JP2004339446A - アクリル系シラップ組成物、樹脂モルタル、及び積層体の施工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】基材に対する付着性が良好であり、特に、低温環境下においても付着性に優れしかも短時間で硬化可能なアクリル系シラップ組成物、及びそれを含む樹脂モルタル、及び積層体の施工方法を得る。
【解決手段】(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a)50〜90質量%、ポリエステル系樹脂(b)5〜40質量%、ワックス(c)0.1〜5質量%、硬化促進剤(d)0.5〜4質量%(但し、それら(a)〜(d)の合計量を100質量%とする)を含むアクリル系シラップ組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a)50〜90質量%、ポリエステル系樹脂(b)5〜40質量%、ワックス(c)0.1〜5質量%、硬化促進剤(d)0.5〜4質量%(但し、それら(a)〜(d)の合計量を100質量%とする)を含むアクリル系シラップ組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記)からなる基材に対する付着性に優れるアクリル系シラップ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
寒冷地帯や豪雪地帯等では、冬期に屋根、歩道、駐車場、路面等が凍結したり積雪するため、事故や怪我が多発する。そのため、それを防止する目的で、例えば路面の場合には地下水や温水等を通水するためのパイプを埋設し、そのパイプの散水孔から噴出散水する等、融雪や凍結を防止する試みがなされている。
また、その他、屋内に設置された冷凍貯蔵物を保管貯蔵するための冷凍貯蔵庫、冷凍倉庫等の入り口付近、あるいはその前室の床等の場所も凍結し易く、それを防止する必要がある。そこで、それらの箇所では歩行面の安全を確保するため、床にスチーム、温水、電気ヒーター等を設置する等の方法で凍結防止を試みていた。
しかしながら、前者の場合、地下水はその汲み上げにより地盤沈下等の環境問題が生じることから、その使用に一定の制限がある。また、後者の場合には、相当額の設備投資が必要であり、かつスチームや温水を通すための配管は腐食のため一定期間で交換が必要であるという課題があった。
【0003】
そのような状況下、凍結防止や融雪する方法として、パネル状の発熱体を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。その発熱体は、絶縁性、耐熱性、及び成形性に優れるPETフィルムにより保護されている。このPETフィルムは機械的特性、耐熱性又は耐薬品性等の優れた特性を有している。
しかしながら、PETフィルムは結晶配向性を有するため表面凝集性が高く、難接着性のフィルムである。
そのため、特許文献1には、PETフィルムとの接着性を付与するためにオレフィン樹脂系の特殊プライマー開示されている。しかしながら、その接着性は未だ十分ではなかった。
【0004】
その接着性改良のため、その他▲1▼コロナ放電処理法、火炎処理法、プラズマ処理法;▲2▼薬剤処理法;▲3▼予めPETフィルムに易接着性塗料を塗布・硬化させて易接着層を設ける方法等が知られている。しかしながら、前記▲1▼の方法では経時的に接着性能が低下する傾向にある、前記▲2▼の方法では薬剤が揮発し環境に影響を与える傾向にある、また前記▲3▼の方法では特別な装置等が必要であるといった課題がある。
さらに、そのような予めPETフィルムに表面処理を行う場合には専用の装置が必要でありその設備投資が大きいこと、及び表面処理したPETフィルムを保管している間に、PETフィルム同士が接着してしまうといった課題がある。
【0005】
一方で、発熱体を路面に埋設する場合において、発熱体及び/又は発熱体を包埋するPETフィルムの損傷や、絶縁不良、断線等の破損を防止し、かつ容易にその施工を行うため、アスファルトの他、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂等の樹脂を含む樹脂モルタルが用いられている。
しかしながら、エポキシ系樹脂は機械的強度に優れるが柔軟性に乏しいため、得られる硬化物にクラックが生じたり、硬化物の耐候性も十分ではなかった。
また、不飽和ポリエステル系樹脂は耐酸性が良好であるものの、柔軟性及び耐候性に劣る。ポリウレタン樹脂は柔軟性、耐薬品性、及び耐候性に優れるものの、高価でかつ混合後の可使時間が短いため、広い面積への施工作業性が不良であった。またそれらの樹脂は硬化するまでに長時間を要するため、特に短時間での施工が要求される場所や冬期の施工では、硬化不良となる傾向にあった。
ビニルエステル樹脂組成物や(メタ)アクリル樹脂組成物は、冬期の低温下でも比較的短時間で硬化可能であり、被膜強度、耐候性、耐薬品性、耐磨耗性等に優れる硬化塗膜を形成することができる。ところが、低温でも基材、特にPETフィルムに対する付着性に優れる樹脂モルタルは、見出されていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−43034号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特にPETからなる基材に対する付着性が良好であり、特に、低温環境下においてもその付着性に優れしかも短時間で硬化可能なアクリル系シラップ組成物、及びそれを含む樹脂モルタル、及び積層体の施工方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a)(以下、成分(a)と略記)50〜90質量%、ポリエステル系樹脂(b)(以下、成分(b)と略記)5〜40質量%、ワックス(c)(以下、成分(c)と略記)0.1〜5質量%、硬化促進剤(d)(以下、成分(d)と略記)0.5〜4質量%(但し、(a)〜(d)の合計量を100質量%とする)を含むアクリル系シラップ組成物、それを含む樹脂モルタル、及びポリエチレンテレフタレートからなる基材の片面又は両面に、その組成物を硬化させて得られる硬化物層及び/又は請求項1記載の組成物を含む樹脂モルタルを硬化させて得られる硬化層を有する積層体の施工方法にある。
【0009】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の組成物について以下詳細に説明する。
本発明で用いる成分(a)は、後述する成分(b)との相溶性を付与する成分であり、また得られる組成物の塗工作業性を調整するための成分でもある。
【0010】
成分(a)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーであれば特に限定されない。
成分(a)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン−β−ヒドロキシ(メタ)アクリレート付加物等が挙げられる。
これらは、一種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0011】
その中でも、成分(a)は、成分(b)との相溶性や、得られる組成物の塗工作業性の観点から、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)メタアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0012】
本発明において、成分(a)の含有量は、成分(a)〜成分(d)の合計量100質量%中、50〜90質量%の範囲で用いられる。
本発明において、成分(a)の含有量が50質量%より少ない場合には、成分(b)の相溶性が十分に発現しない傾向にあり、成分(a)の含有量が90質量%を超える場合には、得られる組成物の基材に対する付着性が十分に発現しない傾向にある。
【0013】
その中でも、成分(a)の含有量は、成分(a)〜(d)の合計量100質量%中に、55〜85質量%の範囲であることがより好ましい。
【0014】
また、成分(a)は、メチルメタクリレート/ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート/その他の(メタ)アクリル酸エステルモノマー=20〜50/0〜30/20〜50(質量比)の比率で混合してなる混合物であることが好ましい。
メチルメタクリレートの含有量が20〜50質量%の範囲である場合には、成分(b)の溶解性や膨潤性が良好となる傾向にあり、また得られる組成物の塗工作業性も良好となる傾向にある。
【0015】
本発明で用いる成分(b)は、PETフィルムに対する付着性を付与する成分である。また本発明の組成物の粘度を調節するための成分でもある。
【0016】
成分(b)は、特に限定されるものではないが、その中でもジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合させて得られるポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0017】
ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
これらは、一種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0018】
なお、このジカルボン酸成分は、重合時に酸の形で用いてもよいし、ジメチルエステルのようなエステル形成性の誘導体の形で用いてもよい。
【0019】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
これらは、一種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0020】
成分(b)の調製方法は特に限定されるものではなく、公知の共重合ポリエステル樹脂の重合方法で得ればよい。
具体的には、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とを直接エステル化反応させても良いし、あるいはジカルボン酸のエステル形成性誘導体とジオール成分とをエステル交換し、加熱減圧下で重縮合反応をさせてポリエステル系樹脂を得ても良い。
【0021】
その中でも、成分(b)は、基材に対する付着性と得られる組成物の硬化性とのバランスに優れることから、その成分(b)のガラス転移温度(以下、Tgと略記)が−20℃〜+30℃の範囲であることが好ましい。
