以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本発明の実施例1に係る中間転写ベルトユニット(以下、「中間転写ユニット10」という)を備える画像形成装置100の構成を示す断面図である。ここでは、画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスを利用した両面印刷機能を有するカラーレーザビームプリンタである。図1に示されるように、画像形成装置100は装置本体100Aを有し、装置本体100Aの内部には感光体ドラム1a〜1dを有して画像を形成する画像形成手段であるプロセスカートリッジ(カートリッジ3a〜3d)が着脱可能な構成で、設けられている。画像形成装置100は、装置本体100Aの下部に、オプション給送装置(以下、給送オプション部)90を有する構成となっている。
カートリッジ3a〜3dは、同一構造であるが、各々には異なる色のトナーが収容されている。カートリッジ3a、3b、3c、3dの各々はイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(c)、ブラック(Bk)トナー像を形成する。カートリッジ3a〜3dは同一構造であるので、カートリッジ3aを代表として構造を説明する。カートリッジ3aは、像担持体である感光体ドラム1a、各色のトナー像を現像するための現像ユニット4a、クリーナユニット5aを有する。 現像ユニット4aは、現像ローラ6a、現像剤塗布ローラ7a、トナー容器を有している。更に、クリーナユニット5aは、 感光体ドラム1a、帯電ローラ2a、ドラム用のクリーニングブレード8a、廃トナー容器を有している。
カートリッジ3a〜3dの下方には、スキャナユニット9が配置される。このスキャナユニット9は、画像信号に基づく露光を感光体ドラム1a、1b、1c、1dに対して行う。感光体ドラム1a、1b、1c、1dは、帯電ローラ2a、2b、2c、2dによって所定の負極性の電位に帯電された後、スキャナユニット9によってそれぞれ静電像(静電潜像)が形成される。この静電像は現像ユニット4a、4b、4c、4dによって反転現像されて負極性のトナーが付着され、それぞれY、M、C、Bkのトナー像が形成される。
カートリッジ3a〜3dの上方には、ベルトユニットである中間転写ユニット10が配置される。中間転写ユニット10は、感光体ドラム1の表面から転写されるトナー像を記録材であるシートSに転写するユニットである。また、この中間転写ユニット10は、詳しくは後述するが、中間転写ベルト10eがベルト搬送方向B(図2(a)参照)と直交するベルト幅方向Z(図2(b)参照)に寄った場合に、中間転写ベルト10eの寄りが補正されるようになっている。
中間転写ユニット10は、回転可能な無端ベルトである中間転写ベルト10eを有する。中間転写ベルト10eの内側には、中間転写ベルト10eを駆動する駆動ローラ10fと、中間転写ベルト10eを張架する張架ローラである対向ローラ10g、テンションローラ10hと、が配置されている。なお、駆動ローラ10fも中間転写ベルト10eを懸架しているといえる。
中間転写ベルト10eには、テンションローラ10hによって図1中の矢印で示すテンションTがかけられている。また、感光体ドラム1a、1b、1c、1dの各々に対向する位置には、中間転写ベルト10eの内側に1次転写ローラ10a、10b、10c、10dが配設されている。1次転写ローラ10a〜10dは、不図示の電圧印加手段により転写電圧が印加される1次転写部材である。
感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像は、順次、中間転写ベルト10e上に1次転写される。このときに、各感光体ドラム1a〜1dは時計周りに回転する。また、中間転写ベルト10eは反時計周りに回転する。中間転写ベルト10eの表面には、回転方向の上流側の感光体ドラム1a〜1dから順に、トナー像が転写される。感光体ドラム1a〜1dから中間転写ベルト10eへのトナー像の転写は、1次転写ローラ10a〜10dに正極性の電圧を印加することによりなされる。このように中間転写ベルト10e上に4色のトナー像が重なった状態で形成されたトナー像は、2次転写部13へ移動する。
