンの量よりも少ない。そのような一連の食事時インスリン治療は、ヒアルロナン分解酵素の非存在下でより高い投薬量の速効型インスリンを使って行われる一連の類似治療よりも、少ない体重増加をもたらしうる。
対象に食事時投薬量の超速効型インスリン組成物を投与することにより、対象におけるグルコースレベルを管理するための方法であって、
a)超速効型インスリン組成物が、治療有効量の速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素とを含み;
b)速効型インスリンがレギュラーインスリンであり;
c)該投薬量が、ヒアルロナン分解酵素の非存在下に同じ投与経路で投与される同じ投薬量またはより高い投薬量の同じ速効型レギュラーインスリンよりも食事時間に近い時点で投与されるか、またはそのような時点での食事時投与または食前投与が推奨され;
d)該投薬量の超速効型インスリン組成物が、ヒアルロナン分解酵素を伴わない速効型レギュラーインスリンと少なくとも同じ治療効果を持つ、
方法も提供する。
超速効型インスリン組成物は、例えば、食事前20分未満またはその前後から食事後10もしくは20分未満またはその前後までの間に投与されるか、またはそのような時点での投与が推奨される。通例、超速効型インスリン組成物中の速効型インスリンの投薬量は、ヒアルロナン分解酵素の非存在下に同じ経路で投与される速効型インスリンの投薬量に等しいか、それ未満である。
本明細書に記載する方法のいずれかを実施する際には、組成物を、任意の適切な経路で、任意の適切な器具または容器を使って、例えばシリンジ、インスリンペン、インスリンポンプまたはクローズドループシステムによって、投与することができる。本組成物または組合せは、上述の速効型インスリンおよびヒアルロナン分解酵素をどれでも、上述した任意の追加試薬類と共に含有することができる。対象に投与される組成物中のインスリンの量は、1回の食事につき1回分の食事時投薬量であることができ、0.001U/kg、0.005U/kg、0.01U/kg、0.02U/kg、0.05U/kg〜0.30U/kg、例えば0.05U/kg、0.06U/kg、0.07U/kg、0.08U/kg、0.09U/kg、0.10U/kg、0.11U/kg、0.12U/kg、0.13U/kg、0.14U/kg、0.15U/kg、0.20U/kg、0.25U/kg、0.30U/kg、0.40U/kg、0.50U/kg、1.0U/kg、1.5/kgもしくは2U/kgまたはその前後である。対象に投与されるヒアルロナン分解酵素の量は、1回の食事につき1回分の食事時投薬量の速効型インスリンと(個別に、間欠的に、または別々の組成物に入れて、もしくは共製剤化して、一緒に)共投与するための量である。ヒアルロナン分解酵素の量は、0.3U、0.5U、1U、2U、5U、10U、20U、30U、40U、50U、100U、150U、200U、250U、300U、350U、400U、450U、500U、600U、700U、800U、900U、1000U、2,000U、3,000U、4,000単位、5,000Uもしくはそれ以上またはその前後であることができる。
包装材料と、その包装材料内の、任意の超速効型インスリン組成物または組合せとを、糖尿病対象への投与に関する随意の指示書と共に含有する製品を提供する。
速効型インスリン、インスリン、ヒアルロナン分解酵素および他の構成要素には、上述したものが含まれる。特に、本明細書に記載する組成物および組合せが投与される。
rHuPH20の共投与を伴ってまたはそのような共投与を伴わずに皮下投与した場合の速効型インスリン類似体であるHumalog(登録商標)インスリンと速効型レギュラーインスリンであるHumulin(登録商標)Rインスリンの薬物動態プロファイルを表す図である。高インスリン正常血糖クランプ法を使って正常な健常被験者に投与した後のさまざまな時点における血漿中インスリン濃度を、ラジオイムノアッセイ(RIA)で決定した。 高インスリン正常血糖クランプ法を使って、rHuPH20の共投与を伴ってまたはそのような共投与を伴わずに皮下投与した場合の、速効型インスリン類似体であるHumalog(登録商標)インスリンと速効型レギュラーインスリンであるHumulin(登録商標)Rインスリンの薬力学プロファイルを表す図である。正常な健常被験者にインスリンを投与した後に血中グルコースレベルを90〜110mg/dLに維持するのに必要なグルコース注入速度を決定した。
[詳細な説明]
摘要
A.定義
B.「超速効型」インスリン
1.インスリン、糖尿病および既存の速効型インスリン治療の概観
2.超速効型インスリン組成物の薬力学および薬物動態
C.インスリンポリペプチドおよびインスリン製剤
D.ヒアルロナン分解酵素
1.ヒアルロニダーゼ
a.哺乳類型ヒアルロニダーゼ
b.細菌ヒアルロニダーゼ
c.ヒル、他の寄生生物および甲殻類に由来するヒアルロニダーゼ
2.他のヒアルロナン分解酵素
3.可溶性ヒアルロナン分解酵素
a.可溶性ヒトPH20
b.組換え可溶性ヒトPH20(rHuPH20)
4.ヒアルロナン分解酵素のグリコシル化
5.ヒアルロナン分解酵素の修飾によるその薬物動態特性の改良
E.可溶性ヒアルロニダーゼをコードする核酸およびそのポリペプチドを作製する方法
1.ベクターおよび細胞
2.リンカー部分
3.発現
a.原核細胞
b.酵母細胞
c.昆虫細胞
d.哺乳動物細胞
e.植物
4.精製技法
F.インスリンおよび可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドの製造、製剤および投与
1.製剤
凍結乾燥粉末
2.投薬量および投与
投与様式
a.シリンジ
b.インスリンペン
c.インスリンポンプおよび他のインスリン送達器具
d.クローズドループシステム
G.活性、バイオアベイラビリティおよび薬物動態を評価する方法
1.薬物動態、薬力学および認容性
2.生物学的活性
a.インスリン
b.ヒアルロナン分解酵素
H.治療用途
1.真性糖尿病(Diabetes Mellitus)
a.1型糖尿病
b.2型糖尿病
c.妊娠糖尿病
2.重篤患者のインスリン治療
I.併用治療
J.製品およびキット
K.実施例
A.定義
別段の定義をしない限り、本明細書において使用する技術用語および科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者に共通して理解されているものと同じ意味を持つ。本明細書の全体にわたって言及する特許、特許出願、出願公開および刊行物、Genbank配列、データベース、ウェブサイトおよび他の公表された資料はいずれも、別段の注記がない限り、引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。用語に関する定義が本明細書に複数存在する場合は、この項における定義が優先される。URLまたは他の同様の識別子もしくはアドレスに言及する場合、そのような識別子は変更されることがあり、インターネット上の特定情報は移り変わることがあるが、インターネットを検索することによって等価な情報を見つけ出すことができると理解される。それらへの言及は、そのような情報が入手可能であることおよび公に流布されていることを証明している。
本明細書にいう「インスリン」は、グルコースの取り込みおよび貯蔵を増加させかつ/または内因性グルコース産生を減少させるように作用するホルモン、その前駆体または合成もしくは組換え類似体を指す。典型的なヒトインスリンは、タンパク質を小胞体(ER)に向かわせる24アミノ酸のシグナルペプチドを含む110アミノ酸の前駆体ポリペプチドであるプレプロインスリン(配列番号101)として翻訳され、そのシグナル配列が切断されて、プロインスリン(配列番号102)をもたらす。プロインスリンは、さらにプロセシングを受けて、31アミノ酸のCペプチド、すなわち連結鎖(connecting chain)ペプチド(配列番号101に記載するプレプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基57〜87および配列番号102に記載するプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基33〜63に相当)を放出する。結果として生じるインスリンは、21アミノ酸のA鎖(配列番号101に記載するプレプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基90〜110、および配列番号102に記載するプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基66〜86に相当)と、30アミノ酸のB鎖(配列番号101に記載するプレプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基25〜54、および配列番号102に記載するプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基1〜30に相当)とを含み、それらがジスルフィド結合で架橋されている。適正に架橋されたヒトインスリンは3つのジスルフィド橋を含み、1つはA鎖の位置7とB鎖の位置7の間、2つ目はA鎖の位置20とB鎖の位置19の間、そして3つ目はA鎖の位置6と11の間にある。インスリンへの言及は、単鎖型または二鎖型のプレプロインスリン、プロインスリンおよびインスリンポリペプチド、活性を持つその切断型を包含し、対立遺伝子変異型および種変異型、スプライス変異型によってコードされる変異型、ならびにインスリン類似体などの他の変異型、例えば配列番号101に記載する前駆体ポリペプチドまたはその成熟型に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を持つポリペプチドを包含する。典型的なインスリン類似体には、配列番号147〜149、152に記載するもの、ならびに配列番号150、156、158、160、162および164に記載するA鎖および/または配列番号151、153〜155、157、159、161、163および165に記載するB鎖を含むものなどがある。
典型的なインスリンポリペプチドは、哺乳動物(ヒトを含む)由来のものである。ヒト由来のインスリンの典型的なアミノ酸配列を配列番号101〜104に記載する。典型的なインスリン類似体として、配列番号147〜149、152に記載するもの、ならびに配列番号150、156、158、160、162および164に記載するA鎖および/または配列番号151、153〜155、157、159、161、163および165に記載するB鎖を含むものが挙げられる。インスリンポリペプチドには、非ヒト由来のもの、例えば限定するわけではないが、配列番号105〜146に記載する前駆体インスリンポリペプチドのいずれかなども含まれる。インスリンへの言及は、単量体および多量体インスリン、例えば六量体インスリン、ならびにヒト化インスリンを包含する。
本明細書にいう「速効型インスリン」は、速効型インスリンの投与時または速効型インスリンの投与後約4時間以内の対象における実際に感知されたまたは予想される高血糖状態(例えば摂食によって起こるまたは摂食によって起こると予想される食事時高血糖状態)に呼応して糖尿病対象に急性投与するための、任意のインスリンまたは速効型インスリン組成物を指し、速効型インスリンは、これにより、急性高血糖状態を防止、管理または寛解することができる。通例、速効型インスリン組成物は、対象に皮下投与された後、4時間以下の時点またはその前後の時点で、ピークインスリンレベルを示す。速効型インスリン組成物には、組換えインスリンおよび単離されたインスリン(「レギュラー」インスリンとも呼ばれる)、例えばHumulin(登録商標)Rとして販売されているインスリン、ブタインスリンおよびウシインスリン、ならびにアミノ酸改変によって迅速作用型(rapid acting)になるように設計されたインスリン類似体などがある。典型的なレギュラーインスリン調製物には、ヒトレギュラーインスリン、例えばHumulin(登録商標)R、Novolin(登録商標)RおよびVelosulin(登録商標)という商標で販売されているもの、米国薬局方ヒトインスリン(Insulin Human, USP)および米国薬局方ヒトインスリン注射液(Human Insulin Injection, USP)、ならびに例えばトロント・インスリン(Toronto Insulin)、オールド・インスリン(Old Insulin)、およびクリアー・インスリン(Clear Insulin)などといったインスリンの酸製剤、およびイレチン(Iletin)II(登録商標)(ブタインスリン)などのレギュラーブタインスリンなどがあるが、これらに限るわけではない。典型的な迅速作用型インスリン類似体には、例えばインスリンリスプロ(例えばHumalog(登録商標)インスリン)、インスリンアスパルト(例えばNovoLog(登録商標)インスリン)、およびインスリングルリジン(例えばApidra(登録商標)インスリン)、VIAject(登録商標)およびVIAtab(登録商標)として販売されている速効型インスリン組成物(例えば米国特許第7,279,457号参照)などがある。用語「速効型インスリン」は「基礎作用型インスリン」を包含しないが、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、場合によっては、速効型インスリンの他に、1つ以上の基礎作用型インスリンを含むことができる。
本明細書にいうヒトインスリンは、ヒトポリペプチド(その対立遺伝子変異型および類似体を含む)に基づいて合成的にまたは組換え法で生産されるインスリンを指す。
本明細書にいう速効型ヒトインスリンまたはヒト速効型インスリン組成物には、速効型である任意のヒトインスリンまたはヒトインスリンの組成物が含まれるが、レギュラーブタインスリンなどの非ヒトインスリンは含まれない。
本明細書で使用する用語「基礎作用型インスリン」または「基礎インスリン」は、糖尿病などの慢性状態を処置するための総合的処置レジメンの一部として基礎インスリンレベルを維持するために投与されるインスリンを指す。通例、基礎作用型インスリンは、定期的に(例えば1日1回または2回)投与した場合に、インスリンの放出制御により、適当に安定した状態のインスリンレベルが維持されるように製剤化される。基礎作用型インスリンには、結晶性インスリン(例えばNPHおよびLente(登録商標)、プロタミンインスリン、サーフェン(surfen)インスリン)、基礎インスリン類似体(インスリングラルギン、HOE901、NovoSol Basal)、およびインスリンの他の化学製剤(例えばアラビアゴム、レシチンまたは油懸濁液)であってレギュラーインスリンの吸収速度を遅らせるものなどがある。本明細書にいう基礎作用型インスリンは、通例、持効型(long-acting)(通例、到達するピーク濃度は比較的低い一方、約20〜30時間を超える最大作用持続時間を持つもの)または中間型(intermediate-acting)(通例、投与の約4〜12時間後にピークインスリン濃度を引き起こすもの)と理解されるインスリンを含みうる。
本明細書にいう「超速効型インスリン組成物」は、そのインスリン組成物が、対象への非経口投与後、最初の40分間に、ヒアルロナン分解酵素の非存在下に同じ経路で同じ投薬量の同じ速効型インスリンを投与した後に同じ期間で対象に与えられる累積全身インスリン曝露よりも大きな累積全身インスリン曝露を対象に与えるように、速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素(例えば可溶性ヒアルロニダーゼ、例えば限定するわけではないが、rHuPH20調製物)とを含有するインスリン組成物を指す。本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、場合によっては、基礎作用型インスリンを含むことができる。
本明細書で使用する用語「高血糖状態」または「高血糖」は、血中グルコースの望ましくない上昇を指す。
本明細書で使用する用語「低血糖状態」または「低血糖」は、血中グルコースの望ましくない低下を指す。
本明細書にいう「全身グルコースクリアランス」または「全身グルコース代謝」は、血液からのグルコースの除去を指し、速度(量/時間)として表現するか、量(一定期間での量)として表現することができる。全身グルコースクリアランスは、当技術分野で知られる任意の適切な方法を使って決定することができる。例えば全身グルコースクリアランスは、本明細書で例示し説明するような空腹条件下での高インスリン正常血糖クランプ法を使って測定することができ、この場合は、血中グルコースレベルを一定(例えば90〜110mg/dL)に維持するために静脈内に注入されるグルコースの量または速度が、全身グルコースクリアランスに相当する。したがって、異なるインスリン組成物によって達成される全身グルコースクリアランスの相違、例えば超速効型インスリン組成物の投与によって達成される全身グルコースクリアランスと速効型インスリンによって達成される全身グルコースクリアランスとの相違は、そのような方法を使って決定することができる。コンパレータ(comparator)インスリン間の全身グルコースクリアランスの相違も、グルコース負荷試験後の所与の時点におけるコンパレータインスリンの相対的グルコース降下活性を測定することによって決定することができる。例えば、グルコース負荷試験(例えば当業者に周知の75g経口ブドウ糖負荷試験または標準化試験食製剤(standardized test meal formulation)を使って、異なるインスリン調製物を比較することができる。そのような負荷試験では、ある量のグルコースまたは他の糖質を被験者に投与し、その直後にインスリン組成物の非静脈内非経口投与を行う。次に、血中グルコースレベル(すなわち被験者の血液中のグルコースの濃度)を、所定の時間に測定して、インスリンの血中レベル降下効果(blood lowering effect)を決定する。さまざまなインスリン調製物間のこれらの経口負荷比較では、全身グルコース取り込みが可能になるように十分な時間が経過した後に、血中グルコースレベルを測定しなければならない。全身グルコースクリアランスを決定するための上述の試験は、動物モデルおよび/またはヒト被験者を使って行うことができる。
本明細書にいう「血糖管理」または「血中グルコースレベルを管理する」とは、血中グルコース濃度を望ましいレベル(通例、70〜130mg/dLまたは90〜110mg/dL)に維持することを指す。
本明細書において「累積全身インスリン曝露」または「インスリンへの累積全身曝露」とは、インスリンの非経口投与後に血中に吸収されたインスリンの量を指す。インスリンへの累積全身曝露は、特定の期間について曲線下面積を計算することによって決定することができ、この場合、曲線は、血中、血清中または血漿中のインスリン濃度を時間の関数としてプロットすることによって作成される。
本明細書にいうクローズドループシステムは連続的な血糖管理を行うための統合システムである。クローズドループシステムは、血中グルコースを測定するための機構、インスリン組成物を含む1つ以上の組成物を送達するための機構、血糖管理を達成するために送達する必要があるインスリンの量を決定するための機構を含む。したがって、通例、クローズドループシステムは、グルコースセンサー、インスリン送達器具、例えばインスリンポンプ、およびグルコースセンサーからの情報を受け取り、インスリン送達器具に指令を与えるコントローラーを含む。指令はコントローラー中のソフトウェアによって生成させることができる。ソフトウェアは、通例、グルコースセンサーによって検出された血中グルコースレベルに基づいて、または使用者が予想する血中グルコースレベルに基づいて、血糖管理を達成するために送達する必要があるインスリンの量を決定するためのアルゴリズムを含む。
本明細書にいう投与レジーム(dosing regime)は、投与されるインスリンの量および投与の頻度を指す。投与レジームは処置されるべき疾患または状態の関数であり、したがって変動しうる。
本明細書にいうヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナンポリマー(ヒアルロン酸またはHAともいう)を、より低分子量のフラグメントに切断する反応を触媒する酵素を指す。ヒアルロナン分解酵素の典型例は、ヒアルロニダーゼ、そして特に、ヒアルロナンを解重合する能力を持つコンドロイチナーゼおよびリアーゼである。ヒアルロナン分解酵素である典型的コンドロイチナーゼには、例えばコンドロイチンABCリアーゼ(コンドロイチナーゼABCとも呼ばれている)、コンドロイチンACリアーゼ(コンドロイチン硫酸リアーゼまたはコンドロイチン硫酸エリミナーゼとも呼ばれている)およびコンドロイチンCリアーゼなどがあるが、これらに限るわけではない。コンドロイチンABCリアーゼは2つの酵素、コンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼ(EC4.2.2.20)およびコンドロイチン硫酸ABCエキソリアーゼ(EC4.2.2.21)を含む。典型的なコンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼおよびコンドロイチン硫酸ABCエキソリアーゼには、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)およびフラボバクテリウム・ヘパリナム(Flavovbacterium heparinum)に由来するものがあるが、これらに限るわけではない(プロテウス・ブルガリスのコンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼを配列番号98に記載する;Satoら (1994) Appl.Microbiol.Biotechnol. 41(1):39-46)。細菌由来の典型的コンドロイチナーゼAC酵素には、フラボバクテリウム・ヘパリナムに由来するもの、配列番号99に記載するビクチバリス・バデンシス(Victivallis vadensis)に由来するもの、およびアルスロバクター・アウレセンス(Arthrobacter aurescens)に由来するもの(Tkalecら (2000) Applied and Environmental Microbiology 66(1):29-35;Ernstら (1995) Critical Reviews in Biochemistry and Microbilogy 30(5):387-444)があるが、これらに限るわけではない。。細菌由来の典型的コンドロイチナーゼC酵素には、ストレプトコッカス(Streptococcus)およびフラボバクテリウム(Flavobacterium)に由来するものがあるが、これらに限るわけではない(Hibiら (1989) FEMS-Microbiol-Lett. 48(2):121-4;Michelacciら (1976) J.Biol.Chem. 251:1154-8;Tsudaら (1999) Eur.J.Biochem. 262:127-133)。
本明細書にいうヒアルロニダーゼは、ヒアルロナン分解酵素の一種類を指す。ヒアルロニダーゼには、細菌ヒアルロニダーゼ(EC4.2.2.1またはEC4.2.99.1)、ヒル、他の寄生生物、および甲殻類に由来するヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.36)、および哺乳類型ヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.35)が含まれる。ヒアルロニダーゼには、例えば限定するわけではないがマウス、イヌ、ネコ、ウサギ、鳥類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、魚類、カエル、細菌など、非ヒト由来のもの、ならびにヒル、他の寄生生物、および甲殻類に由来するものが、いずれも含まれる。典型的な非ヒトヒアルロニダーゼには、ウシ(配列番号10、11、64およびBH55(米国特許第5,747,027号および同第5,827,721号))、スズメバチ(yellow jacket wasp)(配列番号12および13)、ミツバチ(配列番号14)、クロスズメバチ(white-face hornet)(配列番号15)、アシナガバチ(paper wasp)(配列番号16)、マウス(配列番号17〜19、32)、ブタ(配列番号20〜21)、ラット(配列番号22〜24、31)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジ(配列番号26、27、63および65)、オランウータン(配列番号28)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、アルスロバクター属(Arthrobacter)(FB24株)(配列番号67)、デロビブリオ・バクテリオボラス(Bdellovibrio bacteriovorus)(配列番号68)、アクネ菌(Propionibacterium acnes)(配列番号69)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(配列番号70);18RS21株(配列番号71);血清型Ia型(配列番号72);血清型III型(配列番号73)、黄色ブドウ球菌(Staphlococcus aureus)(COL株)(配列番号74);MRSA252株(配列番号75および76);MSSA476株(配列番号77);NCTC8325株(配列番号78);ウシ(bovine)RF122株(配列番号79および80);USA300株(配列番号81)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)(配列番号82);ATCC BAA-255/R6株(配列番号83);血清型2型D39/NCTC7466株(配列番号84)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)(血清型M1型)(配列番号85);血清型M2型MGAS10270株(配列番号86);血清型M4型MGAS10750株(配列番号87);血清型M6型(配列番号88);血清型M12型MGAS2096株(配列番号89および90);血清型M12型MGAS9429株(配列番号91);血清型M28型(配列番号92);ブタレンサ球菌(Streptococcus suis)(配列番号93〜95);ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)(ATCC700601/ES114株(配列番号96))に由来するヒアルロニダーゼ、およびストレプトミセス・ヒアルロノリチカス(Streptomyces hyaluronolyticus)のヒアルロニダーゼ酵素(これはヒアルロン酸に特異的であり、コンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸を切断しない(Ohya, T.およびKaneko, Y. (1970) Biochim.Biophys.Acta 198:607)などがある。ヒアルロニダーゼにはヒト由来のものも含まれる。典型的なヒトヒアルロニダーゼには、HYAL1(配列番号36)、HYAL2(配列番号37)、HYAL3(配列番号38)、HYAL4(配列番号39)、およびPH20(配列番号1)がある。ヒアルロニダーゼには、ヒツジおよびウシPH20、可溶性ヒトPH20および可溶性rHuPH20などの可溶性ヒアルロニダーゼも含まれる。市販されているウシまたはヒツジ可溶性ヒアルロニダーゼの例は、Vitrase(登録商標)(ヒツジヒアルロニダーゼ)およびAmphadase(登録商標)(ウシヒアルロニダーゼ)である。
ヒアルロナン分解酵素への言及は、前駆体ヒアルロナン分解酵素ポリペプチドおよび成熟ヒアルロナン分解酵素ポリペプチド(例えばシグナル配列が除去されているもの)、活性を持つその切断型を包含し、対立遺伝子変異型および種変異型、スプライス変異型によってコードされる変異型、および他の変異型、例えば配列番号1および10〜48、63〜65、67〜100に記載する前駆体ポリペプチド、またはその成熟型に対して、少なくとも40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を持つポリペプチドを包含する。例えば、ヒアルロナン分解酵素への言及は、配列番号50〜51に記載するヒトPH20前駆体ポリペプチド変異型も包含する。ヒアルロナン分解酵素には、化学修飾または翻訳後修飾を含むものも、化学修飾または翻訳後修飾を含まないものも包含される。そのような修飾には、例えばPEG化、アルブミン付加、グリコシル化、ファルネシル化、カルボキシル化、ヒドロキシル化、リン酸化、および当技術分野において知られる他のポリペプチド修飾が含まれるが、これらに限るわけではない。
本明細書にいう可溶性ヒアルロニダーゼは、生理的条件下におけるその可溶性を特徴とするポリペプチドを指す。可溶性ヒアルロニダーゼは、例えば、37℃に温めたTriton X-114溶液の水相へのその分配によって識別することができる(Bordierら (1981) J.Biol.Chem., 256:1604-7)。膜固定型(例えば脂質固定型)ヒアルロニダーゼは、洗剤が豊富な相に分配されるが、ホスホリパーゼCによる処理後は、洗剤が少ない相または水相に分配されるだろう。可溶性ヒアルロニダーゼには、ヒアルロニダーゼの膜への固定に関わる1つまたはそれ以上の領域が除去または修飾されている膜固定型ヒアルロニダーゼであって、その可溶型がヒアルロニダーゼ活性を保っているものが含まれる。可溶性ヒアルロニダーゼには、組換え可溶性ヒアルロニダーゼ、および例えばヒツジまたはウシの精巣抽出物などといった自然源に含まれるもの、またはそのような自然源から精製されたものが含まれる。そのような可溶性ヒアルロニダーゼの典型例は、可溶性ヒトPH20である。他の可溶性ヒアルロニダーゼにはヒツジ(配列番号27、63、65)およびウシ(配列番号11、64)PH20がある。
本明細書にいう可溶性ヒトPH20またはsHuPH20には、発現した時にポリペプチドが可溶性になるように、C末端のグリコシルホスファチジルイノシトール(glycosylphospatidylinositol:GPI)付加部位の全部または一部を欠いている成熟ポリペプチドが含まれる。典型的なsHuPH20ポリペプチドには、配列番号4〜9および47〜48のいずれか一つに記載するアミノ酸配列を持つ成熟ポリペプチドがある。そのような典型的sHuPH20ポリペプチドの前駆体ポリペプチドはシグナル配列を含む。前駆体の典型例は配列番号3および40〜46に記載するものであり、これらはそれぞれ35アミノ酸のシグナル配列をアミノ酸位置1〜35に含有している。可溶性HuPH20ポリペプチドには、本明細書に記載する生産および精製方法の途中またはその後に分解されたものも含まれる。
本明細書にいう可溶性組換えヒトPH20(rHuPH20)は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で組換え発現される可溶型のヒトPH20を指す。可溶性rHuPH20は、シグナル配列を含む、配列番号49に記載する核酸によってコードされる。また、その対立遺伝子変異型および他の可溶性変異型であるDNA分子も含まれる。可溶性rHuPH20をコードする核酸は成熟ポリペプチドを分泌するCHO細胞中で発現される。培養培地中に生産された状態ではC末端に不均一性が存在するので、生成物は配列番号4〜9の1つ以上をさまざまな存在比で含みうる分子種の混合物を含む。対応する対立遺伝子変異型および他の変異型、例えば配列番号50〜51に記載する前駆体ヒトPH20ポリペプチドに対応するものなども含まれる。他の変異型は、それらがヒアルロニダーゼ活性を保持し、可溶性である限りにおいて、配列番号4〜9および47〜48のいずれかと60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を持つことができる。
本明細書にいう活性とは、完全長(完全)タンパク質に関連するポリペプチドまたはその一部の1つまたは複数の機能的活性を指す。機能的活性には、生物学的活性、触媒活性または酵素活性、抗原性(抗ポリペプチド抗体に結合する能力または抗ポリペプチド抗体への結合に関してポリペプチドと競合する能力)、免疫原性、多量体を形成する能力、およびそのポリペプチドの受容体またはリガンドに特異的に結合する能力が含まれるが、これらに限るわけではない。
本明細書にいうヒアルロニダーゼ活性とは、ヒアルロン酸の切断を酵素的に触媒する能力を指す。米国薬局方(USP)XXIIのヒアルロニダーゼアッセイでは、酵素をHAと37℃で30分間反応させた後に残っている高分子量のヒアルロン酸またはヒアルロナン(HA)基質の量を測定することにより、ヒアルロニダーゼ活性を間接的に決定する(USP XXII-NF XVII (1990) 644-645, United States Pharmacopeia Convention,Inc, メリーランド州ロックビル)。任意のヒアルロニダーゼの相対的活性を単位数の形で確かめるために、アッセイでは、参照標準(Reference Standard)溶液を使用することができる。ヒアルロニダーゼ(例えば可溶性rHuPH20)のヒアルロニダーゼ活性を決定するためのインビトロアッセイは当技術分野ではよく知られており、本明細書でも説明する。典型的なアッセイには、切断されていないヒアルロン酸が血清アルブミンと結合した時に形成される不溶性沈殿物を検出することによってヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸の切断を間接的に測定する後述の微小濁度(microturbidity)アッセイ(例えば実施例3参照)がある。参照標準を使って、例えば、被験ヒアルロニダーゼの活性を単位数の形で決定するための標準曲線を作成することができる。
ヒアルロナン分解酵素に関して、本明細書で使用する「機能的に等価な量」またはその文法的異形は、ヒアルロニダーゼなどの基準酵素のある量(例えば既知単位数のヒアルロニダーゼ活性)と同じ効果を達成するヒアルロナン分解酵素の量を指す。例えば、任意のヒアルロナン分解酵素の活性を、rHuPH20の活性と比較することで、既知量のrHuPH20と同じ効果を達成するであろう、機能的に等価な量のヒアルロナン分解酵素を決定することができる。例えば、展着剤(spreading agent)または拡散剤(diffusing agent)として作用するというヒアルロナン分解酵素の能力は、それをトリパンブルーと共にマウスの外側皮膚(lateral skin)中に注射することによって決定することができ(例えば米国特許出願公開第20050260186号参照)、例えば100単位のヒアルロニダーゼ参照標準と同じ量の拡散を達成するのに要求されるヒアルロナン分解酵素の量を決定することができる。したがって、要求されるヒアルロナン分解酵素の量は、100単位と機能的に等価である。もう一つの例では、共投与されたインスリンの吸収レベルまたは吸収速度を増加させるというヒアルロナン分解酵素の能力を、下記実施例1で説明するように、ヒト被験者で評価することができ、例えば投与されたrHuPH20の量と同じ、インスリンの吸収レベルおよび吸収速度の増加を達成するのに要求されるヒアルロナン分解酵素の量を、(例えば最大血中インスリン濃度(Cmax)、最大血中インスリン濃度を達成するのに要する時間(tmax)および所与の期間における累積全身インスリン曝露(AUC)を評価することなどによって)決定することができる。
本明細書にいう天然α-アミノ酸の残基とは、ヒトにおいてアミノアシルtRNA分子がそのコグネートmRNAコドンを特異的に認識することによってタンパク質中に組み込まれる、自然界に見いだされる20種類のα-アミノ酸の残基である。
本明細書にいう核酸には、DNA、RNA、およびその類似体、例えばペプチド核酸(PNA)、ならびにその混合物が含まれる。核酸は一本鎖または二本鎖であることができる。プローブまたはプライマー(これは、場合によっては、蛍光ラベルまたは放射性ラベルなどの検出可能なラベルなどによって標識される)に関する場合は、一本鎖分子が考えられる。そのような分子は、通例、ライブラリーをプローブまたはプライミングするために、その標的が統計的にユニークであるか、または低いコピー数(通例、5未満、一般的には3未満)を持つことになるような長さを持つ。一般にプローブまたはプライマーは、関心対象の遺伝子と相補的なまたは同一な配列を持つ少なくとも14、16または30個の連続するヌクレオチドを含有する。プローブおよびプライマーは10、20、30、50、100核酸長(nucleic acids long)またはそれ以上の長さであることができる。
本明細書にいうペプチドは長さが2アミノ酸以上かつ長さが40アミノ酸以下であるポリペプチドを指す。
本明細書において、本明細書に記載するさまざまなアミノ酸配列に見いだされるアミノ酸は、その公知の三文字記号または一文字記号(表1)に従って特定される。さまざまな核酸フラグメント中に見いだされるヌクレオチドは、当技術分野で常用される標準的な一文字表記で指定される。
本明細書にいう「アミノ酸」は、アミノ基とカルボン酸基とを含有する有機化合物である。ポリペプチドは2つ以上のアミノ酸を含有する。本明細書に関して、アミノ酸には、20種の天然アミノ酸、非天然アミノ酸およびアミノ酸類似体(すなわちα-炭素が側鎖を持つアミノ酸)が含まれる。
本明細書にいう「アミノ酸残基」は、ポリペプチドのペプチド結合が化学的に消化(加水分解)された時に形成されるアミノ酸を指す。本明細書に記載するアミノ酸残基は「L」異性体型であると考えられる。「D」異性体型の残基はそのように表記され、ポリペプチドが所望の機能的性質を保持する限りにおいて、任意のLアミノ酸残基の代わりにそれを使用することができる。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を指す。COOHは、ポリペプチドのカルボキシル末端に存在する遊離カルボキシル基を指す。J.Biol.Chem., 243:3552-3559 (1969)に記載され、37C.F.R.§1.821〜1.822で採用された標準的ポリペプチド命名法に従って、アミノ酸残基の略号を表1に示す。
表1:対応表
Figure 0005809330
本明細書において式で表されるアミノ酸残基配列は、全て、左から右に、アミノ末端からカルボキシル末端に向かう通常の向きで表されていることに注意すべきである。また、「アミノ酸残基」という表現は、対応表(表1)に挙げたアミノ酸ならびに修飾アミノ酸および異常アミノ酸、例えば37C.F.R.§1.821〜1.822で言及され引用により本明細書に組み込まれるものを包含すると、広く定義される。さらにまた、アミノ酸残基配列の最初または最後にあるダッシュ記号は、1つ以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合、アミノ末端基(例えばNH2)またはカルボキシル末端基(例えばCOOH)へのペプチド結合を示すことに注意すべきである。
本明細書にいう「天然アミノ酸」とは、ポリペプチド中に見いだされる20種類のL-アミノ酸を指す。
本明細書にいう「非天然アミノ酸」は、天然アミノ酸に類似する構造を持つが、天然アミノ酸の構造および反応性を模倣するように構造的に修飾されている有機化合物を指す。したがって非天然アミノ酸は、例えば20種類の天然アミノ酸以外のアミノ酸またはアミノ酸類似体を包含し、例えばアミノ酸のD-立体異性体(isostereomer)を含むが、これらに限るわけではない。典型的な非天然アミノ酸は本明細書に記載され、当業者に知られている。
本明細書にいうDNAコンストラクトは、DNAのセグメントが自然界には見いだされない形で組み合わされ隣接して配置されている一本鎖または二本鎖の線状または環状DNA分子である。DNAコンストラクトは、人為的操作の結果として存在し、操作された分子のクローンおよび他のコピーを含む。
本明細書にいうDNAセグメントは、指定された属性を持つ、より大きなDNA分子の一部分である。例えば、指定されたポリペプチドをコードするDNAセグメントは、プラスミドまたはプラスミドフラグメントなどといった、より長いDNA分子の一部であって、5'から3'に向かう方向に読んだ場合に、指定されたポリペプチドのアミノ酸配列をコードするものである。
本明細書で使用する用語ポリヌクレオチドは、5'端から3'端に向かって読み取られるデオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーを意味する。ポリヌクレオチドにはRNAおよびDNAが包含され、自然源から単離するか、インビトロで合成するか、天然分子と合成分子の組合せから製造することができる。ポリヌクレオチド分子の長さは、本明細書では、ヌクレオチド数(「nt」と略記)または塩基対数(「bp」と略記)で記載される。ヌクレオチドという用語は、文脈に応じて、一本鎖分子および二本鎖分子に使用される。この用語が二本鎖分子に適用される場合、それは全長を表すために使用され、塩基対という用語と等価であると理解されるだろう。二本鎖ポリヌクレオチドの2本の鎖の長さがわずかに異なりうること、およびそれらの末端がずれていてもよいこと、したがって二本鎖ポリヌクレオチド分子内の全てのヌクレオチドが対を形成しているとは限らないことは、当業者には理解されるだろう。そのような非対合末端は、一般に、20ヌクレオチド長を超えないだろう。
本明細書において、2つのタンパク質または核酸間の「類似性」とは、タンパク質のアミノ酸配列間または核酸のヌクレオチド配列間の類縁性を指す。類似性は、残基の配列およびそこに含まれる残基の同一性および/または相同性の度合いに基づくことができる。タンパク質間または核酸間の類似性の度合いを評価するための方法は、当業者には知られている。例えば、配列類似性を評価する一方法では、2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を、それら配列間の同一性が最大レベルになるように整列させる。「同一性」とは、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列が不変である程度を指す。アミノ酸配列の整列では(また、ある程度はヌクレオチド配列の整列でも)、アミノ酸(またはヌクレオチド)の保存的相違および/または頻繁な置換も考慮することができる。保存的相違とは、関与する残基の物理化学的性質が維持されるような相違である。整列はグローバル(配列の全長にわたり、全ての残基を含む、比較配列の整列)またはローカル(配列のうち、最も類似する1または複数の領域だけを含む部分の整列)であることができる。
「同一性」そのものは、当技術分野で認められている意味を持ち、公表された技法を使って算出することができる(例えば「Computational Molecular Biology」Lesk,A.M.編、Oxford University Press、ニューヨーク、1988;「Biocomputing: Informatics and Genome Projects」Smith,D.W.編、Academic Press、ニューヨーク、1993;「Computer Analysis of Sequence Data, Part I」Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編、Humana Press、ニュージャージー、1994;「Sequence Analysis in Molecular Biology」von Heinje,G.、Academic Press、1987;および「Sequence Analysis Primer」Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M Stockton Press、ニューヨーク、1991)を参照されたい)。2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の同一性を測定するための方法はいくつか存在するが、「同一性」という用語は当業者にはよく知られている(Carillo,H.およびLipton,D., SIAM J Applied Math 48:1073 (1988))。
本明細書にいう相同(核酸および/またはアミノ酸配列に関して)は、約25%以上の配列相同性、典型的には、25%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上の配列相同性を意味し、必要であれば正確なパーセンテージを指定することができる。本明細書においては、「相同性」および「同一性」という用語は、別段の表示がない限り、しばしば可換的に使用される。一般に、相同率または同一率を決定するには、最も高度な一致が得られるように配列が整列される(例えば「Computational Molecular Biology」Lesk,A.M.編、Oxford University Press、ニューヨーク、1988;「Biocomputing: Informatics and Genome Projects」Smith,D.W.編、Academic Press、ニューヨーク、1993;「Computer Analysis of Sequence Data, Part I」Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編、Humana Press、ニュージャージー、1994;「Sequence Analysis in Molecular Biology」von Heinje,G.、Academic Press、1987;および「Sequence Analysis Primer」Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M Stockton Press、ニューヨーク、1991;Carilloら (1988) SIAM J Applied Math 48:1073を参照されたい)。配列相同性により、保存されているアミノ酸の数は、標準的なアラインメントアルゴリズムプログラムで決定され、各供給者によって設定されたデフォルトギャップペナルティを用いて使用することができる。実質的に相同な核酸分子は、典型的には、中ストリンジェンシーまたは高ストリンジェンシーで、関心対象の核酸の全長にわたってハイブリダイズする。ハイブリダイズする核酸分子中のコドンの代わりに縮重したコドンを含有する核酸分子も考えられる。
任意の2分子が、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%「同一」または「相同」なヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を持つかどうかは、「FASTA」プログラムなどの公知コンピュータアルゴリズムを使用し、例えばPearsonら (1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444に記載されているようなデフォルトパラメータを使って決定することができる(他のプログラムには、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら, Nucleic Acids Research 12(I):387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul,S.F.ら, J Molec Biol 215:403 (1990))がある;「Guide to Huge Computers」Martin J.Bishop編、Academic Press、サンディエゴ、1994、およびCarilloら (1988) SIAM J Applied Math 48:1073)。例えば、米国国立バイオテクノロジー情報センターデータベースのBLAST機能を使って同一性を決定することができる。他の市販プログラムまたは公に利用可能なプログラムには、DNAStarの「MegAlign」プログラム(ウィスコンシン州マディソン)およびUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group(UWG)の「Gap」プログラム(ウィスコンシン州マディソン)などがある。タンパク質分子および/または核酸分子の相同率または同一率は、例えば、GAPコンピュータプログラム(例えばNeedlemanら (1970) J.Mol.Biol. 48:443、SmithおよびWaterman (1981) Adv.Appl.Math. 2:482による改訂版)を使って配列情報を比較することによって決定することができる。簡単に述べると、GAPプログラムは、類似性を、整列させた記号(すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸)のうち、類似しているものの数を、それら2つの配列の短い方の配列中の記号の総数で割ったものと定義する。GAPプログラムのデフォルトパラメータとしては、(1)SchwartzおよびDayhoff編「ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE」National Biomedical Research Foundation、353〜358頁(1979)に記載されているように、単項比較マトリックス(unary comparison matrix)(一致に対して1の値を、不一致に対して0の値を含む)およびGribskovら (1986) Nucl.Acids Res. 14:6745の加重比較マトリックス(weighed comparison matix);(2)各ギャップに対して3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対して0.10の追加ペナルティ;ならびに(3)エンドギャップ(end gap)に対するペナルティなしを挙げることができる。
したがって、本明細書で使用する「同一性」または「相同性」という用語は、試験ポリペプチドまたは試験ポリヌクレオチドと基準ポリペプチドまたは基準ポリヌクレオチドの間の比較を表す。本明細書で使用する「〜に少なくとも90%同一」という用語は、そのポリペプチドの基準核酸配列または基準アミノ酸配列に対する90〜99.99%の同一率を指す。90%以上のレベルの同一性とは、例えば、比較される試験ポリペプチドと基準ポリペプチドの長さが100アミノ酸であるとすると、基準ポリペプチド中のアミノ酸と異なる試験ポリペプチド中のアミノ酸が10%(すなわち100個中10個)を上回らないことを示す。同様の比較を、試験ポリヌクレオチドと基準ポリヌクレオチドの間でも行うことができる。そのような相違は、ポリペプチドの全長にわたってランダムに分布する点突然変異として現れる場合も、許容される最大値までの、例えば100個中10個のアミノ酸相違(約90%の同一性)までの、さまざまな長さを持つ1つ以上の位置にクラスターを形成する場合もありうる。相違は、核酸またはアミノ酸の置換、挿入または欠失と定義される。約85〜90%を上回る相同性または同一性のレベルでは、結果が、プログラムにも、設定されたギャップパラメータにも、依存しないはずであり、そのような高レベルの同一性は、多くの場合、ソフトウェアに頼らなくても手作業での整列によって、容易に評価することができる。
本明細書にいう、整列された配列とは、相同性(類似性および/または同一性)を使った、ヌクレオチド配列中またはアミノ酸配列中の対応する位置の整列を指す。典型的には、50%以上が類縁する2つ以上の配列が整列される。整列された一組の配列とは、対応する位置で整列させた2つ以上の配列を指し、RNAに由来する配列、例えばESTおよび他のcDNAを、ゲノムDNA配列と整列させたものを含みうる。
本明細書にいう「プライマー」は、適当な条件下(例えば4つの異なるヌクレオシド三リン酸およびDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素などの重合剤の存在下)、適当なバッファー中、適切な温度で、テンプレートに基づく(template-directed)DNA合成の開始点として作用することができる核酸分子を指す。一定の核酸分子が「プローブ」としても「プライマー」としても役立ちうることは理解されるだろう。ただしプライマーは伸長のために3'ヒドロキシル基を持つ。プライマーは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素(RT)-PCR、RNA PCR、LCR、マルチプレックスPCR、パンハンドル(panhandle)PCR、キャプチャ(capture)PCR、発現(expression)PCR、3'および5'RACE、インサイチュー(in situ)PCR、ライゲーションによる(ligation-mediated)PCR、および他の増幅プロトコールなどを含む、さまざまな方法で使用することができる。
本明細書にいう「プライマー対」は、(例えばPCRで)増幅されるべき配列の5'端にハイブリダイズする5'(上流)プライマーと、増幅されるべき配列の3'端の相補鎖にハイブリダイズする3'(下流)プライマーとを含む一組のプライマーを指す。
本明細書にいう「特異的にハイブリダイズする」とは、ある核酸分子(例えばオリゴヌクレオチド)が相補的塩基対合によって標的核酸分子にアニーリングすることを指す。特異的ハイブリダイゼーションに影響を及ぼすインビトロおよびインビボパラメータ、例えばその分子の長さおよび組成などは、当業者にはよく知られている。インビトロハイブリダイゼーションにとっては特に関係の深いパラメータには、さらに、アニーリング温度および洗浄温度、バッファー組成および塩濃度が含まれる。非特異的に結合した核酸分子を除去するための典型的な洗浄条件は、高ストリンジェンシーでは0.1×SSPE、0.1%SDS、65℃であり、中ストリンジェンシーでは0.2×SSPE、0.1%SDS、50℃である。等価なストリンジェンシー条件が当技術分野では知られている。当業者は、ある核酸分子がある特定用途に適した標的核酸分子に特異的にハイブリダイズするように、これらのパラメータを容易に調節することができる。2つのヌクレオチド配列に関して相補的とは、それら2つのヌクレオチド配列が、ハイブリダイズする能力を持ち、相対するヌクレオチド間のミスマッチが通例、25%、15%または5%未満であることを意味する。必要であれば、相補性の百分率が指定されるだろう。通例、2つの分子は、それらが高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするように選択される。
本明細書において、ある物品と実質的に同一であるとは、十分に類似しているので、その物品の代わりに実質的に同一な物品を使用しても、関心対象の性質が十分に不変であることを意味する。
また、本明細書で使用される「実質的に同一」または「類似する」という用語は、当業者には理解されるとおり、文脈によってさまざまであると理解される。
本明細書にいう対立遺伝子変異型または対立遺伝子変異は、同じ染色体座を占める遺伝子の2つ以上の代替的形態のいずれかを指す。対立遺伝子変異は突然変異によって自然に発生し、集団内の表現型多型をもたらしうる。遺伝子突然変異はサイレント(コードされるポリペプチドを変化させない)であるか、変化したアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードすることができる。「対立遺伝子変異型」という用語は、本明細書では、ある遺伝子の対立遺伝子変異型によってコードされるタンパク質を表すためにも使用される。通例、基準型の遺伝子は、ある集団から得られるまたはある種の単一の基準メンバーから得られるポリペプチドの野生型および/または優勢型をコードする。通例、対立遺伝子変異型(2種間および3種以上の間での変異型を含む)は、同じ種から得られる野生型および優勢型と、典型的には少なくとも80%、90%またはそれ以上のアミノ酸同一性を持つ。また、同一性の度合いは、遺伝子に依存し、比較が種間比較であるか種内比較であるかにも依存する。一般に、種内対立遺伝子変異型は、野生型および/または優勢型と少なくとも約80%、85%、90%または95%またはそれ以上の同一性(野生型および/または優勢型のポリペプチドと96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を含む)を持つ。本明細書における対立遺伝子変異型への言及は、一般に、同じ種内のメンバー間でのタンパク質中の変異を指す。
本明細書にいう「対立遺伝子」は、本明細書では「対立遺伝子変異型」と可換的に使用され、遺伝子またはその一部の代替型を指す。対立遺伝子は相同染色体上の同じ座または位置を占める。ある対象がある遺伝子について2つの同一対立遺伝子を持っている場合、その対象はその遺伝子または対立遺伝子に関してホモ接合であるという。ある対象がある遺伝子について2つの異なる対立遺伝子を持っている場合、その対象はその遺伝子についてヘテロ接合であるという。ある特定遺伝子の対立遺伝子は互いに1個のヌクレオチドが異なる場合または数個のヌクレオチドが異なる場合があり、ヌクレオチドの置換、欠失および挿入を含む場合もある。ある遺伝子の対立遺伝子は、突然変異を含有する遺伝子の一形態であることもできる。
本明細書にいう種変異型は、異なる種間(マウスとヒトなどといった異なる哺乳動物種間を含む)のポリペプチドにおける変異型を指す。
本明細書にいうスプライス変異型は、2タイプ以上のmRNAをもたらすゲノムDNAの一次転写物の異なるプロセシングによって生成する変異型を指す。
本明細書にいう改変は、ポリペプチドのアミノ酸配列または核酸分子中のヌクレオチド配列の改変に関し、それぞれアミノ酸およびヌクレオチドの欠失、挿入および置換を含む。ポリペプチドを改変する方法は、組換えDNA法を用いる方法など、当業者にとってはルーチンである。
本明細書で使用するプロモーターという用語は、RNAポリメラーゼの結合と転写の開始に備えたDNA配列を含有する、遺伝子の一部分を意味する。プロモーター配列は、常にというわけではないが、一般的には遺伝子の5'非コード領域中に見いだされる。
本明細書にいう単離されたまたは精製されたポリペプチドもしくはタンパク質またはその生物学的活性部分は、そのタンパク質が得られる細胞または組織に由来する細胞性物質または他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、または化学合成された場合は化学的前駆体または他の化学薬品を実質的に含まない。当業者が純度を評価するために使用する薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの標準的分析方法で決定した場合に調製物が容易に検出できる不純物を含まないと考えられるか、または調製物が十分に純粋であって、さらなる精製を行ってもその物質の物理的および化学的性質(例えば酵素活性および生物学的活性)が検出できるほどには変化しないであろう場合に、調製物は不純物を実質的に含まないと決定することができる。化合物を精製して実質的に化学的に純粋な化合物を製造するための方法は、当業者には知られている。ただし、実質的に化学的に純粋な化合物は、立体異性体の混合物であることができる。そのような場合は、さらなる精製により、化合物の比活性が増加するかもしれない。
細胞性物質を実質的に含まないという用語は、タンパク質がその単離源または組換え生産源となった細胞の細胞性構成要素から分離されているタンパク質の調製物を包含する。ある実施形態において、細胞性物質を実質的に含まないという用語は、約30%未満(乾燥重量で)の非酵素タンパク質(ここでは夾雑タンパク質ともいう)、一般的には約20%未満の非酵素タンパク質または約10%未満の非酵素タンパク質または約5%未満の非酵素タンパク質を含む酵素タンパク質の調製物を包含する。酵素タンパク質が組換え生産される場合、それは培養培地も実質的に含まない。すなわち培養培地は、酵素タンパク質調製物の体積の約20%、10%もしくは5%未満に相当するか、または20%、10%もしくは5%に相当する。
本明細書で使用する、化学的前駆体または他の化学薬品を実質的に含まないという用語は、タンパク質がそのタンパク質の合成に関与した化学的前駆体または他の化学薬品から分離されている酵素タンパク質の調製物を包含する。この用語は、含まれる化学的前駆体または非酵素化学薬品もしくは構成要素が約30%(乾燥重量で)、20%、10%、5%またはそれ以下より少ない酵素タンパク質の調製物を包含する。
本明細書において、例えば合成核酸分子または合成遺伝子または合成ペプチドなどに関していう合成とは、組換え法および/または化学合成法によって製造される核酸分子またはポリペプチド分子を指す。
本明細書において、組換えDNA法を使った組換え手段による生産とは、クローン化されたDNAによってコードされるタンパク質を発現させるために、分子生物学の周知の方法を使用することを意味する。
本明細書にいうベクター(またはプラスミド)は、異種核酸をその発現またはその複製を目的として細胞中に導入するために使用される不連続な要素を指す。ベクターは通例、エピソームであり続けるが、ゲノムの染色体への遺伝子またはその一部の組込みが達成されるように設計することもできる。酵母人工染色体および哺乳類人工染色体などの人工染色体であるベクターも考えられる。そのような運搬体(vehicle)の選択と使用は当業者にはよく知られている。
本明細書にいう発現ベクターは、当該DNAフラグメントの発現を達成する能力を持つプロモーター領域などの調節配列に作動的に連結されたDNAを発現させる能力を持つベクターを包含する。そのような追加セグメントはプロモーター配列およびターミネーター配列を含むことができ、場合によっては、1つ以上の複製起点、1つ以上の選択可能マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなども含むことができる。発現ベクターは一般にプラスミドまたはウイルスDNAから誘導されるか、または両方の要素を含有することができる。したがって、発現ベクターとは、適当な宿主細胞に導入された時にクローン化されたDNAの発現をもたらす、プラスミド、ファージ、組換えウイルスまたは他のベクターなどの組換えDNAまたはRNAコンストラクトを指す。適当な発現ベクターは当業者にはよく知られており、真核細胞および/または原核細胞中で複製可能なものや、エピソームであり続けるもの、または宿主細胞ゲノムに組み込まれるものがある。
本明細書にいうベクターは、「ウイルスベクター(virus vector)」または「ウイルス系ベクター(viral vector)」も包含する。ウイルス系ベクターは、(運搬体またはシャトルとして)細胞中に外来遺伝子を導入するためにそれら外来遺伝子に作動的に連結された工学的改変ウイルス(engineered virus)である。
本明細書において、DNAセグメントに関して作動可能に連結または作動的に連結とは、複数のセグメントが、その意図された目的のために、それらが協力して機能するように、例えば転写がプロモーターの下流かつ任意の転写配列の上流で開始するように、配置されることを意味する。プロモーターとは、通常、転写装置がそこに結合して転写を開始するドメインであり、その転写装置はコードセグメントを通ってターミネーターまで進行する。
本明細書で使用する、評価するという用語は、試料中に存在するプロテアーゼまたはそのドメインの活性について絶対値を得るという意味での、そしてまた活性のレベルを示す指数、比、パーセンテージ、視覚または他の値を得るという意味での、定量的および定性的決定を包含するものとする。評価は直接的または間接的であることができ、実際に検出される化学種は、もちろん、加水分解産物そのものである必要はなく、例えばその誘導体または他の何らかの物質であることができる。例えば、SDS-PAGEおよびクーマシーブルーを使ったタンパク質染色などによる、相補(complement)タンパク質の切断産物の検出。
本明細書にいう生物学的活性とは、化合物のインビボ活性、または化合物、組成物もしくは他の混合物をインビボ投与した時に起こる生理学的応答を指す。したがって生物学的活性は、そのような化合物、組成物および混合物の治療効果および薬理活性を包含する。生物学的活性は、そのような活性を試験または使用するために設計されたインビトロ系で観察することができる。したがって、本明細書においては、プロテアーゼの生物学的活性とは、ポリペプチドの加水分解がなされるその触媒活性である。
2つの核酸配列に関して本明細書にいう等価とは、問題の2つの配列が同じアミノ酸配列または等価なタンパク質をコードすることを意味する。2つのタンパク質またはペプチドに関して等価という場合、それは、それら2つのタンパク質またはペプチドが実質的に同じアミノ酸配列を持ち、アミノ酸置換はそのタンパク質またはペプチドの活性または機能を実質的に変化させないものだけであることを意味する。等価が性質を指す場合、その性質は同程度に存在する必要はないが(例えば2つのペプチドは同じタイプの酵素活性を異なる比率で示すことができる)、それらの活性は通常、実質的に同じである。
