JP5774330B2 - 電子材料用洗浄剤 - Google Patents

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本発明は、電子材料用洗浄剤に関する。さらに詳しくは、電子材料の製造において、特に磁気ディスク基板の洗浄において、その表面の研磨後の砥粒、研磨屑の除去に好適な洗浄剤に関する。
電子材料、特に磁気ディスク基板の洗浄において、近年の磁気ディスクの小型化、高密度化に伴い、製造における基板上に残留する砥粒、研磨屑などの微小なパーティクル、保管時に付着する異物のパーティクル、洗浄剤やクーラントの残渣が磁気ディスクの性能や歩留まりに大きく影響するため、それを低減することが、極めて重要になってきている。特に洗浄の対象となるパーティクルがより、微小化してきており、従来以上にディスク用基板表面に残存しやすくなることから、高度な洗浄技術が必要となっている。
このため、これらのパーティクルや不純物の残留を防止する方法として、非イオン性界面活性剤と水溶性アミン化合物を含有する洗浄液を用いる方法(特許文献1)が提案されている。
ところで、ハードディスク用基板の製造工程は、主にサブストレート工程とメディア工程に分けられる。
サブストレート工程では、研磨工程と洗浄工程が複数回行われることにより、基板表面が極めて平坦な基板がつくられる。一方、サブストレート工程後のメディア工程では、磁性膜などをスパッタにより形成する前に、微小なパーティクルなどの基板に付着した汚れを除去する目的で、洗浄工程が必須となっている。
そして、上述したように、近年のハードディスクドライブのさらなる小型化、高密度化に伴って、磁気ヘッドとメディア基板の間の距離が非常に狭くなっており、除去対象となるパーティクルの大きさは、年々小さくなってきている。このため、これまでに問題にならなかった数十ナノメートルのパーティクルまでも問題になってきている。
特にメディア工程での洗浄は、ハードディスクドライブの信頼性を左右する重要な工程と位置づけられており、いかにこの洗浄工程で、これらの微小なパーティクルを除去するかが課題になってきている。
これらのパーティクルの発生源としては、サブストレート工程の中の研磨工程で用いられる研磨剤(コロイダルシリカ、アルミナ、酸化セリウム)や、研磨工程で発生する研磨屑、空気中や後述する梱包容器からの埃などの異物などが考えられる。
特にハードディスク基板の製法においては、サブストレート工程とメディア工程は通常、異なる工場で行われることが多く、サブストレート工程の最後に、イソプロピルアルコールなどの揮発性の溶剤を用いた蒸気乾燥や、スピン乾燥などの乾燥工程が行われる。
その間に、サブストレート工程の洗浄で基板表面に残留した砥粒や研磨屑のパーティクルや保管時に新たに付着した異物のパーティクルは、時間が経過するにつれて、基板表面と強固に結合し、ますます除去しづらくなる。メディア工程では、磁性膜を形成する際にパーティクルが基板表面に存在すると、突起物の発生や、記録エラーなど深刻な問題を引き起こすため、従来以上に高い洗浄性を示す洗浄剤が強く求められるようになっている。
特開2009−084509号公報
そこで、本発明は基板の研磨直後に行う洗浄だけでなく、乾燥後に時間が経過し基板に固着したパーティクルの除去に対して優れた洗浄性を有する電子材料用洗浄剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される脂肪族アルコールの硫酸エステル塩または脂肪族アルコールのオキシアルキレン付加物の硫酸エステル塩(A)、アルカリ(B)、キレート剤(C)および水を必須成分として含有することを特徴とする電子材料用洗浄剤;並びにこの電子材料用洗浄剤を用いて洗浄された磁気ディスク基板である。
RO−(AO)n−SO ・1/f Mf+ (1)
[式(1)中のRが炭素数8〜18の脂肪族炭化水素基;Mf+はアルカリ金属、アンモニウムまたはアミンのカチオン;AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表すが、少なくともオキシエチレン基を含む。nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表し0〜20の数である。]
本発明は研磨後すぐに行う洗浄だけでなく、乾燥後に時間が経過し基板に固着したパーティクルの除去に対しても優れた洗浄性を示す。
本発明の電子材料用洗浄剤は、下記一般式(1)で表される脂肪族アルコールの硫酸エステル塩または脂肪族アルコールのオキシアルキレン付加物の硫酸エステル塩(A)、アルカリ(B)、キレート剤(C)および水を必須成分とする。
RO−(AO)n−SO ・1/f Mf+ (1)
[式(1)中のRが炭素数8〜18の脂肪族炭化水素基;Mf+はアルカリ金属、アンモニウムまたはアミンのカチオン;AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表すが、少なくともオキシエチレン基を含む。nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表し0〜20の数である。]
本発明の第1の必須成分の脂肪族アルコールもしくはそのオキシアルキレン付加物の硫酸エステル塩(A)は上記一般式で表されるアニオン性界面活性剤である。
上記一般式(1)において、Rは、炭素数が8〜18の脂肪族炭化水素基を表す。
Rは、直鎖状の脂肪族炭化水素基でも分岐状の脂肪族炭化水素基でもよい。また、2種以上の脂肪族炭化水素基の混合物であってもよい。
Rの具体例としては、アルキル基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基などが挙げられる。