一方、トナー像が転写された後に、感光体ドラム1a〜1dの表面に残ったトナーは、クリーニングブレード8a〜8dによって除去される。また、シートSへの2次転写後に中間転写ベルト10e上に残ったトナーは、転写ベルトクリーニング装置11によって除去される。除去されたトナーは、廃トナー搬送路(不図示)を通過し、廃トナー回収容器(不図示)へと回収される。
画像形成装置100は、3つのシート給送装置(シート給送部)を有する。1つ目は、装置本体100Aの内部に配置される本体シート給送部20である。2つ目は、装置本体100Aの側面に配置されるマルチシート給送部30である。3つ目は、装置本体100Aの下方に増設されたオプション給送装置90である。
1つ目の本体シート給送部20は、シートSを収納する給送カセット21の内部からシートSを給送する給送ローラ22と、分離手段である分離ローラ23と、を有する。給送カセット21に収納されたシートSは、給送ローラ22に圧接され、分離ローラ23によって1枚ずつ分離され搬送される。そして、分離されたシートSは、搬送路24を経てレジストローラ対14へ搬送される。
2次転写部13は、中間転写ベルト10eに形成されたトナー像をシートSに転写する。2次転写部13は、正極性の電圧が印加される2次転写ローラ12を備える。正極性の電圧を2次転写部13に印加することにより、レジストローラ対14によって搬送されたシートSに、中間転写ベルト10e上の4色のトナー像が2次転写される。
2次転写部13の上方には、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとを有する定着装置15が設けられている。トナー像が転写されたシートSは、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとのニップに搬送され、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとによって加熱および加圧され、シートSの表面には、転写されていたトナー像が定着される。
図2(a)は、中間転写ユニット10の構成を張架ローラの軸と直交する方向に断面を取った断面図である。図2(b)は、図2(a)のR−R線に沿って中間転写ベルト10eの断面を取りつつ、矢印L方向から見た側断面図である。まず、図2(a)を用いて、中間転写ユニット10の概要を説明する。
中間転写ベルト10eの基層は、ポリイミド(PI)やポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など、引張強度が高い樹脂系素材で作られる。成形や強度、変形のしやすさなどの要件から、基層は厚さ50μmから100μmの間で作られることが多い。また、トナーを転写する効率を高めるため、基層の外周面全体にわたって、ゴム層などの異なる層を張り合わせた多層構造の中間転写ベルト10eも存在する。本発明に係る中間転写ベルト10eは、これらいずれの組成でも構わない。
中間転写ベルト10eは両端の外周面の全周に渡って、補強部材46a、46bを備える。この補強部材46a、46bは、中間転写ベルト10eの外周面における中間転写ベルト10eのベルト搬送方向Bと直交するベルト幅方向Zの両方のベルト端部すなわち端部10e1に設けられ、中間転写ベルト10eの端部10e1を補強する部材である。補強部材46a、46bの幅は、スペースが許す限り何ミリでも構わない。また、厚みもいくらで構わない。さらに、補強部材46aと補強部材46bで幅や厚みが異なっていたり、別の材質で備えられたりしても構わない。
