JP5500911B2 - ハードディスク基板用洗浄剤組成物、およびハードディスク基板の洗浄方法 - Google Patents
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Description
例えば、ハードディスク基板は、酸化セリウムやアルミナ等の研磨材で粗研磨した後、さらにコロイダルシリカ等の研磨材で仕上げ研磨を行う。粗研磨後や仕上げ研磨後のハードディスク基板の表面には、研磨で生じた砥粒や研磨カスが残留するため、各研磨の後にこれらを除去する必要がある。
また、アニオン界面活性剤を3〜30質量%と、グリコールのモノエーテル又はジエーテルを10〜40質量%と、水を30〜87質量%含有する精密部品用水系洗浄剤組成物が提案されている(特許文献2参照。)。
特に、粗研磨の際に用いる研磨材として好適に使用されるアルミナは、微粒子汚れとして基板表面に付着しやすい。基板に付着したアルミナは仕上げ研磨の前に基板を洗浄することで概ね除去されるものの、完全に除去するのは困難であった。そのため、仕上げ研磨の後にもアルミナが基板上に残留することとなる。従って、ハードディスクの小型化や高容量化に応じるために、洗浄剤組成物にはアルミナなどの研磨材に対して優れた洗浄性を有することが求められる。
CmH2m+1O(C2H4O)nSO3M ・・・(1)
(式(1)中、Mはナトリウム、カリウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたは水酸化テトラメチルアンモニウムのいずれかであり、mは1〜6の整数であり、nは0〜12の整数である。)
また、純水で1質量%に希釈した希釈液の25℃におけるpHが8〜13であることが好ましい。
[ハードディスク基板用洗浄剤組成物]
本発明のハードディスク基板用洗浄剤組成物(以下、単に「洗浄剤組成物」という。)は、アルミナなどの研磨材でハードディスク基板を研磨した後の洗浄用として用いる。
ハードディスク基板の材料としては、ガラス、ニッケルとリンとの混合物(Ni−P)、ニッケルと鉄との混合物(Ni−Fe)、アルミニウム、炭化ホウ素、炭素等が挙げられ、中でもガラス、ニッケルとリンとの混合物(Ni−P)、ニッケルと鉄との混合物(Ni−Fe)、またはアルミニウムであることが好ましい。
本発明における(A)成分は、アルカリ金属の水酸化物である。
アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。中でも、製造コストを抑えられる観点からナトリウムが好ましい。
本発明の洗浄剤組成物は、(B)成分として1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸および/またはその塩を含有する。
塩としては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、または水酸化テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。
(B)成分としては、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸−4ナトリウム塩が好ましい。
本発明の洗浄剤組成物は、(C)成分として下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(以下、「短鎖AES」という。)を含有する。
CmH2m+1O(C2H4O)nSO3M ・・・(1)
mは1〜6の整数であり、3〜5の整数が好ましい。mが1〜6の整数であれば、研磨材として好適に使用されるアルミナとの親和性が向上し、アルミナ等の研磨材に由来する微粒子汚れに対する洗浄性が向上する。
nは0〜12の整数であり、0〜8の整数が好ましい。nが0〜12の整数であれば、研磨材として好適に使用されるアルミナとの親和性が向上し、アルミナ等の研磨材に由来する微粒子汚れに対する洗浄性が向上する。
なお、本発明において「純水」とは、水から物理的処理または化学的処理によって不純物を除去したものである。純水としては、例えば、脱イオン水や蒸留水などが挙げられる。
また、短鎖AESとしては市販のものを用いてもよく、例えば、泰光油脂化学工業社製の「タイポールBx−Conc」が適している。
上述したように、界面活性剤は洗浄効果に優れる物質であり、洗浄剤に一般的に用いられる成分ではあるが、特にアルミナ等の研磨材に由来する微粒子汚れの基板への付着を促進しやすい。そのため、界面活性剤の含有量が増える程、研磨材に対する洗浄性は低下しやすくなる。
本発明の洗浄剤組成物には、界面活性剤を含有させてもよいが、界面活性剤を含有しないのが最も好ましい。界面活性剤を含有させる場合、その含有量は、洗浄剤組成物100質量%中、1.00質量%未満であり、0.70質量%以下が好ましく、0.50質量%以下がより好ましい。界面活性剤の含有量が1.00質量%未満であれば、研磨材に対して優れた洗浄性を発現できる。
表面張力は、界面活性剤中のアルキル基の炭素数が増えるほど、小さくなる傾向にある。従って、本発明において界面活性剤に分類される化合物は、アルキル基の炭素数が7以上の比較的長鎖の化合物である。
