JP5790282B2 - リチウム二次電池用負極活物質およびリチウム二次電池用負極 - Google Patents
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Description
ここでSn−Cu系合金は、Sn−Cu合金又はCu以外に長周期型周期表の2A族元素、遷移元素、3B族元素を1種又は2種以上含有する合金であり、XはFe,Ni及びCoから選ばれた1種以上の元素で、1質量%以上の量で添加してあることが必要である。
本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、Si−X系合金によるSi結晶子の被覆率が25%以上であることが好ましい。
またSi−X系合金におけるXの添加量は、合計で3〜15質量%であることが好ましい。
これに対して、Sn−Cu系合金は低容量ではあるもののLiを吸蔵するので、Si結晶子の周囲を取り囲む合金マトリクスに使用した場合、合金マトリクス中におけるLiの拡散パスを確保しやすくなる。したがって、本発明に係るリチウム二次電池用負極活物質は、活物質の理論容量に対する利用率を向上させることが可能となる。
Si−X系合金はLiを殆んど吸蔵しない相であり、このSi−X合金がSi結晶子を部分的に被覆していることでSi結晶子の膨張自体を抑制する。
そしてSi−X系合金によるSi結晶子の膨張自体の抑制作用と、Sn−Cu系合金マトリクスによるSi結晶子の膨張応力の緩和作用とによって、Siの崩壊を効果高く抑制し、より一層のサイクル特性を向上させ得るものと考えられる。
一方本発明のリチウム二次電池用負極物質では、Si含有量を65質量%以下としている。Si含有量がこれよりも多くなると、これに応じてマトリクス量が過少となり、マトリクスの働きによるサイクル特性の向上効果が低下してしまう。
そこでここではSiを30〜65質量%の範囲内で活物質中に含有させる。
この場合において、Si−X系合金におけるXの添加量を合計で3%以上としておくことで、上記の被覆率25%以上が得易くなる。
一方15%を超えて多く添加すると、Si単相として存在するSi量が少なくなり、放電容量が小さくなる。
初めに、本負極活物質の構成について説明する。本負極活物質は、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池などのリチウム二次電池の負極に用いられる材料である。
Siを30%以上含有させることで、初期放電容量の目標値である800mAh/g以上の放電容量を得やすくなる。また40%以上含有させることで、より望ましい放電容量である1100mAh/g以上を得やすくなる。
一方、Sn−Cu系合金マトリクスは、好ましくは20〜69質量%、より好ましくは、35〜57質量%含まれていると良い。Siの含有量が過度に少なくなれば負極活物質の容量が低下し、黒鉛の代替材料としての意味が小さくなる。一方、Siの含有量が過度に多くなれば、Sn−Cu系合金マトリクス量が相対的に低下し、Si結晶子の膨張・収縮を抑制する効果が小さくなる。Si、Sn−Cu系合金マトリクスの含有量が上記範囲内であれば、サイクル特性の向上効果と高容量化とのバランスに優れる。
これらは1種または2種以上含まれていても良い。これらのうち、特に好ましくは、負極活物質の低コスト化に寄与することができる等の観点から、Feを好適に選択することができる。もっとも、Si−X系合金中には不可避的な不純物が含まれていても良い。
またSi−X系合金によるSi結晶子の被覆率は25%以上としておくのが望ましい。被覆率がこれよりも小さいと、Si−X系合金によるSi粒子の十分な崩壊抑制効果が得られ難い。
一方被覆率が過度に高くなるとSiの利用率が低下し、容量が低下してしまうため、被覆率としては95%以下としておくことが望ましい。
この場合において、Si−X系合金を構成する元素であるXは、好ましくは3〜15質量%含まれているとよい。Xの含有量が少なくなれば、上記の望ましい被覆率が得られ難く、Si−X系合金によるSiの崩壊抑制効果が十分に発揮され難くなってサイクル特性が低下してしまう。一方、Si−X系合金の含有量が過度に多くなれば、Si結晶子の量が相対的に少なくなり、またSi結晶子のSi−X系合金からの露出部分の面積が相対的に少なくなることによってSiの利用率が低下し、容量が低下してしまう。Xの含有量が上記範囲内であれば、サイクル特性向上効果と高容量化とのバランスに優れる。
本負極は、本負極活物質を用いて構成されている。
(実施例1)
表1に示す合金組成[44.0%Si−48.2%Sn−3Fe―4.8%Cu]となるように各原料を秤量した。秤量した各原料を高周波誘導炉を用いて加熱、溶解し、合金溶湯とした。ガスアトマイズ法により、上記得られた合金溶湯から粉末状の実施例1に係る負極活物質を作製した。なお、合金溶湯作製時およびガスアトマイズ時の雰囲気はアルゴン雰囲気とした。また、ガスアトマイズ時には、噴霧チャンバ内を棒状に落下する合金溶湯に対して、高圧(4MPa)のアルゴンガスを噴き付けた。
得られた粉末を篩いを用いて25μm以下に分級したものを活物質して用いた。
実施例1において、表1,表2に示す各合金組成となるように各原料を秤量した点以外は同様にして、実施例2〜28、31〜35に係る負極活物質を得た(但し実施例26では18μm以下に分級、実施例27では45μm以下に分級、実施例28では75μm以下にそれぞれ分級した)。
実施例1において、表1に示す各合金組成となるように各原料を秤量した点、ガスアトマイズ法に代えて水アトマイズ法を用いた点以外は同様にして、実施例29に係る負極活物質を得た。なお、水アトマイズ時の雰囲気は大気中とした。また、水アトマイズ時には、噴霧チャンバ内を棒状に落下する合金溶湯に対して、高圧(50MPa)の水を噴き付けた。
