JP2017206630A - ラジカル硬化性樹脂組成物及び繊維強化材料 - Google Patents

ラジカル硬化性樹脂組成物及び繊維強化材料 Download PDF

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Yoshihiro Matsumoto
吉弘 松本
梶野 正彦
Masahiko Kajino
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Abstract

【課題】透明性及び耐候性に優れ、外部環境暴露後も充分な付着強度を安定して発揮できる硬化物を与えるラジカル硬化性樹脂組成物、並びに、これを用いた繊維強化材料を提供する。【解決手段】ラジカル重合性オリゴマー、ラジカル重合性単量体、硬化促進剤、空気乾燥性付与剤及び紫外線吸収剤を含有し、該ラジカル重合性オリゴマーは、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み、該硬化促進剤は、コバルト石鹸及びカリウム石鹸を含むラジカル硬化性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ラジカル硬化性樹脂組成物及び繊維強化材料に関する。
ラジカル硬化性樹脂は、液状で取り扱うことが可能であって作業性が良く、しかも硬化物が耐久性や耐水性、強度等に優れた性能を有することから、例えば、塗料やゲルコート材、ライニング材等の被覆材、床材、化粧板、家具材、防食材、防水材(防水ライニング材)、積層材料、繊維強化プラスチック(FRP)材料、WPC(Wood Plastic Combination)、バスタブ(浴槽)、人工大理石、包装品等の様々な分野に広く採用されている。そして近年では、更に性能を高めるための検討がなされており、例えば特許文献1には、不飽和ポリエステル樹脂を用いて化粧合板を形成する技術が開示されている。
特開2003−276013号公報
上述のとおりラジカル硬化性樹脂は各種物性に優れるため、様々な分野で広く採用されている。だが近年、各分野で求められる性能が次第に厳しくなっている。例えば、外装仕上げに使用する材料(外装仕上げ材と称す)は、紫外線や日射、降雨等の外部環境により劣化又は熱変化し、材料の変色や各種基材に対する付着強度が低下するため、外部環境暴露後も充分な付着強度を安定して発揮することが求められている。更に高度な透明性も要求されている。
しかし、従来の技術では、これらの要求に充分に応えることができないのが現状である。例えば特許文献1には化粧合板を形成する技術が開示されているが、耐候性については何ら検討されていないうえ、特許文献1に記載された不飽和ポリエステル樹脂を含む樹脂液を用いても優れた耐候性を有する硬化物を得ることができない。そもそも化粧合板は室内で用いられることが多いため、特許文献1のような化粧合板技術では耐候性が不要であったと考えられる。また、特許文献1では、基材に対する付着強度をより高めるための工夫の余地もあった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、透明性及び耐候性に優れ、外部環境暴露後も充分な付着強度を安定して発揮できる硬化物を与えるラジカル硬化性樹脂組成物、並びに、これを用いた繊維強化材料を提供することを目的とする。
本発明者は、ラジカル重合性オリゴマーとラジカル重合性単量体とを含む樹脂組成物は取扱い性や作業性が良く、しかも硬化物が各種物性に優れることに着目した。そして鋭意検討を進めるうち、更に硬化促進剤、空気乾燥性付与剤及び紫外線吸収剤を含み、かつ硬化促進剤として所定の金属石鹸を併用し、ラジカル重合性オリゴマーとして所定化合物を必須に用いた構成の樹脂組成物とすると、透明性が高く、基材に対する密着性も良好で、紫外線や日射、降雨等の外部環境暴露後も充分な付着強度を安定して発揮できる硬化物を与えるものとなることを見いだした。この樹脂組成物は、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維への含浸性にも優れるため、樹脂組成物と強化繊維とを含む繊維強化材料は、外装仕上げ材等の種々の用途に有用であることも見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ラジカル重合性オリゴマー、ラジカル重合性単量体、硬化促進剤、空気乾燥性付与剤及び紫外線吸収剤を含有し、該ラジカル重合性オリゴマーは、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み、該硬化促進剤は、コバルト石鹸及びカリウム石鹸を含むラジカル硬化性樹脂組成物である。
上記ラジカル硬化性樹脂組成物は、更に、揺変性付与剤を含むことが好ましい。
上記コバルト石鹸の含有量は、上記ラジカル重合性オリゴマーとラジカル重合性単量体との合計量100質量部に対して金属量で0.0016〜0.040質量部であることが好ましい。
上記ラジカル重合性オリゴマーは、重量平均分子量が2000〜30000であり、かつ二重結合当量が400〜1200であることが好ましい。
上記ラジカル重合性単量体は、水酸基含有単量体を含むことが好ましい。
本発明は、上記ラジカル硬化性樹脂組成物と強化繊維とを含む繊維強化材料でもある。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物は、上述のような構成であるので、透明性及び耐候性に優れ、紫外線や日射、降雨等の外部環境暴露後も基材に対し充分な付着強度を安定して発揮できる硬化物を与えるものである。それゆえ、この樹脂組成物を、例えば外装仕上げ材として使用した場合、耐候性良好な上塗り施工や基材への下塗り施工を必須としなくても、充分な耐候性及び基材への付着強度を発揮でき、経時での基材からの剥がれやクラック、割れ等の発生が充分に抑制される。また、この樹脂組成物は高透明性の硬化物を与えることができる他、この樹脂組成物は硬化速度が充分に速いため、施工作業面でも有利である。従って、各種基材の外装仕上げ材として特に有用である。
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
〔ラジカル硬化性樹脂組成物〕
まず、本発明の第一の態様であるラジカル硬化性樹脂組成物について説明する。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物(単に「樹脂組成物」とも称す)は、ラジカル重合性オリゴマー、ラジカル重合性単量体、硬化促進剤、空気乾燥性付与剤及び紫外線吸収剤を含有する。必要に応じ、更に他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよく、各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
