以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本発明の実施例1に係るベルト装置60を備える画像形成装置200の構成を示す断面図である。画像形成装置200は、電子写真画像形成プロセスを利用した両面印刷機能を有する画像形成装置である。図1に示されるように、画像形成装置200は画像形成装置本体(以下、単に『装置本体』という)200Aを有し、この装置本体200Aの内部には、画像を形成する画像形成部300が設けられる。
画像形成部300は、4つの感光体ドラム31を備える。各々の感光体ドラム31の周囲には、図示しない1次帯電器、露光装置、及び、現像装置等が配置されている。そして、1次帯電器及び露光装置で形成された感光体ドラム31の表面の静電像(静電潜像)は、現像装置で現像される。また、装置本体200Aの内部にはベルト装置60が配置されている。ベルト装置60は中間転写ベルト10eを備えている。中間転写ベルト10eの内側は、駆動ローラ10f、2次転写ローラ10i、テンションローラ10h、懸架ローラ10gに懸架されている。さらに、各々の感光体ドラム31の上方には、中間転写ベルト10eを挟んで1次転写ローラ32が配置されている。
装置本体200Aの下方に配置されたシート収納庫33の内部のシートSは、ピックアップローラ34、搬送ローラ対35を通過して、2次転写ローラ10iへと搬送される。2次転写対向ローラ36及び2次転写ローラ10iのニップによって、シートSには、中間転写ベルト10eの表面に形成された現像剤像が転写される。そして、現像剤像が転写されたシートSは、定着装置37で定着された後に排出ローラ対38を通過して、排出トレイ39に排出される。
図2は、ベルト装置60の構成を示す斜視図である。ベルト装置60は、内周面が平滑で回転可能な『無端ベルト』である中間転写ベルト10eを備える。また、ベルト装置60は、ベルト移動方向Lとは逆順に、中間転写ベルト10eを駆動する回転可能な駆動ローラ10fと、2次転写ローラ10iと、中間転写ベルト10eにテンションを付与するテンションローラ10hと、懸架ローラ10gと、を備える。テンションローラ10hは、中間転写ベルト10eに従動して回転可能なローラである。これらのローラは、ベルト幅方向Mに連なる通しローラである。
回転方向において、駆動ローラ10fの休止角領域12a(図5参照)を含んだ駆動ローラ10fの上流側、及び、テンションローラ10hのクリープ角領域12b(図5参照)を含んだテンションローラ10hの下流側の間に、接触部材13、14が配置される。ここでは、特に、2次転写ローラ10i及び駆動ローラ10fの間に、接触部材13、14が配置されている。
この接触部材13、14は、後に詳述するが、中間転写ベルト10eの回転方向と直交するベルト幅方向Mの端部に対して、中間転写ベルト10eの外周面側及び内周面側から中間転写ベルト10eを湾曲させないように挟み込みつつ接触する部材である。また、接触部材13、14は、中間転写ベルト10eと接触部材13、14が接触した中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの端部で、中間転写ベルト10eの伸び量を増加させるための部材である。接触部材13、14は中間転写ベルト10eが周回転する際の回転負荷となる。特に、このことで、中間転写ベルト10eの寄りを規制する。なお、接触部材13は、ベルト幅方向Mの端部側に2つ設けられている。
『接触部材』は、中間転写ベルト10eを介在して互いに向かい合う複数の(一対の)接触部材13、14である。『複数の(一対の)接触部材のうちの少なくとも一方』である接触部材13は、所定の表面硬度よりも低い表面硬度を有し、中間転写ベルト10eに接触して従動するローラである。所定の表面硬度よりも低いローラは、ゴム硬度50〜90程度のものを用いることで成形される。また、『ローラ』である接触部材13は、ゴムで成形される。以下、詳述する。なお、これらの点は、後述のベルト装置61(図6(a)参照)も同様である。なお、複数の接触部材のうちの一方が中間転写ベルト10eの表面側に配置された部材であるとすると、複数の接触部材のうちの他方が中間転写ベルト10eの裏面側に配置された部材であることになる。
これに対して、例えば、従来技術としては、以下のような構成が存在した。例えば、特開昭63−57406号公報(特に、第1図)には、ベルト案内ローラというベルトに接触する接触部材が記載されている。ローラのベルト巻き込み側でのベルト側端にベルト案内ローラが配置されている。このとき、ベルト案内ローラはベルトを内側方向に湾曲させ、ベルトの巻き込み開始が早くなるようにしている。また、ローラの側端部の摩擦が高くなることを特徴としている。
また、特開2003−267580号公報(特に、図6)には、ガイドブロックというベルトに接触する接触部材が記載されている。ローラの端からはみ出したべルト端部に、ベルトブロックを接触させる。ベルトブロックは、ローラの端からはみ出したべルト端部において、ベルトの回転周長が小さくなるように設置する。
さらに、実開平03−91440号公報(特に、第5図)には、片寄り防止ローラというベルトに接触する接触部材が記載されている。ベルトの片寄りを防止する側縁規制フランジを設けるとともに、ベルトを介してローラに転接する片寄り防止ローラを設ける。片寄り防止ローラの端部には規制フランジを嵌合させる円周溝を設けている。その円周溝により、側縁規制フランジと片寄り防止ローラは共に軸方向に移動する。
これらの3つの従来例では、いずれもベルト面に垂直な一方向から接触部材を押し当てる。そして、ベルト面を歪曲させて、中間転写ベルトの端部において、ローラに巻き付く開始位置を変えることで寄りを止める構成である。
しかし、本発明では、接触部材13、14によってベルト面を歪曲させないように配置する。すなわち、ベルト面に対して、外周面側及び内周面側から挟み込む形で配置する。接触部材13、14が中間転写ベルト10eの回転方向の負荷となり、中間転写ベルト10eにおけるベルト幅方向Mの端部の伸び量を大きくすることで、寄りを止める構成である。図2は、接触部材13、14をローラ形状として実現した場合を示している。接触部材13はテーパを持つローラ形状でもよい。また、接触部材13と14の回転軸を平行にしなくてもよい。必須ではないが、接触部材13のローラ軸端部にトルクリミッタ15を設け、回転負荷を増加させることで本発明の効果は高まる。