【0022】
また、成分(b)は、成分(a)への相溶性、得られる組成物の取り扱い性に優れる粘度の組成物が得られること、及び基材に対する付着性の観点から、その重量平均分子量が4,000〜40,000であることが好ましい。
【0023】
成分(b)が、そのようなTgと重量平均分子量の範囲内である場合には、基材に対する付着性が良好で、塗工作業性が良好な粘度範囲の組成物が得られることから特に好ましい。
【0024】
本発明の組成物において、成分(b)の含有量は、成分(a)〜成分(d)の合計量100質量%中、5〜40質量%の範囲で用いられる。
本発明において、成分(b)の含有量が5質量%より少ない場合には、基材との付着性が十分に発現しない傾向にある。また成分(a)の含有量が40質量%を超える場合には、成分(a)への相溶性が十分に発現せず、得られる組成物の粘度が上昇して可使時間が短くなり、塗工作業性が不良となる傾向にある。
その中でも、成分(b)の含有量は10〜35質量%の範囲であることがより好ましい。
【0025】
本発明に用いる成分(c)は、組成物の硬化前の塗膜表面に空気遮断作用を付与するための成分である。成分(c)の具体例としては、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックスや、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸等が挙げられる。
その中でも、任意の融点のものに選択する幅があることから、パラフィンワックスが好ましい。
【0026】
成分(c)の融点は、適宜選択すればよく特に限定されない。その中でも、塗工時の雰囲気温度条件及び硬化反応時の発熱温度等の影響を受けずに、塗膜表面に空気遮断作用が十分に発現することから、好ましくは約40〜80℃の範囲である。
その中でも、塗工時の雰囲気温度に左右されず、塗膜表面に極めて優れる空気遮断作用が発現することから、融点の異なる2種以上のパラフィンワックスを併用することがより好ましい。
【0027】
本発明の組成物において、成分(c)の含有量は、成分(a)〜成分(d)の合計量100質量%中、0.1〜5質量%の範囲である。
本発明において、成分(c)の含有量が0.1質量%より少ない場合には、本発明の組成物の塗膜が十分に硬化しない傾向にある。また5質量%を超える場合には、上塗り層との接着性が不良となる傾向にある。
その中でも、得られる組成物の貯蔵安定性及びその硬化物の外観に優れることから、成分(c)の含有量は0.2〜2質量%の範囲であることが好ましい。
【0028】
本発明に用いる硬化促進剤(d)は公知のレドックス触媒で、本発明のアクリル系シラップ組成物を硬化させる重合促進剤として用いられる。
【0029】
この硬化促進剤(d)としては、特に限定されないが、窒素原子に直接少なくとも1個の芳香族残基が結合しているものが好ましく、N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジメチル−P−トルイジン、N,N’−ジエチル−P−トルイジン、N,N’−ジ(ヒドロキシエチル)−P−トルイジン、N,N’−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−P−トルイジン等の芳香族3級アミン類、または、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、オクチル酸ニッケル等の金属石鹸類を1種類又は2種類以上の混合系にて適宜用いることができる。
【0030】
本発明において成分(d)の含有量は、成分(a)〜(d)の合計量100質量%中に0.5〜4質量%の範囲である。
本発明において、成分(d)の含有量が0.5質量%より少ない場合には、組成物の重合反応が十分に促進せず、組成物の硬化性が不十分となる傾向にある。また4質量%を超える場合には、重合反応が急激に進行するために可使時間(塗工可能な時間)が非常に短くなる傾向にある。また、得られる硬化物の上に上塗り層を形成する場合にその付着性が不良となる傾向にある。
【0031】
本発明に用いる成分(e)は、成分(d)との組み合わせにより、公知のレドックス触媒として重合促進効果を発現する成分であり、本発明の組成物に必要に応じて適宜用いてもよい。
【0032】
成分(e)の具体例としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルフタレート、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート等が挙げられる。
これらは、一種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0033】
本発明において成分(e)の含有量は、得られる組成物の目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
例えば、本発明の組成物の可使時間を5〜30分程度とする場合には、成分(e)の含有量は、成分(a)〜(e)の合計量100質量%中に0.001〜10質量%の範囲とすることが好ましい。
本発明において、成分(e)の含有量が10質量%を超える場合には、組成物の硬化時間が短時間となる傾向にあり、また組成物の取り扱い性や塗工作業性も不良となる傾向にある。成分(d)の含有量が0.001質量%より少ない場合には、成分(e)を含有させる効果が十分に発現しない傾向にある。
その中でも、成分(e)の含有量は0.01〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
なお、本発明の組成物が、成分(a)〜(e)を含有する場合には、それらの含有量は、成分(a)/成分(b)/成分(c)/成分(d)/成分(e)=45〜85/4.5〜36/0.09〜4.5/0.4〜3.6/0.001〜10(質量%)(但し、それらの合計量が100質量%である。)であることが好ましい。
【0034】
本発明の組成物には、必要に応じて各種公知の重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤の種類は特に限定されないが、成分(d)と組み合わせることにより公知のレドックス系開始剤として用いる重合開始剤としては、例えばジアシルパーオキサイド、アルキルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系化合物や、アゾ系化合物等が挙げられる。その各種市販品をそのまま用いてもよい。
その中でも、低温硬化性と短時間硬化性等の観点から、ジアシルパーオキサイドが好ましい。
【0035】
さらにジアシルパーオキサイドの中でも、取り扱い性に優れることから、不活性であるベンゾイルパーオキサイドがより好ましい。このベンゾイルパーオキサイドの形態としては、液状、ペースト状または粉末等の固体状のいずれであってもよい。なお、ここでいう液状のベンゾイルパーオキサイドとは、例えば希釈剤により30〜55%程度に希釈された溶液等も含む。
【0036】
本発明の組成物において重合開始剤の添加量は、所望する組成物の可使時間や硬化時間や、組成物や塗布時の雰囲気下の温度条件に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
例えば、可使時間5〜30分でかつ硬化時間10〜90分の組成物を得る場合、重合開始剤の添加量は、本発明の組成物100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲が好ましい。
重合開始剤の添加量がその範囲内である場合には、本発明の組成物の重合促進効果が十分に発現する傾向にある。
より好ましくは0.5〜8質量部の範囲、特に好ましくは1〜6質量部の範囲である。
【0037】
また、本発明の組成物には、得られる硬化物の表面硬化性や低収縮性を向上させる目的で、必要に応じて、成分(a)に溶解又は膨潤可能な熱可塑性樹脂からなる重合体や共重合体や、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー等を添加することができる。
【0038】
ここでいう「溶解又は膨潤」とは、組成物中に完全に溶解している状態または組成物中に完全に溶解しないが組成物中に均一に分散している状態のことをそれぞれ意味する。
成分(a)に溶解又は膨潤可能な熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体又は共重合体、エポキシ樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。その中でも、成分(a)との相溶性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体又は共重合体が好ましい。
【0039】
(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等、公知のオリゴマーが挙げられる。
【0040】
ここでいうウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートと1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールを公知の方法で反応して得られる化合物が挙げられる。
【0041】
エポキシ(メタ)アクルレートとしては、例えば、多塩基酸無水物と水酸基含有(メタ)アクリレートの部分エステル化物と2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸を公知の方法で反応して得られるエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、ここでいう2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂とは、2官能のビスフェノールAとエピクロルヒドリンとからなる汎用のエポキシ(メタ)アクルレート樹脂のことを意味する。
【0042】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸などの多塩基酸やその無水物/エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコールの化合物/(メタ)アクリル酸付加物やグリシジル(メタ)アクリレート/前記多塩基酸無水物を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
