要約
ここに提供されるのは、治療有効量の速効性のインスリンおよび組成物を超速効性とするのに十分な量のヒアルロナン分解酵素を含む、安定な配合剤組成物である。提供される安定な配合剤は、それぞれ安定性に対する要求が異なる頻回注射法(MDI)のために製剤されまたは持続皮下インスリン注入療法(CSII)のために製剤される。特に、CSII用配合剤は、高温かつ撹拌下に安定であるように製剤され、一方、MDI用配合剤は、冷蔵または環境温度で保存されたときに安定であるように製剤される。
ここに提供されるのは、治療有効量の速効性のインスリン、本組成物を超速効性とするのに十分な量のヒアルロナン分解酵素、50mM〜200mMまたは約50mM〜200mM濃度のNaCl、防腐剤の抗菌有効量または防腐剤と一種または複数種の安定化剤の混合物を含む、安定な配合剤組成物である。提供される配合剤は、6.8〜7.8または約6.8〜7.8のpHを有し、本組成物が正確にまたは約2℃〜8℃の温度で少なくとも6ヶ月間および/または正確にまたは約20℃〜30℃の温度で少なくとも14日間安定であるように製剤する。
数例において、ここに提供する安定な配合剤中のヒアルロナン分解酵素は、初期のヒアルロニダーゼ活性を正確にまたは約2℃〜8℃の温度で少なくとも6ヶ月間および/または正確にまたは約20℃〜30℃の温度で少なくとも14日間維持し、および/またはインスリンは、正確にまたは約2℃〜8℃の温度で少なくとも6ヶ月間および/または正確にまたは約20℃〜30℃の温度で少なくとも14日間組成物中でインスリン初期レベルの少なくとも90%力価を維持するかまたは回収させ、および/またはインスリンは、正確にまたは約2℃〜8℃の温度で少なくとも6ヶ月間および/または正確にまたは約20℃〜30℃の温度で少なくとも14日間初期インスリン純度の少なくとも90%を維持し、および/またはインスリンは正確にまたは約2℃〜8℃の温度で少なくとも6ヶ月間および/または正確にまたは約20℃〜30℃の温度で少なくとも14日間高分子量(HMWt)インスリン種を2%未満に維持する。例えば、安定な配合剤中のヒアルロナン分解酵素は、正確にまたは約2℃〜8℃の温度で少なくとも6ヶ月間および/または正確にまたは約20℃〜30℃の温度で少なくとも14日間、初期ヒアルロニダーゼ活性の少なくとも55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上を維持し、インスリンの純度または力価は、正確にまたは約2℃〜8℃の温度で少なくとも6ヶ月間および/または正確にまたは約20℃〜30℃の温度で少なくとも14日間、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である。
いくつかの態様において、ここに提供される安定な配合剤組成物のpHは、正確にまたは約7.0〜7.6である。例えば、安定な配合剤のpHは、正確にまたは約6.8±0.2、6.9±0.2、7.0±0.2、7.1±0.2、7.2±0.2、7.3±0.2、7.4±0.2、7.5±0.2、7.6±0.2、7.7±0.2または7.8±0.2である。ここに提供される安定な配合剤組成物のNaCl濃度は、正確にまたは約80mM〜200mM、80mM〜140mM、50mM〜100mM、80mM〜100mM、50mM〜80mM、100mM〜140mMまたは120mM〜140mMである。例えば、安定な配合剤のNaCl濃度は、正確にまたは約50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、185mM、190mM、195mMまたは200mMまたは少なくとも50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、185mM、190mM、195mMまたは200mMである。このような例において、100mM未満の組成物におけるNaCl量の上限は、最大110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mMまたは200mMである。数例において、ここで提供される安定な配合剤は、6.8〜7.8または約6.8〜7.8のpH範囲を維持するために十分量の緩衝剤を含む。
一つの態様において、ここに提供される安定な配合剤は、2℃〜8℃または約2℃〜8℃(両端値を含む)の温度で、少なくとも7ヶ月間、少なくとも8ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも10ヶ月間、少なくとも11ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、24ヶ月間、25ヶ月間、26ヶ月間、27ヶ月間、28ヶ月間、29ヶ月間または30ヶ月間安定である。例えば、本配合剤は、2℃〜8℃または約2℃〜8℃(両端値を含む)の温度で、少なくとも18ヶ月間または少なくとも24ヶ月間安定である。他の態様において、ここに提供される安定な配合剤は、正確にまたは約20℃〜30℃(両端値を含む)の温度で、少なくとも15日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間、30日間、35日間、40日間、45日間または50日間安定である。例えば、本配合剤は、正確にまたは約20℃〜30℃(両端値を含む)の温度で、少なくとも1ヶ月間安定である。
また、ここに提供されるのは、治療有効量の速効性のインスリン、本組成物を超速効性とするのに十分な量のヒアルロナン分解酵素、正確にまたは約120mM〜200mMの濃度のNaCl、防腐剤の抗菌有効量または防腐剤と一種または複数種の安定化剤の混合物を含む、安定な配合剤組成物である。提供される配合剤は、正確にまたは約6.5〜7.5のpHを有し、本組成物は、正確にまたは約32℃〜40℃の温度で少なくとも3日間安定であるかまたは撹拌下に少なくとも3時間安定である。
数例において、安定な配合剤は、さらに有効量のタンパク質類、グリコサミノグリカン類(GAG)、多糖類、脂肪酸類、ラノスタノイド類、抗生物質、抗線虫剤、合成有機化合物および/または植物由来生理活性成分を含むが、これらに限定されないヒアルロニダーゼ阻害剤を含む。植物由来生理活性成分の例は、アルカロイド、抗酸化剤、ポリフェノール、フラボノイド類、テルペノイド類および/または抗炎症剤である。数例において、ここで提供される安定な配合剤におけるヒアルロニダーゼ阻害剤は、ヒアルロナン分解酵素またはインスリンと共有結合複合体を形成しない。ヒアルロニダーゼ阻害剤の例は、血清ヒアルロニダーゼ阻害剤、アシュワガンダ(Withania somnifera)糖タンパク質(WSG)、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、キトサン類、β−(1,4)−ガラクト−オリゴ糖類、硫酸化ベルバスコース、硫酸化プランテオース、ペクチン、ポリ(スチレン−4−スルホネート)、デキストラン硫酸、アルギン酸ナトリウム、ワカメ(Undaria pinnatifida)由来の多糖、マンデル酸縮合重合体、エイコサトリエン酸、ネルボン酸、オレアノール酸、アリストロキン酸、アジマリン、レセルピン、フラボン、デスメトキシセンタウレイジン、ケルセチン、アピゲニン、ケンフェロール、シリビン、ルテオリン、ルテオリン−7−グルコシド、フロレチン、アピイン、ヘスペリジン、スルホン化ヘスペリジン、カリコシン−7−O−β−D−グルコピラノシド、フラボン−7−硫酸ナトリウム、フラボン7−フルオロ−4’−ヒドロキシフラボン、4’−クロロ−4,6−ジメトキシカルコン、5−ヒドロキシフラボン−7−硫酸ナトリウム、ミリセチン、ルチン、モリン、グリチルリジン、ビタミンC、D−イソアスコルビン酸、D−糖酸1,4−ラクトン、L−アスコルビン酸−6−ヘキサデカノエート(Vcpal)、6−O−アシル化ビタミンC、カテキン、ノルジヒドログアイヤレチン酸、クルクミン、没食子酸N−プロピル、タンニン酸、エラグ酸、没食子酸、フロロフコフレッコールA、ジエコール、8,8’−ビエコール、プロシアニジン、ゴシポール、セレコキシブ、ニメスリド、デキサメサゾン、インドメタシン、フェノプロフェン、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、サリチレート、クロモグリク酸二ナトリウム、金チオリンゴ酸ナトリウム、トランシリスト、トラキサノクス、イベルメクチン、リンコマイシンおよびスペクチノマイシン、スルファメトキサゾールおよびトリメトプリム、ネオマイシン硫酸塩、3α−アセチルポリポレン酸A、(25S)−(+)−12α−ヒドロキシ−3α−メチルカルボキシアセテート−24−メチルラノスタ−8,24(31)−ジエン−26−オイック酸、ラノスタノイド、ポリポレン酸C、PS53(ヒドロキノン−スルホン酸−ホルムアルデヒドポリマー)、ポリ(スチレン−4−スルホネート)のポリマー、VERSA-TL 502、1−テトラデカンスルホン酸、マンデル酸縮合重合体(SAMMA)、1,3−ジアセチルベンゾイミダゾール−2−チオン、N−モノアシル化ベンズイミダゾール−2−チオン、N,N’−ジアシル化ベンズイミダゾール−2−チオン、アルキル−2−フェニルインドール誘導体、3−プロパノイルベンゾオキサゾール−2−チオン、N−アルキル化インドール誘導体、N−アシル化インドール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、N−置換インドール−2−および3−カルボキサミド誘導体、N−置換インドール−2−および3−カルボキサミド誘導体のハロゲン化類似体(クロロおよびフルオロ)、2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルインドール、インドールカルボキサミド類、インドールアセトアミド類、3−ベンゾリル−1−メチル−4−フェニル−4−ピペリジノール、ベンゾイルフェニルベンゾエート誘導体、l−アルギニン誘導体、グアニジウムHCL、L−NAME、HCN、リナマリン、アミグダリン、ヘデラゲニン、エスチン、CIS−ヒノキレシノールおよび/または1,3−ジ−p−ヒドロキシフェニル−4−ペンテン−1−オンである。
いくつかの態様において、ここで提供される安定な配合剤は、ヒアルロナン(HA)オリゴ糖であるヒアルロニダーゼ阻害剤を、正確にまたは約1mg/mL〜20mg/mLの濃度で含む。数例において、HAオリゴ糖は、二糖または四糖である。他の例において、HAオリゴ糖は反応した還元末端を有する。
ここに提供される安定な配合剤は、本配合剤中のヒアルロナン分解酵素が、正確にまたは約32℃〜40℃の温度で少なくとも3日間初期ヒアルロニダーゼ活性の少なくとも50%を維持するようにまたは撹拌下に少なくとも3時間安定であるように、および/または本組成物中のインスリンが、正確にまたは約32℃〜40℃の温度で少なくとも3日間組成物中のインスリン初期レベルの少なくとも90%力価を維持するかまたは回収させ、または撹拌下に少なくとも3時間安定であり、および/または正確にまたは約32℃〜40℃の温度で少なくとも3日間初期インスリン純度の少なくとも90%を維持しまたは撹拌下に少なくとも3時間安定であり、および/または正確にまたは約32℃〜40℃の温度で少なくとも3日間高分子量(HMWt)インスリン種を2%未満に維持しまたは撹拌下に少なくとも3時間安定である。一例において、安定な配合剤は、本組成物中のヒアルロナン分解酵素が、正確にまたは約32℃〜40℃の温度で少なくとも3日間初期ヒアルロニダーゼ活性の少なくとも55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上維持するようにまたは撹拌下に少なくとも3時間安定であるように製剤する。他の例において、安定な配合剤を、インスリンの純度または力価が、正確にまたは約32℃〜40℃の温度で少なくとも3日間少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上であるようにまたは撹拌下に少なくとも3時間安定であるように製剤する。
いくつかの態様において、ここで提供される安定な配合剤のpHは正確にまたは約6.3±0.2、6.4±0.2、6.5±0.2、6.6±0.2、6.7±0.2、6.8±0.2、6.9±0.2、7.0±0.2、7.1±0.2、7.2±0.2、7.3±0.2、7.4±0.2または7.5±0.2である。他の態様において、安定な配合剤のNaCl濃度組成物は正確にまたは約150mM〜200mMまたは160mM〜180mMである。例えば、NaCl濃度は正確にまたは約120mM、130mM、140mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、185mM、190mM、195mMまたは200mMである。いくつかの態様において、安定な配合剤は、37℃または約37℃で少なくとも3日間安定である。他の態様において、安定な配合剤は、少なくとも4日間、少なくとも5日間または少なくとも6日間である。いくつかの態様において、安定な配合剤は、正確にまたは約6.5〜7.5の範囲のpHを維持するのに十分量の緩衝剤を含む。
ここに提供される安定な配合剤組成物に含まれるヒアルロナン分解酵素群は、例えば、ヒトを含む動物ヒアルロニダーゼ群のようなヒアルロニダーゼ群、特にその可溶性形態、および/またはコンドロイチナーゼ群を含む。ヒアルロナン分解酵素群の例は、ヒアルロニダーゼ群および/またはコンドロイチナーゼ群である。いくつかの態様において、ヒアルロナン分解酵素は、中性pHで活性なヒアルロニダーゼである。他の態様において、ヒアルロナン分解酵素は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを欠くか、または細胞から発現されたとき膜型ではない。例えば、ヒアルロナン分解酵素は、GPIアンカーの全部または一部を除去するために、1個以上のアミノ酸残基のC末端短縮化を含む。数例において、ここに提供する安定な配合剤中のヒアルロナン分解酵素は、PH20であるヒアルロニダーゼである。PH20ヒアルロニダーゼ群の例は、非ヒトまたはヒトPH20ヒアルロニダーゼ群である。包含されるのは、配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸配列を有する、または配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸配列と少なくとも85%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ヒアルロニダーゼ活性を維持するPH20ヒアルロニダーゼ群である。例えば、PH20は、配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸配列と少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有し、ヒアルロニダーゼ活性を維持する。包含されるのは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位の後にC末端短縮化を含むアミノ酸配列を有するPH20ポリペプチド類である。変異体は、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位の後にC末端短縮化を含むアミノ酸配列と少なくとも85%配列同一性を示し、ヒアルロニダーゼ活性を維持するPH20ポリペプチド類である。数例において、ここで提供される安定な配合剤中のPH20は、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位の後にC末端短縮化を含むアミノ酸配列と少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有し、ヒアルロニダーゼ活性を維持する。いくつかの態様において、ヒアルロナン分解酵素は、配列番号4〜9のいずれかに示すアミノ酸配列を有するポリペプチド類の任意の形態、またはその対立形質変異体および他の変異体を含む、C末端切断型PH20ポリペプチドである切断型PH20である。
いくつかの態様において、ここで提供される安定な配合剤中のPH20の量は、正確にまたは約0.1μg/mL〜100μg/mL、1μg/mL〜50μg/mLまたは1μg/mL〜20μg/mLである。例えば、PH20の量は正確にまたは約5μg/mLである。他の態様において、PH20の比活性は75単位(U)/μg〜120U/μgであるかまたは少なくとも約または正確に75単位(U)/μg、80U/μg、85U/μg、90U/μg、100U/μg、110U/μgまたは120U/μgである。ここに提供する安定な配合剤中のヒアルロナン分解酵素の量は正確にまたは約10U/mL〜5000U/mL、50U/mL〜4000U/mL、100U/mL〜2000U/mL、300U/mL〜2000U/mL、600U/mL〜2000U/mL、または100U/mL〜1000U/mLである。例えば、ヒアルロナン分解酵素の量は少なくともまたは約または正確に30U/mL、35U/mL、40U/mL、50U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mL、1000U/mLまたは2000U/mLである。安定な配合剤の一例において、ヒアルロナン分解酵素の量は正確にまたは約600U/mL。
速効性のインスリンは、例えば、単量体または多量体、例えば二量体または六量体であり得る。一つの態様において、速効性のインスリンは速効性のヒトインスリンである。他の態様において、速効性のインスリンはレギュラーインスリン、例えば、ヒトインスリンまたはブタインスリンである。一例において、速効性のインスリンはレギュラーインスリンであり、ここに提供される安定な配合剤のNaCl濃度は50mM〜80mMである。とりわけ速効性のインスリン類は、レギュラーインスリン類、例えば、配列番号103に示すアミノ酸配列を有するA鎖および配列番号104に示すアミノ酸配列を有するB鎖を有するインスリンまたは配列番号123のアミノ酸残基88〜108位に示すアミノ酸配列を有するA鎖および配列番号123のアミノ酸残基25〜54位に示すアミノ酸配列を有するB鎖を有するインスリンである。インスリンは組み換えインスリンでも、合成でも、一部合成でも、天然源から単離されてもよい。速効性のインスリンはインスリン類似体であり得る。インスリン類似体の例は、インスリン類似体はとりわけ配列番号103に示すアミノ酸配列を有するA鎖および配列番号147〜149のいずれかに示すアミノ酸配列を有するB鎖を有するインスリンから選択される。いくつかのここで提供される安定な配合剤の例として、速効性インスリンは、配列番号103(A鎖)および配列番号147(B鎖)に示すアミノ酸配列を有し、NaCl濃度は正確にまたは約80mM〜160mMであるインスリンアスパルトである。ここで提供される安定な配合剤の他の例において、速効性インスリンは、配列番号103(A鎖)および配列番号149(B鎖)に示すアミノ酸配列を有し、NaCl濃度は正確にまたは約80mM〜200mMであるインスリングルリジンである。ここで提供される安定な配合剤のさらに別の例において、速効性インスリンは、配列番号103(A鎖)および配列番号148(B鎖)に示すアミノ酸配列を有し、NaCl濃度は正確にまたは約50mM〜120mMであるインスリンリスプロである。
いくつかの態様において、ここで提供される安定な配合剤中のインスリンは、10U/mL〜1000U/mL、50U/mL〜500U/mL、100U/mL〜1000U/mLまたは500U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量である。例えば、速効性のインスリンの量は少なくともまたは約または正確に10U/mL、20U/mL、30U/mL、40U/mL、50U/mL、60U/mL、70U/mL、80U/mL、90U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、500U/mLまたは1000U/mLである。安定な配合剤の一例において、速効性のインスリンの量は正確にまたは約100U/mLである。安定な配合剤の他の例において、速効性のインスリンはインスリン類似体であり、ヒアルロナン分解酵素はPH20である。
ここで提供される安定な配合剤は、所望により、例えば、非金属結合剤または金属結合剤であるが、これらに限定されない緩衝剤を含む。数例において、緩衝剤はとりわけTris、ヒスチジン、リン酸またはクエン酸から選択される。安定な配合剤の一例において、緩衝剤はTrisである。緩衝剤の濃度は正確にまたは約1mM〜100mM、10mM〜50mMまたは20mM〜40mMである。例えば、緩衝剤の濃度は正確にまたは約または少なくとも1mM、5mM、10mM、15mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mM、30mM、31mM、32mM、33mM、34mM、35mM、36mM、37mM、38mM、39mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mMまたはそれ以上である。安定な配合剤の一例において、緩衝剤の濃度は正確にまたは約30mMである。
ここに提供される安定な配合剤組成物は、接種後7日間で細菌性微生物が少なくとも1.0log10単位減少するように、組成物サンプル中の微生物を死滅させるかまたは繁殖を阻止する防腐剤の抗菌有効量を含む。数例において、防腐剤の抗菌有効量は、組成物に微生物接種液接種後、抗菌防腐剤有効性試験(APET)で試験して、接種後7日間で細菌性微生物が少なくとも1.0log10単位減少するように、接種後14日間で細菌性微生物が少なくとも3.0log10単位減少するように、少なくとも接種後28日間細菌性微生物のさらなる増殖がないように、かつ少なくとも接種後7日間真菌性微生物の増殖がないように、微生物を死滅させるかまたは繁殖を阻止する。他の例において、防腐剤の抗菌有効量は、組成物に微生物接種液接種後、抗菌防腐剤有効性試験(APET)で試験したとき、接種後24時間で細菌性微生物が少なくとも1.0log10単位減少するように、接種後7日間で細菌性微生物が少なくとも3.0log10単位減少するように、接種後28日間細菌性微生物のさらなる増殖がないように、接種後14日間で真菌性微生物が少なくとも1.0log10単位減少するように、および少なくとも接種後28日間真菌性微生物のさらなる増殖がないように微生物を死滅させるかまたは繁殖を阻害する。さらに別の例において、防腐剤の抗菌有効量は、組成物に微生物接種液接種後、抗菌防腐剤有効性試験(APET)で試験したとき、接種後6時間で細菌性微生物が少なくとも2.0log10単位減少するように、接種24時間後細菌性微生物が少なくとも3.0log10単位減少するように、接種後28日間細菌性微生物の分離がないように、接種後7日間で真菌性微生物が少なくとも2.0log10単位減少するように、かつ少なくとも接種28日間真菌性微生物のさらなる増殖がないように、微生物を死滅させるか、または繁殖を阻害する。
安定な配合剤中の防腐剤(複数も可)は、1種以上のフェノール防腐剤(複数も可)、非フェノール防腐剤(複数も可)またはフェノール防腐剤(複数も可)と非フェノール防腐剤(複数も可)である。例えば、防腐剤(複数も可)は、フェノール、m−クレゾール、メチルパラベン、ベンジルアルコール、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、4−クロロ−1−ブタノール、クロルヘキシジン二塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジン、L−フェニルアラニン、EDTA、ブロノポール、酢酸フェニル水銀、グリセロール、イミド尿素、クロルヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、o−クレゾール、p−クレゾール、クロロクレゾール、セトリミド、塩化ベンゼトニウム、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンおよびこれらのあらゆる組み合わせを含むが、これらに限定されないものから選択される。数例において、安定な配合剤は1種の防腐剤を含む。他の例において、安定な配合剤は、2種、3種または4種の防腐剤を含む防腐剤の混合物を含む。いくつかの態様において、安定な配合剤は少なくとも1種のフェノール防腐剤を含む。特定の態様において、1種以上の防腐剤(複数も可)はフェノール、m−クレゾールまたはフェノールおよびm−クレゾールである。
ここで提供される安定な配合剤中の1種以上の防腐剤の総量は、重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)で0.1%および0.4%であるかその間、0.1%〜0.3%、0.15%〜0.325%、0.15%〜0.25%、0.1%〜0.2%、0.2%〜0.3%または0.3%〜0.4%(両端値を含む)である。数例において、防腐剤はフェノールおよびm−クレゾールであり、製剤中の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)としての量は正確にまたは約0.1%〜0.25%フェノールおよび正確にまたは約0.05%〜0.2%m−クレゾール、正確にまたは約0.10%〜0.2%フェノールおよび正確にまたは約0.6%〜01.8%m−クレゾール、正確にまたは約0.1%〜0.15%フェノールおよび0.8%〜0.15%m−クレゾール、正確にまたは約0.10%〜0.15%フェノールおよび正確にまたは約0.06〜0.09%m−クレゾールまたは正確にまたは約0.12%〜0.18%フェノールおよび正確にまたは約0.14〜0.22%m−クレゾールである。配合剤の例において、防腐剤(複数も可)は、フェノールおよびm−クレゾールであり、製剤中の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)としての量は正確にまたは約0.1%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、正確にまたは約0.1%フェノールおよび0.15%m−クレゾール、正確にまたは約0.125%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、正確にまたは約0.13%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、正確にまたは約0.13%フェノールおよび0.08%m−クレゾール、正確にまたは約0.15%フェノールおよび0.175%m−クレゾールまたは正確にまたは約0.17%フェノールおよび0.13%m−クレゾールである。
ここで提供される安定な配合剤は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、アミン、糖、ポリオール類、塩または界面活性剤から選択されるが、これらに限定されない安定化剤を含む。数例において、安定な配合剤は1種の安定化剤を含む。他の例において、安定な配合剤は2種、3種、4種、5種または6種の安定化剤を含む。数例において、安定化剤は、L−アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、リシン、メチオニン、プロリン、Lys−Lys、Gly−Gly、トリメチルアミンオキシド(TMAO)、ベタインまたはその塩類から選択されるアミノ酸、アミノ酸誘導体またはアミンである。特定の例において、アミノ酸はグリシンまたはプロリンである。アミノ酸の濃度は正確にまたは約0.01M〜1M、0.01M〜0.1M、0.1M〜0.75Mまたは0.2M〜0.5M(両端値を含む)である。数例において、安定化剤は、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、スクロースおよびトレハロースから選択されるが、これらに限定されない糖またはポリオールである。
安定な配合剤の一例において、安定化剤は界面活性剤であり、製剤中の重量濃度(w/v)の%としての界面活性剤の量は正確にまたは約0.005%〜1.0%、0.01%〜0.5%、0.01%〜0.1%、0.01%〜0.05%、または0.01%〜0.02%である。例えば、安定化剤は界面活性剤であり、製剤中の重量濃度(w/v)の%としての界面活性剤の量は正確にまたは約0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.08%または0.9%である。ここで提供される安定な配合剤中の界面活性剤は、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポロクサマーおよびポリソルベートから選択される。例えば、界面活性剤はポロクサマー188、ポリソルベート20またはポリソルベート80から選択される。安定な配合剤の一例において、安定化剤はポロクサマー188である界面活性剤であり、重量濃度(w/v)%としての量で正確にまたは約0.01%〜0.05%で提供される。安定な配合剤の他の例において、安定化剤はポリソルベート20である界面活性剤であり、重量濃度(w/v)%としての量で正確にまたは約0.01%〜0.05%で提供される。さらに別の安定な配合剤の例において、安定化剤はポリソルベート80である界面活性剤であり、重量濃度(w/v)%としての量で正確にまたは約0.01%〜0.05%で提供される。
ここで提供される安定な配合剤は、所望により、正確にまたは約245mOsm/kg〜305mOsm/kgのモル浸透圧濃度を維持するために、グリセリン、塩、アミノ酸類、ポリアルコール類またはトレハロースから選択されるが、これらに限定されない浸透圧修飾剤を含む。数例において、浸透圧修飾剤は、約または正確に245mOsm/kg、250mOsm/kg、255mOsm/kg、260mOsm/kg、265mOsm/kg、270mOsm/kg、275mOsm/kg、280mOsm/kg、285mOsm/kg、290mOsm/kg、300mOsm/kgまたは305mOsm/kgの製剤のモル浸透圧濃度を維持する。安定な配合剤の一例において、浸透圧修飾剤は、正確にまたは約275mOsm/kgの製剤のモル浸透圧濃度を維持する。一つの態様において、浸透圧修飾剤はグリセリンであり、それは配合剤中に60mM未満、55mM未満、50mM未満、45mM未満、40mM未満、35mM未満、30mM未満、25mM未満、20mM未満、15mM未満または10mM未満の濃度で存在する。安定な配合剤の一例において、速効性のインスリンはインスリンアスパルトであるインスリン類似体であり、製剤は、正確にまたは約20mM〜50mM(両端値を含む)の濃度のグリセリンを含む。安定な配合剤の他の例において、速効性インスリンはレギュラーインスリンまたはインスリンリスプロであり、製剤はグリセリンを正確にまたは約40mM〜60mM(両端値を含む)の濃度で含む。
いくつかの態様において、ここで提供される安定な配合剤は、所望により抗酸化剤を含む。他の態様において、ここで提供される安定な配合剤は、所望により界面活性剤および/またはヒアルロナンオリゴ糖類を含み、また抗酸化剤を含む。ここで提供される安定な配合剤に包含される抗酸化剤は、システイン、トリプトファンおよびメチオニンから選択されるが、これらに限定されない。安定な配合剤の一例において、抗酸化剤はメチオニンである。安定な配合剤中の抗酸化剤は正確にまたは約5mM〜50mM、5mM〜40mM、5mM〜20mMまたは10mM〜20mM(両端値を含む)の濃度である。例示的態様において、抗酸化剤はメチオニンであり、メチオニンの濃度は正確にまたは約10mM〜20mMである。
ここで提供される安定な配合剤は、所望により亜鉛を含む。例えば、一つの態様において、速効性のインスリンはレギュラーインスリン、インスリンリスプロまたはインスリンアスパルトであり、製剤は亜鉛を含む。安定な配合剤中の亜鉛は、酸化亜鉛、酢酸亜鉛またはから選択されるが、これらに限定されず、正確にまたは約0.001〜0.1mg/インスリン100単位(mg/100U)、0.001〜0.05mg/100Uまたは0.01〜0.05mg/100Uの濃度で存在する。
ここで提供される安定な配合剤は、所望によりニコチンアミド、ニコチン酸、ナイアシン、ナイアシンアミド、ビタミンB3および/またはその塩類および/またはこれらのあらゆる組み合わせから選択されるが、これらに限定されないニコチン化合物を含む。ニコチン化合物(複数も可)は正確にまたは約1mm〜150mM、10mM〜150mM、50mM〜100mMまたは正確にまたは約80mMの濃度で存在する。
ここで提供される安定な配合剤は、所望により、アルギニン、グルタミン酸、および/またはその塩類および/またはそれらの組み合わせから選択されるが、これらに限定されない1種以上のアミノ酸を含む。アミノ酸類は1〜100mM、10〜100mM、または正確にまたは約30mM、50mMまたは80mMの濃度で存在する。
ここで提供される安定な配合剤の例は、正確にまたは約7.0〜7.6のpHを有し、正確にまたは約100U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量のPH20であるヒアルロナン分解酵素;正確にまたは約10U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量の速効性のインスリン類似体;正確にまたは約10mM〜50mM(両端値を含む)の濃度のTris緩衝剤;正確にまたは約50〜200mM(両端値を含む)の濃度のNaCl;正確にまたは約5mM〜50mM(両端値を含む)の濃度のメチオニン;正確にまたは約0mM〜50mM(両端値を含む)の濃度のグリセリン;正確にまたは約0.01%〜0.5%の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のポロクサマー188、ポリソルベート20またはポリソルベート80である界面活性剤;および正確にまたは約0.1%〜0.25%の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のフェノールおよび正確にまたは約0.05%〜0.2%の%w/vのm−クレゾールを含む防腐剤(複数も可)を含む。他の態様において、この安定な配合剤の例は、さらに0.001〜0.1mg/インスリン100単位(mg/100U)の濃度の亜鉛を含む。一つの態様において、安定な配合剤中の防腐剤は正確にまたは約0.1%フェノールおよび0.015%m−クレゾール、0.125%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、0.13%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、0.13%フェノールおよび0.08%m−クレゾールまたは0.17%フェノールおよび0.13%m−クレゾールである。
ここで提供される安定な配合剤の例は、正確にまたは約7.0〜7.6のpHを有し、正確にまたは約10U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量のインスリンリスプロである速効性のインスリン;正確にまたは約100U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量のPH20であるヒアルロナン分解酵素;正確にまたは約25mM〜35mM(両端値を含む)の濃度のTris緩衝剤;正確にまたは約50mM〜120mM(両端値を含む)の濃度のNaCl;正確にまたは約10mM〜30mM(両端値を含む)の濃度のメチオニン;正確にまたは約40mM〜60mM(両端値を含む)の濃度のグリセリン;正確にまたは約0.01%〜0.05%(両端値を含む)の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のポロクサマー188、ポリソルベート20またはポリソルベート80である界面活性剤;0.017〜0.024mg/インスリン100単位(mg/100U)の濃度の亜鉛;および正確にまたは約0.08%〜0.17%(両端値を含む)の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のフェノールおよび正確にまたは約0.07%〜0.17%m−クレゾールを含む防腐剤(複数も可)を含む。一つの態様において、NaCl濃度は正確にまたは約70mM〜100mMである。他の態様において、pHは正確にまたは約7.1±0.2、7.2±0.2、7.3±0.2または7.4±0.2である。一つの態様において、安定な配合剤中の防腐剤は正確にまたは約0.1%フェノールおよび0.015%m−クレゾール、0.125%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、0.13%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、0.13%フェノールおよび0.08%m−クレゾールまたは0.17%フェノールおよび0.13%m−クレゾールである。
ここで提供される安定な配合剤の例は、正確にまたは約7.0〜7.6のpHを有し、正確にまたは約10U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量のインスリンアスパルトである速効性のインスリン;正確にまたは約100U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量のPH20であるヒアルロナン分解酵素;正確にまたは約25mM〜35mM(両端値を含む)の濃度のTris緩衝剤;正確にまたは約80mM〜160mM(両端値を含む)の濃度のNaCl;正確にまたは約10mM〜30mM(両端値を含む)の濃度のメチオニン;正確にまたは約20mM〜50mM(両端値を含む)の濃度のグリセリン;正確にまたは約0.01%〜0.05%(両端値を含む)の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のポロクサマー188、ポリソルベート20またはポリソルベート80である界面活性剤;0.017〜0.024mg/インスリン100単位(mg/100U)の濃度の亜鉛;および正確にまたは約0.08%〜0.17%(両端値を含む)の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のフェノールおよび正確にまたは約0.07%〜0.17%m−クレゾールを含む防腐剤(複数も可)を含む。一つの態様において、NaCl濃度は正確にまたは約70mM〜100mMである。他の態様において、pHは正確にまたは約7.2±0.2、7.3±0.2、7.4±0.2または7.5±0.2である。一つの態様において、安定な配合剤中の防腐剤は正確にまたは約0.1%フェノールおよび0.015%m−クレゾール、0.125%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、0.13%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、0.13%フェノールおよび0.08%m−クレゾールまたは0.17%フェノールおよび0.13%m−クレゾールである。
ここで提供される安定な配合剤の例は正確にまたは約7.0〜7.6のpHを有し、正確にまたは約10U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量のインスリングルリジンである速効性のインスリン;正確にまたは約100U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量のPH20であるヒアルロナン分解酵素;正確にまたは約25mM〜35mM(両端値を含む)の濃度のTris緩衝剤;正確にまたは約80mM〜200mM(両端値を含む)の濃度のNaCl;正確にまたは約10mM〜30mM(両端値を含む)の濃度のメチオニン;正確にまたは約40mM〜60mM(両端値を含む)の濃度のグリセリン;正確にまたは約0.01%〜0.05%(両端値を含む)の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のポロクサマー188である界面活性剤;および正確にまたは約0.08%〜0.17%(両端値を含む)の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のフェノールおよび正確にまたは約0.07%〜0.17%m−クレゾールを有する防腐剤(複数も可)を含む。一つの態様において、NaCl濃度は正確にまたは約100mM〜150mMである。他の態様において、pHは正確にまたは約7.2±0.2、7.3±0.2、7.4±0.2または7.5±0.2である。
一つの態様において、ここで提供される安定な配合剤中のPH20は、配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸配列を有するか、または配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%または95%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつヒアルロニダーゼ活性を維持するヒトPH20である。例えば、PH20ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位の後にC末端短縮化を含むアミノ酸配列を有するか、または配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位の後にC末端短縮化を含むアミノ酸配列に対する少なくとも85%、90%または95%配列同一性、かつヒアルロニダーゼ活性を維持するその変異体である。他の例において、PH20ポリペプチド配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置482後にC末端短縮化を含むアミノ酸配列を有するか、または配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置482後にC末端短縮化を含むアミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%または95%配列同一性を示し、かつヒアルロニダーゼ活性を維持するその変異体である。安定な配合剤の一例において、PH20ポリペプチドは、配列番号4〜9のいずれかに示すアミノ酸配列を有する。ここで提供される安定な配合剤中のヒアルロナン分解酵素またはPH20は哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で産生し、発現できる。特定の例において、PH20は指定されたrHuPH20である。
ここで提供される安定な配合剤は、多数回投与用に製剤できる。安定な配合剤の容積は、正確にまたは約0.5mL〜50mL、1mL〜40mL、1mL〜20mL、1mL〜10mL、または3mL〜10mL(両端値を含む)であり得る。ここで提供される安定な配合剤は、バイアル、シリンジ、ペン、ポンプ用保存室または閉鎖ループ系を使用した送達のために製剤される。特定の例において、安定な配合剤は、閉鎖ループ系により提供される連続的皮下インスリン注入である。
ここで提供される安定な配合剤はシリンジまたはバイアル、閉鎖ループ系、インスリンポンプ、および/またはインスリンペン中に入れることができる。
安定な配合剤を投与する方法が提供される。例えば、ここに提供されるのは、ここで提供される安定な配合剤の治療有効量を対象に投与することによる、糖尿病の処置方法である。処置する糖尿病は1型糖尿病、2型糖尿病または妊娠性糖尿病を含む。またここに提供されるのは、ここで提供される安定な配合剤の治療有効量を対象に投与することによる、対象における血糖値を管理する方法である。ここに記載する方法の実施に際して、安定な配合剤を皮下にまたは腹腔内に、例えば、シリンジまたはインスリンペンまたは連続的皮下注入により投与する。ここに記載する方法の実施に際して、安定な配合剤は、食事のインスリン治療として食前に投与してよい。ここに提供する方法において、安定な配合剤を、例えばインスリンポンプまたは閉鎖ループ系を介する、連続的皮下インスリン注入を達成するための送達方法を使用して投与できる。ある例において、ここで提供する方法は、スルホニルウレア系、ビグアナイド系、メグリチナイド、チアゾリジンジオン系、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、グルカゴン様ペプチド(GLP)類似体および胃阻害ペプチド(GIP)類似体を含むペプチド類似体ならびにDPP−4阻害剤から選択されるが、これらに限定されない、他の抗糖尿病剤の投与を含む。
またここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびヒアルロナン分解酵素を安定化する量のリシルリシン(Lys−Lys)を含む組成物である。数例において、Lys−Lysの濃度は正確にまたは約5mM〜120mM、10mM〜100mM、10mM〜50mM、30mM〜110mM、30mM〜80mM、50mM〜100mMまたは100mM〜120mMである。他の例において、Lys−Lysの濃度は少なくともまたは少なくとも約または正確に5mM、10mM、15mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mMまたは120mM。ここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびヒアルロナン分解酵素が初期ヒアルロニダーゼ活性の少なくとも50%を少なくとも3日間、37℃で維持するのに十分な量のリシルリシン(Lys−Lys)を含む、組成物である。数例において、ヒアルロナン分解酵素は、初期ヒアルロニダーゼ活性の少なくとも50%を、37℃で少なくとも4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間またはそれ以上維持する。特定の例において、ヒアルロナン分解酵素は、初期ヒアルロニダーゼ活性の少なくとも50%を、少なくとも1ヶ月間、37℃で維持する。他の例において、ヒアルロナン分解酵素は、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の初期ヒアルロニダーゼ活性を維持する。
提供される組成物の数例において、製剤のpHは正確にまたは約6.5〜8.0、6.5〜7.4、6.8〜7.8、7.0〜7.6または6.8〜7.2(両端値を含む)である。例えば、製剤のpHは正確にまたは約または少なくとも6.5±0.2、6.6±0.2、6.7±0.2、6.8±0.2、6.9±0.2、7.0±0.2、7.1±0.2、7.2±0.2、7.3±0.2、7.4±0.2、7.5±0.2、7.6±0.2、7.7±0.2または7.8±0.2である。
治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびリシルリシン(Lys−Lys)を含むあらゆる提供される組成物はさらに安定化剤を含み得る。例えば、本組成物はアミノ酸、アミノ酸誘導体、アミン、糖、ポリオール、塩および界面活性剤から選択される安定化剤を含み得る。数例において、安定化剤は界面活性剤であり、製剤中の重量濃度(w/v)の%としての界面活性剤の量は正確にまたは約0.0005%〜1.0%、0.0005%〜0.005%、0.001%〜0.01%、0.01%〜0.5%、0.01%〜0.1%、0.01%〜0.05%、または0.01%〜0.02%(両端値を含む)である。他の例において、安定化剤は界面活性剤であり、製剤中の重量濃度(w/v)の%としての界面活性剤の量は正確にまたは約または少なくとも0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.08%または0.9%である。界面活性剤はポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポロクサマーおよびポリソルベートから選択され得る。特定の例において、界面活性剤はポロクサマー188、ポリソルベート20およびポリソルベート80から選択される。
数例において、治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびリシルリシン(Lys−Lys)を含む提供される組成物はまた抗酸化剤を含む。例えば、本組成物は、システイン、トリプトファンおよびメチオニンから選択される抗酸化剤を含む。特定の例において、抗酸化剤はメチオニンである。数例において、抗酸化剤は正確にまたは約5mM〜50mM、5mM〜40mM、5mM〜20mMまたは10mM〜20mM(両端値を含む)の濃度で存在する。他の例において、抗酸化剤は正確にまたは約または少なくとも5mM、10mM、15mM、20mM、30mM、40mMまたは50mMの濃度で存在する。
数例において、治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびリシルリシン(Lys−Lys)を含む提供される組成物はまた正確にまたは約245mOsm/kg〜500mOsm/kg(両端値を含む)のモル浸透圧濃度を維持するための浸透圧修飾剤を含む。数例において、本組成物は、約または少なくとも約または正確に245mOsm/kg、250mOsm/kg、255mOsm/kg、260mOsm/kg、265mOsm/kg、270mOsm/kg、275mOsm/kg、280mOsm/kg、285mOsm/kg、290mOsm/kg、300mOsm/kg、350mOsm/kg、400mOsm/kg、450mOsm/kgまたは500mOsm/kgの製剤のモル浸透圧濃度を維持するための浸透圧修飾剤を含む。数例において、浸透圧修飾剤はグリセリン、NaCl、アミノ酸類、ポリアルコール類またはトレハロースから選択される。特定の例において、浸透圧修飾剤はNaClであり、NaClの濃度は正確にまたは約20mM〜200mM、40mM〜160mM、80mM〜120mM、20mM〜80mMまたは50mM〜150mM(両端値を含む)である。他の例において、浸透圧修飾剤はNaClであり、NaClの濃度は0mM〜150mM、10mM〜50mM、50mM〜100mMおよび100mM〜130mMである。数例において、NaClは150mM未満、140mM未満、130mM未満、120mM未満、110mM未満、100mM未満、90mM未満、80mM未満、70mM未満、60mM未満、50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満、10mM未満またはそれ未満である。
治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびリシルリシン(Lys−Lys)を含むあらゆる提供される組成物はまた正確にまたは約6.5〜8.0、6.8〜7.8、または7.0〜7.6、6.5〜7.2、6.8〜7.4(両端値を含む)のpH範囲を維持するのに十分な量の緩衝剤を含み得る。数例において、緩衝剤はTris、ヒスチジン、リン酸およびクエン酸から選択される。特定の例において、緩衝剤はリン酸ナトリウムであるリン酸である。他の具体例において、緩衝剤はTrisである。数例において、組成物中の緩衝剤の濃度は正確にまたは約1mM〜100mM、10mM〜80mM、5mM〜50mMまたは20mM〜40mM(両端値を含む)である。
治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびリシルリシン(Lys−Lys)を含むあらゆる提供される組成物中のヒアルロナン分解酵素はヒアルロニダーゼまたはコンドロイチナーゼであり得る。数例において、ヒアルロナン分解酵素は中性pHで活性なヒアルロニダーゼである。数例において、ヒアルロナン分解酵素は細胞から発現されたときグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを欠くかまたは膜型ではない。他の例において、ヒアルロナン分解酵素はGPIアンカーの全部または一部を除去するための1個以上のアミノ酸残基のC末端短縮化を含むヒアルロナン分解酵素である。
提供される組成物の他の例において、ヒアルロナン分解酵素はPH20であるヒアルロニダーゼまたはそのC末端切断型フラグメントである。数例において、ヒアルロナン分解酵素は非ヒトまたはヒトPH20である、PH20である。数例において、PH20は配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸配列を有するかまたは配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸配列と少なくとも85%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつヒアルロニダーゼ活性を維持する。例えば、PH20は配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸配列に対し少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有し、かつヒアルロニダーゼ活性を維持する。本組成物の数例において、ヒアルロナン分解酵素は配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位の後にC末端短縮化を含むアミノ酸配列を有するPH20ポリペプチドであるか、または配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位の後にC末端短縮化を含むアミノ酸配列に対し少なくとも85%配列同一性を示し、かつヒアルロニダーゼ活性を維持するその変異体である。具体例において、ヒアルロナン分解酵素は、配列番号4〜9のいずれかに示すアミノ酸の配列を有するC末端切断型PH20である。
提供される組成物の数例において、ヒアルロナン分解酵素の量は正確にまたは約10U/mL〜5000U/mL、50U/mL〜4000U/mL、100U/mL〜2000U/mL、300U/mL〜2000U/mL、600U/mL〜2000U/mL、100U/mL〜1000U/mL、200U/mL〜800U/mL、100U/mL〜500U/mL、または150U/mL〜300U/ml(両端値を含む)である。例えば、ヒアルロナン分解酵素の量は少なくともまたは約または正確に30U/mL、35U/mL、40U/mL、45U/mL、50U/mL、55U/mL、60U/mL、65U/mL、70U/mL、75U/mL、80U/mL、85U/mL、90U/mL、95U/mL、100U/mL、105U/mL、110U/mL、115U/mL、120U/mL、125U/mL、130U/mL、135U/mL、140U/mL、145U/mL、150U/mL、155U/mL、160U/mL、170U/mL、180U/mL、190U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mL、1000U/mLまたは2000U/mLである。
治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびリシルリシン(Lys−Lys)を含む組成物の数例において、Lys−Lysの濃度は5mM〜50mM(両端値を含む)である。例えば、Lys−Lysの濃度は少なくとも5mM、10mM、15mM、20mM、30mMまたは50mM;および/または50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満または10mM未満である。
ここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびリシルリシン(Lys−Lys)を含む組成物であって、ここで、組成物のpHは正確にまたは約6.5〜7.2であり、組成物は正確にまたは約100U/mL〜500U/mL(両端値を含む)の量のヒアルロナン分解酵素;正確にまたは約5mM〜30mM(両端値を含む)の濃度のLys−Lys;140mM未満NaClの濃度のNaCl;正確にまたは約0.01%〜0.05%(両端値を含む)の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のポリソルベート80である界面活性剤;正確にまたは約5mM〜20mM(両端値を含む)の濃度のメチオニン;および正確にまたは約5mM〜50mM(両端値を含む)の濃度のリン酸ナトリウムを含む。数例において、ヒアルロナン分解酵素はPH20またはそのC末端切断型フラグメントである。
数例において、提供される組成物の容積は正確にまたは約0.5mL〜50mL、1mL〜40mL、1mL〜20mL、1mL〜10mL、または3mL〜10mL(両端値を含む)である。組成物はバイアル、シリンジ、ペン、ポンプ用保存室または閉鎖ループ系を使用する送達のために製剤できる。ここでまた提供されるのは、ここで提供される組成物のいずれかを含むシリンジまたはバイアルである。
またここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素、ヒアルロナン分解酵素を安定化させる量のリシルリシン(Lys−Lys)および速効性のインスリンを含む組成物である。数例において、Lys−Lysの濃度は30mM〜120mM、50mM〜105mMまたは80mM〜100mM(両端値を含む)である。提供される組成物において、速効性のインスリンは単量体、二量体または六量体であり得る。数例において、速効性のインスリンは速効性のヒトインスリンである。他の例において、速効性のインスリンはレギュラーインスリンである。特定の例において、速効性のインスリンはヒトインスリンまたはブタインスリンであるレギュラーインスリンである。数例において、速効性のインスリンは、配列番号103に示すアミノ酸配列を有するA鎖および配列番号104に示すアミノ酸配列を有するB鎖を有するインスリンまたは配列番号123のアミノ酸残基88〜108位に示すアミノ酸配列を有するA鎖および配列番号123のアミノ酸残基25〜54位に示すアミノ酸配列を有するB鎖を有するインスリンであるレギュラーインスリンである。提供される組成物のさらに別の例において、速効性のインスリンは組み換えインスリンである。速効性のインスリンは合成されていても、一部合成されていてもよい。数例において、インスリンは単離される。
提供される組成物の他の例において、速効性のインスリンはインスリン類似体である。数例において、インスリン類似体はインスリンアスパルト、インスリンリスプロおよびインスリングルリジンから選択される。例えば、インスリン類似体は、配列番号103に示すアミノ酸配列を有するA鎖および配列番号147〜149のいずれかに示すアミノ酸配列を有するB鎖を有するインスリンから選択される。提供される組成物のいずれにおいても、速効性のインスリンは正確にまたは約10U/mL〜1000U/mL、20U/mL〜500U/mL、50U/mL〜300U/mLまたは200U/mL〜800U/mL(両端値を含む)の量で存在できる。例えば、速効性のインスリンの量は少なくともまたは約または正確に10U/mL、20U/mL、30U/mL、40U/mL、50U/mL、60U/mL、70U/mL、80U/mL、90U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mLまたは1000U/mLである。
治療有効量のヒアルロナン分解酵素、ヒアルロナン分解酵素を安定化させる量のリシルリシン(Lys−Lys)および速効性のインスリンを含む提供される組成物の具体例において、速効性のインスリンはインスリン類似体であり、ヒアルロナン分解酵素はPH20またはそのC末端切断型フラグメントである。特定の例において、速効性のインスリンはグルリジンであるインスリン類似体であり、Lys−Lysの濃度は50〜105mMである。他の例において、速効性のインスリンはインスリンアスパルトまたはインスリンリスプロであるインスリン類似体またはインスリンリスプロであり、Lys−Lysの濃度は80〜100mMである。
ここに提供される治療有効量のヒアルロナン分解酵素、ヒアルロナン分解酵素を安定化させる量のリシルリシン(Lys−Lys)および速効性のインスリンを含む組成物のいずれも単回投与または多回投与用であり得る。組成物が多回投与用である例において、組成物は抗微生物有効量の防腐剤または防腐剤の混合物を含む。製剤中の防腐剤(複数も可)は1種以上のフェノール防腐剤(複数も可)、非フェノール防腐剤(複数も可)またはフェノール防腐剤(複数も可)および非フェノール防腐剤(複数も可)を含み得る。数例において、防腐剤(複数も可)はフェノール、m−クレゾール、メチルパラベン、ベンジルアルコール、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、4−クロロ−1−ブタノール、クロルヘキシジン二塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジン、L−フェニルアラニン、EDTA、ブロノポール、酢酸フェニル水銀、グリセロール、イミド尿素、クロルヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、o−クレゾール、p−クレゾール、クロロクレゾール、セトリミド、塩化ベンゼトニウム、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンおよびこれらのあらゆる組み合わせから選択される。多回投与用の提供される組成物の数例において、製剤は1種の防腐剤を含む。多回投与用の提供される組成物の他の例において、製剤は2種、3種または4種の防腐剤を含む防腐剤の混合物を含む。数例において、本組成物は少なくとも1種のフェノール防腐剤を含む。他の例において、防腐剤(複数も可)はフェノール、m−クレゾールまたはフェノールおよびm−クレゾールである。
提供される組成物の数例において、製剤中の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)としての1種以上の防腐剤の総量は正確にまたは0.1%〜0.4%、0.1%〜0.3%、0.15%〜0.325%、0.15%〜0.25%、0.1%〜0.2%、0.2%〜0.3%または0.3%〜0.4%(両端値を含む)である。防腐剤がフェノールおよびm−クレゾールである提供される組成物の具体例において、製剤中の重量濃度(w/v)の%としての量は正確にまたは約0.1%〜0.25%フェノールおよび正確にまたは約0.05%〜0.2%m−クレゾール、正確にまたは約0.10%〜0.2%フェノールおよび正確にまたは約0.06%〜0.18%m−クレゾール、正確にまたは約0.1%〜0.15%フェノールおよび0.08%〜0.15%m−クレゾール、正確にまたは約0.10%〜0.15%フェノールおよび正確にまたは約0.06〜0.09%m−クレゾールまたは正確にまたは約0.12%〜0.18%フェノールおよび正確にまたは約0.14〜0.22%m−クレゾール(両端値を含む)である。防腐剤がフェノールおよびm−クレゾールである提供される組成物である他の具体例において、製剤中の重量濃度(w/v)の%としての量は正確にまたは約0.1%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、正確にまたは約0.1%フェノールおよび0.15%m−クレゾール、正確にまたは約0.125%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、正確にまたは約0.13%フェノールおよび0.075%m−クレゾール、正確にまたは約0.13%フェノールおよび0.08%m−クレゾール、正確にまたは約0.15%フェノールおよび0.175%m−クレゾールまたは正確にまたは約0.17%フェノールおよび0.13%m−クレゾールである。
ここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素、ヒアルロナン分解酵素を安定化させる量のリシルリシン(Lys−Lys)および速効性のインスリンを含む組成物であり、ここで、組成物のpHは正確にまたは約6.8〜7.4であり;組成物は正確にまたは約100U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量のPH20であるヒアルロナン分解酵素;正確にまたは約10U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量のインスリングルリジンである速効性のインスリン類似体;正確にまたは約50mM〜105mM(両端値を含む)の濃度のLys−Lys;100mM未満の濃度のNaCl;正確にまたは約0.0005%〜0.005%(両端値を含む)の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のポリソルベート20である界面活性剤;正確にまたは約5mM〜20mM(両端値を含む)の濃度のメチオニン;および正確にまたは約0.1%〜0.25%の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のフェノールおよび正確にまたは約0.05%〜0.2%の%w/vのm−クレゾールを含む防腐剤(複数も可)を含む。
ここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素、ヒアルロナン分解酵素を安定化させる量のリシルリシン(Lys−Lys)および速効性のインスリンを含む組成物であり、組成物のpHは正確にまたは約6.8〜7.4であり;組成物は正確にまたは約100U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量のPH20であるヒアルロナン分解酵素;正確にまたは約10U/mL〜1000U/mL(両端値を含む)の量のインスリンアスパルトまたはインスリンリスプロである速効性のインスリン類似体;正確にまたは約80mM〜100mM(両端値を含む)の濃度のLys−Lys;30mM未満の濃度のNaCl;正確にまたは約0.0005%〜0.005%(両端値を含む)の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のポリソルベート20である界面活性剤;正確にまたは約5mM〜20mM(両端値を含む)の濃度のメチオニン;および正確にまたは約0.1%〜0.25%の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のフェノールおよび正確にまたは約0.05%〜0.2%の%w/vのm−クレゾールを含む防腐剤(複数も可)を含む。
数例において、提供される組成物の容積は正確にまたは約0.5mL〜50mL、1mL〜40mL、1mL〜20mL、1mL〜10mL、または3mL〜10mL(両端値を含む)である。組成物はバイアル、シリンジ、ペン、ポンプ用保存室または閉鎖ループ系を使用する送達のために製剤できる。数例において、本組成物は連続的皮下インスリン注入を使用する送達のために製剤される。ここでまた提供されるのは、ここで提供される組成物のいずれかを含むシリンジまたはバイアルである。
ここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびヒアルロナン分解酵素が初期ヒアルロニダーゼ活性の少なくとも50%を少なくとも3日間、37℃で維持するのに十分な量のMgCl2を含む組成物である。数例において、本組成物は、正確にまたは約50mM〜150mM、75mM〜125mMまたは80mM〜100mM(両端値を含む)である濃度のMgCl2を含む。例えば、本組成物は少なくともまたは約または正確に50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mMまたは150mMである濃度のMgCl2を含む。本組成物の数例において、ヒアルロナン分解酵素は初期ヒアルロニダーゼ活性の少なくとも50%を、37℃で少なくとも4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間またはそれ以上維持する。例えば、ヒアルロナン分解酵素は、初期ヒアルロニダーゼ活性の少なくとも50%を、少なくとも1ヶ月間、37℃で、例えば初期ヒアルロニダーゼ活性の少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上を維持する。
治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびMgCl2を含む提供される組成物は、正確にまたは約6.5〜8.0、6.5〜7.4、6.8〜7.8、7.0〜7.6または6.8〜7.2であるpHを有する。数例において、組成物のpHは正確にまたは約または少なくとも6.5±0.2、6.6±0.2、6.7±0.2、6.8±0.2、6.9±0.2、7.0±0.2、7.1±0.2、7.2±0.2、7.3±0.2、7.4±0.2、7.5±0.2、7.6±0.2、7.7±0.2または7.8±0.2である。組成物はさらにアミノ酸、アミノ酸誘導体、アミン、糖、ポリオール、塩および界面活性剤から選択される安定化剤を含み得る。数例において、安定化剤は界面活性剤であり、製剤中の重量濃度(w/v)の%としての界面活性剤の量は正確にまたは約0.0005%〜1.0%、0.0005%〜0.005%、0.001%〜0.01%、0.01%〜0.5%、0.01%〜0.1%、0.01%〜0.05%または0.01%〜0.02%(両端値を含む)である。例えば、安定化剤は界面活性剤であり、製剤中の重量濃度(w/v)の%としての界面活性剤の量は正確にまたは約または少なくとも0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.08%または0.9%である。数例において、界面活性剤はポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポロクサマーおよびポリソルベートから選択される。具体例において、界面活性剤はポロクサマー188、ポリソルベート20およびポリソルベート80から選択される。
数例において、治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびMgCl2を含む提供される組成物はシステイン、トリプトファンおよびメチオニンから選択される抗酸化剤を含む。具体例において、抗酸化剤はメチオニンである。数例において、抗酸化剤は正確にまたは約5mM〜50mM、5mM〜40mM、5mM〜20mMまたは10mM〜20mM(両端値を含む)の濃度である。例えば、抗酸化剤はメチオニンであり、濃度は正確にまたは約または少なくとも5mM、10mM、15mM、20mM、30mM、40mMまたは50mMである。数例において、組成物は正確にまたは約6.5〜8.0、6.8〜7.8、7.0〜7.6、6.5〜7.2または6.8〜7.4のpH範囲を維持するのに十分な量の緩衝剤を含む。数例において、緩衝剤はTris、ヒスチジン、リン酸およびクエン酸から選択される。特定の例において、緩衝剤はヒスチジン塩酸塩である。提供される組成物において中の緩衝剤の濃度は正確にまたは約1mM〜100mM、10mM〜80mM、5mM〜50mMまたは20mM〜40mMであり得る。
数例において、治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびMgCl2を含む提供される組成物は、ヒアルロニダーゼまたはコンドロイチナーゼであるヒアルロナン分解酵素を含む。数例において、ヒアルロナン分解酵素は中性pHで活性なヒアルロニダーゼである。他の例において、ヒアルロナン分解酵素は細胞から発現されたときグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを欠くかまたは膜型ではない。例えば、ヒアルロナン分解酵素はGPIアンカーの全部または一部を除去するための1個以上のアミノ酸残基のC末端短縮化を含むヒアルロナン分解酵素である。
他の例において、ヒアルロナン分解酵素はPH20であるヒアルロニダーゼまたはそのC末端切断型フラグメントである。PH20は非ヒトまたはヒトPH20であり得る。提供される組成物の数例において、PH20は配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸配列を有するかまたは配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸配列と少なくとも85%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつヒアルロニダーゼ活性を維持する。例えば、PH20は配列番号1の少なくともアミノ酸36〜464を含むアミノ酸配列に対し少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有し、かつヒアルロニダーゼ活性を維持する。他の例において、PH20ポリペプチドは配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位の後にC末端短縮化を含むアミノ酸配列を有するか、または配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位の後にC末端短縮化を含むアミノ酸配列に対し少なくとも85%配列同一性を示し、かつヒアルロニダーゼ活性を維持するその変異体である。具体例において、ヒアルロナン分解酵素は配列番号4〜9のいずれかに示すアミノ酸配列を有するC末端切断型PH20である。
数例において、治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびMgCl2を含む提供される組成物は、正確にまたは約10U/mL〜5000U/mL、50U/mL〜4000U/mL、100U/mL〜2000U/mL、300U/mL〜2000U/mL、600U/mL〜2000U/mL、100U/mL〜1000U/mL、200U/mL〜800U/mL、100U/mL〜500U/mL、または150U/mL〜300U/ml(両端値を含む)である量のヒアルロナン分解酵素を含む。例えば、本組成物は、少なくともまたは約または正確に30U/mL、35U/mL、40U/mL、45U/mL、50U/mL、55U/mL、60U/mL、65U/mL、70U/mL、75U/mL、80U/mL、85U/mL、90U/mL、95U/mL、100U/mL、105U/mL、110U/mL、115U/mL、120U/mL、125U/mL、130U/mL、135U/mL、140U/mL、145U/mL、150U/mL、155U/mL、160U/mL、170U/mL、180U/mL、190U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mL、1000U/mLまたは2000U/mLである量のヒアルロナン分解酵素を含む。
ここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素およびMgCl2を含む組成物であり、ここで、組成物のpHは正確にまたは約6.5〜7.2であり、組成物は正確にまたは約100U/mL〜500U/mL(両端値を含む)の量のヒアルロナン分解酵素;正確にまたは約50mM〜150mM(両端値を含む)の濃度のMgCl2;正確にまたは約0.01%〜0.05%(両端値を含む)の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のポリソルベート80である界面活性剤;正確にまたは約5mM〜20mM(両端値を含む)の濃度のメチオニン;および正確にまたは約5mM〜50mM(両端値を含む)の濃度のヒスチジン/HClを含む。
数例において、提供される組成物の容積は正確にまたは約0.5mL〜50mL、1mL〜40mL、1mL〜20mL、1mL〜10mL、または3mL〜10mL(両端値を含む)である。組成物はバイアル、シリンジ、ペン、ポンプ用保存室または閉鎖ループ系を使用する送達のために製剤できる。ここでまた提供されるのは、ここで提供される組成物のいずれかを含むシリンジまたはバイアルである。
インスリン、例えばレギュラーインスリンまたは速効型インスリン類似体(例えばアスパルト、リスプロまたはグルリジンまたは他のインスリン類似体)を含むここで提供される組成物は、糖尿病の処置方法および処置のための使用に使用できる。例えば、ここに提供されるのは、治療有効量のここに提供する上記のいずれかの安定な組成物を対象に投与することによる、糖尿病の処置方法である。処置される糖尿病は1型糖尿病、2型糖尿病または妊娠性糖尿病を含む。またここに提供されるのは、治療有効量の速効性のインスリンを含むここに提供される安定な組成物を対象に投与することによる、対象における血糖値を管理する方法である。ここに記載する方法の実施に際して、安定な組成物は皮下または腹腔内に、例えば、シリンジまたはインスリンペンを介してまたは連続的皮下注入により投与する。ここに記載する方法の実施に際して、安定な組成物は食事のインスリン治療として食前に投与してよい。ここに提供する方法において、安定な組成物は、連続的皮下インスリン注入を達成するための送達方法を使用して、例えばインスリンポンプまたは閉鎖ループ系を介して投与してよい。ある例において、ここで提供する方法は、スルホニルウレア系、ビグアナイド系、メグリチナイド、チアゾリジンジオン系、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、グルカゴン様ペプチド(GLP)類似体および胃阻害ペプチド(GIP)類似体を含むペプチド類似体およびDPP−4阻害剤から選択されるが、これらに限定されない他の抗糖尿病剤の投与を含む。
詳細な記載
A. 定義
B. ヒアルロナン分解酵素製剤およびインスリン配合剤産生
1. ヒアルロナン分解酵素製剤
2. 速効性のインスリン製剤
3. ヒアルロナン分解酵素およびインスリン配合剤
a. 安定性に関する対立要求
i. 防腐剤
ii. NaClおよびpH
b. 相溶性配合剤
C. ヒアルロナン分解酵素群
1. ヒアルロニダーゼ群
a. 哺乳動物型ヒアルロニダーゼ群
PH20
b. 細菌ヒアルロニダーゼ群
c. ヒル類、他の寄生虫および甲殻類由来のヒアルロニダーゼ群
2. 他のヒアルロナン分解酵素群
3. 切断型ヒアルロナン分解酵素群または他の可溶性形態
a. C末端切断型ヒトPH20
b. rHuPH20
4. ヒアルロナン分解酵素群のグリコシル化
5. 薬物動態学的特性を改善するためのヒアルロナン分解酵素群の修飾
D. 安定なヒアルロナン分解酵素製剤
1. ヒアルロナン分解酵素
2. 二価カチオン
3. pHおよび緩衝剤
4. 界面活性剤
5. 抗酸化剤
6. 浸透圧修飾剤
7. 他の薬物または添加物
8. 安定なヒアルロナン分解酵素製剤の例
E. インスリンポリペプチド類
速効性のインスリン類
a. レギュラーインスリン
b. 速効性の類似体(速効型インスリン類とも呼ぶ)
i. インスリンリスプロ
ii. インスリンアスパルト
iii. インスリングルリジン
F. インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の安定な配合剤
1. 安定な配合剤の成分
a. 速効性のインスリン
b. ヒアルロナン分解酵素
c. 防腐剤
d. NaCl
e. pH
f. 緩衝剤
g. Lys−Lys
h. 付加的な添加物または安定化剤の例
i. 界面活性剤
ii. 浸透圧修飾剤
iii. グリセリン
iv. 抗酸化剤
v. 亜鉛
vi. アミノ酸安定化剤
vii. ヒアルロニダーゼ阻害剤
viii. ニコチン化合物
ix. 他の添加物または薬物
2. 安定な配合剤の例
a. 例えば多回注射(MDI)配合剤
b. 例えば持続皮下インスリン注入療法(CSII)配合剤
c. 例えばLys−Lys配合剤
G. 投与量および投与
投与方法
a. シリンジ
b. インスリンペン
c. インスリンポンプおよび他のインスリン送達デバイス
d. 連続的輸液ポンプ系
i. 開放ループ系
ii. 閉鎖ループ系
H. インスリンまたはヒアルロナン分解酵素をコードする核酸およびそのポリペプチド類の製造方法
1. ベクターおよび細胞
2. リンカー部分
3. 発現
a. 原核細胞
b. 酵母細胞
c. 昆虫細胞
d. 哺乳動物細胞
e. 植物
4. 精製方法
I. 安定性および活性の評価方法
1. インスリン
2. ヒアルロナン分解酵素群
J. 治療用途
1. 糖尿病
a. 1型糖尿病
b. 2型糖尿病
c. 妊娠性糖尿病
2. 重篤疾患患者のためのインスリン治療
K. 組み合わせ治療
L. 製造品およびキット
M. 実施例
A. 定義
別に定義しない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により共通して認識されるものと同じ意味を有する。特に断らない限り、本明細書中で引用される全ての特許、特許出願、公開された出願および刊行物、GENBANK配列、ウェブサイトおよび他の公表物は、引用によりその全体を本明細書に包含させる。本明細書中で用語の定義が複数あるときは、ここに記載したものが優先する。URLまたは他のそのような識別子またはアドレスが引用されているとき、このような識別子は変化することがあり、インターネット上の特定の情報は消去または挿入されるが、同等な情報は知られており、例えばインターネットおよび/または適当なデータベースの検索により容易に入手できると解釈すべきである。それらの引用は当該情報が入手可能であることおよび公衆に頒布されていることを証明する。
ここで使用する“インスリン”は、グルコース取り込みおよび保存を増加させおよび/または内因性グルコース産生を減らすように作用するホルモン、前駆体またはその合成もしくは組み換え類似体を言う。ヒトインスリンは、タンパク質を小胞体(ER)に配向させる24アミノ酸のシグナルペプチドを含む、プレプロインスリン(配列番号101)である110アミノ酸の前駆体ポリペプチドとして翻訳され、小胞体(ER)でシグナル配列は開裂され、プロインスリン(配列番号102)を生じる。プロインスリンはさらに処理されて、31アミノ酸C鎖または連結鎖ペプチド(配列番号101に示すプレプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基57〜87、および配列番号102に示すプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基33〜63に対応)を放出する。形成されたインスリンは、21アミノ酸のA鎖(配列番号101に示すプレプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基90〜110、および配列番号102に示すプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基66〜86に対応)および30アミノ酸のB鎖(配列番号101に示すプレプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基25〜54、および配列番号102に示すプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基1〜30)を含み、これらはジスルフィド結合で架橋されている。適切に架橋されたヒトインスリンは3個のジスルフィド架橋を有する。一つ目はA鎖の7位とB鎖の7位の間であり、二つ目はA鎖の20位とB鎖の19位の間であり、三つ目はA鎖の6位と11位の間である。インスリンなる用語は、活性を有するその一本鎖または二本鎖形態、切断型形態のプレプロインスリン、プロインスリンおよびインスリンポリペプチド類を含み、対立形質変異体および種変異体、スプライス変態によりコードされる変異体、および他の変異体、例えば配列番号101に示す前駆体ポリペプチドと少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチド類を含むインスリン類似体またはその成熟形態を含む。インスリン類似体の例には、配列番号147〜149、152に示すもの、および配列番号150、156、158、160、162および164に示すA鎖および/または配列番号151、153〜155、157、159、161、163および165に示すB鎖を含むものが含まれる。
インスリンポリペプチド類の例はヒトを含む哺乳動物起源のものである。ヒト起源のインスリンのアミノ酸配列の例は配列番号101〜104に示す。インスリン類似体の例は配列番号147〜149、152に示すもの、および配列番号150、156、158、160、162および164に示すA鎖および/または配列番号151、153〜155、157、159、161、163および165に示すB鎖を含むものを含む。インスリンポリペプチド類はまた、配列番号105〜146に示す前駆体インスリンポリペプチド類のいずれも含むが、これらに限定されないあらゆる非ヒト起源のものを含む。インスリンなる用語は、単量体および六量体インスリン類を含む多量体インスリン類、ならびにヒト化インスリン類を含む。
ここで使用する“速効性のインスリン”は、速効性のインスリン(例えば、食事が原因のまたは食事により起こることが予測される食事性高血糖状態)の投与時に、または投与後約4時間以内に、糖尿病対象においける実際の、認知された、または予測される高血糖状態に応答して糖尿病対象に急性投与するためのあらゆるインスリンまたは速効性のインスリン組成物を言い、ここで、速効性のインスリンは急性高血糖状態を予防、制御または軽減できる。典型的に、速効性のインスリンは対象への皮下投与時にまたは約4時間を超えずに、ピークインスリンレベルを示すインスリンである。速効性のインスリン類は組み換えインスリン類および単離されたインスリン類(“レギュラー”インスリン類とも呼ぶ)、例えば、Humulin(登録商標)Rとして販売されているインスリン、ブタインスリン類およびウシインスリン類、ならびにアミノ酸改変により速効型であるように設計された速効型インスリン類似体(ここでは速効性のインスリン類似体とも呼ぶ)を含む。レギュラーインスリン製剤の例は、ヒトレギュラーインスリン類、例えば商品名Humulin(登録商標)R、Novolin(登録商標)RおよびVelosulin(登録商標)、インスリンヒト、USPおよびインスリンヒト注射、USP、ならびにインスリンの酸製剤、例えば、例えば、トロントインスリン、旧インスリン、およびクリアーインスリン、およびレギュラーブタインスリン類、例えばIletin II(登録商標)(ブタインスリン)を含むが、これらに限定されない。レギュラーインスリン類は、典型的に投与後30分間〜1時間で作用を発現し、2〜5時間でインスリンレベルがピークとなる。
ここで使用する速効型インスリン類似体(速効性のインスリン類似体とも呼ぶ)は、作用発現が急速なインスリン類である。急速インスリン類は、典型的にレギュラーインスリン類よりも速効型となるように、例えば、1個以上のアミノ酸置換の導入により操作されているインスリン類似体である。速効型インスリン類似体は、典型的に注射後10〜30分間で作用を発現し、注射後30〜90分間でピークインスリンレベルが観察される。速効型インスリン類似体は、例えば、インスリンリスプロ(例えばHumalog(登録商標)インスリン)、インスリンアスパルト(例えばNovoLog(登録商標)インスリン)、およびインスリングルリジン(例えばApidra(登録商標)インスリン)、VIAject(登録商標)およびVIAtab(登録商標)として販売されている速効性のインスリン組成物(例えば、米国特許7,279,457参照)を含むが、これらに限定されない。また、注射後30分未満で作用が発現し、90分以内、典型的に30〜90分以内にピークレベルとなるあらゆる他のインスリン類を含む。
ここで使用するヒトインスリンは、対立形質変異体および類似体を含むヒトポリペプチドとして合成または組み換えにより産生されたインスリンを言う。
ここで使用する速効性のヒトインスリン類またはヒト速効性のインスリン組成物は、速効性であるあらゆるヒトインスリンまたはヒトインスリンの組成物を含むが、非ヒトインスリン類、例えばレギュラーブタインスリンを除く。
ここで使用する用語“基礎作用(basal-acting)インスリン類”または“基礎(basal)インスリン類”は、糖尿病のような慢性状態の処置のための全体的処置レジメンの一部として基礎インスリンレベルを維持するために投与するインスリン類を言う。典型的に、基礎作用インスリンは、定期的(例えば1日1回または2回)投与したとき、インスリンの制御放出により凡そ定常状態インスリンレベルを維持するように製剤される。基礎作用インスリン類は、結晶インスリン類(例えばNPHおよびLente(登録商標)、プロタミンインスリン、サーフェンインスリン)、基礎インスリン類似体(インスリングラルジン、HOE 901、NovoSol Basal)およびレギュラーインスリンの吸収速度を遅延させるインスリンの他の化学製剤(例えばアラビアゴム、レシチンまたは油懸濁液)を含む。ここで使用する基礎作用型インスリン類は、典型的に長時間作用型(典型的に到達するピーク濃度は相対的に低いが、約20〜30時間を超える最大作用時間を有する)または中間型(典型的に投与約4〜12時間後にピークインスリン濃度をもたらす)として理解されているインスリン類を含み得る。
ここで使用する用語“高血糖状態”または“高血糖”は望ましくない血糖上昇を言う。
ここで使用する用語“低血糖状態”または“低血糖”は望ましくない血糖低下を言う。
ここで使用する血糖コントロールまたは“血糖値のコントロール”は、所望のレベル、典型的に70〜130mg/dLまたは90〜110mg/dLでの血糖濃度の維持を言う。
ここで使用する閉鎖ループ系は、連続的血糖コントロールを提供するための集積系である。閉鎖ループ系は、血糖測定のための機構、インスリン組成物を含む1種以上の組成物送達のための機構、および血糖コントロールを達成するために送達が必要であるインスリンの量を決定するための機構を含む。典型的に、それ故に、閉鎖ループ系はグルコースセンサー、インスリン送達デバイス、例えばインスリンポンプ、およびグルコースセンサーからの情報を受け取り、インスリン送達デバイスに命令を発するコントローラーを含む。命令は、コントローラーのソフトウェアにより作成され得る。ソフトウェアは、典型的にグルコースセンサーにより検出されるまたは使用者により予測される血糖値に基づき、血糖コントロールを達成するために送達するのが必要なインスリン量を決定するためのアルゴリズムを含む。開放ループ系は、デバイスが自動的にグルコースレベルを測定し、応答しない以外、類似のデバイスを言う。
ここで使用する投与レジメは、インスリン投与量および投与頻度を言う。投与レジメは処置すべき疾患または状態の関数であり、故に変わり得る。
ここで使用するヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナンポリマー(ヒアルロン酸またはHAとも言う)の小分子量フラグメントへの開裂を触媒する酵素を言う。ヒアルロナン分解酵素群の例はヒアルロニダーゼ群、および、ヒアルロナンを脱重合する能力を有する特定のコンドロイチナーゼ群およびリアーゼ群である。ヒアルロナン分解酵素群であるコンドロイチナーゼ群の例は、コンドロイチンABCリアーゼ(コンドロイチナーゼABCとしても知られる)、コンドロイチンACリアーゼ(コンドロイチン硫酸リアーゼまたはコンドロイチン硫酸エリミナーゼとしても知られる)およびコンドロイチンCリアーゼを含むが、これらに限定されない。コンドロイチンABCリアーゼは2種の酵素群、コンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼ(EC 4.2.2.20)およびコンドロイチン−硫酸−ABCエキソリアーゼ(EC 4.2.2.21)を含む。コンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼ群およびコンドロイチン−硫酸−ABCエキソリアーゼ群の例は、プロテウス・ブルガリスおよびフラボバクテリウム・ヘパリナム由来のものを含むが、これらに限定されない(プロテウス・ブルガリスコンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼは配列番号98に示す;Sato et al. (1994) Appl. Microbiol. Biotechnol. 41(1):39-46)。細菌由来のコンドロイチナーゼAC酵素群の例は、配列番号99に示すフラボバクテリウム・ヘパリナム、配列番号100に示すビクチバリス・バンデンシスおよびアルスロバクタ・オウレセンス由来のものを含むが、これらに限定されない(Tkalec et al. (2000) Applied and Environmental Microbiology 66(1):29-35; Ernst et al. (1995) Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology 30(5):387-444)。細菌由来のコンドロイチナーゼC酵素群は、例えば、レンサ球菌およびフラボバクテリウム由来のものを含むが、これらに限定されない(Hibi et al. (1989) FEMS-Microbiol-Lett. 48(2):121-4; Michelacci et al. (1976) J. Biol. Chem. 251:1154-8; Tsuda et al. (1999) Eur. J. Biochem. 262:127-133)。
ここで使用するヒアルロニダーゼは、ヒアルロナン分解酵素群を言う。ヒアルロニダーゼ群は、細菌ヒアルロニダーゼ群(EC 4.2.2.1またはEC 4.2.99.1)、ヒル類、他の寄生虫、および甲殻類由来のヒアルロニダーゼ群(EC 3.2.1.36)、および哺乳動物型ヒアルロニダーゼ群(EC 3.2.1.35)を含む。ヒアルロニダーゼ群は、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ、トリ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、サカナ、カエル、細菌を含むが、これらに限定されないすべての非ヒト起源、およびヒル類、他の寄生虫、および甲殻類のすべてを含む。非ヒトヒアルロニダーゼ群の例は、ウシ(配列番号10、11、64およびBH55(米国特許5,747,027および5,827,721)、スズメバチ(配列番号12および13)、ミツバチ(配列番号14)、北米産スズメバチ(配列番号15)、アシナガバチ(配列番号16)、マウス(配列番号17〜19、32)、ブタ(配列番号20〜21)、ラット(配列番号22〜24、31)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジ(配列番号26、27、63および65)、オランウータン(配列番号28)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、チンパンジー(配列番号185)、アカゲザル(配列番号186)、アルスロバクター属(株FB24)(配列番号67)、ブデロビブリオ・バクテリオヴォルス(配列番号68)、プロピオニバクテリウム・アクネス(配列番号69)、ストレプトコッカス・アガラクチア(配列番号70);18RS21(配列番号71);血清型Ia(配列番号72);血清型III(配列番号73)、黄色ブドウ球菌(株COL)(配列番号74);株MRSA252(配列番号75および76);株MSSA476(配列番号77);株NCTC 8325(配列番号78);株ウシRF122(配列番号79および80);株USA300(配列番号81)、肺炎レンサ球菌(配列番号82);株ATCC BAA-255/R6(配列番号83);血清型2、株D39/NCTC 7466(配列番号84)、A群溶血レンサ球菌(血清型M1)(配列番号85);血清型M2、株MGAS10270(配列番号86);血清型M4、株MGAS10750(配列番号87);血清型M6(配列番号88);血清型M12、株MGAS2096(配列番号89および90);血清型M12、株MGAS9429(配列番号91);血清型M28(配列番号92);豚レンサ球菌(配列番号93〜95);ビブリオ・フィッシェリ(株ATCC 700601/ES114(配列番号96))由来のヒアルロニダーゼ群、およびヒアルロン酸に特異的であり、コンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸を開裂しないストレプトマイセス・ヒアルロノリチクスヒアルロニダーゼ酵素を含むが、これらに限定されない(Ohya, T. and Kaneko, Y. (1970) Biochim. Biophys. Acta 198:607)。ヒアルロニダーゼ群はまたヒト起源のものを含む。ヒトヒアルロニダーゼ群の例は、HYAL1(配列番号36)、HYAL2(配列番号37)、HYAL3(配列番号38)、HYAL4(配列番号39)、およびPH20(配列番号1)を含む。またヒアルロニダーゼ群は、ヒツジおよびウシPH20、可溶性ヒトPH20および可溶性rHuPH20を含む、可溶性ヒアルロニダーゼ群を含む。市販のウシまたはヒツジ可溶性ヒアルロニダーゼ群の例は、Vitrase(登録商標)(ヒツジヒアルロニダーゼ)およびAmphadase(登録商標)(ウシヒアルロニダーゼ)である。
ヒアルロナン分解酵素、ヒアルロニダーゼまたはPH20について述べるとき、それは前駆体ヒアルロナン分解酵素ポリペプチド類および成熟ヒアルロナン分解酵素ポリペプチド類(例えば、シグナル配列が除去されているもの)、活性を有する切断形態(例えばC末端切断形態)を含み、対立形質変異体および種変異体、配列番号1および10〜48、63〜65、67〜100に示す前駆体ポリペプチドに対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチド類を含むスプライス変態によりコードされる変異体、および他の変異体、またはその成熟形態を含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素(例えばPH20)について述べるとき、それは配列番号2に示す成熟ヒトPH20および活性を有するその切断形態を含み、対立形質変異体および種変異体、スプライス変異によりコードされる変異体、および配列番号2に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチド類を含む他の変異体を含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素について述べるとき、それはまた配列番号50〜51に示すヒトPH20前駆体ポリペプチド変異体を含む。ヒアルロナン分解酵素群はまた化学的または翻訳後修飾を含むものおよび化学的または翻訳後修飾を含まないものを含む。このような修飾は、ペグ化、アルブミン化、グリコシル化、ファルネシル化、カルボキシル化、ヒドロキシル化、リン酸化、および当分野で知られる他のポリペプチド修飾を含むが、これらに限定されない。
ここで使用するPH20は、精子で発生し、中性で活性なヒアルロニダーゼ群を言う。PH−20は精子表面および内部アクロソーム膜に結合する場所であるリソソーム由来アクロソームで発生する。PH20は、ヒト、チンパンジー、カニクイザル、アカゲザル、マウス、ウシ、ヒツジ、モルモット、ウサギおよびラット起源のものを含むが、これらに限定されず、あらゆる起源のものを含む。PH20タンパク質類の例は、ヒト(配列番号1に示す前駆体ポリペプチド、配列番号2に示す成熟ポリペプチド)、ウシ(配列番号11および64)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジPH20(配列番号27、63および65)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、ラット(配列番号31)、マウス(配列番号32)、チンパンジー(配列番号185)およびアカゲザル(配列番号186)PH20ポリペプチド類を含むが、これらに限定されない。PH20について述べるとき、それは前駆体PH20ポリペプチド類および成熟PH20ポリペプチド類(例えば、シグナル配列が除去されているもの)、活性を有するその切断型形態を含み、対立形質変異体および種変異体、スプライス変異によりコードされる変異体、および配列番号1、10、25、27、30〜31、63〜65、185〜186に示す前駆体ポリペプチド類に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する他の変異体を含むポリペプチド類、またはその成熟形態を含む。PH20ポリペプチド類はまた化学的または翻訳後修飾を含むものおよび化学的または翻訳後修飾を含まないものを含む。このような修飾は、ペグ化、アルブミン化、グリコシル化、ファルネシル化、カルボキシル化、ヒドロキシル化、リン酸化、および当分野で知られる他のポリペプチド修飾を含むが、これらに限定されない。市販のウシまたはヒツジ可溶性ヒアルロニダーゼ群の例は、Vitrase(登録商標)ヒアルロニダーゼ(ヒツジヒアルロニダーゼ)およびAmphadase(登録商標)ヒアルロニダーゼ(ウシヒアルロニダーゼ)である。
ここで使用する可溶性ヒアルロニダーゼは、細胞から分泌され、膜アンカー型または結合性ではなく、それ故に、生理的条件下でのその溶解性により特徴付けることができるポリペプチドである。可溶性ヒアルロニダーゼ群は、例えば、37℃に温めたTriton X-114溶液の水相へのその分配により区別できる(Bordier et al., (1981) J. Biol. Chem., 256:1604-7)。膜アンカー型、例えば脂質アンカーヒアルロニダーゼ群は、界面活性剤リッチ相に分配されるが、ホスホリパーゼ−C処置後は界面活性剤プアまたは水相に分配される。可溶性ヒアルロニダーゼ群に包含されるのは、ヒアルロニダーゼの膜へのアンカーと結合性の1カ所以上の領域が除去または修飾されており、可溶性形態がヒアルロニダーゼ活性を維持する、膜アンカー型ヒアルロニダーゼ群である。それ故に、可溶性ヒアルロニダーゼ、例えば可溶性PH20ポリペプチド類は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーの1個以上のアミノ酸類を欠くその切断型形態、例えば、C末端切断型形態を含む。可溶性ヒアルロニダーゼ群は、組み換え可溶性ヒアルロニダーゼ群および天然源中に含まれるものまたは、例えば、ヒツジまたはウシからの精巣抽出物のようなそこから単離されたものを含む。このような可溶性ヒアルロニダーゼ群の例は、可溶性ヒトPH20を含む。他の可溶性ヒアルロニダーゼ群はヒツジ(配列番号27、63、65)およびウシ(配列番号11、64)PH20を含む。
ここで使用する可溶性ヒトPH20またはsHuPH20は、発現に際し、ポリペプチド類がそれらが産生された宿主細胞の膜と結合性ではなく、細胞培養培地に分泌され、それ故に、可溶性であるように、C末端でグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合部位の全てまたは一部を欠く成熟PH20ポリペプチド類を含む。それ故に、可溶性ヒトPH20はC末端切断型ヒトPH20ポリペプチド類を含む。可溶性またはC末端切断型PH20ポリペプチド類の例は、配列番号4〜9、47〜48、234〜254、および267〜273のいずれかに示すアミノ酸配列を有する成熟ポリペプチド類、または配列番号4〜9、47〜48、234〜254、および267〜273のいずれかと少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示すポリペプチドを含む。sHuPH20ポリペプチド類の例は、配列番号4〜9および47〜48のいずれかに示すアミノ酸配列を有する成熟ポリペプチド類を含む。このようなsHuPH20ポリペプチド類の前駆体ポリペプチド類の例はシグナル配列を含む。前駆体の例は、配列番号3および40〜46に示すものであり、その各々がアミノ酸1〜35位に35アミノ酸シグナル配列を含む。可溶性HuPH20ポリペプチド類はまたここに記載する産生および精製方法の途中でまたは後に分解するものも含む。
ここで使用するrHuPH20と言う組み換えヒトPH20は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で組み換え発現されたヒトPH20の分泌された可溶性形態を言う。可溶性rHuPH20は、シグナル配列、例えば天然シグナル配列をコードする核酸により産生される生成物であり、アミノ酸類36〜482をコードする核酸を含み、天然シグナル配列をコードする核酸を含むその配列の例を配列番号49に示す。また包含されるのは、その対立形質変異体および他の可溶性変異体であるDNA分子である。可溶性rHuPH20をコードする核酸はCHO細胞で発現され、それは成熟ポリペプチドを分泌する。培養培地で産生されるため、生成物が種々の量で配列番号4〜9のいずれか1種以上を含み得る種の混合物を含むように、C末端に不均一性がある。配列番号50〜51に示す前駆体ヒトPH20ポリペプチド類に対応するものを含む、対応する対立形質変異体および他の変異体も含まれる。他の変異体は、ヒアルロニダーゼ活性を維持し、可溶性である限り、配列番号4〜9および47〜48のいずれかと60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有し得る。
ここで使用する“超速効型のインスリン組成物”は、インスリン組成物が、対象への非経腸投与後の最初の40分間に、同量の速効性のインスリンを同じ経路で、ヒアルロナン分解酵素非存在下に投与した後の対象における累積的全身インスリン暴露よりも多い対象における累積的全身インスリン暴露を提供するように、速効性のインスリン、特に速効型インスリン類似体、例えばインスリンのより急速な発現をするインスリン類似体、およびヒアルロナン分解酵素を含むインスリン組成物(例えば、rHuPH20製剤であるが、これに限定されない)を言う。超速効型のインスリン組成物は、所望により基礎作用インスリンを含み得る。
ここで使用する製剤は、少なくとも1種の活性剤または薬剤および1種以上の添加物を含む組成物を言う。
ここで使用する配合剤は、2種以上の活性剤または薬剤および1種以上の添加物を含む組成物を言う。例えば、速効性のインスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤は速効性のインスリン、ヒアルロナン分解酵素、および1種以上の添加物を含む。
ここで使用する本組成物は、初期活性および/または純度および/または効力または回収と比較して、その中の活性成分が少なくとも必要レベルの活性および/または純度および/または効力または回収を維持するならば、規定条件下で安定である。本発明の目的で、本組成物は、ヒアルロナン分解酵素活性の少なくとも50%を維持するかおよび/またはインスリン効力または回収の少なくとも90%を保持するときおよび/またはインスリン純度の少なくとも90%を保持するとき、安定である。
ここで使用する少なくとも2種の活性成分を含む安定な配合剤は、初期活性および/または純度および/または効力または回収と比較して、各活性成分が少なくとも必要レベルの活性および/または純度および/または効力または回収を維持するならば、安定である。本発明の目的で、配合剤は、ヒアルロナン分解酵素活性の少なくとも50%を維持するならばおよびインスリン効力または回収の少なくとも90%および/またはインスリン純度の少なくとも90%を維持するならば、安定である。
ここで使用する規定条件は保存および/または使用条件を言う。
ここで使用する“保存”は、製剤が製造後直ぐに対象に投与されず、使用前に一定期間特定の条件(例えば特定の温度;時間、液体または凍結乾燥形態)に維持されることを意味する。例えば、液体製剤は、冷蔵(0〜10℃、例えば2℃〜8℃)、室温(例えば最高〜32℃、例えば18℃〜約または正確に32℃の温度)、または高温(例えば、30℃〜42℃、例えば32℃〜37℃または35℃〜37℃)のような種々の温度下に、対象への投与前に数日間、数週間、数ヶ月または数年間維持できる。
安定性と関連する条件と関連してここで使用する“使用”は、特定の目的で製剤を用いる行動を言う。特定の適用はタンパク質または薬物の活性または特性に影響され得る。例えば、ある適用は、製剤を一定温度に一定時間維持すること、温度変化に付すことおよび/または混合、振盪、撹拌または活性剤の安定性(例えば活性および/または溶解性)に影響し得る同等な運動に付すことを必要とし得る。条件の例は、連続的注入方法であり、そこで、活性剤は、対象に、使用者が使用するポンプまたは注入器から数日間連続的に注入される。このような条件は撹拌および温度変動と関係し得る。
安定性を測定する、保存または使用に関して、ここで使用する規定条件は、温度条件、保存条件および/または使用条件の時間を含む。例えば、規定温度条件は2℃〜8℃の低温または冷蔵温度、20℃〜30℃の環境温度または32℃〜40℃の高温を含む。他の例において、規定時間条件は、種々の温度条件下での保存期間、例えば数日間(少なくとも3日間、4日間、5日間、6日間または7日間)、数週間(少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間または少なくとも数週間)または数ヶ月間(少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間、18ヶ月間、24ヶ月間以上)の保存を言う。さらなる例において、規定使用条件は、混合物である組成物混合物を攪拌するまたは変える条件、例えば撹拌条件を言う。
ここで使用する単回投与製剤は、直接投与用製剤または配合剤を言う。一般的に、単回投与製剤は、直接投与のための単回投与量治療剤を含む製剤を言う。単回投与製剤は、一般的に防腐剤を含まない。
ここで使用する多数回投与製剤は、治療剤の多数回投与量を含み、直接投与して治療剤の単回投与数回分の投与量を提供できる製剤を言う。多数回投与量は分、時、週、日または月単位にわたり投与し得る。多数回投与製剤は用量調節、用量貯蔵および/または用量分割が可能である。多数回投与製剤は長期間にわたり使用されるため、一般に微生物増殖を防止するための1種以上の防腐剤を含む。多数回投与製剤は注射または点滴(例えば連続的注入)用に製剤できる。
ここで使用する“安定な多数回注射用(MDI)配合剤”は、初期活性および/または純度および/または効力または回収と比較して、必要レベルの活性および/または純度および/または効力または回収が一定時間および温度で維持されるように、正確にまたは約2℃〜8℃の温度で少なくとも6ヶ月間および/または正確にまたは約20℃〜30℃の温度で少なくとも14日間安定である安定な配合剤を言う。例えば、安定な多数回注射用製剤はヒアルロナン分解酵素活性の少なくとも50%およびインスリン効力または回収の少なくとも90%および/またはインスリン純度の少なくとも90%を正確にまたは約2℃〜8℃の温度で少なくとも6ヶ月間および/または正確にまたは約20℃〜30℃の温度で少なくとも14日間維持する。
ここで使用する“安定な連続的インスリン注入製剤”は、初期活性および/または純度および/または効力または回収と比較して、必要レベルの活性および/または純度および/または効力または回収が一定時間および温度で維持されるように、少なくとも3日間正確にまたは約32℃〜40℃の温度で安定である安定な配合剤を言う。例えば、安定な連続的インスリン注入製剤は、ヒアルロナン分解酵素活性の少なくとも50%およびインスリン効力または回収の少なくとも90%および/またはインスリン純度の少なくとも90%を少なくとも3日間正確にまたは約32℃〜40℃の温度で維持する。
ここで使用する持続皮下インスリン注入療法(CSII)は、インスリンがポンプに接続された注入セットを介して、小注入器またはポンプから数日間にわたり計画された速度で投与される、インスリン投与レジメンを言う。典型的に、CSII治療は注入セットおよびポンプリザーバーを変えなければならなくなるまで2〜4日間続く。本処置は、食前および高血糖値に応答した連続的ベースラインインスリン放出(基礎速度)および付加的インスリンボーラス投与(すなわち補正ボーラス)を組み合わせる。CSII治療は、一般的に投与レジメンに従い速効性のインスリン、特にインスリン類似体を送達するための電池式シリンジドライバー、インスリンポンプまたは他の類似デバイスを含む。一般的に、連続的ベースラインインスリン放出のスケジューリングは各患者対して医師が行う。ボーラス投与は食事上の必要および血糖応答に基づき決定する。それ故に、CSII治療は患者特異的である。ある患者および他の患者の要求、例えば患者の体重、年齢、運動、食習慣および臨床症状のようなパラメータによって、患者毎に特定のインスリン投与レジメンを決定するのは熟練した医師および患者の技術レベルの範囲内であることは周知である。
ここで使用する安定化剤は、例えば配合剤が保存されまたは使用される塩、pHおよび温度の条件下、ヒアルロナン分解酵素またはインスリンまたは両者を分解から保護するために製剤に添加される化合物を言う。それ故に、組成物中のタンパク質類が分解して他の成分になるのを防止する薬剤が含まれる。このような薬剤の例はアミノ酸類、アミノ酸誘導体、アミン類、糖類、ポリオール類、塩類および緩衝剤、界面活性剤、阻害剤または基質およびここに記載する他の薬剤である。
ここで使用するリシルリシン(Lys−Lysまたはジリシン)は、Lys−Lysジペプチド、その塩、誘導体、類似体または模倣体を言う。例えば、ここで言うLys−Lysにはその塩類、例えばLys−Lysの二塩酸塩、すなわちLys−Lys二塩酸塩(またはジリシン二塩酸塩;H−Lys−Lys−OH HCl)が含まれる。Lys−Lys二塩酸塩は次の式により表される。
ここで言うLys−Lysはまたその誘導体、例えば、例えばFmoc−、Noc−またはCbz保護基を含む誘導体を含む。市販のLys−Lys二塩酸塩類の例は、Sigma Aldrich、RnD Chem.、MP Bio、Tetrahedron Scientific Inc.およびCrescent Chemical Companyから入手可能なものを含むが、これらに限定されない。市販のLys−Lys二塩酸塩の例はSigma Aldrich(Product No. L5502)またはRnD Chem(Product No. G-2675)から入手可能なLys−Lys二塩酸塩である。
ここで使用する抗微生物有効性試験は、製品中の防腐剤系の効果を証明する。製品に定められた量の特定の生物を接種する。続いて、28日間にわたり対照サンプル対試験サンプルで見られる微生物レベルを比較する試験を行う。抗菌有効性試験を実施するためのパラメータはここに記載する分野の当業者には知られている。
ここで使用する防腐剤の抗微生物または抗菌有効量は、保存または使用により混入し得るサンプル中の微生物を死滅させるまたは繁殖を阻害する防腐剤の量を言う。例えば、多数回投与容器について、抗微生物有効量の防腐剤は、単回量の繰り返し吸引により混入し得る微生物の増殖を阻害し得る。USPおよびEP(EPAおよびEPB)は、防腐剤有効性を規定し、厳しさが異なる抗菌性条件がある。例えば、防腐剤の抗菌有効量は、抗菌防腐剤有効性試験(APET)において、接種7日間後に細菌性微生物の少なくとも1.0log10単位減少が起こる量である。特定の例において、防腐剤の抗菌有効量は、接種7日間後に細菌性微生物の少なくとも1.0log10単位減少が起こる、接種14日間後に細菌性微生物の少なくとも3.0log10単位減少が起こる、少なくとも接種後28日間細菌性微生物のさらなる増殖がない、および少なくとも接種後7日間真菌性微生物の増殖がないような量である。さらなる例において、防腐剤の抗菌有効量は、接種後28日間細菌性微生物のさらなる増殖がない、せつ種後14日間で真菌性微生物が少なくとも1.0log10単位減少する、接種7日間後に細菌性微生物の少なくとも3.0log10単位減少が起こる、少なくとも接種後28日間細菌性微生物のさらなる増殖がない、接種14日間後に細菌性微生物の少なくとも1.0log10単位減少が起こる、および少なくとも接種後28日間真菌性微生物のさらなる増殖がないような量である。さらなる例において、防腐剤の抗菌有効量は、接種後6時間で細菌性微生物が少なくとも2.0log10単位減少する、接種24時間後細菌性微生物が少なくとも3.0log10単位減少する、接種後28日間細菌性微生物の回収がない、接種後7日間で真菌性微生物が少なくとも2.0log10単位減少する、および少なくとも接種28日間真菌性微生物のさらなる増殖がないような量である。
ここで使用する“添加物”は、活性剤非存在下で投与したとき、活性剤の生物学的効果を提供しない、活性剤の製剤中の化合物を言う。添加物の例は、塩類、緩衝剤、安定化剤、浸透圧修飾剤、金属類、ポリマー類、界面活性剤、防腐剤、アミノ酸類および糖類を含むが、これらに限定されない。
ここで使用する“緩衝剤”は、強酸類または強塩基類の添加および温度、圧力、容積または酸化還元電位の外的影響の付加にかかわらずpHを一定に保ことができる、物質、一般的に溶液を言う。緩衝剤は他の化学物質の濃度変化を防止し、例えばプロトンドナーおよびアクセプター系は水素イオン濃度(pH)の著しい変化を防止する。全緩衝剤のpH値は温度および濃度依存的である。pH値または範囲を維持するための緩衝剤の選択は、既知緩衝剤の既知緩衝能に基づき、当業者により経験的に決定できる。緩衝剤の例は、炭酸水素緩衝剤、カコジル酸緩衝剤、リン酸緩衝液またはTris緩衝剤を含むが、これらに限定されない。例えば、Tris緩衝剤(トロメタミン)はアミンベースの緩衝剤であり、8.06のpKaを有し、有効pH範囲は7.9〜9.2である。Tris緩衝剤について、pHは温度が1℃下がるにつれて約0.03単位上昇し、10倍希釈当たり0.03〜0.05単位減少する。
ここで使用する活性は、ポリペプチドまたはその一部の、完全長(完全)タンパク質と関連する1種または複数種の機能的活性を言う。機能的活性は、触媒または酵素活性、抗原性(抗ポリペプチド抗体に対する結合能または当該結合についてポリペプチドと競合する能力)、免疫原性、多量体形成能、およびポリペプチドについての受容体またはリガンドと特異的に結合する能力を含むが、これらに限定されない。
ここで使用するヒアルロニダーゼ活性は、ヒアルロン酸開裂を酵素的に触媒する能力を言う。米国薬局方(USP)XXIIのヒアルロニダーゼアッセイは、酵素を30分間、37℃でHAを反応させた後の(HA)基質である高分子量ヒアルロン酸またはヒアルロナンの量を測定することにより間接的にヒアルロニダーゼ活性を測定する(USP XXII-NF XVII (1990) 644-645 United States Pharmacopeia Convention, Inc, Rockville, MD)。あらゆるヒアルロニダーゼの相対的活性を単位で確認するために、アッセイにおいて標準品溶液を使用できる。ヒアルロニダーゼ群、例えば可溶性rHuPH20のヒアルロニダーゼ活性を測定するためのインビトロアッセイは当分野で知られ、ここに記載されている。アッセイの例は、非開裂ヒアルロン酸が血清アルブミンと結合したときに形成される不溶性沈殿を検出することによりヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸開裂を間接的に測定する微少濁度アッセイ(例えば実施例2参照)である。試験するヒアルロニダーゼの活性を単位で決定するために、例えば、標準曲線を作成するために、標準品を使用できる。
ヒアルロナン分解酵素に関連してここで使用する“機能的等価量”は、参照酵素、例えばヒアルロニダーゼの一定量(例えば、ヒアルロニダーゼ活性の既知単位数)と同じ効果を達成するヒアルロナン分解酵素の量である。例えば、あらゆるヒアルロナン分解酵素の活性を、rHuPH20の既知量と同じ効果を達成できる機能的等価ヒアルロナン分解酵素の量を決定するために、rHuPH20の活性と比較できる。例えば、展着または拡散剤として作用するヒアルロナン分解酵素の能力を、マウスの脇腹皮膚にトリパンブルーと共に注射し(例えば米国特許公開番号20050260186参照)、例えば、100単位のヒアルロニダーゼ標準品と同じ量の展着または拡散をするのに必要なヒアルロナン分解酵素の量を決定できる。必要なヒアルロナン分解酵素量は、それ故に、100単位と機能的等価である。他の例において、併用インスリンの吸収レベルおよび速度を増加させるヒアルロナン分解酵素の能力を、ヒト対象において、例えば下の実施例1に記載のとおり測定でき、例えば、投与された量のrHuPH20と同程度にインスリンの吸収レベルおよび速度を増加させるのに必要なヒアルロナン分解酵素の量を決定できる(例えば、血中最大インスリン濃度(Cmax)、血中最大インスリン濃度に到達するまでの時間(tmax)および一定時間にわたる累積的全身インスリン暴露(AUC)を評価することによる)。
ここで使用する天然に存在するα−アミノ酸類の残基は、ヒトにおける同族mRNAコドンによる荷電tRNA分子の特異的認識によりタンパク質に取り込まれる、自然に見られる20種のα−アミノ酸類の残基である。
ここで使用する核酸類はペプチド核酸類(PNA)およびそれらの混合物を含み、DNA、RNAおよびそれらの類似体を含む。核酸類は一本鎖または二本鎖であり得る。所望により検出可能標識、例えば蛍光または放射標識で標識されていてよいプローブまたはプライマーを言うとき、一本鎖分子が意図される。このような分子は、典型的にその標的が、ライブラリー探索またはプライミングのために統計学的に独特であるまたは低コピー数である(典型的に5未満、一般的に3未満)ような長さである。一般的にプローブまたはプライマーは、目的遺伝子と相同的なまたは同一の配列の少なくとも14、16または30連続ヌクレオチドを含む。プローブおよびプライマーは10、20、30、50、100以上の核酸長であり得る。
ここで使用するペプチドは、2アミノ酸長以上であり、40アミノ酸長未満であるポリペプチドを言う。
ここに提供されるアミノ酸類の種々の配列に現れる、ここで使用するアミノ酸類は周知の三文字または一文字略語に従い同定する(表1)。種々の核酸フラグメントに現れるヌクレオチドは、当分野で慣用の標準的一文字命名法で指定する。
ここで使用する“アミノ酸”は、アミノ基およびカルボン酸基を含む有機化合物である。ポリペプチドは2個以上のアミノ酸類を含む。本発明の目的で、アミノ酸類は20種の天然に存在するアミノ酸類、非天然アミノ酸類およびアミノ酸類似体(すなわち、α−炭素が側鎖を有するアミノ酸類)を含む。
ここで使用する“アミノ酸残基”は、ポリペプチドのペプチド結合の化学分解(加水分解)により形成されたアミノ酸を言う。ここに記載するアミノ酸残基は、“L”異性体形態であると推定される。“D”異性体形態の残基は、そう命名されているが、所望の機能的特性がポリペプチドにより維持されている限り、あらゆるL−アミノ酸残基と置き換えてよい。NH
2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を言う。COOHは、ポリペプチドのカルボキシル末端に存在する遊離カルボキシ基を言う。J. Biol. Chem., 243: 3557-3559 (1968)に記載され、37 C.F.R. §§ 1.821-1.822に再用された標準ポリペプチド命名法を遵守して、アミノ酸残基の略語を表1に示す。
ここで使用する式で表されるアミノ酸残基配列は、全て、左から右に、アミノ末端からカルボキシル末端に向かう通常の向きで表されている。また、“アミノ酸残基”という表現は、対応表(表1)に挙げたアミノ酸ならびに修飾アミノ酸および異常アミノ酸、例えば37C.F.R.§§1.821〜1.822で言及され引用により本明細書に組み込まれるものを包含すると広く定義される。さらにまた、アミノ酸残基配列の最初または最後にあるハイフン記号は、1つ以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合、アミノ末端基(例えばNH2)またはカルボキシル末端基(例えばCOOH)へのペプチド結合を示す。
ここで使用する“天然アミノ酸”とは、ポリペプチド中に見いだされる20種のL−アミノ酸を言う。
ここで使用する“非天然アミノ酸”は、天然アミノ酸に類似する構造を持つが、天然アミノ酸の構造および反応性を模倣するように構造的に修飾されている有機化合物を言う。したがって非天然アミノ酸は、例えば20種類の天然アミノ酸以外のアミノ酸またはアミノ酸類似体を包含し、例えばアミノ酸のD−立体異性体を含むが、これらに限定されない。典型的な非天然アミノ酸は本明細書に記載され、当業者に知られている。
ここで使用するDNAコンストラクトは、DNAのセグメントが自然界には見いだされない形で組み合わされ隣接して配置されている一本鎖または二本鎖の線状または環状DNA分子である。DNAコンストラクトは、人為的操作の結果として存在し、操作された分子のクローンおよび他のコピーを含む。
ここで使用するDNAセグメントは、指定された属性を持つ、より大きなDNA分子の一部分である。例えば、指定されたポリペプチドをコードするDNAセグメントは、プラスミドまたはプラスミドフラグメントのような、より長いDNA分子の一部であって、5’から3’に向かう方向に読んだ場合に、指定されたポリペプチドのアミノ酸配列をコードするものである。
ここで使用する用語ポリヌクレオチドは、5’端から3’端に向かって読み取られるデオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーを意味する。ポリヌクレオチドにはRNAおよびDNAが包含され、自然源から単離するか、インビトロで合成するか、天然分子と合成分子の組合せから製造することができる。ポリヌクレオチド分子の長さは、本明細書では、ヌクレオチド(“nt”と略記)または塩基対(“bp”と略記)の数で記載される。ヌクレオチドという用語は、文脈に応じて、一本鎖分子および二本鎖分子に使用される。この用語が二本鎖分子に適用される場合、それは全長を表すために使用され、塩基対という用語と等価であると理解される。二本鎖ポリヌクレオチドの2本の鎖の長さがわずかに異なり得ること、およびそれらの末端がずれていてもよいこと、したがって二本鎖ポリヌクレオチド分子内の全てのヌクレオチドが対を形成しているとは限らないことは、当業者には理解される。そのような非対合末端は、一般に、20ヌクレオチド長を超えない。
ここで使用する2つのタンパク質または核酸間の“類似性”とは、タンパク質のアミノ酸配列間または核酸のヌクレオチド配列間の類縁性を言う。類似性は、残基の配列およびそこに含まれる残基の同一性および/または相同性の度合いに基づくことができる。タンパク質間または核酸間の類似性の度合いを評価するための方法は、当業者には知られている。例えば、配列類似性を評価する一方法では、2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を、それら配列間の同一性が最大レベルになるように整列させる。“同一性”とは、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列が不変である程度を言う。アミノ酸配列の整列では(また、ある程度はヌクレオチド配列の整列でも)、アミノ酸(またはヌクレオチド)の保存的相違および/または頻繁な置換も考慮することができる。保存的相違とは、関与する残基の物理化学的性質が維持されるような相違である。整列はグローバル(配列の全長にわたり、全ての残基を含む、比較配列の整列)またはローカル(配列のうち、最も類似する1または複数の領域だけを含む部分の整列)であることができる。