図3(a)は、ベルトユニット10の構成を示す斜視図である。図3(a)に示されるように、中間転写ベルトユニット(以下、「ベルトユニット10」という)は、中間転写ベルト10eを有する。中間転写ベルト10eを張架する為の複数の張架部材として、駆動ローラ10f、懸架ローラ10g、テンションローラ10h、2次転写ローラ10iを有する。駆動ローラ10f、懸架ローラ10g、テンションローラ10hは、それぞれ長手方向の両端部を軸受け40、41、42等によって回転可能に支持されている。2次転写ローラ10iは、長手方向の両端部を図示しない軸受けで回転可能に支持されている
駆動ローラ10fは、軸受け40を介して中間転写ベルトメインフレーム(以下、「メインフレーム43」という)に支持され、不図示の駆動手段から駆動を伝達されて回転する。駆動ローラ10fが駆動回転をすることで、中間転写ベルト10eが駆動搬送される。なお、駆動ローラ10fの表面は、中間転写ベルト10eを滑り無く搬送する為に、摩擦係数の高いゴム層で形成されている。
懸架ローラ10gも、軸受け41を介してメインフレーム43に支持され、中間転写ベルト10eの駆動搬送によって従動回転する。テンションローラ10hは、軸受け42を介して支持側板44と共にスライド可能なように、メインフレーム43に支持されている。テンションローラ10hは、圧縮バネで構成されているテンションバネ45の圧縮力により、中間転写ベルト10eを張架する。
図3(b)は、テンションローラ10hの支持部の構成を示す拡大略斜視図である。この図3(b)を用いて、テンションローラ10hのスライド動作と、中間転写ベルト10eを張架する構成について説明する。
テンションローラ支持側板(以下、「支持側板44」という)には、溝44cが設けられている。メインフレーム43に形成された突起部43cが溝44cに嵌め込まれている。それによって、支持側板44はメインフレーム43に支持されている。溝44cの幅は、突起部43cが形成する外径幅よりも幅広く構成されている。溝44cと突起部43cの間にガタが存在することで、支持側板44はスライド動作可能になる。すなわち、テンションローラ10hがスライド動作可能になる。
中間転写ベルト10eの基層は、ポリイミド(PI)やポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など、引張強度が高い樹脂系素材で作られる。成形や強度、変形のしにくさなどの要件から、基層は厚さ50μmから100μmの間で作られることが多い。また、トナーを転写する効率を高めるため、基層の外周面全体にわたって、ゴム層などの異なる層を張り合わせた多層構造の中間転写ベルト10eも存在する。本発明に係る中間転写ベルト10eは、これらいずれの組成でも構わない。
図4(a)は、中間転写ベルト10eにかかるテンションを示す概念図である。この図4(a)を用いて、駆動ローラ10fに進入する側と脱出する側の間にテンション差が存在する場合の搬送と滑りの現象を説明する。テンション差が存在する場合、張り側と緩み側で中間転写ベルト10eの伸び量に差が存在することになる。その為、中間転写ベルト10eが矢印Rの方向に搬送されて、張り側から緩み側へ移動する際に、駆動ローラ10f上で中間転写ベルト10eの伸縮が発生する。
駆動ローラ10f上で中間転写ベルト10eが伸縮する為には必然的に滑りが発生する。この弾性変形に伴う滑りを弾性滑りと呼び、滑りが発生する領域をクリープ角領域12bと呼ぶ。一方で、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eに滑りのない領域が存在し、これを休止角領域12aと呼ぶ。一般に、クリープ角領域12bと休止角領域12aは、矢印Rで示す回転方向に対し、図4(a)のような位置関係になっていることが知られている。この時、駆動ローラ10f上のクリープ角領域12bでは中間転写ベルト10eが張り側から緩み側に移動するに従い縮むため、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに対して遅れる方向に滑っていることになる。
なお、クリープ角領域12bと休止角領域12aの角度の大きさは、中間転写ベルト10eとローラの摩擦係数、および、進入する側と脱出する側のベルトテンションの大きさによって決まる。一般に、進入する側と脱出する側のベルトテンションの大きさと摩擦係数とを関連付ける式として、オイラーのベルト理論の式が知られている。
図4(b)は、ローラが2軸の構成における接触部材13、14の配置可能な位置を示す転写ユニットの断面図である。この図4(b)を参照しつつ接触部材13、14の配置可能な位置について説明する。図4(a)と同様、駆動ローラ10f及びテンションローラ10hの各々に、クリープ角領域12bと休止角領域12aが存在する。メカニズムは後で述べるが、駆動ローラ10fの休止角領域12aの下流側端部位置Kよりも上流側、かつ、テンションローラ10hのクリープ角領域12bの上流側端部位置Jよりも下流側に、接触部材13、14を配置しなければならない。この配置位置は、点線で示した領域11aに等しい。
なお、「駆動ローラ10fの休止角領域12aの下流側端部位置Kよりも上流側、かつ、テンションローラ10hのクリープ角領域12bの上流側端部位置Jよりも下流側」という場合、以下の表現で、その下流側端部位置K及び上流側端部位置Jを含むものとする。
図5(a)及び図5(b)は、ローラが3軸の構成における接触部材13、14の配置可能な位置を示す転写ユニットの断面図である。ただし、図5(a)では中間転写ベルト10eが時計回りに回転しており、図5(b)では中間転写ベルト10eが反時計回りに回転しており、両者は矢印Rで示す回転方向が異なる。
まず図5(a)において考える。図5(a)でも同様に、駆動ローラ10f、テンションローラ10h、及び、懸架ローラ10gに、それぞれクリープ角領域12bと休止角領域12aが存在する。ただし、懸架ローラ10gのクリープ角領域12bと休止角領域12aは不図示である。駆動ローラ10fの休止角領域12aの下流側端部位置Kよりも上流側、かつ、テンションローラ10hのクリープ角領域12bの上流側端部位置Jよりも下流側は、矢印Rで示す回転方向を考えると領域11bになる。この領域11bに対して、接触部材13、14を配置する。
次に図5(b)において考える。この場合、矢印Rで示す回転方向が異なるので、接触部材13、14の配置領域は異なる。同じように、駆動ローラ10fの休止角領域12aの下流側端部位置Kよりも上流側、かつ、テンションローラ10hのクリープ角領域12bの上流側端部位置Jよりも下流側を考えると、図5(b)の領域11cとなる。この領域11cに対して、接触部材13、14を配置する。