その他本発明の組成物には、必要に応じて、ハイドロキノン等の重合抑制剤;シランカップリング剤;酸化防止剤;消泡剤;レベリング剤;アエロジル等のチクソトロピック性付与剤;炭酸カルシウム等の耐湿顔料、酸化クロム、ベンガラ等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料等の顔料;等の各種添加剤を、任意の割合で添加することができる。
【0044】
例えば、本発明の組成物の貯蔵安定性を向上させる目的で、本発明の組成物に、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノールのような重合抑制剤を添加してもよい。
【0045】
基材に対する付着性の安定化や接着強度の耐久性を付与する目的で、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グルシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を添加してもよい。
【0046】
本発明の組成物には、硬化時の硬化収縮の低減や得られる硬化物の柔軟性を向上させるために、必要に応じて可塑剤が添加してもよい。
【0047】
可塑剤の具体例としては、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジ−2−エチルヘキシルアジペート、オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル類;ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、オクチルアゼレート等のアゼラインエステル類等の2塩基性脂肪酸エステル類や、塩素化パラフィン等のパラフィン類等が挙げられる。
これらは、一種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0048】
本発明において可塑剤の添加量は、所望する性能に応じて適宜添加すればよく特に限定されるものではない。
【0049】
例えば、得られる硬化物の硬化性や、得られる硬化物からの可塑剤の滲出量を抑制させるという観点からは、可塑剤の添加量は、成分(a)〜成分(e)の合計量100質量部に対して、通常30質量部以下であることが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を超える場合には、組成物の硬化性が低下し、硬化物の表面から可塑剤が滲み出る傾向にある。
【0050】
本発明の組成物は、各種基材に塗布した後に硬化させると、基材に対する付着性が良好な硬化被膜を形成することができる。
ここでいう基材とは特に限定されるものではなく、その材質は無機物、有機物等が挙げられる。その中でも、本発明の組成物はPETフィルムに対する接着性が良好である。
【0051】
次に、本発明の樹脂モルタルについて説明する。
本発明の樹脂モルタルは、前記した本発明の組成物を含むものであればよく、必要に応じて骨材や各種添加剤を配合してもよい。
【0052】
本発明の樹脂モルタルは、低温でも、短時間で硬化し、かつ得られる硬化物はPETフィルムに対して優れた接着性を有する。
骨材としては、公知の骨材を適宜選択すればよく、特に限定されない。その中でも硬化物の外観や塗工作業性の観点から、骨材の質量平均粒子径が1μm以上あることが好ましく、また骨材100gにおけるアマニ油の吸油量が25cc以下であることが好ましい。
【0053】
骨材の具体例としては、例えば、砂、珪砂、石英砂、これらの着色あるいは焼成したもの、石英粉、珪砂粉等の岩石粉;セラミックを焼成した粉砕物;炭酸カルシウム、アルミナ、ガラスビーズ等が挙げられる。
骨材の粒径は特に限定されないが、樹脂モルタルの塗工作業性や、得られる硬化物のレベリング性を向上させるという観点から、異なる粒径の骨材を組み合わせることが好ましい。
【0054】
本発明の樹脂モルタルにおいて、骨材と前記した本発明の組成物との配合比は所望に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。その中でも、骨材と前記した本発明の組成物との混合性、樹脂モルタルの塗工性や硬化性等の点から、骨材100質量部に対して、前記した本発明の組成物を20〜45質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0055】
また、本発明の樹脂モルタルには、必要に応じて前記した添加剤等を適宜添加してもよい。
本発明の樹脂モルタルの調製方法は特に限定されず、公知の方法で各成分や添加剤等を混合して得ればよい。
また、例えば本発明の樹脂モルタルに重合促進剤等の添加剤を添加する場合には、予め本発明の組成物中に混合してもよいし、樹脂モルタル調製時に混合してもよい。それにより、速やかに成分(a)と成分(e)との重合反応が開始して、本発明の樹脂モルタルの硬化を進行させることができる。
その中でも、本発明の樹脂モルタルに重合開始剤を添加する場合には、塗工の直前に添加することが好ましい。
本発明の組成物に、予め重合開始剤や重合促進剤等の添加剤が含有されている場合には、樹脂モルタル中にさらにそれらの添加剤を添加しなくてもよく、必要に応じてに適宜それらを含有させればよい。
【0056】
本発明の樹脂モルタルの塗布方法は、目的に応じてローラーやコテ等、公知の塗工方法を適宜選択することができる。
【0057】
本発明の積層体の施工方法は、PETからなる基材の片面又は両面に、本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物層及び/又は請求項1記載の組成物を含む樹脂モルタルを硬化させて得られる硬化層を有する積層体の施工方法である。
この施工の具体例としては、例えば、融雪や凍結を防止するため、面状等の発熱体を、道路、床、壁面等に埋設する施工が挙げられる。
【0058】
ここでいう発熱体とは特に限定されないが、発熱体本体の破損を防止するために、通常PETフィルムで包埋されている。本発明の組成物及び樹脂モルタルは、PETフィルムに対する接着性が良好であることから、PETフィルムで包埋した発熱体を道路、床、壁面等に埋設する場合、その発熱体をそれらに固着させることができる。
【0059】
本発明の施工方法の一例として、PETフィルムで包埋された発熱体を埋設する場合の施工方法を以下説明する。
発熱体は、PETフィルムで包埋する際に、発熱体とPETフィルムとを、本発明の組成物及び/又は樹脂モルタルで接着することができる。
【0060】
具体例としては、例えば、▲1▼基層上に必要に応じてプライマーを塗布し、その上に樹脂モルタルを塗布して硬化させる、▲2▼得られた樹脂モルタルの硬化物層上に本発明の組成物を塗布し、それが硬化する前に、予めPETフィルムで包埋した発熱体を貼り付けて硬化させる、▲3▼本発明の組成物を塗布して硬化させる、という手順で積層体を形成する施工方法が挙げられる。また、さらにその硬化物層上に、上塗り層や景観舗装を施しても良い。
ここでいう積層体の層の厚みは、所望する性能に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば発熱体上に形成される前記した組成物の硬化物層の厚みは、発熱体が固定される状態であればよく、特に限定されない。
なお、ここでいう基層とは、コンクリートあるいはアスファルトコンクリート等からなる床板状物のことを意味する。
【0061】
【実施例】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。
なお、実施例中の部はすべて質量部を意味する。
【0062】
[製造例1]
攪拌機、温度計、及び冷却管を備えたフラスコに、メチルメタクリレート33.2部、2−エチルヘキシルアクリレート30部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート10部、融点46℃のパラフィンワックス(パラフィン115:日本精蝋社製)0.5部、融点54℃のパラフィンワックス(パラフィン130:日本精蝋社製)0.3部、融点65℃のパラフィンワックス(パラフィン150:日本精蝋社製)0.2部、及びN,N’−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−P−トルイジン0.8部を入れて攪拌しながら、飽和共重合ポリエステル樹脂B−1(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸1モル/イソフタル酸1.1モル/アジピン酸1.4モルと、ジオール成分としてネオペンチルグリコール1.2モル/エチレングリコール2.3モルから構成されるポリエステル。Tg=3℃、重量平均分子量=20,000)25部を徐々に加えた。そして65℃で6時間攪拌した後、冷却し、シラップ組成物P−1を得た。
【0063】
[製造例2]
飽和共重合ポリエステル樹脂B−1の代わりに、飽和共重合ポリエステル樹脂B−2(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸0.55モル/イソフタル酸0.45モルと、ジオール成分としてネオペンチルグリコール0.48モル/エチレングリコール0.34モル/トリエチレングリコール0.1モル/ジエチレングリコール0.08モルから構成されるポリエステル。Tg=25℃、重量平均分子量=30,000)25部を用いる以外は、製造例1と同様にして、シラップ組成物P−2を得た。
【0064】
[製造例3]
飽和共重合ポリエステル樹脂B−1の代わりに、飽和共重合ポリエステル樹脂B−3(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸0.45モル/イソフタル酸0.4モル/セバシン酸0.15モルと、ジオール成分としてネオペンチルグリコール0.48モル/エチレングリコール0.34モル/トリエチレングリコール0.1モル/ジエチレングリコール0.08モルから構成されるポリエステル。Tg=19.5℃、重量平均分子量=36,000)25部を用いる以外は、製造例1と同様にして、シラップ組成物P−3を得た。
【0065】
[製造例4]
飽和共重合ポリエステル樹脂B−1を15部とし、アクリル樹脂A−1(メチルメタクリレート/n−ブチルメタアクリレート=60/40共重合体(Tg=66℃、重量平均分子量=20,000))10部を用いる以外は、製造例1と同様にして、シラップ組成物P−4を得た。
【0066】
[製造例5]