補強部材46a、46bには、以下のものが用いられる。ポリエステルやポリイミド等の樹脂系材料の他、中間転写ベルト10eの基層と同様、ポリイミド(PI)やポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のフィルム粘着テープを用いる。基本的には、十分な引張強度があれば材質は何であっても構わない。また、中間転写ベルト10eと一体での成型が可能であれば、それでも構わない。
図2(b)に示されるように、駆動ローラ10f及び対向ローラ10gは、それぞれ長手方向の両端部を側板44a、44bによって回転可能に支持されている。
駆動ローラ10fは、側板44a、44bに支持されているローラである。駆動ローラ10fには、装置本体100A(図1参照)の不図示の駆動手段から駆動力を伝達されている。そして、駆動ローラ10fは、図2(a)中の矢印A方向に回転し、中間転写ベルト10eをベルト搬送方向Bに搬送する。駆動ローラ10fの表面は、中間転写ベルト10eを滑り無く搬送する為に、摩擦係数の高いゴム層で形成されている。
対向ローラ10gも、側板44a、44bに支持されているローラである。対向ローラ10gは、2次転写ローラ12(図1参照)とローラ対を形成し、シートSを挟持しつつ搬送しながらトナー像をシートSに転写する。対向ローラ10gは、中間転写ベルト10eの駆動搬送によって図2(a)中の矢印C方向に従動しつつ回転する。
テンションローラ10hは、側板44a、44bに図2(a)中の矢印D方向に回転可能に支持されているだけではなく、図2(a)中の矢印E方向にスライド動作可能に支持されているローラである。テンションローラ10hは、付勢部材であるテンションバネ40によって、図2(a)中の矢印の方向に所定のテンションTで付勢されている。テンションローラ10hが、この付勢力を中間転写ベルト10eに付与することによって、中間転写ベルト10eは所定の張力で張架される。
図3は、駆動ローラ10f、コロ41、対向ローラ10g、駆動ギヤ42、及び、アイドラギヤ43の構成を示す拡大斜視図である。中間転写ユニット10は、回転体であるコロ41と、コロ41に駆動力を伝達する駆動伝達手段の一部である駆動ギヤ42と、駆動伝達手段の一部であるアイドラギヤ43と、を有している。
回転体であるコロ41は、駆動ローラ10fのローラ端部である端部10f1に設けられて回転可能なものである。このコロ41は、駆動ローラ10fの両方の端部10f1(両端部)にて駆動ローラ10fの丸軸10f−aに支持されている。コロ41には孔が形成されており、丸軸10f−aが挿通されており、コロ41は、丸軸10f−aとは独立に回転可能となっている。コロ41は、外周面が中間転写ベルト10eの内周面と当接するコロ部41aと、駆動伝達されるギヤ部41bと、を有している。また、ギヤ部41bと噛み合わされるようにして、アイドラギヤ43が設けられている。アイドラギヤ43は、コロ41に駆動力を伝達する。したがって、コロ41は、駆動ローラ10fの回転動作とは同期せず、アイドラギヤ43から伝達される駆動力によって回転する。
駆動ギヤ42は、対向ローラ10gの両端に備えられ、対向ローラ10gのDカットされた軸部10g−aに結合されている。駆動ギヤ42は、対向ローラ10gの回転動作に同期して、対向ローラ10gと同一回転数で回転する。
アイドラギヤ43は、中間転写ベルト10eのフレームの両端に備えられたボス10iに図2(a)中の矢印M方向に回転可能に支持されている。アイドラギヤ43は、駆動ギヤ42から伝達された駆動力を下流のコロ41に伝達する。このように、アイドラギヤ43、駆動ギヤ42は、コロ41が設けられていない対向ローラ10gの駆動力を、これとは別のローラである駆動ローラ10fの端部10f1に設けられたコロ41に対して伝達する構成となっている。
コロ41のコロ部41aの外周面の周速は、コロ41が端部10f1に設けられたローラである駆動ローラ10fの外周面の周速よりも速くなるように設定される。ここでさらに、コロ41のコロ部41aの外周面の周速を、駆動ローラ10fの外周面の周速よりも速くするメカニズムについて詳細に説明する。
