JP5780018B2 - シラップ組成物、シラップ配合組成物および積層体 - Google Patents
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Description
上記のうち、不飽和ポリエステル系樹脂は、耐溶剤に優れるものの、耐候性に劣り、硬化時の収縮が大きく、低温施工性が悪い。エポキシ系樹脂は、耐アルカリ性に優れ、下地との密着性に優れるものの、耐候性に劣り、硬化時間が長く、低温での硬化性に劣る。ポリウレタン系樹脂は、弾力性、柔軟性に優れるものの、耐薬品性、耐候性に劣る。そこで最近では、低温硬化性、耐候性、耐薬品性に優れるビニルエステル系樹脂またはアクリル系樹脂、特にアクリル系樹脂がよく用いられるようになっている。
アクリル系樹脂を用いた被覆材料としては、単量体として特定の(メタ)アクリレートを含み、これに硬化剤、硬化促進剤、樹脂、ワックス等を配合したシラップ組成物が提案されている(特許文献1〜3)。かかるシラップ組成物は、硬化速度が速く、適度な可使時間を有し、低温硬化性と空気硬化性に優れることで、施工期間を短縮できるとされている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、基材の表面に鋼材が露出している場合でも、該表面に対して充分な接着性を有する塗膜が得られるシラップ組成物、該シラップ組成物を用いて得られるシラップ配合組成物および積層体を提供することを目的とする。
前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレート(a)を除く、1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(b)と、
前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレート(a)を除く、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(c)と、
ガラス転移温度が20〜155℃であるエポキシ系樹脂以外の樹脂(d)と、
ナフテン酸、オクチル酸及びアセトアセチル酸から選ばれる少なくとも1種の化合物と、コバルト、マンガン及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の多価金属との塩である多価金属石鹸(f)と、
を含むシラップ組成物である。
本発明の第二の態様は、土木建築用の基材に対して、前記第一の態様のシラップ組成物を塗工し、該シラップ組成物が硬化する前に無機基材を貼り付けて一体硬化させてなる積層体である。
本発明の第三の態様は、前記第一の態様のシラップ組成物に骨材(j)を配合して得られるシラップ配合組成物である。
本発明の第四の態様は、土木建築用の基材に対して、前記第三の態様のシラップ配合組成物を塗工し、該シラップ配合組成物が硬化する前に無機基材を貼り付けて一体硬化させてなる積層体である。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称である。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称であり、一般式CH2=C(R)−C(=O)−[Rは水素原子またはメチル基を示す。]で表される。
「シラップ」は、アクリル系樹脂と(メタ)アクリレート単量体とを含む組成物を示す。
本発明のシラップ組成物は、カルボキシ基含有(メタ)アクリレート(a)と、前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレート(a)を除く、1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(b)と、前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレート(a)を除く、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(c)と、ガラス転移温度が20〜155℃であるエポキシ系樹脂以外の樹脂(d)と、多価金属石鹸(f)と、を含む。
本発明のシラップ組成物は、前記単量体(b)として、水酸基と1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(b1)と、前記単量体(b1)を除く、1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(b2)と、を含むことが好ましい。
本発明のシラップ組成物は、さらに、三級アミン(g)を含むことが好ましい。
本発明のシラップ組成物は、さらに、必要に応じて、上記以外の他の成分を含んでもよい。該他の成分としては、特に限定されないが、好ましいものとして、有機過酸化物(e)、リン酸エステル系単量体(h)、エポキシ系樹脂(i)、ワックス(k)等が挙げられる。
以下、各成分について説明する。
カルボキシ基含有(メタ)アクリレート(a)(以下、単量体(a)ということがある。)は、1個の(メタ)アクリロイル基、および少なくとも1個のカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートである。
単量体(a)は、下地に対する接着性を付与する成分である。
前記酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラプロペニル無水コハク酸、オクテニルコハク酸等の脂肪族酸無水物;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の脂環式酸無水物;などが挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら酸無水物と水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応は、公知の方法によって実施出来る。
