JP2022161719A - 負極活物質粒子、負極、及び、電池 - Google Patents

負極活物質粒子、負極、及び、電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高い放電容量と、優れた容量維持率とを両立できる負極活物質粒子、負極、及び、電池を提供する。【解決手段】本開示の負極活物質粒子は、原子組成百分率で、Sn:10~40at%を含有し、残部はCu及び不純物からなり、金属イオンを吸蔵及び/又は放出する。本開示の負極活物質粒子は板状であって、平面部を有し、平面部は複数のクラックを含む。本開示の負極は、薄膜状又はプレート状の活物質支持部材と、活物質支持部材の表面に形成されている負極合剤層とを備える。負極合剤層は、本開示の負極活物質粒子と、負極活物質粒子が内部に分散された結着剤とを含む。本開示の電池は、本開示の負極と、正極と、セパレータと、電解質とを備える。【選択図】図1

Description

本開示は、二次電池用途の負極活物質として利用可能な負極活物質粒子に関し、さらに詳しくは、負極活物質粒子、負極、及び、電池に関する。
近年、家庭用ビデオカメラ、ノートパソコン、及び、スマートフォン等の小型電子機器が普及している。これらの小型電子機器には、リチウムイオン電池に代表される二次電池が用いられている。小型電子機器のさらなる小型化、高性能化に伴い、二次電池には、高い充放電容量が求められている。
現在、二次電池の負極には、黒鉛系の活物質材料が利用されている。しかしながら、黒鉛系の活物質材料は、充放電容量に技術課題を有する。
そこで、黒鉛系活物質材料よりも高容量な金属系活物質材料が注目されている。金属系活物質材料としてたとえば、シリコン(Si)系活物質材料が知られている。
しかしながら、Si系活物質材料は、充放電時に大きな膨張及び収縮を繰り返す。そのため、Si系活物質材料の容量は劣化しやすい。たとえば、充電に伴う黒鉛の体積膨張率は、12%程度である。これに対して、充電に伴うSi単体の体積膨張率は300%前後である。このため、Si単体の電極板が充放電を繰り返すと、顕著な膨張収縮が起こる。この場合、電極板の集電体上に形成された電極活物質層がひび割れを起こす。そのため、電極活物質層が電気伝導性を失い、電極板の容量が急激に低下する。その結果、容量維持率が低下する。
そこで、高い放電容量を維持しつつ、容量維持率を高めることが可能な、新たな金属活物質材料が提案されている。
国際公開第2017/213147号(特許文献1)、国際公開第2019/017349号(特許文献2)及び特開2017-091662号公報(特許文献3)では、銅(Cu)及びスズ(Sn)を含む合金粒子を含む、金属系活物質材料を提案する。
特許文献1に開示された負極活物質材料は、at%で、Sn:10.0~22.5%、及び、Si:10.5~23.0%を含有し、残部はCu及び不純物からなる化学組成を有する合金を含む。合金は、Cu-Snの2元系状態図において、η’相、ε相、及びSn相のうちの少なくとも1種以上の相を有する。合金のミクロ組織は、網状領域、及び、網状領域に囲まれる島状領域を有し、島状領域の平均サイズが、円相当径で、900nm以下である。これにより、体積当たりの容量及び充放電サイクル特性を改善可能な負極活物質材料が得られる、と特許文献1に記載されている。特許文献1では、Cu-Sn-Si系合金のミクロ組織を制御することで、体積当たりの容量及び充放電サイクル特性を高める。
特許文献2に開示された負極活物質材料は、酸素を除く原子組成百分率で、Sn:13.0~40.0at%、及び、Si:6.0~40.0at%を含有し残部はCu及び不純物からなる合金成分と、0.50~3.00質量%の酸素とを含有する合金粒子を含む。合金粒子は、Si含有量が0~5.0at%のStrukturbericht表記でD0構造を有する相及びSi含有量が0~5.0at%のδ相からなる群から選択される1種又は2種と、Si含有量が0~5.0at%のε相及びSi含有量が0~5.0at%のη’相からなる群から選択される1種又は2種と、SiOx相(x=0.50~1.70)とを含有する。合金粒子は、X線回折プロファイルにおいて、回折角2θの42.0~44.0度の範囲に最大の回折積分強度を有するピークを有し、ピークの半値幅が0.15~2.50度である。これにより、体積当たりの容量及び容量維持率に優れる負極活物質材料が得られる、と特許文献2に記載されている。特許文献2では、Cu-Sn-Si系合金粒子の結晶子径のサイズを制御することで、体積当たりの容量及び容量維持率を高める。
特許文献3に開示された負極活物質材料は、ζ相を含むCu‐Sn系合金を含有する。これにより、充放電容量及びサイクル特性に優れた負極活物質材料が得られる、と特許文献3に記載されている。特許文献3では、Cu‐Sn系合金の結晶構造を制御することで、充放電容量及びサイクル特性を高める。
一方、金属系活物質材料の容量維持率を高める他の方法として、金属系活物質材料の形状に着目した技術が、特開2011-065983号公報(特許文献4)に提案されている。特許文献4に開示された鱗片状薄膜微粉末分散液は、(A)リチウムを可逆的に吸蔵脱離可能とする金属単体、合金、又は金属化合物、の何れか単体による層、若しくは複数による積層、による薄膜、又は(B)リチウムを可逆的に吸蔵脱離可能とする金属単体、合金、又は金属化合物、の何れか単体による層、及びリチウムを可逆的に吸蔵脱離可能としない金属単体、又は合金、の何れか単体による層、の双方の層を用いて、合計2層以上となるように積層してなる薄膜、の何れかの薄膜が微粉砕されてなるリチウム吸蔵脱離を可能とする鱗片状薄膜微粉末が溶剤中に含有されてなることを特徴とする。特許文献4では、鱗片状薄膜微粉末を用いることにより、容量維持率を高めている。
国際公開第2017/213147号 国際公開第2019/017349号 特開2017-091662号公報 特開2011-065983号公報
上述の特許文献1~4に開示された技術を用いれば、金属系活物質材料の高い放電容量を維持しつつ、容量維持率を高めることができる。しかしながら、異なる技術によっても、金属系活物質材料の容量維持率を高めることができれば好ましい。
本開示の目的は、高い放電容量と、優れた容量維持率とを両立できる負極活物質粒子、負極、及び、電池を提供することである。
本開示の負極活物質粒子は、
原子組成百分率で、Sn:10~40at%を含有し、残部はCu及び不純物からなり、金属イオンを吸蔵及び/又は放出し、
前記負極活物質粒子は板状であって、平面部を有し、
前記平面部は複数のクラックを含む。
本開示の負極は、
薄膜状又はプレート状の活物質支持部材と、
前記活物質支持部材の表面に形成されている負極合剤層とを備え、
前記負極合剤層は、
前記負極活物質粒子と、
前記負極活物質粒子が内部に分散された結着剤とを含む。
本開示の電池は、
前記負極と、
正極と、
セパレータと、
電解質とを備える。
本開示の負極活物質粒子、負極、及び、電池は、高い放電容量と、優れた容量維持率とを両立できる。
図1は、負極活物質粒子を平面部の法線方向から見た模式図である。 図2は、実施例の試験番号3の負極活物質粒子のSEM画像である。 図3は、実施例の試験番号15の負極活物質粒子のSEM画像である。 図4は、負極活物質粒子の製造装置の模式図である。 図5は、実施例の試験番号24の負極活物質粒子のSEM画像である。 図6は、実施例の試験番号27の負極活物質粒子のSEM画像である。
本発明者らは、高い放電容量と、優れた容量維持率とを両立できる負極活物質粒子について検討を行った。その結果、本発明者らは、以下の知見を得た。
本発明者らはまず、放電容量を高めることを検討した。本発明者らは、化学組成に着目し、上述の特許文献1~3に開示されるように、Cu及びSnを含有する負極活物質粒子であれば、放電容量を高めることができると考えた。本発明者らの鋭意検討の結果、原子組成百分率で、Sn:10~40at%を含有し、残部はCu及び不純物からなる負極活物質粒子であれば、放電容量が高まることが分かった。
