以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本発明の実施例1に係る中間転写ユニット10を備える画像形成装置100の構成を示す断面図である。ここでは、画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスを利用した両面印刷機能を有するカラーレーザビームプリンタである。図1に示されるように、画像形成装置100は画像形成装置本体(以下、単に『装置本体』という)100Aを有し、この装置本体100Aの内部には、画像を形成する画像形成部51a〜51dが設けられる。
画像形成部51a〜51dは、『像担持体』である感光体ドラム1a〜1d、『転写装置』である1次転写ローラ10a〜10d等を含む。少なくとも感光体ドラム1a〜1dについては、カートリッジ3a〜3dに含まれ、カートリッジ3a〜3dとして装置本体100Aに組み込まれる構成となっていても良い。なお、画像形成装置100は、装置本体100Aの下部に、オプション給送装置(以下、給送オプション部)90を増設した構成となっている。
画像形成装置100は、装置本体100Aに対して着脱自在な4つのプロセスカートリッジ(以下、「カートリッジ」という)3a〜3dを備えている。カートリッジ3a〜3dは、同一構造であるが、互いに異なる色を形成する。即ち、カートリッジ3aはイエロー(Y)のトナー像を形成する。カートリッジ3bはマゼンダ(M)のトナー像を形成する。カートリッジ3cはシアン(c)のトナー像を形成する。カートリッジ3dはブラック(Bk)のトナー像を形成する。
カートリッジ3a、3b、3c、3dは、各色のトナー像を現像するための現像ユニット4a、4b、4c、4d、及び、クリーナユニット5a、5b、5c、5dを有する。現像ユニット4a、4b、4c、4dは、現像ローラ6a、6b、6c、6d、現像剤塗布ローラ7a、7b、7c、7d、及び、トナー容器を有している。クリーナユニット5a、5b、5c、5dは、像担持体である感光体ドラム1a、1b、1c、1d、帯電ローラ2a、2b、2c、2d、ドラム用のクリーニングブレード8a、8b、8c、8d、及び、廃トナー容器と、を有している。
カートリッジ3a、3b、3c、3dの下方には。スキャナユニット9が配置される。このスキャナユニット9は、画像信号に基づく露光を感光体ドラム1a、1b、1c、1dに対して行う。
感光体ドラム1a、1b、1c、1dは、帯電ローラ2a、2b、2c、2dによって所定の負極性の電位に帯電された後、スキャナユニット9によってそれぞれ静電像(静電潜像)が形成される。この静電像は現像ユニット4a、4b、4c、4dによって反転現像されて負極性のトナーが付着され、それぞれY、M、C、Bkのトナー像が形成される。
カートリッジ3a〜3dの上方には、中間転写ベルトユニット(以下、「中間転写ユニット10」という)が配置される。中間転写ユニット10は、中間転写ベルト10eと、中間転写ベルト10eを張架する駆動ローラ10f、対向ローラ10g、テンションローラ10hと、を有する。中間転写ベルト10eには、テンションローラ10hによって図1中、矢印で示す付勢力Tがかけられている。また、各感光体ドラム1a、1b、1c、1dの各々に対向する位置には、中間転写ベルト10eの内側に1次転写ローラ10a、10b、10c、10dが配設されている。1次転写ローラ10a〜10dには不図示のバイアス印加手段により転写バイアスが印加される。
感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像は、順次、中間転写ベルト10e上に1次転写される。このときに、各感光ドラムが図1における時計周りに回転する。また、中間転写ベルト10eは反時計周りに回転する。回転する中間転写ベルト10eの表面には、上流側の感光体ドラム1a〜1dから順に、トナー像が転写される。感光体ドラム1a〜1dから中間転写ベルト10eへのトナー像の転写は、1次転写ローラ10a〜10dに正極性のバイアスを印加することによりなされる。このように中間転写ベルト10e上に4色のトナー像が重なった状態で形成されたトナー像は、2次転写部13へ移動する。
