JP3639778B2 - 防水材組成物、防水被覆構造体、およびその施工方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防水材組成物、防水被覆構造体、およびその施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、屋上等の建築空間や道路などの防水施工として、FRP防水層を用いるFRP防水工法が広く採用されている。FRP防水工法によれば、他の防水工法に比べて強度、表面硬度が高く、耐久性、寸法安定性にも優れた防水施工が可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
FRP防水工法においては、施工時に防水層を形成した後、防水層上に作業者がのってトップコート層を設けることが通常行われるため、防水層表面のタックフリー性が求められる。
このタックフリー性を発揮させるため、防水層に用いる防水材組成物中にワックスを添加することが一般に行われている。しかし、防水層上にワックスが存在すると、タックフリー性は発揮できるが、一方でトップコート層との密着性が低下するという問題がある。このため、ワックスを後に除去する作業が行われることがあるが、この作業は非常に煩雑なものとなっている。
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、タックフリー性に優れ、しかも、トップコート層との接着性にも優れた、新規な防水材組成物と、それを用いた防水被覆構造体、およびその施工方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、特定の物性を有する特定の樹脂成分を有する防水材組成物とすれば、ワックスを全く用いないか、あるいは、用いたとしても極めて少量の使用においても、優れたタックフリー性が発現できることを見い出した。また、この防水材組成物を用いた防水被覆構造体も、耐久性など優れた物性を有することが判った。
すなわち、本発明に係る防水材組成物は、
(イ)熱硬化性樹脂、
(ロ)繊維強化材、
を含んでなる防水材組成物であって、
前記熱硬化性樹脂(イ)は、ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステルと重合性モノマーを含有するものであり、
該不飽和ポリエステル中のジシクロペンテニル基の含有量が10重量%以上であり、
前記熱硬化性樹脂(イ)を硬化してなる硬化物が、JIS−K−7113で規定する引張試験において、引張強さが10MPa以上、引張伸び率が20%以上の物性を有する
ことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る防水被覆構造体は、
上から、
(A)トップコート層、
(B)防水層、
(C)プライマー層、
(D)基体、
の構成を有する防水被覆構造体において、
前記防水層(B)が、本発明の防水材組成物を硬化してなる層であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る防水被覆構造体の施工方法は、
基体(D)の上に、プライマー層(C)を形成し、さらに、本発明の防水材組成物を硬化してなる防水層(B)、トップコート層(A)を順次形成することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[防水材組成物]
本発明に係る防水材組成物は、
(イ)熱硬化性樹脂、
(ロ)繊維強化材、
を含んでなる防水材組成物であって、
前記熱硬化性樹脂(イ)は、ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステルと重合性モノマーを含有するものであり、
該不飽和ポリエステル中のジシクロペンテニル基の含有量が10重量%以上であり、
前記熱硬化性樹脂(イ)を硬化してなる硬化物が、JIS−K−7113で規定する引張試験において、引張強さが10MPa以上、引張伸び率が20%以上の物性を有する
ことを特徴とする。
【0009】
本発明における熱硬化性樹脂(イ)は、ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステルと重合性モノマーを含有するものである。
前記ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステルとしては、該不飽和ポリエステル中のジシクロペンテニル基の含有量が10重量%以上であれば、特に限定されない。
なお、本発明では、下記の式(i)で表される置換基と式(ii)で表される置換基とを総称してジシクロペンテニル基と呼ぶものとする。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
前記不飽和ポリエステルは、ジシクロペンテニル基として、上記式(i)で表される置換基と上記式(ii)で表される置換基のうちの一方のみを有していてもよいし、両方とも有していてもよい。
前記不飽和ポリエステルの合成方法としては、特に限定はされないが、たとえば、特開平9−111108号公報に開示されている下記(1)〜(2)の方法や、下記(3)の方法等が挙げられる。
(1)通常の不飽和ポリエステルの原料である酸成分および多価アルコールの少なくとも一部をジシクロペンテニル基を有する化合物に置き換えることにより不飽和ポリエステルにジシクロペンテニル基を導入する方法、たとえば、酸成分の一部をジシクロペンタジエンの不飽和多塩基酸付加物で置き換えるか、あるいは、多価アルコールの一部をジシクロペンタジエンのグリコール付加物類やヒドロキシジシクロペンタジエンで置き換える方法。
【0013】
(2)酸成分と多価アルコールとの縮合反応時に、酸成分または多価アルコールとジシクロペンタジエンとの付加によってジシクロペンテニル基を有する化合物を生成させる方法、たとえば、通常の不飽和ポリエステルの合成に用いられる酸成分および多価アルコールとジシクロペンタジエンとを混合して縮合反応を行うか、あるいは、酸成分と多価アルコールを混合して縮合反応を開始させた後にジシクロペンタジエンを添加して変性する方法。
(3)酸成分と多価アルコールとの縮合反応を行った後、ジシクロペンタジエンを混合して、末端のカルボン酸残基や水酸残基に付加させる方法。
【0014】
なお、上記方法のいずれか2つ以上を併用することも可能である。
上記合成法(1)で用いられるジシクロペンタジエンの不飽和多塩基酸付加物としては、特に限定はされないが、不飽和多塩基酸をジシクロペンタジエンに付加させてなる付加物、たとえば、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物等のジシクロペンタジエンの不飽和二塩基酸付加物;ジシクロペンタジエンのマレイン酸半エステル付加物等が挙げられる。
上記合成法(1)の場合、酸成分または多価アルコールの一部と置き換えるために用いられるジシクロペンテニル基を有する化合物としては、ジシクロペンタジエンの不飽和二塩基酸付加物が好ましく、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物が特に好ましい。これらを用いると、防水材組成物とした時に優れたタックフリー性や寸法安定性を示す不飽和ポリエステルが得られる。なお、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物は、水の存在下でジシクロペンタジエンとマレイン酸との付加を行うことによって製造することができる。
【0015】
前記不飽和ポリエステルの合成に用いられる酸成分および多価アルコールとしては、通常の不飽和ポリエステルと同様のものを使用することができ、特に限定はされないが、たとえば、酸成分は、不飽和二塩基酸および/またはその無水物を必須成分とし、必要に応じ、その他の酸成分をさらに含むものが使用可能である。
前記不飽和二塩基酸および/またはその無水物としては、特に限定はされないが、たとえば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、アコニット酸、イタコン酸等のα,β−不飽和二塩基酸等が挙げられる。これらは、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。これらの中でもマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸が、容易に入手できることから好ましい。
【0016】