ローラが2軸の構成及び軸の構成に限らず、それ以上の本数の構成においても、接触部材13、14の配置領域は同じように定義される。すなわち、駆動ローラ10fの休止角領域12aの下流側端部位置Kよりも上流側、かつ、テンションローラ10hのクリープ角領域12bの上流側端部位置Jよりも下流側に、接触部材13、14を配置しなければならない。
図6(a)〜図10は、変形例に係る接触部材の構成を示す斜視図である。この図6(a)〜図10を参照しつつ、2つの接触部材の構成に関して説明する。図6(a)〜図10では、駆動ローラ10fは時計方向に回転し、中間転写ベルト10eを搬送しているものとする。
図6(a)は、実施例1の変形例に係るベルト装置61の構成を示す斜視図である。この構成は、図2の構成に対して、接触部材13が中間転写ベルト10eを介して駆動ローラ10fの上に設けられる構成となっている。こうした構成によって、駆動ローラ10fが接触部材14を兼ね、図2の接触部材14が省略される。
接触部材13をローラ形状で構成し、駆動ローラ10fの休止角領域12aの部分でベルト幅方向Mの端部にだけ回転負荷を与える。すると、接触部材13と接触しているベルト幅方向Mの端部において、中間転写ベルト10eに大きな伸びが生じる。なお、接触部材13の摩擦を高めるように、接触部材13を駆動ローラ10fに向かって押しつける圧力を高めたり、表面材質を変更したりすることで、中間転写ベルト10eの寄りを規制する効果は高まる。
また、必須ではないが、ベルト装置61のように、接触部材13にトルクリミッタ15のような部品を接続し、接触部材13の回転負荷を増やすことでも、中間転写ベルト10eの寄りを規制する効果は高まる。
以下で説明する実施例2及びその変形例のベルト装置の構成のうち実施例1のベルト装置60と同一の構成及び効果に関しては、同一の符号を用いて説明を適宜省略する。実施例2においても、実施例1と同様の画像形成装置に適用することができるため、画像形成装置の説明は省略する。
実施例2のベルト装置70では、『接触部材』は、中間転写ベルト10eを介在して互いに向かい合う複数の接触部材113、14である。そして、『複数の接触部材のうちの少なくとも一方』である接触部材113は、中間転写ベルト10eに接触しつつ摺動する摺動部材である。また、『摺動部材』である接触部材113は、中間転写ベルト10eに所定の角度で接触する板状部材である。なお、接触部材113は、ベルト幅方向Mの両端部に2つある。
また、実施例2の変形例のベルト装置71、72では、『板状部材』の接触部材213は、第1板状部213X、及び、第1板状部213Xにベルト幅方向Mで隣接するようにベルト中央側に配置された第2板状部213Yを有している。そして、第1板状部213X及び第2板状部213Yは、一体化されている。第1板状部213Xの接触部位は、第2板状部213Yの接触部位よりも中間転写ベルト10eとの摩擦力が大きくなるように形成されている。そして、第1板状部213Xが中間転写ベルト10eに及ぼす負荷トルクは、第2板状部213Yが中間転写ベルト10eに及ぼす負荷トルクよりも大きくなるように設定されている。以下、これらに関して詳述する。
図6(b)は、実施例2に係るベルト装置70の構成を示す斜視図である。実施例2では、接触部材を摺動部材である接触部材113により実現した。接触部材113は、図6(b)のように樹脂材で成形されたブレードを押し当てたり、接触面積の比較的広いパッド形状のものを押し当てたりすることで構成する。
接触部材113は、中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの端部にだけ接触するように設けられている。また、接触部材113と対向するように、接触部材14が中間転写ベルト10eの内側に配置されている。このとき、接触部材113は中間転写ベルト10eの回転負荷となる。このため、接触部材113と接触している中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの端部において、中間転写ベルト10eに伸びが生じる。なお、接触部材113の摩擦を高めるように、接触部材113を接触部材14に向かって押しつける圧力を高めたり、表面材質を変更したりすることで、中間転写ベルト10eの寄りを規制する効果は高まる。なお、接触部材14も摺動部材により実現してもよい。
図7(a)は、実施例2の変形例1に係るベルト装置71の構成を示す斜視図である。この構成は、図6(b)の構成に対し、接触部材の形状が変更された構成である。接触部材213は摺動部材により構成される。ベルト幅方向Mの端部だけでなく中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの面全体に接触するように接触部材213を設けた上で、ベルト幅方向Mの端部(特に両端部)だけ接触部材213の摩擦力が他より高まるように構成する。
すなわち、ベルト幅方向Mの端部に付加的に別部材を配置したり、ベルト幅方向Mの端部の接触面積が広くなる形状にしたり(ベルト移動方向Lの接触寸法が大きくなる形状にすること)、ベルト幅方向Mの端部にだけ表面処理を施して摩擦係数を変えたりする。このことで、ベルト幅方向Mの端部の摩擦力を他より高めることができる。具体的には、ベルト幅方向Mの寸法が小さい2枚の板部材213a、213a、及び、ベルト幅方向Mの寸法が大きい1枚の板部材213bを準備する。そして、板部材213bのベルト幅方向の両端部の各々に板部材213a、213aを貼付することで、接触部材213を構成する。
そして、ベルト移動方向Lで重ね合わせられた板部材213a及び板部材213bの部位で第1板状部213Xが2箇所で形成される。また、第1板状部213Xで挟まれた位置にある板部材213bだけの部位で第2板状部213Yが形成される。
なお、図7(a)の構成の場合、ベルト幅方向Mの端部だけでなく中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの面全体に接触するように接触部材213を配置することで、以下のことが言える。ここで、仮に、中間転写ベルト10eの上流側から順に、1次転写ローラ32(図1参照)、接触部材213、2次転写ローラ10iが配置される構成であるとする。この場合には、1次転写ローラ32によって中間転写ベルト10eの表面に転写された電子写真画像が、接触部材13、14によって、2次転写ローラ10iに到達するまでに壊されてしまう。
