以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本発明の実施例1に係る中間転写ベルトユニット(以下、「中間転写ユニット10」という)を備える画像形成装置100の構成を示す断面図である。ここでは、画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスを利用した両面印刷機能を有するカラーレーザビームプリンタである。図1に示されるように、画像形成装置100は装置本体100Aを有し、装置本体100Aの内部には感光体ドラム1a〜1dを有する画像形成手段であるカートリッジ3a〜3dが着脱可能な構成で、設けられている。画像形成装置100は、装置本体100Aの下部に、オプション給送装置(以下、給送オプション部)90を有する構成となっている。
カートリッジ3a〜3dは、同一構造であるが、各々には異なる色のトナーが収容されている。カートリッジ3a、3b、3c、3dの各々はイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(c)、ブラック(Bk)トナー像を形成する。カートリッジ3a〜3dは同一構造であるので、カートリッジ3aを代表として構造を説明する。カートリッジ3aは、像担持体である感光体ドラム1a、各色のトナー像を現像するための現像ユニット4a、クリーナユニット5aを有する。 現像ユニット4aは、現像ローラ6a、現像剤塗布ローラ7a、トナー容器を有している。更に、カートリッジ3aは、 帯電ローラ2a、ドラム用のクリーニングブレード8a、廃トナー容器を有している。
カートリッジ3a〜3dの下方には、スキャナユニット9が配置される。このスキャナユニット9は、画像信号に基づく露光を感光体ドラム1a、1b、1c、1dに対して行う。感光体ドラム1a、1b、1c、1dは、帯電ローラ2a、2b、2c、2dによって所定の負極性の電位に帯電された後、スキャナユニット9によってそれぞれ静電像(静電潜像)が形成される。この静電像は現像ユニット4a、4b、4c、4dによって反転現像されて負極性のトナーが付着され、それぞれY、M、C、Bkのトナー像が形成される。
カートリッジ3a〜3dの上方には、中間転写ユニット10が配置される。中間転写ユニット10は、中間転写ベルト10eと、中間転写ベルト10eを張架する駆動ローラ10f、対向ローラ10g、テンションローラ10hと、を有する。中間転写ベルト10eには、テンションローラ10hによって図1中の矢印で示すテンションTがかけられている。また、感光体ドラム1a、1b、1c、1dの各々に対向する位置には、中間転写ベルト10eの内側に1次転写ローラ10a、10b、10c、10dが配設されている。1次転写ローラ10a〜10dは、不図示の電圧印加手段により転写電圧が印加される1次転写部材である
感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像は、順次、中間転写ベルト10e上に1次転写される。このときに、各感光体ドラム1a〜1dは時計周りに回転する。また、中間転写ベルト10eは反時計周りに回転する。中間転写ベルト10eの表面には、回転方向の上流側の感光体ドラム1a〜1dから順に、トナー像が転写される。感光体ドラム1a〜1dから中間転写ベルト10eへのトナー像の転写は、1次転写ローラ10a〜10dに正極性の電圧を印加することによりなされる。このように中間転写ベルト10e上に4色のトナー像が重なった状態で形成されたトナー像は、2次転写部13へ移動する。
一方、トナー像が転写された後に、感光体ドラム1a〜1dの表面に残ったトナーは、クリーニングブレード8a〜8dによって除去される。また、シートSへの2次転写後に中間転写ベルト10e上に残ったトナーは、転写ベルトクリーニング装置11によって除去される。除去されたトナーは、廃トナー搬送路(不図示)を通過し、廃トナー回収容器(不図示)へと回収される。
画像形成装置100は、3つのシート給送装置(シート給送部)を有する。1つ目は、装置本体100Aの内部に配置される本体シート給送部20である。2つ目は、装置本体100Aの側面に配置されるマルチシート給送部30である。3つ目は、装置本体100Aの下方に増設されたオプション給送装置90である。
1つ目の本体シート給送部20は、シートSを収納する給送カセット21の内部からシートSを給送する給送ローラ22と、分離手段である分離ローラ23と、を有する。給送カセット21に収納されたシートSは、給送ローラ22に圧接され、分離ローラ23によって1枚ずつ分離され搬送される。そして、分離されたシートSは、搬送路24を経てレジストローラ対14へ搬送される。
2次転写部13は、中間転写ベルト10eに形成されたトナー像をシートSに転写する。2次転写部13は、正極性の電圧が印加される2次転写ローラ13aを備える。正極性の電圧を2次転写部13に印加することにより、レジストローラ対14によって搬送されたシートSに、中間転写ベルト10e上の4色のトナー像が2次転写される。
2次転写部13の上方には、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとを有する定着装置15が設けられている。トナー像が転写されたシートSは、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとのニップに搬送され、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとによって加熱および加圧され、シートSの表面には、転写されていたトナー像が定着される。
次に本発明に係る中間転写ユニット10について、図2(a)と図2(b)を用いて詳細に説明をする。図2(a)は、中間転写ユニット10の概略部分斜視図である。図2(b)は、各ローラ(10f、10g、10h)の位置関係を示す概略図である。図2(a)において、ベルトユニットである中間転写ユニット10は、内周面が平滑で回転可能な無端ベルトである中間転写ベルト10e(中央部を部分断面してある)と、これを張架する複数の張架部材と、を備える。張架部材には、中間転写ベルト10eを駆動する駆動ローラ10fと、中間転写ベルト10eを張架する張架ローラであるテンションローラ10h、対向ローラ10gと、がある。
また図2(b)に示すように、ベルト幅方向Mにおける、駆動ローラ10f、対向ローラ10g、テンションローラ10hが中間転写ベルト10eを張架する部位(以下、「張架部位Z」という)の当接寸法K(図4参照)は同じに構成されている。また、各ローラの張架部位Zの幅方向端部Za、Zbの位置はそろえられている。
図2(a)に示すように、駆動ローラ10f、対向ローラ10g、テンションローラ10hは、それぞれ幅方向両端部を軸受け40、41、42によって回転可能に支持されている。そして、中間転写ベルトメインフレーム(以下、「メインフレーム43」という)(43a、43b)が軸受け40、41を支持し、テンションローラ支持側板(以下、「支持側板44」という)が軸受け42を支持している。なお、メインフレーム43の側板43aには、バネ固定部60が設けられている。バネ固定部60にはテンションローラバネ(以下、「バネ45」という)の一端が固定されており、このバネ45は、圧縮バネであり、支持側板44を付勢方向(バネが伸びる方向)へと付勢するようになっている。
駆動ローラ10fは、軸受け40を介してメインフレーム43に支持されている固定ローラである。駆動ローラ10fは、画像形成装置100の不図示の駆動手段から駆動伝達をされている。駆動伝達をされた駆動ローラ10fは駆動回転をし、中間転写ベルト10eを回転移動させる。駆動ローラ10fの表面は、中間転写ベルト10eを滑り無く搬送する為に、摩擦係数の高いゴム層で形成されている。
対向ローラ10gは、軸受け41を介してメインフレーム43に支持されている固定ローラであり、2次転写ローラ13aとニップを形成し、シートSを挟持搬送しながらトナー像をシートSに転写する。対向ローラ10gは、中間転写ベルト10eの駆動搬送によって従動回転する。テンションローラ10hは、軸受け42を介して支持側板44と共にスライド可能にメインフレーム43に支持されている。中間転写ベルト10eの外周面におけるベルト回転方向である矢印I方向と直交するベルト幅方向Mの両端部には、中間転写ベルト10eの両端側(両端部)を補強する補強部材46a、46bが設けられる。補強部材46a、46bは、中間転写ベルト10eの外周面を所定幅で一周するように設けられる。