単量体(a)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(b)は、単量体(a)を除く、1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体である。
単量体(b1)は、単量体(b)の中で、水酸基を有する単量体である。
単量体(b1)は、下地に対する接着性を付与する成分である。
単量体(b1)としては、例えば、1個の(メタ)アクリロイル基、およびヒドロキシアルキル基を有する、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
単量体(b1)としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
単量体(b1)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(b2)は、単量体(b)の中で、単量体(b1)を除く単量体である。
単量体(b2)は、シラップ組成物の粘度、塗膜の機械的強度等の特性を調整する成分である。
(b2−1):分子量が130未満であり、かつ1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体。
(b2−2):分子量が130〜300であり、かつ1個の(メタ)アクリロイル基およびヘテロ環を有する単量体。
(b2−3):分子量が130〜300であり、かつ1個の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート。
(b2−4):分子量が130〜300であり、炭素数4〜15の長鎖アルキル基を有し、かつ1個の(メタ)アクリロイル基を有するアルキル(メタ)アクリレート。
(b2−5):分子量が130〜300であるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート。
(b2−6):分子量が130〜300であるフッ素原子含有(メタ)アクリレート。
(b2−7):分子量が130〜300である炭化水素環含有(メタ)アクリレート。
(b2−8):分子量が130〜300であり、かつ1個の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤。
(b2−9):分子量が300を超え、かつ1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体。
フラン環を有する(メタ)アクリレートとしては、フリル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロフラン環を有する(メタ)アクリレートとしては、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ピラン環を有する(メタ)アクリレートとしては、ピラニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロピラン環を有する(メタ)アクリレートとしては、ジヒドロピラニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、ジメチルジヒドロピラニル(メタ)アクリレート、ジメチルテトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルジヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルテトラヒドロピラニルメタクリレートが特に好ましい。
前記(b2−6)の分子量が130〜300であるフッ素原子含有(メタ)アクリレートとしては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
臭気を低減化させるときに使用する単量体としては、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルジヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルテトラヒドロピラニルメタクリレートが特に好ましい。
単量体(b2)の含有量は、(a)、(b)、(c)、(d)、(h)および(i)の合計100質量%中、40〜70質量%が好ましい。単量体(b2)の含有量が40質量%以上であれば、シラップ組成物の表面硬化性、塗膜の強度が向上できる。一方、単量体(b2)の含有量が70質量%以下であれば、塗膜が硬くてもろくなることを防止できる。
単量体(c)は、単量体(a)を除く、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能単量体である。
単量体(c)は、塗膜の機械的強度、耐摩耗性、耐薬品性等を向上させる。
単量体(c)の含有量は、(a)、(b)、(c)、(d)、(h)および(i)の合計100質量%のうち、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。単量体(c)の含有量を20質量%以下とすることによって、硬化するまでの時間が短くなりすぎず、作業性が良好となる。該含有量の下限は特に限定されず、0質量%超であればよい。塗膜の機械的強度、耐摩耗性、耐薬品性等の向上効果の点では0.5質量%以上が好ましい。
樹脂(d)は、ガラス転移温度(以下、「Tg」と記す。)が20〜155℃であるエポキシ系樹脂以外の樹脂である。
樹脂(d)は、シラップ組成物の粘度、硬化性を向上させる。
樹脂(d)のTgは、示差走査熱量計(DSC)の測定により求めたものである。
樹脂(d)としては、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体または共重合体、セルロースアセテートブチレート樹脂が好ましい。
樹脂(d)のMwは、樹脂を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」と記す。)により測定した分子量をポリスチレン換算したものである。