併用可能なその他の酸成分としては、特に限定はされないが、たとえば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸等の脂肪族飽和二塩基酸;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸;テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。また、不飽和ポリエステルの末端封鎖のために、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等の一塩基酸も使用可能である。上記その他の酸成分は、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0017】
酸成分全体に対する前記不飽和二塩基酸および/またはその無水物の使用割合は、特に限定はされないが、好ましくは15〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%である。
また、多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類;、ビスフェノールAとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加物;トリメチロールプロパン等のトリオール類;エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類;等が挙げられる。また、不飽和ポリエステルの末端封鎖のために、ベンジルアルコール等の一価アルコールも使用可能である。上記アルコールは、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0018】
前記不飽和ポリエステルを得るために酸成分と多価アルコールとを縮合反応させる際のそれらの使用量の比は、特に限定はされないが、酸成分1当量に対し、多価アルコールが、好ましくは0.90〜1.10当量、より好ましくは0.95〜1.05当量である。
前記不飽和ポリエステルの反応原料には、酸成分と多価アルコールに加え、必要に応じ、その他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、特に限定はされないが、たとえば、縮合反応を促進させる触媒や、消泡剤、ゲル化を防止するための重合禁止剤等が挙げられる。これら他の成分は、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0019】
前記不飽和ポリエステルを合成する際、酸成分とジシクロペンタジエンとの使用量の比は、酸成分1モルに対し、ジシクロペンタジエンが、好ましくは0.1〜1.0モル、より好ましくは0.3〜0.8モルである。ジシクロペンタジエンの使用量が0.1モル未満だと、該不飽和ポリエステルを含有する防水材組成物で防水層を形成した際の表面乾燥性が悪くなる可能性があり、1.0モルを超えると、該防水材組成物の硬化性が悪くなる可能性がある。
なお、前記不飽和ポリエステルの合成は、たとえば、Technical Proceedings,36th Annual Conference,Reinforced Plastics/Composites Institute,The Society of the Plastics Industry Inc.,Session 7−E(1981)に示されている従来公知の方法によっても行うことができる。
【0020】
前記ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステル中、ジシクロペンテニル基の含有率は、10重量%以上であることが必須であり、好ましくは10〜40重量%の範囲内である。ジシクロペンテニル基の含有率が10重量%未満だと、該不飽和ポリエステルを含有する防水材組成物で防水材を形成した際の表面乾燥性が悪くなる可能性がある。
前記不飽和ポリエステルのジシクロペンテニル基含有率は、たとえば、以下の方法により求めることができる。
まず、エステル鎖を形成する成分である酸成分および多価アルコール(ジシクロペンテニル基を有する化合物を含む)の総重量から、酸成分と多価アルコールとの縮合反応によって脱離する成分の重量を差し引き、得られた値を不飽和ポリエステルの全体重量とする。また、使用したジシクロペンテニル基を有する化合物のモル数に、ジシクロペンテニル基の分子量(132)を掛けて得られた値をジシクロペンテニル基の重量とする。そして、ジシクロペンテニル基の重量を不飽和ポリエステルの全体重量で割った値を、求めるジシクロペンテニル基含有率とする。
【0021】
なお、縮合反応時にジシクロペンテニル基を有する化合物を生成させた場合には、ジシクロペンテニル基を有する化合物の重量は、ジシクロペンテニル基を有する化合物の生成に用いた原料の重量から計算した理論量とすればよい。
以下に計算例を示す。すなわち、たとえば、ジシクロペンタジエン1モル(132g)と無水マレイン酸1モル(98g)と水1モル(18g)とを用いて生成させたジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物を、エチレングリコール0.6モル(37.2g)と脱水縮合させた場合には、次のようになる。まず、生成するジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物の理論量は1モルであるから、重量は、132g+98g+18g=248gとなる。そして、縮合によって脱離する水は、水酸基が1.2モル、カルボキシル基が1モルであることから、1モルであるので、重量は18×1=18gとなる。したがって、ジシクロペンテニル基含有率は、{132g/(248g+37.2g−18g)}×100=49.4重量%となる。
【0022】
前記不飽和ポリエステルにおける重合性二重結合の化学当量、すなわち、重合性二重結合一つ当たりの数平均分子量としては、特に限定されないが、400〜2000の範囲内であることが好ましい。400未満であると、該不飽和ポリエステルを含む防水材組成物を用いて防水層を形成した場合、下地基体の動きに対する追従性に劣るおそれがある。一方、2000を超えると、該不飽和ポリエステルを含む防水材組成物の硬化性が悪くなるおそれがある。
本発明における重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジアリルフタレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。これら重合性モノマーの中でも、比較的入手が安価で容易であることと、不飽和ポリエステルとの共重合性に優れることから、スチレンが好ましい。
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂(イ)中のジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステルと重合性モノマーの配合割合は、特に限定されないが、該不飽和ポリエステルが30〜90重量%の範囲内が好ましく、40〜80重量%の範囲内であることがさらに好ましく、また、該重合性モノマーが70〜10重量%の範囲内が好ましく、60〜20重量%の範囲内がさらに好ましい。
前記不飽和ポリエステルの配合割合が30重量%未満では、該熱硬化性樹脂(イ)を含有する防水材組成物で防水層を形成した際の表面乾燥性が悪くなる可能性があり、90重量%を超えると該熱硬化性樹脂を含有する防水材組成物の粘度が高くなり作業性が悪くなる可能性がある。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂中には、本発明の効果が妨げられない範囲内で、その他の不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等を含有していてもよい。
本発明に係る防水材組成物は、熱硬化性樹脂(イ)を硬化してなる硬化物が、JIS−K−7113で規定する引張試験において、引張強さが10MPa以上、引張伸び率が20%以上の物性を有することを特徴とする。
上記引張強さが10MPa未満では、該熱硬化性樹脂(イ)を含む防水材組成物を用いて防水層を形成した場合に、防水層の強度が低くなるため、外力により容易に防水層に亀裂が生じるおそれがある。
【0025】
また、上記引張伸び率が20%未満では、該熱硬化性樹脂(イ)を含む防水材組成物を用いて防水層を形成した場合に、下地基体の動きに対する追従性に劣るおそれがある。
本発明の防水材組成物中の熱硬化性樹脂(イ)の割合は、特に限定されないが、40〜95重量%の範囲内が好ましく、60〜90重量%の範囲内がさらに好ましい。
本発明における繊維強化材(ロ)としては、従来公知の繊維強化プラスチックに用いられるものを使用でき、特に限定はされないが、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維;ビニロン、フェノール、ナイロン、テフロン、アラミド、ポリエステル等の有機繊維等が挙げられる。その形状も特に限定はされず、たとえば、クロスやチョップストランドマット、プリフォーマブルマット、コンテニュアンスストランドマット、サーフェシングマット等のマット状、チョップ状、ロービング状等が挙げられる。