次に、テンションローラ10hのスライド動作と、中間転写ベルト10eを張架する構成について、図3を用いて詳細に説明をする。図3は、テンションローラ10hの支持部の拡大略斜視図である。図3において、支持側板44には開口部44cがある。メインフレーム43に形成されたボス部43c、43dが開口部44cに挿入されている。それによって、支持側板44はメインフレーム43に支持されている。
開口部44cの開口幅44dは、ボス部43c、43dが形成する外径幅43eよりも幅広く構成されている。開口幅44dと外径幅43eの差分だけ、支持側板44はスライド動作可能になる。すなわち、テンションローラ10hがスライド動作可能になる。バネ45は、中間転写ユニット10の装置手前側と奥側に各々備えられている。バネ45は、支持側板44、すなわちテンションローラ10hを矢印A方向に付勢して中間転写ベルト10eにテンションを付与している。そして、バネ45の付勢力と、中間転写ベルト10eの張力とのバランスが取れたところで、テンションローラ10hは係止する。
ただし、実施例1においては、図3のようにテンションローラ10hがスライド動作可能になっていてもよいし、スライド動作が不可能であってもよい。スライド動作が不可能な場合には、中間転写ベルト10eに張力を与えられるような位置にテンションローラ10hを配置する必要がある。
次に本発明に係る中間転写ベルト10eについて、図4を用いて詳細に説明をする。図4は、中間転写ベルト10eと各ローラ(10f、10g、10h)との位置関係を示す断面図である。
中間転写ベルト10eの基層は、ポリイミド(PI)やポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など、引張強度が高い樹脂系素材で作られる。このように、中間転写ベルト10eは樹脂ベルトで構成されている。成形や強度、変形のしやすさなどの要件から、基層は厚さ50μmから100μmの間で作られることが多い。また、トナーを転写する効率を高めるため、基層の外周面全体にわたって、ゴム層にコート層を張り合わせた多層構造の中間転写ベルト10eも存在する。本発明に係る中間転写ベルト10eは、これらいずれの組成でも構わない。
図4において、中間転写ベルト10eは、内周面が平滑な形状で形成される。ここで、内周面が平滑とは、中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの寄りを規制するために内周面から突出する突起状の突出部材(ガイド部材やリブ)を有していないことである。中間転写ベルト10eの外周面には、ベルトの回転方向の全周に亘って補強部材46a、46bを備える。補強部材46a、46bは幅が2、3ミリ以上あればよく、スペースが許す限り何ミリでも構わない。また、厚みも10ミクロン以上あれば、いくらで構わない。さらに、補強部材46aと補強部材46bで幅や厚みが異なっていたり、別の材質で備えられたりしても構わない。
補強部材46a、46bには、以下のものが用いられる。即ち、ポリエステルやポリイミドなどの樹脂系材料の他、中間転写ベルト10eの基層と同じように、ポリイミド(PI)等のフィルム粘着テープが用いられる。また、ポリイミド(PI)に代えて、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のフィルム粘着テープが用いられても良い。基本的には、十分な引張強度があれば材質は何であっても構わない。また、中間転写ベルト10eと一体での成型が可能であれば、それでも構わない。
補強部材46a、46bの引張強度が高いほど、本発明によるベルト寄り規制の効果は高まる。ただし、相対的に中間転写ベルト10eの方が硬いと、本発明の効果は低くなる。そのため、補強部材46a、46bの引張強度が低い場合や、中間転写ベルト10eの材質が非常に硬い場合には、補強部材46a、46bの構成をある程度の幅と高さで形成する。実際には、中間転写ベルト10eと同等程度のヤング率を持つ材質で、厚さ20から50ミクロンで、幅数ミリ程度とするのが現実的である。
また、補強部材46a、46bを備えるとき、図4のように補強部材46a、46bが備えられている部位の内周長を、補強部材46a、46bが備えられていない部分よりも短くなるように形成した方が、本発明によるベルト寄り規制の効果は高まる。即ち、この場合は、中間転写ベルト10eがローラ(10f、10h、10g)に当接する領域の単位幅あたりの内周面の内周長は、補強部材46a、46bを備えた部位が、補強部材46a、46bを備えていない部位よりも短い。
ここでいう内周長とは、補強部材46a、46bが備えた部分、および、補強部材46a、46bが備えられていない部分の、それぞれの平均的な内周長さ(ベルト幅方向Mで平均化した内周長さ)のことを表す。細かな凹凸による、部分的な内周長のことを指すのではない。この後の他の実施例の説明や、請求項に記載されている、内周長と言う記載の意味も同様である。また、課題を解決するための手段や、発明の効果などで先に記した内周長と言う意味も同じである。
図4では、中間転写ベルト10eや、補強部材46a、46bを分かりやすいように誇張した絵にしている。実際には、補強部材46a、46bが備えられている部位と、補強部材46a、46bが備えられていない部位との内周長差は非常にわずかである。内周長差は目視で明確に分かるほどの大きさではない。補強部材46a、46bを粘着テープで備える場合には、粘着テープを十分に引っ張りながら貼り付けるとよい。引っ張るときの力を強めるほど内周長差は大きくなり、本発明によるベルト寄り規制の効果は高まる。
一方の補強部材46aの内側端面から他方の補強部材46bの内側端面までのベルト幅方向Mの寸法46c(長さ)(内側端面間寸法)は、中間転写ベルト10eがローラ(10f、10h、10g)に当接する領域のベルト幅方向Mの当接寸法K(長さ)より短い。一方の補強部材46aの外側端面から他方の補強部材46bの外側端面までのベルト幅方向Mの寸法46d(長さ)(外側端面間寸法)は、中間転写ベルト10eがローラ(10f、10h、10g)に当接する領域のベルト幅方向Mの当接寸法K(長さ)より長い。
次に、図5(a)、図5(b)を用いて、駆動ローラ10fを回転させたときの中間転写ベルト10eの回転移動量について説明する。図5(a)は、駆動ローラ10fに巻き付く中間転写ベルト10eの中立面とひずみの関係を表す説明図で、図5(b)は、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eのテンション状態を表す略図である。
一般に、中間転写ベルト10eの回転移動は、中間転写ベルト10eの中立面の位置によって決まる。同じ半径の駆動ローラ10fであっても、巻き付く中間転写ベルト10eの厚みが増えるほど中間転写ベルト10eの回転移動は多くなる。別の言い方をすると、中間転写ベルト10eの内周面の長さが同じであったとしても、中間転写ベルト10eの厚みが増えれば、中間転写ベルト10eが1回転するのにかかる時間は少なくなる。つまり、中間転写ベルト10eの厚みが増えるほど、1回転の周期は早くなる。
図5(a)のように、中間転写ベルト10eに曲げモーメントを加え、駆動ローラ10fの曲面に沿って屈曲させることを考える。そのとき、中間転写ベルト10eの内周面では縮みが生じ、外周面では伸びが生じる。中間転写ベルト10eのひずみ量は図5(a)に示す通りである。ここから分かるように、中間転写ベルト10eの中立面において、ひずみはゼロとなる。つまり、中立面でのひずみ量(伸び量)が、中間転写ベルト10eの平均的なひずみ量(伸び量)を表す。
同様のことは、中間転写ベルト10eにテンションを与えて引っ張りながら屈曲させた場合にもいえる。中間転写ベルト10eにモーメントを与えず真っ直ぐに引っ張った場合のひずみ量は、同じテンションで引っ張りつつ駆動ローラ10fに巻きつけた時の中立面でのひずみ量と等しくなる。そして、内周面で縮みが生じ、外周面で伸びが生じるという関係は変わらない。このように、中立面での伸び量が、中間転写ベルト10eの平均的な伸び量を表すことがわかる。