ここで使用する“同一性”そのものは、当技術分野で認められている意味を持ち、公表された技法を使って算出することができる(例えばComputational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991)参照)。2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の同一性を測定するための方法はいくつか存在するが、“同一性”という用語は当業者にはよく知られている(Carrillo, H. & Lipton, D., SIAM J Applied Math 48:1073 (1988))。
ここで使用する相同(核酸および/またはアミノ酸配列に関して)は、約25%以上の配列相同性、典型的には、25%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上の配列相同性を意味し、必要であれば正確なパーセンテージを指定することができる。ここで使用するは、“相同性”および“同一性”という用語は、別段の表示がない限り、しばしば可換的に使用される。一般に、相同率または同一率を決定するには、最も高度な一致が得られるように配列が整列される(例えばComputational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991; Carrillo et al. (1988) SIAM J Applied Math 48:1073参照)。配列相同性により、保存されているアミノ酸の数は、標準的なアラインメントアルゴリズムプログラムで決定され、各供給者によって設定されたデフォルトギャップペナルティを用いて使用することができる。実質的に相同な核酸分子は、典型的には、中ストリンジェンシーまたは高ストリンジェンシーで、目的とする対象の核酸の全長にわたってハイブリダイズする。ハイブリダイズする核酸分子中のコドンの代わりに縮重したコドンを含有する核酸分子も意図される。
任意の2分子が、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%“同一”または“相同”なヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を持つかどうかは、“FASTA”プログラムなどの公知コンピュータアルゴリズムを使用し、例えばPearson et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444に記載されているデフォルトパラメータを使って決定することができる(他のプログラムには、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research 12(I):387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Altschul, S.F., et al., J Molec Biol 215:403 (1990)); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, ed., Academic Press, San Diego, 1994, and Carrillo et al. (1988) SIAM J Applied Math 48:1073)。例えば、米国国立バイオテクノロジー情報センターデータベースのBLAST機能を使って同一性を決定することができる。他の市販プログラムまたは公に利用可能なプログラムには、DNAStar “MegAlign” program (Madison, WI)およびUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group (UWG) “Gap” program (Madison WI)などがある。タンパク質分子および/または核酸分子の相同率または同一率は、例えば、GAPコンピュータプログラム(例えばNeedleman et al. (1970) J. Mol. Biol. 48:443, as revised by Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482)を使って配列情報を比較することによって決定することができる。簡単に述べると、GAPプログラムは、類似性を、整列させた記号(すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸)のうち、類似しているものの数を、それら2つの配列の短い方の配列中の記号の総数で割ったものと定義する。GAPプログラムのデフォルトパラメータとしては、(1)Schwartz and Dayhoff, eds., ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)に記載されているように、単項比較マトリックス(unary comparison matrix)(一致に対して1の値を、不一致に対して0の値を含む)およびGribskov et al. (1986) Nucl. Acids Res. 14:6745の加重比較マトリックス(weighed comparison matix);(2)各ギャップに対して3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対して0.10の追加ペナルティ;ならびに(3)エンドギャップ(end gap)に対するペナルティなしを挙げることができる。
したがって、ここで使用する“同一性”または“相同性”という用語は、試験ポリペプチドまたは試験ポリヌクレオチドと基準ポリペプチドまたは基準ポリヌクレオチドの間の比較を表す。本明細書で使用する“〜に少なくとも90%同一”という用語は、そのポリペプチドの基準核酸配列または基準アミノ酸配列に対する90〜100%の同一率を言う。90%以上のレベルの同一性とは、例えば、比較される試験ポリペプチドと基準ポリペプチドの長さが100アミノ酸であるとすると、基準ポリペプチド中のアミノ酸と異なる試験ポリペプチド中のアミノ酸が10%(すなわち100個中10個)を上回らないことを示す。同様の比較を、試験ポリヌクレオチドと基準ポリヌクレオチドの間でも行うことができる。そのような相違は、ポリペプチドの全長にわたってランダムに分布する点突然変異として現れる場合も、許容される最大値までの、例えば100個中10個のアミノ酸相違(約90%の同一性)までの、種々の長さを持つ1つ以上の位置にクラスターを形成する場合もあり得る。相違は、核酸またはアミノ酸の置換、挿入または欠失と定義される。約85〜90%を上回る相同性または同一性のレベルでは、結果が、プログラムにも、設定されたギャップパラメータにも、依存しないはずであり、そのような高レベルの同一性は、多くの場合、ソフトウェアに頼らなくても手動での整列によって、容易に評価することができる。
ここで使用する、整列された配列とは、相同性(類似性および/または同一性)を使った、ヌクレオチド配列中またはアミノ酸配列中の対応する位置の整列を言う。典型的には、50%以上が同一である関係する2つ以上の配列が整列される。整列された一組の配列とは、対応する位置で整列させた2つ以上の配列を指し、RNAに由来する配列、例えばESTおよび他のcDNAを、ゲノムDNA配列と整列させたものを含み得る。
ここで使用するある生成物と実質的に同一であるとは、十分に類似しているので、その物品の代わりに実質的に同一な生成物を使用しても、目的とする対象の性質が十分に不変であることを意味する。
また、ここで使用する“実質的に同一”または“類似する”という用語は、当業者には理解されるとおり、文脈によってさまざまであると理解される。
ここで使用する対立遺伝子変異型または対立遺伝子変異は、同じ染色体座を占める遺伝子の2つ以上の変異形態のいずれかを言う。対立遺伝子変異は突然変異によって自然に発生し、集団内の表現型多型をもたらし得る。遺伝子突然変異はサイレント(コードされるポリペプチドを変化させない)であるか、変化したアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードすることができる。“対立遺伝子変異型”という用語は、本明細書では、ある遺伝子の対立遺伝子変異型によってコードされるタンパク質を表すためにも使用される。典型的に、基準型の遺伝子は、ある集団から得られるまたはある種の単一の基準メンバーから得られるポリペプチドの野生型および/または優勢型をコードする。典型的に、対立遺伝子変異型(2種間および3種以上の間での変異型を含む)は、同じ種から得られる野生型および優勢型と、典型的には少なくとも80%、90%またはそれ以上のアミノ酸同一性を持つ。また、同一性の度合いは、遺伝子に依存し、比較が種間比較であるか種内比較であるかにも依存する。一般に、種内対立遺伝子変異型は、野生型および/または優勢型と少なくとも約80%、85%、90%または95%またはそれ以上の同一性(野生型および/または優勢型のポリペプチドと96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を含む)を持つ。本明細書において対立遺伝子変異型は、一般に、同じ種内のメンバー間でのタンパク質中の変異を言う。
ここで使用する“対立遺伝子”は、本明細書では“対立遺伝子変異型”と可換的に使用され、遺伝子またはその一部の変異型を言う。対立遺伝子は相同染色体上の同じ座または位置を占める。ある対象がある遺伝子について2つの同一対立遺伝子を持っている場合、その対象はその遺伝子または対立遺伝子に関してホモ接合であるという。ある対象がある遺伝子について2つの異なる対立遺伝子を持っている場合、その対象はその遺伝子についてヘテロ接合であるという。ある特定遺伝子の対立遺伝子は互いに1個のヌクレオチドが異なる場合または数個のヌクレオチドが異なる場合があり、ヌクレオチドの置換、欠失および挿入を含む場合もある。ある遺伝子の対立遺伝子は、突然変異を含有する遺伝子の一形態であることもできる。
ここで使用する種変異型は、マウスとヒトのような異なる哺乳動物種間を含む異なる種間のポリペプチドにおける変異型を言う。
ここで使用する改変は、ポリペプチドのアミノ酸配列または核酸分子中のヌクレオチド配列の改変に関し、それぞれアミノ酸およびヌクレオチドの欠失、挿入および置換を含む。ポリペプチドを改変する方法は、組換えDNA法を用いる方法など、当業者にとっては日常的である。
ここで使用する単離されたまたは精製されたポリペプチドもしくはタンパク質またはその生物学的活性部分は、そのタンパク質が得られる細胞または組織に由来する細胞性物質または他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、または化学合成された場合は化学的前駆体または他の化学薬品を実質的に含まない。当業者が純度を評価するために使用する薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの標準的分析方法で決定した場合に調製物が容易に検出できる不純物を含まないと考えられるか、または調製物が十分に純粋であって、さらなる精製を行ってもその物質の物理的および化学的性質(例えば酵素活性および生物学的活性)が検出できるほどには変化しないであろう場合に、調製物は不純物を実質的に含まないと決定することができる。化合物を精製して実質的に化学的に純粋な化合物を製造するための方法は、当業者には知られている。ただし、実質的に化学的に純粋な化合物は、立体異性体の混合物であることができる。そのような場合は、さらなる精製により、化合物の比活性が増加するかもしれない。
細胞性物質を実質的に含まないという用語は、タンパク質がその単離源または組換え生産源となった細胞の細胞性構成要素から分離されているタンパク質の調製物を包含する。ある態様において、細胞性物質を実質的に含まないという用語は、約30%未満(乾燥重量で)の非酵素タンパク質(ここでは夾雑タンパク質ともいう)、一般的には約20%未満の非酵素タンパク質または約10%未満の非酵素タンパク質または約5%未満の非酵素タンパク質を含む酵素タンパク質の調製物を包含する。酵素タンパク質が組換え生産される場合、それは培養培地も実質的に含まない。すなわち培養培地は、酵素タンパク質調製物の体積の約または正確に20%、10%もしくは5%未満に相当する。
本明細書で使用する、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まないという用語は、タンパク質がそのタンパク質の合成に関与した化学的前駆体または他の化学物質から分離されている酵素タンパク質の調製物を包含する。この用語は、含まれる化学的前駆体または非酵素化学物質もしくは構成要素が約30%(乾燥重量で)、20%、10%、5%またはそれ以下より少ない酵素タンパク質の調製物を包含する。
ここで使用する例えば合成核酸分子または合成遺伝子または合成ペプチドなどに関していう合成とは、組換え法および/または化学合成法によって製造される核酸分子またはポリペプチド分子を言う。
ここで使用する組換えDNA法を使った生産とは、クローン化されたDNAによってコードされるタンパク質を発現させるために、分子生物学の周知の方法を使用することを意味する。
ここで使用するベクター(またはプラスミド)は、異種核酸をその発現またはその複製を目的として細胞中に導入するために使用される不連続な要素を言う。ベクターは典型的に、エピソームであり続けるが、ゲノムの染色体への遺伝子またはその一部の組込みが達成されるように設計することもできる。酵母人工染色体および哺乳類人工染色体などの人工染色体であるベクターも考えられる。そのような運搬体の選択と使用は当業者にはよく知られている。
ここで使用する発現ベクターは、当該DNAフラグメントの発現を達成する能力を持つプロモーター領域などの調節配列に作動的に連結されたDNAを発現させる能力を持つベクターを包含する。そのような追加セグメントはプロモーター配列およびターミネーター配列を含むことができ、場合によっては、1つ以上の複製起点、1つ以上の選択可能マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなども含むことができる。発現ベクターは一般にプラスミドまたはウイルスDNAから誘導されるか、または両方の要素を含有することができる。したがって、発現ベクターとは、適当な宿主細胞に導入された時にクローン化されたDNAの発現をもたらす、プラスミド、ファージ、組換えウイルスまたは他のベクターなどの組換えDNAまたはRNAコンストラクトを言う。適当な発現ベクターは当業者にはよく知られており、真核細胞および/または原核細胞中で複製可能なものや、エピソームであり続けるもの、または宿主細胞ゲノムに組み込まれるものがある。
ここで使用するベクターは、“ウイルスベクター”または“ウイルス様ベクター”も包含する。ウイルス様ベクターは、(運搬体またはシャトルとして)細胞中に外来遺伝子を導入するためにそれら外来遺伝子に作動的に連結された工学的改変ウイルスである。
ここで使用するDNAセグメントに関して作動可能に連結または作動的に連結とは、複数のセグメントが、その意図された目的のために、それらが協力して機能するように、例えば転写がプロモーターの下流かつ任意の転写配列の上流で開始するように、配置されることを意味する。プロモーターとは、通常、転写装置がそこに結合して転写を開始するドメインであり、その転写装置はコードセグメントを通ってターミネーターまで進行する。
本明細書で使用する、評価するという用語は、試料中に存在するプロテアーゼまたはそのドメインの活性について絶対値を得るという意味での、そしてまた活性のレベルを示す指数、比、パーセンテージ、視覚化または他の値を得るという意味での、定量的および定性的決定を包含するものとする。評価は直接的または間接的であることができ、実際に検出される化学種は、もちろん、加水分解産物そのものである必要はなく、例えばその誘導体または他の何らかの物質であることができる。例えば、SDS−PAGEおよびクーマシーブルーを使ったタンパク質染色などによる、相補タンパク質の切断産物の検出が意図される。
ここで使用する生物学的活性とは、化合物のインビボ活性、または化合物、組成物もしくは他の混合物をインビボ投与した時に起こる生理学的応答を言う。したがって生物学的活性は、そのような化合物、組成物および混合物の治療効果および薬理活性を包含する。生物学的活性は、そのような活性を試験または使用するために設計されたインビトロ系で観察することができる。したがって、ここで使用するは、プロテアーゼの生物学的活性とは、ポリペプチドの加水分解がなされるその触媒活性である。
2つの核酸配列に関してここで使用する等価とは、問題の2つの配列が同じアミノ酸配列または等価なタンパク質をコードすることを意味する。2つのタンパク質またはペプチドに関して等価という場合、それは、それら2つのタンパク質またはペプチドが実質的に同じアミノ酸配列を持ち、アミノ酸置換はそのタンパク質またはペプチドの活性または機能を実質的に変化させないものだけであることを意味する。等価が性質を指す場合、その性質は同程度に存在する必要はないが(例えば2つのペプチドは同じタイプの酵素活性を異なる比率で示すことができる)、それらの活性は通常、実質的に同じである。
ここで使用する組成物は任意の混合物を言う。それは、水性、非水性またはその任意の組合せである溶液、懸濁液、液体、粉末、ペーストであることができる。
ここで使用する組合せは、2つまたはそれ以上の物の間の任意の関連を言う。組合せは、2つまたはそれ以上の別々の品目、例えば2つの組成物であるか、その混合物、例えばそれら2つまたはそれ以上の品目の単一混合物であるか、それらの任意の変更物であることができる。組合せの要素は、一般に、機能的に関連または関係する。
ここで使用する“疾患または障害”は、感染、後天的状態、遺伝的状態などを含むが、これらに限定されない原因または状態に起因し、同定可能な症状を特徴とする、ある生物における病理学的状態を言う。ここで目的とする疾患および障害は糖尿病を含む。
ここで使用する、ある疾患または状態を持つ対象を“処置する”とは、処置後に、その対象の症状が部分的にまたは完全に治癒すること、または静的状態を保つことを意味する。したがって、処置は、予防、治療および/または治癒を包含する。予防とは、潜在的疾患の防止および/または症状の悪化もしくは疾患の進行の防止を言う。処置はまたここで提供するインスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤の医薬的使用も包含する。
ここで使用する医薬有効剤は、任意の治療剤または生物活性剤、例えば麻酔薬、血管収縮薬、分散剤、従来の治療薬(小分子薬および治療用タンパク質を含む)を包含するが、これらに限定されない。
ここで使用する処置は、ある状態、障害もしくは疾患または他の適応の症状を寛解するか他の有益な形で変化させる、任意の方法を意味する。
ここで使用する治療効果は、疾患または状態の症状を変化(典型的に、改善または寛解)させるか、疾患または状態を治癒させる、対象の処置に起因する効果を意味する。治療有効量とは、対象への投与後に治療効果をもたらす、組成物、分子または化合物の量を言う。
本明細書で使用する“対象”という用語は、ヒトなどの哺乳動物を含む動物を言う。
ここで使用する患者は、疾患または障害の症状を示すヒト対象を言う。
ここで使用する処置による、例えば医薬組成物または他の治療薬の投与による、特定の疾患または障害の症状の寛解とは、その組成物または治療薬の投与に起因すると考えることができる、またはその組成物もしくは治療薬の投与に関連づけることができる、永続的であるか一時的であるか、持続的であるか一過性であるかを問わない症状の減少を言う。
ここで使用する防止または予防は、疾患または状態が発生するリスクを低下させる方法を言う。
ここで使用する“治療有効量”または“治療有効用量”は、少なくとも、治療効果をもたらすのに十分な、薬剤、化合物、物質、または化合物を含有する組成物の量を言う。したがって、これは、疾患または障害を防止し、治癒させ、寛解させ、抑止し、または部分的に抑止するのに必要な量である。
ここで使用する治療有効インスリン投与量は、血糖管理を達成するのに必要なまたは十分なインスリンの量である。この量は、グルコース負荷または食事負荷などにより、実験的に決定することができる。本明細書に記載する組成物は、治療有効投与量が投与されるように、治療有効量または治療有効濃度のインスリンを含有する。
ここで使用する単位投与形態は、当技術分野で知られているように、ヒトおよび動物対象に適し、個別に包装された、物理的に不連続な単位を言う。
ここで使用する“製品”は、製造され販売される物品である。本願の全体にわたって使用されるこの用語は、同じ包装物または別々の包装物に含まれている速効型インスリン組成物およびヒアルロナン分解酵素組成物を包含するものとする。
ここで使用する流体は、流動し得る任意の組成物を言う。したがって流体は、半固形、ペースト、溶液、水性混合物、ゲル、ローション、クリームおよび他のそれに類する組成物の形態をとる組成物を包含する。
ここで使用する“キット”は、本明細書に記載する組成物と、もう一つの品目、例えば再構成、活性化などを目的とするもの、送達、投与、診断および生物学的活性または性質の評価を行うためであるが、これらに限定されない機器/器具などとの組合せを言う。キットは、場合によっては、使用に関する指示を含む。
ここで使用する動物には、任意の動物、例えば限定するわけではないが、ヒト、ゴリラおよびサルを含む霊長類;マウスおよびラットなどの齧歯類;ニワトリなどの家禽;ヤギ、ウシ、シカ、ヒツジなどの反芻動物;ブタおよび他の動物が含まれる。非ヒト動物として想定される動物にヒトは含まれない。本明細書に記載する酵素は、任意の供給源、動物、植物、原核生物および真菌に由来する。大半の酵素は哺乳動物由来を含む動物由来である。
ここで使用する対照は、それが試験パラメータで処置されない点以外は、またはそれが血漿試料である場合は、目的とする対象の状態を有さない健常ボランティアから得られたものであり得る点以外は、試験試料と実質的に同一な試料を言う。対照は内部対照であることもできる。
ここで使用する使用する単数表現は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、複数の指示物を包含する。したがって、例えば“細胞外ドメイン”を含む化合物への言及は、1つまたは複数の細胞外ドメインを持つ化合物を包含する。
ここで使用する範囲および量は、特定の値または範囲の“約”と表現する場合がある。この“約”には、まさにその量も包含される。したがって“約5塩基”は“約5塩基”を意味すると共に“5塩基”も意味する。
ここで使用する“任意”または“所望により”は、それに続けて述べられる事象または状況が起こることまたは起こらないこと、およびその説明が、該事象または状況が起こる場合と起こらない場合を包含することを意味する。例えば、場合により置換されている基とは、その基が無置換であるか、または置換されていることを意味する。
ここで使用する、任意の保護基、アミノ酸および他の化合物の略号は、別段の表示がない限り、その一般的使用法、広く認識されている略号、またはIUPAC−IUB生化学命名委員会((1972) Biochemistry 11:1726参照)に従う。
B. ヒアルロナン分解酵素製剤およびインスリン配合剤の産生
ここに提供されるのは、ヒアルロナン分解酵素、例えば可溶性ヒアルロニダーゼ、例えばPH20の安定な製剤である。一般的に、ヒアルロナン分解酵素群は、酵素活性を維持するために相対的に高い塩を必要とする(例えば米国特許公開番号US20110066111参照)。既存の製剤はまた安定性のためにヒト血清アルブミン(HSA)を含む。本発明により、Lys−Lysおよび塩化マグネシウム(MgCl2)がNaClよりもヒアルロナン分解酵素群(例えば可溶性ヒアルロニダーゼ、例えばPH20)を安定化させることが判明した。さらに、Lys−LysまたはMgCl2の存在により、HSAは必要でなくなり、要求もされない。ここに提供する製剤は、既存の製剤を超える、特に高温および長時間の、安定性向上の利益を提供する。ここに提供されるのは、Lys−Lysおよび/またはMgCl2を含む安定な製剤である。特に、ここに提供されるのは、安定化剤としてLys−Lysを含む、ヒアルロナン分解酵素(例えば可溶性ヒアルロニダーゼ、例えばPH20)の安定な製剤である。
ヒアルロナン分解酵素と他の治療剤の配合剤も種々の条件下で安定性を示すべきである。種々の治療剤の製剤要求が異なり、ある場合、ヒアルロナン分解酵素に対する製剤要求に反するために問題となり得る。本発明により、ヒアルロナン分解酵素およびインスリンの配合剤を混合したときこれに当てはまることが判明した。ここに提供されるのは、ヒアルロナン分解酵素(例えばPH20のような可溶性ヒアルロニダーゼ)およびインスリン、例えば、速効性のインスリンまたはインスリン類似体の安定な配合剤である。
速効性のインスリン類の安定な製剤は、市販製剤を含み、典型的にヒアルロナン分解酵素群、例えば可溶性ヒアルロニダーゼ群の安定な製剤で見られるよりも、インスリンの安定性、溶解性および活性のために必要な種々の添加物および成分および/または種々の濃度の添加物および成分を含む。インスリン類および可溶性ヒアルロニダーゼ群のこれらの最適化製剤は、配合されたインスリンおよび可溶性ヒアルロニダーゼの安定性、溶解性および/または活性が大きく低下するように、配合剤に一緒に混合したときに不適合である。このような不適合性は、これらの薬剤の安定な配合剤を開発するための大きな障害である。
1. ヒアルロナン分解酵素製剤
ヒアルロナン分解酵素の既存の製剤は一般的にNaCl、典型的に130mM〜150mMのNaClを含む。例えば、Hylenex(登録商標)組み換え(ヒアルロニダーゼヒト注射)は、1mLあたり、8.5mgのNaCl(145mM)、1.4mgのリン酸二水素ナトリウム(9.9mM)、1.0mgのヒトアルブミン、0.9mgのエデト酸二ナトリウム(2.4mM)、0.3mgのCaCl2(2.7mM)およびPHを7.4に調整するためのNaOHを含む。ヒト可溶性ヒアルロニダーゼの他の製剤、例えば米国特許公開番号US2011/0053247に記載されたrHuPH20製剤は、130mMのNaCl、10mMのHepes、pH7.0;または10mMのヒスチジン、130mMのNaCl、pH6.0を含む。
rHuPH20のようなPH20を含むヒアルロナン分解酵素群、例えばヒアルロニダーゼ群の製剤は、インスリン類製剤よりも種々の成分を含む。例えば、PH20は、pH5.5〜6.5の低pH値で最も安定である。低pHに加えて、ヒトヒアルロニダーゼ製剤はインスリン製剤より多くのNaClを含み、このいずれもタンパク質の安定性を向上させ、酵素活性を維持する。また、ヒト可溶性ヒアルロニダーゼ製剤、例えばHylenex(登録商標)組み換え(ヒアルロニダーゼヒト注射)は今日まで単回投与製剤である。それ故、防腐剤を含まない。
2. 速効性のインスリン製剤
速効性のインスリン類は、レギュラーインスリンおよび速効型インスリン類似体を含み、典型的にインスリンの溶解性、安定性および純度が冷蔵温度(例えば4℃、例えば長期保存用に)ならびに高温(例えば25℃および30℃)で最適化されるように製剤される。製剤は特に、多数回投与使用およびパッケージングのために、長期安定性を提供するように製造される。例えば、市販インスリン製品のラベルは、Humulin(登録商標)、Humalog(登録商標)、NovoLog(登録商標)およびApidra(登録商標)を含み、2〜8℃の保存温度で少なくとも24ヶ月間、および25℃または30℃保存で28日間の安定性を示す。また、これらの製剤は、少なくとも6日間、正確にまたは約37℃の保存温度で安定であると考えられる。
各インスリンについての最適製剤は異なり得るが、典型的に製剤におけるいくつかの共通項がある。例えば、インスリン製剤は典型的に緩衝剤、浸透圧修飾剤(複数もある)および1種以上の防腐剤を含む。多くの速効性のインスリン類はまた亜鉛を含み、一方いくつかはさらに安定化剤を含む。さらに、インスリン製剤は、典型的に高めの中性pH(例えば7.0〜7.8)で製造される。下の表2は、1種のレギュラーインスリンおよび2種の速効型インスリン類似体を含む、選択した3種の市販されている速効性のインスリン類の製剤を示す。
速効性のインスリン製剤は、多数回投与のための、反復利用、例えば、注射針の反復挿入による製剤に導入される微生物汚染を防止する防腐剤を含む。多くの防腐剤が現在非経腸医薬品における使用に承認されているが、フェノール、メタクレゾール(m−クレゾール)およびパラベン類のようなフェノール化合物がインスリン製剤で最も一般的に使用されている。これらのフェノール化合物は有効抗菌剤として働くだけでなく、インスリン六量体のアロステリック部位と結合でき、インスリン高次構造の全体的配座を変える。これにより、六量体を、線維状凝集体(小線維)を形成することを阻止することにより安定化させ、当該線維状凝集体はインスリン単量体で六量体より容易に形成される(Rahuel-Clermont et al. (1997) Biochemistry 36:5837-5845)。これらの防腐剤は安定化剤として作用できるが、存在する濃度が高すぎるとインスリンの溶解性も低下させ得る。それ故に、インスリン中の防腐剤濃度は、薬剤の安定性および溶解性に重大である。
1種以上の張性調節剤が、典型的に製剤の等張性を調節するためにインスリン製剤に含まれる。インスリン製剤にしばしば存在する張性調節剤の例は、グリセリンおよび/またはNaClを含む。等張性に影響するだけでなく、NaClはNaCl濃度が高くなれば、溶解性が低下するようにインスリンの溶解性に影響する。インスリン類似体を含む種々のインスリン類が異なる見かけの溶解性を有する。それ故に、溶解性に不利に影響することなく製剤中に存在できるNaCl量は各インスリン類で異なる。例えば、インスリングルリジン(例えばApidra(登録商標)インスリングルリジン)はインスリンアスパルト(例えばNovoLog(登録商標)インスリンアスパルト)よりも溶解性であり、故に製剤中により多くのNaClが容認される。対照的に、インスリンリスプロおよびレギュラーインスリンは速効性インスリン類の中で最低の溶解性であり、典型的に製剤中にNaClを含まない。
他の成分もまたインスリン製剤に含まれ得る。多くのインスリン製剤は、レギュラーインスリン製剤、インスリンアスパルト製剤およびインスリンリスプロ製剤を含み、六量体形成を促進し、安定化させるZn2+イオン類を含む。インスリングルリジン製剤は亜鉛を含まないが、タンパク質安定化剤としてポリソルベート20(P20;Tween 20)を含む。速効性インスリン製剤において使用される緩衝剤は、例えば、リン酸二水素ナトリウム緩衝剤およびトロメタモール(TrisまたはTHAMとしても知られる)を含み得る。
3. ヒアルロナン分解酵素およびインスリン配合剤
速効性のインスリンおよびヒアルロナン分解酵素(例えば、可溶性ヒアルロニダーゼ、例えばrHuPH20)を含む組成物は、速効性のインスリン単独と比較して、より密接に非糖尿病対象の内因性(すなわち、自然な)食後インスリン放出を模倣する超速効型のインスリン組成物をもたらす(例えば米国公開番号US20090304665参照)。それ故に、このような超速効型のインスリン組成物は、速効性のインスリン類単独と比較して、糖尿病対象に、血糖値をより正確にコントロールし、血糖急上昇を減らすように使用でき、故に、患者に相当な利益をもたらす。
速効性のインスリン類の多数回投与製剤とヒアルロナン分解酵素群の製剤は、しかしながら、不適合であり、この2種の混合は典型的にインスリンの溶解性および安定性の急速な消失に加えて、ヒアルロナン分解酵素の安定性および活性の急速な消失をもたらす。現在まで、それ故に、超速効型の組成物の投与は失活を避けるために、インスリンおよびヒアルロナン分解酵素を組み合わせた直後に行わなければならなかった。これは糖尿病患者にとって非実用的であり、許容されない負担となる。
それ故に、ここに提供されるのは、速効性のインスリンおよびヒアルロナン分解酵素(例えば、可溶性ヒアルロニダーゼ、例えばrHuPH20)の安定な配合剤である。ここに提供する配合剤は、糖尿病処置、特に食後血糖値のコントロールのための治療剤として使用できる。安定な配合剤は、バイアル、シリンジ、ペン、ポンプ用貯蔵室または閉鎖ループ系、またはあらゆる他の適切な容器に入れることができる多数回投与製剤を含む。
a. 安定性に関する対立要求
インスリンおよびヒアルロナン分解酵素群、例えば可溶性ヒアルロニダーゼ群(例えばrHuPH20)の安定な配合剤の開発を妨げている大きな障害は、冷蔵温度での速効性インスリン類の結晶化および沈殿、および高温でのヒアルロナン分解酵素の安定性を含む。典型的に、一般的にそのような結果を防止する添加物および条件はこれら2種の活性剤で異なる。インスリン製剤の溶解性および安定性を維持するために最適であるいくつかの添加物および条件のいくつかは、ヒアルロナン分解酵素群、例えば可溶性ヒアルロニダーゼ群(例えばrHuPH20)の安定性および活性に悪影響を有し得る。逆に、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の安定性のために最適な添加物および条件は、インスリン類の安定性および溶解性に悪影響を有し得る。
単に速効型インスリン類似体を含む既存のインスリン製剤と、可溶性ヒアルロニダーゼ群の既存の製剤、例えばrHuPH20を混合しただけでは、長期の冷蔵保存、または環境温度または高温での保存に安定ではない製剤となる。これはrHuPH20の急速な凝集および酵素失活、ならびにインスリン失活による。これらの悪影響は、防腐剤の種類および濃度、NaCl濃度、亜鉛濃度、pHおよび保存温度を含むが、これらに限定されない複数の不適合な添加物および条件の結果である。それ故に、両剤ともに溶解性、安定性および活性を維持する製剤の同定は極めて困難である。
i. 防腐剤
防腐剤は、製剤を含むバイアル、ペンカートリッジ、または他の多数回投与容器の反復利用により製剤に入り得る微生物汚染を防止するために多数回投与インスリン製剤に包含される。防腐剤は、典型的に行政規則を満たすために十分な濃度で存在しなければならない。例えば、行政規制上の要件は、製剤の抗菌有効性が意図する市場の防腐剤有効性試験(PET)基準を満たすことを要求する。米国薬局方(USP)および欧州薬局方(EP)のPET要求は相当異なり、多数回投与製剤の開発にさらなる制約を加える。
市販のインスリン製剤は、典型的にフェノール、メタ−クレゾール(m−クレゾール)および/またはメチルパラベンを含む。これらの化合物は有効抗菌剤として作用するだけでなく、インスリン分子の六量体形態の安定化にも作用し得る。しかしながら、インスリン製剤で使用する防腐剤の濃度および種類は重要である。例えば、フェノール化合物は最適濃度で六量体インスリン分子を安定化できるが、防腐剤の濃度が上がるに連れて、インスリンの溶解性は低下する。それ故に、インスリン製剤中の防腐剤の濃度は、安定性および溶解性の両者ならびに必須の抗菌活性を提供するために重要である。
必須成分である防腐剤は、典型的に水溶液中でタンパク質凝集を誘発するために、タンパク質類の安定な、多数回投与製剤の開発において大きな問題を提起する。例えば、フェノール、m−クレゾール、およびベンジルアルコールのような防腐剤はヒト成長ホルモン(Maa and Hsu (1996) Int. J. Pharm.140:155-168)、組み換えインターロイキン−1受容体(Remmele (1998) Pharm. Res.15:200-208)、ヒトインシュリン様増殖因子I(Fransson (1997) Pharm. Res. 14:606-612)、rhIFN−γ(Lam (1997) Pharm. Res. 14:725-729)およびチトクロムc(Singh et al. (2011) J. Pharm Sci., 100:1679-89)の凝集を誘発することが示されている。溶液中のタンパク質類に対して防腐剤が有する脱安定化効果は、多数回投与製剤の開発の制限因子であり、今日まで、ほとんどのタンパク質治療剤が単回使用のみで製剤されている。
ほとんどの他のタンパク質治療剤と同様、PH20ヒアルロニダーゼ、例えばrHuPH20は、おそらく、タンパク質変性および続く凝集体形成により、防腐剤存在下で急速に失活する。例えば、本明細書の実施例に示すとおり、防腐剤はPH20酵素活性を、特に高温で低下させる。動的光散乱法(DLS)、示差走査熱量測定(DSC)および他の物理化学的特徴付け方法によりここに示す結果は、フェノール防腐剤、例えばm−クレゾールを製剤に添加したとき、ヒアルロナン分解酵素の例であるrHuPH20の融点が顕著に減少するものである。例えば、rHuPH20の変性温度は44℃から24℃に低下する。PH20変性温度が低いほど、特に高温でのPH20凝集が増加し、酵素活性が低下する。
上記のとおり、これらのフェノール化合物、例えばフェノール、m−クレゾール、およびパラベン類は、まさにインスリン製剤で使用されている防腐剤である。脱安定化効果は、フェノール防腐剤の疎水性性質によるものである可能性がある。フェノール化合物の疎水性は、タンパク質への非特異的結合を介するrHuPH20との相互作用をもたらし得て、最終的にrHuPH20の構造的完全性を脅かす。これは、防腐剤存在下のrHuPH20酵素活性の顕著な消失となる。
本明細書の実施例において証明されているとおり、フェノール防腐剤(例えばフェノール、m−クレゾールおよびメチルパラベン)のレベルが上昇するに連れて、および/または温度が上昇するに連れて、rHuPH20酵素活性に対する悪影響も増大する。例えば、rHuPH20の酵素活性は、全体的防腐剤レベルが相対的に高い(>0.2%)とき、35℃のインキュベーションで1週間後に顕著に低下した。室温および低防腐剤濃度で、酵素はその活性を少なくとも1ヶ月間比較的よく維持した。さらに、フェノール化合物の種類もrHuPH20活性に影響を与え、m−クレゾールがrHuPH20活性に最も有害であり、続いてフェノール、そしてメチルパラベンである。しかしながら、メチルパラベンは、フェノール化合物ではrHuPH20活性に最も悪影響がないが、同時に抗微生物剤としても最も有効性が低く、故に最適な防腐剤ではない。他の防腐剤、例えばチメロサールおよびクロルヘキシジン塩類はrHuPH20とより適合性であるように見えるが、広く認められていない。それ故に、これらの非伝統的防腐剤を含む製剤は、さらに規制上の障害がある。
ヒアルロナン分解酵素の例であるrHuPH20酵素活性に対する防腐剤の悪影響は高温で大きく増大する。実施例に示すとおり、フェノール防腐剤は酵素の融点(Tm)に対する負の影響を有する。例えば、rHuPH20のTmは、防腐剤非存在下の40℃以上から、例えば、0.25%m−クレゾール存在下で約26℃まで低下する。それ故に、rHuPH20のTmは、溶液中のrHuPH20に防腐剤を添加したときに顕著に低下する。その結果、高温で、可溶性ヒアルロニダーゼは変性(unfold)する。実施例に示すとおり、この変性および続く凝集が高温で防腐剤存在下のrHuPH20分子サイズの増加に反映される。
それ故に、防腐剤は抗菌活性のために必要であり、六量体インスリンに対する安定化効果のために有用であるが、ヒアルロナン分解酵素群、例えばrHuPH20の安定性および活性およびインスリンの溶解性に対する有害な影響を有し得る。
ii. NaClおよびpH
インスリンおよびヒアルロナン分解酵素群(例えばrHuPH20)の安定な配合剤の開発における他の困難さは、インスリンの溶解性のための最適pHおよびNaCl濃度範囲がrHuPH20のための最適pHおよびNaCl濃度範囲と異なることである。例えば、インスリンおよびインスリン類似体の溶解性は高pH(例えば>7.2)および低NaCl濃度(例えば<140mM)で高まる傾向にあるが、この条件はヒアルロナン分解酵素の例であるrHuPH20の安定性に、特に高温および長期保存で典型的に有害な影響を有する。この差異は、インスリンの溶解性およびrHuPH20安定性を低下させる傾向にある防腐剤の存在下でさらに悪くなる。
レギュラーインスリンおよび速効型インスリン類似体の見かけの溶解度は様々であり、最低の溶解度であるレギュラーインスリン、インスリンリスプロ、次いで、インスリンアスパルト、そして最後に最も溶解性であるインスリングルリジンまで溶解度は増加する。溶解度は製剤中に含まれるNaClに対する耐容性と直接関係していて、例えば、レギュラーインスリンおよびインスリンリスプロを含む市販製剤にはNaClが存在せず、インスリンアスパルトの市販製剤には少量のNaCl(10mM)が存在し、インスリングルリジンの市販製剤には大量のNaCl(85mM)が存在する。
インスリン製剤のNaCl濃度の上昇は、特に低温でインスリンの結晶化/凝集をもたらし得る。溶解性はまたNaClにより大きく影響を受ける。実施例で証明されているとおり、冷蔵インスリン溶液中のNaCl濃度が50mMから140mMに上がれば、レギュラーインスリン、インスリンアスパルトおよびインスリンリスプロの溶解性は顕著に低下する。実施例で証明されているとおり、しかしながら、例えばヒアルロナン分解酵素であるrHuPH20安定性については逆である。高温(例えば25℃および30℃)での溶液中のrHuPH20の安定性は、NaCl濃度が140mMから50mMに低下すると、時間と共に著しく低下する。
インスリンの溶解性はまたpHにより大きく影響を受ける。インスリンの溶解性に対する高濃度のNaClの影響と同様、pHを7.6から6.6に下げると、インスリンの溶解性に対する負の影響が観察された。それ故に、低pHおよび高NaClで、インスリンの溶解性は大きく減少する。逆に、インスリン溶解性は低NaClおよび高pHで最高となる。インスリンとPH20におけるNaCl濃度の要求が逆であるのと同様、pH要求も逆である。溶液中のrHuPH20の安定性は高温(例えば25℃および30℃)でpHを7.0から7.6に上げると、時間と共に著しく減少する。冷蔵温度で、rHuPH20はpHおよびNaCl濃度と無関係に比較的安定である。
それ故に、インスリンの溶解性およびヒアルロナン分解酵素(例えばrHuPH20)安定性についての最適NaCl濃度およびpHは明らかに合致しない。インスリンの溶解性は高pHおよび低NaCl濃度で最高である。しかしながら、これらの条件は、高pHおよび低NaCl濃度で安定性を失うヒアルロナン分解酵素の例であるrHuPH20に対して有害である。rHuPH20の安定性はNaCl濃度を上げ、pHを低下させれば高めることができる。しかしながら、このような条件は低pHおよび高NaCl濃度で沈殿するインスリンおよびインスリン類似体の溶解性に負の影響を有する。それ故に、インスリンおよびヒアルロナン分解酵素(例えばrHuPH20または他のヒアルロナン分解酵素)の安定な配合剤の開発に際しての主な困難さの一つは、インスリンが溶解性および活性のままであり、ヒアルロナン分解酵素(例えばrHuPH20)が安定かつ活性のままであるNaCl濃度およびpHの同定である。これは本発明により達成された。
b. 相溶性配合剤
インスリンおよびヒアルロニダーゼ、例えばPH20ヒアルロニダーゼの安定性に対する対立要求は、配合剤における適合性を最適化するために、数種のパラメータのバランスを取らなければならないことを意味する。ここで提供される安定な配合剤は、許容されるレベルのヒアルロナン分解酵素活性およびインスリンの溶解性および活性を維持するための防腐剤、塩(例えばNaCl)、pH、安定化剤(複数も可)、および/または緩衝剤を必要なバランスで含む。上記のとおり、このバランスを同定する困難さは数倍であった。最初の例として、多数回投与製剤における抗細菌剤として必須の防腐剤、例えばフェノール防腐剤は、ヒアルロナン分解酵素群、例えばrHuPH20に対する顕著な脱安定化効果を有し、急速な失活をもたらした。第二に、インスリンの溶解性および安定性にとっての最適NaCl濃度およびpHはヒアルロナン分解酵素群の安定性にとってのものと極めて異なる。インスリンの溶解性は高pHおよび低NaCl濃度で最高である。しかしながら、これらの条件は、高pHおよび低塩濃度で安定性を失うヒアルロナン分解酵素の例であるrHuPH20には有害である。rHuPH20のこの不安定性は、さらに防腐剤の存在により悪化する。rHuPH20の安定性はNaCl濃度を上げ、pHを下げれば上昇し得る。しかしながら、このような条件は低pHおよび高塩濃度で沈殿するインスリンおよびインスリン類似体の溶解性に悪影響を有する。
それ故に、ヒアルロナン分解酵素および速効性のインスリンの両者が溶解性で、安定なおよび活性のままである条件を同定することは極めて困難である。ここに提供する配合剤は、それにも係わらず、このような条件を提供する。最適塩(例えばNaCl)、pHおよび防腐剤の組み合わせを同定しただけでなく、互いに、および、ある場合に、記載する塩、pHおよび防腐剤と組み合わせたとき、さらにヒアルロナン分解酵素およびインスリンを安定化させ、かつインスリンの溶解性を維持する付加的安定化剤および緩衝剤も同定した。例えば、本発明により、Lys−Lysは、ある場合、そしてあるインスリン類似体では、NaClが不要であるか低濃度であるようにNaClの代替として使用でき、酵素活性およびインスリンの溶解性を維持しながら製剤中で使用できる安定化剤であることを発見した。
次の章は、製剤または配合剤に包含すべきヒアルロナン分解酵素群およびインスリン類、安定な製剤および配合剤、製剤および配合剤の安定性および活性を評価する方法、および種々の疾患および状態における製剤または配合剤の使用方法を記載する。
C. ヒアルロナン分解酵素群
ここに提供されるのは、ヒアルロナン分解酵素の安定な製剤である。またここに提供されるのは、インスリンおよびヒアルロナン分解酵素を含む安定な配合剤である。例えば、本明細書の記載および実施例は、インスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼの安定な配合剤が、個々に安定性および活性に関する対立要求を有するにもかかわらず製造できることを示す。本明細書ではこれはPH20(例えばrHuPH20)で例示しているが、他のヒアルロナン分解酵素群、例えば可溶性ヒアルロニダーゼ群または他のPH20ポリペプチド類に一般化できる。
特に、ここに提供されるのは、GPIアンカーモチーフの全てまたは一部を欠く切断型ヒアルロニダーゼ(例えばC末端切断型)のようなヒアルロニダーゼ群であるヒアルロナン分解酵素を含む製剤または配合剤である。このようなヒアルロニダーゼポリペプチド類は、組み換えにより発現され、発現により細胞から培地に分泌され得る。培地への分泌により、切断型であるとき、細胞膜と通常結合性であるヒアルロニダーゼ群は、可溶性タンパク質産物として存在できる。こ本明細書の記載および教示に基づくここに記載するまたは当分野で知られたヒアルロナン分解酵素群の製造および/または発現、および安定な製剤または配合剤の製造は当業者の技術の範囲内である。
ヒアルロナン分解酵素群は、交互のβ−1→4およびβ−1→3グリコシド結合を介して互いに結合している二糖類単位であるD−グルクロン酸(GlcA)およびN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)の反復からなるヒアルロナンポリマー類を開裂することにより、ヒアルロナンを分解するように働く。ヒアルロナン鎖は約25,000二糖反復以上の長さに達し、ヒアルロナンのポリマー類のサイズはインビボで約5,000〜20,000,000Daの範囲であり得る。ヒアルロン酸またはヒアルロナートとも呼ばれるヒアルロナンは、結合組織、上皮組織、および神経組織に広く分布する非硫酸化グリコサミノグリカンである。ヒアルロナンは、細胞外基質の必須成分であり、間質性障壁の主構成要素である。ヒアルロナンの加水分解を触媒することにより、ヒアルロナン分解酵素群はヒアルロナンの粘度を下げ、それにより組織透過性を高め、非経腸的に投与された流体の吸収速度を上げる。そのようなものとして、ヒアルロナン分解酵素群、例えばヒアルロニダーゼ群は、例えば、分散および送達を亢進するために他の薬物、薬剤およびタンパク質類と組み合わせて展着または分散剤として使用されている。
従って、ヒアルロナン分解酵素群は、ヒアルロナン二糖鎖またはポリマーの開裂を触媒する能力を有するあらゆる酵素を含む。ある例において、分解酵素はヒアルロナン鎖またはポリマーにおけるβ−1→4グリコシド結合の開裂をする。他の例において、分解酵素はヒアルロナン鎖またはポリマーにおけるβ−1→3グリコシド結合の開裂を触媒する。ここに提供される配合剤中のヒアルロナン分解酵素群の例は、細胞発現系から発現されたとき培地に分泌されるヒアルロニダーゼ群であり、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを含まない天然のヒアルロニダーゼ群またはGPIアンカーの1個以上のアミノ酸を欠く切断型ヒアルロニダーゼ群、または発現されたとき細胞膜と他の点で結合性ではないヒアルロニダーゼ群を含む。このようなヒアルロニダーゼ群は組み換えまたは合成により製造できる。ヒアルロナン分解酵素群の他の例は、ヒアルロナンを開裂する能力を有する特定のコンドロイチナーゼ群およびリアーゼ群を含むが、これらに限定されない。
本発明の配合剤中に提供されるヒアルロナン分解酵素群はまた、ここに記載するヒアルロナン分解酵素の対立形質または種変異体または他の変異体を含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素群は、その一次配列に1種以上の変異、例えばアミノ酸置換、付加および/または欠失を含み得る。ヒアルロナン分解酵素の変異体は、一般的に変異を含まないヒアルロナン分解酵素と比較して、少なくともまたは約60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示す。酵素がヒアルロニダーゼ活性を変異を含まないヒアルロナン分解酵素の活性と比較して、例えば少なくともまたは約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の活性を維持する限り、あらゆる変異が本発明の目的でヒアルロナン分解酵素に導入され得る(当分野で知られたおよびここに記載するインビトロおよび/またはインビボアッセイで測定)。
ヒアルロニダーゼ群を含む種々の形態のヒアルロナン分解酵素群が製造され、ヒトを含む対象における治療的使用が承認されている。例えば、動物由来ヒアルロニダーゼ製剤はVitrase(登録商標)(ISTA Pharmaceuticals)、精製ヒツジ精巣ヒアルロニダーゼ、およびAmphadase(登録商標)(Amphastar Pharmaceuticals)、ウシ精巣ヒアルロニダーゼを含む。Hylenex(登録商標)(Baxter)は、切断型ヒトPH20ポリペプチド(rHuPH20で示される)をコードする核酸を含む遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞により産生されたヒト組み換えヒアルロニダーゼである。あらゆるヒアルロナン分解酵素、例えばあらゆるヒアルロニダーゼをここで提供される安定な配合剤に包含できることは理解されるべきである(例えば、本明細書に引用によりその全体を包含させる米国特許7,767,429、および米国公開番号20040268425および20100143457参照)。
典型的に、本明細書における製剤および配合剤での使用のために、ヒトヒアルロナン分解酵素、例えばヒトPH20および特にここに記載したC末端切断型ヒトPH20が使用される。他の動物由来のヒアルロナン分解酵素群、例えばPH20を使用できるが、このような製剤は、動物タンパク質であるために免疫原性である可能性がある。例えば、患者の相当な割合で、食物摂取に二次的な事前感作が示され、そして、これらが動物タンパク質類であるために、全患者にその後の感作のリスクがある。それ故に、非ヒト製剤は慢性使用には適していない可能性がある。非ヒト製剤が望ましいならば、免疫原性を低下させるように製造できる。このような修飾は当業者の技術の範囲であり、例えば、分子上の1子以上の抗原性エピトープの除去および/または置換を含み得る。
ここに提供する製剤および配合剤に使用されるヒアルロニダーゼ群(例えば、PH20)を含むヒアルロナン分解酵素群は、組み換えにより製造できまたは、例えば、精巣抽出物のような天然源から精製または部分精製できる。組み換えヒアルロナン分解酵素群を含む組み換えタンパク質類の製造方法は、本明細書のあらゆる場所に提供され、そして当分野で周知である。
1. ヒアルロニダーゼ群
ヒアルロニダーゼ群はヒアルロナン分解酵素群の大ファミリーのメンバーである。ヒアルロニダーゼ群には哺乳動物型ヒアルロニダーゼ群、細菌ヒアルロニダーゼ群およびヒル類、他の寄生虫および甲殻類由来のヒアルロニダーゼ群の3種がある。このような酵素群をここに提供する配合剤に使用できる。
a. 哺乳動物型ヒアルロニダーゼ群
哺乳動物型ヒアルロニダーゼ群(EC 3.2.1.35)は、ヒアルロナンのβ−1→4グリコシド結合を四糖類および六糖類のような種々のオリゴ糖長に加水分解するendo−β−N−アセチル−ヘキソサミニダーゼ類である。これらの酵素群は加水分解性およびトランスグリコシダーゼ活性の両者を有し、ヒアルロナンおよびコンドロイチン硫酸(CS)、一般的にC4−SおよびC6−Sを分解できる。このタイプのヒアルロニダーゼ群は、ウシ(ウシ属)(配列番号10、11および64およびBH55(米国特許5,747,027および5,827,721))、ヒツジ(Ovis aries)(配列番号26、27、63および65)、スズメバチ(配列番号12および13)、ミツバチ(配列番号14)、北米産スズメバチ(配列番号15)、アシナガバチ(配列番号16)、マウス(配列番号17〜19、32)、ブタ(配列番号20〜21)、ラット(配列番号22〜24、31)、ウサギ(配列番号25)、オランウータン(配列番号28)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、チンパンジー(配列番号185)、アカゲザル(配列番号186)およびヒトヒアルロニダーゼ群からのヒアルロニダーゼ群を含むが、これらに限定されない。
哺乳動物ヒアルロニダーゼ群は、さらに、主に精巣抽出物で見られる中性活性のもの、および主に肝臓のような臓器で見られる酸活性のものにさらに細分できる。中性活性ヒアルロニダーゼ群は、例えば、ヒツジ(配列番号27)、ウシ(配列番号11)およびヒト(配列番号1)のような種由来のPH20を含むが、これらに限定されないPH20を含む。ヒトPH20(SPAM1または精子表面タンパク質PH20としても既知)は、一般的にグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して原形質膜に結合している。これは精子−卵付着に天然で関与し、ヒアルロン酸を消化することにより卵丘細胞の層への精子浸透を助ける。本発明の配合剤で使用されるヒアルロニダーゼ群の例は中性活性ヒアルロニダーゼ群である。
ヒトPH20(SPAM1とも呼ぶ)以外に、5種のヒアルロニダーゼ様遺伝子、HYAL1、HYAL2、HYAL3、HYAL4およびHYALP1がヒトゲノムで同定されている。HYALP1は偽遺伝子であり、HYAL3(配列番号38)はあらゆる既知の基質に対して酵素活性を示さない。HYAL4(配列番号39に示す前駆体ポリペプチド)はコンドロイチナーゼであり、ヒアルロナンに対してわずかに活性を示す。HYAL1(配列番号36に示す前駆体ポリペプチド)はプロトタイプ酸活性酵素であり、PH20(配列番号1に示す前駆体ポリペプチド)はプロトタイプ中性活性酵素である。酸活性ヒアルロニダーゼ群、例えばHYAL1およびHYAL2(配列番号37に示す前駆体ポリペプチド)は、一般的に中性pH(すなわちpH7)で触媒活性を欠く。例えば、HYAL1は、インビトロでpH4.5を超えるとほとんど触媒活性を有しない(Frost et al. (1997) Anal. Biochem. 251:263-269)。HYAL2は、インビトロで極めて低比活性の酸活性酵素である。ヒアルロニダーゼ様酵素群はまた一般的にヒトHYAL2およびヒトPH20のようなグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して原形質膜に結合するもの(Danilkovitch-Miagkova, et al. (2003) Proc Natl Acad Sci USA 100(8):4580-5)、およびヒトHYAL1のように一般的に溶解性であるもの(Frost et al. (1997) Biochem Biophys Res Commun. 236(1):10-5)により特徴付けもできる。
PH20
PH20は、他の哺乳動物ヒアルロニダーゼ群と同様、ヒアルロン酸のβ1→4グリコシド結合を四糖類および六糖類のような種々のオリゴ糖長に加水分解するendo−β−N−アセチル−ヘキソサミニダーゼである。これらは加水分解性およびトランスグリコシダーゼ活性の両者を有し、ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸、例えばC4−SおよびC6−Sを分解できる。PH20は精子−卵付着に天然で関与し、ヒアルロン酸を消化することにより卵丘細胞の層への精子浸透を助ける。PH20は精子表面およびリソソーム由来アクロソームに見られ、アクロソームでそれは内アクロソーム膜に結合する。原形質膜PH20は、中性pHでのみヒアルロニダーゼ活性を有するのに対し、内アクロソーム膜PH20は、中性および酸pHのいずれでも活性を有する。ヒアルロニダーゼである以外に、PH20はまたHA誘発細胞シグナリングの受容体、および卵母細胞を囲む透明帯の受容体であるように見える。
PH20タンパク質類の例は、ヒト(配列番号1に示す前駆体ポリペプチド、配列番号2に示す成熟ポリペプチド)、ウシ(配列番号11および64)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジPH20(配列番号27、63および65)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、ラット(配列番号31)、マウス(配列番号32)、チンパンジー(配列番号185)およびアカゲザル(配列番号186)PH20ポリペプチド類を含むが、これらに限定されない。
ウシPH20は553アミノ酸前駆体ポリペプチド(配列番号11)である。ウシPH20とヒトPH20のアラインメントはわずかな相同性しか示さず、ウシポリペプチドにおけるGPIアンカーの不存在により、アミノ酸470から各カルボキシ末端まで複数ギャップが存在する(例えば、Frost GI (2007) Expert Opin. Drug. Deliv. 4: 427-440参照)。実際、明らかなGPIアンカーはヒト以外の多くの他のPH20種で予測されない。それ故に、ヒツジおよびウシから産生されたPH20ポリペプチド類は、本来可溶性形態として存在する。ウシPH20は原形質膜への極めて緩い結合で存在するが、ホスホリパーゼ感受性アンカーを介して固定されていない(Lalancette et al. (2001) Biol Reprod. 65(2):628-36)。ウシヒアルロニダーゼのこの独特な特徴は臨床使用のための抽出物としての可溶性ウシ精巣ヒアルロニダーゼ酵素の使用を可能にする(Wydase(登録商標)、Hyalase(登録商標))。
ヒトPH20mRNA転写物は通常翻訳されて、N末端に35アミノ酸シグナル配列(アミノ酸残基1〜35位)およびC末端に19アミノ酸グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー付着シグナル配列(アミノ酸残基491〜509位)を含む509アミノ酸前駆体ポリペプチド(配列番号1)を生じる。成熟PH20は、それ故に、配列番号2に示す474アミノ酸ポリペプチドである。ERの前駆体ポリペプチドへの輸送およびシグナルペプチドの除去に続き、C末端GPI付着シグナルペプチドは開裂され、GPIアンカーの配列番号1に示す前駆体ポリペプチドの490位に対応するアミノ酸位置に新たに形成されたC末端アミノ酸との共有結合が促進される。それ故に、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する474アミノ酸GPIアンカー型成熟ポリペプチドが産生される。
ヒトPH20は、GPIアンカーを介して原形質膜に存在するとき中性活性ヒアルロニダーゼであるが、内アクロソーム膜上に発現されたとき中性および酸性pHのいずれでも活性を示す。PH20は、ポリペプチドのペプチド1およびペプチド3領域の2カ所の領域に二つの触媒部位を有するように見える(Cherr et al., (2001)Matrix Biology 20:515-525)。配列番号2に示す成熟ポリペプチドのアミノ酸107〜137位に対応するPH20のペプチド1領域および配列番号1に示す前駆体ポリペプチドの142〜172位が、中性pHでの酵素活性に必要である。この領域内の111位および113位のアミノ酸(配列番号2に示す成熟PH20ポリペプチドに対応)が、アミノ酸置換による変異原性が、それぞれ野生型PH20と比較してPH20ポリペプチド類の3%ヒアルロニダーゼ活性および検出不能なヒアルロニダーゼ活性を生じるために、活性に必須であるように見える(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
配列番号2に示す成熟ポリペプチドのアミノ酸242〜262位に対応するペプチド3領域、および配列番号1に示す前駆体ポリペプチドの277〜297位は、酸性pHでの酵素活性に重要であるように見える。この領域内で、成熟PH20ポリペプチドの249位および252位のアミノ酸は活性に必須であり、このいずれかの変異原性は、本質的に活性を欠くポリペプチドとなる(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
触媒部位に加えて、PH20またはヒアルロナン結合部位を含む。実験的証拠は、この部位が配列番号1に示す前駆体ポリペプチドのアミノ酸205〜235位および配列番号2に示す成熟ポリペプチドの170〜200位に対応するペプチド2領域に位置することを示す。この領域はヒアルロニダーゼ群で高度に保存され、ヘパリン結合モチーフと類似する。アルギニン残基176位(配列番号2に示す成熟PH20ポリペプチドに対応)のグリシンへの変異は、野生型ポリペプチドのヒアルロニダーゼ活性の約1%しか活性がないポリペプチドとなる(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
ヒトPH20において配列番号1に例示するポリペプチドのN82、N166、N235、N254、N368、N393、N490に、7カ所の潜在的N架橋グリコシル化部位がある。配列番号1のアミノ酸36〜464が活性が最小のヒトPH20ヒアルロニダーゼドメインを含むように見えるため、N架橋グリコシル化部位N−490は適切なヒアルロニダーゼ活性に必須ではない。ヒトPH20において6個のジスルフィド結合がある。配列番号1に例示するポリペプチドのシステイン残基C60とC351およびC224とC238の間の2個のジスルフィド結合(それぞれ配列番号2に示す成熟ポリペプチドの残基C25とC316、およびC189とC203に対応)がある。さらに4カ所のジスルフィド結合が配列番号1に例示するポリペプチドのシステイン残基C376とC387;C381とC435;C437とC443;C458とC464(それぞれ配列番号2に示す成熟ポリペプチドの残基C341とC352;C346とC400;C402とC408;およびC423とC429に対応)に形成される。