本明細書中、ラジカル重合性オリゴマーとラジカル重合性単量体との混合物を「ラジカル硬化性樹脂」とも称す。
上記樹脂組成物において、ラジカル重合性オリゴマーとラジカル重合性単量体との含有量比は、ラジカル重合性オリゴマー/ラジカル重合性単量体(質量%)=10〜90/10〜90であることが好適である。より好ましくは30〜70/30〜70、更に好ましくは40〜60/40〜60である。
<ラジカル重合性オリゴマー>
本発明の樹脂組成物において、ラジカル重合性オリゴマーは、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む。中でも、靱性や機械的強度、耐熱性、耐熱水性等の各種物性に優れるうえ、低収縮化剤の併用により硬化時の収縮率が非常に小さく、高度の表面平滑性を実現できる等の観点から、不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステルが好適である。すなわちラジカル重合性オリゴマーとして不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステルを含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。
上記ラジカル重合性オリゴマーは、重量平均分子量が2000〜30000であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲内にあるラジカル重合性オリゴマーを用いると、好適な粘性が得られ、取り扱い性や作業性が更に向上する他、基材への付着強度がより一層向上する。より好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、また、より好ましくは28000以下、更に好ましくは25000以下、特に好ましくは20000以下である。本明細書中、重量平均分子量は、後述する実施例に記載の測定方法にて求められる。
上記ラジカル重合性オリゴマーはまた、二重結合当量が400〜1200であることが好ましい。二重結合当量がこの範囲内にあるラジカル重合性オリゴマーを用いると、柔軟性が高まり、かつ硬化性及び硬化物強度も向上し、基材への付着強度がより一層向上する。より好ましくは450以上、更に好ましくは500以上であり、また、より好ましくは1100以下、更に好ましくは1000以下である。本明細書中、二重結合当量は、後述する実施例に記載の測定方法にて求められる。
−不飽和ポリエステル−
上記ラジカル重合性オリゴマーのうち、不飽和ポリエステルとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとの反応により得られる化合物が好適である。この反応で使用される各原料は、それぞれ1種又は2種以上使用してもよい。また、ジシクロペンタジエン(DCPD)により変性されていてもよい。
上記多塩基酸と多価アルコールとの反応では、これらの使用量比は特に限定されないが、例えば、多塩基酸100モル%に対し、多価アルコールを80〜120モル%とすることが好ましい。より好ましくは95〜110モル%である。
上記反応は特に限定されず、通常の合成手段で行えばよい。一般には、加熱下で実施され、副生する水を除去しながら反応を進めることが好適である。具体的には、例えば、不活性ガス雰囲気下、トルエンやキシレン等の水共沸用溶剤、シュウ酸スズ等のエステル化触媒の存在下又は非存在下に、120〜250℃の温度範囲に加熱し、所望の酸価又は粘度(分子量)となるまで脱水縮合する方法が好ましい。温度範囲としてより好ましくは、150〜220℃である。
上記多塩基酸としては、不飽和多塩基酸や飽和多塩基酸が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記不飽和多塩基酸としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、イタコン酸等のα,β−不飽和多塩基酸;ジヒドロムコン酸等のβ,γ−不飽和多塩基酸;これらの酸の無水物;これらの酸のハロゲン化物;これらの酸のアルキルエステル;等が挙げられる。
上記飽和多塩基酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、ヘキシルコハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族飽和多塩基酸;ヘット酸、1,2−ヘキサヒドロフタル酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環式飽和多塩基酸;これらの酸の無水物;これらの酸のハロゲン化物;これらの酸のアルキルエステル;等が挙げられる。
上記多価アルコールとしては、例えば、グリコール(ジオールとも称す)や、エポキシ化合物が挙げられる。
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルキル置換アルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等のアルキレングリコール類の縮合物;ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノール類等;トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル等のアリル基含有アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール類;等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ) アクリレート、ビスフェノールAのグリシジルエーテル類が挙げられる。
−ビニルエステル−
ビニルエステルとしては、例えば、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸との反応により得られる化合物が好適である。この反応で使用される各原料は、それぞれ1種又は2種以上使用してもよい。上記反応は特に限定されず、通常の合成手段で行えばよい。
上記エポキシ化合物と不飽和一塩基酸との反応では、これらの使用量比は特に限定されないが、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基100モル%に対し、不飽和一塩基酸のカルボキシル基の当量が80〜150モル%となるような比率とすることが好ましい。より好ましくは、上記不飽和一塩基酸のカルボキシル基の当量が90〜110モル%となるような比率である。