イオン性界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、石鹸、アルファオレフィンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキル硫酸エステル、アルキルエーテル硫酸エステル、メチルタウリン酸、アラニネート、スルホコハク酸、硫酸化油、エーテルカルボン酸、第4級アンモニウム、イミダゾリニウムベタイン系、アミドプロピルベタイン系、アミノジプロピオン酸、アルキルアミン、アルキルアミドの塩等が挙げられる。
また、ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、ポリオキシアルキレンポリアルキルアリールエーテル、脂肪酸エステル、アルキルアミンEO付加体、アルキルアミドEO付加体、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
本発明の洗浄剤組成物は、(D)成分としてクエン酸および/またはその塩を含有することが好ましい。
クエン酸は、分子量当りの官能基数(ヒドロキシル基とカルボキシル基の総数)が多く、かつ水に対して高い溶解性を示す。官能基数の数が多いほどアルミナ等の研磨材に由来する微粒子汚れが基板から剥離しやすくなる傾向にある。また、水に対する溶解性が高いほど基板に残留しにくくなるので、洗浄性が向上する傾向にある。従って、(D)成分を含有することで、微粒子汚れに対する洗浄性により優れ、砥粒や研磨カスを十分に除去できるようになる。
塩としては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、または水酸化テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。
本発明の洗浄剤組成物は、(A)〜(D)成分、および界面活性剤以外のその他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、溶媒、pH調整剤、消泡剤、グリコールエーテル類、防腐剤、酸化防止剤、無機塩、分散剤等が挙げられる。
溶媒としては、例えば純水、エタノールやイソプロパノールなどのアルコール、及びアルコールと水の混合物が挙げられる。溶媒の含有量は、洗浄剤組成物100質量%中、50.00〜99.50質量%が好ましく、60.00〜98.00質量%がより好ましい。
本発明の洗浄剤組成物は、純水で1質量%に希釈した希釈液の25℃におけるpHが、8〜13であることが好ましく、8.5〜12.5であることがより好ましく、9〜12であることがさらに好ましい。pHが上記範囲内であれば、アルミナ等の研磨材に由来する微粒子汚れに対する洗浄性がより向上する。
なお、pHの測定は、pHメータ(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM−20S」)とpH電極(東亜ディーケーケー株式会社製、「GST−5211C」)を用いて、25℃の希釈液に対してpH電極を浸漬し15秒経過後の指示値を読み取ることにより行う。
本発明の洗浄剤組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、常法に準じて各成分を順次混合することにより調製できる。
本発明の洗浄剤組成物は、(A)成分としてアルカリ金属の水酸化物を0.01〜5.00質量%と、(B)成分として1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸および/またはその塩を0.10〜20.00質量%と、(C)成分として短鎖AESを0.05〜10.00質量%含有する。各成分によってアルミナなどの研磨材を溶解することで、研磨材に対する洗浄性が向上すると考えられる。また、(B)成分がアルミナとキレートすることで、特にアルミナに由来する微粒子汚れが基板に付着するのを抑制でき、微粒子汚れに対する洗浄性が向上すると考えられる。
さらに、(A)成分と(B)成分と(C)成分の含有量を特定の範囲に規定することで、界面活性剤の含有量を1.00質量%未満に軽減しても優れた洗浄性を維持できる。
また、洗浄剤組成物にとして(D)成分を配合すれば、アルミナ等の研磨材に由来する微粒子汚れや研磨カス等に対する洗浄性がより向上する。
本発明のハードディスク基板の洗浄方法は、本発明の洗浄剤組成物を純水で0.01〜20.00質量%に希釈して用いる方法である。
洗浄剤組成物を0.01質量%以上に希釈すれば、アルミナ等の研磨材に由来する微粒子汚れに対して優れた洗浄性を十分に発揮できる。一方、洗浄剤組成物を20.00質量%以下に希釈すれば、アルミナ等の研磨材に由来する微粒子汚れに対して優れた洗浄性を維持しつつ、砥粒や研磨カスを十分に除去できる。
以下、本発明のハードディスク基板の洗浄方法の一例について具体的に説明する。
ハードディスク基板を粗研磨する方法としては特に限定されず、例えば、研磨機を用いて研磨材を含む研磨スラリーを供給しながら基板を加圧して表面を研磨する方法などが挙げられる。
さらに、純水をスプレー等で吹き付けて濯ぎ、基板に残存する洗浄剤組成物等を除去する。
純水で基板を濯いだ後は、公知の方法で乾燥して、基板に残存する純水を除去する。
ハードディスク基板を仕上げ研磨する方法としては特に限定されず、粗研磨と同様にして行えばよい。
洗浄剤組成物で洗浄した後は、純水をスプレー等で吹き付けて濯ぎ、基板に残存する洗浄剤組成物等を除去する。
純水で基板を濯いだ後は、公知の方法で乾燥して、基板に残存する純水を除去する。
従って、本発明によって洗浄したハードディスク基板は、小型化や高容量化を目的としたハードディスク用に最適である。