b. 細菌ヒアルロニダーゼ群
細菌ヒアルロニダーゼ群(EC 4.2.2.1またはEC 4.2.99.1)はヒアルロナン、および種々の程度で、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸を分解する。細菌から単離されたヒアルロナンリアーゼ群は、作用機序がヒアルロニダーゼ群と異なる(他の源由来、例えば、ヒアルロノグルコサミニダーゼ群、EC 3.2.1.35)。ヒアルロナンのN−アセチル−ベータ−D−グルコサミンとD−グルクロン酸残基の間のβ1→4−グリコシド結合の加水分解ではなく、脱離反応を触媒するendo−β−N−アセチルヘキソサミニダーゼ類であり、3−(4−デオキシ−β−D−グルコ−4−エヌロノシル)−N−アセチル−D−グルコサミンテトラ−および六糖類、および二糖最終産物を生じる。反応は、非還元末端に不飽和ヘキスロン酸残基を伴うオリゴ糖類の形成を生じる。
ここに提供する配合剤のための細菌由来ヒアルロニダーゼ群は、例として、アルスロバクター属、デロビブリオ属、クロストリジウム属、ミクロコッカス属、レンサ球菌属、ペプトコッカス属、プロピオニバクテリウム属、バクテロイデス属、およびストレプトマイセス属の株を含む微生物におけるヒアルロナン分解酵素群を含むが、これらに限定されない。このような酵素群の具体例は、アルスロバクター属(株FB24)(配列番号67)、ブデロビブリオ・バクテリオヴォルス(配列番号68)、プロピオニバクテリウム・アクネス(配列番号69)、ストレプトコッカス・アガラクチア((配列番号70);18RS21(配列番号71);血清型Ia(配列番号72);血清型III(配列番号73))、黄色ブドウ球菌(株COL)(配列番号74);株MRSA252(配列番号75および76);株MSSA476(配列番号77);株NCTC 8325(配列番号78);株ウシRF122(配列番号79および80);株USA300(配列番号81)、肺炎レンサ球菌((配列番号82);株ATCC BAA-255/R6(配列番号83);血清型2、株D39/NCTC 7466(配列番号84)、A群溶血レンサ球菌(血清型M1)(配列番号85);血清型M2、株MGAS10270(配列番号86);血清型M4、株MGAS10750(配列番号87);血清型M6(配列番号88);血清型M12、株MGAS2096(配列番号89および90);血清型M12、株MGAS9429(配列番号91);血清型M28(配列番号92);豚レンサ球菌(配列番号93〜95);ビブリオ・フィッシェリ(株ATCC 700601/ES114(配列番号96))、およびヒアルロン酸に特異的であり、コンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸を開裂しないストレプトマイセス・ヒアルロノリチクスヒアルロニダーゼ酵素を含むが、これらに限定されない(Ohya, T. and Kaneko, Y. (1970) Biochim. Biophys. Acta 198:607)。
c. ヒル類、他の寄生虫および甲殻類由来のヒアルロニダーゼ群
ヒル類、他の寄生虫、および甲殻類由来のヒアルロニダーゼ群(EC 3.2.1.36)は、四糖類および六糖類最終産物を生じるendo−β−グルクロニダーゼ群である。これらの酵素群は、ヒアルロナートのβ−D−グルクロネートとN−アセチル−D−グルコサミン残基の間の1→3−架橋の加水分解を触媒する。ヒル類由来のヒアルロニダーゼ群は、例えば、Hirudinidae(例えば、ドイツ蛭)、イシビル科(例えば、Nephelopsis obscuraおよびErpobdella punctata)、Glossiphoniidae(例えば、Desserobdella picta、Helobdella stagnalis、Glossiphonia complanata、Placobdella ornateおよびテロミゾン属)およびヘモピ科(Haemopis marmorata)を含むが、これらに限定されない(Hovingh et al. (1999) Comp Biochem Physiol B BiochemMol Biol. 124(3):319-26)ヒアルロニダーゼである。ヒルヒアルロニダーゼと同じ作用機序を有する細菌由来のヒアルロニダーゼの例は、シアノバクテリア、シネココックス属(株RCC307、配列番号97)由来のものである。
2. 他のヒアルロナン分解酵素群
ヒアルロニダーゼファミリーに加えて、他のヒアルロナン分解酵素群が、ここに提供する安定な製剤または配合剤において、ここに提供されるインスリンと共に使用できる。例えば、ヒアルロナンを開裂する能力を有する特定のコンドロイチナーゼ群およびリアーゼ群を含む酵素群を用いることができる。ヒアルロナンを分解できるコンドロイチナーゼ群は、例えば、コンドロイチンABCリアーゼ(コンドロイチナーゼABCとしても知られる)、コンドロイチンACリアーゼ(コンドロイチン硫酸リアーゼまたはコンドロイチン硫酸エリミナーゼとしても知られる)およびコンドロイチンCリアーゼを含むが、これらに限定されない。このような酵素群のここに提供する組成物、組み合わせおよび方法において使用するための産生および精製方法は知られている(例えば、米国特許6,054,569;Yamagata, et al. (1968) J. Biol. Chem. 243(7):1523-1535;Yang et al. (1985) J. Biol. Chem. 160(30):1849-1857)。
コンドロイチンABCリアーゼは、2種の酵素群、コンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼ(EC 4.2.2.20)およびコンドロイチン−硫酸−ABCエキソリアーゼ(EC 4.2.2.21)(Hamai et al. (1997) J Biol Chem. 272(14):9123-30)を含み、コンドロイチン−硫酸−およびデルマタン−硫酸タイプの種々のグリコサミノグリカン類を分解する。コンドロイチン硫酸、コンドロイチン−硫酸プロテオグリカンおよびデルマタン硫酸はコンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼの好ましい基質であるが、本酵素はまたヒアルロナン上で低速で作用する。コンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼはコンドロイチン−硫酸−およびデルマタン−硫酸型の種々のグリコサミノグリカン類を分解し、種々のサイズのΔ4−不飽和オリゴ糖類の混合物を生じ、それは最終的にΔ4−不飽和四糖類および二糖類に分解される。コンドロイチン−硫酸−ABCエキソリアーゼは、類似の基質特異性を有するが、重合体コンドロイチン硫酸およびコンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼにより産生されるそのオリゴ糖フラグメントの両方の非還元末端から二糖残基を事除去する(Hamai, A. et al. (1997) J. Biol. Chem. 272:9123-9130)。コンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼ群およびコンドロイチン−硫酸−ABCエキソリアーゼ群は、例えばプロテウス・ブルガリスおよびフラボバクテリウム・ヘパリナム(プロテウス・ブルガリスコンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼは配列番号98に示す)を含むが、これらに限定されない(Sato et al. (1994) Appl. Microbiol. Biotechnol. 41(1):39-46)。
コンドロイチンACリアーゼ(EC 4.2.2.5)は、コンドロイチン硫酸AおよびC、コンドロイチンおよびヒアルロン酸に活性であるが、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)に活性ではない。細菌由来のコンドロイチナーゼAC酵素群は、例えば、それぞれ配列番号99および100に示すフラボバクテリウム・ヘパリナムおよびビクチバリス・バンデンシス、およびアルスロバクタ・オウレセンス由来のものを含むが、これらに限定されない(Tkalec et al. (2000) Applied and EnvironmentalMicrobiology 66(1):29-35;Ernst et al. (1995) Critical Reviews in BiochemistryおよびMolecular Biology 30(5):387-444)。
コンドロイチナーゼCはコンドロイチン硫酸Cを分解し、四糖と不飽和6−硫酸化二糖(デルタジ−6S)を産生する。それはまたヒアルロン酸を開裂し、不飽和非硫酸化二糖(デルタジ−OS)を産生する。細菌由来のコンドロイチナーゼC酵素群は、例えば、レンサ球菌およびフラボバクテリウム由来のものを含むが、これらに限定されない(Hibi et al. (1989) FEMS-Microbiol-Lett. 48(2):121-4;Michelacci et al. (1976) J. Biol. Chem. 251:1154-8;Tsuda et al. (1999) Eur. J. Biochem. 262:127-133)。
3. 切断型ヒアルロナン分解酵素群または他の可溶性形態
ヒアルロナン分解酵素群は、膜結合または膜型形態として存在でき、または細胞から発現されたとき培地に分泌され、それ故、可溶性形態として存在できる。本発明の目的で、ヒアルロナン分解酵素群は、細胞から発現され、分泌されたとき、細胞膜と結合性ではなく、それ故に可溶性形態で存在するあらゆるヒアルロナン分解酵素群を含む。可溶性ヒアルロナン分解酵素群は、非ヒトヒアルロニダーゼ群(例えば動物または細菌ヒアルロニダーゼ群)、例えばウシPH20またはヒツジPH20、およびヒトヒアルロニダーゼ群、例えばHyal1、または非ヒトまたはヒト膜型ヒアルロニダーゼ群の切断型形態、特にヒトPH20の切断型形態、その対立形質変異体およびその他の変異体を含む、ヒアルロニダーゼ群を含むが、これらに限定されない。本発明の配合剤におけるヒアルロナン分解酵素群の例は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーの1個以上のアミノ酸残基を欠き、ヒアルロニダーゼ活性を維持するヒアルロナン分解酵素の切断型形態である。一例において、通常GPIアンカーを介する膜アンカー型であるヒトヒアルロニダーゼPH20を、C末端のGPIアンカーの全てまたは一部の短縮化および除去により溶解性にできる。
それ故に、数例において、通常GPIアンカー型(例えば、ヒトPH20)であるヒアルロナン分解酵素を、C末端短縮化により溶解性にできる。このような短縮化は、GPIアンカー付着シグナル配列の全ての除去であってよく、またはGPIアンカー付着シグナル配列のいくつかのみの除去であってよい。得られるポリペプチドは、しかしながら、溶解性である。可溶性ヒアルロナン分解酵素がGPIアンカー付着シグナル配列の一部を残すとき、ポリペプチドが溶解性であり(すなわち細胞で発現されたとき分泌され)、かつ活性である限り、GPIアンカー付着シグナル配列の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上アミノ酸残基を維持する。当業者は、当分野で知られた方法を使用してポリペプチドがGPIアンカー型であるか否かを決定できる。このような方法は、GPIアンカー付着シグナル配列およびω部位の存在および位置を予測するための既知アルゴリズムの使用、およびホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI−PLC)またはD(PI−PLD)での消化前後の溶解度分析実施を含むが、これらに限定されない。
可溶性ヒアルロニダーゼの例は、ヒアルロニダーゼが溶解性であり、ヒアルロニダーゼ活性を維持する限り、あらゆる種由来のPH20、例えば配列番号1、2、11、25、27、30〜32、63〜65および185〜186に示すいずれか、またはC末端GPIアンカーの全てまたは一部を欠くその切断型形態である。C末端切断型であり、GPIアンカー付着シグナル配列の全てまたは一部を欠く可溶性ヒアルロニダーゼ群は、例えば、ヒトおよびチンパンジーPH20ポリペプチド類のような霊長類起源PH20ポリペプチド類を含むが、これらに限定されない。例えば、可溶性PH20ポリペプチド類は、配列番号1、2または185に示す成熟または前駆体ポリペプチド、またはその活性フラグメントを含む、その対立形質または他の変異体のいずれかのC末端短縮化により製造でき、ここで、得られるポリペプチドは溶解性であり、GPIアンカー付着シグナル配列由来のアミノ酸残基の全てまたは一部を欠く。また可溶性ヒアルロニダーゼ群に包含されるのは、配列番号1、2、11、25、27、30〜32、63〜65および185〜186のいずれかの対立形質変異体または他の変異体、またはその切断型形態である。対立形質変異体および他の変異体は当業者に知られており、配列番号1、2、11、25、27、30〜32、63〜65および185〜186、またはその切断型形態のいずれかと60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチド類を含む。アミノ酸変異体は保存的および非保存的変異を含む。重要であるか、他の点でヒアルロニダーゼの活性に必要である残基、例えば上記のまたは当業者に知られたいずれかは、一般的に不変であり、変化できないことは理解されよう。これらは、例えば、活性部位残基を含む。それ故に、例えば、ヒトPH20ポリペプチド、またはその可溶性形態のアミノ酸残基111、113および176(配列番号2に示す成熟PH20ポリペプチドの残基に対応)は一般的に不変であり、変えられない。グリコシル化および適切な折りたたみに必要なジスルフィド結合形成に関与する他の残基も不変であり得る。
a. C末端切断型ヒトPH20
可溶性ヒアルロニダーゼの例はC末端切断型ヒトPH20である。組み換えヒトPH20のC末端切断型形態は製造され、ここに記載する配合剤に使用できる。このような可溶性形態のPH20製造は米国特許7,767,429および米国特許出願番号US20040268425、US20050260186、US20060104968およびUS20100143457に記載されている。
例えば、C末端切断型PH20ポリペプチド類は、少なくともアミノ酸類36〜464(ヒアルロニダーゼ活性に必須の最小部分)または配列番号1の少なくともアミノ酸類36〜464と少なくとも85%、例えば少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ヒアルロニダーゼ活性を維持するアミノ酸配列を含むポリペプチド類である。これらのポリペプチド類に包含されるのは、GPIアンカー付着シグナル配列の全てを完全に欠くヒトPH20ポリペプチド類である。またこれらのポリペプチド類に包含されるのは、GPIアンカー付着シグナル配列の連続アミノ酸残基のいくつかを欠くヒトPH20ポリペプチド類である(伸長可溶性PH20(esPH20)と呼ぶ;例えばUS20100143457参照)。C末端切断型PH20ポリペプチド類は、完全長野生型ポリペプチド、例えば配列番号1または2に示す配列を有する完全長野生型ポリペプチド、または対立形質または種変異体またはその他の変異体と比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個以上アミノ酸によりC末端切断型である。それ故に、ERにおけるタンパク質のC末端と共有結合し、原形質膜の細胞外小葉に固定されているGPIアンカーを有する代わりに、これらのポリペプチド類は細胞から発現されたときに分泌され、溶解性である。
ここに提供されるC末端切断型ヒトPH20ポリペプチド類は、例えば、配列番号1の少なくともアミノ酸類36〜464を含み、配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、484位、485位、486位、487位、488位、489位、490位、491位、492位、493位、494位、495位、496位、497位、498位、499位または500位の後でC末端切断型であるか、またはそれに対して少なくとも85%配列同一性、例えば少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%配列同一性を示し、ヒアルロニダーゼ活性を維持するその変異体である。表3は、例示的なC末端切断型PH20ポリペプチド類の非限定的例を示す。C末端切断型PH20タンパク質類の前駆体および成熟ポリペプチド類の例示的なアミノ酸配列が示される下記表3において、前駆体および成熟ポリペプチド類の長さ(アミノ酸長)、および配列識別子(配列番号)を提供する。野生型PH20ポリペプチドもまた比較のために表3に包含させる。例えば、C末端切断型PH20ポリペプチド類は、配列番号4〜9、47〜48、234〜254、および267〜273のいずれかに示すポリペプチド類、または配列番号4〜9、47〜48、234〜254、および267〜273のいずれかと少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示すポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
b. rHuPH20
配列番号1のC末端切断型形態の例は、配列番号1に示す配列のアミノ酸482の後で切断型であるそのポリペプチドである。このようなポリペプチドは、アミノ酸類1〜482をコードする核酸分子により産生できる(配列番号3に示す)。このような核酸分子の例を配列番号49に示す。翻訳後処理は35アミノ酸シグナル配列を除き、447アミノ酸可溶性組み換えヒトPH20(配列番号4)をもたらす。培養培地で産生されるため、rHuPH20と命名された生成物が種々の量で配列番号4〜9のいずれか1種以上を含み得る種の混合物を含むように、C末端に不均一性がある。典型的に、rHuPH20は、活性を維持するための正確なN−グリコシル化を促進する細胞、例えばCHO細胞(例えばDG44 CHO細胞)で産生される。
4. ヒアルロナン分解酵素群のグリコシル化
ヒアルロニダーゼ群を含むいくつかのヒアルロナン分解酵素群の、N−およびO架橋グリコシル化を含むグリコシル化は、その触媒活性および安定性に重要である。糖タンパク質を修飾するグリカンのタイプの変更はタンパク質の抗原性、構造的折りたたみ、溶解性、および安定性に大きな影響を与え得るが、ほとんどの酵素群は、最適酵素活性のためにグリコシル化は不要であると考えられている。あるヒアルロニダーゼ群について、N架橋グリコシル化の除去は、ヒアルロニダーゼ活性をほぼ完全に不活化する。それ故に、このようなヒアルロニダーゼ群にとって、N架橋グリカン類の存在は活性酵素産生に重要である。
N架橋オリゴ糖類は大きく数種(オリゴマンノース、複合体、ハイブリッド、硫酸化)に分けられ、その全てが、−Asn−Xaa−Thr/Ser−配列(ここで、XaaはProではない)に入るAsn残基のアミド窒素を介して結合した(Man)3−GlcNAc−GlcNAc−コアを有する。−Asn−Xaa−Cys−部位でのグリコシル化は、凝固タンパク質Cについて報告されている。ある例において、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼはN−グリコシド架橋およびO−グリコシド架橋の両者を含み得る。例えば、PH20はO架橋オリゴ糖類ならびにN架橋オリゴ糖類を含む。配列番号1に例示するヒトPH20のN82、N166、N235、N254、N368、N393、N490に7カ所の潜在的N架橋グリコシル化部位がある。アミノ酸残基N82、N166およびN254は、複合体型グリカンで占拠され、アミノ酸残基N368およびN393は高マンノース型グリカンで占拠されている。アミノ酸残基N235は約80%高マンノース型グリカンおよび20%複合体型グリカンで占拠されている。上記のとおり、N490でのN架橋グリコシル化はヒアルロニダーゼ活性に必須ではない。
数例において、ここに提供される配合剤において使用するためのヒアルロナン分解酵素群は、グリコシル化部位の1カ所または全てでグリコシル化されている。例えば、ヒトPH20、またはその可溶性形態について、配列番号1のアミノ酸類N82、N166、N235、N254、N368、およびN393に対応する2箇所、3箇所、4箇所、5箇所、または6箇所のN−グリコシル化部位がグリコシル化される。数例において、ヒアルロナン分解酵素群は、1箇所以上の天然グリコシル化部位でグリコシル化される。一般的にPH20の可溶性形態は、グリコシル化がヒアルロニダーゼ群の触媒活性および安定性に重要であるために、ポリペプチドが活性を維持することを確実にするために、正確なN−グリコシル化を促進するタンパク質発現系を使用して産生される。このような細胞は、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えばDG44 CHO細胞)を含む。
他の例において、ヒアルロナン分解酵素群は、1箇所以上の付加的部位でポリペプチドのグリコシル化を付与するために1箇所以上の非天然グリコシル化部位で修飾される。このような例において、付加的糖分子の付着は、分子の薬物動態学的特性を亢進でき、例えば半減期を改善しおよび/または活性を改善する。
ここに提供される配合剤に含まれる他の例において、ヒアルロナン分解酵素群、例えばPH20またはヒトPH20は、一部脱グリコシル化されている(またはN−部分的グリコシル化ポリペプチド類)(例えば米国特許公開番号US20100143457参照)。グリコシダーゼ群、またはグリコシドヒドロラーゼ群は、2個の小さな糖類を産生するためにグリコシド結合の加水分解を触媒する酵素群である。N−グリカン類の主なタイプは高マンノースグリカン、ハイブリッドグリカンおよび複合体グリカンを含む。部分的タンパク質脱グリコシル化しか生じない数種のグリコシダーゼ群は以下のものを含む。高マンノースおよびハイブリッド型グリカンを開裂するEndoF1;二分岐複合体型グリカンを開裂するEndoF2;二分岐およびさらに分岐した複合体グリカンを開裂するEndoF3;および高マンノースおよびハイブリッド型グリカンを開裂するEndoH。例えば、PH20(例えばrHuPH20と命名された組み換えPH20)の上記グリコシダーゼ群の一つまたは全て(例えばEndoF1、EndoF2、EndoF3および/またはEndoH)での処理は、部分的脱グリコシル化をもたらす。これらの部分的脱グリコシル化PH20ポリペプチド類は、完全グリコシル化ポリペプチド類と同等なヒアルロニダーゼ酵素活性を示し得る。対照的に、PH20を、全てのN−グリカンを開裂するグリコシダーゼであるPNGaseFまたはGlcNAcホスホトランスフェラーゼ(GPT)阻害剤ツニカマイシンで処理すると、全N−グリカンの完全脱グリコシル化をもたらし、それ故に、PH20を酵素的に不活性とする。それ故に、全てのN架橋グリコシル化部位(例えば、配列番号1に例示するヒトPH20のアミノ酸類N82、N166、N235、N254、N368、およびN393)をグリコシル化できるが、1種以上のグリコシダーゼ群での処理は、1種以上のグリコシダーゼ群で消化されていないヒアルロニダーゼと比較して、グリコシル化の程度を低下させ得る。
それ故に、部分的脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素群、例えば部分的脱グリコシル化可溶性ヒアルロニダーゼ群を、1種以上のグリコシダーゼ群、一般的に全てのN−グリカンを除去せず、タンパク質を部分的脱グリコシル化するグリコシダーゼで消化させることにより製造できる。部分的脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチド類を含む部分的脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素群は、完全グリコシル化ポリペプチドのグリコシル化レベルの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%を有し得る。一例において、配列番号1のアミノ酸類N82、N166、N235、N254、N368、およびN393に対応する1箇所、2箇所、3箇所、4箇所、5箇所または6箇所のN−グリコシル化部位は、高マンノースまたは複合体型グリカンをもはや含まないが、少なくとも1個のN−アセチルグルコサミン部分を含むように、部分的脱グリコシル化される。数例において、配列番号1のアミノ酸類N82、N166およびN254に対応するN−グリコシル化部位の1箇所、2箇所または3箇所が脱グリコシル化され、すなわち、それは糖部分を含まない。他の例において、配列番号1のアミノ酸類N82、N166、N235、N254、N368、およびN393に対応する3箇所、4箇所、5箇所、または6箇所のN−グリコシル化部位がグリコシル化される。グリコシル化アミノ酸残基はN−アセチルグルコサミン部分を最小限含む。典型的に、部分的脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチド類を含む部分的脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素群は、完全グリコシル化ポリペプチドのヒアルロニダーゼ活性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、300%、400%、500%、1000%またはそれ以上であるヒアルロニダーゼ活性を示す。
5. 薬物動態学的特性を改善するためのヒアルロナン分解酵素群の修飾
ヒアルロナン分解酵素群を、その薬物動態学的特性を修飾するために、例えばインビボ半減期を延長するためにおよび/または活性を高めるために修飾できる。ここに提供する安定な製剤または配合剤またはここに提供するあらゆる組成物、組み合わせおよび/または方法において使用するためのヒアルロナン分解酵素群の修飾は、ポリマー、例えばデキストラン、ポリエチレングリコール(ペグ化(PEG))またはシアリル部分、または他のこのようなポリマー類、例えば自然なまたは糖ポリマー類を、直接的なまたは、例えば共有結合したまたは他の安定な架橋を介するようなリンカーを介して間接的に結合することを含み得る。
治療剤のペグ化はタンパク質分解に対する抵抗性を高め、血漿半減期を延長し、抗原性および免疫原性を減少させることが知られている。重合体分子、例えばポリエチレングリコール部分(PEG)のヒアルロナン分解酵素への共有結合性のまたは他の安定な付着(conjugation)は、故に、得られた酵素−ポリマー組成物に有利な特性を付与し得る。このような特性は生体適合性改善、対象、細胞および/または他の組織内の血中タンパク質(および酵素活性)半減期延長、プロテアーゼ群および加水分解からのタンパク質の有効な遮蔽、体内分布改善、薬物動態学および/または薬力学改善、および水溶性を含む。
ヒアルロナン分解酵素と組み合わせることができるポリマー類の例は、天然および合成ホモポリマー類、例えばポリオール類(すなわちポリ−OH)、ポリアミン類(すなわちポリ−NH2)およびポリカルボキシル酸類(すなわちポリ−COOH)、およびさらなるヘテロポリマー類、すなわち1種以上の種々のカップリング基、例えばヒドロキシル基およびアミン基を含むポリマー類を含む。適当な重合体分子の例は、ポリアルキレンオキシド類(PAO)、例えばポリプロピレングリコール類(PEG)、メトキシポリエチレングリコール類(mPEG)およびポリプロピレングリコール類を含むポリアルキレングリコール類(PAG)、PEG−グリシジルエーテル類(Epox−PEG)、PEG−オキシカルボニルイミダゾール(CDI−PEG)分枝ポリエチレングリコール類(PEGs)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート類、ポリビニルピロリドン、ポリ−D,L−アミノ酸類、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、カルボキシメチル−デキストラン類を含むデキストラン類、ヘパリン、相同的アルブミン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースカルボキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含むセルロース類、キトサンの加水分解物、デンプン類、例えばヒドロキシエチル−デンプン類およびヒドロキシプロピル−デンプン類、グリコーゲン、アガロース類およびその誘導体、グアーガム、プルラン、イヌリン、キサンタンガム、カラゲナン、ペクチン、アルギン酸加水分解物およびバイオポリマー類から選択される重合体分子である。
典型的に、ポリマー類は、多糖類、例えばデキストラン、プルランなどと比較して、架橋できる活性基が少ない、ポリアルキレンオキシド類(PAO)、例えばポリエチレンオキシド類、例えばPEG、典型的にmPEGである。典型的に、ポリマー類は、非毒性重合体分子、例えば相対的に単純な化学反応を使用してヒアルロナン分解酵素(例えば、タンパク質表面上の付着基)と共有結合できる(m)ポリエチレングリコール(mPEG)である。
ヒアルロナン分解酵素への結合のための適当な重合体分子は、ポリエチレングリコール(PEG)およびPEG誘導体、例えばメトキシ−ポリエチレングリコール類(mPEG)、PEG−グリシジルエーテル類(Epox−PEG)、PEG−オキシカルボニルイミダゾール(Cジ−PEG)、分枝PEGs、およびポリエチレンオキシド(PEO)を含むが、これらに限定されない(例えばRoberts et al., Advanced Drug Delivery Review 2002, 54: 459-476; Harris and Zalipsky, S (eds.) “Poly(ethy1ene glycol), Chemistry and Biological Applications” ACS Symposium Series 680, 1997; Mehvar et al., J. Pharm. Pharmaceut. Sci., 3(1):125-136, 2000; Harris, Nature Reviews Drug Discovery 2:214 (2003); and Tsubery, J Biol. Chem 279(37):38118-24, 2004参照)。重合体分子は、典型的に約3kDa〜約60kDaの範囲の分子量を有する。幾つかの態様において、タンパク質、例えばrHuPH20とコンジュゲートする重合体分子は、5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、55kDa、60kDaまたは60kDaを超える分子量を有する。
PEGまたはPEG誘導体(すなわち“ペグ化”)を共有結合により結合(コンジュゲート)させることによりポリペプチド類を修飾する種々の方法が当分野で知られている(例えば、米国公開番号20060104968および米国20040235734;米国特許番号5,672,662および米国6,737,505参照)。ペグ化の方法は、特定化リンカーおよびカップリング化学(例えば、Roberts et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 54:459-476, 2002参照)、単一コンジュゲーション部位への複数PEG分子の付着(例えば、分枝PEGの使用を介する;例えば、Guiotto et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 12:177-180, 2002参照)、部位特異的ペグ化および/またはモノ−ペグ化(例えば、Chapman et al., Nature Biotech. 17:780-783, 1999参照)、および部位特異的酵素ペグ化(例えば、Sato, Adv. Drug Deliv. Rev., 54:487-504, 2002参照)を含むが、これらに限定されない(また例えば、Lu and Felix (1994) Int. J. Peptide Protein Res. 43:127-138; Lu and Felix (1993) Peptide Res. 6:140-6, 1993; Felix et al. (1995) Int. J. Peptide Res. 46:253-64; Benhar et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:13398-404; Brumeanu et al. (1995) J Immunol. 154:3088-95; see also, Caliceti et al. (2003) Adv. Drug Deliv. Rev. 55(10):1261-77 and Molineux (2003) Pharmacotherapy 23 (8 Pt 2):3S-8S参照)。文献に記載された方法および技術により、一タンパク質分子に結合した1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個または10個を超えるPEGまたはPEG誘導体を有するタンパク質類が産生される(例えば、米国特許公開番号20060104968参照)。
ペグ化のための多くの反応材が文献に記載されている。このような反応材は、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)活性化PEG、スクシンイミジルmPEG、mPEG2−N−ヒドロキシスクシンイミド、mPEGスクシンイミジルアルファ−メチルブタノエート、mPEGスクシンイミジルプロピオネート、mPEGスクシンイミジルブタノエート、mPEGカルボキシメチル3−ヒドロキシブタノイック酸スクシンイミジルエステル、ホモ二官能的PEG−スクシンイミジルプロピオネート、ホモ二官能的PEGプロピオンアルデヒド、ホモ二官能的PEGブチルアルデヒド、PEGマレイミド、PEGヒドラジド、p−ニトロフェニル−カーボネートPEG、mPEG−ベンゾトリアゾールカーボネート、プロピオンアルデヒドPEG、mPEGブチルアルデヒド、分枝mPEG2ブチルアルデヒド、mPEGアセチル、mPEGピペリドン、mPEGメチルケトン、mPEG“リンカーレス”マレイミド、mPEGビニルスルホン、mPEGチオール、mPEGオルトピリジルチオエステル、mPEGオルトピリジルジスルフィド、Fmoc−PEG−NHS、Boc−PEG−NHS、ビニルスルホンPEG−NHS、アクリレートPEG−NHS、フルオレッセインPEG−NHS、およびビオチンPEG−NHSを含むが、これらに限定されない(例えば、Monfardini et al., Bioconjugate Chem. 6:62-69, 1995; Veronese et al., J. Bioactive Compatible Polymers 12:197-207;米国5,672,662;米国5,932,462;米国6,495,659;米国6,737,505;米国4,002,531;米国4,179,337;米国5,122,614;米国5,324、844;米国5,446,090;米国5,612,460;米国5,643,575;米国5,766,581;米国5,795、569;米国5,808,096;米国5,900,461;米国5,919,455;米国5,985,263;米国5,990、237;米国6,113,906;米国6,214,966;米国6,258,351;米国6,340,742;米国6,413,507;米国6,420,339;米国6,437,025;米国6,448,369;米国6,461,802;米国6,828,401;米国6,858,736;米国2001/0021763;米国2001/0044526;米国2001/0046481;米国2002/0052430;米国2002/0072573;米国2002/0156047;米国2003/0114647;米国2003/0143596;米国2003/0158333;米国2003/0220447;米国2004/0013637;US2004/0235734;米国2005/0114037;米国2005/0171328;米国2005/0209416;EP1064951;EP0822199;WO01076640;WO0002017;WO0249673;WO05000360;WO9428024;およびWO0187925参照)。
D. 安定なヒアルロナン分解酵素製剤
ここに提供されるのは、二価カチオンである安定化添加物を含むヒアルロナン分解酵素の安定な製剤である。二価カチオンの例は、リシル−リシン(ジリシン;Lys−Lys)またはマグネシウム(例えばMgCl2)、またはその塩類、誘導体、類似体または模倣体を含むが、これらに限定されない。具体例において、ヒアルロナン分解酵素の安定な製剤は安定化添加物としてLys−Lys、またはその塩類、誘導体、類似体または模倣体を含む。他の例において、安定化剤としてMgCl2、またはその誘導体、類似体または模倣体を含むヒアルロナン分解酵素の安定な製剤である。二価カチオン、例えばLys−LysまたはMgCl2を含むヒアルロナン分解酵素群は、37℃以上の温度で少なくとも3日間、および一般的に少なくとも6日間、7日間(1週間)、2週間、3週間または4週間(1ヶ月間)安定である。例えば、このような製剤は、37℃〜42℃以上の温度で、例えば少なくともまたは約40℃で、少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間またはそれ以上安定である。
ヒアルロナン分解酵素群の既存の製剤は、安定化剤としてヒト血清アルブミン(HSA)を含む。例えば、Hylenex(登録商標)組み換えは1.0mgヒトアルブミンを含む。安定な無HSAヒアルロナン分解酵素製剤がいくつかの理由で望まれる。第一に、HSAは血液由来産物であり、故にしばしば純粋ではない。HSAの分解物および汚染物は酵素活性を妨害し得る。加えて、HSA自体がまた、ある条件下で凝集体を形成し得るため、安定性の問題がある。本発明により、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20の安定な無HSA製剤が、二価カチオン、例えば、Lys−Lysの包含により製造できることが判明した。
また、本明細書のあらゆる場所に記載するとおり、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20のほとんどの既存の製剤は、安定化剤としてNaClも含む。正確にまたは約130mM〜150mMのNaClまたはそれ以上の高濃度でのNaClの存在が、一般的に酵素の最適活性および安定性に必要である。例えば、市販のPH20製剤Hylenex(登録商標)は145mMのNaClを含む。本明細書の実施例において証明されているとおり、二価カチオンLys−LysおよびMgCl2は、NaClより改善された安定性効果を例示的ヒアルロナン分解酵素PH20に対して示す。NaClが37℃を超える高温または加速温度でのインキュベーションでPH20の安定化に十分ではないことが本発明により判明していたため、これは有利である(例えば実施例23および24参照)。対照的に、二価カチオン、例えばLys−Lysを含む製剤中のPH20活性は、本製剤が4週間、37℃以上の温度、例えば37℃〜42℃以上の温度、例えば少なくともまたは約40℃でインキュベーションしたとき、少なくとも1ヶ月間、最大70%またはそれ以上の活性、および一般的に少なくともまたは約80%、85%、90%以上の活性を示すことができるように、高温で安定である。二価カチオン、例えばLys−Lysを安定化剤として含む本発明の製剤例において、ヒアルロナン分解酵素活性は、少なくともまたは約38℃〜42℃、および特に40℃の高温で、二価カチオンを含まない(例えば安定化剤としてNaClを含む)ヒアルロナン分解酵素の活性と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上増加する。
ここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)および37℃以上の温度で少なくとも1ヶ月間製剤を安定化させる量の二価カチオン、例えばLys−LysまたはMgCl2を含む、安定なヒアルロナン分解酵素製剤である。具体例において、ここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)および37℃以上の温度で少なくとも1ヶ月間製剤を安定化させる量のLys−Lysを含む安定なヒアルロナン分解酵素製剤である。例えば、このような製剤は、37℃〜42℃以上の温度、例えば少なくともまたは約40℃で、少なくとも1ヶ月間安定である。製剤は、一般的にまた界面活性剤、酸化防止剤(例えばメチオニン)、正確にまたは約6.5〜7.8のpHおよび該pH範囲を維持する緩衝剤を含む。所望により、製剤は1種以上の他の安定化剤、浸透圧修飾剤、防腐剤(複数も可)または添加物を含み得る。
典型的に、化合物は、当分野で周知の技術および方法を使用して医薬組成物に製剤される(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, Fourth Edition, 1985, 126)。薬学的に許容される組成物は、一般的に動物およびヒトでの使用のための認められた薬局方に従い、準備される規制当局または他の当局の承認の観点で製造される。製剤は投与方法に適合させるべきである。
安定な製剤は、溶液、シロップまたは懸濁液としての液体形態の医薬製剤として提供できる。液体形態で、医薬製剤は使用前に治療的有効濃度に希釈すべき濃縮製剤として提供できる。一般的に、製剤は、使用時に希釈を必要としない投与形態、すなわち直接投与用製剤として提供される。このような液体製剤は、薬学的に許容される添加物、例えば懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化可食脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル類、または分画植物油);および防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸)と共に緩衝手段により製造できる。他の例において、医薬製剤は、使用前に水または他の適当な媒体で再構成するための凍結乾燥形態で提供できる。
ここに提供する製剤の容積は、それを入れる容器に適当なあらゆる容積である。数例において、製剤はバイアル、シリンジ、またはあらゆる他の適切な容器に入れられる。例えば、ここに提供される安定な製剤は、正確にまたは約0.1mL〜500mL、例えば0.1mL〜100mL、1mL〜100mL、0.1mL〜50mL、例えば少なくともまたは凡そ少なくともまたは約または0.1mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mLまたはそれ以上である。
下に記載するのは、ここに提供する安定なヒアルロナン分解酵素製剤に提供される成分についての記載である。次の安定な製剤は単なる例示であり、微細な調節をなし得る構築基盤を提供する。種々の添加物および他の成分の濃度の極めてわずかな変化(例えば記載濃度の±15%)、またはpHのわずかな変化は、全てではなくても、ヒアルロナン分解酵素安定性を幾分保持しながらなし得ることは理解すべきである。さらなる変化も、添加物の付加または除去によりなし得る。例えば、安定化界面活性剤の種類を変え得る。
1. ヒアルロナン分解酵素
ここに提供する安定な製剤中のヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の量は、治療効果を達成するために十分な直接投与のための量である。一例において、量は、ヒト皮膚の該表面下の皮下空間でヒアルロン酸(HA)を分解させるための直接投与に十分な量である。例えば、製剤中のヒアルロナン分解酵素の量は、共注射または共投与される治療剤の分散および吸収を増加させるための直接投与のための量である。他の例において、量は、疾患組織または細胞と関連するヒアルロン酸(HA)を分解するのに十分な直接投与のための量である。例えば、量は、腫瘍細胞と関連するHA分解に十分な直接投与のための量である。このような例において、量は、間質性流体圧力(IFP)または腫瘍血管容積を減少させるまたは減らすための量である。
例えば、当該量は、少なくともまたはおよそ少なくとも30単位/mLと機能的に等価な量である。例えば、ここに提供する製剤はヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)を、正確にまたは約30単位/mL〜20,000U/mL、300U/mL〜15,000U/mL、300U/mL〜10,000U/mL、300U/mL〜5,000U/mL、300U/mL〜3000U/mL、300U/mL〜2000U/mL、600U/mL〜20,000U/mL、600U/mL〜15,000U/mL、600U/mL〜10,000U/mL、600U/mL〜6000U/mL、600U/mL〜4000U/mL、600U/mL〜2000U/mL、600U/mL〜1000U/mL、60U/mL〜600U/mL、または100U/mL〜300U/mL、例えば少なくともまたはおよそ少なくとも30U/mL、35U/mL、40U/mL、50U/mL、100U/mL、200U/mL、300U/mL、400U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mL、1000U/ml、2000U/mL、3000U/mL、4000U/mL、5000U/mL、6000U/mL、7000U/mL、8000U/mL、9000U/mL、10,000U/mL、12,000U/mL、15,000U/mLまたは20,000U/mLの量で含む。例えば、ここに提供する製剤は、PH20(例えばrHuPH20)を、少なくとも100U/mL〜300U/mL、例えば少なくともまたは少なくともおよそ100U/mL、115U/mL、120U/mL、125U/mL、130U/mL、135U/mL、140U/mL、145U/mL、150U/mL、155U/mL、160U/mL、165U/mL、170U/mL、175U/mL、180U/mL、185U/mL、190U/mL、200U/mL、220U/mL、240U/mL、260U/mL、280U/mLまたは300U/mLの量で含む。
ここに提供する安定な製剤において、製剤中のヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)を含むヒアルロナン分解酵素の安定性は、上記のとおり、37℃〜42℃以上の高温、例えば少なくともまたは約またはおよそ37℃または40℃で、少なくとも3日間、および一般的に少なくとも1ヶ月間酵素の回収および/または活性の関数である。これらのパラメータを評価するためのアッセイをここに記載する。ここに提供する製剤は、ここに記載する治療的使用に適当であるようにヒアルロニダーゼ回収および/または活性を保持する。ここに提供する安定な製剤において、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20の活性は、典型的にここに記載するとおり、37℃〜42℃以上の温度に少なくとも3日間、および一般的に少なくとも1ヶ月間に暴露前の製剤における酵素の初期活性の正確にまたは約50%以上、例えば少なくとも55%、60%、65%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上またはそれ以上を維持する。例えば、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20の活性は、典型的に、4℃で少なくとも1ヶ月間保存した同じ酵素製剤の活性の正確にまたは約50%以上、例えば少なくとも55%、60%、65%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である。典型的に、ここに提供する安定なヒアルロナン分解酵素製剤は、37℃〜42℃以上の温度、例えば少なくともまたは約37℃または40℃の保存または使用下で少なくとも1ヶ月間酵素の初期活性の少なくとも70%を維持する。それ故に、例えば、600U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばrHuPH20で製剤された溶液において、少なくともまたは凡そ少なくとも360単位/mL、365U/mL、370U/mL、375U/mL、380U/mL、390U/mL、420U/mL、480U/mL、540U/mL、546U/mL、552U/mL、558U/mL、564U/mL、570U/mL、576U/mL、582U/mL、588U/mL、594U/mL以上の活性が、37℃〜42℃以上の温度、例えば少なくともまたは約37℃または40℃で、少なくとも1ヶ月間保持される。他の例において、安定性を、例えば、RP−HPLCを使用して、酵素の回収の関数として評価できる。このような例において、ここに提供する製剤において、ヒアルロニダーゼ酵素回収は正確にまたは約60%〜140%である。例えば、ここに提供する製剤において、ヒアルロニダーゼ酵素回収は正確にまたは約3−7μg/mLである。
2. 二価カチオン
ここに提供する安定なヒアルロナン分解酵素製剤は、ここに記載のとおり、正確にまたは約37℃〜42℃、例えば少なくともまたはおよそ少なくともまたは約37℃または40℃の温度で、少なくとも3日間および一般的に少なくとも1ヶ月間(例えば4週間)ヒアルロナン分解酵素の初期酵素活性の少なくとも50%、および一般的に少なくとも70%を達成する量で二価カチオンを含む。例えば、二価カチオンの量は正確にまたは約37℃〜42℃、例えば少なくともまたはおよそ少なくとも40℃の温度で少なくとも3日間、および一般的に少なくとも4週間ヒアルロナン分解酵素の初期酵素活性の少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上を達成する。
例えば、ここに提供する安定なヒアルロナン分解製剤は、正確にまたは約37℃〜42℃、例えば少なくともまたはおよそ少なくとも40℃の温度で、少なくとも3日間および一般的に少なくとも4週間ヒアルロナン分解酵素の初期酵素活性の少なくとも50%、および一般的に少なくとも70%を達成する量のLys−Lys、その塩、誘導体、類似体または模倣体を含む。ここに提供するこのような安定なヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20)製剤は、正確にまたは約5mM〜300mMのLys−Lys、例えば10mM〜200mM、50mM〜150mMまたは10mM〜50mMを含む。例えば、ここに提供する安定なヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20)製剤は、少なくともまたは凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、125mM、150mM、200mM、300mM以上のLys−Lysを含む。
他の例において、ここに提供する安定なヒアルロナン分解製剤は、正確にまたは約37℃〜42℃、例えば少なくともまたは約または約40℃の温度で、少なくとも3日間および一般的に少なくとも4週間で、ヒアルロナン分解酵素の初期酵素活性の少なくとも50%、および一般的に少なくとも70%を達成する量のMgCl2、その誘導体、類似体または模倣体を含む。このようなここに提供する安定なヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20)製剤は、正確にまたは約5mM〜300mMのMgCl2、例えば10mM〜200mM、50mM〜150mMまたは10mM〜50mM。例えば、ここに提供する安定なヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20)製剤は少なくともまたは凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、125mM、150mM、200mM、300mM以上のMgCl2を含む。
下記のとおり、二価カチオン(例えばLys−Lys)を含む製剤は、必要であれば、浸透圧修飾剤(例えばNaCl)も含み得る。
3. pHおよび緩衝剤
ここに提供されるのは、正確にまたは約6.5〜7.8または6.8〜7.8、例えば正確にまたは約6.5〜7.5または7.0〜7.6のpHを有する安定なヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の製剤である。本明細書でのpHについての言及は、室温でのpH測定に基づく。pHは保存中時間と共に変わるが、典型的に正確にまたは約pH6.5〜7.8、例えば正確にまたは約6.8〜または〜約7.8を維持すると理解される。例えば、pHは±0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.3、1.4、1.5またはそれ以上で変化し得る。それ故に、製剤がおよそまたは少なくともpH6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4または7.6のpHをとの記載は、製造時およそまたは少なくとも6.5±0.2、6.6±0.2、6.7±0.2、6.8±0.2、6.9±0.2、7.0±0.2、7.1±0.2、7.2±0.2、7.3±0.2、7.4±0.2、7.5±0.2または7.6±0.2のpHを有する配合剤を含む。
必要であれば、pHを低下させるための酸性化剤またはpHを上昇させるためのアルカリ化剤を使用してpHを調節できる。酸性化剤の例は、酢酸、クエン酸、硫酸、塩酸、リン酸二水素ナトリウム溶液、およびリン酸を含むが、これらに限定されない。アルカリ化剤の例は、リン酸水素ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム、または水酸化ナトリウムを含むが、これらに限定されない。
あらゆる緩衝剤が、製剤の安定性に不利に影響しない限り、そして必要pH範囲を支持する限り、ここに提供する配合剤において使用できる。特に適当な緩衝剤はTris、コハク酸、酢酸、リン酸緩衝液、ヒスチジン、クエン酸、アコニテート、マレートおよびカーボネートを含む。しかしながら、当業者は、ここに提供される製剤は、緩衝剤が許容されるpH安定性程度または示す範囲の“緩衝能”を提供する限り、特定の緩衝剤に限定されないことを認識する。一般的に、緩衝剤は、そのpKの約1pH単位以内で適切な緩衝能を有する(Lachman et al. 1986)。緩衝剤適合性は、公開されているpK集計により推定でき、または当分野で周知の方法により経験的に決定できる。溶液のpHは、例えば、あらゆる許容される酸または塩基を使用して、上記範囲内の所望のエンドポイントに調節できる。
ここに提供する配合剤に包含できる緩衝剤は、Tris(トロメタミン)、ヒスチジン、リン酸緩衝液、例えばリン酸水素ナトリウム、およびクエン酸緩衝剤を含むが、これらに限定されない。例えば、緩衝剤はヒスチジン塩酸塩(ヒスチジン/HCl)緩衝剤であり得る。一般的に、緩衝剤は、配合剤のpH範囲を正確にまたは約6.5〜7.8、例えば正確にまたは約6.8〜7.8、例えば正確にまたは約7.0〜7.6に維持する量で存在する。このような緩衝剤は、製剤中に、正確にまたは約1mM〜100mM、例えば10mM〜50mMまたは20mM〜40mM、例えば正確にまたは約30mMの濃度で存在できる。例えば、このような緩衝剤は、配合剤中に正確にまたは約または少なくとも1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、またはそれ以上の濃度で存在できる。
いくつかの実施例において、緩衝剤は不要である。
4. 界面活性剤
ここに提供する安定な製剤は、1種以上の界面活性剤を含む。このような界面活性剤はヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の凝集を阻止し、吸着損失を最小化する。界面活性剤は、一般的に非イオン性界面活性剤である。本発明の製剤に包含できる界面活性剤は、多価アルコール類、例えばグリセロール、またはソルビトールの部分的および脂肪酸エステル類およびエーテル類、ポロクサマー類およびポリソルベート類を含むが、これらに限定されない。例えば、本発明の製剤における界面活性剤の例は、ポロクサマー188(PLURONICS(登録商標)、例えばPLURONIC(登録商標)F68)、TETRONICS(登録商標)、ポリソルベート20、ポリソルベート80、PEG400、PEG3000、Tween(登録商標)(例えばTween(登録商標)20またはTween(登録商標)80)、Triton(登録商標)X-100、SPAN(登録商標)、MYRJ(登録商標)、BRIJ(登録商標)、CREMOPHOR(登録商標)、ポリプロピレングリコール類またはポリエチレングリコール類のあらゆる1種以上を含むが、これらに限定されない。数例において、本発明の製剤はポロクサマー188、ポリソルベート20、ポリソルベート80、一般的にポロクサマー188(PLURONIC F68)を含む。ここに提供する製剤は、一般的に少なくとも1種の界面活性剤、例えば1種、2種または3種の界面活性剤を含む。
ここに提供する製剤において、製剤中の1種以上の界面活性剤の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)としての総量は、例えば、正確にまたは約0.0005%〜1.0%、例えば正確にまたは約0.0005%〜0.005%、0.001%〜.01%、0.01%〜0.5%、0.01%〜0.1%または0.01%〜0.02%である。一般的に、製剤は少なくとも0.01%の界面活性剤を含み、1.0%未満、例えば0.5%未満または0.1%未満の界面活性剤を含む。例えば、ここに提供する製剤は、正確にまたは約0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.08%、または0.09%界面活性剤を含む。具体例において、ここに提供する製剤は、正確にまたは約0.01%〜または〜約0.05%界面活性剤を含む。
本発明により、酵素の酸化が、界面活性剤のレベルを上げるに連れて増加することが判明した。また、界面活性剤ポロクサマー188は、ポリソルベート類より酸化を起こさない。それ故に、本発明の製剤は、一般的にポロクサマー188を含む。それ故に、界面活性剤はヒアルロナン分解酵素を安定化できるが、ここに提供する製剤への界面活性剤の包含は、高濃度でヒアルロナン分解酵素酸化をもたらす。それ故に、一般的に、例えば、重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)で1.0%未満および一般的に正確にまたは約0.01%または0.05%、例えば0.01%のような低濃度の界面活性剤が本発明の配合剤で使用される。また、下記のとおり、所望により酸化を減らすかまたは阻止するために、製剤中に酸化防止剤を包含させ得る。
5. 抗酸化剤
ここに提供する製剤はまた酸化、特にヒアルロナン分解酵素の酸化を減らすかまたは阻止するために抗酸化剤を含み得る。例えば、本明細書の実施例は、酸化が高濃度の界面活性剤で起こり得ることを示す。抗酸化剤の例は、システイン、トリプトファンおよびメチオニンを含むが、これらに限定されない。具体例において、抗酸化剤はメチオニンである。ここに提供する製剤は、抗酸化剤を正確にまたは約5mM〜または〜約50mM、例えば5mM〜40mM、5mM〜20mMまたは10mM〜20mMの濃度で含み得る。例えば、メチオニンを、本発明の製剤に正確にまたは約5mM〜または〜約50mM、例えば5mM〜40mM、5mM〜20mMまたは10mM〜20mMの濃度で入れ得る。例えば、抗酸化剤、例えばメチオニンを、正確にまたは約または少なくとも5mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mM、30mM、35mM、40mM、45mMまたは50mMの濃度で入れ得る。数例において、配合剤は10mM〜20mMのメチオニン、例えばまたは約または少なくとも10mMまたは20mMのメチオニンを含む。
6. 張度調節剤
所望により、ここに提供する安定なヒアルロナン分解酵素製剤は張度調節剤を含み得る。特に、張度調節剤は、低濃度の二価カチオン、例えばLys−Lysを含む製剤において、十分な張性が達成されないために必要である。
例えば、張度調節剤は、所望のモル浸透圧濃度の溶液を製造するために本発明の製剤に包含される。ここに提供する製剤は、正確にまたは約245mOsm/kg〜500mOsm/kgである。例えば、モル浸透圧濃度は正確にまたは約または少なくとも245mOsm/kg、250mOsm/kg、255mOsm/kg、260mOsm/kg、265mOsm/kg、270mOsm/kg、275mOsm/kg、280mOsm/kg、285mOsm/kg、290mOsm/kg、295mOsm/kg、300mOsm/kg、350mOsm/kg、400mOsm/kg、450mOsm/kgまたは500mOsm/kgのモル浸透圧濃度を有する。典型的に、張度調節剤は、二価カチオン、例えばLys−Lysを、100mM未満、例えば80mM未満、70mM、60mM、50mM、40mM、30mM、20mM、10mM以下の濃度で含む本発明の製剤に包含される。例えば、張度調節剤は、二価カチオン、例えばLys−Lysを正確にまたは約10mM〜50mM、例えば約または約10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mMまたは50mMの濃度で含む本発明の製剤に包含される。
張度調節剤は、グリセリン、NaCl、アミノ酸類、ポリアルコール類、トレハロース、および他の塩類および/または糖類を含むが、これらに限定されない。例えば、ここに提供する製剤は、所望により張度調節剤としてNaClを含む。NaClは、正確にまたは約0mM〜200mM、例えば一般的に30mM〜100mM、50mM〜160mM、例えば50mM〜120mMまたは80mM〜140mMの濃度で包含される。一般的に、NaClは150mM未満、および一般的に140mM未満、130mM、120mM、110mM、100mM、90mM、80mM、70mM、60mM、50mM、40mM、30mM、20mM、10mM以下である。具体的量は二価カチオン、例えばLys−Lysの関数である。例えば、Lys−Lys濃度が高いほど、NaClは少ない(またはNaClはない)。具体的量は、酵素活性および/または張性を維持するために経験的に決定できる。
他の例において、グリセリン(グリセロール)は、所望により安定な製剤に包含される。例えば、ここに提供する製剤は、典型的にグリセリンを60mM未満、例えば55mM未満、50mM未満、45mM未満、40mM未満、35mM未満、30mM未満、25mM未満、20mM未満、15mM未満、10mM以下で含む。グリセリン量は、典型的に存在する二価カチオン(例えばLys−Lys)量による。製剤に存在する二価カチオン(例えばLys−Lys)が多い程、所望のモル浸透圧濃度を達成するために必要なグリセリンは少ない。それ故に、ある場合、グリセリンは製剤にわずかしか入れる必要がないか、または入れる必要がない。
7. 他の薬物または添加物