炭素数8未満では、十分な洗浄力が得られず、炭素数が18を超えると洗浄剤としての安定性が不十分である。洗浄性の観点から炭素数は通常8〜18であり、好ましくは8〜12である。
対イオンMf+は、アルカリ金属、第4級アンモニウム、アミンのカチオンである。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウムが挙げられる。アミンでは、アルキルアミン、アルカノールアミンが挙げられる。
AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表し、少なくともオキシエチレン基を含む。
このオキシアルキレン基はアルキレンオキサイドの付加反応に由来し、そのようなアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどが挙げられる。
nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表し、0〜20である。nが0のときは(A)は脂肪族アルコールの硫酸エステル塩であり、nが0以外のときは(A)は脂肪族アルコールのオキシアルキレン付加物の硫酸エステル塩である。
基板への吸着性と洗浄性の観点から好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10である。
本発明の電子材料用洗浄剤は、実際に使用する際に、そのままの濃度で使用してもいいし、さらにイオン交換水で希釈して使用してもよい。
本発明の電子材料用洗浄剤中の脂肪族アルコールもしくはそのオキシアルキレン付加物の硫酸エステル塩(A)の使用時の含有量は0.0001%〜1%である。
含有量が0.0001%未満では、十分な洗浄性、特に乾燥して固着したパーティクルや異物の洗浄性が得られず、1%を超えると洗浄剤としての安定性が不十分である。
洗浄性の観点から好ましくは、0.005%〜0.3%、さらに好ましくは0.01%〜0.15%である。
本発明の第2の必須成分のアルカリ(B)としては、無機アルカリ、有機アルカリが挙げられる。
無機アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。有機アルカリとしては、アルキルアミン、アルカノールアミンが挙げられる。
基板のエッチング性、洗浄性の観点から好ましくは無機アルカリではアルカリ金属、有機アルカリではアルカノールアミンである。
無機アルカリと有機アルカリを併用してもよい。
本発明の電子材料用洗浄剤中のアルカリ(B)の使用時の含有量は、0.001〜5%である。
含有量が0.001%未満では十分な洗浄性が得られず、5%を超えると洗浄剤としての安定性が不十分である。
基板のエッチング性、洗浄性の観点から好ましくは0.05%〜1%、さらに好ましくは0.1〜1%である。
本発明の第3の必須成分であるキレート剤(C)としては、アミノポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ホスホン酸、縮合リン酸等が挙げられる。
アミノポリカルボン酸としては、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA);ヒドロキシカルボン酸としては酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩;ホスホン酸としては1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸塩(HEDP);縮合リン酸としてはトリポリリン酸塩等が挙げられる。
これらのうち、洗浄性の観点でHEDP、DTPAが好ましい。
本発明の電子材料用洗浄剤中のキレート剤(C)の使用時の含有量は、0.001〜3%である。
含有量が0.001%未満では十分な洗浄性が得られず、3%を超えると洗浄剤としての安定性が不十分である。
基板のエッチング性および洗浄性能の観点から、好ましくは0.01%〜0.5%、さらに好ましくは0.04〜0.5%である。
本発明の電子材料用洗浄剤に使用される水としては、超純水、イオン交換水、逆浸透膜を通した水、蒸留水が挙げられる。
本発明の電子材料用洗浄剤には、(A)、(B)、(C)以外のその他の成分としてエッチング補助剤(D1)、分散剤(D2)、ハイドロトロープ剤(D3)、酸化防止剤、防錆剤、緩衝剤、防腐剤、消泡剤などを適宜添加することができる。
このようなエッチング補助剤(D1)としては、ピロガロール、没食子酸、アスコルビン酸が挙げられる。
分散剤(D2)としては、ポリアクリル酸DBU塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
ハイドロトロープ剤(D3)としては、パラトルエンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸が挙げられる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
製造例1
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1.0モル)、水酸化カリウム0.5部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下で、120℃にて1時間脱水を行った。次いでエチレンオキサイド88部(2.0モル)を150℃にて、ゲージ圧が0.1〜0.3MPaとなるように10時間かけて導入した。反応物をガラス容器に移し、温度を20℃に保ちながら、クロルスルホン酸120部(1.03モル)を徐々に滴下し、2時間脱塩酸を行った後、水酸化ナトリウム41.2部(1.03モル)を水1110部に溶解した水溶液で硫酸化物を中和し、ラウリルアルコールエチレンオキシド2モル付加物の硫酸エステルナトリウム塩の25%水溶液(A−1)のアニオン界面活性剤を得た。