駆動ローラ10fの直径と対向ローラ10gの直径と、コロ41のコロ部41aの直径は、同一直径になっている。また、対向ローラ10gは駆動ローラ10fが搬送する中間転写ベルト10eによって従動しつつ回転する為、駆動ローラ10fの回転数と対向ローラ10gの回転数は同じになる。一方、駆動ローラ10fの両端に備えられたコロ41のギヤ部41bの歯数は、対向ローラ10gの両端に備えられた駆動ギヤ42の歯数よりも少ない。従って、両者のギヤ比より、コロ41は、駆動ローラ10f、対向ローラ10gよりも回転数が速くなる。三者の直径が同一直径に設定されているので、コロ41のコロ部41aの外周面の周速が駆動ローラ10fの周速よりも速くなる。
各々の直径、回転数、ギヤの歯数等を適切に設定することで、容易に駆動ローラ10fの周速よりも端部10f1に備えたコロ41の周速を速くすることができる。中間転写ベルト10eを搬送し、その搬送速度を決める駆動ローラ10fの両端にコロ41を備える構成が、他の張架ローラの両端に備えるよりも、速度差の設定が明確になる。駆動ローラ10fが中間転写ベルト10eの搬送速度を支配するため、3つのローラの中で駆動ローラ10fが中間転写ベルト10eの寄りを規制する方が効果的であるからと考えられる。
ここで、図2(b)に戻って、中間転写ベルト10eや補強部材46a、46bに関連する構成を説明する。中間転写ベルト10eのベルト搬送方向Bと直交するベルト幅方向Zの寸法Q1は、コロ41が設けられた駆動ローラ10fのベルト幅方向Zの寸法、及び、コロ41のベルト幅方向Zの寸法を総和した総和寸法Q2よりも長く設定される。すなわち、図2(b)において、中間転写ベルト10eのベルト幅は、駆動ローラ10fの両端に備えられたコロ41のコロ部41aの端部41a1から所定量はみ出す長さになっている。同様に、中間転写ベルト10eのベルト幅は、対向ローラ10gの両端部から所定量はみ出す長さになっている。
その中間転写ベルト10eのはみ出した部分に補強部材46a、46bが備えられている。ここでは、補強部材46a、46bの内側端部46a1、46b1と、対向ローラ10gの端部10g1や駆動ローラ10fのコロ部41aの外側の端部41a1に隙間が設けられている構成で説明をする(図2(b)、図4(a)参照)。ただし、この構成に限定されなくても良い。補強部材46a、46bが、対向ローラ10gや、駆動ローラ10fのコロ部41aを覆っていても構わない。また、補強部材46a、46bの内側端部46a1、46b1、対向ローラ10gの端部10g1、駆動ローラ10fのコロ部41aの外側の端部41a1が同一面で揃えられていても良い。
ここからは、図4(a)、図4(b)を用いて、中間転写ベルト10eの搬送時に中間転写ベルト10eに寄りが発生するメカニズムを説明する。図4(a)は、設計位置における中間転写ユニット10の裏面図である。最初に、図4(a)を用いて、中間転写ユニット10が設計位置にある時の中間転写ベルト10eの搬送速度について説明をする。図4(a)において、中間転写ベルト10eは矢印F、G方向に搬送されている。補強部材46a、46bがコロ部41aに対して脱落した位置にある時、図4(a)中の左側のコロ部41aと図4(a)中の右側のコロ部41aとが、搬送する中間転写ベルト10eの搬送速度(矢印F、矢印G)は一緒である。
しかし、中間転写ベルト10eは、設計位置の状態を維持することができない。すなわち、中間転写ベルト10eの寄りが発生するのである。なお、脱落した位置とは、補強部材46a、46bが、駆動ローラ10fの軸と直交する方向で、コロ部41aよりも外側のある状態の位置をいう。
図4(a)に示されるように、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに対してまっすぐ、すなわち駆動ローラ10fの軸線に対して垂直に巻き付けば、中間転写ベルト10eの位置は、駆動ローラ10fに巻き付く入口側と送り出される出口側とで変わらない。従って、中間転写ベルト10eは同じ位置を駆動搬送され続ける為にベルトの寄りは発生しない。