上記反応では、エステル化触媒を1種又は2種以上用いてもよい。エステル化触媒としては特に限定されず、例えば、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミン等の三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウム等の四級アンモニウム塩;塩化リチウム、塩化クロム等の無機塩;2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラフェニルホスフォニウムブロマイド、テトラメチルホスフォニウムクロライド、ジエチルフェニルプロピルホスフォニウムクロライド、トリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスフォニウムクロライド、ジベンジルエチルメチルホスフォニウムクロライド、ベンジルメチルジフェニルホスフォニウムクロライド等のホスフォニウム塩;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等のホスフィン類;テトラブチル尿素;トリフェニルスチビン等が挙げられる。
上記反応ではまた、必要に応じ、少量の重合禁止剤の共存下で行ってもよい。これにより、反応工程の初期において生成した反応生成物や不飽和一塩基酸自体の重合反応が進行することが抑制されて、反応生成物のゲル化を抑制することが可能となる。重合禁止剤としては特に限定されず、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、カテコール、ナフテン酸銅、銅粉等が挙げられる。
上記反応は、必要に応じ、通常の溶媒で希釈して行ってもよいし、必要に応じて酸素の存在下で行ってもよい。反応温度は特に限定されないが、80℃〜120℃であることが好適である。
上記エポキシ化合物としては、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物を含むものが好適である。例えば、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂肪族型、脂環式、単環式エポキシ化合物、アミン型エポキシ化合物等が挙げられる。中でも、機械的強度、耐蝕性、耐熱性等の観点から、ビスフェノール型エポキシ化合物が好ましい。
上記ビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物等が挙げられる。ノボラック型エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、臭素化ノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。脂肪族型エポキシ化合物としては、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、プロピレングリコールポリグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、アリサイクリックジエポキシアセタール、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビニルヘキセンジオキシド、ビニルヘキセンジオキシド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。また、ビスフェノールA等のフェノール化合物や、アジピン酸、セバチン酸、ダイマー酸、液状ニトリルゴム等の二塩基酸により変性したエポキシ化合物を使用することもできる。
上記不飽和一塩基酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸等のモノカルボン酸;二塩基酸無水物と分子中に少なくとも一個の不飽和基を有するアルコールとの反応物;等が挙げられる。二塩基酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の脂肪族又は芳香族のジカルボン酸が挙げられる。不飽和基を有するアルコールとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら中でも、不飽和一塩基酸としては、熱性、耐薬品性の観点から、炭素数が6以下のものが好ましい。より好ましくは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸である。
−ポリエステル(メタ)アクリレート−
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸類と、多価アルコールと、多塩基酸との反応により得られる化合物が好適である。この反応で使用される各原料は、それぞれ1種又は2種以上使用してもよい。上記反応は特に限定されず、通常のエステル化反応であればよい。
上記(メタ)アクリル酸類と、多価アルコールと、多塩基酸との反応では、これらの使用量比は特に限定されないが、例えば、多塩基酸(好ましくは不飽和二塩基酸)100モル%に対し、多価アルコールの当量が50〜120モル%、(メタ)アクリル酸類20〜50モル%となるような比率とすることが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸類としては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和一塩基酸、及び、そのグリシジルエステル類等が挙げられ、中でもグリシジル(メタ) アクリレートが好ましい。より好ましくはグリシジルメタクリレートである。上記多価アルコール及び多塩基酸については、上述した化合物等が挙げられる。
−ウレタン(メタ)アクリレート−
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートと、更に必要に応じてポリオールとを反応させることにより得られる化合物が好適である。この反応で使用される各原料は、それぞれ1種又は2種以上使用してもよい。上記反応は特に限定されず、通常のウレタン化反応であればよい。
上記ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートと、必要に応じて使用されるポリオールとの反応では、これらの使用量比は特に限定されないが、例えば、水酸基とイソシアネート基との当量比がほぼ1となるように使用量を調整し、40〜140℃の範囲で加熱することが好ましい。
上記反応では、ウレタン化反応をより促進させるために、ウレタン化触媒を使用してもよい。ウレタン化触媒としては特に限定されないが、例えば、3級アミン類、ジブチル錫ジラウレート、塩化錫等の錫化合物類が好適である。
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の1種又は2種以上が好適である。