【0026】
繊維強化材(ロ)の割合は、本発明における防水材組成物の総重量に対し、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
本発明における防水材組成物は、たとえば、熱硬化性樹脂(イ)をマット状等の繊維強化材(ロ)に含浸させるか、あるいは、チョップ状等の繊維強化材(ロ)を熱硬化性樹脂(イ)と混合することにより得ることができる。
本発明に係る防水材組成物は、その特徴的な構成により、ワックスを全く含んでいなくても防水層表面の優れたタックフリー性を得ることができるが、必要により若干のワックスを配合してもよい。好ましくは、防水材組成物中の含有率が0.02重量%以下である。
【0027】
上記ワックスとしては、特に限定されないが、入手が容易な点から、パラフィンワックスが好ましく用いられる。
本発明に係る防水材組成物を構造物等の縦面に施工する場合などには、施工中のずり落ちを防ぐために、チクソ性付与剤を配合することが好ましい。
上記チクソ性付与剤としては、特に限定されないが、例えば、コロイダルシリカ、溶融シリカ、シリカエーロゲル、有機改質粘土、クレー、シリカパウダー、酢酸セルロース、アエロジル(日本アエロジル(株)の商品名)、チクソゲル(横浜化成(株)の商品名)、ディスパロン(楠本化成(株)の商品名)、レオロシール(徳山ソーダ(株)の商品名)等が挙げられる。
【0028】
チクソ性付与剤の配合量は、特に限定はされないが、たとえば、熱硬化性樹脂(イ)100重量部に対し、好ましくは0.25〜5重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。チクソ性付与剤の配合量が0.25重量部未満だと、チクソ性が充分でなく、タテ面を有する型面に組成物を塗布した際にタレが発生する傾向があり、5重量部を超えると、組成物の粘度が高くなり、取り扱い性が低下する傾向がある。
本発明に係る防水材組成物を硬化させるためには、硬化剤を配合することが好ましい。
【0029】
硬化剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシネオジケネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキシド等の有機過酸化物;アゾビス(イソ)ブチロニトリル、アゾビスジエチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0030】
硬化剤の配合量は、特に限定はされない。
本発明に係る防水材組成物には、ライフ安定化やゲル化時間の調節のために、重合禁止剤を配合することが好ましい。
重合禁止剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、メトキシハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、フェノチアジン、ナフテン酸銅等が挙げられる。
【0031】
重合禁止剤の配合量は、特に限定はされない。
本発明に係る防水材組成物には、硬化時間の調節のために、硬化促進剤を配合することが好ましい。
硬化促進剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、2価のアセチルアセトンコバルト、3価のアセチルアセトンコバルト、オクテン酸カリウム、ナフテン酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセテート、ナフテン酸バナジウム、オクテン酸バナジウム、バナジウムアセテート、リチウムアセチルアセトナート等の有機金属塩;ジメチルアニリン等のアミン系化合物;トリフェニルホスフィン等の含リン系化合物;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、N−モルフォリノアセトアセタミド等のβ−ジケトン系化合物等が挙げられる。
【0032】
硬化促進剤の配合量は、特に限定はされない。
本発明に係る防水材組成物には、必要により、その他の副資材を配合することができる。
上記その他の副資材としては、特に限定されないが、例えば、染料、体質顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、減粘剤、低収縮剤、無機充填剤、有機充填剤、ワックス等の乾燥剤、分散剤等が挙げられる。これらの配合量は特に限定されない。
【0033】
[防水被覆構造体およびその施工方法]
本発明に係る防水被覆構造体は、
上から、
(A)トップコート層、
(B)防水層、
(C)プライマー層、
(D)基体、
の構成を有する防水被覆構造体において、
前記防水層(B)が、本発明の防水材組成物を硬化してなる層であることを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係る防水被覆構造体の施工方法は、
基体(D)の上に、プライマー層(C)を形成し、さらに、本発明の防水材組成物を硬化してなる防水層(B)、トップコート層(A)を順次形成することを特徴とする。
以下、各構成要素を中心に、詳細に説明する。
本発明におけるトップコート層(A)としては、特に限定されないが、例えば、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂等を用いて形成したものが挙げられる。
【0035】
また、トップコート層(A)中および/またはトップコート層(A)と後述する防水層(B)との間に珪砂等の骨材を存在させることにより、防水被覆構造体を滑り止めを施した歩行仕上げとすることができる。
さらに、トップコート層を着色するために、該トップコート層形成に用いる樹脂に顔料を配合してもよい。
トップコート層(A)の塗布量は、特に限定されないが、好ましくは50〜600g/m2 、より好ましくは100〜500g/m2 である。塗布する方法としては、例えば、刷毛、ロール、スプレー等が挙げられる。
【0036】
本発明における防水層(B)は、本発明の防水材組成物を硬化してなる層である。
防水層(B)の形成方法としては特に限定されないが、例えば、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、樹脂含浸マット状繊維強化材を敷設する方法、マット状繊維強化材施工後に樹脂を注型する方法などが挙げられる。
防水層(B)の厚みは、特に限定されないが、通常好ましくは0.5〜5mm、より好ましくは1〜3mmである。
本発明におけるプライマー層(C)は、基体(D)と防水層(B)とを接着させるため等を目的とする層である。プライマー層(C)としては、熱硬化性樹脂と接着性のよいものが望まれ、例えば、コンクリート含浸型の低粘度品(粘度300cps以下)が好ましく、具体的には、一液湿気硬化型ウレタン系プライマー、ビスフェノールA型エポキシ/ポリアミン系プライマー、不飽和ポリエステル樹脂系プライマー、ビニルエステル樹脂系プライマーなどを用いることができる。
【0037】
プライマーの塗布量は、溶液で50〜500g/m2 、好ましくは70〜300g/m2 、より好ましくは100〜200g/m2 である。塗布する手段としては、ハケ、ロール、スプレーガン等を用いる。
本発明における基体(D)としては、特に限定されないが、例えば、建築物・構造物の屋根、屋上、中間階、地上階、ベランダ、地下室等の表面やそれぞれの表面に施された既設防水面が挙げられ、材質としては、セメントコンクリート、アスファルトコンクリート、モルタル、石綿ストレート、ALC板、PC板、FRP材、プラスチック、木質材、金属等が挙げられる。
【0038】
本発明に係る防水被覆構造体の施工方法は、まず、基体(D)にプライマーを塗布してプライマー層(C)を形成させる。続いて、プライマー層の上に繊維強化材を敷設した後に熱硬化性樹脂を含浸させるか、あるいは、繊維強化材に熱硬化性樹脂を含浸させたものを敷設して、防水層(B)を形成させる。最後に(B)層の上に、トップコート層(A)を形成する。
本発明に係る防水被覆構造体が利用されるものは、特に限定されないが、例えば、建築物の屋根、屋上、中間階、地上階、ベランダ、地上室、駐車場等が挙げられる。
【0039】
【実施例】
以下、合成例、比較合成例、実施例、比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下で「部」は重量部を表す。
また、数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)(商品名:HLC−8120GPC、東ソー社製)によって測定した。
(合成例1)