飽和共重合ポリエステル樹脂B−1の代わりに、飽和共重合ポリエステル樹脂B−4(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸0.5モル/イソフタル酸0.5モルと、ジオール成分としてネオペンチルグリコール0.69モル/エチレングリコール0.22モル/シクロヘキサン−1,4−ジメタノール0.09モルから構成されるポリエステル。Tg=62℃、Mw=28,000)25部を用いる以外は、製造例1と同様にして、シラップ組成物P−5を得た。
【0067】
[製造例6]
45部の飽和共重合ポリエステル樹脂B−1を徐々に加え、70℃で12時間攪拌する以外は、製造例1と同様にして、シラップ組成物P−6を得た。
【0068】
[製造例7]
攪拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコに、メチルメタクリレート46.7部、2−エチルヘキシルアクリレート20.6部、トリエチレングリコールジメタアクリレート2部、融点46℃のパラフィンワックス(パラフィン115:日本精蝋社製)0.3部、融点54℃のパラフィンワックス(パラフィン130:日本精蝋社製)0.25部、融点65℃のパラフィンワックス(パラフィン150:日本精蝋社製)0.25部、DIPTを0.4部、N,N’−ジメチル−P−トルイジン0.24部と、可塑剤としてビニサイザー85(ジアルキルフタレート:花王(株))1.6部、ビニサイザー105(ジアルキルフタレート:花王(株))0.4部、トヨパラックスA50(塩素化パラフィン:東ソー(株))1.6部、トヨパラックス150(塩素化パラフィン:東ソー(株))16.4部を入れて攪拌した。その後、アクリル樹脂A−2(メチルメタアクリレート/n−ブチルメタアクリレート=60/40共重合体(Tg=66℃、重量平均分子量=40,000))23.6部を攪拌しながら徐々に加えた。そして、60℃で2時間攪拌した後、冷却し、シラップ組成物P−7を得た。
【0069】
[製造例8]
攪拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコに、トルエン98部、メチルエチルケトン68部、酢酸エチルエステル54部、及びメチルイソブチルケトン30部を入れ、そこに飽和共重合ポリエステル樹脂(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸0.6モル/イソフタル酸0.4モルと、ジオール成分としてネオペンチルグリコール0.62モル/エチレングリコール0.14モル/シクロヘキサン−1,4−ジメタノール0.24モルから構成されるポリエステル。Tg=58℃、重量平均分子量=40,000)50部を攪拌しながら徐々に加えた。そして65℃で6時間攪拌した後、冷却し、シラップ組成物P−8を得た。
【0070】
【表1】
【0071】
表1中の略号は、下記の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
2−EHA:2−エチルヘキシルメタクリレート
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(b):製造例1〜3、製造例5、及び製造例8に記載されるポリエステル樹脂B−1〜B−5
パラフィン115:融点46℃のパラフィンワックス(日本精蝋社製)
パラフィン130:融点54℃のパラフィンワックス(日本精蝋社製)
パラフィン150:融点65℃のパラフィンワックス(日本精蝋社製)
DIPT:N,N’−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−P−トルイジン
DMPT:N,N’−ジメチル−P−トルイジン
(e):トリエチレングリコールジメタクリレート
他:製造例4と製造例7に記載されるアクリル樹脂A−1又はA−2
【0072】
以下記載の実施例及び比較例は、下記評価方法に基づき評価を行う。
【0073】
[評価方法]
1.プライマー層について
<塗工作業性▲1▼>
得られたシラップ組成物を、雰囲気温度及び下地の温度が20℃条件下PETフィルムにウールローラーで塗布する。次いでこの塗工面を目視にて評価し、下記基準に基づき評価する。
○:平滑で塗工ムラなし
×:塗工ムラあり
【0074】
<硬化性▲1▼>
雰囲気温度及び下地の温度が20℃条件下で、得られたシラップ組成物をPETフィルムにウールローラーで塗布して1時間放置した後、塗膜表面の指触乾燥度を下記評価基準により評価する。
○:タックなし
×:塗膜表面は乾燥しているが、タックあり
××:塗膜は未硬化であり、タックあり
【0075】
<付着性▲1▼>
雰囲気温度又は下地の温度が20℃で、ウールローラーで塗装後、24時間放置後に雰囲気温度20℃で、表面・界面物性解析装置(ダイプラ・ウィンテス株式会社製 BN−1型)にてフィルムとプライマー間の付着強度を測定。(付着強度が1kg/cm未満を「×」、1〜4kg/cmを「△」、4kg/cmを超える場合を「○」として評価する。)
【0076】
1.樹脂モルタル層について
<塗工作業性▲2▼>
雰囲気温度及び下地の温度が20℃条件下で、得られたシラップ組成物をPETフィルムに塗布して1時間放置した後、その塗膜上に得られた樹脂モルタルをコテで塗布する。次いでこの塗工面を目視にて評価し、下記基準に基づき評価する。
○:平滑で塗工ムラなし
×:塗工ムラあり
【0077】
<硬化性▲2▼>
雰囲気温度及び下地の温度が20℃条件下で、得られたプライマー層上に、得られた樹脂モルタルをコテで塗布する。そして1時間放置した後に、塗膜表面の指触乾燥度を下記評価基準により評価する。
○:タックなし
×:塗膜表面は乾燥しているが、タックあり
××:塗膜は未硬化であり、タックあり
【0078】
<付着性▲2▼>
雰囲気温度及び下地の温度が20℃条件下で、得られたプライマー層上に、調製した樹脂モルタルをコテで塗布する。そして24時間放置後に、雰囲気温度20℃で、JIS−6854(接着剤のはく離接着強さ試験)に準じて剥離接着強度を測定する。その測定結果を下記評価基準に基づき評価する。
○:4kg/cm超
△:1〜4kg/cm
×:1kg/cm未満
【0079】
(実施例1)
製造例1で得られたシラップ組成物(P−1)100質量部に対して、重合開始剤(化薬アクゾ(株)製、商品名:カドックスB−CH50、ベンゾイルパーオキサイドの50%希釈品)2部を添加してプライマー層形成用組成物を調製した。
基材として東洋紡(株)製PETフィルム(商品名:A4300)を用い、得られたプライマー層形成用組成物を、雰囲気温度および基材の温度が20℃の条件下で、ウールローラーを用いて塗布してそのまま放置した。その結果その塗膜は50分間で硬化し、約0.2mm厚のプライマー層を得た。
次に、アクリルシラップ((株)菱晃製、商品名:アクリシラップDR−510)100部に対して、骨材((株)菱晃製、商品名:KM−17A)400部、及び重合開始剤(化薬アクゾ(株)製、商品名:カドックスB−CH50、ベンゾイルパーオキサイドの50%希釈品)2部を添加した樹脂モルタルを調製した。
得られた樹脂モルタルを、雰囲気温度および基材の温度が20℃の条件下で、プライマー層の上にコテで塗布してそのまま放置した。その結果、50分間で硬化し、4mm厚の樹脂モルタル層を得た。
このようにして得られたプライマー層及び樹脂モルタル層について、評価した結果を表2に示す。
【0080】
(実施例2〜4)
表2に示すシラップ組成物を用いる以外は、実施例1と同様にしてプライマー層及び樹脂モルタル層を得た。
得られたプライマー層及び樹脂モルタル層について、評価した結果を表2に示す。
【0081】
(実施例5)
製造例1で得られたシラップ組成物P−1を100部に、骨材((株)菱晃製、商品名:KM−17A)400部、重合開始剤(化薬アクゾ(株)製、商品名:カドックスB−CH50、ベンゾイルパーオキサイドの50%希釈品)2部を添加して樹脂モルタルを調製した。
得られた樹脂モルタルを、雰囲気温度および基材の温度が20℃の条件下で、東洋紡(株)製PETフィルム(商品名:A4300)の上にコテで塗布してそのまま50分間放置したところ、4mm厚の樹脂モルタル層が得られた。
このようにして得られた樹脂モルタル層について、評価した結果を表2に示す。
【0082】
(比較例1〜4)
表2に示す組成物を用いる以外は、実施例1と同様にしてプライマー層及び樹脂モルタル層を得た。
得られたプライマー層及び樹脂モルタル層について、評価した結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2中の略号は、下記の通りである。
P−1〜P−8:シラップ組成物:製造例1〜8で得られたシラップ組成物P−1〜P−8
DR−510:アクリル系シラップ組成物(商品名:アクリシラップDR−510、(株)菱晃製)
KM−17A:骨材((株)菱晃製)
【0085】
【発明の効果】
本発明の組成物及び樹脂モルタルは、基材に対する付着性に優れる硬化物を得ることができる。特に、低温環境下においても、短時間で硬化し、迅速な塗工作業時間を有し、しかもPETフィルムとの接着性に優れる硬化物が得られるものである。
そこで、本発明の組成物及び樹脂モルタルは、土木建築材料として、特にPETフィルムで包埋される発熱体の埋設用のプライマー層形成用組成物として非常に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記)からなる基材に対する付着性に優れるアクリル系シラップ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
寒冷地帯や豪雪地帯等では、冬期に屋根、歩道、駐車場、路面等が凍結したり積雪するため、事故や怪我が多発する。そのため、それを防止する目的で、例えば路面の場合には地下水や温水等を通水するためのパイプを埋設し、そのパイプの散水孔から噴出散水する等、融雪や凍結を防止する試みがなされている。
また、その他、屋内に設置された冷凍貯蔵物を保管貯蔵するための冷凍貯蔵庫、冷凍倉庫等の入り口付近、あるいはその前室の床等の場所も凍結し易く、それを防止する必要がある。そこで、それらの箇所では歩行面の安全を確保するため、床にスチーム、温水、電気ヒーター等を設置する等の方法で凍結防止を試みていた。
しかしながら、前者の場合、地下水はその汲み上げにより地盤沈下等の環境問題が生じることから、その使用に一定の制限がある。また、後者の場合には、相当額の設備投資が必要であり、かつスチームや温水を通すための配管は腐食のため一定期間で交換が必要であるという課題があった。