キレート剤:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸4Na(ライオン社製、「フェリオックス115−A」をNaOHで中和して調製)、
短鎖AES:C4H9O(C2H4O)1SO3Na(オキシエチレンブチルエーテル硫酸ナトリウム)(泰光油脂化学工業社製、「タイポールBx−Conc」、表面張力:65mN/m)、
クエン酸:クエン酸3Na・2H2O(小松屋化学社製、「クエン酸ナトリウム」)、
界面活性剤:ジオクチルスルホコハク酸Na(ライオン社製、「リパール870P」、表面張力:27mN/m)。
なお、表1、2に示す「バランス」とは、洗浄剤組成物に含まれる各成分の総量が100質量%になるように調整した、洗浄剤組成物中の純水の配合量を意味する。
洗浄剤組成物を純水(イオン交換水)で1%に希釈して希釈液を調製し、25℃における希釈液の表面張力を測定した。
表面張力の測定は、全自動表面張力計(協和科学社製、「KYOWA CBVP SURFACE TENSIOMETER A3」)を使用し、25℃に設定して、Wilhelmy法に基づき、白金プレートを用いて測定した。
洗浄剤組成物を純水で1%に希釈して希釈液を調製し、25℃における希釈液のpHを測定した。
pHの測定は、pHメータ(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM−20S」)とpH電極(東亜ディーケーケー株式会社製、「GST−5211C」)を用いて、25℃の希釈液に対してpH電極を浸漬し15秒経過後の指示値を読み取ることにより行った。
洗浄後の基板をハロゲンランプで照射して、アルミナ由来の微粒子汚れの残存の程度を目視観察し、以下の評価基準にて微粒子汚れの洗浄性を評価した。なお、汚れが落ちているほど、アルミナ由来の微粒子汚れに対する洗浄性が高いことを意味する。
◎◎:全く微粒子汚れが観察されない。
◎:ほんの僅かに微粒子汚れが観察されるが、非常に良好。
○:微粒子汚れが一部残存しているが、概ね良好。
△:全体的に微粒子汚れが残存している。
×:殆ど微粒子汚れが落ちていない。
表1に示す配合(%)で、各成分を混合して洗浄剤組成物を調製した。マグネチックスターラーの入った樹脂製のビーカーに純水1980mLを入れ、マグネチックスターラーを回転させながら洗浄剤組成物を20mL添加し、1.00%に希釈した。希釈後の洗浄剤組成物のpHを表1に示す。
ついで、ローラーで保持された試験片に、希釈した洗浄剤組成物を25℃で射出しながら、洗浄ブラシを試験片の表面に押し当てた状態で、回転数100rpmの条件で20秒間回転させ、洗浄を行った。その後、試験片を流水(純水)で60秒間濯ぎ、エアブローで乾燥させた。
乾燥後の試験片について、上記の評価方法で洗浄性の評価を行った。結果を表1に示す。
表2に示す配合(%)で、各成分を混合して洗浄剤組成物を調製した以外は実施例1〜8と同様にしてハードディスク基板を洗浄した。
乾燥後の基板について、上記の評価方法で洗浄性の評価を行った。結果を表2に示す。
また、界面活性剤を0.2〜0.5%含む実施例7、8で得られた洗浄剤組成物は、界面活性剤を含有しない実施例1で得られた洗浄剤組成物に比べると洗浄性はやや劣るが、概ね良好であった。
従って、本発明の洗浄剤組成物は、研磨材、特にアルミナ由来の微粒子汚れに対する洗浄性に優れていた。
また、界面活性剤を1.0%以上含む比較例3、4で得られた洗浄剤組成物は、実施例1〜8で得られた洗浄剤組成物に比べて洗浄性が劣っていた。特に、界面活性剤を5.0%含有する比較例4は洗浄性に著しく劣り、殆ど微粒子汚れが落ちていなかった。
また、(B)成分を30.0%含有する比較例5で得られた洗浄剤組成物は、比較例1に比べると洗浄性はやや良好であったが、(B)成分の含有量が多いため、実施例1〜8に比べると洗浄性が劣っていた。
Claims (4)
- (A)成分:アルカリ金属の水酸化物を0.01〜5.00質量%、(B)成分:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸および/またはその塩を0.10〜20.00質量%、(C)成分:下記一般式(1)で表される化合物を0.05〜10.00質量%含有し、
界面活性剤の含有量が1.00質量%未満であることを特徴するハードディスク基板用洗浄剤組成物。
CmH2m+1O(C2H4O)nSO3M ・・・(1)
(式(1)中、Mはナトリウム、カリウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたは水酸化テトラメチルアンモニウムのいずれかであり、mは1〜6の整数であり、nは0〜12の整数である。) - さらに、(D)成分:クエン酸および/またはその塩を0.10〜20.00質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のハードディスク基板用洗浄剤組成物。
- 純水で1質量%に希釈した希釈液の25℃におけるpHが8〜13であることを特徴とする請求項1または2に記載のハードディスク基板用洗浄剤組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のハードディスク基板用洗浄剤組成物を純水で0.01〜20.00質量%に希釈して用いることを特徴とするハードディスク基板の洗浄方法。
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