温度計、攪拌機、不活性ガス吹込管、および、還流冷却管を備えた四ツ口フラスコに、無水マレイン酸262部、ジシクロペンタジエン(純度95%)264部、および、脱イオン水36部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら125℃で3時間かけて付加反応を行い、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物を得た。次に、無水フタル酸740部、および、ジエチレングリコール763部を加えて混合し、窒素ガスを吹き込みながら215℃まで昇温し、15時間反応後、酸価22であり、ジシクロペンテニル基含有量が13.4重量%、数平均分子量1360である、ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステル(1)を得た。さらに、スチレン1038部、ハイドロキノン0.1部を加え、粘度410mPa・sの、本発明の熱硬化性樹脂(1)を得た。
【0040】
得られた、熱硬化性樹脂(1)の硬化物の引張り強さ、および、引張り伸び率を、JIS−K−7113引っ張り試験方法に準拠して測定した。結果を表1に示した。
なお、硬化物は、熱硬化性樹脂(1)100重量部に対して、オクテン酸コバルト0.3重量部、硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬アクゾ社製)1.0重量部を配合して、室温で硬化後、さらに110℃で2時間、オーブン中でアフターキュアーしたものを用いた。
(合成例2)
合成例1と同様にして、無水マレイン酸216部、ジシクロペンタジエン(純度95%)264部、および、脱イオン水36部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら125℃で3時間かけて付加反応を行い、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物を得た。次に、無水フタル酸289部、アジピン酸107部、および、ジエチレングリコール431部を加えて混合し、窒素ガスを吹き込みながら215℃まで昇温し、11時間反応後、酸価20であり、ジシクロペンテニル基含有量が20.1重量%、数平均分子量1041である、ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステル(2)を得た。さらに、スチレン526部、ハイドロキノン0.1部を加え、粘度620mPa・sの、本発明の熱硬化性樹脂(2)を得た。
【0041】
得られた、熱硬化性樹脂(2)の硬化物の引張り強さ、および、引張り伸び率を、合成例1と同様に、JIS−K−7113引っ張り試験方法に準拠して測定した。結果を表1に示した。
(比較合成例1)
合成例1と同様にして、無水マレイン酸686部、ジシクロペンタジエン(純度95%)278部、および、脱イオン水36部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら130℃で3時間かけて付加反応を行い、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物を得た。次に、イソフタル酸496部、および、プロピレングリコール798部を加えて混合し、窒素ガスを吹き込みながら215℃まで昇温し、8時間反応後、酸価20であり、ジシクロペンテニル基含有量が12.8重量%、数平均分子量2060である、ジシクロペンテニル基を有する比較不飽和ポリエステル(1)を得た。さらに、スチレン1258部、ハイドロキノン0.32部を加え、粘度480mPa・sの比較熱硬化性樹脂(1)を得た。
【0042】
得られた、比較熱硬化性樹脂(1)の硬化物の引張り強さ、および、引張り伸び率を、合成例1と同様に、JIS−K−7113引っ張り試験方法に準拠して測定した。結果を表1に示した。
(比較合成例2)
合成例1と同様にして、無水マレイン酸314部、無水フタル酸755部、アジピン酸248部、および、ジエチレングリコール1092部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら215℃まで昇温し、8時間反応後、酸価24である比較不飽和ポリエステル(2)を得た。さらに、スチレン1026部、ハイドロキノン0.30部を加え、粘度540mPa・sの比較熱硬化性樹脂(2)を得た。
【0043】
得られた、比較熱硬化性樹脂(2)の硬化物の引張り強さ、および、引張り伸び率を、合成例1と同様に、JIS−K−7113引っ張り試験方法に準拠して測定した。結果を表1に示した。
(実施例1〜3、比較例1〜3)
上記合成例1,2で得られた熱硬化性樹脂(1),(2)、および、比較合成例1,2で得られた比較熱硬化性樹脂(1),(2)それぞれ100部にオクテン酸コバルト0.5部、硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬アクゾ社製)1.0部を添加配合し、硬化剤添加熱硬化性樹脂(1),(2)、および、硬化剤添加比較熱硬化性樹脂(1),(2)を得た。
【0044】
また、上記合成例1で得られた熱硬化性樹脂(1)100部にオクテン酸コバルト0.5部、硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬アクゾ社製)1.0部、パラフィンワックス0.01部を添加配合し、硬化剤添加熱硬化性樹脂(3)を得た。
さらに、上記比較合成例2で得られた比較熱硬化性樹脂(2)100部にオクテン酸コバルト0.5部、硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬アクゾ社製)1.0部、パラフィンワックス0.06部を添加配合し、硬化剤添加比較熱硬化性樹脂(3)を得た。
【0045】
JIS規格歩道用コンクリート平板(300×300×60mm)表面上に1液型ウレタンプライマー(商品名:NS−YP、日本触媒社製)を0.2mmの厚みで均一に塗布し、3時間放置して、指触乾燥程度に乾燥し、プライマー層を形成した。
次に、上記で得られた硬化剤添加熱硬化性樹脂(1)〜(3)、および、硬化剤添加比較熱硬化性樹脂(1)〜(3)のそれぞれを0.4mmの厚みで均一に塗布し、続いて、その上にガラスマット#380、2プライにガラス含有量が約23重量%となるように同様の硬化剤添加樹脂を含浸させ、防水剤組成物を得た。さらに、2時間放置して、約2mm厚の防水層を形成した。この際、指触によるタックフリー性を確認した。結果を表2に示した。
【0046】
なお、タックフリー性は以下の基準によって評価した。
○:指触面に指紋が残らない。
×:指触面に指紋が残る。
続いて、不飽和ポリエステル樹脂(商品名:エポラックN−325、日本触媒社製)に硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬アクゾ社製)とオクテン酸コバルトを配合した樹脂組成物(不飽和ポリエステル樹脂/硬化剤/オクテン酸コバルト=100/1/0.3重量部)を0.4mmの厚みで均一に塗布し、4時間放置して、トップコート層を形成し、防水被覆構造体(1)〜(3)、および、比較防水被覆構造体(1)〜(3)を得た。
【0047】
得られた防水被覆構造体(1)〜(3)、および、比較防水被覆構造体(1)〜(3)の接着性、および、耐疲労性について、下記の方法により評価した。結果を表2に示した。
〔接着性の評価:建研式接着力試験機による破壊強度測定〕
得られた防水舗装構造体、あるいは、比較防水舗装構造体に対し、コアーカッターで4.0cm×4.0cmの正方形に切り込みをコンクリート板に達するまで行った。
該正方形上にアタッチメントをエポキシ樹脂接着剤(商品名:セメダイン1500、セメダイン社製)で取り付けた。4日間養生して接着剤を硬化させ、建研式接着力試験機(商品名:LPT−1500、山本工重機社製)で測定した。載荷速度は約1kgf/cm2 /secとし、破壊強度値は次式により算出した。
【0048】
破壊強度値(kgf/cm2 )=破壊荷重(kgf)/接着面積(cm2 )
〔耐疲労性の評価:疲労試験〕
建築工事標準仕様書・同回折JASS8防水工事(1986)の疲労試験条件に準拠して行った。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、タックフリー性に優れ、しかも、トップコート層との接着性にも優れた、新規な防水材組成物と、それを用いた防水被覆構造体、およびその施工方法を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、防水材組成物、防水被覆構造体、およびその施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、屋上等の建築空間や道路などの防水施工として、FRP防水層を用いるFRP防水工法が広く採用されている。FRP防水工法によれば、他の防水工法に比べて強度、表面硬度が高く、耐久性、寸法安定性にも優れた防水施工が可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