一方、トナー像が転写された後に、感光体ドラム1a〜1dの表面に残ったトナーは、クリーニングブレード8a〜8dによって除去される。また、シートSへの2次転写後に中間転写ベルト10e上に残ったトナーは、転写ベルトクリーニング装置11によって除去される。除去されたトナーは、廃トナー搬送路(不図示)を通過し、廃トナー回収容器(不図示)へと回収される。
画像形成装置100は、3つのシート給送装置(シート給送部)を有する。1つ目は、装置本体100Aの内部に配置される本体シート給送部20である。2つ目は、装置本体100Aの側面に配置されるマルチシート給送部30である。3つ目は、装置本体100Aの下方に増設されたオプション給送装置90である。
1つ目の本体シート給送部20は、シートSを収納する給送カセット21の内部からシートSを給送する給送ローラ22と、分離手段である分離ローラ23と、を有する。給送カセット21に収納されたシートSは、給送ローラ22に圧接され、分離ローラ23によって1枚ずつ分離され搬送される。そして、分離されたシートSは、搬送路24を経てレジストローラ対14へ搬送される。
2つ目のマルチシート給送部30は、シートSを積載する中板31と、中板31に積載されたシートSを給送するマルチ給送ローラ32と、分離手段である分離パット33と、を有する。中板31が持ち上がり、中板31上に積載されたシートSがマルチ給送ローラ32に圧接され、分離パット33によって1枚ずつ分離され搬送される。そして、分離されたシートSはマルチ給送搬送路34を経て、再給送ローラ対35に搬送される。
再給送ローラ対35に搬送されたシートは、再給送搬送路36を通過してレジストローラ対14に搬送される。なお、再給送ローラ対35および再給送搬送路36は後述するように両面搬送時にも共用の搬送路となる。
3つ目のオプション給送装置90は、ピックアップローラ91、フィードローラ92、リタードローラ93を備える。ピックアップローラ91、フィードローラ92、リタードローラ93の協働により、積載されたシート束から1枚ずつシートを給送、分離して搬送をする。搬送されたシートは中継搬送ローラ対94、オプション排出ローラ対95を経て、装置本体100AへシートSを搬送する。オプション給送装置90より搬送されたシートSは、オプション給送搬送路96を経て、レジストローラ対14へ搬送される。
以上、説明したように、装置本体100Aのレジストローラ対14上流側では、3つの搬送路が合流する構成である。
2次転写部13は、中間転写ベルト10eに形成されたトナー像をシートSに転写する。2次転写部13は、正極性のバイアスが印加される2次転写ローラ13aを備える。正極性のバイアスを2次転写部13に印加することにより、レジストローラ対14によって搬送されたシートSに、中間転写ベルト10e上の4色のトナー像が2次転写される。
2次転写部13の上方には、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとを有する定着装置15が設けられている。トナー像が転写されたシートSは、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとのニップに搬送され、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとによって加熱および加圧されてその表面に、転写されていたトナー像が定着される。
定着装置15の上方には、切換部材16、排出ローラ対17、スイッチバックローラ対19が設けられている。定着されたシートSは事前に選択された片面印字か両面印字かに応じて、切換部材16の位置により選択的に搬送経路が切り換えられる。
片面印字が選択された場合には、定着されたシートSは切換部材16によって排出ローラ対17に向けて案内される。排出ローラ対17に案内されたシートは、画像形成装置1本体の上面であるトレイ18上へ排出される。
両面印字が選択された場合には、切換部材16によってスイッチバックローラ対19に向けて案内される。ここで、スイッチバックローラ対19はシートSをトレイ18に向けて搬送したのち、シートSの後端が定着装置15を抜けるタイミングで逆回転することでシートSを両面反転搬送路37へ搬送する。なお、スイッチバックローラ対19が逆回転をすると同時に、切換部材16は、シートSを両面反転搬送路37へ案内するために移動する。