樹脂(d)の含有量は、(a)、(b)、(c)、(d)、(h)および(i)の合計100質量%のうち、5〜30質量%が好ましい。樹脂(d)の含有量が高すぎると、硬化時間を短縮できるが、シラップ組成物の可使時間(組成物が流動性を有し、塗装作業可能な時間)が短くなり、作業性が悪くなる。樹脂(d)の含有量が低すぎると、シラップ組成物の粘度バランスが崩れ、また、その硬化性が悪くなる。
樹脂(d)のMw×樹脂(d)の質量部<2,000,000
樹脂(d)が、樹脂(d1)、(d2)・・・の混合物である場合は、下式を用いる。
{樹脂(d1)のMw×樹脂(d1)の質量部}+{樹脂(d2)のMw×樹脂(d2)の質量部}+・・・<2,000,000
有機過酸化物(e)は重合開始剤の役割を果たす。
有機過酸化物(e)としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール;1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;などが挙げられる。
有機過酸化物(e)としては、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルが好ましい。
シラップ組成物中の有機過酸化物(e)の含有量は、シラップ組成物の可使時間が10〜90分となるように適宜調整することが好ましい。該範囲で有機過酸化物(e)をシラップ組成物に添加すれば、添加後すみやかに重合反応が開始され、シラップ組成物の硬化が進行する。
多価金属石鹸(f)は、硬化反応を促進させる重合促進剤である。
多価金属石鹸(f)としては、脂肪酸の多価金属塩が挙げられる。該多価金属塩としては、脂肪酸のコバルト、マンガン、ニッケル等の金属塩が挙げられる。本発明では、ナフテン酸、オクチル酸及びアセトアセチル酸から選ばれる少なくとも1種の化合物と、コバルト、マンガン及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の多価金属との塩であるものを選択する。具体的には、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、アセトアセチル酸コバルト、ナフテン酸マンガン、オクチル酸ニッケル等が挙げられる。
多価金属石鹸(f)としては、適度な可使時間および良好な硬化性を得ることが出来るなどの観点から、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトが好ましい。
多価金属石鹸(f)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、「多価金属石鹸(f)の含有量」とは、多価金属石鹸(f)に由来する多価金属の含有量のことである。
三級アミン(g)は、硬化反応を促進させる硬化促進剤である。
三級アミン(g)としては、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等が挙げられる。
芳香族三級アミンとしては、シラップ組成物の反応性、硬化性の点から、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジンが好ましい。
三級アミン(g)の含有量は、硬化性とポットライフ(作業性)とのバランス等の点から、(a)、(b)、(c)、(d)および(h)、(i)の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.2〜8質量部がより好ましく、0.3〜5質量部が特に好ましい。三級アミン(g)の含有量が0.2質量部以上であることによって、表面硬化性が良好となる。三級アミン(g)の含有量が8質量部以下であることによって適切な可使時間となる。
リン酸エステル系単量体(h)は、無機基材との接着性を向上させる成分である。従って、シラップ組成物がリン酸エステル系単量体(h)を含有すれば、コンクリートやアスファルト舗装に使用されている砕石等への接着を良好にできる。
リン酸エステル系単量体(h)としては、密着性や耐水性の観点から、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートが好ましい。
リン酸エステル系単量体(h)の含有量は、(a)、(b)、(c)、(d)、(h)および(i)の合計100質量%中、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。リン酸エステル系単量体(h)の含有量が0.01質量%以上であれば、無機基材への接着性が向上する。一方、リン酸エステル系単量体(h)の含有量が10質量%以下であれば、塗膜を硬化させたときに良好な硬化性を得ることが出来る。
エポキシ系樹脂(i)は、無機基材との接着性を向上させる成分である。従って、シラップ組成物がエポキシ系樹脂(i)を含有すれば、コンクリートやアスファルト舗装に使用されている砕石等への接着を良好にできる。
エポキシ系樹脂(i)としては、無機基材との接着性および硬化性の観点から、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ系樹脂(i)の含有量は、(a)、(b)、(c)、(d)、(h)および(i)の合計100質量%中、5〜20質量%が好ましい。エポキシ系樹脂(i)の含有量が5質量%以上であれば、シラップ組成物の粘度バランスが良好となるとともに、硬化性が向上し、硬化時間を短縮できる。一方、エポキシ系樹脂(i)の含有量が20質量%以下であれば、シラップ組成物の可使時間を充分に確保しつつ、硬化時間を短縮でき、作業性が良好となる。
ワックス(k)は、空気遮断作用を利用した表面硬化性向上等の作用を奏する。
ワックス(k)としては、固形ワックス類が挙げられる。固形ワックス類としては、パラフィン類、ポリエチレン類、高級脂肪酸類等が挙げられる。高級脂肪酸類としては、ステアリン酸等の炭素数10以上の脂肪酸が好ましい。
ワックス(k)としては、パラフィンワックスが好ましい。