【0003】
そのような状況下、凍結防止や融雪する方法として、パネル状の発熱体を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。その発熱体は、絶縁性、耐熱性、及び成形性に優れるPETフィルムにより保護されている。このPETフィルムは機械的特性、耐熱性又は耐薬品性等の優れた特性を有している。
しかしながら、PETフィルムは結晶配向性を有するため表面凝集性が高く、難接着性のフィルムである。
そのため、特許文献1には、PETフィルムとの接着性を付与するためにオレフィン樹脂系の特殊プライマー開示されている。しかしながら、その接着性は未だ十分ではなかった。
【0004】
その接着性改良のため、その他▲1▼コロナ放電処理法、火炎処理法、プラズマ処理法;▲2▼薬剤処理法;▲3▼予めPETフィルムに易接着性塗料を塗布・硬化させて易接着層を設ける方法等が知られている。しかしながら、前記▲1▼の方法では経時的に接着性能が低下する傾向にある、前記▲2▼の方法では薬剤が揮発し環境に影響を与える傾向にある、また前記▲3▼の方法では特別な装置等が必要であるといった課題がある。
さらに、そのような予めPETフィルムに表面処理を行う場合には専用の装置が必要でありその設備投資が大きいこと、及び表面処理したPETフィルムを保管している間に、PETフィルム同士が接着してしまうといった課題がある。
【0005】
一方で、発熱体を路面に埋設する場合において、発熱体及び/又は発熱体を包埋するPETフィルムの損傷や、絶縁不良、断線等の破損を防止し、かつ容易にその施工を行うため、アスファルトの他、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂等の樹脂を含む樹脂モルタルが用いられている。
しかしながら、エポキシ系樹脂は機械的強度に優れるが柔軟性に乏しいため、得られる硬化物にクラックが生じたり、硬化物の耐候性も十分ではなかった。
また、不飽和ポリエステル系樹脂は耐酸性が良好であるものの、柔軟性及び耐候性に劣る。ポリウレタン樹脂は柔軟性、耐薬品性、及び耐候性に優れるものの、高価でかつ混合後の可使時間が短いため、広い面積への施工作業性が不良であった。またそれらの樹脂は硬化するまでに長時間を要するため、特に短時間での施工が要求される場所や冬期の施工では、硬化不良となる傾向にあった。
ビニルエステル樹脂組成物や(メタ)アクリル樹脂組成物は、冬期の低温下でも比較的短時間で硬化可能であり、被膜強度、耐候性、耐薬品性、耐磨耗性等に優れる硬化塗膜を形成することができる。ところが、低温でも基材、特にPETフィルムに対する付着性に優れる樹脂モルタルは、見出されていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−43034号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特にPETからなる基材に対する付着性が良好であり、特に、低温環境下においてもその付着性に優れしかも短時間で硬化可能なアクリル系シラップ組成物、及びそれを含む樹脂モルタル、及び積層体の施工方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a)(以下、成分(a)と略記)50〜90質量%、ポリエステル系樹脂(b)(以下、成分(b)と略記)5〜40質量%、ワックス(c)(以下、成分(c)と略記)0.1〜5質量%、硬化促進剤(d)(以下、成分(d)と略記)0.5〜4質量%(但し、(a)〜(d)の合計量を100質量%とする)を含むアクリル系シラップ組成物、それを含む樹脂モルタル、及びポリエチレンテレフタレートからなる基材の片面又は両面に、その組成物を硬化させて得られる硬化物層及び/又は請求項1記載の組成物を含む樹脂モルタルを硬化させて得られる硬化層を有する積層体の施工方法にある。
【0009】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の組成物について以下詳細に説明する。
本発明で用いる成分(a)は、後述する成分(b)との相溶性を付与する成分であり、また得られる組成物の塗工作業性を調整するための成分でもある。
【0010】
成分(a)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーであれば特に限定されない。
成分(a)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン−β−ヒドロキシ(メタ)アクリレート付加物等が挙げられる。
これらは、一種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0011】
その中でも、成分(a)は、成分(b)との相溶性や、得られる組成物の塗工作業性の観点から、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)メタアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0012】
本発明において、成分(a)の含有量は、成分(a)〜成分(d)の合計量100質量%中、50〜90質量%の範囲で用いられる。
本発明において、成分(a)の含有量が50質量%より少ない場合には、成分(b)の相溶性が十分に発現しない傾向にあり、成分(a)の含有量が90質量%を超える場合には、得られる組成物の基材に対する付着性が十分に発現しない傾向にある。
【0013】
その中でも、成分(a)の含有量は、成分(a)〜(d)の合計量100質量%中に、55〜85質量%の範囲であることがより好ましい。
【0014】
また、成分(a)は、メチルメタクリレート/ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート/その他の(メタ)アクリル酸エステルモノマー=20〜50/0〜30/20〜50(質量比)の比率で混合してなる混合物であることが好ましい。
メチルメタクリレートの含有量が20〜50質量%の範囲である場合には、成分(b)の溶解性や膨潤性が良好となる傾向にあり、また得られる組成物の塗工作業性も良好となる傾向にある。
【0015】
本発明で用いる成分(b)は、PETフィルムに対する付着性を付与する成分である。また本発明の組成物の粘度を調節するための成分でもある。
【0016】
成分(b)は、特に限定されるものではないが、その中でもジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合させて得られるポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0017】
ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
これらは、一種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0018】
なお、このジカルボン酸成分は、重合時に酸の形で用いてもよいし、ジメチルエステルのようなエステル形成性の誘導体の形で用いてもよい。
【0019】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
これらは、一種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0020】
成分(b)の調製方法は特に限定されるものではなく、公知の共重合ポリエステル樹脂の重合方法で得ればよい。
具体的には、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とを直接エステル化反応させても良いし、あるいはジカルボン酸のエステル形成性誘導体とジオール成分とをエステル交換し、加熱減圧下で重縮合反応をさせてポリエステル系樹脂を得ても良い。
【0021】
その中でも、成分(b)は、基材に対する付着性と得られる組成物の硬化性とのバランスに優れることから、その成分(b)のガラス転移温度(以下、Tgと略記)が−20℃〜+30℃の範囲であることが好ましい。
【0022】
また、成分(b)は、成分(a)への相溶性、得られる組成物の取り扱い性に優れる粘度の組成物が得られること、及び基材に対する付着性の観点から、その重量平均分子量が4,000〜40,000であることが好ましい。
【0023】
成分(b)が、そのようなTgと重量平均分子量の範囲内である場合には、基材に対する付着性が良好で、塗工作業性が良好な粘度範囲の組成物が得られることから特に好ましい。
【0024】
本発明の組成物において、成分(b)の含有量は、成分(a)〜成分(d)の合計量100質量%中、5〜40質量%の範囲で用いられる。
本発明において、成分(b)の含有量が5質量%より少ない場合には、基材との付着性が十分に発現しない傾向にある。また成分(a)の含有量が40質量%を超える場合には、成分(a)への相溶性が十分に発現せず、得られる組成物の粘度が上昇して可使時間が短くなり、塗工作業性が不良となる傾向にある。
その中でも、成分(b)の含有量は10〜35質量%の範囲であることがより好ましい。
【0025】
本発明に用いる成分(c)は、組成物の硬化前の塗膜表面に空気遮断作用を付与するための成分である。成分(c)の具体例としては、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックスや、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸等が挙げられる。
その中でも、任意の融点のものに選択する幅があることから、パラフィンワックスが好ましい。
【0026】
成分(c)の融点は、適宜選択すればよく特に限定されない。その中でも、塗工時の雰囲気温度条件及び硬化反応時の発熱温度等の影響を受けずに、塗膜表面に空気遮断作用が十分に発現することから、好ましくは約40〜80℃の範囲である。
その中でも、塗工時の雰囲気温度に左右されず、塗膜表面に極めて優れる空気遮断作用が発現することから、融点の異なる2種以上のパラフィンワックスを併用することがより好ましい。
【0027】
本発明の組成物において、成分(c)の含有量は、成分(a)〜成分(d)の合計量100質量%中、0.1〜5質量%の範囲である。
本発明において、成分(c)の含有量が0.1質量%より少ない場合には、本発明の組成物の塗膜が十分に硬化しない傾向にある。また5質量%を超える場合には、上塗り層との接着性が不良となる傾向にある。
