JP4444697B2 - ラジカル硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、ラジカル硬化性樹脂組成物に関する。より詳しくは、作業時の臭気を軽減したラジカル硬化性樹脂組成物であって、ライニング材、塗り床材、繊維強化プラスチック、レジンコンクリート、化粧板、塗料、パテ、ゲルコート、注型、接着剤等の各種用途に好適なラジカル硬化性樹脂組成物に関する。
ラジカル硬化性樹脂は、液状で取り扱うことが可能で作業性がよく、しかも硬化物が耐久性、乾燥性、強度等に優れた性能を有することから、様々な用途に適用することができ、例えば、各種の建造物の屋上や床面等の防食、防水、保護、強度や美観の保持を目的としたライニング材、塗り床材等の土木建築用被覆材等に広く用いられている。このような土木建築用被覆材等を施工する場合には、コンクリート等の基材上にプライマー層や中間層、トップコート層を順次形成し、多層構造を設けるのが一般的な施工方法である。
このような施工において、ラジカル硬化性樹脂としては、従来より、不飽和ポリエステル樹脂が広く用いられている。しかしながら、不飽和ポリエステル樹脂は、架橋反応する基点がマレイン酸、或いはフマル酸に起因する二重結合であるため、樹脂に含まれる反応性単量体としては、成形性、硬化物物性や価格の点から、スチレンが使用されることが殆どである。しかし、このような不飽和ポリエステル樹脂を用いて施工する場合、蒸散したスチレンに起因する臭気が問題となり、スチレンを含まないラジカル硬化性樹脂が望まれていた。
スチレンを含まないラジカル硬化性樹脂としては、単量体として高沸点の(メタ)アクリレート化合物を用いたビニルエステル樹脂やポリエステル(メタ)アクリレート樹脂等が提案されているが、施工時の表面乾燥性や、施工物の強度、密着性等に工夫の余地が残っていた。
施工時の臭気を抑えつつ、乾燥性や、強度、密着性等を改善する従来の技術に関し、本願出願人は、機械的強度、密着性、乾燥性、耐水性、耐熱性等の各種物性に優れた被覆層を形成することができ、土木建築用材料等に好適に用いることが可能なラジカル硬化性樹脂組成物を見いだしている(特願2002−226015、特願2002−226016)。
しかしながら、上述したライニング材、塗り床材等の土木建築用被覆材を施工する際には、ケトンパーオキサイド系の硬化剤を用いることが一般的であり、このようなラジカル硬化性樹脂を含むラジカル硬化性樹脂組成物を、硬化促進剤である金属石鹸とケトンパーオキサイド系硬化剤とを用いて硬化させると、上記ビニルエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂と同様に、硬化時に激しく発泡し、硬化阻害が生じることが多々ある。これは、ケトンパーオキサイド系硬化剤等の有機過酸化物から発生した酸素に起因し、この酸素がラジカルを失活させるためと考えられるが、この発泡現象に伴って、施工物の強度、防水、防食性が充分とはならず、また、トップコート層では塗布した面に気泡痕が残ったまま硬化し、優れた美観を得ることができなくなる。そこで、ケトンパーオキサイド系硬化剤等の一般的な硬化剤を使用した場合にも、硬化時の樹脂の発泡を充分に抑制でき、安定してラジカル硬化性樹脂を硬化できるようにするための工夫の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ケトンパーオキサイド系硬化剤等の一般的な硬化剤を使用した場合にも硬化時の発泡が充分に抑制されるとともに、施工時の臭気を充分に抑制することができ、機械的強度、密着性、乾燥性、耐水性、耐熱性等の各種物性に優れた硬化物を得ることが可能なラジカル硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、ラジカル硬化性樹脂組成物について種々検討したところ、アルコール類と(メタ)アクリル酸とのエステル化物を含有するラジカル硬化性樹脂が、機械的強度、密着性、乾燥性、耐水性、耐熱性等の各種物性に優れた被覆層を形成できることに着目し、更に、金属石鹸と、特定の解離定数値(pKa)を有する有機酸とを加えて用いることにより、施工時の臭気を抑えるとともに、ケトンパーオキサイド系硬化剤等の一般的な硬化剤を使用した場合にも硬化時の発泡が充分に抑制されることを見いだし、上記課題をみごとに解決できることに想到した。そして、特定の解離定数値(pKa)を有する有機酸を、分子量が500以下のものとしたり、カルボキシル基を有するものとしたりすることにより、硬化時の発泡を抑制する作用効果を更に向上できることを見いだし、また、アルコール類と(メタ)アクリル酸とのエステル化物として、2価以上のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、及び、1価のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物を含むものを用いることにより、施工時の作業性、硬化物特性に充分に優れるラジカル硬化性樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、(I)2価以上のアルコールを含むアルコール類と(メタ)アクリル酸とのエステル化物を主成分とするラジカル硬化性樹脂、(II)金属石鹸、及び、(III)有機酸を含有するラジカル硬化性樹脂組成物であって、上記有機酸(III)は、解離定数pKaが3.8以下である1価有機酸、又は、一段目の解離定数pKa1が3.8以下であり、且つ二段目の解離定数pKa2が10.5以上である多価有機酸であるラジカル硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物において、ラジカル硬化性樹脂(I)は、2価以上のアルコールを含むアルコール類と(メタ)アクリル酸とのエステル化物を主成分とするものであるが、「エステル化物を主成分とする」とは、ラジカル硬化性樹脂(I)中にエステル化物を50質量%以上含むことを意味し、60質量%以上含むことが好適である。より好ましくは、70質量%以上である。