上記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類や、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類等の1種又は2種以上が好適である。
上記ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等の1種又は2種以上が好適であり、数平均分子量が400〜3000であるものが好ましい。より好ましくは、数平均分子量が700〜2000のものである。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイドの他に、ビスフェノールAやビスフェノールFにアルキレンオキサイドを付加させたポリオールも使用することができる。また、ポリエステルポリオールとは、二塩基酸成分と多価アルコール成分との縮合重合体、又は、ポリカプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合体である。
<ラジカル重合性単量体>
本発明の樹脂組成物において、ラジカル重合性単量体は、1分子中に1個以上の重合性基(好ましくは炭素炭素二重結合)を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、1分子中に1個の重合性基を有する化合物(「単官能化合物」とも称す)や、2個以上の重合性基を有する化合物(「多官能化合物」とも称す)のいずれも好適に使用できる。
以下、これらラジカル重合性単量体について更に説明する。
−単官能化合物−
単官能化合物としては特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族系単量体;(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;等が挙げられる。これらは置換基を有していてもよく、置換基としては水酸基等が挙げられる。
−多官能化合物−
多官能化合物としては特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の炭素数2〜12を有するアルカンポリオールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の炭素数3〜12を有するアルカンポリオールの、3価以上のポリ(メタ)アクリレート;ジアリルフタレート、ジアリルフタレートプレポリマー;トリアリルシアヌレート;等が挙げられる。これらは置換基を有していてもよく、置換基としては水酸基等が挙げられる。
上記ラジカル重合性単量体の中でも、重合反応性や相溶性に優れる観点から、芳香環を含む単量体(「芳香環含有単量体」とも称す)が好ましく、また基材への密着性(接着性)が高まる観点から、水酸基を含む単量体(「水酸基含有単量体」とも称す)が好ましい。芳香環含有単量体としては、特にスチレンが好ましい。水酸基含有単量体としては、水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは水酸基含有単官能(メタ)アクリレートである。このように、ラジカル重合性単量体として、スチレンを用いる形態、水酸基含有(メタ)アクリレートを用いる形態、スチレンと水酸基含有(メタ)アクリレートとを併用する形態のいずれも、本発明の好適な形態である。
<硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、硬化促進剤として、コバルト石鹸とカリウム石鹸とを少なくとも含む。これにより、硬化性を高く維持しながらも、着色が充分に抑制されて高度な透明性を確保することができる他、基材への付着強度も際立って向上する。また、硬化物の耐候性も優れたものとなる。なお、必要に応じ、他の金属石鹸を更に含んでもよい。
上記コバルト石鹸としては、コバルトの脂肪酸塩が好ましく、脂肪酸としては、炭素数6〜30の飽和又は不飽和脂肪酸が好適である。具体的には、例えば、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、オクテン酸コバルト等が挙げられる。
上記コバルト石鹸の含有量は、ラジカル重合性オリゴマーとラジカル重合性単量体との合計量(これを「ラジカル硬化性樹脂の総量」とも称す)100質量部に対し、0.0016〜0.040質量部であることが好ましい。これにより、硬化速度が好適なものとなって作業性が良好になる他、硬化物の付着強度及び透明性が更に著しく向上する。より好ましくは0.003質量部以上、更に好ましくは0.005質量部以上であり、また、より好ましくは0.030質量部以下、更に好ましくは0.020量部以下である。
ここでいうコバルト石鹸の含有量は、金属成分量を意味する。
上記カリウム石鹸としては、カリウムの脂肪酸塩が好ましく、脂肪酸としては、炭素数6〜30の飽和及び/又は不飽和脂肪酸が好適である。具体的には、例えば、ナフテン酸カリウム、ネオデカン酸カリウム、オクテン酸カリウム等が挙げられる。
上記カリウム石鹸の含有量は、ラジカル硬化性樹脂の総量100質量部に対し、0.001〜0.050質量部であることが好ましい。これにより、硬化物の付着強度が更に向上する。より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上であり、また、より好ましくは0.03質量部以下、更に好ましくは0.02質量部以下である。
ここでいうカリウム石鹸の含有量は、金属成分量を意味する。
ここで、本発明では、必要に応じ、コバルト石鹸及びカリウム石鹸以外の硬化促進剤を併用してもよいが、耐候性をより向上する観点から、アミン系硬化促進剤(例えば、N−ピロジノアセトアセトアミド、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルアセトアセトアミド)を実質的に含まないことが好ましい。すなわち具体的には、ラジカル硬化性樹脂の総量100質量部に対し、アミン系硬化促進剤の含有量が0.05質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01質量部以下、更に好ましくは0質量部である。
<空気乾燥性付与剤>
本発明の樹脂組成物は、空気乾燥性付与剤を含有する。空気乾燥性付与剤とは、樹脂が硬化する際に樹脂から形成される硬化物(被膜や成形物等)の表面に析出し、空気との遮断層を該表面に形成することによって、空気中の酸素が樹脂のラジカル重合を阻害することを防止して樹脂の乾燥性を向上させる作用を有するものである。これを含むことで、硬化物の耐候性や付着強度が充分なものとなる。
上記空気乾燥性付与剤としては、例えば、ワックス類が好ましい。具体的には、天然ワックス;合成ワックス;天然ワックスや合成ワックス等の配合ワックス;等が挙げられる。これらの中でも、パラフィンワックスを少なくとも用いることが好ましい。また、ワックス類に、他の成分を含んでもよい。