本明細書にいう「調整する」および「調整」または「改変する」は、タンパク質などの分子の活性の変化を指す。典型的には活性には、シグナル伝達などの生物学的活性があるが、これに限るわけではない。調整には、活性の増加(すなわちアップレギュレーションまたはアゴニスト活性)、活性の低下(すなわちダウンレギュレーションまたは阻害)または活性の他の任意の改変(例えば周期性、頻度、持続時間、動態または他のパラメータの変化)を含めることができる。調整は文脈に依存する場合があり、通例、調整は指定した状態、例えば野生型タンパク質、構成的状態でのタンパク質、または指定した細胞タイプまたは条件で発現されるタンパク質と比較される。
本明細書にいう組成物は任意の混合物を指す。それは、水性、非水性またはその任意の組合せである溶液、懸濁液、液体、粉末、ペーストであることができる。
本明細書にいう組合せは、2つまたはそれ以上の品目(item)の間の任意の関連を指す。組合せは、2つまたはそれ以上の別々の品目、例えば2つの組成物または2つの収集物であるか、その混合物、例えばそれら2つまたはそれ以上の品目の単一混合物であるか、それらの任意の異形であることができる。組合せの要素は、一般に、機能的に関連または関係する。
本明細書にいう「疾患または障害」は、感染、後天的状態、遺伝的状態などを含む(ただしこれらに限るわけではない)原因または状態に起因し、同定可能な症状を特徴とする、ある生物における病理学的状態を指す。本発明における関心対象である疾患および障害は、ECMの構成要素が関与するものである。
本明細書にいう、ある疾患または状態を持つ対象を「処置する」とは、処置後に、その対象の症状が部分的にまたは完全に軽減すること、または静的状態を保つことを意味する。したがって、処置は、予防、治療および/または治癒を包含する。予防とは、潜在的疾患の防止および/または症状の悪化もしくは疾患の進行の防止を指す。処置は、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物の任意の医薬的使用も包含する。
本明細書にいう医薬有効剤は、任意の治療剤または生物活性剤、例えば限定するわけではないが、麻酔薬、血管収縮薬、分散剤、従来の治療薬(小分子薬および治療用タンパク質を含む)を包含する。
本明細書にいう処置は、ある状態、障害もしくは疾患または他の適応の症状を寛解するか他の有益な形で変化させる、任意の方法を意味する。
本明細書にいう治療効果は、疾患または状態の症状を変化(通例、改善または寛解)させるか、疾患または状態を治癒させる、対象の処置に起因する効果を意味する。治療有効量とは、対象への投与後に治療効果をもたらす、組成物、分子または化合物の量を指す。
本明細書で使用する「対象」という用語は、ヒトなどの哺乳動物を含む動物を指す。
本明細書にいう患者は、疾患または障害の症状を示すヒト対象を指す。
本明細書において、処置による、例えば医薬組成物または他の治療薬の投与による、特定の疾患または障害の症状の寛解とは、その組成物または治療薬の投与に起因すると考えることができる、またはその組成物もしくは治療薬の投与に関連づけることができる、症状の減少(永続的であるか一時的であるか、持続的であるか一過性であるかを問わない)を指す。
本明細書にいう防止または予防は、疾患または状態が発生するリスクを低下させる方法を指す。
本明細書にいう「治療有効量」または「治療有効用量」は、少なくとも、治療効果をもたらすのに十分な、薬剤、化合物、物質、または化合物を含有する組成物の量を指す。したがって、これは、疾患または障害を防止し、治癒させ、寛解させ、抑止し、または部分的に抑止するのに必要な量である。
本明細書にいう治療有効インスリン投薬量は、血糖管理を達成するのに必要なまたは十分なインスリンの量である。この量は、グルコース負荷または食事負荷などにより、実験的に決定することができる。本明細書に記載する組成物は、治療有効投薬量が投与されるように、治療有効量または治療有効濃度のインスリンを含有する。
本明細書にいう1回用量型(unit dose form)は、当技術分野で知られているように、ヒトおよび動物対象に適し、個別に包装された、物理的に不連続な単位を指す。
本明細書にいう、1回量製剤(single dosage formulation)は、直接投与用の製剤を指す。
本明細書にいう「製品」は、製造され販売される物品である。本願の全体にわたって使用されるこの用語は、同じ包装物または別々の包装物に含まれている速効型インスリン組成物およびヒアルロナン分解酵素組成物を包含するものとする。
本明細書にいう流体(fluid)は、流動しうる任意の組成物を指す。したがって流体は、半固形、ペースト、溶液、水性混合物、ゲル、ローション、クリームおよび他のそれに類する組成物の形態をとる組成物を包含する。
本明細書にいう「キット」は、本明細書に記載する組成物と、もう一つの品目、例えば限定するわけではないが再構成、活性化などを目的とするもの、送達、投与、診断および生物学的活性または性質の評価を行うための機器/器具などとの組合せを指す。キットは、場合によっては、使用に関する指示を含む。
本明細書にいう細胞抽出物または細胞溶解物とは、溶解または破壊された細胞でできた調製物または画分を指す。
本明細書にいう動物には、任意の動物、例えば限定するわけではないが、ヒト、ゴリラおよびサルを含む霊長類;マウスおよびラットなどの齧歯類;ニワトリなどの家禽;ヤギ、ウシ、シカ、ヒツジなどの反芻動物;ブタなどのイノシシ科動物(ovine)、および他の動物が含まれる。非ヒト動物として想定される動物にヒトは含まれない。本明細書に記載する酵素は、任意の供給源、動物、植物、原核生物および真菌に由来する。大半の酵素は動物由来(哺乳動物由来を含む)である。
本明細書にいう対照は、それが試験パラメータで処置されない点以外は、またはそれが血漿試料である場合は、関心対象の状態に冒されていない正常なボランティアから得られたものでありうる点以外は、試験試料と実質的に同一な試料を指す。対照は内部対照であることもできる。
本明細書において使用する「ある」「一つの」および「その」という単数形は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、複数の指示物を包含する。したがって、例えば「細胞外ドメイン」を含む化合物への言及は、1つまたは複数の細胞外ドメインを持つ化合物を包含する。
本明細書において、範囲および量は、特定の値または範囲の「前後(または約)」と表現する場合がある。この「前後(または約)」には、まさにその量も包含される。したがって「約5塩基」は「約5塩基」を意味すると共に「5塩基」も意味する。
本明細書にいう「随意の(optional)」または「場合によっては(optionally)」は、それに続けて述べられる事象または状況が起こることまたは起こらないこと、およびその説明が、該事象または状況が起こる場合と起こらない場合を包含することを意味する。例えば、場合により置換されている基とは、その基が無置換であるか、または置換されていることを意味する。
本明細書で使用する、任意の保護基、アミノ酸および他の化合物の略号は、別段の表示がない限り、その一般的使用法、広く認識されている略号、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会((1972) Biochemistry 11:1726参照)に従う。
B.超速効型インスリン組成物
本発明は、超速効型インスリンの組合せおよび組成物を提供する。超速効型インスリン組成物は、投与前または投与時に、速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素とを組み合わせることによって得られる。今までに速効型インスリンが適応とされているものと同じ疾患および状態、例えば真性糖尿病(高血糖を管理するため)、ならびに他の疾患および状態を処置するための方法、およびそのための超速効型インスリン組成物の使用も提供する。速効型インスリン(例えばHumalog(登録商標)インスリンリスプロおよびHumulin(登録商標)Rインスリン)は、第1相食事時インスリン放出の内因性インスリンスパイクを十分には模倣しない。速効型インスリンをヒアルロナン分解酵素と組み合わせることにより、本明細書に記載する方法、組成物および組合せは、非糖尿病対象の内因性(すなわち自然の)食後インスリン放出を、より綿密に模倣する超速効型インスリン組成物を与えることを、ここに見いだした。
1.インスリン、糖尿病および既存の速効型インスリン治療の概観
インスリンは膵臓によって分泌される天然ポリペプチドホルモンである。インスリンは、血液からグルコースを効果的に取り込んで使用するために、身体の細胞によって必要とされる。グルコースは細胞機能を実行するための主たるエネルギー基質である。糖質ホメオスタシスの一次調整物質(primary modulator)であることに加えて、インスリンは脂肪代謝にも影響を及ぼす。これは、とりわけ貯蔵脂肪を放出させる肝臓および脂肪組織の能力を変化させることができる。インスリンは、例えば限定するわけではないが、脂質合成の増加、脂質分解の減少、タンパク質合成の増加、グルコース代謝におけるキー酵素およびキープロセスの調節(例えばグルコース取込み刺激、グルコース酸化刺激、グリコーゲン合成の増加およびグリコーゲン分解の減少)など、体中でさまざまな薬力学的効果を持つ。
インスリンは基礎的に通常は毎時0.5〜1.0単位の範囲で分泌されるが、食事後はそのレベルが増加する。食事後、膵臓はグルコースの上昇に呼応して大量のインスリンを分泌する。インスリンは細胞へのグルコースの取り込みを刺激し、肝臓には、グルコース産生を減らすようにシグナルを送る。これが結果として、血中グルコースの正常レベルへの復帰をもたらす。正常な成人では、食事に応答して、2相のインスリン放出が起こる。初期相は摂食の2〜15分以内に起こるインスリン放出のスパイク(spike)である。後期相の放出は約2時間続く。初期相は肝グルコース産生のシャットダウンを担い、それにより、血中グルコースレベルを低下させ、グルコース取り込みを増加させるように末梢組織を感作する、またはそのようなシグナルを末梢組織に送る。筋では、大量のグルコースがグリコーゲンとして貯蔵される。グリコーゲンの一部は乳酸に分解される。これは、肝臓に循環して、再びグルコースに変換され、グリコーゲンとして貯蔵されうる。食間に、肝臓はこれらの貯蔵グリコーゲンを分解して、脳および他の組織にグルコースを提供する。
糖尿病は、膵臓が十分な量のインスリンを産生できないか、その能力が低下するために、または要求されたインスリンを細胞が合成および/または放出できないか、その能力が低下するために、慢性的高血糖をもたらす。糖尿病では、上記第1相応答の有効性が低下するかまたは上記第1応答に有効性がなく、食後グルコースレベルが上昇することになる。例えば、糖尿病者では、食後の最初の4時間(すなわち摂食後の最初の4時間)中の血中グルコース曲線下面積(AUC)が、非糖尿病者より2.5〜3.0倍大きい。食後グルコースエクスカーション(excursion)は全体的高血糖とHbA1cレベルの上昇の一因になり、これらのエクスカーションが2型糖尿病の初期段階に見られるHbA1c上昇の主たる誘因である。
多くの糖尿病患者は、膵臓が十分でない量のインスリンしか産生しなくなるか、膵臓が産生したインスリンを使って十分な血糖管理を維持できなくなると、インスリンによる処置を必要とする。インスリンは、例えば1型糖尿病、2型糖尿病および妊娠糖尿病などの糖尿病を持つ患者を処置するための治療薬として、正常な個体で起こる内因性インスリン応答を模倣するために投与されてきた。インスリンは血中グルコースレベルを管理するために、高血糖を有する重篤患者にも投与されてきた。患者の必要に応じて、異なるインスリン源が使用される。市販のインスリン調製物はその活性の持続時間に応じて分類する事ができる(例えば「Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus」中のDeFelippisら(2002)「Insulin Chemistry and Pharmacokinetics」(481〜500頁)McGraw-Hill Professional参照)。例えばインスリンは速効型製剤として提供されると共に、中間型または持効型製剤としても提供され、後者2つの分類を、ここでは基礎作用型インスリンという。速効型は迅速な発現を持ち、通例、2〜3時間以下、4時間以内にピークインスリンレベルを示す。したがって速効型のインスリンは食事時グルコース調節に使用される。他の形態のインスリンには、皮下投与の約4〜12時間後にピークインスリン濃度に達する中間型、および比較的控えめなピークに到達し、20〜30時間の最大作用持続時間を持つ持効型インスリンがある。中間型および持効型は、多くの場合、無定形および/または結晶性インスリン調製物から構成され、主として基礎治療に使用される。
速効型インスリン組成物の食事時投与の目標は、食事時間前、食事時間中または食事時間直後に速効型インスリンを非経口投与することによって、経時的に安定な血中グルコースレベルを得ることである。こうして、インスリンの血中レベルを一時的に上昇させることで、(a)肝グルコース産生をシャットダウンし、(b)グルコース取り込みを増加させ、よって食事消化に関連する血中グルコース上昇時の血糖管理を維持する。
組換えヒトインスリン(例えばHumulin(登録商標)Rインスリン)は、食事時間前の注射による自己投与に使用される。残念ながら、組換えヒトインスリンは、血中グルコースの上昇が外因性インスリンレベルによる妨害を受けずに起こってしまうことがないように、食事時間の約半時間前またはそれ以前に注射によって投与しなければならない。組換えヒトインスリンの吸収が遅い理由の一つは、インスリンがインビボでもインビトロでも亜鉛イオンの存在下で六量体型複合体を形成することにある。そのような六量体型亜鉛含有複合体は、亜鉛を欠く単量体型インスリンよりも安定である。皮下注射後に、これらのインスリン六量体は、より小さな二量体または単量体に解離しなければ、毛細管床から吸収されて体循環に入ることができない。六量体の二量体および単量体への解離は濃度依存的であり、インスリンが注射部位から拡散する際に濃度が下がることでしか起こらない。したがって、インスリンの皮下投与後は注射部位に局所インスリンデポーが存在して、インスリン濃度が低下するまで吸収され得ない高い初期濃度の六量体型インスリンを注射部位にもたらす(Soeborgら (2009) Eur.J.Pharm.Sci. 36:78-90)。インスリンが注射部位からゆっくり拡散する際に、インスリン濃度は注射部位からの距離が増加するにつれて低下し、その結果、六量体の解離とインスリン単量体および二量体の吸収が起こる。このように、六量体型インスリン複合体の分散は体内で自然に起こるが、それが起こるには多少の時間が必要であり、それが、インスリンが全身的に利用可能になるのを遅らせる。さらに、この濃度依存的吸収ゆえに、インスリン濃度が高く、用量が高いほど、ゆっくり吸収される(Soeborgら (2009) Eur.J.Pharm.Sci. 36:78-90)。
六量体型のインスリンがより安定であるのに対して、単量体型のインスリンは、より迅速に吸収されるので、皮下投与時に、六量体から単量体への、より速い解離を示すインスリンの速効型類似体が開発された。そのようなインスリンは、解離速度を増加させることで、注射時に、より迅速な薬力学的活性が付与されるように、アミノ酸改変などによって修飾される。C項で説明するように、インスリンの速効型類似体には、インスリングルリジン、インスリンアスパルト、およびインスリンリスプロなどがあるが、これらに限るわけではない。
速効型のインスリン(速効型類似体を含む)には、吸収および作用の遅延があり、それゆえに、摂食の約10分後に起こる初期相を持つ内因性インスリンと同じようには振る舞わない。したがって、そのような製剤は、第1相のインスリン放出後にほどなく起こる肝グルコース産生を遮断できるほど迅速には作用しない。そのため、速効型インスリン類似体調製物でさえ、所望する血糖管理の可能性をいくらかでも得るには、食事に先だって投与されなければならない。摂食の時間を15分以内に推測することは、レギュラーインスリンに要求される30〜60分以内よりは容易であるが、患者の摂食が早すぎたり遅すぎたりして、最善の血中グルコース管理が得られない危険はある。
さらにまた、速効型インスリン治療を含めて、どのインスリン治療による処置でも、主要な副作用の一つは、低血糖である。低血糖は低い血中グルコースと定義され、空腹感から、より厄介な症状、例えば振戦、発汗、錯乱、さらには発作、昏睡および死にさえ至りうる、さまざまな病的状態に関連する。低血糖は、十分に摂食できなかったり、食事を抜いたり、いつもより多く運動したり、インスリンを投与しすぎたり、曝露および作用の持続時間が不適切に長い食事時インスリン調製物を使用したりすることによって、起こり得る。例えば、多くの速効型インスリン治療は食事の前に施されなければならないので、患者が食事を差し控えたり、抜いたりして、低血糖に陥る危険がある。また、速効型インスリンの投与後、血清インスリンレベルおよびインスリン作用(例えばグルコース注入速度(GIR)として測定されるもの)は、通例、食事時グルコース負荷が緩和した後も上昇した状態のままであり、低血糖を起こす恐れがある。インスリン用量を増加させることによってピークグルコース負荷をより良く管理しようと試みると、この危険はさらに増大する。また、食後低血糖はインスリン治療にはよく見られる結果であるため、それが、しばしば、患者が食間に軽食を摂る原因となったり、患者が食間に軽食を摂ることを余儀なくする。これは、インスリン治療にしばしば付随する体重増加および肥満の一因になる。
2.超速効型インスリン組成物の薬力学および薬物動態
速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素との組合せは、その速効型インスリンの吸収を増加させ、その結果、より迅速な血清中インスリン濃度の上昇(すなわち、より迅速な吸収速度)および薬理作用をもたらすことが、ここに見いだされた。したがって、速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素との組合せは、非経口(すなわち非静脈内)ボーラス投与(例えば皮下(SC)、筋肉内(IM)、腹腔内(IP)、または皮内(ID)投与経路による非経口投与など)後に血中グルコースの迅速な上昇を達成する能力を持つ、超速効型インスリン組成物をもたらす。
いかなる理論にも束縛されるものではないが、速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素との組合せは、インスリンを単独で投与した場合と比較して、皮下投与後の分散機序の変化により、速効型インスリンの吸収の増加をもたらすことができる。通例、インスリン単独の皮下注射後は、高分子量ヒアルロナンの存在が、バルク流体の流動にとって障壁になる。したがって上述のように、インスリンは、拡散を介した機序によって注射部位から分散される。インスリンが注射部位から分散するにつれて、濃度が低下し、インスリン六量体が、十分に小さいので毛細管床から吸収されうる単量体および二量体へと解離することが容易になる。したがって、皮下注射後に吸収されるには、インスリンは、まず注射部位からゆっくり分散して、解離が(それゆえに吸収が)容易になるほど十分に低いインスリン濃度を作り出さなければならない。しかしインスリンを、例えば可溶性ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素と共投与すると、ヒアルロナンがヒアルロナン分解酵素によって分解されて、圧力勾配(または水力学的伝導率(hydraulic conductivity))に比例して迅速に分散するバルク流体の流動が可能になる。例えば生理的圧力において、rHuPH20などの可溶性ヒアルロニダーゼは、水力学的コンダクタンス(hydraulic conductance)を約20倍増加させる。したがって、ヒアルロナン分解酵素と共投与すると、インスリンは、ヒアルロナン障壁の分解後に、対流媒介的な方法で迅速に分散される。ヒアルロナン分解酵素を皮下に共投与した場合に起こるこのインスリンの迅速な吸収は、インスリンを単独で投与した場合と比較して、インスリンの薬物動態的性質および薬力学的性質を改善させる。
例えば、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、tmaxの減少、Cmaxの増加、および最初の40分間においてとりわけ著しい累積全身インスリン曝露の増加によって証明されるとおり、より速く吸収される。この薬物動態プロファイルの改善は、インスリン効果の発現時間および持続時間の短縮に反映される。これは、実施例1で説明するように、正常血糖クランプ実験におけるグルコース注入速度などの薬力学的尺度によって例証することができる。このように、超速効型インスリン組成物は、対応する速効型インスリンよりも迅速に吸収される。興味深いことに、図1および図2に示すように、ヒアルロナン分解酵素なしでは速効型インスリン類似体の方が速効型レギュラーインスリンよりも実質的に速いにもかかわらず、ヒアルロナン分解酵素を含有する超速効型インスリン組成物は、速効型レギュラーインスリンと速効型インスリン類似体のどちらについても加速された吸収を示し、類似する薬力学(PD)プロファイルおよび薬物動態(PK)プロファイルをもたらす。このように、超速効型インスリン組成物は、その組成物に含まれているのが速効型インスリン類似体であるか速効型レギュラーインスリンであるかとは無関係に、類似する薬力学(PD)プロファイルおよび薬物動態(PK)プロファイルを示す。この類似性は投与後最初の40〜60分においては特に際立っている(例えば図1および図2参照)。したがって、超速効型インスリン組成物のさらにもう一つの利点は、速効型インスリンが速効型レギュラーインスリン(例えばHumulin(登録商標)Rインスリン)であるか、速効型類似体(例えばHumalog(登録商標)インスリンリスプロ、Novalog(登録商標)インスリンアスパルトまたはApidra(登録商標)インスリングルリジン)であるかとは関わりなく、投与後最初の40〜60分において同等な薬物動態プロファイルおよび薬力学プロファイルを達成できることである。例えば超速効型インスリン組成物中の速効型インスリンがレギュラーインスリンではなく迅速作用型インスリン類似体であるようないくつかの例では、速効型インスリンの吸収が、ヒアルロナン分解酵素と共に(すなわち超速効型インスリン組成物として)投与された場合に、速効型インスリン単独での最速よりも速い。これは例えばtmaxの減少および(特に最初の40分間での)累積全身インスリン曝露の増加などとして現れうる。
超速効型インスリン組成物の薬物動態は、対応する速効型インスリンとは、いくつかの重要な点で異なる。第1に、時間の関数としてのインスリン血中濃度のプロファイルは、より早い時点で、より高濃度なものにシフトする(例えば図1参照)。体循環中にインスリンが出現するこの速度は吸収速度と記述され、体循環から除去される速度(これはクリアランス率と記述される)とは区別される。超速効型インスリン組成物は対応する速効型インスリンよりも大きい吸収速度を持ち、より大きい初期曝露をもたらす。さらにまた、ヒアルロナン分解酵素は投与部位において一過性かつ局所的に作用しているので、ひとたび体循環に入れば、超速効型インスリン組成物のクリアランス率およびその力価は、対応する速効型インスリンと大きくは異ならない。吸収速度を増加させると同時に、同じクリアランス率を維持することにより、インスリンの最大血中濃度(Cmax)も、超速効型インスリン組成物では、対応する速効型インスリンと比較して増加する。こうして、同じ総量の全身的に利用可能なインスリンが、超速効型インスリン組成物では、時間の関数として、対応する速効型インスリンとは異なる形で分配されるので、超速効型インスリン組成物の非経口投与後は、単に速効型であるインスリンと比較して、より早い時点で、より大きな割合の累積全身インスリン曝露が起こり、より遅い時点で、より小さな割合の累積全身インスリン曝露が起こる。この吸収速度のシフトにより、超速効型インスリン組成物は、食事を消費した後に起こる血中グルコースレベルのスパイクに対する身体の内因性インスリン応答を、より綿密に模倣することが可能になる。
第2の独立した薬物動態パラメータ、すなわち投与された用量のうち体循環に到達する割合も、超速効型インスリン組成物は、その対応する速効型インスリンと比較して異なりうる。一定の速効型インスリンでは、投与された用量の大部分が全身バイオアベイラビリティを持ち、それゆえに、対応する超速効型組成物でも、漸増的増加(incremental increase)が起こりうるに過ぎない。しかし、レギュラーインスリン(例えばHumulin(登録商標)Rインスリン)など、他の速効型インスリンでは、バイオアベイラビリティの増加が著しい場合もある。本明細書に記載する超速効型インスリン組成物の、その対応する速効型インスリンに対する相対的バイオアベイラビリティは、同じ非IV非経口投与後の、それら2つの組成物の総全身曝露(AUC0-infinity)の比によって記述される。
超速効型インスリン組成物のさらにもう一つの重要な側面は、全身的に利用可能なインスリンに対する生理学的応答を測る薬力学パラメータの改善を達成する能力に関する。本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、体循環に到達すれば、対応する速効型インスリンと同じ薬理学的力価を持つので、超速効型インスリン組成物によって提供される改善された薬物動態プロファイル(上で議論したもの)は、全身的に利用可能なインスリンに対する生理学的応答を測る薬力学パラメータの有益は変化をもたらす。例えば、正常血糖クランプ法においてインスリンを被験者に投与した時に測定されるグルコース注入速度(GIR)は、定常標的血中グルコース濃度を維持するために要求される静脈内グルコース投与の速度を時間の関数として測定するので、これは、薬力学パラメータに相当する。対応する速効型インスリンと比較して超速効型インスリン組成物によって達成される吸収速度の方が大きいという薬物動態上の利点により、超速効型インスリン組成物はGIRプロファイル(インスリンに対する生理学的応答の尺度)を、より早い時点で、より高い注入速度(すなわちより大きい生理学的応答)へとシフトさせることができる。総GIRは、時間の関数としてのインスリンレベルの分布と、投与された全身用量との関数であるが、相対的な全身性バイオアベイラビリティも有意に増加する超速効型インスリン組成物では、GIR応答のさらなる増加を観察することができる。
本明細書に記載する超速効型インスリン組成物によって得られる薬物動態上および薬力学上の利点は、いくつかの重要な用途につながる。第1に、PK応答およびPD応答を、より早い時点へとシフトさせることにより、超速効型組成物では、食後グルコースレベルを管理するために、対応する速効型インスリン組成物単独で可能なものよりも自然なインスリン応答を生み出すことができる。身体の自然なインスリン応答には、次の2つがどちらも含まれる:(a)最初の10〜15分以内に起こって肝グルコース放出をシャットダウンするシグナルを送り、食間に最小グルコース血中濃度をもたらす、インスリンの初期バースト;および(b)約2時間にわたる総インスリン曝露、これは、ホルモン応答(全身性代謝産物(主にグルコース)レベルに対するβ細胞応答と、腸管が栄養物質の存在を感知した時にインスリン分泌を増強するインクレチンホルモンの両方を含む)の複雑な相互作用を介して、グルコースレベルの関数として体循環へのインスリン放出を調節することにより、食事の糖質組成に見合うようになされる。最初の10〜15分間で、より大きな割合の全身的に利用可能なインスリン曝露が起こることにより、超速効型インスリン組成物は、肝グルコース放出をシャットダウンするようにというシグナルを、対応する速効型インスリン組成物と比較して(身体の内因性食事時インスリン応答と同じように)より良く送ることができる。その上、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、最初の2時間で、より大きな割合の全身的に利用可能なインスリン曝露を起こし、2時間後にはインスリン曝露を相応に低下させることにより、自然の食後グルコース管理をより良く模倣することもできる。投与後2時間を超えてもインスリンレベルが上昇した状態にあると、食後グルコース吸収が完了してもグルコース代謝が増加している状況になりかねず、それは低血中グルコースレベルまたは低血糖につながる。さらに、超速効型インスリン組成物は作用の発現が自然のインスリン応答に似ているので、多くの速効型インスリン組成物(例えばHumulin(登録商標)Rインスリン)が食事の30〜60分前に投与され、それは、対象が意図した食事を遅らせたり抜いたりした場合に低血糖のリスクを生じさせるのに対して、これらの組成物は食事時に投与することができる。このように、最初の15分間でのインスリン曝露の増加と2時間後におけるインスリン曝露の減少との組合せにより、超速効型インスリン組成物は、対応する速効型インスリン組成物よりもうまく食後グルコースレベルを管理することができる。
速効型インスリンは通例、現実のグルコースレベル、対象、糖尿病のタイプおよび食事の組成を含む多くの因子に依存して、医師または他の有資格医療提供者によって決定された幅広い用量範囲で投与される。通例、そのような速効型インスリンの用量は、0.05単位/kg〜2単位/kgの範囲内の値をとりうる。超速効型インスリン組成物は、その薬物動態および薬力学ゆえに、ヒアルロナン分解酵素の非存在下で投与される速効型インスリンと比較して、低い用量で投与することができる。速効型インスリンを超速効型インスリン組成物として投与することによって速効型インスリンの量をどの程度低下させることができるかは、例えばその患者が患っている糖尿病のタイプなどに依存してさまざまである。通例、超速効型インスリン組成物として投与した場合に2型糖尿病患者に投与される速効型インスリンの量の減少は、超速効型インスリン組成物として投与した場合に1型糖尿病患者に投与される速効型インスリンの量の減少より大きい。例えば、食後グルコースレベルを管理するために1型糖尿病患者および2型糖尿病患者にそれぞれ0.20U/kgの速効型インスリンが投与される場合、1型糖尿病患者には、0.15U/kgの速効型インスリンを超速効型インスリン組成物として投与することで、同等以上の血糖管理を達成することができ、2型糖尿病患者には、0.10U/kgの速効型インスリンを超速効型インスリン組成物として投与することで、同等以上の血糖管理を達成することができる。このように、いくつかの例において、本発明では、超速効型インスリン組成物としてヒアルロナン分解酵素と一緒に投与した場合に、血糖管理を達成するために2型糖尿病患者に投与される速効型インスリンの量を、ヒアルロナン分解酵素なしで投与した時に血糖管理に要求される量と比較して、例えば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%またはそれ以上、減少させることができ、超速効型インスリン組成物としてヒアルロナン分解酵素と一緒に投与した場合に、血糖管理を達成するために1型糖尿病患者に投与される速効型インスリンの量を、ヒアルロナン分解酵素なしで投与した時に血糖管理に要求される量と比較して、例えば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%またはそれ以上、減少させることができると考えられる。
いかなる理論にも束縛されるものではないが、インスリンを超速効型インスリン組成物としてヒアルロナン分解酵素と一緒に投与した場合に、2型糖尿病患者の方が1型糖尿病患者より、速効型インスリン用量の減少が大きいのは、1型患者と2型患者では食後血糖プロファイルが異なること、および超速効型インスリンが健常な対象における自然の第1相インスリン放出をより綿密に模倣できることを反映している。2型糖尿病は、β細胞機能異常、インスリン抵抗性、および/またはインスリン分泌異常の結果として発生する。これらの患者では、食事などのグルコース負荷後、数分以内に起こる初期相インスリン放出は起こらないが、インスリンは依然として、ある期間にわたってゆっくり放出される。これに対し、1型糖尿病患者はインスリンを全く産生しないので、第1相インスリン放出も、健康な対象では血糖管理が達成されるまで持続する第2相インスリン放出も、どちらも欠いている。このように、2型糖尿病者には一般に主として食後高血糖に対処するためのインスリン治療しか必要ないので、そのような糖尿病者における食事時インスリン治療で克服されるべき課題は、低血糖の発生である。低血糖は、対象自身の遅延および/または基礎インスリン分泌が、食事時スパイクが軽減した後にまだ残っている過剰な外因性インスリンのグルコース降下効果と結びついた時に起こりうる。ある期間にわたって、そのような食後低血糖エピソードが反復して起こることは、体重増加および肥満の一因になりうる。速効型インスリンの薬物動態および薬力学では、食事の消化後直ちにグルコースレベルが低下するように十分迅速に適当な血中インスリン濃度を達成するのに必要とされる用量(すなわち自然の初期相インスリン放出をカバーする用量)が、消化後に血中を循環して食後グルコースレベルを低下させる過剰なインスリンをもたらすような量になってしまう。したがって、2型糖尿病患者には、初期相インスリン放出をカバーするだけでなく、それ以上のインスリン用量が投与されることになる。本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、内因性インスリン応答を、より綿密に模倣する。したがって、2型糖尿病者には、第1相インスリン放出だけをカバーする用量の超速効型インスリン組成物を投与することができ、一方、1型糖尿病者には、全てのインスリン放出相をカバーする用量の超速効型インスリン組成物を投与することができる。
したがって、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物のもう一つの用途は、速効型インスリン治療に関連する体重増加および肥満の副作用を軽減することである。この副作用の強さは、投与されるインスリンの用量に比例するか、ほぼ比例する。上述のように、超速効型インスリン組成物は、例えば、より高いバイオアベイラビリティと、投与後最初の0.25、0.5、0.75、1、1.5または2時間における、より大きい累積全身インスリン曝露との組合せなどにより、より低用量の速効型インスリンで、対応する速効型組成物と等価な血糖管理を与えることができる。1型および2型糖尿病患者は、インスリン治療の結果として体重増加を起こしうるが、2型糖尿病を持つ患者は、肥満に繋がる体重増加のリスクが特に高い。2型糖尿病者では第1相インスリン放出は起こらないが、インスリンは依然として、ある期間にわたってゆっくり放出される。その結果、この疾患の初期段階において、2型糖尿病者の内因性インスリンレベルは、食事の開始時点では低すぎ、食事消化後は高すぎる。第1相インスリン放出がない場合、肝臓はグルコース産生を停止せよというシグナルを受けない。肝臓は、身体が食事の消化によって新しいグルコースを産生し始めてもグルコースを産生し続けて、高血糖をもたらす。食事の2時間後と3時間後との間に、無処置の糖尿病者の血中グルコースは非常に高くなるので、膵臓は大量のインスリンを分泌せよというシグナルを受けとる。初期2型糖尿病を持つ患者では、膵臓がまだ応答し、この大量のインスリンを分泌することができる。これは、消化がほぼ終わり、血中グルコースレベルが低下し始めているはずの時点で起こる。この大量のインスリンは2つの有害な効果を持つ。第1に、これは既に損なわれている膵臓に過度な要求を加え、それが、膵臓のより迅速な劣化につながり、最終的に膵臓はインスリンを産生することができなくなりうる。第2に、消化後のインスリンが多すぎることは体重増加の一因になり、それはこの疾患状態をさらに悪化させうる。上述のように、食後高血糖を管理するために2型糖尿病を持つ患者に速効型インスリンを投与すると、消化後に過剰なインスリンが残りうる。こうして、インスリン治療を受ける2型糖尿病患者は消化後のインスリンが多すぎることになり、それが低血糖と、その結果としての体重増加につながりうる。本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を食後高血糖を管理するために投与すると、糖尿病患者における体重増加および肥満のリスクが低下する。超速効型インスリン組成物には、より低用量の速効型インスリンを含有させることができる。
血糖管理を達成するには、超速効型インスリン組成物中の速効型インスリンを、ヒアルロナン分解酵素が存在しない場合に投与する必要があるであろう速効型インスリンのレベルの20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%のレベルで投与することができる。したがって例えば超速効型組成物として投与される速効型インスリンの量は、通例、0.05U/kg、0.06U/kg、0.07U/kg、0.08U/kg、0.09U/kg、1.0U/kg、1.1U/kg、1.2U/kg、1.3U/kg、1.4U/kg、1.5U/kg、1.6U/kg、1.7U/kg、1.8U/kg、1.9U/kg、もしくは2.0U/kgまたはその前後である。用量を低下させることにより、そのようなインスリンの作用持続時間を短縮して、数時間に及ぶ上昇した血漿中インスリン濃度に起因する遅発性低血糖の可能性を最小限に抑えることができる。このように、第1相食事時インスリン放出の内因性インスリンスパイクをより綿密に模倣する超速効型インスリン組成物のより迅速な作用発現は、真性糖尿病患者における血糖管理の改善および体重増加の抑制に関して、臨床的利益をもたらすと予想される。
さらに、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、増加した吸収速度を与えることによって、投与されたインスリンの効果と観察されるグルコースレベルに対する効果との間に、対応する速効型インスリン組成物よりも短いフィードバック周期を与えることができ、それゆえに、食後グルコースレベルの自然の調節をより良く模倣することができる。したがって、超速効型インスリン組成物の修飾された薬物動態は、既存の「インスリンポンプ」および連続的グルコースモニタリング(GCM)技術の実施にとっても利益になる。GCMを行いながら少量のインスリンを反復して皮下注射することによるグルコースレベルの緻密な管理は、食後インスリンボーラス注射と全身性血糖応答の間の時間を短縮することによって、複合的インスリンポンプ/グルコースモニタリング器具(すなわちクローズドループシステムまたは人工膵臓)を「自己完結させる(close the loop)」ことができるだろう。
速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素との超速効型インスリン組成物は、単一の混合物として提供されるか、別々の調製物として提供されるかにかかわらず、所望の物理的または化学的性質を与える追加成分を含有することができる。例えば、注射可能な溶液は、ほぼ等張な溶液を与えるための1つ以上の張性調整剤、および酸または塩基を使って、また場合によってはpH緩衝化構成要素を使って、中性pHになるよう滴定された水性溶媒を含有することができる。速効型インスリン製剤は、多くの場合、それらをより安定な六量体状態で構造的に安定化するために、Znおよびm-クレゾールなどのフェノール系抗微生物保存剤を含む。これら六量体の解離速度を調節するには、EDTAなどの金属キレーターを使用することができ、キレート能を緩和するためにカルシウムなどの他の二価金属を存在させることができる。ヒアルロナン分解酵素は、多くの場合、物理的および化学的安定性を得るために、例えば限定するわけではないが、界面活性剤、酸素スカベンジャー、塩、アミノ酸およびポリアルコールなどといった、追加の構成要素を必要とする。
超速効型インスリン組成物は、一つは速効型インスリン組成物を含有し、もう一つはヒアルロナン分解酵素組成物を含有し、(任意の順序で)逐次的に、または同時に共投与するための、2つの別々の容器のキットとして提示するか、速効型インスリン組成物とヒアルロナン分解酵素組成物との混合物を含有する単一容器を含むキットとして提示することができる。速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素とが共投与される場合、該共投与は任意の順序で逐次的に行われてもよいし(例えば、ヒアルロナン分解酵素を速効型インスリンの前に投与することで、速効型インスリンの投与に先だって、ヒアルロナン分解酵素が注射部位のヒアルロナンを分解する)、速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素の共投与が同時に行われてもよい。速効型インスリン組成物とヒアルロナン分解酵素組成物は、適当な希釈剤による再構成後に注射に使用される固形物として、または注射可能な溶液として、または注射可能な懸濁液として、(一緒にまたは個別に)製剤化することができる。
以下の項では、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物、それらを製造する方法、およびそれらを使用する方法、現行の速効型インスリンが使用されている疾患および状態を処置するためにそれらを使用する方法において使用される、典型的な速効型インスリンおよび可溶性ヒアルロナン分解酵素を説明する。
C.インスリンポリペプチドおよびインスリン製剤
インスリンは、分子量5808ダルトンの51アミノ酸残基から構成されるポリペプチドである。これは膵臓中のランゲルハンスβ細胞島で産生される。典型的なヒトインスリンは、ERに向かう24アミノ酸シグナルペプチドを含有する110アミノ酸前駆体ポリペプチド、プレプロインスリン(配列番号101)として翻訳され、シグナル配列が切断されてプロインスリン(配列番号102)をもたらす。プロインスリン分子は、次に、プロホルモン変換酵素(PC1およびPC2)と呼ばれるタンパク質分解酵素の作用およびエキソプロテアーゼカルボキシペプチダーゼEの作用によって、成熟インスリンに変換される。これにより、4つの塩基性アミノ酸残基と、残っている31アミノ酸のC-ペプチド、すなわち連結鎖(配列番号101に記載するプレプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基57〜87に相当)とが除去される。結果として生じるインスリンは、21アミノ酸のA鎖(配列番号102に記載するプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基90〜110に相当)と、30アミノ酸のB鎖(配列番号102に記載するプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基1〜30に相当)とを含有し、それらがジスルフィド結合で架橋されている。通例、成熟インスリンは3つのジスルフィド橋を含有し、1つはA鎖の位置7とB鎖の位置7の間、2つ目はA鎖の位置20とB鎖の位置19の間、そして3つ目はA鎖の位置6と11の間にある。成熟インスリンのA鎖の配列を配列番号103に記載し、B鎖の配列を配列番号104に記載する。
インスリンへの言及は、単鎖型または二鎖型のプレプロインスリン、プロインスリンおよびインスリンポリペプチド、活性を持つその切断型を包含し、対立遺伝子変異型および種変異型、スプライス変異型によってコードされる変異型、ならびに他の変異型、例えばインスリン類似体または他の誘導体型、例えば配列番号101に記載する前駆体ポリペプチドまたはその成熟型に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を持つポリペプチドを、そのインスリンがヒトインスリン受容体に結合して、グルコース取り込みおよびグルコース貯蔵の増加および/または内因性グルコース産生の減少をもたらすシグナリングカスケードを開始させる限りにおいて、包含する。例えば、インスリンには、インスリンの種変異型が包含される。これらには、ウシ由来のインスリン(配列番号133に記載)およびブタ由来のインスリン(配列番号123)が含まれるが、これらに限るわけではない。ウシインスリンは、A鎖のアミノ酸8および10、ならびにB鎖のアミノ酸30が、ヒトインスリンとは異なる。ブタインスリンはB鎖のアミノ酸30だけがヒトインスリンとは異なり、そこでは、ウシ配列と同じように、スレオニンの代わりにアラニン置換が起こっている。インスリンの他の典型的種変異型を配列番号105〜146のいずれかに記載する。インスリンの変異型には、配列番号103および104(A鎖およびB鎖)に記載するヒトインスリンと比較して1つ以上のアミノ酸修飾を含有するインスリン類似体も含まれる。典型的なインスリン類似体(A鎖およびB鎖)を、速効型類似体と、それより持効性の類似体を含めて、配列番号147〜165、182〜184に記載する。例えばインスリン類似体には、グルリジン(LysB3、GluB29;配列番号103(A鎖)および配列番号149(B鎖)に記載)、HMR-1 153(LysB3、IleB28;配列番号103(A鎖)および配列番号182(B鎖)に記載)、HMR-1423(GlyA21、HisB31、HisB32;配列番号183(A鎖)および配列番号184(B鎖)に記載)、インスリンアスパルト(AspB28;配列番号103(A鎖)および配列番号147(B鎖)に記載)、およびインスリンリスプロ(LysB28、ProB29;配列番号103(A鎖)および配列番号148(B鎖)に記載)が含まれるが、これらに限るわけではない。上記のどの例でも、類似体の命名法は、鎖のN末端から数えたインスリンA鎖またはB鎖上の特定位置におけるアミノ酸置換の説明に基づいており、残りの配列は天然ヒトインスリンの配列である。
上記インスリンポリペプチドはいずれも、任意の種(例えばヒト)の膵臓によって産生されるものを包含すると共に、合成的にまたは組換え技法を使って生産されるインスリンも包含する。例えば、本明細書のどこか他の項で述べるように、インスリンは、インスリンのA鎖およびB鎖の合成遺伝子を発現させることによって、またはプロインスリン全体を発現させ、それを適当な酵素法および化学法にさらして成熟インスリンを生成させることによって、またはリンカーペプチドで連結されたA鎖およびB鎖を発現させることによって、生合成的に生産することができる(例えば「Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus」(McGraw-Hill Professional)の481〜500頁、DeFelippisら(2002)「Insulin Chemistry and Pharmacokinetics」を参照されたい)。
インスリンには、単量体型およびオリゴマー型、例えば六量体型も包含される。インスリンは、血漿中を循環する時は単量体として存在することができ、単量体型である時にはその受容体にも結合する。しかしインスリンは二量体に自己会合する傾向を持ち、Zn2+などの金属イオンの存在下では、六量体などの高次構造へと容易に会合することができる。Zn2+に対して2つの対称的高アフィニティー結合部位が存在する。ただし、他の弱い亜鉛結合部位も報告されてはいる(例えば「Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus」(McGraw-Hill Professional)の481〜500頁、DeFelippisら(2002)「Insulin Chemistry and Pharmacokinetics」を参照されたい)。自己会合は、化学的分解および物理的変性を防止するために、この分子の安定化にとって重要である。したがって、膵β細胞の貯蔵小胞では、インスリンは六量体として存在する。しかし細胞外間隙に放出されると、インスリン六量体はより中性条件へのpH変化を体験することになり、亜鉛イオン含有六量体が希釈されて、それが六量体を不安定にすると考えられている。細胞外間隙におけるインスリン六量体の不安定化に寄与する他の理由も存在しうる。こうしてインスリンは血液中では主として単量体として見いだされる。安定化効果を利用するために、大半の市販インスリン製剤は、六量体への自己会合を促進するのに十分な量の亜鉛イオンを含有している。しかし六量体構造は、皮下投与された時のこれらの製剤の吸収速度を遅くする。
B項で論じたように、インスリンは血糖管理用の治療薬として糖尿病患者などで使用される。グルコースを管理するために投与されるインスリンが、基礎治療用であるか、食事時治療用であるか、その組合せ用であるかに応じて、さまざまなタイプの既存インスリン製剤がある。インスリン製剤は、もっぱら速効型製剤として提供するか、もっぱら基礎作用型製剤(すなわち中間型および/または持効型)として提供するか、それらの混合物として提供することができる(例えば表2参照)。通例、混合物は速効型インスリンと中間型または持効型インスリンとを含有する。例えば速効型インスリンは、NPHインスリン(後述する典型的中間型インスリン)と、10:90、20:80、30:70、40:60および50:50などといったさまざまな混合比で組み合わせることができる。そのような混合済み調製物は、食事関連インスリン要求量と基礎インスリン要求量をどちらも単一の製剤で都合よく提供することにより、毎日のインスリン注射の数を減らすことができる。したがって、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物製剤には、場合によっては基礎作用型インスリンを与えることができるものも含まれる。
一般に、インスリンの調製物はどれでもインスリンポリペプチドまたはその変異型(すなわち類似体)を含み、相違するのはその製剤を構成する他の物質だけである。したがって、異なるインスリンタイプの作用持続時間に影響を及ぼすことができるのは、その製剤の詳細である。インスリン調製物に含まれる物質の例は、安定化剤、例えば亜鉛、pHバッファー、グリセリンなどの張性調整剤;保存剤/抗微生物剤、例えばm-クレゾール;およびプロタミンまたは他の沈殿剤もしくは放出制御剤などがあるが、これらに限るわけではない。さらに本発明では、カルシウムおよびEDTAまたはEGTAなどの金属キレーターを含有するインスリン調製物も製造することができる。上述の物質はどれでも1つ以上を、例えば超速効型インスリン組成物中のインスリンポリペプチドに加えることができる。加えられる具体的構成要素とそれらの量は、インスリンのタイプ、その作用持続時間、その吸収およびバイオアベイラビリティに影響を及ぼし、したがってその応用に影響を及ぼす。
例えば、大半のインスリン調製物は、インスリン分子の自己会合を促進することによってインスリンを安定化する亜鉛などの金属イオンを、製剤中に含有する。六量体型への自己会合は、投与時のインスリンの吸収に影響を及ぼしうる。したがって、そのような安定剤の比と、インスリンへのEDTAまたはEGTAの添加は、例えばポリペプチド中に存在する高次構造の優勢度に影響を及ぼすことなどにより、インスリンの吸収およびバイオアベイラビリティのさらなる調整および制御を可能にする。一般に、速効型であるレギュラーインスリン調製物は、0.01〜0.04mg/100単位またはその前後の亜鉛を含有する。化学的研究により、インスリンの溶解性は、主として、亜鉛含有量と、それを懸濁するバッファーの性質とによって決まることが明らかになっている。したがって、いくつかの持効型基礎インスリン製剤は(リン酸緩衝液ではなく)酢酸緩衝液から亜鉛の添加によってインスリンを沈殿させることで製造される。亜鉛含有量が高いインスリンの大きな結晶は、収集して酢酸ナトリウム-塩化ナトリウム(pH7.2〜7.5)の溶液中に再懸濁した場合、皮下注射後にゆっくりと吸収され、持続時間の長い作用を発揮する。この結晶調製物は長時間型(extended)インスリン亜鉛懸濁剤(ウルトラレンテインスリン)と呼ばれている。他の亜鉛含有インスリン調製物には、例えばセミレンテインスリン(即時型(prompt)インスリン亜鉛懸濁剤)およびレンテインスリン(インスリン亜鉛懸濁剤)などがあり、これらは主として、使用される亜鉛含量が異なっている。亜鉛含有インスリン調製物には、プロタミンで修飾されたもの、例えばNPHインスリンなども包含される。
もう一つの例では、微結晶懸濁液を生成させるために、プロタミンなどの沈殿剤をインスリンポリペプチドに加えることができる。通例、結晶性インスリンは、結晶型では存在しないインスリンと比較して、長時間にわたる作用持続時間を持つ。プロタミン亜鉛インスリンは、水性懸濁液として皮下注射した場合、沈着部位でゆっくりとしか溶解せず、インスリンは遅延した速度で吸収される。プロタミン亜鉛懸濁液インスリンは、大半が、NPHインスリンとも呼ばれるイソフェンインスリン懸濁液で置き換えられている。これは、結晶性の修飾プロタミン亜鉛インスリン懸濁液である。インスリン、プロタミンおよび亜鉛の濃度は、調製物の作用発現および作用持続時間が、レギュラーインスリンとプロタミン亜鉛インスリン懸濁液との中間になるように配分される。
さらにまた、調製物のpHの相違もインスリンのタイプおよび性質に影響を及ぼす。最初のレギュラーインスリン調製物は2.8〜3.5のpHで調製されたが、そうしないと、より高いpH範囲では、それらは粒子を形成しただろう。しかし、高度に精製されたインスリン調製物は、ある範囲のpH値で調製することができる。また、インスリン調製物を緩衝化することにより、より広いpH範囲で、インスリンを調製することが可能になる。通例、中性pHで調製されたインスリンは、酸性pHで調製されたものよりも高い安定性を持つ。したがって大半のインスリンは中性pHで製剤化される。例外はpH4.0の市販製剤として提供されるインスリングラルギンである。B鎖のC末端に2つのアルギニンが付加されたことにより、グラルギンインスリンの等電点がシフトして、それを酸性pHでより安定なものにしている。酸感受性アスパラギンに起因する脱アミド化および二量体化を防止するために、さらにもう一つのアミノ酸変異が、A鎖中に存在する(N21G)。グラルギンインスリンのA鎖の配列を配列番号150に記載し、B鎖を配列番号151に記載する。投与後は生理的pHへの曝露が起こるので、微小沈殿物(microprecipitate)が形成され、それがグラルギンを結晶性持効型インスリンと類似するものにする。
以下の表2に、さまざまなタイプのインスリンと、それらの作用発現およびそれらの応用を要約する。
Figure 0005809330
最もよく使用されるインスリンは速効型インスリンであり、これにはレギュラーインスリン(すなわち、天然型(native)または野生型インスリン、その対立遺伝子変異型および種変異型を含む)および速効型インスリン類似体が包含される。本明細書において、インスリンという場合、それは別段の注記が特にない限り、速効型インスリンである。
速効型インスリン
本発明は、速効型インスリンと可溶性ヒアルロナン分解酵素とを含有する超速効型インスリン組成物を提供する。一般に、これらの超速効型インスリン組成物は、皮下投与に続いて吸収され、30分以内に血中で検出可能になり、作用を発現する。本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を得るために使用することができる速効型インスリンには、野生型または天然型インスリンであるレギュラーインスリンが含まれる。速効型インスリンにはインスリン類似体も含まれる。速効型インスリンは、基礎作用型インスリンと比較して吸収速度が速いので、主として食後管理用に使用される。典型的な速効型インスリンを下記表3に記載する。また、速効型インスリンには、例えば限定するわけではないが、米国特許第7279457号および米国特許出願公開第20070235365号、同第20080039368号、同第20080039365号、同第20070086952号、同第20070244467号、および同第20070191757号に開示されている任意のインスリン調製物および器具など、当技術分野で知られるものはどれでも包含される。ヒアルロナン分解酵素との共製剤化および/または共投与により、任意の速効型インスリンを超速効型にすることができる。超速効型インスリン組成物製剤は、ヒアルロナン分解酵素の他に速効型インスリンと中間型または持効型インスリンとの混合物を、さらに含むこともできる。
Figure 0005809330
a.レギュラーインスリン
レギュラーインスリンには、天然型または野生型インスリンポリペプチドを含む製剤が含まれる。これらには、ヒトインスリン、ならびにウシ、ブタおよび他の種に由来するインスリンが含まれる。そのようなインスリンは酸性pH(例えば2.5〜3.5)で調製することができるか、または中性pH(例えば7.0〜7.8)で調製することができる。レギュラーインスリンには、亜鉛を含有するものも含まれる。通例、レギュラーインスリン調製物中の亜鉛含有量は0.01〜0.04mg/100単位またはその前後の範囲にある。レギュラーヒトインスリンはHumulin(登録商標)R、Novolin(登録商標)RおよびVelosulin(登録商標)として販売されている。ブタインスリンはIletin II(登録商標)として販売されている。一般にレギュラーインスリンは皮下投与の30分後に作用が発現する。最大血漿中レベルは1〜3時間で認められ、強度の持続時間(duration of intensity)は投薬量と共に増加する。皮下投与後の血漿中半減期は約1.5時間である。
b.速効型類似体
速効型インスリン類似体は、通例、1つ以上のアミノ酸変異を含有する改変型インスリンである。類似体は、レギュラーインスリンと比較して吸収速度を増加させ、作用発現を速める目的で、インスリン分子の自己会合が減少するように設計される。一般にそのような類似体は亜鉛の存在下で製剤化されるので、安定な亜鉛六量体として存在する。しかし、その改変ゆえに、これらは皮下投与後にレギュラーインスリンよりも迅速に六量体状態から解離する。
i.インスリンリスプロ
ヒトインスリンリスプロは、B鎖の位置28および29にアミノ酸変異を含有して、配列番号104に記載する野生型インスリンB鎖のこの位置にあるPro-LysがLys-Proに逆位している、インスリンポリペプチド製剤である。インスリンリスプロの配列を配列番号103(A鎖)および配列番号148(B鎖)に記載する。これはHumalog(登録商標)という名称で販売されている。これら2つのアミノ酸の逆位の結果は、自己会合傾向が減少していて、そのことが、より迅速な作用の発現を可能にする、ポリペプチドである。具体的に述べると、B鎖における配列逆位は、2つの疎水性相互作用の排除と、二量体を安定化する2つのβプリーツシートの弱化をもたらす(例えば「Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus」中のDeFelippisら(2002)「Insulin Chemistry and Pharmacokinetics」(481〜500頁)McGraw-Hill Professional参照)。このポリペプチドは、製剤中に用意される賦形剤、例えば抗微生物剤(例:m-クレゾール)および安定化のための亜鉛の結果として、自己会合し、六量体を形成する。それでもなお、そのアミノ酸改変ゆえに、インスリンリスプロはレギュラーインスリンより迅速に作用する。
ii.インスリンアスパルト
ヒトインスリンアスパルトは、配列番号104に記載するヒトインスリンのB鎖の位置28にプロリンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換を含有するインスリンポリペプチド製剤である。インスリンアスパルトの配列を配列番号103(A鎖)および配列番号147(B鎖)に記載する。これはNovolog(登録商標)という名称で販売されている。インスリンアスパルトにおける改変は、負に帯電した側鎖カルボキシル基を付与して、電荷斥力を生じさせ、単量体-単量体相互作用を不安定にする。さらに、プロリンの除去により、単量体間の重要な疎水性相互作用が排除される(例えば「Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus」中のDeFelippisら(2002)「Insulin Chemistry and Pharmacokinetics」(481〜500頁)McGraw-Hill Professional参照)。この類似体は大部分が単量体として存在し、リスプロなどの他の速効型類似体と比較して凝集しにくい。一般に、インスリンアスパルトとインスリンリスプロは、各々の薬物動態的性質および薬力学的性質が似ている。
iii.インスリングルリジン
ヒトインスリングルリジンは、配列番号104に記載するヒトインスリンのB鎖の配列と比較して、B鎖の位置B3にアスパラギンからリジンへのアミノ酸置換を含有し、アミノ酸B29にリジンからグルタミン酸へのアミノ酸置換を含有する、インスリンポリペプチド製剤である。インスリングルリジンの配列を配列番号103(A鎖)および配列番号149(B鎖)に記載する。これはApidra(登録商標)という名称で販売されている。この改変は、そのポリペプチド分子を、ヒトインスリンと比較して自己会合しにくくする。他のインスリン類似体とは異なり、このポリペプチドは、六量体を増進する亜鉛の非存在下で、商業的に製剤化される(Beckerら (2008) Clinical Pharmacokinetics, 47:7-20)。したがってインスリングルリジンは、インスリンリスプロおよびインスリンアスパルトより早い発現速度を持つ。
D.ヒアルロナン分解酵素
本発明は、超速効型インスリン組成物および速効型インスリンとヒアルロナン(ヒアルロン酸)分解酵素との組合せによって得られる組合せ、ならびにインスリンが媒介する疾患および状態の処置にそのような組成物および組合せを使用する方法を提供する。ヒアルロナン分解酵素には、ヒアルロナンを分解する任意の酵素が含まれる。典型的なヒアルロナン分解酵素には、ヒアルロニダーゼ、特にコンドロイチナーゼ、およびヒアルロナンを切断する能力を持つリアーゼが含まれるが、これらに限るわけではない。したがって、本明細書に記載する方法および使用がヒアルロニダーゼとインスリンの併用を示す場合は、任意のヒアルロナン分解酵素を使用することができる。本明細書に記載する組成物、組合せおよび方法におけるヒアルロナン分解酵素の典型例は、可溶性ヒアルロナン分解酵素である。ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素が持つ、細胞外マトリックス中のヒアルロン酸を分解するという能力ゆえに、そのような酵素は治療剤の投与を容易にする。例えば、皮下投与などによってヒアルロナン分解酵素と共投与される治療薬の吸収および分散は増加する。
ヒアルロナンは、ヒアルロン酸またはヒアルロネートとも呼ばれ、結合組織、上皮組織、および神経組織の全体にわたって広く分布する、非硫酸化グリコサミノグリカンである。ヒアルロナンは細胞外マトリックスの必須構成要素であり、間質障壁の主要構成成分である。ヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナンの加水分解を触媒することにより、ヒアルロナンの粘度を低下させ、それによって組織透過性を増加させ、非経口投与された流体の吸収速度を増加させる。そこで、ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素は、例えば、他の薬剤、薬物およびタンパク質と一緒に、それらの分散および送達を強化するために、展着剤または分散剤として使用されてきた。
ヒアルロナン分解酵素は、交互にβ-1→4グリコシド結合とβ-1→3グリコシド結合で連結された繰返し二糖単位D-グルクロン酸(GlcA)およびN-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)で構成されるヒアルロナンポリマーを切断することによって、ヒアルロナンを分解するように作用する。ヒアルロナン鎖は、約25,000二糖リピート(repeat)またはそれ以上の長さに達することができ、ヒアルロナンのポリマーのサイズはインビボでは約5,000Daから20,000,000Daに及びうる。したがって、ここに記載する用途および方法のためのヒアルロナン分解酵素には、ヒアルロナン二糖鎖またはヒアルロナンポリマーの切断を触媒する能力を持つ任意の酵素が含まれる。いくつかの例では、ヒアルロナン分解酵素がヒアルロナン鎖またはヒアルロナンポリマー中のβ-1→4グリコシド結合を切断する。別の例では、ヒアルロナン分解酵素がヒアルロナン鎖またはヒアルロナンポリマー中のβ-1→3グリコシド結合の切断を触媒する。