上記エステル化物としては、2価以上のアルコールを含むアルコール類と(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られるものであればよく、1種又は2種以上を用いることができる。また、アルコール類としては、1価のアルコールを含んでいてもよく、2価以上のアルコール及び1価のアルコールを併用することが好適であり、上記エステル化物が、2価以上のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、及び、1価のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物を含むものである形態は、本発明の好ましい形態の1つである。これらのアルコール類としては、ベンゼン環を有するアルコール及び/又はそのアルキレンオキシド付加物であることが好ましい。
上記エステル化物において、2価以上のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物とは、(メタ)アクリロイル基を分子内に少なくとも1つ有する化合物であるが、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、例えば、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ビスフェノールF、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、ビスフェノールAF、ビスフェノールC、ビスフェノールF−D、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA等の2価アルコール及びこれらのアルキレンオキシド付加物等の1種又は2種以上と、(メタ)アクリル酸との反応によって得られるジエステル類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ノボラックフェノール、クレゾールノボラック等の3価以上のアルコール及びこれらのアルキレンオキシド付加物等の1種又は2種以上と、(メタ)アクリル酸との反応によって得られるジエステル類、トリエステル類等のみを含む形態であってもよく、1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物、例えば、前記に例示した2価以上のアルコールと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるモノエステル類との混合形態であってもよい。
上記2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、分子内にオキシアルキレン鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有する末端基を2〜4個有する形態が好適である。
なお、1つのオキシアルキレン鎖が有するオキシアルキレン単位の個数としては、1個以上、10個以下であることが好ましい。オキシアルキレン鎖が無いと、ラジカル硬化性樹脂組成物を用いて形成される皮膜の柔軟性や基材追従性が充分とはならないおそれがあり、10を超えると、硬化物が耐水性に優れたものとはならないおそれがある。より好ましくは、2個以上、8個以下であり、更に好ましくは、4個以下である。
上記オキシアルキレン単位としては、炭素数2〜4個のオキシアルキレン単位により構成されるものであることが好ましい。すなわち、上記オキシアルキレン単位としては、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位及びオキシブチレン単位からなる群より選択される少なくとも1種のオキシアルキレン単位により構成されるものが好ましい。オキシアルキレン単位の炭素数が4を超えると、ラジカル硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、効率的に作業を行うことができないおそれがある。より好ましくは、炭素数2〜3のオキシアルキレン単位により構成されるものであり、更に好ましくは、炭素数2のオキシアルキレン単位、すなわちオキシエチレン単位により構成されるものである。なお、オキシアルキレン単位を2個以上有する場合には、全て同じであってもよく、異なっていてもよい。また、分子内に有する2個以上のオキシアルキレン鎖は、それぞれが、全く同じオキシアルキレン単位の構成であってもよいし、異なっていてもよい。
上記2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の(メタ)アクリロイル基は、全て同じであってもよく、アクリロイル基とメタクリロイル基とが組み合わされたものであってもよい。
上記2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては更に、フェノールの残基を有する形態であることが好適である。フェノールの残基とは、フェノールが有する水酸基から活性水素を除いた構造をもつ残基を意味する。なお、このような残基を1分子内に1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。
このような2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の好ましい形態としては、ビスフェノールAから誘導される構造を有するものであり、中でも、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル化物であることが好適である。より好ましくは、下記一般式(1);
Figure 0004444697
(式中、Rは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。n及びmは、同一若しくは異なって、0〜10の整数を表し、かつ、n+mは、1以上、10以下である。)で表される構造を有するビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートである。
このように上記エステル化物が、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル化物を含むものである形態もまた、本発明の好ましい形態の1つである。