上記天然ワックスとしては、例えばキャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の植物系ワックス;密蝋、ラノリン、鯨蝋等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;等が挙げられる。
上記合成ワックスとしては、例えばフィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス;動物性油脂の誘導体;カルボキシル基含有単量体とオレフィンとの共重合体;硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス;ステアリン酸、ドデカン酸、ステアリン酸オクタデシル等の炭素数12以上の脂肪酸及びその誘導体;アルキルフェニールや高級アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加したアルコール類;等が挙げられる。
上記空気乾燥性付与剤はまた、本発明の樹脂組成物を常温で硬化させる場合、JIS K2235(1991年)に分類される融点が40〜80℃であるものを用いることが特に好ましい。これにより、樹脂組成物の施工において、硬化途中の樹脂組成物から形成される被膜や成形物の表面に析出しやすくなり、空気との遮断層がより充分に形成されるため、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。
上記樹脂組成物において、空気乾燥性付与剤の含有量は、ラジカル硬化性樹脂の総量100質量部に対し、0.001〜2質量部であることが好ましい。この範囲内にあると、硬化物の耐候性や基材に対する付着強度がより向上する。より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上であり、また、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1.0質量部以下である。
<紫外線吸収剤>
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有する。
紫外線吸収剤としては、300〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物が好適である。具体的には、通常、紫外線吸収剤又は光安定剤等として使用されるものが好ましく、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系、ベンゾエート系、ヒンダードアミン系(HALS)等の有機系化合物;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機系化合物;等が挙げられる。中でも、硬化物の耐候性等の効果の観点から、ベンゾフェノン系やヒンダードアミン系化合物が好ましい。
上記紫外線吸収剤の含有量は、ラジカル硬化性樹脂の総量100質量部に対し、0.01〜3質量部であることが好ましい。この範囲内にあると、耐候性がより向上される。より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、また、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下である。
<揺変性付与剤>
本発明の樹脂組成物はまた、揺変性付与剤を更に含有することが好適である。これにより、樹脂組成物が垂れ性に優れるものとなり、作業性が更に向上する。
なお、垂れ性とは、例えば、ヘラ等により塗布したり、スプレー等により吹き付けたり、カートリッジからビート状に押し出したりするときのように強い力を加えた際には流動性を示し、塗布又は施工後、硬化するまでの間は流下しない性質を意味する。
上記揺変性付与剤としては特に限定されないが、例えば、無水微粉末シリカ、カオリン、クレー、活性白土、ケイ砂、ケイ石、ケイ藻土、無水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸マグネシウム、タルク、パーライト、ホワイトカーボン、マイカ微粉末、ベントナイト、有機ベントナイト等の二酸化ケイ素を主成分とする無機系化合物の他、カーボンブラック、アスベスト等が挙げられる。中でも、二酸化ケイ素を主成分とする無機系化合物が好ましく、無水微粉末シリカや有機ベントナイトがより好ましい。更に好ましくは無水微粉末シリカである。これにより、垂れ性や、基材への付着強度がより向上する。
上記樹脂組成物において、揺変性付与剤の含有量は、ラジカル硬化性樹脂の総量100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましい。この範囲内にあると、垂れ性により優れるものとなる他、粘性がより好適なものとなって作業性も向上する。より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、また、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
<他の成分>
本発明の樹脂組成物はまた、必要に応じ、更に他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。例えば、硬化剤、重合禁止剤、不活性粉体、充填剤、乾燥性向上剤、増粘剤、着色剤、揺変助剤、レベリング剤、脱泡剤等の添加剤(材)や骨材等の他、溶剤、希釈剤等が挙げられる。
上記硬化剤としては特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル;ビス(4−tーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の過酸化物の他、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。中でも、過酸化物が好ましい。
上記硬化剤の含有量は特に限定されないが、例えば、ラジカル硬化性樹脂100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましい。より好ましくは0.3〜3質量部である。
本発明の樹脂組成物は、その粘度が100〜2000mPa・sであることが好ましい。これにより、作業性が向上する他、この粘度範囲を有する樹脂組成物を強化繊維に含浸させる場合には、含浸性がより良好になり、強化繊維が樹脂組成物中でより安定して分散されるため、樹脂組成物及び強化繊維を含む繊維強化材料においてこれら各成分に由来する効果がより充分に発揮される。より好ましくは150mPa・s以上、更に好ましくは200mPa・s以上であり、また、より好ましくは1500mPa・s以下、更に好ましくは1000mPa・s以下である。