ここに提供する安定な製剤は、所望により1種以上の他の薬剤、担体、添加物または防腐剤を含み得る。例えば、所望によりここに提供する安定なヒアルロナン分解酵素製剤に包含され得る安定化剤の例は、アミノ酸類、アミノ酸誘導体、アミン類、糖類、ポリオール類、塩類および緩衝剤、界面活性剤、および他の薬剤を含むが、これらに限定されない。例えば、所望により本発明の製剤に包含され得る安定化剤でとりわけ包含されるのが、アミノ酸安定化剤またはヒアルロニダーゼ阻害剤(例えばヒアルロニダーゼ基質、例えばヒアルロナン)である。アミノ酸安定化剤、アミノ酸誘導体またはアミン類の例は、L−アルギニン、グルタミン、グリシン、リシン、メチオニン、プロリン、Lys−Lys、Gly−Gly、トリメチルアミンオキシド(TMAO)またはベタインを含むが、これらに限定されない。糖類およびポリオール類の例は、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、スクロースまたはトレハロースを含むが、これらに限定されない。塩類および緩衝剤の例は、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、Tris、例えばTris(100mM)、または安息香酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。界面活性剤の例は、ポロクサマー188(例えばPLURONIC(登録商標)F68)、ポリソルベート80(PS80)、ポリソルベート20(PS20)を含むが、これらに限定されない。他の安定化剤は、ヒアルロン酸(HA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、フェニル酪酸、タウロコール酸、ポリビニルピロリドン(PVP)または亜鉛を含むが、これらに限定されない。本発明の具体例において、安定なヒアルロナン分解酵素群はHSAを含まず、無HSA製剤である。
多数回投与量投与用に製剤された安定な製剤について、製剤はまた所望により、上記成分と組み合わせたとき、安定な製剤となる一定量の防腐剤(複数も可)を含んでよい。包含されるとき、防腐剤は、例えば、米国薬局方(USP)および欧州薬局方(EP)の抗菌性要求を提供するのに十分な濃度で存在する。下記実施例7Eの表23はこれらの要求を示し、最小EP抗菌性要求(EPA)および好ましいEP抗菌性要求(EPB)を示す。典型的に、EP(EPAまたはEPB)抗菌性要求を満たす製剤は、USP抗菌性要求のみを満たすために製剤されたものより多くの防腐剤を含む。一般的に、包含されるとき、ここに提供する製剤は、本明細書の他の箇所に記載したとおり、抗菌防腐剤有効性試験(APET)で評価して組成物サンプルにおける微生物を死滅させるか繁殖を阻止することにより抗菌活性を示す量で防腐剤(複数も可)を含む。ここに提供する製剤に包含できる防腐剤の非限定的例は、フェノール、メタ−クレゾール(m−クレゾール)、メチルパラベン、ベンジルアルコール、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、4−クロロ−1−ブタノール、クロルヘキシジン二塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジン、L−フェニルアラニン、EDTA、ブロノポール(2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール)、酢酸フェニル水銀、グリセロール(グリセリン)、イミド尿素、クロルヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、オルト−クレゾール(o−クレゾール)、パラ−クレゾール(p−クレゾール)、クロロクレゾール、セトリミド、塩化ベンゼトニウム、エチルパラベン、プロピルパラベンまたはブチルパラベンおよびこれらのあらゆる組み合わせを含むが、これらに限定されない。一例において、製剤中の防腐剤は少なくとも1種のフェノール防腐剤を含む。例えば、製剤はフェノール、m−クレゾールまたはフェノールおよびm−クレゾールを含む。ここに提供する製剤に包含されるとき、製剤中の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)としての1種以上の防腐剤の総量は、例えば、正確にまたは約0.1%〜0.4%、例えば0.1%〜0.3%、0.15%〜0.325%、0.15%〜0.25%、0.1%〜0.2%、0.2%〜0.3%、または0.3%〜0.4%、および一般的に0.4%(w/v)未満の防腐剤、例えば、少なくともまたはおよそ少なくとも0.1%、0.12%、0.125%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.175%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.325%、0.35%であるが、総量0.4%未満の防腐剤である。
所望により、製剤は、製剤が投与される担体、例えば希釈剤、アジュバント、添加物、または媒体を含み得る。適当な医薬担体の例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences” by E. W. Martinに記載されている。このような組成物は、治療有効量の、一般的に精製形態または部分的精製形態の化合物を、患者への適切な投与のための形態を提供するための適当な量の担体と共に含む。このような医薬担体は滅菌液体、例えば水および石油、動物、植物または合成起源のものを含む油、例えばピーナツ油、ダイズ油、鉱油、およびゴマ油を含む。水は、医薬組成物を静脈内投与するときの典型的担体である。食塩水溶液および水性のデキストロースおよびグリセロール溶液も、特に注射液のための液体担体として使用できる。
例えば、非経腸製剤に使用される薬学的に許容される担体は、水性媒体、非水性媒体、抗微生物剤、等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁および分散剤、乳化剤、隔離またはキレート剤および他の薬学的に許容される物質を含む。水性媒体の例は、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、等張デキストロース注射、滅菌水注射、デキストロースおよび乳酸リンゲル注射を含む。非水性非経腸媒体は、植物起源の固定油、綿実油、コーン油、ゴマ油およびピーナツ油を含む。静菌性または静真菌性濃度の抗菌剤を、多数回投与容器に包装された非経腸製剤に添加でき、それはフェノール類またはクレゾール類、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル類、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムであり得る。等張化剤は塩化ナトリウムおよびデキストロースを含む。緩衝剤はリン酸およびクエン酸を含む。抗酸化剤は硫酸水素ナトリウムを含む。局所麻酔剤は塩酸プロカインを含む。懸濁および分散剤はナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを含む。乳化剤はポリソルベート80(TWEEN 80)を含む。金属イオンの隔離またはキレート剤はEDTAを含む。医薬担体はまた水混和性媒体のためのエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールおよびpH調節のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸を含む。
組成物はまた活性成分意外に、希釈剤、例えばラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム、またはカルボキシメチルセルロース;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルク;および結合剤、例えばデンプン、天然ゴム、例えばアカシアガム、ゼラチン、グルコース、モラセス、ポリビニルピロリドン、セルロース類およびその誘導体、ポビドン、クロスポビドン類および当業者に知られた他のこのような結合剤を含み得る。
例えば、あらゆる数の薬学的に許容されるタンパク質類またはペプチドであり得る、添加物タンパク質を製剤に添加できる。一般的に、添加物タンパク質は、免疫応答を誘発せずに哺乳動物対象に投与できる能力により選択する。例えば、ヒト血清アルブミンは、安定な本発明の製剤には典型的に包含されないが、医薬製剤における使用に一般的によく適する。他の既知医薬タンパク質添加物は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、一ステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールを含む。添加物は、製剤に、保持容器またはバイアルへのタンパク質の吸着を妨げる十分な濃度で包含される。添加物濃度は添加物の性質および配合剤中のタンパク質濃度により異なる。
組成物は、望むならば、また少量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤、例えば、酢酸、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、トリエタノールアミンオレエート、および他のこのような薬剤を含み得る。
8.安定なヒアルロナン分解酵素製剤の例
ここに提供されるのは、37℃〜42℃、例えば37℃または40℃以上の温度で、少なくとも3日間、および一般的に少なくとも1ヶ月間安定である安定なヒアルロナン分解酵素製剤である。
一例において、製剤は100U/mL〜1000U/mL、例えば100U/mL〜500U/mLまたは100U/mL〜300U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、および特に少なくともまたは凡そ少なくともまたは約155U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20);正確にまたは約5mM〜または〜約200mM、例えば10mM〜50mMまたは5mM〜20mMのLys−Lys(例えば少なくともまたは凡そ少なくとも10mM、20mM、30mM、40mMまたは50mM);正確にまたは約0mM〜または〜約300mMのリン酸水素ナトリウム(例えば正確にまたは約0mM〜150mMまたは5mM〜50mMのリン酸水素ナトリウム、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mMまたは50mM、100mMまたは150mM);0mM〜または〜約50mMのメチオニン(例えば正確にまたは約5mM〜20mM、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mMまたは50mMのメチオニン);および正確にまたは約0.01%〜または〜約0.5%ポロクサマー188、例えば0.01%〜0.05%(例えば少なくともまたは凡そ少なくとも0.01%、0.02%、0.03%、0.04%または0.05%ポリソルベート80)を含む。製剤は正確にまたは約6.5〜7.6、例えば正確にまたは約6.5〜7.2または7.0〜または〜約7.6のpH(例えば少なくともまたは凡そ少なくともpH6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5または7.6)で製剤される。さらなる例において、NaClは濃度140mM未満で包含される。例えば、NaClは正確にまたは約50mM〜150mM、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも50mM、60mM、70mM、80mM、90mMまたは100mMの濃度で包含される。
他の例において、製剤の例は100U/mL〜1000U/mL、例えば100U/mL〜500U/mLまたは100U/mL〜300U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、および特に少なくともまたは凡そ少なくともまたは約155U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20);正確にまたは約5mM〜または〜約200mM、例えば正確にまたは約50mM〜150mMのMgCl2(例えば少なくともまたは凡そ少なくとも50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mMまたは150mM);正確にまたは約0mM〜または〜約300mMのヒスチジン塩酸塩(例えば正確にまたは約0mM〜150mMまたは5mM〜50mMのヒスチジン塩酸塩、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mMまたは50mM、100mMまたは150mM);正確にまたは約0mM〜または〜約50mMのメチオニン(例えば正確にまたは約5mM〜20mM、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mMまたは50mMのメチオニン);および正確にまたは約0.01%〜または〜約0.5%ポロクサマー188、例えば0.01%〜0.05%(例えば少なくともまたは凡そ少なくとも0.01%、0.02%、0.03%、0.04%または0.05%ポリソルベート80)を含む。製剤は正確にまたは約6.5〜7.6、例えば正確にまたは約6.5〜7.2または7.0〜または〜約7.6のpH(例えば少なくともまたは凡そ少なくともpH6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5または7.6)で製剤される。
E. インスリンポリペプチド類
ここに提供されるのは、ヒアルロナン分解酵素およびインスリンの配合剤である。ここに提供する配合剤は、インスリンの自己会合を減らし、六量体のより急速な解離をもたらすために修飾(例えばアミノ酸置換による)された、速効性のインスリン、例えばレギュラーインスリンまたはインスリン類似体(例えばここで同義に使用する速効性の類似体または速効型類似体と呼ぶ)を含む。
インスリンは、5808ダルトン分子量の51アミノ酸残基から成るポリペプチドである。これは膵臓中のランゲルハンスβ細胞島で産生される。典型的なヒトインスリンは、ERに向かう24アミノ酸シグナルペプチドを含有する110アミノ酸前駆体ポリペプチド、プレプロインスリン(配列番号101)として翻訳され、シグナル配列が切断されてプロインスリン(配列番号102)をもたらす。プロインスリン分子は、次に、プロホルモン変換酵素(PC1およびPC2)と呼ばれるタンパク質分解酵素の作用およびエキソプロテアーゼカルボキシペプチダーゼEの作用によって、成熟インスリンに変換される。これにより、4つの塩基性アミノ酸残基と、残っている31アミノ酸のC−ペプチド、すなわち連結鎖(配列番号101に記載するプレプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基57〜87に相当)とが除去される。結果として生じるインスリンは、21アミノ酸のA鎖(配列番号102に記載するプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基66〜86に相当)と、30アミノ酸のB鎖(配列番号102に記載するプロインスリンポリペプチドのアミノ酸残基1〜30に相当)とを含有し、それらがジスルフィド結合で架橋されている。典型的に、成熟インスリンは3つのジスルフィド橋を含有し、1つはA鎖の位置7とB鎖の位置7の間、2つ目はA鎖の位置20とB鎖の位置19の間、そして3つ目はA鎖の位置6と11の間にある。成熟インスリンのA鎖の配列を配列番号103に記載し、B鎖の配列を配列番号104に記載する。
インスリンへの言及は、単鎖型または二鎖型のプレプロインスリン、プロインスリンおよびインスリンポリペプチド、活性を持つその切断型を包含し、対立遺伝子変異型および種変異型、スプライス変異型によってコードされる変異型、ならびに他の変異型、例えばインスリン類似体または他の誘導体型、例えば配列番号101に記載する前駆体ポリペプチドまたはその成熟型に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を持つポリペプチドを、そのインスリンがヒトインスリン受容体に結合して、グルコース取り込みおよびグルコース貯蔵の増加および/または内因性グルコース産生の減少をもたらすシグナリングカスケードを開始させる限りにおいて、包含する。例えば、インスリンには、インスリンの種変異型が包含される。これらには、ウシ由来のインスリン(配列番号133に記載)およびブタ由来のインスリン(配列番号123)が含まれるが、これらに限定されない。ウシインスリンは、A鎖のアミノ酸8および10、ならびにB鎖のアミノ酸30が、ヒトインスリンとは異なる。ブタインスリンはB鎖のアミノ酸30だけがヒトインスリンとは異なり、そこでは、ウシ配列と同じように、スレオニンの代わりにアラニン置換が起こっている。インスリンの他の典型的種変異型を配列番号105〜146のいずれかに記載する。
インスリンの変異型には、配列番号103および104(A鎖およびB鎖)に記載するヒトインスリンと比較して1つ以上のアミノ酸修飾を含有するインスリン類似体も含まれる。これらの変異体は速効性のまたは長時間作用型インスリン類似体(全てここでは速効性のインスリン類似体と呼ぶが、本発明の目的で、速効型および長時間作用型インスリン類似体形態を含む)。典型的なインスリン類似体(A鎖およびB鎖)を、速効型類似体と、それより持効性の類似体を含めて、配列番号147〜165、182〜184に記載する。例えばインスリン類似体には、グルリジン(LysB3、GluB29;配列番号103(A鎖)および配列番号149(B鎖)に記載)、HMR−1 153(LysB3、IleB28;配列番号103(A鎖)および配列番号182(B鎖)に記載)、HMR−1423(GlyA21、HisB31、HisB32;配列番号183(A鎖)および配列番号184(B鎖)に記載)、インスリンアスパルト(AspB28;配列番号103(A鎖)および配列番号147(B鎖)に記載)、およびインスリンリスプロ(LysB28、ProB29;配列番号103(A鎖)および配列番号148(B鎖)に記載)が含まれるが、これらに限定されない。上記のどの例でも、類似体の命名法は、鎖のN末端から数えたインスリンA鎖またはB鎖上の特定位置におけるアミノ酸置換の説明に基づいており、残りの配列は天然ヒトインスリンの配列である。
それ故に、ここに提供される配合剤中のレギュラーインスリンは、配列番号103および104に示すアミノ酸配列を含む成熟インスリンである。レギュラーヒトインスリンの例はHumulin(登録商標)Rと命名された組み換えヒトインスリンである。レギュラーインスリン類はまたA鎖およびB鎖を有する成熟インスリンの種変異体、例えば、配列番号105〜146のいずれかの成熟形態を含む。本発明の配合剤に包含される他のインスリン類似体の例は、配列番号103(A鎖)および配列番号149(B鎖)に示すアミノ酸配列;配列番号103(A鎖)および配列番号147(B鎖)に示すアミノ酸配列;または配列番号103(A鎖)および配列番号148(B鎖)に示すアミノ酸配列を有するインスリンである。
上記インスリンポリペプチドはいずれも、任意の種(例えばヒト)の膵臓によって産生されるものを包含すると共に、合成的にまたは組換え技法を使って生産されるインスリンも包含する。例えば、本明細書のどこか他の項で述べるように、インスリンは、インスリンのA鎖およびB鎖の合成遺伝子を発現させることによって、またはプロインスリン全体を発現させ、それを適当な酵素法および化学法にさらして成熟インスリンを生成させることによって、またはリンカーペプチドで連結されたA鎖およびB鎖を発現させることによって、生合成的に生産することができる(例えばDeFelippis et al. (2002) Insulin Chemistry and Pharmacokinetics. In Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus (pp. 481-500) McGraw-Hill Professional参照)。
インスリンには、単量体型およびオリゴマー型、例えば六量体型も包含される。インスリンは、血漿中を循環する時は単量体として存在することができ、単量体型である時にはその受容体にも結合する。しかしインスリンは二量体に自己会合する傾向を持ち、Zn2+などの金属イオンの存在下では、六量体などの高次構造へと容易に会合することができる。Zn2+に対して2つの対称的高アフィニティ結合部位が存在するが、他の弱い亜鉛結合部位も報告されてはいる(例えばDeFelippis et al. (2002) Insulin Chemistry and Pharmacokinetics. In Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus (pp. 481-500) McGraw-Hill Professional参照)。自己会合は、化学的分解および物理的変性を防止するために、この分子の安定化にとって重要である。したがって、膵β細胞の貯蔵小胞では、インスリンは六量体として存在する。しかし細胞外間隙に放出されると、インスリン六量体はより中性条件へのpH変化を体験することになり、亜鉛イオン含有六量体が希釈されて、それが六量体を不安定にすると考えられている。細胞外間隙におけるインスリン六量体の不安定化に寄与する他の理由も存在し得る。こうしてインスリンは血液中では主として単量体として見いだされる。安定化効果を利用するために、大半の市販インスリン製剤は、六量体への自己会合を促進するのに十分な量の亜鉛イオンを含有している。しかし六量体構造は、皮下投与された時のこれらの製剤の吸収速度を遅くする。
インスリンは血糖管理用の治療薬として糖尿病患者などで使用される。グルコースを管理するために投与されるインスリンが、基礎治療用であるか、食事時治療用であるか、その組合せ用であるかに応じて、種々のタイプの既存インスリン製剤がある。インスリン製剤は、もっぱら速効型製剤として提供するか、もっぱら基礎作用型製剤(すなわち中間型および/または持効型)として提供するか、それらの混合物として提供することができる(例えば表4参照)。典型的に、混合物は速効型インスリンと中間型または持効型インスリンとを含有する。例えば速効型インスリンは、NPHインスリン(後述する典型的中間型インスリン)と、10:90、20:80、30:70、40:60および50:50などといった種々の混合比で組み合わせることができる。そのような混合済み調製物は、食事関連インスリン要求量と基礎インスリン要求量をどちらも単一の製剤で都合よく提供することにより、毎日のインスリン注射の数を減らすことができる。
特定の方法で製剤されたインスリン製剤はインスリンポリペプチドまたはその変異体(すなわち類似体)を含む。ある例において、それは、インスリンに異なる特性、例えば異なる作用時間を付与する製剤中の成分および物質である。例えば、ほとんどのインスリン製剤は、製剤中に金属イオン、例えば亜鉛を含み、それはインスリンを分子自己会合を促進することにより安定化させる。六量体形態への自己会合は、投与によるインスリン吸収を変える。さらに、いくつかの持効型基礎インスリン製剤は(リン酸緩衝液ではなく)酢酸緩衝液から亜鉛の添加によってインスリンを沈殿させることで製造される。亜鉛含有量が高いインスリンの大きな結晶は、収集して酢酸ナトリウム−塩化ナトリウム(pH7.2〜7.5)の溶液中に再懸濁した場合、皮下注射後にゆっくりと吸収され、持続時間の長い作用を発揮する。この結晶調製物は長時間型(extended)インスリン亜鉛懸濁剤(ウルトラレンテインスリン)と呼ばれている。他の亜鉛含有インスリン調製物には、例えばセミレンテインスリン(即時型(prompt)インスリン亜鉛懸濁剤)およびレンテインスリン(インスリン亜鉛懸濁剤)などがあり、これらは主として、使用される亜鉛含量が異なっている。亜鉛含有インスリン調製物には、プロタミンで修飾されたもの、例えばNPHインスリンなども包含される。
もう一つの例では、微結晶懸濁液を生成させるために、プロタミンなどの沈殿剤をインスリンポリペプチドに加えることができる。典型的に、結晶性インスリンは、結晶型では存在しないインスリンと比較して、長時間にわたる作用持続時間を持つ。プロタミン亜鉛インスリンは、水性懸濁液として皮下注射した場合、沈着部位でゆっくりとしか溶解せず、インスリンは遅延した速度で吸収される。プロタミン亜鉛懸濁液インスリンは、大半が、NPHインスリンとも呼ばれるイソフェンインスリン懸濁液で置き換えられている。これは、結晶性の修飾プロタミン亜鉛インスリン懸濁液である。インスリン、プロタミンおよび亜鉛の濃度は、調製物の作用発現および作用持続時間が、レギュラーインスリンとプロタミン亜鉛インスリン懸濁液との中間になるように配分される。
さらにまた、調製物のpHの相違もインスリンのタイプおよび性質に影響を及ぼす。大半のインスリンは中性pHで製剤化される。例外はpH4.0の市販製剤として提供されるインスリングラルギンである。B鎖のC末端に2つのアルギニンが付加されたことにより、グラルギンインスリンの等電点がシフトして、それを酸性pHでより安定なものにしている。酸感受性アスパラギンに起因する脱アミド化および二量体化を防止するために、さらにもう一つのアミノ酸変異が、A鎖中に存在する(N21G)。グラルギンインスリンのA鎖の配列を配列番号150に記載し、B鎖を配列番号151に記載する。投与後は生理的pHへの曝露が起こるので、微小沈殿物(microprecipitate)が形成され、それがグラルギンを結晶性持効型インスリンと類似するものにする。
以下の表4に、種々のタイプのインスリンと、それらの作用発現およびそれらの応用を要約する。
最もよく使用されるインスリンは速効型インスリンであり、これにはレギュラーインスリン(すなわち、天然型(native)または野生型インスリン、その対立遺伝子変異型および種変異型を含む)および速効型インスリン類似体が包含される。ここで使用するインスリンという場合、それは別段の注記が特にない限り、速効型インスリンである。
速効性のインスリン類
ここに提供するインスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の配合剤において使用できる速効性インスリン類は、野生型または天然インスリンであるレギュラーインスリン、および速効性のインスリン類似体を含む。基礎作用型インスリン類と比較した速い吸収速度のために、速効性のインスリン類は、食後コントロール目的で主に使用される。速効性のインスリン類の例を下記表5に示す。速効性のインスリン類は当分野で既知のあらゆるものを含み、例えば、米国特許7,279,457および米国公開番号20070235365、20080039368、20080039365、20070086952、20070244467、および20070191757に開示されたあらゆるインスリン製剤およびデバイスを含むが、これらに限定されない。あらゆる速効性のインスリンを、配合剤においてここに提供されるヒアルロナン分解酵素と組み合わせ得る。このような製剤はまたさらにヒアルロナン分解酵素に加えて、速効性のインスリと中程度または長時間作用型インスリンの混合物を含み得る。
a. レギュラーインスリン
レギュラーインスリン類は天然または野生型インスリンポリペプチドを含む。これらはヒトインスリン、ならびにウシ、ブタおよび他の種由来のインスリン類を含む。レギュラーヒトインスリン類はHumulin(登録商標)R、Novolin(登録商標)RおよびVelosulin(登録商標)として市販されている。ブタインスリンはIletin II(登録商標)として市販された。一般的に、レギュラーインスリンは、単独で皮下投与したとき、作用開始まで30分間かかる。最高血漿レベルは1〜3時間で見られ、作用期間は投与量が増えると伸びる。皮下投与後の血漿半減期は約1.5時間である。
b. 速効性の類似体(速効型インスリン類とも呼ぶ)
速効型インスリン類とも呼ぶ速効型インスリン類似体は、典型的に、1つ以上のアミノ酸変異を含有する改変型インスリンである。類似体は、レギュラーインスリンと比較して吸収速度を増加させ、作用発現を速める目的で、インスリン分子の自己会合が減少するように設計される。一般にそのような類似体は亜鉛の存在下で製剤化されるので、安定な亜鉛六量体として存在する。しかし、その改変ゆえに、これらは皮下投与後にレギュラーインスリンよりも迅速に六量体状態から解離する。
i. インスリンリスプロ
ヒトインスリンリスプロは、B鎖の位置28および29にアミノ酸変異を含有して、配列番号104に記載する野生型インスリンB鎖のこの位置にあるPro−LysがLys−Proに逆位している、インスリンポリペプチド製剤である。インスリンリスプロの配列を配列番号103(A鎖)および配列番号148(B鎖)に記載する。これはHumalog(登録商標)(インスリンリスプロ、rDNA起源)という名称で販売されている。これら2つのアミノ酸の逆位の結果は、自己会合傾向が減少していて、そのことが、より迅速な作用の発現を可能にする、ポリペプチドである。具体的に述べると、B鎖における配列逆位は、2つの疎水相互作用の排除と、二量体を安定化する2つのβプリーツシートの弱化をもたらす(例えばDeFelippis et al. (2002) Insulin Chemistry and Pharmacokinetics. In Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus (pp. 481-500) McGraw-Hill Professional参照)。このポリペプチドは、製剤中に用意される賦形剤、例えば抗微生物剤(例:m−クレゾール)および安定化のための亜鉛の結果として、自己会合し、六量体を形成する。それでもなお、そのアミノ酸改変ゆえに、インスリンリスプロはレギュラーインスリンより迅速に作用する。
ii. インスリンアスパルト
ヒトインスリンアスパルトは、配列番号104に記載するヒトインスリンのB鎖の位置28にプロリンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換を含有するインスリンポリペプチド製剤である。インスリンアスパルトの配列を配列番号103(A鎖)および配列番号147(B鎖)に記載する。これはNovoLog(登録商標)(インスリンアスパルト[rDNA起源]注射)という名称で販売されている。インスリンアスパルトにおける改変は、負に帯電した側鎖カルボキシル基を付与して、電荷斥力を生じさせ、単量体−単量体相互作用を不安定にする。さらに、プロリンの除去により、単量体間の重要な疎水相互作用が排除される(例えばDeFelippis et al. (2002) Insulin Chemistry and Pharmacokinetics. In Ellenberg and Rifkin's Diabetes Mellitus (pp. 481-500) McGraw-Hill Professional参照)。この類似体は大部分が単量体として存在し、リスプロなどの他の速効型類似体と比較して凝集しにくい。一般に、インスリンアスパルトとインスリンリスプロは、各々の薬物動態的性質および薬力学的性質が似ている。
iii. インスリングルリジン
ヒトインスリングルリジンは、配列番号104に記載するヒトインスリンのB鎖の配列と比較して、B鎖の位置B3にアスパラギンからリジンへのアミノ酸置換を含有し、アミノ酸B29にリジンからグルタミン酸へのアミノ酸置換を含有する、インスリンポリペプチド製剤である。インスリングルリジンの配列を配列番号103(A鎖)および配列番号149(B鎖)に記載する。それはApidra(登録商標)の名で市販されている(インスリングルリジン[rDNA起源]注射)。修飾により、ヒトインスリンと比較してポリペプチド分子が自己会合する傾向が低い。他のインスリン類似体と異なり、ポリペプチドは、六量体促進亜鉛非存在下で商業的に製剤される(Becker et al. (2008) Clinical Pharmacokinetics, 47:7-20)。それ故に、インスリングルリジンは、インスリンリスプロおよびインスリンアスパルトより作用発現が速い。
F. インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の安定な配合剤
ここに提供されるのは、インスリン、特にレギュラーインスリンおよび速効型インスリン類似体(速効性のインスリン類似体とも呼ぶ)を含む速効性のインスリン類、およびヒアルロナン分解酵素群、例えば可溶性ヒアルロニダーゼ群(例えばrHuPH20)の安定な配合剤である。ここに提供される製剤の例は、速効型インスリン類似体およびPH20または溶解性および活性であるそのC末端切断型フラグメント(例えばrHuPH20)の安定な配合剤である。ヒアルロナン分解酵素および速効性のインスリンを含む提供される組成物は、種々の温度または種々の条件下で安定なように製剤される。ここに提供される配合剤は、ここに記載するとおり、正確にまたは約0℃〜40℃または種々のストレス条件下(例えば撹拌)で数時間、数日間、数週間、数ヶ月または数年間安定である。それ故に、製剤は多数回投与使用に適当であり、または高温または撹拌が必要である他の使用条件に適当である。例えば、本配合剤は、多数回投与注射(MDI)製剤ならびに連続的皮下注入(CSI)製剤に適する。ここに提供される配合剤は、皮下、腹腔内、皮内、筋肉内、注射および経皮経路用に製剤される。例示的な製剤は皮下投与用に製剤される。
ここに提供される安定な配合剤は、多数回投与製剤である。それ故に、全てのここに提供する製剤は、インスリン(例えば速効性のインスリン、例えば速効型インスリン類似体)、ヒアルロナン分解酵素(例えばPH20)、防腐剤、および1種以上の他の安定化添加物を含む。
ここに記載し、実施例に例示するとおり、ヒアルロナン分解酵素群、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、および速効性のインスリンの安定性に関する対立要求のために、配合剤がこれら2種の製剤の単なる混合で達成できないことが判明した。例えば、正確なNaCl濃度およびpHがインスリンおよびヒアルロナン分解酵素(例えばrHuPH20または他の可溶性ヒアルロニダーゼ群およびヒアルロナン分解酵素群)の配合剤の安定性に必要である。適NaCl濃度およびpHの決定は、インスリンおよび例示的ヒアルロナン分解酵素であるrHuPH20に対してこれらのパラメータが逆に作用するために複雑である。インスリンの溶解性は抗pHおよび低NaCl濃度で最高である。しかしながら、これらの条件は、高pHおよび低NaCl濃度で安定性を失うrHuPH20には有害である。例示的ヒアルロナン分解酵素であるrHuPH20の安定性はNaCl濃度を上げ、pHを下げることにより改善される。しかしながら、このような条件は、低pHおよび高NaCl濃度で沈殿するインスリンおよびインスリン類似体の溶解性に負に影響する。それ故に、ここに提供する目的は、インスリンおよびrHuPH20(または他の可溶性ヒアルロニダーゼ群およびヒアルロナン分解酵素群)の安定な製剤のための最適NaCl濃度およびpHの提供またはNaClを含まないかまたは低NaCl濃度である安定な配合剤の提供である。
ここに記載するとおり、種々の安定な製剤が頻回注射法(MDI)様用に使用でき、または持続皮下インスリン注入療法(CSII)用に使用できる。2種の投与法は安定性に対する要求が異なる。特に、CSII用配合剤は加速(または負荷)条件下、例えば高温および撹拌下で安定であることが必要であるのに対し、使用するまで冷蔵または環境温度で保存できるMDI用配合剤は、高温および撹拌下に安定である必要はない。それ故に、本明細書のあらゆる場所に記載するとおり、これらの各保存条件下で安定性を亢進するための添加物または添加物の濃度は必ずしも同じではない。例えば、正確にまたは約20〜30℃または正確にまたは約2〜8℃のヒアルロナン分解酵素および/またはインスリンの安定性を維持するのに必要なものと別の添加物または安定化剤または異なる濃度の添加物または安定化剤が、約32〜40℃または撹拌下での安定性を維持するために必要である。これらの同じ安定化剤は、低温での製剤の安定性と適合性でないかもしれない。
例えば、本発明により、インスリンは一般的に32℃以下の低温で保存または使用したとき高NaCl濃度および低pH条件下で安定ではないが、このような条件は、32℃〜40℃の高温で少なくとも3日間のインスリンの溶解性の助けとなる。それ故に、高NaClおよび低pHの条件は、高温安定性を必要とする投与治療であるCSIIで使用する配合剤では存在し得る。本明細書により、低pH(例えばpH6.8)および高NaCl(例えば200mM)を含む製剤が高温で安定であり、故にCSII用に少なくとも3日間、37℃で適当であることが判明した。低pH(例えばpH6.8)および高NaCl(例えば200mM)は、低保存温度、例えば冷蔵下または環境温度の安定性には適さない。
また、安定化剤ヒアルロナン(HA)は優れた安定化剤であり、ヒアルロナン分解酵素の安定性を、CSIIにおいて高温で使用するときインスリンの溶解性に悪影響を与えることなく維持する。この場合、ヒアルロナンはヒアルロナン分解酵素の安定性を高温で促進するが、冷蔵温度でのインスリンの溶解性は低下する。それ故に、長期低温保存のためのMDI製剤中のHAの存在は、インスリンの溶解性に影響を与え得る。
本発明により、Lys−Lysは、特に37℃を超える高温で特に良好なヒアルロナン分解酵素の安定化剤であることが判明した。また特に高温でヒアルロナン分解酵素の強い安定化剤であるMgCl2と異なり、Lys−Lysは、溶解性を維持しながらインスリン類と適合性である。例えば、低濃度のLys−Lysおよび1種以上の他の安定化剤の存在は、高温のような加速条件下でヒアルロナン分解酵素活性およびインスリンの溶解性を維持する。それ故に、このようなLys−Lys含有配合剤はまたCSII適用に適する。
安定なMDIまたはCSII製剤用の添加物または添加物の濃度はかならずしも同じではないが、ここに提供するMDI製剤は安定なCSII製剤の製造に使用できる。それ故に、数例において、冷蔵および環境温度であるが、必ずしも高温および負荷下に安定ではないMDI配合剤を、低pHおよび高塩濃度を有する希釈剤で希釈する。これは、MDI製剤と比較して低pHおよび高塩濃度の製剤を生じ、それは、それ故に高温およびストレス条件下(例えば撹拌下)で安定であり、CSIIに適する。典型的に、このようなCSII配合剤は、低pHおよび高塩濃度の組成物中のインスリン不溶性により冷蔵温度で保存されない。
典型的に、化合物は、当分野で周知の技術および方法を使用して医薬組成物に製剤される(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, Fourth Edition, 1985, 126)。薬学的に許容される組成物は、一般的に動物およびヒトでの使用のための認められた薬局方に従い、準備される規制当局または他の当局の承認の観点で製造される。製剤は投与方法に適合させるべきである。
配合剤は、溶液、シロップまたは懸濁液としての液体形態の医薬製剤として提供できる。液体形態で、医薬製剤は使用前に治療的有効濃度に希釈すべき濃縮製剤として提供できる。一般的に、製剤は、使用時に希釈を必要としない投与形態、すなわち直接投与用製剤として提供される。このような液体製剤は、薬学的に許容される添加物、例えば懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化可食脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル類、または分画植物油);および防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸)と共に緩衝手段により製造できる。他の例において、医薬製剤は、使用前に水または他の適当な媒体で再構成するための凍結乾燥形態で提供できる。製剤は単回投与量または多数回投与量製剤として製剤できる。
ここに提供する製剤の容積は、それを入れる容器に適当なあらゆる容積である。数例において、配合剤はバイアル、シリンジ、ペン、ポンプ用保存室または閉鎖ループ系、またはあらゆる他の適切な容器に入れられる。例えば、ここに提供される配合剤は、正確にまたは約0.1mL〜500mL、例えば0.1mL〜100mL、1mL〜100mL、0.1mL〜50mL、例えば少なくともまたは凡そ少なくともまたは約または0.1mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mLまたはそれ以上である。
下記のとおり、数例において、配合剤インスリンおよびヒアルロナン分解酵素群の濃縮製剤として提供され、それは使用時に適当な希釈剤で実質的に希釈される。このような場合、濃縮配合剤は特に例えば、正確にまたは約2℃〜または〜約8℃での長期保存用に製剤される。希釈により、配合剤は直接MDI適用に使用できる。他方で、MDIで使用される多数回投与製剤またはCSII治療に対する要求が異なり得るため、希釈剤の成分を、高温または撹拌下での配合剤適用のための、希釈配合剤の安定性を確実にするよう選択し得る。例えば、上におよびさらに下に記載するとおり、希釈剤は、例えば、CSII治療の特徴的条件である高温またはストレス条件下(例えば撹拌)の配合剤の安定性と適合性である必要量またはレベルの成分または安定化剤を含み得る。それ故に、インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の濃縮配合剤を希釈剤で希釈し、新規希釈配合剤は、例えば、CSII治療での使用のために、例えば、少なくともまたは凡そ少なくとも32℃〜40℃、例えば約または37℃のような高温または他のストレス条件(例えば撹拌)で安定である。
下に、本発明の安定な配合剤に添加される成分を記載する。ここに提供する配合剤に包含されるタンパク質類の安定性を最大化する要求の特定のバランスにより、配合剤の多数回投与注射製剤およびCSII系(例えば閉ポンプ投与)の投与がここで可能となった。成分または条件、例えば添加物、安定化剤またはpHの各々の条件を下に提供する。
1. 安定な配合剤の成分
ここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)を含む安定な配合剤である。配合剤はまた治療有効量の速効性のインスリン、例えば速効型(例えば速効性)インスリン類似体を含む。ここに提供する配合剤の例において、配合剤はさらに正確にまたは約50mM〜200mM、例えば80〜140mMの濃度のNaCl、正確にまたは約6.5〜8.0、例えば、6.5〜7.8または6.8〜7.8、例えば正確にまたは約6.5〜7.5または7.0〜7.6のpH、該pH範囲を維持する緩衝剤、抗微生物有効量の防腐剤または防腐剤の混合物、および保存(温度および時間)中にヒアルロナン分解酵素活性の少なくとも50%を維持し、かつインスリン純度、回収および/または効力の少なくとも90%を維持する。例えば、ここに提供する配合剤は0.01%〜0.5%界面活性剤を安定化剤として含む。配合剤は所望により付加的安定化剤または抗酸化剤を含み得る。本明細書におけるある実施例において、配合剤は、少なくとも6ヶ月間、正確にまたは約2℃〜または〜約8℃の温度でおよび少なくとも14日間(すなわち2週間)正確にまたは約20℃〜または〜約30℃の温度で安定である。このような配合剤は多数回投与注射(MDI)使用に使用できる。他の例において、ここに提供される配合剤、正確にまたはおおよそ32℃を超える、例えば35℃〜40℃、特に正確にまたは約または37℃または40℃の高温のような加速条件下および/または撹拌条件下で少なくとも3時間、および一般的に少なくとも3日間安定である。このような配合剤は持続皮下インスリン注入療法(CSII)方法に使用できる。
またここに提供されるのは、NaClを含まないまたは小量のNaCl、例えば140mM未満のNaCl、および一般的に0mM〜100mMのNaCl、例えば、0mM〜50mM、10mM〜40mM、20mM〜30mM、例えば少なくともまたは凡そ少なくともまたは30mMのNaClを含む配合剤である。このような例において、本明細書において、Lys−Lysは、NaCl非存在下でさえ、ヒアルロナン分解酵素およびインスリンを安定化する量で包含できることが判明した。所望により、NaClは、このような製剤に、例えば、浸透圧修飾剤として包含できる。これは、例えば、Lys−Lysの濃度が50mMのLys−Lys以下である場合、必要である。
それ故に、ここに提供する配合剤の数例において、配合剤は治療有効量のヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)を含む。配合剤はまた治療有効量の速効性のインスリン、例えば速効型(例えば速効性)インスリン類似体を含む。ここに提供する配合剤の例において、配合剤はさらに正確にまたは約50mM〜120mM、例えば50〜80mM、80mM〜100mMまたは100mM〜120mMの濃度のLys−Lysを含み、正確にまたは約6.5〜8.0、例えば、6.5〜7.8または6.8〜7.8、例えば正確にまたは約6.5〜7.5または7.0〜7.6のpHであり、該pH範囲を維持する緩衝剤、抗微生物有効量の防腐剤または防腐剤の混合物を含み、そして保存(温度および時間)中にヒアルロナン分解酵素活性の少なくとも50%を維持し、かつインスリン純度、回収および/または効力の少なくとも90%を維持する。例えば、ここに提供する配合剤は、安定化剤として0.0005%〜1.0%(例えば0.0005%〜0.005%)界面活性剤を含む。配合剤は所望により付加的安定化剤、浸透圧修飾剤、抗酸化剤および/または他の添加物を含み得る。例えば、本配合剤は140mM未満、例えば正確にまたは約0mM〜100mM、例えば正確にまたは約0mM〜50mM、10mM〜40mMまたは20mM〜30mMの濃度のNaClを含む。本明細書におけるある実施例において、配合剤は少なくとも6ヶ月間、正確にまたは約2℃〜または〜約8℃の温度でおよび少なくとも14日間(すなわち2週間)正確にまたは約20℃〜または〜約30℃の温度で安定である。このような配合剤は多数回投与注射(MDI)使用に使用できる。他の例において、ここに提供される配合剤は正確にまたはおおよそ32℃を超える、例えば35℃〜40℃、特に正確にまたは約または37℃または40℃の高温のような加速条件下および/または撹拌条件下で少なくとも3時間、および一般的に少なくとも3日間安定である。このような配合剤は持続皮下インスリン注入療法(CSII)方法に使用できる。
a. 速効性のインスリン
ここに提供する配合剤は、治療有効量の速効性のインスリン、例えば速効型インスリン類似体を含む。インスリンはセクションEに記載するあらゆる速効性のインスリンであり得る。速効性のインスリンはレギュラーインスリンであり得る。具体例において、インスリンは、速効型インスリン類似体、例えば、インスリンリスプロ、インスリンアスパルトまたはインスリングルリジンである速効性のインスリンである。例えば、治療有効量は正確にまたは約10単位/mL〜1000U/mL、100U/mL〜1000U/mL、または500U/mL〜1000U/mL、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも10U/mL、20U/mL、30U/mL、40U/mL、50U/mL、60U/mL、70U/mL、80U/mL、90U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/ml、500U/mLまたは1000U/mLの量であり得る。例えば、ここに提供する配合剤は、速効性のインスリン、例えば速効型インスリン類似体(例えばインスリンリスプロ、インスリンアスパルトまたはインスリングルリジン)を少なくともまたは少なくとも約または正確にまたは約100U/mLの量で含む。
ここで提供される安定な配合剤において、製剤中のインスリン類似体を含むインスリンの安定性は、ここに記載するとおり種々の温度(例えば2℃〜8℃、20℃〜30℃または少なくともまたは約32℃〜40℃の高温)および時間(例えば数時間、数日間、数週間または数ヶ月)または使用条件(例えば撹拌)の保存下のインスリン回収、純度および/または活性の関数である。これらのパラメータを評価するためのアッセイを下に記載する。ここに提供する製剤はインスリン回収、純度および/または活性を、製剤が使用ここに記載するとおり治療使用に適当であるように維持する。例えば、ここに提供する製剤において、ここに記載するとおりの時間および保存または使用条件下のインスリン純度(例えばRP−HPLCまたは他の類似法で測定して)は、保存または使用前の製剤におけるインスリン純度の少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である。一般的に、インスリン純度(例えばRP−HPLCによる)について、目標とする許容される明細は少なくともまたは約90%純度または約または90%を超える純度である。他の例において、インスリン純度は、例えば、非変性または変性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、インスリン凝集の関数として評価できる。このような例において、ここに提供する製剤において、ここに記載するとおりの時間および保存または使用条件下、製剤中のインスリンはピーク面積で2%未満の高分子量(HMWt)インスリン種、例えば、1.9%、1.8%、1.7%、1.6%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1.0%未満またはそれ以下含む。ここに記載するとおりの時間(例えば数時間、数日間、数週間または数ヶ月間)および保存(例えば種々の温度および時間)または使用(例えば撹拌)条件下、ここに提供する製剤においてインスリンは正確にまたは約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上のその回収または活性を保持する。それ故に、100単位/mLのインスリンで製剤された溶液において、少なくともまたは約90U/mL、91U/mL、92U/mL、93U/mL、94U/mL、95U/mL、96U/mL、97U/mL、98U/mLまたは99U/mL が、ここに記載するとおり、2℃〜8℃、20℃〜30℃の温度の保温または使用下、または少なくともまたは約32℃〜40℃の高温または撹拌条件下下、数時間、数日間、数週間または数ヶ月間にわたり残る。
b. ヒアルロナン分解酵素
ここに提供する配合剤は、治療有効量のヒアルロナン分解酵素、例えばセクションCに記載するあらゆるもの、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)を含む。ここに提供する配合剤中のヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の量は、組成物を超速効性とするのに十分な量である。例えば、量は少なくともまたは凡そ少なくとも30単位/mLと機能的等価である。例えば、ここに提供する配合剤は、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)を正確にまたは約30単位/mL〜20,000U/mL、300U/mL〜15,000U/mL、300U/mL〜10,000U/mL、300U/mL〜5,000U/mL、300U/mL〜3000U/mL、300U/mL〜2000U/mL、600U/mL〜20,000U/mL、600U/mL〜15,000U/mL、600U/mL〜10,000U/mL、600U/mL〜6000U/mL、600U/mL〜4000U/mL、600U/mL〜2000U/mL、600U/mL〜1000U/mL、60U/mL〜600U/mL、または100U/mL〜300U/mL、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも30U/mL、35U/mL、40U/mL、50U/mL、100U/mL、200U/mL、300U/mL、400U/mL、500U/mL、600U/mL、700U/mL、800U/mL、900U/mL、1000U/ml、2000U/mL、3000U/mL、4000U/mL、5000U/mL、6000U/mL、7000U/mL、8000U/mL、9000U/mL、10,000U/mL、12,000U/mL、15,000U/mLまたは20,000U/mLの量で含む。例えば、ここに提供する配合剤は少なくとも100U/mL〜1000U/mL、例えば少なくともまたは凡そ少なくともまたは約または600U/mLの量のPH20(例えばrHuPH20)を含む。
ここに提供する配合剤において、製剤中のヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)を含むヒアルロナン分解酵素の安定性は、ここに記載するとおり種々の温度(例えば2℃〜8℃、20℃〜30℃または少なくともまたは約32℃〜40℃の高温)および時間(例えば時間、日間、数週間または数ヶ月)または使用条件(例えば撹拌)での保存下の酵素の回収および/または活性の関数である。これらのパラメータを評価するためのアッセイを下に記載する。ここに提供する製剤は、ヒアルロニダーゼ回収および/または活性を、製剤がここに記載するとおり治療使用に適当であるように保持する。ここで提供される安定な配合剤において、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20の活性は、典型的に保存または使用前の製剤の酵素活性の正確にまたは約50%以上、例えば少なくとも55%、60%、65%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上またはそれ以上である。一般的に、ヒアルロニダーゼ活性について、安定性の目標とする許容される明細は、ここに記載するとおり、2℃〜8℃、20℃〜30℃の温度での保存または使用または少なくともまたは約32℃〜40℃の高温または撹拌条件下、少なくとも酵素初期活性の62%を数時間、数日間、数週間または数ヶ月間維持する。それ故に、例えば、600U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばrHuPH20で製剤した溶液において、少なくともまたは凡そ少なくとも360単位/mL、365U/mL、370U/mL、375U/mL、380U/mL、390U/mL、420U/mL、480U/mL、540U/mL、546U/mL、552U/mL、558U/mL、564U/mL、570U/mL、576U/mL、582U/mL、588U/mL、594U/mL以上の活性が一定時間かつ保存または使用条件下維持される。例えば、ここで提供される安定な配合剤において、一定時間および保存または使用条件(例えば撹拌)下、少なくとも375U/mLのヒアルロナン分解酵素活性が維持される。他の例において、安定性は、例えば、RP−HPLCを使用して、酵素の回収の関数として評価できる。このような例において、ここに提供する製剤において、ヒアルロニダーゼ酵素回収は正確にまたは約60%〜140%である。例えば、ここに提供する製剤において、ヒアルロニダーゼ酵素回収は正確にまたは約3−7μg/mLである。
c. 防腐剤
多数回投与製剤として使用するために、ここに提供する配合剤は防腐剤(複数も可)を含む。上記のとおり、防腐剤はインスリンの溶解性およびヒアルロナン分解酵素群、例えばPH20(例えばrHuPH20)の安定性および活性に有害な影響を有し得るが、同時に六量体インスリン分子を安定化し、多数回投与製剤において抗菌剤として必要である。それ故に、ここに記載する目的の一つは速効型インスリン類似体を含むインスリン、およびヒアルロナン分解酵素群、例えば可溶性ヒアルロニダーゼ群(例えばrHuPH20)の安定な配合剤において使用できる防腐剤の種類および濃度(複数も可)の同定である。
配合剤に存在する1種以上の防腐剤は、ここに記載するとおり保存条件(例えば一定時間および種々の温度で)活性を失うように、実質的にヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)を脱安定化させてはならない。さらに、これらの防腐剤は、インスリン六量体を安定化し、必要な抗菌効果を発揮するのに十分な濃度で存在しなければならないが、インスリンの溶解性を減少させるほど濃くではならない。重要なことに、防腐剤は例えば、米国薬局方(USP)および欧州薬局方(EP)の抗菌要求を提供するために十分な濃度で存在しなければならない。下記実施例7Eにおける表23において、最小EP抗菌要求(EPA)および推奨EP抗菌要求(EPB)を含むこれらの要求を示す。典型的に、EP(EPAまたはEPB)抗菌要求を満たす製剤は、USP抗菌要求のみを満たすように製剤したものより多くの防腐剤を含む。
それ故に、ここに提供する配合剤は、抗菌防腐剤有効性試験(APET)で評価して、組成物サンプル中の微生物を殺すかまたは繁殖を阻止することにより抗菌活性を示す量で防腐剤(複数も可)を含む。最少要求を満たすためのUSPおよびEPAまたはEPB下の満たすべき抗菌防腐剤有効性試験および標準は当業者に周知である。一般に、抗菌防腐剤有効性試験は組成物、例えば、ここに提供する配合剤を、適当な微生物、すなわち、細菌、酵母および真菌の処方接種菌液で攻撃し、接種調整物を処方温度で貯蔵し、サンプルを一定時間間隔で取り、サンプル中の生物を計数することを含む(Sutton and Porter, (2002) PDA Journal of Pharmaceutical Science and Technology 56(6);300-311; The United States Pharmacopeial Convention, Inc., (effective January 1, 2002), The United States Pharmacopeia 25th Revision, Rockville, MD, Chapter <51> Antimicrobial Effectiveness Testing; and European Pharmacopoeia, Chapter 5.1.3, Efficacy of Antimicrobial Preservation参照)。攻撃に使用する微生物は、一般的に3種の細菌株、すなわち大腸菌(ATCC No. 8739)、緑膿菌(ATCC No. 9027)および黄色ブドウ球菌(ATCC No. 6538)、酵母(カンジダ・アルビカンスATCC No. 10231)および真菌(クロコウジカビATCC No. 16404)を含み、その全て接種組成物が105または106コロニー形成単位(cfu)の微生物/mLの組成物を含むように添加する。組成物の防腐剤特性は、試験条件下、下記表6に明記するとおり、処方された時間および温度後に接種組成物中の微生物数が顕著に減少するかまたは増加がないならば、適切であると考えられる。評価基準は初期サンプルまたは前の時点と比較して、生存微生物数のlog減少の点で示される。
具体的に、組成物、例えば、本配合剤を少なくとも5個の容器に分配し、細菌または真菌(大腸菌(ATCC No. 8739)、緑膿菌(ATCC No. 9027)、黄色ブドウ球菌(ATCC No. 6538)、カンジダ・アルビカンス(ATCC No. 10231)およびクロコウジカビ(ATCC No. 16404))1種につき1容器である。次いで各容器に試験生物の1種を接種して、105または106微生物/mLの組成物の接種菌液を得て、接種菌液は組成物容積の1%を超えない。接種組成物を20〜25℃の温度で28日間維持し、サンプルを6時間、24時間、7日間、14日間および28日間に、上記表6に示す基準に従い、取る。各サンプルの生存微生物数(cfu)をプレート数または膜濾過により決定する。最後に、各サンプルのcfuを、接種菌液または先のサンプルと比較し、log減少を決定する。
USP標準下、微生物を接種したサンプルにおける防腐剤の抗菌活性の割合またはレベルは、組成物に微生物接種菌液播種後、播種後7日間で細菌性微生物が少なくとも1.0log10単位減少;播種後14日間で細菌性微生物が少なくとも3.0log10単位減少;少なくとも播種後28日間細菌性微生物のさらなる増殖がない、すなわち、多くて0.5log10単位増加であることを必要とする。USP標準に従う真菌性微生物について、微生物を接種したサンプルにおける防腐剤の抗菌活性の割合またはレベルは、組成物に微生物接種菌液播種後、少なくとも播種後7日間、14日間および28日間真菌性微生物の増殖がないことを必要とする。EPB、または最少EP標準下、微生物を接種したサンプルにおける防腐剤の抗菌活性の割合またはレベルは、組成物に微生物接種菌液播種後、播種後24時間で細菌性微生物が少なくとも1.0log10単位減少;播種後7日間で細菌性微生物が少なくとも3.0log10単位減少;および播種後28日間細菌性微生物のさらなる増殖がない、すなわち、多くて0.5log10単位増加であることを必要とする。EPA標準は、播種後28日間細菌性微生物の回収がないように、播種後7日間で真菌性微生物が少なくとも2.0log10単位減少と、播種24時間後細菌性微生物が少なくとも3.0log10単位減少、および播種後28日間細菌性微生物の回収がないことを必要とする。最少EPB標準に従う真菌性微生物について、微生物を接種したサンプルにおける防腐剤の抗菌活性の割合またはレベルは、播種後14日間で真菌性微生物が少なくとも1.0log10単位減少および少なくとも播種後28日間真菌性微生物のさらなる増殖がないことを必要とする、および増加EPA標準は、組成物に微生物接種菌液播種後播種後7日間で真菌性微生物が少なくとも2.0log10単位減少および少なくとも播種28日間真菌性微生物のさらなる増殖がないことを必要とする。
ここに提供する配合剤に包含できる防腐剤の非限定的例は、フェノール、メタ−クレゾール(m−クレゾール)、メチルパラベン、ベンジルアルコール、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、4−クロロ−1−ブタノール、クロルヘキシジン二塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジン、L−フェニルアラニン、EDTA、ブロノポール(2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール)、酢酸フェニル水銀、グリセロール(グリセリン)、イミド尿素、クロルヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、オルト−クレゾール(o−クレゾール)、パラ−クレゾール(p−クレゾール)、クロロクレゾール、セトリミド、塩化ベンゼトニウム、エチルパラベン、プロピルパラベンまたはブチルパラベンおよびこれらのあらゆる組み合わせを含むが、これらに限定されない。例えば、ここに提供する配合剤は1種の防腐剤を含み得る。他の例において、配合剤は少なくとも2種の防腐剤または少なくとも3種の防腐剤を含み得る。例えば、ここに提供する配合剤はL−フェニルアラニンおよびm−クレゾール、L−フェニルアラニンおよびメチルパラベン、L−フェニルアラニンおよびフェノール、m−クレゾールおよびメチルパラベン、フェノールおよびメチルパラベン、m−クレゾールおよびフェノールまたは他の類似の組み合わせのような2種の防腐剤を含み得る。一例において、配合剤中の防腐剤は少なくとも1種のフェノール防腐剤を含む。例えば、本配合剤はフェノール、m−クレゾールまたはフェノールおよびm−クレゾールを含む。