本発明者らは続いて、容量維持率を高めることを検討した。金属系活物質材料の容量維持率が低下しやすい原因として、金属系活物質材料は、金属イオンの吸蔵及び放出時の体積の膨脹収縮が大きいことが挙げられる。上述の化学組成を有する負極活物質粒子は、Si合金系の負極活物質粒子と比べ、金属イオンの吸蔵及び放出時の体積の膨脹収縮が小さいものの、この膨張収縮を更に抑制すれば、容量維持率が高まると本発明者らは考えた。
しかしながら、上述の化学組成を有する負極活物質粒子について、金属イオンの吸蔵及び放出時の体積の膨脹収縮自体を更に抑制することは困難であった。そこで本発明者らは発想を変え、体積の膨張収縮自体は許容し、むしろ、体積が膨脹収縮した場合であっても、容量維持率が低下しにくくなる手段について検討した。
Si系活物質材料の体積が膨張収縮した場合に、容量維持率が低下する原因として、以下の理由が考えられてきた。Si系活物質材料の体積が顕著に膨張収縮すれば、電極板の集電体上に形成された電極活物質層がひび割れを起こす。そのため、電極活物質層が電気伝導性を失い、電極板の容量が急激に低下する。その結果、容量維持率が低下する。つまり、Si系活物質材料については、電極活物質層のひび割れ及びそれによる電極板の電気伝導性の低下が、容量維持率の直接の原因と考えられてきた。
しかしながら、上述の化学組成を有する負極活物質粒子について、本発明者らが検討した結果、従前知られていなかった、以下の知見を得た。
負極活物質粒子が、金属イオンを吸蔵する際、金属イオンは、負極活物質粒子の表面から、負極活物質粒子の内部に侵入する。上述の化学組成を有する負極活物質粒子は、結晶構造を有する。負極活物質粒子内に侵入した金属イオンは、この結晶構造中を移動する。金属イオンの内、たとえばリチウムイオンの場合、半径が0.7~0.8Å程度の大きさであり、非常に小さい。しかしながら、上述の化学組成を有する負極活物質粒子内の結晶格子は緻密であり、リチウムイオンであっても、負極活物質粒子内の結晶構造の中では、移動を妨げる程度の体積を占める。そのため、リチウムイオンを含む金属イオンが負極活物質粒子内の結晶構造中を移動する速度は遅い。
負極活物質粒子は、金属イオンを吸蔵すると、体積が膨脹する。金属イオンが、負極活物質粒子の表面から侵入した場合、はじめに、負極活物質粒子の表層の体積が膨脹する。上述のとおり、金属イオンが負極活物質粒子内を移動する速度は遅い。そのため、金属イオンが負極活物質粒子の内部に到達する前に、負極活物質粒子の表層の体積が膨脹する。この場合、負極活物質粒子の内部の体積は膨張せず、表層の体積のみが膨脹する。そのため、表層の体積膨脹が、体積が膨脹していない内部によって妨げられ、負極活物質粒子内に応力が生じる。この応力により、負極活物質粒子の表層が割れて新生面が生成する。新生面は化学的に活性である。新生面に電解液が接触すると、電解液が電気分解する。そのため、新生面が多数生成すれば、新生面に触れた電解液の過剰な電気分解が生じる。電解液の分解生成物は、負極活物質粒子の表面を覆う。そのため、新生面が多数生成した負極活物質粒子は、金属イオンを吸蔵及び放出する能力が顕著に低下する。この場合、負極活物質粒子の容量が低下する。負極活物質粒子が膨脹及び収縮を繰り返せば、負極活物質粒子の表層の新生面に起因して、電解液の分解生成物の厚い皮膜が、負極活物質粒子の表面に形成される。これにより、容量維持率が低下する。
以上の検討から、上述の化学組成を有する負極活物質粒子については、容量維持率の低下は、電極板の電気伝導性の低下によってではなく、負極活物質粒子の表層の新生面の生成に起因していることがはじめてわかった。
そこで本発明者らは、負極活物質粒子の表層における、新生面の生成を抑制することを検討した。その結果、以下の知見を得た。
負極活物質粒子を、平面部を有する板状の粒子にする。そして、平面部に複数のクラックを形成する。金属イオンは、負極活物質粒子の表面に加え、複数のクラックから負極活物質粒子の内部に侵入する。負極活物質粒子はさらに、板状であるため、負極活物質粒子の内部に到達するまでに、金属イオンが負極活物質粒子内の結晶構造中を移動する距離が短い。つまり、負極活物質粒子が、平面部を有する板状の粒子であって、平面部が複数のクラックを有すれば、金属イオンが、負極活物質粒子の内部に到達しやすい。この場合、負極活物質粒子の表層の体積膨脹の速度と、負極活物質粒子の内部の体積膨脹の速度との差が小さくなる。そのため、体積膨脹の速度の差による、負極活物質粒子内の応力を抑制できる。その結果、負極活物質粒子の表層の新生面の生成が抑制される。新生面の生成が抑制されれば、電解液の分解生成物による皮膜形成を抑制できる。これにより、容量維持率が高まる。つまり、本発明者らは、体積の膨張収縮自体を抑制するのではなく、体積の膨張収縮自体は許容し、むしろ、負極活物質粒子の全体が均一に膨張収縮するよう負極活物質粒子の形状を制御し、これにより、容量維持率を高めるという、従来の知見とは全く異なる手段により、本発明を完成させた。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態の負極活物質粒子、負極、及び、電池は、次の構成を有する。
[1]
負極活物質粒子であって、
原子組成百分率で、Sn:10~40at%を含有し、残部はCu及び不純物からなり、金属イオンを吸蔵及び/又は放出し、
前記負極活物質粒子は板状であって、平面部を有し、
前記平面部は複数のクラックを含む、
負極活物質粒子。
[2]
[1]に記載の負極活物質粒子であって、
前記負極活物質粒子のレーザー回折式粒度分布測定で得られるメジアン径(d50)が、1.0~50.0μmである、
負極活物質粒子。
[3]
[1]又は[2]に記載の負極活物質粒子であって、
Cuの一部にかえてさらに、
原子組成百分率で、
Ti:9at%以下、
V:49at%以下、
Cr:49at%以下、
Mn:9at%以下、
Fe:49at%以下、
Co:49at%以下、
Ni:9at%以下、
Zn:29at%以下、
Al:49at%以下、
Si:49at%以下、
B:5at%以下、及び、
C:5at%以下、
からなる群から選択される1種以上を含有する、
負極活物質粒子。
[4]
負極であって、
薄膜状又はプレート状の活物質支持部材と、
前記活物質支持部材の表面に形成されている負極合剤層とを備え、
前記負極合剤層は、
[1]~[3]のいずれか1項に記載の負極活物質粒子と、
前記負極活物質粒子が内部に分散された結着剤とを含む、
負極。
[5]
[4]に記載の負極と、
正極と、
セパレータと、
電解質とを備える、
電池。
以下、本実施形態の負極活物質粒子、負極、及び、電池について詳述する。
[負極活物質粒子]
負極活物質粒子は、原子組成百分率で、Sn:10~40at%を含有し、残部はCu及び不純物からなり、金属イオンを吸蔵及び/又は放出する。負極活物質粒子は板状であって、平面部を有し、平面部は複数のクラックを含む。
[負極活物質粒子の形状]