両面搬送ローラ対38は、再給送ローラ対35までシートを搬送する。再給送ローラ対35により再給送されたシートSは、表裏が反転された状態で、再給送搬送路36に合流し、再びレジストローラ対14に搬送される。レジストローラ対14以降のシート搬送およびトナー像の転写については、上述した片面印字時と同様である。
図2(a)は、中間転写ユニット10の構成を示す拡大斜視図である。図2(a)は、中間転写ユニット10のうち、中間転写ベルト10eを部分的にカットし、内部の各ローラ(10f、10g、10h)の配置を見易く示している。図2(b)は、図2(a)の矢印Iの方向から見た側面図である。図2(a)に示されるように、『ベルトユニット』である中間転写ユニット10は、内周面が平滑でベルト回転方向Xに回転自在な『無端ベルト』である中間転写ベルト10eを備える。中間転写ベルト10eは、樹脂ベルトである。また、中間転写ユニット10は、中間転写ベルト10eを張架する複数の張架ローラである駆動ローラ10f、対向ローラ10g、テンションローラ10hを備える。
駆動ローラ10f、対向ローラ10g、テンションローラ10hは、それぞれ回転軸方向の両端部を回転可能に支持されている。そして、メインフレーム43の側板43aが駆動ローラ10f、対向ローラ10gを支持し、テンションローラ支持側板(以下、「支持側板44」という)がテンションローラ10hを支持している。なお、中間転写ベルトメインフレーム(以下、「メインフレーム43」という)の側板43aには、バネ固定部60が設けられている。バネ固定部60にはバネ45の一端が固定されており、このバネ45が支持側板44を付勢方向(バネが伸びる方向)へと付勢するようになっている。
駆動ローラ10fは、装置本体100Aの内部の不図示の駆動手段から駆動力を受けることによって、回転する。駆動ローラ10fが回転すると、中間転写ベルト10eが回転する。駆動ローラ10fの表面は、中間転写ベルト10eを滑り無く搬送するために、摩擦係数の高いゴム層で形成されている。
対向ローラ10gは、中間転写ベルト10eを介して2次転写ローラ13aとニップを形成し、シートSを挟持しつつ搬送しながらトナー像をシートSに転写する。対向ローラ10gは、中間転写ベルト10eの回転に従動して回転する。
図3は、テンションローラ10hの支持部の概略構成を示す拡大斜視図である。この図3を参照しつつ、「テンションローラ10hのスライド動作」と、「中間転写ベルト10eを張架する構成」について以下に説明する。支持側板44には開口部44cがあり、メインフレーム43に形成されたボス部43c、43dが開口部44cに挿入されている。それによって、支持側板44はメインフレーム43に支持されている。開口部44cの開口幅44dは、ボス部43c、43dが形成する外径幅43eよりも幅広く構成されている。
開口幅44dと外径幅43eのガタ分だけ、支持側板44はスライド動作可能になる。すなわち、テンションローラ10hがスライド動作可能になる。圧縮バネであるバネ45は、中間転写ユニット10の装置手前側と奥側に各々備えられている。バネ45は、支持側板44を介してテンションローラ10hを矢印Rの方向に付勢して中間転写ベルト10eにテンションを付与している。そして、バネ45の付勢力と、中間転写ベルト10eの張力とのバランスが取れたところで、テンションローラ10hは係止する。
ここでは、図3のようにテンションローラ10hがスライド動作可能になっているが、スライド動作が不可能であってもよい。スライド動作が不可能な場合には、中間転写ベルト10eに張力を与えられるような位置にテンションローラ10hを配置する必要がある。