FRP防水工法においては、施工時に防水層を形成した後、防水層上に作業者がのってトップコート層を設けることが通常行われるため、防水層表面のタックフリー性が求められる。
このタックフリー性を発揮させるため、防水層に用いる防水材組成物中にワックスを添加することが一般に行われている。しかし、防水層上にワックスが存在すると、タックフリー性は発揮できるが、一方でトップコート層との密着性が低下するという問題がある。このため、ワックスを後に除去する作業が行われることがあるが、この作業は非常に煩雑なものとなっている。
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、タックフリー性に優れ、しかも、トップコート層との接着性にも優れた、新規な防水材組成物と、それを用いた防水被覆構造体、およびその施工方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、特定の物性を有する特定の樹脂成分を有する防水材組成物とすれば、ワックスを全く用いないか、あるいは、用いたとしても極めて少量の使用においても、優れたタックフリー性が発現できることを見い出した。また、この防水材組成物を用いた防水被覆構造体も、耐久性など優れた物性を有することが判った。
すなわち、本発明に係る防水材組成物は、
(イ)熱硬化性樹脂、
(ロ)繊維強化材、
を含んでなる防水材組成物であって、
前記熱硬化性樹脂(イ)は、ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステルと重合性モノマーを含有するものであり、
該不飽和ポリエステル中のジシクロペンテニル基の含有量が10重量%以上であり、
前記熱硬化性樹脂(イ)を硬化してなる硬化物が、JIS−K−7113で規定する引張試験において、引張強さが10MPa以上、引張伸び率が20%以上の物性を有する
ことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る防水被覆構造体は、
上から、
(A)トップコート層、
(B)防水層、
(C)プライマー層、
(D)基体、
の構成を有する防水被覆構造体において、
前記防水層(B)が、本発明の防水材組成物を硬化してなる層であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る防水被覆構造体の施工方法は、
基体(D)の上に、プライマー層(C)を形成し、さらに、本発明の防水材組成物を硬化してなる防水層(B)、トップコート層(A)を順次形成することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[防水材組成物]
本発明に係る防水材組成物は、
(イ)熱硬化性樹脂、
(ロ)繊維強化材、
を含んでなる防水材組成物であって、
前記熱硬化性樹脂(イ)は、ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステルと重合性モノマーを含有するものであり、
該不飽和ポリエステル中のジシクロペンテニル基の含有量が10重量%以上であり、
前記熱硬化性樹脂(イ)を硬化してなる硬化物が、JIS−K−7113で規定する引張試験において、引張強さが10MPa以上、引張伸び率が20%以上の物性を有する
ことを特徴とする。
【0009】
本発明における熱硬化性樹脂(イ)は、ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステルと重合性モノマーを含有するものである。
前記ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステルとしては、該不飽和ポリエステル中のジシクロペンテニル基の含有量が10重量%以上であれば、特に限定されない。
なお、本発明では、下記の式(i)で表される置換基と式(ii)で表される置換基とを総称してジシクロペンテニル基と呼ぶものとする。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
前記不飽和ポリエステルは、ジシクロペンテニル基として、上記式(i)で表される置換基と上記式(ii)で表される置換基のうちの一方のみを有していてもよいし、両方とも有していてもよい。
前記不飽和ポリエステルの合成方法としては、特に限定はされないが、たとえば、特開平9−111108号公報に開示されている下記(1)〜(2)の方法や、下記(3)の方法等が挙げられる。
(1)通常の不飽和ポリエステルの原料である酸成分および多価アルコールの少なくとも一部をジシクロペンテニル基を有する化合物に置き換えることにより不飽和ポリエステルにジシクロペンテニル基を導入する方法、たとえば、酸成分の一部をジシクロペンタジエンの不飽和多塩基酸付加物で置き換えるか、あるいは、多価アルコールの一部をジシクロペンタジエンのグリコール付加物類やヒドロキシジシクロペンタジエンで置き換える方法。
【0013】
(2)酸成分と多価アルコールとの縮合反応時に、酸成分または多価アルコールとジシクロペンタジエンとの付加によってジシクロペンテニル基を有する化合物を生成させる方法、たとえば、通常の不飽和ポリエステルの合成に用いられる酸成分および多価アルコールとジシクロペンタジエンとを混合して縮合反応を行うか、あるいは、酸成分と多価アルコールを混合して縮合反応を開始させた後にジシクロペンタジエンを添加して変性する方法。
(3)酸成分と多価アルコールとの縮合反応を行った後、ジシクロペンタジエンを混合して、末端のカルボン酸残基や水酸残基に付加させる方法。
【0014】
なお、上記方法のいずれか2つ以上を併用することも可能である。
上記合成法(1)で用いられるジシクロペンタジエンの不飽和多塩基酸付加物としては、特に限定はされないが、不飽和多塩基酸をジシクロペンタジエンに付加させてなる付加物、たとえば、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物等のジシクロペンタジエンの不飽和二塩基酸付加物;ジシクロペンタジエンのマレイン酸半エステル付加物等が挙げられる。
上記合成法(1)の場合、酸成分または多価アルコールの一部と置き換えるために用いられるジシクロペンテニル基を有する化合物としては、ジシクロペンタジエンの不飽和二塩基酸付加物が好ましく、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物が特に好ましい。これらを用いると、防水材組成物とした時に優れたタックフリー性や寸法安定性を示す不飽和ポリエステルが得られる。なお、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物は、水の存在下でジシクロペンタジエンとマレイン酸との付加を行うことによって製造することができる。
【0015】
前記不飽和ポリエステルの合成に用いられる酸成分および多価アルコールとしては、通常の不飽和ポリエステルと同様のものを使用することができ、特に限定はされないが、たとえば、酸成分は、不飽和二塩基酸および/またはその無水物を必須成分とし、必要に応じ、その他の酸成分をさらに含むものが使用可能である。
前記不飽和二塩基酸および/またはその無水物としては、特に限定はされないが、たとえば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、アコニット酸、イタコン酸等のα,β−不飽和二塩基酸等が挙げられる。これらは、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。これらの中でもマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸が、容易に入手できることから好ましい。
【0016】
併用可能なその他の酸成分としては、特に限定はされないが、たとえば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸等の脂肪族飽和二塩基酸;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸;テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。また、不飽和ポリエステルの末端封鎖のために、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等の一塩基酸も使用可能である。上記その他の酸成分は、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0017】
酸成分全体に対する前記不飽和二塩基酸および/またはその無水物の使用割合は、特に限定はされないが、好ましくは15〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%である。