上記1価のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物もまた、1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。1価のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物としては、1価のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物に起因する臭気を充分に抑制するために、常圧での沸点が150℃以上である2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上であることが好適である。中でも、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートであることが好ましく、上記エステル化物が、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートを含むものである形態もまた、本発明の好ましい形態の1つである。
上記ラジカル硬化性樹脂(I)において、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物との比率としては、例えば、1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物が、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物の合計質量100質量%に対して、1質量%以上とすることが好ましい。1質量%未満であると、ラジカル硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、効率的な作業ができなくなるおそれがあるとともに、繊維補強材、骨材に代表される副資材を含有した樹脂組成物を得た場合、副資材への含浸性が低下し、樹脂組成物を用いて形成される硬化物の強度が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、5質量%以上である。一方、80質量%以下とすることが好ましい。80質量%を超えると、充分な柔軟性を得られないおそれがある。より好ましくは、60質量%以下である。また、好適な範囲としては、1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物が1〜80質量%であることであり、より好ましくは、5〜60質量%である。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物において、金属石鹸(II)としては、通常硬化促進剤として用いられるものであればよく、例えば、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン等が好ましい。
上記金属石鹸(II)の含有量としては、ラジカル硬化性樹脂(I)100質量部に対して、0.05質量部以上、10質量部以下であることが好ましい。0.05質量部未満であると、硬化に長時間を要し、生産性が悪く、硬化が不充分となるおそれがあり、また、10質量部を超えても、用いる量に比べて、硬化促進剤としての効果が充分に発揮されないおそれがある。より好ましくは、0.1質量部以上、5質量部以下であり、更に好ましくは、0.2質量部以上、1質量部以下である。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物において、有機酸(III)としては、解離定数pKaが3.8以下である1価有機酸、又は、一段目の解離定数pKa1が3.8以下であり、且つ二段目の解離定数pKa2が10.5以上である多価有機酸を用いることが適当であるが、解離定数pKaがこれらの範囲を満たさない有機酸を用いると、硬化時の発泡を充分に抑制できないおそれがある。一段目の解離定数pKa1(1価有機酸の場合、解離段数が1であるため、単に「解離定数pKa」ともいう。)としては、3.5以下であることが好ましい。より好ましくは、3.0以下である。
なお、解離定数pKaとは、25℃における酸解離定数pKaである。
上記有機酸(III)としてはまた、数平均分子量が500以下のものであることが好ましい。数平均分子量が500を超えるものを用いると、有機酸(III)を多量に用いなければ発泡抑制効果を充分に発揮することができなくなり、有機酸(III)を多量に用いた場合には、優れた硬化物物性や充分な表面乾燥性が得られないおそれがある。より好ましくは、400以下である。
上記有機酸(III)としては更に、カルボキシル基を有するものであることが好ましく、これにより、硬化時の発泡をより充分に抑制でき、高強度の硬化物を得ることができる。このような有機酸(III)としては、カルボキシル基を有し、更に、該カルボキシル基が二重結合上の炭素原子に結合した形態であることがより好ましい。
上記有機酸(III)の含有量としては、上記金属石鹸(II)100質量部に対して、60質量部以上、500質量部以下であることが好ましい。60質量部未満であると、本発明の作用効果を充分に発揮することができないおそれがあり、500質量部を超えると、上述したように、優れた硬化物物性や充分な表面乾燥性が得られないおそれがある。より好ましくは、80質量部以上、300質量部以下であり、更に好ましくは、90質量部以上、200質量部以下である。
上記有機酸(III)において、解離定数pKaが3.8以下である1価有機酸としては、例えば、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノエチル、フタル酸モノブチル、イソフタル酸モノエチル、2メタクリロイル−オキシ−エチルマレート、2−フランカルボン酸、2−ニトロ安息香酸、2−ブロム安息香酸、2−シアノ安息香酸等の1種又は2種以上を用いることが好適である。また、一段目の解離定数pKa1が3.8以下であり、且つ二段目の解離定数pKa2が10.5以上である多価有機酸としては、例えば、サリチル酸を用いることが好適である。
なお、上記1価有機酸として、プロピオン酸、トランス−桂皮酸、アクリル酸、メタクリル酸又はo−メチル安息香酸を用いたり、上記多価有機酸として、コハク酸、フマル酸、イソフタル酸又はアントラニル酸を用いたりしても、本発明の作用効果を充分に発揮することができない。これらの有機酸を用いる場合には、上述した好適なものと併用することが好ましい。