次に図4から図7を用いて、中間転写ベルト10eについて詳細に説明をする。中間転写ベルト10eは、ポリビニリデンフロライド(PVDF)を基層とする単層構造である。ここで中間転写ベルト10eの製法について説明する。はじめにポリビニリデンフロライド(PVDF)を筒状に押し出し、先端を塞ぐことで袋状にする。その袋状になったポリビニリデンフロライド(PVDF)の回りに外型を配置する。袋状になったポリビニリデンフロライド(PVDF)の内側から空気を注入し膨らませる。ある程度膨らむと配置された外型の形状に沿うようにして外型に張り付く。その状態で冷え固まり、外型から取り出して切ることで、中間転写ベルト10eができあがる。
図4は、中間転写ユニット10が装置本体100Aに装着されたときに、図2(b)の矢印Lの方向から見た概略構成を示す斜視図である。なお、図4以降の図では、中間転写ベルト10eの内周長に差があることを分かりやすくするために、ベルト幅方向(G、H)の中央部を誇張した絵にしている。実際には、中間転写ベルト10eにおける内周長差は非常にわずかであり、目視で明確に分かるほどの大きさではない。
図4に示されるように、駆動ローラ10f、対向ローラ10g、テンションローラ10hの各々の面長Z(一端部の面から他端部の面までの長さ)は同一の寸法で構成されている。また、各ローラ(10f、10g、10h)の面長Zの回転軸方向の端部Za、Zbの位置は揃えられている。
中間転写ベルト10eが回転するベルト回転方向Xと直交するベルト幅方向(G、H)のベルト幅寸法46dは、面長Zよりも長く構成されている。なお、中間転写ベルト10eが複数の張架ローラ(10f〜10h)に張架された状態で、以下のことが言える。中間転写ベルト10eのベルト回転方向Xと直交するベルト幅方向(G、H)の寸法は、複数の張架ローラ(10f〜10h)のうちの最も長い最長張架ローラ、及び、中間転写ベルト10eが当接する当接幅よりも長く設定される。
これにより、中間転写ベルト10eは、回転駆動時に各種ローラ(10f、10g、10h)と当接する領域と、当接しない領域すなわち各種ローラ(10f、10g、10h)の端部から中間転写ベルト10eが脱落している領域と、を有する。
図5は、無張架状態の中間転写ベルト10eの構成を示す平面図である。図5に示されるように、中間転写ベルト10eは、矢印Kの方向で、ベルト幅方向(G、H)の中央側が大きく、ベルト幅方向(G、H)の端部側が小さく構成されている。つまり、ベルト幅方向(G、H)の中央側は、ベルト幅方向(G、H)の端部側よりも、ベルト回転方向Xに突出した構成となっている。
図6は、図5中の断面線Jの位置で中間転写ベルト10eを切ったときの矢印Kの方向から見た断面図である。図6に示されるように、中間転写ベルト10eは、3つの略円筒形状領域Ef、Er、Fと、それらを繋ぐ繋ぎ領域Df、Drによって連続的に繋がっている。ここで略円筒形状領域Ef、Erの内周長は略円筒形状領域Fの内周長よりも小さい。また繋ぎ領域Df、Drは、中間転写ユニット10の内部の各ローラ(10f、10g、10h)の軸方向に対して垂直な面で構成される。
これにより、中間転写ベルト10eは場所によって内周長に差がある構成になっている。ここでいう内周長とは、中間転写ベルト10eを構成する各領域の平均的な内周長さのことを表す。細かな凹凸による、部分的な内周長のことを指すのではない。この後の他の実施例の説明に用いられる内周長と言う記載の意味も同様である。
再び図4に戻って説明するが、中間転写ユニット10が有する中間転写ベルト10eは矢印Pの方向に移動可能領域をもち、その領域の限界位置まで移動可能な構成になっている。この「中間転写ベルト10eの移動可能領域の限界位置」は、装置本体100Aに中間転写ベルト10eを装着したときの構成上の移動可能領域の限界位置のことをいう。すなわち、中間転写ベルト10eに寄り力が発生し、それを規制する力がないときに他の部品に緩衝するまで寄っていく。そして、物理的にこれ以上寄れない位置まで移動したところが移動可能領域の限界位置である。
中間転写ベルト10eは、「寄り力」と「寄り規制力」の釣り合いがとれた位置で移動可能となっている。中間転写ベルト10eの「寄り力」と「寄り規制力」の釣り合いがとれた位置は、あくまで中間転写ベルト10eを回転駆動したときに、寄り力の釣り合いがとれ、安定した走行状態を保てている位置のことを指す。必然的に、「寄り力」と「寄り規制力」の釣り合いがとれた位置は、前述の移動可能領域内に収まっていなければならない。