ここに提供する配合剤において、製剤中の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)としての1種以上の防腐剤の総量は、例えば、正確にまたは約0.1%〜0.4%、例えば0.1%〜0.3%、0.15%〜0.325%、0.15%〜0.25%、0.1%〜0.2%、0.2%〜0.3%、または0.3%〜0.4%であり得る。一般的に、配合剤は0.4%(w/v)未満の防腐剤を含む。例えば、ここに提供する配合剤は少なくともまたは凡そ少なくとも0.1%、0.12%、0.125%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.175%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.325%、0.35%であるが、0.4%未満の総防腐剤を含む。
インスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の安定な配合剤において使用される防腐剤の例はフェノールおよびm−クレゾールである。数例において、配合剤中のフェノールの重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)は、m−クレゾールの重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)を超える。これは、少なくとも一部、フェノールと比較して、特に高温で、溶液でm−クレゾールがヒアルロナン分解酵素(例えばrHuPH20) の安定性により悪影響を有するためである(例えば実施例7参照)。それ故に、ここに提供する配合剤において、フェノール:メタ−クレゾールの重量濃度のパーセンテージとしての比率は正確にまたは約1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、2.6:1、2.7:1、2.8:1、2.9:1、3:1またはそれ以上である。
数例において、ここで提供される安定な配合剤は正確にまたは約0.1%〜0.25%フェノール、および正確にまたは約0.05%〜0.2%m−クレゾール、例えば正確にまたは約0.10%〜0.2%フェノールおよび正確にまたは約0.06%〜0.18%m−クレゾールまたは正確にまたは約0.1%〜0.15%フェノールおよび正確にまたは約0.08%〜0.15%m−クレゾールを含む。例えば、ここで提供される安定な配合剤は、正確にまたは約0.1%フェノールおよび0.075%m−クレゾール;0.1%フェノールおよび0.15%m−クレゾール;0.125%フェノールおよび0.075%m−クレゾール;0.13%フェノールおよび0.075%m−クレゾール;0.13%フェノールおよび0.08%m−クレゾール;0.15%フェノールおよび0.175%m−クレゾール;または0.17%フェノールおよび0.13%m−クレゾールを含む。
d. NaCl
ここで提供されるインスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の安定な配合剤は安定化剤としてNaClを含み得る。安定化剤としてNaClを含むここに提供する配合剤において、配合剤のNaCl濃度は正確にまたは約50mM〜200mM、例えば正確にまたは約80mM〜140mM、80mM〜120mM、80mM〜100mM、100mM〜140mMまたは120mM〜140mMであり得る。例えば、ここに提供されるのは、約または少なくともまたは50mM、60mM、70mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mMまたは200mMのNaClを含むインスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤である。
加えて、本発明により、インスリン類は、一般的に高NaCl濃度および低pH条件で十分溶解性ではないが、そこでヒアルロナン分解酵素活性は最適であり、インスリンの溶解性は高温の加速条件下でNaClにほとんど影響されないことが判明した。それ故に、加速条件(例えば高温または撹拌)下、例えばCSII治療で使用されるものの下で安定な配合剤は、典型的に32℃未満の温度で安定である製剤より高NaCl濃度である。
ここに提供する配合剤において、配合剤の特定のpHがNaCl濃度の関数であり、その逆も真であることもまた理解されるべきである。例えば、pH正確にまたは約7.2、例えば7.2±0.2または以下の配合剤において、配合剤は、一般的に正確にまたは約100mM〜140mMの塩濃度を有する。pH正確にまたは約7.3、例えば7.3±0.2またはそれ以上の配合剤において、配合剤は、一般的に正確にまたは約50〜100mMのNaClの塩濃度を有する。
また、本明細書における実施例に示すとおり、インスリンおよびインスリン類似体は各々種々の溶解性要求を融資、それは、製剤中のNaClおよびpHのレベルに影響される。一般的に、インスリンおよびインスリンの溶解性は高pHおよび低塩高NaCl濃度を好む。例えば、レギュラーインスリンは、80mMを超えるおよび低pH7.0で1週間以内に沈殿を形成する。しかし、レギュラーインスリンは、NaCl濃度の80mM以下および高pH7.6で15ヶ月間を超える試験したあらゆる期間で沈殿を形成しない。同様に、インスリン類似体リスプロおよびアスパルトも溶解性に対する塩−およびpH−依存的を有し、沈殿は、一般的に80mMを超える塩濃度および7.2または7.0の低pHで形成される。対照的に、80mM以下の低塩濃度および7.4または7.6の高pHで、インスリン類は大きな安定性を示し、一定時間でほとんど沈殿せず、または全く沈殿しない。インスリングルリジンは最も溶解性である。それ故に、最低の溶解性インスリン類は最も溶解性のインスリン類と比較して、塩にほとんど許容性ではない。それ故に、種々のインスリン類の見かけの溶解性の差異のため、ここに提供する製剤の塩濃度は、インスリンの溶解性が直接塩の許容性と関連するために、製剤中のインスリンの種類に依存し得る。
本明細書の記載の点から、ここに記載するインスリンおよびヒアルロナン分解酵素群の溶解性および安定性を経験的にNaCl濃度、特定のインスリンおよび特定の製剤の必要な安定性パラメータの関数として評価することは当業者のレベルの範囲内である。
e. pH
ここに提供されるのは、正確にまたは約6.5〜8.0、例えば、6.5〜7.8または6.8〜7.8、例えば正確にまたは約6.5〜7.5または7.0〜7.6のpHを有するインスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の安定な配合剤である。本明細書でのpHについての言及は、室温でのpH測定に基づく。pHは保存中時間的に変わり得るが、典型的に正確にまたは約pH6.5〜8.0、例えば正確にまたは約6.8〜または〜約7.8のままであることは理解される。例えば、pHは±0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.3、1.4、1.5またはそれ以上で変わり得る。それ故に、約または少なくともpH7.0、7.1、7.2、7.3、7.4または7.6のpHである配合剤への言及は、調製時約または少なくとも7.0±0.2、7.1±0.2、7.2±0.2、7.3±0.2、7.4±0.2、7.5±0.2または7.6±0.2のpHofを有する配合剤を含む。
塩およびpHの両者とも、インスリンの溶解性およびヒアルロナン分解酵素活性に影響を与える相反するパラメータであるため、配合剤におけるそれらの導入は従ってバランスを取らなければならない。それ故に、例えば、一般的に、ここに提供する製剤において、塩濃度を下げ、pHを上げる。ここに提供する配合剤の他の例において、塩濃度を上げ、pHを下げる。ここに記載するとおり所望の安定性を達成し、かつヒアルロナン分解酵素活性およびインスリンの溶解性を保持するように0におけるpHおよび塩要求を経験的に試験することは当業者のレベルの範囲内である。例えば、最適pHおよび塩要求は、当業者に知られ、かつ本明細書に例示する製剤技術により達成できる。例えば、最適pHおよび塩濃度は、ヒアルロナン分解酵素の活性または回収およびインスリンの溶解性、凝集または回収を、例えば、セクションH.2に記載のとおり、当業者に知られる種々の方法を使用する種々のpHまたは塩条件下に評価することにより決定できる。
例えば、本明細書の他の場所に記載するとおり、本発明により、インスリン類は、一般的に高塩濃度および低pH条件で十分溶解性ではないが、そこでヒアルロナン分解酵素活性は最適であり、インスリンの溶解性は高温の加速条件下、低pH条件にほとんど影響されないことが判明した。それ故に、加速条件(例えば高温または撹拌)下、例えばCSII治療で使用されるものの下安定な配合剤は、典型的に、32℃未満の温度で安定である製剤より低pHである。
必要であれば、pHを、pHを下げるための酸性化剤またはpHを上げるためのアルカリ化剤を使用して調製できる。酸性化剤の例は、酢酸、クエン酸、硫酸、塩酸、リン酸二水素ナトリウム溶液、およびリン酸を含むが、これらに限定されない。アルカリ化剤の例は、リン酸水素ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム、または水酸化ナトリウムを含むが、これらに限定されない。
f. 緩衝剤
あらゆる緩衝剤を、配合剤の安定性に不利に影響せず、必要pH範囲要求を支持する限り、ここに提供する配合剤において使用できる。特に適当な緩衝剤の例は、Tris、コハク酸、酢酸、リン酸緩衝液、クエン酸、アコニテート、マレートおよびカーボネートを含む。しかしながら、当業者は、ここに提供される製剤は、緩衝剤が許容される程度のpH安定性、または示す範囲の“緩衝能”を提供する限り、特定の緩衝剤に限定されないことを認識する。一般的に、緩衝剤は、そのpKの約1pH単位以内で適切な緩衝能を有する(Lachman et al. 1986)。緩衝剤適合性は、公開されているpK集計により推定でき、または当分野で周知の方法により経験的に決定できる。溶液のpHは、例えば、あらゆる許容される酸または塩基を使用して、上記範囲内の所望のエンドポイントに調節できる。
ここに提供する配合剤において包含できる緩衝剤は、Tris(トロメタミン)、ヒスチジン、リン酸緩衝液、例えばリン酸水素ナトリウム、およびクエン酸緩衝剤を含むが、これらに限定されない。一般的に、緩衝剤は、配合剤のpH範囲を正確にまたは約6.5〜8.0、例えば正確にまたは約6.8〜7.8、例えば正確にまたは約7.0〜7.6に維持する量で存在する。このような緩衝剤は、配合剤中に正確にまたは約1mM〜100mM、例えば10mM〜50mMまたは20mM〜40mM、例えば正確にまたは約30mMで存在できる。例えば、このような緩衝剤は配合剤中に正確にまたは約または少なくとも1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、またはそれ以上の濃度で存在できる。
本発明の配合剤中の緩衝剤の例は、金属結合性緩衝剤、例えばリン酸緩衝液と比較して、インスリン沈殿を減少させるTrisのような非金属結合性緩衝剤である。ここに提供する配合剤における緩衝剤としてのTrisの包含は、付加的利益を有する。例えば、Trisで緩衝化した溶液pHは、溶液を維持する温度に影響される。それ故に、インスリンおよびヒアルロナン分解酵素配合剤を室温でpH7.3で調製したとき、冷蔵により、pHは約pH7.6まで上がる。このようなpHは、インスリンがそうでなければ不溶性である可能性のある温度でインスリンの溶解性を促進する。逆に、高温で、製剤のpHは約pH7.1まで下がり得て、それはヒアルロナン分解酵素がそうでなければ不安定となる可能性のある温度で酵素の安定性を促進する。それ故に、インスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の溶解性および安定性は、他の緩衝剤と比較して、配合剤が緩衝剤としてのTrisを含むとき最大である。さらに、Trisが陽イオンであるため、カウンターイオンとしてのNaClの溶液への添加は不要である。これは、高濃度のNaClが〜インスリンの溶解性に有害であるため、配合剤の全体的安定性にも有利である。
例えば、Trisは、ここに提供する配合剤において正確にまたは約10mM〜50mM、例えば、例えば、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mMまたは50mMの濃度で含まれる。具体例において、配合剤は正確にまたは約20mM〜30mMのTris、例えば21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mMまたは30mMのTrisを含む。具体例において、ここに提供する配合剤はTrisを正確にまたは約30mMの濃度で含む。
g. Lys−Lys
本明細書における例において、配合剤は、本配合剤中のヒアルロナン分解酵素を安定化するのに十分量の二価カチオン、および特にリシル−リシン(ジリシン;Lys−Lys)、またはその塩、誘導体、類似体または模倣体を含む。例えば、二価カチオンLys−Lysは、MgCl2よりもインスリンの溶解性に対する影響が少ない。Lys−Lysは、上記のとおり、防腐剤、および他の安定化剤と、適当なpHで組み合わせたとき、上記のとおりヒアルロナン分解活性が効果を維持し、インスリンの溶解性に対する影響が最少であるような安定な配合剤を生じる量で存在する。
例えば、Lys−Lysは、ここに提供する配合剤に正確にまたは約50mM〜120mM、例えば正確にまたは約50〜80mM、80〜100mMまたは100〜120mMの量で包含され得る。例えば、Lys−Lysは、ここに提供する配合剤において少なくともまたは少なくとも約または正確に50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mMまたは120mMの量で包含され得る。
典型的に、Lys−Lysの濃度が高いほど、PH20およびインスリンまたはインスリン類似体を含む配合剤の安定性は良好である。しかしながら、製剤中の特定の量のLys−Lysは特定のインスリンの関数であり得る。例えば、配合剤において類似の安定性を達成するために、インスリン類似体グルリジンは最少量のLys−Lys(例えば50〜105mM)を必要とし、続いてインスリン類似体アスパルトおよびリスプロ(例えば80〜100mM)であり、レギュラーインスリンは最高量(例えば100〜120mM)を必要とする。Lys−Lys濃度、特定のインスリンおよび特定の製剤の必要な安定性パラメータの関数として、ここに記載するインスリンおよびヒアルロナン分解酵素群の溶解性および安定性を経験的に評価することは、当業者のレベルの範囲内である。
一例において、レギュラーインスリンを含む配合剤は、一般的に100〜120mMのLys−Lys、例えば少なくともまたは凡そ少なくともまたは100mM、105mM、110mM、115mMまたは120mMを含む。他の例において、インスリンアスパルトまたはインスリンリスプロを含む配合剤は、80〜120mMのLys−Lys、例えば少なくともまたは凡そ少なくともまたは80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mMを含む。さらなる例において、インスリングルリジンを含む配合剤は、50〜105mMのLys−Lys、例えば少なくともまたは凡そ少なくともまたは50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mMまたは105mMを含む。
典型的に、配合剤がLys−Lysを含む例において、成分の安定性を維持するための安定化剤としてのNaClの添加は必要ではない。数例において、浸透圧修飾剤が張性の理由のために必要である。例えば、配合剤中のLys−Lysの量が50mM未満/mLであり、浸透圧修飾剤が必要であり得る。浸透圧修飾剤を配合剤に包含するか否かの決定は当業者のレベルの範囲内である。下記のとおり、浸透圧修飾剤の例は、グリセリン、NaCl、アミノ酸類、ポリアルコール類、トレハロース、および他の塩類および/または糖類を含むが、これらに限定されない。それ故に、数例において、Lys−Lysを含むここで提供される安定な配合剤は、所望によりNaClも含み得る。このような例において、NaClは一般的に140mM未満、および典型的に100mM未満、90mM、80mM、70mM、50mM、40mM、30mM、20mM、10mM以下である。浸透圧修飾剤の特定の量は、酵素活性および/または張性を維持するために経験的に決定できる。
h. 付加的な添加物または安定化剤の例
ここに提供する配合剤は、所望により、上記のとおり防腐剤と、塩および安定化剤と適当なpHで組み合わせたとき、安定な配合剤を生じる他の成分を含み得る。他の成分は、例えば、1種以上の浸透圧修飾剤、1種以上の抗酸化剤、亜鉛または他の安定化剤を含む。
例えば、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の安定性は、配合剤が低NaCl、高pHであり、防腐剤を含み、高温(例えば20℃〜30℃以上)で保存するとき、大きく低下する。同様に、インスリン安定性はまたこれらおよび他のパラメータに影響を受け得る。このような不安定性は、1種以上の安定化剤の添加によりある程度解消できる。一般的に、ここに提供する製剤は、1種または複数種の安定化剤を、保存(温度および時間)中、少なくとも50%の初期活性(例えば375U/mL)のヒアルロナン分解酵素活性が維持される濃度で存在する。
ここに提供される製剤に包含できる安定化剤の種類に包含されるのは、アミノ酸類、アミノ酸誘導体、アミン類、糖類、ポリオール類、塩類および緩衝剤、界面活性剤、および他の薬剤である。ここに提供する配合剤は少なくとも1種の安定化剤を含む。例えば、ここに提供する配合剤は少なくとも1種、2種、3種、4種、5種、6種以上の安定化剤を含む。それ故に、アミノ酸類、アミノ酸誘導体、アミン類、糖類、ポリオール類、塩類および緩衝剤、界面活性剤、および他の薬剤の任意の1種以上を本発明の配合剤に包含できる。一般的に、本発明の配合剤は、少なくとも界面活性剤および適当な緩衝剤を含む。所望により、ここに提供する配合剤は他の付加的安定化剤を含み得る。
アミノ酸安定化剤、アミノ酸誘導体またはアミン類の例は、L−アルギニン、グルタミン、グリシン、リシン、メチオニン、プロリン、Lys−Lys、Gly−Gly、トリメチルアミンオキシド(TMAO)またはベタインを含むが、これらに限定されない。糖類およびポリオール類の例は、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、スクロースまたはトレハロースを含むが、これらに限定されない。塩類および緩衝剤の例は、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、Tris、例えばTris(100mM)、または安息香酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。界面活性剤の例は、ポロクサマー188(例えばPLURONIC(登録商標)F68)、ポリソルベート80(PS80)、ポリソルベート20(PS20)を含むが、これらに限定されない。他の防腐剤は、ヒアルロン酸(HA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、フェニル酪酸、タウロコール酸、ポリビニルピロリドン(PVP)または亜鉛を含むが、これらに限定されない。
i. 界面活性剤
数例において、ここに提供する配合剤は1種以上の界面活性剤を含む。このような界面活性剤はヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の凝集を阻害し、吸着損失を最小化する。界面活性剤は、一般的に非イオン性界面活性剤である。本発明の配合剤に包含できる界面活性剤は、多価アルコール類、例えばグリセロール、またはソルビトールの部分的および脂肪酸エステル類およびエーテル類、ポロクサマー類およびポリソルベート類を含む。例えば、本発明の配合剤中の界面活性剤の例は、ポロクサマー188(PLURONICS(登録商標)、例えばPLURONIC(登録商標)F68)、TETRONICS(登録商標)、ポリソルベート20、ポリソルベート80、PEG400、PEG3000、Tween(登録商標)(例えばTween(登録商標)20またはTween(登録商標)80)、Triton(登録商標)X-100、SPAN(登録商標)、MYRJ(登録商標)、BRIJ(登録商標)、CREMOPHOR(登録商標)、ポリプロピレングリコール類またはポリエチレングリコール類のあらゆる1種類以上を含む。数例において、本発明の配合剤はポロクサマー188、ポリソルベート20、ポリソルベート80、一般的にポロクサマー188(PLURONIC F68)を含む。ここに提供する配合剤は、一般的に少なくとも1種の界面活性剤、例えば1種、2種または3種の界面活性剤を含む。
ここに提供する配合剤において、製剤中の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)としての1種以上の界面活性剤の総量は、例えば、正確にまたは約0.0005%〜1.0%、例えば正確にまたは約0.0005%〜0.005%、0.001%〜0.01%、0.01%〜0.5%、例えば0.01%〜0.1%または0.01%〜0.02%であり得る。一般的に、配合剤は少なくとも0.0005%、0.005%、0.05%または0.01%界面活性剤を含み、1.0%未満、例えば0.5%未満または0.1%未満界面活性剤を含む。例えば、ここに提供する配合剤は正確にまたは約0.0005%、0.0001%、0.005%、0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.08%、または0.09%界面活性剤を含み得る。具体例において、ここに提供する配合剤は正確にまたは約0.01%〜または〜約0.05%界面活性剤を含み得る。
本明細書の実施例に示すとおり、安定性および酵素ヒアルロナン分解酵素活性(例えばrHuPH20)は、一般的に種々の界面活性剤または界面活性剤濃度に影響されない。それにもかかわらず、本発明で、酵素の酸化が界面活性剤のレベルが上がるにつれて上がることが判明した。また、界面活性剤ポロクサマー188は、ポリソルベート類より少ない酸を生じる。それ故に、本発明の配合剤は、一般的にポロクサマー188を含む。それ故に、界面活性剤がヒアルロナン分解酵素を安定化させるが、ここに提供する配合剤における界面活性剤の包含は、高濃度でヒアルロナン分解酵素の酸化をもたらし得る。それ故に、一般的に低濃度の界面活性剤を本発明の配合剤で使用し、例えば、1.0%未満および一般的に正確にまたは約0.0005%〜0.1%、例えば正確にまたは約0.01%または0.05%の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)である。また、下記のとおり、所望により、酸化防止剤を製剤に包含し、酸化を減少または阻止できる。
ここに提供する配合剤の例は、ポロクサマー188を含む。ポロクサマー188は高臨界ミセル濃度(cmc)を有する。それ故に、ポロクサマー188の使用は、防腐剤の有効性を低下させ得る、製剤中のミセル形成を減少できる。それ故に、ここに提供される配合剤の中で、正確にまたは約0.01%または0.05%ポロクサマー188を含む。
他の例において、ここに提供する配合剤の例はポリソルベート20を含む。例えば、ここに提供する配合剤は0.0005%〜0.1%、例えば0.0005%〜0.01%、例えば少なくともまたは凡そ少なくともまたは0.001%ポリソルベート20を含む。
ii. 浸透圧修飾剤
例えば、浸透圧修飾剤は、ここに提供する製剤において所望のモル浸透圧濃度の溶液を提供するために包含され得る。ここに提供する配合剤は正確にまたは約245mOsm/kg〜305mOsm/kgのモル浸透圧濃度を有する。例えば、モル浸透圧濃度は正確にまたは約245mOsm/kg、250mOsm/kg、255mOsm/kg、260mOsm/kg、265mOsm/kg、270mOsm/kg、275mOsm/kg、280mOsm/kg、285mOsm/kg、290mOsm/kg、295mOsm/kg、300mOsm/kgまたは305mOsm/kgである。数例において、インスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の配合剤は正確にまたは約275mOsm/kgのモル浸透圧濃度を有する。
浸透圧修飾剤は、グリセリン、NaCl、アミノ酸類、ポリアルコール類、トレハロース、および他の塩類および/または糖類を含むが、これらに限定されない。例えば、NaClは、ここに提供する配合剤において正確にまたは約0mM〜200mM、例えば一般的に30mM〜100mM、50mM〜160mM、例えば50mM〜120mMまたは80mM〜140mM、または50mM〜200mMの濃度で包含され得る。典型的に、例えばLys−Lysを含む配合剤において、浸透圧修飾剤として包含されるとき、NaClは140mM未満、および一般的に130mM未満、120mM、110mM、100mM、90mM、80mM、70mM、60mM、50mM、40mM、30mM、20mM、10mM以下の濃度で包含される。特定の量は、酵素活性、インスリンの溶解性および/または張性を保持するために経験的に決定できる。
iii. グリセリン
他の例において、グリセリン(グリセロール)は配合剤に包含される。例えば、ここに提供する配合剤は、典型的に60mM未満 グリセリン、例えば55mM未満、50mM未満、45mM未満、40mM未満、35mM未満、30mM未満、25mM未満、20mM未満、15mM未満、10mM以下を含む。グリセリン量は、典型的に存在するNaCl量による。配合剤に存在するNaClが多いほど、所望のモル浸透圧濃度の達成に必要なグリセリンは少ない。それ故に、例えば、高NaCl濃度を含む配合剤において、例えば高い見かけの溶解性を有するインスリン類(例えばインスリングルリジン)で製剤されたものにおいて、製剤に包含するのに必要なグリセリンはわずかであるか、必要ない。対照的に、わずかに低NaCl濃度を含む配合剤において、例えば低い見かけの溶解性を有するインスリン類(例えばインスリンアスパルト)で製剤されたものにおいて、グリセリンは包含され得る。例えば、インスリンアスパルトを含むここに提供する配合剤は、グリセリンを50mM未満、例えば20mM〜50mM、例えば正確にまたは約50mMの濃度で含む。さらに低いNaCl濃度を含む配合剤において、例えばさらに低い見かけの溶解性を有するインスリン類(例えばインスリンリスプロまたはレギュラーインスリン)で製剤されたものにおいて、グリセリンは正確にまたは約、例えば40mM〜60mMの濃度で包含され得る。
iv. 抗酸化剤
ここに提供する配合剤はまた酸化、特にヒアルロナン分解酵素の酸化を減少または阻止するために抗酸化剤も含み得る。例えば、本明細書の実施例は、酸化が高濃度の界面活性剤またはヒアルロナンオリゴマー類で起こり得ることを示す。抗酸化剤の例は、システイン、トリプトファンおよびメチオニンを含むが、これらに限定されない。具体例において、抗酸化剤はメチオニンである。インスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)を含むここに提供する配合剤は、抗酸化剤を正確にまたは約5mM〜または〜約50mM、例えば5mM〜40mM、5mM〜20mMまたは10mM〜20mMの濃度で含み得る。例えば、メチオニンは、本発明の配合剤に正確にまたは約5mM〜または〜約50mM、例えば5mM〜40mM、5mM〜20mMまたは10mM〜20mMの濃度で存在できる。例えば、抗酸化剤、例えばメチオニン、は、正確にまたは約5mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mM、30mM、35mM、40mM、45mMまたは50mMの濃度で存在できる。数例において、配合剤は10mM〜20mMのメチオニン、例えば正確にまたは約10mMまたは20mMのメチオニンを含む。
v. 亜鉛
ある例において、亜鉛は、配合剤にインスリン六量体の安定化剤として包含される。例えば、レギュラーインスリン、インスリンリスプロまたはインスリンアスパルトを含む製剤は典型的に亜鉛を含み、一方インスリングルリジンを含む製剤は亜鉛を含まない。亜鉛は、例えば、酸化亜鉛、酢酸亜鉛または塩化亜鉛として提供され得る。亜鉛は、ここに提供する組成物において、正確にまたは約0.001〜0.1mg/インスリン100単位(mg/100U)、0.001〜0.05mg/100Uまたは0.01〜05mg/100Uで存在し得る。例えば、ここに提供する配合剤は、亜鉛を正確にまたは約0.002mg/インスリン100単位(mg/100U)、0.005mg/100U、0.01mg/100U、0.012mg/100U、0.014mg/100U、0.016mg/100U、0.017mg/100U、0.018mg/100U、0.02mg/100U、0.022mg/100U、0.024mg/100U、0.026mg/100U、0.028mg/100U、0.03mg/100U、0.04mg/100U、0.05mg/100U、0.06mg/100U、0.07mg/100U、0.08mg/100Uまたは0.1mg/100U含み得る。
vi. アミノ酸安定化剤
ここに提供する配合剤はまた、製剤安定性に寄与するアミノ酸安定化剤も含み得る。安定化剤は非極性および塩基性アミノ酸であり得る。非極性および塩基性アミノ酸類の例は、アラニン、ヒスチジン、アルギニン、リシン、オルニチン、イソロイシン、バリン、メチオニン、グリシンおよびプロリンを含むが、これらに限定されない。例えば、アミノ酸安定化剤はグリシンまたはプロリン、典型的にグリシンである。安定化剤は1種のアミノ酸であってよく、または2種以上のこのようなアミノ酸類の組み合わせであり得る。アミノ酸安定化剤は天然アミノ酸類、アミノ酸類似体、修飾アミノ酸類またはアミノ酸等価体であり得る。一般的に、アミノ酸はL−アミノ酸である。例えば、プロリンを安定化剤として使用するとき、一般的にL−プロリンである。アミノ酸等価体、例えば、プロリン類似体を使用することも可能である。配合剤に包含されるアミノ酸安定化剤、例えばグリシンの濃度は、0.1M〜1Mアミノ酸、典型的に0.1M〜0.75M、一般的に0.2M〜0.5M、例えば、少なくとも正確にまたは約0.1M、0.15M、0.2M、0.25M、0.3M、0.35M、0.4M、0.45M、0.5M、0.6M、0.7M、0.75Mまたはそれ以上の範囲である。アミノ酸、例えばグリシンは薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの形で使用できる。アミノ酸、例えばグリシンの純度は少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%またはそれ以上でなければならない。
vii. ヒアルロニダーゼ阻害剤
ここに提供する配合剤の数例において、上記のとおりヒアルロナン分解酵素および速効性のインスリンの安定性正確にまたは約20℃〜または〜約30℃の温度で少なくとも14日間(すなわち2週間の安定性は、ヒアルロニダーゼ阻害剤の包含により上昇させ得る。このような阻害剤は、一般的に、ここで使用するヒアルロナン(HA)で観察されるとおり、低温でインスリン凝集体をもたらし得るために、2℃〜8℃で保存する製剤には不適である。数例において、ヒアルロニダーゼ阻害剤を、2℃〜8℃での使用に適切なように選択できる。
特に、ヒアルロニダーゼ阻害剤は、配合剤にフェノール防腐剤の影響に対してヒアルロナン分解酵素を安定化するために包含される。具体例において、ヒアルロニダーゼ阻害剤は、インスリンまたはヒアルロナン分解酵素と、結合性および非共有結合性方法で反応し、インスリンまたはヒアルロナン分解酵素と共有結合複合体を形成しないものである。ヒアルロニダーゼ阻害剤は、少なくともその平衡濃度で存在する。当業者は、種々のクラスのヒアルロニダーゼ阻害剤をよく知っている(例えばGirish et al. (2009) Current Medicinal Chemistry, 16:2261-2288、およびその中の引用文献参照)。当業者は、反応または本発明の安定な組成物におけるヒアルロニダーゼ阻害剤の平衡濃度を知っているか、または当分野の標準方法により決定できる。ヒアルロニダーゼ阻害剤の選択は、組成物で使用される特定のヒアルロナン分解酵素による。例えば、ヒアルロナンは、ヒアルロナン分解酵素がPH20であるとき、本発明の安定な組成物で使用される例示的ヒアルロニダーゼ阻害剤である。
本発明で安定化剤として使用されるヒアルロニダーゼ阻害剤の例は、タンパク質、グリコサミノグリカン(GAG)、多糖類、脂肪酸、ラノスタノイド類、抗生物質、抗線虫剤、合成有機化合物または植物由来生理活性成分を含むが、これらに限定されない。例えば、ヒアルロニダーゼ植物由来生理活性成分はアルカノイド、抗酸化剤、ポリフェノール、フラボノイド類、テルペノイド類および抗炎症剤であり得る。ヒアルロニダーゼ阻害剤の例は、例えば、血清ヒアルロニダーゼ阻害剤、アシュワガンダ(Withania somnifera)糖タンパク質(WSG)、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、キトサン類、β−(1,4)−ガラクト−オリゴ糖類、硫酸化ベルバスコース、硫酸化プランテオース、ペクチン、ポリ(スチレン−4−スルホネート)、デキストラン硫酸、アルギン酸ナトリウム、ワカメ(Undaria pinnatifida)由来の多糖、マンデル酸縮合重合体、エイコサトリエン酸、ネルボン酸、オレアノール酸、アリストロキン酸、アジマリン、レセルピン、フラボン、デスメトキシセンタウレイジン、ケルセチン、アピゲニン、ケンフェロール、シリビン、ルテオリン、ルテオリン−7−グルコシド、フロレチン、アピイン、ヘスペリジン、スルホン化ヘスペリジン、カリコシン−7−O−β−D−グルコピラノシド、フラボン−7−硫酸ナトリウム、フラボン7−フルオロ−4’−ヒドロキシフラボン、4’−クロロ−4,6−ジメトキシカルコン、5−ヒドロキシフラボン−7−硫酸ナトリウム、ミリセチン、ルチン、モリン、グリチルリジン、ビタミンC、D−イソアスコルビン酸、D−糖酸1,4−ラクトン、L−アスコルビン酸−6−ヘキサデカノエート(Vcpal)、6−O−アシル化ビタミンC、カテキン、ノルジヒドログアイヤレチン酸、クルクミン、没食子酸N−プロピル、タンニン酸、エラグ酸、没食子酸、フロロフコフレッコールA、ジエコール、8,8’−ビエコール、プロシアニジン、ゴシポール、セレコキシブ、ニメスリド、デキサメサゾン、インドメタシン(indomethcin)、フェノプロフェン、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、サリチレート、クロモグリク酸二ナトリウム、金チオリンゴ酸ナトリウム、transilist、トラキサノクス、イベルメクチン、リンコマイシン(linocomycin)およびスペクチノマイシン、スルファメトキサゾールおよびトリメトプリム(trimerthoprim)、ネオマイシン硫酸塩、3α−アセチルポリポレン酸A、(25S)−(+)−12α−ヒドロキシ−3α−メチルカルボキシアセテート−24−メチルラノスタ−8,24(31)−ジエン−26−オイック酸、ラノスタノイド、ポリポレン酸c、PS53(ヒドロキノン−スルホン酸−ホルムアルデヒドポリマー)、ポリ(スチレン−4−スルホネート)のポリマー、VERSA-TL 502、1−テトラデカンスルホン酸、マンデル酸縮合重合体(SAMMA)、1,3−ジアセチルベンゾイミダゾール−2−チオン、N−モノアシル化ベンズイミダゾール−2チオン、N,N’−ジアシル化ベンズイミダゾール−2−チオン、アルキル−2−フェニルインドール誘導体、3−プロパノイルベンゾオキサゾール−2−チオン、N−アルキル化インドール誘導体、N−アシル化インドール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、N−置換インドール−2−および3−カルボキサミド誘導体、N−置換インドール−2−および3−カルボキサミド誘導体のハロゲン化類似体(クロロおよびフルオロ)、2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルインドール、インドールカルボキサミド類、インドールアセトアミド類、3−ベンゾリル−1−メチル−4−フェニル−4−ピペリジノール、ベンゾイルフェニルベンゾエート誘導体、l−アルギニン誘導体、グアニジウムHCL、L−NAME、HCN、リナマリン、アミグダリン、ヘデラゲニン、エスチン、CIS−ヒノキレシノールおよび1,3−ジ−p−ヒドロキシフェニル−4−ペンテン−1−オンを含む。
数例において、ヒアルロニダーゼ阻害剤である安定化剤は、N−アセチルグルコサミンおよびグルクロン(glurcuronic)酸の多糖である。他の例において、ヒアルロニダーゼ阻害剤である安定化剤は、負に荷電された糖を有するアミン糖である。さらなる例において、ヒアルロニダーゼ阻害剤である安定化剤は、アミノメチルインドールまたはアスコルビン酸誘導体である。
ここに提供する配合剤の例は、ヒアルロナン(ヒアルロン酸;HA)である安定化剤を含む。ヒアルロン酸(HA、ヒアルロナンおよびヒアルロナートとしても知られる)は、ヒアルロナン分解酵素群、例えばヒアルロニダーゼ、例えばrHuPH20を含むPH20の天然基質である。HAは、結合組織、上皮組織、および神経組織に広く分布する非硫酸化グリコサミノグリカンである。最大25,000二糖単位のポリマーであり、それ自体D−グルクロン酸およびD−N−アセチルグルコサミンから成る。HAの分子量は約5kDa〜200,000kDaの範囲である。ヒアルロナンの加水分解を触媒することにより、rHuPH20(および他のヒアルロニダーゼ群およびヒアルロナン分解酵素群) はヒアルロナンの粘度を下げ、それにより組織透過性を高め、非経腸的に投与された流体の吸収速度を上げる。
ここで証明されるとおり、ヒアルロン酸(HA)は、例えば、低塩、高pH、防腐剤存在および高温のような、他脱安定化剤および条件の存在下でヒアルロナン分解酵素群の安定化剤である。特に、HAは、高pHおよび/または高温が典型的にrHuPH20および他の可溶性ヒアルロニダーゼ群およびヒアルロナン分解酵素群に、特にフェノール防腐剤に有する負の影響を減らすか、無くすように見える。例えば、下記試験に示されるとおり(例えば実施例10Dおよび実施例15参照)、rHuPH20安定性は、HAオリゴマー類(4〜16量体)がインスリン配合剤に包含されているとき、顕著に増加する。HA濃度を上げると、安定化特性は上がる。例えば、1mg/mLのHAおよび75mMのNaClと共に1週間、30℃でpH7.1の後、rHuPH20/インスリン配合剤のrHuPH20活性は600U/mLから341U/mLに減少した(すなわち元の活性の57%保持)。HA濃度を10mg/mLに上げたとき、rHuPH20活性は600U/mLから510U/mLまでしか減少しなかった(すなわち元の活性の85%保持)。さらに、HAは、高pHがrHuPH20に有する脱安定化効果を減少させるか、無くす。例えば、5.5mg/mLのHAおよび100mMのNaClと共に1週間、30℃でpH7.1の後、元のrHuPH20の68%が残った。このパーセンテージは、pHを7.5まで上げても本質的に変化しなかった。HAのrHuPH20rHuPH20の安定性に対する類似の正の効果が、高温でも観察された(例えば実施例15参照)。それ故に、本発明で、HAは、rHuPH20を有効に安定化するために、インスリンおよびrHuPH20(または他の可溶性ヒアルロニダーゼ群およびヒアルロナン分解酵素群)の製剤に包含できることが決定された。
それ故に、ここに提供されるのは、HAを含む配合剤である。あらゆるサイズのHAが、組成物において安定化剤として使用できる。数例において、HAは、D−グルクロン酸およびD−N−アセチルグルコサミンから成る二糖である。他の例において、HAは、オリゴ糖、例えば2反復二糖単位を含む四糖であるか、あるいは、ここに提供する配合剤において使用されるHAは複数反復二糖単位、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30以上の二糖単位を含む。他の例において、ここに提供する配合剤において使用されるHAは、正確にまたは約5kDa〜または〜約5,000kDa;正確にまたは約5kDa〜または〜約1,000kDa;正確にまたは約5kDa〜または〜約500kDa;または正確にまたは約5kDa〜または〜約200kDaの分子量を有する。本発明の配合剤において使用されるHAオリゴ糖類の例は、正確にまたは約6.4kDa、74.0kDaまたは234.4kDaの分子量を有する。例えば、インスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ(例えばrHuPH20)のここに提供される組成物に包含されるのは、少なくともまたは約5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、15kDa、20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDa、120kDa、140kDa、160kDa、180kDa、200kDa、220kDa、240kDa、260kDa、280kDa、300kDa、350kDa、400kDa、450kDa、または500kDaの分子量を有するHAである。一例において、配合剤中のHAの分子量は10kDa未満である。
ここで提供されるのは、それ故に、HAオリゴ糖を含むインスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の配合剤である。配合剤は1mg/mL〜20mg/mLのHA、例えば少なくともまたは約1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mLまたは20mg/mL以上のHAを含む。インスリンおよびrHuPH20の安定な配合剤の例は、正確にまたは約8mg/mL〜または〜約12mg/mLのHA、例えば10mg/mLまたは約10mg/mLを含む。数例において、HA対ヒアルロナン分解酵素のモル比は正確にまたは約100,000:1、95,000:1、90,000:1、85,000:1、80,000:1、75,000:1、70,000:1、65,000:1、60,000:1、55,000:1、50,000:1、45,000:1、40,000:1、35,000:1、30,000:1、25,000:1、20,000:1、15,000:1、10,000:1、5,000:1、1,000:1、900:1、800:1、700:1、600:1、500:1、400:1、300:1、200:1、または100:1以下である。
viii. ニコチン化合物
数例において、ニコチン化合物が安定化剤として包含される。ニコチン化合物は、ニコチンアミド、ニコチン酸、ナイアシン、ナイアシンアミド、ビタミンB3および/またはその塩類および/またはこれらのあらゆる組み合わせを含むが、これらに限定されない。具体的適用において、安定化剤はニコチン化合物およびアミノ酸またはアミノ酸類を含み得る(例えば国際公開PCT出願番号WO2010149772参照)。例えば、アミノ酸はアルギニン、グルタミン酸および/またはその塩類またはそれらの組み合わせであり得る。
ix. 他の添加物または薬物
所望により、配合剤は配合剤が投与される、担体、例えば希釈剤、アジュバント、添加物、または媒体を含み得る。適当な医薬担体の例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences” by E. W. Martinに記載されている。このような組成物は、治療有効量の、一般的に精製形態または部分的精製形態の化合物を、患者への適切な投与のための形態を提供するための適当な量の担体と共に含む。このような医薬担体は滅菌液体、例えば水および石油、動物、植物または合成起源のものを含む油、例えばピーナツ油、ダイズ油、鉱油、およびゴマ油を含む。水は、医薬組成物を静脈内投与するときの典型的担体である。食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、特に注射液のための液体担体として使用できる。
例えば、非経腸製剤に使用される薬学的に許容される担体は、水性媒体、非水性媒体、抗微生物剤、等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁および分散剤、乳化剤、隔離またはキレート剤および他の薬学的に許容される物質を含む。水性媒体の例は、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、等張デキストロース注射、滅菌水注射、デキストロースおよび乳酸リンゲル注射を含む。非水性非経腸媒体は、植物起源の固定油、綿実油、コーン油、ゴマ油およびピーナツ油を含む。静菌的または静真菌的濃度の抗菌剤を、多数回投与容器に包装される非経腸製剤に添加でき、それはフェノール類またはクレゾール類、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル類、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムを含む。等張化剤は塩化ナトリウムおよびデキストロースを含む。緩衝剤はリン酸およびクエン酸を含む。抗酸化剤は硫酸水素ナトリウムを含む。局所麻酔剤は塩酸プロカインを含む。懸濁および分散剤はナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを含む。乳化剤はポリソルベート80(Tween 80)を含む。金属イオンの隔離またはキレート剤はEDTAを含む。医薬担体はまた水混和性媒体のためのエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールおよびpH調節のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸を含む。
組成物はまた活性成分意外に、希釈剤、例えばラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム、またはカルボキシメチルセルロース;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルク;および結合剤、例えばデンプン、天然ゴム、例えばアカシアガム、ゼラチン、グルコース、モラセス、ポリビニルピロリドン、セルロース類およびその誘導体、ポビドン、クロスポビドン類および当業者に知られた他のこのような結合剤を含み得る。
例えば、あらゆる数の薬学的に許容されるタンパク質類またはペプチドであり得る、添加物タンパク質を配合剤に添加できる。一般的に、添加物タンパク質は、免疫応答を誘発せずに哺乳動物対象に投与できる能力により選択する。例えば、ヒト血清アルブミンは、医薬製剤における使用によく適する。他の既知医薬タンパク質添加物は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、一ステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールを含むが、これらに限定されない。添加物は、製剤に、保持容器またはバイアルへのタンパク質の吸着を妨げる十分な濃度で包含される。添加物濃度は添加物の性質および配合剤中のタンパク質濃度により異なる。
組成物は、望むならば、また少量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤、例えば、酢酸、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、トリエタノールアミンオレエート、および他のこのような薬剤を含み得る。
2.安定な配合剤の例
a.多回注射(MDI)配合剤の例
ここに提供されるのは、少なくとも6ヶ月間、正確にまたは約2℃〜または〜約8℃の温度でおよび少なくとも14日間(すなわち2週間)正確にまたは約20℃〜または〜約30℃の温度で安定な速効性インスリン、例えば速効型(速効性)インスリン類似体、およびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の安定な配合剤である。MDI配合剤の例は、少なくともまたは約6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、15ヶ月間、20ヶ月間、24ヶ月間、30ヶ月間、36ヶ月間、42ヶ月間、48ヶ月間、54ヶ月間、60ヶ月間以上、正確にまたは約2℃〜または〜約8℃の温度で、および少なくともまたは約14日間、15日間、20日間、25日間、28日間、30日間、35日間、40日間、45日間または50日間以上、正確にまたは約20℃〜または〜約30℃の温度で安定なものである。
例えば、ここに提供される製剤、正確にまたは約2〜8℃で少なくとも1年間、例えば少なくとも12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、24ヶ月間、25ヶ月間、26ヶ月間、27ヶ月間、28ヶ月間、29ヶ月間、30ヶ月間、31ヶ月間、32ヶ月間、33ヶ月間、34ヶ月間、35ヶ月間、36ヶ月間またはそれ以上安定である。特に、ここに提供される製剤は、正確にまたは約2〜8℃で少なくとも24ヶ月間安定である。
他の例において、ここに提供される製剤は、少なくとも1週間正確にまたは約20〜30℃、例えば正確にまたは約22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃または30℃で、少なくとも1週間安定である。例えば、ここに提供される製剤は、正確にまたは約20〜30℃で少なくとも7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間またはそれ以上安定である。特に、ここに提供される製剤は、正確にまたは約20〜30℃、例えば正確にまたは約25℃または30℃で少なくとも1ヶ月間安定である。
数例において、ここで提供される安定な配合剤は、100U/mL〜1000U/mL、および特に正確にまたは約または少なくとも600U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20);10U/mL〜1000U/mL、および特に少なくともまたは約100U/mLの速効性のインスリン;50mM〜200mMまたは約50mM〜200mM濃度のNaCl;6.8〜7.8または約6.8〜7.8、例えば正確にまたは約7.0〜7.6のpH;該正確にまたは約6.8〜7.8または7.0〜7.6pH範囲を維持する緩衝剤;重量濃度(w/v)として0.1%〜0.4%防腐剤の抗微生物有効量の防腐剤または防腐剤の混合物;および保存(温度および時間)中、少なくとも50%の初期ヒアルロナン分解酵素活性、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも375U/mLのヒアルロナン分解酵素活性が維持される量の安定化剤を含む。緩衝剤に関して、あらゆる緩衝剤を、正確にまたは約6.8〜7.8、例えば正確にまたは約7.0〜7.6の配合剤のpH範囲を維持するようで包含するように使用できる。典型的に、Trisが、ここに提供する配合剤において正確にまたは約10mM〜50mM、例えば、例えば、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mMまたは50mMの濃度で包含される。具体例において、配合剤は正確にまたは約20mM〜30mMのTris、例えば21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mMまたは30mMのTrisを含む。具体例において、ここに提供する配合剤はTrisを正確にまたは約30mMの濃度で包含する。
例えば、このような配合剤の例は、100U/mL〜1000U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、および特に正確にまたは約または少なくとも600U/mL;10U/mL〜1000U/mLの速効性のインスリン、および特に少なくともまたは約100U/mL;正確にまたは約80〜140mMの濃度のNaCl;正確にまたは約7.0〜7.6のpH;正確にまたは約7.0〜7.6の該pH範囲を維持する緩衝剤;重量濃度(w/v)として0.1%〜0.4%防腐剤;および保存(温度および時間)中、少なくとも50%の初期ヒアルロナン分解酵素活性を維持する、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも375U/mLのヒアルロナン分解酵素活性が維持される量の安定化剤を含む。例えば、ここに提供する配合剤は1mM〜100mMの緩衝剤(例えばTris)を含む。例えば、ここに提供する配合剤は0.01%〜0.5%界面活性剤を含む。ここに提供する配合剤の例はまた60mM未満 グリセリン(グリセロール)および5mM〜または〜約50mMの抗酸化剤を含み得る。
次の安定な製剤は単なる例であり、微細な調節をなし得る構築基盤を提供する。種々の添加物および他の成分の濃度の極めてわずかな変化(例えば記載濃度の±15%)、またはpHのわずかな変化は、インスリンの溶解性、インスリンの安定性およびヒアルロナン分解酵素の安定性の全てではなくても、いくつかを保持しながらなし得ることは理解されるべきである。さらなる変化も、添加物の付加または除去によりなし得る。例えば、安定化界面活性剤の種類を変え得る。例えば、本発明の配合剤は100U/mL〜1000U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、および特に少なくともまたは約600U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20);10U/mL〜1000U/mLの速効性のインスリン、および特に少なくともまたは凡そ少なくともまたは大凡約100U/mLの速効性のインスリン;正確にまたは約10mM〜または〜約50mMのTris(例えば正確にまたは約20mM〜40mMのTris、例えば少なくともまたは約またはすくなくとも凡そ少なくとも20mM、25mM、30mM、35mMまたは40mM);正確にまたは約80mM〜または〜約140mMのNaCl(例えば少なくともまたは約または少なくとも約80mM、90mM、100mM、110mM 120mM、130mM、140mM、150mMまたは160mMのNaCl);正確にまたは約5mM〜または〜約50mMのメチオニン(例えば少なくともまたは約または少なくとも凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mMまたは50mMのメチオニン);正確にまたは約0mM〜または〜約50mMのグリセリン(例えば少なくともまたは約または少なくとも凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mMまたは50mMのグリセリン);正確にまたは約0.01%〜または〜約0.5%ポロクサマー188、例えば0.01%〜0.05%(例えば少なくともまたは約または少なくとも約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%または0.05%ポロクサマー188);正確にまたは約0.1%〜または〜約0.25%フェノール(例えば少なくともまたは約または少なくとも約0.1%、0.12%、0.125%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%または0.17%フェノール);および正確にまたは約0.05%〜または〜約0.2%m−クレゾール(例えば少なくともまたは約または少なくとも凡そ少なくとも0.075%、0.08%、0.09%、0.1%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%または0.17%m−クレゾール)を含む。製剤はpH正確にまたは約7.0〜または〜約7.6(例えば少なくともまたは約または少なくとも約pH7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5または7.6)で製剤される。さらなる例において、亜鉛が正確にまたは約0.017mg/100U、0.018mg/100U、0.02mg/100U、0.022mg/100Uまたは0.024mg/100Uインスリンの濃度で包含される。
上記のとおり、製剤中の種々の成分の濃度は、インスリンの具体的特性により増やしたり減らしたりできる。例えば、高い見かけの溶解度のインスリン類、例えばインスリンアスパルトの製剤は、典型的に低い見かけの溶解度のインスリン類、例えばインスリンリスプロの製剤と比較して高濃度のNaClおよび低濃度のグリセリンを含む。NaCl濃度によって、特定の製剤のpHはまた種々のインスリン類により異なる。
例えば、ここに提供される安定な配合剤に包含されるのは、正確にまたは約50〜120mMのNaCl、例えば50mM〜100mM、例えば50mM〜90mMまたは80mM〜100mMを含むインスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の安定な配合剤である。このような配合剤はインスリン類似体インスリンリスプロを含むものを含む。他の例において、ここに提供される安定な配合剤は、正確にまたは約80mM〜160mMのNaCl、例えば100mM〜140mM、例えば120mMを含むインスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の安定な配合剤である。このような配合剤は、インスリンアスパルトを含むものを含む。例えばここに提供されるのは、正確にまたは約80mMまたは100mMのNaClを含むrHuPH20およびインスリンアスパルトまたはインスリンリスプロの配合剤である。
他の例において、ここに提供される安定な配合剤に包含されるのは、正確にまたは約80mM〜200mM、例えば、100mM〜150mM、例えば130mM〜150mM、120mM〜140mMまたは110mM〜130mMを含む、インスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)の安定な配合剤である。このような配合剤はインスリン類似体グルリジンを含むものを含む。数例において、例えばインスリングルリジンを含む配合剤は、塩(NaCl)濃度正確にまたは約80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、121mM、122mM、123mM、124mM、125mM、126mM、127mM、128mM、129mM、130mM、131mM、132mM、133mM、134mM、135mM、136mM、137mM、138mM、139mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mMまたは200mMを有する。例えばここに提供されるのは、正確にまたは約120mMまたは140mMのNaClを含むrHuPH20およびインスリングルリジンの配合剤である。
ここに提供される配合剤の例において、pH正確にまたは約7.2、例えば7.2±0.2のインスリン、例えばインスリンアスパルト、およびrHuPH20の配合剤である。他の例において、インスリン、例えばインスリンリスプロ、およびrHuPH20の配合剤はpH正確にまたは約7.4、例えば7.4±0.2を有する。さらなる例において、インスリン、例えばインスリングルリジン、およびrHuPH20の配合剤はpH正確にまたは約7.3または7.4、例えば7.3±0.2または7.4±0.2を有する。
ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、およびインスリンリスプロを含むここに提供する配合剤の例は、正確にまたは約25mM〜または〜約35mMのTris(例えば正確にまたは約30mM);正確にまたは約70mM〜または〜約100mMのNaCl(例えば正確にまたは約80mMまたは100mMのNaCl);正確にまたは約10mM〜または〜約30mMのメチオニン(例えば正確にまたは約10mMまたは20mMのメチオニン);正確にまたは約40mM〜または〜約60mMのグリセリン(例えば正確にまたは約50mMのグリセリン);正確にまたは約0.005%〜または〜約0.05%ポロクサマー188(例えば正確にまたは約0.01%ポロクサマー188);正確にまたは約0.017mgの亜鉛/100Uインスリン〜または〜約0.024mgの亜鉛/100Uインスリン(例えば0.017mgの亜鉛/100Uインスリン、0.018mg/100U、0.02mg/100U、0.022mg/100Uまたは0.024mgの亜鉛/100Uインスリン);正確にまたは約0.08%〜または〜約0.17%フェノール(例えば0.1%、0.125%または0.13%フェノール);および正確にまたは約0.07%〜または〜約0.17%m−クレゾール(例えば0.075%、0.08%、0.13%または0.15%m−クレゾール)を含む。例えば、本配合剤は正確にまたは約0.1%フェノールおよび0.015%m−クレゾール;正確にまたは約0.125%フェノールおよび0.075%m−クレゾール;正確にまたは約0.13%フェノールおよび0.075%m−クレゾール;正確にまたは約0.13%フェノールおよび0.08%m−クレゾール;または正確にまたは約0.17%フェノールおよび0.13%m−クレゾールを含み得る。インスリンリスプロおよびヒアルロナン分解酵素、例えば可溶性ヒアルロニダーゼ(例えばrHuPH20)のこのような製剤は、pH正確にまたは約7.0〜または〜約7.5(典型的にpH正確にまたは約pH7.2)で調製される。
ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、およびインスリンアスパルトを含むここに提供する配合剤の例は、正確にまたは約25mM〜または〜約35mMのTris(例えば正確にまたは約30mM);正確にまたは約70mM〜または〜約100mMのNaCl(例えば正確にまたは約80mMまたは100mMのNaCl);正確にまたは約10mM〜または〜約30mMのメチオニン(例えば正確にまたは約10mMまたは20mMのメチオニン);正確にまたは約40mM〜または〜約60mMのグリセリン(例えば正確にまたは約50mMのグリセリン);正確にまたは約0.005%〜または〜約0.05%ポロクサマー188(例えば正確にまたは約0.01%ポロクサマー188);正確にまたは約0.017mgの亜鉛/100Uインスリン〜または〜約0.024mgの亜鉛/100Uインスリン(例えば0.017mgの亜鉛/100Uインスリン、0.018mg/100U、0.02mg/100U、0.022mg/100Uまたは0.024mgの亜鉛/100Uインスリン);正確にまたは約0.08%〜または〜約0.17%フェノール(例えば0.1%、0.125%または0.13%フェノール);および正確にまたは約0.07%〜または〜約0.17%m−クレゾール(例えば0.075%、0.08%、0.13%または0.15%m−クレゾール)で調製される。例えば、本配合剤は正確にまたは約0.1%フェノールおよび0.015%m−クレゾール;正確にまたは約0.125%フェノールおよび0.075%m−クレゾール;正確にまたは約0.13%フェノールおよび0.075%m−クレゾール;正確にまたは約0.13%フェノールおよび0.08%m−クレゾール;または正確にまたは約0.17%フェノールおよび0.13%m−クレゾールを含み得る。インスリンアスパルトおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)のこのような製剤は、pH正確にまたは約7.0〜または〜約7.6(典型的にpH正確にまたは約pH7.4)で調製される。
ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、およびインスリングルリジンを含むここに提供する配合剤の例は、正確にまたは約25mM〜または〜約35mMのTris(例えば正確にまたは約30mM);正確にまたは約100mM〜または〜約150mMのNaCl(例えば正確にまたは約100mMまたは140mMのNaCl);正確にまたは約10mM〜または〜約30mMのメチオニン(例えば正確にまたは約10mMまたは20mMのメチオニン);正確にまたは約40mM〜または〜約60mMのグリセリン(例えば正確にまたは約50mMのグリセリン);正確にまたは約0.005%〜または〜約0.05%ポロクサマー188(例えば正確にまたは約0.01%ポロクサマー188);正確にまたは約0.08%〜または〜約0.17%フェノール(例えば0.1%、0.125%または0.13%フェノール);および正確にまたは約0.07%〜または〜約0.17%m−クレゾール(例えば0.075%、0.08%、0.13%または0.15%m−クレゾール)で調製される。例えば、本配合剤は正確にまたは約0.1%フェノールおよび0.015%m−クレゾール;正確にまたは約0.125%フェノールおよび0.075%m−クレゾール;正確にまたは約0.13%フェノールおよび0.075%m−クレゾール;正確にまたは約0.13%フェノールおよび0.08%m−クレゾール;または正確にまたは約0.17%フェノールおよび0.13%m−クレゾールを含むものである。インスリングルリジンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ(例えばrHuPH20)を含むこのような製剤はpH正確にまたは約7.0〜または〜約7.6(典型的にpH正確にまたは約pH7.4)を含み得る。
b. 持続皮下インスリン注入療法(CSII)配合剤の例
ここに提供されるのは、正確にまたは約32℃以上の高温、例えば35℃〜40℃、特に正確にまたは約または37℃または40℃以上および/または撹拌条件下のような加速またはストレス条件下で少なくとも3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、1日間、2日間、3日間、4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間または少なくとも7日間、および一般的に少なくとも3時間または少なくとも3日間安定な、安定な配合剤である。これらの安定な配合剤は、持続皮下インスリン注入療法(CSII)による投与に適する。
上記のとおり、本発明の配合剤に少なくとも6ヶ月間、正確にまたは約2℃〜または〜約8℃の温度および少なくとも14日間(すなわち2週間)正確にまたは約20℃〜または〜約30℃の温度で安定性を付与する濃度、量またはレベルは、一般的に配合剤に高温のようなストレス条件下で安定性を付与するには不十分である。一般的に、このような配合剤は、24時間未満、および一般的に8時間未満このようなストレス条件(例えば高温)で安定なであり、これは、このような条件が存在する多数回投与適用における使用に実質的障害となり得る。例えば、CSII治療は、1日24時間、2〜3日間、外に体の近くに接続されているポンプまたは他のデバイスによる製剤の連続的注入と関連する。インスリン製剤または配合剤は、腹壁または大腿に針を介して注射され、その注射は、インスリン製剤または配合剤が連続的に注入されるように計画されたポンプにより制御され得る。それ故に、CSII治療に使用される配合剤は、少なくともまたは約または37℃以上の高い体温および撹拌条件に付される。
例えば、ヒアルロナン分解酵素は、特に32℃以上、および典型的に37℃または40℃以上の高温で不安定である。本発明により、インスリンは2℃〜8℃で高塩濃度および低pHで結晶化するが、高塩濃度および低pHで32℃〜40℃の高温で結晶化しないことが判明した。従って、32℃〜40℃の高温でヒアルロナン分解酵素群(例えばPH20)の安定性を維持するために必要なものの逆の高塩濃度および低pH要求が、高温で少なくとも数時間、少なくとも3日間に対して、より適合性である。また、同じ高塩および低pH製剤が、低温でインスリン安定性に影響する見かけの溶解度の差異にかかわらず、インスリン類似体で同様の安定性が得られる。
例えばCSII治療での使用のためのストレス条件下で安定である安定な配合剤は、一般的にここで提供する他の配合剤と同じ成分を含む。このような配合剤、しかしながら、ストレス条件下で安定な配合剤が、一般的に高塩濃度、低pHおよび/またはヒアルロナン分解酵素および/またはインスリンを一般的に少なくとも2〜3日間、正確にまたは約32℃以上の高温、例えば35℃〜40℃、特に正確にまたは約または37℃または40℃以上および/または撹拌条件で安定化させるのに十分な1種以上の他の添加物が存在する点で異なる。例えば、高温または撹拌のストレス条件で安定なここに提供する配合剤は、一般的に添加物としてヒアルロニダーゼ阻害剤、例えばヒアルロニダーゼ基質(例えばヒアルロナン)を含む。
一例において、高温または撹拌のストレス条件で安定なここに提供する配合剤は、セクションE.1.aで提供する配合剤より高い塩濃度および低いpHを有する。例えば、ここに提供されるのは、120mMのNaCl〜200mMのNaClおよびpH6.5〜7.5を含む、ストレス条件下(例えば32℃〜40℃の高温または撹拌)で少なくとも3日間または3時間安定な配合剤である。しかしながら、上記のとおり、特に冷蔵温度で、インスリンの溶解性は、これらの低pHおよび高塩条件で減少する。それ故、このような製剤は、典型的に使用前に冷蔵または環境温度で保存しない。
他の例において、高温(例えば32℃〜40℃)のストレス条件で少なくとも3日間または撹拌で少なくとも3時間安定であるここに提供する配合剤は、配合剤中のヒアルロナン分解酵素を安定化するためのヒアルロニダーゼ阻害剤を含む。上記ヒアルロニダーゼ阻害剤のいずれも、高温(例えば32℃〜40℃)のストレス条件で少なくとも3日間または撹拌で少なくとも3時間安定な本発明の配合剤に包含できる。具体例において、ヒアルロニダーゼ阻害剤はヒアルロニダーゼ基質、例えば、ヒアルロナンである。
ヒアルロニダーゼ阻害剤ヒアルロナンを用いる本明細書の実施例に示すとおり、ヒアルロニダーゼ阻害剤の存在は、PH20活性を、特に防腐剤存在下、特に高温で、例えば32℃〜40℃の温度のストレス条件下で安定化させる。HAオリゴマー類が、ヒアルロナン分解酵素とヒアルロナンの酵素反応の基質/生成物であるため、ヒアルロナンオリゴマー類は酵素活性部位と結合でき、安定化効果を生じる。しかしながら、一定時間、32℃〜40℃の高温のストレス条件下、例えば37℃で、1週間または2週間以上で、配合剤中のヒアルロニダーゼ阻害剤、例えばHAの存在はインスリン分解を起こして、共有結合性HA−インスリン類似体付加物を生じ得ることも見出された。例えば、ここに提供する配合剤における高濃度のHAの存在は、37℃で1週間後にインスリンアスパルト(登録商標)を、そして30℃で2週間後にインスリングルリジン(登録商標)を分解させることが、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により示された。液体クロマトグラフィー−マススペクトロメトリー(LC−MS)分析は、分解産物のいくつかが、インスリンとHAの還元末端の反応により形成された共有結合性HA−インスリン類似体糖化付加物であることを示した。例えば、1つのピークはインスリンアスパルト(登録商標)とHA7量体の生成物と同定され、他のピークはインスリンアスパルト(登録商標)とHA2量体の生成物であった。
ヒアルロニダーゼ阻害剤、例えばHAの存在は、配合剤の沈殿形成および変色にも効果を有し得る。それ故に、HAはヒアルロナン分解酵素を32℃〜40℃の高温のストレス条件で安定性を改善するが、配合剤におけるインスリン分解、沈殿形成および変色にも影響を有し得る。これらの条件を所望の安全性および薬理的パラメータおよびガイドライン内でモニターすることは当業者のレベルの範囲内である。一般的に、ヒアルロニダーゼ阻害剤、例えばHAを含むここで提供される安定な配合剤は、高温で、例えば32℃〜40℃の温度のストレス条件下で少なくとも3時間安定であるが、これらのパラメータに対する効果のために7日間を超えられない。
ここに提供するいくつかの例において、インスリンまたはヒアルロナン分解酵素群と共有結合複合体を形成できないヒアルロニダーゼ阻害剤を使用する。それ故に、会合性結合により作用する非共有結合性阻害剤が本発明の製剤において意図される。例えば、ここに提供されるのは、インスリンと糖化付加物を形成しないように、反応した還元末端を有するHAを含む配合剤である。例えば、数例において、ここに提供する配合剤において使用するHAは還元的アミノ化により修飾されている。還元的アミノ化は、アルデヒドおよびアミンの間のシッフ塩基の形成を含み、これは次いで還元されたより安定なアミンを形成する。糖、すなわち、HAの還元末端は、環状ヘミアセタール形態と開鎖アルデヒド形態の平衡混合物である。当業者に知られた適当な条件下、アミン基は糖アルデヒドと縮合してイミニウムイオンを形成し、これは還元剤、例えばナトリウムシアノボロハイドライドでアミンに還元できる(例えば、Gildersleeve et al., (2008) Bioconjug Chem 19(7):1485-1490参照)。得られたHAはインスリンと反応せず、インスリン糖化付加物を形成できない。
特に、ここに提供されるのは、100U/mL〜1000U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、および特に正確にまたは約または少なくとも600U/mL;10U/mL〜1000U/mLの速効性のインスリン、および特に少なくともまたは約100U/mL;正確にまたは約120mM〜200mMの濃度のNaCl;正確にまたは約6.5〜7.5のpH;抗微生物有効量の防腐剤または防腐剤の混合物;および少なくとも50%の初期ヒアルロナン分解酵素活性、例えば少なくともまたは少なくとも約375U/mLのヒアルロナン分解酵素活性が維持されるような1種以上のさらなる安定化剤、例えばヒアルロニダーゼ阻害剤を含む、少なくとも3日間正確にまたは約32℃〜40℃の温度でおよび/または撹拌下に少なくとも3時間安定である、安定な配合剤組成物である。例えば、本配合剤は、HAを正確にまたは約1mg/mL〜20mg/mLの濃度で含み得る。安定な配合剤はまた正確にまたは約1mM〜100mMの量で正確にまたは約pH6.5のpH範囲を維持するための緩衝剤(例えばTris);製剤中の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)としての総量正確にまたは0.1%および0.4%の抗微生物有効量の防腐剤または防腐剤の混合物、例えば、フェノール防腐剤(例えばフェノールおよび/またはm−クレゾール);重量濃度(w/v)として正確にまたは約0.005%〜1.0%の%の界面活性剤(例えばポロクサマー188);および所望によりさらなる安定化剤を含み得る。
例えば、ストレス条件下(例えば32℃〜40℃の高温または撹拌)で少なくとも3日間または3時間安定なここに提供する配合剤は、120mM〜200mM、例えば150mMのNaCl〜200mMのNaClまたは160mMのNaCl〜180mMのNaCl、例えば正確にまたは約120mM、130mM、140mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、185mM、190mM、195mMまたは200mMのNaClを含む。また、ストレス条件下(例えば32℃〜40℃の高温または撹拌)で少なくとも3日間または3時間安定なここに提供する配合剤は6.5〜7.5または6.5〜7.2のpH、例えば正確にまたは約6.5±0.2、6.6±0.2、6.7±0.2、6.8±0.2、6.9±0.2、7.0±0.2、7.1±0.2、7.2±0.2、7.3±0.2、7.4±0.2または7.5±0.2のpHである。
本明細書における例において、高温(例えば32℃〜40℃)または撹拌のストレス条件で少なくとも3日間または3時間安定なここに提供する配合剤は、5kDa〜5,000kDa、5kDa〜または〜約1,000kDa、5kDa〜または〜約200kDa、または5kDa〜または〜約50kDaの分子量を有するヒアルロナン(ヒアルロン酸;HA)を含む。特に、HAの分子量は10kDa未満である。HAは、二糖類から成るオリゴ糖、例えば2量体〜30量体または4量体〜16量体であり得る。インスリンおよびヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えば、PH20(例えばrHuPH20)の配合剤はHAを正確にまたは約1mg/mL〜20mg/mLの濃度で、例えば少なくともまたは約1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mLまたは20mg/mL以上のHAを含む。安定な配合剤の例は、正確にまたは約8mg/mL〜または〜約12mg/mLのHA、例えば、例えば10mg/mLまたは約10mg/mLを含む。数例において、HA対ヒアルロナン分解酵素のモル比は正確にまたは約100,000:1、95,000:1、90,000:1、85,000:1、80,000:1、75,000:1、70,000:1、65,000:1、60,000:1、55,000:1、50,000:1、45,000:1、40,000:1、35,000:1、30,000:1、25,000:1、20,000:1、15,000:1、10,000:1、5,000:1、1,000:1、900:1、800:1、700:1、600:1、500:1、400:1、300:1、200:1、または100:1以下である。
例えばCSII製剤で望まれる高温(例えば32℃〜40℃)または撹拌で安定な配合剤が、セクションE.1.aで示すものより低いpHおよび高い塩濃度を有するため、それらはそこから調製でき、または由来し得る。これは、例えば、MDIに適当な例えばセクションE.1.aに提供するいずれかの配合剤を、低pHおよび高塩濃度を有する安定化希釈剤で希釈することにより達成できる。例えば、希釈剤は、低pHで緩衝化され、防腐剤を含む高NaCl溶液であり得る。例えば、希釈剤は10mM〜50mMのTrisまたは他の類似緩衝剤;120mM〜200mMのNaCl;0.1%〜0.4%防腐剤を含み得る。希釈剤は、正確にまたは約6.5〜7.8のpHで調製し得る。それ故に、2℃〜8℃または20℃〜30℃で安定なここで提供される安定な配合剤を、提供し、希釈剤と混合して、高温(例えば32℃〜40℃)のストレス条件下で少なくとも3日間または撹拌で少なくとも3時間安定な製剤を提供し得る。
例えば、セクションE.1.aの上記MDI配合剤のいずれかを安定化希釈剤で希釈して、低インスリン濃度、正確にまたは約6.8〜または〜約7.0のpH(例えば正確にまたは約6.8、6.9または7.0)および正確にまたは約150mM〜または〜約200mMのNaCl濃度のCSII製剤を提供し得る。
他の例において、安定なMDI配合剤を、安定化添加物希釈剤と混合後に許容される張性および低pHを提供するために、高インスリン濃度および高PH20濃度および低NaCl(正確にまたは約80mM〜150mM)および低緩衝能を有する修飾高濃度MDI製剤として提供できる。例えば、高インスリン濃度は、例えば、120〜500単位、例えば150、200または500単位(U)であってよく、高PH20濃度は6〜25μg/mL、例えば6〜25、6、7.5、10または25μg/mLであり得る。修飾高濃度MDI製剤の安定化希釈剤での希釈は、上記セクションE.1.aで提供されるあらゆるMDI配合剤より低pH(例えば6.5〜7.2)および高NaCl(140mM〜200mM)のCSII製剤を提供し得る。
さらなる例において、セクションE.1.aに提供するここに提供するMDI製剤のいずれも、凍結乾燥形態で製造し、保存できる。ストレス条件下で使用直前に、凍結乾燥生成物を、低pH(例えば6.5〜7.8)および高NaCl(120mM〜200mM)を含む安定化希釈剤で希釈して、上記セクションE.1.aに提供されるあらゆるMDI配合剤より低pH(例えば6.5〜7.8)および高NaCl(120mM〜200mM)のCSII製剤を提供し得る。
本明細書の実施例に示すとおり、しかしながら、ヒアルロナンは、低温でインスリンの凝集を起こすために、2℃〜8℃で保存する製剤の使用に適しない。それ故に、安定なCSII製剤をMDI製剤の希釈により製造する上記例において、MDI配合剤または修飾濃縮MDI配合剤はヒアルロニダーゼ阻害剤を含まず、ヒアルロニダーゼ阻害剤は、配合剤の安定性を高温(例えば32℃〜40℃)のストレス条件下で少なくとも3日間または撹拌で少なくとも3時間維持するためにヒアルロニダーゼ阻害剤の適当な濃度を提供するために安定化希釈剤に提供され得る。
c. Lys−Lys配合剤の例
ここに提供されるのは、治療有効量のヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、治療有効量の速効性のインスリン、例えば速効型(例えば速効性)インスリン類似体、および配合剤を安定化する量のLys−Lysを含む安定な配合剤である。典型的に、配合剤は多数回投与製剤であり、微生物的に有効量の1種以上の防腐剤を含む。配合剤はまた1種以上の他の安定化剤または添加物を含み得る。このような配合剤は、少なくとも6ヶ月間、正確にまたは約2℃〜または〜約8℃の温度でおよび少なくとも14日間(すなわち2週間)正確にまたは約20℃〜または〜約30℃の温度で安定である。特に、このような配合剤は、正確にまたは約32℃以上のような高温、例えば35℃〜40℃、特に正確にまたは約または37℃または40℃以上のような加速条件および/または撹拌条件下で少なくとも3時間、および一般的に少なくとも3日間安定である。配合剤は多数回投与注射(MDI)使用または持続皮下インスリン注入療法(CSII)方法に使用できる。
安定なLys−Lys含有製剤の例を下に記載する。次の安定な製剤は単なる例示であり、微細な調節をなし得る構築基盤を提供する。種々の添加物および他の成分の濃度の極めてわずかな変化(例えば記載濃度の±15%)、またはpHのわずかな変化は、全てではなくても、インスリンの溶解性および安定性およびヒアルロナン分解酵素安定性を幾分保持しながらなし得ることは理解すべきである。さらなる変化も、添加物の付加または除去によりなし得る。
例えば、ここに提供する配合剤は100U/mL〜1000U/mL、および特に正確にまたは約または少なくとも600U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20);10U/mL〜1000U/mL、および特に少なくともまたは約100U/mLの速効性のインスリンを含み、配合剤はさらに正確にまたは約50mM〜120mM、例えば50〜80mM、80mM〜100mMまたは100mM〜120mMの濃度のLys−Lys、正確にまたは約6.5〜8.0、例えば、6.5〜7.8または6.8〜7.8、例えば正確にまたは約6.5〜7.5、6.8〜7.4または7.0〜7.6のpH、該pH範囲を維持する緩衝剤、抗微生物有効量の防腐剤または防腐剤の混合物、および保存(温度および時間)中にヒアルロナン分解酵素活性の少なくとも50%を維持し、かつインスリン純度、回収および/または効力の少なくとも90%を維持する安定化剤を含む。例えば、ここに提供する配合剤は安定化剤として0.0005%〜1.0%(例えば0.0005%〜0.005%)界面活性剤を含む。配合剤は、所望により付加的安定化剤、浸透圧修飾剤、抗酸化剤および/または他の添加物を含み得る。例えば、本配合剤はNaClを140mM未満、例えば正確にまたは約0mM〜100mM、例えば正確にまたは約0mM〜50mM、10mM〜40mMまたは20mM〜30mMの濃度で含む。
一例において、製剤の例は100U/mL〜1000U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、および特に少なくともまたは凡そ少なくともまたは約600U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20);10U/mL〜1000U/mL、および特に少なくともまたは約100U/mLのインスリングルリジン、正確にまたは約50mM〜または〜約105mMのLys−Lys(例えば少なくともまたは凡そ少なくとも50mM、60mM、70mM、80mM、90mMまたは100mM);0mM〜または〜約50mMのメチオニン(例えば正確にまたは約5mM〜20mM、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mMまたは50mMのメチオニン);および正確にまたは約0.0005%〜または〜約0.005%ポリソルベート20、例えば0.001%〜0.005%(例えば少なくともまたは凡そ少なくとも0.0005%、0.0001%、0.005%または0.001%ポリソルベート20);および正確にまたは約0.01%〜0.25%の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のフェノールおよび正確にまたは約0.05%〜0.2%の%w/vのm−クレゾールを含む防腐剤(複数も可)を含む。製剤はpH正確にまたは約6.8〜7.4(例えば少なくともまたは凡そ少なくともpH6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3または7.4)で調製する。さらなる例において、NaClは140mM未満の濃度で包含される。例えば、NaClは100mM未満、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも0mM〜100mM、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mMまたは90mMの濃度で包含される。
他の例において、製剤の例は100U/mL〜1000U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20)、および特に少なくともまたは凡そ少なくともまたは約600U/mLのヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ、例えばPH20(例えばrHuPH20);10U/mL〜1000U/mL、および特に少なくともまたは約100U/mLのインスリンリスプロまたはアスパルト、正確にまたは約80mM〜または〜約100mMのLys−Lys(例えば少なくともまたは凡そ少なくとも80mM、85mM、90mM、95mMまたは100mM);0mM〜または〜約50mMのメチオニン(例えば正確にまたは約5mM〜20mM、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mMまたは50mMのメチオニン);正確にまたは約0.0005%〜または〜約0.005%ポリソルベート20、例えば0.001%〜0.005%(例えば少なくともまたは凡そ少なくとも0.0005%、0.0001%、0.005%または0.001%ポリソルベート20);および正確にまたは約0.01%〜0.25%の重量濃度(w/v)のパーセンテージ(%)のフェノールおよび正確にまたは約0.05%〜0.2%の%w/vのm−クレゾールを含む防腐剤(複数も可)フェノールを含む。製剤はpH正確にまたは約6.8〜7.4(例えば少なくともまたは凡そ少なくともpH6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3または7.4)で調製される。さらなる例において、NaClは140mM未満の濃度で包含される。例えば、NaClは100mM未満、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも0mM〜100mM、例えば少なくともまたは凡そ少なくとも5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mMまたは90mMの濃度で包含される。
G. 投与量および投与
ヒアルロナン分解酵素の安定な製剤であるここに提供する組成物は、単回または多回投与用医薬組成物として製剤できる。ヒアルロナン分解酵素および速効性のインスリンの配合剤は多回投与用医薬組成物として製剤される。製剤および配合剤は、例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、および皮内投与を含む非経腸投与のような任意の適当な経路用に製剤され得る。典型的に、製剤またはここに提供される配合剤は、皮下投与される。
治療的有効投与量は、経験的に既知インビトロおよびインビボ系で製剤または配合剤を試験し、また代謝、食物摂取および疾患重症度のような因子に基づき各対象に個別化できる。製剤または配合剤中のヒアルロナン分解酵素および/または選択したインスリンの濃度は、例えば、複合体の吸収、不活性化および排泄率、複合体の物理化学特徴、投与スケジュール、および投与量ならびに当業者に知られる他の因子による。例えば、インスリンを含む配合剤について、処置の厳密な投与量は、対象における血糖値の関数であり、経験的に既知のアルゴリズムを使用して、またはインビボまたはインビトロ試験データの外挿により、対象の過去の経験により、食事中の炭水化物含量を決定するための炭水化物計数により、それ故に、概算される食事の血糖上昇および続くインスリンの必要性により決定できる。濃度および投与量値は各処置対象で変わることは注意すべきである。さらに、あらゆる特定の対象において、特定の投与レジメンは、個々の要求および製剤を投与者または監督者の専門的判断に従い、時間の経過と共に調整すべきであり、ここに示す濃度範囲は単なる例であり、その量に限定されないことも注意すべきである。糖尿病状態の処置のために投与すべき選択したインスリンの量は、標準的臨床技術により決定できる。加えて、インビトロアッセイおよび動物モデルを最適投与量範囲の決定を補助するために用い得る。
それ故に、経験的に決定できる厳密な投与量は、製剤または配合剤に含まれる特定のヒアルロナン分解酵素および/またはインスリン、レジメおよび投与スケジュール、投与経路、処置すべき糖尿病のタイプ、処置する疾患および対象の重症度に依存し得る。一般的に、インスリンは血糖コントロールを達成する量で提供される。例えば、食後血糖コントロールを達成するために、インスリンがヒアルロナン分解酵素を伴わずに送達されるとき、糖尿病対象に典型的にボーラス注射として正確にまたは約0.05Uの速効性のインスリン/kg体重(U/kg)〜1.0U/kgを、食事30分間〜5分間前に投与する。この投与量は、例えば、特定の対象の代謝、食事の内容、および血糖値に基づき、適宜増減できることは当然である。さらに、食後血糖コントロールのためにインスリンを送達する時間は、食事の摂取とさらに近いまたは遠い時間に変えてよく、数例において、インスリンを食事時または食後に送達されるように変え得ることは当然である。
速効性のインスリン類は、典型的に0.05単位/kg〜0.25単位/kg、例えば、0.10単位/kgの投与量で投与さえるが、特定の投与量は変わり得る。ヒアルロナン分解酵素群(例えばrHuPH20)と配合されたインスリンの改善された薬物動態学的および薬力学的特性により、提供される配合剤は、ヒアルロナン分解酵素非存在下で投与される速効性のインスリンより低投与量で投与できる。ヒアルロナン分解酵素との配合剤として投与するにより減らせる速効性のインスリンの量は、患者の糖尿病のタイプおよび配合剤に包含されるインスリンのタイプによる。典型的に、ヒアルロナン分解酵素との配合剤として投与したときに2型糖尿病患者に投与する速効性のインスリンの量の減少は、ヒアルロナン分解酵素との配合剤として投与したとき1型糖尿病患者に投与する速効性のインスリンの量の減少より多い。例えば、1型糖尿病患者および2型糖尿病患者の両者に0.20U/kgの速効性のインスリンを、食後グルコースレベルをコントロールするために投与したとき、1型糖尿病患者に、同じまたは良好な血糖コントロールを達成するために0.15U/kgのヒアルロナン分解酵素と配合された速効性のインスリンを投与でき、2型糖尿病患者に同じまたは良好な血糖コントロールを達成するために0.10U/kgのヒアルロナン分解酵素と配合された速効性のインスリンを投与できる
食後血糖値をコントロールするためのここで提供するヒアルロナン分解酵素との配合剤を使用したインスリンの非経腸、例えば皮下投与のための投与量範囲の例は、正確にまたは約0.05U/kg〜0.50U/kg、例えば0.05U/kg、0.06U/kg、0.07U/kg、0.08U/kg、0.09U/kg、0.10U/kg、0.11U/kg、0.12U/kg、0.13U/kg、0.14U/kg、0.15U/kg、0.20U/kg、0.25U/kg、0.30U/kg、0.40U/kg、0.50U/kgまたは1.0U/kgである。特定の投与量は疾患および個体による。
ここに提供するインスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤はまた食後血糖コントロールに加えて、日中および夜間を通して血糖コントロールを発揮するために糖尿病対象に投与できる。典型的に、連続的血糖コントロールを提供するために投与されるインスリンの投与量は、食後血糖コントロールを達成するために必要なものより少ない。しかしながら、投与量は血糖値に基づき増やしても減らしてもよい。連続的血糖コントロールを達成するためにヒアルロナン分解酵素との配合剤として投与されるインスリンの非経腸、例えば皮下投与のための投与量範囲の例は正確にまたは約0.001U/kg〜0.30U/kg、例えば0.001U/kg、0.005U/kg、0.01U/kg、0.02U/kg、0.05U/kg〜0.30U/kg、例えば0.05U/kg、0.06U/kg、0.07U/kg、0.08U/kg、0.09U/kg、0.10U/kg、0.11U/kg、0.12U/kg、0.13U/kg、0.14U/kg、0.15U/kg、0.20U/kg、0.25U/kg、0.30U/kg、0.40U/kg、0.50U/kgまたは1.0U/kgである。特定の投与量は疾患、投与時間、および個体による。必要であれば、投与量を経験的に決定できる。
正確な投与量および処置期間は処置する糖尿病の関数であり、既知試験プロトコルを使用してまたはインビボまたはインビトロ試験データからの外挿により経験的に決定できることは理解されるべきである。投与量もまた糖尿病重症度および他の因子、例えば対象の代謝、食物摂取、および体重により変わり得ることは注意すべきである。あらゆる特定の対象について、特定の投与レジメンは個々の必要性および組成物の投与者またはその監督者の専門的判断により時間の経過に従って調整されるべきであり、ここに示す濃度範囲は単なる例であり、組成物およびそれを含む組み合わせの範囲または使用を限定しないことは当然である。組成物は1分毎、数分毎、1時間毎、1日毎、1週間毎、1ヶ月毎、1年毎または単回、対象および糖尿病状態によって投与してよい。一般的に、投与レジメンは、毒性および/または他の負の影響、例えばインスリン過剰を避けるように選択される。担当医は、どのようにそしていつ治療を停止するか、中断するか、低投与量に調節するか理解している。逆に、担当医はまた臨床応答が十分ではないとき、どのようにそしていつ処置を高レベルに調節するかも理解している(毒性副作用を避けながら)。
投与方法
a. シリンジまたはバイアル
ここに提供する製剤または配合剤は、単回投与量または多数回投与量製剤に適当なシリンジ、バイアルまたは他の容器を含むが、これらに限定されない数種の投与方法の1種以上を使用して対象に非経腸的に投与される。例えば、インスリンシリンジを含む単回使用シリンジを、組成物の個々の注射、例えばボーラス注射投与をするために使用できる。ここに提供される組成物の投与に有用なシリンジは、100U/ml濃度のインスリン製剤を含む標準濃度のインスリン製剤を装填するように設計され、投与を容易にするためにインスリン単位の目盛りを付したインスリンシリンジである。
b. インスリンペン
インスリンペンは、ここに提供する配合剤の投与に使用できる投与手段である。インスリンペンは、投与すべき組成物を満たした交換式カートリッジを有するものおよび非交換式カートリッジを有するものを含む。非交換式カートリッジのインスリンペンは、典型的に、カートリッジが空になったときに廃棄されるものである。インスリンペンは、例えば、半単位、1単位または2単位漸増で投与でき、これは、一般的に投与ダイアルまたは投与量を設定するための他の機構を使用して決定される(例えば米国特許番号5,947,934、6,074,372、6,110,149、6,524,280、6,582,404参照)。次いで、配合剤をペンに結合した細針を通して投与する。インスリンペンは当分野で知られ、米国特許番号5,947,934、4,973,318、5,462,535、5,599,323、5,626,566、5,984,906、6,074,372、6,110,149、6,302,869、6,379,339および7,241,278)を含むが、これらに限定されないあらゆるところに記載されている。例えば、米国特許番号5,947,934、6,074,372、6,110,149および6,379,339に記載のような他の類似の投与デバイスも、インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤としてまたはインスリン組成物およびヒアルロナン分解酵素組成物の別々のいずれかでここに提供される組成物を投与するために使用できる。場合により、インスリンペンまたは類似デバイスはまた対象血糖値を測定できるセンサーまたはモニターも含む(例えばWO2003047426参照)。
ここに提供される配合剤の投与に使用できる、または使用するために修飾できるインスリンペンおよび類似の投与デバイスは当分野で知られており、商品名Autopen(登録商標)(OwenMumford、Inc.)、Disetronic Pen(Disetronic Medical Systems)、Humalog(登録商標)Pen(Eli Lilly and Company)、Humalog(登録商標)Mix 75/25 Pen(Eli Lilly and Company)、Humulin(登録商標)70/30 Pen(Eli Lilly and Company)、Humulin(登録商標)N Pen(Eli Lilly and Company)、NovoLog(登録商標)FlexPen(Novo Nordisk)、NovoPen(登録商標)3(Novo Nordisk)、NovoPen(登録商標)4(Novo Nordisk)、NovoPen(登録商標)Junior(Novo Nordisk)、NovoLog(登録商標)Mix 70/30 FlexPen(Novo Nordisk)、InDuo(登録商標)(Novo Nordisk)、Novolin(登録商標)InnoLet(登録商標)(Novo Nordisk)、Innovo(登録商標)(Novo Nordisk)、OptiPen(登録商標)(Sanofi-Aventis) OptiPen(登録商標)Pro2(Sanofi-Aventis)、OptiSet(登録商標)(Sanofi-Aventis)およびSoloSTAR(登録商標)(Sanofi-Aventis)で販売されているものを含むが、これらに限定されない。
c. インスリンポンプおよび他のインスリン投与デバイス
ここに提供する配合剤は、インスリン送達デバイス、例えばインスリンポンプまたは他の類似の連続的注入デバイスを使用して糖尿病対象に投与される。インスリン投与デバイスは、典型的にインスリン製剤を含む少なくとも1個の使い捨てリザーバー、ポンプ(すべてのコントロール、ソフトウェア、処理モジュールおよび/またはバッテリーを含む)および皮下注射用のカニューレまたは針およびインスリンリザーバーにカニューレまたは針を連結するチューブを含む使い捨て注入セットを含む。ここで提供される安定な配合剤で使用するために、インスリン投与デバイスは配合されたインスリンおよびヒアルロナン分解酵素を含むリザーバーを含む。配合剤は連続的にまたはボーラスで注射投与できる。さらに、インスリン投与デバイス使用者は、ボーラスを利用することにより使用中のインスリンのプロファイルに影響を与えることができる。例えば、標準的ボーラスで投与することができ、これは、全ての投与量を一挙にポンプ投与する個別注射に類似する注入である。拡張的ボーラスは、高初期投与量を避け、組成物の作用を持続させる長時間にわたる注入である。標準的ボーラスおよび拡張ボーラスの両者を含む組み合わせボーラスもインスリンポンプまたは他の連続的送達系を利用して投与できる。インスリン投与デバイスは当分野で知られており、米国特許番号6,554,798、6,641,533、6,744,350、6,852,104、6,872,200、6,936,029、6,979,326、6,999,854、7,025,743および7,109,878を含むが、これらに限定されず、多くの文献に記載されている。インスリン投与デバイスは、グルコースモニターまたはセンサーに接続でき、さらに血糖値、食事の炭水化物量、または他の入力に基づく推奨インスリン量を計算するための手段を含み得る。さらにインスリン投与デバイスはインプラント可能であり、また対象に外付けすることもできる。
d. 連続的輸液ポンプ系
本発明の配合剤に使用するインスリン投与デバイスは、インスリンポンプまたは連続的皮下インスリン注入を可能にする他の類似デバイスを含む。開放ループ系または閉鎖ループ系を含むインスリン投与デバイスは、典型的に少なくとも1個のインスリン配合剤を含む使い捨てリザーバー、ポンプ(すべてのコントロール、ソフトウェア、処理モジュールおよび/またはバッテリーを含む)および皮下注射用カニューレまたは針およびインスリンリザーバーにカニューレまたは針を連結するチューブを含む使い捨て注入セットを含む。閉鎖ループ系投与デバイスは、さらにグルコースモニターまたはセンサーを含む。インスリン投与デバイスは、超速効性インスリンインスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤を含むリザーバーを含み得る。
インスリン配合剤は連続的におよび/またはボーラス注射で投与し得る。使用者は、安定した点滴または“基礎量”のインスリン製剤を、1日をとおして連続的に提供するようにポンプを設定できる。ポンプはまた付加的放出(“ボーラス”)投与量のインスリン製剤を食事時および使用者摂取により過血糖となったときに放出する。頻繁な血糖モニタリングが、インスリン投与量決定およびインスリンが適切に投与されることを確実にするために必要である。これは、手動モニタリングにより、または別のまたは付属グルコースモニターにより達成できる。さらに、インスリン投与デバイス使用者は、ボーラスを利用することにより使用中のインスリンのプロファイルに影響を与えることができる。例えば、標準的ボーラスで投与することができ、これは、全ての投与量を一挙にポンプ輸送する個別の注射に類似する注入である。拡張的ボーラスは、高初期投与量を避け、組成物の作用を持続させる長時間にわたる注入である。標準的ボーラスおよび拡張ボーラスの両者を含む組み合わせボーラスもインスリンポンプまたは他の連続的送達系を利用して投与できる。
インスリン投与デバイスは当分野で知られており、米国特許番号6,554,798、6,641,533、6,744,350、6,852,104、6,872,200、6,936,029、6,979,326、6,999,854、7,025,743および7,109,878を含むが、これらに限定されないあらゆる場所に記載されている。インスリン投与デバイスはまたグルコースモニターまたはセンサー、例えば、閉鎖ループ系に接続でき、および/または血糖値、食事の炭水化物量、または他の入力に基づく推奨インスリンを計算するための手段を含み得る。さらにインスリン投与デバイスはインプラント可能であるまたは対象に外付けもできる。外的インスリン注入ポンプの使用者は、個体の注意深い選択、注意深いモニタリング、および十分な教育および長期フォローアップが必要である。このケアは、一般的にインスリンポンプ処置の特定の専門知識および経験を有する医療従事者の多領域チームにより提供される。
i. 開放ループ系
開放ループ系を、ここに提供する配合剤で使用できる。開放ループ系は、典型的にインスリン製剤を含む少なくとも1個の使い捨てリザーバー、ポンプ(すべてコントロール、ソフトウェア、処理モジュールおよび/またはバッテリーを含む)および皮下注射用カニューレまたは針およびインスリンリザーバーにカニューレまたは針を連結するチューブを含む使い捨て注入セットを含む。開放ループ系は小(基礎)投与量を数分毎に、そして患者が手動で設定する大(ボーラス)投与量を注入する。しかし、開放ループ系は、一般的にグルコースモニターまたはセンサーを含まず、それ故に、患者の血清グルコースレベル変換に応答できない。血糖値を測定するための種々の方法およびデバイスは当業者に知られている。多くの糖尿病患者で個人的に血糖値をモニタリングするために使用される慣用の技術は定期的採血、試験紙への血液の塗布、および熱量、電気化学、または光学系を使用する血糖値の決定を含む。多様なデバイスが、血流または間質性体液中の検体、例えばグルコースの連続的または自動モニタリングのために開発されている。これらのデバイスのいくつかは、患者の血管または皮下組織に直接インプラントされる電気化学センサーを使用する。グルコースレベルをモニタリングするための方法およびデバイスは、例えば、引用により本明細書に包含させる米国特許番号5,001,054、5,009,230,5,713,353、6,560,471、6,574,490、6,892,085、6,958,809、7,299,081、7,774,145、7,826,879、7,857,760および7,885,699に記載のものを含むが、これらに限定されない。
インスリン送達系、例えばインスリンポンプは当分野で知られており、開放ループ系で使用できる。開放ループインスリン投与デバイスの例(例えば上記のもの)は、引用により本明細書に包含させる米国特許番号4,562,751、4,678,408、4,685,903、4,373,527、4,573,994、6,554,798、6,641,533、6,744,350、6,852,104、6,872,200、6,936,029、6,979,326、6,999,854、7,109,878、7,938,797および7,959,598に記載のものを含むが、これらに限定されない。これらおよび当業者により容易に同定できる類似の系を、ここに提供する配合剤の投与に使用できる。インスリン投与デバイス典型的には、インスリン製剤、例えば本明細書に記載する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤を含む、一般的に使い捨てである1個以上のリザーバーを含む。数例において、配合剤は、注入チューブおよびカニューレまたは針を使用して投与される。他の例において、注入デバイスを直接皮膚に結合し、配合剤は、注入デバイスから、カニューレまたは針を通して、チューブを使用することなく体内に流れる。さらなる例において、注入デバイスは体内にあり、注入チューブを所望により使用して配合剤を投与できる。
ii. 閉鎖ループ系
閉鎖ループ系は、ある場合人工膵臓と呼ばれるが、ここに提供する配合剤の使用のために特に興味深い。閉鎖ループ系は、統合された連続的グルコースモニター、インスリンポンプまたは他の送液系および血糖値のリアルタイム測定に基づく血糖コントロールのための必要インスリン注入を常に計算する数学アルゴリズムを含むコントローラーを備えた系である。このような系は、最適化されたとき、健常非糖尿病対象で観察される自然なインスリン応答および血糖コントロールに類似する、一定で非常に密接な血糖コントロールを容易にできる。しかしながら、効果的であるためには、閉鎖ループ系は、信頼できかつ正確な連続的グルコースモニターおよび極めて即効性のインスリン投与を必要とする。例えば、速効性のインスリン類の皮下投与と関連したインスリン吸収および作用の遅延は、大きな食後血糖変動を起こし得る(Hovorka et al. (2006) Diabetic Med. 23:1-12)。対外モニタリング系のインスリン吸収、インスリン作用、間質性グルコース動態、および投与時間の遅延、例えば微小透析技術によるものは、インスリン投与からその検出可能なグルコース低下効果のピークまで全体で100分間以上のタイムラグを生じ得る(Hovorka et al. (2006) Diabetic Med. 23:1-12)。こうして、一旦投与された後、インスリンはその測定可能な効果を約2時間上げ続ける。これは閉鎖ループ系を使用した、食後グルコース濃度の有効低下を複雑化し得る。最初に、グルコース上昇が検出されなければならない。しかしながら、これは典型的に約10〜40分間の遅延後のみに起こる。系は食事が消化されていることおよび適当な量のインスリンが投与されていることを決定しなければならない。系が‘誤った’インスリン投与量を後で相殺する能力は、長期遅延および一旦投与されたインスリンを‘撤回’できないことにより解決される。このような問題は、少なくとも一部、薬動力学的改善を伴う吸収速度およびレベルの増加を示し得る速効性のインスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤、例えばここに提供されるものの使用により解消され得る(例えばUS20090304665およびWO2009134380参照)。速効性のインスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤は速効性のインスリン類単独と比較して減少したtmax(すなわち速い最高濃度達成)を有し、血糖値のコントロールを、速効性のインスリン類単独より速く開始する。この吸収の増加および作用開始はインスリン作用およびグルコースモニタリングおよび入力のラグを減らし、血糖値をより密接にコントロールでき、血糖変動を減らす、より有効な閉鎖ループ系をもたらし得る。
閉鎖ループ系は当分野で知られ、引用により本明細書に包含させる米国特許番号5,279,543、5,569,186、6,558,351、6,558,345、6,589,229、6,669,663、6,740,072、7,267,665および7,354,420を含むが、これに限定されない多くの文献に記載されている。これらおよび当業者により容易に選定される類似の系は、ここに提供する配合剤の投与に使用できる。閉鎖ループ系は、血糖値を測定するセンサー系、コントローラーおよび送達系を含む。この集積系は、体内の血糖濃度変化に応答したときに完全に機能しているヒトβ細胞でなされるのと類似の濃度プロファイルで対象にインスリンを投与するように注入デバイスを制御するように、膵臓ベータ細胞(β細胞)を模倣する。それ故に、系は体内の血糖値に対する自然なインスリン応答を模倣し、インスリンを有効に使用させるだけでなく、インスリンが代謝効果および分裂促進的効果を有するために、他の身体機能にも関係する。さらに、閉鎖ループ系を使用して達成される血糖コントロールは、食事の量および時間、または他の因子について何ら情報を必要としない。系は、単にリアルタイム血糖測定値のみに従い得る。グルコースセンサーは、体内の血糖値を表すセンサーシグナルを発生させ、センサーシグナルをコントローラーに送る。コントローラーはセンサーシグナルを受信し、インスリン送達系と連絡する命令を発生させる。インスリン投与系は命令を受信し、命令に応答してインスリンを体内に注入する。下に、ここに提供する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤の投与に使用できる閉鎖ループ系の構成部分を示す。当業者は、配合剤に使用するための適当な閉鎖ループ系を容易に選択できることは理解される。このような系は、米国特許番号5,279,543、5,569,186、6,558,351、6,558,345、6,589,229、6,669,663、6,740,072、7,267,665および7,354,420のものを含み、これらに限定されない文献に記載されている。系の個々の部分はまた文献に個々におよび血糖コントロールを達成するために使用する閉鎖ループ系全体で記載されている。ここに提供される例は、単なる例であり、他の閉鎖ループ系または個々の部分をここに提供する配合剤の投与に使用できることは理解される。
閉鎖ループ系は、連続的に機能するグルコースセンサーまたはモニターを含む。このようなデバイスは、皮下に挿入し、小レシーバーに無線周波数遠隔測定法によりワイアレスにグルコースデータを送信する小トランスミッターと結合した針型センサー類を含み得る。数例において、センサーを、センサーが皮下組織に配置されたら除去され、廃棄される挿入針を使用して対象の皮膚に挿入される。挿入針は、皮膚への挿入中センサーを維持するための鋭い先およびオープンスロットを有する(例えば米国特許番号5,586,553および5,954,643参照)。閉鎖ループ系において使用されるセンサーは、所望により皮下組織の間質性体液(ISF)に暴露される3個の電極を含む。3個の電極は回路を形成するために使用される作用電極、基準電極および対電極を含む。適当な電圧を作用電極および基準電極を介して適用したとき、ISFはこれらの電極間にインピーダンスを提供する。アナログ電流シグナルが作用電極から体をとおり、対電極に流れる。作用電極の電圧は、一般的に既定に維持され、基準電極の電圧は、例えば、300〜700mVのような設定電圧V設定に維持できる。電極間の電圧差異により刺激されるほとんどの顕著な反応は、最初にグルコン酸および過酸化水素(H2O2)を産生するためにグルコースオキシダーゼ酵素(GOX)と反応するため、グルコースの減少である。次いで、H2O2が作用電極表面で水(H2O)および(O−)に還元される。O−はセンサー電気成分から正荷電を取り、故に電子を反発させ、電流を起こす。これは、センサー電極に接触するISF中のグルコース濃度に比例するアナログ電流シグナルを生じる(例えば米国特許7,354,420参照)。
いくつかの例において、1個を超えるセンサーを血糖の測定に使用する。例えば、冗長なセンサー類を使用でき、対象は、テレメーターの特徴的送信電子回路によりセンサーが拒否されたとき気づき得る。インディケーターも、そのセンサーがまた機能しているおよび/またはまた機能しているセンサー数を対象に知らせ得る。他の例において、センサーシグナルを平均化または他の手段により組み合わせ得る。さらに、種々のタイプのセンサー類を使用できる。例えば、内部グルコースセンサーおよび外部グルコースセンサーを同時に血糖を測定するために使用できる。
閉鎖ループ系で使用できるグルコースセンサー類は周知であり、容易に同定でき、所望により、さらに当業者により修飾できる。内部グルコースセンサー類の例は、米国特許番号5,497,772、5,660,163、5,791,344、5,569,186および6,895,265に記載のものを含むが、これらに限定されない。盛んに使用されているグルコースセンサーの例は、米国特許6,011,984に記載されているものである。グルコースセンサー系はまた、光線、伝導性、ジェットサンプリング、微小透析、マイクロポーレーション、超音波サンプリング、逆イオントフォレシス、または他の方法(例えば米国特許番号5,433,197および5,945,676、および国際特許公開WO199929230)を含む他の検知技術も使用する。数例において、作用電極のみが皮下組織に位置し、ISFと接触し、および対電極および基準電極は体外に位置し、皮膚と接触する。対電極および基準電極はモニターハウジング表面に位置でき、皮膚にテレメーターの特徴的モニターの一部として固定され得る。さらなる例において、対電極および基準電極は他のデバイスを使用して皮膚に固定され、例えばワイヤを電極にまき、電極を皮膚にテーピングし、電極を皮膚に接触する監視の下側に置く。なおさらに、1個を超える作用電極を冗長性のために皮下組織下に置き得る。間質性体液もまた対象から回収し、体内にインプラントされていない外部センサー上を流し得る。
コントローラーはグルコースセンサーからの入力を受信する。コントローラーは、膵臓ベータ細胞(β細胞)を模倣するように設計され、血糖コントロールに必要な量のインスリンを注入するようにインスリン投与デバイスに命令する。コントローラーは、グルコースセンサーで検出されたグルコースレベルに基づき必要量のインスリンを計算するアルゴリズムを備えたソフトウェアを利用する。アルゴリズムの例は、どの程度インスリンが送達されたかに関わらず体内のグルコース変動が最少となるように設計されたアルゴリズムは過度の体重増加、高血圧、およびアテローム性動脈硬化症を生じ得るため、β細胞を密接に模倣するものを含む。典型的に、系はインビボインスリン分泌パターンを模倣し、正常健常個体で経験されるインビボβ細胞と一致してこのパターンを調節することを意図する。閉鎖ループ系で有用なコントロールアルゴリズは、比例積分制御(PID)コントローラーで使用されているものを意味する。比例制御コントローラーおよびモデル予測制御(MPC)アルゴリズムもある系で使用できる(Hovorka et al. (2006) Diabetic Med. 23:1-12)。アルゴリズムの例はHovorka et al. (Diabetic Med. (2006) 23:1-12), Shimoda et al., (Front Med Biol Eng (1997) 8:197-211), Shichiri et al. (Artif. Organs (1998) 22:32-42), Steil et al. (Diabetes Technol Ther (2003) 5: 953-964), Kalatz et al., (Acta Diabetol. (1999) 36:215)および米国特許番号5,279,543、5,569,186、6,558,351、6,558,345、6,589,229、6,740,042、6,669,663、6,740,072、7,267,665および7,354,420および米国特許公開番号20070243567により記載されているものを含むが、これらに限定されない。
一例において、PIDコントローラーは閉鎖ループ系で使用される。PIDコントローラーはインスリン注入を、グルコース変動を、標的グルコース(比例的要素)からの逸脱、環境および標的グルコース間の曲線化面積 (積分要素)、および環境グルコース(誘導要素)変化の3点の評価により連続的に調節する。一般的に、グルコース変化に対するインビボβ細胞応答は、“第一”相および“第二”相インスリン応答により特徴づけられる。β細胞の二相インスリン応答は、比例的要素に積分および誘導(PID)コントローラーを使用して模倣できる(例えば米国特許7,354,420参照)。
コントローラーは所望のインスリン投与のための命令を生じる。インスリン送達系、例えばインスリンポンプは当分野で知られており、閉鎖ループ系で使用できる。インスリン投与デバイス(例えば上記のもの)の例は、米国特許番号4,562,751、4,678,408、4,685,903、4,373,527、4,573,994、6,554,798、6,641,533、6,744,350、6,852,104、6,872,200、6,936,029、6,979,326、6,999,854、7,025,743および7,109,878に記載のものを含むが、これらに限定されない。インスリン投与デバイスは典型的に一般的に使い捨てであり、インスリン製剤、例えば本明細書に記載する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤を含む1個以上のリザーバーを含む。数例において、配合剤は注入チューブおよびカニューレまたは針を介して投与される。他の例において、注入デバイスは直接皮膚に接続され、配合剤は注入デバイスからカニューレまたは針を介して、直接チューブを使用せずに注入される。さらなる例において、注入デバイスは体内であり、注入チューブは、所望により配合剤の送達に使用できる。閉鎖ループ系はまたフィルター、キャリブレータおよびトランスミッターを含むが、これらに限定されない付加的要素を含み得る。
H. インスリンまたはヒアルロナン分解酵素をコードする核酸およびそのポリペプチド類の製造方法
本明細書に記載するインスリンおよびヒアルロナン分解酵素のポリペプチドは、当技術分野で周知のタンパク質精製方法および組換えタンパク質発現方法によって得ることができる。ポリペプチドは化学的に合成することもできる。例えばインスリンのA鎖およびB鎖を化学合成してから、それらを、例えば還元−再酸化反応などにより、ジスルフィド結合で架橋することができる。ポリペプチドを組換え手段によって製造する場合は、所望の遺伝子をコードする核酸を同定するための当業者に知られる任意の方法を使用することができる。当技術分野で利用できる任意の方法を使って、例えば細胞または組織供給源から、ヒアルロニダーゼをコードする完全長(すなわち全コード領域を包含する)cDNAまたはゲノムDNAクローンを得ることができる。改変型または変異型インスリンまたはヒアルロナン分解酵素は、野生型ポリペプチドから、部位特異的突然変異誘発法などによって工学的に作製することができる。
ポリペプチドは、核酸分子をクローン化または単離するための当技術分野で知られる任意の利用可能な方法を使って、クローン化または単離することができる。そのような方法には、核酸のPCR増幅およびライブラリーのスクリーニング、例えば核酸ハイブリダイゼーションスクリーニング、抗体に基づくスクリーニング、および活性に基づくスクリーニングが含まれる。
例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を含む核酸増幅法を使って、所望のポリペプチドをコードする核酸分子を単離することができる。核酸含有材料を出発物質として使用して、そこから所望のポリペプチドコード核酸分子を単離することができる。増幅方法では、例えばDNAおよびmRNA調製物、細胞抽出物、組織抽出物、体液試料(例えば血液、精子、唾液)、および健常被験者および/または罹患被験者から得た試料を使用することができる。核酸ライブラリーも出発物質の供給源として使用することができる。所望のポリペプチドが増幅されるようにプライマーを設計することができる。例えば、所望のポリペプチドがそこから生成される発現された配列に基づいて、プライマーを設計することができる。プライマーは、逆翻訳に基づいて設計することができる。増幅によって生成した核酸分子を配列決定し、所望のポリペプチドがコードされていることを確認することができる。
追加ヌクレオチド配列、例えば合成遺伝子をベクター(例えばタンパク質発現ベクターまたはコアタンパク質コードDNA配列を増幅するために設計されたベクター)中にクローニングするための制限エンドヌクレアーゼ部位を含有するリンカー配列などを、ポリペプチドコード核酸分子につなぐことができる。さらにまた、機能的DNA要素を指定する追加ヌクレオチド配列をポリペプチドコード核酸分子に作動的に連結することもできる。そのような配列の例には、細胞内タンパク質発現が容易になるように設計されたプロモーター配列、およびタンパク質分泌が容易になるように設計された分泌配列、例えば異種シグナル配列などがあるが、これらに限定されない。そのような配列は当業者には知られている。タンパク質結合領域を指定する塩基配列などの追加ヌクレオチド残基配列も酵素コード核酸分子に連結することができる。そのような領域には、特異的標的細胞への酵素の取り込みを容易にするか、合成遺伝子の産物の薬物動態を他の形で変化させる残基の配列、または特異的標的細胞への酵素の取り込みを容易にするか、合成遺伝子の産物の薬物動態を他の形で変化させるタンパク質をコードする残基の配列などがあるが、これらに限定されない。例えば酵素をPEG部分に連結することができる。
さらに、例えばポリペプチドの検出またはアフィニティ精製を助けるためなどの目的で、タグまたは他の部分を付加することもできる。例えば、エピトープタグまたは他の検出可能マーカーを指定する塩基配列などの追加ヌクレオチド残基配列も、酵素コード核酸分子に連結することができる。そのような配列の典型例には、Hisタグ(例えば6×His、HHHHHH;配列番号54)またはFlagタグ(DYKDDDDK;配列番号55)などがある。
次に、同定され単離された核酸を適当なクローニングベクターに挿入することができる。当技術分野で知られる多数のベクター−宿主系を使用することができる。考えられるベクターには、プラスミドまたは改変ウイルスなどがあり、これらに限定されないが、ベクター系は使用する宿主細胞と適合しなければならない。そのようなベクターには、ラムダ誘導体などのバクテリオファージ、またはpCMV4、pBR322もしくはpUCプラスミド誘導体などのプラスミド、またはBluescriptベクター(Stratagene, La Jolla, CA)などがあるが、これらに限定されない。他の発現ベクターには、本明細書に例示するHZ24発現ベクターがある。クローニングベクターへの挿入は、例えば、相補的付着末端を持つクローニングベクター中に、DNAフラグメントをライゲートすることによって達成することができる。挿入はTOPOクローニングベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)を使って達成することができる。DNAをフラグメント化するために使用される相補的制限部位がクローニングベクター中に存在しない場合は、DNA分子の末端を酵素的に修飾することができる。あるいは、ヌクレオチド配列(リンカー)をDNA末端にライゲートすることによって所望する任意の部位を作り出すこともでき、これらのライゲートされたリンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードする特異的な化学合成オリゴヌクレオチドを含有することができる。これに代わる方法として、切断されたベクターおよびタンパク質遺伝子を、ホモポリマーテーリング(homopolymer tailing)によって修飾することもできる。組換え分子は、例えば形質転換、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーションおよびソノポレーションなどによって、その遺伝子配列のコピーが数多く生成するように、宿主細胞中に導入することができる。
インスリンは種々の技法を使って製造することができる(例えばLadisch et al. (1992) Biotechnol. Prog. 8:469-478参照)。いくつかの例では、プレプロインスリンポリペプチドまたはプロインスリンポリペプチドをコードする核酸を、発現ベクター中に挿入する。発現させた後、プレプロインスリンポリペプチドまたはプロインスリンポリペプチドは、シグナル配列および/またはCペプチドを切断する酵素的方法または化学的方法(これは、A鎖およびB鎖をもたらし、それらが例えば還元−再酸化反応などによってジスルフィド結合で架橋される)によって、インスリンに変換される(例えばCousens et al., (1987) Gene 61:265-275, Chance et al., (1993) Diabetes Care 4:147-154参照)。もう一つの例では、インスリンのA鎖およびB鎖をコードする核酸を、1つまたは2つの発現ベクターに挿入して、1つの発現ベクターから単一ポリペプチドとして共発現させるか、1つまたは2つの発現ベクターから2つのポリペプチドとして発現させる。したがって、C鎖の非存在下で、A鎖ポリペプチドとB鎖ポリペプチドを、別々に発現させてからそれらを組み合わせてインスリンを生成させるか、共発現させることができる。A鎖およびB鎖を単一ポリペプチドとして共発現させる例では、サブユニットをコードする核酸が、後述するリンカーまたはスペーサーのようなリンカーまたはスペーサーを、B鎖とA鎖の間にコードすることもできる。発現ベクター中に挿入される核酸は、例えばインスリンB鎖、リンカー(例えばアラニン−アラニン−リジンリンカーなど)およびA鎖をコードする核酸を含有して、例えば“インスリンB鎖−Ala−Ala−Lys−インスリンA鎖”の発現をもたらすことができる。