中間転写ベルト10eが回転移動され、駆動ローラ10fに巻き付いていく様子を順序立てて説明する。まず、中間転写ベルト10eが真っ直ぐ移動する部位が駆動ローラ10fによって屈曲する。その際、ローラの曲率に沿おうとして、中間転写ベルト10eの内周面が縮められる。内周面が縮められた状態で、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eの内周面が接する。そして、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eの内周面が一体化した状態で、駆動ローラ10fの回転角度に従って中間転写ベルト10eは移動する。
このとき、平均的な中間転写ベルト10eの移動量は、中立面での移動量になる。つまり、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eの内周面が一体化して移動しているものの、全体の移動量は中立面の位置での動きによって決まるのである。従って、中間転写ベルト10eの移動量は、中立面でのひずみ量を考慮し、ローラ中心から中立面までの半径に駆動ローラ10fの回転角度を掛け合わせた量となる。
駆動ローラ10fの回転角度をθ、駆動ローラ10fの半径をr、中間転写ベルト10eの厚みをa、中間転写ベルト10eのヤング率をEa、中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの断面積をAa、ポアソン比をνaとする。また、駆動ローラ10fの上流側で中間転写ベルト10eにかかるテンションをT1、駆動ローラ10fの下流側で中間転写ベルト10eにかかるテンションをT2とおいた。T1とT2の関係は図5(b)に示す。図5(b)で中間転写ベルト10eは矢印Iの方向に移動されるとする。断面積Aaは、単純に中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの寸法と中間転写ベルト10eの厚みを乗算するのでなく、引っ張ったときの弾性変形で実際に関与する部分の断面積をいう。
数1の各項の説明をする。テンションT1で引っ張ったとき、中間転写ベルト10eの周長方向の単位長さは数2だけ伸びる。
ローラによって移動される量を考えると、伸びた分だけ移動量の割合は減る。このことから、数1の中にある数3の項は、移動方向の伸び量の影響を考慮していることがわかる。
数4は、駆動ローラ10fの半径rに中立面までの距離を足した値である。本来の中間転写ベルト10eの厚みはaである。そのため、テンションT1が働かなければ、半径rに中立面までの距離を足した値は(r+a/2)となる。しかし今、テンションT1によって引っ張られることにより厚みの変化が生じている。ポアソン比がνaであることから、厚みは数5の分だけ減少している。そのため、駆動ローラ10fの半径rに中立面までの距離を足した値は、数4で与えられるのである。
数1から、先程の説明の通り、中間転写ベルト10eが厚いほど、中間転写ベルト10eの移動量は多くなる。また、引張強度が強いほど、つまりEa×Aaの値が大きいほど移動量は多くなる。逆にテンションT1の値が大きいほど移動量は少なくなる。
ここで、図6(a)〜図6(c)を用いて、T1とT2に関する説明をする。図6(a)〜図6(c)の説明は、オイラーのベルト伝動理論に基づいている。図6(a)及び図6(b)は、ベルトのテンション状態を示す略図で、図6(c)は、休止角とクリープ角を示す略図である。また、ここでは、説明を簡略化するために、対向ローラ10gを省略している。
図6(a)において、中間転写ベルト10eを駆動ローラ10fとテンションローラ10hに巻き付け、テンションTを与える。この状態から図6(b)に示されるように駆動ローラ10fを矢印Gの方向に回転させると、駆動ローラ10fの上流側と下流側でテンションの差が発生する。上流側のテンションをT1、下流側のテンションをT2とすると、これらの大小関係は、T1>T2となり、このテンション差によって駆動ローラ10fの動力がテンションローラ10hに伝達される。ここでT1を張り側テンション、T2を緩み側テンションと呼ぶ。
次に、図6(c)を用いて、テンション差が発生する際の滑りの現象を説明する。テンション差が存在する場合、張り側と緩み側で中間転写ベルト10eの伸び量にも差があることになる。その為、ベルトが張り側から緩み側へ移動する際に、各ローラ(10f、10h)上では中間転写ベルト10eの伸縮が発生する。ローラ(10f、10h)上で中間転写ベルト10eが伸縮する為には必然的に滑りが発生する。この弾性変形に伴う滑りを弾性滑りと呼び、滑りが発生する領域をクリープ角と呼ぶ。
その一方で、ローラ(10f、10h)と中間転写ベルト10eに滑りのない領域が存在し、これを休止角と呼ぶ。一般にクリープ角と休止角の配置関係は図6(c)のようになっていることが知られている。この時、駆動ローラ10f上のクリープ角では中間転写ベルト10eが張り側から緩み側に移動するに従い縮むため、中間転写ベルト10eがローラ(10f、10h)に対して遅れる方向に滑っていることになる。逆に、テンションローラ10hではクリープ角上で中間転写ベルト10eは伸びていくため、中間転写ベルト10eがローラ(10f、10h)に対して進む方向に滑り、張り側に移動するにつれてベルト速度が上昇していく。
次に、中間転写ベルト10eの移動速度について考える。移動速度とは、レーザードップラー式の速度計などで、移動速度を定点測定したときに観測される値のことである。定点測定では、テンションがかかって中間転写ベルト10eが伸ばされた状態で、中間転写ベルト10e上のある質点が単位時間当たりに移動する距離を観測することになる。
駆動ローラ10fの回転速度は、数6のように回転角度θを時間で微分した値である。
このとき、テンションT1がかかっている駆動ローラ10fの上流側での中間転写ベルト10eの搬送速度は数7で与えられる。数7は、駆動ローラ10fの回転速度に、中立面までの半径をかけた値となっている。
また、テンションT2がかかっている駆動ローラ10fの下流側での中間転写ベルト10eの搬送速度は数8で与えられる。
数8の中の数9の項は、駆動ローラ10f上流側での単位伸び量の値で、駆動ローラ10f下流側の単位伸び量の値を割っている。駆動ローラ10fの下流側での中間転写ベルト10eの移動速度は、結局、上流側との単位伸び量の比で求められるからである。
駆動ローラ10f上流側のテンションT1の方が駆動ローラ10f下流側のテンションT2よりも大きいことを考えると、数9から、中間転写ベルト10eの移動速度は必ず下流側の方が遅くなる。T1に対してT2が小さいほど、下流側の中間転写ベルト10eの移動速度は遅くなる。また、引張強度が弱いほど、つまりEa×Aaの値が小さいほど、下流側の中間転写ベルト10eの移動速度は遅くなる。
数7、数8から分かるように、駆動ローラ10fの上流側と下流側で中間転写ベルト10eの移動速度は異なる。しかし、上流側と下流側で中間転写ベルト10eの移動量は同じである。上流側では移動速度は速いが、伸び量が大きい。逆に、下流側では移動速度は遅いが、伸び量が小さい。そのため、中間転写ベルト10eが移動量としては変わらないのである。もし、上流側と下流側のどちらか一方の移動量が多ければ、中間転写ベルト10eを移動したときに、移動量の差が累積して、そのうち破綻してしまう。同じように、上流側と下流側で中間転写ベルト10eの回転周期も変わらない。
次に、中間転写ベルト10eの回転周期を考える。テンションがかかっておらず、中間転写ベルト10eの伸び量がゼロであるときの1回転周期をR(秒)とする。無負荷状態での、中間転写ベルト10eの中立面の位置での一周分の周長さをlとすると、Rは数10のように与えられる。
それに対し、図5(b)に示すようにテンションT1とT2が与えられたとき、ベルトの1回転の周期は数11になる。周期は中間転写ベルト10eが伸びた分だけ長くなっている。
駆動ローラ10fの上流側において、中立面の位置での一周分の周長さlはテンションT1をかけられて伸びている。数11は、その状態での長さを、上流側での速度(数7)で割ることで求めている。
数11の中の数12の項は、テンションT1を与えて引っ張ったことにより、中間転写ベルト10eがつぶれて、中立面の位置が変化したことを考慮している。