図7(a)は、テンションローラ10h及び中間転写ベルト10eのベルト幅方向(G、H)の中心が揃っている状態を示す断面図である。図7(b)は、中間転写ベルト10eが装置手前側の移動可能領域内で寄り力と寄り規制力とが釣り合いが取れた位置まで移動した状態Aの概略構成を示す断面図である。図7(c)は、中間転写ベルト10eが装置奥側の移動可能領域内で寄り力と寄り規制力とが釣り合いが取れた位置まで移動した状態Bの概略構成を示す断面図である。
なお、図7は、中間転写ベルト10eの内周長に差があることを分かりやすくするために、中間転写ベルト10eのベルト幅方向(G、H)の中央側が端部側よりも突出した状態で中間転写ベルト10eの形状が記載されており、誇張した絵で描かれている。実際には、中間転写ベルト10eにおける内周長差は非常にわずかであり、目視で明確に分かるほどの大きさではない。
このとき、中間転写ベルト10eが図7における(状態A)と(状態B)の間のどの位置にいたとしても、常時各種ローラ(10h、10f、10g)と当接している領域を有していることになる。その領域を常時当接領域Cと呼ぶ。なお、図7中では、前述のように誇張した絵で描かれているので、当接してないように見えるが、実際には常時当接している。なお、『第1領域』である常時当接領域Cは、中間転写ベルト10eが、中間転写ベルト10eのベルト幅方向(G、H)の移動によらずに最長張架ローラに常時当接する領域とも定義できる。
また逆に、中間転写ベルト10eが図7における(状態A)と(状態B)の間のどの位置にいたとしても、常時各種ローラ(10h、10f、10g)と当接していない領域を有していることになる。それに該当する装置手前側の領域を常時非当接領域Af、装置奥側の領域を常時非当接領域Arと呼ぶ。
中間転写ベルト10eにおける常時当接領域C、常時非当接領域Af、Ar以外の領域は、図7における(状態A)と(状態B)の間のどの位置にいたとしても、各種ローラの端部から脱落または各種ローラと当接している領域となる。これに該当する装置手前側の領域を脱落当接領域Bf、装置奥側の領域を脱落当接領域Brと呼ぶ。
『第2領域』である脱落当接領域Bf、Brは、中間転写ベルト10eが、中間転写ベルト10eの幅方向の移動によって最長張架ローラの端部から脱落する脱落状態、最長張架ローラに当接する当接状態が切り替わる領域とも定義できる。ここでは、脱落当接領域Bf、Brは、ベルト幅方向(G、H)と直交する方向に沿う平面(ベルト幅方向(G、H)と直交する断面視で直線状に形成される平面)を有する。なお、常時当接領域Cが、ベルト幅方向(G、H)の直交する方向に沿う平面を有しても良い。
常時当接領域Cよりも脱落当接領域BfおよびBrの平均内周長の方が短くなっている。すなわち、中間転写ベルト10eが複数の張架ローラ(10f〜10h)に張架されていない状態では、以下のことが言える。中間転写ベルト10eの常時当接領域Cにおける周方向の平均の長さをベルト幅方向(G、H)で平均化した第1平均内周長とする。脱落当接領域Bf、Brにおける周方向の平均の長さをベルト幅方向(G、H)で平均化した第2平均内周長とする。この場合に、第1平均内周長よりも、第2平均内周長の方が短い。なお、脱落当接領域Bf、Brの平均内周長は、脱落当接領域Bf、Brの面積をベルト幅方向(G、H)の長さで除算した値ということもできる。
また、中間転写ベルト10eは、内周面が平滑である。内周面が平滑とは、背景技術の箇所で先行技術文献を引用して説明したような、中間転写ベルト10eのベルトの寄りを規制する突起状のリブやガイド部材を有していないと言うことである。
尚、本実施例の中間転写ベルト10eはポリビニリデンフロライド(PVDF)を基層とする単層構造としたが、基層はポリイミド(PI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂素材であっても構わない。樹脂素材による基層は厚さ50μmから100μmの間で作られることが多い。こうすることで、中間転写ベルトに求められる形状を成形しやすくなるためである。また、トナーを転写する効率を高めるため、基層の外周面全体にわたって、ゴム層などの異なる層を張り合わせた多層構造になっていても構わない。製法についても、本実施形態で記載した以外の製法で作られた中間転写ベルトであっても構わない。