後述のように、ヒアルロナン分解酵素は膜結合型または可溶型で存在する。本発明では、本明細書に記載する方法、用途、組成物または組合せで使用するために、可溶性ヒアルロナン分解酵素が提供される。したがって、ヒアルロナン分解酵素がグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを含み、かつ/または他の形で膜結合型であるか不溶性である場合、ヒアルロナン分解酵素は、本発明では、可溶型で提供される。したがって、ヒアルロナン分解酵素には、切断型変異型(例えばGPIアンカーの全部または一部を除去するために切頭されたもの)が含まれる。本発明において提供されるヒアルロナン分解酵素には、可溶性ヒアルロナン分解酵素の対立遺伝子変異型もしくは種変異型または他の変異型も含まれる。例えば、ヒアルロナン分解酵素は、その一次配列に1つ以上の変異、例えばアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含有することができる。ヒアルロナン分解酵素の変異型は、一般に、変異を含有しないヒアルロナン分解酵素と比較して、少なくともまたは約60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示す。本発明においては、その酵素が(当技術分野において周知であり本明細書でも説明するインビトロおよび/またはインビボアッセイによって測定される)ヒアルロニダーゼ活性(例えば変異を含有しないヒアルロナン分解酵素の活性の少なくともまたは約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上)を保っている限り、ヒアルロナン分解酵素に任意の変異を含めることができる。
1.ヒアルロニダーゼ
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロナン分解酵素の大きなファミリーである。ヒアルロニダーゼには3つの一般クラス、すなわち哺乳類型ヒアルロニダーゼ、細菌ヒアルロニダーゼ、ならびにヒル、他の寄生生物および甲殻類に由来するヒアルロニダーゼがある。本発明の組成物、組合せおよび方法では、それらの酵素を使用することができる。
a.哺乳類型ヒアルロニダーゼ
哺乳類型ヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.35)は、ヒアルロナンのβ1→4グリコシド結合を例えば四糖および六糖などのさまざまなオリゴ糖長に加水分解するエンド-β-N-アセチル-ヘキソサミニダーゼである。これらの酵素は加水分解活性とトランスグリコシダーゼ活性の両方を持ち、ヒアルロナンおよびコンドロイチン硫酸(CS)、一般的にはC4-SおよびC6-Sを分解することができる。このタイプのヒアルロニダーゼには、例えばウシ(ウシ属(bovine))(配列番号10、11および64ならびにBH55(米国特許第5,747,027号および同第5,827,721号))、ヒツジ(ovis aries)(配列番号26、27、63および65)、スズメバチ(配列番号12および13)、ミツバチ(配列番号14)、クロスズメバチ(配列番号15)、アシナガバチ(配列番号16)、マウス(配列番号17〜19、32)、ブタ(配列番号20〜21)、ラット(配列番号22〜24、31)、ウサギ(配列番号25)、オランウータン(配列番号28)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)に由来するヒアルロニダーゼ、およびヒトヒアルロニダーゼなどがあるが、これらに限るわけではない。本明細書に記載する組成物、組合せおよび方法におけるヒアルロニダーゼの典型例は可溶性ヒアルロニダーゼである。
哺乳類ヒアルロニダーゼは、主に精巣抽出物に見いだされる中性活性であるものと、主に肝臓などの臓器に見いだされる酸性活性であるものとに、さらに細分することができる。典型的な中性活性ヒアルロニダーゼにはPH20があり、これには、ヒツジ(配列番号27)、ウシ(配列番号11)およびヒト(配列番号1)などのさまざまな種に由来するPH20が含まれるが、これらに限るわけではない。ヒトPH20(SPAM1または精子表面タンパク質PH20とも呼ばれる)は、一般に、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して形質膜に取り付けられる。これは本来、精子-卵子接着に関与し、ヒアルロン酸を消化することにより、精子が卵丘細胞の層を貫通するのを助ける。
ヒトゲノムには、ヒトPH20(SPAM1とも呼ばれる)の他に、5つのヒアルロニダーゼ様遺伝子、HYAL1、HYAL2、HYAL3、HYAL4およびHYALP1が同定されている。HYALP1は偽遺伝子であり、HYAL3(配列番号38)は既知のどの基質に対しても酵素活性を持つことが示されていない。HYAL4(配列番号39に記載の前駆体ポリペプチド)はコンドロイチナーゼであり、ヒアルロン酸に対してはほとんど活性を示さない。HYAL1(配列番号36に記載の前駆体ポリペプチド)はプロトタイプの酸性活性酵素であり、PH20(配列番号1に記載の前駆体ポリペプチド)はプロトタイプの中性活性酵素である。HYAL1およびHYAL2(配列番号37に記載の前駆体ポリペプチド)などの酸性活性ヒアルロニダーゼは、一般に、中性pH(すなわちpH7)では触媒活性を持たない。例えばHYAL1はpH4.5を上回るとインビトロで触媒活性をほとんど持たない(Frostら (1997) Anal Biochemistry 251:263-269)。HYAL2はインビトロで極めて低い比活性を持つ酸性活性酵素である。ヒアルロニダーゼ様酵素は、一般にグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーによって形質膜に取り付けられるもの、例えばヒトHYAL2およびヒトPH20(Danilkovitch-Miagkovaら (2003) Proc Natl Acad Sci USA. 100(8):4580-5)と、一般に可溶性であるもの、例えばヒトHYAL1(Frostら (1997) Biochem Biophys Res Commun. 236(1):10-5)とによって、特徴づけることもできる。
PH20
PH20は、他の哺乳類ヒアルロニダーゼと同様に、ヒアルロン酸のβ1→4グリコシド結合を例えば四糖および六糖などのさまざまなオリゴ糖長に加水分解するエンド-β-N-アセチル-ヘキソサミニダーゼである。これらは加水分解活性とトランスグリコシダーゼ活性の両方を持ち、ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸、例えばC4-SおよびC6-Sを分解することができる。PH20は、本来、精子-卵子接着に関与し、ヒアルロン酸を消化することにより、精子が卵丘細胞の層を貫通するのを助ける。PH20は精子表面上およびリソソーム由来の先体(この場合は先体内膜に結合している)中に位置する。形質膜PH20が中性pHでしかヒアルロニダーゼ活性を持たないのに対して、先体内膜PH20は中性pHでも酸性pHでも活性を持つ。PH20はヒアルロニダーゼであるだけでなく、HAが誘発する細胞シグナリングの受容体、および卵母細胞を取り囲む透明帯の受容体でもあるようだ。
典型的なPH20タンパク質には、ヒト(配列番号1に記載の前駆体ポリペプチド、配列番号2に記載の成熟ポリペプチド)、チンパンジー(配列番号185)、アカゲザル(配列番号186)、ウシ(配列番号11および64)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジPH20(配列番号27、63および65)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、ラット(配列番号31)およびマウス(配列番号32)PH20ポリペプチドなどがあるが、これらに限るわけではない。
ウシPH20は553アミノ酸の前駆体ポリペプチド(配列番号11)である。ウシPH20とヒトPH20との整列は、ウシポリペプチドにGPIアンカーが存在しないため、アミノ酸470からそれぞれのカルボキシ末端までに複数のギャップが存在し、弱い相同性しか示さない(例えばFrost GI (2007) Expert Opin.Drug.Deliv. 4:427-440)。実際、ヒトを除く他の多くのPH20種には、明確なGPIアンカーが予想されない。したがって、ヒツジおよびウシから自然に産生されるPH20ポリペプチドは、可溶型として存在する。ウシPH20は形質膜に非常に緩く取り付けられた状態で存在するが、ホスホリパーゼ感受性アンカーによって固定されているわけではない(Lalancetteら (2001) Biol Reprod. 65(2):628-36)。ウシヒアルロニダーゼのこのユニークな特徴が、可溶性ウシ精巣ヒアルロニダーゼ酵素を抽出物として臨床用途に使用することを可能にしている(Wydase(登録商標)、Hyalase(登録商標))。
ヒトPH20 mRNA転写物は、通常、翻訳されて、35アミノ酸のシグナル配列をN末端(アミノ酸残基位置1〜35)に持ち、19アミノ酸のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー付加シグナル配列をC末端(アミノ酸残基位置491〜509)に持つ、509アミノ酸の前駆体ポリペプチド(配列番号1;以下に再掲)を生じる。したがって成熟PH20は配列番号2に記載する474アミノ酸のポリペプチドである。前駆体ポリペプチドがERに輸送され、シグナルペプチドが除去された後、C末端のGPI付加シグナルペプチドが切り離されて、配列番号1に記載する前駆体ポリペプチドの位置490に相当するアミノ酸位置での、新しく形成されたC末端アミノ酸へのGPIアンカーの共有結合的付加が促進される。こうして、配列番号2に記載するアミノ酸配列を持つ474アミノ酸のGPIアンカー型成熟ポリペプチドが産生される。
ヒトPH20前駆体ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号1;509アミノ酸):
MGVLKFKHIFFRSFVKSSGVSQIVFTFLLIPCCLTLNFRAPPVIPNVPFLWAWNAPSEFCLGKFDEPLDMSLFSFIGSPRINATGQGVTIFYVDRLGYYPYIDSITGVTVNGGIPQKISLQDHLDKAKKDITFYMPVDNLGMAVIDWEEWRPTWARNWKPKDVYKNRSIELVQQQNVQLSLTEATEKAKQEFEKAGKDFLVETIKLGKLLRPNHLWGYYLFPDCYNHHYKKPGYNGSCFNVEIKRNDDLSWLWNESTALYPSIYLNTQQSPVAATLYVRNRVREAIRVSKIPDAKSPLPVFAYTRIVFTDQVLKFLSQDELVYTFGETVALGASGIVIWGTLSIMRSMKSCLLLDNYMETILNPYIINVTLAAKMCSQVLCQEQGVCIRKNWNSSDYLHLNPDNFAIQLEKGGKFTVRGKPTLEDLEQFSEKFYCSCYSTLSCKEKADVKDTDAVDVCIADGVCIDAFLKPPMETEEPQIFYNASPSTLSATMFIVSILFLIISSVASL。
ヒトPH20は中性pHでも酸性pHでもヒアルロニダーゼ活性を示す。ある態様では、ヒトPH20が、一般にGPIアンカーによって形質膜に固定されるプロトタイプの中性活性ヒアルロニダーゼである。もう一つの態様では、PH20が先体内膜上に発現され、この場合は、中性pHでも酸性pHでもヒアルロニダーゼ活性を持つ。PH20はポリペプチドの異なる領域、すなわちペプチド1領域およびペプチド3領域に、2つの触媒部位を含有するようである(Cherrら (2001) Matrix Biology 20:515-525)。配列番号2に記載する成熟ポリペプチドのアミノ酸位置107〜137および配列番号1に記載する前駆体ポリペプチドの位置142〜172に相当するPH20のペプチド1領域は、中性pHにおける酵素活性に必要であることを示唆する証拠がある。この領域内にある(配列番号2に記載する成熟PH20ポリペプチドで)位置111および113のアミノ酸は、活性にとって重要であると思われる。というのも、アミノ酸置換による突然変異誘発は、野生型PH20と比較してそれぞれ3%のヒアルロニダーゼ活性を持つPH20ポリペプチド、またはヒアルロニダーゼ活性を持たないPH20ポリペプチドをもたらすからである(Armingら (1997) Eur.J.Biochem. 247:810-814)。
配列番号2に記載する成熟ポリペプチドのアミノ酸位置242〜262および配列番号1に記載する前駆体ポリペプチドの位置277〜297に相当するペプチド3領域は、酸性pHにおける酵素活性にとって重要であると思われる。この領域内では、成熟PH20ポリペプチドの位置249および252にあるアミノ酸が活性にとって必須であると思われ、どちらか一方を突然変異させると、本質的に活性を持たないポリペプチドがもたらされる(Armingら (1997) Eur.J.Biochem. 247:810-814)。
PH20は、触媒部位の他に、ヒアルロナン結合部位も含有する。この部位は、配列番号1に記載する前駆体ポリペプチドのアミノ酸位置205〜235および配列番号2に記載する成熟ポリペプチドの位置170〜200に相当するペプチド2領域内に位置することを示唆する実験的証拠がある。この領域はヒアルロニダーゼ間で高度に保存されており、ヘパリン結合モチーフに似ている。(配列番号2に記載する成熟PH20ポリペプチドで)位置176にあるアルギニン残基の突然変異は、野生型ポリペプチドのヒアルロニダーゼ活性の約1%の活性しかもたないポリペプチドをもたらす(Armingら (1997) Eur.J.Biochem. 247:810-814)。
ヒトPH20には、配列番号1に例示されるポリペプチドのN82、N166、N235、N254、N368、N393、N490に、7つの潜在的N結合型グリコシル化部位がある。配列番号1のアミノ酸36〜464が最小活性ヒトPH20ヒアルロニダーゼドメインを含有すると思われるので、N結合型グリコシル化部位N490は適正なヒアルロニダーゼ活性にとって必要でない。ヒトPH20には6個のジスルフィド結合がある。2つのジスルフィド結合が、配列番号1に例示されるポリペプチドのシステイン残基C60とC351およびC224とC238(それぞれ配列番号2に記載する成熟ポリペプチドの残基C25とC316およびC189とC203に相当)の間に形成される。さらに4つのジスルフィド結合が、配列番号1に例示されるポリペプチドのシステイン残基C376とC387;C381とC435;C437とC443;およびC458とC464(それぞれ配列番号に記載する成熟ポリペプチドの残基C341とC352;C346とC400;C402とC408;およびC423とC429に相当)の間に形成される。
b.細菌ヒアルロニダーゼ
細菌ヒアルロニダーゼ(EC4.2.2.1またはEC4.2.99.1)はヒアルロナンを分解し、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸をさまざまな程度に分解する。細菌から単離されるヒアルロナンリアーゼは、ヒアルロニダーゼ(他の供給源に由来するもの、例えばヒアルロノグルコサミニダーゼ、EC3.2.1.35)とは、その作用様式が異なる。これらは、ヒアルロナンのN-アセチル-β-D-グルコサミン残基とD-グルクロン酸残基の間のβ1→4グリコシド結合の(加水分解ではなく)脱離反応を触媒して、3-(4-デオキシ-β-D-グルカ-4-エンウロノシル)-N-アセチル-D-グルコサミン四糖および六糖(3-(4-deoxy-β-D-gluc-4-enuronosyl)-N-acetyl-D-glucosamine tetra- and hexasaccharides)、ならびに二糖最終生成物を与える、エンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼである。この反応は、不飽和ヘキスロン酸残基をその非還元末端に持つオリゴ糖の形成をもたらす。
本発明の組成物、組合せおよび方法で使用するための細菌由来の典型的ヒアルロニダーゼには、例えば、アルスロバクター属、デロビブリオ属(Bdellovibrio)、クロストリジウム属(Clostridium)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ペプトコッカス属(Peptococcus)、プロピオン酸菌属(Propionibacterium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、およびストレプトミセス属(Streptomyces)の株などといった微生物中のヒアルロナン分解酵素があるが、これらに限るわけではない。そのような酵素の具体例には、アルスロバクター属(FB24株)(配列番号67)、デロビブリオ・バクテリオボラス(配列番号68)、アクネ菌(配列番号69)、ストレプトコッカス・アガラクチア(配列番号70);18RS21(配列番号71);血清型Ia型(配列番号72);血清型III型(配列番号73)、黄色ブドウ球菌(COL株)(配列番号74);MRSA252株(配列番号75および76);MSSA476株(配列番号77);NCTC8325株(配列番号78);ウシRF122株(配列番号79および80);USA300株(配列番号81)、肺炎レンサ球菌(配列番号82);ATCC BAA-255/R6株(配列番号83);血清型2型D39/NCTC7466株(配列番号84)、化膿レンサ球菌(血清型M1型)(配列番号85);血清型M2型MGAS10270株(配列番号86);血清型M4型MGAS10750株(配列番号87);血清型M6型(配列番号88);血清型M12型MGAS2096株(配列番号89および90);血清型M12型MGAS9429株(配列番号91);血清型M28型(配列番号92);ブタレンサ球菌(配列番号93〜95);ビブリオ・フィシェリ(ATCC700601/ES114株(配列番号96))のヒアルロニダーゼ酵素、およびストレプトミセス・ヒアルロノリチカスのヒアルロニダーゼ酵素(これはヒアルロン酸に特異的であり、コンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸を切断しない(Ohya,T.およびKaneko,Y. (1970) Biochim.Biophys.Acta 198:607))などがあるが、これらに限るわけではない。
c.ヒル、他の寄生生物および甲殻類に由来するヒアルロニダーゼ
ヒル、他の寄生生物、および甲殻類に由来するヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.36)は、四糖および六糖最終生成物を生じさせるエンド-β-グルクロニダーゼである。これらの酵素は、ヒアルロネート中のβ-D-グルクロネート残基とN-アセチル-D-グルコサミン残基の間の1→3結合の加水分解を触媒する。ヒル由来の典型的ヒアルロニダーゼには、ヒルド科(Hirudinidae)(例えばヒルド・メディシナリス(Hirudo medicinalis))、イシビル科(Erpobdellidae)(例えばネフェロプシス・オブスキュラ(Nephelopsis obscura)およびエルポデラ・パンクタタ(Erpobdella punctata))、グロシフォニ科(Glossiphoniidae)(例えばデセロデラ・ピクタ(Desserobdella picta)、ヌマビル(Helobdella stagnalis)、ヒラタビル(Glossiphonia complanata)、プラコデラ・オルナタ(Placobdella ornata)およびテロミゾン属(Theromyzon sp.))およびヘモピ科(Haemopidae)(ヘモピス・マルモラタ(Haemopis marmorata))に由来するヒアルロニダーゼがあるが、これらに限るわけではない(Hovinghら (1999) Comp Biochem Physiol B Biochem Mol Biol. 124(3):319-26)。ヒルヒアルロニダーゼと同じ作用機序を持つ細菌由来の典型的なヒアルロニダーゼは、藍色細菌シネココッカス属(Synechococcus sp.)(RCC307株)に由来するもの(配列番号97)である。
2.他のヒアルロナン分解酵素
本発明の組成物、組合せおよび方法には、ヒアルロニダーゼファミリーに加えて、他のヒアルロナン分解酵素も、速効型インスリンと一緒に使用することができる。例えば、ヒアルロナンを切断する能力を持つ酵素、例えば特定のコンドロイチナーゼおよびリアーゼを、使用することができる。ヒアルロナンを分解することができる典型的コンドロイチナーゼには、コンドロイチンABCリアーゼ(コンドロイチナーゼABCとも呼ばれている)、コンドロイチンACリアーゼ(コンドロイチン硫酸リアーゼまたはコンドロイチン硫酸エリミナーゼとも呼ばれている)およびコンドロイチンCリアーゼなどがあるが、これらに限るわけではない。本発明の組成物、組合せおよび方法で使用するためのそのような酵素を製造および精製するための方法は、当技術分野では知られている(例えば米国特許第6,054,569号;Yamagataら (1968) J.Biol.Chem. 243(7):1523-1535;Yangら (1985) J.Biol.Chem. 160(30):1849-1857)。
コンドロイチンABCリアーゼは、コンドロイチン硫酸タイプおよびデルマタン硫酸タイプのさまざまなグルコサミノグリカンを分解する2つの酵素、コンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼ(EC4.2.2.20)およびコンドロイチン硫酸ABCエキソリアーゼ(EC4.2.2.21)を含有する(Hamaiら (1997) J Biol Chem. 272(14):9123-30)。コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンおよびデルマタン硫酸は、コンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼの好ましい基質であるが、この酵素はヒアルロナンにも、より低い速度で、作用することができる。コンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼは、コンドロイチン硫酸タイプおよびデルマタン硫酸タイプのさまざまなグリコサミノグリカンを分解して、最終的にはΔ4-不飽和四糖および二糖に分解されるさまざまなサイズのΔ4-不飽和オリゴ糖の混合物を生成する。コンドロイチン硫酸ABCエキソリアーゼも同じ基質特異性を持つが、これは、コンドロイチン硫酸ポリマーの非還元末端と、コンドロイチン硫酸BCエンドリアーゼによって生成したそれらのオリゴ糖フラグメントの非還元末端との両方から、二糖残基を除去する(Hamai, A.ら (1997) J.Biol.Chem. 272:9123-9130)。典型的なコンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼおよびコンドロイチン硫酸ABCエキソリアーゼには、プロテウス・ブルガリスおよびフラボバクテリウム・ヘパリナムに由来するものがあるが、これらに限るわけではない(プロテウス・ブルガリス・コンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼを配列番号98に記載する(Satoら (1994) Appl.Microbiol.Biotechnol. 41(1):39-46)。
コンドロイチンACリアーゼ(EC4.2.2.5)はコンドロイチン硫酸AおよびC、コンドロイチンならびにヒアルロン酸に対して活性であるが、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)には活性でない。細菌に由来する典型的コンドロイチナーゼAC酵素には、それぞれ配列番号99および100に記載するフラボバクテリウム・ヘパリナムおよびビクチバリス・バデンシス、ならびにアルスロバクター・アウレッセンスに由来するものがあるが、これらに限るわけではない(Tkalecら (2000) Applied and Environmental Microbiology 66(1):29-35;Ernstら (1995) Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology 30(5):387-444)。
コンドロイチナーゼCは、コンドロイチン硫酸Cを切断して、四糖と、不飽和6-硫酸二糖(ΔDi-6S)とを生成させる。これはヒアルロン酸も切断して、不飽和非硫酸化二糖(ΔDi-OS)を生成させる。細菌に由来する典型的なコンドロイチナーゼC酵素には、ストレプトコッカスおよびフラボバクテリウムに由来するものがあるが、これらに限るわけではない(Hibiら (1989) FEMS-Microbiol-Lett. 48(2):121-4;Michelacciら (1976) J.Biol.Chem. 251:1154-8;Tsudaら (1999) Eur.J.Biochem. 262:127-133)。
3.可溶性ヒアルロナン分解酵素
本発明の組成物、組合せおよび方法では、可溶性ヒアルロニダーゼを含む可溶性ヒアルロナン分解酵素が提供される。可溶性ヒアルロナン分解酵素には、可溶型で存在する任意のヒアルロナン分解酵素が含まれ、例えば可溶性ヒアルロニダーゼ、例えば非ヒト可溶性ヒアルロニダーゼ(非ヒト動物可溶性ヒアルロニダーゼを含む)、細菌可溶性ヒアルロニダーゼおよびヒトヒアルロニダーゼ、Hyal1、ウシPH20およびヒツジPH20、それらの対立遺伝子変異型およびそれらの他の変異型などがあるが、これらに限るわけではない。例えば、可溶性ヒアルロナン分解酵素には、可溶性になるように改変されている任意のヒアルロナン分解酵素、例えば米国仮特許出願第61/201,384号(これは引用によりその全てが本明細書に組み込まれる)などが含まれる。例えば、GPIアンカーを含有するヒアルロナン分解酵素は、そのGPIアンカーの全部または一部を切り詰めて除去することによって、可溶性にすることができる。ある例では、通常はGPIアンカーを介して膜に固定されているヒトヒアルロニダーゼPH20を、C末端にあるGPIアンカーの全部または一部を切り詰めて除去することにより、可溶性にすることができる。
可溶性ヒアルロナン分解酵素にも、中性活性および酸性活性ヒアルロニダーゼが含まれる。投与後の酵素の所望する活性レベルおよび/または投与部位など(ただしこれらに限るわけではない)といった因子に依存して、中性活性および酸性活性ヒアルロニダーゼを選択することができる。ある特定の例では、本発明の組成物、組合せおよび方法に使用するためのヒアルロナン分解酵素が可溶性中性活性ヒアルロニダーゼである。
可溶性ヒアルロニダーゼの典型例は、任意の種に由来するPH20、例えば配列番号1、2、11、25、27、30、31、63〜65および185〜186のいずれかに記載するもの、またはそのヒアルロニダーゼが可溶性であり、ヒアルロニダーゼ活性を保っている限りにおいて、C末端GPIアンカーの全部または一部を欠くその切断型である。可溶性ヒアルロニダーゼには、配列番号1、2、11、25、27、30、31、63〜65および185〜186のいずれかの対立遺伝子変異型もしくは他の変異型、またはその切断型も含まれる。対立遺伝子変異型および他の変異型は当業者には知られており、配列番号1、2、11、25、27、30、31、63〜65および185〜186のいずれかに対して60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはそれ以上の配列同一性を持つポリペプチド、またはその切断型を含む。アミノ酸変異型は保存的突然変異および非保存的突然変異を含む。ヒアルロニダーゼの活性にとって重要であるか、他の形で必要とされる残基、例えば上述したもの、または当業者に知られているものは、一般に不変であると理解される。これらには、例えば活性部位残基が含まれる。したがって、例えば、ヒトPH20ポリペプチドまたはその可溶型のアミノ酸残基111、113および176(配列番号2に記載する成熟PH20ポリペプチド中の残基に対応)は一般に不変であり、改変されない。グリコシル化および適正なフォールディングに必要なジスルフィド結合の形成を与える他の残基も不変でありうる。
いくつかの例では、可溶性ヒアルロナン分解酵素が、通常はGPIアンカー型(例えばヒトPH20)であり、C末端における切頭(truncation)によって可溶性にされる。そのような切頭では、GPIアンカー付加シグナル配列の全部を除去することもできるし、GPIアンカー付加シグナル配列の一部だけを除去することもできる。ただし、結果として生じるポリペプチドは可溶性である。可溶性ヒアルロナン分解酵素がGPIアンカー付加シグナル配列の一部を保持している例では、そのポリペプチドが可溶性である限り、GPIアンカー付加シグナル配列中の1、2、3、4、5、6、7個またはそれ以上のアミノ酸残基を保持することができる。GPIアンカーのアミノ酸を1つ以上含有するポリペプチドは、伸張型(extended)可溶性ヒアルロナン分解酵素と呼ばれる。当業者は、ポリペプチドがGPIアンカー型であるかどうかを、当技術分野において周知の方法を使って決定することができる。そのような方法には、既知のアルゴリズムを使ってGPIアンカー付加シグナル配列とω部位の存在と位置を予測する方法や、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI-PLC)またはD(PI-PLD)による消化の前後に溶解度解析を行う方法などがあるが、これらに限るわけではない。
伸張型可溶性ヒアルロナン分解酵素は、本来GPIアンカー型である任意のヒアルロナン分解酵素に、結果として生じるポリペプチドが可溶性であり、かつGPIアンカー付加シグナル配列に由来する1つ以上のアミノ酸残基を含有するように、C末端切頭を施すことによって作製することができる。C末端切断型であるがGPIアンカー付加シグナル配列の一部を保持している典型的な伸張型可溶性ヒアルロナン分解酵素には、霊長類由来の伸張型可溶性PH20(esPH20)ポリペプチド、例えばヒトおよびチンパンジーesPH20ポリペプチドなどがあるが、これらに限るわけではない。例えば、esPH20ポリペプチドは、配列番号1、2または185に記載の成熟もしくは前駆体ポリペプチド、またはその対立遺伝子変異型もしくは他の変異型(その活性フラグメントを含む)のいずれかのC末端切頭によって作製することができ、この場合、結果として生じるポリペプチドは可溶性であり、かつGPIアンカー付加シグナル配列由来の1つ以上のアミノ酸残基を保持する。対立遺伝子変異型および他の変異型は当業者に知られており、配列番号1または2のいずれかに対して60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上の配列同一性を持つポリペプチドを含む。本明細書に記載するesPH20ポリペプチドは、結果として生じるesPH20ポリペプチドが可溶性であり、かつGPIアンカー付加シグナル配列に由来する1つ以上のアミノ酸残基を保持している限り、配列番号1、2または185に記載する配列を持つポリペプチドなどの野生型ポリペプチドと比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上のアミノ酸がC末端で切頭されていてよい。
通例、本発明の組成物、組合せおよび方法における使用には、可溶性ヒトPH20などの可溶性ヒトヒアルロナン分解酵素が使用される。他の動物に由来するPH20などのヒアルロナン分解酵素を利用することはできるが、それらは動物性タンパク質であるので、そのような調製物は潜在的に免疫原性である。例えば、かなりの比率の患者が、摂取した食品による事前感作(prior sensitization)を示し、これらは動物性タンパク質であるので、全ての患者に後続的感作(subsequent sensitization)のリスクがある。したがって非ヒト調製物は、慢性的使用には適さないかもしれない。非ヒト調製物が望まれる場合は、そのようなポリペプチドを免疫原性が低下するように製造することができると、本発明では考えられる。そのような改変は当業者の技術水準において可能であり、これには、例えば分子上の1つ以上の抗原エピトープの除去および/または置換などを含めることができる。
本発明の方法で使用されるヒアルロニダーゼ(例えばPH20)などのヒアルロナン分解酵素は組換え生産するか、自然源から、例えば精巣抽出物などから精製または部分精製することができる。組換えヒアルロナン分解酵素などの組換えタンパク質の製造方法は、本明細書では項を改めて説明するが、当技術分野ではよく知られている。
a.可溶性ヒトPH20
可溶性ヒアルロニダーゼの典型例は可溶性ヒトPH20である。可溶型の組換えヒトPH20は作製されており、本明細書に記載する組成物、組合せおよび方法に使用することができる。そのような可溶型PH20の作製は、米国特許出願公開第20040268425号、同第20050260186号および同第20060104968号(これらは引用によりその全てが本明細書に組み込まれる)に記載されており、下記の実施例でも説明する。例えば可溶性PH20ポリペプチドには、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、配列番号1に含まれるアミノ酸配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、95%、97%、98%の配列同一性を持ち、ヒアルロニダーゼ活性を保っていて、可溶性である、C末端切断型変異ポリペプチドが含まれる。これらのポリペプチドには、GPIアンカー付加シグナル配列の全部または一部を完全に欠く可溶性PH20ポリペプチドが含まれる。また、GPIアンカーのアミノ酸を少なくとも1つは含有する伸張型可溶性PH20(esPH20)ポリペプチドも含まれる。したがって、これらのポリペプチドは、ERにおいてタンパク質のC末端に共有結合されたGPIアンカーを持ち、形質膜の細胞外小葉(extracellular leaflet)に固定されるのではなく、分泌され、可溶性である。C末端切断型PH20ポリペプチドは、完全長野生型ポリペプチド、例えば配列番号1または2に記載の配列を持つ完全長野生型ポリペプチド、またはその対立遺伝子変異型もしくは種変異型、または他の変異型と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、5、60個またはそれ以上のアミノ酸が、C末端で切り詰められていてよい。
本明細書に記載する典型的C末端切断型(truncated)ヒトPH20ポリペプチドには、配列番号1に記載のアミノ酸配列のアミノ酸1からアミノ酸465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497まで、またはその対立遺伝子変異型または種変異型中の対応する位置を含有するポリペプチドが生成するようなC末端切頭を持つものがいずれもが含まれる。哺乳動物細胞中で発現させた場合、35アミノ酸のN末端シグナル配列がプロセシング中に切断され、成熟型のタンパク質が分泌される。したがって、典型的な成熟C末端切断型可溶性PH20ポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列のアミノ酸36〜465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、またはその対立遺伝子変異型もしくは種変異型の対応する位置を含有しうる。表4に、C末端切断型可溶性PH20ポリペプチドを含む典型的C末端切断型PH20ポリペプチドの限定でない例を挙げる。下記表4には、前駆体ポリペプチドおよび成熟ポリペプチドの長さ(アミノ酸数)、ならびにC末端切断型PH20タンパク質の前駆体ポリペプチドおよび成熟ポリペプチドの典型的アミノ酸配列が記載されている配列識別子(配列番号)を記載する。比較のために表4には野生型PH20ポリペプチドも含める。
表4:典型的C末端切断型PH20ポリペプチド
Figure 0005809330
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可溶型には、配列番号1に記載のアミノ酸配列のアミノ酸1からアミノ酸467、477、478、479、480、481、482および483までを含有するポリペプチドが生成するようにC末端切頭を持つものがいずれも含まれるが、これらに限るわけではない。哺乳動物細胞中で発現させた場合、35アミノ酸のN末端シグナル配列はプロセシング中に切断され、成熟型のタンパク質が分泌される。したがって、成熟可溶性ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸36〜467、477、478、479、480、481、482および483を含有する。アミノ酸位置477〜483(配列番号1に記載する前駆体ポリペプチドに対応)で終わる欠失突然変異体は、完全長GPIアンカー型よりも高い分泌ヒアルロニダーゼ活性を示す。したがって、可溶性ヒアルロニダーゼの典型例は、配列番号4〜9のいずれかに記載するような、長さが442、443、444、445、446または447アミノ酸である可溶性ヒトPH20ポリペプチド、またはその対立遺伝子変異型もしくは種変異型、または他の変異型である。
グリコシル化はヒアルロニダーゼの触媒活性と安定性にとって重要であるので、一般に、可溶型のPH20は、ポリペプチドが確実に活性を保つように、正しいN-グリコシル化を容易にするタンパク質発現系を使って製造される。そのような細胞には、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えばDG44 CHO細胞)がある。
b.rHuPH20
ヒトPH20の組換え可溶型が作製されており、本明細書に記載する組成物、組合せおよび方法に使用することができる。組換えヒトPH20のそのような可溶型の作製は、米国特許出願公開第20040268425号、同第20050260186号および同第20060104968号に記載されており、下記実施例2〜6でも説明する。そのようなポリペプチドの典型例は、アミノ酸1〜482(配列番号3に記載するもの)をコードする核酸分子から生成するものである。そのような典型的核酸分子を配列番号49に記載する。翻訳後プロセシングにより、35アミノ酸のシグナル配列が除去されて、447アミノ酸の可溶性組換えヒトPH20(配列番号4)が残る。培養培地中に生産された状態ではC末端に不均一性が存在するので、rHuPH20と呼ばれる生成物は、配列番号4〜9のいずれか1つ以上をさまざまな存在比で含みうる分子種の混合物を含む。通例、rHuPH20は、活性が保たれるように、正しいN-グリコシル化を容易にする細胞、例えばCHO細胞(例:DG44 CHO細胞)中で生産される。
4.ヒアルロナン分解酵素のグリコシル化
ヒアルロニダーゼを含むいくつかのヒアルロナン分解酵素のグリコシル化(N結合型グリコシル化およびO結合型グリコシル化を含む)は、それらの触媒活性および安定性にとって重要でありうる。糖タンパク質を修飾するグリカンのタイプの改変は、タンパク質の抗原性、構造のフォールディング、溶解性、および安定性に劇的な影響を持ちうるが、大半の酵素は最適な酵素活性にグリコシル化を必要とするとは考えられていない。いくつかのヒアルロニダーゼでは、N結合型グリコシル化の除去により、ヒアルロニダーゼ活性のほぼ完全な失活が起こりうる。したがって、そのようなヒアルロニダーゼにとって、活性酵素の生成にはN結合型グリカンの存在が不可欠である。
N結合型オリゴ糖はいくつかの主要タイプ(オリゴマンノース型、複合型、ハイブリッド型、硫酸型)に分類され、それらは全て、-Asn-Xaa-Thr/Ser-配列(XaaはProではない)に含まれるAsn残基のアミド窒素を介して取り付けられた(Man)3-GlcNAc-GlcNAc-コアを持つ。-Asn-Xaa-Cys-部位におけるグリコシル化は凝固タンパク質Cに関して報告されている。いくつかの例では、ヒアルロニダーゼなどのヒアルロナン分解酵素がN-グリコシド結合とO-グリコシド結合の両方を含有しうる。例えばPH20はN結合型オリゴ糖だけでなくO結合型オリゴ糖も持つ。配列番号1に例示されるヒトPH20には、N82、N166、N235、N254、N368、N393、N490に7つの潜在的N結合型グリコシル化部位がある。上記のように、N490におけるN結合型グリコシル化は、ヒアルロニダーゼ活性にとって必要でない。
いくつかの例では、本発明の組成物、組合せおよび/または方法で使用するためのヒアルロナン分解酵素は、グリコシル化部位の一つまたは全部でグリコシル化される。例えばヒトPH20またはその可溶型の場合、配列番号1のアミノ酸N82、N166、N235、N254、N368、およびN393に相当するN-グリコシル化部位のうち、2、3、4、5、または6ヶ所がグリコシル化される。いくつかの例では、ヒアルロナン分解酵素が1つ以上の天然グリコシル化部位でグリコシル化される。別の例では、ヒアルロナン分解酵素が1つ以上の非天然グリコシル化部位で修飾されて、1つ以上の追加部位でポリペプチドがグリコシル化される。そのような例では、追加糖部分の取り付けにより、その分子の薬物動態特性が強化(例えば半減期が改善および/または活性が改善)されうる。
別の例では、本明細書に記載する組成物、組合せおよび/または方法で使用するためのヒアルロナン分解酵素が部分的に脱グリコシル化される(またはN部分グリコシル化ポリペプチドである)。例えば、完全にグリコシル化されたヒアルロニダーゼのヒアルロニダーゼ活性の全部または一部を保持している部分脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチドは、本明細書に記載する組成物、組合せおよび/または方法に使用することができる。典型的な部分脱グリコシル化ヒアルロニダーゼには、任意の種に由来する部分脱グリコシル化PH20ポリペプチドの可溶型、例えば配列番号1、2、11、25、27、29、30、31、32、63、65、185および186のいずれかに記載するもの、またはその対立遺伝子変異型、切断型変異型、もしくは他の変異型がいずれも含まれる。そのような変異型は当業者には知られており、配列番号1、2、11、25、27、29、30、31、32、63、65、185および186のいずれかに対して60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上の配列同一性を持つポリペプチド、またはその切断型が含まれる。本明細書に記載する部分脱グリコシル化ヒアルロニダーゼには、ハイブリッド、融合およびキメラ部分脱グリコシル化ヒアルロニダーゼ、ならびに部分脱グリコシル化ヒアルロニダーゼコンジュゲートも含まれる。
グリコシダーゼ、別名グリコシドヒドロラーゼは、グリコシド結合を加水分解して、より小さな糖を2つ生成させる反応を触媒する酵素である。脊椎動物におけるN-グリカンの主要タイプには、高マンノース型グリカン、ハイブリッド型グリカンおよび複合型グリカンがある。部分的なタンパク質脱グリコシル化だけをもたらすグリコシダーゼは、高マンノース型グリカンとハイブリッド型グリカンを切断するEndoF1、2分岐型複合型グリカンを切断するEndoF2、2分岐以上の複合型グリカンを切断するEndoF3、および高マンノース型グリカンとハイブリッド型グリカンを切断するEndoHなど、いくつかある。可溶性ヒアルロニダーゼ(例えば可溶性PH20)などのヒアルロナン分解酵素を、これらのグリコシダーゼの1つまたは全部で処理すると、部分的な脱グリコシル化だけが起こり、したがってヒアルロニダーゼ活性を保持することができる。
部分脱グリコシル化可溶性ヒアルロニダーゼなどの部分脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素は、1つ以上のグリコシダーゼ、一般的には全てのN-グリカンを除去するのではなく部分的にのみタンパク質を脱グリコシル化するグリコシダーゼによる処理で製造することができる。例えばPH20(例えばrHuPH20と呼ばれる組換えPH20)を上記グリコシダーゼの1つまたは全部(例えばEndoF1、EndoF2および/またはEndoF3)で処理すると、部分脱的グリコシル化が起こる。これらの部分脱グリコシル化PH20ポリペプチドは、完全グリコシル化ポリペプチドに匹敵するヒアルロニダーゼ酵素活性を示すことができる。対照的に、全てのN-グリカンを切断するグリコシダーゼであるPNGaseFによるPH20の処理は全てのN-グリカンの完全な除去をもたらし、それによってPH20を酵素的に不活性にする。したがって、全てのN結合型グリコシル化部位(例えば配列番号1に例示するヒトPH20のアミノ酸N82、N166、N235、N254、N368、およびN393にあるものなど)がグリコシル化されていてもよいが、1つ以上のグリコシダーゼで処理することにより、1つ以上のグリコシダーゼで消化されていないヒアルロニダーゼと比較してグリコシル化の程度を低下させることもできる。
部分脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチドなどの部分脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素は、完全グリコシル化ポリペプチドの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%のグリコシル化レベルを持つことができる。通例、部分脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチドなどの部分脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素は、完全グリコシル化ポリペプチドが示すヒアルロニダーゼ活性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、300%、400%、500%、1000%またはそれ以上であるヒアルロニダーゼ活性を示す。
5.ヒアルロナン分解酵素の修飾によるその薬物動態特性の改良
ヒアルロナン分解酵素は、その薬物動態特性を改良するために修飾して、例えば生体内半減期および/または活性を増加させることができる。本発明の組成物、組合せおよび/または方法で使用するためのヒアルロナン分解酵素の修飾には、直接的に、またはリンカーを介して間接的に、例えば共有結合により、または他の安定な結合により、デキストラン、ポリエチレングリコール(PEG化(PEG))またはシアリル部分などのポリマー、または他の同様のポリマー、例えば天然ポリマーまたは糖ポリマーなどを取り付けることを含めることができる。
治療薬のPEG化は、タンパク質分解に対する耐性を増加させ、血漿中半減期を増加させ、抗原性および免疫原性を低下させることが知られている。したがって、ヒアルロナン分解酵素への、ポリエチレングリコール部分(PEG)などのポリマー分子の共有結合または他の安定な結合(コンジュゲーション)は、結果として得られる酵素-ポリマー組成物に有益な性質を付与することができる。そのような性質には、改良された生体適合性、対象内の血液、細胞および/または他の組織におけるタンパク質(および酵素活性)半減期の延長、プロテアーゼおよび加水分解からのタンパク質の効果的な遮蔽、改良された体内分布、強化された薬物動態および/または薬力学、ならびに増加した水溶性が含まれる。
ヒアルロナン分解酵素にコンジュゲートすることができる典型的なポリマーとしては、天然および合成ホモポリマー、例えばポリオール(すなわちポリ-OH)、ポリアミン(すなわちポリ-NH2)およびポリカルボン酸(polycarboxyl acid)(すなわちポリ-COOH)、さらにはヘテロポリマー、すなわち1つ以上の異なるカップリング基、例えばヒドロキシル基およびアミン基を含むポリマーが挙げられる。適切なポリマー分子の例として、ポリアルキレンオキシド(PAO)、例えばポリプロピレングリコール(PEG)、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)およびポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール(PAG)、PEG-グリシジルエーテル(Epox-PEG)、PEG-オキシカルボニルイミダゾール(CDI-PEG)、分岐ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリ-D,L-アミノ酸、ポリエチレン-co-マレイン酸無水物、ポリスチレン-co-マレイン酸無水物、カルボキシメチル-デキストランなどのデキストラン、ヘパリン、相同(homologous)アルブミン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類、キトサンの加水分解物、ヒドロキシエチル-デンプンおよびヒドロキシプロピル-デンプンなどのデンプン類、グリコーゲン、アガロースおよびその誘導体、グアーガム、プルラン、イヌリン、キサンタンゴム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸加水分解物および生体ポリマーの中から選択されるポリマー分子が挙げられる。
通例、ポリマーは、デキストラン、プルランなどの多糖類と比較して架橋する能力を持つ反応性基が少ないポリアルキレンオキシド(PAO)、例えばPEGなどのポリエチレンオキシド、通例、mPEGである。通例、ポリマーは、比較的単純な化学反応でヒアルロナン分解酵素に(例えばタンパク質表面上の結合基に)共有結合的にコンジュゲートすることができる無毒性ポリマー分子、例えば(m)ポリエチレングリコール(mPEG)である。
ヒアルロナン分解酵素に取り付けるための適切なポリマー分子には、ポリエチレングリコール(PEG)およびPEG誘導体、例えばメトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)、PEG-グリシジルエーテル(Epox-PEG)、PEG-オキシカルボニルイミダゾール(CDI-PEG)、分岐PEG、およびポリエチレンオキシド(PEO)などがあるが、これらに限るわけではない(例えばRobertsら, Advanced Drug Deliery Review 2002, 54:459-476;HarrisおよびZalipsky,S編「Poly(ethylene glycol), Chemistry and Biological Applications」ACS Symposium Series 680, 1997;Mehvarら, J.Pharm.Pharmaceut.Sci., 3(1):125-136, 2000;Harri, Nature Reviews 2:215以降 (2003);およびTsubery, J Biol.Chem 279(37):38118-24, 2004参照)。ポリマー分子は、約3kDa〜約60kDaの範囲にわたる分子量を持ちうる。いくつかの実施形態では、rHuPH20などのタンパク質にコンジュゲートされるポリマー分子が、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60kDaまたは60kDa超の分子量を持つ。
PEGまたはPEG誘導体を共有結合で取り付ける(コンジュゲートする)こと(すなわち「PEG化」)によってポリペプチドを修飾する方法は、当技術分野では種々知られている(例えばU.S.2006/0104968、U.S.5,672,662、U.S.6,737,505、およびU.S.2004/0235734参照)。PEG化の技法には、専用のリンカーおよびカップリング化学(例えばHarris, Adv.Drug Deliv.Rev. 54:459-476, 2002参照)、単一のコンジュゲーション部位への複数のPEG部分の取り付け(分岐PEGの使用によるものなど;例えばVeroneseら, Bioorg.Med.Chem.Lett. 12:177-180, 2002参照)、部位特異的PEG化および/またはモノPEG化(例えばChapmanら, Nature Biotech. 17:780-783, 1999参照)、ならびに部位特異的酵素的PEG化(例えばSato, Adv.Drug Deliv.Rev., 54:487-504、2002参照)などがあるが、これらに限るわけではない(例えばLuおよびFelix (1994) Int.J.Peptide Protein Res. 43:127-138;LuおよびFelix (1993) Peptide Res. 6:142-6, 1993;Felixら (1995) Int.J.Peptide Res. 46:253-64;Benharら (1994) J.Biol.Chem. 269:13398-404;Brumeanuら (1995) J Immunol. 154:3088-95も参照されたい。また、Calicetiら (2003) Adv.Drug Deliv.Rev. 55(10):1261-77およびMolineux (2003) Pharmacotherapy 23 (8 Pt 2):3S-8Sも参照されたい)。当技術分野で記載されている方法および技法により、単一のタンパク質分子に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個を超えるPEGまたはPEG誘導体が取り付けられているタンパク質を製造することができる(例えばU.S.2006/0104968参照)。
当技術分野ではPEG化のための試薬が数多く記載されている。そのような試薬には、N-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)活性化PEG、スクシンイミジルmPEG、mPEG2-N-ヒドロキシスクシンイミド、mPEGスクシンイミジルα-メチルブタノエート、mPEGスクシンイミジルプロピオネート、mPEGスクシンイミジルブタノエート、mPEGカルボキシメチル3-ヒドロキシブタン酸スクシンイミジルエステル、ホモ二官能性PEG-スクシンイミジルプロピオネート、ホモ二官能性PEGプロピオンアルデヒド、ホモ二官能性PEGブチルアルデヒド、PEGマレイミド、PEGヒドラジド、p-ニトロフェニル-カーボネートPEG、mPEG-ベンゾトリアゾールカーボネート、プロピオンアルデヒドPEG、mPEGブチルアルデヒド、分岐mPEG2ブチルアルデヒド、mPEGアセチル、mPEGピペリドン、mPEGメチルケトン、mPEG「リンカーレス(linkerless)」マレイミド、mPEGビニルスルホン、mPEGチオール、mPEGオルトピリジルチオエステル、mPEGオルトピリジルジスルフィド、Fmoc-PEG-NHS、Boc-PEG-NHS、ビニルスルホンPEG-NHS、アクリレートPEG-NHS、フルオレセインPEG-NHS、およびビオチンPEG-NHSなどがあるが、これらに限るわけではない(例えばMonfardiniら, Bioconjugate Chem. 6:62-69, 1995;Veroneseら, J.Bioactive Compatible Polymers 12:197-207, 1997;U.S.5,672,662;U.S.5,932,462;U.S.6,495,659;U.S.6,737,505;U.S.4,002,531;U.S.4,179,337;U.S.5,122,614;U.S.5,183,550;U.S.5,324,844;U.S.5,446,090;U.S.5,612,460;U.S.5,643,575;U.S.5,766,581;U.S.5,795,569;U.S.5,808,096;U.S.5,900,461;U.S.5,919,455;U.S.5,985,263;U.S.5,990,237;U.S.6,113,906;U.S.6,214,966;U.S.6,258,351;U.S.6,340,742;U.S.6,413,507;U.S.6,420,339;U.S.6,437,025;U.S.6,448,369;U.S.6,461,802;U.S.6,828,401;U.S.6,858,736;U.S.2001/0021763;U.S.2001/0044526;U.S.2001/0046481;U.S.2002/0052430;U.S.2002/0072573;U.S.2002/0156047;U.S.2003/0114647;U.S.2003/0143596;U.S.2003/0158333;U.S.2003/0220447;U.S.2004/0013637;US 2004/0235734;U.S.2005/000360;U.S.2005/0114037;U.S.2005/0171328;U.S.2005/0209416;EP 01064951;EP 0822199;WO 00176640;WO 0002017;WO 0249673;WO 9428024;およびWO 0187925を参照されたい)。
ある例では、本発明の方法、組成物、および組合せで使用するためのヒアルロナン分解酵素が、PEG化された可溶性ヒアルロニダーゼである。ある特定の例では、可溶性ヒアルロニダーゼがPEG化PH20ヒアルロニダーゼである。もう一つの特定の例では、可溶性ヒアルロニダーゼが、例えば実施例10に記載するようなPEG化rHuPH20である。
E.インスリンまたはヒアルロナン分解酵素をコードする核酸およびそのポリペプチドを作製する方法
本明細書に記載するインスリンおよびヒアルロナン分解酵素のポリペプチドは、当技術分野で周知のタンパク質精製方法および組換えタンパク質発現方法によって得ることができる。ポリペプチドは化学的に合成することもできる。例えばインスリンのA鎖およびB鎖を化学合成してから、それらを、例えば還元-再酸化反応などにより、ジスルフィド結合で架橋することができる。ポリペプチドを組換え手段によって製造する場合は、所望の遺伝子をコードする核酸を同定するための当業者に知られる任意の方法を使用することができる。当技術分野で利用できる任意の方法を使って、例えば細胞または組織供給源から、ヒアルロニダーゼをコードする完全長(すなわち全コード領域を包含する)cDNAまたはゲノムDNAクローンを得ることができる。改変型または変異型インスリンまたはヒアルロナン分解酵素は、野生型ポリペプチドから、部位特異的突然変異誘発法などによって工学的に作製することができる。
ポリペプチドは、核酸分子をクローン化または単離するための当技術分野で知られる任意の利用可能な方法を使って、クローン化または単離することができる。そのような方法には、核酸のPCR増幅およびライブラリーのスクリーニング、例えば核酸ハイブリダイゼーションスクリーニング、抗体に基づくスクリーニング、および活性に基づくスクリーニングが含まれる。
例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法などといった核酸増幅法を使って、所望のポリペプチドをコードする核酸分子を単離することができる。核酸含有材料を出発物質として使用して、そこから所望のポリペプチドコード核酸分子を単離することができる。増幅方法では、例えばDNAおよびmRNA調製物、細胞抽出物、組織抽出物、体液試料(例えば血液、精子、唾液)、健常被験者および/または罹患被験者から得た試料を使用することができる。核酸ライブラリーも出発物質の供給源として使用することができる。所望のポリペプチドが増幅されるようにプライマーを設計することができる。例えば、所望のポリペプチドがそこから生成される発現された配列に基づいて、プライマーを設計することができる。プライマーは、逆翻訳(back-translation)に基づいて設計することができる。増幅によって生成した核酸分子を配列決定し、所望のポリペプチドがコードされていることを確認することができる。
追加ヌクレオチド配列、例えば合成遺伝子をベクター(例えばタンパク質発現ベクターまたはコアタンパク質コードDNA配列を増幅するために設計されたベクター)中にクローニングするための制限エンドヌクレアーゼ部位を含有するリンカー配列などを、ポリペプチドコード核酸分子につなぐことができる。さらにまた、機能的DNA要素を指定する追加ヌクレオチド配列をポリペプチドコード核酸分子に作動的に連結することもできる。そのような配列の例には、細胞内タンパク質発現が容易になるように設計されたプロモーター配列、およびタンパク質分泌が容易になるように設計された分泌配列、例えば異種シグナル配列などがあるが、これらに限るわけではない。そのような配列は当業者には知られている。タンパク質結合領域を指定する塩基配列などの追加ヌクレオチド残基配列も酵素コード核酸分子に連結することができる。そのような領域には、特異的標的細胞への酵素の取り込みを容易にするか、合成遺伝子の産物の薬物動態を他の形で変化させる残基の配列、または特異的標的細胞への酵素の取り込みを容易にするか、合成遺伝子の産物の薬物動態を他の形で変化させるタンパク質をコードする残基の配列などがあるが、これらに限るわけではない。例えば酵素をPEG部分に連結することができる。
さらに、例えばポリペプチドの検出またはアフィニティ精製を助けるためなどの目的で、タグまたは他の部分を付加することもできる。例えば、エピトープタグまたは他の検出可能マーカーを指定する塩基配列などの追加ヌクレオチド残基配列も、酵素コード核酸分子に連結することができる。そのような配列の典型例には、Hisタグ(例えば6×His、HHHHHH;配列番号54)またはFlagタグ(DYKDDDDK;配列番号55)などがある。
次に、同定され単離された核酸を適当なクローニングベクターに挿入することができる。当技術分野で知られる多数のベクター-宿主系を使用することができる。考えられるベクターには、プラスミドまたは改変ウイルスなどがあり、これらに限るわけではないが、ベクター系は使用する宿主細胞と適合しなければならない。そのようなベクターには、ラムダ誘導体などのバクテリオファージ、またはpCMV4、pBR322もしくはpUCプラスミド誘導体などのプラスミド、またはBluescriptベクター(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)などがあるが、これらに限るわけではない。他の発現ベクターには、本明細書に例示するHZ24発現ベクターがある。クローニングベクターへの挿入は、例えば、相補的付着末端を持つクローニングベクター中に、DNAフラグメントをライゲートすることによって達成することができる。挿入はTOPOクローニングベクター(INVITROGEN、カリフォルニア州カールズバッド)を使って達成することができる。DNAをフラグメント化するために使用される相補的制限部位がクローニングベクター中に存在しない場合は、DNA分子の末端を酵素的に修飾することができる。あるいは、ヌクレオチド配列(リンカー)をDNA末端にライゲートすることによって所望する任意の部位を作り出すこともでき、これらのライゲートされたリンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードする特異的な化学合成オリゴヌクレオチドを含有することができる。これに代わる方法として、切断されたベクターおよびタンパク質遺伝子を、ホモポリマーテーリング(homopolymer tailing)によって修飾することもできる。組換え分子は、例えば形質転換、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーションおよびソノポレーションなどによって、その遺伝子配列のコピーが数多く生成するように、宿主細胞中に導入することができる。
インスリンはさまざまな技法を使って製造することができる(例えばLadischら (1992) Biotechnol.Prog. 8:469-478参照)。いくつかの例では、プレプロインスリンポリペプチドまたはプロインスリンポリペプチドをコードする核酸を、発現ベクター中に挿入する。発現させた後、プレプロインスリンポリペプチドまたはプロインスリンポリペプチドは、シグナル配列および/またはCペプチドを切断する酵素的方法または化学的方法(これは、A鎖およびB鎖をもたらし、それらが例えば還元-再酸化反応などによってジスルフィド結合で架橋される)によって、インスリンに変換される(例えばCousensら (1987) Gene 61:265-275、Chanceら (1993) Diabetes Care 4:147-154参照)。もう一つの例では、インスリンのA鎖およびB鎖をコードする核酸を、1つまたは2つの発現ベクターに挿入して、1つの発現ベクターから単一ポリペプチドとして共発現させるか、1つまたは2つの発現ベクターから2つのポリペプチドとして発現させる。したがって、C鎖の非存在下で、A鎖ポリペプチドとB鎖ポリペプチドを、別々に発現させてからそれらを組み合わせてインスリンを生成させるか、共発現させることができる。A鎖およびB鎖を単一ポリペプチドとして共発現させる例では、サブユニットをコードする核酸が、後述するリンカーまたはスペーサーのようなリンカーまたはスペーサーを、B鎖とA鎖の間にコードすることもできる。発現ベクター中に挿入される核酸は、例えばインスリンB鎖、リンカー(例えばアラニン-アラニン-リジンリンカーなど)およびA鎖をコードする核酸を含有して、例えば「インスリンB鎖-Ala-Ala-Lys-インスリンA鎖」の発現をもたらすことができる。