パラフィンワックスの融点は、40〜80℃が好ましい。融点が40℃以上であることによって、シラップ組成物を塗装硬化させた際に充分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。融点が80℃以下であることによって、シラップ組成物を製造する際、単量体(a)、(b)、(c)への溶解性が良好となる。
パラフィンワックスは、融点の異なる2種以上を併用することが好ましい。融点の異なる2種以上のパラフィンワックスを併用することによって、シラップ組成物を塗装硬化させるときに、下地温度が変わったときであっても、充分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。併用する際には、融点の差が5℃〜20℃程度のものを併用することが好ましい。
分散状態のワックス(k)は、有機溶剤を全く含有せずに、単量体(a)、(b1)、(b2)、(c)の何れかにワックス(k)が分散しているものであってもよい。
本発明のシラップ組成物には、塗膜の柔軟化および硬化時の収縮の低減を図るために、可塑剤を添加してもよい。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル類、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、オクチルアゼレート等のアゼラインエステル類等の2塩基性脂肪酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類(ただし前記ワックス(k)を除く)が挙げられる。
可塑剤の添加量は、(a)、(b)、(c)、(d)および(h)、(i)の合計100質量部に対して、20質量部以下が好ましい。可塑剤の添加量を20質量部以下にすると、シラップ組成物の硬化性が良好となり、また、塗膜の表面に可塑剤が滲出することもない。
本発明のシラップ組成物には、基材に対する接着性の安定化、接着強度の耐久性を付与する目的で、シランカップリング剤(ただし前記単量体(b2)を除く)を添加してもよい。
シランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の分子内にエポキシ基を有するシランカップリング剤、分子内にアミノを有するシランカップリング剤、分子内にウレイド有するシランカップリング剤、分子内にメルカプト有するシランカップリング剤、分子内にスルフィド有するシランカップリング剤、分子内にイソシアネート有するシランカップリング剤等が挙げられる。
シランカップリング剤の添加量は、(a)、(b)、(c)、(d)、(h)および(i)の合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、硬化性、コストの点から、5質量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の添加量を10質量部以下にすることによって、シラップ組成物の基材への接着性の安定化を保持しつつ、表面硬化性が良好となる。
本発明のシラップ組成物には、貯蔵安定性の向上、重合反応の調整の目的で、重合禁止剤を添加してもよい。
重合禁止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール等が挙げられる。
本発明のシラップ組成物には、表面硬化性の向上を図るために、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを添加してもよい。
該オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
本発明のシラップ組成物には、必要に応じて、ベンゾトリアゾール誘導体等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、アエロジル等のチクソトロピック性付与剤、炭酸カルシウム等の耐湿顔料、酸化クロム、ベンガラ等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料を添加してもよい。
A剤:少なくとも三級アミン(g)を含む液。
B剤:少なくとも単量体(a)、単量体(b1)および多価金属石鹸(f)を含む液。
ただし、単量体(b2)、単量体(c)および樹脂(d)はそれぞれ、前記A剤および前記B剤のいずれか一方または両方に含まれる。
単量体(b2)は、A剤、B剤のいずれに添加してもよく、樹脂(d)を溶解または分散させる点で、少なくともB剤に添加することが好ましい。
単量体(c)は、A剤、B剤のいずれに添加してもよい。
樹脂(d)は、A剤、B剤のいずれに添加してもよく、作業性や混合性の点で、少なくともB剤に添加することが好ましい。
本発明のシラップ組成物が有機過酸化物(e)を含む場合、有機過酸化物(e)は、多価金属石鹸(f)により、分解してラジカルが発生し、単量体(a)、(b1)、(b2)、(c)が重合反応を起こすので、有機過酸化物(e)はA剤のみに添加し、B剤には添加しないことが好ましい。
B剤としては、少なくとも単量体(a)、単量体(b1)、樹脂(d)、多価金属石鹸(f)を含むものが好ましい。
又、A剤とB剤に例えばトルエンやアセトンなどの溶剤が多く含まれると、硬化物が柔らかくなったり、溶剤が抜けた後の硬化物が脆くなったりすることがある。添加剤等に由来する少量の溶剤が含まれることは問題ないが、粘度調整等の目的で多量の溶剤を配合することは好ましくない。
また、(a)を含むことにより、構造物などの表面に鋼材が露出している場合でも、鋼材を含めた表面に該シラップ組成物を積層するときに充分な接着性が得られる。そのため、鋼材の表面をブラスト処理等の目粗処理無しに積層させることが出来る。該効果は、さらに(h)および/または(i)を含む場合に特に優れている。