負極活物質粒子は、板状であって、平面部を有し、平面部は複数のクラックを含む。図1は、負極活物質粒子1を平面部10の法線方向から見た模式図である。図1を参照して、負極活物質粒子1は板状である。負極活物質粒子1は、平面部10を有する。平面部10は、複数のクラック20を含む。複数のクラック20は、き裂であってもよいし、凹部であってもよいし、溝であってもよい。複数のクラック20は、ランダムな方向に延在する。より具体的には、複数のクラック20は、平面部10の延在方向、及び/又は、負極活物質粒子1の表面から負極活物質粒子1の内部に向かう方向に延在してもよい。複数のクラック20は、負極活物質粒子1を貫通してもよいし、貫通しなくてもよい。複数のクラック20の、負極活物質粒子1の厚さ方向における距離を深さとした場合、複数のクラック20の深さは特に限定されない。複数のクラック20の深さは、負極活物質粒子1の厚さをTとした場合、Tでもよいし、3/4T以下でもよいし、1/2T以下でもよいし、1/3T以下でもよい。平面部10は、板状の負極活物質粒子1の1つの面の全てが凹凸の無い平坦な面であるという意味ではなく、負極活物質粒子1の1つの面の中で、一部でも複数のクラック20を含む平坦な部分があれば、そこを平面部10とする。つまり、負極活物質粒子1の1つの面の中に、複数のクラック20を含む平面部10と、それ以外の部分とが存在してもよい。それ以外の部分とはたとえば、凸部である。凸部は、微小な負極活物質粒子1が、他の負極活物質粒子1の表面に付着している場合や、製造過程で負極活物質粒子1の表面の一部が盛り上がることで形成される。なお、凸部が複数のクラック20を含んでもよい。また、負極活物質粒子1の周を形成する周部30が、複数のクラック20を有してもよい。
図2及び図3は、本実施形態の負極活物質粒子1の走査型電子顕微鏡を用いた二次電子像の画像(以下、SEM画像と称する)である。図2は、実施例の試験番号3の負極活物質粒子のSEM画像である。図3は、実施例の試験番号15の負極活物質粒子のSEM画像である。図2のSEM画像は、3000倍で観察して得られた画像である。図3のSEM画像は、5000倍で観察して得られた画像である。
図2及び図3を参照して、負極活物質粒子1は、板状であって、平面部10を有する。平面部10は、複数のクラック20を含む。複数のクラック20は、平面部10の延在方向、及び/又は、負極活物質粒子1の表面から負極活物質粒子1の内部に向かう方向に延在してもよい。複数のクラック20は、負極活物質粒子1を貫通してもよいし、貫通しなくてもよい。また、負極活物質粒子1の周を形成する周部30についても、複数のクラック20を有してもよい。
負極活物質粒子1が、板状であって、平面部10を有し、平面部10が複数のクラック20を含めば、金属イオンは、負極活物質粒子1の表面に加え、複数のクラック20から負極活物質粒子1の内部に侵入する。負極活物質粒子1はさらに、板状であるため、負極活物質粒子1の内部に到達するまでに、金属イオンが負極活物質粒子1内の結晶構造中を移動する距離が短い。そのため、金属イオンが、負極活物質粒子1の内部に到達しやすい。この場合、負極活物質粒子1の表層の体積膨脹の速度と、負極活物質粒子1の内部の体積膨脹の速度との差が小さくなる。そのため、体積膨脹の速度の差による、負極活物質粒子1内の応力を抑制できる。その結果、負極活物質粒子1の表層の新生面の生成が抑制される。新生面の生成が抑制されることにより、電解液の分解生成物による皮膜形成が抑制される。これにより、容量維持率が高まる。
[負極活物質粒子の化学組成]
負極活物質粒子は、原子組成百分率で、Sn:10~40at%を含有し、残部はCu及び不純物からなる。
Sn:10~40at%
スズ(Sn)は体積当たりの放電容量を高める。Sn含有量が10at%未満であれば、この効果が有効に得られない。Sn含有量が40at%超であれば、体積当たりの放電容量が低下する。したがって、Sn含有量は10~40at%である。Sn含有量の好ましい下限は13at%であり、さらに好ましくは18.5at%であり、さらに好ましくは21at%である。Sn含有量の好ましい上限は35at%であり、さらに好ましくは30at%である。
本実施形態の負極活物質粒子の残部は銅(Cu)及び不純物である。銅(Cu)は、体積当たり放電容量が高く、かつ、負極活物質粒子の電極抵抗を低下させる。また、Sn:10~40at%を含有し、残部はCu及び不純物からなる負極活物質粒子であれば、負極活物質粒子の放電容量を高めることができる。
[負極活物質粒子の好ましい成分(1)]
負極活物質粒子は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCからなる群から選択される1元素以上、原子組成百分率で10~40at%のSn、及び、残部はCu及び不純物からなる負極活物質粒子であってもよい。
負極活物質粒子がTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCからなる群から選択される1元素以上、原子組成百分率で10~40at%のSn、及び、残部はCu及び不純物からなる場合、好ましくは、負極活物質粒子は、Ti:9at%以下、V:49at%以下、Cr:49at%以下、Mn:9at%以下、Fe:49at%以下、Co:49at%以下、Ni:9at%以下、Zn:29at%以下、Al:49at%以下、Si:49at%以下、B:5at%以下、及び、C:5at%以下からなる群から選択される1元素以上、10~40at%のSn、及び、残部はCu及び不純物からなる。
Ti含有量の好ましい上限は、上記のとおり9at%である。Ti含有量のさらに好ましい上限は6at%であり、さらに好ましくは、5at%である。Ti含有量の好ましい下限は、0.1at%であり、さらに好ましくは、0.5at%であり、さらに好ましくは1at%である。Tiは、Cu及びSnによる、負極活物質粒子1の表面での電解液の過剰な分解反応を抑制し、電極の電極抵抗を低下させる。
V含有量の好ましい上限は、上記のとおり、49at%である。V含有量のさらに好ましい上限は30at%であり、さらに好ましくは15at%であり、さらに好ましくは10at%である。V含有量の好ましい下限は、0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは、1at%である。Vは、Cu及びSnによる、負極活物質粒子1の表面での電解液の過剰な分解反応を抑制し、電極の電極抵抗を低下させる。
Cr含有量の好ましい上限は、上記のとおり49at%である。Cr含有量のさらに好ましい上限は30at%であり、さらに好ましくは15at%であり、さらに好ましくは10at%である。Cr含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1at%である。Crは、Cu及びSnによる、負極活物質粒子1の表面での電解液の過剰な分解反応を抑制し、電極の電極抵抗を低下させる。
Mn含有量の好ましい上限は、上記のとおり9at%である。Mn含有量のさらに好ましい上限は6at%であり、さらに好ましくは5at%である。Mn含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1at%である。Mnは、Cu及びSnによる、負極活物質粒子の表面での電解液の過剰な分解反応を抑制し、電極の電極抵抗を低下させる。
Fe含有量の好ましい上限は、上記のとおり49at%である。Fe含有量のさらに好ましい上限は30at%であり、さらに好ましくは15at%であり、さらに好ましくは10at%である。Fe含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1at%である。Feは、Cu及びSnによる、負極活物質粒子1の表面での電解液の過剰な分解反応を抑制し、電極の電極抵抗を低下させる。
Co含有量の好ましい上限は、上記のとおり49at%である。Co含有量のさらに好ましい上限は30at%であり、さらに好ましくは15at%であり、さらに好ましくは10at%である。Co含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1at%である。Coは、Cu及びSnによる、負極活物質粒子1の表面での電解液の過剰な分解反応を抑制し、電極の電極抵抗を低下させる。
Ni含有量の好ましい上限は、上記のとおり9at%である。Ni含有量のさらに好ましい上限は5at%であり、さらに好ましくは2at%である。Ni含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1at%である。Niは、Cu及びSnによる、負極活物質粒子1の表面での電解液の過剰な分解反応を抑制し、電極の電極抵抗を低下させる。