また、多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類;、ビスフェノールAとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加物;トリメチロールプロパン等のトリオール類;エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類;等が挙げられる。また、不飽和ポリエステルの末端封鎖のために、ベンジルアルコール等の一価アルコールも使用可能である。上記アルコールは、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0018】
前記不飽和ポリエステルを得るために酸成分と多価アルコールとを縮合反応させる際のそれらの使用量の比は、特に限定はされないが、酸成分1当量に対し、多価アルコールが、好ましくは0.90〜1.10当量、より好ましくは0.95〜1.05当量である。
前記不飽和ポリエステルの反応原料には、酸成分と多価アルコールに加え、必要に応じ、その他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、特に限定はされないが、たとえば、縮合反応を促進させる触媒や、消泡剤、ゲル化を防止するための重合禁止剤等が挙げられる。これら他の成分は、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0019】
前記不飽和ポリエステルを合成する際、酸成分とジシクロペンタジエンとの使用量の比は、酸成分1モルに対し、ジシクロペンタジエンが、好ましくは0.1〜1.0モル、より好ましくは0.3〜0.8モルである。ジシクロペンタジエンの使用量が0.1モル未満だと、該不飽和ポリエステルを含有する防水材組成物で防水層を形成した際の表面乾燥性が悪くなる可能性があり、1.0モルを超えると、該防水材組成物の硬化性が悪くなる可能性がある。
なお、前記不飽和ポリエステルの合成は、たとえば、Technical Proceedings,36th Annual Conference,Reinforced Plastics/Composites Institute,The Society of the Plastics Industry Inc.,Session 7−E(1981)に示されている従来公知の方法によっても行うことができる。
【0020】
前記ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステル中、ジシクロペンテニル基の含有率は、10重量%以上であることが必須であり、好ましくは10〜40重量%の範囲内である。ジシクロペンテニル基の含有率が10重量%未満だと、該不飽和ポリエステルを含有する防水材組成物で防水材を形成した際の表面乾燥性が悪くなる可能性がある。
前記不飽和ポリエステルのジシクロペンテニル基含有率は、たとえば、以下の方法により求めることができる。
まず、エステル鎖を形成する成分である酸成分および多価アルコール(ジシクロペンテニル基を有する化合物を含む)の総重量から、酸成分と多価アルコールとの縮合反応によって脱離する成分の重量を差し引き、得られた値を不飽和ポリエステルの全体重量とする。また、使用したジシクロペンテニル基を有する化合物のモル数に、ジシクロペンテニル基の分子量(132)を掛けて得られた値をジシクロペンテニル基の重量とする。そして、ジシクロペンテニル基の重量を不飽和ポリエステルの全体重量で割った値を、求めるジシクロペンテニル基含有率とする。
【0021】
なお、縮合反応時にジシクロペンテニル基を有する化合物を生成させた場合には、ジシクロペンテニル基を有する化合物の重量は、ジシクロペンテニル基を有する化合物の生成に用いた原料の重量から計算した理論量とすればよい。
以下に計算例を示す。すなわち、たとえば、ジシクロペンタジエン1モル(132g)と無水マレイン酸1モル(98g)と水1モル(18g)とを用いて生成させたジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物を、エチレングリコール0.6モル(37.2g)と脱水縮合させた場合には、次のようになる。まず、生成するジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物の理論量は1モルであるから、重量は、132g+98g+18g=248gとなる。そして、縮合によって脱離する水は、水酸基が1.2モル、カルボキシル基が1モルであることから、1モルであるので、重量は18×1=18gとなる。したがって、ジシクロペンテニル基含有率は、{132g/(248g+37.2g−18g)}×100=49.4重量%となる。
【0022】
前記不飽和ポリエステルにおける重合性二重結合の化学当量、すなわち、重合性二重結合一つ当たりの数平均分子量としては、特に限定されないが、400〜2000の範囲内であることが好ましい。400未満であると、該不飽和ポリエステルを含む防水材組成物を用いて防水層を形成した場合、下地基体の動きに対する追従性に劣るおそれがある。一方、2000を超えると、該不飽和ポリエステルを含む防水材組成物の硬化性が悪くなるおそれがある。
本発明における重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジアリルフタレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。これら重合性モノマーの中でも、比較的入手が安価で容易であることと、不飽和ポリエステルとの共重合性に優れることから、スチレンが好ましい。
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂(イ)中のジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステルと重合性モノマーの配合割合は、特に限定されないが、該不飽和ポリエステルが30〜90重量%の範囲内が好ましく、40〜80重量%の範囲内であることがさらに好ましく、また、該重合性モノマーが70〜10重量%の範囲内が好ましく、60〜20重量%の範囲内がさらに好ましい。
前記不飽和ポリエステルの配合割合が30重量%未満では、該熱硬化性樹脂(イ)を含有する防水材組成物で防水層を形成した際の表面乾燥性が悪くなる可能性があり、90重量%を超えると該熱硬化性樹脂を含有する防水材組成物の粘度が高くなり作業性が悪くなる可能性がある。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂中には、本発明の効果が妨げられない範囲内で、その他の不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等を含有していてもよい。
本発明に係る防水材組成物は、熱硬化性樹脂(イ)を硬化してなる硬化物が、JIS−K−7113で規定する引張試験において、引張強さが10MPa以上、引張伸び率が20%以上の物性を有することを特徴とする。
上記引張強さが10MPa未満では、該熱硬化性樹脂(イ)を含む防水材組成物を用いて防水層を形成した場合に、防水層の強度が低くなるため、外力により容易に防水層に亀裂が生じるおそれがある。
【0025】
また、上記引張伸び率が20%未満では、該熱硬化性樹脂(イ)を含む防水材組成物を用いて防水層を形成した場合に、下地基体の動きに対する追従性に劣るおそれがある。
本発明の防水材組成物中の熱硬化性樹脂(イ)の割合は、特に限定されないが、40〜95重量%の範囲内が好ましく、60〜90重量%の範囲内がさらに好ましい。
本発明における繊維強化材(ロ)としては、従来公知の繊維強化プラスチックに用いられるものを使用でき、特に限定はされないが、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維;ビニロン、フェノール、ナイロン、テフロン、アラミド、ポリエステル等の有機繊維等が挙げられる。その形状も特に限定はされず、たとえば、クロスやチョップストランドマット、プリフォーマブルマット、コンテニュアンスストランドマット、サーフェシングマット等のマット状、チョップ状、ロービング状等が挙げられる。
【0026】
繊維強化材(ロ)の割合は、本発明における防水材組成物の総重量に対し、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
本発明における防水材組成物は、たとえば、熱硬化性樹脂(イ)をマット状等の繊維強化材(ロ)に含浸させるか、あるいは、チョップ状等の繊維強化材(ロ)を熱硬化性樹脂(イ)と混合することにより得ることができる。