骨材(j)は、本発明のシラップ組成物に配合してシラップ配合組成物を得るための成分である。骨材(j)としては、平均粒子径が1μm以上であり、吸油量が25ccアマニ油/100g以下のものが好ましい。該骨材としては、結晶シリカ粉、溶融シリカ粉、球状シリカ粉およびヒュームドシリカ等のシリカ粉、珪砂、カーボンブラック、フォラストナイト、クレー、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、ベントナイト、マイカ、ニッケルスラグ、水酸化アルミニウム、球状のものを含むアルミナ粉、ステンレス粉、炭化珪素粉、窒化珪素粉、窒化硼素粉、タルク粉、炭酸カルシウム粉、ガラスビーズ、シラスバルーン、アルミニウム粉、並びに、チタン粉、石英砂、これらを着色または焼成したもの、石英粉等の岩石粉;セラミックを焼成、粉砕したもの;炭酸カルシウム、アルミナ、ガラスビーズ等の無機充填材等が挙げられる。骨材は、塗工作業性、セルフレベリング性の点から、粒子径の異なる骨材を組み合わせたものが好ましい。
骨材(j)の配合量は、他の成分との混合性、塗工性、硬化性、塗膜の物性等の点から、シラップ組成物100質量部に対して、30〜700質量部が好ましい。
骨材(j)は、シラップ組成物の調製時に配合してもよく、調製後に配合してもよい。
本発明のシラップ組成物および該シラップ組成物に骨材(j)を配合したシラップ配合組成物は、それぞれ、建築物や構造物を構成する土木建築用の基材の表面(床面、壁面、道路の舗装面等)への被覆材として用いることができる。
土木建築用の基材の材質としては、コンクリート、アスファルト、鋼材、既設の樹脂系塗り床材等が挙げられる。本発明のシラップ組成物は、該土木建築用の基材がコンクリートおよび/または鋼材から構成されるものである場合に特に有用である。
塗工方法としては、ローラー、金ゴテ、刷毛、自在ボウキ、塗装機(スプレー塗装機等)等を用いる公知の塗工方法が挙げられる。
例えば床面、壁面、道路の舗装面等の施工面に、シラップ組成物を塗工して上塗り層(トップコート)を形成することができる。施工面に下塗り層と上塗り層(トップコート)とを形成する場合、少なくとも一方の層としてシラップ組成物を塗工することができる。下塗り層にはシラップ組成物に骨材(j)を配合したシラップ配合組成物を塗工することもできる。施工面に下塗り層、中塗り層および上塗り層(トップコート)を形成する場合、少なくとも一つの層としてシラップ組成物を塗工することができる。中塗り層にはシラップ組成物に骨材(j)を配合したシラップ配合組成物を塗工することもできる。
下塗り層と中塗り層との間、中塗り層と上塗り層との間には、他の層が設けられていてもよい。
本発明の積層体は、土木建築用の基材に対して、本発明のシラップ組成物又はシラップ配合組成物を塗工し、該シラップ組成物又は該シラップ配合組成物が硬化する前に無機基材を貼り付けて一体硬化させてなるものである。
土木建築用の基材としては、前記使用方法の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
無機基材としては、コンクリート、モルタル等が挙げられる。
本発明の積層体においては、本発明のシラップ組成物およびシラップ配合組成物の接着性が優れることから、土木建築用の基材がコンクリートおよび/または鋼材から構成されるものであり、貼り付ける無機基材がコンクリート成型品であることが好ましい。
無機基材を貼り付けるタイミングは、シラップ組成物またはシラップ配合組成物を塗工した後、完全に硬化するまでの間であればよいが、流動性を有している間が好ましい。
実施例中の「部」はすべて「質量部」を、湿度以外の「%」はすべて「質量%」を示す。
<組成物(S−1)の調製>
攪拌機、温度計、冷却管付きの1Lフラスコに、単量体(a)としてコハク酸2−アクリロイルオキシエチル(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルA−SA)(以下「NKエステルA−SA」と略す)5部と、単量体(b1)として2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下「2−HEMA」と略す)20.0部と、単量体(b2)としてテトラヒドロフルフリルメタクリレート(以下「THFMA」と略す)44.0部と、2−エチルヘキシルアクリレート(以下「2−EHA」と略す)10.0部と、単量体(c)としてBPE−4(製品名ニューフロンティアBPE−4、第一工業製薬社製、以下「BPE−4」と略す。)10.0部と、重合禁止剤としてメチルヒドロキノン(以下「MHQ」と略す)0.014部と、ワックス(k)としてパラフィン−115(日本精鑞株式会社製、パラフィンワックス(以下「パラフィン−115」と略す))0.4部、パラフィン−130(日本精鑞株式会社製、パラフィンワックス(以下「パラフィン−130」と略す))0.3部、およびパラフィン−150(日本精鑞株式会社製、パラフィンワックス(以下「パラフィン−150」と略す))0.2部と、消泡剤(楠本化成株式会社製、商品名:ディスパロン230EF(以下「230EF」と略す))1.0部と、三級アミン(g)としてN,N−ジメチル−p−トルイジン(以下「DMPT」と略す)1.0部を投入した後、攪拌しながら、樹脂(d)としてメチルメタクリレート(以下「MMA」と略す)/n−ブチルメタクリレート(以下「n−BMA」と略す)=40/60(質量比)の共重合体(Tg=49℃、Mw=60,000、以下「ポリマー1」と略す)11.0部、を投入した。引き続き、60℃で2時間加熱して、溶解した。溶解を確認後、30℃以下に冷却し、ナフテン酸コバルト溶液(日本化学産業株式会社製、商品名:ナフテン酸コバルト(6%)、以下「ナフテン酸コバルト溶液」と略す)4.12部を加え、1時間撹拌した後に組成物(S−1)を得た。
得られた組成物(S−1)の配合組成を表1に示す。
表1に記載の配合組成にすること以外は、組成物(S−1)の調製と同様にして組成物(S−2)〜(S−10)を得た。
上記のうち、組成物(S−5)の調製において、リン酸エステル系単量体(h)は、単量体(a)、(b1)、(b2)、(c)と同じタイミングでフラスコに投入した。
また、組成物(S−6)の調製において、エポキシ系樹脂(i)は、樹脂(d)と同じタイミングでフラスコに投入した。
なお、表1中、多価金属石鹸(f)の配合量(部)は、ナフテン酸コバルト溶液としての量である。