従って、そのように電子写真画像を壊してしまわないように、接触部材213は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側に配置しなければならない。または、接触部材213は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの上流側に配置しなければならない。ここの例では、図1の構成上、接触部材213は、1次転写ローラ32よりもベルト移動方向Lの上流側、又は、2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側のいずれかに配置しなければならないことになる。
同時に、本発明の接触部材213の位置は、図4(b)及び図5を参照して前述したが、駆動ローラ10fの休止角領域12aの下流側端部位置Kよりも上流側、かつ、テンションローラ10hのクリープ角領域12bの上流側端部位置Jよりも下流側である。
これらのことから、接触部材213、1次転写ローラ32、及び、2次転写ローラ10iの位置は、限定される。ただし、『転写ベルト』に限定しなければ、接触部材213の配置は、この限りではない。
また、接触部材213と対向するように、接触部材14が中間転写ベルト10eの内側に配置されている。このとき、接触部材213は中間転写ベルト10eの回転負荷となる。このため、接触部材213と接触している中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの端部において、中間転写ベルト10eに大きな伸びが生じる。
図7(b)は、実施例2の変形例2に係るベルト装置72の構成を示す斜視図である。この構成は、図7(a)の構成に対し、接触部材213を駆動ローラ10f上に設けることで、接触部材14を省略した構成である。『複数の接触部材のうち無端ベルトの内周面側のもの』である駆動ローラ10fが接触部材14を兼ねている。接触部材213は摺動部材により構成される。接触部材213は、ベルト幅方向Mの端部だけでなくベルト幅方向Mのベルト面全体に接触するように設けられた上で、ベルト幅方向Mの端部だけ接触部材213の摩擦力が他より高まるように構成されている。
なお、図7(b)の構成の場合も、電子写真画像を壊さないように、接触部材213は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側に配置しなければならない。または、接触部材213は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの上流側に配置しなければならない。ここの例では、図1の構成上、接触部材213は、1次転写ローラ32よりもベルト移動方向Lの上流側、又は、2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側のいずれかに配置しなければならないことになる。ただし、『転写ベルト』に限定しなければ、接触部材213の配置は、この限りではない。
また、接触部材213と対向するように、駆動ローラ10fが中間転写ベルト10eの内側に配置されている。このとき、接触部材213は中間転写ベルト10eの回転負荷となる。このために、特に、接触部材213と接触している中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの端部において、中間転写ベルト10eに大きな伸びが生じる。
以下で説明する実施例3及びその変形例のベルト装置の構成のうち実施例1のベルト装置60と同一の構成及び効果に関しては、同一の符号を用いて説明を適宜省略する。実施例3においても、実施例1と同様の画像形成装置に適用することができるため、画像形成装置の説明は省略する。
実施例3のベルト装置80では、『接触部材』は、中間転写ベルト10eを介在して互いに向かい合う複数の接触部材313、14である。そして、『複数の接触部材のうちの一方』は、『第1ローラ部』である端部ローラ313a、及び、端部ローラ313aにベルト幅方向Mで隣接してベルト中央側に配置された『第2ローラ部』である中央部ローラ313bを有して一体的に回転するように繋げられる。2つの端部ローラ313aの表面部位は、中央部ローラ313bの表面部位よりも中間転写ベルト10eとの摩擦力が大きくなるように形成される。
そして、端部ローラ313aが中間転写ベルト10eに及ぼす負荷トルクは、中央部ローラ313bが中間転写ベルト10eに及ぼす負荷トルクよりも大きくなるように設定される。以下、詳述していく。
図8(a)は、実施例3に係るベルト装置80の構成を示す斜視図である。この構成は、図2の構成に対し、接触部材13の形状が変更された構成である。接触部材313はローラにより構成される。ベルト幅方向Mの端部だけでなくベルト幅方向Mのベルト面全体に接触するように接触部材313を設けた上で、ベルト幅方向Mの端部だけ接触部材313の摩擦力が他より高まるように構成する。
例えば、ベルト幅方向Mの端部を別部材で配置し、ベルト幅方向Mの端部の外形を他より大きくした上で、ローラの硬度を柔らかくすることで、ベルト幅方向Mの端部の接触部材313の摩擦力を他より高めることができる。また、ベルト幅方向Mの端部にだけ表面処理を施して摩擦係数を変えることでも、ベルト幅方向Mの端部の摩擦力を他より高めることができる。
なお、図8(a)の構成の場合も、電子写真画像を壊さないように、接触部材313は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側に配置しなければならない。または、接触部材313は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの上流側に配置しなければならない。ここの例では、図1の構成上、接触部材313は、1次転写ローラ32よりもベルト移動方向Lの上流側、又は、2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側のいずれかに配置しなければならないことになる。ただし、『転写ベルト』に限定しなければ、接触部材313の配置は、この限りではない。
また、必須ではないが、ベルト装置80のように、接触部材313にトルクリミッタ15のような部品を接続して、回転負荷を増やすことでも、中間転写ベルト10eの寄りを規制する効果は高まる。