Zn含有量の好ましい上限は、上記のとおり29at%である。Zn含有量のさらに好ましい上限は27at%であり、さらに好ましくは25at%である。Zn含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1at%である。Znは、Cu及びSnによる、負極活物質粒子1の表面での電解液の過剰な分解反応を抑制し、電極の電極抵抗を低下させる。
Al含有量の好ましい上限は、上記のとおり49at%である。Al含有量のさらに好ましい上限は30at%であり、さらに好ましくは15at%であり、さらに好ましくは10at%である。Al含有量の好ましい下限は0.1%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1at%である。Alは、Cu及びSnによる、負極活物質粒子1の表面での電解液の過剰な分解反応を抑制し、電極の電極抵抗を低下させる。
Si含有量の好ましい上限は、上記のとおり49at%である。Si含有量のさらに好ましい上限は30at%であり、さらに好ましくは15at%であり、さらに好ましくは10at%である。Si含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1at%である。Siは、体積当たりの放電容量を高めることができる。
B含有量の好ましい上限は5at%である。B含有量の好ましい下限は0.01at%であり、さらに好ましくは0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1at%である。Bは、Cu及びSnによる、負極活物質粒子1の表面での電解液の過剰な分解反応を抑制し、電極の電極抵抗を低下させる。
C含有量の好ましい上限は5at%である。C含有量の好ましい下限は0.01at%であり、さらに好ましくは0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1at%である。Cは、金属活物質の体積膨張率(金属イオン吸蔵時)を低減できる。
[負極活物質粒子の好ましい成分(2)]
負極活物質粒子は、放電容量を高めることを目的として、さらに第2族元素及び/又は希土類元素(REM)を含有してもよい。第2族元素はたとえば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等である。REMはたとえば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、及び、ネオジム(Nd)からなる群から選択される1元素以上である。
[負極活物質粒子の構成相]
負極活物質粒子1は、金属イオンを吸蔵及び/又は放出する。負極活物質粒子1は、構成相として、Strukturbericht表記でD0構造を有する相(以下、D0相という)、δ相、ε相、及び、η’相からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。これらの相は、金属イオンを吸蔵及び/又は放出する。これにより、負極活物質粒子1は、金属イオンを吸蔵及び/又は放出する。これらの相は、上述の化学組成を有する溶湯を、後述する急冷凝固工程で急冷することで得られる。
D0相は、金属イオンを吸蔵及び/又は放出する。D0相の結晶構造は、立方晶である。D0相の結晶構造は、空間群の分類上、Fm-3mに該当する。δ相は、金属イオンを吸蔵及び/又は放出する。δ相は、Cu-Sn2元系合金中では、Cu41Sn11の化学組成を有する。δ相の化学組成は、合金の組成によって変化してもよい。δ相の結晶構造は、立方晶である。δ相の結晶構造は、空間群の分類上、F-43mに該当する。ε相は、金属イオンを吸蔵及び/又は放出する。ε相は、Cu-Sn2元系合金中では、CuSnの化学組成を有する。ε相の化学組成は、合金の組成によって変化してもよい。ε相の結晶構造は、斜方晶である。ε相の結晶構造は、空間群の分類上、Pmmnに該当する。η’相は、金属イオンを吸蔵及び/又は放出する。η’相は、Cu-Sn2元系合金中では、CuSnの化学組成を有する。η’相の化学組成は、合金の組成によって変化してもよい。η’相の結晶構造は、単斜晶である。η’相の結晶構造は、空間群の分類上、C2/cに該当する。
[構成相の特定方法]
負極活物質粒子1の構成相は、次の方法で特定する。負極活物質粒子1に対してX線回折測定を行い、X線回折プロファイルを得る。X線回折プロファイルにおいて、回折角2θの42.0~44.0度の範囲に最大の回折積分強度を有する回折線ピークを有すれば、負極活物質粒子1が、上述の、D0相、δ相、ε相、及び、η’相からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを意味する。
X線回折測定の測定条件は次のとおりである。
X線管球:Cu-Kα1線
X線出力:45kV、200mA
入射側モノクロメータ:ヨハンソン素子(Cu-Kα2線及びCu-Kβ線をカット)
光学系:集中法
入射平行スリット:5.0度
入射スリット:1/2度
長手制限スリット:10.0mm
受光スリット1:8.0mm
受光スリット2:13.0mm
受光平行スリット:5.0度
ゴニオメータ:SmartLabゴニオメータ
X線源-ミラー間距離:90.0mm
X線源-選択スリット間距離:114.0mm
X線源-試料間距離:300.0mm
試料-受光スリット1間距離:187.0mm
試料-受光スリット2間距離:300.0mm
受光スリット1-受光スリット2間距離:113.0mm
試料-検出器間距離:331.0mm
検出器:D/Tex Ultra
測定範囲:10~120度
データ採取角度間隔:0.02度
スキャン方法:連続
スキャン速度:2.0度/分
負極活物質粒子が吸蔵及び/又は放出する金属イオンは、たとえば、リチウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びナトリウムイオンからなる群から選択される1種である。好ましい金属イオンは、リチウムイオンである。
[炭素質材]
本実施形態の負極活物質粒子は、炭素質材を含有してもよい。炭素質材はたとえば、黒鉛及びカーボンブラックからなる群から選択される1種以上であってもよい。黒鉛は、活物質として機能する。カーボンブラックは、導電助剤として機能する。カーボンブラックは、アセチレンブラック及びケッチェンブラックからなる群から選択される1種以上であってもよい。炭素質材の含有量は、特に限定されない。炭素質材の含有量は好ましくは、90体積%以下、さらに好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは60体積%以下、さらに好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下、さらに好ましくは10体積%以下である。
[負極活物質粒子のメジアン径]
本実施形態の負極活物質粒子のメジアン径(d50)は特に限定されない。負極活物質粒子のメジアン径(d50)が1.0μm以上であれば、負極活物質粒子の比表面積が大きくなりすぎるのを抑制できる。そのため、不可逆容量を効果的に抑えることができ、さらに、体積当たり放電容量がさらに向上する。負極活物質粒子のメジアン径(d50)が50.0μm以下であれば、平坦で薄い電極を製造しやすい。したがって、負極活物質粒子のメジアン径(d50)は好ましくは、1.0~50.0μmである。負極活物質粒子のメジアン径(d50)の下限は、さらに好ましくは1.5μmであり、さらに好ましくは2.0μmである。負極活物質粒子のメジアン径(d50)の上限は、さらに好ましくは40.0μmであり、さらに好ましくは20.0μmである。