特別な態様では、宿主細胞を、単離されたタンパク質遺伝子、cDNA、または合成DNA配列を組み込んだ組換えDNA分子で形質転換することにより、その遺伝子のコピーを多数生成させることができる。こうして、形質転換体を成長させ、形質転換体から組換えDNA分子を単離し、必要であれば、単離した組換えDNAから挿入された遺伝子を回収することにより、遺伝子を大量に得ることができる。
1. ベクターおよび細胞
本明細書に記載する任意のタンパク質など、所望のタンパク質の1つ以上を組換え発現させるために、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の全部または一部を含有する核酸を、適当な発現ベクター中に、すなわち挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳に必要な要素を含有するベクター中に、挿入することができる。必要な転写および翻訳シグナルは、酵素遺伝子の天然プロモーターおよび/またはそれらの隣接領域によって供給され得る。
酵素をコードする核酸を含有するベクターも提供する。ベクターを含有する細胞も提供する。細胞には真核細胞および原核細胞が含まれ、ベクターはそこでの使用に適した任意のベクターである。
ベクターを含有する原核細胞および真核細胞(内皮細胞を含む)を提供する。そのような細胞には、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、古細菌、植物細胞、昆虫細胞および動物細胞などがある。細胞は、コードされているタンパク質が細胞によって発現されるような条件下で上述の細胞を成長させ、発現されたタンパク質を回収することにより、そのタンパク質を生産するために使用される。本発明では、例えば酵素を、培地中に分泌させることができる。
天然のまたは異種のシグナル配列に結合された可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列ならびにその複数コピーを含有するベクターを提供する。ベクターは酵素タンパク質が細胞中で発現されるように選択するか、酵素タンパク質が分泌タンパク質として発現されるように選択することができる。
種々の宿主−ベクター系を使って、タンパク質コード配列を発現させることができる。これらには、ウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルスおよび他のウイルス)に感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞;酵母ベクターを含有する酵母などの微生物;またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAで形質転換された細菌などがあるが、これらに限定されない。ベクターの発現要素はその強さおよび特異性がさまざまである。使用する宿主−ベクター系に依存して、数ある適切な転写および翻訳要素のどれでも1つを使用することができる。
ベクター中にDNAフラグメントを挿入するための当業者に知られる任意の方法を使用して、適当な転写/翻訳制御シグナルとタンパク質コード配列とを含むキメラ遺伝子を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組換えDNAおよび合成技法、ならびにインビボ組換え体(遺伝子組換え)を含めることができる。タンパク質またはそのドメイン、誘導体、フラグメントもしくはホモログをコードする核酸配列の発現は、遺伝子またはそのフラグメントが組換えDNA分子で形質転換された宿主中で発現されるように、第2の核酸配列によって調節することができる。例えば、タンパク質の発現は、当技術分野で知られる任意のプロモーター/エンハンサーで制御することができる。具体的一態様では、プロモーターが、所望するタンパク質の遺伝子にとって天然のプロモーターではない。使用することができるプロモーターには、SV40初期プロモーター(Bernoist and Chambon, Nature 290:304-310 (1981)))、ラウス肉腫ウイルスの3’末端反復配列(long terminal repeat)に含まれるプロモーター(Yamamoto et al. Cell 22:787-797 (1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1441-1445 (1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., Nature 296:39-42 (1982));原核発現ベクター、例えばβ−ラクタマーゼプロモーター(Jay et al., (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:5543)またはtacプロモーター(DeBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:21-25 (1983));“Useful Proteins from Recombinant Bacteria”: in Scientific American 242:74-94 (1980)も参照;ノパリンシンテターゼプロモーター(Herrera-Estrella et al., Nature 303:209-213 (1984))またはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardner et al., Nucleic Acids Res. 9:2871 (1981))、および光合成酵素リブロースビスリン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrella et al., Nature 310:115-120 (1984))を含有する植物発現ベクター;酵母および他の真菌由来のプロモーター要素、例えばGal4プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼプロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、および組織特異性を示し、トランスジェニック動物で使用されてきた、以下の動物転写制御領域:膵腺房細胞中で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al., Cell 38:639-646 (1984); Ornitz et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409 (1986); MacDonald, Hepatology 7:425-515 (1987));膵β細胞中で活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan et al., Nature 315:115-122 (1985))、リンパ球様細胞中で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al., Cell 38:647-658 (1984); Adams et al., Nature 318:533-538 (1985); Alexander et al., Mol. Cell Biol. 7:1436-1444 (1987))、精巣、乳房、リンパ球様細胞およびマスト細胞中で活性であるマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域(Leder et al., Cell 45:485-495 (1986))、肝臓中で活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al., Genes and Devel. 1:268-276 (1987))、肝臓中で活性なα−フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf et al., Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648 (1985); Hammer et al., Science 235:53-58 1987))、肝臓中で活性なα−1アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al., Genes and Devel. 1:161-171 (1987))、骨髄性細胞中で活性なβグロビン遺伝子制御領域(Magram et al., Nature 315:338-340 (1985); Kollias et al., Cell 46:89-94 (1986))、脳の希突起膠細胞中で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al., Cell 48:703-712 (1987))、骨格筋中で活性なミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Shani, Nature 314:283-286 (1985))、および視床下部の性腺刺激細胞中で活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al., Science 234:1372-1378 (1986))を含むが、これらに限定されない。
具体的態様において、所望のタンパク質またはそのドメイン、フラグメント、誘導体もしくはホモログをコードする核酸に作動的に連結されたプロモーター、1つ以上の複製起点、および場合によっては、1つ以上の選択可能マーカー(例えば抗生物質耐性遺伝子)を含有するベクターを使用する。大腸菌細胞を形質転換するための典型的プラスミドベクターには、例えばpQE発現ベクター(Qiagen, Valencia, CA)から入手可能;Qiagenが発行したこの系に関する文献も参照されたい)がある。pQEベクターは、ファージT5プロモーター(大腸菌RNAポリメラーゼによって認識される)と、大腸菌における組換えタンパク質の緻密に調節された高レベル発現をもたらすための二重lacオペレーター抑制モジュール(double lac operator repression module)、効率のよい翻訳のための合成リボソーム結合部位(RBS II)、6×Hisタグコード配列、t0およびT1転写ターミネーター、ColE1複製起点、およびアンピシリン耐性を付与するためのβ−ラクタマーゼ遺伝子を持つ。pQEベクターは6×Hisタグを組換えタンパク質のN末端またはC末端に置くことを可能にする。そのようなプラスミドには、3つの読み枠全てにマルチクローニング部位を与え、N末端が6×Hisタグで標識されたタンパク質の発現をもたらす、pQE32、pQE30、およびpQE31がある。大腸菌細胞を形質転換するための他の典型的プラスミドベクターには、例えばpET発現ベクター(米国特許第4,952,496号;NOVAGEN(Madison, WI)から入手可能;NOVAGENが発行したこの系に関する文献も参照されたい)などがある。そのようなプラスミドには、pET11a(これは、T7 lacプロモーター、T7ターミネーター、誘導性大腸菌lacオペレーター、およびlacリプレッサー遺伝子を含有する);pET12a−c(これは、T7プロモーター、T7ターミネーター、および大腸菌ompT分泌シグナルを含有する);ならびにpET15bおよびpET19b(NOVAGEN, MADISON, WI)(これらは、Hisカラムによる精製に使用するためのHis−Tag(商標)リーダー配列、およびカラムでの精製後に行われる切断を可能にするトロンビン切断部位、T7−lacプロモーター領域およびT7ターミネーターを含有する)などがある。
哺乳動物細胞発現用ベクターの例は、HZ24発現ベクターである。HZ24発現ベクターはpCIベクターバックボーン(Promega)から誘導された。これは、β−ラクタマーゼ耐性遺伝子(AmpR)をコードするDNA、F1複製起点、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー/プロモーター領域(CMV)、およびSV40後期ポリアデニル化シグナル(SV40)を含有する。この発現ベクターは、ECMVウイルス(Clontech)由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)およびマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子も持つ。
2. リンカー部分
いくつかの例では、例えばB鎖のC末端が短いリンカーでA鎖のN末端に接合されるようになっている、リンカーを持つA鎖ポリペプチドとB鎖ポリペプチドを作製することによって、インスリンが製造される。A鎖とB鎖は、リンカーを含有する単一ポリペプチドから発現させるか、別々に発現させてからリンカーで接合することができる。リンカー部分は、所望する性質に応じて選択される。
リンカー部分は、A鎖とB鎖がインスリンの天然のコンフォメーションを模倣することができるように、十分に長くフレキシブルでなければならない。リンカーは、インスリンA鎖およびB鎖に適した部分であれば、なんでもよい。そのような部分には、ペプチド性結合(peptidic linkage);アミノ酸およびペプチド結合、典型的に、1〜約60個のアミノ酸を含有するもの;化学的リンカー、例えばヘテロ二官能性切断可能架橋剤、光切断可能リンカー、および酸切断可能リンカーなどがあるが、これらに限定されない。
リンカー部分はペプチドであることができる。ペプチドリンカーは、典型的に、約2〜約60個のアミノ酸残基、例えば約5〜約40個、または約10〜約30個のアミノ酸残基を持つ。好都合なことに、ペプチド性リンカー(peptidic linker)は核酸にコードして、大腸菌などの宿主細胞における発現時に融合タンパク質に組み込むことができる。ある例では、発現時に“インスリンB鎖−AAK−インスリンA鎖”ポリペプチドが生成するように、インスリンB鎖をコードする核酸とA鎖をコードする核酸との間にある核酸中に、アラニン−アラニン−リジン(AAK)(配列番号178)リンカーをコードする。ペプチドリンカーは、フレキシブルなスペーサーアミノ酸配列、例えば単鎖抗体研究で知られているものなどであることができる。そのような既知リンカーの例には、RPPPPC(配列番号166)またはSSPPPPC(配列番号167)、GGGGS(配列番号168)、(GGGGS)n(配列番号169)、GKSSGSGSESKS(配列番号170)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号171)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号172)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号173)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号174)、EGKSSGSGSESKEF(配列番号175)、SRSSG(配列番号176)およびSGSSC(配列番号177)があるが、これらに限定されない。
あるいは、ペプチドリンカー部分はVM(配列番号179)またはAM(配列番号180)であるか、式:AM(G2−4S)xAM[式中、Xは1〜11の整数である](配列番号181)で記述される構造を持つこともできる。例えばHuston et al.(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5879-5883; Whitlow, M., et al. (1993) Protein Engineering 6:989-995; Newton et al. (1996) Biochemistry 35:545-553; A. J. Cumber et al. (1992) Bioconj. Chem. 3:397-401; Ladurner et al. (1997) J. Mol. Biol. 273:330-337;および米国特許第4,894,443号などには、さらなる連結部分が記載されている。
いくつかの例では、ペプチドリンカーが核酸によってコードされ、大腸菌や出芽酵母(S. cerevisiae)などの宿主細胞中で発現させた時に、B鎖とA鎖の間に組み込まれる。別の例では、ペプチドリンカーが化学的方法によって合成される。これは、A鎖およびB鎖の一つ以上の合成とは別個のプロトコルで行うことができ、構成要素は、その後に、例えばヘテロ二官能性リンカーなどを使って接合される。あるいは、ペプチドリンカーを一方のインスリン鎖のN末端またはC末端に合成し、次にそれを他方の鎖に、そのペプチドリンカーを介して、例えばヘテロ二官能性リンカーなどを使って連結することもできる。
ここでは、インスリンA鎖およびB鎖を連結するために、当業者に知られる任意のリンカーを使用することができる。鎖を化学的に連結するのに適したリンカーおよび結合様式には、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、ヒンダード(hindered)ジスルフィド結合、およびアミン基やチオール基などの遊離反応性基間の共有結合などがあるが、これらに限定されない。これらの結合は、ヘテロ二官能性試薬を使って一方または両方のポリペプチド上に反応性チオール基を生成させた後、一方のポリペプチド上のチオール基を、他方の鎖上の反応性チオール基または反応性マレイミド基もしくはチオール基を結合させることができるアミン基と反応させることによって作られる。他のリンカーには、酸性が強い細胞内区画では切断されるであろう酸切断可能リンカー、例えばビスマレイミドエトキシプロパン(bismaleimideothoxy propane)、酸不安定性トランスフェリンコンジュゲートおよびアジピン酸ジヒドラジド(adipic acid diihydrazide);UVまたは視覚光に曝露すると切断される架橋剤、ならびにヒトIgG1の定常領域に由来する種々のドメイン(例えばCH1、CH2、およびCH3)などのリンカー(Batra et al. (1993) Molecular Immunol. 30:379-386参照)などがある。いくつかの態様では、各リンカーの望ましい性質を利用するために、数個のリンカーを含めることができる。化学的リンカーおよびペプチドリンカーは、リンカーをインスリンA鎖およびB鎖に共有結合でカップリングすることによって挿入することができる。そのような共有結合的カップリングは、下記のヘテロ二官能性剤を使って達成することができる。B鎖とA鎖の間にリンカーをコードしているDNAを発現させることによって、ペプチドリンカーを連結することもできる。
インスリンのA鎖とB鎖を接合するために使用することができる他のリンカーには、次に挙げるものがある:酵素基質、例えばカテプシンB基質、カテプシンD基質、トリプシン基質、トロンビン基質、スブチリシン基質、第Xa因子基質、およびエンテロキナーゼ基質;溶解性、可撓性(flexibility)および/または細胞内切断可能性を増加させるリンカーには、(glymser)nおよび(sermgly)n[式中、mは1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは2〜4であり、nは1〜30、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である]などのリンカーがある(例えば典型的リンカーが記載されているPCT国際出願WO96/06641を参照されたい)。いくつかの態様では、各リンカーの望ましい性質を利用するために、数個のリンカーを含めることができる。
3. 発現
インスリンおよびヒアルロナン分解酵素ポリペプチドは、インビボ法およびインビトロ法を含む、当業者に知られる任意の方法によって製造することができる。所望のタンパク質は、要求される量および形態(例えば投与および処置に必要とされる量および形態)でそのタンパク質を生産するのに適した任意の生物中で発現させることができる。発現宿主には、原核生物および真核生物、例えば大腸菌、酵母、植物、昆虫細胞、哺乳動物細胞(ヒト細胞株およびトランスジェニック動物を含む)が含まれる。発現宿主は、そのタンパク質産生レベルが異なり得ると共に、発現されたタンパク質上に存在する翻訳後修飾のタイプも異なり得る。発現宿主の選択は、これらの因子および他の因子、例えば調節および安全性の問題、生産コスト、ならびに精製の必要性および精製の方法などに基づいて行うことができる。
多くの発現ベクターが利用可能であり、当業者に知られており、それらをタンパク質の発現に使用することができる。発現ベクターの選択は、宿主発現系の選択によって左右されるだろう。一般に発現ベクターは、転写プロモーターを含み、場合によってはエンハンサー、翻訳シグナル、ならびに転写および翻訳終結シグナルを含み得る。安定形質転換に使用される発現ベクターは、典型的に、形質転換細胞の選択と維持を可能にする選択可能マーカーを持つ。複製起点を使用してベクターのコピー数を増幅することができる場合もある。
可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドは、タンパク質融合物として利用し、または発現させることもできる。例えば、酵素に付加的機能を加えるために、酵素融合物を作製することができる。酵素融合タンパク質の例には、シグナル配列、タグ、例えば位置確認(localization)用のタグ、例えばhis6タグもしくはmycタグ、または精製用タグ、例えばGST融合物、ならびにタンパク質分泌および/または膜会合を指示するための配列の融合物などがあるが、これらに限定されない。
a. 原核細胞
原核生物、特に大腸菌は、大量のタンパク質を生産するための系になる。大腸菌の形質転換は当業者に周知の簡便で迅速な技法である。大腸菌用の発現ベクターは誘導性プロモーターを含有することができ、そのようなプロモーターは、高レベルのタンパク質発現を誘導するのに有用であり、宿主細胞に対して何らかの毒性を示すタンパク質を発現させるのにも有用である。誘導性プロモーターの例には、lacプロモーター、trpプロモーター、ハイブリッドtacプロモーター、T7およびSP6 RNAプロモーター、ならびに温度感受性λPLプロモーターなどがある。
タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)は、大腸菌の細胞質環境中で発現させることができる。細胞質は還元的環境であり、一部の分子にとって、これは不溶性封入体の形成をもたらし得る。タンパク質を再可溶化するにはジチオスレイトールやβ−メルカプトエタノールなどの還元剤およびグアニジン−HClや尿素などの変性剤を使用することができる。代替的アプローチは、酸化的環境ならびにシャペロニン様イソメラーゼおよびジスルフィドイソメラーゼを提供し、可溶性タンパク質の産生をもたらすことができる周辺腔におけるタンパク質の発現である。典型的に、タンパク質をペリプラズムに向かわせるリーダー配列が、発現されるべきタンパク質に融合される。その場合、リーダーは、ペリプラズム内で、シグナルペプチダーゼによって除去される。ペリプラズムを標的とする(periplasmic-targeting)リーダー配列には、ペクチン酸リアーゼ遺伝子由来のpelBリーダー、およびアルカリホスファターゼ遺伝子由来のリーダーなどがある。ペリプラズム発現により、発現されたタンパク質の培養培地への漏出が可能になる場合もある。タンパク質の分泌は培養上清からの迅速かつ簡便な精製を可能にする。分泌されないタンパク質は浸透圧溶解によってペリプラズムから得ることができる。細胞質発現と同様に、時には、タンパク質が不溶性になることもあり、可溶化および再フォールディングが容易になるように、変性剤および還元剤を使用することができる。誘導温度および成長温度も、発現レベルおよび溶解性に影響を及ぼすことがあり、典型的に、25℃〜37℃の温度が使用される。典型的に、細菌は非グリコシル化タンパク質を産生する。タンパク質が機能するためにグリコシル化を要求する場合は、宿主細胞から精製した後に、インビトロでグリコシル化を追加することができる。
b. 酵母細胞
サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母は、タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)の生産に使用することができる周知の酵母発現宿主である。酵母は、エピソーム複製ベクターで形質転換させるか、相同組換えによる安定染色体組込みで形質転換させることができる。典型的に、遺伝子発現を調節するために、誘導性プロモーターが使用される。そのようなプロモーターの例には、GAL1、GAL7およびGAL5、ならびにメタロチオネインプロモーター、例えばCUP1、AOX1、または他のピキア(Pichia)プロモーターもしくは他の酵母プロモーターがある。発現ベクターは、多くの場合、形質転換されたDNAを選択し維持するために、LEU2、TRP1、HIS3およびURA3などの選択可能マーカーを含む。酵母中で発現されたタンパク質は溶解性であることが多い。Bipなどのシャペロニン類およびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼとの共発現により、発現レベルおよび溶解性が改善され得る。また、酵母中で発現されるタンパク質は、例えばサッカロミセス・セレビシェに由来する酵母接合型α因子分泌シグナルなどの分泌シグナルペプチド融合物、およびAga2p接合付着受容体(mating adhesion receptor)またはアークスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans)グルコアミラーゼなどの酵母細胞表面タンパク質との融合物を使って、分泌するように指示することもできる。発現されたポリペプチドが分泌経路を出た時に、融合された配列を発現されたポリペプチドから除去するために、プロテアーゼ切断部位、例えばKex−2プロテアーゼの切断部位を、工学的に作ることができる。酵母はAsn−X−Ser/Thrモチーフでグリコシル化を行う能力も持つ。
c. 昆虫細胞
昆虫細胞、特にバキュロウイルス発現を用いるものは、ヒアルロニダーゼポリペプチドなどのポリペプチドを発現させるのに有用である。昆虫細胞は高レベルのタンパク質を発現し、高等真核生物が使用する翻訳後修飾の大半を行う能力を持つ。バキュロウイルスは宿主域が制限されており、それが安全性を向上させ、真核細胞発現に関する規制上の懸念を減少させる。典型的な発現ベクターは、高レベル発現用のプロモーター、例えばバキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターを使用する。よく使用されるバキュロウイルス系は、例えばオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多核体病ウイルス(AcNPV)およびカイコ(Bombyx mori)核多核体病ウイルス(BmNPV)などのバキュロウイルスと、例えばツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)に由来するSf9、シューダレチア・ユニパンクタ(Pseudaletia unipuncta)(A7S)およびオオカバマダラ(Danaus plexippus)(DpN1)などの昆虫細胞株を含む。高レベル発現には、発現されるべき分子のヌクレオチド配列を、ウイルスのポリヘドリン開始コドンのすぐ下流に融合する。哺乳類分泌シグナルは昆虫細胞では正確にプロセシングされ、発現されたタンパク質を培養培地中に分泌させるには、これらのシグナルを使用することができる。加えて、細胞株シューダレチア・ユニパンクタ(A7S)およびオオカバマダラ(DpN1)は、哺乳動物細胞系と類似するグリコシル化パターンを持つタンパク質を産生する。
昆虫細胞におけるもう一つの発現系は安定形質転換細胞の使用である。発現には、シュナイダー(Schneider)2(S2)細胞およびKc細胞(キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))およびC7細胞(ヒトスジシマカ(Aedes albopictus))などの細胞株を使用することができる。カドミウムまたは銅による重金属誘導の存在下で高レベル発現を誘導するために、ショウジョウバエ(Drosophila)メタロチオネインプロモーターを使用することができる。発現ベクターは、典型的には、ネオマイシンやハイグロマイシンなどの選択可能マーカーの使用によって維持される。
d. 哺乳動物細胞
可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドなどのタンパク質を発現させるために、哺乳類発現系を使用することができる。発現コンストラクトは、アデノウイルスなどのウイルス感染によって、またはリポソーム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランなどの直接的DNA導入によって、また、エレクトロポレーションやマイクロインジェクションなどの物理的手段によって、哺乳動物細胞に導入することができる。哺乳動物細胞用の発現ベクターは、典型的に、mRNAキャップ部位、TATAボックス、翻訳開始配列(コザック(Kozak)コンセンサス配列)およびポリアデニル化要素を含む。選択可能マーカーなどのもう一つの遺伝子との2シストロン性発現が可能になるように、IRES要素も加えることができる。そのようなベクターは、多くの場合、高レベル発現のための転写プロモーター−エンハンサー、例えばSV40プロモーター−エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)の末端反復配列などを含む。これらのプロモーター−エンハンサーは多くの細胞タイプにおいて活性である。発現には、組織型および細胞型のプロモーターおよびエンハンサー領域も使用することができる。典型的なプロモーター/エンハンサー領域には、エラスターゼI、インスリン、免疫グロブリン、マウス乳房腫瘍ウイルス、アルブミン、αフェトプロテイン、α1アンチトリプシン、βグロビン、ミエリン塩基性タンパク質、ミオシン軽鎖2、および性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(gonadotropic releasing hormone gene control)などの遺伝子に由来するものがあるが、これらに限定されない。発現コンストラクトを持つ細胞を選択し、維持するために、選択可能マーカーを使用することができる。選択可能マーカー遺伝子の例には、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびチミジンキナーゼなどがあるが、これらに限定されない。例えば、DHFR遺伝子を発現させる細胞だけを選択するために、メトトレキサートの存在下で発現を行うことができる。TCR−ζやFcεRI−γなどの細胞表面シグナリング分子との融合により、細胞表面上で活性な状態にあるタンパク質の発現を指示することができる。
哺乳類発現には、マウス細胞、ラット細胞、ヒト細胞、サル細胞、ニワトリ細胞およびハムスター細胞など、多くの細胞株を利用することができる。典型的細胞株には、CHO、Balb/3T3、HeLa、MT2、マウスNS0(非分泌性)および他の骨髄腫細胞株、ハイブリドーマおよびヘテロハイブリドーマ細胞株、リンパ球、線維芽細胞、Sp2/0、COS、NIH3T3、HEK293、293S、2B8、およびHKB細胞などがあるが、これらに限定されない。細胞培養培地からの分泌タンパク質の精製を容易にする無血清培地に適応した細胞株も利用できる。例として、CHO−S細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA, cat # 11619-012)および無血清EBNA−1細胞株(Pham et al., (2003) Biotechnol. Bioeng. 84:332-42)が挙げられる。発現量が最大になるように最適化された特別な培地での成長に適応した細胞株も利用できる。例えばDG44 CHO細胞は、動物性産物を含まない合成培地における懸濁培養での成長に適応している。
e. 植物
タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)を発現させるために、トランスジェニック植物細胞およびトランスジェニック植物を使用することができる。発現コンストラクトは、典型的に、微粒子銃(microprojectile bombardment)やプロトプラストへのPEGによる導入などといった直接的DNA導入を使って、またアグロバクテリウムによる形質転換を使って、植物に導入される。発現ベクターは、プロモーターおよびエンハンサー配列、転写終結要素および翻訳制御要素を含むことができる。発現ベクターおよび形質転換技法は、通常は、アラビドプシス(Arabidopsis)やタバコなどの双子葉植物宿主用と、トウモロコシやイネなどの単子葉植物宿主用とに分けられる。発現に使用される植物プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター、ノパリンシンターゼプロモーター、リボース二リン酸カルボキシラーゼプロモーター、ならびにユビキチンプロモーターおよびUBQ3プロモーターなどがある。形質転換細胞の選択と維持が容易になるように、ハイグロマイシン、ホスホマンノースイソメラーゼおよびネオマイシンホスホトランスフェラーゼなどの選択可能マーカーが、多くの場合、使用される。形質転換植物細胞は、細胞、凝集体(カルス組織)として培養維持するか、全植物体に再生させることができる。トランスジェニック植物細胞には、ヒアルロニダーゼポリペプチドを産生するように工学的に操作された藻類も含めることができる。植物は哺乳動物細胞とは異なるグリコシル化パターンを持つので、これは、これらの宿主中で生産されたタンパク質の選択に影響を及ぼし得る。
4. 精製方法
インスリンポリペプチドおよびヒアルロナン分解酵素ポリペプチドまたは他のタンパク質などといったポリペプチドを宿主細胞から精製するための方法は、選択した宿主細胞と発現系に依存するだろう。分泌される分子の場合、タンパク質は一般に、細胞を除去した後に、培養培地から精製される。細胞内発現の場合は、細胞を溶解し、タンパク質を抽出物から精製することができる。トランスジェニック植物やトランスジェニック動物などのトランスジェニック生物を発現に使用する場合は、組織または臓器を、溶解細胞抽出物を作るための出発物質として使用することができる。また、トランスジェニック動物生産には、乳または卵におけるポリペプチドの生産を含めることができ、それらは、収集し、必要であれば、当技術分野における標準的方法を使って、タンパク質を抽出し、さらに精製することができる。
インスリンポリペプチドまたはヒアルロナン分解酵素ポリペプチドなどのタンパク質は、当技術分野において知られる標準的なタンパク質精製技法、例えば限定するわけではないが、SDS−PAGE、サイズ分画およびサイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、およびアニオン交換クロマトグラフィーなどのイオン交換クロマトグラフィーなどを使って精製することができる。効率および調製物の純度を改善するためにアフィニティ精製技法を利用することもできる。アフィニティ精製では、例えばヒアルロニダーゼ酵素を結合する抗体、受容体および他の分子を使用することができる。発現コンストラクトを工学的に操作して、mycエピトープ、GST融合物またはHis6などのアフィニティタグをタンパク質に付加し、それぞれmyc抗体、グルタチオン樹脂およびNi樹脂を使ってアフィニティ精製することもできる。純度は、当技術分野で知られる任意の方法、例えばゲル電気泳動、オルソゴナルなHPLC法、染色および分光測光技法などによって評価することができる。
I. 安定性および活性の評価方法
アッセイを使用して、ここに提供する速効性のインスリンおよびヒアルロナン分解酵素を含む配合剤を含む、ここに提供する製剤または配合剤を評価できる。このようなアッセイは配合剤中のヒアルロナン分解酵素の安定性および活性および/または速効性のインスリンの安定性、活性および溶解性を評価できる。このようなアッセイは、例えば、長時間、特定の保存温度および条件における配合剤の安定性を、保存前、およびその後の種々の時点で評価することにより活性、溶解性、および安定性(例えば凝集体形成など)を決定するために使用できる。アッセイはまた両活性剤の安定性を維持しながらここに提供する製剤をわずかに調節するためにも使用できる。
1. インスリン
ここに提供する配合剤のインスリン安定性および溶解性は、当分野で周知の方法およびアッセイを使用して評価できる。例えば、インスリン安定性および溶解性は視覚評価、酸浄化、光学顕微鏡、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)、インビボバイオアッセイおよび変性および非変性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により評価できる。一例において、インスリンの溶解性および安定性を、色の変化、透明度、凝集体存在またはクランピングおよび物質接着、またはここに提供する配合剤を含む溶液へのフロスティングを含む視覚評価で評価できる。視覚変化は、酸化後の溶解の欠如がここに提供する配合剤におけるインスリンの不要性変性を確認する、酸浄化により確認できる。ここに提供する配合剤におけるインスリンの視覚変化はまた光学顕微鏡および/または蛍光バックライトにより顕微鏡でも確認できる。ここに提供する配合剤における速効性インスリンの見かけの溶解性は、例えば、RP−HPLCにより、例えば実施例3に記載のとおり評価する。実施例3に示す方法において、見かけの溶解性は、種々の条件および時点で保存後のインスリン回収パーセントとして測定する。回収パーセントは、参照サンプルとの比較として示す。加えて、インスリン分解産物、例えばデスアミドインスリンは、RP−HPLCにより決定できる。一例において、ここに提供する配合剤におけるインスリン安定性は、サイズ排除クロマトグラフィーを使用する凝集体形成の測定により評価する(例えば、実施例4参照)。この例において、SECを高分子量タンパク質類、すなわち、凝集体の存在の測定に使用する。
インスリン活性はまた当分野で知られた方法およびアッセイを使用して評価できる。例えば、インスリン組成物および配合剤を含むインスリンが治療剤として作用する能力を、インビトロまたはインビボで評価できる。例えば、当技術分野で周知のインビトロアッセイを行って、インスリン受容体に結合するインスリンの能力を評価することができる。ある例では、ヒト胎盤細胞膜をインスリン受容体の供給源として調製し、それを、非標識インスリン類似体と共に、または非標識インスリン類似体なしで、放射標識ヒトインスリンとインキュベートするという、競合的結合アッセイを行う。次に、結合した放射標識インスリンの量を検出して、結合について競合するインスリン類似体の能力を決定し、胎盤インスリン受容体に対するインスリン類似体の相対的アフィニティを算出する(例えばWeiss et al., (2001) J. Biol. Chem. 276:40018-40024参照)。他のインスリン受容体供給源、例えばインスリン受容体を天然にまたは組換え的に発現させる他の細胞も、そのような競合的結合アッセイに使用することができる(Duttaroy et al., (2005) Diabetes 54:251-258)。
グルコース取り込みを刺激し、またはその典型的な代謝的帰結の他のいずれかを達成するという、インスリンの能力は、インビトロで評価することができる。インスリンが刺激するグルコース取り込みを測定するには、脂肪細胞を、インスリンと共に、またはインスリンなしで、2−デオキシ−D−[2,63−H]グルコースまたはD−[U−14C]グルコースなどの標識グルコースとインキュベートする。次に、取り込まれた放射能を測定して、インスリンの存在下または非存在下でのグルコース取り込みの量を決定する(Louveau et al., (2004) J Endocrin. 181:271-280, Duttaroy et al., (2005) Diabetes 54:251-258)。インスリン類似体の活性を評価する場合は、ヒトインスリンの活性も評価して、それを比較に使用することができる。インスリン存在下でのH4IIE細胞におけるグルコース産生を評価するためのインビトロアッセイを行うこともできる(Wang et al., (2000) J. Biochem., 275:14717-14721, Duttaroy et al., (2005) Diabetes 54:251-258)。
インスリン組成物および配合剤を含み、インスリンの治療活性を評価するために、糖尿病のまたは健常な動物モデルまたはヒト被験者を用いるインビボ試験も行うことができる。インスリンを糖尿病の動物モデルに投与して、例えば血中グルコースレベル、循環インスリンレベル、およびヘモグロビンA1cに対する効果を評価することができる。ヘモグロビンA1cは、グルコースがヘモグロビンに結合した時に形成され、これは血中グルコースレベルが上昇した時に起こる。血液試料中のHbA1cレベルは、例えばHPLC、ELISA、RIAまたは他のイムノアッセイによって評価することができる。健常被験者の正常HbA1c値は約4.0〜6.2パーセントである。米国糖尿病学会(American Diabetes Association)は、糖尿病からの合併症を防止するのに役立つように、糖尿病を持つ患者については、7%未満(または一定の人では6%未満)にすべきであると勧告している。インスリンレベルは、例えばELISAまたはRIAによって測定することができる。グルコースレベルは典型的に、グルコースセンサーまたはグルコースアナライザーを使って測定される。
I型糖尿病の動物モデルには、非肥満糖尿病(NOD)マウスおよびバイオブリーディング(BioBreeding)(BB)ラットがある(Atkinson et al., (1999) Nature Med. 5:601-604)。2型糖尿病の動物モデルには、それぞれレプチン遺伝子またはレプチン受容体に突然変異を持つob/obマウスおよびdb/dbマウス、KKマウス、ナゴヤ−シバタ−ヤスダ(Nagoya-Shibata-Yasuda)(NSY)マウス、ズッカー糖尿病肥満(Zucker diabetic fatty)(ZDF)ラットおよび後藤−柿崎(Gato-Katazaki)(GK)ラットがあるが、これらに限定されない(Cefalu (2006) ILAR Journal 47:186-198)。他の例では、健常動物を使って、ヒアルロナン分解酵素を伴う、またはヒアルロナン分解酵素を伴わない、インスリンの活性を調べる。
2. ヒアルロナン分解酵素群
ヒアルロナン分解酵素の活性は当技術分野で周知の方法を使って評価することができる。例えば、ヒアルロニダーゼに関するUSP XXIIアッセイでは、酵素をHAと37℃で30分間反応させた後に残存する未分解ヒアルロン酸またはヒアルロナン(HA)基質の量を測定することにより、活性が間接的に決定される(USP XXII-NF XVII (1990) 644-645 United States Pharmacopeia Convention, Inc, Rockville, MD)。アッセイでは、ヒアルロニダーゼ参照標準(USP)または国民医薬品集(National Formulary)(NF)標準ヒアルロニダーゼ溶液を使って、任意のヒアルロニダーゼの活性を単位数として確認することができる。ある例では微小濁度アッセイを使って活性を測定する。これはヒアルロン酸が血清アルブミンと結合した時に起こる不溶性沈殿物の形成に基づく。活性は、ヒアルロニダーゼをヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸)と共に設定された時間(例えば10分間)インキュベートした後、酸性化血清アルブミンを添加して未消化のヒアルロン酸ナトリウムを沈殿させることによって測定される。得られた試料の濁度をさらなる発現期間後に640nmで測定する。ヒアルロン酸ナトリウム基質に対するヒアルロニダーゼ活性に起因する濁度の低下が、ヒアルロニダーゼ酵素活性の尺度である(例えば実施例2参照)。
もう一つの例では、ヒアルロニダーゼと共にインキュベートした後に残存ビオチン化ヒアルロン酸を測定するマイクロタイターアッセイを使って、ヒアルロニダーゼ活性が測定される(例えばFrost and Stern (1997) Anal.Biochem. 251:263-269、米国特許出願公開第20050260186号参照)。ヒアルロン酸のグルクロン酸残基上の遊離カルボキシル基をビオチン化し、そのビオチン化ヒアルロン酸基質をマイクロタイタープレートに共有結合させる。ヒアルロニダーゼと共にインキュベートした後、アビジン−ペルオキシダーゼ反応を使って残存ビオチン化ヒアルロン酸基質を検出し、既知の活性を持つヒアルロニダーゼ標準品による反応後に得られるものと比較する。ヒアルロニダーゼ活性を測定するための他のアッセイも当技術分野では知られており、本発明の方法において使用することができる(例えばDelpech et al., (1995) Anal. Biochem. 229:35-41; Takahashi et al., (2003) Anal. Biochem. 322:257-263参照)。
展着または拡散剤として作用するヒアルロナン分解酵素の能力も評価することができる。例えばトリパンブルー色素を、ヒアルロナン分解酵素と共に、またはヒアルロナン分解酵素なしで、ヌードマウスの左右の外側皮膚に皮下注射することができる。次に、色素面積を、例えばマイクロキャリパーを使って測定することで、展着剤として作用するヒアルロナン分解酵素の能力を決定する(米国特許第20060104968号)。ヒアルロニダーゼを別の薬剤、例えばインスリンと共投与することが、その薬剤の薬物動態および薬力学的性質に及ぼす効果も、動物モデルを使って、および/または、例えば臨床試験などにおいて、ヒト被験者を使って、インビボで評価することができる。ヒアルロニダーゼでないヒアルロナン分解酵素の機能的活性は、これらのアッセイのいずれかを使って、ヒアルロニダーゼと比較することができる。これは、機能的に等価な量のヒアルロナン分解酵素がどれくらいかを決定するために行うことができる。例えば、展着剤または拡散剤として作用するヒアルロナン分解酵素の能力は、それをトリパンブルーと一緒にマウスの外側皮膚に注射することによって評価することができ、例えば100単位のヒアルロニダーゼ参照標準と同じ量の拡散を達成するのに要求される量を決定することができる。したがって、要求されるヒアルロナン分解酵素の量は、100ヒアルロニダーゼ単位と機能的に等価である。
組成物、例えばここに提供する配合剤におけるヒアルロナン分解酵素群の安定性はまた当分野で知られた他の方法およびアッセイを使用して評価できる。例えば、安定性は、上におよび実施例2に記載するとおり、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)(see、例えば、実施例3)、および見かけの融点により測定する一定時間の回収パーセントおよびタンパク質純度としての目視によりヒアルロニダーゼ活性を決定することにより評価できる。タンパク質純度は、RP−HPLCで決定して、全ヒアルロニダーゼ種に対する本配合剤中の主ヒアルロナン分解酵素、例えば、rHuPH20のパーセントである。回収パーセントは、参照サンプルと比較した一定時間および種々の保存条件での配合剤のヒアルロニダーゼの相対的パーセンテージである。一例において、ここに提供する配合剤におけるヒアルロニダーゼの融点は、動的光散乱法による粒子の流体力学半径測定により決定する(例えば、実施例7.B参照)。粒子サイズ増加および融点減少は、変性および続くヒアルロニダーゼ凝集の指標である。ここに提供する配合剤におけるヒアルロニダーゼ安定性は、RP−HPLCによるヒアルロニダーゼ、例えばrHuPH20の酸化の測定により決定できる。酸化パーセントは主(ox−1)および副(ox−2)ピークのピーク面積の合計の指標である(例えば、実施例10.B参照)。ここに提供する配合剤におけるヒアルロニダーゼの安定性の決定に使用できる当業者に既知の他の方法は、ポリアミドアミドゲル電気泳動(PAGE)、免疫ブロッティング、核磁気共鳴(NMR)スペクトロスコピー、マススペクトロメトリー、円偏光二色性(CD)および色素ベース蛍光アッセイを含む。
J. 治療用途
本明細書に記載する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤は、速効性のインスリンを用いるあらゆる状態の処置に使用できる。配合剤は、インスリンでの処置に影響され得るあらゆる状態の処置に皮下投与できる。このセクションは、速効性のインスリンの例示的な治療用途を示す。下記治療用途は例であり、ここに記載する配合剤の適用を限定しない。治療用途は、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠性糖尿病、および重篤疾患患者における血糖コントロールを含むが、これらに限定されない。例えば、速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤は別々の投与量で、例えばシリンジまたはインスリンペンを介して、食事前に、血糖コントロールを達成するために糖尿病対象に食事のインスリン治療のために皮下投与できる。配合剤はまたインスリンポンプを使用してまたは閉鎖ループ系の状況で、日中および夜間および/または食後血糖変動を制御するために皮下または腹腔内に投与できる。このような疾患または状態の同定は処置医の技術の範囲内である。
上記のとおり、特定の投与量および処置プロトコルは典型的に各対象に個別的である。必要であれば、特定の投与量および期間および処置プロトコルを経験的に決定または外挿できる。例えば、ヒアルロナン分解酵素を伴わない速効性のインスリンの例示的投与量を出発点として使用して、ここに提供する配合剤の適当な投与量を決定できる。投与レベルは多様な因子、例えば個体の体重、一般的健康、年齢、用いる特定化合物の活性、性別、食習慣、代謝活性、血糖濃度、投与時間、排泄速度、薬剤組み合わせ、疾患の重症度および経過、および患者の疾患に対する素質および処置医の判断により決定できる。特に例えば血糖センサーで測定した、血糖値を測定し、使用して、血糖コントロールを達成するために投与すべきインスリンおよびヒアルロナン分解酵素の量を決定できる。アルゴリズムは当分野で知られており、ここに提供する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤の吸収速度および吸収レベルに基づき、およびまた血糖値に基づき決定するために使用できる。食後血糖コントロールのためのインスリン投与量は、例えば、食事の炭水化物量の決定により計算または調節できる(例えば、Bergenstal et al., (2008) Diabetes Care 31:1305-1310, Lowe et al., (2008) Diabetes Res. Clin. Pract. 80:439-443, Chiesa et al.,(2005) Acta Biomed. 76:44-48参照)。
1. 糖尿病
真性糖尿病(または糖尿病)はグルコース代謝障害を特徴とする。血中グルコースは腸で吸収された糖質に由来し、肝臓で産生される。血中グルコースレベルの増加はインスリン放出を刺激する。食後グルコースインフラックスは食間に観察されるグルコースの肝産生量より20〜30倍高くなり得る。10分前後続く初期相インスリン放出は肝グルコース産生を抑制し、その後に、2時間以上持続して食事時間糖質インフラックスをカバーする長い(後期)放出相が起こる。食間は、低い連続的インスリンレベル(基礎インスリン)が進行中の代謝要件をカバーして、特に、肝糖産生を調節すると共に、脂肪組織、筋組織および他の標的部位によるグルコース利用を調節する。糖尿病を持つ患者は高い血中グルコースレベル(高血糖)を示す。糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病の2つに大別することができる。1型糖尿病またはインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)は、インスリンの欠乏につながる膵臓におけるランゲルハンス島のインスリン産生β細胞の消失を特徴とする。β細胞欠乏の主要原因はT細胞による自己免疫である。2型糖尿病またはインスリン非依存性真性糖尿病(NIDDM)はβ細胞機能異常を持つ患者で起こる。これらの患者は、インスリン抵抗性または低下したインスリン感受性と、インスリン分泌量の減少とを併せ持つ。2型糖尿病は最終的には1型糖尿病に進展し得る。糖尿病には妊娠糖尿病も含まれる。糖尿病を持つ患者には、基礎インスリンレベルを維持するためにも、食事後などに起こる血糖エクスカーションを防止するためにも、インスリンを投与することができる。
a. 1型糖尿病
1型糖尿病は、膵臓の内分泌単位であるランゲルハンス島の浸潤およびβ細胞の破壊を特徴とし、それがインスリン産生量の不足と高血糖につながる、T細胞依存的自己免疫疾患である。1型糖尿病は、最も一般的には小児および若年成人で診断されるが、どの年齢でも診断され得る。1型糖尿病を持つ患者は、低いインスリンレベルおよび高い血中グルコースレベルに加えて、多尿症、多飲症(polydispia)、多食症、かすみ目および疲労を示し得る。126mg/dL(7.0mmol/l)以上の空腹時血漿中グルコースレベル、例えばグルコース耐性検査などにおける75g経口グルコース負荷の2時間後に200mg/dL(11.1mmol/l)以上の血漿中グルコースレベル、および/または200mg/dL(11.1mmol/l)以上の随時血漿中グルコースレベルを示すことによって、患者を診断することができる。
1型糖尿病を持つ患者に対する主要な処置は、典型的に、血中グルコースモニタリングと合わせて行われる補充療法としてのインスリンの投与である。十分なインスリンの補充がないと、糖尿病性ケトアシドーシスが発生する可能性があり、それは昏睡または死をもたらし得る。患者には、1日中適切な血中グルコースレベルを維持するためにも、食後グルコースレベルを管理するためにも、例えばシリンジもしくはインスリンペン、またはインスリンポンプを使って、速効型インスリンの皮下注射を投与することができる。いくつかの例では、インスリンポンプ(クローズドループ系におけるものを含む)を使ってインスリンを腹腔内投与することができる。このように、1型糖尿病を持つ患者には、血中グルコースレベルおよび血中インスリンレベルをより迅速に管理するために、本明細書に記載する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤を、シリンジ、インスリンペン、もしくはインスリンポンプ、またインスリンを送達するのに役立つ他の任意の手段によって、皮下投与または腹腔内投与することができる。
b. 2型糖尿病
2型糖尿病はインスリン抵抗性に関連し、いくつかの集団では、インスリン減少症(β細胞機能の消失)にも関連する。2型糖尿病では、インスリンの第1相放出がなく、第2相放出が遅延し、しかも不十分である。食事中および食事後に健常な被験者で起こるインスリン放出の鋭いスパイクが、2型糖尿病を持つ患者では遅延し、長引き、量的に不十分になり、その結果、高血糖になる。2型糖尿病を持つ患者には、血中グルコースレベルを管理するために、インスリンを投与することができる(Mayfield et al. (2004) Am Fam Physican 70:489-500)。これは、他の処置および処置レジメ、例えば食事制限、運動および他の抗糖尿病治療(例えばスルホニル尿素類、ビグアニド類、メグリチニド類、チアゾリジンジオン類およびα−グルコシダーゼ阻害剤)などと組み合わせて行うことができる。したがって、2型糖尿病を持つ患者には、血中グルコースレベルおよび血中インスリンレベルをより迅速に管理するために、シリンジ、インスリンペン、もしくはインスリンポンプ、またはインスリンを送達するのに役立つ他の任意の手段により、本明細書に記載する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤を皮下投与または腹腔内投与することができる。
c. 妊娠性糖尿病
今までに糖尿病を患ったことは一度もないが、妊娠中に高い血中グルコースレベルを持つ妊婦は、妊娠糖尿病と診断される。このタイプの糖尿病は、試験対象の集団に依存して、全妊婦の約1〜14%を冒す(Carr et al. (1998) Clinical Diabetes 16)。基礎となる原因はまだわかっていないが、おそらく妊娠中に産生されるホルモンがインスリンに対する妊婦の感受性を低下させるものと思われる。インスリン感受性細胞による正常なインスリン結合が証明されているので、インスリン抵抗性の機序はおそらく受容体後の欠陥(postreceptor defect)である。膵臓は、結果として起こるインスリン抵抗性の増加に応答するために、1.5〜2.5倍多いインスリンを放出する。正常な膵臓機能を持つ患者はこれらの需要を満たすことができる。境界的な膵臓機能を持つ患者は、インスリン分泌を増加させることが困難であり、その結果、不十分なレベルのインスリンを産生する。こうして、増加した末梢インスリン抵抗性の存在下で、遅延したまたは不十分なインスリン分泌が起こる場合に、妊娠糖尿病が生じる。
妊娠糖尿病を持つ患者には、血中グルコースレベルを管理するために、インスリンを投与することができる。したがって妊娠糖尿病を持つ患者には、血中グルコースレベルおよび血中インスリンレベルをより迅速に管理するために、シリンジ、インスリンペン、インスリンポンプもしくは人工膵臓、または他の任意の手段により、本明細書に記載する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤を皮下投与することができる。
2. 重篤疾患患者のためのインスリン治療
高血糖およびインスリン抵抗性は内科的および/または外科的に重篤な患者においてしばしば起こり、糖尿病患者でも被糖尿病患者でも、また外傷性傷害、脳卒中、無酸素性脳損傷、急性心筋梗塞、心臓手術後、および重篤疾患の他の原因を持つ患者でも、罹病率および死亡率の増加と関連づけられている(McCowen et al. (2001) Crit Clin.Care 17:107-124)。高血糖を持つ重篤患者は、血中グルコースレベルを管理するためにインスリンで処置されてきた。そのような処置はこの群における罹病率および死亡率を低下させることができる(Van den Berghe et al. (2006) N.Eng.J Med. 354:449-461)。インスリンは典型的に、例えば開業医によるシリンジを使った注射によって、またはインスリンポンプを使った注入によって、患者に静脈内投与される。いくつかの例では、アルゴリズムおよびソフトウェアを使って用量が算出される。したがって、高血糖を持つ重篤患者には、血中グルコースレベルを管理するために、本明細書に記載する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤を投与し、それによって高血糖を軽減し、罹病率および死亡率を減少させることができる。
K. 組み合わせ治療
本明細書に記載する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤どれでも、他の治療剤または他の治療法(例えば他の生物製剤および小分子化合物であるが、これらに限定されない)と組み合わせて、その前に、それとは間欠的に、またはその後に、投与することができる。速効型インスリンが適応となるか、速効型インスリンが使用されてきた疾患または状態であって、他の薬剤および処置を利用することができるものには、上に例示したものを全て含めてどれでも、配合剤をそれらと組み合わせて使用することができる。処置される疾患または状態に応じて、典型的な組合せには、抗糖尿病薬、例えば限定するわけではないが、スルホニル尿素、ビグアニド、メグリチニド、チアゾリジンジオン、α−グルコシダーゼ阻害剤、ペプチド類似体、例えばグルカゴン様ペプチド(GLP)類似体、および胃抑制ペプチド(GIP)類似体、ならびにDPP−4阻害剤との組合せなどがあるが、これらに限定されない。もう一つの例では、本明細書に記載する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤を、速効型インスリンおよび基礎作用型インスリンを含む1つ以上の他のインスリンと組み合わせて、その前に、それとは間欠的に、またはその後に投与することができる。
L. 製造品およびキット
本明細書に記載する速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤は、包装材料、例えば糖尿病対象または重篤対象などにおける血中グルコースレベルを管理するのに有効な医薬組成物、ならびにその配合剤が血中グルコースレベルを管理するために使用されるべきものであることを示すラベルを含む製品として包装することができる。
本明細書に記載する製品は包装材料を含む。医薬品を包装するのに使用される包装材料は当業者にはよく知られている。例えば米国特許5,323,907、5,052,558および5,033,252(これらはそれぞれその全てが本明細書に組み込まれる)参照。医薬包装材料の例として、ブリスター包装、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、瓶、およびに選ばれた製剤および意図する投与および処置の様式に適した任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。
速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤はキットとして提供することもできる。キットは本明細書に記載する配合剤および投与のための品目を含むことができる。キットは付加的医薬組成物も含むことができる。ある例において、キットは、本明細書に記載する配合剤の1つ以上と、1つ以上の他のインスリン組成物、例えば結晶性インスリンを含む遅効型(slow acting)もしくは中間型インスリン、またはその任意の組合せとを含むことができる。速効性インスリンおよびヒアルロナン分解酵素の配合剤は、投与用の器具、例えばシリンジ、インスリンペン、ポンプ、またはインスリンペン、ポンプもしくは他の送達器具に挿入されるリザーバーと共に供給することができる。キットは、場合によっては、投与量、投与レジメンを含む適用に関する指示および投与様式に関する指示を含むことができる。キットは本明細書に記載する配合剤および診断用の品目も含むことができる。例えば、そのようなキットは、グルコースモニターまたはグルコースセンサーを含むことができる。
M. 実施例
以下に掲載する実施例は例示を目的とし、本発明の範囲を限定しようとするものではない。