これまでに示したように、中間転写ベルト10eの移動量や移動速度や回転周期は、中立面の位置やヤング率、および材料の断面積によって変わる。本発明では、補強部材46a、46bを用いて、中間転写ベルト10eの回転周期を変えることで、中間転写ベルト10eの寄りを規制する。
補強部材46a、46bを貼り付けた場合の中立面の位置を、図7(a)を用いて説明する。図7(a)は補強部材46の貼り付けられた部分での中間転写ベルト10eの断面図である。中間転写ベルト10eの厚みをa、補強部材46の厚みをc, 中間転写ベルト10eに補強部材46を貼り付ける際の接着剤の厚みをbとする。そして、中間転写ベルト10eのヤング率をEa、補強部材46のヤング率をEcとし、中間転写ベルト10eのポアソン比をνa、補強部材46のポアソン比をνcとする。接着剤のヤング率はゼロと見なせるものとし、考慮しない。さらに、中間転写ベルト10eの断面積をAa、補強部材46の断面積をAcとする。
このときの中間転写ベルト10eの内周面から中立面までの距離を数13によって考える。
さらに、中間転写ベルト10eと補強部材46を含めた両方にテンションT1がかけられた場合を考える。このとき、テンションT1により、中間転写ベルト10eと補強部材46は伸張される。その作用により、中間転写ベルト10eと補強部材46の厚みは減ることになる。厚みの減少分を考慮すると、内周面から中立面までの距離は数14となる。
数13および数14からわかるように、接着剤の厚みbおよび補強部材46の厚みcが厚いほど、内周面から中立面までの距離は増える。また、補強部材46の引張強度Ec×Acが大きいほど、内周面から中立面までの距離は増える。
さらに、数1に数14を代入することで、補強部材46を貼ったときの、中間転写ベルト10eの搬送量は数15となる。
さらに、中間転写ベルト10eの回転周期について考える。回転周期を考える場合には、中立面での中間転写ベルト10eの周長さを考える必要がある。中間転写ベルト10eに補強部材46を備えることで、中立面での周長さがlからl'に変わったとすると、中間転写ベルト10eの回転周期は数16となる。
よって、補強部材46を貼ることにより、1回転の周期は変化する。引張強度Ec×Acを高めるほど、中間転写ベルト10eが伸び量を減らし、1回転周期が長くなるのを防ぐ。また、中立面の位置を移動させ、1回転周期を早める。その変化の度合いは、中間転写ベルト10eの引張強度Ea×Aaと補強部材46の引張強度Ec×Acの比率によって決まる。中間転写ベルト10eの引張強度Ea×Aaに対し、補強部材46の引張強度Ec×Acがある程度大きくなければならない。
ここで、lおよびl'について、図7(b)および図7(c)を用いて説明する。図7(b)および図7(c)は、中間転写ベルト10eに補強部材46を備えたものを切断し、展開して中間転写ベルト10eの周長さlと、補強部材46の周長さを比較したものである。
図7(b)では、中間転写ベルト10eの周長さlより、補強部材46の長さがわずかに長い。中間転写ベルト10eに補強部材46が貼り付けられた状態では、中間転写ベルト10eの内周長が長くなるように伸ばされているものとする。例えば、中間転写ベルト10eを高いテンションで張架し、その状態で補強部材46を備えれば、このような状態を作り出すことができる。
このような条件で、中立面での周長さが長くなり、lからl'に変化したとする。このとき、仮に数17が成り立っていれば、無負荷状態での一回転周期Rは変わらない。
それは、補強部材46を備えることで中立面の位置での周長さl'も長くなるが、駆動ローラ10fの中心から中立面までの距離も長くなるからである。その両者の変化分が完全に打ち消しあい、無負荷状態での一回転周期Rは変わらないのである。
図7(c)は、数17の条件よりも補強部材46が短い場合の説明図である。すなわち、中間転写ベルト10eを切断し、図7(b)の補強部材46と図7(c)の補強部材46の長さを比較すると、図7(c)の補強部材46の方が短い。つまり、数18の関係が成り立つ。
図7(c)では、図4のように補強部材46を備える部分での内周長が小さくなるように、補強部材46を備えている。図7(c)の状態では、中立面での周長さがlからl'に変われば、無負荷状態での一回転周期Rは小さくなる。
さらに、図7(c)のように補強部材46を備えた場合、ベルト幅方向Mに細かく中立面での周長さl'を見れば、補強部材46を備えたところと備えていないところで、連続的にl'の値が変わる。そのとき、数13に表すように中立面の位置も変化するが、その両者の変化分は打ち消しあわない。そのため、ベルト幅方向Mに細かく見たとき、無負荷状態での一回転周期Rの値は連続的に変化する。そのとき、補強部材46を備えたところのRは小さくなっているのである。
さらに、中間転写ベルト10eの断面積Aa、および、補強部材46の断面積Acについて、図8(a)、図8(b)を用いて詳しく説明する。断面積Aaは、単純に中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの寸法と中間転写ベルト10eの厚みを乗算したものではない。そうではなく、引っ張ったときの弾性変形に、実際に関与している部分の断面積のことをいう。
図8(a)は、駆動ローラ10fをベルト搬送方向から見た断面図である。中間転写ベルト10eがテンションをかけられ、伸ばされた状態で駆動ローラ10fに接している様子を表す。この状態において、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fから脱落している箇所は、引っ張ったときの弾性変形に関与しない。つまり、図8(a)の網点で表された部分が中間転写ベルト10eの断面積Aaとなる。そして、斜線で表された部分が補強部材46a、46bの断面積Acとなる。
以下、本発明の動作原理を説明する都合上、図8(a)の駆動ローラ10fの中央で分割して、補強部材46a、46bに関わる断面積Aa、Acを考えるものとする。補強部材46aに関わるものは、図8(a)左側の網点部分の断面積Aa−a、斜線部分の断面積Ac−aである。補強部材46bに関わるものは、図8(a)右側の網点部分の断面積Aa−b、斜線部分の断面積Ac−bである。
図8(b)は、駆動ローラ10fをベルト搬送方向から見た断面図である。ただし、図8(b)の中間転写ベルト10eは、駆動ローラ10fに対して少しだけ右に寄っている。ここで、図8(b)は図4に示すように中間転写ベルト10eの内周長差が大きい場合を、誇張して図示している。実際には、図8(b)のように中間転写ベルト10eと駆動ローラ10fの中央部が完全に浮いているわけではなく、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eは接している状態にある。駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eが接することで生じる反力が少ないだけである。
図8(b)では、内周差の違いにより、内周面の小さな補強部材46a、46b付近の中間転写ベルト10eだけしか、引っ張ったときの弾性変形に関与していない。このとき、図8(b)の網点で表された部分だけが中間転写ベルト10eの断面積Aa−a、Aa−bとなる。そして、補強部材46aに関わるものが、図8(b)左側の網点部分の断面積Aa−a、斜線部分の断面積Ac−aとなる。また、補強部材46bに関わるものは、図8(b)右側の網点部分の断面積Aa−b、斜線部分の断面積Ac−bとなる。
図8(b)では、中間転写ベルト10eは、駆動ローラ10fに対して少しだけ右に寄る。その為、補強部材46aに関わる左側の断面積Ac−aの方が、補強部材46bに関わる右側の断面積Ac−bより大きく、左側の引張強度の方が強い。引張強度が強い分だけ左側の中間転写ベルト10e及び補強部材46bは伸び量が小さくなり、中間転写ベルト10eの左側の断面積Aa−aも、伸び量が小さい分だけ小さくなる。逆に、右側の断面積Ac−bは引張強度が弱い。引張強度が弱い分だけ右側の中間転写ベルト10e及び補強部材46bは伸び量が大きくなり、中間転写ベルト10eの右側の断面積Aa−bも、伸び量が大きい分だけ大きくなる。よって、補強部材46aに関わる左側の断面積Aa−aの方が、補強部材46bに関わる右側の断面積Aa−bよりも小さい。