[負極活物質粒子のメジアン径の測定方法]
金属活物質粒子のメジアン径(d50)はレーザー回折式粒度分布測定により求める。具体的には、JIS Z 8825(2013)に準拠して、レーザー回折/散乱式粒度分布計を用いて、レーザー回折散乱法により、負極活物質粒子のメジアン径(d50)を測定する。測定における分散媒は、アルキルグリコキシドを含む界面活性剤を0.1質量%添加した水とする。分散方法は超音波で5分とする。全ての負極活物質粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒径(レーザー回折散乱法による体積平均粒径)を、負極活物質粒子の平均粒径(メジアン径(d50))とする。
以上のとおり、本実施形態の負極活物質粒子は、原子組成百分率で、Sn:10~40at%を含有し、残部はCu及び不純物からなり、金属イオンを吸蔵及び/又は放出する。負極活物質粒子1は、板状であって、平面部10を有する。平面部10は、複数のクラック20を含む。これにより、本実施形態の負極活物質粒子1は、高い放電容量と、優れた容量維持率とを両立できる。
[負極]
本実施形態の負極は、活物質支持部材と、負極合剤層とを含有する。負極合剤層は、負極活物質粒子1と、負極活物質粒子1が内部に分散された結着剤とを含有する。
[負極合剤層]
負極合剤層は、上述の負極活物質粒子1と、結着剤とを含有する。
結着剤には、負極活物質粒子1が分散している。つまり、結着剤の内部には、複数の負極活物質粒子1が分散している。結着剤は周知の構成で足りる。結着剤はたとえば、非水溶性樹脂であって電池の電解質に使用される溶媒に不溶なもの、水溶性樹脂、及び、スチレンブタジエンラバー(SBR)からなる群から選択される1種以上からなる。非水溶性樹脂であって電池の電解質に使用される溶媒に不溶なものは、たとえば、ポリイミド(PI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及び、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択される1種以上である。水溶性樹脂はたとえば、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される1種以上からなる。
活物質支持部材は薄膜状又はプレート状の支持体である。活物質支持部材の表面に負極合剤層が形成される。活物質支持部材は金属からなる。活物質支持部材はたとえば、Cu、Ni、ステンレス等の周知の材料からなる。二次電池用途の負極の場合、好ましくは、活物質支持部材はCuからなる。Cuはリチウムと合金を形成しにくく、かつ、薄膜に形成しやすいためである。
負極合剤層は、負極合剤に水等の溶媒を加えた負極合剤スラリを活物質支持部材に塗布して乾燥することにより形成される。
負極に用いられる負極活物質粒子1は、スパチュラを用いて活物質支持部材の表面に付着している負極合剤層を削ることにより、取り出すことができる。取り出した負極活物質粒子1を、溶媒で洗浄して、負極活物質粒子1の表面に付着した結着剤等を除去する。洗浄後の負極活物質粒子1をSEM観察することにより、負極活物質粒子1が板状であって、平面部10を有し、平面部10が複数のクラック20を含むことを確認できる。
[電池]
本実施形態の電池は、二次電池である。本実施形態の電池は、上述の負極と、正極と、セパレータと、電解質とを備える。
本実施形態の電池の形状は、円筒形、角形であってもよいし、コイン型、シート型等でもよい。
正極は、周知の構成を有すれば足りる。好ましくは、正極は、金属イオンを含有する遷移金属化合物を活物質として含有する。さらに好ましくは、正極は、リチウム(Li)含有遷移金属化合物を活物質として含有する。Li含有遷移金属化合物はたとえば、LiM-xM’、及び/又は、LiMyM’Oである。ここで、式中、0≦x、y≦1であり、M及びM’はそれぞれ、バリウム(Ba)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)、スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)からなる群から選択される一種以上である。
本実施形態の電池は、上記構成を有する正極として、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物及びそのリチウム(Li)化合物、ニオブ酸化物及びそのリチウム化合物、有機導電性物質を用いた共役系ポリマー、シェプレル相化合物、活性炭、及び、活性炭素繊維等、といった他の周知の正極を備えてもよい。
電解質が電解液である場合、電解液は、一般に、支持電解質としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解させた電解液である。リチウム塩はたとえば、過塩素酸リチウム(LiClO)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、LiAsF、LiB(C)、LiCFSO、LiCHSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSO、LiCl、LiBr、及び、LiI等である。これらは、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。有機溶媒は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステル類が好ましい。ただし、カルボン酸エステル、エーテルをはじめとする他の各種の有機溶媒も使用可能である。これらの有機溶媒は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。電解質が固体電解質である場合、本実施形態の電池は、たとえば、ポリマー電池、全固体電池等である。
セパレータは、正極及び負極の間に設置される。セパレータは絶縁体としての役割を果たす。セパレータはさらに、電解質の保持にも大きく寄与する。セパレータは周知の構成で足りる。セパレータはたとえば、ポリオレフィン系材質であるポリプロピレン、ポリエチレン、又はその両者の混合物、もしくは、ガラスフィルターなどの多孔体である。
電池を分解して負極を取り出し、スパチュラを用いて負極を削ることにより、上述のとおり、負極活物質粒子1を取り出すことができる。取り出した負極活物質粒子1は、溶媒で洗浄した後にSEM観察することによって、板状であって、平面部10を有し、平面部10が複数のクラック20を含むことを確認できる。
[負極活物質粒子の製造方法]
本実施形態の負極活物質粒子1の製造方法の一例を説明する。なお、本実施形態の負極活物質粒子1の製造方法は、以下に説明する製造方法に限定されない。原子組成百分率で、Sn:10~40at%を含有し、残部はCu及び不純物からなり、金属イオンを吸蔵及び/又は放出し、さらに、板状であって、平面部10を有し、平面部10が複数のクラック20を含めば、本実施形態の負極活物質粒子1は、下記の製造方法以外の他の方法により製造されてもよい。
本実施形態の負極活物質粒子1の製造方法は、溶湯を準備する工程(準備工程)と、溶湯を急冷して合金を製造する工程(急冷凝固工程)と、合金を湿式のメディア攪拌型粉砕法により粉砕する工程(湿式粉砕工程)とを備える。
[準備工程]
準備工程では、上述の負極活物質粒子1の成分を有する溶湯を製造する。溶湯は、アーク溶解、抵抗加熱溶解等の周知の溶解方法により、原料を溶解して製造する。
[急冷凝固工程]
急冷凝固工程では、上記溶湯を用いて、合金を製造する。合金の製造方法はたとえば、インゴット鋳造法、ストリップキャスティング法、メルトスピン法、及び、アトマイズ法である。合金を急冷によって製造する場合は、生産効率を考慮してたとえば、図4に示す製造装置100を用いて金属薄帯600を製造する。図4は、負極活物質粒子1の製造装置100の模式図である。製造装置100は、冷却ロール200と、タンディッシュ300と、ブレード部材400とを備える。