その中でも、得られる組成物の貯蔵安定性及びその硬化物の外観に優れることから、成分(c)の含有量は0.2〜2質量%の範囲であることが好ましい。
【0028】
本発明に用いる硬化促進剤(d)は公知のレドックス触媒で、本発明のアクリル系シラップ組成物を硬化させる重合促進剤として用いられる。
【0029】
この硬化促進剤(d)としては、特に限定されないが、窒素原子に直接少なくとも1個の芳香族残基が結合しているものが好ましく、N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジメチル−P−トルイジン、N,N’−ジエチル−P−トルイジン、N,N’−ジ(ヒドロキシエチル)−P−トルイジン、N,N’−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−P−トルイジン等の芳香族3級アミン類、または、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、オクチル酸ニッケル等の金属石鹸類を1種類又は2種類以上の混合系にて適宜用いることができる。
【0030】
本発明において成分(d)の含有量は、成分(a)〜(d)の合計量100質量%中に0.5〜4質量%の範囲である。
本発明において、成分(d)の含有量が0.5質量%より少ない場合には、組成物の重合反応が十分に促進せず、組成物の硬化性が不十分となる傾向にある。また4質量%を超える場合には、重合反応が急激に進行するために可使時間(塗工可能な時間)が非常に短くなる傾向にある。また、得られる硬化物の上に上塗り層を形成する場合にその付着性が不良となる傾向にある。
【0031】
本発明に用いる成分(e)は、成分(d)との組み合わせにより、公知のレドックス触媒として重合促進効果を発現する成分であり、本発明の組成物に必要に応じて適宜用いてもよい。
【0032】
成分(e)の具体例としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルフタレート、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート等が挙げられる。
これらは、一種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0033】
本発明において成分(e)の含有量は、得られる組成物の目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
例えば、本発明の組成物の可使時間を5〜30分程度とする場合には、成分(e)の含有量は、成分(a)〜(e)の合計量100質量%中に0.001〜10質量%の範囲とすることが好ましい。
本発明において、成分(e)の含有量が10質量%を超える場合には、組成物の硬化時間が短時間となる傾向にあり、また組成物の取り扱い性や塗工作業性も不良となる傾向にある。成分(d)の含有量が0.001質量%より少ない場合には、成分(e)を含有させる効果が十分に発現しない傾向にある。
その中でも、成分(e)の含有量は0.01〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
なお、本発明の組成物が、成分(a)〜(e)を含有する場合には、それらの含有量は、成分(a)/成分(b)/成分(c)/成分(d)/成分(e)=45〜85/4.5〜36/0.09〜4.5/0.4〜3.6/0.001〜10(質量%)(但し、それらの合計量が100質量%である。)であることが好ましい。
【0034】
本発明の組成物には、必要に応じて各種公知の重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤の種類は特に限定されないが、成分(d)と組み合わせることにより公知のレドックス系開始剤として用いる重合開始剤としては、例えばジアシルパーオキサイド、アルキルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系化合物や、アゾ系化合物等が挙げられる。その各種市販品をそのまま用いてもよい。
その中でも、低温硬化性と短時間硬化性等の観点から、ジアシルパーオキサイドが好ましい。
【0035】
さらにジアシルパーオキサイドの中でも、取り扱い性に優れることから、不活性であるベンゾイルパーオキサイドがより好ましい。このベンゾイルパーオキサイドの形態としては、液状、ペースト状または粉末等の固体状のいずれであってもよい。なお、ここでいう液状のベンゾイルパーオキサイドとは、例えば希釈剤により30〜55%程度に希釈された溶液等も含む。
【0036】
本発明の組成物において重合開始剤の添加量は、所望する組成物の可使時間や硬化時間や、組成物や塗布時の雰囲気下の温度条件に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
例えば、可使時間5〜30分でかつ硬化時間10〜90分の組成物を得る場合、重合開始剤の添加量は、本発明の組成物100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲が好ましい。
重合開始剤の添加量がその範囲内である場合には、本発明の組成物の重合促進効果が十分に発現する傾向にある。
より好ましくは0.5〜8質量部の範囲、特に好ましくは1〜6質量部の範囲である。
【0037】
また、本発明の組成物には、得られる硬化物の表面硬化性や低収縮性を向上させる目的で、必要に応じて、成分(a)に溶解又は膨潤可能な熱可塑性樹脂からなる重合体や共重合体や、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー等を添加することができる。
【0038】
ここでいう「溶解又は膨潤」とは、組成物中に完全に溶解している状態または組成物中に完全に溶解しないが組成物中に均一に分散している状態のことをそれぞれ意味する。
成分(a)に溶解又は膨潤可能な熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体又は共重合体、エポキシ樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。その中でも、成分(a)との相溶性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体又は共重合体が好ましい。
【0039】
(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等、公知のオリゴマーが挙げられる。
【0040】
ここでいうウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートと1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールを公知の方法で反応して得られる化合物が挙げられる。
【0041】
エポキシ(メタ)アクルレートとしては、例えば、多塩基酸無水物と水酸基含有(メタ)アクリレートの部分エステル化物と2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸を公知の方法で反応して得られるエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、ここでいう2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂とは、2官能のビスフェノールAとエピクロルヒドリンとからなる汎用のエポキシ(メタ)アクルレート樹脂のことを意味する。
【0042】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸などの多塩基酸やその無水物/エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコールの化合物/(メタ)アクリル酸付加物やグリシジル(メタ)アクリレート/前記多塩基酸無水物を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
その他本発明の組成物には、必要に応じて、ハイドロキノン等の重合抑制剤;シランカップリング剤;酸化防止剤;消泡剤;レベリング剤;アエロジル等のチクソトロピック性付与剤;炭酸カルシウム等の耐湿顔料、酸化クロム、ベンガラ等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料等の顔料;等の各種添加剤を、任意の割合で添加することができる。
【0044】
例えば、本発明の組成物の貯蔵安定性を向上させる目的で、本発明の組成物に、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノールのような重合抑制剤を添加してもよい。
【0045】
基材に対する付着性の安定化や接着強度の耐久性を付与する目的で、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グルシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を添加してもよい。
【0046】
本発明の組成物には、硬化時の硬化収縮の低減や得られる硬化物の柔軟性を向上させるために、必要に応じて可塑剤が添加してもよい。
【0047】
可塑剤の具体例としては、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジ−2−エチルヘキシルアジペート、オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル類;ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、オクチルアゼレート等のアゼラインエステル類等の2塩基性脂肪酸エステル類や、塩素化パラフィン等のパラフィン類等が挙げられる。
これらは、一種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0048】
本発明において可塑剤の添加量は、所望する性能に応じて適宜添加すればよく特に限定されるものではない。
【0049】
例えば、得られる硬化物の硬化性や、得られる硬化物からの可塑剤の滲出量を抑制させるという観点からは、可塑剤の添加量は、成分(a)〜成分(e)の合計量100質量部に対して、通常30質量部以下であることが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を超える場合には、組成物の硬化性が低下し、硬化物の表面から可塑剤が滲み出る傾向にある。