本発明においては、このような有機酸(III)を、ラジカル硬化性樹脂(I)及び金属石鹸(II)と組み合わせて用いることにより、硬化時の発泡を充分に抑制し、各種の物性に優れたラジカル硬化性樹脂組成物を得ることができる。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物は、上記エステル化物を主成分とするラジカル硬化性樹脂(I)、金属石鹸(II)、及び、有機酸(III)を含有する形態であるが、該ラジカル硬化性樹脂組成物が、上記エステル化物を主成分とし、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物との反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレートを含んでなるラジカル硬化性樹脂(I)と、金属石鹸(II)と、有機酸(III)とを含有する形態もまた、本発明の好ましい形態の1つである。
上記ラジカル硬化性樹脂(I)がエステル化物とエポキシ(メタ)アクリレートとを含んでなる場合、エステル化物とエポキシ(メタ)アクリレートとの比率としては、これらの合計量を100質量%とすると、エステル化物が70質量%以上、エポキシ(メタ)アクリレートが30質量%以下であることが好適である。エポキシ(メタ)アクリレートの比率が30質量%を超えると、粘度低減性を充分に発揮することができないおそれがあり、また、常温硬化させる場合には、充分に硬化しないおそれがある。より好ましくは、エステル化物が75質量%以上、エポキシ(メタ)アクリレートが25質量%以下であり、更に好ましくは、エステル化物が80質量%以上、エポキシ(メタ)アクリレートが20質量%以下である。
このように、上記ラジカル硬化性樹脂(I)が、更に、エポキシ(メタ)アクリレートを含んでなり、該エポキシ(メタ)アクリレートが、上記エステル化物及び該エポキシ(メタ)アクリレートの合計100質量%に対して、30質量%以下である形態もまた、本発明の好ましい形態の1つである。
なお、上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、1分子内に1個のエポキシ基を有する化合物であるプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、カルボン酸モノグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ネオデカン酸グリシジルエーテル等;1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等;多価アルコールのグリシジルエーテルであるネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等;多価カルボン酸のグリシジルエーテルであるフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル等の他、これらのアルキレンオキサイド付加物(エポキシ基を含有する)等のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレートが好適であり、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、1分子内に1個のエポキシ基を有する化合物(単官能エポキシ化合物)と(メタ)アクリル酸との反応によって得られる単官能エポキシ(メタ)アクリレートを含むものであることが好ましく、これにより、得られるラジカル硬化性樹脂組成物の粘度をより充分に低減させることが可能となる。更に、単官能エポキシ(メタ)アクリレートがフェニルグリシジル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。1分子内に2個のエポキシ基を有する化合物(多官能エポキシ化合物)と(メタ)アクリル酸との反応によって得られる多官能エポキシ(メタ)アクリレートとしては、多官能エポキシ化合物のエポキシ当量が500g/eq以下(より好ましくは、250g/eq以下)である多官能エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応によって得られる多官能エポキシ(メタ)アクリレートである形態が好ましく、これにより、ラジカル硬化性樹脂組成物の粘度をより充分に低減させることが可能となる。
上記ラジカル硬化性樹脂組成物としてはまた、金属石鹸(II)以外の硬化促進剤を含有してもよく、例えば、コバルトアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート等の金属キレート化合物;ジメチルアニリン、ジメチルトルイジン等のアミン化合物;アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記硬化促進剤の使用量としては、金属石鹸(II)を含めた総量として、ラジカル硬化性樹脂(I)100質量部に対し、0.1質量部以上とすることが好ましく、また、10.0質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.2質量部以上であり、また、5質量部以下である。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物は、放射線や紫外線の照射及び/又は硬化剤の添加により硬化させることができるものである。
上記硬化剤としては、例えば、ラジカル硬化性樹脂に用いられる公知の硬化剤が使用できる。具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル、ビス(4−tーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の過酸化物;2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記硬化剤の使用量としては、硬化剤の種類やラジカル硬化性樹脂組成物の用途等により適宜設定すればよいが、ラジカル硬化性樹脂(I)100質量部に対し、0.1質量部以上とすることが好ましく、また、10.0質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.2質量部以上であり、また、5質量部以下である。