図8(b)は、実施例3の変形例に係るベルト装置81の構成を示す斜視図である。この構成は、図8(a)の構成に対し、接触部材313を駆動ローラ10f上に設けることで、接触部材14を省略した構成である。『複数の接触部材のうち無端ベルトの内周面側のもの』である駆動ローラ10fが接触部材14を兼ねている。接触部材313はローラにより構成される。接触部材313は、ベルト幅方向Mの端部だけでなくベルト幅方向Mのベルト面全体に接触するように接触部材313を設けた上で、ベルト幅方向Mの端部だけ接触部材313の摩擦力が他より高まるように構成されている。
なお、図8(b)の構成の場合も、電子写真画像を壊さないように、接触部材313は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側に配置しなければならない。または、接触部材313は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの上流側に配置しなければならない。ここの例では、図1の構成上、接触部材313は、1次転写ローラ32よりもベルト移動方向Lの上流側、又は、2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側のいずれかに配置しなければならないことになる。ただし、『転写ベルト』に限定しなければ、接触部材313の配置は、この限りではない。
また、接触部材313と対向するように、駆動ローラ10fが中間転写ベルト10eの内側に配置されている。このとき、接触部材313は中間転写ベルト10eの回転負荷となる。このために、特に、接触部材313と接触している中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの端部において、中間転写ベルト10eに大きな伸びが生じる。
また、必須ではないが、ベルト装置81のように、接触部材313にトルクリミッタ15のような部品を接続して、回転負荷を増やすことでも、中間転写ベルト10eの寄りを規制する効果は高まる。
以下で説明する実施例4及びその変形例のベルト装置の構成のうち実施例1のベルト装置60と同一の構成及び効果に関しては、同一の符号を用いて説明を適宜省略する。実施例4においても、実施例1と同様の画像形成装置に適用することができるため、画像形成装置の説明は省略する。
実施例4では、『接触部材』は、中間転写ベルト10eを介在して互いに向かい合う複数の接触部材413、14である。『複数の接触部材のうちの一方』である接触部材413は、ベルト幅方向Mで中間転写ベルト10eの全面に亘って対向する『通しローラ』である。また、接触部材413は、逆クラウン形状で形成される。以下に詳述する。
図9(a)は、実施例4に係るベルト装置90の構成を示す斜視図である。この構成は、図2の構成に対し、接触部材13の形状が変更された構成である。接触部材413は逆クラウン型のローラにより構成される。接触部材413は逆クラウン型をしているので、ベルト幅方向Mの端部になればなるほど、中間転写ベルト10eと大きな接触面積をもつ。このことから、ベルト幅方向Mの端部において、摩擦力を他より高めることができる。なお、逆クラウン型とは、ローラの中央側の径が小さく、ローラの端部側の径が大きい型のことである。
なお、図9(a)の構成の場合も、電子写真画像を壊さない工夫が必要である。接触部材413は、逆クラウン量が大きく、画像形成面を妨げることなく接触するのであれば、以下の位置に配置すれば良い。即ち、接触部材413は、駆動ローラ10fの休止角領域12aの下流側端部位置Kよりも上流側、かつ、テンションローラ10hのクリープ角領域12bの上流側端部位置Jよりも下流側のどこに配置しても構わない。
しかし、接触部材413の逆クラウン量が小さくて画像形成面が妨げて接触する虞がある場合には、接触部材413は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側に配置しなければならない。または、接触部材413は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの上流側に配置しなければならない。ここの例では、図1の構成上、接触部材413は、1次転写ローラ32よりもベルト移動方向Lの上流側、又は、2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側のいずれかに配置しなければならないことになる。ただし、『転写ベルト』に限定しなければ、接触部材413の配置は、この限りではない。
また、接触部材413と対向するように、接触部材14が中間転写ベルト10eの内側に配置される。このとき、接触部材413は中間転写ベルト10eの回転負荷となる。このために、特に、接触部材413と接触している中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの端部において、中間転写ベルト10eに大きな伸びが生じる。
また、必須ではないが、ベルト装置90の場合にも、接触部材413にトルクリミッタ15(図8参照)のような部品を接続して、回転負荷を増やすことでも、中間転写ベルト10eの寄りを規制する効果は高まる。
図9(b)は、実施例4の変形例に係るベルト装置91の構成を示す斜視図である。この構成は、図9(a)の構成に対し、接触部材413を駆動ローラ10f上に設けることで、接触部材14を省略した構成である。『複数の接触部材のうち無端ベルトの内周面側のもの』である駆動ローラ10fが接触部材14を兼ねている。接触部材413は逆クラウン型のローラにより構成される。接触部材413は逆クラウン型をしているので、ベルト幅方向Mの端部になればなるほど、中間転写ベルト10eと大きな接触面積をもつ。
なお、図9(b)の構成の場合も、電子写真画像を壊さない工夫が必要である。接触部材413は、逆クラウン量が大きく、画像形成面を妨げることなく接触するのであれば、以下の位置に配置すれば良い。即ち、接触部材413は、駆動ローラ10fの休止角領域12aの下流側端部位置Kよりも上流側、かつ、テンションローラ10hのクリープ角領域12bの上流側端部位置Jよりも下流側のどこに配置しても構わない。