【0050】
本発明の組成物は、各種基材に塗布した後に硬化させると、基材に対する付着性が良好な硬化被膜を形成することができる。
ここでいう基材とは特に限定されるものではなく、その材質は無機物、有機物等が挙げられる。その中でも、本発明の組成物はPETフィルムに対する接着性が良好である。
【0051】
次に、本発明の樹脂モルタルについて説明する。
本発明の樹脂モルタルは、前記した本発明の組成物を含むものであればよく、必要に応じて骨材や各種添加剤を配合してもよい。
【0052】
本発明の樹脂モルタルは、低温でも、短時間で硬化し、かつ得られる硬化物はPETフィルムに対して優れた接着性を有する。
骨材としては、公知の骨材を適宜選択すればよく、特に限定されない。その中でも硬化物の外観や塗工作業性の観点から、骨材の質量平均粒子径が1μm以上あることが好ましく、また骨材100gにおけるアマニ油の吸油量が25cc以下であることが好ましい。
【0053】
骨材の具体例としては、例えば、砂、珪砂、石英砂、これらの着色あるいは焼成したもの、石英粉、珪砂粉等の岩石粉;セラミックを焼成した粉砕物;炭酸カルシウム、アルミナ、ガラスビーズ等が挙げられる。
骨材の粒径は特に限定されないが、樹脂モルタルの塗工作業性や、得られる硬化物のレベリング性を向上させるという観点から、異なる粒径の骨材を組み合わせることが好ましい。
【0054】
本発明の樹脂モルタルにおいて、骨材と前記した本発明の組成物との配合比は所望に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。その中でも、骨材と前記した本発明の組成物との混合性、樹脂モルタルの塗工性や硬化性等の点から、骨材100質量部に対して、前記した本発明の組成物を20〜45質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0055】
また、本発明の樹脂モルタルには、必要に応じて前記した添加剤等を適宜添加してもよい。
本発明の樹脂モルタルの調製方法は特に限定されず、公知の方法で各成分や添加剤等を混合して得ればよい。
また、例えば本発明の樹脂モルタルに重合促進剤等の添加剤を添加する場合には、予め本発明の組成物中に混合してもよいし、樹脂モルタル調製時に混合してもよい。それにより、速やかに成分(a)と成分(e)との重合反応が開始して、本発明の樹脂モルタルの硬化を進行させることができる。
その中でも、本発明の樹脂モルタルに重合開始剤を添加する場合には、塗工の直前に添加することが好ましい。
本発明の組成物に、予め重合開始剤や重合促進剤等の添加剤が含有されている場合には、樹脂モルタル中にさらにそれらの添加剤を添加しなくてもよく、必要に応じてに適宜それらを含有させればよい。
【0056】
本発明の樹脂モルタルの塗布方法は、目的に応じてローラーやコテ等、公知の塗工方法を適宜選択することができる。
【0057】
本発明の積層体の施工方法は、PETからなる基材の片面又は両面に、本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物層及び/又は請求項1記載の組成物を含む樹脂モルタルを硬化させて得られる硬化層を有する積層体の施工方法である。
この施工の具体例としては、例えば、融雪や凍結を防止するため、面状等の発熱体を、道路、床、壁面等に埋設する施工が挙げられる。
【0058】
ここでいう発熱体とは特に限定されないが、発熱体本体の破損を防止するために、通常PETフィルムで包埋されている。本発明の組成物及び樹脂モルタルは、PETフィルムに対する接着性が良好であることから、PETフィルムで包埋した発熱体を道路、床、壁面等に埋設する場合、その発熱体をそれらに固着させることができる。
【0059】
本発明の施工方法の一例として、PETフィルムで包埋された発熱体を埋設する場合の施工方法を以下説明する。
発熱体は、PETフィルムで包埋する際に、発熱体とPETフィルムとを、本発明の組成物及び/又は樹脂モルタルで接着することができる。
【0060】
具体例としては、例えば、▲1▼基層上に必要に応じてプライマーを塗布し、その上に樹脂モルタルを塗布して硬化させる、▲2▼得られた樹脂モルタルの硬化物層上に本発明の組成物を塗布し、それが硬化する前に、予めPETフィルムで包埋した発熱体を貼り付けて硬化させる、▲3▼本発明の組成物を塗布して硬化させる、という手順で積層体を形成する施工方法が挙げられる。また、さらにその硬化物層上に、上塗り層や景観舗装を施しても良い。
ここでいう積層体の層の厚みは、所望する性能に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば発熱体上に形成される前記した組成物の硬化物層の厚みは、発熱体が固定される状態であればよく、特に限定されない。
なお、ここでいう基層とは、コンクリートあるいはアスファルトコンクリート等からなる床板状物のことを意味する。
【0061】
【実施例】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。
なお、実施例中の部はすべて質量部を意味する。
【0062】
[製造例1]
攪拌機、温度計、及び冷却管を備えたフラスコに、メチルメタクリレート33.2部、2−エチルヘキシルアクリレート30部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート10部、融点46℃のパラフィンワックス(パラフィン115:日本精蝋社製)0.5部、融点54℃のパラフィンワックス(パラフィン130:日本精蝋社製)0.3部、融点65℃のパラフィンワックス(パラフィン150:日本精蝋社製)0.2部、及びN,N’−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−P−トルイジン0.8部を入れて攪拌しながら、飽和共重合ポリエステル樹脂B−1(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸1モル/イソフタル酸1.1モル/アジピン酸1.4モルと、ジオール成分としてネオペンチルグリコール1.2モル/エチレングリコール2.3モルから構成されるポリエステル。Tg=3℃、重量平均分子量=20,000)25部を徐々に加えた。そして65℃で6時間攪拌した後、冷却し、シラップ組成物P−1を得た。
【0063】
[製造例2]
飽和共重合ポリエステル樹脂B−1の代わりに、飽和共重合ポリエステル樹脂B−2(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸0.55モル/イソフタル酸0.45モルと、ジオール成分としてネオペンチルグリコール0.48モル/エチレングリコール0.34モル/トリエチレングリコール0.1モル/ジエチレングリコール0.08モルから構成されるポリエステル。Tg=25℃、重量平均分子量=30,000)25部を用いる以外は、製造例1と同様にして、シラップ組成物P−2を得た。
【0064】
[製造例3]
飽和共重合ポリエステル樹脂B−1の代わりに、飽和共重合ポリエステル樹脂B−3(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸0.45モル/イソフタル酸0.4モル/セバシン酸0.15モルと、ジオール成分としてネオペンチルグリコール0.48モル/エチレングリコール0.34モル/トリエチレングリコール0.1モル/ジエチレングリコール0.08モルから構成されるポリエステル。Tg=19.5℃、重量平均分子量=36,000)25部を用いる以外は、製造例1と同様にして、シラップ組成物P−3を得た。
【0065】
[製造例4]
飽和共重合ポリエステル樹脂B−1を15部とし、アクリル樹脂A−1(メチルメタクリレート/n−ブチルメタアクリレート=60/40共重合体(Tg=66℃、重量平均分子量=20,000))10部を用いる以外は、製造例1と同様にして、シラップ組成物P−4を得た。
【0066】
[製造例5]
飽和共重合ポリエステル樹脂B−1の代わりに、飽和共重合ポリエステル樹脂B−4(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸0.5モル/イソフタル酸0.5モルと、ジオール成分としてネオペンチルグリコール0.69モル/エチレングリコール0.22モル/シクロヘキサン−1,4−ジメタノール0.09モルから構成されるポリエステル。Tg=62℃、Mw=28,000)25部を用いる以外は、製造例1と同様にして、シラップ組成物P−5を得た。
【0067】
[製造例6]
45部の飽和共重合ポリエステル樹脂B−1を徐々に加え、70℃で12時間攪拌する以外は、製造例1と同様にして、シラップ組成物P−6を得た。
【0068】
[製造例7]
攪拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコに、メチルメタクリレート46.7部、2−エチルヘキシルアクリレート20.6部、トリエチレングリコールジメタアクリレート2部、融点46℃のパラフィンワックス(パラフィン115:日本精蝋社製)0.3部、融点54℃のパラフィンワックス(パラフィン130:日本精蝋社製)0.25部、融点65℃のパラフィンワックス(パラフィン150:日本精蝋社製)0.25部、DIPTを0.4部、N,N’−ジメチル−P−トルイジン0.24部と、可塑剤としてビニサイザー85(ジアルキルフタレート:花王(株))1.6部、ビニサイザー105(ジアルキルフタレート:花王(株))0.4部、トヨパラックスA50(塩素化パラフィン:東ソー(株))1.6部、トヨパラックス150(塩素化パラフィン:東ソー(株))16.4部を入れて攪拌した。その後、アクリル樹脂A−2(メチルメタアクリレート/n−ブチルメタアクリレート=60/40共重合体(Tg=66℃、重量平均分子量=40,000))23.6部を攪拌しながら徐々に加えた。そして、60℃で2時間攪拌した後、冷却し、シラップ組成物P−7を得た。
【0069】
[製造例8]
攪拌機、温度計、冷却管を備えたフラスコに、トルエン98部、メチルエチルケトン68部、酢酸エチルエステル54部、及びメチルイソブチルケトン30部を入れ、そこに飽和共重合ポリエステル樹脂(ジカルボン酸成分としてテレフタル酸0.6モル/イソフタル酸0.4モルと、ジオール成分としてネオペンチルグリコール0.62モル/エチレングリコール0.14モル/シクロヘキサン−1,4−ジメタノール0.24モルから構成されるポリエステル。Tg=58℃、重量平均分子量=40,000)50部を攪拌しながら徐々に加えた。そして65℃で6時間攪拌した後、冷却し、シラップ組成物P−8を得た。