特別な実施形態では、宿主細胞を、単離されたタンパク質遺伝子、cDNA、または合成DNA配列を組み込んだ組換えDNA分子で形質転換することにより、その遺伝子のコピーを多数生成させることができる。こうして、形質転換体を成長させ、形質転換体から組換えDNA分子を単離し、必要であれば、単離した組換えDNAから挿入された遺伝子を回収することにより、遺伝子を大量に得ることができる。
1.ベクターおよび細胞
本明細書に記載する任意のタンパク質など、所望のタンパク質の1つ以上を組換え発現させるために、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の全部または一部を含有する核酸を、適当な発現ベクター中に、すなわち挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳に必要な要素を含有するベクター中に、挿入することができる。必要な転写および翻訳シグナルは、酵素遺伝子の天然プロモーターおよび/またはそれらの隣接領域によって供給されうる。
酵素をコードする核酸を含有するベクターも提供する。ベクターを含有する細胞も提供する。細胞には真核細胞および原核細胞が含まれ、ベクターはそこでの使用に適した任意のベクターである。
ベクターを含有する原核細胞および真核細胞(内皮細胞を含む)を提供する。そのような細胞には、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、古細菌、植物細胞、昆虫細胞および動物細胞などがある。細胞は、コードされているタンパク質が細胞によって発現されるような条件下で上述の細胞を成長させ、発現されたタンパク質を回収することにより、そのタンパク質を生産するために使用される。本発明では、例えば酵素を、培地中に分泌させることができる。
天然のまたは異種のシグナル配列に結合された可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列ならびにその複数コピーを含有するベクターを提供する。ベクターは酵素タンパク質が細胞中で発現されるように選択するか、酵素タンパク質が分泌タンパク質として発現されるように選択することができる。
さまざまな宿主-ベクター系を使って、タンパク質コード配列を発現させることができる。これらには、ウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルスおよび他のウイルス)に感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞;酵母ベクターを含有する酵母などの微生物;またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAで形質転換された細菌などがあるが、これらに限るわけではない。ベクターの発現要素はその強さおよび特異性がさまざまである。使用する宿主-ベクター系に依存して、数ある適切な転写および翻訳要素のどれでも1つを使用することができる。
ベクター中にDNAフラグメントを挿入するための当業者に知られる任意の方法を使用して、適当な転写/翻訳制御シグナルとタンパク質コード配列とを含むキメラ遺伝子を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組換えDNAおよび合成技法、ならびにインビボ組換え体(遺伝子組換え)を含めることができる。タンパク質またはそのドメイン、誘導体、フラグメントもしくはホモログをコードする核酸配列の発現は、遺伝子またはそのフラグメントが組換えDNA分子で形質転換された宿主中で発現されるように、第2の核酸配列によって調節することができる。例えば、タンパク質の発現は、当技術分野で知られる任意のプロモーター/エンハンサーで制御することができる。具体的一実施形態では、プロモーターが、所望するタンパク質の遺伝子にとって天然のプロモーターではない。使用することができるプロモーターには、SV40初期プロモーター(BernoistおよびChambon, Nature 290:304-310 (1981))、ラウス肉腫ウイルスの3'末端反復配列(long terminal repeat)に含まれるプロモーター(Yamamotoら Cell 22:787-797 (1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441-1445 (1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら, Nature 296:39-42 (1982));原核発現ベクター、例えばβ-ラクタマーゼプロモーター(Jayら (1981) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:5543)またはtacプロモーター(DeBoerら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21-25 (1983));Scientific American 242:79-94 (1980)の「Useful Proteins from Recombinant Bacteria」も参照されたい;ノパリンシンテターゼプロモーター(Herrara-Estrellaら, Nature 303:209-213 (1984))またはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Garderら, Nucleic Acids Res. 9:2871 (1981))、および光合成酵素リブロースビスリン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrellaら, Nature 310:115-120 (1984))を含有する植物発現ベクター;酵母および他の真菌由来のプロモーター要素、例えばGal4プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼプロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、および組織特異性を示し、トランスジェニック動物で使用されてきた、以下の動物転写制御領域:膵腺房細胞中で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら, Cell 38:639-646 (1984);Ornitzら, Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol. 50:399-409 (1986);MacDonald, Hepatology 7:425-515 (1987));膵β細胞中で活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahanら, Nature 315:115-122 (1985))、リンパ球様細胞中で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら, Cell 38:647-658 (1984);Adamsら, Nature 318:533-538 (1985);Alexanderら, Mol.Cell Biol. 7:1436-1444 (1987))、精巣、乳房、リンパ球様細胞およびマスト細胞中で活性であるマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域(Lederら, Cell 45:485-495 (1986))、肝臓中で活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinckertら, Genes and Devel. 1:268-276 (1987))、肝臓中で活性なα-フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufら, Mol.Cell.Biol. 5:1639-1648 (1985);Hammerら, Science 235:53-58 (1987))、肝臓中で活性なα-1アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら, Genes and Devel. 1:161-171 (1987))、骨髄性細胞中で活性なβグロビン遺伝子制御領域(Magramら, Nature 315:338-340 (1985);Kolliasら, Cell 46:89-94 (1986))、脳の希突起膠細胞中で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら, Cell 48:703-712 (1987))、骨格筋中で活性なミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Shani, Nature 314:283-286 (1985))、および視床下部の性腺刺激細胞中で活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン(gonadotrophic releasing hormone)遺伝子制御領域(Masonら, Science 234:1372-1378 (1986))などがあるが、これらに限るわけではない。
ある具体的一実施形態では、所望のタンパク質またはそのドメイン、フラグメント、誘導体もしくはホモログをコードする核酸に作動的に連結されたプロモーター、1つ以上の複製起点、および場合によっては、1つ以上の選択可能マーカー(例えば抗生物質耐性遺伝子)を含有するベクターを使用する。大腸菌(E. coli)細胞を形質転換するための典型的プラスミドベクターには、例えばpQE発現ベクター(Qiagen(カリフォルニア州バレンシア)から入手可能;Qiagenが発行したこの系に関する文献も参照されたい)がある。pQEベクターは、ファージT5プロモーター(大腸菌RNAポリメラーゼによって認識される)と、大腸菌における組換えタンパク質の緻密に調節された高レベル発現をもたらすための二重lacオペレータ抑制モジュール(double lac operator repression module)、効率のよい翻訳のための合成リボソーム結合部位(RBS II)、6×Hisタグコード配列、t0およびT1転写ターミネーター、ColE1複製起点、およびアンピシリン耐性を付与するためのβ-ラクタマーゼ遺伝子を持つ。pQEベクターは6×Hisタグを組換えタンパク質のN末端またはC末端に置くことを可能にする。そのようなプラスミドには、3つの読み枠全てにマルチクローニング部位を与え、N末端が6×Hisタグで標識されたタンパク質の発現をもたらす、pQE32、pQE30、およびpQE31がある。大腸菌細胞を形質転換するための他の典型的プラスミドベクターには、例えばpET発現ベクター(米国特許第4,952,496号;NOVAGEN(ウィスコンシン州マディソン)から入手可能;Novagenが発行したこの系に関する文献も参照されたい)などがある。そのようなプラスミドには、pET11a(これは、T7 lacプロモーター、T7ターミネーター、誘導性大腸菌lacオペレーター、およびlacリプレッサー遺伝子を含有する);pET12a-c(これは、T7プロモーター、T7ターミネーター、および大腸菌ompT分泌シグナルを含有する);ならびにpET15bおよびpET19b(NOVAGEN、ウィスコンシン州マディソン)(これらは、Hisカラムによる精製に使用するためのHis-Tag(商標)リーダー配列、およびカラムでの精製後に行われる切断を可能にするトロンビン切断部位、T7-lacプロモーター領域およびT7ターミネーターを含有する)などがある。
哺乳動物細胞発現用ベクターの典型例は、HZ24発現ベクターである。HZ24発現ベクターはpCIベクターバックボーン(Promega)から誘導された。これは、β-ラクタマーゼ耐性遺伝子(AmpR)をコードするDNA、F1複製起点、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー/プロモーター領域(CMV)、およびSV40後期ポリアデニル化シグナル(SV40)を含有する。この発現ベクターは、ECMVウイルス(Clontech)由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)およびマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子も持つ。
2.リンカー部分
いくつかの例では、例えばB鎖のC末端が短いリンカーでA鎖のN末端に接合されるようになっている、リンカーを持つA鎖ポリペプチドとB鎖ポリペプチドを作製することによって、インスリンが製造される。A鎖とB鎖は、リンカーを含有する単一ポリペプチドから発現させるか、別々に発現させてからリンカーで接合することができる。リンカー部分は、所望する性質に応じて選択される。リンカー部分は、A鎖とB鎖がインスリンの天然のコンフォメーションを模倣することができるように、十分に長くフレキシブルでなければならない。リンカーは、インスリンA鎖およびB鎖に適した部分であれば、なんでもよい。そのような部分には、ペプチド性結合(peptidic linkage);アミノ酸およびペプチド結合、通例、1〜約60個のアミノ酸を含有するもの;化学的リンカー、例えばヘテロ二官能性切断可能架橋剤、光切断可能リンカー、および酸切断可能リンカーなどがあるが、これらに限るわけではない。
リンカー部分はペプチドであることができる。ペプチドは、通例、約2〜約60個のアミノ酸残基、例えば約5〜約40個、または約10〜約30個のアミノ酸残基を持つ。好都合なことに、ペプチド性リンカー(peptidic linker)は核酸にコードして、大腸菌などの宿主細胞における発現時に融合タンパク質に組み込むことができる。ある例では、発現時に「インスリンB鎖-AAK-インスリンA鎖」ポリペプチドが生成するように、インスリンB鎖をコードする核酸とA鎖をコードする核酸との間にある核酸中に、アラニン-アラニン-リジン(AAK)(配列番号178)リンカーをコードする。ペプチドリンカーは、フレキシブルなスペーサーアミノ酸配列、例えば単鎖抗体研究で知られているものなどであることができる。そのような既知リンカーの例には、RPPPPC(配列番号166)またはSSPPPPC(配列番号167)、GGGGS(配列番号168)、(GGGGS)n(配列番号169)、GKSSGSGSESKS(配列番号170)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号171)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号172)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号173)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号174)、EGKSSGSGSESKEF(配列番号175)、SRSSG(配列番号176)およびSGSSC(配列番号177)があるが、これらに限るわけではない。
あるいは、ペプチドリンカー部分はVM(配列番号179)またはAM(配列番号180)であるか、式:AM(G2-4S)xAM[式中、Xは1〜11の整数である](配列番号181)で記述される構造を持つこともできる。例えばHustonら (1988) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 85:5879-5883;Whitlow,M.ら (1993) Protein Engineering 6:989-995;Newtonら (1996) Biochemistry 35:545-553;A.J.Cumberら (1992) Bioconj.Chem. 3:397-401;Ladurnerら (1997) J.Mol.Biol. 273:330-337;および米国特許第4,894,443号などには、さらなる連結部分が記載されている。
いくつかの例では、ペプチドリンカーが核酸によってコードされ、大腸菌やサッカロミセス・セレビシェ(S. cerevisiae)などの宿主細胞中で発現させた時に、B鎖とA鎖の間に組み込まれる。別の例では、ペプチドリンカーが化学的方法によって合成される。これは、A鎖およびB鎖の一つ以上の合成とは別個のプロトコールで行うことができ、構成要素は、その後に、例えばヘテロ二官能性リンカーなどを使って接合される。あるいは、ペプチドリンカーを一方のインスリン鎖のN末端またはC末端に合成し、次にそれを他方の鎖に、そのペプチドリンカーを介して、例えばヘテロ二官能性リンカーなどを使って連結することもできる。
ここでは、インスリンA鎖およびB鎖を連結するために、当業者に知られる任意のリンカーを使用することができる。鎖を化学的に連結するのに適したリンカーおよび結合様式には、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、ヒンダード(hindered)ジスルフィド結合、およびアミン基やチオール基などの遊離反応性基間の共有結合などがあるが、これらに限るわけではない。これらの結合は、ヘテロ二官能性試薬を使って一方または両方のポリペプチド上に反応性チオール基を生成させた後、一方のポリペプチド上のチオール基を、他方の鎖上の反応性チオール基または反応性マレイミド基もしくはチオール基を結合させることができるアミン基と反応させることによって作られる。他のリンカーには、酸性が強い細胞内区画では切断されるであろう酸切断可能リンカー、例えばビスマレイミドエトキシプロパン(bismaleimideothoxy propane)、酸不安定性トランスフェリンコンジュゲートおよびアジピン酸ジヒドラジド(adipic acid diihydrazide);UVまたは可視光に曝露すると切断される架橋剤、ならびにヒトIgG1の定常領域に由来する種々のドメイン(例えばCH1、CH2、およびCH3)などのリンカー(Batraら (1993) Molecular Immunol. 30:379-386参照)などがある。いくつかの実施形態では、各リンカーの望ましい性質を利用するために、数個のリンカーを含めることができる。化学的リンカーおよびペプチドリンカーは、リンカーをインスリンA鎖およびB鎖に共有結合でカップリングすることによって挿入することができる。そのような共有結合的カップリングは、下記のヘテロ二官能性剤を使って達成することができる。B鎖とA鎖の間にリンカーをコードしているDNAを発現させることによって、ペプチドリンカーを連結することもできる。
インスリンのA鎖とB鎖を接合するために使用することができる他のリンカーには、次に挙げるものがある:酵素基質、例えばカテプシンB基質、カテプシンD基質、トリプシン基質、トロンビン基質、スブチリシン基質、第Xa因子基質、およびエンテロキナーゼ基質;溶解性、可撓性(flexibility)および/または細胞内切断可能性を増加させるリンカーには、(glymser)nおよび(sermgly)n[式中、mは1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは2〜4であり、nは1〜30、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である]などのリンカーがある(例えば典型的リンカーが記載されているPCT国際出願WO 96/06641を参照されたい)。いくつかの実施形態では、各リンカーの望ましい性質を利用するために、数個のリンカーを含めることができる。
3.発現
インスリンおよびヒアルロナン分解酵素ポリペプチドは、インビボ法およびインビトロ法を含む、当業者に知られる任意の方法によって製造することができる。所望のタンパク質は、要求される量および形態(例えば投与および処置に必要とされる量および形態)でそのタンパク質を生産するのに適した任意の生物中で発現させることができる。発現宿主には、原核生物および真核生物、例えば大腸菌、酵母、植物、昆虫細胞、哺乳動物細胞(ヒト細胞株およびトランスジェニック動物を含む)が含まれる。発現宿主は、そのタンパク質産生レベルが異なりうると共に、発現されたタンパク質上に存在する翻訳後修飾のタイプも異なりうる。発現宿主の選択は、これらの因子および他の因子、例えば調節および安全性の問題、生産コスト、ならびに精製の必要性および精製の方法などに基づいて行うことができる。
多くの発現ベクターが利用可能であり、当業者に知られており、それらをタンパク質の発現に使用することができる。発現ベクターの選択は、宿主発現系の選択によって左右されるだろう。一般に発現ベクターは、転写プロモーターを含み、場合によってはエンハンサー、翻訳シグナル、ならびに転写および翻訳終結シグナルを含みうる。安定形質転換に使用される発現ベクターは、通例、形質転換細胞の選択と維持を可能にする選択可能マーカーを持つ。複製起点を使用してベクターのコピー数を増幅することができる場合もある。
可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドは、タンパク質融合物として利用し、または発現させることもできる。例えば、酵素に付加的機能を加えるために、酵素融合物を作製することができる。酵素融合タンパク質の例には、シグナル配列、タグ、例えば位置確認(localization)用のタグ、例えばhis6タグもしくはmycタグ、または精製用タグ、例えばGST融合物、ならびにタンパク質分泌および/または膜会合を指示するための配列の融合物などがあるが、これらに限るわけではない。
a.原核細胞
原核生物、特に大腸菌は、大量のタンパク質を生産するための系になる。大腸菌の形質転換は当業者に周知の簡便で迅速な技法である。大腸菌用の発現ベクターは誘導性プロモーターを含有することができ、そのようなプロモーターは、高レベルのタンパク質発現を誘導するのに有用であり、宿主細胞に対して何らかの毒性を示すタンパク質を発現させるのにも有用である。誘導性プロモーターの例には、lacプロモーター、trpプロモーター、ハイブリッドtacプロモーター、T7およびSP6 RNAプロモーター、ならびに温度感受性λPLプロモーターなどがある。
タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)は、大腸菌の細胞質環境中で発現させることができる。細胞質は還元的環境であり、一部の分子にとって、これは不溶性封入体の形成をもたらしうる。タンパク質を再可溶化するにはジチオスレイトール(dithiothreotol)やβ-メルカプトエタノールなどの還元剤およびグアニジン-HClや尿素などの変性剤を使用することができる。代替的アプローチは、周辺腔におけるタンパク質の発現である。これは、酸化的環境ならびにシャペロニン様イソメラーゼおよびジスルフィドイソメラーゼを提供し、可溶性タンパク質の産生をもたらすことができる。通例、タンパク質をペリプラズムに向かわせるリーダー配列が、発現されるべきタンパク質に融合される。その場合、リーダーは、ペリプラズム内で、シグナルペプチダーゼによって除去される。ペリプラズムを標的とする(periplasmic-targeting)リーダー配列には、ペクチン酸リアーゼ遺伝子由来のpelBリーダー、およびアルカリホスファターゼ遺伝子由来のリーダーなどがある。ペリプラズム発現により、発現されたタンパク質の培養培地への漏出が可能になる場合もある。タンパク質の分泌は培養上清からの迅速かつ簡便な精製を可能にする。分泌されないタンパク質は浸透圧溶解によってペリプラズムから得ることができる。細胞質発現と同様に、時には、タンパク質が不溶性になることもあり、可溶化および再フォールディングが容易になるように、変性剤および還元剤を使用することができる。誘導温度および成長温度も、発現レベルおよび溶解性に影響を及ぼすことがあり、通例、25℃〜37℃の温度が使用される。通例、細菌は非グリコシル化タンパク質を産生する。タンパク質が機能するためにグリコシル化を要求する場合は、宿主細胞から精製した後に、インビトロでグリコシル化を追加することができる。
b.酵母細胞
サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母は、タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)の生産に使用することができる周知の酵母発現宿主である。酵母は、エピソーム複製ベクターで形質転換させるか、相同組換えによる安定染色体組込みで形質転換させることができる。通例、遺伝子発現を調節するために、誘導性プロモーターが使用される。そのようなプロモーターの例には、GAL1、GAL7およびGAL5、ならびにメタロチオネインプロモーター、例えばCUP1、AOX1、または他のピキア(Pichia)プロモーターもしくは他の酵母プロモーターがある。発現ベクターは、多くの場合、形質転換されたDNAを選択し維持するために、LEU2、TRP1、HIS3およびURA3などの選択可能マーカーを含む。酵母中で発現されたタンパク質は可溶性であることが多い。Bipなどのシャペロニン類およびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼとの共発現により、発現レベルおよび可溶性が改善されうる。また、酵母中で発現されるタンパク質は、例えばサッカロミセス・セレビシェに由来する酵母接合型α因子分泌シグナルなどの分泌シグナルペプチド融合物、およびAga2p接合付着受容体(mating adhesion receptor)またはアークスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans)グルコアミラーゼなどの酵母細胞表面タンパク質との融合物を使って、分泌するように指示することもできる。発現されたポリペプチドが分泌経路を出た時に、融合された配列を発現されたポリペプチドから除去するために、プロテアーゼ切断部位、例えばKex-2プロテアーゼの切断部位を、工学的に作ることができる。酵母はAsn-X-Ser/Thrモチーフでグリコシル化を行う能力も持つ。
c.昆虫細胞
昆虫細胞、特にバキュロウイルス発現を用いるものは、ヒアルロニダーゼポリペプチドなどのポリペプチドを発現させるのに有用である。昆虫細胞は高レベルのタンパク質を発現し、高等真核生物が使用する翻訳後修飾の大半を行う能力を持つ。バキュロウイルスは宿主域が制限されており、それが安全性を向上させ、真核細胞発現に関する規制上の懸念を減少させる。典型的な発現ベクターは、高レベル発現用のプロモーター、例えばバキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターを使用する。よく使用されるバキュロウイルス系は、例えばオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多核体病ウイルス(AcNPV)およびカイコ(Bombyx mori)核多核体病ウイルス(BmNPV)などのバキュロウイルスと、例えばツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)に由来するSf9、シューダレチア・ユニパンクタ(Pseudaletia unipuncta)(A7S)およびオオカバマダラ(Danaus plexippus)(DpN1)などの昆虫細胞株とを含む。高レベル発現には、発現されるべき分子のヌクレオチド配列を、ウイルスのポリヘドリン開始コドンのすぐ下流に融合する。哺乳類分泌シグナルは昆虫細胞では正確にプロセシングされ、発現されたタンパク質を培養培地中に分泌させるには、これらのシグナルを使用することができる。加えて、細胞株シューダレチア・ユニパンクタ(A7S)およびオオカバマダラ(DpN1)は、哺乳動物細胞系と類似するグリコシル化パターンを持つタンパク質を産生する。
昆虫細胞におけるもう一つの発現系は安定形質転換細胞の使用である。発現には、シュナイダー(Schneider)2(S2)細胞およびKc細胞(キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))およびC7細胞(ヒトスジシマカ(Aedes albopictus))などの細胞株を使用することができる。カドミウムまたは銅による重金属誘導の存在下で高レベル発現を誘導するために、ショウジョウバエ(Drosophila)メタロチオネインプロモーターを使用することができる。発現ベクターは、典型的には、ネオマイシンやハイグロマイシンなどの選択可能マーカーの使用によって維持される。
d.哺乳動物細胞
可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドなどのタンパク質を発現させるために、哺乳類発現系を使用することができる。発現コンストラクトは、アデノウイルスなどのウイルス感染によって、またはリポソーム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランなどの直接的DNA導入によって、また、エレクトロポレーションやマイクロインジェクションなどの物理的手段によって、哺乳動物細胞に導入することができる。哺乳動物細胞用の発現ベクターは、通例、mRNAキャップ部位、TATAボックス、翻訳開始配列(コザック(Kozak)コンセンサス配列)およびポリアデニル化要素を含む。選択可能マーカーなどのもう一つの遺伝子との2シストロン性発現が可能になるように、IRES要素も加えることができる。そのようなベクターは、多くの場合、高レベル発現のための転写プロモーター-エンハンサー、例えばSV40プロモーター-エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)の末端反復配列などを含む。これらのプロモーター-エンハンサーは多くの細胞タイプにおいて活性である。発現には、組織型および細胞型のプロモーターおよびエンハンサー領域も使用することができる。典型的なプロモーター/エンハンサー領域には、エラスターゼI、インスリン、免疫グロブリン、マウス乳房腫瘍ウイルス、アルブミン、αフェトプロテイン、α1アンチトリプシン、βグロビン、ミエリン塩基性タンパク質、ミオシン軽鎖2、およびゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域(gonadotropic releasing hormone gene control)などの遺伝子に由来するものがあるが、これらに限るわけではない。発現コンストラクトを持つ細胞を選択し、維持するために、選択可能マーカーを使用することができる。選択可能マーカー遺伝子の例には、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびチミジンキナーゼなどがあるが、これらに限るわけではない。例えば、DHFR遺伝子を発現させる細胞だけを選択するために、メトトレキサートの存在下で発現を行うことができる。TCR-ζやFcεRI-γなどの細胞表面シグナリング分子との融合により、細胞表面上で活性な状態にあるタンパク質の発現を指示することができる。
哺乳類発現には、マウス細胞、ラット細胞、ヒト細胞、サル細胞、ニワトリ細胞およびハムスター細胞など、多くの細胞株を利用することができる。典型的細胞株には、CHO、Balb/3T3、HeLa、MT2、マウスNS0(非分泌性)および他の骨髄腫細胞株、ハイブリドーマおよびヘテロハイブリドーマ細胞株、リンパ球、線維芽細胞、Sp2/0、COS、NIH3T3、HEK293、293S、2B8、およびHKB細胞などがあるが、これらに限るわけではない。細胞培養培地からの分泌タンパク質の精製を容易にする無血清培地に適応した細胞株も利用できる。例として、CHO-S細胞(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド、カタログ番号11619-012)および無血清EBNA-1細胞株(Phamら (2003) Biotechnol.Bioeng. 84:332-42)が挙げられる。発現量が最大になるように最適化された特別な培地での成長に適応した細胞株も利用できる。例えばDG44 CHO細胞は、動物性産物を含まない合成培地における懸濁培養での成長に適応している。
e.植物
タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)を発現させるために、トランスジェニック植物細胞およびトランスジェニック植物を使用することができる。発現コンストラクトは、通例、微粒子銃(microprojectile bombardment)やプロトプラストへのPEGによる導入などといった直接的DNA導入を使って、またアグロバクテリウムによる形質転換を使って、植物に導入される。発現ベクターは、プロモーターおよびエンハンサー配列、転写終結要素および翻訳制御要素を含むことができる。発現ベクターおよび形質転換技法は、通常は、アラビドプシス(Arabidopsis)やタバコなどの双子葉植物宿主用と、トウモロコシやイネなどの単子葉植物宿主用とに分けられる。発現に使用される植物プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター、ノパリンシンターゼプロモーター、リボース二リン酸カルボキシラーゼプロモーター、ならびにユビキチンプロモーターおよびUBQ3プロモーターなどがある。形質転換細胞の選択と維持が容易になるように、ハイグロマイシン、ホスホマンノースイソメラーゼおよびネオマイシンホスホトランスフェラーゼなどの選択可能マーカーが、多くの場合、使用される。形質転換植物細胞は、細胞、凝集体(カルス組織)として培養維持するか、全植物体に再生させることができる。トランスジェニック植物細胞には、ヒアルロニダーゼポリペプチドを産生するように工学的に操作された藻類も含めることができる。植物は哺乳動物細胞とは異なるグリコシル化パターンを持つので、これは、これらの宿主中で生産されたタンパク質の選択に影響を及ぼしうる。
4.精製技法
インスリンポリペプチドおよびヒアルロナン分解酵素ポリペプチドまたは他のタンパク質などといったポリペプチドを宿主細胞から精製するための方法は、選択した宿主細胞と発現系に依存するだろう。分泌される分子の場合、タンパク質は一般に、細胞を除去した後に、培養培地から精製される。細胞内発現の場合は、細胞を溶解し、タンパク質を抽出物から精製することができる。トランスジェニック植物やトランスジェニック動物などのトランスジェニック生物を発現に使用する場合は、組織または臓器を、溶解細胞抽出物を作るための出発物質として使用することができる。また、トランスジェニック動物生産には、乳または卵におけるポリペプチドの生産を含めることができ、それらは、収集し、必要であれば、当技術分野における標準的方法を使って、タンパク質を抽出し、さらに精製することができる。
インスリンポリペプチドまたはヒアルロナン分解酵素ポリペプチドなどのタンパク質は、当技術分野において知られる標準的なタンパク質精製技法、例えば限定するわけではないが、SDS-PAGE、サイズ分画およびサイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、およびアニオン交換などのイオン交換クロマトグラフィーなどを使って精製することができる。効率および調製物の純度を改善するためにアフィニティ精製技法を利用することもできる。アフィニティ精製では、例えばヒアルロニダーゼ酵素を結合する抗体、受容体および他の分子を使用することができる。発現コンストラクトを工学的に操作して、mycエピトープ、GST融合物またはHis6などのアフィニティタグをタンパク質に付加し、それぞれmyc抗体、グルタチオン樹脂およびNi樹脂を使ってアフィニティ精製することもできる。純度は、当技術分野で知られる任意の方法、例えばゲル電気泳動、オルソゴナル(orthoganal)なHPLC法、染色および分光測光技法などによって評価することができる。
F.インスリンおよびヒアルロナン分解酵素ポリペプチドの製造、製剤および投与
本発明では、速効型インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の医薬組成物が、投与用に提供される。ヒアルロナン分解酵素は、インスリンの吸収速度を増加させインスリンのバイオアベイラビリティを増加させることによって血液への速効型インスリンの送達を強化するために、速効型インスリンの医薬製剤と共製剤化されるか、共投与される。吸収速度およびバイオアベイラビリティの増加は、例えばヒアルロナン分解酵素によるヒアルロナンの可逆的解重合によって達成することができ、これは、皮下腔の水力学的伝導率を一時的に(通例、24時間未満の期間)増加させる。したがって、例えば所与の用量で、より強力かつ/またはより迅速な応答を得るために、例えば皮下投与などの非経口投与後に、従来の皮下投与法と比較してインスリン濃度が上昇し、かつ/またはより迅速に達成されるように、ヒアルロナン分解酵素を使用することができる。したがって、ヒアルロナン分解酵素と速効型インスリンとの共投与は、速効型インスリンを超速効型インスリンにすることができる。ヒアルロナン分解酵素は、より低いインスリン投与量で血糖管理を達成するためにも使用することができる。注射または注入の部位およびその近傍におけるバルク流体流を強化するヒアルロナン分解酵素の能力は、関連する薬理学的送達の他の側面も改善することができる。例えばバルク流体流の増加は、注射された流体の体積をより迅速に注射部位から分散させる(これは潜在的な痛みまたは他の有害な注射の帰結を減少させる)のを助けることができる。これは、皮下注入にとって、より高用量の投与を可能にするには、特に重要である。
したがって、非経口投与された速効型インスリンは、ヒアルロナン分解酵素と共に投与すると、吸収速度が増加するために、超速効型インスリンになることができる。ヒアルロナン分解酵素なしでのインスリン投与に対する利点は、共投与または共製剤化されたヒアルロナン分解酵素/インスリンが、より好ましい投与レジメン、例えばより低いインスリン用量および/またはより効果的なクローズドループシステムの使用、ならびに改善された治療効果、例えばより効率的な血糖管理および/または過剰なインスリンの減少をもたらしうることである。例えば用量を低下させることにより、例えば高用量のインスリンで観察されるような、過剰な循環インスリンに関連する副作用を減少させることができる。そのような副作用には低血糖および肥満などがあるが、これらに限るわけではない。
組成物は凍結乾燥物または液状物の形態で製剤化することができる。組成物が凍結乾燥物の形態で提供される場合、それらは使用直前に適当な溶液、例えば滅菌食塩溶液または滅菌注射用水で再構成することができる。組成物は一緒に提供するか、別々に提供することができる。例えば速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素は、単一の組成物中に共製剤化するか、または別々の組成物として提供することができる。別々の組成物として提供する場合、ヒアルロナン分解酵素とインスリンは、一緒に、逐次的に、または間欠的に投与するために包装することができる。この組合せはキットとして包装することができる。
1.製剤
化合物は、例えば溶液剤、懸濁剤、徐放性製剤、または散剤など、任意の適切な非経口投与用医薬調製物に製剤化することができる。通例、化合物は、当技術分野において周知の技法および手法を使って医薬組成物に製剤化される(例えばAnsel「Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms」第4版、1985、126参照)。医薬上許容される組成物は、規制当局または他の政府機関からの承認を考慮して製造され、動物およびヒトで使用するために、一般に認められた薬局方に従って製造される。製剤は投与様式に適さなければならない。
医薬組成物は、ヒアルロナン分解酵素およびインスリンと一緒に投与される担体、例えば希釈剤、アジュバント、賦形剤、または媒体(vehicle)を含むことができる。適切な医薬担体の例は、E.W.Martin「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、一般には精製された形のまたは部分精製された形の治療有効量の化合物を、患者に適正に投与できる形態になるように適切な量の担体と共に含有するだろう。そのような医薬担体として、滅菌された液体、例えば水および油(石油由来、動物由来、植物由来の油または合成油を含む)、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、およびゴマ油などを挙げることができる。水は医薬組成物が静脈内投与される場合の典型的担体である。食塩溶液ならびにデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液も液状担体として(特に注射用溶液剤に)使用することができる。組成物は、活性成分と共に、次に挙げる成分を含有することができる:充填剤(bulking agent)、例えばラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム、またはカルボキシメチルセルロース;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルク;ならびに結合剤、例えばデンプン、アラビアゴムなどの天然ゴム、ゼラチン、グルコース、糖みつ、ポリビニルピロリジン、セルロースおよびその誘導体、ポビドン、クロスポビドンおよび当業者に知られる他の同様の結合剤。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、穀粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールなどがある。組成物は、所望であれば、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸ナトリウム、グリセリン、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミンおよび他の同様の薬剤も含有することができる。
医薬的治療活性化合物およびその誘導体は、通例、1回量剤形(unit dosage form)または複数回量剤形(multiple dosage form)として製剤化され、投与される。各1回用量(unit dose)は、所望する治療効果を生み出すのに十分な所定の量の治療活性化合物を、必要な医薬担体、媒体または希釈剤と一緒に含有する。1回用量型の例には、アンプルおよびシリンジならびに個別包装された錠剤またはカプセル剤がある。1回用量型は、それを分割して投与するか、それを何倍かして投与することができる。複数回用量型は、複数の同じ1回量剤形が単一の容器に包装されていて、分離された1回用量型として投与されるものである。複数回用量型の例には、バイアル、カートリッジ、錠剤もしくはカプセル剤の瓶、またはパイント瓶もしくはガロン瓶がある。したがって、複数回用量型は、分離されずに包装された複数の1回用量である。一般に、0.005%〜100%の範囲の活性成分を含有し、残りが無毒性担体で構成される剤形または組成物を、製造することができる。
本明細書に記載する組成物は、通例、皮下経路による投与用に製剤化されるが、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮内、病巣内、腹腔内注射、硬膜外、膣、直腸、局所、耳、経皮投与、またはあらゆる経路を含む、当業者に知られる任意の経路など、他の投与経路も考えられる。そのような経路に適した製剤は当業者には知られている。投与は、処置の位置に応じて局所的(local)、局所外用的(topical)、または全身的であることができる。処置を必要とする領域への局所投与は、例えば限定するわけではないが、手術中の局所注入、局所外用(例えば手術後に創傷被覆材を併用して)によって、注射によって、カテーテルを利用して、坐剤を利用して、またはインプラントを利用して達成することができる。組成物は、他の生物学的活性剤と共に、逐次的に、間欠的に、または同じ組成物に入れて投与することもできる。
いかなる場合も、最も適した経路は、例えば疾患の性質、特定の投与経路に対する対象の許容度、疾患の重症度、および使用するその組成物など、さまざまな因子に依存する。通例、本明細書に記載する組成物は非経口投与される。いくつかの例では、ヒアルロナン分解酵素が、皮膚または組織の間質に到達し、その結果、その後のインスリン送達のために間質腔を分解するように、投与される。したがっていくつかの例では、皮膚下への直接投与、例えば皮下投与法による直接投与が、考えられる。したがってある例では、局所投与を注射によって、例えばシリンジもしくはインスリンペンまたは針などの注射具を持つ他の製品からの注射によって、達成することができる。もう一つの例では、局所投与を注入によって達成することができ、これは、ポンプまたは他の類似する器具の使用によって容易にすることができる。他の投与様式も考えられる。医薬組成物は各投与経路に適した剤形に製剤化することができる。
本発明では、一般に注射または注入を特徴とする、皮下投与が考えられる。注射剤は、従来の形で、液状の溶液剤もしくは懸濁剤として、または注射前に液体に溶解または懸濁するのに適した固形、または乳剤として調製することができる。適切な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールである。医薬組成物は、他の微量の無毒性補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解促進剤(solubility enhancer)、および他の同様の薬剤、例えば酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンおよびシクロデキストリンなどを含有することができる。いくつかの例では、亜鉛、カルシウム、血清アルブミン、EDTA、塩化カルシウムおよび/またはフェノール系保存剤が組成物に含まれる。そのような組成物に含まれる活性化合物の百分率は、その具体的性質に著しく依存する他、化合物の活性および対象の要求にも強く依存する。
注射剤は局所投与用および全身投与用に設計される。本発明の場合、患部間質への直接投与には、局所投与が望ましい。非経口投与用の調製物には、調製済注射用(ready for injection)滅菌溶液剤、使用直前に溶媒とすぐに混合できるようになっている凍結乾燥粉末などの滅菌乾燥可溶性製品、例えば皮下注射薬錠剤(hypodermic tablet)、調製済注射用滅菌懸濁剤、使用直前に媒体とすぐに混合できるようになっている滅菌乾燥不溶性製品、および滅菌乳剤などがある。溶液剤は水性または非水性であることができる。静脈内投与される場合、適切な担体には、生理食塩水、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)、ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなどの増粘剤および可溶化剤ならびにその混合物を含有する溶液などがある。
非経口調製物に使用される医薬上許容される担体には、水性媒体、非水性媒体、抗微生物剤、等張化剤、バッファー、酸化防止剤、局所麻酔薬、懸濁化剤および分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、および他の医薬上許容される物質などがある。水性媒体の例には、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張性デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロースおよび乳酸加リンゲル注射液などがある。。非水性非経口媒体には、植物由来の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油およびラッカセイ油などがある。複数回用量容器に包装された非経口調製物には、静細菌濃度または静真菌濃度の抗微生物剤、例えばフェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムなどを加えることができる。等張化剤には塩化ナトリウムおよびデキストロースなどがある。バッファーにはリン酸塩およびクエン酸塩などがある。酸化防止剤には硫酸水素ナトリウムがある。局所麻酔薬には塩酸プロカインがある。懸濁化剤および分散剤にはナトリウムカルボキシメチルセルロース(sodium carboxymethylcelluose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンなどがある。乳化剤にはPolysorbate 80(TWEEN80)がある。金属イオン封鎖剤または金属イオンのキレート剤にはEDTAがある。医薬担体には、水混和性媒体用のエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコール、ならびにpH調節用の水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸も含まれる。
医薬活性化合物の濃度は、注射または注入によって有効量が与えられて、所望の薬理学的効果、例えば血糖管理が得られるように調節される。正確な用量は、当技術分野では知られているとおり、患者または動物の年齢、体重および状態に依存する。1回用量非経口調製物は、例えばアンプル、カートリッジ、バイアルまたは針付きシリンジに包装することができる。医薬活性化合物を含有する液状の溶液剤または再構成された粉末調製物の体積は、処置されるべき疾患、および包装するために選択したその製品の関数である。非経口投与用の調製物は全て、当技術分野では知られているように、また当技術分野では実践されているように、滅菌状態でなければならない。
ある例において、医薬組成物は液状、例えば溶液剤、シロップ剤または懸濁剤であることができる。液状で提供される場合、医薬調製物は使用前に治療有効濃度まで希釈される濃縮調製物として提供することができる。そのような液状調製物は、従来の手段により、医薬上許容される添加剤、例えば懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えばレシチンまたはアラビアゴム);非水性媒体(例えばアーモンド脂、油状エステル、または分画植物油);および保存剤(例えばメチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を使って製造することができる。もう一つの例では、医薬調製物を、水または他の適切な媒体で使用前に再構成するための凍結乾燥物の状態で提示することができる。
速効型インスリンおよびヒアルロナン分解酵素組成物は、単一の組成物として共製剤化するか、2つの別々の組成物として提供することができる。2つの組成物として提供する場合、それらの組成物は、共投与するために投与前に混合するか、または別々のままにしておいて、一緒に、逐次的にまたは間欠的に共投与することができる。いくつかの例では、速効型インスリンおよびヒアルロナン分解酵素を超速効型インスリン組成物として共製剤化する。後述のように組成物は単回投薬用または複数回投薬用に製剤化することができ、ここで、投薬量は、投与されるヒアルロナン分解酵素とインスリンの量の比として与えることができる。例えばヒアルロナン分解酵素は、1ヒアルロニダーゼU/インスリンU(1:1)〜50:1またはそれ以上の比、例えば1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1もしくはそれ以上またはその前後の比で投与することができる。もう一つの例では、より低いヒアルロナン分解酵素とインスリンの比、例えば1ヒアルロニダーゼU/2インスリンU(1:2)、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15または1:20などを投与することができる。速効型インスリンは、共製剤化された組成物または別個の組成物中に、10U/mL、20U/mL、30U/mL、40U/mL、50U/mL、60U/mL、70U/mL、80U/mL、90U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mlもしくは500U/mLまたはその前後の濃度で存在することができる。通例、共製剤化された組成物または別個の組成物中のヒアルロナン分解酵素の量は、1U/mL、2U/mL、3U/mL、4U/mL、5U/mL、6U/mL、7U/mL、8U/mL、9U/mL、10U/mL、15U/mL、20U/mLまたは25U/mLのヒアルロニダーゼ活性と、または少なくとも前記の値のヒアルロニダーゼ活性と、機能的に等価である。いくつかの例では、共製剤化された組成物または別個の組成物中のヒアルロナン分解酵素の量が、30または35U/mLのヒアルロニダーゼ活性、例えば30U/mL、35U/mL、37.5U/mL、40U/mL、50U/mL、60U/mL、70U/mL、80U/mL、90U/mL、100U/mL、200U/mL、300U/mL、400U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mL、1000U/ml、2000U/mL、3000U/mLまたは5000U/mLのヒアルロニダーゼ活性と、または少なくとも前記の値のヒアルロニダーゼ活性と、機能的に等価である。
本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は1つ以上のpHバッファー(例えばヒスチジン、リン酸、Trisまたは他のバッファーなど)または酸性バッファー(酢酸、クエン酸、ピルビン酸、Gly-HCl、コハク酸、乳酸、マレイン酸または他のバッファーなど)、張性調整剤(例えばアミノ酸、ポリアルコール、グリセロール、NaCl、トレハロース、他の塩および/または糖など)、安定剤(インスリンを安定化するための安息香酸ナトリウムなど)、キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンテトラアセテートまたはEDTAカルシウム、酸素スカベンジャー、例えばメチオニン、アスコルビン酸/アスコルベート、クエン酸/シトレート、またはアルブミン、および/または保存剤、例えば芳香環を含有する保存剤(例えばフェノールまたはクレゾール)を含有することができる。本明細書に記載する組成物において有用な典型的保存剤には、m-クレゾール、フェノールおよびパラベンまたはそれらの任意の組合せなどがあるが、これらに限るわけではない。いくつかの例では、m-クレゾールを0.05%〜0.2%またはその前後、例えば0.1%〜0.15%(例えば0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%もしくは0.15%またはその前後)の割合で加える。フェノールまたはパラベンの適切な濃度として、0.05〜0.25%、例えば0.1%〜0.2%(例えば0.1%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%および0.2%またはその前後)が挙げられる。通例、ヒアルロナン分解酵素を含有する組成物にはNaClまたは他の塩が加えられる。NaClの典型的濃度として、50mM〜200mM、例えば50mM〜150mM(50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、120mM、130mM、140mMおよび150mM NaClを含む)が挙げられる。いくつかの例では、本明細書に記載する組成物の安定性を保つために、組成物中の塩濃度を増加させた時に、pHも増加させる。グリセロールも、張性調整剤として、かつ/または組成物の粘度を増加させるために、含めることができる。
ヒアルロナン分解酵素を含有する組成物に有用な典型的安定剤には、洗剤または界面活性剤、例えばポリソルベート、およびヒト血清アルブミンなどのタンパク質がある。いくつかの例では、1つ以上の界面活性剤(例えばPluronic F68など)を、例えば0.001%〜0.1%またはその前後、通例、0.005%〜0.03%(例えば0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.012%、0.014%、0.016%、0.018%、0.02%または0.03)またはその前後の濃度で組成物に含める。本発明の組成物において有用な血清アルブミンの典型的濃度としては、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mLまたは1mg/mLが挙げられるが、これ以上でもこれ以下でもよい。組成物には、ポリソルベートも、例えば、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、00.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%もしくは0.1%またはその前後の濃度で存在することができる。インスリンを含有する組成物にとって有用な典型的安定剤には、亜鉛およびm-クレゾールがある。例えば亜鉛はインスリン六量体を安定化する機能を果たすことができる。亜鉛は、例えば酸化亜鉛、酢酸亜鉛または塩化亜鉛として与えることができる。亜鉛は本明細書に記載する組成物中に、インスリン100単位あたり0.001〜0.1mgまたはその前後、例えば0.002ミリグラム/100単位のインスリン(mg/100U)、0.005mg/100U、0.01mg/100U、0.012mg/100U、0.014mg/100U、0.016mg/100U、0.017mg/100U、0.018mg/100U、0.02mg/100U、0.022mg/100U、0.024mg/100U、0.026mg/100U、0.28mg/100U、0.03mg/100U、0.04mg/100U、0.05mg/100U、0.06mg/100U、0.07mg/100U、0.08mg/100Uまたは0.1mg/100Uの割合で存在することができる。ある例では、亜鉛がインスリン100Uあたり0.017mgの割合で存在する。金属キレート剤、例えばEDTAカルシウム(CaEDTA)も、例えば、約0.02mM〜20mMの濃度、例えば0.02mM、0.04mM、0.06mM、0.08mM、0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM、0.5mM、0.6mM、0.7mM、0.8mM、0.9mM、1mM、5mM、10mM、15mM、20mMまたはそれ以上の濃度で存在することができる。いくつかの例では、本明細書に記載する組成物中にキレート剤および亜鉛がどちらも存在し、そのキレート剤は、亜鉛に対してほぼ等量(すなわち0.6〜1.4のモル比で)存在するか、亜鉛に対してモル過剰に、例えば2:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1もしくはそれ以上またはその前後のキレート剤:亜鉛比で存在する。組成物には、塩化カルシウムも、例えば約0.2mM〜20mMの濃度で含めることができる。
いくつかの例では、上述の構成要素の1つ以上が、2つの組成物が超速効型インスリン組成物として共製剤化されるか、超速効型インスリン組成物として対象に送達されるまでは、速効型インスリン組成物中にのみ、またはヒアルロナン分解組成物中にのみ存在する。例えば速効型インスリン組成物は、亜鉛をインスリン100単位あたり0.001〜0.1mgまたはその前後、例えば0.002ミリグラム/100単位のインスリン(mg/100U)、0.005mg/100U、0.01mg/100U、0.012mg/100U、0.014mg/100U、0.016mg/100U、0.017mg/100U、0.018mg/100U、0.02mg/100U、0.022mg/100U、0.024mg/100U、0.026mg/100U、0.28mg/100U、0.03mg/100U、0.04mg/100U、0.05mg/100U、0.06mg/100U、0.07mg/100U、0.08mg/100Uまたは0.1mg/100Uの割合で含有し、EDTAなどのキレート剤を含有せず、一方、ヒアルロナン分解組成物はEDTAなどのキレート剤を、0.02mM〜20mMまたはその前後、例えば0.02mM、0.04mM、0.06mM、0.08mM、0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM、0.5mM、0.6mM、0.7mM、0.8mM、0.9mM、1mM、5mM、10mM、15mM、20mMまたはそれ以上の濃度で含有し、亜鉛を含有しないことができる。したがって、インスリンを含有する組成物がEDTAも含有し、ヒアルロナン分解酵素を含有する組成物が亜鉛も含有するのは、2つの組成物を混合した場合だけ、例えば共製剤化するか共投与した場合だけである。いくつかの例では、共製剤化または共投与のために混合された時には、キレート剤が亜鉛に対してほぼ等モル量(すなわち0.6〜1.4のモル比で)存在するか、亜鉛に対してモル過剰に、例えば2:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1もしくはそれ以上またはその前後のキレート剤:亜鉛比で存在することになるように、最初の速効型インスリン組成物およびヒアルロナン分解酵素組成物が、それぞれ、十分な量の亜鉛またはキレート剤を含有する。
当業者は組成物のpHおよびオスモル濃度を調節して、組成物が所望の活性および安定性を持つように、条件を最適化することができる。例えば上記のように、いくつかの例では、塩濃度を増加させた場合に、組成物の安定性を保つために、pHも増加させることができる。さらに当業者は、pHを変えることで、本明細書に記載する超速効型インスリンに使用される特定の速効型インスリンの溶解度を増加させることができる。いくつかの例では、速効型インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の一方または両方を含有する本明細書に記載する組成物は、100mOsm/kg、120mOsm/kg、140mOsm/kg、160mOsm/kg、180mOsm/kg、200mOsm/kg、220mOsm/kg、240mOsm/kg、260mOsm/kg、280mOsm/kg、300mOsm/kg、320mOsm/kg、340mOsm/kg、360mOsm/kg、380mOsm/kg、400mOsm/kg、420mOsm/kg、440mOsm/kg、460mOsm/kg、500mOsm/kgもしくはそれ以上またはその前後のオスモル濃度と、6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8もしくは8またはその前後のpHとを持つ。いくつかの例では、pHが、6.5またはその前後から約7.5まで、例えば6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4または7.5である。
タンパク質分解や、抗原応答および免疫原応答による免疫学的介入などといった、分解プロセスへの、選択した化合物の曝露を減少させるような投与方法を、使用することができる。そのような方法の例には処置部位における局所投与がある。治療薬のPEG化は、タンパク質分解に対する耐性を増加させ、血漿中半減期を増加させ、抗原性および免疫原性を減少させると報告されている。PEG化法の例は当技術分野では知られている(例えばLuおよびFelix, Int.J.Peptide Protein Res., 43:127-138, 1994;LuおよびFelix, Peptide Res., 6:142-6, 1993;Felixら, Int.J.Peptide Res., 46:253-64, 1995;Benharら, J.Biol.Chem., 269:13398-404, 1994;Brumeanuら, J Immunol., 154:3088-95, 1995を参照された;また、Calicetiら (2003) Adv.Drug Deliv.Rev. 55(10):1261-77およびMolineux (2003) Pharmacotherapy 23(8Pt2):3S-8Sも参照されたい)。PEG化はインビボでの核酸分子の送達にも使用することができる。例えば、アデノウイルスのPEG化は、安定性および遺伝子導入を増加させることができる(例えばChengら (2003) Pharm.Res. 20(9):1444-51を参照されたい)。