次に、中間転写ユニット10の動作について説明する。本実施形態では、中間転写ユニット10を画像形成装置100の所定の位置に装着することで駆動ローラ10fに駆動を与える。中間転写ユニット10自体は柔構造になっており、画像形成装置100の位置決めによって装着時における中間転写ユニット10内の各種ローラの同軸度が決まる。画像形成装置100の位置決めは駆動ローラ10f、対向ローラ10g、テンションローラ10hの同軸度のズレが0になるように設計されている。
しかしながら、実際には、本体の設置状態や寸法公差により同軸度のズレが0になることはなく、駆動ローラ10f、対向ローラ10g、テンションローラ10hは微小な同軸度のズレをもって画像形成装置100に保持される。この状態で駆動ローラ10fを駆動回転したとき、中間転写ベルト10eは図4に示す矢印Kの方向に駆動搬送され、同軸度のズレによる寄り力が発生する。これにより、中間転写ベルト10eは回転駆動しながら回転するベルト回転方向X(周方向)と直交するベルト幅方向(G、H)に徐々に移動していく。
本発明では、脱落当接領域Bf及びBrの内周長よりも、常時当接領域Cの内周長の方が長いことで中間転写ベルト10eの寄りを規制する。中間転写ベルト10eの寄り規制能力は、脱落当接領域Bf及びBrの内周長(ここでは短い方の内周長)と、常時当接領域Cの内周長の差を大きく取るほど高くなる。ただし変化をつけすぎると中間転写ベルト10e自体に大きな負荷がかかり、安定した走行性を損なう可能性があるため注意しなければならない。
次に、図4、図8および図9を用いて、内周長差を利用した寄り規制のメカニズムについて説明する。
図4に示されるように、はじめに、中間転写ユニット10を装置本体100Aに装着するとき、中間転写ベルト10eのベルト幅寸法46dの中心線と、各種ローラの面長Zの中心線が重なっているとする。
このとき、中間転写ベルト10eの脱落当接領域Bf、Brと各種ローラ(10f、10g、10h)とが当接している領域が、装置手前側および装置奥側に存在する。特に、脱落当接領域Bf、Brが各種ローラ(10h〜10f)に当接する領域を各種ローラ当接領域10i、10jとすると、各種ローラ当接領域10i及び各種ローラ当接領域10jは等しい寸法になる(図4参照)。
また、中間転写ベルト10eが各種ローラ(10h〜10f)に張架された状態では、以下の状態にあると言える。すなわち、常時当接領域Cよりも、脱落当接領域Bf、Brと各種ローラが当接する10i、10jの領域の方が、回転する周方向と直交する方向の単位長さあたりの張力が増している。
図8に示されるように、中間転写ベルト10eが回転すると、前述の通り中間転写ベルト10eに寄り力が発生し、中間転写ベルト10eが然るべき方向に徐々に移動していく。ここでは中間転写ベルト10eが装置奥側である矢印Gの方向に移動することを考える。
中間転写ベルト10eが装置奥側に移動すると、図4に示した各種ローラ当接領域10iは、増加していって図8に示した各種ローラ当接領域10i’となる。同時に、図4に示した各種ローラ当接領域10jは、減少していって図8に示した各種ローラ当接領域10j’となる。すなわち、各種ローラに当接している内周長が短い領域が、装置奥側に比べて装置手前側のほうが大きくなる。これにより、中間転写ベルト10eは、中間転写ベルト10eのベルト幅寸法46dの中心線に対して装置奥側の領域の張力よりも装置手前側の領域の張力のほうが高い状態になる。
中間転写ベルト10eが張架された状態で回転したときに、中間転写ベルト10eの張力の高い部分と張力の低い部分とでは搬送速度に差が生じる。これは張力が高いほうが中間転写ベルト10eの張り側と緩み側の搬送速度差が生じにくく、全体としての搬送速度が速いまま保たれるからである。よって、前述した装置奥側の領域の張力よりも装置手前側の領域の張力のほうが高い状態になった場合には、装置奥側の領域よりも装置手前側の領域ほうが搬送速度が速くなる。