しかし、接触部材413の逆クラウン量が小さくて画像形成面が妨げて接触する虞がある場合には、接触部材413は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側に配置しなければならない。または、接触部材413は、中間転写ベルト10eの1次転写ローラ32と2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの上流側に配置しなければならない。ここの例では、図1の構成上、接触部材413は、1次転写ローラ32よりもベルト移動方向Lの上流側、又は、2次転写ローラ10iよりもベルト移動方向Lの下流側のいずれかに配置しなければならないことになる。ただし、『転写ベルト』に限定しなければ、接触部材413の配置は、この限りではない。
また、接触部材413と対向するように、駆動ローラ10fが中間転写ベルト10eの内側に配置される。このとき、接触部材413は中間転写ベルト10eの回転負荷となる。このために、特に、接触部材413と接触している中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの端部において、中間転写ベルト10eに大きな伸びが生じる。
また、必須ではないが、ベルト装置91の場合にも、接触部材413にトルクリミッタ15(図8参照)のような部品を接続して、回転負荷を増やすことでも、中間転写ベルト10eの寄りを規制する効果は高まる。
以下で説明する実施例5のベルト装置の構成のうち実施例1のベルト装置60と同一の構成及び効果に関しては、同一の符号を用いて説明を適宜省略する。実施例5においても、実施例1と同様の画像形成装置に適用することができるため、画像形成装置の説明は省略する。
実施例5では、接触部材13、14が接触する中間転写ベルト10eにおけるベルト幅方向Mの幅方向端部21の表面は、中間転写ベルト10eにおけるベルト幅方向Mの幅方向中央部22の表面よりも摩擦係数が大きくなるように形成(表面加工)される。また、接触部材13、14が幅方向端部21に接触して負荷される負荷トルクは、接触部材13、14が幅方向中央部22に接触して負荷される負荷トルクよりも大きくなるように設定される。以下、詳述していく。
図10は、実施例5に係るベルト装置100の構成を示す斜視図である。この構成は、図2、及び、図6(a)〜図9(b)の構成に対し、中間転写ベルト10e側のベルト幅方向Mの端部の摩擦力を高めるようにした構成である。中間転写ベルト10eにおけるベルト幅方向Mの端部の外周面もしくは内周面に摩擦力を高めるテープ状のテープ状部材16を貼りつける。そうすることで、接触部材13、14との摩擦力が高まり、中間転写ベルト10eの回転負荷は増える。特に、接触部材13、14とテープ状部材16が接触している中間転写ベルト10eの幅方向端部21において、中間転写ベルト10eに大きな伸びが生じる。以上が、本発明の構成の説明である。
これ以降は、実施例1〜5のベルト装置に共通する中間転写ベルト10eの寄りのメカニズムに関して説明していく。
図11(a)は、中間転写ベルト10eにかかるモーメントや歪みの様子を示す概念図である。この図11(a)以降の図面を参照しつつ、本発明で中間転写ベルト10eの寄りが止まる原理について説明する。そのために、まず、中間転写ベルト10eの搬送量について説明する。一般に、中間転写ベルト10eの搬送量は、中間転写ベルト10eの中立面の位置によって決まる。
図11(a)のように、中間転写ベルト10eに曲げモーメントを加え、駆動ローラ10fの曲面に沿って屈曲させることを考える。そのとき、中間転写ベルト10eの内周面では縮みが生じ、外周面では伸びが生じる。中間転写ベルト10eの歪み量は図11(a)に示す通りである。ここから分かるように、中間転写ベルト10eの中立面において、歪みはゼロとなる。つまり、中立面での歪み量(伸び量)が、中間転写ベルト10eの平均的な歪み量(伸び量)を表す。
同様のことは、中間転写ベルト10eにテンションを与えて引っ張りながら屈曲させた場合にもいえる。中間転写ベルト10eにモーメントを与えず真っ直ぐに引っ張った場合の歪み量は、同じテンションで引っ張りつつ駆動ローラ10fに巻きつけた時の中立面での歪み量と等しくなる。そして、内周面で縮みが生じ、外周面で伸びが生じるという関係は変わらない。このように、中立面での伸び量が、中間転写ベルト10eの平均的な伸び量を表すことがわかる。
中間転写ベルト10eが搬送され、駆動ローラ10fに巻き付いていく様子を順序立てて説明する。まず、中間転写ベルト10eが真っ直ぐ搬送されている場所から、駆動ローラ10fに突入する。次に、ローラの曲率に沿おうとして、中間転写ベルト10eの内周面が縮められる。続いて、内周面が縮められた状態で、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eの内周面が接する。そして、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eの内周面が一体化した状態で、駆動ローラ10fの回転角度に従って中間転写ベルト10eは移動する。
このとき、平均的な中間転写ベルト10eの移動量は、中立面での移動量になる。つまり、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eの内周面が一体化して移動しているものの、全体の移動量は中立面の位置での動きによって決まるのである。従って、中間転写ベルト10eの搬送量は、中立面での歪み量を考慮し、ローラ中心から中立面までの半径に駆動ローラ10fの回転角度を掛け合わせた量となる。以上の説明を数式に表すと、中間転写ベルト10eの搬送量は数1となる。
ここで、駆動ローラ10fの回転角度をθ、駆動ローラ10fの半径をr、中間転写ベルト10eの厚みをa、中間転写ベルト10eのヤング率をEa、中間転写ベルト10eの長手方向の断面積をAa、ポアソン比をνaとした。また、駆動ローラ10fの上流側で中間転写ベルト10eにかかるテンションをT1、駆動ローラ10fの下流側で中間転写ベルト10eにかかるテンションをT2とおいた。T1とT2の関係は図4(a)に示すとおりである。図4(a)において駆動ローラ10fは矢印Rの方向に回転している。数1の各項の説明をする。テンションT1で引っ張ったとき、中間転写ベルト10eの周長方向の単位長さは数2だけ伸びる。
ローラによって搬送される量を考えると、伸びた分だけ搬送量の割合は減る。このことから、数1の中にある数3の項は、搬送方向の伸び量の影響を考慮していることがわかる。