このように、図4に示すように中間転写ベルト10eの内周長差が大きい場合、中間転写ベルト10eが寄ることで、補強部材46a、46bの断面積Ac−a、Ac−bが変化する以外に、中間転写ベルト10eの断面積Aa−a、Aa−bも変化する。中間転写ベルト10eの断面積Aa−a、Aa−bも変化する分だけ、引張強度Ea×Aa+Ec×Acの変化率も大きくなる。よって、数16から、内周長差が大きい方が回転周期の変化する割合が大きくなるのである。
次に本発明に係る中間転写ベルト10eのベルト寄りのメカニズムについて、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eを例示して、図8(c)を用いて詳細に説明をする。図8(c)は、中間転写ベルト10eが、駆動ローラ10fに巻き付く様子を拡大表示した、駆動ローラ端部の略拡大図である。
中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに対してまっすぐ、すなわち駆動ローラ10fの軸線に対して垂直に巻き付けば、中間転写ベルト10eの位置は、駆動ローラ10fに巻き付く入口側と送り出される出口側とで変わらない。従って、中間転写ベルト10eは同じ位置を駆動搬送され続ける為にベルトの寄りは発生しない。
しかしながら、バネ45の前後のテンション差や、駆動ローラ10f・対向ローラ10g・テンションローラ10hのアライメントのずれ、機構を構成する部品の寸法のばらつき、などの様々なばらつき要素を完全に無くすことは不可能である。ばらつき要素を完全に無くすことが不可能である為に、中間転写ベルト10eは、駆動ローラ10fに対して、必ず所定の角度(以下、進入角と称する)を有して巻き付いて行く。そして、中間転写ベルト10eは、進入角にのっとった方向に寄る。
図8(c)中、中間転写ベルト10eは、矢印B方向に駆動搬送され、駆動ローラ10fに巻き付いていく。中間転写ベルト10eの端部ライン10e−1上の一点Xは、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに巻き付くにつれて、点Xから点X´の位置に移動する。また、別の一点Yは、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに巻き付くにつれて、点Yから点Y´の位置に移動する。中間転写ベルト10eの端部ライン10e−1は、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに巻き付くにつれて、点X´と点Y´を結んだ10e−2の位置に移動する。この継続的な移動で、中間転写ベルト10eは進入角によって図8(c)中矢印C方向に寄って行く。これがベルト寄りのメカニズムである。
次に本発明に係る中間転写ベルト10eのベルト寄りを規制するメカニズムを、図9(a)、図9(b)、図9(c)を用いて詳細に説明する。図9(a)〜図9(c)は、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eを下面側から見た裏面図である。
図9(a)において、不図示のテンションローラ10hと中間転写ベルト10eの位置関係は、左右対称系となっている。ただし、左右対称系とは設計上の基準位置のことを指し、部品や組み立てのばらつきを考慮したものではない。駆動ローラ10fが矢印H方向に駆動回転をすると、中間転写ベルト10eは矢印I方向に駆動搬送される。中間転写ベルト10eが駆動搬送されると、部品や組み立てのばらつきによって形成される進入角にのっとり、中間転写ベルト10eは寄り始める。本実施例では、矢印J方向に中間転写ベルト10eが寄る場合を例に示している。
中間転写ベルト10eが矢印J方向の移動で図9(b)の位置関係になると、装置手前側の補強部材46aが駆動ローラ10fに乗るオーバーラップ領域46a−1が増え、装置奥側の補強部材46bが駆動ローラ10fに乗るオーバーラップ領域46b−1が減る。
このとき、数16に則って、装置手前側の補強部材46aと、装置奥側の補強部材46bの1回転周期がどのように変化するのかを考える。まず、装置手前側の補強部材46aに注目する。中間転写ベルト10eが寄り、オーバーラップ領域46a−1が増えると断面積Acは増加する。そして、中間転写ベルト10eと補強部材46aを合わせた引張強度Ea×Aa+Ec×Acも増加する。装置手前の補強部材46a側の中立面は、駆動ローラ10fの中心軸から遠くなる位置に移動する。
また、装置手前の補強部材46a側の伸び量は、図9(a)の初期状態に比べて減少する。さらに、図4および図7(c)の状態であれば、中立面での中間転写ベルト10eの周長さl'も短くなり、無負荷状態での中間転写ベルト10e一回転周期Rも減少する。このようなことから、装置手前の補強部材46a側では、図9(a)の初期状態に比べて1回転の動作が速くなる。次に、装置奥側の補強部材46bの1回転周期に注目する。装置手前側の補強部材46aとは逆の現象となる。即ち、図9(a)の初期状態に比べて1回転の動作が遅くなる。
ここまでを以下のようにも表現できる。即ち、中間転写ベルト10eが寄る方向と反対方向に設けられた補強部材46aのベルト幅方向Mにおける駆動ローラ10fに対する重なり領域の幅が増える。そして、剛性が増加して中間転写ベルト10eの伸び量が減少する(中間転写ベルト10eが寄る側と反対側の重なり領域の単位幅あたりの内周面の内周長が短くなる)ことで、中間転写ベルト10eが寄る方向と反対側の回転周期が短くなる。
また、中間転写ベルト10eが寄る方向に設けられた補強部材46bのベルト幅方向Mにおける駆動ローラ10fに対する重なり領域の幅が減る。そして、剛性が減少して中間転写ベルト10eの伸び量が増加する(中間転写ベルト10eが寄る側の重なり領域の単位幅あたりの内周面の内周長が長くなる)ことで、中間転写ベルト10eが寄る方向側の回転周期が長くなる。
すると、中間転写ベルト10eにおけるベルト幅方向Mに生じた回転周期の差が生じる。即ち、中間転写ベルト10eにおける寄る方向の部位の回転周期が寄る方向と反対方向の部位の回転周期よりも長くなる。そして、装置手前側の中間転写ベルト10eの方が装置奥側よりも早く進むことになる。そうすると、中間転写ベルト10eが、図9(b)の時計回りに回転するような現象が起きる。図9(b)の時計回りに回転すると、図9(c)のような位置関係になる。つまり、進入角が発生する。この方向の進入角は、図8(c)で説明した通り、これまで寄っていた矢印Jの方向とは逆向きに中間転写ベルト10eを寄せる効果がある。
中間転写ベルト10eが図9(b)の矢印J方向に寄れば寄るほど、装置手前側と装置奥側の中間転写ベルト10eの1回転周期の差は大きくなる。つまり、図9(b)の時計回りに回転させようとする作用が強く働く。そして、図9(c)の進入角の発生量は大きくなるのである。図9(a)の初期状態で中間転写ベルト10eが矢印Jの方向に寄ろうとする速度と、中間転写ベルト10eの1回転周期の差によって生じる進入角が生み出す寄り速度とのバランスが取れたところで寄りは止まる。
図9(c)は、そのバランスが取れたところを示す図ではなく、中間転写ベルト10eの寄りによって、寄り方向と反対方向に中間転写ベルト10eを寄らせようとする力が発生することを示している。このことで、図9(c)のように、中間転写ベルト10eが回転しつつ駆動ローラ10fに対して傾くことで、中間転写ベルト10eを寄る方向と反対方向に移動させる進入角を作り出し、中間転写ベルト10eの寄りを規制する。
図10(a)は、補強部材46a、46bの効果をまとめたものである。補強部材46a、46bのローラに乗り上げる量が増加すると、中立面、引張強度、中間転写ベルト10eの伸び量、内周長がどのように変化するのかを表している。そして、その結果、中間転写ベルト10eの回転周期(回転動作)がどのように変化するかを示している。続いて、実験例を示す。
中間転写ベルト10eは、内周長630[mm]、幅240[mm]、厚さ80[μm]でPVDFにより製造する。駆動ローラ10fはφ22[mm]、表面に厚さ500[μm]のゴムコーティングを施す。テンションローラ10hは、φ18[mm]で中空のアルミ材により製造する。駆動ローラ10fおよびテンションローラ10hの中間転写ベルト10eに接する部分の長さは225[mm]である。また、バネ45により、装置手前側で2.5[kgf]、装置奥側で2.5[kgf]の合計5[kgf]の力で付勢する。