冷却ロール200は、外周面を有し、回転しながら外周面上の溶湯500を冷却して凝固させる。冷却ロール200は、駆動源により冷却ロール200の中心軸周りに回転する。図4に示すRDは、冷却ロール200の回転方向である。金属薄帯600を製造する際、冷却ロール200は回転方向RDに回転する。これにより、図4では、冷却ロール200と接触した溶湯500が冷却ロール200の外周面上で一部凝固し、冷却ロール200の回転に伴い移動する。タンディッシュ300は、溶湯500を収納可能であり、冷却ロール200の外周面上に溶湯500を供給する。
ブレード部材400は、タンディッシュ300よりも冷却ロール200の回転方向下流に、冷却ロール200の外周面との間に隙間を設けて配置される。ブレード部材400は、タンディッシュ300とは別部材であり、タンディッシュ300から離れて、冷却ロール200の回転方向RDの下流に配置される。ブレード部材400は、冷却ロール200の外周面上の溶湯500の厚さを、冷却ロール200の外周面とブレード部材400との間の隙間の厚さに規制して、金属薄帯600を製造する。溶湯500の厚さをブレード部材400と冷却ロール200との隙間の厚さに制限し、かつ、溶湯500を冷却ロール200とブレード部材400とで冷却する。これにより、溶湯500が急冷され、金属薄帯600が製造される。
[湿式粉砕工程]
湿式粉砕工程では、金属薄帯600を湿式のメディア攪拌型粉砕法により粉砕する。メディア攪拌型粉砕法はたとえば、湿式ビーズミルによる粉砕である。従前、合金を粉砕して負極活物質粒子を製造する際には、乾式のメディア攪拌型粉砕法が採用されてきた。乾式のメディア攪拌型粉砕法とは、溶媒(有機溶媒、又は、水)を使用せず、合金と、メディア(ボール又はビーズ)とをタンク内に入れ撹拌することによって合金を粉砕する方法である。従来、乾式のメディア攪拌型粉砕法が採用されてきたのは、溶媒を用いる湿式と比較して、乾式の方が、合金に与えられる衝撃エネルギーが大きく、より効率的に合金を粉砕できると考えられてきたためである。しかしながら、本発明者らの検討の結果、乾式のメディア攪拌型粉砕法を採用した場合、上述の化学組成を有する合金は粉砕されるのみであり、複数のクラック20を含む平面部10を有する板状にはならなかった。これは、合金に与えられる衝撃エネルギーが高すぎるためと考えられる。
そこで、本実施形態では、合金、及び、メディア(ボール又はビーズ)に加えて溶媒(有機溶媒、又は、水)をタンク内に入れて撹拌することで合金を粉砕する、湿式のメディア攪拌型粉砕法を採用する。上述の化学組成を有する合金は、Cuを含む合金である。そのため、延性が高い。Cuを含む合金の場合、湿式のメディア攪拌型粉砕法の条件を制御することによって、単に粉砕するだけでなく、延伸できる。具体的には、湿式のメディア攪拌型粉砕法では、溶媒を用いる。そのため、撹拌中に、ボール又はビーズと合金が衝突する際に、ボール又はビーズと合金との間に溶媒が存在し、合金に与えられる衝撃エネルギーが、乾式と比較して小さくなる。Cuを含む合金の場合、衝撃エネルギーを適切な範囲で小さくすることで、粉砕するだけでなく、合金同士を融合させ、さらに、延伸できる。これにより、複数のクラック20を含む平面部10を有する板状の負極活物質粒子1を製造できる。
使用する装置はたとえば、横型ビーズミルである。横型ビーズミルはたとえば、日本コークス工業株式会社製、型式SC100である。横型ビーズミルのタンク内に、合金薄帯600と、溶媒と、ビーズとを入れる。溶媒は、有機溶媒及び水からなる群から選択される1種以上である。有機溶媒はたとえば、エタノール、イソプロピルアルコール、及び、ノルマルプロピルアルコールからなる群から選択される1種以上である。負極活物質粒子1の酸化を抑制するために、還元剤を含有させてもよい。還元剤はたとえば、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、無水一塩基リン酸ナトリウム及びその水和物からなる群から選択される1種以上である。粉砕に用いるメディア(ボール又はビーズ)はたとえば、ジルコニアボール、ジルコニアビーズ、及び、鉄球からなる群から選択されてもよい。ビーズミルの回転数はたとえば、1000~10000rpmである。ビーズミルの回転数は、回転子の直径と回転数とから計算される最外周周速に基づいて適宜設定すればよい。加工時間はたとえば、0.1~10時間である。
本実施形態では、湿式のメディア攪拌型粉砕法を採用し、さらに、粉砕に用いるメディア(以下、粉砕メディアと称する)及び合金の合計量に対する溶媒の混合比を制御することで、負極活物質粒子1を複数のクラック20を含む平面部10を有する板状にするための適切な衝撃エネルギーを合金に与える。これにより、Cuを含む合金を、粉砕するだけでなく、合金同士を融合させ、さらに、延伸する。これにより、負極活物質粒子1を、上述の形状にできる。
粉砕メディア及び合金の合計量に対する溶媒の混合比:粉砕メディア及び合金の合計(g):溶媒(g)=1:1.0~1:10.0
粉砕メディア及び合金の合計量1gに対する、溶媒の重量(g)を1.0~10.0gにする。溶媒は、粉砕メディアの衝撃エネルギーを緩和する。粉砕メディア及び合金の合計量1gに対する溶媒の重量(g)が1.0g未満であれば、粉砕メディア及び合金に対して溶媒が少なすぎる。この場合、衝撃エネルギーが高すぎて、合金が延伸せずに粉砕する。この場合、合金は、複数のクラック20を含む平面部10を有する板状にはならず、優れた容量維持率が得られない。一方、粉砕メディア及び合金の合計量1gに対する溶媒の重量(g)が10.0g超であれば、粉砕メディア及び合金の合計量に対して溶媒が多すぎる。この場合、衝撃エネルギーが小さすぎて、合金が延伸するのに必要な衝撃エネルギーが得られない。この場合、合金は、複数のクラック20を含む平面部10を有する板状にはならず、優れた容量維持率が得られない。
以上の製造工程により、負極活物質粒子1が製造される。
[負極の製造方法]
本実施形態の負極の製造方法の一例は次のとおりである。上述の負極活物質粒子1に結着剤を混合して、負極合剤を製造する。
負極合剤に水などの溶媒を加えて、負極合剤スラリを製造する。具体的には、負極合剤及び溶媒を混合した混合物を、必要に応じてホモジナイザ又はガラスビーズを用いて、十分に攪拌して、負極合剤スラリを製造する。この負極合剤スラリを活物質支持部材の表面上に塗布して乾燥して、活物質支持部材上に負極合剤層を形成する。さらに、必要に応じて、乾燥後の活物質支持部材及び負極合剤層に対してプレスを実施する。以上の工程により、負極を製造する。
[電池の製造方法]
周知の方法により、上述の負極と、セパレータと、正極とを積層した積層物を製造する。積層物をケースに収め、電池を製造する。
実施例により本実施形態の負極活物質粒子の効果をさらに具体的に説明する。以下の実施例での条件は、本実施形態の負極活物質粒子の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例である。したがって、本実施形態の負極活物質粒子は、この一条件例に限定されない。
[負極活物質粒子の製造]
[準備工程]
表1に示す組成の負極活物質粒子を準備した。具体的には、負極活物質粒子が表1中の「組成」に示す化学組成となるように、溶湯を製造した。たとえば、表1の「負極活物質粒子」欄の「組成(at%)」欄の「Cu-18Sn-17Si-1Ti」は、対応する試験番号の負極活物質粒子が合金からなり、原子組成百分率で、18at%のSnと、17at%のSiと、1at%のTiとを含有し、残部はCu及び不純物からなることを意味する。表1の「負極活物質粒子」欄の「組成(at%)」欄の「Cu-20Sn-8Si」は、対応する試験番号の負極活物質粒子が合金からなり、原子組成百分率で、20at%のSnと、8at%のSiとを含有し、残部はCu及び不純物からなることを意味する。