数4は、駆動ローラ10fの半径rに中立面までの距離を足した値である。本来の中間転写ベルト10eの厚みはaである。そのため、テンションT1が働かなければ、半径rに中立面までの距離を足した値は(r+a/2)となる。しかし今、テンションT1によって引っ張られることにより厚みの変化が生じている。ポアソン比がνaであることから、厚みは数5の分だけ減少している。そのため、駆動ローラ10fの半径rに中立面までの距離を足した値は、数4で与えられるのである。
数1から、先程の説明の通り、中間転写ベルト10eが厚いほど搬送される量は多くなる。また、引張強度が強いほど、つまりEa×Aaの値が大きいほど搬送量は多くなる。逆にテンションT1の値が大きいほど、搬送量は少なくなる。
次に中間転写ベルト10eの搬送速度について考える。搬送速度とは、レーザードップラー式の速度計などで、搬送速度を定点測定したときに観測される値のことである。定点測定では、テンションがかかって中間転写ベルト10eが伸ばされた状態で、中間転写ベルト10e上のある質点が単位時間当たりに移動する距離を観測することになる。
駆動ローラ10fの回転速度は、数6のように回転角度θを時間で微分した値である。
このとき、テンションT1がかかっている駆動ローラ10fの上流側での中間転写ベルト10eの搬送速度は数7で与えられる。数7は、駆動ローラ10fの回転速度に、中立面までの半径をかけた値となっている。数1の単純な時間微分にならないので、注意が必要である。
また、テンションT2がかかっている駆動ローラ10fの下流側での中間転写ベルト10eの搬送速度は数8で与えられる。
数8の中の数9の項は、駆動ローラ10fの上流側での単位伸び量の値で、駆動ローラ10fの下流側の単位伸び量の値を割っている。駆動ローラ10fの下流側での中間転写ベルト10eの搬送速度は、結局、上流側との単位伸び量の比で求められるからである。
駆動ローラ10fの上流側のテンションT1の方がT2よりも大きいことを考えると、数9から、中間転写ベルト10eの搬送速度は必ず下流側の方が遅くなる。T1に対してT2が小さいほど、下流側の中間転写ベルト10eの搬送速度は遅くなる。また、引張強度が弱いほど、つまりEa×Aaの値が小さいほど、下流側の中間転写ベルト10eの搬送速度は遅くなる。
数7、数8から分かるように、駆動ローラ10fの上流側と下流側で中間転写ベルト10eの搬送速度は異なる。しかし、上流側と下流側で中間転写ベルト10eの搬送量は同じである。このことには注意が必要である。
上流側では搬送速度は速いが、伸び量が大きい。逆に、下流側では搬送速度は遅いが、伸び量が小さい。そのため、中間転写ベルト10eが搬送される量としては変わらないのである。もし、上流側と下流側のどちらか一方の搬送量が多ければ、中間転写ベルト10eを搬送したときに、搬送量の差が累積して、そのうち破綻してしまう。よって、搬送量は同じにならなければならない。同じように、上流側と下流側で中間転写ベルト10eの回転周期も変わらない。
次に、中間転写ベルト10eの回転周期を考える。テンションがかかっておらず、中間転写ベルト10eの伸び量がゼロであるときの1回転周期をRot(秒)とする。無負荷状態での、中間転写ベルト10eの中立面の位置での一周分の周長さをlとすると、Rotは数10のように与えられる。
それに対し、図4(a)に示すようにテンションT1とT2が与えられたとき、中間転写ベルト10eの1回転の周期は数11になる。周期は中間転写ベルト10eが伸びた分だけ長くなっている。
駆動ローラ10fの上流側において、中立面の位置での一周分の周長さlはテンションT1をかけられて伸びている。数11は、その状態での長さを、上流側での速度(数7)で割ることで求めている。
数11の中の数12の項は、テンションT1を与えて引っ張ったことにより、中間転写ベルト10eがつぶれて、中立面の位置が変化したことを考慮している。
これまでに示したように、中間転写ベルト10eの搬送量や搬送速度や回転周期は、中立面の位置やヤング率、および材料の断面積によって変わる。本発明では、接触部材13、14を用いて、回転方向の負荷を増加させ、中間転写ベルト10eの回転周期を変えることで、中間転写ベルト10eの寄りを止める。
では次に、回転方向に負荷fが与えられた場合における、中間転写ベルト10eの回転の周期を考える。負荷fが中間転写ベルト10eに一様にかけられているものとすると、中間転写ベルト10e回転の周期は数13となる。これは、数11に対し、テンションがT1からT1+fに増加したことを考慮している。
数11と数13を比較すると、ポアソン比νaが小さいため、数13の方が大きい。つまり、数14の関係が成り立つ。
このことから、回転方向に負荷fを与えると、中間転写ベルト10eの1回転周期が長くなることがわかる。ただし、駆動ローラ10fの休止角領域12aの下流側端部位置Kよりも上流側、かつ、テンションローラ10hのクリープ角領域12bの上流側端部位置Jよりも下流側に、接触部材13、14等の接触部材を配置しなければ中間転写ベルト10eは変化しない。
では、次に本発明に係る中間転写ベルト10eの寄りのメカニズムについて、駆動ローラ10fと中間転写ベルト10eを例示して、図11(b)を用いて説明する。
図11(b)は、中間転写ベルト10eが、駆動ローラ10fに巻き付く様子を拡大表示した説明図である。中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに対してまっすぐ、すなわち駆動ローラ10fの軸線に対して垂直に巻き付けば、中間転写ベルト10eの位置は、駆動ローラ10fに巻き付く入口側と送り出される出口側とで変わらない。従って、中間転写ベルト10eは同じ位置を駆動搬送され続ける為に中間転写ベルト10eの寄りは発生しない。
しかし、テンションバネ45の前後のテンション差や、駆動ローラ10f、懸架ローラ10g、テンションローラ10h、2次転写ローラ10iのアライメントのずれ、機構を構成する部品の寸法のばらつきなどの様々なばらつき要素を完全に無くせない。ばらつき要素を完全に無くすことが不可能である為に、中間転写ベルト10eは、駆動ローラ10fに対して、必ず所定の角度(以下、進入角と称する)を有して巻き付いて行く。そして、中間転写ベルト10eは、進入角にのっとった方向に寄る。
図11(b)において、中間転写ベルト10eは、矢印Bの方向に駆動搬送され、駆動ローラ10fに巻き付いていく。中間転写ベルト10eの端部ライン10e−1のある一点Xは、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに巻き付くにつれて、点Xの位置から点X´の位置に移動する。また、別のある一点Yは、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに巻き付くにつれて、点Yの位置から点Y´の位置に移動する。