本発明に係る防水材組成物は、その特徴的な構成により、ワックスを全く含んでいなくても防水層表面の優れたタックフリー性を得ることができるが、必要により若干のワックスを配合してもよい。好ましくは、防水材組成物中の含有率が0.02重量%以下である。
【0027】
上記ワックスとしては、特に限定されないが、入手が容易な点から、パラフィンワックスが好ましく用いられる。
本発明に係る防水材組成物を構造物等の縦面に施工する場合などには、施工中のずり落ちを防ぐために、チクソ性付与剤を配合することが好ましい。
上記チクソ性付与剤としては、特に限定されないが、例えば、コロイダルシリカ、溶融シリカ、シリカエーロゲル、有機改質粘土、クレー、シリカパウダー、酢酸セルロース、アエロジル(日本アエロジル(株)の商品名)、チクソゲル(横浜化成(株)の商品名)、ディスパロン(楠本化成(株)の商品名)、レオロシール(徳山ソーダ(株)の商品名)等が挙げられる。
【0028】
チクソ性付与剤の配合量は、特に限定はされないが、たとえば、熱硬化性樹脂(イ)100重量部に対し、好ましくは0.25〜5重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。チクソ性付与剤の配合量が0.25重量部未満だと、チクソ性が充分でなく、タテ面を有する型面に組成物を塗布した際にタレが発生する傾向があり、5重量部を超えると、組成物の粘度が高くなり、取り扱い性が低下する傾向がある。
本発明に係る防水材組成物を硬化させるためには、硬化剤を配合することが好ましい。
【0029】
硬化剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシネオジケネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキシド等の有機過酸化物;アゾビス(イソ)ブチロニトリル、アゾビスジエチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0030】
硬化剤の配合量は、特に限定はされない。
本発明に係る防水材組成物には、ライフ安定化やゲル化時間の調節のために、重合禁止剤を配合することが好ましい。
重合禁止剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、メトキシハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、フェノチアジン、ナフテン酸銅等が挙げられる。
【0031】
重合禁止剤の配合量は、特に限定はされない。
本発明に係る防水材組成物には、硬化時間の調節のために、硬化促進剤を配合することが好ましい。
硬化促進剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、2価のアセチルアセトンコバルト、3価のアセチルアセトンコバルト、オクテン酸カリウム、ナフテン酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセテート、ナフテン酸バナジウム、オクテン酸バナジウム、バナジウムアセテート、リチウムアセチルアセトナート等の有機金属塩;ジメチルアニリン等のアミン系化合物;トリフェニルホスフィン等の含リン系化合物;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、N−モルフォリノアセトアセタミド等のβ−ジケトン系化合物等が挙げられる。
【0032】
硬化促進剤の配合量は、特に限定はされない。
本発明に係る防水材組成物には、必要により、その他の副資材を配合することができる。
上記その他の副資材としては、特に限定されないが、例えば、染料、体質顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、減粘剤、低収縮剤、無機充填剤、有機充填剤、ワックス等の乾燥剤、分散剤等が挙げられる。これらの配合量は特に限定されない。
【0033】
[防水被覆構造体およびその施工方法]
本発明に係る防水被覆構造体は、
上から、
(A)トップコート層、
(B)防水層、
(C)プライマー層、
(D)基体、
の構成を有する防水被覆構造体において、
前記防水層(B)が、本発明の防水材組成物を硬化してなる層であることを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係る防水被覆構造体の施工方法は、
基体(D)の上に、プライマー層(C)を形成し、さらに、本発明の防水材組成物を硬化してなる防水層(B)、トップコート層(A)を順次形成することを特徴とする。
以下、各構成要素を中心に、詳細に説明する。
本発明におけるトップコート層(A)としては、特に限定されないが、例えば、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂等を用いて形成したものが挙げられる。
【0035】
また、トップコート層(A)中および/またはトップコート層(A)と後述する防水層(B)との間に珪砂等の骨材を存在させることにより、防水被覆構造体を滑り止めを施した歩行仕上げとすることができる。
さらに、トップコート層を着色するために、該トップコート層形成に用いる樹脂に顔料を配合してもよい。
トップコート層(A)の塗布量は、特に限定されないが、好ましくは50〜600g/m2 、より好ましくは100〜500g/m2 である。塗布する方法としては、例えば、刷毛、ロール、スプレー等が挙げられる。
【0036】
本発明における防水層(B)は、本発明の防水材組成物を硬化してなる層である。
防水層(B)の形成方法としては特に限定されないが、例えば、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、樹脂含浸マット状繊維強化材を敷設する方法、マット状繊維強化材施工後に樹脂を注型する方法などが挙げられる。
防水層(B)の厚みは、特に限定されないが、通常好ましくは0.5〜5mm、より好ましくは1〜3mmである。
本発明におけるプライマー層(C)は、基体(D)と防水層(B)とを接着させるため等を目的とする層である。プライマー層(C)としては、熱硬化性樹脂と接着性のよいものが望まれ、例えば、コンクリート含浸型の低粘度品(粘度300cps以下)が好ましく、具体的には、一液湿気硬化型ウレタン系プライマー、ビスフェノールA型エポキシ/ポリアミン系プライマー、不飽和ポリエステル樹脂系プライマー、ビニルエステル樹脂系プライマーなどを用いることができる。
【0037】
プライマーの塗布量は、溶液で50〜500g/m2 、好ましくは70〜300g/m2 、より好ましくは100〜200g/m2 である。塗布する手段としては、ハケ、ロール、スプレーガン等を用いる。
本発明における基体(D)としては、特に限定されないが、例えば、建築物・構造物の屋根、屋上、中間階、地上階、ベランダ、地下室等の表面やそれぞれの表面に施された既設防水面が挙げられ、材質としては、セメントコンクリート、アスファルトコンクリート、モルタル、石綿ストレート、ALC板、PC板、FRP材、プラスチック、木質材、金属等が挙げられる。
【0038】
本発明に係る防水被覆構造体の施工方法は、まず、基体(D)にプライマーを塗布してプライマー層(C)を形成させる。続いて、プライマー層の上に繊維強化材を敷設した後に熱硬化性樹脂を含浸させるか、あるいは、繊維強化材に熱硬化性樹脂を含浸させたものを敷設して、防水層(B)を形成させる。最後に(B)層の上に、トップコート層(A)を形成する。
本発明に係る防水被覆構造体が利用されるものは、特に限定されないが、例えば、建築物の屋根、屋上、中間階、地上階、ベランダ、地上室、駐車場等が挙げられる。
【0039】
【実施例】
以下、合成例、比較合成例、実施例、比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下で「部」は重量部を表す。
また、数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)(商品名:HLC−8120GPC、東ソー社製)によって測定した。
(合成例1)
温度計、攪拌機、不活性ガス吹込管、および、還流冷却管を備えた四ツ口フラスコに、無水マレイン酸262部、ジシクロペンタジエン(純度95%)264部、および、脱イオン水36部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら125℃で3時間かけて付加反応を行い、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物を得た。次に、無水フタル酸740部、および、ジエチレングリコール763部を加えて混合し、窒素ガスを吹き込みながら215℃まで昇温し、15時間反応後、酸価22であり、ジシクロペンテニル基含有量が13.4重量%、数平均分子量1360である、ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステル(1)を得た。さらに、スチレン1038部、ハイドロキノン0.1部を加え、粘度410mPa・sの、本発明の熱硬化性樹脂(1)を得た。