本明細書中、粘度は、25℃における粘度を意味し、後述する実施例に記載の方法により求められる。
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、ラジカル重合性オリゴマー、ラジカル重合性単量体、硬化促進剤、空気乾燥性付与剤、紫外線吸収剤、及び、必要に応じて更に含んでもよいその他の成分を添加、混合することにより得ることができる。混合方法は特に限定されず、通常の混合手段を採用すればよい。各成分の添加、混合の順序も特に限定されない。
〔繊維強化材料〕
次に、本発明の第二の態様である繊維強化材料について説明する。
本発明の繊維強化材料は、上述した本発明のラジカル硬化性樹脂組成物と強化繊維とを含む。必要に応じ、更に他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよく、各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上を使用することができる。本発明のラジカル硬化性樹脂組成物は強化繊維への含浸性が優れるため、これらを含む繊維強化材料としたときに、ラジカル硬化性樹脂組成物及び強化繊維それぞれに由来する効果が充分に発揮される。
上記強化繊維としては特に限定されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維;ポリビニルアルコール系、ポリエステル系、ポリアミド系(全芳香族系も含む)、フッ素樹脂系、フェノール系の各種有機繊維;等が挙げられる。中でも、機械的特性に優れる観点から、炭素繊維及び/又はガラス繊維が好ましく、軽量化等の観点から、炭素繊維がより好ましい。
上記強化繊維の形状も特に限定されず、例えば、クロス状;チョップドストランドマット、プリフォーマブルマット、コンティニュアンスストランドマット、サーフェーシングマット等のマット状;チョップ状;ロービング状;不織布状;ペーパー状;等のいかなる形状であってもよい。
上記強化繊維は、目的とする成形品の形状に応じて予めその形状を決めておき、硬化前のラジカル硬化性樹脂組成物に含浸させて使用してもよいし、ラジカル硬化性樹脂組成物中にチョップ状の強化繊維を混合して成形材料とし、これを所望形状に成形する等の方法で使用してもよい。
上記繊維強化材料において、強化繊維の含有量は、例えば、ラジカル硬化性樹脂組成物と強化繊維との総量100体積%に対し、5〜55体積%であることが好ましい。これにより、更に良好な含浸状態が得られるとともに、繊維強化材料から形成される成形物の機械的強度が向上する。より好ましくは10体積%以上であり、また、より好ましくは45体積%以下である。
〔硬化物〕
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物及び繊維強化材料は、透明性が高く、かつ基材に対する密着性も良好で、紫外線や日射、降雨等の外部環境暴露後も充分な付着強度を安定して発揮できる硬化物を与えることができる。それゆえ、各種用途に有用なものであるが、中でも、外部環境に晒されやすい基材(例えば、橋脚、トンネル等のコンクリート構造物、鋼構造物、土構造物等の各種構造物)の外装仕上げ材として特に有用である。その他、塗料やゲルコート材、ライニング材等の被覆材、床材、化粧板、家具材、防食材、防水材(防水ライニング材)、積層材料、繊維強化プラスチック(FRP)材料、WPC(Wood Plastic Combination)、バスタブ(浴槽)、人工大理石、包装品等の様々な分野でも有用である。このような上記ラジカル硬化性樹脂組成物又は繊維強化材料を硬化してなる硬化物(上記樹脂組成物又は繊維強化材料の硬化物)もまた、本発明の好適な実施形態に含まれる。
上記樹脂組成物及び繊維強化材料の硬化方法としては特に限定されず、例えば、施工直前(又は成形直前)に、硬化剤を樹脂組成物又は繊維強化材料に混合し硬化させることが好適である。硬化条件に関し、硬化温度としては、常温で行うことが好ましい。より好ましくは−10〜50℃、更に好ましくは0〜40℃である。ゲル化時間は1〜180分とすることが好ましく、より好ましくは5〜60分である。
上記硬化物の形状として、例えば、塗膜形状、成形品(成型品とも称す)形状等が挙げられる。以下では、これらを得る方法について更に説明する。
−塗膜−
硬化物が塗膜である場合、該塗膜を形成する方法としては特に限定されず、例えば、上記樹脂組成物又は繊維強化材料に硬化剤を混合し、基材に塗布した後硬化させることにより被膜を成形する方法;繊維強化材料から塗膜を形成する場合において、マット状の強化繊維を用いる場合は、上記樹脂組成物に硬化剤を混合し、ハンドレイアップ等により強化繊維を含浸させて被覆材とし、硬化させることで被膜を形成する方法;等が挙げられる。
上記基材としては特に限定されず、例えば、ガラス、スレート、コンクリート、モルタル、セラミック、石材等の無機質基材;アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、銅、チタン、ステンレス、ブリキ、トタン等からなる金属板、表面に亜鉛、銅、クロム等をメッキした金属、表面をクロム酸、リン酸等で処理した金属等の金属基材;ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、FRP(織維強化プラスチック)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂等のプラスチック基材;合成皮革;ヒノキ、スギ、マツ、合板等の木材;繊維、紙等の有機素材;等が挙げられる。
上記基材は、上記樹脂組成物又は繊維強化材料が塗装される前に、通常用いられるプライマーや、下塗り、中塗り、メタリックベース等の上塗り等塗装用塗料が塗装されていてもよい。だが、本発明の樹脂組成物を用いると、上塗り施工や基材への下塗り施工を実施しなくても(トップコートレス、プライマーレス)、充分な耐候性及び基材への付着強度を発揮することができるため、これらの作業を省略又は簡素化できる点で有利である。
上記樹脂組成物及び繊維強化材料を基材に塗布する方法としては、用途等により適宜設定すればよいが、塗装方法は、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、スピンコート、バーコート、フローコート、静電塗装、ダイコート、フイルムラミネート、ゲルコート等が挙げられる。
−成形品−