凍結乾燥粉末
ここで興味が持たれるのは、投与のために溶液剤、乳剤および他の混合物として再構成することができる凍結乾燥粉末である。それらは、固形物またはゲル剤として再構成し、製剤化することもできる。
滅菌凍結乾燥粉末は、活性化合物をバッファー溶液に溶解することによって製造される。バッファー溶液は、安定性を改善する賦形剤、またはその粉末もしくはその粉末から調製される再構成溶液の他の薬理学的構成要素を含有することができる。次に、その溶液を滅菌濾過してから、当業者に知られる標準的条件下で凍結乾燥することにより、所望の製剤が得られる。簡単に述べると凍結乾燥粉末は、賦形剤、例えばデキストロース、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロースまたは他の適切な薬剤を、適切なバッファー、例えばクエン酸バッファー、Trisバッファー、ヒスチジンバッファー、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウムバッファー、または当業者に知られる他の同様のバッファーに溶解することによって製造される。次に、その結果生じた混合物に選択した酵素を加え、それが溶解するまで撹拌する。その結果生じた混合物を滅菌濾過するか、粒状物を除去して滅菌性を保証するための処理に付し、凍結乾燥用のバイアルに分配する。各バイアルは単回投薬量または複数回投薬量の化合物を含有することになる。凍結乾燥粉末は適当な条件下で、例えば約4℃〜室温で貯蔵することができる。この凍結乾燥粉末をバッファー溶液で再構成することにより、非経口投与に使用するための製剤が得られる。
2.投薬量(dosage)および投与
本明細書に記載するヒアルロナン分解酵素は、単回投与用または複数回投与用の医薬組成物として製剤化することができる。例えば本明細書に記載する組成物は、ヒアルロナン分解酵素を、1ヒアルロニダーゼU/インスリンU(1:1)〜50:1またはそれ以上、例えば1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1もしくはそれ以上またはその前後の比で含有することができる。別の例では、組成物内を、より低いヒアルロナン分解酵素とインスリンの比、例えば1ヒアルロニダーゼU/2インスリンU(1:2)、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15または1:20などの比にする。選択したヒアルロナン分解酵素は、処置される患者に対して望ましくない副作用を生じることなく、治療上有用な効果を発揮するのに十分な量で含まれる。治療有効濃度は、ポリペプチドを既知のインビトロ系およびインビボ系で、例えば本明細書に記載するアッセイまたは当技術分野で知られるアッセイを使って調べることによって実験的に決定され(例えばTalianiら (1996) Anal.Biochem., 240:60-67;Filocamoら (1997) J Virology, 71:1417-1427;Sudoら (1996) Antiviral Res. 32:9-18;Buffardら (1995) Virology, 209:52-59;Bianchiら (1996) Anal.Biochem., 237:239-244;Hamatakeら (1996) Intervirology 39:249-258;Steinkuhlerら (1998) Biochem., 37:8899-8905;D'Souzaら (1995) J Gen.Virol., 76:1729-1736;Takeshitaら (1997) Anal.Biochem., 247:242-246を参照されたい;また、例えばShimizuら (1994) J.Virol. 68:8406-8408;Mizutaniら (1996) J.Virol. 70:7219-7223;Mizutaniら (1996) Biochem.Biophys.Res.Commun., 227:822-826;Luら (1996) Proc.Natl.Acad.Sci (USA), 93:1412-1417;Hahmら (1996) Virology, 226:318-326;Itoら (1996) J.Gen.Virol., 77:1043-1054;Mizutaniら (1995) Biochem.Biophys.Res.Commun., 212:906-911;Choら (1997) J.Virol.Meth. 65:201-207)、次にヒトへの投薬量がそこから推論される。
速効型インスリンとヒアルロナン分解酵素とを含有する超速効型インスリン組成物の治療有効量は、例えば以下に説明し実施例1で述べるような薬物動態(PK)データおよび薬力学(PD)データと、ヒアルロナン分解酵素なしで送達される場合の速効型インスリンの既知の治療用量とに基づいて決定することができる。血中または血漿中または血清中のインスリン濃度の経時変化は、インビボでの(1)非経口投与した場合の吸収;(2)分布、および(3)インスリンの排除についての情報を与える。薬物動態モデルは、インスリン濃度のこれらの生理学的変化を、時間の関数(すなわち(dX)/(dt))として定義し、速度および体積を使ってそれらを数学的に特徴づける。こうしてインスリンについて導き出されるモデルパラメータは、摂動が起こるまで比較的一定を保つだろう。インスリンに関する確立されたPKモデルにより、曝露の合理的な予想を得ることができる(これは、効力と、過剰な薬理作用(exaggerate pharmacology)に由来する薬物安全性とに、綿密に関連する)を得ることができる。インスリンの用量選択および用量スケジュールに関する臨床決定は、PKモデリングおよびシミュレーションを使って容易にすることができ、正当であることが証明される。薬力学モデルは臨床的帰結を予測するという同様の目的に役立つ。
通例、ヒアルロナン分解酵素の治療有効量は、0.3単位(U)〜5,000Uまたはその前後のヒアルロナン分解酵素である。例えばヒアルロナン分解酵素は、0.3U、0.5U、1U、2U、3U、5U、10U、20U、30U、40U、50U、100U、150U、200U、250U、300U、350U、400U、450U、500U、600U、700U、800U、900U、1000U、2,000U、3,000U、4,000単位、5,000Uもしくはそれ以上またはその前後の量で皮下投与することができる。いくつかの例では、投薬量を、投与されるヒアルロナン分解酵素とインスリンの量の比として与えることができる。例えば、ヒアルロナン分解酵素は、1ヒアルロニダーゼU/インスリンU(1:1)〜50:1またはそれ以上、例えば1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1もしくはそれ以上またその前後の比で投与することができる。別の例では、ヒアルロナン分解酵素とインスリンをより低い比で、例えば1ヒアルロニダーゼU/2インスリンU(1:2)、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15または1:20で投与する。通例、本発明において考えられるヒアルロナン分解酵素の注射または注入体積は、0.01mL、0.05mL、0.1mL、0.2mL、0.3mL、0.4mL、0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9ml、10 mlもしくはそれ以上またはその前後である。ヒアルロナン分解酵素は、1U/mL、2U/mL、3U/mL、4U/mL、5U/mL、6U/mL、7U/mL、8U/mL、9U/mL、10U/mL、15U/mL、20U/mL、25U/mL、30U/mL、35U/mL、40U/mL、50U/mL、60U/mL、70U/mL、80U/mL、90U/mL、100U/ml、150U/ml、200U/ml、300U/ml、400U/ml、500U/mL、600U/mL、800U/mLもしくは1000U/mLまたはその前後の保存溶液として提供するか、そのまま使用するために、または使用前に有効濃度に希釈するために、より濃縮した形態で、例えば2000U/ml、3000単位/ml、4000U/ml、5000U/ml、8000U/ml、10,000U/mLもしくは20,000U/mLまたはその前後で提供することができる。ヒアルロナン分解酵素は液状製剤または凍結乾燥製剤として提供することができる。
本明細書に記載するインスリン調製物は、単回投与用または複数回投与用の医薬組成物として製剤化することができる。例えばいくつかの例では、インスリン調製物を、食後血糖管理を提供するのに十分な量で、単回投与用に製剤化する。別の例では、インスリン調製物を、例えばインスリンペン、インスリンポンプもしくは他の連続的インスリン送達器具、またはクローズドループシステムで使用するために、複数回投与用または複数回使用バイアル用に製剤化する。インスリン調製物は本明細書の別の項で説明するように凍結乾燥された形態または液状の形態で提供することができる。
インスリンは治療有効量で提供することができる。治療有効量は、本明細書に記載するアッセイなど、既知のインビトロ系およびインビボ系で、化合物を調べることによって実験的に決定することができ、代謝、食物摂取および疾患の重症度などといった因子に基づいて、各対象に合わせて個別化することもできる。組成物中の選択したインスリンの濃度は、例えば複合体の吸収、不活化および排泄率、複合体の物理化学的特徴、投薬スケジュール、および投与される量、ならびに当業者に知られる他の因子に依存する。例えば、処置の正確な投薬量は、被験者における血中グルコースレベルの関数であり、既知のアルゴリズムを使って、またはインビボもしくはインビトロ試験データ、その対象の過去の経験、食事中の糖質含有量とそれゆえに推定される食事時血中グルコースの増加およびそれに続くインスリン要求量を決定するための糖質量計算(carbohydrate counting)からの推論によって、実験的に決定することができる。濃度および投薬量の値は各処置対象ごとに異なりうることに注意すべきである。どの特定の対象についても、具体的投薬レジメンは、その個体の必要に応じて、また製剤を投与する人または製剤の投与を指図する人の専門家としての判断に応じて、時間の経過と共に調節すべきであること、および本明細書に記載する濃度範囲が単なる例示であって、その範囲を限定しようとするものではないことを、さらに理解すべきである。ある糖尿病状態を処置するために投与される、選ばれたインスリン調製物の量は、標準的な臨床技法によって決定することができる。加えて、最適な投薬量範囲の特定を支援するために、インビボアッセイおよび動物モデルを使用することもできる。
したがって、実験的に決定することができる正確な投薬量は、そのインスリン調製物、ヒアルロナン分解酵素とのレジームおよび投与スケジュール、投与経路、処置すべき糖尿病のタイプ、疾患の重症度および処置対象に依存しうる。一般にインスリンは血糖管理が達成される量で提供される。例えば、インスリンがヒアルロナン分解酵素なしで送達される場合、食後血糖管理を達成するために、糖尿病対象には、通例、食事の30分〜5分前に、体重1kgあたり0.05Uの速効型インスリン(U/kg)〜1.0U/kgまたはその前後のボーラス注射が投与される。この用量は、例えばその対象の代謝、食事の内容、および血中グルコースレベルに基づいて、適宜増減することができると理解される。さらに、食後血糖管理のためにインスリンを投与する時点は、食事の摂取時に近づくか遠ざかるように変更することができ、いくつかの例では、インスリンが食事時にまたは食後に送達されるように変更することもできると理解される。したがって対象には、インスリンを単独で投与する場合に投与される用量より低い用量で、かつ/または、インスリン単独の用量が通例投与される時点よりも食事の摂取に近い時点で、速効型インスリンなどのインスリンをヒアルロナン分解酵素と組み合わせて投与することにより、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を投与することができる。
速効型インスリンは、通例、0.05単位/kg〜0.25単位/kg、例えば0.10単位/kgの用量で投与されるが、具体的用量はさまざまである。超速効型インスリン組成物は、ヒアルロナン分解酵素の非存在下で投与される速効型インスリンよりも低い用量で投与することができる。本明細書の他の項で説明するように、速効型インスリンを超速効型インスリン組成物として投与することによって速効型インスリンの量を減らすことができる度合は、例えば患者の糖尿病のタイプなどに依存してさまざまである。通例、超速効型インスリン組成物として投与した場合に2型糖尿病患者に投与される速効型インスリンの量の減少は、超速効型インスリン組成物として投与した場合に1型糖尿病患者に投与される速効型インスリンの量の減少よりも大きい。例えば、食後グルコースレベルを管理するために1型糖尿病患者と2型糖尿病患者の両者に0.20U/kgの速効型インスリンが投与される場合、1型糖尿病患者には、超速効型インスリン組成物中の0.15U/kgの速効型インスリンを投与して、同等以上の血糖管理を達成することができ、2型糖尿病患者には、超速効型インスリン組成物中の0.10U/kgの速効型インスリンを投与して、同等以上の血糖管理を達成することができる。したがって、いくつかの例では、血糖管理を達成するために2型糖尿病患者に超速効型インスリンとしてヒアルロナン分解酵素と共に投与される速効型インスリンの量は、ヒアルロナン分解酵素なしで投与した場合に血糖管理に要求される量と比較して、例えば25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%またはそれ以上減少させることができ、血糖管理を達成するために1型糖尿病患者に超速効型インスリンとしてヒアルロナン分解酵素と共に投与される速効型インスリンの量は、ヒアルロナン分解酵素なしで投与した場合に血糖管理に要求される量と比較して、例えば10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%またはそれ以上減少させることができると、本発明では考えられる。
食後血中グルコースレベルを管理するために本明細書に記載する方法および組成物を使って行われるインスリンの非経口投与(例えば皮下投与)に関する典型的な投薬量範囲は、0.05U/kg〜0.50U/kgまたはその前後、例えば0.05U/kg、0.06U/kg、0.07U/kg、0.08U/kg、0.09U/kg、0.10U/kg、0.11U/kg、0.12U/kg、0.13U/kg、0.14U/kg、0.15U/kg、0.20U/kg、0.25U/kg、0.30U/kg、0.40U/kg、0.50U/kgまたは1.0U/kgである。具体的な投薬量とその製剤は疾患と個体に依存する。必要であれば投薬量を実験的に決定することができる。そのような投薬量を達成するために、食後グルコースレベルを管理するために皮下投与されるインスリン調製物の体積は、10μL、20μL、30μL、40μL、50μL、75μL、100μL、150μL、200μL、250μL、300μL、400μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μL、1000μLもしくはそれ以上またはその前後であることができる。例えば、本明細書に記載する適応症のための100U/mLインスリン製剤を、35μL〜350μLの体積で70kgの対象に皮下投与して、0.05U/kg〜0.50U/kgのインスリン投薬量を達成することができる。本明細書に記載する組成物および方法は、食後血糖管理だけでなく、昼夜を通して血糖管理を達成するために、糖尿病対象に投与することもできる。通例、連続的な血糖管理を提供するために投与されるインスリンの投薬量は、食後血糖管理を達成するのに要求される投薬量よりも少ない。しかし、投薬量は、血中グルコースレベルに基づいて増減することができる。連続的な血糖管理を提供するために本明細書に記載する方法および組成物を使って行われる非経口投与(例えば皮下投与)に関する典型的な投薬量範囲は、0.001U/kg〜0.30U/kgまたはその前後、例えば0.001U/kg、0.005U/kg、0.01U/kg、0.02U/kg、0.05U/kg〜0.30U/kg、例えば0.05U/kg、0.06U/kg、0.07U/kg、0.08U/kg、0.09U/kg、0.10U/kg、0.11U/kg、0.12U/kg、0.13U/kg、0.14U/kg、0.15U/kg、0.20U/kg、0.25U/kg、0.30U/kg、0.40U/kg、0.50U/kgまたは1.0U/kgである。具体的な投薬量とその製剤は疾患、投与時間および個体に依存する。必要であれば投薬量を実験的に決定することができる。ある個体のための投薬量は、通例、治療効果を達成するのに要求される最小投薬量まで、例えば血糖管理を達成するのに要求される最小投薬量まで、徐々に減らされる(titrated down)。血糖管理を達成するのに十分なインスリンの量は、例えばグルコース負荷などにより、実験的に決定することができる。
ヒアルロナン分解酵素は、インスリン調製物の前に、後に、間欠的に、または同時に投与することができる。一般に、ヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナン分解酵素が間質腔中のヒアルロン酸を分解することができるように、インスリン調製物を投与する前かインスリン調製物の投与と同時に投与される。ある例では、インスリン組成物とヒアルロナン分解酵素組成物とが共製剤化され、それゆえに同時に投与される。もう一つの例では、ヒアルロナン分解酵素組成物をインスリン組成物の前に、例えばインスリン調製物を投与する1分前、2分前、3分前、4分前、5分前またはそれ以上前に投与する。いくつかの例では、ヒアルロニダーゼがインスリン調製物と一緒に投与される。当業者には理解されるように、共投与の望ましい近接性は、適切なモデルにおいて、例えば適切な動物モデルにおいて、薬剤をさまざまな時点で投与した場合の効果を調べることによって、容易に最適化することができる。
インスリン調製物とヒアルロナン分解酵素調製物はどちらも一度に投与するか、いくつかの低用量に分割して、それらをある時間間隔で投与することができる。選択したインスリン調製物は、処置期間の間、例えば数分間、数時間、数日、数週間、または数ヶ月にわたって、1回以上投与することができる。いくつかの例では連続的な投与が有用である。正確な投与量および投与方法は適応症および患者の認容性に依存すると理解される。
また、正確な投薬量および処置の継続期間は処置される糖尿病の関数であり、既知の試験プロトコールを使って、またはインビボもしくはインビトロ試験データからの推論によって、実験的に決定することができると理解される。濃度および投薬量の値は、糖尿病の重症度および他の因子、例えば代謝、食物摂取および対象の体重などによって変動しうることに注意すべきである。どの特定の対象についても、具体的投薬レジメンはその個体の必要に応じて、その組成物を投与する人またはその組成物の投与を指図する人の専門家としての判断に応じて、時間の経過と共に調節すべきであること、および本明細書に記載する濃度範囲が単なる例示であって、それらを含有する組成物および組合せの範囲または使用を限定しようとするものではないことを、さらに理解すべきである。組成物は、対象および糖尿病の状態に応じて、1分ごと、数分ごと、1時間ごと、1日ごと、1週間ごと、1ヶ月ごと、1年ごとまたは1回だけ投与することができる。一般に、投薬レジメンは、毒性および/または他の負の効果、例えば過剰なインスリンが制限されるように選択される。担当医は、治療を停止し、中断し、または投薬量を下げる方向に調節する方法および時期を理解しているであろうことに注意すべきである。逆に担当医は、臨床応答が十分でない場合に(毒性副作用を防止しつつ)処置を高レベル側に調節する方法および時期も理解しているだろう。
投与様式
a.シリンジ
本明細書に記載する組成物は、シリンジ、インスリンペン、インスリンポンプ、もしくはクローズドループシステムの一部として、またはそれらの任意の組合せなど、いくつかある投与様式の1つまたはそれ以上を使って、対象に非経口(parentally)投与することができる。例えば、インスリンシリンジなどの使い捨てシリンジは、組成物の個別的ボーラス注射を投与するために使用することができる。組成物は、同じシリンジを使って投与するか(インスリン調製物とヒアルロナン分解酵素調製物とを共製剤化した場合など)、異なるシリンジを使って逐次的に投与することができる。本明細書に記載する組成物の投与に有用なシリンジとしては、標準的な濃度のインスリン調製物(例えば100U/ml濃度のインスリン調製物)を保持し、投与を容易にするためにインスリン単位のしるしを持つように設計することができるインスリンシリンジが挙げられる。別の例では、インスリンシリンジまたはインスリンポンプまたは類似する器具のいずれか1つまたはそれ以上を使って、インスリン調製物とヒアルロナン分解酵素調製物の一方または両方を投与する。
b.インスリンペン
インスリンペンは、本明細書に記載する組成物を投与するために使用することができる送達システムである。インスリンペンには、投与すべき組成物が充填された取り替え可能なカートリッジを持つものと、取り替え不可能なカートリッジを持つものがある。交換不可能なカートリッジを持つインスリンペンは、通例、カートリッジが空になったら廃棄される。インスリンペンでは、例えば0.5単位、1単位または2単位刻みで投与することができ、それらは一般に用量ダイヤルまたは用量を設定するための他の機構を使って測定される(例えば米国特許第5947934号、同第6074372号、同第6110149号、同第6524280号、同第6582404号参照)。次に組成物はペンに取り付けられた細針を使って送達される。インスリンペンは当技術分野ではよく知られており、例えば限定するわけではないが、米国特許第5947934号、同第4973318号、同第5462535号、同第5599323号、同第5626566号、同第5984906号、同第6074372号、同第6110149号、同第6302869号、同第6379339号および同第7241278号に記載されているものなど、他の文献に記載されているものが包含される。他の類似する投薬器具、例えば米国特許第5947394号、同第6074372号、同第6110149号および同第6379339号に記載されているものなども、本明細書に記載する組成物を、インスリンとヒアルロナン分解酵素の共製剤として、またはインスリン組成物およびヒアルロナン分解酵素組成物として別々に、投与するために使用することができる。いくつかの例では、インスリンペンまたは類似する器具が、対象の血中グルコースレベルを測定することのできるセンサーまたはモニターも含有する(例えばWO2003047426参照)。
本明細書に記載するインスリン組成物を送達するために使用することができる、または使用できるように改造することができる、インスリンペンおよび類似する送達器具は、当技術分野ではよく知られており、例えば限定するわけではないが、次の商標で販売されているものなどがある:Autopen(登録商標)(Owen Mumford,Inc.)、Disetronic Pen(Disetronic Medical Systems)、Humalog(登録商標)Pen(Eli Lilly and Company)、Humalog(登録商標)Mix 75/25 Pen(Eli Lilly and Company)、Humulin(登録商標)70/30 Pen(Eli Lilly and Company)、Humulin(登録商標)N Pen(Eli Lilly and Company)、Novolog(登録商標)FlexPen(Novo Nordisk)、NovoPen(登録商標)3(Novo Nordisk)、NovoPen(登録商標)4(Novo Nordisk)、NovoPen(登録商標)Junior (Novo Nordisk)、Novolog(登録商標)Mix 70/30 FlexPen(Novo Nordisk)、InDuo(登録商標)(Novo Nordisk)、Novolin(登録商標)InnoLet(登録商標)(Novo Nordisk)、Innovo(登録商標)(Novo Nordisk)、OptiPen(登録商標)(Sanofi-Aventis)OptiPen(登録商標)Pro2(Sanofi-Aventis)、OptiSet(登録商標)(Sanofi-Aventis)およびSoloSTAR(登録商標)(Sanofi-Aventis)。
c.インスリンポンプおよび他のインスリン送達器具
本明細書に記載する組成物は、インスリンポンプまたは他の類似する持続注入器具などといったインスリン送達器具を使って、糖尿病対象に投与することができる。インスリン送達器具は、通例、インスリン組成物を含有する少なくとも1つの使い捨てリザーバ、ポンプ(任意の制御装置、ソフトウェア、処理モジュールおよび/または電池を含む)、および皮下注射用のカニューレまたは針とインスリンリザーバにカニューレまたは針を接続するための管とを含む使い捨て注入セットとを含有する。超速効型インスリン組成物と共に使用する場合、インスリン送達器具は、共製剤化されたインスリン組成物とヒアルロナン分解酵素組成物とを含有する1つのリザーバを含有するか、または速効型インスリン組成物とヒアルロナン分解酵素組成物とが同じリザーバまたは別々のリザーバに含まれるように、1つまたはそれ以上のリザーバを含有することができる。そのような場合、インスリン送達器具は、各組成物を同時に送達するか、順に送達することができる。したがってそのような器具を、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を投与するために使用することができる。組成物は連続的に投与するか、ボーラス注射として投与することができる。さらに、インスリン送達器具の使用者は、そのボーラスの形状を決めることによってインスリンのプロファイルに影響を与えることができる。例えば標準型ボーラス(standard bolus)(これは注入用量の全部が直ちに押し出される孤立した注射に似た注入である)を投与することができる。長時間型ボーラス(extended bolus)は、高い初期用量を回避し組成物の作用を引き延ばす、長時間にわたる遅い注入である。標準型ボーラスと長時間型ボーラスの両方を含む複合型ボーラス(combination bolus)もインスリンポンプまたは他の連続的送達システムを使って投与することができる。インスリン送達器具は当技術分野では知られており、例えば限定するわけではないが、米国特許第6554798号、同第6641533号、同第6744350号、同第6852104号、同第6872200号、同第6936029号、同第6979326号、同第6999854号、同第7025713号および同第7109878号などといった、他の文献に記載されている。インスリン送達器具は、グルコースモニターまたはグルコースセンターに接続することもでき、かつ/または血中グルコースレベル、食事の糖質含有量、または他の入力に基づいて推奨されるインスリン用量を算出するための手段を含むこともできる。さらなるインスリン送達器具は植え込み可能であるか、対象の体外に装着することができる。
d.クローズドループシステム
クローズドループシステムは、人工膵臓と呼ばれることもあり、本明細書に記載する組成物および方法との併用について、特に興味が持たれる。クローズドループシステムとは、連続的グルコースモニターと、インスリンポンプまたは他の送達システムと、血中グルコースレベルのリアルタイム測定に基づいて血糖管理のために要求されるインスリン注入を常時算出する数学的アルゴリズムを含むコントローラーとが統合されたシステムを指す。そのようなシステムは、最適化すれば、健常非糖尿病対象に見られる自然のインスリン応答および血糖管理に似た、絶え間ない極めて緻密な血糖管理を容易にすることができる。しかし、クローズドループシステムが有効であるためには、信頼できる正確な連続的グルコースモニターと、極めて速い作用を持つインスリンの送達とがどちらも要求される。例えば、速効型インスリンの皮下投与に付随するインスリンの吸収と作用の遅延は、大きな食後血糖エクスカーションにつながりうる(Hovorkaら (2006) Diabetic Med. 23:1-12)。インスリン吸収、インスリン作用、間質(interstitial)グルコース動態、および体外型(ex vivo-based)モニタリングシステム(例えば微小透析技法に基づくもの)の輸送時間ゆえの遅延は、インスリン送達の時間から、その検出可能なグルコース降下効果のピークまでに、全体として100分またはそれ以上の時間差をもたらしうる(Hovorkaら (2006) Diabetic Med. 23:1-12)。したがって、ひとたび投与されると、インスリンはその測定可能な効果を2時間近くは増加させ続ける。これは、クローズドループシステムを使った食事摂取後のグルコース濃度の効果的な降下を複雑にしうる。第1にグルコースの増加が検出される必要がある。しかしこれは通例、約10〜40分遅れでしか起こらない。システムは、食事が消化されたかどうかを決定し、適当なインスリン用量を投与しなければならない。「誤って判断された(misjudged)」インスリン用量を後から補償するというシステムの能力は、長い遅延と、ひとたび投与されたインスリンを「撤回(withdraw)」することはできないということとによって損なわれる。そのような問題は、少なくとも一部は、(下記実施例1で説明するように)増加した吸収速度および吸収レベルならびにそれに伴う薬力学の改善を示す、本明細書に記載するような、超速効型インスリン組成物を使用することによって克服することができる。本明細書に記載する超速効型インスリン組成物は、速効型インスリンよりも小さいtmaxを持ち(すなわちより速く最大濃度を達成し)、速効型インスリンよりも速く血中濃度を管理し始める。この増加した吸収(absorbance)速度および作用発現速度は、インスリン作用とグルコースモニタリングおよび入力の間の遅延を減少させ、結果として、血中グルコースレベルをより緻密に管理して血糖エクスカーションを低減することができる、より効果的なクローズドループシステムをもたらす。
クローズドループシステムは当技術分野ではよく知られており、例えば限定するわけではないが、米国特許第5279543号、同第5569186号、同第6558351号、同第6558345号、同第6589229号、同第6669663号、同第6740072号、同第7267665号および同第7354420号(これらは引用により本明細書に組み込まれる)などといった他の文献に記載されている。当業者であれば容易に特定することができるこれらのシステムおよび類似するシステムは、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を送達するために使用することができる。クローズドループシステムは、血中グルコースレベルを測定するためのセンサーシステム、コントローラーおよび送達システムを含む。この統合されたシステムは、膵ベータ細胞(β細胞)をモデル化し、そのシステムが注入器具を制御することで、体内の血中グルコース濃度の変化に応答してヒトβ細胞が完全に機能することによって作り出されるであろうプロファイルと類似する濃度プロファイルで、インスリンが対象に送達されることになるように設計される。したがってこのシステムは、血中グルコースレベルに対する身体の自然のインスリン応答をシミュレートし、インスリンを効率的に利用するだけでなく、他の身体的機能も担う。というのも、インスリンは代謝的効果と分裂促進的効果の両方を持つからである。さらに、クローズドループシステムを使って達成される血糖管理は、食事のサイズおよびタイミング、または他の因子に関する情報を何も必要とせずに達成される。このシステムは、もっぱらリアルタイム血中グルコース測定だけに依拠することができる。グルコースセンサーは、体内の血中グルコースレベルを表すセンサーシグナルを生成し、そのセンサーシグナルをコントローラーに提供する。コントローラーはセンサーシグナルを受け取って指令を生成し、それがインスリン送達システムに伝達される。インスリン送達システムは指令を受け取り、その指令に呼応してインスリンを体内に注入する。以下に、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を送達するために使用することができるクローズドループシステムの典型的構成要素を説明する。当業者は本発明での使用に適したクローズドループシステムを容易に特定することができると理解される。そのようなシステムは、例えば限定するわけではないが、米国特許第5279543号、同第5569186号、同第6558351号、同第6558345号、同第6589229号、同第6669663号、同第6740072号、同第7267665号および同第7354420号に記載されているものなど、当技術分野では記載されている。システムの個々の構成要素も、当技術分野では、個別に、および血糖管理の達成に使用されるクローズドループシステムとの関連で記載されている。本明細書に記載する例は典型例に過ぎず、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を送達するために他のクローズドループシステムまたは個々の構成要素を使用することもできると理解される。
クローズドループシステムは連続的に機能するグルコースセンサーまたはグルコースモニターを含有する。そのような器具は、針型センサー(これは皮下に挿入され、グルコースデータを高周波遠隔計測により小さな受信機に無線で伝達する小さな送信機に取り付けられる)を含有しうる。いくつかの例では、センサーが挿入針を使って対象の皮膚を通して挿入され、センサーが皮下組織に配置されたら、挿入針を除去して廃棄する。挿入針は尖った先端を持ち、皮膚への挿入の間センサーを保持しておくための開放スロットを持つ(例えば米国特許第5,586,553号および同第5,954,643号参照)。クローズドループシステムで使用されるセンサーは、場合によっては、皮下組織中で間質液(ISF)に曝露される3本の電極を含有することができる。これら3本の電極には、作業電極、基準電極および対電極が含まれ、それらを使って回路が形成される。作業電極と基準電極の間に適当な電圧を供給すると、ISFは電極間のインピーダンスを与える。アナログ電流シグナルが作業電極から身体を通って対電極に流れる。作業電極における電位は一般に接地され、基準電極における電位は設定電位Vset、例えば300〜700mVに保持することができる。電極間の電位差によって刺激される最も顕著な反応は、グルコースの還元である。この際、グルコースはまず最初にグルコースオキシダーゼ酵素(GOX)と反応してグルコン酸および過酸化水素(H2O2)を生成する。次にH2O2は作業電極の表面で水(H2O)および(O-)に還元される。O-はセンサー電子構成要素から正電荷を引き出すので、電子を放出し、電流を引き起こす。これにより、センサー電極と接触しているISF中のグルコース濃度に比例するアナログ電流シグナルがもたらされる(例えば米国特許第7,354,420参照)。
いくつかの例では、2つ以上のセンサーを使って血中グルコースを測定する。例えば重複したセンサーを使用し、センサーが故障した時は、遠隔計測特性監視送信用電子機器(telemetered characteristic monitor transmitter electronics)によって対象に通知することができる。インジケーターも、どのセンサーがまだ機能しているかを、および/または、まだ機能しているセンサーの数を、対象に通知することができる。別の例では、センサーシグナルが、平均または他の手段によって組み合わされる。さらにまた、異なるタイプのセンサーも使用することができる。例えば、内部グルコースセンサーと外部グルコースセンサーを使って血中グルコースを同時に測定することができる。
本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を送達するクローズドループシステムに使用することができるグルコースセンサーを、当業者はよく知っており、容易に特定することができ、場合によってはさらに改造することができる。典型的内部グルコースセンサーには、例えば米国特許第5,497,772号、同第5,660,163号、同第、5,791,344号、同第5,569,186号、同第6,895,265号に記載されているものがあるが、これらに限るわけではない。蛍光を使用するグルコースセンサーの典型例は、米国特許第6,011,984号に記載されているものである。グルコースセンサーシステムには、光ビーム、伝導度、ジェットサンプリング(jet sampling)、微小透析、マイクロポレーション(micro-poration)、超音波サンプリング(ultra sonic sampling)、逆イオントフォレシス、または他の方法などといった、他の検知技術も使用することができる(例えば米国特許第5,433,197号および同第5,945,676号ならびに国際特許公開WO199929230)。いくつかの例では、作業電極のみを皮下組織中にISFと接触した状態で置き、対電極および基準電極を皮膚と接触させて体外に置く。対電極および基準電極はモニター筐体の表面に置くことができ、遠隔計測特性モニター(telemetered characteristic monitor)の一部として、皮膚上に置くことができる。さらなる例では、例えば電極に配線して電極を皮膚にテープで貼り付けることや、皮膚と接触する時計の下面に電極を組み込むことなど、他の器具を使って対電極および基準電極を皮膚に保持する。さらにまた、冗長性が得られるように、2つ以上の作業電極を皮下組織に入れることもできる。間質液を対象の身体から収集し、身体に植え込まれていない外部センサーに通すこともできる。
コントローラーはグルコースセンサーからの入力を受け取る。コントローラーは、膵ベータ細胞(β細胞)をモデル化し、血糖管理のために必要な量のインスリンを注入せよという指令をインスリン送達器具に与えるように設計される。コントローラーは、グルコースセンサーが検出したグルコースレベルに基づいてインスリンの所要量を算出するためのアルゴリズムを持つソフトウェアを利用する。典型的アルゴリズムには、β細胞を綿密にモデル化したものが含まれる。というのも、どのくらいの量のインスリンが送達されるかを考慮せずに身体におけるグルコースエクスカーションを最小限に抑えるように設計されたアルゴリズムは、過度の体重増加、高血圧、およびアテローム性動脈硬化を引き起こしうるからである。通例、このシステムは、インビボでのインスリン分泌パターンを模倣し、このパターンを正常な健常個体が起こすインビボでのβ細胞適応と合致させることを意図している。クローズドループシステムに役立つ制御アルゴリズムには、比例-積分-微分(PID)コントローラーによって利用されるものがある。比例微分コントローラーおよびモデル予測制御(model predictive control)(MPC)アルゴリズムも、いくつかのシステムで使用することができる(Hovorkaら (2006) Diabetic Med. 23:1-12)。典型的アルゴリズムには、Hovorkaら(Diabetic Med. (2006) 23:1-12)、Shimodaら(Front Med Biol Eng (1997) 8:197-211)、Shichiriら(Artif.Organs (1998) 22:32-42)、Steilら(Diabetes Technol Ther (2003) 5:953-964)、Kaletzら(Acta Diabetol. (1999) 36:215)、ならびに米国特許第5279543号、同第5569186号、同第、6558351号、同第6558345号、同第6589229号、同第6740042号、同第6669663号、同第6740072号、同第7267665号、同第7354420号および米国特許出願公開第20070243567号に記載されているものなどがあるが、これらに限るわけではない。
ある例では、クローズドループシステムにPIDコントローラーを利用する。PIDコントローラーは、3つの観点、すなわち標的グルコースからの逸脱(比例構成要素)、周辺(ambient)グルコースと標的グルコース濃度の間の曲線下面積(積分構成要素)、および周辺グルコースの変化(微分構成要素)から、グルコースエクスカーションを評価することによって、インスリン注入を連続的に調節する。一般に、グルコースの変化に対するインビボでのβ細胞応答は、「第1相」および「第2相」インスリン応答を特徴とする。β細胞の二相性インスリン応答は、比例+積分+微分(PID)コントローラーの構成要素を使ってモデル化することができる(例えば米国特許第7,354,420号参照)。
コントローラーは、望ましいインスリン送達が起こるように指令を生成する。インスリンポンプなどのインスリン送達システムは当技術分野では知られており、それらをクローズドループシステムに使用することができる。典型的なインスリン送達器具(上述したものなど)には、米国特許第4562751号、同第467840号、同第4685903号、同第4373527号、同第4573994号、同第6554798号、同第6641533号、同第6744350号、同第6852104号、同第6872200号、同第6936029号、同第6979326号、同第6999854号、同第7025713号および同第7109878号に記載されているものなどがあるが、これらに限るわけではない。インスリン送達器具は通例、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物などのインスリン調製物を含有する1つまたはそれ以上のリザーバを含有し、それらのリザーバは一般に使い捨てである。リザーバは、共製剤化されて単一のリザーバに含まれるか、2つ以上のリザーバに別々に含まれる、2つ以上のインスリン、例えば基礎作用型インスリンと速効型インスリンなどを含有することができる。超速効型インスリン組成物と共に使用する場合、インスリン送達器具は、共製剤化された速効型インスリン組成物とヒアルロナン分解酵素組成物とを含有する1つのリザーバを含むか、速効型インスリン組成物とヒアルロナン分解酵素組成物とが別々のリザーバに別々に含まれるように2つ以上のリザーバを含むことができる。そのような場合、インスリン送達器具は、各組成物を同時に送達するか、順に送達することができる。いくつかの例では、組成物が、注入管とカニューレまたは針を使って送達される。別の例では、注入器具を皮膚に直接取り付け、組成物が管を使わずに注入器具からカニューレまたは針を通して体内に直接流れる。さらなる例では、注入器具が体内にあり、注入管は、場合により、組成物を送達するために使用することができる。クローズドループシステムは、例えば限定するわけではないがフィルタ、キャリブレータおよび送信機などといった追加の構成要素も含有することができる。
G.活性、薬物動態および薬力学を評価する方法
アッセイを使って、インスリン単独の、またはヒアルロナン分解酵素と組み合わせたインスリンの、インビトロ活性およびインビボ活性を評価することができる。そのようなアッセイには、皮下投与または腹腔内投与されたインスリンの薬物動態および薬力学的性質(バイオアベイラビリティおよび認容性を含む)を評価するものが含まれる。インスリンの生物学的活性とヒアルロナン分解酵素の生物学的活性はどちらも、当技術分野で周知のアッセイを使って評価することができる。そのようなアッセイを使って、例えば、処置にとって適切な、速効型インスリンなどのインスリンおよびヒアルロナン分解酵素の投薬量ならびに投与頻度を決定することができる。
1.薬物動態、薬力学および認容性
例えば下記実施例1で説明するような薬物動態(PK)試験、薬力学(PD)試験および認容性試験は、実施例11および実施例12に記載するようなブタモデルを含む動物モデルを使って行うか、患者が参加する臨床試験中に行うことができる。動物モデルには、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、モルモットおよび非ヒト霊長類モデル(例えばカニクイザルまたはアカゲザル)などがあるが、これらに限るわけではない。いくつかの例では、薬物動態試験および認容性試験が健常動物またはヒト被験者を使って行われる。他の例では、試験が、後述するような糖尿病の動物モデルを使って行われるか、糖尿病ヒト被験者で行われる。これらの試験を実施するのに役立つ典型的手法には、グルコースクランプ技法(Brehmら (2007)「Clin Diabetes Res: Methods and Techniques」Michael Rosen編の43〜76頁、例(Example)1)などがある。高インスリン正常血糖クランプ法では、可変的外因性グルコース注入を使って血漿中グルコース濃度を正常血糖レベルで一定に保ちながら、外因性インスリンを注入して高インスリン性の血漿中インスリン濃度を生じさせる。高インスリン血状態の期間中、グルコースレベルを一定に維持するのに要求されるグルコース注入速度(GIR)は、注入されたインスリンがグルコース代謝に及ぼす効果の尺度になる。GIRは、身体が使用したグルコースの量を反映し(すなわち、身体がより多くのグルコースを使用している場合、正常な血中グルコースレベル(すなわち90〜110mg/dL)を維持するには、より多くの外因性グルコースを注入する必要がある)、したがって投与されたインスリンの活性を反映する(すなわち、インスリン活性の増加は、内因性グルコース産出量の低下および/または血中グルコース利用の増加をもたらして、血中グルコースの総合的低下を引き起こす)。したがって、そのような手法は、被験者におけるインスリン分泌およびインスリン抵抗性を評価するために使用されるだけでなく、あるインスリン、例えばヒアルロナン分解酵素と共投与されるインスリンの薬物動態および薬力学的性質を安全に評価するためにも使用することができる。
皮下投与または腹腔内投与されたインスリンの薬物動態は、インスリンの時間-濃度プロファイルを測定し、最大(ピーク)血清中インスリン濃度(Cmax)、ピーク時間(すなわち最大血清中インスリン濃度になる時間;tmax)、および投与後の任意の所与の時間間隔についての曲線下面積(すなわち、時間対血中インスリン濃度をプロットすることによって作成される曲線下面積;AUC)などのパラメータを算出することによって評価することができる。皮下投与されたインスリンの絶対的バイオアベイラビリティは、皮下送達後のインスリンの曲線下面積(AUCsc)を静脈内送達後のインスリンのAUC(AUCiv)と比較することによって決定される。絶対的バイオアベイラビリティ(F)は、式:F=[([AUC]sc×用量sc)/([AUC]iv×用量iv)]×100を使って算出することができる。同じ投与経路による2つの処置(例えばヒアルロナン分解酵素と共投与されるインスリン、またはヒアルロナン分解酵素を共投与しないインスリン)の相対的バイオアベイラビリティ(Frel)も、実施例1で述べるように算出することができる。例えば、rHuPH20と共投与された皮下投与Humalog(登録商標)インスリンリスプロと皮下投与Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみとの相対的バイオアベイラビリティ(Frel)は、{[AUC(Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20)]/[AUC(Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみ]}×100と算出することができ、ここで、Humalog(登録商標)インスリンリスプロの各用量は同じであり、AUCは同じ時間間隔に対して算出される。皮下投与後の血漿中のインスリンの濃度は、血液試料中のインスリン濃度を評価するのに適した当技術分野で知られる任意の方法を使って測定される。典型的な方法には、ELISAやRIAがあるが、これらに限るわけではない。
皮下投与または腹腔内投与されたインスリンの薬力学的性質は、グルコース注入速度(GIR)(mg/kg/分)、最大効果到達時間(tGIRmax)(分);後期最大半量効果(late half-maximal effect)到達時間(tGIRlate 50%)(分);初期最大半量効果(early half-maximal effect)到達時間(tGIRearly 50%)(分);最大代謝効果(GIRmax)(mg/kg/分);AUC-GIR0-60分(g/kg);AUC-GIR0-120分(g/kg);AUC-GIR0-180分(g/kg);AUC-GIR0-240分(g/kg);AUC-GIR0-300分(g/kg);およびAUC-GIR0-360分(g/kg)などのパラメータを測定することによって評価することができる。
薬物動態試験では一連の用量を異なる投与頻度で投与して、その投薬におけるインスリンおよび/またはヒアルロナン分解酵素の濃度を増加または減少させた場合の効果を評価することができる。皮下投与または腹腔内投与されたインスリンの薬物動態および薬力学的性質、例えばバイオアベイラビリティも、ヒアルロナン分解酵素の共投与を行って、またはヒアルロナン分解酵素の共投与を行わずに、評価することができる。例えば、高インスリン正常血糖クランプ法において、動物またはヒト被験者に、インスリンを単独で、またはヒアルロナン分解酵素と組み合わせて皮下投与することができる。次に血液試料をさまざまな時点で採取し、血清中のインスリンの量を、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などによって決定することができる。この手法の全体にわたってグルコース注入速度を算出することもできる。次に、ヒアルロナン分解酵素と共に投与された、またはヒアルロナン分解酵素なしで投与された、皮下投与インスリンの薬物動態および薬力学的性質を決定することで、ヒアルロナン分解酵素との共投与が、任意のインスリンのそのような性質に及ぼす効果を評価することができる。
安全性および認容性を評価するための試験も当技術分野では知られており、本発明において使用することができる。ヒアルロナン分解酵素の共投与を伴って、またはヒアルロナン分解酵素の共投与なしで、インスリンを皮下投与した後に、任意の有害反応の発生を監視することができる。有害反応としては、注射部位反応、例えば浮腫または腫脹、頭痛、発熱、疲労、悪寒、潮紅、めまい、じんま疹、喘鳴または胸部絞扼感、悪心、嘔吐、硬直、背痛、胸痛、筋痙攣、発作または痙攣、血圧の変化およびアナフィラキシー応答または重篤な過敏応答などが挙げられるが、これらに限るわけではない。通例、安全性および認容性試験では、ある範囲の用量を異なる投与頻度で投与して、その投薬におけるインスリンおよび/またはヒアルロナン分解酵素の濃度を増加または減少させた場合の効果を評価することができる。
2.生物学的活性
a.インスリン
治療剤として作用する、インスリン類似体などのインスリンの能力は、インビトロまたはインビボで評価することができる。例えば、当技術分野で周知のインビトロアッセイを行って、インスリン受容体に結合するインスリンの能力を評価することができる。ある例では、ヒト胎盤細胞膜をインスリン受容体の供給源として調製し、それを、非標識インスリン類似体と共に、または非標識インスリン類似体なしで、放射標識ヒトインスリンとインキュベートするという、競合的結合アッセイを行う。次に、結合した放射標識インスリンの量を検出して、結合について競合するインスリン類似体の能力を決定し、胎盤インスリン受容体に対するインスリン類似体の相対的アフィニティを算出する(例えばWeissら (2001) J.Biol.Chem. 276:40018-40024参照)。他のインスリン受容体供給源、例えばインスリン受容体を天然にまたは組換え的に発現させる他の細胞も、そのような競合的結合アッセイに使用することができる(Duttaroyら (2005) Diabetes 54:251-258)。
グルコース取り込みを刺激し、またはその典型的な代謝的帰結の他のいずれかを達成するという、インスリンの能力は、インビトロで評価することができる。インスリンが刺激するグルコース取り込みを測定するには、脂肪細胞を、インスリンと共に、またはインスリンなしで、2-デオキシ-D-[2,63-H]グルコースまたはD-[U-14C]グルコースなどの標識グルコースとインキュベートする。次に、取り込まれた放射能を測定して、インスリンの存在下または非存在下でのグルコース取り込みの量を決定する(Louveauら (2004) J Endocrin. 181:271-280、Duttaroyら (2005) Diabetes 54:251-258)。インスリン類似体の活性を評価する場合は、ヒトインスリンの活性も評価して、それを比較に使用することができる。インスリン存在下でのH4IIE細胞におけるグルコース産生を評価するためのインビトロアッセイを行うこともできる(Wangら (2000) J.Bioche, 275:14717-14721、Duttaroyら (2005) Diabetes 54:251-258)。
インスリンの治療活性を評価するために、糖尿病のまたは健常な動物モデルまたはヒト被験者を用いるインビボ試験も行うことができる。インスリンを糖尿病の動物モデルに投与して、例えば血中グルコースレベル、循環インスリンレベル、およびヘモグロビンA1c(HbA1c)に対する効果を評価することができる。ヘモグロビンA1cは、グルコースがヘモグロビンに結合した時に形成され、これは血中グルコースレベルが上昇した時に起こる。血液試料中のHbA1cレベルは、例えばHPLC、ELISA、RIAまたは他のイムノアッセイによって評価することができる。健常被験者の正常HbA1c値は約4.0〜6.2パーセントである。米国糖尿病学会(American Diabetes Association)は、糖尿病からの合併症を防止するのに役立つように、糖尿病を持つ患者については、7%未満(または一定の人では6%未満)にすべきであると勧告している。インスリンレベルは、例えばELISAまたはRIAによって測定することができる。グルコースレベルは通例、グルコースセンサーまたはグルコースアナライザーを使って測定される。
I型糖尿病の動物モデルには、非肥満糖尿病(NOD)マウスおよびバイオブリーディング(BioBreeding)(BB)ラットがある(Atkinsonら (1999) Nature Med. 5:601-604)。2型糖尿病の動物モデルには、それぞれレプチン遺伝子またはレプチン受容体に突然変異を持つob/obマウスおよびdb/dbマウス、KKマウス、ナゴヤ-シバタ-ヤスダ(Nagoya-Shibata-Yasuda)(NSY)マウス、ズッカー糖尿病肥満(Zucker diabetic fatty)(ZDF)ラットおよび後藤-柿崎(Gato-Katazaki)(GK)ラットがあるが、これらに限るわけではない(Cefalu (2006) ILAR Journal 47:186-198)。他の例では、健常動物を使って、ヒアルロナン分解酵素を伴う、またはヒアルロナン分解酵素を伴わない、インスリンの活性を調べる。
b.ヒアルロナン分解酵素
ヒアルロナン分解酵素の活性は当技術分野で周知の方法を使って評価することができる。例えば、ヒアルロニダーゼに関するUSP XXIIアッセイでは、酵素をHAと37℃で30分間反応させた後に残存する未分解ヒアルロン酸またはヒアルロナン(HA)基質の量を測定することにより、活性が間接的に決定される(USP XXII-NF XVII (1990) 644-645 United States Pharmacopeia Convention, Inc、メリーランド州ロックビル)。アッセイでは、ヒアルロニダーゼ参照標準(USP)または国民医薬品集(National Formulary)(NF)標準ヒアルロニダーゼ溶液を使って、任意のヒアルロニダーゼの活性を単位数として確認することができる。ある例では微小濁度アッセイを使って活性を測定する。これはヒアルロン酸が血清アルブミンと結合した時に起こる不溶性沈殿物の形成に基づく。活性は、ヒアルロニダーゼをヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸)と共に設定された時間(例えば10分間)インキュベートした後、酸性化血清アルブミンを添加して未消化のヒアルロン酸ナトリウムを沈殿させることによって測定される。得られた試料の濁度をさらなる発現期間後に640nmで測定する。ヒアルロン酸ナトリウム基質に対するヒアルロニダーゼ活性に起因する濁度の低下が、ヒアルロニダーゼ酵素活性の尺度である。もう一つの例では、ヒアルロニダーゼと共にインキュベートした後に残存ビオチン化ヒアルロン酸を測定するマイクロタイターアッセイを使って、ヒアルロニダーゼ活性が測定される(例えばFrostおよびStern (1997) Anal.Biochem. 251:263-269、米国特許出願公開第20050260186号を参照されたい)。ヒアルロン酸のグルクロン酸残基上の遊離カルボキシル基をビオチン化し、そのビオチン化ヒアルロン酸基質をマイクロタイタープレートに共有結合させる。ヒアルロニダーゼと共にインキュベートした後、アビジン-ペルオキシダーゼ反応を使って残存ビオチン化ヒアルロン酸基質を検出し、既知の活性を持つヒアルロニダーゼ標準品による反応後に得られるものと比較する。ヒアルロニダーゼ活性を測定するための他のアッセイも当技術分野では知られており、本発明の方法において使用することができる(例えばDelpechら, (1995) Anal.Biochem. 229:35-41;Takahashiら, (2003) Anal.Biochem. 322:257-263を参照されたい)。
展着剤または拡散剤として作用するヒアルロナン分解酵素の能力も評価することができる。例えばトリパンブルー色素を、ヒアルロナン分解酵素と共に、またはヒアルロナン分解酵素なしで、ヌードマウスの左右の外側皮膚に皮下注射することができる。次に、色素面積を、例えばマイクロキャリパーを使って測定することで、展着剤として作用するヒアルロナン分解酵素の能力を決定する(米国特許第20060104968号)。ヒアルロニダーゼを別の薬剤、例えばインスリンと共投与することが、その薬剤の薬物動態および薬力学的性質に及ぼす効果も、動物モデルを使って、かつ/または、上述し、下記実施例1にも示すように、例えば臨床試験などにおいて、ヒト被験者を使って、インビボで評価することができる。ヒアルロニダーゼでないヒアルロナン分解酵素の機能的活性は、これらのアッセイのいずれかを使って、ヒアルロニダーゼと比較することができる。これは、機能的に等価な量のヒアルロナン分解酵素がどれくらいかを決定するために行うことができる。例えば、展着剤または拡散剤として作用するヒアルロナン分解酵素の能力は、それをトリパンブルーと一緒にマウスの外側皮膚に注射することによって評価することができ、例えば100単位のヒアルロニダーゼ参照標準と同じ量の拡散を達成するのに要求される量を決定することができる。したがって、要求されるヒアルロナン分解酵素の量は、100ヒアルロニダーゼ単位と機能的に等価である。
H.治療用途
本明細書に記載する方法は、速効型インスリンが使用される任意の状態の処置に使用することができる。インスリンは、インスリンによる処置が可能な任意の状態を処置するためにヒアルロナン分解酵素と組み合わせて皮下投与することができる。通例、ヒアルロナン分解酵素は速効型インスリンと共投与される。この項では速効型インスリンの典型的治療用途を記載する。以下に述べる治療用途は典型例であり、本明細書に記載する方法の応用例を限定するものではない。治療用途には、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、妊娠糖尿病の処置、および重篤患者における血糖管理などがあるが、これらに限るわけではない。例えば速効型インスリンは、血糖管理を達成するために糖尿病を持つ対象に食事時インスリン治療として食事の前に、ヒアルロナン分解酵素と組み合わせて、例えばシリンジまたはインスリンペンなどにより、離散した用量で皮下投与することができる。速効型インスリンは、血中グルコースレベルを1日中連続的に管理するために、かつ/または食後血糖エクスカーションを管理するために、インスリンポンプを使って、またはクローズドループシステムにおいて、ヒアルロナン分解酵素と組み合わせて皮下投与または腹腔内投与することもできる。そのような疾患または状態を特定することは、処置医の技量で可能である。
上述のように、特定の投薬量および処置プロトコールは、通例、個々の対象ごとに個別化される。必要であれば、特定の投薬量および継続期間および処置プロトコールを実験的に決定するか、推論することができる。例えば、ヒアルロナン分解酵素なしの場合の速効型インスリンの典型的用量を出発点として使用して、本明細書に記載する方法にとって適切な投薬量を決定することができる。投薬量レベルは、例えば個体の体重、全身の健康状態、年齢、使用する具体的化合物の活性、性別、食事制限(diet)、代謝活性、血中グルコース濃度、投与時間、排泄率、併用薬、疾患の重症度および経過、ならびに疾患に対する患者の傾向および処置医の判断など、さまざまな因子に基づいて決定することができる。特に、例えば血中グルコースセンサーで測定されるような血中グルコースレベルを測定し、それを使って、血糖管理を達成するために投与されるべきインスリンおよびヒアルロナン分解酵素の量を決定することができる。本明細書に記載する超速効型組成物の吸収速度および吸収レベルに基づくと共に、血中グルコースレベルにも基づいて用量を決定するために使用することができるアルゴリズムは、当技術分野ではよく知られている。食後血糖管理のためのインスリンの投薬量は、例えば食事の糖質含有量を決定することによって算出または調節することもできる(Bergenstalら (2008) Diabetes Care、Loweら (2008) Diabetes Res.Clin.Pract.、Chiesaら (2005) Acta Biomed. 76:44-48)。
1.真性糖尿病
真性糖尿病(または糖尿病)はグルコース代謝障害を特徴とする。血中グルコースは腸で吸収された糖質に由来し、肝臓で産生される。血中グルコースレベルの増加はインスリン放出を刺激する。食後グルコースインフラックス(influx)は食間に観察されるグルコースの肝産生量より20〜30倍高くなりうる。10分前後続く初期相インスリン放出は肝グルコース産生を抑制し、その後に、2時間以上持続して食事時間糖質インフラックスをカバーする長い(後期)放出相が起こる。食間は、低い連続的インスリンレベル(基礎インスリン)が進行中の代謝要件をカバーして、特に、肝糖産生を調節すると共に、脂肪組織、筋組織および他の標的部位によるグルコース利用を調節する。糖尿病を持つ患者は高い血中グルコースレベル(高血糖)を示す。糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病の2つに大別することができる。1型糖尿病またはインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)は、インスリンの欠乏につながる膵臓におけるランゲルハンス島のインスリン産生β細胞の喪失を特徴とする。β細胞欠乏の主要原因はT細胞による自己免疫である。2型糖尿病またはインスリン非依存性真性糖尿病(NIDDM)はβ細胞機能異常を持つ患者で起こる。これらの患者は、インスリン抵抗性または低下したインスリン感受性と、インスリン分泌量の減少とを併せ持つ。2型糖尿病は最終的には1型糖尿病に進展しうる。糖尿病には妊娠糖尿病も含まれる。糖尿病を持つ患者には、基礎インスリンレベルを維持するためにも、食事後などに起こる血糖エクスカーションを防止するためにも、インスリンを投与することができる。
a.1型糖尿病