Figure 2022161719000002
[急冷凝固工程]
溶湯温度を1200℃に保持した。その後、1200℃の溶湯を、ストリップキャスティング法により急冷して、厚みが75μmの金属薄帯を鋳造した。ストリップキャスティングでは、図4に示す製造装置100を用いた。具体的には、水冷式の銅製の冷却ロール200を用いた。冷却ロール200の回転速度をロール表面の周速度で300m/分とした。アルゴン雰囲気中で上述の溶湯500を、水平型タンディッシュ300(アルミナ製)を介して、回転する冷却ロール200に供給した。溶湯500を回転する冷却ロール200の表面に載せ、冷却ロール200とブレード部材400との間に挟むことにより、溶湯500を急冷凝固した。ブレード部材400と冷却ロール200との隙間の幅は80μmであった。ブレード部材400はアルミナ製であった。
[粉砕工程]
得られた金属薄帯を粉砕した。粉砕工程では、粉砕条件を変えて、負極活物質粒子を製造した。表1中、「黒鉛」の欄には、粉砕工程で黒鉛を複合化させたか否かを示す。表1中、「乾式/湿式」の欄には、粉砕工程が乾式の粉砕工程であったか、湿式の粉砕工程であったかを示す。表1中、「還元剤(g)」の欄には、還元剤を使用した場合の使用量(g)が記載されている。表1中、「粉砕メディア+合金:溶媒」の欄には、粉砕工程で混合した、粉砕メディア(g)及び合金(g)の合計量と、溶媒(g)との比が記載されている。黒鉛を複合化させる場合、「粉砕メディア+合金:溶媒」の欄には、粉砕メディア(g)、合金(g)及び黒鉛(g)の合計量と、溶媒(g)との比が記載されている。
試験番号1~19では、湿式のメディア拡散粉砕を行った。具体的には、横型ビーズミル(日本コークス工業株式会社製、型式SC100)を用いた。メディアは、直径0.5mmの球形のジルコニアボールを用いた。溶媒は水又は有機溶媒を用いた。有機溶媒として、日本アルコール販売株式会社製、商品名ソルミックスAP-7(85.5質量%エタノール)と、イソプロピルアルコール(5.0質量%)と、ノルマルプロピルアルコール(9.6質量%)との混合物を用いた。還元剤を用いた場合は、リン酸ニ水素ナトリウムを使用した。溶媒3000g、粉砕メディア740g、合金300g(黒鉛「有」の場合は、合金285gと黒鉛15g)、及び、必要に応じて還元剤をタンク内に入れ、装置内の溶媒循環流量を約3L/分とし、回転数3000rpmで湿式の粉砕処理を行った。粉砕処理時間は、表1の「加工時間(hr)」の欄に記載のとおりであった。
試験番号20では、混合比を変えて湿式のメディア拡散粉砕を行った。試験番号20では、溶媒6240g、粉砕メディア740g、合金285g、黒鉛15g、及び、還元剤をタンクに入れ、粉砕処理を行った。試験番号20のその他の条件は、試験番号1~19と同じであった。
試験番号21では、混合比を変えて湿式のメディア拡散粉砕を行った。試験番号21では、溶媒9400g、粉砕メディア740g、合金285g、黒鉛15g、及び、還元剤をタンクに入れ、粉砕処理を行った。試験番号21のその他の条件は、試験番号1~19と同じであった。
試験番号22~26では、従来の乾式のメディア攪拌粉砕を行った。具体的には、高速遊星ミル(株式会社栗本鐵工所製、商品名ハイジーBX384E)を用いた。粉砕メディアは、直径4mmの球形のSUJ2(JIS軸受鋼)を用いた。雰囲気ガスとして窒素ガスを使用した。粉砕メディア600g、合金38g、及び、黒鉛2gをタンク内に入れ、回転数500rpmで乾式の粉砕処理を行った。
試験番号27では、湿式のメディア拡散粉砕を行った。具体的には、遊星ボールミル(栗本鐵工所社製、型式BX384E)を用いた。メディアは、直径0.8mmの球形のSUJ2(JIS軸受鋼)を用いた。溶媒は水を用いた。溶媒20g、粉砕メディア200g、合金47.5g、及び黒鉛2.5gをタンク内に入れ、回転数500rpmで2時間の湿式の粉砕処理を行った。
試験番号28では、溶媒15600g、粉砕メディア740g、合金285g、黒鉛15g、及び、還元剤をタンクに入れ、湿式のメディア拡散粉砕を行った。試験番号28のその他の条件は、試験番号1~19と同じであった。
試験番号29では、振動ロッドミルを用いた、従来の乾式の粉砕処理を行った。具体的には、振動ロッドミル(株式会社吉田製作所製、小型振動ロッドミル1045型)を用いた。用いたロッド(メディア)は1本であった。合金9.5g、及び、黒鉛0.5gをタンク内に入れ、振動数3600rpmで0.5時間乾式の粉砕処理を行った。
[メジアン径の測定試験]
得られた負極活物質粒子を目開き106μmのステンレス製の篩に通して、粗大な負極活物質粒子を除去した。各試験番号の活物質粒子のメジアン径(d50)を次の方法で測定した。メジアン径(d50)の測定には、JIS Z 8825(2013)に準拠したレーザー回折散乱法を採用した。測定における分散媒は、アルキルグリコキシドを含んだ界面活性剤を0.1質量%添加した水とした。分散方法は超音波で5分とした。全活物質粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒径(レーザー回折散乱法による体積平均粒径)を、負極活物質粒子のメジアン径(d50)と定義した。結果を表1に示す。
[形状の評価試験]
各試験番号の負極活物質粒子の形状をSEM観察によって評価した。具体的には、各試験番号の負極活物質粒子を、走査型電子顕微鏡(株式会社キーエンス製、VE9800)を用いて、3000~5000倍で観察した。観察の結果を、表1中「形状」の欄に示す。負極活物質粒子が、複数のクラックを含む平面部を有する板状であった場合には、「F(Formed)」と判定した。得られた負極活物質粒子が、複数のクラックを含む平面部を有する板状ではなかった場合には、「N(Not formed)」と判定した。試験番号3の負極活物質粒子のSEM画像を図2に示す。試験番号15の負極活物質粒子のSEM画像を図3に示す。試験番号24の負極活物質粒子のSEM画像を図5に示す。試験番号27の負極活物質粒子のSEM画像を図6に示す。
[構成相の特定]
各試験番号の負極活物質粒子の構成相を特定した。具体的には、各試験番号の負極活物質粒子に対して、次の条件でX線回折測定を行い、X線回折プロファイルを得た。
測定装置:株式会社リガク製SmartLab
X線管球:Cu-Kα1線
X線出力:45kV、200mA
入射側モノクロメータ:ヨハンソン素子(Cu-Kα2線及びCu-Kβ線をカット)
光学系:集中法
入射平行スリット:5.0度
入射スリット:1/2度
長手制限スリット:10.0mm
受光スリット1:8.0mm
受光スリット2:13.0mm
受光平行スリット:5.0度
ゴニオメータ:SmartLabゴニオメータ
X線源-ミラー間距離:90.0mm
X線源-選択スリット間距離:114.0mm
X線源-試料間距離:300.0mm
試料-受光スリット1間距離:187.0mm
試料-受光スリット2間距離:300.0mm
受光スリット1-受光スリット2間距離:113.0mm
試料-検出器間距離:331.0mm
検出器:D/Tex Ultra
測定範囲:10~120度
データ採取角度間隔:0.02度
スキャン方法:連続
スキャン速度:2.0度/分
いずれの試験番号の負極活物質粒子も、X線回折プロファイルにおいて、回折角2θの42.0~44.0度の範囲に最大の回折積分強度を有していた。
[電池(コインセル)の製造(放電容量測定用)]
上記で得られた負極活物質粒子を用いてコインセルを製造し、放電容量を評価した。より具体的には、次のとおり、上記で得られた負極活物質粒子を用いた負極、対極、電解液及びセパレータを用いて、コインセルを製造した。