補強部材46a、46bには、幅12[mm]、厚さ25[μm]ポリエステルテープを1周分巻く。補強部材46a、46bが幅方向に対称となるように、そして、丁度、補強部材46a、46bの中央部が駆動ローラの各端部面に等しくなるようにする。即ち、補強部材46aと46bの中心間距離は225[mm]である。駆動ローラは1秒間に2回転の速さで回転する。このような条件で、メインフレーム43が装置手前側と装置奥側で1[mm]ねじれると、30[μ/sec]の速度で寄りを生じる。地面が平らでない場所に置いて外力を加えれば、メインフレーム43が1[mm]近くねじれることもある。そのため、本発明により30[μ/sec]の寄り速度が十分に規制できる必要がある。
図10(b)は、補強部材46a、46bが用いられた中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mのベルト位置、及び、中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mへの寄り速度の関係を示すグラフである。横軸に中間転写ベルト10eの位置をとる。中間転写ベルト10eが基準の中心位置にいるとき、横軸をゼロとし、中間転写ベルト10eが装置奥側に移動する向きを正の方向にしている。補強部材46a、46bの幅が12[mm]であるから、中間転写ベルト10eが+6の位置にあるとき、ちょうど補強部材46aが全て駆動ローラ10fに乗り上げる。そのとき、補強部材46bは全て駆動ローラ10fから脱落している。
逆に、中間転写ベルト10eが−6mmの位置にあるとき、補強部材46aは全て駆動ローラ10fから脱落し、補強部材46bは全て駆動ローラ10fに乗り上げる。縦軸には、中間転写ベルト10eの寄り速度をとる。中間転写ベルト10eが装置奥側に移動する向きを寄り速度が正の方向としている。そして、中間転写ベルト10eの位置を変え、寄り速度を測定した結果が図10(b)である。
まず、中間転写ベルト10eを−8mmの位置にセットし、駆動ローラ10fを回転させた場合を考える。すると、寄り速度が正であるから、中間転写ベルト10eは正の方向に移動する。つまり、グラフの原点に向かって移動する。そして、中間転写ベルト10eが−6mmの位置に来るまで、同じ速度で移動していく。さらに中間転写ベルト10eが−6mmよりも右側の位置に移動すると、少しずつ寄り速度を下げながら原点に向かって移動していく。そして、原点付近のところで寄り速度がゼロになり、中間転写ベルト10eの寄りが止まる。つまり、中間転写ベルト10eは図10(b)の矢印に示すような移動をする。
次に、中間転写ベルト10eを8mmの位置にセットし、駆動ローラ10fを回転させた場合を考える。すると、寄り速度が負であるから、中間転写ベルト10eは負の方向に移動する。つまり、グラフの原点に向かって移動する。そして、中間転写ベルト10eが6mmの位置に来るまで、同じ速度で移動していく。さらに中間転写ベルト10eが6mmよりも左側の位置に移動すると、少しずつ寄り速度を下げながら原点に向かって移動していく。そして、原点付近のところで寄り速度がゼロになり、中間転写ベルト10eの寄りが止まる。つまり、中間転写ベルト10eをどの位置に置いたとしても、原点に向かって移動するのである。
図10(b)の縦軸の寄り速度が±60[μm/sec]であることから、メインフレーム43が1[mm]近くねじれたとしても、十分に寄りを規制できることがわかる。
次に、異なる視点から本発明の効果を検証する。図11(a)は、中間転写ベルト10eをベルト幅方向Mの中央部で切断して実験したときの中間転写ベルト10eの平面図である。図11(b)は、図11(a)の構成において、中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mのベルト位置、及び、基準周期からのずれの関係を示すグラフである。
図11(a)に示されるように、中間転写ベルト10eは矢印Iの方向に搬送されている。そして、補強部材46aのある装置奥側の中間転写ベルト10eが、基準の1回転周期に対しどのように変化するのかを観測した。
図11(b)では、横軸に、中間転写ベルト10eの位置をとる。中間転写ベルト10eが基準の中心位置にいるとき横軸をゼロ、中間転写ベルト10eが装置奥側に移動する向きを正の方向にしている。縦軸に、補強部材46aのある装置手前側の中間転写ベルト10eの、基準からの周期のずれ量[msec]をとる。補強部材46aのある装置手前側の一回転周期が短ければ、グラフ上で負の値をとる。中間転写ベルト10eの位置を変え、基準からの周期のずれ量を測定した結果が示されている。
図11(b)から、中間転写ベルト10eの位置が変わることで、回転周期がずれることがわかる。図11(b)でも、数16と同じように、補強部材46aが乗り上げている量が大きいほど、回転周期は早くなっている。つまり、補強部材46aを用いて引張強度を変えることで、回転周期が変化し、進入角が発生する。以上のように、本発明により、中間転写ベルト10eの寄りを規制できることがわかる。
次に本発明の実施例2について詳細に説明をする。実施例2のベルトユニットである中間転写ベルトユニット(以下、「中間転写ユニット210」という)の構成について説明をする。実施例2の中間転写ユニット210の構成は、実施例1の中間転写ユニット10と同じ構成である。従って、実施例1と同様の構成については、説明を省略する。また、同様の構成については、実施例1で説明した内容と同様の構成である。
最初に本発明の実施例2に係る中間転写ベルト10eのベルト寄りを規制するメカニズムについて、図12〜図14を用いて、詳細に説明する。図12(a)、図12(b)は、一般の中間転写ユニット510を上面側から見た概略断面図である。図14(a)、図14(b)は、本発明の実施例2に係る中間転写ユニット210の上面側から見た概略断面図である。
図12〜図14において、中間転写ユニット510、210は左右対称系として設計されているとする。ただし、左右対称系とは設計上の基準位置のことを指し、部品や組み立てのばらつきを考慮したものではない。また、中間転写ベルト10eは矢印Iの方向に移動されるものとする。
駆動ローラ10fが駆動回転をすると、中間転写ベルト10eは回転移動する。中間転写ベルト10eが回転移動すると、部品や組み立てのばらつきによって形成される進入角にのっとり、中間転写ベルト10eは寄り始める。ここでは、図12(a)の矢印Dの方向に中間転写ベルト10eが寄る場合を例に示している。一般の中間転写ユニット510であれば、図12(a)の初期状態から矢印Dの方向に中間転写ベルト10eが寄ると、わずかだが、図12(b)のようにテンションローラ10hが動く。これは、モーメントの釣り合いの関係で起こる。
モーメントの釣り合いをイメージするため、図13を用いて説明する。図13はテンションローラ10h及び駆動ローラ10fを上面側から見た概略平面図である。中間転写ベルト10eを極端に細く図示している。
図13に表すように、中間転写ベルト10eが矢印Dの方向に寄ったとする。そして、テンションローラ10hが、矢印Dとは反対の方向にあるバネ45から受ける力をf−a、矢印Dの方向にあるバネ45から受ける力をf−b、中間転写ベルト10eから受ける総力をf−10eとする。
このとき、まず、図13の点C−a周りのモーメントを考える。中間転写ベルト10eが右の方向(装置奥側)に寄ると、C−aの点と中間転写ベルト10eから受ける総力f−10eの距離は遠くなる。f−10eと釣り合うモーメントは、バネ45から受ける力f−bになる。釣り合いの関係から、中間転写ベルト10eが寄ってもf−10eの大きさが変わらないとすると、中間転写ベルト10eが矢印Dの方向に寄れば、バネ45から受ける力をf−bは大きくならなければならない。そのため、矢印Dの方向にある(装置奥側)のバネ45は少し縮む。
逆に、図13の点C−b周りのモーメントを考える。中間転写ベルト10eが右の方向(装置奥側)に寄ると、C−bの点と中間転写ベルト10eから受ける総力f−10eの距離は近くなる。f−10eと釣り合うモーメントは、バネ45から受ける力f−aになる。釣り合いの関係から、中間転写ベルト10eが寄ってもf−10eの大きさが変わらないとすると、中間転写ベルト10eが矢印Dの方向に寄れば、バネ45から受ける力をf−aは小さくならなければならない。そのため、矢印Dとは反対の方向にある(装置手前側)のバネ45は少し伸びることになる。