そうすると、中間転写ベルト10eの端部ライン10e−1は、中間転写ベルト10eが駆動ローラ10fに巻き付くにつれて、点X´と点Y´を結んだ10e−2の位置に移動する。この移動が継続的に行われることによって、中間転写ベルト10eは、進入角によって図11(b)中、矢印Cの方向に寄って行く。これが、中間転写ベルト10eの中間転写ベルト10e寄りのメカニズムである。次に本発明に係る中間転写ベルト10eの寄りを規制するメカニズムを説明する。
図12(a)は、中間転写ベルト10eが中央から片側に寄った様子を表す説明図である。中間転写ベルト10eが駆動搬送されると、部品や組み立てのばらつきによって形成される進入角にのっとり、中間転写ベルト10eは寄り始める。本実施例では、図12(a)中、矢印N方向に中間転写ベルト10eが寄った場合を例示している。
図12(a)のように中間転写ベルト10eが寄ると、中間転写ベルト10eと接触部材13との接触面積が変化する。図中、右側では接触部材13との接触面積が増え、逆に左側では接触部材13との接触面積が減る。本発明では、端部において接触部材13との接触面積が増えるほど、中間転写ベルト10eに与える回転方向の負荷fが大きくなる。
先ほど、数14により、中間転写ベルト10eに回転方向の負荷を与えることで、中間転写ベルト10eの1回転周期が長くなることを示した。このことから、図12(a)において、右側では1回転周期が長くなり、逆に左側では1回転周期が短くなる。
図12(b)は、中間転写ベルト10eが傾斜したまま進行している状態を示す平面図である。中間転写ベルト10eは、回転を続けると、図12(b)のような位置関係になる。右側に対して左側の1回転周期が短いので、左側の中間転写ベルト10eの方が先に進行する。つまり、図12(b)のような進入角が発生する。このとき、図11(b)で説明した進入角と寄りの関係に従い、右側に向かう矢印Nの方向(図12(a)参照)に寄っていた中間転写ベルト10eは左側に向かう矢印N’の方向(図12(b)参照)に戻ろうとする。
中間転写ベルト10eが図12(a)の矢印Nの方向に寄れば寄るほど、左右での中間転写ベルト10eの1回転周期の差は大きくなる。つまり、中央側に向かうように矢印N’の方向に寄りを戻そうとする作用が強く働く。つまり、図12(b)の進入角の発生量は大きくなるのである。
図12(a)の初期状態で中間転写ベルト10eが矢印Nの方向に寄ろうとする速度と、中間転写ベルト10eの1回転周期の差によって生じる進入角が生み出す寄り速度とのバランスが取れたところで寄りは止まる。以上が中間転写ベルト10eの寄りが止まるメカニズムである。
続いて、実験例を示す。図2と同じ構成で、中間転写ベルト10eは、内周長630[mm]、幅240[mm]、厚さ80[μm]でPVDFにより製造する。駆動ローラ10fはφ22[mm]、表面に厚さ500[μm]のゴムコーティングを施す。テンションローラ10hは、φ18[mm]で中空のアルミ材により製造する。駆動ローラ10fおよびテンションローラ10hの中間転写ベルト10eに接する部分の長さは225[mm]である。また、テンションバネ45により、片側が2.5[kgf]、総圧が5[kgf]の力で付勢する。駆動ローラは1秒間に2回転の速さで回転する。そして、接触部材13、14の幅を30mmとし、中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの端部にだけ掛かるようにする。
接触部材13、14を設置しない状態で、駆動ローラ10fとテンションローラ10hの軸がねじれるように、メインフレーム43を1[mm]変形させると、30[μ/sec]の速度で寄りを生じる。地面が平らでない場所に置いて外力を加えれば、メインフレーム43が1[mm]近くねじれることもある。そのため、本発明により30[μ/sec]の寄り速度が十分に規制できる必要がある。
そして、接触部材13の30mmの幅に、中間転写ベルト10eが全て接している状態で、回転方向の負荷fが3 [N]になるようにする設定する。なお、回転方向は図5(a)と同じであり、駆動ローラの上流側100mmの位置に設置する。
この状態で、中間転写ベルト10eを任意の位置に設置し、メインフレーム43を1[mm]変形させた状態で駆動ローラ10fを回転させ、中間転写ベルト10eを搬送させる。接触部材13、14を設置しなければ、30[μ/sec]の寄り速度で中間転写ベルト10eは寄ってしまうが、本発明の効果により、中間転写ベルト10eの寄りを止めることができる。
実施例1〜5の構成によれば、『ベルト装置』は、中間転写ベルト10eのベルト幅方向Mの端部に対して、中間転写ベルト10eの上下方向から中間転写ベルト10eを湾曲させないように挟み込みつつ接触する『接触部材』を備える。その結果、中間転写ベルト10eが周方向に回転する際の負荷トルクが適切な値に設定されて中間転写ベルト10eの寄りが規制される。
詳しくは、『接触部材』がベルト幅方向Mの端部に対して接触することで、中間転写ベルト10eが周方向に回転する際の負荷トルクが適切な値に設定されて中間転写ベルト10eの寄りが規制される。また、『接触部材』がベルト幅方向Mの端部に対して上下方向から挟み込みつつ接触することで、中間転写ベルト10eが大きく歪曲する現象が抑制される。これらの結果、中間転写ベルト10eの長寿命化が実現される。
なお、前述した実施例2の変形例1及び変形例2の接触部材213(図7(a)及び図7(b)参照)、実施例3及びその変形例の接触部材313は、中間転写ベルト10eの表面をクリーニングするベルトクリーニング装置の一部として兼用されても良い。
また、『複数の接触部材のうち無端ベルトの内周面側のもの』は、無端ベルトの外周面側の接触部材がベルト幅方向の全面に亘ってない場合には、以下のように構成しても良い。例えば、実施例1(図2参照)及びその変形例1(図6(a)参照)、実施例2(図6参照)、実施例5(図10参照)のような構成に関する。すなわち、『複数の接触部材のうち無端ベルトの内周面側のもの』は、駆動ローラ10fのところに対向するのではなく、2次転写ローラ10iのところに対向してもよい。また、「転写ベルト」に限定しなければ、「複数の接触部材の一方」は、テンションローラ10hのところに対向しても良い。