[コインセル用の負極の製造]
各試験番号の負極活物質粒子を含有する負極合剤スラリを製造した。具体的には、負極活物質粒子と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダーとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)(2倍希釈液)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC:ダイセルファインケミカル社製の製品番号1160)とを、質量比97:1:1:1で混合した混合物を製造した。混練機を用いて、混合物に蒸留水を加えて、負極合剤スラリを製造した。
負極合剤スラリを、アプリケータ(75μm)を用いて17μm厚の電解銅箔上に薄く片面に塗布し、100℃で20分間乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の銅箔は、表面に負極合剤層からなる塗膜を有した。負極合剤層が形成された銅箔に対して打ち抜き加工を実施して、直径13mmの円板状の銅箔を製造した。打ち抜き加工後の銅箔を、プレス圧500kgf/cmで押圧して、板状の負極を製造した。
[コインセル用の対極(正極)]
正極には、Li金属箔を使用した。
[コインセル用の電解液]
電解液は、非水溶液を用いた。非水溶液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF):炭酸ジメチル(DMC):エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ビニレンカーボネート(VC):フルオロエチレンカーボネート(FEC)が16:48:23:4:1:8の質量比となる組成のものを使用した。
[コインセル用のセパレータ]
セパレータとしてポリオレフィン製セパレータ(φ19mm)を用いた。
[コインセルの製造]
準備された負極、正極、電解液及びセパレータを用いて、コイン型の非水試験セル(コインセル)を製造した。電解液が入ったステンレス製のコインセル用缶に、セパレータ、負極及び対極を配置し、コインセルとした。
なお、正極Liでの評価においては、本来、負極へのLiのドープは放電として扱われる。しかしながら、本実施例では負極材料を評価するため、以下ことわりのない「充電容量」はドープ側、「放電容量」とは脱ドープ側の容量を意味する。
[放電容量の評価試験]
各試験番号の電池の放電容量を、次の方法で評価した。放電容量の測定には、Electrofield製の充放電装置を用いた。なお、測定時の温度は室温(23℃)で測定した。対極に対して電位差0.005Vになるまで、0.15mAの電流値でコイン型非水試験セルに対して定電流充電を行った。その後、0.005Vを保持したまま、0.005mAになるまで、定電圧で対極に対して充電を続け、充電容量を測定した。次に、0.15mAの電流値で、電位差1.5Vになるまで放電を行い、放電容量(mAh/g)を測定した。結果を表1に示す。
[容量維持率の評価試験]
各試験番号の電池の容量維持率を、次の方法で評価した。上述の、放電容量の評価試験に続き、対極に対して電位差0.005Vになるまで、0.15mAの電流値でコイン型非水試験セルに対して定電流充電を行った。その後、0.005Vを保持したまま、0.005mAになるまで、定電圧で対極に対して充電を続けた。次に、0.15mAの電流値で、電位差1.5Vになるまで放電を行った。この充放電を50サイクル繰り返した。50サイクル経過後の放電容量を、初回の放電容量で除して、容量維持率(%)とした。結果を表1に示す。
[評価結果]
表1、図2及び図3を参照して、試験番号1~21の負極活物質粒子は、原子組成百分率で、Sn:10~40at%を含有し、残部はCu及び不純物からなり、金属イオンを吸蔵及び/又は放出し、さらに、複数のクラックを含む平面部を有する板状の粒子であった。その結果、試験番号1~21の負極活物質粒子を用いた電池の放電容量は240mAh/g以上となり、容量維持率は85.0%以上となった。したがって、試験番号1~21の負極活物質粒子は、高い放電容量と、優れた容量維持率とを両立できた。
一方、試験番号22~26の負極活物質粒子は、従来の乾式のメディア攪拌粉砕を実施した。そのため、化学組成は適切であるにもかかわらず、負極活物質粒子が粒状であり、複数のクラックを含む平面部を有する板状ではなかった。そのため、放電容量は240mAh/g以上であったものの、容量維持率が85.0%未満となった。したがって、試験番号22~26の負極活物質粒子は、高い放電容量と、優れた容量維持率とを両立できなかった。
試験番号27及び28の負極活物質粒子は、湿式のメディア攪拌型粉砕法を実施したものの、粉砕メディア及び合金と、溶媒との混合比が適切ではなかった。そのため、化学組成は適切であるにもかかわらず、負極活物質粒子が、複数のクラックを含む平面部を有する板状ではなかった。そのため、放電容量は240mAh/g以上であったものの、容量維持率が85.0%未満となった。したがって、試験番号27及び28の負極活物質粒子は、高い放電容量と、優れた容量維持率とを両立できなかった。
試験番号29の負極活物質粒子は、従来の乾式の振動ロッドミルにより合金を粉砕した。そのため、化学組成は適切であるにもかかわらず、負極活物質粒子が複数のクラックを含む平面部を有する板状ではなかった。そのため、放電容量は240mAh/g以上であったものの、容量維持率が85.0%未満となった。したがって、試験番号29の負極活物質粒子は、高い放電容量と、優れた容量維持率とを両立できなかった。
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
1 負極活物質粒子
10 平面部
20 クラック

Claims (5)

  1. 負極活物質粒子であって、
    原子組成百分率で、Sn:10~40at%を含有し、残部はCu及び不純物からなり、金属イオンを吸蔵及び/又は放出し、
    前記負極活物質粒子は板状であって、平面部を有し、
    前記平面部は複数のクラックを含む、
    負極活物質粒子。
  2. 請求項1に記載の負極活物質粒子であって、
    前記負極活物質粒子のレーザー回折式粒度分布測定で得られるメジアン径(d50)が、1.0~50.0μmである、
    負極活物質粒子。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の負極活物質粒子であって、
    Cuの一部にかえてさらに、
    原子組成百分率で、
    Ti:9at%以下、
    V:49at%以下、
    Cr:49at%以下、
    Mn:9at%以下、
    Fe:49at%以下、
    Co:49at%以下、
    Ni:9at%以下、
    Zn:29at%以下、
    Al:49at%以下、
    Si:49at%以下、
    B:5at%以下、及び、
    C:5at%以下、
    からなる群から選択される1種以上を含有する、
    負極活物質粒子。
  4. 負極であって、
    薄膜状又はプレート状の活物質支持部材と、
    前記活物質支持部材の表面に形成されている負極合剤層とを備え、
    前記負極合剤層は、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の負極活物質粒子と、
    前記負極活物質粒子が内部に分散された結着剤とを含む、
    負極。
  5. 請求項4に記載の負極と、
    正極と、
    セパレータと、
    電解質とを備える、
    電池。
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