表2に示す各合金組成となるように各原料を秤量した。秤量した各原料を高周波誘導炉を用いて加熱、溶解し、合金溶湯とした。液体単ロール超急冷法により、上記得られた合金溶湯を急冷し、急冷合金リボンを得た。なお、ロール周速は42m/s、ノズル距離は3mmとした。得られた急冷合金リボンを乳鉢を用いて機械的に粉砕し、粉末状の実施例30に係る負極活物質を得た。
ガスアトマイズ法により作製した純Si粉末を、比較例1に係る負極活物質とした。
実施例1において、表1に示す各合金組成となるように各原料を秤量した点以外は同様にして、比較例2〜4、6〜8、10〜14に係る負極活物質を得た。
表3に示す合金組成となるように各原料を秤量した。秤量した各原料を高周波誘導炉を用いて加熱、溶解し、合金溶湯とした。液体単ロール超急冷法により、上記得られた合金溶湯を急冷し、急冷合金リボンを得た。なお、ロール周速は42m/s、ノズル距離は3mmとした。得られた急冷合金リボンを乳鉢を用いて機械的に粉砕し、粉末状の比較例5に係る負極活物質を得た。
Si粉末(ガスアトマイズ法により自社で作製、平均粒径18μm)、Sn粉末((株)高純度科学研究所、「SNE04PB」(38μm以下))、Cu粉末(福田金属箔粉(株)製、「Cu−HWQ」(5μm))、Fe粉末((株)高純度科学研究所)、「FEE04PB」(53μm以下))を準備した。表3に示す各合金組成となるように各原料を秤量し、遊星ボールミル装置(ポット材質:SUS304、ボール材質:SUJ2、ボール径:6.4mm)に入れてArガスによりシールし、回転数300rpm、混合時間30hで、混合、複合化した。これにより、比較例9に係る負極活物質を得た。
各実施例,比較例に係る負極活物質について、走査型電子顕微鏡(SEM)による組織観察を行った。またエネルギー分散X線分光法(EDX)による元素分析及びXRD(X線回折)による分析も併せて行った。
図1に、Sn−Cu系合金マトリックス中にSi結晶子が分散しており、またSi結晶子を被覆する状態にSi−X系合金が晶出している負極活物質の代表例として、実施例4に係る負極活物質の走査型電子顕微鏡による反射電子像を示した。
またXRDによる分析結果を図3に示した。
尚図2は、図1中の一部(4角い点線の枠で囲んだ部分)を拡大して、これを模式図として表した図である。
また図3に示すXRD分析結果では、Si,SiFe化合物,SnCu化合物,Snそれぞれの固有のピークが表れており、図1に示す組織中にこれらSi,SiFe化合物,SnCu化合物の相が生じていることが確認された。
尚、XRD分析はCo管球を用いて120°〜20°の角度の範囲を1分間に20°の速度で測定することにより行った。
また各負極活物質につき、Si−X系合金によるSi結晶子の被覆率を求めた。
ここで被覆率とは合金粉末中においてSi粒子の周囲をSi-X化合物が被覆する割合で、断面SEM像中において、Si相とSi-X化合物相が接触する部分の長さを、Si粒子の全周長で除した値を被覆率とした。
ここでは1つの合金粉末組成に対して、10視野における被覆率を求め、その平均値を被覆率として算出した。
3.1 充放電試験用コイン型電池の作製
初めに、分級により25μm以下に調整した各負極活物質100質量部と、導電助材としてのアセチレンブラック(電気化学工業(株)製、d50=36nm)8質量部と、必要に応じて添加する骨材としての黒鉛(伊藤黒鉛工業(株)製、「SG−BH」)43質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)17質量部とを配合し、これを溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合し、各負極活物質を含む各ペーストを作製した。
各コイン型半電池を用い、電流値0.1mAの定電流充放電を1サイクル分実施し、この放電容量を初期容量C0とした。2サイクル目以降は、1/5Cレートで充放電試験を実施した(Cレート:電極を(充)放電するのに要する電気量C0を1時間で(充)放電する電流値を1Cとする。5Cならば12分で、1/5Cならば5時間で(充)放電することとなる。)。この放電時に使用した容量(mAh)を活物質量(g)で割った値を各放電容量(mAh/g)とした。
とりわけ被覆率が25%以上である実施例1〜33に係る負極活物質は、被覆率が25%未満と少ない実施例34,35に係る負極活物質に比べ、サイクル特性に優れていることが確認できた。
Claims (4)
- Siを30〜65質量%含有する組成を有し、Sn量が50質量%以上を占めるSn−Cu系合金マトリクス中にSi結晶子が分散しているとともに、該Si結晶子を少なくとも部分的に被覆する状態にSi−X系合金が晶出した2相マトリクス構造を有しており、
前記Sn−Cu系合金は、Sn−Cu合金又はCu以外に長周期型周期表の2A族元素、遷移元素、3B族元素を1種又は2種以上含有する合金であり、
前記XはFe,Ni及びCoから選ばれた1種以上の元素で1質量%以上の量で添加してあることを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質。 - 前記Si−X系合金による前記Si結晶子の被覆率が25%以上である請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
- 前記Xの添加量が合計で3〜15質量%であることを特徴とする請求項2に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質を用いたことを特徴とするリチウム二次電池用負極。
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