【0070】
【表1】
【0071】
表1中の略号は、下記の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
2−EHA:2−エチルヘキシルメタクリレート
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(b):製造例1〜3、製造例5、及び製造例8に記載されるポリエステル樹脂B−1〜B−5
パラフィン115:融点46℃のパラフィンワックス(日本精蝋社製)
パラフィン130:融点54℃のパラフィンワックス(日本精蝋社製)
パラフィン150:融点65℃のパラフィンワックス(日本精蝋社製)
DIPT:N,N’−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−P−トルイジン
DMPT:N,N’−ジメチル−P−トルイジン
(e):トリエチレングリコールジメタクリレート
他:製造例4と製造例7に記載されるアクリル樹脂A−1又はA−2
【0072】
以下記載の実施例及び比較例は、下記評価方法に基づき評価を行う。
【0073】
[評価方法]
1.プライマー層について
<塗工作業性▲1▼>
得られたシラップ組成物を、雰囲気温度及び下地の温度が20℃条件下PETフィルムにウールローラーで塗布する。次いでこの塗工面を目視にて評価し、下記基準に基づき評価する。
○:平滑で塗工ムラなし
×:塗工ムラあり
【0074】
<硬化性▲1▼>
雰囲気温度及び下地の温度が20℃条件下で、得られたシラップ組成物をPETフィルムにウールローラーで塗布して1時間放置した後、塗膜表面の指触乾燥度を下記評価基準により評価する。
○:タックなし
×:塗膜表面は乾燥しているが、タックあり
××:塗膜は未硬化であり、タックあり
【0075】
<付着性▲1▼>
雰囲気温度又は下地の温度が20℃で、ウールローラーで塗装後、24時間放置後に雰囲気温度20℃で、表面・界面物性解析装置(ダイプラ・ウィンテス株式会社製 BN−1型)にてフィルムとプライマー間の付着強度を測定。(付着強度が1kg/cm未満を「×」、1〜4kg/cmを「△」、4kg/cmを超える場合を「○」として評価する。)
【0076】
1.樹脂モルタル層について
<塗工作業性▲2▼>
雰囲気温度及び下地の温度が20℃条件下で、得られたシラップ組成物をPETフィルムに塗布して1時間放置した後、その塗膜上に得られた樹脂モルタルをコテで塗布する。次いでこの塗工面を目視にて評価し、下記基準に基づき評価する。
○:平滑で塗工ムラなし
×:塗工ムラあり
【0077】
<硬化性▲2▼>
雰囲気温度及び下地の温度が20℃条件下で、得られたプライマー層上に、得られた樹脂モルタルをコテで塗布する。そして1時間放置した後に、塗膜表面の指触乾燥度を下記評価基準により評価する。
○:タックなし
×:塗膜表面は乾燥しているが、タックあり
××:塗膜は未硬化であり、タックあり
【0078】
<付着性▲2▼>
雰囲気温度及び下地の温度が20℃条件下で、得られたプライマー層上に、調製した樹脂モルタルをコテで塗布する。そして24時間放置後に、雰囲気温度20℃で、JIS−6854(接着剤のはく離接着強さ試験)に準じて剥離接着強度を測定する。その測定結果を下記評価基準に基づき評価する。
○:4kg/cm超
△:1〜4kg/cm
×:1kg/cm未満
【0079】
(実施例1)
製造例1で得られたシラップ組成物(P−1)100質量部に対して、重合開始剤(化薬アクゾ(株)製、商品名:カドックスB−CH50、ベンゾイルパーオキサイドの50%希釈品)2部を添加してプライマー層形成用組成物を調製した。
基材として東洋紡(株)製PETフィルム(商品名:A4300)を用い、得られたプライマー層形成用組成物を、雰囲気温度および基材の温度が20℃の条件下で、ウールローラーを用いて塗布してそのまま放置した。その結果その塗膜は50分間で硬化し、約0.2mm厚のプライマー層を得た。
次に、アクリルシラップ((株)菱晃製、商品名:アクリシラップDR−510)100部に対して、骨材((株)菱晃製、商品名:KM−17A)400部、及び重合開始剤(化薬アクゾ(株)製、商品名:カドックスB−CH50、ベンゾイルパーオキサイドの50%希釈品)2部を添加した樹脂モルタルを調製した。
得られた樹脂モルタルを、雰囲気温度および基材の温度が20℃の条件下で、プライマー層の上にコテで塗布してそのまま放置した。その結果、50分間で硬化し、4mm厚の樹脂モルタル層を得た。
このようにして得られたプライマー層及び樹脂モルタル層について、評価した結果を表2に示す。
【0080】
(実施例2〜4)
表2に示すシラップ組成物を用いる以外は、実施例1と同様にしてプライマー層及び樹脂モルタル層を得た。
得られたプライマー層及び樹脂モルタル層について、評価した結果を表2に示す。
【0081】
(実施例5)
製造例1で得られたシラップ組成物P−1を100部に、骨材((株)菱晃製、商品名:KM−17A)400部、重合開始剤(化薬アクゾ(株)製、商品名:カドックスB−CH50、ベンゾイルパーオキサイドの50%希釈品)2部を添加して樹脂モルタルを調製した。
得られた樹脂モルタルを、雰囲気温度および基材の温度が20℃の条件下で、東洋紡(株)製PETフィルム(商品名:A4300)の上にコテで塗布してそのまま50分間放置したところ、4mm厚の樹脂モルタル層が得られた。
このようにして得られた樹脂モルタル層について、評価した結果を表2に示す。
【0082】
(比較例1〜4)
表2に示す組成物を用いる以外は、実施例1と同様にしてプライマー層及び樹脂モルタル層を得た。
得られたプライマー層及び樹脂モルタル層について、評価した結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2中の略号は、下記の通りである。
P−1〜P−8:シラップ組成物:製造例1〜8で得られたシラップ組成物P−1〜P−8
DR−510:アクリル系シラップ組成物(商品名:アクリシラップDR−510、(株)菱晃製)
KM−17A:骨材((株)菱晃製)
【0085】
【発明の効果】
本発明の組成物及び樹脂モルタルは、基材に対する付着性に優れる硬化物を得ることができる。特に、低温環境下においても、短時間で硬化し、迅速な塗工作業時間を有し、しかもPETフィルムとの接着性に優れる硬化物が得られるものである。
そこで、本発明の組成物及び樹脂モルタルは、土木建築材料として、特にPETフィルムで包埋される発熱体の埋設用のプライマー層形成用組成物として非常に有用である。
Claims (4)
- (メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a)50〜90質量%、ポリエステル系樹脂(b)5〜40質量%、ワックス(c)0.1〜5質量%、硬化促進剤(d)0.5〜4質量%(但し、それら(a)〜(d)の合計量を100質量%とする)を含むアクリル系シラップ組成物。
- さらに、分子中に2個以上のラジカル重合可能な二重結合を有するモノマー(e)を含む請求項1記載の組成物。
- 請求項1又は2記載の組成物を含む樹脂モルタル。
- ポリエチレンテレフタレートからなる基材の片面又は両面に、請求項1又は2記載の組成物を硬化させて得られる硬化物層及び/又は請求項3記載の樹脂モルタルを硬化させて得られる硬化層を有する積層体の施工方法。
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JP2003140769A Pending JP2004339446A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | アクリル系シラップ組成物、樹脂モルタル、及び積層体の施工方法 |
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Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008014966A1 (de) * | 2006-08-04 | 2008-02-07 | Fischerwerke Artur Fischer Gmbh & Co. Kg | Verwendung von kunstharzen beim befestigen von schrauben und ähnlichen verankerungsmitteln, entsprechende verfahren und kunstharze |
KR100827950B1 (ko) | 2005-03-07 | 2008-05-08 | (주)이언테크 | 건축, 토목용 수지 모르타르 조성물 |
KR100855938B1 (ko) * | 2007-01-25 | 2008-09-02 | 엘지엠엠에이 주식회사 | 아스팔트 도로 피복용 시럽 조성물 |
KR101007231B1 (ko) | 2010-05-10 | 2011-01-12 | 박문선 | 변성 아크릴 시럽 조성물 및 이의 제조 방법 |
JP2013007000A (ja) * | 2011-06-27 | 2013-01-10 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 樹脂モルタル組成物、および被覆物 |
WO2017047197A1 (ja) * | 2015-09-16 | 2017-03-23 | 東洋紡株式会社 | 共重合ポリエステルおよびこれを用いた金属プライマー塗料 |
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2003
- 2003-05-19 JP JP2003140769A patent/JP2004339446A/ja active Pending
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JPWO2017047197A1 (ja) * | 2015-09-16 | 2018-07-05 | 東洋紡株式会社 | 共重合ポリエステルおよびこれを用いた金属プライマー塗料 |
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