図13は極端な例であったが、図12(a)や図12(b)のような状態でも、微小に中間転写ベルト10eから受ける力が変化する。そして、図12(a)の初期状態から矢印Dの方向に中間転写ベルト10eが寄ると、図12(b)のようにテンションローラ10hが動くのである。
しかし、本発明に係る構成によると、図12(b)のテンションローラ10hの動きとは、逆の方向にテンションローラ10hを動かすことができる。つまり、図14(a)の状態から矢印Dの方向に中間転写ベルト10eが寄ると、図14(b)のようにテンションローラ10hが動く。
ではなぜテンションローラ10hの動きが図12(b)のケースと逆になるのかという、メカニズムを説明する。端的に述べると、実施例1で述べたのと同じように、引張強度の変化によって起こる。
中間転写ベルト10eが図14(a)の状態から矢印Dの方向に寄ると、補強部材46aの駆動ローラ10fに乗り上げる量が増える。駆動ローラ10fに乗り上げる量が増えると、引張強度に寄与する補強部材46aの断面積Ac−aが増える。そして、補強部材46aのある側では伸び量が減ろうとする。
一方で、モーメントの釣り合いの関係で、装置手前側のバネ45は伸びようとしている。仮に、補強部材46aの伸び量を減らそうとする成分が、モーメントの釣り合いの関係でバネ45が伸びようとする成分より大きければ、テンションローラ10hは図14(b)のように動く。
装置奥側についても同じことがいえる。中間転写ベルト10eが図14(a)の状態から矢印Dの方向に寄ると、補強部材46bの駆動ローラ10fに乗り上げる量は減る。駆動ローラ10fに乗り上げる量が減ると、引張強度に寄与する補強部材46bの断面積Ac−bが減る。そして、補強部材46bのある側では伸びようとする。
一方で、モーメントの釣り合いの関係で、装置奥側のバネ45は縮もうとしている。補強部材46bの伸びようとする成分が、モーメントの釣り合いの関係でバネ45が縮もうとする成分より大きければ、テンションローラ10hは図14(b)のように動く。このように、補強部材46a、46bを用いれば、図14(b)に示すように、図12(b)のテンションローラ10hの動きとは逆の方向にテンションローラ10hを動かすことができる。
テンションローラ10hの動きに寄与する補強部材46a、46bの度合いを、モーメントの釣り合いで動かそうとするバネ45の度合いよりも大きくするには、次のようにする。一に、装置手前側と装置奥側のバネ45の距離を増やす。二に、バネ45のバネ定数を小さくする。三に、図4に示すように、補強部材46a、46bのある場所での内周長を小さくする。
他にも、総テンション圧や、補強部材46a、46bの引張強度、中間転写ベルト10eの引張強度を変更すれば、大きさの度合いを変更できる。
特に、図4に示すように、補強部材46a、46bのある場所での内周長を小さくすると、比較的容易に図14(b)に示すようなテンションローラ10hの動きを実現できる。これは図8(b)を考えると理解しやすい。
補強部材46aが駆動ローラ10fに乗り上げる量が大きいほど、補強部材46aがある側の引張強度は強い。それは、補強部材46aの断面積が増えるからである。もし、補強部材46aのヤング率が十分高く、図4のように十分な内周長差があれば、駆動ローラ10fに乗り上げる量が大きくなった場合に、ほとんど補強部材46aだけで中間転写ベルト10eの伸び変形を抑えることになる。その状態では、補強部材46a側の中間転写ベルト10eの内周長は極端に短くなっている。そうすると、短くなっている内周長に合わせて、図14(b)に示すようにテンションローラ10hがミスアライメントするのである。
時系列的に簡単に言うと、次のようになる。中間転写ベルト10eが寄る方向と反対方向の補強部材46aはローラ(10f、10g、10h)と重なる幅が増え、中間転写ベルト10eの単位幅あたりの内周面の内周長が短くなる。中間転写ベルト10eが寄る方向と反対方向でテンションローラ10hが張力に抗する力が増える。中間転写ベルト10eが寄る方向と反対方向のテンションローラ10hの位置は、駆動ローラ10fへと近づく方向に移動する。
逆に、補強部材46bのある側では、駆動ローラ10fに乗り上げる量が減っていき、引張強度は弱くなる。それは、補強部材46bの断面積が減るからである。そうすると、補強部材46bだけでは中間転写ベルト10eの伸び変形を抑えることができなくなる。そして、中間転写ベルト10eは伸び、補強部材46bのある側の内周長は増えるのである。そうすると、長く伸びた内周長に合わせて、テンションローラ10hは動く。つまり、図14(b)に示すようにテンションローラ10hがミスアライメントするのである。
時系列的に簡単に言うと、次のようになる。中間転写ベルト10eが寄る方向の補強部材46bはローラ(10f、10g、10h)と重なる幅が減り、中間転写ベルト10eの単位幅あたりの内周面の内周長が長くなる。中間転写ベルト10eが寄る方向でテンションローラ10hが張力に抗する力が減る。中間転写ベルト10eが寄る方向のテンションローラ10hの位置は、駆動ローラ10fから遠ざかる方向に移動する。
さらに、数16を用いて説明をする。実施例1の中で、図4、図7(c)を用いて、中立面での周長さが変わるということを述べた。幅方向に細かく中立面での周長さl'を見れば、補強部材46を備えたところと備えていないところで、連続的にl'の値が変わる。補強部材46を備えたところでのl'は小さく、補強部材46を備えていないところに向かうに従って、l'は少しずつ大きくなる。そのため、中間転写ベルト10eが移動すると、テンションローラ10hが図14(b)に示すようにテンションローラ10hがミスアライメントするのである。
このように、補強部材46a、46bのある場所での内周長を小さくすると、比較的容易に、テンションローラ10hの動きに寄与する補強部材46a、46bの度合いを大きくすることができる。
次に、図14(b)に示すようにテンションローラ10hが動くと、寄りが規制されるメカニズムについて説明する。実は、実施例1で説明したメカニズムは、テンションローラ10hがスライドしないように固定されて動かない場合にも成り立つ。それに対して、実施例2で説明する内容は、テンションローラ10hが動く場合にだけ発生する、寄り規制のメカニズムである。
実施例2のメカニズムを説明する前に、少しだけ実施例1について注釈を加えておく。まず、中間転写ベルト10eの幾何学的な周長を定義しておく。図15(a)及び図15(b)は中間転写ベルト10eの幾何学的な周長の説明図である。図15(a)及び図15(b)のように駆動ローラ10fの上流側と下流側にテンションT1およびT2がかけられた状態での、中立面での中間転写ベルト10eの周長のことを幾何学的な周長と呼ぶことにする。
実施例1で説明したメカニズムは、テンションローラ10hが固定されて動かない場合にも成り立つ。それは、中間転写ベルト10eの幾何学的な周長が変化しなくても、数16にもとづき、一回転の周期は変化することができるからである。数16は、あくまで張り側での伸び量と中立面までの半径に基づいて、一周するまでにかかる張り側での行路から、周期時間を導き出す式である。よって数16は中間転写ベルト10eの幾何学的な周長については規定していないのである。
つまり、駆動ローラ10fの張り側テンションが高くて、緩み側テンションが低くければ、幾何学的な周長が変化しないでも、一回転周期の変化を発生させることができる。中間転写ベルト10e一周分の幾何学的な内周長が変化しなければ、テンションローラ10hの位置は変化する必要がない。よって、テンションローラ10hの傾きに関係なく、実施例1で説明したメカニズムは成り立つ。
それに対し、実施例2で説明する内容は、テンションローラ10hが動く場合に発生する、寄り規制のメカニズムである。実施例2で寄りを規制するメカニズムの一つは、一回転周期の差で説明される。
図14(b)において、テンションローラ10hと駆動ローラ10fの間隔が短い装置手前側の方が、装置奥側に比べて中間転写ベルト10eの幾何学的な周長が短い。そして、装置手前側の幾何学的な周長は短くなっているので、一回転するのに必要な周期は短い。つまり、装置手前側の方が、装置奥側に比べて中間転写ベルト10eが早く進む。そうすると、中間転写ベルト10eは駆動ローラ10fに対して傾いて巻き付く。そのとき進入角は、中間転写ベルト10eが寄ってきた矢印Dに対して反対に中間転写ベルト10eを動かす方向に発生する。このようにして、中間転写ベルト10eの寄りは規制される