【0040】
得られた、熱硬化性樹脂(1)の硬化物の引張り強さ、および、引張り伸び率を、JIS−K−7113引っ張り試験方法に準拠して測定した。結果を表1に示した。
なお、硬化物は、熱硬化性樹脂(1)100重量部に対して、オクテン酸コバルト0.3重量部、硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬アクゾ社製)1.0重量部を配合して、室温で硬化後、さらに110℃で2時間、オーブン中でアフターキュアーしたものを用いた。
(合成例2)
合成例1と同様にして、無水マレイン酸216部、ジシクロペンタジエン(純度95%)264部、および、脱イオン水36部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら125℃で3時間かけて付加反応を行い、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物を得た。次に、無水フタル酸289部、アジピン酸107部、および、ジエチレングリコール431部を加えて混合し、窒素ガスを吹き込みながら215℃まで昇温し、11時間反応後、酸価20であり、ジシクロペンテニル基含有量が20.1重量%、数平均分子量1041である、ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステル(2)を得た。さらに、スチレン526部、ハイドロキノン0.1部を加え、粘度620mPa・sの、本発明の熱硬化性樹脂(2)を得た。
【0041】
得られた、熱硬化性樹脂(2)の硬化物の引張り強さ、および、引張り伸び率を、合成例1と同様に、JIS−K−7113引っ張り試験方法に準拠して測定した。結果を表1に示した。
(比較合成例1)
合成例1と同様にして、無水マレイン酸686部、ジシクロペンタジエン(純度95%)278部、および、脱イオン水36部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら130℃で3時間かけて付加反応を行い、ジシクロペンタジエンのマレイン酸付加物を得た。次に、イソフタル酸496部、および、プロピレングリコール798部を加えて混合し、窒素ガスを吹き込みながら215℃まで昇温し、8時間反応後、酸価20であり、ジシクロペンテニル基含有量が12.8重量%、数平均分子量2060である、ジシクロペンテニル基を有する比較不飽和ポリエステル(1)を得た。さらに、スチレン1258部、ハイドロキノン0.32部を加え、粘度480mPa・sの比較熱硬化性樹脂(1)を得た。
【0042】
得られた、比較熱硬化性樹脂(1)の硬化物の引張り強さ、および、引張り伸び率を、合成例1と同様に、JIS−K−7113引っ張り試験方法に準拠して測定した。結果を表1に示した。
(比較合成例2)
合成例1と同様にして、無水マレイン酸314部、無水フタル酸755部、アジピン酸248部、および、ジエチレングリコール1092部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら215℃まで昇温し、8時間反応後、酸価24である比較不飽和ポリエステル(2)を得た。さらに、スチレン1026部、ハイドロキノン0.30部を加え、粘度540mPa・sの比較熱硬化性樹脂(2)を得た。
【0043】
得られた、比較熱硬化性樹脂(2)の硬化物の引張り強さ、および、引張り伸び率を、合成例1と同様に、JIS−K−7113引っ張り試験方法に準拠して測定した。結果を表1に示した。
(実施例1〜3、比較例1〜3)
上記合成例1,2で得られた熱硬化性樹脂(1),(2)、および、比較合成例1,2で得られた比較熱硬化性樹脂(1),(2)それぞれ100部にオクテン酸コバルト0.5部、硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬アクゾ社製)1.0部を添加配合し、硬化剤添加熱硬化性樹脂(1),(2)、および、硬化剤添加比較熱硬化性樹脂(1),(2)を得た。
【0044】
また、上記合成例1で得られた熱硬化性樹脂(1)100部にオクテン酸コバルト0.5部、硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬アクゾ社製)1.0部、パラフィンワックス0.01部を添加配合し、硬化剤添加熱硬化性樹脂(3)を得た。
さらに、上記比較合成例2で得られた比較熱硬化性樹脂(2)100部にオクテン酸コバルト0.5部、硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬アクゾ社製)1.0部、パラフィンワックス0.06部を添加配合し、硬化剤添加比較熱硬化性樹脂(3)を得た。
【0045】
JIS規格歩道用コンクリート平板(300×300×60mm)表面上に1液型ウレタンプライマー(商品名:NS−YP、日本触媒社製)を0.2mmの厚みで均一に塗布し、3時間放置して、指触乾燥程度に乾燥し、プライマー層を形成した。
次に、上記で得られた硬化剤添加熱硬化性樹脂(1)〜(3)、および、硬化剤添加比較熱硬化性樹脂(1)〜(3)のそれぞれを0.4mmの厚みで均一に塗布し、続いて、その上にガラスマット#380、2プライにガラス含有量が約23重量%となるように同様の硬化剤添加樹脂を含浸させ、防水剤組成物を得た。さらに、2時間放置して、約2mm厚の防水層を形成した。この際、指触によるタックフリー性を確認した。結果を表2に示した。
【0046】
なお、タックフリー性は以下の基準によって評価した。
○:指触面に指紋が残らない。
×:指触面に指紋が残る。
続いて、不飽和ポリエステル樹脂(商品名:エポラックN−325、日本触媒社製)に硬化剤(商品名:カヤメックM、化薬アクゾ社製)とオクテン酸コバルトを配合した樹脂組成物(不飽和ポリエステル樹脂/硬化剤/オクテン酸コバルト=100/1/0.3重量部)を0.4mmの厚みで均一に塗布し、4時間放置して、トップコート層を形成し、防水被覆構造体(1)〜(3)、および、比較防水被覆構造体(1)〜(3)を得た。
【0047】
得られた防水被覆構造体(1)〜(3)、および、比較防水被覆構造体(1)〜(3)の接着性、および、耐疲労性について、下記の方法により評価した。結果を表2に示した。
〔接着性の評価:建研式接着力試験機による破壊強度測定〕
得られた防水舗装構造体、あるいは、比較防水舗装構造体に対し、コアーカッターで4.0cm×4.0cmの正方形に切り込みをコンクリート板に達するまで行った。
該正方形上にアタッチメントをエポキシ樹脂接着剤(商品名:セメダイン1500、セメダイン社製)で取り付けた。4日間養生して接着剤を硬化させ、建研式接着力試験機(商品名:LPT−1500、山本工重機社製)で測定した。載荷速度は約1kgf/cm2 /secとし、破壊強度値は次式により算出した。
【0048】
破壊強度値(kgf/cm2 )=破壊荷重(kgf)/接着面積(cm2 )
〔耐疲労性の評価:疲労試験〕
建築工事標準仕様書・同回折JASS8防水工事(1986)の疲労試験条件に準拠して行った。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、タックフリー性に優れ、しかも、トップコート層との接着性にも優れた、新規な防水材組成物と、それを用いた防水被覆構造体、およびその施工方法を提供することができる。
Claims (4)
- (イ)熱硬化性樹脂、
(ロ)繊維強化材、
を含んでなる防水材組成物であって、
前記熱硬化性樹脂(イ)は、ジシクロペンテニル基を有する不飽和ポリエステルと重合性モノマーを含有するものであり、
該不飽和ポリエステル中のジシクロペンテニル基の含有量が10重量%以上であり、
前記熱硬化性樹脂(イ)を硬化してなる硬化物が、JIS−K−7113で規定する引張試験において、引張強さが10MPa以上、引張伸び率が20%以上の物性を有する
ことを特徴とする、防水材組成物。 - ワックスを含有しない、もしくは、ワックスを0.02重量%以下の範囲内でさらに含有する、請求項1に記載の防水材組成物。
- 上から、
(A)トップコート層、
(B)防水層、
(C)プライマー層、
(D)基体、
の構成を有する防水被覆構造体において、
前記防水層(B)が、請求項1または2に記載の防水材組成物を硬化してなる層であることを特徴とする、防水被覆構造体。 - 基体(D)の上に、プライマー層(C)を形成し、さらに、請求項1または2に記載の防水材組成物を硬化してなる防水層(B)、トップコート層(A)を順次形成することを特徴とする、防水被覆構造体の施工方法。
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