・NKエステルA−SA:コハク酸2−アクリロイルオキシエチル(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A−SA)。
・アクリエステルHH:ヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル(三菱レイヨン株式会社製、商品名:アクリエステルHH)。
・2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート。
・2−HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート。
・THFMA:テトラヒドロフルフリルメタクリレート。
・2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(三菱化学株式会社製)。
・アロニックスM−120:2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックスM−120)。
・SLMA:アルキル基の炭素数12〜13のアルキルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製、商品名:アクリエステルSL)。
・PME−100:ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(日油製、商品名:ブレンマーPME−100)。
・MMA:メチルメタクリレート。
・KBM−503:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名:KBM−503)。
・3ED:トリエチレングリコールジメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製、商品名:アクリエステル3ED)。
・BD:1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製、商品名:アクリエステルBD)。
・BPE−4:ビスフェノール型ジアクリレート(第一工業製薬株式会社製、商品名;ニューフロンティアBPE−4)。
・ポリマー2:MMA/n−BMA=80/20の共重合体(Tg=82℃、Mw=80,000)。
・ポリマー3:MMA=100の重合体(Tg=105℃、Mw=40,000)。
・ポリマー4:MMA/n−BMA=60/40の共重合体(Tg=64℃、Mw=40,000)。
・JPA−514:2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、商品名:JPA−514)。
・フレップ60:ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(東レ・ファインケミカル株式会社製、商品名:フレップ60)。
・P−115:パラフィンワックス(日本精鑞株式会社製、商品名:パラフィン115)。
・P−130:パラフィンワックス(日本精鑞株式会社製、商品名:パラフィン130)。
・P−150:パラフィンワックス(日本精鑞株式会社製、商品名:パラフィン150)。
・ナフテン酸コバルト溶液:ナフテン酸コバルトのミネラルスピリット溶液(日本化学産業株式会社製、商品名:ナフテン酸コバルト(6%))、ナフテン酸コバルトに由来するコバルトの含有量:6%。
・DMPT:N,N−ジメチル−p−トルイジン。
・DIPT:N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン。
・LF−1985:消泡剤(楠本化成株式会社製、商品名:ディスパロンLF−1985)。
・ディスパロン230EF:消泡剤(楠本化成株式会社製、商品名:ディスパロン230EF)。
・KBM−403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名:KBM−403)。
・BHT:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフエノール。
・MHQ:メチルヒドロキノン。
・HQ:ヒドロキノン。
<シラップ配合組成物(T−1)の調製>
ポリプロピレン製の1Lの容器に、表1に記載の組成物(S−3)100部を投入し、撹拌しながら骨材として硅砂8号(株式会社菱晃製、商品名:KZ−008(以下「KZ−008」と略す。)50部を投入した。引き続き、室温23℃の部屋でホモディスパーを使用して、毎分1,000回転で5分間撹拌し、珪砂8号が均一に分散した事を確認し、シラップ配合組成物(T−1)を得た。
得られたシラップ配合組成物組成(T−1)の配合組成を表2に示す。
表2に記載のシラップ配合組成物にする以外は、シラップ配合組成物(T−1)の調製と同様にしてシラップ配合組成物(T−2)〜(T−4)を得た。
・KZ−008:平均粒径75μmの硅砂((株)菱晃製、商品名:KZ−008)。
・SL−700:平均粒径4.5μmの炭酸カルシウム(竹原化学工業(株)製、商品名:重質炭酸カルシウムSL−700)。
・G−100:平均粒径65μmの炭酸カルシウム(三共精粉(株)製、砂状炭カルG−100)。
組成物(S−1)を用いて以下のようにしてシラップ組成物を製造し、以下の測定、評価を行った。結果を表3に示す。
なお、粘度の測定においては、シラップ組成物の製造に用いた組成物(S−1)の粘度を測定し、これをシラップ組成物の粘度とした。
組成物(S−1)を23℃の恒温水槽中で2時間放置した後、JIS K 6901に記載のブルックフィールド型粘度計における、タイプ1のBM型粘度計を用いて、組成物(S−1)の粘度を測定した。
組成物(S−1)を23℃の恒温水槽中にて2時間放置した後、組成物(S−1)の100部に対して、有機過酸化物(e)としてクメンハイドロパーオキサイド(化薬アクゾ株式会社製、商品名:カヤクメンH(以下「カヤクメンH」と略す))を2部加え、十分に撹拌してシラップ組成物を得た。