しかしながら、機構を構成する部品の様々な寸法ばらつきを完全に無くすことは不可能である。ばらつきを完全に無くすことが不可能である為に、中間転写ベルト10eは、駆動ローラ10fに対して、必ず所定の角度(以下、進入角と称する)を有して巻き付いて行く。そして、中間転写ベルト10eは、進入角にのっとった方向に寄る。
図4(b)は、中間転写ベルト10eが、駆動ローラ10fに巻き付く様子を拡大表示した駆動ローラの端部10f1の概略構成を示す拡大裏面図である。図4(b)に示されるように、中間転写ベルト10eは、矢印J方向に搬送されて、駆動ローラ10fに巻き付いていく。なお、図4(b)では、矢印H方向に中間転写ベルト10eが寄るようにアライメントがずれた場合として説明を行う。中間転写ベルト10eの端部ライン10e−1上のある一点Xは、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに巻き付くにつれて、点Xの位置から点X´の位置に移動する。また、別のある一点Yは、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに巻き付くにつれて、点Yの位置から点Y´の位置に移動する。
そうすると、中間転写ベルト10eの端部ライン10e−1は、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに巻き付くにつれて、点X´と点Y´を結んだ10e−2の位置に移動する。この移動が連続的に行われることによって、中間転写ベルト10eは、アライメントのズレによって作られた進入角にのっとって図4(b)中の矢印H方向に寄って行く。これが、中間転写ベルト10eのベルト寄りメカニズムである。
ここからは、図5(a)、図5(b)を用いて、中間転写ベルト10eに寄りが生じると中間転写ベルト10eを搬送する搬送速度に左右差ができるメカニズムについて説明をする。図5(a)は、中間転写ベルト10eが寄った時の中間転写ユニット10の構成を示す側断面図である。図5(b)は、中間転写ベルト10eが寄った時の中間転写ユニット10の構成を示す裏面図である。ここの説明では、中間転写ベルト10eが図5(a)、図5(b)中の矢印H方向に寄る場合として説明を行う。
図5(a)、図5(b)において、中間転写ベルト10eが矢印H方向(ベルト搬送方向Bと直交するベルト幅方向Z)によると、左側の補強部材46aが、左側のコロ部41aに乗り上げる。左側のコロ部41aが搬送する中間転写ベルト10eは、補強部材46aの厚みが加わる。すると、左側のコロ部41aと右側のコロ部41aとが、中間転写ベルト10eを搬送する搬送速度に差が生じる。左側のコロ部41aが中間転写ベルト10eを搬送する搬送速度(矢印F)の方が、右側のコロ部41aが中間転写ベルト10eを搬送する搬送速度(矢印G)よりも速くなる。
さらに図6(a)を用いて、中間転写ベルト10eの厚みが増すと中間転写ベルト10eの搬送速度及び搬送量が変わるメカニズムについて詳細に説明をする。図6(a)は、駆動ローラ10fに巻き付く中間転写ベルト10eの中立面とひずみの関係を表す説明図である。
一般に、中間転写ベルト10eの搬送速度は、中間転写ベルト10eの中立面の位置によって決まる。同じ半径の駆動ローラ10fであっても、巻きつく中間転写ベルト10eの厚みが増えるほど中間転写ベルト10eの搬送速度は速くなる。別の言い方をすると、中間転写ベルト10eの内周面の長さが同じであったとしても、中間転写ベルト10eの厚みが増えれば、中間転写ベルト10eの搬送速度は速くなる。すなわち、中間転写ベルト10eが1回転するのにかかる時間は少なくなる。つまり、中間転写ベルト10eの厚みが増えるほど、中間転写ベルト10eの1回転の周期は速くなる。
図6(a)のように、中間転写ベルト10eに曲げモーメントを加え、駆動ローラ10fの曲面に沿って屈曲させることを考える。そのとき、中間転写ベルト10eの内周面では縮みが生じ、外周面では伸びが生じる。中間転写ベルト10eのひずみ量は図6(a)に示す通りである。ここから分かるように、中間転写ベルト10eの中立面において、ひずみはゼロとなる。つまり、中立面でのひずみ量(伸び量)が、中間転写ベルト10eの平均的なひずみ量(伸び量)を表す。