硬化物が成形品である場合、該成形品を得る方法としては特に限定されず、例えば、通常の注型法、圧縮成形法、遠心成形法、射出成形法、トランスファー成形法、インジェクション成形法、押出成形法等を採用することができる。その他、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、フィラメントワインディング法、レジンインジェクション法、引き抜き成形法、SMC成形法(Sheet Molding Compounds Method)、BMC成形法(Bulk Molding Compound Method)、レジントランスファ成形法等のFRP成形法も好適である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を、それぞれ意味するものとする。
なお、下記実施例等で採用した各種物性の測定・評価方法を下記する。
1、ラジカル重合性オリゴマーの物性
(1)二重結合当量
二重結合当量は、以下のようにして求めた。
被架橋重合体/ 不飽和多塩基酸(又は不飽和基含有エポキシ) のモル数
とするか、又は、不飽和ポリエステルの場合、
{ ( 酸成分+ グリコール成分) − 縮合水} / 不飽和酸のモル数
(2)重量平均分子量
重量平均分子量(Mw)は、以下の条件の下、GPC測定から求めた。その際、市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、下記換算法に基づいて求めた。
装置:高速GPC装置 HLC−8320GPC(東ソー社製)
溶剤:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折率計
カラム:TSKgelSuperH2000、TSKgelSuperH2500、TSKgelSuperH3000(いずれも東ソー社製)
分子量換算:PS換算/汎用較正法
2、樹脂組成物の物性
(1)粘度
ブルックフィールド粘度計を用いて25℃で測定した。
(2)垂れ性
予めウレタンプライマータケラックM605N(商品名、三井化学社製)を塗布後一晩放置した30cm×30cmのスレート板上に、100部の試料(実施例等で得た樹脂組成物)、1部のパーメックN(商品名、日本油脂社製)を混合し、この混合物のうち80部を1mあたり380部のチョップドストランドマット(25cm×25cm)に含浸させて、ライニングした。その後、スレート板を垂直に立てかけ、20℃雰囲気下に放置し、樹脂だれを目視で評価した。
3、硬化物物性
(1)試験サンプル(構成:塗膜樹脂+ガラスマット♯300/プライマー)の作製
JIS A6909(2014年)に規定するモルタル板(70×70×20mm)を使用し、以下のようにして積層体を形成した。
モルタル板の表面をサンダーケレン等により表面処理を行い、温度20℃、湿度65%の条件で、24時間以上静置した。その後、ウレタンプライマータケラックM605N(商品名、三井化学社製)を塗布後6時間養生し、100部の試料(実施例等で得た樹脂組成物)、1部のパーメックN(商品名、日本油脂社製)を混合し、この混合物のうち5部をガラス繊維マット#300を含浸させて塗付した。
その後、温度20℃、湿度65%の条件で14日間養生し、これを試験体として層間付着性(付着強度)を、以下のそれぞれの条件下、下記試験方法にて確認した。なお、積層体作成個数は同一条件につき3個とする。
<付着強度>
以下の各条件の試験手順により、引っ張り用の鋼製ジグをエポキシ樹脂系の接着剤にて接着した。その後、質量1kgの重りを乗せ、24時間静置して養生した。養生後に重りを取り除き、鋼製ジグの周りにモルタル板に達するまで、カットを施した。試験体を試験機に取り付け、鉛直方向に引張力を加えて、最大引張荷重を求めた。結果を表2に示す。
<条件A(標準状態での試験)>
JIS A6909(2014年)7.10.2、a)に即した層間付着性の確認
<条件B(浸水後での試験)>
JIS A6909(2014年)7.10.2、b)に則した層間付着性の確認
(2)注型板の作製
実施例等で得た樹脂組成物100部に対し、硬化剤としてパーメックN(商品名、日本油脂社製)1.0部を混合し、よく攪拌混合した。減圧で脱泡を行った後、離型剤を塗付した3mm厚のガラスケース内部に注入し、室温で硬化させた。硬化確認後、110℃で2時間アフターキュアーを行った。
このようにして得た各試験片について、以下のようにして彩度及び耐候性を評価した。結果を表2に示す。
<彩度>
厚さ3mmの注型板を、JIS K5101−2−2(2004年)に準拠して彩度差(ΔS)を測定した。なお、比較は、白色原紙とした。
<耐候性>
厚さ3mmの注型板を使用し、JIS K7350−4(2008年)に準拠して、耐候性試験(時間:200時間)を行い、初期値と200時間後との彩度差(ΔS)を測定した。
合成例1(不飽和ポリエステルA)
温度計、撹拌機、不活性ガス吹込管及び還流冷却管を備えた四ツ口フラスコに、ネオペンチルグリコール150部、ジエチレングリコール107部 イソフタル酸191部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら220℃で酸価5まで縮合反応した。150℃まで冷却し無水マレイン酸122部を仕込み、220℃まで昇温し、14時間、縮合反応させた。このようにして不飽和ポリエステルAを得た。
合成例2(不飽和ポリエステルB)
温度計、撹拌機、不活性ガス吹込管及び還流冷却管を備えた四ツ口フラスコに、ジエチレングリコール245部、イソフタル酸233部、アジピン酸50部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら220℃で酸価5まで縮合反応した。150℃まで冷却し無水マレイン酸51部を仕込み、220℃まで昇温し、12時間、縮合反応させた。このようにして不飽和ポリエステルBを得た。
合成例3(ビニルエステル)
温度計、空気導入管、還流管、攪拌装置を備えたフラスコを反応器とし、ハイドロキノン0.1部、トリエチルアミン2.0部の存在下、エポキシ樹脂(「jER1001 」、三菱樹脂社製、エポキシ当量450)940部に、メタクリル酸(三菱ガス化学社製)185部を添加し、110〜120℃でエポキシ基を完全に反応させ、ビニルエステルを得た。
合成例1〜3で得た各ラジカル重合性オリゴマーについて、上述した方法にて二重結合当量及び重量平均分子量(Mw)を求めた。結果を表1に示す。
表1では、不飽和ポリエステルA、Bのエステル組成も併記した。
Figure 2017206630
表1中の記号は以下のとおりである。
DEG:ジエチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
MAN:無水マレイン酸
IPA:イソフタル酸
AA:アジピン酸
実施例1
不飽和ポリエステルA:47.5部に、スチレン52.5部及びハイドロキノン0.01部を加えることで不飽和ポリエステル樹脂を得た。この不飽和ポリエステル樹脂の25℃での粘度は300mPa・sであり(ブルックフィールド粘度計にて測定)、酸価は5であった。この不飽和ポリエステル樹脂に揺変性付与剤を加え、ホモミキサーで攪拌した。更に、コバルト石鹸、カリウム石鹸、空気乾燥性付与剤、紫外線吸収剤、パラフィンワックスを添加した。このようにして樹脂組成物を得た。各成分の添加量は、表2に示す。