1型糖尿病は、膵臓の内分泌単位であるランゲルハンス島の浸潤およびβ細胞の破壊を特徴とし、それがインスリン産生量の不足と高血糖につながる、T細胞依存的自己免疫疾患である。1型糖尿病は、最も一般的には小児および若年成人で診断されるが、どの年齢でも診断されうる。1型糖尿病を持つ患者は、低いインスリンレベルおよび高い血中グルコースレベルに加えて、多尿症、多飲症(polydispia)、多食症、かすみ目および疲労を示しうる。126mg/dL(7.0mmol/l)以上の空腹時血漿中グルコースレベル、例えばグルコース耐性検査などにおける75g経口グルコース負荷の2時間後に200mg/dL(11.1mmol/l)以上の血漿中グルコースレベル、および/または200mg/dL(11.1mmol/l)以上の随時血漿中グルコースレベルを示すことによって、患者を診断することができる。
1型糖尿病を持つ患者に対する主要な処置は、通例、血中グルコースモニタリングと合わせて行われる補充療法としてのインスリンの投与である。十分なインスリンの補充がないと、糖尿病性ケトアシドーシスが発生する可能性があり、それは昏睡または死をもたらしうる。患者には、1日中適切な血中グルコースレベルを維持するためにも、食後グルコースレベルを管理するためにも、例えばシリンジもしくはインスリンペン、またはインスリンポンプを使って、速効型インスリンの皮下注射を投与することができる。いくつかの例では、インスリンポンプ(クローズドループシステムにおけるものを含む)を使ってインスリンを腹腔内投与することができる。このように、1型糖尿病を持つ患者には、血中グルコースレベルおよび血中インスリンレベルをより迅速に管理するために、本明細書に記載する方法を使って、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を、シリンジ、インスリンペン、もしくはインスリンポンプ、またインスリンを送達するのに役立つ他の任意の手段によって、皮下投与または腹腔内投与することができる。
b.2型糖尿病
2型糖尿病はインスリン抵抗性に関連し、いくつかの集団では、インスリン減少症(insulinopenia)(β細胞機能の喪失)にも関連する。2型糖尿病では、インスリンの第1相放出がなく、第2相放出が遅延し、しかも不十分である。食事中および食事後に健常な被験者で起こるインスリン放出の鋭いスパイクが、2型糖尿病を持つ患者では遅延し、長引き、量的に不十分になり、その結果、高血糖になる。2型糖尿病を持つ患者には、血中グルコースレベルを管理するために、インスリンを投与することができる(Mayfieldら (2004) Am Fam Physican 70:489-500)。これは、他の処置および処置レジーム、例えば食事制限、運動および他の抗糖尿病治療(例えばスルホニル尿素類、ビグアニド類、メグリチニド類、チアゾリジンジオン類およびα-グルコシダーゼ阻害剤)などと組み合わせて行うことができる。したがって、2型糖尿病を持つ患者には、血中グルコースレベルおよび血中インスリンレベルをより迅速に管理するために、本明細書に記載する方法を使って、シリンジ、インスリンペン、もしくはインスリンポンプ、またはインスリンを送達するのに役立つ他の任意の手段により、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を皮下投与または腹腔内投与することができる。本明細書の他の項で述べるように、2型糖尿病患者に超速効型インスリン組成物を投与すると、対応する速効型インスリンと比較して、より良い血糖管理が得られることの他に、2型糖尿病患者におけるインスリン治療に付随することが多い体重増加および肥満のリスクが低減する。
c.妊娠糖尿病
今までに糖尿病を患ったことは一度もないが、妊娠中に高い血中グルコースレベルを持つ妊婦は、妊娠糖尿病と診断される。このタイプの糖尿病は、試験対象の集団に依存して、全妊婦の約1〜14%を冒す(Carrら (1998) Clinical Diabetes 16)。基礎となる原因はまだわかっていないが、おそらく妊娠中に産生されるホルモンがインスリンに対する妊婦の感受性を低下させるものと思われる。インスリン感受性細胞による正常なインスリン結合が証明されているので、インスリン抵抗性の機序はおそらく受容体後の欠陥(postreceptor defect)である。膵臓は、結果として起こるインスリン抵抗性の増加に応答するために、1.5〜2.5倍多いインスリンを放出する。正常な膵臓機能を持つ患者はこれらの需要を満たすことができる。境界的な膵臓機能を持つ患者は、インスリン分泌を増加させることが困難であり、その結果、不十分なレベルのインスリンを産生する。こうして、増加した末梢インスリン抵抗性の存在下で、遅延したまたは不十分なインスリン分泌が起こる場合に、妊娠糖尿病が生じる。
妊娠糖尿病を持つ患者には、血中グルコースレベルを管理するために、インスリンを投与することができる。したがって妊娠糖尿病を持つ患者には、血中グルコースレベルおよび血中インスリンレベルをより迅速に管理するために、本明細書に記載する方法を使って、シリンジ、インスリンペン、インスリンポンプもしくは人工膵臓、または他の任意の手段により、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を皮下投与することができる。
2.重篤患者のインスリン治療
高血糖およびインスリン抵抗性は内科的および/または外科的に重篤な患者においてしばしば起こり、糖尿病患者でも被糖尿病患者でも、また外傷性傷害、脳卒中、無酸素性脳損傷、急性心筋梗塞、心臓手術後、および重篤疾患の他の原因を持つ患者でも、罹病率および死亡率の増加と関連づけられている(McCowenら (2001) Crit Clin.Care 17:107-124)。高血糖を持つ重篤患者は、血中グルコースレベルを管理するためにインスリンで処置されてきた。そのような処置はこの群における罹病率および死亡率を低下させることができる(Van den Bergheら (2006) N.Eng.J Med. 354:449-461)。インスリンは通例、例えば開業医によるシリンジを使った注射によって、またはインスリンポンプを使った注入によって、患者に静脈内投与される。いくつかの例では、アルゴリズムおよびソフトウェアを使って用量が算出される。したがって、高血糖を持つ重篤患者には、血中グルコースレベルを管理するために、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を投与し、それによって高血糖を軽減し、罹病率および死亡率を減少させることができる。
I.併用治療
本明細書に記載する超速効型インスリン組成物はどれでも、他の治療剤または他の治療法(例えば限定するわけではないが、他の生物製剤および小分子化合物)と組み合わせて、その前に、それとは間欠的に、またはその後に、投与することができる。速効型インスリンが適応となるか、速効型インスリンが使用されてきた疾患または状態であって、他の薬剤および処置を利用することができるものには、上に例示したものを全て含めてどれでも、超速効型インスリン組成物をそれらと組み合わせて使用することができる。処置される疾患または状態に応じて、典型的な組合せには、抗糖尿病薬、例えば限定するわけではないが、スルホニル尿素、ビグアニド、メグリチニド、チアゾリジンジオン、α-グルコシダーゼ阻害剤、ペプチド類似体、例えばグルカゴン様ペプチド(GLP)類似体、および胃抑制ペプチド(GIP)類似体、ならびにDPP-4阻害剤との組合せなどがあるが、これらに限るわけではない。もう一つの例では、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物を、速効型インスリンおよび基礎作用型インスリンを含む1つ以上の他のインスリンと組み合わせて、その前に、それとは間欠的に、またはその後に投与することができる。
J.製品およびキット
本明細書に記載する超速効型インスリン組成物、インスリンおよび/またはヒアルロナン分解酵素組成物の医薬化合物は、包装材料、例えば糖尿病対象または重篤対象などにおける血中グルコースレベルを管理するのに有効な医薬組成物、ならびにその超速効型インスリン組成物、インスリンおよび/またはヒアルロナン分解酵素組成物が血中グルコースレベルを管理するために使用されるべきものであることを示すラベルを含む製品として包装することができる。
本明細書に記載する製品は包装材料を含む。医薬製品を包装するのに使用される包装材料は当業者にはよく知られている。例えば米国特許第5,323,907号、同第5,052,558号および同第5,033,352号(これらはそれぞれその全てが本明細書に組み込まれる)を参照されたい。医薬包装材料の例として、ブリスター包装、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、瓶、およびに選ばれた製剤および意図する投与および処置の様式に適した任意の包装材料が挙げられるが、これらに限るわけではない。任意の止血疾患または止血障害のさまざまな処置と同様に、本明細書に記載する化合物および組成物の多種多様な製剤が考えられる。
超速効型インスリン組成物、インスリンおよび/またはヒアルロナン分解酵素組成物はキットとして提供することもできる。キットは本明細書に記載する医薬組成物および投与のための品目を含むことができる。キットは追加の医薬組成物も含むことができる。ある例において、キットは、本明細書に記載する超速効型インスリン組成物、インスリンおよび/またはヒアルロナン分解酵素組成物の1つ以上と、1つ以上の他のインスリン組成物、例えば結晶性インスリンを含む遅効型(slow acting)もしくは中間型インスリン、またはその任意の組合せとを含むことができる。超速効型インスリン組成物、インスリンおよび/またはヒアルロナン分解酵素組成物および/または他の医薬組成物は、投与用の器具、例えばシリンジ、インスリンペン、ポンプ、またはインスリンペン、ポンプもしくは他の送達器具に挿入されるリザーバと共に供給することができる。キットは、場合によっては、投薬量、投与レジメンを含む適用に関する指示および投与様式に関する指示を含むことができる。キットは本明細書に記載する医薬組成物および診断用の品目も含むことができる。例えば、そのようなキットは、グルコースモニターまたはグルコースセンサーを含むことができる。
キットは、例えば、別々の容器に入れて提供される、さまざまな投薬量の、さまざまな速効型インスリン組成物、または他のインスリン組成物、例えば1つ以上の基礎作用型インスリンも含むことができ、それにより、使用者には、高血糖が現実に発生しているか発生すると予期される具体的状況に対して、所与のインスリン投薬量、例えば食事時投薬量を選択する機会が与えられる。
K.実施例
以下に掲載する実施例は例示を目的とし、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
[実施例1]
組換えヒトPH20(rHuPH20)と速効型インスリンとの共投与は薬物動態および薬力学の改善を助長する
インスリン誘導体を含むインスリンは、高血糖の管理を目的として、真性糖尿病を持つ対象に投与される。健常被験者で観測される正常な生理学的食事時インスリン放出をより効果的に再現することを目指して、組換えヒトPH20(rHuPH20)の共投与が投与された速効型インスリンの初期吸収速度および吸収量を増加させうるかどうかを決定するための臨床試験を行った。吸収の増加により、速効型インスリンは、より一層迅速に作用すること、したがって、健常被験者に観察される内因性インスリン濃度-時間プロファイルをより綿密に模倣することが可能になった。これにより、真性糖尿病を持つ被験者において、より良い血糖管理および体重増加の減少に関し、臨床的利益を得ることができた。単独でまたはrHuPH20と組み合わせて皮下投与されたHumulin(登録商標)RインスリンおよびHumalog(登録商標)インスリンリスプロ(どちらも本明細書にいう速効型インスリンである)の安全性、認容性、薬物動態(PK)および薬力学(PD)を評価するために、臨床試験を計画した。
[実施例1a]
健常(非糖尿病)被験者における、rHuPH20の共投与を伴う、およびrHuPH20の共投与を伴わない、Humalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)Rインスリンの薬物動態および薬力学
rHuPH20の共投与を伴う、およびrHuPH20の共投与を伴わない、皮下投与20単位(U)Humalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)Rインスリンを評価するための無作為化二重盲検交差2段階逐次2アーム(randomized, double-blind, crossover, two-stage, sequential 2-arm)試験を行った。この試験には25人の健常成人男性被験者が登録された。第1段階では、12人の被験者に、Humalog(登録商標)インスリンリスプロおよびrHuPH20の皮下注射と、それとは別にHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみの皮下注射とを投与した。注射の間隔を通常は7日とし、被験者の半分には、まず最初にHumalog(登録商標)インスリンリスプロおよびrHuPH20を投与してから、Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみを投与し、被験者の半分には、まず最初にHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみを投与してから、Humalog(登録商標)インスリンリスプロおよびrHuPH20を投与した。第2段階では、13人の被験者に、Humulin(登録商標)RインスリンおよびrHuPH20の皮下注射と、それとは別にHumulin(登録商標)Rインスリンのみの皮下注射とを投与した。注射の間隔を通常は7日とし、被験者の約半分には、まず最初にHumulin(登録商標)RおよびrHuPH20を投与してから、Humulin(登録商標)Rインスリンのみを投与し、被験者の半分には、まず最初にHumulin(登録商標)Rインスリンのみを投与してから、Humulin(登録商標)RインスリンおよびrHuPH20を投与した。
各注射の約14時間前に、各被験者に、糖質60gの米国糖尿病学会2000カロリー食事プランに基づく夕食(dinner)を与えた。糖質30gの間食(snack)も与えた。夕食の約6時間後に、被験者は、8時間の高インスリン正常血糖クランプ法に取り掛かるまでの少なくとも8時間にわたる絶食(水を除く)を開始した。高インスリン正常血糖クランプ法を開始した2時間後、処置前血液試料を集め、バイタルサインおよび体重を測定してから、被験者にHumalog(登録商標)インスリンリスプロ、Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20、Humulin(登録商標)Rインスリン、またはHumulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20を注射した。後述するように規定の間隔で血液試料を集め、6時間にわたってグルコースレベルおよびインスリンレベルを定量した。
A.投薬(dosing)
上述のように、この試験の第1段階では、12人の被験者に、220μL中の20UのHumalog(登録商標)インスリンリスプロおよび300UのrHuPH20、ならびに200μL中の20U Humalog(登録商標)インスリンリスプロを、左下腹部の皮下に投与した。Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20用量は、まず最初にrHuPH20(1mg/mL、10mM HEPES/130mM NaCl(pH約7.0)中、約120,000U/mLに相当)を室温で1時間、融解し、0.153cc(18,360Uに相当)のrHuPH20を、0.3cc容量のインスリンシリンジに無菌的に吸引することによって調製した。次に、その0.153ccのrHuPH20を、1.17mLの150U/mL HYLENEX(rHuPH20)が入っているバイアルにゆっくり移した。このバイアルから1.1mLを吸引し、バイアルから吸引された約10.2mLの100U/mL Humalog(登録商標)インスリンリスプロが入っているバイアルに移した。次に、220μLのHumalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20混合物を、0.3cc容量のインスリンシリンジを使って吸引し、それを単一被験者への皮下投与に、4時間以内に使用した。
したがって送達されたHumalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20混合物は220μLであり、次の成分を含有した:300UのrHuPH20(2.5μg)、20UのHumalog(登録商標)インスリンリスプロ、0.02mgのヒト血清アルブミン(Hylenex製剤由来、吸着損失に対してrHuPH20を安定化するように機能すると共に、インスリンに対して安定化特性を持ちかつ/または酸化スカベンジャー(oxidation scavenger)として作用することができる;3mgのグリセリン(Humalog(登録商標)インスリンリスプロ製剤由来、pHバッファー、インスリンの安定剤および/または張性調整剤として存在するもの);0.6mgのm-クレゾール(Humalog(登録商標)インスリンリスプロ製剤由来、インスリン六量体コンフォメーションを安定化するために高濃度で存在する抗微生物成長保存剤);0.004mgの亜鉛(Humalog(登録商標)インスリンリスプロ製剤由来、インスリン六量体コンフォメーションを安定化するために使用されるもの);0.18mgのNaCl(Hylenex製剤およびrHuPH20 API由来、張性調整剤として);0.4 リン酸水素ナトリウム(Hylenex製剤由来、pHバッファーとして);0.017mgのEDTA二ナトリウム(Hylenex製剤由来、Zn2+イオンおよびCa2+イオンを結合する潜在能力を持つ金属キレーターとして);0.006mgの塩化カルシウム(Hylenex製剤由来、EDTAとの錯体を形成し、皮下注射の快適性を改善する);0.006mgのHEPES(rHuPH20 API製剤由来、pHバッファーとして);水(溶媒として)ならびにpH調節用のNaOHおよび/またはHCl。
第2段階では、上述のように、13人の被験者に、200μL中の20UのHumulin Rインスリンと240UのrHuPH20の両方、および200μL中の20UのHumulin(登録商標)Rインスリンを、左下腹部中に皮下投与した。Humulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20用量は、まず最初に0.3cc容量のインスリンシリンジを使ってHumulin(登録商標)Rインスリンのバイアルから0.3cc(150U)を吸引し、それを、1.2mLの1500U/mL rHuPH20(HYLENEXの10×組成物として製剤化したもの)が入っているバイアルに移すことによって調製した。その混合物を穏やかに混合し、0.3ccの空気をバイアルから取り除いた後、0.3cc容量のインスリンシリンジを使って、200μL(20UのHumulin(登録商標)Rインスリンと240UのrHuPH20とを含有する)を吸引した。これを、単一被験者への皮下投与に、4時間以内に使用した。200μL中20UのHumulin(登録商標)Rインスリン用量は、皮下投与用に(by subcutaneously)、1本のシリンジを使って調製した。
したがって送達されたHumulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20混合物は200μLであり、次の成分を含有した:240 USP UのrHuPH20(2μg)、20UのHumulin(登録商標)Rインスリン、0.16mgのヒト血清アルブミン(10×HYLENEX製剤由来、吸着喪失に対してrHuPH20を安定化する機能を持ち、潜在的に、インスリンに対して安定化特性を持ちかつ/または酸化スカベンジャーとして作用する機能も持つ);3mgのグリセリン(Humulin(登録商標)R製剤由来、pHバッファー、インスリンの安定剤および/または張性調節剤として作用);0.4mgのm-クレゾール(Humulin(登録商標)R製剤由来、インスリン六量体コンフォメーションを安定化するために高濃度で存在する抗微生物成長保存剤として作用する);0.34mgの亜鉛(Humulin(登録商標)R製剤由来、インスリン六量体コンフォメーションを安定化するように作用する);1.36mgのNaCl(10×Hylenex製剤およびrHuPH20 API由来、張性調整剤として作用する);0.224 リン酸水素ナトリウム(10×Hylenex製剤由来、pHバッファー用);0.161mgのEDTA二ナトリウム(10×Hylenex製剤由来、Zn2+イオンおよびCa2+イオンを結合する潜在能力を持つ金属キレーターとして);0.048mgの塩化カルシウム(10×Hylenex製剤由来、これはEDTAとの錯体を形成し、皮下注射の快適性を改善することができる);水(溶媒として)ならびにpH調節用のNaOHおよび/またはHCl。
B.高インスリン正常血糖クランプ法
血液試料を採取して、インスリン(すなわちHumalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)Rインスリン)レベルとグルコースレベルを測定することにより、rHuPH20の共投与が、皮下投与されたHumalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)Rインスリンの薬物動態および薬力学に及ぼす効果を、評価した。低血糖を引き起こさずにインスリン調製物を投与することができるように、高インスリン正常血糖クランプ法を使って、血漿グルコースレベルを90〜110mg/dLに維持した。
この手法は、まず最初に被験者の体重および身長を把握し、座位で5分間休息した後にバイタルサインを測定することからなる。静脈を拡張するために両方の腕を温熱パッド上に置き、次にIVカテーテルを挿入した。2つの独立した二方コックを通して20%デキストロースを注入するために、一方の腕の肘前静脈中にカテーテルを入れた。他方の動脈内カテーテルは、グルコース測定用の動脈血化された血液を試料採取するために、他方の腕に入れた。グルコース注入部位から温熱パッドを取り除くことはできるが、逆行性カテーテル部位は65℃に維持した。ベースライングルコースを測定するために、インスリン調製物を注射する30分前に、最初の血液試料を採取した。Humalog(登録商標)インスリンリスプロ、Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20、Humulin(登録商標)RインスリンまたはHumulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20を注射する10分前および1分前に血液試料を採取した後、最初の60分間は3分ごとに、60分から3時間までは15分ごとに、そしてその後6時間までは1時間ごとに、血液試料を採取した。各被験者のグルコースレベルは、この方法の全体を通して、YSI2300グルコースアナライザー(YSI Inc.)で分析し、血漿中グルコースを90〜110mg/dLに維持するために必要に応じて、グルコース注入速度(GIR)を調節した。インスリンの循環レベルは、Humalog(登録商標)インスリンリスプロおよびHumulin(登録商標)Rインスリンのレベルを定量するラジオイムノソルベント(radioimmunsorbant)アッセイ(RIA)(Millipore BioPharma Services Division、ミズーリ州セントチャールズ)を使って解析した。
C.rHuPH20の共投与が速効型インスリンの薬物動態に及ぼす効果
rHuPH20の共投与が、速効型インスリン組成物であるHumalog(登録商標)インスリンリスプロおよびHumulin(登録商標)Rインスリンの薬物動態に及ぼす効果を決定するために、いくつかのパラメータを測定した。それらには、選択した投薬間隔中に観察される最大インスリン濃度(Cmax);Cmax到達時間(tmax);およびさまざまな時間感覚について評価した濃度対時間曲線下面積(AUC)を含めた。
1.rHuPH20とHumalog(登録商標)インスリンの共投与がインスリン薬物動態に及ぼす効果
Humalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20を投与した後の各時間間隔について、インスリン濃度をRIAによって測定した。これをそれぞれ表5および表6に示す。さまざまな時間間隔についてのAUC(0分からx分まで;例えばAUC0-3分、AUC0-6分、AUC0-9分など)や、[AUC0-x(Humulin(登録商標)Rインスリン+rHuPH20)]/[AUC0-x(Humulin(登録商標)Rインスリンのみ]×100として算出される相対的バイオアベイラビリティ(Frel)も記載する。ある時間間隔での幾何平均インスリンレベルの変化を算出することによって決定される増分勾配(incremental slope)や、3つの増分勾配値の平滑化平均(smoothed average)である平均勾配変化も記載する。
表5:Humalog(登録商標)インスリンリスプロ投与後の血中インスリン濃度
Figure 0005809330
表6:Humalog(登録商標)インスリンリスプロとrHuPH20の共投与後の血中インスリン濃度
Figure 0005809330
Humalog(登録商標)インスリンリスプロおよびrHuPH20と共投与されたHumalog(登録商標)インスリンリスプロに関するCmax(pmol/L)、tmax(分)、およびAUC0-360(分*pmol/L)を表7に記載する。さまざまな時間間隔について、AUCを表8に記載する。これらの結果は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20の投薬を受けた被験者が、初期の時間間隔において、Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみを投薬された被験者よりも、多量のHumalog(登録商標)リスプロインスリンに曝露したことを示している。表9に、各投薬順序についての具体的PKパラメータ(例えば1回目(1)または2回目(2)に投与されたHumalogインスリンリスプロ/rHuPH20および両方(全)についてのPK)の要約と、投薬順序が観察される薬物動態に対して影響を持たなかったことを証明する統計的要約とを記載する。統計解析により、異なる処置群(すなわちHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみ対Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20)を使って観察されたPKの差異、および異なる投薬順序(すなわち、最初にHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみ、次にHumalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20、対、最初にHumalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20、次にHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみ)を使って観察されたPKの差異のp値を決定した。表には、[AUC0-360(Humalog(登録商標)インスリン/rHuPH20)]/[AUC0-360(Humalog(登録商標)インスリンのみ]×100として算出される相対的バイオアベイラビリティ(Frel)も記載する。
インスリンPKについて、中央tmaxは、rHuPH20の共投与により、12人の被験者全員に見られた効果として、105分から48分へと54%減少した(p=0.0006)。平均Cmaxは、被験者にHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみを投与した場合の697pmol/Lから、rHuPH20の共投与によって1,300pmol/L(p=0.0003)へと、87%増加した。AUC0-360分が134,867分*pmol/Lから149,523分*pmol/Lへと11%増加したのに対して、それより早い時間間隔では、相違がもっと顕著であった(すなわちAUC0-30分およびAUC0-60分はそれぞれ155%および140%増加した)。tmaxの被験者間変動(SD/平均)は、被験者にHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみを投与した場合の34%から、Humalog(登録商標)インスリンリスプロをrHuPH20と組み合わせて被験者に投与した場合の17%へと改善した。この実施例は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロが、ヒアルロナン分解酵素(rHuPH20)との共投与により、本明細書にいう超速効型インスリンになったことを証明している。
表7:rHuPH20の共投与を伴う、およびrHuPH20の共投与を伴わない、皮下Humalog(登録商標)インスリンリスプロ注射後のインスリンの薬物動態
Figure 0005809330
表8:単独の、またはrHuPH20と共投与された、Humalog(登録商標)インスリンリスプロについての、幾何平均インスリン濃度に関する時間間隔AUC
Figure 0005809330
差異百分率:(AUC0−x[rHuPPH20]−AUC0−x[rHuPH20なし])/(AUC0−x[rHuPH20なし])
表9:Humalog(登録商標)インスリンリスプロの投薬順序が観察される薬物動態に及ぼす効果
Figure 0005809330
2.rHuPH20とHumulin(登録商標)Rインスリンの共投与がインスリン薬物動態に及ぼす効果
第2段階では、患者に、まずHumulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20を投薬し、次にHumulin(登録商標)Rインスリンのみを投薬するか、まずHumulin(登録商標)Rインスリンのみを投薬し、次に通常は7日後にHumulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20を投薬した。Humulin(登録商標)Rインスリンの投与後またはrHuPH20と共投与されたHumulin(登録商標)Rインスリンの投与後の各時点におけるインスリンの濃度をそれぞれ表10および表11に記載する。さまざまな時間間隔についてのAUC(すなわち0からx分までのAUC(AUC(0-x));例えばAUC0-3分、AUC0-6分、AUC0-9分など)(表10、11、および12)と、[AUC0-x(Humulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20)]/[AUC0-x (Humulin(登録商標)Rインスリンのみ]×100として算出される相対的バイオアベイラビリティ(Frel)も記載する。ある時間間隔での幾何平均インスリンレベルの変化を算出することによって決定される増分勾配や、5つの増分勾配値の平滑化平均である平均勾配変化も記載する。
表10:Humulin(登録商標)Rインスリン投与後の血中インスリン濃度
Figure 0005809330
表11:Humulin(登録商標)RインスリンとrHuPH20の共投与後の血中インスリン濃度
Figure 0005809330
表12:単独の、またはrHuPH20と共投与された、Humulin(登録商標)Rインスリンについての、幾何平均インスリン濃度に関する時間間隔AUC
Figure 0005809330
差異百分率:(AUC0−x[rHuPH20]−AUC0−x[rHuPH20なし])/(AUC0−x[rHuPH20なし]
3.rHuPH20の共投与を伴う、およびrHuPH20の共投与を伴わない、Humalog(登録商標)インスリンおよびHumulin(登録商標)Rインスリンの比較
rHuPH20の共投与を伴う、およびrHuPH20の共投与を伴わない、Humalog(登録商標)インスリンおよびHumulin(登録商標)Rインスリンの薬物動態を比較した。図1に、各時間間隔における(各組成物ごとの全ての被験者についての)幾何平均インスリン濃度のプロットを示す。Humalog(登録商標)とHumulin(登録商標)Rはどちらも、濃度-時間曲線が上向き(より高いインスリン濃度)および左向き(より速い時間)にシフトした。例えば、幾何平均最大インスリン濃度(Cmax)は、rHuPH20の存在下では、対照と比較して、Humalog(登録商標)の場合はほとんど2倍になり(697pmol/Lから1200pmol/Lへ)、Humulin(登録商標)Rの場合は2倍以上になった(433pmol/Lから967pmol/Lへ)。同様に、この最大濃度に到達するまでの時間(tmax)の中央値も、rHuPH20の存在下では、対照と比較して、Humalog(登録商標)(105分から48分へ)でも、Humulin(登録商標)Rでも(165分から60分へ)、減少した。このより早い時点におけるより高濃度へのシフトは、増加した吸収速度および不変のクリアランス率と合致している。このように、rHuPH20の共投与は、速効型インスリン類似体Humalog(登録商標)インスリンリスプロの吸収速度も、速効型レギュラーインスリンHumulin(登録商標)Rインスリンの吸収速度も、共に増加させた。
自然の食事時インスリン応答には、摂食後最初の10〜15分に起こる即時ボーラス(immediate bolus)が含まれる。この迅速なインスリンレベルの上昇は、体循環への肝グルコース放出のシャットダウンをもたらす重要な生理学的シグナルを与える。したがって15分間でのインスリン濃度の上昇は特に重要なパラメータである。上記のデータは、Humalog(登録商標)を投与した15分後の幾何平均インスリンリスプロ濃度が、rHuPH20なしではその投与前レベルから70%増加するが(65pmol/Lから112pmol/Lへ)、rHuPH20と共投与すると、濃度が4倍以上になる(64pmol/Lから264pmol/Lへ)ことを証明している。さらに劇的なことに、幾何平均インスリン濃度は、rHuPH20なしで投与されたHumulin(登録商標)Rでは、わずかに増加するに過ぎないが(62pmol/Lから74pmol/Lへ)が、rHuPH20と共投与すると、ここでも4倍以上になる(53pmol/Lから251pmol/Lへ)。このように、rHuPH20の共投与は、健常個体における初期の生理学的食事時インスリン応答をより良く再現するインスリン濃度の迅速な上昇を与える。
自然の食事時応答は約2時間続き、食事時間糖質に対する血糖管理を与える。したがって、最初の約2時間での累積全身インスリン曝露は、もう一つの特に重要なパラメータである。本明細書に記載するデータによれば、最初の2時間での幾何平均インスリン曲線下の累積面積(AUC0-120)は、rHuPH20の存在下では、対照と比較して、Humalog(登録商標)の場合も(50,000分*pmol/Lから87,000分*pmol/Lへ)、Humulin(登録商標)Rの場合も(30,000分*pmol/Lから77,000分*pmol/Lへ)増加した。同様に、自然の食事時応答は、食事後約4時間までに事実上完了し、食後時間が経ってから(a lat postprandial)のインスリン曝露は低血糖エクスカーションに繋がりうる。4時間後から6時間後の最後の観察時点までの対応する曝露(AUC240-360)は、rHuPH20の存在下では、対照と比較して、Humalog(登録商標)でも(31,000分*pmol/Lから20,000分*pmol/Lへ)、Humulin(登録商標)Rでも(35,000分*pmol/Lから20,000分*pmol/Lへ)減少した。このように、rHuPH20の共投与は、望ましいインスリン曝露を、rHuPH20との共投与では対照と比較して、それぞれ175%および256%増加させ、望ましくないインスリン曝露を67%および58%減少させた。
インスリン投与の薬物動態には患者間変動があるため、医師は、患者への過剰投与と低血糖事象のリスクを回避するために、治療量未満のレベルでインスリン治療を患者に導入し、用量を徐々に増加させていく必要がある。薬物動態の変動は、主要パラメータの変動係数(CV;通例、百分率として表される標準偏差/平均と定義される)として表すことができる。被験者間で比較した最大濃度(Cmax)のCVは、rHuPH20の存在下では、対照と比較して、Humalog(登録商標)でも(48%から35%へ)、Humulin(登録商標)Rでも(34%から26%へ)減少した。最大濃度到達時間(tmax)のCVは、rHuPH20の存在下では、対照と比較して、Humalog(登録商標)でも(48%から35%へ)、Humulin(登録商標)Rでも(32%から28%へ)減少した。上記のデータは、投与後最初の15分間でのインスリン濃度の変化のCVが、rHuPH20の存在下では、対照と比較して、Humalog(登録商標)でも(147%から141%へ)、Humulin(登録商標)Rでも(165%から40%へ)減少することを証明している。最初の2時間での累積インスリン曝露(AUC0-120)のCVは、rHuPH20の存在下では、対照と比較して、Humalog(登録商標)でも(41%から22%へ)、Humulin(登録商標)Rでも(34%から26%へ)減少した。このように、インスリン薬物動態の患者間変動は、rHuPH20と共投与されたインスリンでは、対照と比較して、減少した。
Humulin(登録商標)Rインスリンの薬物動態はrHuPH20の共投与によって改善され、それにより、薬物動態はrHuPH20と共投与されたHumalog(登録商標)インスリンリスプロの薬物動態プロファイルと実質的に類似することになった。特に、最初の20分間でのインスリン吸収速度およびインスリンの血清中レベルは、rHuPH20と共投与すると、これら異なる2タイプのインスリン間で同等になった(表9と表13を参照のこと)。これに対し、rHuPH20なしで投与した場合、Humulin(登録商標)Rインスリンは、初期の時間間隔ではHumalog(登録商標)インスリンリスプロと比較してはるかに遅い吸収速度および低い吸収レベルを示す。このように、ヒアルロナン分解酵素であるrHuPH20と速効型インスリンとの組合せは、速効型インスリンのタイプには実質的に依存することなく、速効型インスリン単独よりも迅速に、かつ強く、しかも初期(すなわち投与後20分未満)に作用する組成物をもたらす。
D.rHuPH20の共投与がグルコース注入速度(GIR)薬力学に及ぼす効果
rHuPH20との共投与がグルコース注入速度(GIR)に及ぼす薬力学的効果を評価するために、さまざまな薬力学的(または糖力学的(glucodynamic)(GD))パラメータを、rHuPH20と共に、およびrHuPH20なしで、Humulin(登録商標)Rを投薬された被験者について決定した。これらには、最大効果到達時間(tGIRmax)(分);後期最大半量効果到達時間(tGIRlate 50%)(分);初期最大半量効果到達時間(tGIRearly 50%)(分);最大代謝効果(GIRmax)(mL/時間);AUC-GIR0-60分;AUC-GIR0-120分;AUC-GIR0-180分;AUC-GIR0-240分;AUC-GIR0-300分;およびAUC-GIR0-360分を含めた。GIRは、1時間あたりに注入されるデキストロースのミリリットル数(mL/時)として表したが、これは、次の式を使ってmg/kg/分に変換することができる:
GIR(mg/kg/分)=[IV注入速度(mL/時間)×デキストロース濃度(g/dL)×0.0167/被験者の体重(kg)
(式中、デキストロース濃度=190.6mg/mL)。
1.rHuPH20とHumalog(登録商標)インスリンの共投与がGIR薬力学に及ぼす効果
Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみまたはHumalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20の投与に続く各時間間隔について、グルコース注入速度を算出した。それを、それぞれ表13および表14に記載する。AUC(累積グルコース投与に比例する)および相対的AUC(Frel)も算出した。ある時間間隔でのGIRの変化を算出することによって決定される増分勾配も記載する。
表13.Humalog(登録商標)インスリンリスプロ投与後のグルコース注入速度
Figure 0005809330
表14.Humalog(登録商標)インスリンリスプロとrHuPH20の共投与後のグルコース注入速度
Figure 0005809330
これらの被験者について、GIRmax、tmax、およびさまざまな時間間隔でのAUC-GIRも決定し、それらを表15および表16に記載する。表17に、各投薬順序についてのPDパラメータ(例えば1回目(1)または2回目(2)に投与されたHumalogインスリンリスプロ/rHuPH20および両方(全)についてのGIR PD)の要約と、投薬順序が観察される薬力学に影響を及ぼしたかどうかを決定するための統計解析を記載する。統計解析により、異なる処置群(すなわちHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみ対Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20)を使って観察されたPDの差異のp値、および異なる投薬順序(すなわち、最初にHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみ、次にHumalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20、対、最初にHumalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20、次にHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみ)を使って観察されたPKの差異のp値を決定した。
表15:rHuPH20の共投与を伴う、およびrHuPH20の共投与を伴わない、皮下Humalog(登録商標)インスリンリスプロ注射後のインスリンの薬力学
Figure 0005809330
Figure 0005809330
NC=未算出
表16:rHuPH20の共投与を伴う、およびrHuPH20の共投与を伴わない、皮下Humalog(登録商標)インスリンリスプロ注射後のインスリンの薬力学−区間(Interval)GIR-AUC
Figure 0005809330
Figure 0005809330
表17:Humalog(登録商標)インスリンリスプロの投薬順序が観察される薬力学に及ぼす効果
Figure 0005809330
グルコース注入速度PDデータは、PKの知見を裏付けるものであり、患者にHumalog(登録商標)インスリンリスプロをrHuPH20と組み合わせて投与した場合(中央値135分)は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみの場合(中央値210分)と比較して、36%短縮された最大効果到達時間(tGIRmax)を示し、被験者にHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみを投与した場合の平均181mL/時間から被験者にHumalog(登録商標)インスリンリスプロとrHuPH20を投与した場合の205mL/時間へと13%増加した(p=0.35)最大代謝効果(GIRmax)を示した。初期最大半量効果到達時間(tGIREarly50%)は、患者にHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみを投与した場合の68分という中央値から、患者にHumalog(登録商標)インスリンリスプロをrHuPH20と組み合わせて投与した場合の42分まで、38%減少した(p=0.0006)。
2.rHuPH20とHumulin(登録商標)Rインスリンの共投与がGIR薬力学に及ぼす効果
第2段階では、患者に、まずHumulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20を投薬し、次にHumulin(登録商標)Rインスリンのみを投薬するか、まずHumulin(登録商標)Rインスリンのみを投薬し、次に通常は7日後にHumulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20を投薬した。Humulin(登録商標)RインスリンのみまたはHumulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20の投与後の各時間間隔でのグルコース注入速度を算出し、それをそれぞれ表18および表19に記載する。さまざまな時間にわたって注入されたグルコースのAUCおよび相対量(Grel)も算出した。ある時間間隔でのGIRの変化を算出することによって決定される増分勾配も記載する。
表18:Humulin(登録商標)Rインスリン投与後のグルコース注入速度
Figure 0005809330
表19:Humulin(登録商標)RインスリンとrHuPH20を投与した後のグルコース注入速度
Figure 0005809330
3.rHuPH20の共投与を伴う、およびrHuPH20の共投与を伴わない、Humalog(登録商標)インスリンリスプロおよびHumulin(登録商標)Rインスリンの薬力学の比較
rHuPH20の共投与を伴う、およびrHuPH20の共投与を伴わない、Humalog(登録商標)インスリンリスプロおよびHumulin(登録商標)Rインスリンの薬力学を比較した。rHuPH20の共投与が各タイプのインスリンの薬力学に及ぼす相対的効果を評価した。図2に各時間間隔におけるグルコース注入速度のプロットを示す。rHuPH20とHumalog(登録商標)またはHumulin(登録商標)Rの共投与は、時間の関数としてのグルコース注入速度を、時間の関数としてのインスリン濃度のプロットにおけるシフトと同様に、インスリンをrHuPH20なしで投与した場合と比較して、上向きかつ左向きに著しくシフトさせることが観察された。最大注入速度は、対照と比較して、rHuPH20と共投与されたHumalog(登録商標)では平均で201mL/時間から221mL/時間に、またrHuPH20と共投与されたHumulin(登録商標)Rでは187mL/時間から203mL/時間に、わずかに増加した。同様に、最大GIRの時間は、対照と比較して、rHuPH20と共投与されたHumalog(登録商標)では193分から136分に、また、rHuPH20と共投与されたHumulin(登録商標)Rでは253分から206分に減少した。初期最大半量GIR到達時間(tGIRearly 50%)によって測定される作用の発現時間は、対照と比較して、rHuPH20と共投与されたHumalog(登録商標)では72分から43分に、また、rHuPH20と共投与されたHumulin(登録商標)Rでは113分から83分に減少した。
食事時間糖質は、糖質のタイプに依存して食事後の最初の数時間(例えば2〜4時間)で、大半が消化され体循環中に導入されるので、最初の2時間または3時間(例えば0分から120分まで)での累積GIRは、特に重要である。最初の2時間で送達された190.6mg/mLグルコース溶液の累積体積は、対照と比較して、rHuPH20と共投与されたHumalog(登録商標)では163mLから248mLに、また、rHuPH20と共投与されたHumulin(登録商標)Rでは112mLから226mLに増加した。食事時間糖質消化が完了した後の過剰なグルコース代謝は有害な低血糖インシデントにつながりうる。4時間から6時間までの間に送達されるグルコース溶液の累積体積は、対照と比較して、rHuPH20と共投与されたHumalog(登録商標)では289mLから212mLに、また、rHuPH20と共投与されたHumulin(登録商標)Rでは337mLから252mLに減少した。このように、速効型インスリン類似体調製物または速効型レギュラーインスリン調製物のどちらか一方をrHuPH20と共に共投与すると、初期のグルコース降下能力(gluocse lowering capacity)が増加して食後消化が容易になると共に、グルコース降下活性が低血糖エクスカーションにつながりうる時には、その活性が低下する。
GIRは、身体が使用したグルコースの量を反映しており(すなわち、身体がより多くのグルコースを使用している場合、血中グルコースレベルを90〜110mg/dLに維持するには、より多くの外因性グルコースを注入する必要がある)、したがって投与されたインスリンの薬理学的活性(すなわちインスリン活性は、内因性グルコース産出量の低下および/または血中グルコース利用の増加をもたらして、血中グルコースの総合的低下を引き起こす)を反映している。したがってこれらのデータは、各インスリンの生物学的作用が、ヒアルロナン分解酵素であるrHuPH20と共投与した場合には、そのインスリンをrHuPH20なしで投与した場合と比較して、速度(グルコース代謝の発現時間)と程度の両面で増加することを、証明している。
この試験において、rHuPH20の非存在下で投与された場合、Humulin(登録商標)Rインスリンの薬学的性質は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロと比較して、かなり遅延したものであるのに対して、rHuPH20と共投与されたHumulin(登録商標)Rインスリンの薬力学的性質は改善され、その薬力学は、HuPH20と共投与されたHumalog(登録商標)の薬力学的プロファイルと実質的に類似することになった。最初の60分間に血中グルコースレベルを90〜110mg/dLに維持するために必要とされるGIRは、さらに言えば、特に注射後最初の60〜90分におけるインスリンの薬理学的活性は、rHuPH20と共投与した場合には、これらの異なる2タイプのインスリンの間で、本質的に同じだった。これとは対照的に、速効型レギュラーインスリンであるHumulin(登録商標)Rインスリンは、rHuPH20なしで投与された場合、rHuPH20なしで投与されたHumalog(登録商標)インスリンリスプロインスリンよりも遅いインスリン作用速度を示すGIRプロファイルを持つ。このように、ヒアルロナン分解酵素であるrHuPH20と速効型インスリンとの組合せは、例えばこの試験で述べたような条件下では、速効型インスリンのタイプには実質的に依存することなく、速効型インスリンのみの場合よりも速く、かつ強く、しかも早期に(すなわち投与後60分未満で)作用する超速効型インスリン組成物をもたらす。
[実施例1b]
1型真性糖尿病を持つ患者における流動食後の、rHuPH20の共投与を伴う、およびrHuPH20の共投与を伴わない、皮下注射されたHumalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)Rインスリンの薬物動態および食後血糖応答
1型真性糖尿病を持つ患者における流動食後の、rHuPH20の共投与を伴う、およびrHuPH20の共投与を伴わない、皮下注射されたHumalog(登録商標)インスリンリスプロおよびHumulin(登録商標)Rインスリンの薬物動態(PK)および食後血糖応答(すなわち薬力学(PD))を評価する試験を行った。この試験は、1型糖尿病患者における一連の標準流動食負荷と、それに伴うPKパラメータおよびPDパラメータのための2時間の投薬前血液試料採取および8時間の投薬後血液試料採取とからなる単盲(single-blind)(患者に対してのみ盲検化)単一施設交差流動食治験(single-center, crossover, liquid meal trial)とした。
各被験者は、rHuPH20と共注射(co-inject)した場合に、最適な血糖管理(患者の食後血中グルコースを60mg/dL〜160mg/dLの範囲内に維持することと定義される)で流動食をカバーするのに適した、個別インスリン用量を決定するために、Humalog(登録商標)インスリンリスプロおよびrHuPH20に関して、一連の用量設定来院(dose-finding visit)(来院2A〜C;最大3回の注射)を行った。最適化された用量が決まったら、それと同じ用量を、rHuPH20を伴わないHumalog(登録商標)インスリンリスプロによってカバーされる試験食に使用した(来院3)。次に被験者は、最適な血糖管理に適したrHuPH20を伴う個別のレギュラーインスリン用量を決定するために、レギュラーヒトインスリン(Humulin(登録商標)Rインスリン)を使って同じ一連の調査(来院4A〜B;最大2回の注射)を受けた。最適化された用量と同じ用量を、rHuPH20を伴わないHumulin(登録商標)Rインスリンによってカバーされる試験食に使用した(来院5)。
この試験により、rHuPH20と共に、またはrHuPH20なしで、食事時インスリンを投与した場合の、PKプロファイルおよび食後グルコースエクスカーションの比較が可能になった。観察されたPKの相違が臨床上重要であることを証明するために食事後低血糖も評価した。主目的は、流動食の前に、組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)と共に、および組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)なしで、皮下(SC)注射されたHumalog(登録商標)インスリンリスプロおよびHumulin(登録商標)RインスリンのAUC0-60という、主要薬物動態(PK)評価項目によって測定される初期インスリン曝露を比較することだった。測定される他のインスリンPKパラメータには、Cmax;tmax;初期t50%(初期最大半量血清中濃度到達時間)、後期t50%(後期最大半量血清中濃度到達時間)、AUClast(時刻0から最後の観察時点(プロトコールによれば投薬の480分後)までの濃度-時間曲線下面積);AUC(0-inf)(時刻0から無限大までの総AUC);区間AUC(interval AUC)(0〜15、0〜30、0〜45、0〜60、0〜90、0〜120、0〜180、0〜240、0〜360、0〜480、15〜480、30〜480、45〜480、60〜480、90〜480、120〜480、180〜480および240〜480分)、λz(終末相排出速度定数(terminal elimination rate constant);対数線形血清中濃度-時間曲線の終末相点(terminal point)の線形回帰によって決定されるもの);t1/2(消失半減期、0.693/λzと定義される);CL/F(バイオアベイラビリティの関数としてのクリアランス;用量/AUC(0-inf)として算出されるもの);MRT(last)(時刻0から最後の観察時点(プロトコールによれば投薬の480分後)までの平均滞留時間);MRT(0-inf)(時刻0から無限大までの平均滞留時間)、およびVz/F(バイオアベイラビリティの関数としての分布容積)を含めた。
薬力学(PD)評価項目は、AUCBG 0-4h(ここでBGは血中グルコースを表す)を含む食後血糖応答パラメータ、ならびに指定した時間間隔でのAUCBG、BGmax、tBGmax、初期tBG 50%、後期tag 50%、指定した時間間隔における低血糖エピソード(HE)、低血糖を処置するための20%グルコース溶液の注入(量および継続時間)、緊急蘇生のための50%グルコース溶液の使用(すなわち重篤な症状および/または血中グルコース<36mg/dLの存在)および36mg/dL超かつ70mg/dL未満の血中グルコースAUCによって定量化される低血糖エクスカーションを含む他のPD評価項目とした。有害事象、血液学、生化学、尿検査、理学的検査、バイタルサイン、ECG、血中グルコース、注射部位における局所認容性、ならびにインスリン薬剤およびrHuPH20に対する抗体形成などといった安全性パラメータも評価した。
A.患者選抜
≧12ヶ月にわたってインスリンで処置された1型真性糖尿病を持つ男性患者および女性患者を、この試験への組み入れに関して適格とした。患者は18歳〜65歳であることを要件とした。妊娠の可能性がある女性には、試験の継続期間中は、標準的かつ効果的な産児制限手段の使用を要求した。他の組み入れ基準には次に挙げる基準を含めた:BMI 18.0〜29.0kg/m、組み入れ;施設内検査結果(local laboratory result)に基づいてHbA1c(グリコシル化ヘモグロビンA1c)≦10%;空腹時Cペプチド<0.6ng/mL;インスリンによる現在の処置<1.2U/kg/日。患者は、病歴および理学的検査に基づいて全身の健康状態が良好であり、このプロトコールにおいて要求される試験薬注射および評価の完了を妨げるかもしれない医学的状態にないことも要件とした。
さまざまな試験除外基準には、次に挙げるものを含めた:この治験で使用されるいずれかの試験薬のいずれかの構成要素に対する既知のアレルギーまたはアレルギーの疑い;過去にこの治験に登録したことがあること;増殖性網膜症または黄斑症、および/または重度のニューロパシー、特に自律神経ニューロパシーを持つ患者;胃腸、心血管(不整脈の病歴またはECGでの伝導遅延を含む)、肝、神経、腎、尿生殖器、もしくは血液系の臨床上重大な活動性疾患、または管理されていない高血圧(背臥位で5分後に拡張期血圧≧100mmHgおよび/または収縮期血圧≧160mmHg);治験の結果を混乱させるかもしれないまたは患者への試験薬の投与に余計なリスクを生じさせるかもしれない何らかの疾病または疾患の病歴;ルーチン検査データ(routine laboratory data)における臨床上重大な所見;スクリーニング(screening)時にヘモグロビンが正常値の下限未満である貧血は、特に除外理由となる;治験の解釈を妨げる可能性がある薬物の使用、またはインスリン作用、グルコース利用、または低血糖からの回復への臨床上重大な干渉を引き起こすことが知られている薬物の使用;治験責任医師による判断で再発性重度低血糖または無自覚性低血糖;現時点でアルコールまたは乱用物質への嗜癖;試験の来院2A(下記B項参照)以前、9週間以内に献血(>500mL);妊娠中、授乳中、妊娠の意志あり、または十分な避妊手段を使用していない(十分な避妊手段は、不妊手術、子宮内避妊器具[IUD]、経口避妊薬もしくは注射用避妊薬、または障壁法からなる);精神的無能力、不本意、または十分な理解もしくは協力を妨げる言語障壁;症候性胃不全麻痺(symptomatic gastroparesis);この試験における来院2A(下記B項参照)の4週間以内に何らかの治験薬を受容したこと;治験参加またはデータの評価を妨害するかもしれない何らかの条件(内在的または外在的);現時点でインスリンポンプ治療を使用していて、この治験の継続期間中、短時間作用型(short-acting)インスリンとLantusとの併用に変更することを望んでいない。
21人の評価可能な患者が治験を完了した:男性14人;女性7人;年齢=41.6±10.6歳;BMI=24.4±286kg/m2)。評価可能な患者は、来院3および来院5を完了し、評価項目解析のために十分な血液試料採取および安全性評価を受けた患者とした。プロトコールが指定する試験薬注射を完了しなかった患者および/または来院5まで十分な血液試料採取および安全性評価が行われなかった患者はいずれも、別の患者の登録によって置き換えた。
B.試験方法
1.来院手続き
各患者は、治験への参加に関する適格性を決定するために、スクリーニング来院(screening visit)(来院1)に参加した。登録されたら、各患者は、少なくとも1回かつ3回までの用量設定来院2A〜C(Humalog(登録商標)インスリンリスプロ+rHuPH20)、1回の投薬来院(dosing visit)3(Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみ)、少なくとも1回かつ2回までの用量設定来院4A〜B(Humulin(登録商標)Rインスリン+rHuPH20)、1回の投薬来院5(Humulin(登録商標)Rインスリンのみ)、および経過観察(follow-up)来院(来院6)を行った。
インスリンポンプ、NPH、または他の任意の持効型インスリンを常用している患者で、この試験に参加した者は、この試験の継続期間中は、Lantusに転換した。この転換は、被験者がスクリーニング評価に合格した後、最初の投薬来院の少なくとも36時間前には行われた。
各用量設定来院および各投薬来院は1日で完了した。早朝のチェックインに続いて、患者を観察し、必要に応じて静脈内グルコースおよび/またはインスリンを使って約2時間安定化することにより、血中グルコースを100mg/dLの標的値にした。投薬の直前の30分間は、インスリン注入もグルコース注入も行わないようにした。次に、試験物(test article)(すなわちHumalog(登録商標)インスリンリスプロ、Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20、Humulin(登録商標)インスリンまたはHumulin(登録商標)インスリン/rHuPH2)の投薬を行った後、午前8:30頃に流動食を消費した。
全ての投薬来院時に、PK評価およびPD評価を午後4:30頃まで8時間にわたって行い、その時点で、患者には食事を摂らせ、安全と判断されたら解放した。
2.用量設定来院手続きの準備
血清中インスリンの分析およびYSI STAT2300グルコースアナライザーを使った血中グルコースの分析を行うために、18ゲージカテーテルを同じ腕の肘静脈に挿入した。0.15mmol/L食塩水で洗い流すことにより、カテーテル内およびライン内での凝血を防止した。投薬前期間中、適宜、20%グルコース溶液、食塩水、およびインスリンを注入するために、もう一つの18ゲージPTFEカテーテルを、反対側の前腕の静脈に入れた。投薬の60分前に、YSI STAT2300グルコースアナライザーを使って、投薬に対して次に挙げる時点で、血中グルコース濃度を決定した:-60、-30、-20および-10分。-30、-20および-10分での血中グルコース読み値の平均を使って、各用量設定来院および投薬来院ごとに、個々の患者の空腹時血中グルコースレベルを決定した。初めの空腹時血中グルコース値間に大きすぎると思われる差異がある患者は、来院を再予定するか、試験を中止した。
3.投薬前期間
2時間のならし(run-in)期間中に、必要に応じて血中グルコースをモニターして、血中グルコースを標的範囲内に安定させた。この2時間のならし期間を使って、適宜、精密な注入/シリンジポンプを利用したグルコースおよび/またはインスリンのIV投与により、血中グルコースレベルを調節した。投薬直前の30分間はインスリン注入もグルコース注入も行わなかった。薬物投与時に、患者の血中グルコースレベルは80〜140mg/dLの範囲にあった(可能な限り100〜120mg/dLの範囲に近い値を目指した)。
4.投薬および標準流動食の摂取
2時間のならし期間後に、シリンジを使った皮下注射により、腹壁のつまみ上げた皮膚のひだ中に、試験薬注射を投与した(時刻0)。試験物は次のように調製した。Humulin(登録商標)Rインスリンのみの用量は、正しい用量(来院4で決定したもの)をHumulin(登録商標)Rインスリンのバイアル(100U/mL;Eli Lilly)から0.3cc容量のインスリンシリンジを使って吸引することによって調製した。Humulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20は、まず最初にHumulin(登録商標)Rインスリンのバイアル(500U/mL;Eli Lilly)から0.3cc容量のインスリンシリンジを使って0.3cc(150単位)を吸引し、それを1mLのrHuPH20(20μg/mL;3000U/mL)が入っているバイアルに移すことによって調製した。静かに回旋することによって溶液を混合した。
Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみの用量は、正しい用量(来院2で決定したもの)をHumalog(登録商標)インスリンリスプロのバイアル(100U/mL;Eli Lilly)から0.3cc容量のインスリンシリンジを使って吸引することによって調製した。Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20は、まず最初に、rHuPH20のバイアル(1mg/mL;約1200,000U/mL)を室温で1〜2時間融解することによって調製した。滅菌した0.3cc容量のインスリンシリンジを使って、0.27ccの空気をシリンジ中に吸い込み、rHuPH20バイアルのヘッドスペースに排出してから、0.27cc(0.27mg;約32400U)のrHuPH20をシリンジ中に吸い込んだ。次にこれを、泡立たないようにゆっくりと、Hylenexのバイアルに移し、静かに回旋した。滅菌3.3ccインスリンシリンジを使って、1.1mLの空気を吸い込み、Hylenex(余分な0.27mgのrHuPH20が入っているもの;約32400U)バイアルのヘッドスペース中に排出してから、1.1mLの溶液を吸引し、Humalog(登録商標)インスリンリスプロのバイアル(100U/mL;Eli Lilly)に投入した。静かに回旋することによって溶液を混合した。
平均用量5.7(±3.0)のHumalog(登録商標)インスリンリスプロを、rHuPH20(0.2μg/U-インスリン)と共に、またはrHuPH20なしで、投与した。平均用量6.2(±3.5)のHumulin(登録商標)Rインスリンを、rHuPH20(0.2μg/U-インスリン)と共に、またはrHuPH20なしで、投与した。rHuPH20と共投与するインスリンの注射部位は、次のとおりとした:来院2Aでの注射は左中腹部(left mid-abdominal region)に行い、次の来院(来院2B、来院2Bの必要がなかった場合は来院3)時には右中腹部を使用し、次の来院時には左中腹部を使用し、これに応じて以後の注射部位は交互にした。注射針は皮膚のひだに45度の角度で入れて、10秒間保持した。
試験薬の投薬後10分以内に、患者は、60gの糖質を与える流動食(Ensure)を消費した。流動食は10分以内に完全に摂取された。その後8時間にわたり、指定した時点で、血中グルコースを測定した。安全のために、必要に応じて、追加の血中グルコース測定を行った。
5.試料採取および評価
投薬前期間中および投薬後は、-60、-30、-20、-10、0、3、6、9、12、15、20、25、30、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、255、270、285、300、315、330、345、360、375、390、415、420、430、445、460、475および480分という指定の時点における、YSI STAT2300グルコースアナライザーを使った頻繁な血中グルコース測定によって、血中グルコース濃度をモニターした。血清インスリンを決定するための連続血液試料を、-30、-30、-10、0、3、6、9、12、15、20、30、45、60、90、120、150、180、210、240、300、360、420および480分に採取した。
B.rHuPH20を伴う、およびrHuPH20を伴わない、Humulin(登録商標)RインスリンおよびHumalog(登録商標)インスリンリスプロの薬物動態
Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20とHumulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20の薬物動態は、rHuPH20がない場合のそれぞれと比較して、加速されてはいるが、全体的曝露量は同等であることがわかった。表19aに、12人の患者に関して、さまざまなPKパラメータの要約を示す。これは、全ての患者からデータを集める前に行った中間解析である。したがって、患者21人中の12人から得たデータしか、この解析には寄与していない。rHuPH20との共投与の効果を、[rHuPH20を伴うインスリンについての平均(幾何または算術)PK値]/[インスリンのみについての平均(幾何または算術)PK値]×100によって算出される%対照で表す。CmaxパラメータおよびAUCパラメータについては幾何平均および対数変換データについてのp値、一方、tmaxならびに初期および後期t50%については算術平均と無変換値に基づく。主要評価項目である最初の1時間での総インスリン曝露(AUC0-60)は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20では、Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみと比較して、135%増加し(p=0.0197)、Humulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20では、Humulin(登録商標)Rインスリンのみより、304%増加した(p=0.0005)。初期T50%は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロでは19.9分から12.6分に減少し(p=0.0002)、Humulin(登録商標)Rインスリンでは40.1分から14.8分に減少した(p=0.033)。tmaxは、Humalog(登録商標)インスリンリスプロでは43.8分から27.9分に減少し(p=0.002)、レギュラーでは96.7分から52.1分に減少した(p=0.086)。また、後期T50%は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロでは98.6分から68.6分に減少し(p=0.0001)、Humulin(登録商標)Rインスリンでは、219.2分から111.2分に減少した(p=0.008)。
表19a:流動食試験において、rHuPH20と共に、またはrHuPH20なしで、投与されたインスリンの薬物動態
Figure 0005809330
a処置の固定効果を含む混合モデルを使った分散分析(Anaylsis of variance using a mixed model with fixed effect for treatment)。AUCパラメータおよびCmaxパラメータについては対数変換値に対して行われ、tmaxパラメータおよびt50%パラメータについては無変換データに対して行われた、反復測定間の無構造の共分散行列(unstructured covariance matrix among repeated measurement)。値0は対数変換前に1に設定した。
表19bに、試験を完了した21人の患者全員について、平均および標準偏差を示す、さまざまなPKパラメータの要約を記載する。表19bにおけるPK解析は、ベースライン(ここではベースラインを時刻0における測定とした)を差し引いた個々のHumalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)Rインスリン濃度対時間データに対して、ノンコンパートメント法(AUC算出のための線形台形公式(linear trapezoidal rule))を使って行った。半減期、AUC INFobs、MRT、CL、およびVzの基礎となる排出速度定数λzの決定には、WinNonlinユーザー選択基準(WinNolin user selection criteria)を使用した。PKを算出する目的には、20pMを下回る測定値は全て、ゼロに設定した。
Humalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)Rインスリン注射薬へのrHuPH20の添加は、初期インスリン曝露を増加させた。平均用量標準化ベースライン差引(mean dose-normalized baseline subtracted)Cmaxは、Humalog(登録商標)インスリンリスプロへのrHuPH20の添加により、46.6pmol/Lから81.2pmol/Lに74%増加し、Humulin(登録商標)Rインスリンの場合は25.4pmol/Lから56.5pmol/Lに122%増加した。主要PK評価項目AUC0-60分については、rHuPH20との共投与が、酵素を伴わない対照投与と比較して、初期Humalog(登録商標)インスリンリスプロ曝露を1690分*pmol/L/IUから2950分*pmol/L/IUに75%増加させ、初期Humulin(登録商標)Rインスリン曝露を649分*pmol/L/IUから2010分*pmol/L/IUにに210%増加させた。rHuPH20と共投与した時のバイオアベイラビリティは、Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみの対照注射と比較して有意に変化せず、AUC0-infで98%、AUC0-lastで116%だった。相対的バイオアベイラビリティは、Humulin(登録商標)RインスリンとrHuPH20との共投与により、酵素を伴わない対照投与と比較して、AUC0-infで120%、AUC0-lastで174%だった(これらの算出には幾何平均用量標準化ベースライン差引データを使用した;データ未掲載)。インスリンおよびリスプロとrHuPH20との共投与は、どちらも、Tmaxならびに初期および後期T50%を、rHuPH20なしの対照注射と比較して加速した。
ピークインスリン濃度到達時間は、rHuPH20を伴うHumalog(登録商標)インスリンリスプロ注射では速く、算術平均tmaxは、rHuPH20なしのHumalog(登録商標)インスリンリスプロ注射での47.1分に対して、38.8分だった。Humulin(登録商標)RインスリンとrHuPH20の皮下注射は、rHuPH20なしの104分に対して、58.3分のtmaxをもたらした。
表19b:流動食試験において、rHuPH20と共に、またはrHuPH20なしで、投与されたインスリンの薬物動態
Figure 0005809330
Figure 0005809330
C.rHuPH20を伴う、およびrHuPH20を伴わない、レギュラーヒトインスリンおよびインスリンリスプロ後の、食事負荷に対する血糖応答の比較
Humalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)RインスリンをrHuPH20と共に投与すると、食事負荷に対する血糖応答は、インスリンを単独で投与した場合と比較して改善された。表19cに12人の患者で測定された薬力学パラメータを記載する。Humalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)Rインスリンのどちらか一方とrHuPH20との共投与は、rHuPH20なしの対照注射と比較して、食後血中グルコースレベルの低下をもたらした。4時間の食後期間中に観察される最大血中グルコースは、Humalog(登録商標)インスリンリスプロをrHuPH20と共に投与した場合、Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみと比較して、186mg/dLから154mg/dLに減少し(p=0.0213)、Humulin(登録商標)RインスリンをrHuPH20と共に投与した場合、Humulin(登録商標)Rインスリンのみと比較して、212mg/dLから166mg/dLに減少した(p=0.0406)。食後2時間グルコース(2hr post prandial glucose、PPG)および140mg/dLを上回る総エクスカーション面積(total excursion area)も同様に減少した。70mg/dL未満の総エクスカーション面積はごくわずかで、全ての試験物において類似しており、rHuPH20の共投与によってHumalog(登録商標)インスリンリスプロでは面積が増加し、Humulin(登録商標)Rインスリンでは面積が減少する傾向が、わずかにあった。
表19c:流動食試験において、rHuPH20と共に、またはrHuPH20なしで、投与されたインスリンの薬力学
Figure 0005809330
a対応のある両側t検定
D.安全性
重篤な有害事象(AE)は報告されなかった。最もよく報告されたAEは、血中グルコース低下/低血糖(147件)だった。147件の血中グルコース低下/低血糖のうち21件は、rHuPH20との関連が疑われる(possibly)またはほぼ確実である(probably)とみなされた。17件は強度が中等度であると査定され、そのうちの4件は、rHuPH20との関連が疑われるとみなされた。残り126件は強度が軽度と査定された。他のAEは全て、この試験では5%未満の頻度で起こった。
症状には関係なく低血糖(血中グルコース値が>70mg/dLであることと定義)のエピソードは全て、この試験ではAEとして記録された。
E.要約
Humalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)Rインスリンのどちらか一方とrHuPH20との共投与は、rHuPH20なしの対照注射と比較して、バイオアベイラビリティに有意な変化を伴うことなく、より早いtmax、初期t50%および後期t50%パラメータを伴う、より早いインスリン曝露をもたらすと共に、より大きなピークインスリン濃度をもたらした。この早いインスリン曝露は、ピーク0〜4時間グルコースレベルの低下、食後2時間グルコースレベルの低下、およびAUC>140mg/dLによって測定される高血糖エクスカーションの減少を伴う食後高血糖の減少につながった。AUC<70mg/dLによって測定される低血糖エクスカーションはごくわずかで、全ての試験物において類似しており、rHuPH20の共投与によってHumalog(登録商標)インスリンリスプロでは面積が増加し、Humulin(登録商標)Rインスリンでは面積が減少する傾向が、わずかにあった。
[実施例1c]
健常ヒト被験者において、さまざまな用量の組換えrHuPH20と共に、またはrHuPH20なしで、皮下投与されたHumulin(登録商標)RインスリンまたはHumalog(登録商標)インスリンリスプロの薬物動態および薬力学
薬物動態、薬力学(または糖力学;GD)、安全性、認容性、およびrHuPH20:インスリンの最適比を決定するための単一施設第I相オープンラベル単盲(single center, phase I, open-label, single-blind)(被験者は各注射の含有量を知らされない)4段階試験の一部として、ある範囲のrHuPH20用量比を、レギュラーインスリン(Humulin(登録商標)Rインスリン)またはHumalog(登録商標)インスリンリスプロの用量と共に皮下(SC)投与し、指定した時点に集められた血清インスリン濃度に基づいてtmax、Cmax、AUC、および相対的バイオアベイラビリティを決定することによって、薬物動態(PK)およびrHuPH20:インスリンの最適比を評価した。
血液試料を採取してインスリンレベルおよびグルコースレベルを測定することにより、さまざまな用量のrHuPH20の共投与が皮下投与されたHumulin(登録商標)RインスリンまたはHumalog(登録商標)インスリンリスプロの薬物動態および薬力学(または糖力学(GD))に及ぼす効果を評価した。高インスリン正常血糖クランプ法(実施例1に記載したもの)を使って、血漿中グルコースレベルを90〜110mg/dLに維持した。インスリン濃度を評価して、次に挙げるインスリンPKパラメータを決定した:tmax、初期t50%、後期t50%、AUCおよびAUCtend(ここで、t=注射の30、60、90、120、180、240、360、および480分後)、AUCall、AUC0inf、Cmax、相対的バイオアベイラビリティ(rHuPH20をrHuPH20なしと比較したもの)、ならびに全てのPKパラメータの変動係数に基づく被験者間および被験者内変動。クランプ中に正常血糖を維持するためのグルコース注入速度(GIR)を測定し、それを使って、次に挙げるGDパラメータを決定した:tGIRmax、初期tGIR50%、後期tGIR50%、GIR AUCおよびGIR AUCtend(ここで、t=注射の30、60、90、120、180、240、360、および480分後)、GIR AUCall、およびcGIRmax、ならびに全てのGDパラメータの変動係数に基づく被験者間および被験者内変動。各SC注射の安全性および局所認容性も評価した。
A.さまざまな用量のrHuPH20を伴う、またはrHuPH20を伴わない、Humulin(登録商標)Rインスリンの投与
健常ボランティアに、30μLまたは120μLのHumulin(登録商標)Rインスリン(100U/mLに希釈したもの)を、最終濃度が0μg/mL、1.25μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、20μg/mLまたは80μg/mLのrHuPH20(それぞれ約0U/mL、150U/mL、600U/mL、1200U/mL、2400U/mLまたは9600U/mL)と共に投与した。したがって、ボランティアには、3UのHumulin(登録商標)Rインスリンを約0、4.5、18、36、72または288単位のrHuPH20と共に含有する30μLか、または12UのHumulin(登録商標)Rインスリンを約0、18、72、144、288または1152単位のrHuPH20と共に含有する120μLが投与された。表19dに、12Uのインスリンを投与された被験者について、測定された薬物動態パラメータを記載する。ヒアルロニダーゼ共投与に特有のPKパラメータ(より早いtmaxおよびt1/2max、より大きいCmaxおよび早い全身曝露、例えばAUC0-60分)は、インスリンを単独で投与した場合と比較して、試験した全てのrHuPH20濃度で同じように増加した。どのrHuPH20濃度でも、グルコース注入速度(GIR)プロファイルは、プラセボ(すなわち0μg/mL)とは異なり、初期速度の特徴的な増加と後期グルコース注入量の減少が見られた。試験した用量範囲では、全てのrHuPH20濃度が同様に有効であり、非有効用量は観察されなかった。
表19d:さまざまな用量のrHuPH20を伴う12UのHumulin(登録商標)Rインスリンに関するインスリンPKパラメータ
Figure 0005809330
Figure 0005809330
B.さまざまな用量のrHuPH20を伴う、またはrHuPH20を伴わない、Humalog(登録商標)インスリンリスプロの投与
健常ボランティアに、30μLまたは120μLのHumalog(登録商標)インスリンリスプロ(50U/mLに希釈したもの)を、最終濃度が0μg/mL、0.078μg/mL、0.3μg/mL、1.2μg/mL、5μg/mLまたは20μg/mLのrHuPH20(それぞれ約0U/mL、9.36U/mL、36U/mL、144U/mL、600U/mLまたは2400U/mL)と共に投与した。したがってボランティアには、1.5UのHumalog(登録商標)インスリンリスプロを約0、0.28、1.08、4.32、18または72単位のrHuPH20と共に含有する30μLか、または6UのHumalog(登録商標)インスリンリスプロを約0、1.12、4.32、17.28、72または288単位のrHuPH20と共に含有する120μLが投与された。表19eに、6UのHumalog(登録商標)インスリンリスプロを投与された被験者について、測定された薬物動態パラメータを記載する。試験した用量範囲では、0.3μg/mLを上回るrHuPH20濃度は全て、同様に有効だった。
表19e:さまざまな用量のrHuPH20を伴う6UのHumalog(登録商標)インスリンリスプロに関するインスリンPKパラメータ
Figure 0005809330
Figure 0005809330
[実施例2]
可溶性rHuPH20発現細胞株の作製
HZ24プラスミド(配列番号52に記載)を使ってチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をトランスフェクトした(例えば米国特許出願第10,795,095号、同第11/065,716号および同第11/238,171号を参照されたい)。可溶性rHuPH20を発現させるためのHZ24プラスミドベクターは、pCIベクターバックボーン(Promega)、ヒトPH20ヒアルロニダーゼのアミノ酸1〜482をコードするDNA(配列番号49)、ECMVウイルス由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)(Clontech)、およびマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子を含有する。pCIベクターバックボーンは、ベータ-ラクタマーゼ耐性遺伝子(AmpR)をコードするDNA、f1複製起点、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー/プロモーター領域(CMV)、キメライントロン、およびSV40後期ポリアデニル化シグナル(SV40)も含んでいる。可溶性rHuPH20コンストラクトをコードするDNAは、ヒトPH20のネイティブ35アミノ酸シグナル配列のアミノ酸位置1のメチオニンをコードするDNAの前にNheI部位とコザックコンセンサス配列とを含有し、配列番号1に記載のヒトPH20ヒアルロニダーゼのアミノ酸位置482に対応するチロシンをコードするDNAの後に停止コドンを含有し、その後ろに、BamHI制限部位が続いている。したがって、コンストラクトpCI-PH20-IRES-DHFR-SV40pa(HZ24)は、CMVプロモーターによって駆動される単一のmRNA種であって、配列内リボソーム進入部位(IRES)によって分離された、ヒトPH20のアミノ酸1〜482(配列番号3に記載)とマウスジヒドロ葉酸レダクターゼのアミノ酸1〜186(配列番号53に記載)とをコードするものをもたらす。
トランスフェクションの準備として、4mMグルタミンおよび18ml/L Plurionic F68/L(Gibco)を補足したDHFR(-)細胞用のGIBCO変法CD-CHO培地で成長させた非トランスフェクトDG44 CHO細胞を、0.5×106細胞/mlの密度でシェーカーフラスコに播種した。細胞を湿潤インキュベータ中、5%CO2下、37℃において、120rpmで振とうしながら成長させた。トランスフェクションに先立ち、対数増殖期の非トランスフェクトDG44 CHO細胞を、生存度について調べた。
非トランスフェクトDG44 CHO細胞培養の生細胞6千万個をペレット化し、2×トランスフェクションバッファー(2×HeBS:40mM HEPES、pH7.0、274mM NaCl、10mM KCl、1.4mM Na2HPO4、12mMデキストロース)0.7mLに、2×107細胞の密度で再懸濁した。再懸濁した細胞の各アリコートに、0.09mL(250μg)の線状HZ24プラスミド(ClaI(New England Biolabs)で終夜消化することによって線状化したもの)を加え、その細胞/DNA溶液を、室温で、間隙0.4cmのBTX(Gentronics)エレクトロポレーションキュベットに移した。陰性対照エレクトロポレーションは、プラスミドDNAを細胞と混合せずに行った。細胞/プラスミド混合物を、330Vおよび960μFまたは350Vおよび960μFのコンデンサ放電でエレクトポレートした。
細胞をエレクトロポレーション後のキュベットから取り出して、4mMグルタミンおよび18ml/L Plurionic F68/L(Gibco)を補足した5mLのDHFR(-)細胞用変法CD-CHO培地に移し、湿潤インキュベータ中、5%CO2下、37℃において、選択圧を加えずに、6穴組織培養プレートのウェルで2日間成長させた。
エレクトロポレーションの2日後に、0.5mLの組織培養培地を各ウェルから取り出し、実施例5に記載の微小濁度アッセイを使って、ヒアルロニダーゼ活性の存在について試験した。結果を表20に示す。
Figure 0005809330
トランスフェクション2(350V)で得た細胞を組織培養ウェルから集め、計数し、1mLあたり1×104〜2×104個の生細胞になるように希釈した。5枚の96穴丸底組織培養プレートの各ウェルに、細胞懸濁液を0.1mLずつ移した。4mM GlutaMAX(商標)-1補助剤(GIBCO(商標)、Invitrogen Corporation)を含有しヒポキサンチンおよびチミジン補助剤を含有しないCD-CHO培地(GIBCO)100マイクロリットルを、細胞を含むウェルに加えた(最終体積0.2mL)。
メトトレキサートなしで成長させた5枚のプレートから10個のクローンを同定した(表21)。
Figure 0005809330
6個のHZ24クローンを拡大培養し、単一細胞懸濁液としてシェーカーフラスコに移した。クローン3D3、3E5、2G8、2D9、1E11、および4D10を、左上のウェルの5000細胞から開始して、細胞をプレートの縦方向に1:2希釈し、プレートの横方向に1:3希釈する二次元無限希釈法を使って、96穴丸底組織培養プレートにプレーティングした。培養の初期に必要な成長因子を供給するために1ウェルあたり500個の非トランスフェクトDG44 CHO細胞のバックグラウンドで、希釈クローンを成長させた。50nMメトトレキサートを含有する5枚とメトトレキサートを含有しない5枚で、1サブクローンあたり10枚のプレートを作製した。
クローン3D3は、24個の目に見えるサブクローンを産生した(メトトレキサート処理なしから13個、および50nMメトトレキサート処理から11個)。それら24個のサブクローンのうち8個から得られる上清に、有意なヒアルロニダーゼ活性(>50単位/mL)が測定され、それら8個のサブクローンをT-25組織培養フラスコに拡大培養した。メトトレキサート処理プロトコールから単離されたクローンは、50nMメトトレキサートの存在下で拡大培養した。クローン3D35Mをさらに500nMメトトレキサート中で拡大培養したところ、シェーカーフラスコ中で1,000単位/mL以上を産生するクローンが生じた(クローン3D35M;または第1世代(Gen1)3D35M)。次に、3D35M細胞のマスター細胞バンク(master cell bank)(MCB)を調製した。
[実施例3]
可溶性rHuPH20のヒアルロニダーゼ活性の決定
細胞培養、精製画分および精製溶液などの試料中の可溶性rHuPH20のヒアルロニダーゼ活性は、ヒアルロン酸が血清アルブミンと結合した時に起こる不溶性沈殿物の形成に基づく比濁法アッセイを使って決定した。活性は、可溶性rHuPH20を、ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸)と共に、設定された時間(10分間)インキュベートした後、酸性化血清アルブミンを添加して未消化のヒアルロン酸ナトリウムを沈殿させることによって測定される。得られた試料の濁度を30分間の発現期間後に640nmで測定する。ヒアルロン酸ナトリウム基質に対する酵素活性に起因する濁度の低下が、可溶性rHuPH20ヒアルロニダーゼ活性の尺度になる。この方法は、可溶性rHuPH20アッセイ作業用参照標準の希釈液で作成される検量線を使って行われ、試料活性測定はこの検量線との比較でなされる。
酵素希釈溶液中に試料の希釈液を調製した。酵素希釈溶液は、33.0±0.05mgの加水分解ゼラチンを25.0mLの50mM PIPES反応バッファー(140mM NaCl、50mM PIPES、pH5.5)と25.0mLのSWFIとに溶解し、0.2mLの25%ブミネート(Buminate)溶液をその混合物に希釈し、30秒間ボルテックスすることによって調製した。これは使用前2時間以内に行い、必要になるまで氷上に保存しておいた。試料を推定1〜2U/mLに希釈した。一般に、1工程あたりの最大希釈度が1:100を超えることはなく、1回目の希釈のための初期試料サイズが20μL未満になることはなかった。アッセイを行うために必要な最小試料体積は以下のとおりだった:工程内試料、FPLC画分:80μL;組織培養上清:1mL;濃縮物質80μL;精製または最終工程物質:80μL。希釈液は低タンパク質結合性96穴プレートで3つ一組にして作成し、30μLの各希釈液をOptiluxブラック/クリアーボトムプレート(BD BioSciences)に移した。
標準曲線を作成するために、2.5U/mLの濃度を持つ既知の可溶性rHuPH20の希釈液を酵素希釈溶液中に調製し、Optiluxプレートに3つ一組にして加えた。これらの希釈液には、0U/mL、0.25U/mL、0.5U/mL、1.0U/mL、1.5U/mL、2.0U/mL、および2.5U/mLを含めた。60μLの酵素希釈溶液が入っている「試薬ブランク」ウェルを陰性対照としてプレートに含めた。次にプレートにカバーをして、ヒートブロック上、37℃で5分間温めた。カバーを取り除き、プレートを10秒間振とうした。振とう後に、プレートをヒートブロックに戻し、MULTIDROP 384液体ハンドリング装置に温かい0.25mg/mLヒアルロン酸ナトリウム溶液(100mgのヒアルロン酸ナトリウム(LifeCore Biomedical)を20.0mLのSWFIに溶解することによって調製したもの。これを、2〜8℃で2〜4時間、または完全に溶解するまで、穏やかに回転および/または揺動することによって混合した)を装填した。反応プレートをMULTIDROP 384に移し、スタートキーを押して30μLのヒアルロン酸ナトリウムを各ウェルに分注することによって、反応を開始させた。次にプレートをMULTIDROP 384から取り出し、10秒間振とうしてから、ヒートブロックに移し、プレートカバーを元に戻した。そのプレートを37℃で10分間インキュベートした。
反応を停止させるために、血清作業溶液を機械に装填し、体積設定を240μLに変えることによって、MULTIDROP 384の準備をした。(500mM酢酸バッファー溶液75mL中の血清保存液[1体積のウマ血清(Sigma)を9体積の500mM酢酸バッファー溶液で希釈し、pHを塩酸で3.1に調節したもの]25mL)。プレートをヒートブロックから取り出してMULTIDROP 384にのせ、240μLの血清作業溶液をウェルに分注した。プレートを取り出し、プレートリーダー上で10秒間、振とうした。さらに15分経過してから、試料の濁度を640nmで測定し、標準曲線へのあてはめによって各試料のヒアルロニダーゼ活性(単位はU/mL)を決定した。
ヒアルロニダーゼ活性(U/ml)をタンパク質濃度(mg/mL)で割ることによって比活性(単位/mg)を算出した。
[実施例4]
第1世代ヒトsPH20の生産および精製
A.5Lバイオリアクタープロセス
3D35Mのバイアルを融解し、100nMメトトレキサートおよびGlutaMAX(商標)-1(Invitrogen)を補足したCD CHO培地(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)中で、シェーカーフラスコから1Lスピナーフラスコまで拡大培養した。細胞を、1mlあたり4×105個の生細胞という接種密度で、スピナーフラスコから5Lバイオリアクター(Braun)に移した。パラメータは、温度設定値37℃、pH7.2(開始設定値)、溶存酸素設定値25%および空気オーバーレイ(air overlay)0〜100cc/分とした。168時間の時点で、250mlの第1フィード(Feed #1)培地(50g/Lグルコースを含むCD CHO)を加えた。216時間の時点で、250mlの第2フィード(Feed #2)培地(50g/Lグルコースおよび10mM酪酸ナトリウムを含むCD CHO)を加え、264時間の時点で、250mlの第2フィード培地を加えた。このプロセスにより、1mlあたり1600単位の最終生産能力が、6×106細胞/mlの最大細胞密度で得られた。酪酸ナトリウムを添加したのは、生産の最終段階における可溶性rHuPH20の生産を劇的に強化するためである。
3D35Mクローンから得た調整培地をデプスフィルトレーションおよび10mM HEPES pH7.0へのタンジェンシャルフローダイアフィルトレーションによって清澄化した。次に可溶性rHuPH20を、Q Sepharose(Pharmacia)イオン交換、Phenyl Sepharose(Pharmacia)疎水性相互作用クロマトグラフィー、フェニルボロネート(Prometics)およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(Biorad、カリフォルニア州リッチモンド)での逐次的クロマトグラフィーによって精製した。
可溶性rHuPH20はQ Sepharoseに結合し、同じバッファー中の400mM NaClで溶出した。溶出液を2M硫酸アンモニウムで最終濃度が500mM硫酸アンモニウムになるように希釈して、Phenyl Sepharose(低置換度(low sub))カラムに通し、次に同じ条件下でフェニルボロネート樹脂に結合させた。硫酸アンモニウムを含まない50mMビシン中、pH9.0で洗浄した後、可溶性rHuPH20をPhenyl Sepharose樹脂からHEPES pH6.9に溶出させた。その溶出液を、5mMリン酸カリウムおよび1mM CaCl2中、pH6.9のセラミックヒドロキシアパタイト樹脂に負荷し、0.1mM CaCl2を含む80mMリン酸カリウム、pH7.4で溶出させた。
得られた可溶性rHuPH20は、USP参照標準を用いる微小濁度アッセイ(実施例3参照)によると、65,000USP単位/mgタンパク質を超える比活性を持っていた。精製sPH20は、Pharmacia 5RPCスチレンジビニルベンゼンカラムから、0.1%TFA/H2Oと0.1%TFA/90%アセトニトリル/10%H2Oの間の勾配によって、24分から26分までの単一ピークとして溶出し、SDS電気泳動により、単一の幅広い61kDaバンドとして分割されたが、これは、PNGASE-Fで処理すると、鋭い51kDaバンドになった。N末端アミノ酸配列決定により、リーダーペプチドは効率よく除去されていることが明らかになった。
B.100Lバイオリアクター細胞培養への上流細胞培養拡大プロセス
スケールアッププロセスを使って、3D35M細胞の4つの異なるバイアルから可溶性rHuPH20を別々に精製して、sHuPH20の4つの独立したバッチ、HUA0406C、HUA0410C、HUA0415CおよびHUA0420Cを生産した。各バイアルを別々に125Lバイオリアクターまで拡大培養した後、カラムクロマトグラフィーを使って精製した。酵素収率などのパラメータを評価するために、プロセスの全体を通して試料を採取した。以下に記載する本プロセスの説明では、バイオリアクター開始体積およびフィード培地体積、導入細胞密度、ならびに洗浄体積および溶出体積などについて、代表的な詳細を述べる。正確な数字は各バッチごとにわずかに異なり、それらについては表24〜30に詳述する。
3D35M細胞の4つのバイアルを37℃の水浴で融解し、100nMメトトレキサートおよび40mL/L GlutaMAXを含有するCD CHOを加え、細胞を遠心分離した。細胞を、20mLの新鮮培地が入っている125mL振とうフラスコに再懸濁し、37℃、7%CO2インキュベータに入れた。細胞を125mL振とうフラスコ中で40mLまで拡大培養した。細胞密度が1.5〜2.5×106細胞/mLに達したら、培養物を125mLスピナーフラスコに100mLの培養体積で拡大した。フラスコを37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5〜2.5×106細胞/mLに達したら、培養物を250mLスピナーフラスコに200mLの培養体積で拡大し、フラスコを37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5〜2.5×106細胞/mLに達したら、培養物を1Lスピナーフラスコに800mLの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5〜2.5×106細胞/mLに達したら、培養物を6Lスピナーフラスコに5Lの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5〜2.5×106細胞/mLに達したら、培養物を36Lスピナーフラスコに20Lの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。
125Lリアクターを121℃、20PSIの蒸気で滅菌し、65LのCD CHO培地を加えた。使用前に、リアクターを汚染についてチェックした。36Lスピナーフラスコ中の細胞密度が1.8〜2.5×106細胞/mLに達したら、20Lの細胞培養を36Lスピナーフラスコから125Lバイオリアクター(Braun)に移して、最終体積を85L、播種密度を約4×105細胞/mLとした。パラメータは、温度設定値:37℃、pH:7.2、溶存酸素:25%±10%、インペラー速度50rpm、容器圧3psi、空気散布量1L/分、空気オーバーレイ:1L/分とした。細胞数、pH確認、培地分析、タンパク質の生産および貯留を調べるために、リアクターから毎日試料を採取した。運転中に栄養フィード(nutrient feed)を加えた。6日目に、3.4Lの第1フィード培地(CD CHO+50g/Lグルコース+40mL/L GlutaMAX(商標)-1)を加え、培養温度を36.5℃に変えた。9日目に、3.5Lの第2フィード(CD CHO+50g/Lグルコース+40mL/L GlutaMAX(商標)-1+1.1g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36℃に変えた。11日目に、3.7Lの第3フィード(CD CHO+50g/Lグルコース+40mL/L GlutaMAX(商標)-1+1.1g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を35.5℃に変えた。14日時点、または細胞の生存度が50%未満に低下した時に、リアクターを収集した。このプロセスにより、800万細胞/mLの最大細胞密度で1600単位/mLの酵素活性を持つ可溶性rHuPH20が生産された。マイコプラズマ、生物汚染度、エンドトキシン、ならびにインビトロおよびインビボでのウイルス、ウイルス粒子に関する透過型電子顕微鏡検査(TEM)、ならびに酵素活性を調べるために、収集時に、培養物を試料採取した。
ポリエーテルスルホンメディアを持つ一連の使い捨てカプセルフィルタ(Sartorius)を通して、すなわち最初は8.0μmデプスカプセル、0.65μmデプスカプセル、0.22μmカプセル、最後に0.22μm Sartopore 2000cm2フィルタを通して、100L滅菌保存バッグ中に、100リットルバイオリアクター細胞培養収集物を濾過した。培養物を、スパイラルポリエーテルスルホン30kDa MWCOフィルタ(Millipore)による2回のTFFで10倍濃縮した後、10mM HEPES、25mM Na2SO4、pH7.0で6回のバッファー交換を行い、0.22μm最終フィルタを通して、20L滅菌保存バッグに濾過した。表22に、細胞培養、収集、濃縮およびバッファー交換工程に関するモニタリングデータを記載する。
表22:細胞培養、収集、濃縮およびバッファー交換工程に関するモニタリングデータ
Figure 0005809330
次に、Q Sepharose(Pharmacia)イオン交換カラム(樹脂3L、高さ=20cm、直径=14cm)を調製した。pHおよび伝導度の決定ならびにエンドトキシン(LAL)アッセイのために洗浄液試料を集めた。カラムを5カラム体積の10mM Tris、20mM Na2SO4、pH7.5で平衡化した。濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、100cm/時間の流速でQカラムに負荷した。カラムを5カラム体積の10mM Tris、20mM Na2SO4、pH7.5および10mM HEPES、50mM NaCl、pH7.0で洗浄した。タンパク質を10mM HEPES、400mM NaCl、pH7.0で溶出させ、0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグ中に濾過した。
次に、Phenyl-Sepharose(Pharmacia)疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。Phenyl-Sepharose(PS)カラム(樹脂9.1L、高さ=29cm、直径=20cm)を調製した。カラムを5カラム体積の5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、0.1mM CaCl2、pH7.0で平衡化した。上で得たタンパク質溶出物に2M硫酸アンモニウム、1Mリン酸カリウムおよび1M CaCl2保存液を補足して、最終濃度をそれぞれ5mM、0.5Mおよび0.1mMにした。タンパク質をPSカラムに100cm/時間の流速で負荷した。5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムおよび0.1mM CaCl2 pH7.0を100cm/時間の速度で加えた。素通り画分を0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグに入れた。
PSで精製したタンパク質を、5カラム体積の5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで平衡化しておいたアミノフェニルボロネートカラム(ProMedics)(樹脂6.3L、高さ=20cm、直径=20cm)に負荷した。タンパク質を100cm/時間の流速でカラムに通し、カラムを5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄した。次に、カラムを20mMビシン、100mM NaCl、pH9.0で洗浄し、タンパク質を、50mM HEPES、100mM NaCl pH6.9で溶出させ、滅菌フィルタを通して20L滅菌バッグ中に濾過した。溶出液を、生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
ヒドロキシアパタイト(HAP)カラム(BioRad)(樹脂1.6L、高さ=10cm、直径=14cm)を5mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.1mM CaCl2 pH7.0で平衡化した。洗浄試料を集め、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)について調べた。アミノフェニルボロネートで精製したタンパク質にリン酸カリウムとCaCl2を補足して最終濃度を5mMリン酸カリウムおよび0.1mM CaCl2にし、それを100cm/時間の流速でHAPカラムに負荷した。カラムを5mMリン酸カリウム pH7.0、100mM NaCl、0.1mM CaCl2で洗浄した後、10mMリン酸カリウム pH7.0、100mM NaCl、0.1mM CaCl2 pHで洗浄した。タンパク質を70mMリン酸カリウム pH7.0で溶出させ、0.22μmフィルタを通して5L滅菌保存バッグ中に濾過した。溶出液を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
次に、HAPで精製したタンパク質を、圧力タンクを通して、20nMウイルス除去フィルタに通した。タンパク質をDV20圧力タンクおよびフィルタ(Pall Corporation)に加え、20nmの細孔を持つUltipor DV20フィルタ(Pall Corporation)を通して、滅菌20L保存バッグに入れた。濾液を、タンパク質濃度、酵素活性、オリゴ糖、単糖およびシアル酸プロファイリング、ならびにプロセス関連不純物について調べた。次に、10kD分子量分画(MWCO)Sartocon Sliceタンジェンシャルフロー濾過(TFF)システム(Sartorius)を使って、濾液中のタンパク質を1mg/mLに濃縮した。まず最初に、 HEPES/食塩水溶液(10mM HEPES、130mM NaCl、pH7.0)で洗浄することによってフィルタを調製し、pHおよび伝導度を調べるために透過液を試料採取した。濃縮後に、濃縮タンパク質を試料採取し、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。その濃縮タンパク質に対して、最終バッファー:10mM HEPES、130mM NaCl、pH7.0への、6回のバッファー交換を行った。濃縮タンパク質を0.22μmフィルタを通して20L滅菌保存バッグに入れた。タンパク質を試料採取し、タンパク質濃度、酵素活性、遊離スルフヒドリル基、オリゴ糖プロファイリングおよびオスモル濃度について調べた。
表23〜29に、各3D35M細胞ロットについて、上述の各精製工程に関係するモニタリングデータを記載する。
表23:Q Sepharoseカラムデータ
Figure 0005809330
表24:Phenyl Sepharoseカラムデータ
Figure 0005809330
表25:アミノフェニルボロネートカラムデータ
Figure 0005809330
表26:ヒドロキシアパタイトカラムデータ
Figure 0005809330
表27:DV20濾過データ
Figure 0005809330
表28:最終濃縮データ
Figure 0005809330
表29:最終製剤へのバッファー交換データ
Figure 0005809330
精製し濃縮した可溶性rHuPH20タンパク質を、5mLおよび1mLの充填体積で滅菌バイアルに無菌的に充填した。オペレータ制御(operator controlled)ポンプに0.22μmフィルタを通してタンパク質を入れ、そのポンプを使ってバイアルを重量測定による読み取りで充填した。バイアルをストッパーで閉じ、圧着キャップで固定した。閉じたバイアルを異物粒子について目視検査してから、ラベルを貼った。ラベルを貼った後、液体窒素への1分以内の浸漬によってバイアルを急速冷凍し、≦-15℃(-20±5℃)で保存した。
[実施例5]
可溶性ヒトPH20(rHuPH20)を含有する第2世代(Gen2)細胞の作出
実施例2に記載の第1世代3D35M細胞株を、さらに高いメトトレキサートレベルに適応させて、第2世代(Gen2)クローンを作出した。樹立メトトレキサート含有培養物から、4mM GlutaMAX-1(商標)および1.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地に、3D35M細胞を播種した。37℃、7%CO2湿潤インキュベータ中で、46日間にわたって、細胞を成長させ、それらを9回継代することにより、細胞を、より高いメトトレキサートレベルに適応させた。2.0μMメトトレキサートを含む培地が入っている96穴組織培養プレートでの限界希釈法により、増幅された細胞集団をクローンアウト(clone out)した。約4週間後に、クローンを同定し、クローン3E10Bを拡大培養のために選択した。4mM GlutaMAX-1(商標)および2.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地中で、継代20代にわたって、3E10B細胞を成長させた。3E10B細胞株のマスター細胞バンク(MCB)を作製し、凍結し、以後の研究に使用した。
4mM GlutaMAX-1(商標)および4.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地中で3E10B細胞を培養することによって、この細胞株の増幅を続けた。12回目の継代後に、細胞を研究用細胞バンク(research cell bank)(RCB)としてバイアル中で凍結した。RCBのバイアルを1本融解し、8.0μMメトトレキサートを含有する培地で培養した。5日後に、培地中のメトトレキサート濃度を16.0μMに増加させ、次いで18日後に20.0μMに増加させた。20.0μMメトトレキサートを含有する培地における8回目の継代培養から得た細胞を、4mM GlutaMAX-1(商標)および20.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地が入っている96穴組織培養プレートでの限界希釈法によってクローンアウトした。5〜6週間後にクローンを同定し、クローン2B2を20.0μMメトトレキサートを含有する培地での拡大培養のために選択した。11回目の継代後に、2B2細胞を研究用細胞バンク(RCB)としてバイアル中で凍結した。
結果として得られた2B2細胞は、可溶性組換えヒトPH20(rHuPH20)を発現させるジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損性(dhfr-)DG44 CHO細胞である。可溶性PH20は2B2細胞中に、約206コピー/細胞のコピー数で存在する。SpeI、XbaIおよびBamHI/HindIIIで消化したゲノム2B2細胞DNAを、rHuPH20特異的プローブを使ってサザンブロット解析したところ、以下の制限消化プロファイルが明らかになった:SpeIで消化したDNAでは1本の主要ハイブリダイズバンド約7.7kbと4本の副ハイブリダイズバンド(約13.9、約6.6、約5.7および約4.6kb);XbaIで消化したDNAでは、1本の主要ハイブリダイズバンド約5.0kbと2本の副ハイブリダイズバンド(約13.9および約6.5kb);BamHI/HindIIIで消化した2B2 DNAを使うと、約1.4kbの単一ハイブリダイズバンドが観察された。mRNA転写物の配列解析により、得られたcDNA(配列番号56)は、位置1131における1塩基対の相違(これは予想されるシトシン(C)の代わりにチミジン(T)であることがわかった)を除いて、基準配列(配列番号49)と同一であることが示された。これはサイレント突然変異であり、アミノ酸配列には影響しない。
[実施例6]
A.300Lバイオリアクター細胞培養における第2世代可溶性rHuPH20の生産
HZ24-2B2のバイアルを融解し、20μMメトトレキサートおよびGlutaMAX-1(商標)(Invitrogen)を補足したCD CHO培地(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)中で、シェーカーフラスコから36Lスピナーフラスコまで拡大培養した。簡単に述べると、細胞のバイアルを37℃の水浴で融解し、培地を加え、細胞を遠心分離した。細胞を、20mLの新鮮培地が入っている125mL浸透フラスコに再懸濁し、37℃、7%CO2のインキュベータに入れた。細胞を125mL振とうフラスコ中で40mLまで拡大培養した。細胞密度が1.5×106細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を125mLスピナーフラスコに100mLの培養体積で拡大した。フラスコを37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5×106細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を250mLスピナーフラスコに200mLの培養体積で拡大し、フラスコを37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5×106細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を1Lスピナーフラスコに800mLの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5×106細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を6Lスピナーフラスコに5000mLの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。細胞密度が1.5×106細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を36Lスピナーフラスコに32Lの培養体積で拡大し、37℃、7%CO2でインキュベートした。
400Lリアクターを滅菌し、230mLのCD CHO培地を加えた。使用前に、リアクターを汚染についてチェックした。約30Lの細胞を36Lスピナーフラスコから400Lバイオリアクター(Braun)に、1mlあたり4.0×105個の生細胞という接種密度および260Lの総体積で移した。パラメータは温度設定値:37℃;インペラー速度40〜55RPM;容器圧:3psi;空気散布量0.5〜1.5L/分;空気オーバーレイ:3L/分とした。細胞数、pH確認、培地分析、タンパク質の生産および貯留を調べるために、リアクターから毎日試料を採取した。また、運転中に栄養フィードを加えた。120時間(5日目)の時点で、10.4Lの第1フィード培地(4×CD-CHO+33g/Lグルコース+160mL/L GlutaMAX-1(商標)+83mL/Lイーストレート(Yeastolate)+33mg/L rHuインスリン)を加えた。168時間(7日目)の時点で、10.8Lの第2フィード(2×CD-CHO+33g/Lグルコース+80mL/L GlutaMAX-1(商標)+167mL/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36.5℃に変えた。216時間(9日目)の時点で、10.8Lの第3フィード(1×CD-CHO+50g/Lグルコース+50mL/L GlutaMAX-1(商標)+250mL/Lイーストレート+1.80g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36℃に変えた。264時間(11日目)の時点で、10.8Lの第4フィード(1×CD-CHO+33g/Lグルコース+33mL/L GlutaMAX-1(商標)+250mL/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を35.5℃に変えた。フィード培地の添加は生産の最終段階における可溶性rHuPH20の生産を劇的に強化することが観察された。14日時点もしくは15日時点で、または細胞の生存度が40%未満に低下した時に、リアクターを収集した。このプロセスにより、1200万細胞/mLの最大細胞密度で17,000単位/mlの最終生産能力が得られた。マイコプラズマ、生物汚染度、エンドトキシンならびにインビトロおよびインビボでのウイルス、ウイルス粒子に関するTEM、ならびに酵素活性を調べるために、収集時に、培養物を試料採取した。
それぞれが4〜8μmに分級された珪藻土の層と1.4〜1.1μmに分級された珪藻土の層とを含有し、その後にセルロースメンブレンが設けられている、並列した4つのMillistak濾過システムモジュール(Millipore)に、培養物を蠕動ポンプで通し、次に、0.4〜0.11μmに分級された珪藻土の層と、<0.1μmに分級された珪藻土の層とを含有し、その後にセルロースメンブレンが設けられている、第2の単一Millistak濾過システム(Millipore)に通し、次に0.22μm最終フィルタを通して、350Lの容量を持つ滅菌使い捨てフレキシブルバッグ中に入れた。その収集細胞培養液に10mM EDTAおよび10mM TrisをpHが7.5になるように補足した。培養物を、4つのSartoslice TFF 30kDa分子量分画(MWCO)ポリエーテルスルホン(PES)フィルタ(Sartorius)を使用するタンジェンシャルフロー濾過(TFF)装置で10倍濃縮した後、10mM Tris、20mM Na2SO4、pH7.5で10回のバッファー交換を行い、0.22μm最終フィルタを通して、50L滅菌保存バッグに濾過した。
濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、ウイルスに関して不活化した。ウイルス不活化に先だって、10%Triton X-100、3%リン酸トリ(n-ブチル)(TNBP)の溶液を調製した。濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、Qカラムで精製する直前に、36Lガラス反応容器中で、1%Triton X-100、0.3%TNBPに1時間曝露した。
B.第2世代可溶性rHuPH20の精製
Q Sepharose(Pharmacia)イオン交換カラム(樹脂9L、H=29cm、D=20cm)を調製した。pHおよび伝導度の決定ならびにエンドトキシン(LAL)アッセイのために洗浄液試料を集めた。カラムを5カラム体積の10mM Tris、20mM Na2SO4、pH7.5で平衡化した。濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、ウイルス不活化後に、100cm/時間の流速でQカラムに負荷した。カラムを、5カラム体積の10mM Tris、20mM Na2SO4、pH7.5および10mM HEPES、50mM NaCl、pH7.0で洗浄した。タンパク質を10mM HEPES、400mM NaCl、pH7.0で溶出させ、0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグに濾過した。溶出液試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。この交換の最初と最後にA280吸光度を読み取った。
次にPhenyl-Sepharose(Pharmacia)疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。Phenyl-Sepharose(PS)カラム(樹脂19〜21L、H=29cm、D=30cm)を調製した。洗浄液を集め、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)用の試料を採取した。カラムを5カラム体積の5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、0.1mM CaCl2、pH7.0で平衡化した。Q Sepharoseカラムから得たタンパク質溶出液に2M硫酸アンモニウム、1Mリン酸カリウムおよび1M CaCl2保存液を補足して、最終濃度をそれぞれ5mM、0.5Mおよび0.1mMにした。タンパク質を100cm/時間の流速でPSカラムに負荷し、素通り画分を集めた。100cm/時間の5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムおよび0.1mM CaCl2 pH7.0でカラムを洗浄し、その洗浄液を、集めた素通り画分に加えた。カラム洗浄液と合わせた素通り画分を0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグに入れた。生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性を調べるために素通り画分の試料を採取した。
アミノフェニルボロネートカラムを調製した。洗浄液を集め、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)用の試料を採取した。カラムを5カラム体積の5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで平衡化した。精製タンパク質を含有するPS素通り画分を100cm/時間の流速でアミノフェニルボロネートカラムに負荷した。カラムを5mMリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄した。カラムを20mMビシン、0.5M硫酸アンモニウム、pH9.0で洗浄した。カラムを20mMビシン、100mM塩化ナトリウム、pH9.0で洗浄した。タンパク質を50mM HEPES、100mM NaCl、pH6.9で溶出させ、滅菌フィルタを通して滅菌バッグに入れた。溶出した試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
ヒドロキシアパタイト(HAP)カラム(BioRad)を調製した。洗浄液を集めて、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)について調べた。カラムを5mMリン酸カリウム、100mM NaCl、0.1mM CaCl2、pH7.0で平衡化した。アミノフェニルボロネートで精製したタンパク質を、最終濃度が5mMリン酸カリウムおよび0.1mM CaCl2になるように補足し、100cm/時間の流速でHAPカラムに負荷した。カラムを5mMリン酸カリウム、pH7、100mM NaCl、0.1mM CaCl2で洗浄した。次に、カラムを10mMリン酸カリウム、pH7、100mM NaCl、0.1mM CaCl2で洗浄した。タンパク質を70mMリン酸カリウム、pH7.0で溶出させ、0.22μm滅菌フィルタを通して滅菌バッグに入れた。溶出した試料を生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
次に、HAPで精製したタンパク質をウイルス除去フィルタに通した。滅菌したVirosartフィルタ(Sartorius)を、まず、2Lの70mMリン酸カリウム、pH7.0で洗浄することによって調製した。使用前に、pHおよび伝導度を調べるために、濾過されたバッファーを試料採取した。HAPで精製したタンパク質を蠕動ポンプで20nMウイルス除去フィルタに通した。70mMリン酸カリウム、pH7.0中の濾過されたタンパク質を0.22μm最終フィルタを通して滅菌バッグに入れた。ウイルス濾過された試料をタンパク質濃度、酵素活性、オリゴ糖、単糖およびシアル酸プロファイリングについて調べた。試料をプロセス関連不純物についても試験した。
次に、10kD分子量分画(MWCO)Sartocon Sliceタンジェンシャルフロー濾過(TFF)システム(Sartorius)を使って、濾液中のタンパク質を10mg/mLに濃縮した。フィルタを、まず、10mMヒスチジン、130mM NaCl、pH6.0で洗浄することによって調製し、pHおよび伝導度を調べるために透過液を試料採取した。濃縮後に、濃縮タンパク質を試料採取して、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。濃縮タンパク質に対して、最終バッファー:10mMヒスチジン、130mM NaCl、pH6.0への6回のバッファー交換を行った。バッファー交換後に、0.22μmフィルタを通して、濃縮タンパク質を20L滅菌保存バッグに入れた。タンパク質を試料採取し、タンパク質濃度、酵素活性、遊離スルフヒドリル基、オリゴ糖プロファイリングおよびオスモル濃度について調べた。
次に、滅菌濾過したバルクタンパク質を、30mL滅菌テフロンバイアル(Nalgene)中に、20mLずつ、無菌的に分注した。次に、バイアルを急速冷凍し、-20±5℃で保存した。
C.第1世代可溶性rHuPH20および第2世代可溶性rHuPH20の生産および精製の比較
300Lバイオリアクター細胞培養における第2世代可溶性rHuPH20の生産および精製には、100Lバイオリアクター細胞培養における第1世代可溶性rHuPH2の生産および精製(実施例4Bに記載)と比較して、プロトコールにいくつかの変更が含まれていた。単純なスケールアップ変化に加えて、これらの方法の間の典型的な相違点を、表30に説明する。
Figure 0005809330
Figure 0005809330
[実施例7]
シアル酸および単糖類含有量の決定
可溶性rHuPH20のシアル酸および単糖類含有量は、トリフルオロ酢酸による加水分解後の逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)で評価することができる。一例として、精製ヒアルロニダーゼロット番号HUB0701E(1.2mg/mL;基本的に実施例6に記載したように生産および精製したもの)のシアル酸および単糖類含有量を決定した。簡単に述べると、100μg試料を2つ一組にして40%(v/v)トリフルオロ酢酸により100℃で4時間加水分解した。加水分解後に試料を乾固し、300μLの水に再懸濁した。各再懸濁試料から45μLずつを新しいチューブに移し、乾固し、10μLの10mg/mL酢酸ナトリウム溶液をそれぞれに加えた。放出された単糖類を、30mg/mL 2-アミノ安息香酸、20mg/mLシアノ水素化ホウ素ナトリウム、約40mg/mL酢酸ナトリウムおよび20mg/mLホウ酸を含有するメタノール溶液50μLの添加により、蛍光標識した。その混合物を、暗所、80℃で30分間インキュベートした。440μLの移動相A(0.2%(v/v)n-ブチルアミン、0.5%(v/v)リン酸、1%(v/v)テトラヒドロフラン)を加えることによって、この誘導体化反応をクエンチした。水のマトリックスブランクも、陰性対照として、ヒアルロニダーゼ試料について述べたとおりに、加水分解処理および誘導体化処理に付した。放出された単糖類を、オクタデシル(C18)逆相カラム(4.6×250mm、粒径5μm;J.T.Baker)を用いるRPLCで分離し、蛍光検出(励起波長360nm、蛍光波長425nm)でモニターした。単糖類含有量の定量は、ヒアルロニダーゼ試料から得られたクロマトグラムを、N-D-グルコサミン(GlcN)、N-D-ガラクトサミン(GalN)、ガラクトース、フコースおよびマンノースを含む単糖類標準のクロマトグラムと比較することによって行った。ヒアルロニダーゼ1分子あたりの各単糖類のモル比を表31に示す。