同様のことは、中間転写ベルト10eにテンションを与えて引っ張りながら屈曲させた場合にもいえる。中間転写ベルト10eにモーメントを与えず真っ直ぐに引っ張った場合のひずみ量は、同じテンションで引っ張りつつ駆動ローラ10fに巻きつけた時の中立面でのひずみ量と等しくなる。そして、内周面で縮みが生じ、外周面で伸びが生じるという関係は変わらない。このように、中立面での伸び量が、中間転写ベルト10eの平均的な伸び量を表すことがわかる。
中間転写ベルト10eが搬送され、駆動ローラ10fに巻きついていく様子を順序立てて説明する。まず、中間転写ベルト10eが真っ直ぐ搬送されている場所から、駆動ローラ10fに突入する。次に、ローラの曲率に沿おうとして、中間転写ベルト10eの内周面が縮められる。続いて、内周面が縮められた状態で、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eの内周面が接する。そして、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eの内周面が一体化した状態で、駆動ローラ10fの回転角度に従って中間転写ベルト10eは移動する。
このとき、平均的な中間転写ベルト10eの移動量は、中立面での移動量になる。つまり、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eの内周面が一体化して移動しているものの、全体の移動量は中立面の位置での動きによって決まるのである。
従って、中間転写ベルト10eの搬送量は、中立面でのひずみ量を考慮し、ローラ中心から中立面までの半径に駆動ローラ10fの回転角度を掛け合わせた量となる。これが、中間転写ベルト10eの厚みが増すと中間転写ベルト10eの搬送速度及び搬送量が変わるメカニズムである。
ここからは、図6(b)を用いて、中間転写ベルト10eに寄りが発生すると、アライメントのズレによって作られた進入角と相反する方向に中間転写ベルト10eを寄らせる進入角を作り、中間転写ベルト10eの寄りを規制するメカニズムについて説明をする。図6(b)は、中間転写ベルト10eがコロ部41aに寄る様子を示す中間転写ユニット10の裏面図である。
図6(b)において、中間転写ベルト10eが矢印H方向に移動すると、左側の補強部材46aが、左側のコロ部41aに乗る。逆に、右側のコロ部41aには中間転写ベルト10eだけが張架され、補強部材46bはコロ部41aから脱落したままである。この時、左側のコロ部41aが搬送する中間転写ベルト10eの搬送速度と、右側のコロ部41aが搬送する中間転写ベルト10eの搬送速度がどのように変化するのかを考える。
まず、図6(b)中左側の補強部材46aに注目する。中間転写ベルト10eが寄り、補強部材46aがコロ部41aに乗り上げると、コロ部41aが搬送する中間転写ベルト10eの厚みは、補強部材46aの厚み分だけ厚くなる。そのため、左側のコロ部41aが搬送する中間転写ベルト10eの中立面は、駆動ローラ10fの中心軸から遠くなる位置に移動する。このことから、左側のコロ部41aが搬送する中間転写ベルト10eの1回転周期は図4(a)のそれよりも速くなる。
別の表現をすると、以下のことが言える。中間転写ベルト10eがベルト幅方向Zに寄ると、中間転写ベルト10eにおける寄る方向側(矢印H方向側)とは反対側の端部10e1の補強部材46aがコロ41に対向する状態に移行していく。そして、補強部材46aがコロ41を覆う幅が増え、中間転写ベルト10eにおけるコロ41に乗り上げた部位の周速が増速されるのである。
一方、図6(b)中右側のコロ部41aが搬送する中間転写ベルト10eの1回転周期は変わらないので、図6(b)中左側の中間転写ベルト10eの部位の方が図6(b)中右側の中間転写ベルト10eの部位よりも速く進むことになる。そうすると、中間転写ベルト10eが、図6(b)中の矢印I方向に回転するような現象が起きる。そうすると、図6(b)に図示した進入角が発生する。この進入角は、アライメントのズレによるこれまでの寄り方向である、矢印Hとは逆向きに中間転写ベルト10eを寄らせる効果がある。