実施例2
不飽和ポリエステルB:50部に、スチレン50部及びハイドロキノン0.01部を加えることで不飽和ポリエステル樹脂を得た。この不飽和ポリエステル樹脂の25℃での粘度は300mPa・sであり(ブルックフィールド粘度計にて測定)、酸価は10であった。この不飽和ポリエステル樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。各成分の添加量を表2に示す。
実施例3〜5、比較例1〜3
原料成分を表2に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして各樹脂組成物を作製した。各成分の添加量を表2に示す。
実施例1〜5及び比較例1〜3で得た各樹脂組成物について、上述した方法にて粘度を測定し、また硬化物物性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2017206630
表2に記載の原料は以下のとおりである。
ラジカル重合性オリゴマー:合成例1〜3で得られた各化合物
8%オクテン酸コバルト:日本化学産業社製、商品名「ニッカオクチックスコバルト8%」
10%オクテン酸カリウム:日本化学産業社製、商品名「ニッカオクチックスカリウム10%」
パラフィンワックス125F:日本精蝋社製、商品名「PARAFFIN WAX 125」
パラフィンワックス135F:日本精蝋社製、商品名「PARAFFIN WAX 135」
TINUVIN765:BASF社製、商品名「TINUVIN 765」、ヒンダードアミン系光安定剤
TINUVIN234:BASF社製、商品名「TINUVIN 234」、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
アエロジル♯200:日本アエロジル社製、親水性フュームドシリカ、商品名「AEROSIL(R) 200」
アエロジル♯R711:日本アエロジル社製、疎水性フュームドシリカ、商品名「AEROSIL(R) R711」
※1:硬化しなかったため、測定不能であったことを意味する。
※2:試験途中にチョーキングが生じ、評価試験を継続できなかったことを意味する。
なお、表2中、コバルト石鹸及びカリウム石鹸の使用量は、当該欄内の上段に実仕込み量を記載し、括弧内に金属成分量(すなわち、それぞれコバルト量及びカリウム量)を記載した。
上述した実施例及び比較例から、次のことを確認した。
実施例1〜5は本発明の構成の樹脂組成物を作製した例であるのに対し、比較例1、2及び3は、それぞれ紫外線吸収剤、コバルト石鹸及び空気乾燥性付与剤を使用しなかった例である。このうちラジカル硬化性樹脂の組成が同じである実施例1と比較例1〜3とにおける硬化物物性を比較すると、実施例1の硬化物は、比較例1、3の硬化物に比べ、彩度、耐候性及び付着強度のいずれにもバランス良く優れることが分かった(比較例2では硬化しなかったため、硬化物が得られなかった。)。なお、表には示していないが、実施例1〜5で得た各樹脂組成物について上記方法にて垂れ性を評価したところ、実施例5で得た樹脂組成物に対し、実施例1〜4で得た樹脂組成物では垂れ性評価が良好であった(すなわち、樹脂垂れが確認されなかった)。
ここで、上記「3、硬化物物性」「(1)試験サンプルの作製」において、実施例3で得た樹脂組成物を用いて、プライマー層を含まない積層体(構成:塗膜樹脂+ガラスマット♯300)を作製し、層間付着性(付着強度)を確認したところ、標準状態での付着強度は、2.9N/mmであり、浸水後の付着強度は1.9N/mmであった。このことから、本発明の樹脂組成物を用いると、上塗り施工や基材への下塗り施工を実施しなくても(トップコートレス、プライマーレス)、充分な耐候性及び基材への付着強度を発揮することができるため、これらの作業を省略又は簡素化できる点で有利であることが分かった。
また実施例1において、エステル組成を不飽和ポリエステルAとは変更して得た不飽和ポリエステルC(二重結合当量:186、Mw:18000)、不飽和ポリエステルD(二重結合当量:1525、Mw:15000)、不飽和ポリエステルE(二重結合当量:365、Mw:1000)、及び、不飽和ポリエステルF(二重結合当量:391、Mw:35000)それぞれを、不飽和ポリエステルAの代わりに用いた場合について、実施例1と同様に硬化物物性を評価したところ、これら不飽和ポリエステルC〜Fをそれぞれ用いた場合よりも、不飽和ポリエステルAを用いた実施例1や不飽和ポリエステルBを用いた実施例2、ビニルエステルを用いた実施例3の方が、硬化物の付着強度が著しく高かった。このことから、本発明の構成の中でも特に、ラジカル重合性オリゴマーのMwが2000〜30000であり、かつ二重結合当量が400〜1200であると、基材への付着強度がより一層高められることが分かった。

Claims (6)

  1. ラジカル重合性オリゴマー、ラジカル重合性単量体、硬化促進剤、空気乾燥性付与剤及び紫外線吸収剤を含有し、
    該ラジカル重合性オリゴマーは、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
    該硬化促進剤は、コバルト石鹸及びカリウム石鹸を含む
    ことを特徴とするラジカル硬化性樹脂組成物。
  2. 更に、揺変性付与剤を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載のラジカル硬化性樹脂組成物。
  3. 前記コバルト石鹸の含有量は、前記ラジカル重合性オリゴマーとラジカル重合性単量体との合計量100質量部に対して金属量で0.0016〜0.040質量部である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のラジカル硬化性樹脂組成物。
  4. 前記ラジカル重合性オリゴマーは、重量平均分子量が2000〜30000であり、かつ二重結合当量が400〜1200である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のラジカル硬化性樹脂組成物。
  5. 前記ラジカル重合性単量体は、水酸基含有単量体を含む
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のラジカル硬化性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のラジカル硬化性樹脂組成物と強化繊維とを含む
    ことを特徴とする繊維強化材料。
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