中間転写ベルト10e内の箇所によって搬送速度に差が生じると、搬送速度が速いほうから遅いほうへと中間転写ベルト10eを傾けようとするモーメントMが発生する。このモーメントMによって、中間転写ベルト10eは中間転写ベルト10eの回転する周方向と直交する方向の中心線に対して微小な傾きをもったまま回転駆動する。
例えば、図8の状態で、テンションローラ10hにおいて、装置奥側の端部が図8の裏面から表面の方向に持ち上がっており、装置手前側の端部が図8の表面から裏面の方向に持ち下がっている場合を想定する。
(1)そして、中間転写ベルト10eが回転していくと、テンションローラ10hの傾きに基づいて、中間転写ベルト10eは、装置奥側へと向かう装置奥側方向(矢印Gの方向)へと寄っていく。(2)それによって、脱落当接領域Bfの各種ローラ当接領域10i´>脱落当接領域Brの各種ローラ当接領域10j´という関係になった瞬間に装置手前側と装置奥側とで、中間転写ベルト10eのベルト搬送速度に差異が生じる。(この場合には、装置手前の中間転写ベルト10eの搬送速度の方が速くなる)。(3)その瞬間に中間転写ベルト10eに進入角が形成される(図9参照)。(4)進入角によって、装置手前へと向かう装置手前側方向(矢印Hの方向)へと寄っていく(図9参照)。
前述の(1)〜(4)の現象は、ほぼ同時に起こっている。そのため、実際には、中間転写ベルト10eが装置奥側方向や装置手前側方向を行ったり来たりする挙動や進入角が形成される様子も目視で確認できない。
また、(1)に起因する中間転写ベルト10eの寄り力は、常に一定の値である(装置本体100Aの状態によって決まるため)。これに対して、(2)〜(4)の流れによって発生する中間転写ベルト10eの寄り力は、Bfの10i´>Brの10j´の関係が顕著になるほど強くなる(Bfの10i´の領域が増えるほど寄り力が強くなる)。よって、回転駆動初期状態では、(1)>(2)〜(4)=0という関係であるが、(1)の寄り力によって徐々に中間転写ベルト10eが装置奥側に寄って行くにつれて、(2)〜(4)の寄り力が増加していく。そして、(1)=(2)〜(4)という関係になった位置で、中間転写ベルト10eの装置奥側方向の寄りが停止する。
このように、中間転写ベルト10eの「寄り力」と「寄り規制力」の釣り合いがとれた位置では、中間転写ベルト10eは、回転駆動するときに、安定した走行状態を保てている。
以下に具体的な数値例を示す。本実施形態においては、中間転写ベルト10eの弾性率は2000MPaである。また、常時当接領域Cのベルト幅方向の寸法は227mm、常時非当接領域Af、Arのベルト幅方向の寸法は0mm、脱落当接領域Bf、Brのベルト幅方向の寸法は12mmである。画像形成装置100に中間転写ユニット10を、駆動ローラの面長中心線と中間転写ベルト10eの幅方向の中心線が重なっている状態で装着する。このときの駆動ローラ10fとテンションローラ10hの同軸度のズレが1.0mmであった場合には、常時当接領域Cの平均内周長と脱落当接領域Bf及びBrの平均内周長の差を0.2〜0.3mmとする。このことで、3〜4mmの移動量で中間転写ベルト10eの寄りを規制することができる。
また、前述したように駆動ローラ10f、対向ローラ10g、テンションローラ10hの面長Zの回転軸方向の端部Za、Zbの位置は揃えられている。これにより中間転写ベルト10eに寄り力が発生したときに各種ローラから脱落および当接するタイミングが同一になる。よって中間転写ベルト10eの寄り力を規制するときに中間転写ベルト10e全体の張力がバランスよく切り替わるので安定して中間転写ベルト10eの寄りを規制することができる。
なお、本実施形態においては、中間転写ベルト10eの両端部に脱落当接領域Bf、Brを持たせてある。これにより中間転写ベルト10eの回転する周方向と直交するベルト幅方向(G、H)のどちら側に寄ったとしても寄りを規制する力が働くようになっている。しかしながら、中間転写ユニットを意図的に片側に寄るような状態で本体に装着し、脱落当接領域を片側にだけ設けて寄りを規制する構成においても本発明の効果を得ることができる。
以上のように、中間転写ベルト10eに内周長差のある領域をもたせることによって寄りを規制することができることがわかる。