比較製造例1
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1.0モル)、水酸化カリウム0.5部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下で120℃にて1時間脱水を行った。
次いでエチレンオキサイド396部(9.0モル)を150℃にて、ゲージ圧が0.1〜0.3MPaとなるように10時間かけて導入し、2時間熟成して、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド9モル付加物(A’−1)の非イオン性界面活性剤を得た。
比較製造例2
上記の比較製造例2のラウリルアルコールをイソオクタデシルアルコールに変える以外は同様にして、イソオクタデシルアルコールのエチレンオキサイド9モル付加物(A’−2)の非イオン性界面活性剤を得た。
実施例1〜4および比較例1〜3
表1に記載の部数で各成分を配合し、攪拌混合して500mLのビーカーに実施例1〜4及び比較例1〜3の洗浄剤を100gずつ調製した。
Figure 0005774330
実施例1〜4および比較例1〜3の洗浄剤を使って、下記の方法で、(1)シリカに対する洗浄性、(2)わざと乾燥させて固着したシリカに対する洗浄性を前述した方法で測定した。その結果を表1に示す。
<シリカに対する洗浄性(洗浄性−1)>
実施例1〜4、比較例1〜3の洗浄液をさらにイオン交換水で50倍希釈し、洗浄性評価サンプル液1000gを1Lガラス製ビーカーに調製した。
研磨剤として市販のコロイダルシリカスラリー (平均粒径約30nm、濃度40%)1gを、2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板に乗せ、スラリーを乗せてから10秒後にその基板を洗浄性評価サンプル液の中に浸漬し、超音波洗浄機(200kHz)内で、30℃、5分間洗浄を行った。
洗浄後、基板を取り出し、1000gのイオン交換水に1分間浸漬させた後、1分間窒素ブローして乾燥させた。
走査電子顕微鏡を用いて2,000倍の倍率下で、窒素ブローによる乾燥後の基板を観察し、観察視野内で観察される基板表面に残存するシリカ微粒子の数を数えた。
この観察をランダムに10点の観察視野で実施した。観察された10点における残留シリカ微粒子の合計個数から、洗浄性を以下の評価基準で評価した。評価結果を表1に示した。
[シリカ微粒子の洗浄性評価基準]
5:粒子が認められない
4:全微粒子個数が1〜5個
3:全微粒子個数が6〜10個
2:全微粒子個数が11〜50個
1:全微粒子個数が51個以上
<固着したシリカに対する洗浄性(洗浄性−2)>
洗浄性−1の試験方法においてスラリーを基板上に乗せてから10秒後に洗浄操作を行う操作を、洗浄性―2の試験方法においては、スラリーを基板に乗せてから40℃の循風乾燥機内で静置させて1時間乾燥させた後に、洗浄操作を行う点以外は洗浄性−1と同様の洗浄操作、乾燥操作を行い、評価を行った。
洗浄性の評価基準は上記の洗浄性−1と同じである。評価結果を表1に示した。
なお、洗浄性−1の試験方法が研磨直後に行われる洗浄工程での性能評価に対応するのに対して、この洗浄性−2の試験方法は乾燥後に時間が経過し基板に固着したパーティクルと異物の洗浄工程での性能評価に対応する。
表1の洗浄性試験から、実施例1〜4の本発明の電子材料用洗浄剤は、付着してから時間の経過した固着したパーティクルの除去性に優れることがわかる。このような優れた効果を奏する本発明の電子材料用洗浄剤は、より最終製品に近い工程での洗浄で優れた効果を発揮するため、最終製品の歩留まり率の向上が図れるという効果を奏する。
一方、界面活性剤としてノニオン性界面活性剤を使用した比較例1と2は、洗浄性―1では実施例とほぼ同等の洗浄性を示したが、洗浄性―2においては洗浄性が低かった。
また、界面活性剤としてラウリン酸ナトリウムを用いた比較例3でも、洗浄性−1では実施例とほぼ同等の洗浄性を示したが、洗浄性―2においては洗浄性が低かった。
本発明の電子材料用洗浄剤は、メディア工程でも基板に固着したパーティクルの洗浄に優れているため、有用である。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表される 脂肪族アルコールのオキシアルキレン付加物の硫酸エステル塩(A)、アルカリ(B)、キレート剤(C)および水を必須成分として含有することを特徴とする電子材料用洗浄剤。
    RO−(AO)n−SO ・1/f Mf+ (1)
    [式(1)中のRが炭素数8〜18の脂肪族炭化水素基;Mf+はアルカリ金属、アンモニ
    ウムまたはアミンのカチオン;AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表すが、少な
    くともオキシエチレン基を含む。nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表しの数である。]
  2. 該電子材料が、磁気ディスク基板である請求項1に記載の電子材料用洗浄剤。
  3. 磁気ディスク用基板の製造でメディア工程の洗浄に用いる請求項1または2記載の電子材
    料用洗浄剤。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の電子材料用洗浄剤を用いて洗浄された磁気ディスク基板


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