得られたシラップ組成物を内径10mmの試験管(長さ12cm)の下部より7cmの位置まで投入した。ついで、再度、23℃の恒温水槽中に試験管を投入し、その中心部に熱電対を投入し、重合発熱による温度変化を記録した。このとき、有機過酸化物を加えてから最大発熱温度に到達するまでに要した時間を硬化時間(分)とした。
組成物(S−1)の100部に対して、有機過酸化物(e)としてカヤクメンHを2部加えてシラップ組成物を得た。
得られたシラップ組成物と、基材(JISモルタル板、30cm×30cm×厚さ6cm)とを、温度23℃、相対湿度50%の環境可変室(3m×7m×高さ3m)内に4時間以上放置して環境可変室の温度に慣らした。その後、該環境可変室内にて基材の表面に、シラップ組成物を約1kg/m2の塗布量で塗装し、この塗装作業中に5名の人間が立ち会い、塗膜表面から50cm離れた位置での臭気を確認し、その結果を下記評価基準に基づき評価した。
○:5人とも臭わなかった。
△:1〜4人が臭った
×:5人とも臭った。
JISコンクリート板(JIS−A5371(プレキャスト無筋コンクリート製品)に規定、30cm×30cm×厚さ6cm)の表面をJIS−R6252「研磨紙」に規定される150番研磨紙により充分に研磨し、これを基材とした。
ついで、組成物(S−1)の100部に対して、有機過酸化物(e)としてカヤクメンHを2部加えて、撹拌、混合し、シラップ組成物を得た。
得られたシラップ組成物を塗膜の厚さが1mmになるように、上記基材上にヘラで塗装して塗膜を形成した。得られた塗膜の表面の硬化性を指触にて確認し、下記評価基準に基づき評価した。
○:23℃の条件下において経過時間2時間未満でタックなし。
△:23℃の条件下において経過時間2〜4時間でタックなし。
×:23℃の条件下において4時間経過してもタックあり。
JISコンクリート板をSS−400鋼板(JIS−G3101(一般構造用圧延鋼材)、30cm×30cm×厚さ3mm)に変更した以外は前記硬化性の評価と同様にして、基材上にシラップ組成物を塗装して、基材上に塗膜が形成された試験片を得た。
得られた試験片を23℃の環境下で7日間放置した。その後、塗り床材の付着強さ試験方法(日本塗り床工業会試験方法、NNK−005(2006)、塗り床ハンドブック掲載)に基づき、試験片の塗膜表面に、付着面が40mm×40mmの正方形の鋼製治具を、接着剤を用いて貼り付け、塗り床材の付着強さ試験方法に基づき23℃にて試験を実施し接着性の評価を行った。接着剤としてはアロンアルファEXTRA2020(商品名、東亞合成(株)製)を用いた。接着性の評価は下記基準に基づいて行った。
cn:コンクリートの凝集破壊。
s−k:鋼板とシラップ組成物硬化物(シラップ配合組成物硬化物)の層間破壊。
s:シラップ組成物硬化物(シラップ配合組成物硬化物)の凝集破壊。
接着性は、「cn:コンクリートの凝集破壊」や「s:シラップ組成物硬化物(シラップ配合組成物硬化物)の凝集破壊」が良好で、「s−k:鋼板とシラップ組成物硬化物(シラップ配合組成物硬化物)の層間破壊」を不良とした。
組成物(S−1)を組成物(S−2)〜(S−10)に変更し、有機過酸化物(e)の種類および配合量を表2に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にしてシラップ組成物を製造し、各種測定、評価を行った。結果を表3に示す。
・カヤクメンH:クメンハイドロパーオキサイド(化薬アクゾ株式会社製、商品名:カヤクメンH)。
・パーカドックスCH−50L:ベンゾイルパーオキサイド50%品(化薬アクゾ株式会社製、商品名:パーカドックスCH−50L)。
一方、単量体(a)を含まない比較例1のシラップ組成物や多価金属石鹸(f)を含まない比較例2のシラップ組成物から形成された塗膜は、鋼板基材に対する接着性が悪かった。
組成物(S−1)をシラップ配合組成物(T−1)〜(T−4)に変更した以外は、実施例1と同様にしてシラップ組成物を調製し、各種測定、評価を行った。結果を表4に示す。
<組成物(S−11A、S−11B)の調製>
組成物(S−11A)と組成物(S−11B)を以下の手順で調製した。これらの組成物は、組成物(S−11A)52部と組成物(S−11B)52部の2つの組成物を配合して1液にしたときに、組成物(S−1)100部に対して、有機過酸化物(e)を4部加えた配合になるように、組成物の配合組成を変更したものである。
表5に記載の配合組成にすること以外は、組成物(S−11A)および組成物(S−11B)の調製と同様にして組成物(S−12A)と組成物(S−12B)を得た。
<シラップ配合組成物(T−5A)の調整>
ポリプロピレン製の1Lの容器に、表5に記載の組成物(S−11A)を100部投入し、撹拌しながらG−100を50部投入した。引き続き、室温23℃の部屋でホモディスパーを使用して、毎分1,000回転で5分間撹拌し、G−100が均一に分散した事を確認し、シラップ配合組成物(T−5A)を得た。得られたシラップ配合組成物(T−5A)の配合組成を表6に示す。
組成物(S−11A)を組成物(S−11B)、(S−12A)または(S−12B)に変更した以外は、シラップ配合組成物(T−5A)の調整と同様にしてシラップ配合組成物(T−5B)、(T−6A)、(T−6B)を得た。各シラップ配合組成物の配合組成を表6に示す。
表7に示す種類と配合量のA剤とB剤を混合してシラップ組成物を調製した。得られたシラップ組成物について、実施例1と同様に、各種測定、評価を行った。結果を表7に示す。
組成物(S−11A)および組成物(S−11B)を用い、以下の手順でシラップ組成物の調製、測定、評価を行った。配合比率および結果を表8に示す。
組成物(S−11A)50部と組成物(S−11B)50部を雰囲気温度5℃の恒温槽中にて2時間放置した後、混合し、得られた組成物100部に対して、有機過酸化物(e)としてパーカドックスCH−50Lを1部加え、十分に撹拌してシラップ組成物を得た。
得られたシラップ組成物を内径10mmの試験管(長さ12cm)の下部より7cmの位置まで投入した。ついで、再度、雰囲気温度5℃の恒温槽中に試験管を投入し、その中心部に熱電対を投入し、重合発熱による温度変化を記録した。このとき、有機過酸化物(e)を加えてから最大発熱温度に到達するまでに要した時間を硬化時間(分)とした。