上記ラジカル硬化性樹脂組成物はまた、パラフィンを含むことが好ましい。パラフィンとは、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックスであり、これらは、原油中に存在し、常温において固体又は半固体の炭化水素の混合物である。
上記パラフィンワックスとしては、例えば、パラフィンワックス150(商品名、日本精蝋社製、融点66℃)、パラフィンワックス140(商品名、日本精蝋社製、融点61℃)、パラフィンワックス130(商品名、日本精蝋社製、融点55℃)、パラフィンワックス115(日本精蝋社製、融点47℃)等が挙げられる。また、マイクロクリスタリンワックスとしては、例えば、Hi−Mic−2065(商品名、日本精蝋社製、融点75℃)、Hi−Mic−2045(商品名、日本精蝋社製、融点64℃)等が挙げられる。これらのパラフィンは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
上記パラフィンを本発明のラジカル硬化性樹脂組成物に使用する場合には、パラフィンワックスの分散剤を併用することが好ましい。パラフィンワックスの分散剤としては、例えば、水酸基、カルボキシル基及びエステル結合部位から選択される少なくとも1種の構造を有するワックスであることが好ましい。具体的には、例えば、ドデカン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸オクタデシル等の、炭素数12以上の脂肪酸及びその誘導体;ノニポール160(商品名、三洋化成工業社製)、エマルミン200(商品名、三洋化成工業社製)等のアルキルフェノールや、高級アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加したアルコール類;NPS−9125、NPS−9210、NPS−6010、HAD−5080、NSP−8070、OX−020T、OX−1949(商品名、いずれも日本精蝋社製)等のパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスから酸化反応等で誘導される変性ワックス;ダイヤモンドワックス(商品名、新日本理化社製)等の動植物油脂の誘導体;セラマー67(商品名、東洋ペトロライロ社製)、セラマー1608(商品名、東洋ペトロライロ社製)等の、カルボキシル基含有単量体とオレフィンとの重合体等が挙げられる。これらパラフィンワックスの分散剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
本発明において、上記パラフィンワックスの分散剤に対するパラフィンの使用比率は、用いるラジカル硬化性樹脂(I)の種類や分子量、組成に応じて適宜設定すればよいが、質量比(パラフィンの質量/パラフィンワックスの分散剤の質量)が500〜1の範囲内であることが好ましい。この範囲よりパラフィンワックスの分散剤の比率が大きいと、乾燥性が充分なものとはならないおそれがあり、この範囲よりパラフィンワックスの分散剤の比率が小さいと、硬化物における積層樹脂層の被接着性が優れたものとはならないおそれがあることから、上記の範囲を逸脱すると、乾燥性及び上記積層樹脂層の被接着性をともに充分に満足し得るラジカル硬化性樹脂組成物を得ることができないおそれがある。より好ましくは、300〜2の範囲内であり、更に好ましくは、200〜2の範囲内である。このような範囲に設定することにより、乾燥性及び硬化物における積層樹脂層の被接着性を更に向上させることが可能となる。
上記ワックス類の使用量、即ち、上記パラフィンとパラフィンワックスの分散剤との合計量としては、エステル化物やパラフィン類の種類や組成等に応じて適宜設定することが好適であり、硬化時に上記ラジカル硬化性樹脂組成物の硬化表面上にワックス薄膜(被膜)を形成することができるように設定すればよいが、ラジカル硬化性樹脂(I)100質量部に対して、0.005〜2質量部用いることが好ましい。0.005質量部未満であると、得られるラジカル硬化性樹脂組成物の乾燥性が充分とはならないおそれがあり、2質量部を超えると、得られるラジカル硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物の強度物性が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、乾操性及び得られるラジカル硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物の強度物性の観点から、0.02〜0.6質量部である。
上記ラジカル硬化性樹脂組成物としてはまた、必要に応じて、揺変性付与剤、充填剤、乾燥性向上剤、増粘剤、着色剤、繊維強化材等の添加剤(材)や骨材等を1種又は2種以上含んでいてもよい。また、他種の熱硬化性樹脂1種又は2種以上を混合してもよい。更に、粘度調整のため、溶剤、希釈剤を混合してもよい。これらの使用量としては、ラジカル硬化性樹脂組成物の用途等に応じて適宜設定することが好ましい。
上記揺変性付与剤としては、無水微粉末シリカ、アスベスト、クレー等が挙げられる。充填剤としては、水酸化アルミ、タルク、珪砂、炭酸カルシウム、酸化アンチモン等が挙げられる。
上記充填剤としては、水酸化アルミニウム(ATH)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、クレー、タルク、ガラスパウダー、ミルドファイバー、クリストバライト、マイカ、シリカ、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、ガラス粉末等の無機充填剤;有機充填剤等が挙げられる。
上記乾燥性向上剤としては、乾性油、アリルグリシジルエーテル、ジエチレングリコール及び無水マレイン酸の付加重合体等等のアリルオキシ基を有する不飽和又は飽和ポリエステルオリゴマー等が挙げられる。