中間転写ベルト10eが矢印H方向に寄れば寄るほど、左側のコロ部41aに乗り上げている中間転写ベルト10eの部位の搬送速度と、右側のコロ部41aに乗り上げている中間転写ベルト10eの部位の搬送速度に差異が大きくなる。そして、中間転写ベルト10eの1回転周期の差は大きくなる。そして、図6(b)の進入角の発生量は大きくなるのである。つまり、図6(b)中の矢印I方向に回転させようとする作用が強く働き、中間転写ベルト10eの図6(b)中の矢印H方向への寄りを規制する力が強くなるのである。
なお、中間転写ベルト10eの左右の搬送速度差、及び1回転周期差は、所定の進入角を発生させた後に左右差はなくなっていく。言うまでもないが、左右差があり続けると、中間転写ベルト10eに激しいねじれが生じて破断してしまう。アライメントによる中間転写ベルト10eが矢印H方向に寄ろうとする力と、中間転写ベルト10eの1回転周期の差によって生じる進入角が生み出す寄り力とのバランスが取れたところで中間転写ベルト10eの寄りは止まる。
図6(b)は、そのバランスが取れたところを示す図ではなく、中間転写ベルト10eの寄りによって、アライメントによる寄り方向と相反する方向に、中間転写ベルト10eを寄らせる力(進入角)が発生することを説明する説明図である。以上が、駆動ローラ10fの両端部に、駆動ローラ10fの周速よりも周速が速いコロ41を備えた構成が、中間転写ベルト10eの寄りを規制できるメカニズムである。
ここからは、図7及び図8を用いつつ、駆動ローラ10fの両端部に、駆動ローラ10fの周速よりも周速が速いコロ41を備えた構成の方が、備えない構成よりも、中間転写ベルト10eの寄りを規制する、規制力が高くなるメカニズムについて詳細に説明する。
最初に、図7を用いつつ駆動ローラ10fの両端部にコロ41を備えない構成について説明し、次に、図8を用いつつ駆動ローラ10fの両端部にコロ41を備える構成について説明する。
図7(a)は、コロ41を備えない構成において、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eが設計位置にある時の各々の搬送速度関係を示した説明図である。図7(a)において、中間転写ベルト10eの(中立面における:以下省略)搬送速度をV1、駆動ローラ10fの外周面の搬送速度をV2とする。中間転写ベルト10eの搬送速度は中間転写ベルトの厚みの半分の所で決まる為、V1>V2の関係が成り立つ。
図7(b)は、コロ41を備えない構成において、中間転写ベルト10eに寄りが生じた時の各々の搬送速度関係を示した説明図である。図7(b)において、中間転写ベルト10eに矢印N 方向の寄りが発生し、中間転写ベルト10eの補強部材46aを備えた部位が駆動ローラ10fに乗り上げる。その時の中間転写ベルト10eの補強部材46aを備えた部位の搬送速度について考える。補強部材46aが備えられた部位の中間転写ベルト10eの搬送速度をV1′とすると、その搬送速度V1′は、中間転写ベルト10eと補強部材46aを足した厚みの半分の所で決まる為、V1′>V1>V2の関係が成り立つ。
図8(a)は、コロ41を備えた構成において、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eが設計位置にある時の各々の搬送速度関係を示した説明図である。図8(a)において、中間転写ベルト10eの搬送速度をV1、駆動ローラ10fの外周面の搬送速度をV3、コロ41の外周面の搬送速度をV4とする。コロ41は駆動ローラ10fよりも速く回転するように設計されていることから、駆動ローラ10fの外周面の搬送速度V3よりも、コロ41の外周面の搬送速度V4の方が速く、V4>V3の関係が成立する。また、中間転写ベルト10eの搬送速度V1は中間転写ベルト10eの厚みの半分の所で決まる為、V1>V4>V3の関係が成り立つ。