もう一つのメカニズムは、駆動ローラ10fとテンションローラ10hの傾きが作り出す進入角によって説明される。それは、周期差以外の要因で作り出される進入角である。
図14(b)の矢印Dの方向に中間転写ベルト10eが寄るとする。すると、実施例2では、図14(b)に示すように二つのローラが傾く。すると、その傾きだけの幾何学的な作用によって進入角が生じる。中間転写ベルト10eが2つのローラの表面にならおうとするから、幾何学的に図14(b)のような進入角になるのである。この進入角は寄りを規制する方向に作用する。このことから、駆動ローラ10fに対するテンションローラ10hの傾きが、幾何学的に作り出す進入角によって、寄りは規制される。
それでは、前述のメカニズムにもとづき、中間転写ベルト10eの寄りが規制される様子を時系列で説明する。図14(a)において、中間転写ベルト10eが回転移動すると、中間転写ベルト10eは矢印Dの方向に移動する。すると、図14(b)に示すように、装置手前側の補強部材46aが駆動ローラ10fに乗るオーバーラップ領域46a−1は増え、装置奥側の補強部材46bが駆動ローラ10fに乗るオーバーラップ領域46b−1は減る。
このとき、引張強度に寄与する補強部材46aの断面積Aaは増え、引張強度が増加する。逆に、引張強度に寄与する補強部材46bの断面積Aaは減り、引張強度が減少する。この効果により、テンションローラ10hは図14(b)のように傾く。
このとき、補強部材46a側の中立面での周長さl'は小さくなり、補強部材46b側の中立面での周長さl'は大きくなる。言い換えれば、補強部材46a側の幾何学的な周長は短くなり、補強部材46a側の幾何学的な周長は長くなる。その周長さの関係で、補強部材46a側の回転動作は速くなり、補強部材46b側の回転動作は遅くなる。
補強部材46a及び補強部材46b毎に別の表現で言い表すと、以下のようになる。中間転写ベルト10eが寄る方向と反対方向の補強部材46aはローラと重なる幅が増えると、中間転写ベルト10eの単位幅あたりの内周面の内周長が短くなることで回転周期が短くなり、補強部材46aの回転動作が速くなる。また、中間転写ベルト10eが寄る方向の補強部材46bはローラと重なる幅が減ると、中間転写ベルト10eの単位幅あたりの内周面の内周長が長くなることで回転周期が長くなり、補強部材46bの回転動作が遅くなる。
さらに実施例1で説明したように、補強部材46aの引張強度が増加することで、中間転写ベルト10eの補強部材46a側の回転周期は短くなり回転速度は速くなる。逆側では、補強部材46bの引張強度が減少することで、中間転写ベルト10eの補強部材46b側の回転速度は長くなり回転速度は遅くなる。つまり、引張強度の関係で、補強部材46a側と補強部材46b側との間に回転速度や回転速度に差が生まれる。
このように、周長さの効果と、引張強度の効果が合算されて、中間転写ベルト10eは補強部材46b側に対して、補強部材46a側が早く進む。すると、中間転写ベルト10eは図14(b)の反時計周りに回転し、寄りを規制する方向に進入角を生じさせる。
このとき、駆動ローラ10fに対し、テンションローラ10hが傾いているので、中間転写ベルト10eが2つのローラ表面にならおうとし、幾何学的な進入角が発生している。この進入角も寄りを規制する方向に働く。そして、これらすべての効果により、寄りを規制させる作用が働く。
テンションローラ10hが傾く量は、中間転写ベルト10eが矢印Dの方向に寄るほど大きくなる。そのため、中間転写ベルト10eが矢印Dの方向に寄るほど、進入角は寄りを規制する方向に大きく発生する。そして、少しずつ中間転写ベルト10eが矢印Dの方向に移動していき、図14(a)の初期状態で中間転写ベルト10eが矢印Dの方向に寄ろうとする速度と、本発明の効果が生み出す寄り速度とのバランスが取れたところで寄りは止まる。
図14(b)は、そのバランスが取れたところを示す図ではなく、中間転写ベルト10eの寄りによって、寄り方向と反対方向に中間転写ベルト10eを寄らせようとする力が発生することを説明する説明図である。
最後に、実験例を示す。実施例1と同じベルトユニットの構成で、バネ45にバネ定数2.1[N/mm]を用いる。図4のように内周長差をつけるため、幅12[mm]、厚さ25[μm]のポリエステル製補強部材を30[N]程度の力で引っ張って貼り付けている。
図15(c)は、本発明の効果を検証したグラフである。前述の条件で、テンションローラ10hの傾きを観測している。横軸に中間転写ベルト10eの位置をとる。中間転写ベルト10eが基準の中心位置にいるとき横軸をゼロ、中間転写ベルト10eが装置奥側に移動する向きを正の方向にしている。縦軸には、テンションローラ10hの傾き量[μm]をとる。
図15(c)は、補強部材46aのある装置手前側と、補強部材46aのある装置奥側の、テンションローラ10hの絶対位置の差分をプロットしている。図15(c)で、補強部材46aのある装置手前側のテンションローラ10hの方が駆動ローラ10fに対して遠くなれば、正の値をとる。
図15(c)から分かるように、図14(b)と同じようにテンションローラ10hが傾いていることが分かる。中間転写ベルト10eが図14(b)の右側に寄れば、装置手前側のテンションローラ10hは駆動ローラ10fに近づく方向に傾く。逆に、中間転写ベルト10eが図14(b)の左側に寄れば、装置手前側のテンションローラ10hは駆動ローラ10fに遠のく方向に傾く。このことから、本発明により、テンションローラ10hの動きを変化させられることがわかる。
図16(a)は、本発明によるところの、内周長差の影響を検証したグラフである。横軸に中間転写ベルト10eの位置をとる。中間転写ベルト10eが基準の中心位置にいるとき横軸をゼロ、中間転写ベルト10eが装置奥側に移動する向きを正の方向にしている。縦軸には、中間転写ベルト10eの寄り速度をとる。中間転写ベルト10eが装置奥側に移動する向きを寄り速度が正の方向としている。
そして、内周長差を大きくした場合と、内周長差を小さくした場合の寄り速度の結果を比較した。内周長差が大きい条件では、補強部材を30[N]程度の力で引っ張って貼り付け、内周長差が小さい条件では、補強部材を10[N]程度の力で引っ張って貼り付けている。中間転写ベルトの位置を変え、寄り速度を測定した結果が図16(a)である。
図16(a)において、内周長差を大きくした方が、寄り速度の変化の度合いが大きい。つまり、中間転写ベルト10eの乗り上げ量の変化が少なくても、より多くの寄りの規制効果が発揮されることがわかる。以上のことから、本発明において、内周長差を大きくした方が寄り規制効果が高いことがわかる。
図16(b)は、本発明によるところの、テンションローラ10hが傾くことによる効果を検証したグラフである。先程、実施例1のメカニズムでは、テンションローラ10hを固定しても効果が発揮されることを説明した。逆に、実施例2のメカニズムでは、テンションローラ10hが固定されると効果は発揮されない。そのため、テンションローラ10hを固定した場合と、固定しなかった場合を比較し、本発明によるところの、テンションローラ10hが傾くことによる効果を検証している。
図16(b)は、横軸に中間転写ベルト10eの位置をとる。中間転写ベルト10eが基準の中心位置にいるとき横軸をゼロ、中間転写ベルト10eが装置奥側に移動する向きを正の方向にしている。縦軸には、中間転写ベルト10eの寄り速度をとる。中間転写ベルト10eが装置奥側に移動する向きを寄り速度が正の方向としている。そして、テンションローラ10hを固定した場合と、固定しなかった場合で、中間転写ベルト10eの位置を変え、寄り速度を測定した。
図16(b)において、テンションローラ10hを固定しなかった方が、寄り速度の変化の度合いが大きい。つまり、中間転写ベルト10eの乗り上げ量の変化が少なくても、より多くの寄りの規制効果が発揮されることがわかる。
以上のことから、本発明において、実施例2のメカニズムでテンションローラ10hが移動し、その効果によっても寄りが規制されることがわかる。