上記増粘剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;イソシアネート類;オキサゾリン類等が挙げられる。
上記着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
上記繊維強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維;アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の有機繊維等が挙げられる。繊維強化材の形状としては、マット状、チョップ状、ロービング状等が挙げられる。
上記他種の熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記溶剤、希釈剤としては、公知のものが使用でき、例えば、トルエン、キシレン、酢酸ブチル等が挙げられる。また、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等の重合性不飽和基を有する単量体を希釈剤として用いてもよい。臭気の面から、常圧での沸点が150℃以上のものが好ましい。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物において、上述したラジカル硬化性樹脂(I)の好ましい形態を構成するエステル化物及びエポキシ(メタ)アクリレートとしては、それぞれ市販のものを用いてもよいが、後述する製造方法によって得られるものも好ましい形態の1つである。
ラジカル硬化性樹脂(I)を製造する方法としては、例えば、アルコール類を過剰当量の(メタ)アクリル酸によりエステル化して反応混合物を得る工程(以下、「エステル化工程」ともいう。)と、必要に応じて該反応混合物にエポキシ化合物を反応させる工程(以下、「エポキシ付加工程ともいう。」)とを含む方法が好適であり、これにより、効率的にエステル化物を含む組成物を得ることができることになる。なお、エステル化工程後(場合によってはエポキシ付加工程後)に、上記1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加えてもよい。
上記エステル化工程において、アルコール類としては、(メタ)アクリル酸とのエステル化物が上述した好適なものとなるように適宜選択すればよいが、ベンゼン環を有するアルコール及び/又はそのアルキレンオキシド付加物を用いることが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸の使用量としては、充分にエステル化反応させるために、用いられるアルコール類に対して過剰当量を使用することが好適であり、例えば、エステル化反応の進行を速やかにすることと低粘度のラジカル硬化性樹脂組成物を得るために、用いられる総アルコール類の水酸基1モルに対して、(メタ)アクリル酸を1.05モル以上とすることが好ましい。より好ましくは、1.1モル以上である。一方、1.9モル以下とすることが好ましい。より好ましくは、1.5モル以下である。また、好適な範囲としては、1.05〜1.9モルであり、より好ましくは、1.1〜1.5モルである。
上記エステル化反応としては、エステル化触媒の存在下、常圧又は減圧下で行うことができる。反応の温度としては、70〜140℃とすることが好ましい。また、エステル化反応を円滑に進めるため、縮合水と共沸するキシレン、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の溶媒を用いてもよい。また、反応中のゲル化を防ぐため、空気又は酸素と不活性ガスとの混合ガス気流下で、ラジカル重合禁止剤を添加して行うことが好ましい。
上記エステル化触媒としては、公知のものが使用でき、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、スルホフタル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸等の有機スルホン酸等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記ラジカル重合禁止剤もまた、公知のものが使用でき、例えば、メトキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン等のフェノール類;ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン等の硫黄化合物;トリフェニルスチビン;錫(II)化合物等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上記エステル化反応工程の終了は、留出する縮合水の量で判断することができ、理論縮合水量の80%以上の縮合水が留出するまでエステル化を進めることが好ましい。
上記エステル化物の製造方法においては、未反応の(メタ)アクリル酸が過剰に残存する場合には、上記エステル化工程で得られた反応混合物にエポキシ化合物を反応させる工程(エポキシ付加工程)を経ることが好ましく、この工程により、残存する未反応の(メタ)アクリル酸が充分に処理され、反応後、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物との反応物(「エポキシ(メタ)アクリレート」ともいう。)を生じ得る。なお、これは、過剰の(メタ)アクリル酸がラジカル硬化性樹脂組成物中に残存すると、耐水性の低下を生じるおそれがあり、環境条件によっては硬化阻害を起こすおそれがあることから、(メタ)アクリル酸の残存量を充分に低減することが好適であることによる。エポキシ付加工程を経て得られた反応物をオリゴマーと呼ぶこともある。
上記エポキシ付加工程において、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物との反応としては、例えば、反応触媒の存在下で80〜140℃に加熱することにより行うことができる。また、この際、酸価が20mgKOH/g以下になるまで反応を続けることが好適である。反応は、窒素等の不活性ガス気流下でも行うことができるが、反応中のゲル化を充分に防止するためには、空気又は酸素と不活性ガスとの混合ガス気流下で、上述したラジカル重合禁止剤を添加して行うことが好ましい。