JISコンクリート板(JIS−A5371(プレキャスト無筋コンクリート製品)に規定、30cm×30cm×厚さ6cm)の表面をJIS−R6252「研磨紙」に規定される150番研磨紙により充分に研磨し、これを基材とした。この基材と、組成物(S−11A)50部と組成物(S−11B)50部を予め、雰囲気温度5℃の恒温槽中にて24時間放置した。
ついで、組成物(S−11A)50部と組成物(S−11B)50部を混合し、得られた組成物100部に対して、有機過酸化物(e)としてパーカドックスCH−50Lを1部加え、十分に撹拌してシラップ組成物を得た。
得られたシラップ組成物を塗膜の厚さが1mmになるように、上記基材上にヘラで塗装して塗膜を形成した。得られた塗膜の表面の硬化性を指触にて確認し、下記評価基準に基づき評価した。
○:経過時間2時間未満でタックなし。
△:経過時間2〜4時間でタックなし。
×:4時間経過してもタックあり。
JISコンクリート板をSS−400鋼板(JIS−G3101(一般構造用圧延鋼材)、30cm×30cm×厚さ3mm)に変更した以外は前記硬化性の評価と同様にして、基材上にシラップ組成物を塗装して、基材上に塗膜が形成された試験片を得た。
得られた試験片を23℃の環境下で7日間放置した。その後、塗り床材の付着強さ試験方法(日本塗り床工業会試験方法、NNK−005(2006)、塗り床ハンドブック掲載)に基づき、試験片の塗膜表面に、付着面が40mm×40mmの正方形の鋼製治具を、接着剤を用いて貼り付け、塗り床材の付着強さ試験方法に基づき23℃にて試験を実施し接着性の評価を行った。接着剤としてはアロンアルファEXTRA2020(商品名、東亞合成(株)製)を用いた。接着性の評価は下記基準に基づいて行った。
cn:コンクリートの凝集破壊。
s−k:鋼板とシラップ組成物硬化物(シラップ配合組成物硬化物)の層間破壊。
s:シラップ組成物硬化物(シラップ配合組成物硬化物)の凝集破壊。
接着性は、「cn:コンクリートの凝集破壊」や「s:シラップ組成物硬化物(シラップ配合組成物の硬化物)の凝集破壊」が良好で、「s−k:鋼板とシラップ組成物硬化物(シラップ配合組成物の硬化物)の層間破壊」を不良とした。
組成物(S−11A)と組成物(S−11B)を、組成物(T−5A)と組成物(T−5B)に変更し、配合量を表8に示す量に変更した以外は、実施例17と同様にしてシラップ配合組成物を製造し、各種測定、評価を行った。結果を表8に示す。
Claims (12)
- カルボキシ基含有(メタ)アクリレート(a)と、
前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレート(a)を除く、1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(b)と、
前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレート(a)を除く、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(c)と、
ガラス転移温度が20〜155℃であるエポキシ系樹脂以外の樹脂(d)と、
ナフテン酸、オクチル酸及びアセトアセチル酸から選ばれる少なくとも1種の化合物と、コバルト、マンガン及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の多価金属との塩である多価金属石鹸(f)と、
を含むシラップ組成物。 - 前記単量体(b)として、
水酸基と1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(b1)と、
前記単量体(b1)を除く、1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(b2)と、
を含む請求項1記載のシラップ組成物。 - さらに、三級アミン(g)を含む請求項1又は2記載のシラップ組成物。
- 下記のA剤とB剤とを混合して得られたものである、請求項3記載のシラップ組成物。
A剤:少なくとも前記三級アミン(g)を含む液。
B剤:少なくとも前記カルボン酸含有(メタ)アクリレート(a)、前記単量体(b1)および前記多価金属石鹸(f)を含む液。
ただし、前記単量体(b2)、前記単量体(c)および前記樹脂(d)はそれぞれ、前記A剤および前記B剤のいずれか一方または両方に含まれる。 - さらに有機過酸化物(e)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシラップ組成物。
- 前記A剤がさらに有機過酸化物(e)を含む、請求項4記載のシラップ組成物。
- さらにリン酸エステル系単量体(h)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシラップ組成物。
- さらにエポキシ系樹脂(i)を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシラップ組成物。
- 土木建築用の基材に対して、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシラップ組成物を塗工し、該シラップ組成物が硬化する前に無機基材を貼り付けて一体硬化させてなる積層体。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のシラップ組成物に骨材(j)を配合して得られるシラップ配合組成物。
- 土木建築用の基材に対して、請求項10に記載のシラップ配合組成物を塗工し、該シラップ配合組成物が硬化する前に無機基材を貼り付けて一体硬化させてなる積層体。
- 前記土木建築用の基材がコンクリートおよび/または鋼材から構成されるものであり、前記無機基材がコンクリート成型品である、請求項9または11に記載の積層体。
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