ここでは、中間転写ベルト10eとコロ41の間に微小なスリップが生じている。このスリップ量が大きくなると、V4>V1>V3の関係になってしまうこともあるが、V4>V1>V3のケースは、中間転写ベルト10eの寄りを規制することが困難になる為、適切ではない。中間転写ベルト10eの寄りを規制するのに適切な速度関係は、V1>V4>V3の関係が成り立つ時である。
図8(b)は、コロ41を備えた構成において、中間転写ベルト10eに寄りが生じた時の各々の搬送速度関係を示した説明図である。図8(b)において、中間転写ベルト10eに矢印O 方向の寄りが発生し、中間転写ベルト10eの補強部材46aを備えた部位が駆動ローラ10fに設けられたコロ41に乗り上げる。その時の中間転写ベルト10eの補強部材46aを備えた部位の搬送速度について考える。補強部材46aが備えられた部位の中間転写ベルト10eの搬送速度をV1′′とすると、その搬送速度V1′′は、中間転写ベルト10eと補強部材46aを足した厚みの半分の所で決まる為、V1′′>V1>V4>V3の関係が成り立つ。
最後に、図7及び図8を用いて、コロ41を備えた構成と、コロ41を備えていない構成の優位さを考える。なお、図7で説明した中間転写ベルト10eの搬送速度V1と、図8で説明した中間転写ベルト10eの搬送速度V1は同一速度である。
まず、中間転写ベルト10eの搬送速度V1を作り出している、駆動ローラ10fの外周面の搬送速度V2、V3と、コロ41の外周面の搬送速度V4について考える。
コロ41を備えた構成の場合、駆動ローラ10fの外周面の搬送速度V3と、コロ41の外周面の搬送速度V4の二つの回転体の速度によって中間転写ベルト10eの搬送速度V1が決まる。一方、コロ41を備えない構成の場合、駆動ローラ10fの外周面の搬送速度V2によって中間転写ベルト10eの搬送速度V1が決まる。
図7(a)、図7(b)を用いて説明した中間転写ベルト10eの搬送速度V1と、図8(a)、図8(b)を用いて説明した中間転写ベルト10eの搬送速度V1は同一速度である。このことから、図7(a)、図7(b)の駆動ローラ10fの外周面の搬送速度V2は、駆動ローラ10fの外周面の搬送速度V3と、コロ41の外周面の搬送速度V4の平均的な搬送速度になる。
従って、図7(a)、図7(b)の駆動ローラ10fの外周面の搬送速度V2は、図8(a)、図8(b)の搬送速度の速いコロ41の外周面の搬送速度V4と、搬送速度が遅い駆動ローラ10fの外周面の搬送速度V3の中間的な搬送速度になる。ここから、V4>V2>V3の関係が成り立つ。
次に、V1′とV1′′の比較を行う。V1′は、V2の搬送速度に対して、補強部材46aの厚みの半分がさらに加わった速度になる。同様に、V1′′は、V4の搬送速度に対して、補強部材46aの厚みの半分がさらに加わった速度になる。すでに、V4>V2の関係が成り立っているので、V1′′>V1′の関係が成立する。
図7(a)、図7(b)の説明で成立したV1′>V1>V2と、図8(a)、図8(b)の説明で成立したV1′′>V1>V4>V3と、先程に説明で成立したV4>V2>V3と、V1′′>V1′と、を整理すると、V1′′>V1′>V1>V4>V2>V3の関係が成立する。
以上説明したように、補強部材46aがコロ41に乗り上げている側と他端側の中間転写ベルト10eの搬送速度V1に対して、V1′′の方がV1′よりも搬送速度に差異をつけられる。
図6(b)を用いて説明したように、中間転写ベルト10eの搬送速度に左右差がつけば、中間転写ベルト10eをアライメントによって作られる進入角に則って寄る方向と、相反する方向に寄らせる進入角を作ることができる。その中間転写ベルト10eの搬送速度の左右差が大きければ大きいほど、アライメントによって作られる進入角に則って寄る力が大きくても許容できる。
これが、駆動ローラ10fの両端部に、駆動ローラ10fの周速よりも周速が速いコロ41を備えた構成の方が、備えない構成よりも、中間転写ベルト10eの寄りを規制する、規制力が高くなるメカニズムである。