表31:可溶性rHuPH20の単糖類含有量
Figure 0005809330
* GalNの結果は検出限界未満だった。
[実施例8]
3D35M細胞および2B2細胞から得られる可溶性rHuPH20のC末端不均一性
3D35M細胞から100Lバイオリアクター体積で(ロットHUA0505MA)、および2B2細胞から300Lバイオリアクター体積で(ロットHUB0701EB)、それぞれ生産され精製されたsHuPH20の2つのロットで、C末端配列決定を行った。これらのロットを、アスパラギン酸およびシステイン酸のN末端側でペプチド結合を特異的に切断するエンドプロテイナーゼAsp-Nにより、別々に消化した。これにより、可溶性rHuPH20のC末端部分が、配列番号4の位置431のアスパラギン酸で放出される。そのC末端フラグメントを分離し、特徴づけることにより、ロットHUA0505MAおよびロットHUB0701EB中の各集団の配列および存在量を決定した。
3D35M細胞および2B2細胞から得られる可溶性rHuPH20調製物は不均一性を示し、そのC末端配列が互いに異なるポリペプチドを含有することが観察された(表27および28)。この不均一性はおそらく、発現された447アミノ酸ポリペプチド(配列番号4)が、本生産および精製プロセスにおいて、細胞培養培地中または他の溶液中に存在するペプチダーゼによってC末端切断された結果だろう。可溶性rHuPH20調製物中のポリペプチドは、配列番号4に記載の可溶性rHuPH20配列のアミノ酸1〜447、1〜446、1〜445、1〜444および1〜443に対応するアミノ酸配列を持つ。これらの各ポリペプチドの全アミノ酸配列をそれぞれ配列番号4〜8に記載する。表32および33に示すように、3D35M細胞および2B2細胞から得られる可溶性rHuPH20調製物中の各ポリペプチドの存在量は相違する。
表32:ロットHUA0505MAから得られるC末端フラグメントの分析
Figure 0005809330
表33:ロットHUB0701EBから得られるC末端フラグメントの分析
Figure 0005809330
[実施例9]
異なるヒアルロナン分解酵素の分散活性の比較
異なるヒアルロナン分解酵素の、分散剤として作用する能力をインビボで評価した。マウスにおける分散アッセイを使って、異なるヒアルロナン分解酵素の、トリパンブルーの分散剤として作用する能力を評価すると共に、共投与されたインスリンの血中グルコース降下効力を強化する、その酵素の能力も評価した。アッセイされるヒアルロナン分解酵素には、rHuPH20、PEG化PH20(PEG PH20)、Hyal1、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼACおよびストレプトミセス・ヒアルロリチカス(Streptomyces hyalurolyticus)リアーゼを含めた。これらを、中性バッファー(10mMリン酸ナトリウム、pH7.4、145.5mM NaCl、1mg/mlヒト血清アルブミン)中でトリパンブルーおよびHumulin(登録商標)インスリンと混合し、麻酔したマウスに送達した。次にトリパンブルーの分散面積と血中グルコースレベルをどちらも測定した。中性pHバッファーのみおよびHumulin(登録商標)インスリンのみを陰性対照として使用した。低pHバッファー(pH4.5)の、分散剤として作用する能力も調べた。
9群のNCr nu/nuホモ接合マウス(約10週齢、体重21〜25g、各群3匹)を、ケタミン/キシラジン(食塩水中の10:1混合物)の腹腔内注射によって麻酔した。その後、マウスに40μLのヒアルロナン分解酵素および5単位/mL Humulin(登録商標)インスリンを、0.4%トリパンブルー色素と共に、胸郭の尾方端上の正中線への皮内注射によって投与した。Humulin(登録商標)インスリンのみ、バッファーのみまたはバッファーおよびHumulin(登録商標)インスリンを投与した対照群も含めた。具体的には、第1群のマウスは陰性対照であり、これらのマウスにはトリパンブルーが中性pHバッファーと共に投与された。第2群のマウスには、トリパンブルーが低pHバッファー中の5単位/mL Humulin(登録商標)インスリンと共に投与された。第3群のマウスには、トリパンブルーが5単位/mL Humulin(登録商標)インスリンおよび10単位/mL rHuPH20と共に投与された。第4群のマウスには、トリパンブルーが5単位/mL Humulin(登録商標)インスリンおよび10単位/mL PEG PH20(下記実施例10に記載するように作製されたもの)と共に投与された。第5群のマウスには、トリパンブルーが5単位/mL Humulin(登録商標)インスリンおよび10単位/mL Hyal1と共に投与された。第6群のマウスには、トリパンブルーが5単位/mL Humulin(登録商標)インスリンおよび10単位/mLコンドロイチナーゼABC(Associates of Cape Cod、マサチューセッツ州イーストファルマス)と共に投与された。第7群のマウスには、トリパンブルーが5単位/mL Humulin(登録商標)インスリンおよび1単位/mLコンドロイチナーゼ(Condroitinase)AC(Associates of Cape Cod、マサチューセッツ州イーストファルマス)と共に投与した。第8群のマウスには、トリパンブルーが5単位/mL Humulin(登録商標)インスリンおよび100単位/mLストレプトミセス・ヒアルロリチカス・リアーゼ(Calbiochem)と共に投与された。第9群のマウスには、トリパンブルーが5単位/mL Humulin(登録商標)インスリンと共に投与された。次に、注射の2.5、5、10、15および20分後に、トリパンブルー色素の分散をキャリパーで測定した。色素分散面積(mm2)は、最も長い軸M1(色素フロント(dye front)の長さ)およびM2(色素フロントの幅)に1/4πを掛けること(M1M2×1/4π)によって算出された。血中グルコースレベルは、血糖計(glucometer)を使って、0、5、10、15および20分に測定した。
1:色素分散
表34に、各試験物の投与後の平均色素分散面積を示す。
中性pHバッファー中および低pHバッファー中のトリパンブルー色素は、ごくわずかな展着しか示さず、分散面積は平均で注射2.5分後の約36mm2から注射20分後の約51mm2の範囲にある。トリパンブルー色素をHumulin(登録商標)インスリン、Hyal1、またはPEG PH20と混合して送達したが、色素をバッファーのみと混合した場合に観察されるものと比較して、分散面積に統計的に有意な増加はなかった。これに対し、rHuPH20、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼACまたはストレプトミセス・ヒアルロリチカス・リアーゼと混合して送達した場合には、色素の分散に有意な増加が観察された。rHuPH20と混合して送達した場合のトリパンブルー色素の平均分散面積は、注射の2.5、5、10、15および20分後に、それぞれ約45mm2、66mm2、80mm2、86mm2および102mm2だった。コンドロイチナーゼ(Condroitinase)ACと混合して送達した場合のトリパンブルー色素の平均分散面積は、注射の2.5、5、10、15および20分後に、それぞれ約76mm2、107mm2、107mm2、110mm2および116mm2だった。コンドロイチナーゼ(Condroitinase)ABCと混合して送達した場合のトリパンブルー色素の平均分散面積は、注射の2.5、5、10、15および20分後に、それぞれ約57mm2、75mm2、79mm2、81mm2および88mm2だった。ストレプトミセス・ヒアルロリチカス・リアーゼと混合して送達した場合のトリパンブルー色素の平均分散面積は、注射の2.5、5、10、15および20分後に、それぞれ約74mm2、76mm2、101mm2、103mm2および130mm2だった。
表34:色素分散面積(mm 2 )の群平均の要約
Figure 0005809330
2.血中グルコースレベル
表35に、各試験物を投与した後の平均血中グルコースレベル(mg/dL)を示す。色素およびバッファーのみを投与されたマウスにおける血中グルコースレベルは、注射前の平均約212mg/dLから注射5分後の約323mg/dLまで増加した。その後、レベルは、注射20分後の約367mg/dLまで徐々に上昇した。インスリンが存在しない場合の、この血中グルコースの増加は、麻酔薬が齧歯類動物における血中グルコースに及ぼす周知の効果によるものである(例えばSahaら (2005) Exp.Biol.Med. 230:777-784参照)。Humulin(登録商標)インスリンを投与すると、血中グルコースレベルは注射後分後に平均で(注射前の約226mg/dLから)約292mg/dLへと短時間上昇した後、注射の10、15および20分後に、それぞれ平均で約171mg/dL、122mg/dLおよび97mg/dLまで低下した。Humulin(登録商標)インスリンと共に投与した場合、ヒアルロナン分解酵素はいずれも血中グルコースレベルを低下させたが、rHuPH20、PEG PH20、コンドロイチナーゼABCおよびストレプトミセス・ヒアルロリチカス・リアーゼの共投与は、Humulin(登録商標)インスリンのみで観察されるよりもさらに速く、レベルを低下させるようだった。
表35:血中グルコースレベル(mg/dL)の群平均の要約
Figure 0005809330
[実施例10]
rHuPH20のPEG化
A.rHuPH20へのmPEG-SBA-30Kのコンジュゲーション
PEG化可溶性ヒトヒアルロニダーゼを作製するために、rHuPH20(サイズは約60KDa)を、30kDaの概算分子量を持つメトキシポリ(エチレングリコール)ブタン酸の線状N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(mPEG-SBA-30K)に共有結合でコンジュゲートした。mPEG-SBAの構造を次のスキーム2に示す。
スキーム2
Figure 0005809330
rHuPH20をPEG化するために使用したmPEG-SBA-30Kを製造するために用いられる方法は、例えばU.S.5,672,662に記載されている。簡単に述べると、mPEG-SBA-30Kは、下記の手順で製造される。
ジオキサンに溶解したマロン酸エチル(2当量)の溶液を、窒素雰囲気下の水素化ナトリウム(2当量)およびトルエンに滴下する。mPEGメタンスルホネート(1当量、分子量30kDa、Shearwater)をトルエンに溶解し、上記の混合物に加える。得られた混合物を約18時間還流する。反応混合物を元の体積の半分まで濃縮し、10%NaCl水溶液で抽出し、1%塩酸水溶液で抽出し、水性抽出物を合わせる。集めた水層をジクロロメタンで抽出(3回)し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾固する。得られた残渣を、塩化ナトリウムを含有する1N水酸化ナトリウムに溶解し、その混合物を1時間撹拌する。混合物のpHを6N塩酸の添加によって約3に調節する。その混合物をジクロロメタンで抽出(2回)する。
有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、冷ジエチルエーテルに注ぎ込む。沈殿物を濾過によって集め、減圧下で乾燥する。得られた化合物をジオキサンに溶解し、8時間還流した後、濃縮乾固する。得られた残渣を水に溶解し、ジクロロメタンで抽出(2回)し、硫酸マグネシウムで乾燥し、その溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、冷ジエチルエーテルに注ぎ込む。沈殿物を濾過によって集め、減圧下で乾燥する。得られた化合物(1当量)をジクロロメタンに溶解し、N-ヒドロキシスクシンイミド(2.1当量)を加える。その溶液を0℃に冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(2.1当量)のジクロロメタン溶液を滴下する。その溶液を室温で約18時間撹拌する。反応混合物を濾過し、濃縮し、ジエチルエーテル中で沈殿させる。沈殿物を濾過によって集め、減圧下で濃縮することにより、mPEG-SBA-30Kを得る。
PEG化rHuPH20を製造するために、mPEG-SBA-30KをrHuPH20の(1つまたは複数の)アミノ基に共有結合的コンジュゲーションでカップリングすることにより、スキーム3に示すように、rHuPH20とmPEGの間に安定なアミド結合を得た。
スキーム3
Figure 0005809330
コンジュゲーションのために、mPEG-SBA-30Kを粉末の形態でrHuPH20(濃度は130mM NaCl/10mM HEPES;pH7中、10mg/mL)に加えた。PEG:rHuPH20比は10:1(モル比)とした。PEGがバッファーに溶解してから、その溶液を滅菌濾過(Corning 50mLチューブトップフィルタ、ポリスチレン、酢酸セルロース0.22μmメンブレン)した。コンジュゲーションは低温室中、4℃で終夜行った。
コンジュゲーション後に、100,000MWCO TFFメンブレンを使って溶液を濃縮し、pH6.8の130mM NaCl/10mM HEPESに対してバッファー交換した。得られた物質(実施例2で述べたように酵素活性について調べた)を、pH6.8の130mM NaCl/10mM HEPESで希釈して、100,000U/mLの最終酵素活性(約2.5mgペプチド/mLに相当)を得た。このPEG化rHuPH20物質を、ブロモブチル(brombutyl)シール付き13mmタイプ1(Type-1)ガラスバイアルに1mLずつ充填し、凍結保存した(-80℃の冷凍庫で終夜凍結した後、さらに長期間の貯蔵には、-20℃の冷凍庫に入れた)。
B.PEG化rHuPH20の分析
PEG化rHuPH20物質をゲル電気泳動でアッセイした。上記実施例7Aと同様に製造したPEG化rHuPH20の3つのバッチは、異なる距離に移動する未反応PEGとmPEG-rHuPH20コンジュゲートの複数の分子種とを表す同じパターンの複数バンドを示した。分子量マーカーの移動との比較によれば、それらの分子種を表すバンドは、約90KDaから300KDaの範囲にわたり、240KDaマーカーより上に移動した黒いバンドは3つあった。これらのデータから、mPEG-SBA-30Kの共有結合的コンジュゲーションによって作製されたPEG化rHuPH20は、おそらくモノ−、ジ-およびトリPEG化タンパク質を含むPEG化rHuPH20分子種の不均一な混合物を含有することが示された。60KDaに目に見えるバンドがないことから、全てのタンパク質がPEGと反応したこと、および検出可能なネイティブrHuPH20は混合物中に存在しないことが示唆された。
[実施例11]
ブタに皮下投与した後のインスリンの薬物動態にrHuPH20が及ぼす効果
ブタモデルが組換えヒアルロニダーゼ(例えばrHuPH20)と共投与された食事時インスリンの薬物動態をモデル化するのに適しているかどうかを決定するために、rHuPH20と共に、またはrHuPH20なしで、ブタに皮下注射した後の、Humalog(登録商標)インスリンリスプロおよびHumulin(登録商標)Rインスリンの薬物動態を評価した。次にそれらの結果をヒトで観察されたもの(実施例1参照)と比較して、ブタモデルがヒトで見られたものを正確に反映するかどうかを決定した。
簡単に述べると、無作為化4元交差試験(randomized, 4-way crossover study)で、Humalog(登録商標)インスリンリスプロおよびHumulin(登録商標)Rインスリンを、rHuPH20と共に、およびrHuPH20なしで、6匹のブタに皮下投与した。各動物には、一連の投薬サイクルでのインスリン薬物動態の再現性の比較が容易になるように、4つの試験物の全てによる、3サイクルの処置を施した。血液試料を集め、血清を評価することで、免疫反応性インスリン(IRI)のレベルを決定した。次に、tmax、Cmax、初期t50%、後期t50%、およびAUCmaxを含むさまざまな薬物動態パラメータを決定した。
A.投薬および試料採取
4800U/mLのrHuPH20を伴う、およびrHuPH20を伴わない、100U/mLのHumalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)Rインスリンの投薬溶液(または試験物)は下記のように調製した。100 Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみおよびHumulin(登録商標)Rインスリンのみの溶液を、それぞれ、Humalog(登録商標)インスリンリスプロ(100U/mL;ロットA418976、Eli Lilly)およびHumulin(登録商標)Rインスリン(100U/mL;ロットA393318、Eli Lilly、滅菌希釈剤(Eli Lilly)で1:5希釈)の市販ロットから調製した。Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20溶液を調製するために、910μLの100U/mL Humalog(登録商標)インスリンリスプロ(Eli Lilly、ロットA418976)、44.6mLのHYLENEX組換え体(HYLENEX recombinant)(ヒトヒアルロニダーゼ注射剤(hyaluronidase human injection))(Baxter、ロット903646)および45.4μLのrHuPH20 API 1mg/mL(Halozyme Therapeutics、ロットHUA0703MA)を混合して、91U/mLの最終Humalog(登録商標)インスリンリスプロ濃度および5454U/mLのヒアルロニダーゼ活性にした。Humulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20溶液を調製するために、200μLの500U/mL Humulin(登録商標)Rインスリン(Eli Lilly、ロットA393318)および800μLのrHuPH20製剤(Drug Product)6000U/mL(Halozyme、ロット288004;rHuPH20製剤は、145mM NaCl、10mMリン酸水素ナトリウム、2.7mM塩化カルシウム、2.7mM EDTA二ナトリウム塩、1mg/mLヒト血清アルブミン、pH7.4中に、50μgのrHuPH20を含有していた)を混合して、100U/mLの最終インスリン濃度および4800U/mLのrHuPH20ヒアルロニダーゼ活性にした。
rHuPH20を含有する溶液を滅菌濾過し、2mLタイプI(Type-I)ガラス(Wheaton)バイアルに充填し、13mmゴム(Stelmi)栓で封印した。次に、rHuPH20を含有する溶液を2組に分け、一方は、調べるまで冷蔵対照として保存し、他方は、この試験において動物への投与に使用した。全ての投薬溶液を常時冷蔵しておき、検査のために戻した。溶液の各セットは、調剤の日から1〜6日以内の同日に、rHuPH20酵素活性について調べた。
この試験の間の血液試料採取が容易になるように、試験の開始時にそれぞれ21〜25kgの体重を持つ6匹の成体雄ユカタンブタ(Yucatan pig)(S&S Farm、カリフォルニア州ラモーナ)に、外科的に移植される頚静脈または頚動脈カテーテル(体外血管アクセスポートを装備するもの)を装着した。機器装備および処置に先だって、動物を7日間検疫した。下記表36に示すように6匹の動物を無作為に2つの試験群に分けた。動物を、それぞれ1群あたり3匹からなる2つの群の一方に割り当て、第1サイクルと第2サイクルでは、その割り当てを維持した。第3投薬サイクルではカニューレの開通性が損なわれたので2匹を除外し、残りの4匹を1群あたり2匹だけにして割り当てなおした。第1群の動物ID番号は、第1サイクルおよび第2サイクルでは540、541、および542、第3サイクルでは542および544だった。第2群の動物ID番号は、第1サイクルおよび第2サイクルでは544、545、および546、第3サイクルでは545および546だった。
投薬溶液は、各ブタの左脇腹に、身体の中線より後ろ(behind the midline of the body)で、皮下(SC)投与した。試験物の投与に先立ち、処置前血液試料を得た。動物には、適当な試験物の単回SC用量(0.2U/kg;正しい用量を正確に決定するために各投与に先だって動物を測定した)を、1日置きのプロトコールで投与した。各動物には、賦形剤中、またはrHuPH20の新鮮な共製剤中、0.2U/kgという、表示したインスリン(すなわちインスリンまたはリスプロ)の単回SCボーラス用量を投与した。試験物の投与後に、少なくとも0.7〜1.0mLの血液を3、6、9、12、15、20、25、30、45、60、90、120、180および240分に、逐次、採取した。投与に先だって処置前採血(前採血)も行った。血液試料は直ちに、抗凝固剤が入っていない血清チューブに入れ、最低30分間は氷上に置いた後、周囲温度、9500×gで、5分間、遠心分離した。次に、事前にラベルが貼られたチューブに血清を移し、凍結し、免疫反応性インスリン(IRI)レベルに関する生体試料分析(bioanalysis)を受けるために全ての試料がMilliporeに出荷されるまで、-80℃で保存した。
表36:ブタモデルを検証するための投薬プロトコール
Figure 0005809330
B.血清中インスリンレベル
血清中IRI濃度を、各血清試料ごとに、StatLIA(登録商標)アッセイ解析ソフトウェア(Brendan Technologies、カリフォルニア州カールズバッド)を使って、内挿法により、標準曲線から決定した。表37に、Humalog(登録商標)インスリンリスプロ、Humalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20、Humulin(登録商標)RインスリンまたはHumulin(登録商標)Rインスリン/rHuPH20を投与した後のIRI濃度を記載する。表37には前採血試料で測定されるベースラインIRIレベルが記載されている。次に、これらのベースラインを、各時点で測定される実際のIRI濃度から差し引いて、ベースライン調節済のIRI濃度を決定した。
各処置の平均血清中IRI濃度-時間プロファイル(Y軸にIRI濃度をとり、X軸に時間をとったグラフをプロットした時に見られるもの)は、複数のサイクル間で類似していた。全ての投薬サイクルにおいて、Humalog(登録商標)インスリンリスプロおよびHumulin(登録商標)Rインスリンの薬物動態は、rHuPH20製剤に入れて皮下に共投与した場合には加速された。処置間に観察された差異はいずれも、処置サイクル間で実質的に同じであったことから、観察された差異は処置によるものであり約5週間の試験期間にわたり、複数のサイクルにまたがって安定であることが示された。
表37:血清中IRI濃度-時間プロファイル
Figure 0005809330
C.インスリン薬物動態
ベースラインインスリン濃度を差し引いた後のインスリン濃度-時間プロファイル(上記表37)を使って、次に挙げるPKパラメータを算出した:tmax、Cmax、初期t50%、後期t50%、およびAUC区間。PKパラメータは、WinNonlin Professionalバージョン5.2(Pharsight Corp.、カリフォルニア州マウンテンビュー)で、モデル200(model 200)を使って、ノンコンパートメント解析によって導き出した。統計量の計算は、SASバージョン9.1.3(SAS Institute、ノースカロライナ州キャリー)を使って行った。全ての解析は、処置の固定効果を含む混合モデルを使って行った。各動物ごとの反復観察間に複合対称共分散行列(compound symmetric covariance matrix)を仮定した。Cmaxおよび全てのAUC評価項目についての解析は対数変換値を使って行い、値ゼロは対数変換前に1(対数目盛での0)で置き換えた。時間ベースの評価項目は、元の線形目盛で解析した。
単独で送達されるか(対照)、rHuPH20と共に送達される、Humalog(登録商標)インスリンリスプロまたはHumulin(登録商標)Rインスリンの皮下投与後のインスリンの薬物動態の要約を、表38に記載する。単独で送達された、またはrHuPH20と共に送達された、各インスリンのさまざまなPKパラメータを、平均±SDとして示す。各パラメータの%対照(%対照は[rHuPH20を伴うインスリンについての平均(幾何または算術)PK値]/[インスリンのみについての平均(幾何または算術)PK値]×100によって算出される)も表に記載する。%対照の計算は、CmaxパラメータおよびAUCパラメータについては、幾何平均および対数変換データについてのp値に基づき、tmaxならびに初期および後期t50%については算術平均と無変換値に基づく。別段の注記がない限りN=ブタ16匹である。
表39にはHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみとHumulin(登録商標)Rインスリン+rHuPH20とのPKパラメータの比較を記載する。PK値は平均±SDとして記載する。%Humalog(登録商標)インスリンリスプロ(すなわち[rHuPH20を伴うHumalog(登録商標)インスリンリスプロについての平均(幾何または算術)PK値]/[Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみについての平均(幾何または算術)PK値]×100)も記載する。%対照の計算は、CmaxパラメータおよびAUCパラメータについては、幾何平均および対数変換データについてのp値に基づき、tmaxならびに初期および後期t50%については算術平均と無変換値に基づく。 別段の注記がない限りN=16である。
表38:rHuPH20を伴う、またはrHuPH20を伴わない、皮下投与後のインスリンPKパラメータ
Figure 0005809330
a N=15
b N=4
c N=13
表39:Humalog(登録商標)インスリンリスプロのみまたはHumulin(登録商標)RインスリンとrHuPH20を皮下投与した後のインスリンPKパラメータ
Figure 0005809330
a N=15
b N=13
D.要約
ブタにおけるHumulin(登録商標)RインスリンまたはHumalog(登録商標)インスリンリスプロとrHuPH20との共投与は、対照注射(すなわちHumulin(登録商標)RインスリンのみまたはHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみ)と比較して、特定のPKパラメータを有意に変化させた。具体的に述べると、最大曝露(Cmax)は、rHuPH20と共に投与した場合、それぞれの対照と比較して、Humalog(登録商標)インスリンリスプロでは163%(p=0.0251)、Humulin(登録商標)Rインスリンでは165%(p=0.0218)増加した。作用の発現(初期t50%)は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロでは36分から11分に加速され(p=0.0182)、Humulin(登録商標)Rインスリンでは61分から10分に加速された(p<0.0001)。最大効果到達時間(tmax)は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロでは58分から39分に加速され(p=0.1963)、Humulin(登録商標)Rインスリンでは94分から38分に加速された(p=0.0004)。後期t50%は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロでは110分から52分に加速され(p=0.0002)、Humulin(登録商標)Rインスリンでは170分から70分に加速された(p<0.0001)。総曝露(AUCinf)には、Humalog(登録商標)インスリンリスプロ(117%対照;p=0.5176)でも、Humulin(登録商標)Rインスリン(88%対照;p=0.6118)でも、意味のある変化はなかった。累積曝露は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロでも(AUC0-30は、Humalog(登録商標)インスリンリスプロを単独で投与した場合と比較して、763%増加した;p=0.0198)、Humulin(登録商標)Rインスリンでも(AUC0-30は、Humulin(登録商標)Rインスリンを単独で投与した場合と比較して、1429%増加した;p=0.0027)、より早い時間枠に向かってシフトした。Humulin(登録商標)RインスリンとrHuPH20の共投与、またはHumalog(登録商標)インスリンリスプロとrHuPH20の共投与は、Humulin(登録商標)RインスリンのみまたはHumalog(登録商標)インスリンリスプロのみと比較した最大血清中IRI濃度到達時間(tmax、初期t50%、後期t50%)の減少およびピーク曝露濃度(Cmax)の増加によって証明されるとおり、(それぞれのインスリンが単独で送達された場合と比較して)血管コンパートメントへのインスリンの吸収速度を増加させた。加えて、Humalog(登録商標)インスリンリスプロでも、Humulin(登録商標)Rインスリンでも、rHuPH20と共投与した場合には、単独で投与した場合と比較して、初期累積曝露(AUC0-30)が増加した。
ヒアルロニダーゼ共投与を伴ってHumalog(登録商標)インスリンリスプロおよびHumulin(登録商標)Rインスリンを投与した場合、動物、順序、またはサイクルには意味のある影響を及ぼすことなく、ピーク曝露の増加および曝露の加速が広く観察され、先のヒト試験(実施例1参照)を綿密に反映している。したがってブタは、ヒアルロニダーゼが食事時インスリン調製物の吸収に及ぼす効果を試験するのに適したモデルである。
[実施例12]
rHuPH20と共に、およびrHuPH20なしで、皮下投与された、2つの用量のレギュラーインスリンの薬物動態
2つの異なる濃度で皮下投与した時のレギュラーインスリンの薬物動態(PK)を、単独の場合と、rHuPH20と共投与した場合の両方について、上記実施例10に記載のブタモデルで評価した。レギュラーインスリンを20U/mLおよび100U/mLの濃度で、単独投与した場合のPKを、rHuPH20との共投与後の同じ2つの濃度と比較するために、複数回投与4元交差デザイン試験(multiple dose 4-way crossover design study)を行った。いずれの場合も、合計0.2U/kgのインスリンを投与した。
A.投薬および試料採取
4つの試験物を投薬用に調製した。2つの試験物はそれぞれ20U/mLおよび100U/mLのレギュラーインスリン(Humulin(登録商標)Rインスリン;Eli Lilly)を含有した(それぞれインスリンU20およびインスリンU100と呼ぶ)。残り2つの試験物は、それぞれ20U/mLおよび100U/mLのレギュラーインスリン(Diosynth Biotechnologies(Schering-Ploughの一部門))を、20μg/mL(約2400U/mL)のrHuPH20と共に含有した(それぞれインスリン-PH20 U20およびインスリン-PH20 U100と呼ぶ)。インスリンU20試験物は、滅菌希釈剤(Eli Lilly)でHumulin(登録商標)Rインスリン(100U/mL;ロットA390566A;Eli Lilly)を1:5希釈することによって調製した。インスリンU100試験物は、無希釈Humulin(登録商標)Rインスリン(100U/mL;ロットA509721;Eli Lilly)とした。インスリン-PH20 U20試験物は、0.74mg/mL(20U/mL)のレギュラーインスリン(ロット番号SIHR107;Diosynth Biotechnologies)と20μg/mL(約2400U/mL)のrHuPH20とを、25mM Tris、120mM NaCl、0.01%ポリソルベート80、pH7.3中に含有した。インスリン-PH20 U100試験物は、3.69mg/mL(100U/mL)のレギュラーインスリン(ロット番号SIHR107;Diosynth Biotechnologies)と20μg/mL(約2400U/mL)のrHuPH20とを、25mM Tris、120mM NaCl、0.01%ポリソルベート80、pH7.3中に含有した。
試験の開始時にそれぞれ21〜25kgの体重を持つ6匹の成体雄ユカタンミニブタ(S&S Farms、カリフォルニア州ラモーナ)に、試験の継続期間中、逐次的血液試料を採取することができるように、頸静脈または頚動脈にカテーテルを外科的に移植しておいた。表40に示すように、それぞれ3匹(3 ammonals)/群を含む2つの試験群に、動物を無作為に分けた。第1サイクルと第2サイクルでは、群の割り当てを維持した。各動物には、一連の投薬サイクルでのインスリン薬物動態の再現性の比較が容易になるように、4つの試験物の全てによる、2サイクルの処置を施した。
試験物は、ブタの左脇腹に、身体の中線より後ろで、皮下(SC)投与した。各動物には、0.2U/kgという、表示したインスリンの単回SCボーラス用量を、1日置きのプロトコールで投与した。インスリンU20試験物およびインスリン-PH20 U20試験物の場合は、10.0μL/kgを投与した。インスリンU100試験物およびインスリン-PH20 U100試験物の場合は、2.0μL/kgを投与した。血液試料(体積0.7〜1.0mL)を投与前に集め(前採血)、次に投与の3、6、9、12、15、20、25、30、45、60、90、120、180および240分後に集めた。血液試料は直ちに、抗凝固剤が入っていない血清チューブに入れ、最低30分間は氷上に置いた後、周囲温度、9500×gで、5分間、遠心分離した。次に、事前にラベルが貼られたチューブに血清を移し、凍結し、免疫反応性インスリン(IRI)のレベルを決定するために試料がMillipore Biopharma Services(ミズーリ州セントチャールズ)に出荷されるまで、-80℃で保存した。
表40:投薬プロトコール
Figure 0005809330
B.血清中インスリンレベル
血清中IRI濃度を、各血清試料ごとに、StatLIA(登録商標)アッセイ解析ソフトウェア(Brendan Technologies、カリフォルニア州カールズバッド)を使って、内挿法により、標準曲線から決定した。表41に、インスリンU20、インスリンU100、インスリン-PH20 U20およびインスリン-PH20 U100を投与した後の平均血清中IRI濃度を記載する。表41には前採血試料で測定されるベースラインIRIレベルが記載されている。次に、これらのベースラインを、各時点で測定される実際のIRI濃度から差し引いて、ベースライン調節済のIRI濃度を決定した。
各投薬サイクル後のインスリン濃度-時間プロファイルを各処置ごとに比較した。各試験物についての平均血清中IRI濃度-時間プロファイル(Y軸にIRI濃度をとり、X軸に時間をとったグラフをプロットした時に見られるもの)は、どちらのサイクルでも類似していた。両方の投薬サイクルにおいて、インスリンのPKは、どちらの濃度でも、rHuPH20製剤と皮下に共投与した場合には加速された。第1サイクルおよび第2サイクルから得られるデータに対し、処置、順序、サイクル、処置とサイクルの交互作用、および順序内動物(animal within sequence)の固定効果を含む追加の統計モデルを、一次および二次PKパラメータ(一次PKパラメータには、割り当てられた時間枠についての曲線下面積(AUC)、Cmax、tmax、初期t50%、および後期t50%%を含め、二次PKパラメータには、さらに細かいAUCの時間枠、MRT(最後および無限大)、λz、HLλz、クリアランス、および分布容積を含めた)に関して構築したところ、これらの変量のいずれについても、順序、サイクル、動物の系統的効果(systematic effect)はなく、サイクルおよび処置間の交互作用もないことが明らかになった。
表41:血清中IR濃度-時間プロファイル
Figure 0005809330
C.インスリン薬物動態
ベースラインインスリン濃度を差し引いた後のインスリン濃度-時間プロファイル(上記表41)を使って、次に挙げるPKパラメータを算出した:tmax、Cmax、初期t50%、後期t50%、およびAUC区間。WinNonlin Professionalモデル200(バージョン5.2、Pharsight Corp.、カリフォルニア州マウンテンビュー)を使用し、ノンコンパートメント解析によって、血清IRI対時間データをモデル化し、PKパラメータを算出した。統計量の計算および群間の統計的比較は、SASバージョン9.1.3(SAS Institute、ノースカロライナ州キャリー)を使って行った。全ての解析は、処置の固定効果を含む混合モデルを使って行った。各動物ごとの反復観察間に複合対称共分散行列を仮定した。Cmaxおよび全てのAUC評価項目の解析は対数変換値を使って行い、値ゼロは対数変換前に1(対数目盛での0)で置き換えた。時間ベースの評価項目は、元の線形目盛で解析した。
インスリンU20、インスリンU100、インスリン-PH20 U20およびインスリン-PH20 U100の皮下投与後のインスリンの薬物動態の要約を、表42に記載する。単独で送達された、またはrHuPH20と共に送達された、各インスリンのさまざまなPKパラメータを、平均±SDとして示す。各パラメータについて%対照(%対照=[rHuPH20を伴うインスリンについてのPK値]/[インスリンのみについてのPK値]×100)も表に記載する。%対照の計算は、CmaxパラメータおよびAUCパラメータについては、幾何平均および対数変換データについてのp値に基づき、一方、tmaxならびに初期および後期t50%については、%対照の計算は算術平均と無変換値に基づく。別段の注記がない限りN=ブタ16匹である。
表42:rHuPH20を伴う、またはrHuPH20を伴わない、皮下投与後のインスリンPKパラメータ
Figure 0005809330
b N=11匹
c N=10匹
d N=8匹
e N=9匹
D.要約
この試験では、rHuPH20と共に、およびrHuPH20なしで、異なる濃度で皮下投与される同じ総インスリン用量の効果を調べた。
rHuPH20との共投与がない場合、100U/mLから20U/mLへのインスリン濃度の低下は、より速いインスリン吸収をもたらすと共に、ピークインスリン濃度を増加させ、より大きい初期累積インスリン曝露をもたらし、初期ほどではないが、より大きい総累積インスリン曝露ももたらした。濃度を20U/mLに低下させることにより、対照100U/mL注射と比較して、1)Cmaxは幾何平均が158pmol/Lから302pmol/Lへと91%増加し、2)平均初期t50%は35分から23分に、tmaxは64分から57分に、そして後期t50%は109分から84分に減少し、3)幾何平均AUC0-15は20から80に300%、AUC0-30は222から791に256%、そしてAUClastは9,021から20,820に131%(単位はいずれもpmol×分/L)増加した。
どちらの濃度のレギュラーインスリンをrHuPH20と共投与しても、やはり、インスリンのみと比較して、皮下注射後に、より速い吸収が起こった。しかし、20U/mLという低い方のインスリン濃度では、(上述のとおり)単独で投与された場合に20U/mLではインスリンが既に速く吸収されているので、単独で投与されたインスリンに対する相対的増加が劇的ではなかった。
糖尿病患者がより典型的に使用する100U/mL濃度では、rHuPH20との共注射により、100U/mL濃度のインスリン単独の投与と比較して、1)Cmaxは幾何平均が158pmol/Lから375pmol/Lに137%増加し(p=0.0095)、2)平均初期t50%は35分から12分に減少し(p=0.0063)、一方、tmaxおよび後期T50%は有意に変化せず、3)幾何平均AUC0-15は20から1438に70倍(p<0.0001)、AUC0-30は222から5337に23倍(p=0.0015)、そしてAUClastは9,021から31,905に250%(p=0.0038)増加した(単位は全てpmol×分/L)。
20U/mLという低い方のインスリン濃度では、rHuPH20との共投与が、インスリンのみの投与と比較して、次に挙げる効果をインスリンPKにもたらした:1)Cmaxは幾何平均が302pmol/Lおよび322pmol/Lで有意に変化しなかった(p=0.84);2)平均初期t50%は23分から12分に低下する傾向があり(p=0.16)、一方、tmaxおよび後期t50%は有意に変化しなかった;3)幾何平均AUC0-15は80から1533に18倍増加し(p=0.0045)、AUC0-30は791から4934に5倍増加し(p=0.0567)、AUClastは20,820と22,184で変化しなかった(p=0.88)(単位は全てpmol×分/L)。
rHuPH20と100U/mLのレギュラーインスリンを投与した時の、rHuPH20なしの対照インスリン注射と比較した、ピーク曝露の増加および曝露の加速は、先のヒト試験(実施例1)、ブタ試験(実施例10)を綿密に反映している。これらの結果はさらに、インスリン動態が低濃度での投与によっても加速されうることを証明しており、これは、濃度依存的な律速的インスリン六量体解離過程と合致している(すなわち、インスリンを単独で皮下投与した場合、そのインスリンは、それが六量体から単量体に解離したときに吸収されるが、それは低いインスリン濃度で起こる過程である)。rHuPH20と共投与すると、インスリン濃度に対するこの依存性が著しく低下するか、さらには排除される。したがって、rHuPH20とインスリンとの共投与が持つヒアルロニダーゼ分散効果は、高濃度のインスリンを注射した時に観察されるインスリン薬物動態の望ましくない減速を、減少させることができる。
[実施例13]
メチルパラベンの存在下で塩濃度がrHuPH20に及ぼす効果
加速温度(accelerated temperature)(40℃)において、保存剤メチルパラベンを含むrHuPH20、およびメチルパラベンを含まないrHuPH20の安定性に、NaClが及ぼす効果を評価した。rHuPH20(ヒスチジン/HCl、pH6.5、130mM NaCl中、10mg/ml)を、メチルパラベン(Fluka)と共に、またはメチルパラベンなしで、6つの異なる濃度のNaClと混合することにより、12の異なる製剤を調製した。各製剤は、10μg/mLのrHuPH20、25mM Tris、pH7.3、0.01%Tween80と、0、50mM、100mM、150mM、200mMまたは250mM NaClのいずれかとを、0.2%メチルパラベン(methyparaben)と共に、またはメチルパラベンなしで含有した。これらの溶液を、ゴム栓付きの2mlタイプIガラスバイアルに小分けし、試験の間はアルミナキャップで封印した。1セットのバイアルを40℃で4日間保存し、もう1セットのバイアルは、陽性対照とするために、2〜8℃の冷蔵庫で保存した。次にヒアルロニダーゼ(酵素)活性について試料を調べた。凝集のレベルを評価するために、G2000 SWXLカラム(Tosoh Bioscience)を使用し、1×PBSをランニングバッファーとし、流速を1ml/分に設定して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行った。
表43に、ヒアルロニダーゼ(酵素)活性、%主要ピーク(すなわち主要ピーク中に含まれるrHuPH20の百分率)および%凝集体ピーク(すなわち凝集体によるピーク中に含まれるrHuPH20の百分率)を含む、試験の結果を記載する。rHuPH20の安定性はNaClの濃度に鋭敏であることが観察された。一般に、製剤を40℃でインキュベートした場合、NaCl濃度が低下するにつれて、rHuPH20の酵素活性が低下した。しかし、2〜8℃の冷蔵庫で保存した場合、rHuPH20はどの製剤でも酵素活性を保っていた。高温では、NaClを溶液から完全に排除すると、メチルパラベンの有無とは関わりなく、rHuPH20の全活性が失われた。酵素活性の喪失は、NaCl濃度が増加するにつれて減少した。メチルパラベンを加えた試料とメチルパラベンを加えていない試料の間には、酵素活性に有意差があった(対応のあるt検定、P=0.0228)。
NaCl濃度とrHuPH20の凝集体レベルにも同様の相関関係が観察された。試料を高温で保存した場合、凝集体レベルはNaCl濃度が減少すると共に増加した。2〜8℃で保存した場合は、メチルパラベンを添加しても、添加しなくても、基本的に変化はなかった。-40℃で保存したメチルパラベン(methyparaben)含有製剤は、メチルパラベンを含有しない製剤よりも有意にに多くの凝集体を形成した(対応のあるt検定、P=0.0058)。
このように、酵素活性とSECによって評価したrHuPH20の単量体パーセントは、メチルパラベンを含有する製剤では、メチルパラベンを含有しない製剤と比較して、有意に減少した。さらに、試験したNaCl濃度範囲(0〜250mM)内では、NaCl濃度とrHuPH20安定性の増加との間に直接的な関係があった。
表43:40℃および4℃で4日間保存した試料の酵素活性およびSEC結果
Figure 0005809330
LOD=検出限界
[実施例14]
インスリンおよびrHuPH20の共製剤
さまざまな条件下、例えばさまざまな温度およびpH、ならびに製剤での、rHuPH20およびインスリンの安定性を評価するために、一連の試験を行った。
1.オスモル濃度およびpHがrHuPH20に及ぼす効果
最初の試験では、さまざまな塩濃度およびpH値で製剤を調製し、冷蔵条件下(5℃)、加速条件下(25℃)、およびストレス条件下(25℃、35℃および40℃)で最大3ヶ月まで貯蔵した後に活性の喪失を評価することにより、オスモル濃度およびpHがrHuPH20(Hylenex組換え体(ヒトヒアルロニダーゼ注射剤)として製剤化されたもの)の安定性に及ぼす効果を評価した。Hylenex組換え体(ヒトヒアルロニダーゼ注射剤)は150U/mL rHuPH20、144mM NaCl、10mMリン酸水素ナトリウム、1mg/mLヒトアルブミン(human albumin human)、2.7mMエデト酸二ナトリウム、2.7mM CaClを含有し、290〜350mOsmのオスモル濃度範囲および7.4のpHを持つ。この製剤を調節して、表44に記載する8つの製剤(および対照Hylenex)を調製した。酵素活性(すなわちヒアルロニダーゼ活性)は上述のように決定した。rHuPH20含有量もRP-HPLCで決定した。
pHおよびオスモル濃度の仕様限界で調製された4つの溶液または対照溶液では、推奨貯蔵条件(5℃)または加速貯蔵条件(25℃または30℃)において意味のある変化は観察されず、対照溶液にも推奨貯蔵条件では意味のある変化が観察されなかった。酵素活性の喪失およびrHuPH20含有量の喪失によって評価したところ、rHuPH20はpH7.4で安定であり、一般に、塩基性条件下より酸性条件下の方が安定であることが観察された。イオン強度の影響は、もっと小さかった。高温では、高いイオン強度を持つ製剤の方が低いイオン強度を持つものよりもわずかに安定であるようだった。35℃〜40℃では安定性の有意な減少が起こった。
表44:rHuPH20の製剤
Figure 0005809330
2.pHがrHuPH20に及ぼす効果
バッファー系のpHの変動がrHuPH20の安定性に及ぼす効果を評価した。rHuPH20(1,200,000U/mL、10mg/mL)を5.0、5.5、6.0、6.5または7.0のpHを持つ130mM NaCl、10mMヒスチジン中に製剤化した。次にそれらの製剤を、5℃で0、3、6、9および12ヶ月間;60%相対湿度中、25℃で0、3、6、9および12ヶ月間、そして35℃で0、1、2、3および6ヶ月間、貯蔵した。冷蔵温度では、全ての製剤が全期間にわたって安定だった。rHuPH20は、pH6.0、6.5、および7.0の試験物については、5℃で12ヶ月、25℃で6ヶ月、および35℃で3ヶ月にわたって、傾向限度(trend limits)内に保たれた。pH5.0および5.5で調製された製剤は、高温に対してより鋭敏であり、酵素活性の有意な減少を起こした。
3.インスリン類似体と共に製剤化されたrHuPH20にpHおよび保存剤が及ぼす効果
最大4週間にわたる冷蔵(5℃)、加速(30℃および35℃)ならびに撹拌(25℃)貯蔵条件において、インスリン類似体と共に製剤化されたrHuPH20の安定性に、pHおよび保存剤が及ぼす影響を評価するために、rHuPH20をHumalog(登録商標)インスリンリスプロまたはNovolog(登録商標)インスリンアスパルトと混合し、酵素活性および安定性を評価した。インスリンの安定性はRP-HPLCで評価した。0.2%フェノール;0.2%m-クレゾール;0.2%パラベン;0.2%フェノールおよび0.1%F68;または0.2%フェノールおよび1mMベンゾエートを含む、10μg/mL rHuPH20、100U/mLインスリン類似体、140mM NaCl、20mM Tris HClで、試験物を調製した。これらの製剤のそれぞれを、pH7、7.25および7.5で調製して、合計30の試験物(15のHumalog(登録商標)インスリンリスプロ/rHuPH20試験物と、15のNovolog(登録商標)インスリンアスパルト/rHuPH20試験物)を得た。次に、これらの試験物を、5℃、30℃、35℃および25℃で、撹拌しながら、4週間貯蔵した。rHuPH20酵素活性を全ての条件下で評価した。インスリンの溶解性を、5℃および25℃で撹拌しながら貯蔵した試験物について、RP-HPLCで評価した。
rHuPH20活性は、5℃で4週間後に、保存剤の影響もpHの影響も受けないことが観察された。撹拌ストレス条件(20℃)において、Novolog(登録商標)インスリンアスパルトおよび保存剤のいずれかと共製剤化した場合は、試験したどのpHでも、rHuPH20の活性は影響を受けなかった。対照的に、Humalog(登録商標)インスリンリスプロを含むいくつかの製剤は、例えば0.02%フェノール、m-クレゾールまたはフェノール/ベンゾエートと共に製剤化した場合に、6時間後のrHuPH20の活性が、最も典型的にはpHが増加するにつれて、最大75%減少した。この活性喪失はHumalog(登録商標)インスリンリスプロの沈殿と相関した。
表45に、30℃および35℃でインキュベートした後に各試験物中に保たれていたrHuPH20活性を記載する。30℃では、平均で元の活性の約85%へのわずかなrHuPH20活性喪失が観察された。35℃では、特に、例えば0.2%m-クレゾールまたは0.2%パラベンを含有する試験物では、pHが増加するにつれて、より大きな喪失が観察された。
Novolog(登録商標)インスリンアスパルトは、全ての製剤において、全ての貯蔵条件下で、安定性および可溶性を保っていた。Humalog(登録商標)インスリンリスプロの溶解性は、pH7.5では、5℃で4週間後に保たれていたが、Humalog(登録商標)インスリンリスプロは、より低いpH(7.0および7.25)では、この温度で沈殿した。沈殿は撹拌ストレス条件下で6時間後にも観察された。
表45:インスリン類似体/rHuPH20製剤において30℃および35℃で4週間後に残存するrHuPH20活性
Figure 0005809330
変更態様は当業者には明白であるだろうから、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。

Claims (48)

  1. a)正常血中グルコースレベルを維持するための治療有効濃度の速効型インスリン類似体、ここに、
    該類似体はインスリングルリジンまたはインスリンアスパルトであり、
    該血中グルコースレベルは食事時および食後血中グルコースレベルである、および
    b)少なくとも1単位(U)/mLのヒアルロニダーゼ活性の濃度の可溶性ヒアルロニダーゼ
    を含む超速効型インスリン組成物であって、ここに、該超速効型インスリン組成物は、皮下、皮内、筋内および腹腔内投与のなかから選択される投与経路用に製剤化されており該超速効型インスリン組成物は、該速効型インスリン類似体単独よりも早く作用が発現し、該速効型インスリン類似体単独よりも短い作用持続期間を有し、それにより、投与時に、非糖尿病対象の内因性食後インスリン放出を綿密に模倣する、超速効型インスリン組成物。
  2. 速効型インスリン類似体の濃度が10単位(U)/mL〜500U/mlのインスリンである、請求項1に記載の組成物。
  3. 速効型インスリン類似体の濃度が10U/mL〜500U/mlのインスリンであり、
    ヒアルロニダーゼの濃度が、少なくとも2U/mLである、
    請求項1または2に記載の組成物。
  4. ヒアルロニダーゼの濃度が、少なくとも30単位/mLのヒアルロニダーゼ活性である、請求項1また2に記載の組成物。
  5. 組成物の体積が50mLまでである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. ヒアルロニダーゼの濃度が少なくとも1U/mLから5000U/mLまでである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 複数回投与用に製剤化されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 単回投与用に製剤化されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
  9. クローズドループシステム、インスリンペンまたはインスリンポンプによる送達用に製剤化されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
  10. 血中グルコースレベルが食後血中グルコースレベルである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
  11. インスリン類似体が、配列番号103に記載するアミノ酸配列を持つA鎖と配列番号147または149のいずれか一つに記載するアミノ酸配列を持つB鎖とを有するインスリンの中から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
  12. さらに1つ以上の追加インスリンを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
  13. さらに基礎作用型インスリンを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
  14. 可溶性ヒアルロニダーゼがヒツジPH20、ウシPH20または切断型ヒトPH20から選択される、請求項1に記載の組成物。
  15. 可溶性ヒトPH20が、配列番号4〜9および48のいずれか一つに記載するアミノ酸配列を持つポリペプチドの中から選択される切断型ヒトPH20である、請求項14に記載の組成物。
  16. ヒアルロニダーゼが組換え可溶性ヒトPH20として提供される可溶性ヒアルロニダーゼである、請求項14または15に記載の組成物。
  17. 請求項1〜16のいずれか一項に記載する組成物を含むシリンジまたはバイアル。
  18. 請求項1〜16のいずれか一項に記載する組成物を含むクローズドループシステム。
  19. 請求項1〜16のいずれか一項に記載する組成物を含むインスリンポンプ。
  20. 請求項1〜16のいずれか一項に記載する組成物を含むインスリンペン。
  21. 対象における血中グルコースレベルを管理するためのクローズドループシステムであって、
    速効型インスリン類似体と可溶性ヒアルロニダーゼとを含み、ここに、
    該可溶性ヒアルロニダーゼが少なくとも1単位(U)/mLのヒアルロニダーゼ活性の濃度であり、
    該速効型インスリン類似体がインスリングルリジンまたはインスリンアスパルトであり、
    該速効型インスリン類似体と該可溶性ヒアルロニダーゼとが同じまたは異なるリザーバに入っており、
    該速効型インスリン類似体および該可溶性ヒアルロニダーゼが組み合わされたとき、超速効型インスリン組成物を形成し、
    該超速効型インスリン組成物該速効型インスリン類似体単独よりも早く作用が発現し、該速効型インスリン類似体単独よりも短い作用持続期間を有し、それにより、投与時に、該組成物が非糖尿病対象の内因性食後インスリン放出を綿密に模倣する
    クローズドループシステム。
  22. グルコースセンサー、ヒアルロニダーゼと速効型インスリン類似体とを送達するための送達システム、およびポンプ機能とモニタリング機能とを統合するようにプログラムされたソフトウェアの1つ以上をさらに含み、それにより、ヒアルロニダーゼと速効型インスリン類似体とが、非糖尿病対象における血糖管理を模倣する血糖管理が達成されるように送達される、請求項21に記載のクローズドループシステム。
  23. インスリン類似体が、配列番号103に記載するアミノ酸配列を持つA鎖と配列番号147または149のいずれか一つに記載するアミノ酸配列を持つB鎖とを有するインスリンの中から選択される、請求項21または22に記載のクローズドループシステム。
  24. さらに1つ以上の追加インスリンを含む、請求項21〜23のいずれか一項に記載のクローズドループシステム。
  25. 追加インスリンの一つが基礎作用型インスリンである、請求項24に記載のクローズドループシステム。
  26. 速効型インスリンを含有するリザーバが7000単位(U)までのインスリンを含有する、請求項21〜25のいずれか一項に記載のクローズドループシステム。
  27. 少なくとも0.1単位の個々の用量増分で速効型インスリンを送達することができる、請求項21〜26のいずれか一項に記載のクローズドループシステム。
  28. ヒアルロニダーゼを含有するリザーバが、少なくとも0.3単位のヒアルロニダーゼ活性である量のヒアルロニダーゼを含有する、請求項21〜27のいずれか一項に記載のクローズドループシステム。
  29. 少なくとも0.3単位のヒアルロニダーゼ活性と機能的に等価である量のヒアルロニダーゼという個々の用量増分でヒアルロニダーゼを送達することができる、請求項21〜28のいずれか一項に記載のクローズドループシステム。
  30. 速効型インスリン類似体を選択し、ここに、該速効型インスリン類似体は、インスリングルリジンまたはインスリンアスパルトであり、
    それを、少なくとも1U/mLの可溶性ヒアルロニダーゼと組み合わせて、組成物を超速効型インスリン組成物にすることを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の超速効型インスリン組成物を製造するための方法。
  31. 10U〜500Uの速効型インスリン類似体を含有する第1組成物、ここに、該速効型インスリン類似体はインスリングルリジンまたはインスリンアスパルトである、および、
    少なくとも1U/mLの可溶性ヒアルロニダーゼを含有する第2組成物
    を含む組合せであって、ここに、
    該速効型インスリン類似体および該ヒアルロニダーゼが組み合わされたとき、超速効型インスリン組成物を形成し、
    該超速効型インスリン組成物該速効型インスリン類似体単独よりも早く作用が発現し、該速効型インスリン類似体単独よりも短い作用持続期間を有し、それにより、投与時に、該組成物が非糖尿病対象の内因性食後インスリン放出を綿密に模倣し、かつ、
    該組成物が皮下、腹腔内、筋内および皮内投与のなかから選択される投与経路用に製剤化されている、組合せ剤。
  32. ヒアルロニダーゼの濃度が少なくとも30単位/mLのヒアルロニダーゼ活性である、請求項31に記載の組合せ剤。
  33. 第1組成物中の速効型インスリン類似体の量が少なくとも10U/mLである、請求項31または請求項32に記載の組合せ剤。
  34. 第2組成物中のヒアルロニダーゼの濃度が少なくとも1U/mLから5000U/mLまでである、請求項31〜33のいずれか一項に記載の組合せ剤。
  35. 対象における正常血中グルコースレベルを維持するための医薬を製造するための、請求項1〜16のいずれか一項に記載する組成物の使用。
  36. 対象における正常血中グルコースレベルを維持するための医薬を製造するための、請求項31〜34のいずれか一項に記載する組合せ剤の使用。
  37. 対象における正常血中グルコースレベルの維持における使用のための請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
  38. 血中グルコースレベルが食後レベルを含む、請求項35または36に記載の使用。
  39. 血中グルコースレベルが食後レベルを含む、請求項37に記載の組成物。
  40. 対象における正常血中グルコースレベルの維持における使用のための請求項31〜34のいずれか一項に記載の組合せ剤。
  41. 血中グルコースレベルが食後レベルを含む、請求項40に記載の組合せ剤。
  42. 請求項1〜16のいずれか一項に記載する組成物または請求項31〜34のいずれか一項に記載する組合せ剤を含み、指示書を含んでいてもよい、キット。
  43. 対象において食後血中グルコースレベルを管理するための、食事の20分未満前に、または食事と共にないし食事開始後10分または20分未満内に糖尿病対象に投与するための医薬を製造するための超速効型組成物の使用であって、ここに、該組成物が、
    a)正常血中グルコースレベルを維持するための治療有効濃度の速効型インスリン類似体、ここに、
    該血中グルコースレベルは、食後血中グルコースレベルであり、
    該速効型インスリン類似体は、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、およびインスリングルリジンから選択され、
    および
    b)投与時に組成物を超速効型インスリン組成物にするのに十分な濃度のヒアルロニダーゼ、ここに、
    該ヒアルロニダーゼは、少なくとも1単位(U)/mLのヒアルロニダーゼ活性の濃度である、
    を含み、
    該超速効型インスリン組成物が、該速効型インスリン類似体単独よりも早く作用が発現し、該速効型インスリン類似体単独よりも短い作用持続期間を有し、それにより、投与時に、該組成物が非糖尿病対象の内因性食後インスリン放出を綿密に模倣し、
    かつ、
    該超速効型インスリン組成物が、皮下、皮内および腹腔内投与のなかから選択される投与経路用に製剤化されているところの、使用。
  44. 速効型インスリン類似体がインスリングルリジンまたはインスリンアスパルトである、請求項43記載の使用。
  45. ヒアルロニダーゼが可溶性ヒトPH20ヒアルロニダーゼである、請求項43または44に記載の使用。
  46. 対象において食後血中グルコースレベルを管理するための、食事の15分未満前に、または食事と共にないし食事後10分未満内に糖尿病対象に投与するために使用するための超速効型インスリン組成物であって、
    a)正常血中グルコースレベルを維持するための治療有効濃度の速効型インスリン類似体、ここに、
    該血中グルコースレベルは、食後血中グルコースレベルであり、
    該速効型インスリン類似体は、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、およびインスリングルリジンから選択され、
    および
    b)投与時に組成物を超速効型インスリン組成物にするのに十分な濃度のヒアルロニダーゼ、ここに、
    該ヒアルロニダーゼは、少なくとも1単位(U)/mLのヒアルロニダーゼ活性の濃度である、
    を含み、
    該超速効型インスリン組成物が、該速効型インスリン類似体単独よりも早く作用が発現し、該速効型インスリン類似体単独よりも短い作用持続期間を有し、それにより、投与時に、該組成物が非糖尿病対象の内因性食後インスリン放出を綿密に模倣し、
    かつ、
    皮下、皮内および腹腔内投与のなかから選択される投与経路用に製剤化されている、超速効型インスリン組成物。
  47. 速効型インスリン類似体がインスリングルリジンまたはインスリンアスパルトである、請求項46記載の組成物。
  48. ヒアルロニダーゼがヒトPH20ヒアルロニダーゼの可溶性形態である、請求項46または47記載の組成物。
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