上記反応触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチルベンゼンアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、トリフェニルホスフィン等の1種又は2種以上を用いることができる。
なお、第一工程で共沸溶媒を用いた場合には、第一工程終了後又は第二工程終了後に減圧下でこの共沸溶媒を留去すればよい。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物を製造する方法としては、上記製造方法により得られるエステル化物及び必要に応じてエポキシ(メタ)アクリレートを含有するラジカル硬化性樹脂(I)に、金属石鹸(II)、有機酸 (III)、及び、必要に応じて添加されるその他の成分を混合することにより行うことができる。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物は、強度や伸び等の基本性能に優れ、しかも柔軟性、基材追従性が優れることから硬化物の亀裂や基材からの剥離が起こりにくいうえに、臭気を抑制することが可能であり、立て面の樹脂ダレが起こりにくく、かつ、硬化物表面に気泡痕を残さないことから、各種の用途に好ましく用いることができるものである。このようなラジカル硬化性樹脂組成物の用途としては、特に土木建築用被覆材として好適であり、各種の建造物の屋上や床面、壁面等に防水、防食、強度や美観の保持を目的として施されるライニング材、塗り床材等を形成する材料とすることができる。なお、このようなライニング材、塗り床材では一般的にプライマー層、中間層、トップコート層という多層構造を施工する。プライマー層とは、基材と被覆材とを充分付着させることを目的として設けられる層であり、プライマー層にはイソシアネートとグリコールとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを配合することが好ましい。中間層とは、被覆材の主材となる層であり、耐久性、機械的強度を発現させるための層である。中間層には、骨材、モルタル、繊維強化材、揺変性付与剤、乾燥性向上剤等を含むことが好ましい。また、トップコートとは、中間層の保護、耐侯性、意匠性、防滑性等を目的として設けられる層であり、トップコートには顔料、乾燥性向上剤等を含むことが好ましい。本発明のラジカル硬化性樹脂組成物としては、これらの土木建築用被覆材の中でも、特に中間層、トップコート層を形成する材料として好適なものであり、トップコート層を形成する材料として最も好適なものである。なお、中間層及び/又はトップコート層として用いる場合には、パラフィンを添加することが好ましい。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物はまた、ライニング材、塗り床材等の土木建築用被覆材の他、車両、船体、浴槽、水タンク、電気部品等の繊維強化プラスチック、レジンコンクリート、ゲルコート、塗料、パテ、化粧板、接着剤、注型の材料;コンクリート、アスファルト、モルタル、鋼板、ガラス、熱可塑性プラスチック等の被覆材等のような各種用途にも好適に用いることができる。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物により皮膜(塗膜)を形成する方法としては、例えば、該樹脂組成物を基材に塗布した後硬化させることにより皮膜を成形する方法や、また、マット状の繊維強化材を用いる場合には、該樹脂組成物をハンドレイアップ等により繊維強化材を含浸させて被覆材とし、硬化させることにより皮膜を形成する方法等が挙げられる。
上記基材としては、例えば、ガラス、スレート、コンクリート、モルタル、セラミック、石材等の無機質基材;アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、銅、チタン、ステンレス、ブリキ、トタン等からなる金属板、表面に亜鉛、銅、クロム等をメッキした金属、表面をクロム酸、リン酸等で処理した金属等の金属基材;ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、FRP(織維強化プラスチック)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、等のプラスチック基材;合成皮革;ヒノキ、スギ、マツ、合板等の木材;繊維、紙等の有機素材等が挙げられる。また、これらの基材は、本発明のラジカル硬化性樹脂組成物が塗装される前に、通常用いられるプライマーや、下塗り、中塗り、メタリックベース等の上塗り等塗装用塗料が塗装されていてもよい。
上記ラジカル硬化性樹脂組成物を基材に塗布する方法、及び、硬化方法としては、該樹脂組成物が用いられる用途等により適宜選択すればよいが、塗布方法としては、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、スピンコート、バーコート、フローコート、静電塗装、ダイコート、フイルムラミネート、ゲルコート等による方法等が挙げられる。また、硬化方法としては、常温で硬化させる方法、加熱により硬化させる方法、紫外線等を照射して硬化させる方法等が挙げられ、また、これらを適宜組み合わせて行ってもよい。
なお、上記ラジカル硬化性樹脂組成物から形成される塗膜の膜厚としては、用いられる用途により適宜設定すればよい。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物は、上述のような構成であるので、ケトンパーオキサイド系硬化剤等の一般的な硬化剤を使用した場合にも硬化時の発泡が充分に抑制されるとともに、施工時の臭気を充分に抑制することができ、機械的強度、密着性、乾燥性、耐水性、耐熱性等の各種物性に優れた硬化物を得ることが可能なものであることから、各種の土木建築用材料等に好適なものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
製造例1(樹脂A)
攪拌機、Dean−Sterk型水分離機、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、BA−4Uグリコール(商品名、ビスフェノールA4EO付加物、日本乳化剤社製)449g、フェノキシエタノール125g、メタクリル酸333g、シクロヘキサン60g、パラトルエンスルホン酸1水和物4.3g、2−メチルハイドロキノン0.10g、フェノチアジン0.25gを仕込み、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。120℃に到達してから、8時間後に流出した縮合水が107g(理論出水量の94%)となった。その後、110℃に下げ、減圧下(0.06MPa以下)で3時間シクロヘキサンを留去した。この時の反応混合物の酸価は40mgKOH/gであった。
次いで、この反応物にフェノチアジン0.12g、2−メチルハイドロキノン0.1g、トリエチルアミン5g、エポトートYD−127(商品名、東都化成社製のビスフェノール型エポキシ樹脂当量183)127gを加え、再度115℃に昇温し、空気を吹き込みながら反応を行った。
115℃に昇温してから、3時間後に反応混合物の酸価が4.0mgKOH/gで、粘度が60mPa・sの樹脂Aを得た。
製造例2(樹脂B)
攪拌機、冷却管、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、エポトートYD−127(商品名、東都化成社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量183.4)1840g、2−メチルハイドロキノン0.54g、トリエチルアミン6.8gを仕込み、空気を吹き込みながら110℃に加熱し、2時間でメタクリル酸861gを滴下した。滴下終了後115℃で8時間後反応し、酸価が3.5mg・KOH/gのオリゴマーを得た。
このオリゴマー65質量部とフェノキシエチルメタクリレート35質量部とを混合し、樹脂Bを得た。
実施例1〜5、比較例1〜9
100mlの容器に、樹脂A50gに対し、オクチル酸コバルト0.25mlを添加し、表1に示すとおりの添加剤を混合し、樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物に、硬化剤としてカヤメックM(商品名、化薬アクゾ社製)0.5gを添加し、30秒間撹拌後、静置、樹脂組成物の液面の変化を20〜25℃雰囲気で観察した。
樹脂組成物の液面に泡立ちが発生したものを「×」、泡立ちがやや発生したものを「△」、泡立ちが認められなかったものを「〇」と評すことにより、発泡抑制効果を評価した。結果を表1に示す。
Figure 0004444697
実施例6〜9、比較例10〜13
(塗膜乾燥性)
下記表2に示す配合比で混合し、樹脂組成物を得た。
更に、予めウレタンプライマーNS−YP(商品名、日本触媒社製)を塗布後、3時間放置した30cm×30cmのコンクリート板上に、100質量部の樹脂組成物、0.5質量部のジメチルアニリン、0.5質量部のオクチル酸コバルト(金属分8質量%)、1質量部のパークミルH80(商品名、日本油脂社製)を混合し、直ちに、200g/mの量を刷毛にて塗布した。これによって得られる塗膜の厚みは約180μmである。
塗布後、コンクリート板を垂直に立てて25℃雰囲気下に放置し、コンクリート板中央の表面が硬化して指触によるベタツキがなくなるまでの時間を乾燥性として評価した。また、表面外観について、クレーターの有無(クレーターのないものを「○」とする。)で評価した。結果を表2に示す。
Figure 0004444697
表2において、「アエロジル#200」(商品名)とは、日本アエロジル社製のシリカであり、「パラフィン140」とは、日本精蝋社製のパラフィンワックス(融点61℃)であり、「パラフィン130」とは、日本精蝋社製のパラフィンワックス(融点55℃)であり、「NPS9125」とは、日本精蝋社製のアルコール型ワックスである。

Claims (6)

  1. (I)2価以上のアルコールを含むアルコール類と(メタ)アクリル酸とのエステル化物を主成分とするラジカル硬化性樹脂、(II)金属石鹸、及び、(III)有機酸を含有するラジカル硬化性樹脂組成物であって、
    該有機酸(III)は、解離定数pKaが3.8以下である1価有機酸、又は、一段目の解離定数pKa1が3.8以下であり、且つ二段目の解離定数pKa2が10.5以上である多価有機酸であり、
    該有機酸(III)の含有量は、金属石鹸(II)100質量部に対して、90質量部以上、200質量部以下である
    ことを特徴とするラジカル硬化性樹脂組成物。
  2. 前記ラジカル硬化性樹脂組成物は、土木建築用被覆材用の樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載のラジカル硬化性樹脂組成物。
  3. 前記有機酸(III)は、数平均分子量が500以下のものである
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のラジカル硬化性樹脂組成物。
  4. 前記有機酸(III)は、カルボキシル基を有するものである
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のラジカル硬化性樹脂組成物。
  5. 前記ラジカル硬化性樹脂(I)に含まれるエステル化物は、2価以上のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、及び、1価のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物を含むものである
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のラジカル硬化性樹脂組成物。
  6. 前記ラジカル硬化性樹脂(I)は、2価以上のアルコール及び1価のアルコールを併用して過剰当量の(メタ)アクリル酸によりエステル化して反応混合物を得る工程と、該反応混合物にエポキシ化合物を反応させるエポキシ化工程とを含む製造方法により得られるものである
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のラジカル硬化性樹脂組成物。
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